平成14(行ウ)341 行政文書一部不開示処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年9月16日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文25,154 文字)

主文 一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用は、原告の負担とする。 事実及び理由 第一請求被告が平成14年6月25日付けで原告に対してした防管艦第5539号行政文書開示決定通知書による行政文書一部不開示決定を取り消す。 第二事案の概要一事案の骨子本件は、原告が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき被告の保有する行政文書の開示を請求したところ、被告が当該文書の一部を不開示とし、その余の部分を開示する旨の決定を行ったため、原告の知る権利を侵害したなどと主張して、被告に対し、一部不開示とする決定の取消しを求める事案である。 二前提となる事実(いずれも当事者間に争いがない。) 1 開示請求原告は、被告に対し、平成14年4月24日、情報公開法4条1項に基づき、請求する行政文書の名称等を、「平成14年2月25日防運第1501号で開示決定された『テロ対策特措法に基づく自衛隊部隊の活動実績について(14・1・16)』に記載された米英艦艇に対する給油約2万5千KLの油の購入費用に係る支払決議書及び当該支払いに係る請求書兼領収書」とする開示請求をした(以下、この請求を「本件開示請求」という。)。 2 一部不開示決定被告は、平成14年6月25日、情報公開法9条1項に基づき、本件開示請求に係る行政文書(以下「本件行政文書」という。)は、3通の各支払決議書(甲第5号証の1、3及び5がその写しである。以下「本件各支払決議書」という。)並びに3通の各請求兼領収書(甲第5号証の2、4及び6がその写しである。以下「本件各請求兼領収書」という。)であるとして、これらの文書 1、3及び5がその写しである。以下「本件各支払決議書」という。)並びに3通の各請求兼領収書(甲第5号証の2、4及び6がその写しである。以下「本件各請求兼領収書」という。)であるとして、これらの文書中の「発議者の印影」、「振込銀行名等」及び「受取人住所等」部分を不開示とし、その余の部分を開示する旨の決定をし、原告に対し、同日、防管艦第5539号行政文書開示決定通知書をもって通知した(以下、この決定のうち一部不開示とする部分を「本件一部不開示決定」という。)。 三争点及び争点に関する当事者の主張の要旨 1 争点1本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分が情報公開法5条1号本文に該当するか。また、仮に、同号本文に該当するとすれば、更に同号ただし書イ又はハに該当するか。 (一) 被告の主張(1) 本件各支払決議書に記録された「発議者の印影」を含む情報は、発議者の個人に関する情報であって、かつ、印影により同人を識別することができるものであるから、情報公開法5条1号本文に該当することは明らかである。 (2)ア情報公開法5条1号ただし書イないしハは、同号本文によって不開示とされる情報から例外的に除外されるものを定めたものであり、開示請求者がその適用を求めるべき規定である。したがって、このただし書イないしハ該当性については、原告がこれに該当する事実を主張立証する義務を負う。 同号ただし書イにいう「慣行として公にされ」ているとは、慣習として、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていることをいうものと解されるところ、本件各支払決議書の「発議者」の氏名を公衆に対して公表する慣行、慣習はない。また、被告が調査したところ、上記発議者の氏名について、公刊されている職員録等 置かれていることをいうものと解されるところ、本件各支払決議書の「発議者」の氏名を公衆に対して公表する慣行、慣習はない。また、被告が調査したところ、上記発議者の氏名について、公刊されている職員録等に掲載されているとの事実は存在しない。したがって、本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分は、同号ただし書イに該当しない。 イ情報公開法5条1号ただし書ハは、「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」を不開示情報から除外して、当該公務員の個人に関する情報としては不開示とはしないとする一方で、「公務員の個人名」は、これとは別に、非公務員の場合と区別することなく、同号ただし書イにより開示の是非を判断することとして規定している。したがって、「当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」に「公務員の個人名」が含まれないことは明らかである。そうすると、本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分が同号ただし書ハに該当しないことは明らかである。 (二) 原告の主張(1) そもそも情報公開法5条の趣旨は、個人のプライバシー保護のための規定であるところ、公金の支払決裁書に公務員の氏名や民間人の個人名が記載されていても、その開示は、一般的にはその個人のプライバシーを侵害することにはならない。情報公開法は、政府の有する諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とするものであり(情報公開法1条参照)、このような説明責任を全うするためには、公務員の職務に関する氏名を公表することが不可欠であって、説明責任は組織としての行政機関だけではなく、個々の職員も果たすべきものである。逆に、職務遂行に関する公務員の氏名が公表されたからといっ には、公務員の職務に関する氏名を公表することが不可欠であって、説明責任は組織としての行政機関だけではなく、個々の職員も果たすべきものである。逆に、職務遂行に関する公務員の氏名が公表されたからといって、当該公務員個人の私生活に不利益を及ぼすおそれはない。 したがって、本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分は、公務の遂行に係る公務員個人の氏名であるから、情報公開法5条1号本文所定の「個人に関する情報」にも、「特定の個人を識別することができるもの」にも該当しない。 (2)ア仮に、情報公開法5条1号本文に該当するとしても、同号ただし書イの趣旨は、「慣行として公にされ」ている情報、例えば叙勲者名簿、中央省庁の課長職以上の者の職及び氏名等は、一般に公表されている情報であり、これを開示することによって、場合により個人のプライバシーを害するおそれがあるとしても、受忍すべき範囲にとどまると考えられるので、これを例外情報としたと説明されている。そうすると、同号ただし書イ該当性の判断に当たっても、プライバシー侵害のおそれ、その程度が考慮されるが、開示の必要性が高く、プライバシー侵害のおそれがないか又は極めて少ない場合には、「慣行として公にされ」ている情報に当たらないときであっても、「公にすることが予定されている情報」に該当すると解すべきである。 本件各支払決議書の「発議者の印影」に係る発議者の氏名が現在公刊されている職員録等に掲載されていないことは認めるが、発議者の氏名が、開示の必要性が高く、これを開示してもプライバシー侵害の危険がないことは、前記(1)のとおりである。したがって、当該情報は、同号ただし書イに該当する。 イ情報公開法5条1号ただし書ハは、「当該情報がその職 を開示してもプライバシー侵害の危険がないことは、前記(1)のとおりである。したがって、当該情報は、同号ただし書イに該当する。 