平成16(わ)608 窃盗被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年10月13日 神戸地方裁判所
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判決文本文3,540 文字)

主文 被告人を懲役2年に処する。 この裁判の確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人は,平成16年5月27日午前10時ころ,神戸市a区b町c丁目d番e号所在のA株式会社駐車場において,同所に駐車中の普通貨物自動車(軽四)内から,Bが管理する現金約261万6920円,小切手23枚(額面合計82万1835円)及び預金通帳5冊等41点在中のかばん2個(物品時価合計4万3000円相当)を窃取した。 (証拠の標目)省略(弁護人の主張に対する判断) 1 弁護人は,被告人が公訴事実記載の日時ころ,同記載の普通貨物自動車(軽四)内からかばん2個を持ち出した事実は認めるが,被告人は氏名不詳の5人の男に強要され,反抗を抑圧された状態でしたものであるから,期待可能性が無く,無罪であると主張するので,以下,検討する。 2 被告人は,捜査・公判を通じ,ほぼ一貫して,以下のとおり供述している。 すなわち,被告人は,平成16年5月27日午前9時過ぎころ,神戸市a区b町c丁目f番付近の堤防で魚釣りをしていたところ,50歳代の男から突然話しかけられるうち,同人を含む5名の男に取り囲まれ,そのうちの30代位の男から,「財布を出せ。」と脅され,財布を出すと,その中から運転免許証を取り出され,住所等をメモされた上,さらに,携帯電話等も取り上げられ,「お前,住所控えてるんやぞ。」,「家探しに行ってもええねんぞ。」などと脅され,命令に従うよう強制された。そして,20歳代後半の男から,付いてくるよう言われ,本件現場の駐車場まで連れて行かれると,そこに,白の軽四ボックスカーが1台だけ止まっていた。その後,さらに,10ないし15分位,辺りを行き来して 。そして,20歳代後半の男から,付いてくるよう言われ,本件現場の駐車場まで連れて行かれると,そこに,白の軽四ボックスカーが1台だけ止まっていた。その後,さらに,10ないし15分位,辺りを行き来していたが,その男に言われるままに,上記の自動車を見に行き,中にかばんが2つあることを確認して,男に報告した。すると,その男は,「車のすぐ側に消火器があるから,それで窓割って,取ってこいや。」と言うので,その男の言うままにすることにした。車の側まで行ってみると,駐車場の隅っこに消火器があったので,これを取り上げ,車の運転席のドアのガラスを消火器の底で思い切り2回叩きつけたが割れなかったので,その後ろの窓ガラスを割り,そこから手を入れてドアの鍵を開け,助手席におかれた2つのかばんを取り出した。それを,駐車場の前の道路で待っていた男に渡そうとすると,「お前の車のところまで持っていけ。」と言われ,私の車の前で男にかばんを渡すと,男は,私から取り上げていた財布や携帯電話を路上に放り投げ,私がそれを拾っているうちに,姿を消した,というのである。 3 そうすると,被告人の述べることを前提としても,被告人が,5人の男に囲まれて脅された時点ではともかく,その後は,一人の男に従って行動し,現場付近を何回も行ったり来たりしていたというのであるから,隙を見て逃げ出すことも十分できたはずであり,住所を控えられていることを心配したとしても,すぐに警察に通報して保護を受けることも可能であったと認められる。そうすると,被告人は,本件窃盗を回避することができたことは明らかであるから,弁護人の主張は理由がない。 4 しかし,弁護人の主張にかんがみ,更に検討する。 被告人の供述内容は前記のとおりであり,おおむね一貫していて,明らかに不合理とまでいえるような点はない。また,関係各証 人の主張は理由がない。 4 しかし,弁護人の主張にかんがみ,更に検討する。 被告人の供述内容は前記のとおりであり,おおむね一貫していて,明らかに不合理とまでいえるような点はない。また,関係各証拠によれば,被告人は,本件犯行後,その当日に妻に犯行を打ち明け,翌日には,父の会社の事務員と父に話をし,そのまま父に伴われてC警察署に出頭しており,その経過に格別不自然なところはないこと,被告人が使用していた携帯電話の解析によっても,被告人が,不審な人物と連絡を取るなど,事件の共謀をうかがわせるような事情はないこと,それにもかかわらず,被告人の周辺からは被害品等,本件との関係を示すような証拠は発見されていないことなど,被告人の供述と矛盾しない事実関係も認められる。 一方,本件当時,①被害車両の前にもう1台の自動車が止まっていたか否か,②被害者Bが,被害車両から離れた時間がどの程度であったかなど,被告人の供述と被害者の供述の間に食い違いのある点もある。そして,①の点については,犯行直後である当日の午前10時40分ころから撮影された写真撮影報告書には,被害車両の前にもう1台の自動車が停車している状況が撮影されているだけでなく,証人Dの供述及び捜査報告書によって一応裏付けられており,また,証人Bが,これらの点について特に事実と異なる供述をする理由はうかがえないことからすると,少なくとも,①の点については,被害車両の前にもう1台の自動車が停車していたと考える方が自然である。しかし,逆に,被告人が自らの意思で本件犯行をしたとしても,上記①,②の点について,ことさら虚偽の供述をしなければならない理由も見当たらず,これらの食い違いは,完全に解明されているとはいえない。 他方,被告人の供述によれば,5名もの男が現場付近に集まって被告人を脅迫し,その後, とさら虚偽の供述をしなければならない理由も見当たらず,これらの食い違いは,完全に解明されているとはいえない。 他方,被告人の供述によれば,5名もの男が現場付近に集まって被告人を脅迫し,その後,そのうちの1名と被告人が,相当長時間にわたって現場付近を行き来していたというのであるが,現場付近は,工場や事務所が密集する市街地であって,午前10時前後という時間帯を考えると,人目に付く蓋然性の高い状況ということができる。しかし,関係全証拠によっても,本件当日の午前8時30分ころ,午前9時30分ころ及び午前9時53分ころ,それぞれ,本件現場から少し離れた場所で,見慣れない自動車が駐車していたり,若い男が2人座り込んでいたことが目撃されているが,そのことと本件との関係は全く明らかでなく,他に,被告人が述べるような事実の存在をうかがわせるに足りる客観的証拠は存しない。 そうすると,結局,本件の事実関係に解明が尽されていない点があることを考慮しても,被告人が供述するような事実の不存在について,合理的な疑いがあるとまではいうことができない。 (法令の適用)罰条刑法235条執行猶予刑法25条1項訴訟費用刑事訴訟法181条1項本文(量刑の理由)本件は,自動車の窓ガラスを消火器を用いて割った上,その中にあった260万円以上の現金等が入ったかばんを盗み去ったというものであり,その犯行態様が手荒いこと,被害結果も甚大であることなどの事情に照らすと,まことに悪質な