イ情報公開法5条1号ただし書ハは、「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」を不開示情報から除外しているところ、「当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」には、「公務員の個人名」も含むと解すべきである。したがって、本件各支払決議書の「発議者の印影」に係る発議者の氏名も、同号ただし書ハに該当する。 2 争点2(争点3、5及び6の前提として)情報公開法5条4号は、行政庁に裁量権を付与したものか。仮に、そうであるとすると、同号は、憲法1条及び21条1項に反し、違憲であるか。 (一) 被告の主張(1) 情報公開法5条4号の文理解釈及び立法趣旨からすると、同号該当性の判断については、行政庁に比較的広範な裁量権が付与されていると解すべきである。したがって、これに対する司法審査は、処分の存在を前提として、当該処分に社会通念上著しく妥当性を欠くなどの裁量権の逸脱ないし濫用があると認められる点があるか否かを判断するという審査方法によるべきである。そして、処分の取消訴訟においては、同号の該当性を否定する原告が、上記のような裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を主張立証する責任を負うものと解すべきである。 (2)ア知る権利という概念については、憲法上明文の規定はなく、それ自体抽象的な権利にすぎず、このことから行政機関に対する具体的な情報公開請求権を導き出すことはできない。公的情報に対する国民の公開請求権は、あくまでも実定法上の根拠が必要と解 明文の規定はなく、それ自体抽象的な権利にすぎず、このことから行政機関に対する具体的な情報公開請求権を導き出すことはできない。公的情報に対する国民の公開請求権は、あくまでも実定法上の根拠が必要と解すべきである。国民に対して情報公開請求権を付与するか否か、いかなる限度でどのような要件の下に付与するかなどは、いずれも立法政策の問題であり、具体的情報公開請求権の内容、範囲等は、情報公開法の定めるところによるしかない。 情報公開請求権の創設に際しては、立法裁量が認められることは当然であって、情報公開法の違憲審査に当たり原告の主張するような違憲審査基準が妥当することはあり得ず、原告の主張は失当である。 イ情報公開法5条4号に係る文書については、その性質上、開示・不開示の判断に犯罪等に関する将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められる。そのため、司法審査の場においては、裁判所が同号に規定する情報に該当するかについての行政機関の長の第一次判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度のものであるか否かについて審査・判断するのが適当であることから、同号は、「公にすることにより、犯罪の予防、・・(中略)・・公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」という文言により定められたのである。 したがって、情報の開示・不開示の判断について行政庁に比較的広範な裁量権を付与するという立法政策が採られたことは明らかであり、このことは合理性を有するといえる。 ウ以上のとおりであり、情報公開法5条4号が違憲無効であるという原告の主張は、失当である。 (二) 原告の主張 かであり、このことは合理性を有するといえる。 ウ以上のとおりであり、情報公開法5条4号が違憲無効であるという原告の主張は、失当である。 (二) 原告の主張(1) 憲法21条は、国民の知る権利を保障するものであって、行政機関に対する情報公開請求権を認めるものである。行政庁の裁量権といえども無制約ではあり得ず、憲法前文、1条の規定する国民主権原理及び憲法21条1項の規定する国民の知る権利並びに情報公開法1条の規定する目的は、最も重視すべき諸要素というべきである。特に、本件一部不開示決定のように憲法21条が保障する国民の知る権利を制約する行政処分は、民主制の過程に瑕疵を生じさせ、立憲民主主義を逸脱する危険があるものであるから、このような行政処分には違憲の推定が及ぶと解される。そして、当該裁量権の行使に関する司法審査は、厳格にされなければならず、処分の必要性を基礎付ける具体的危険の存在が客観的に明白であることの事実につき、被告が主張立証責任を負うと解すべきである。 (2) 仮に、情報公開法5条4号が被告の主張するとおりに解釈される条文であるとするならば、同号は、憲法1条の規定する国民主権原理及び国民の知る権利を保障した憲法21条1項に反し、違憲である。 3 争点3本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分が情報公開法5条4号に該当するか。 (一) 被告の主張(1) 本件各支払決議書は、「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措 リカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」(以下「テロ特措法」という。)に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油の購入に関する支払決議書であり、そこに記録された各情報すなわち発議及び各決裁者の決裁に関する各情報には、当該油の購入先である者の住所及び氏名が含まれている。 テロ特措法に基づく活動は、協力支援活動(テロ特措法3条1項1号)、捜索救助活動(同項2号)及び被災民救援活動(同項3号)であるが、これらの活動は、我が国が国際社会の一員として果たすべき重要な任務であって、現在も行われている。しかし、米軍等への協力支援については、国内外に様々な意見を有する者があるところ、これに反対の意見を有する者が、当該協力支援活動を行う自衛隊と通常の商行為として契約を締結している者を標的とした種々の妨害活動を行う可能性は少なくない。 そこで、被告は、本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分については、当該情報を公にすることにより、人の生命、身体、財産への不法な侵害等を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあるとして、情報公開法5条4号該当性を認めたのである。 したがって、被告は、適法に裁量権を行使したものであって、何らの裁量権の逸脱ないし濫用もない。 (2) 情報公開法5条4号の該当性については、前記2(一)(1)のとおり、これを否定する原告が、被告に裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を主張立証する責任を負うものと解すべきである。ところが、原告は、憲法前文及び1条の 、前記2(一)(1)のとおり、これを否定する原告が、被告に裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を主張立証する責任を負うものと解すべきである。ところが、原告は、憲法前文及び1条の国民主権並びに憲法21条1項の国民の知る権利を最も重視して同号の適否を判断すべきなのに、被告がそれを怠ったなどと主張するだけであって、被告の判断について裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を何ら主張立証していない。よって、原告の主張は失当である。 (二) 原告の主張(1) 情報公開法5条4号に該当するというためには、前記2(二)(1)のとおり、処分の必要性を基礎付ける事実である犯罪等が発生する具体的危険の存在が客観的に明白である事実を、被告が主張立証することを要すると解すべきである。 ところが、被告は、米軍等に対する協力支援活動に反対の意見を有する者が、当該協力支援活動を行う自衛隊と通常の商行為として契約を締結している者を標的とした種々の妨害活動を行う可能性が少なくないという単なる抽象的可能性を主張するにすぎない。また、被告は、米軍等に対する協力支援活動に反対の意見を有する者が存在することを理由に、これらの者が当該協力支援活動を行う自衛隊と通常の商行為として契約を締結している者を標的とした種々の妨害活動を行う可能性があると主張するが、この理由から上記可能性を導き出すことには合理的関連性がない。 加えて、本件開示請求に係る本件行政文書で問題となっている油は、特に米英軍に対する協力支援活動を目的として購入されたものではなく、自衛隊部隊の船舶運用等の一般目的で購入されたものにすぎず、その購入した油合計6万5178.909キロリットルの中から合計2万5000キロリッ に対する協力支援活動を目的として購入されたものではなく、自衛隊部隊の船舶運用等の一般目的で購入されたものにすぎず、その購入した油合計6万5178.909キロリットルの中から合計2万5000キロリットルを米英軍への協力支援活動に融通したにすぎないものである。したがって、本件の油を自衛隊に納入した業者自体は、米英軍への協力支援とは無関係であり、この点で自衛隊に他の諸物資を納入する業者と異なるところはない。したがって、本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分を公にしたからといって、米英軍への協力支援活動を行う自衛隊と通常の商行為として契約を締結している者を標的とした種々の妨害活動を過去に組織的に行ってきた者たちが、当該業者に対して犯罪行為等を行う危険性があるとはいえない。 以上のとおりであり、被告の主張は、失当である。 (2) 原告は、米軍等への協力支援活動を含むテロ特措法に基づく種々の活動が、我が国が国際社会の一員として果たすべき重要な任務であり、現在も行われていること及び米軍等に対する協力支援活動に反対の意見を有する者の存在自体は、認める。 しかし、国民主権を統治の基本原理とする憲法下において、国民に多種多様な意見があることは、むしろ当然のことである。憲法は、このような多様な国民の意見について民主政の過程を通じて解決を図ろうとするものであり、情報公開法もこのような憲法の理念に則って定められたものである。したがって、多様な意見が存在することは、関連する情報の開示の必要性を基礎付ける事由になりこそすれ、何ら不開示事由には当たらないというべきである。 本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分につき、情報公開法5条4号該当 性を基礎付ける事由になりこそすれ、何ら不開示事由には当たらないというべきである。 本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分につき、情報公開法5条4号該当性を判断する際には、憲法前文及び1条の国民主権並びに憲法21条1項の国民の知る権利を最も重視して判断しなければならない。ところが、被告は、これを無視し、単なる抽象的な危険の可能性をもって、同号該当性を肯定して不開示としたのである。したがって、被告の裁量権の行使には逸脱ないし濫用の違法があることは明らかである。 4 争点4本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分が、情報公開法5条2号イに該当するか。 (一) 被告の主張(1) 情報公開法5条2号イは、法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報には、営業秘密等、開示すると当該法人等の権利利益を害するおそれのあるものがあるが、原則として法人等が有する正当な権利利益は、開示することにより害されるべきではないという考え方に基づき規定されたものであって、「権利、競争上の地位その他正当な理由を害するおそれ」の有無は、当該法人等と行政との関係、その活動に対する憲法上の特別の考慮の必要性等、それぞれの法人等及び情報の性格に応じて的確に判断されるべきであると解される。 一般に、法人等の振込先金融機関名、預金種目、口座番号等は、いわゆる内部管理情報として秘密にしておくことが是認され、これらの内部管理情報につき、当該法人等は、開示の可否及びその範囲を自ら決定することのできる権利ないしそれを自己の意思によらないでみだりに他に開示、公表されない利益を有しているというべきである。また、上記 内部管理情報につき、当該法人等は、開示の可否及びその範囲を自ら決定することのできる権利ないしそれを自己の意思によらないでみだりに他に開示、公表されない利益を有しているというべきである。また、上記のような金融情報は、第三者に知られることによって、悪用され、当該法人等の金融上の営業秘密が流出してしまうおそれが多分にあるというべきであり、この点からいっても、十分に保護されるべきものである。 したがって、前記のような事項を含む情報は、同号イの「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するというべきである。 (2) 本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分には、テロ特措法に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油の購入先である法人等の振込銀行名、預金種目及び口座番号の記載が含まれている。そして、当該法人等が飲食業者等である場合とは異なり、振込銀行名、預金種目及び口座番号を第三者に知られることを容認しているとみるべき事情もないので、上記(1)に述べたことがそのまま妥当する。したがって、これらの各部分は、情報公開法5条2号本文所定の法人等に関する情報であり、かつ、同号イにいう「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するというべきである。 (二) 原告の主張(1) 一般に、法人等の振込先金融機関名、預金種目及び口座番号等は、何ら営業上の秘密やノウハウには当たらないから、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分が情報公開法5条2号イに該当する旨の被告の主張は失当である。 (2) 情報公開法3条は、何人も行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる旨規定し、 座種別番号」の各部分が情報公開法5条2号イに該当する旨の被告の主張は失当である。 (2) 情報公開法3条は、何人も行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる旨規定し、原則として行政文書を開示することを定めている。他方、法人等又は個人の事業に関する情報の中には、内部管理情報等保護に値する情報も存在する。そこで、情報公開法は、行政文書の開示の必要性と法人等又は個人の事業に関する内部管理情報等の保護との調和を図るため、情報公開法5条2号ロに、公にしないでほしいという法人等の申出が常識的にも理解することができる場合に限る旨の要件を付加して不開示情報を定めている。したがって、被告が、当該法人等の公表されない利益の存在を理由として、行政文書を不開示とするためには、同号ロを処分理由とし、かつ、訴訟上、当該事実を主張立証する必要がある。 しかし、被告は、本件一部不開示決定において、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分の不開示事由として、同号ロ該当性を処分理由に付記しておらず、かつ、この点に関する主張立証もない。 (3) 以上のとおりであるから、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分を不開示としたことは、違法である。 5 争点5被告が、訴訟上、本件一部不開示決定に付記していなかった不開示理由を追加して主張することが許されるか。仮に、許されるとすると、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分が、情報公開法5条4号に該当するか。 (一) 被告の主張(1) 行政手続法8条1項の趣旨は、許認可の申請に対して行政庁が拒否処分をする場合に、行政庁の判断の慎重・合理 が、情報公開法5条4号に該当するか。 (一) 被告の主張(1) 行政手続法8条1項の趣旨は、許認可の申請に対して行政庁が拒否処分をする場合に、行政庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、申請者に争訟(不服申立て、訴訟)の提起の便宜を図るため、拒否処分と同時に処分理由を申請者に示すことを行政庁に義務付けることにある。そして、情報公開法9条2項も、不開示決定をする場合には、「その旨を書面により通知しなければならない」と規定しており、この通知を行う際には、行政手続法8条に基づく理由の提示及び行政不服審査法57条に基づく教示を行うことが必要である。 したがって、情報公開法に基づく不開示決定においては、行政庁の不開示決定の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、申請者に争訟の提起の便宜を図る程度に理由が付記されていれば、行政手続法8条1項の要請する理由付記としては必要かつ十分であるから、不開示決定の取消訴訟において、付記理由以外の理由の追加的主張は許されないわけではない。 以上のとおりであるから、本件一部不開示決定において、その通知書に付記されていなかった理由を訴訟において新たに追加して主張することは許されるというべきである。 (2) 本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分は、テロ特措法に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油の購入先である法人等の振込銀行名、預金種目及び口座番号が含まれている。したがって、これらが開示されると、当該口座番号等から当該法人等の名称が明らかになるおそれが大きい。 そうすると、前記3(一)のとおりであるから、本件各請求兼領収書のうちの「振込 がって、これらが開示されると、当該口座番号等から当該法人等の名称が明らかになるおそれが大きい。 そうすると、前記3(一)のとおりであるから、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分については、当該情報を公にすることにより、人の生命、身体、財産への不法な侵害等を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあるといえる。したがって、情報公開法5条4号該当性を肯定することができるので、同号に基づいても不開示とされるべきものである。 (3) 情報公開法5条4号該当性については、前記2(一)のとおり、これを否定する原告が、被告に裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を主張立証する責任を負うと解すべきである。ところが、原告は、憲法前文及び1条の国民主権並びに憲法21条1項の国民の知る権利を最も重視して同号の適否を判断すべきところ、被告がこれを怠ったなどと主張するだけであって、被告の判断について裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を何ら主張立証していない。よって、原告の主張は失当である。 (二) 原告の主張(1) 行政手続法8条1項の趣旨が被告の主張するとおりの内容であることは認める。 しかし、このような目的を達成するためには、理由付記は、処分時にされる必要があり、処分後の理由付記は、同条に違反し、違法である。処分時に全く理由が付記されていない場合はもちろんであるが、本件のように国民の知る権利という優越的な権利が問題となる場面においては、処分時に理由は付記されていたが、訴訟において新たに別個の理由が追加して主張されるという場合も、同条に違反し、違法であるというべきである。 本件一部不開 問題となる場面においては、処分時に理由は付記されていたが、訴訟において新たに別個の理由が追加して主張されるという場合も、同条に違反し、違法であるというべきである。 本件一部不開示決定においては、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分の不開示理由として情報公開法5条4号に該当するという理由は付記されていなかったのであるから、これを追加して主張することは許されない。 (2) 仮に、処分理由の追加的主張が許されるとしても、前記2(二)のとおりであるところ、被告は、情報公開法5条4号にいう「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」ことに関し具体的危険の存在が客観的に明白であることを主張立証していない。 したがって、被告の主張は失当である。 6 争点6本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分が、情報公開法5条4号に該当するか。 (一) 被告の主張(1) 本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分には、テロ特措法に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油の購入先である法人等の住所及び名称の記載が含まれている。 被告は、本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分につき、当該情報を公にすることにより、人の生命、身体、財産への不法な侵害等を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあるとして、前記3(一)の主張と同様に、情報公開法5条4号の該当性を認めたので つき、当該情報を公にすることにより、人の生命、身体、財産への不法な侵害等を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあるとして、前記3(一)の主張と同様に、情報公開法5条4号の該当性を認めたのである。 したがって、被告には裁量権の逸脱ないし濫用はない。 (2) 情報公開法5条4号該当性については、前記2(一)のとおり、これを否定する原告が、被告の裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を主張立証する責任を負うと解すべきである。ところが、原告は、憲法前文及び1条の国民主権並びに憲法21条1項の国民の知る権利を最も重視して同号の適否を判断すべきところ、被告がこれを怠ったなどと主張するだけで、被告の判断について裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を何ら主張立証していない。よって、原告の主張は失当である。 (二) 原告の主張(1) 原告は、本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分に、テロ特措法に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油の購入先である法人等の住所及び名称の記載が含まれているか否かについては、知らない。 しかし、仮に、被告の主張するとおりの記載が含まれているとしても、前記2(二)の主張のとおりであって、本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分が情報公開法5条4号に該当する旨の判断は、憲法前文、1条及び21条1項に違反するものであり、裁量権を逸脱ないし濫用した違法がある。よって、被告の主張は失当である。 (2) そのほか争点3(二)(1)の主張のとおりである。 第三争点に対する当裁判所の判 違反するものであり、裁量権を逸脱ないし濫用した違法がある。よって、被告の主張は失当である。 (2) そのほか争点3(二)(1)の主張のとおりである。 第三争点に対する当裁判所の判断一争点1(本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分の情報公開法5条1号本文該当性及び同号ただし書イ又はハ該当性)について1(一) 情報公開法5条1号本文は、「個人(・・省略・・)に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」を不開示情報と定めている。 ところで、個人に関する情報を保護する規定のあり方としては、個人のプライバシー等の権利利益を害するおそれのあるものに限って不開示事由とする方式(プライバシー保護型)もあり得るが、情報公開法は、プライバシーの概念が法的にも社会通念上も必ずしも確立したものではないことから、個人の権利利益の十分な保護を図るために、特定の個人を識別することができる情報は、同号ただし書イないしハの例外的開示事由に該当しない限り、不開示とするという立法政策を採用し、上記のとおりの文言として規定したものと解される。 したがって、同号本文該当性を判断するに際しては、プライバシーの侵害の有無を考慮することなく、特定の個人を識別することができるか否かという観点から判断すれば足りるものというべきである。 (二) そこで、本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分について検討するに、本件各支払決議書に記録された「発議者の印影」は、発議者の個人に関する情報であって、かつ、印影により同人を識別することができるものである。 したがって、同部分が情報公開法5条1号本文所定の不開示情報に該当することは明らかで 影」は、発議者の個人に関する情報であって、かつ、印影により同人を識別することができるものである。 したがって、同部分が情報公開法5条1号本文所定の不開示情報に該当することは明らかである。 これに対し、原告は、公金の支払決裁書記載の公務員の氏名を開示しても、一般的には個人のプライバシーを侵害することにはならない上、個々の職員も国民への説明義務を果たすべきであるから、「発議者の印影」部分は同号本文に該当しない旨主張するが、誤った前提のもと、独自の議論をいうものであって、採用することができない。 2(一) 処分の取消訴訟において、開示請求に対する不開示決定が適法であることを主張する者は、情報公開法5条1号ないし6号の定める不開示情報が記録されていることを主張しなければならない。そして、このような不開示情報が開示請求に係る行政文書に記録されている場合には、行政機関の長は当該行政文書を開示してはならない義務を負うが、さらに同条1号ただし書イないしハにも該当する情報は、その例外として不開示情報から除外され、開示禁止の効果を発生させないものとなると解される。このように、同号ただし書イないしハは、同号本文によって不開示とされる情報から例外的に除外されるものを定めたものであるから、開示請求者がその適用を求めるべき規定である。したがって、同号ただし書イないしハ該当性については、開示を求める原告がこれに該当する事実を主張立証する責任を負うと解される。 (二) そこで、まず、原告は、本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分が情報公開法5条1号ただし書イに該当する旨主張するので検討する。 同号ただし書イは、①法令の規定により公にされている情報、例えば、登記簿に登記されている法人の役員に関する 印影」部分が情報公開法5条1号ただし書イに該当する旨主張するので検討する。 同号ただし書イは、①法令の規定により公にされている情報、例えば、登記簿に登記されている法人の役員に関する情報や不動産の権利関係に関する情報等や、②慣行として公にされている情報、例えば、叙勲者名簿、中央省庁の課長補佐担当職以上の者の職及び氏名等に関する情報等は、プライバシー侵害のおそれがあるとしても受忍すべき範囲にとどまるとして、例外的開示情報として規定したものと解される。 このように同号ただし書イにいう「慣行として公にされ」ているとは、慣習として、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていることをいうものと解されるところ、本件各支払決議書の「発議者」の氏名が公刊されている職員録等に掲載されていないことは当事者間に争いのない事実であり、また、他に、公衆に対してこれを公表する慣行、慣習があると認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分が同号ただし書イ所定の例外的開示情報に該当するということはできない。 (三) 次に、原告は、前記「発議者の印影」部分が情報公開法5条1号ただし書ハに該当する旨主張するので検討する。 同号ただし書イ及びハを読み合わせれば、同号ただし書ハは、公務員の職名と職務遂行の内容につき、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにする観点から、「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」を不開示情報から除外して、当該公務員の個人に関する情報としては不開示とはしないとする一方で、当該公務員の氏名は、これとは別に、非公務員の場合と区別することなく、同号ただし書イによ 内容に係る部分」を不開示情報から除外して、当該公務員の個人に関する情報としては不開示とはしないとする一方で、当該公務員の氏名は、これとは別に、非公務員の場合と区別することなく、同号ただし書イにより開示の是非を判断することとして規定していると解される。したがって、「当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」に「公務員の個人名」が含まれないことは明らかである。 そうすると、本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分が同号ただし書ハに該当するということはできない。 3 以上によれば、本件各支払決議書のうちの「発議者の印影」部分は、情報公開法5条1号本文の不開示情報に該当し、その例外を定める同号ただし書イ又はハには該当しないというべきであり、争点1に関する原告の主張は、いずれも理由がない。 二争点2(情報公開法5条4号における行政庁の裁量と同号の合憲性)について 1 争点3、5及び6の前提として判断する。 (一) 情報公開法5条4号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報として規定している。この規定は、公共の安全と秩序を維持することは、国民全体の基本的利益を擁護するために政府に課された重要な責務であり、これらの利益は十分に保護する必要があることから設けられた規定と解される。そして、同号のこのような立法趣旨及び「・・・支障を及ぼすおそれがある情報」という規定の仕方ではなく、「・・・と行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」という規定の仕方をしていることからすると、このような情報の開示・不開示の判断には、その性質上、犯罪等に 報」という規定の仕方ではなく、「・・・と行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」という規定の仕方をしていることからすると、このような情報の開示・不開示の判断には、その性質上、犯罪等に関する将来予測等についての専門的・技術的な情報と経験に基づく判断を要し、公共の安全と秩序の維持という国民全体の基本的利益を守るための高度の政策的判断を伴うことなどの特殊性があることから、同号は、行政庁に比較的広範な裁量権を付与したものと解される。そうすると、同号該当性の司法審査の場面においては、裁判所は、同号に該当する情報が記録されているかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断が合理性を持つものとして許容される限度のものであるかどうか、すなわち、当該処分に社会通念上著しく妥当性を欠くなどの裁量権の逸脱ないし濫用があると認められる点があるかを判断するという審査方法によるべきであると解される。そして、処分の取消訴訟においては、同号の該当性を否定する原告が、上記のような裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実を主張立証する責任を負うというべきである。 (二) この点に関する原告の主張は、知る権利のみを強調した上、情報公開法5条4号の立法趣旨及び文理解釈を離れた独自の見解をいうものであって、採用することができない。 2(一) 原告は、情報公開法5条4号が上記のような規定であるならば、憲法1条の規定する国民主権原理及び知る権利を保障した憲法21条1項に反し、違憲である旨主張する。 (二) しかし、知る権利という概念については、憲法上明文の規定はなく、それ自体抽象的な権利であって、憲法1条又は21条1項から行政機関に対する具体的な情報公開請求権を導き出すことはできないといわざるを得ない。したがって、公的情 念については、憲法上明文の規定はなく、それ自体抽象的な権利であって、憲法1条又は21条1項から行政機関に対する具体的な情報公開請求権を導き出すことはできないといわざるを得ない。したがって、公的情報に対する国民の具体的な公開請求権を認めるには、あくまでも実定法上の根拠が必要と解すべきである。そして、国民に対して情報公開請求権を付与するか否か、また、いかなる限度でどのような要件の下に付与するかなどは、いずれも立法政策の問題であり、具体的情報公開請求権の内容、範囲等は、実定法すなわち情報公開法の定めるところによるほかない。 ところで、情報公開法5条4号所定の「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」情報か否かの判断は、前示のとおり、その性質上、専門的・技術的情報や経験に基づく判断及び政策的判断を要することなどの特殊性が認められるため、司法審査の場においては、裁判所が同号に規定する情報に該当するかについての行政機関の長の第一次的判断が合理性を持つ判断として許容される限度のものであるか否かについて審査・判断するのが適当であることから、同号は、「・・・と行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」という文言により規定したと解されることは、前記のとおりである。 このように情報の開示・不開示の判断について行政庁に比較的広範な裁量権を付与するという立法政策が採られた理由である公共の安全と秩序の維持が政府に課された重要な責務であることは、憲法13条、25条、29条等の趣旨からも明らかであって、これを維持するための立法が合理的目的を有するといえることはいうまでもないところである。そして、同号の規定する情報の性質にかんがみると、同号 憲法13条、25条、29条等の趣旨からも明らかであって、これを維持するための立法が合理的目的を有するといえることはいうまでもないところである。そして、同号の規定する情報の性質にかんがみると、同号が上記目的を達成するために、不開示情報の判断につき行政庁に比較的広範な裁量権を与えたことは、合理性を有するといえる。また、前述した知る権利と情報公開請求権の性質に照らすと、情報公開法の創設に際し立法裁量が認められることも当然である。 以上によれば、情報公開法5条4号の規定は、憲法1条及び21条1項に反しないというべきである。 3 以上のとおりであり、争点2に関する原告の主張は、いずれも理由がない。 三争点3(本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分の情報公開法5条4号該当性)について 1 情報公開法5条4号該当性の司法審査の方法については、前記二1(一)において判示したとおりであり、原告が、同号該当性を認める相当の理由があるとする被告の判断について、裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける事実を主張立証すべき責任を負うことになる。以下、順次検討する。 2 証拠(甲4及び5の1、3、5)並びに弁論の全趣旨によると、被告は、本件各支払決議書は、テロ特措法に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油購入に関する支払決議書であり、それに記録された「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分には、当該油の購入先である者の住所及び氏名の記載が含まれており、これを開示すると、米軍等への協力支援に反対する者等によって、当該購入先の財産への侵害等の種々の妨害活動がされるおそれがあると判断して、情報公開法5条4号の該当性を肯定したことが認められる。 そして、証拠(甲1ないし4及び5の1 る者等によって、当該購入先の財産への侵害等の種々の妨害活動がされるおそれがあると判断して、情報公開法5条4号の該当性を肯定したことが認められる。 そして、証拠(甲1ないし4及び5の1、3、5)により認められる本件開示請求の内容並びに本件各支払決議書の性質及び記載内容によると、本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分に記載された情報は、被告の主張するとおりの油の購入先である者の住所及び氏名を含むと認めることができる。 また、本件において、(1)米軍等への協力支援活動を含むテロ特措法に基づく種々の活動が、我が国が国際社会の一員として果たすべき重要な任務であって、現在も行われていること、(2)しかも、他方、米軍等への協力支援について国内外に反対の意見を有する者が存在していることは、当事者間に争いがない。加えて、証拠(乙1ないし14、15の1ないし5)によると、(3)ペルシャ湾への自衛隊の掃海艇派遣前後や、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法制定前後、あるいは米軍等による攻撃開始前等の時期において、防衛庁関係者宅に対する時限発火装置による放火と疑われる事件や防衛庁に対する迫撃弾発射事件等が起きたこと、(4)成田空港第二期工事の設計を担当し、あるいは同空港でエネルギー関係の事業を行うなどの通常の商取引をしている会社等の民間企業をも対象とした事件も発生したことが認められる。これらを総合考慮すると、当該協力支援活動を行う自衛隊と通常の商行為として契約を締結している者を標的とした種々の妨害活動が行われる可能性があることは優に認めることができるというべきである。 そうだとすれば、被告が、本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分につき、当該情報を公にすることに れる可能性があることは優に認めることができるというべきである。 そうだとすれば、被告が、本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分につき、当該情報を公にすることにより、人の生命、身体、財産への不法な侵害等を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあると判断したことには、相当な理由があるということができる。他方、原告は、単に、憲法前文及び1条の国民主権並びに憲法21条1項の国民の知る権利を最も重視して、情報公開法5条4号該当性を判断しなければならないのに、被告は、これを無視し、単なる抽象的な危険の可能性のみをもって、同号該当性を肯定して不開示としたなどと主張するのみで、裁量権の逸脱又は濫用があったことを具体的に基礎付ける事実を的確に主張しておらず、本件の全証拠に照らしても、そのような裁量権の逸脱濫用を窺わせる事実を認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、裁量権の逸脱又は濫用を認めることはできない。 3 以上のとおりであるから、本件各支払決議書のうちの「受取人住所」及び「受取人氏名」の各部分は、情報公開法5条4号の不開示情報に該当するというべきであり、争点3に関する原告の主張は、理由がない。 四争点4(本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分の情報公開法5条2号イ該当性)について 1 情報公開法5条2号イは、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は不開示とする旨規定している。これは、法人等に関する情報には、営業秘密等、開示すると当該法人等の権利利益を害するおそれのあるものがあるが、原則として法人等が有する正当な権利利益 おそれがあるもの」は不開示とする旨規定している。これは、法人等に関する情報には、営業秘密等、開示すると当該法人等の権利利益を害するおそれのあるものがあるが、原則として法人等が有する正当な権利利益は、開示することにより害されるべきではないという考え方に基づき規定されたものであって、「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」の有無は、その情報の性格や法人等の性格等に応じて判断されるべきであると解される。 一般に、法人等の振込先金融機関名、預金種目、口座番号等は、いわゆる内部管理情報として秘密にしておくことが是認され、これらの内部管理情報につき、当該法人等は、開示の可否及びその範囲を自ら決定することのできる権利ないしそれを自己の意思によらないでみだりに他に開示、公表されない利益を有しているというべきである。また、上記のような金融情報は、第三者に知られることによって、悪用され、当該法人等の金融上の営業秘密等が流出してしまうおそれもあるというべきである。一般的な飲食業者等のように、不特定多数の者が新規にその顧客となり得、通常、自らの口座番号等が多くの顧客に広く知られることを容認し、当該顧客を介してこれが更に広く知られ得る状態に置いているような事情が存在するといった場合は、例外と考えるべきであるが、そのような例外を除けば、上記のような金融情報は一般的に十分保護されるべきものである。 したがって、法人等の振込先金融機関名、預金種目、口座番号等を含む情報は、情報公開法5条2号イの「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するというべきである。 2 これを本件についてみると、被告は、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分には、テロ特措法に基づく米英艦艇に おそれがあるもの」に該当するというべきである。 2 これを本件についてみると、被告は、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分には、テロ特措法に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油の購入先である法人等の振込銀行名、預金種目及び口座番号の記載が含まれていると主張するところ、証拠(甲1ないし4及び5の2、4、6)により認められる本件開示請求の内容並びに本件各請求兼領収書の性質及び記載内容によれば、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分に記載された情報は、被告の主張するとおりのものであると認めることができる。 そして、本件各請求兼領収書(甲5の2、4、6)の内容からすると、被告にこれを提出したのは、海上自衛隊に対し艦艇用軽油1857.819キロリットル(9472万9800円相当)、1万2465.79キロリットル(6億3580万2744円相当)及び5万0855.3キロリットル(15億8270万円相当)を売り渡した法人であり、このような大規模な油の販売等を行う業者は、前記のような一般的な飲食業者等のように、振込銀行名並びに預金種目及び口座番号が第三者に知られることを一般に容認しているとは考え難く、前記のような例外的事情を認めるに足りる証拠もない。 そうすると、上記情報は、開示されるべきものではないということができる。したがって、前記「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分は、情報公開法5条2号本文所定の「法人等」に関する情報であり、かつ、同号イにいう「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するということができる。 これに対し、原告は、法人等の振込先金融機関名や預金種目、口座番号等は、何ら営業上の秘密やノウハウ 競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するということができる。 これに対し、原告は、法人等の振込先金融機関名や預金種目、口座番号等は、何ら営業上の秘密やノウハウに当たらないので、これらの記載部分は、同号イに該当しない旨主張するが、既に検討したとおり、このような主張は、採用することができない。 3 なお、原告は、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分の不開示理由について、被告が法人等の公表されない利益を保護することを理由に不開示とするのであれば、情報公開法5条2号ロ該当性を処分理由とし、かつ、訴訟上主張立証しなければならない旨主張する。しかし、被告は、上記部分の不開示理由として同号イ該当性を主張立証しているのであって、同号ロ該当性を主張していないのであるから、原告の上記主張について検討する必要はない。 4 以上によれば、本件各請求兼領収書のうち「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分は、情報公開法5条2号イの不開示情報に該当するというべきであり、争点4に関する原告の主張は、いずれも理由がない。 五争点5(不開示理由の追加的主張の可否並びに本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分の情報公開法5条4号該当性)について 1 本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分については、前示のとおり、情報公開法5条2号イに該当すると認めることができるので、同条4号該当の有無にかかわらず、本件一部不開示決定のうち、同部分を不開示とした部分は、適法である。そうすると、必ずしも、同条4号該当性の有無を判断する必要はないが、訴訟の経緯にかんがみ、念のためこれを検討することとする。 2 行政手続法8条1 、同部分を不開示とした部分は、適法である。そうすると、必ずしも、同条4号該当性の有無を判断する必要はないが、訴訟の経緯にかんがみ、念のためこれを検討することとする。 2 行政手続法8条1項の趣旨は、許認可の申請に対して行政庁が拒否処分をする場合に、行政庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、申請者に争訟(不服申立て、訴訟)の提起の便宜を図るため、拒否処分と同時に処分理由を申請者に示すことを行政庁に義務付けることにある。そして、情報公開法9条2項においても、不開示決定をする場合には、「その旨を書面により通知しなければならない」と規定しており、この通知を行う際には、行政手続法8条に基づく理由の提示及び行政不服審査法57条に基づく教示を行うことが必要であると解される。 したがって、情報公開法に基づく不開示決定においても、行政庁の不開示決定の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、申請者に争訟の提起の便宜を図る程度に理由が付記されていれば、行政手続法8条1項の要請する理由付記としては必要かつ十分であって、同項を受けて、不開示決定の通知に併せてその理由を通知するよう要請する情報公開法9条2項の定めが、通知書に一度理由を付記した以上、実施機関が当該理由以外の理由を不開示決定の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨を含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である(最高裁平成11年11月19日第二小法廷判決、民集53巻8号1862頁も同旨と解される。)。また、一つの情報が複数の不開示情報に該当する場合に、そのすべての理由の提示が常に必要であるとすると、行政庁として、明らかな不開示事由が既にあると判断したときでも、他の不開示事由の存否をすべて検討し、存在する事由すべてを記載すべき に該当する場合に、そのすべての理由の提示が常に必要であるとすると、行政庁として、明らかな不開示事由が既にあると判断したときでも、他の不開示事由の存否をすべて検討し、存在する事由すべてを記載すべきことになる。そうすると、その検討に時間を要するために決定が遅れ、また、複雑な決定書になったり、争いを拡大することにもなりかねないが、情報公開法がこのような事態を予定しているとは考え難い。 以上のとおりであるから、被告が、本件一部不開示決定の通知書に付記されていなかった理由を訴訟において新たに追加して主張することは、許されるというべきである。 これと異なる原告の主張は、採用することができない。 3 情報公開法5条4号該当性の司法審査の方法については、既に判示したとおりであり、原告が、同号該当性を認める相当の理由があるとする被告の判断について裁量権の逸脱又は濫用があることを基礎付ける事実を主張立証すべき責任を負うことになるので、以下、順次検討する。 証拠(甲5の2、4、6)及び弁論の全趣旨によると、被告は、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分には、テロ特措法に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油の購入先である法人等の振込銀行名、預金種目及び口座番号の記載が含まれており、これを開示すると、当該法人等の名称が明らかになるおそれが大きいため、米軍等への協力支援に反対する者等によって、当該購入先への不法な財産侵害等の妨害活動がされるおそれがあるから、情報公開法5条4号にも該当すると判断していることが認められる。 そして、証拠(甲1ないし4及び5の2、4、6)により認められる本件開示請求の内容並びに本件各請求兼領収書の性質及び記載内容によると、本件各請求兼領収書 と判断していることが認められる。 そして、証拠(甲1ないし4及び5の2、4、6)により認められる本件開示請求の内容並びに本件各請求兼領収書の性質及び記載内容によると、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分に記載された情報は、被告の主張するとおりのものであると認めることができ、これらが開示されると、当該口座種別番号等から当該法人等の名称が明らかになるおそれがあるということができる。 そうすると、争点3について判断したのと同様に、被告が、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分については、当該情報を公にすることにより、人の生命、身体、財産への不法な侵害等を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあると判断したことには、相当な理由があるということができる。他方、原告は、単に、憲法前文及び1条の国民主権並びに憲法21条1項の国民の知る権利を最も重視して、同号該当性を判断すべきところ、被告はこれを怠ったなどと主張するだけで、被告の判断について裁量権の逸脱又は濫用があったことを具体的に基礎付ける事実を的確に主張しておらず、本件の全証拠に照らしても、そのような裁量権の逸脱濫用を窺わせる事実を認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、裁量権の逸脱又は濫用を認めることはできない。 4 以上のとおりであるから、本件各請求兼領収書のうちの「振込銀行名」及び「口座種別番号」の各部分は、情報公開法5条4号の不開示情報にも該当するというべきであり、争点5に関する原告の主張は、いずれも理由がない。 六争点6(本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分の情報公開法5条4号該当性)について 1 証拠(甲5の2、 ずれも理由がない。 六争点6(本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分の情報公開法5条4号該当性)について 1 証拠(甲5の2、4、6)及び弁論の全趣旨によると、被告は、本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分には、テロ特措法に基づく米英艦艇に対する燃料補給のための油の購入先である法人等の住所及び名称の記載が含まれており、これを開示すると、米軍等への協力支援に反対する者等によって、当該購入先の財産への侵害等の種々の妨害活動がされるおそれがあるとして、情報公開法5条4号該当と判断したことが認められる。 そして、証拠(甲1ないし4及び5の2、4、6)により認められる本件開示請求の内容並びに本件各請求兼領収書の性質及び記載内容によれば、本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分に記載された情報は、被告の主張するとおりのものであると認めることができる。 そうすると、既に争点3及び5について判断したことがそのまま当てはまり、本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」及び「口座主名」の各部分につき、当該情報を公にすることにより、人の生命、身体、財産への不法な侵害等を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあるとした被告の判断には相当な理由があるということができる。他方、原告は、単に、被告は憲法前文、1条及び憲法21条1項に違反しており、裁量権の逸脱濫用の違法があるなどと主張するのみで、被告の判断について裁量権の逸脱又は濫用があったことを具体的に基礎付ける事実を的確に主張しておらず、本件の全証拠に照らしても、そのような しており、裁量権の逸脱濫用の違法があるなどと主張するのみで、被告の判断について裁量権の逸脱又は濫用があったことを具体的に基礎付ける事実を的確に主張しておらず、本件の全証拠に照らしても、そのような裁量権の逸脱濫用を窺わせる事実を認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、裁量権の逸脱又は濫用を認めることはできない。なお、既に検討してきたところ(争点3及び5に対する判断を含む。)に照らせば、前記各部分の同号該当性を認めることが憲法前文、1条及び21条1項に違反するものではない。 2 以上によれば、本件各請求兼領収書のうちの「請求者名」、「請求者の印影」、「口座主住所」、及び「口座主名」の各部分は、情報公開法5条4号の不開示情報に該当するというべきであり、争点6に関する原告の主張は、いずれも理由がない。 七以上によれば、本件一部不開示決定は、適法であるというべきである。 八よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官菅野博之裁判官本村洋平裁判官小田靖子は、差し支えにつき、署名押印することができない。 裁判長裁判官菅野博之

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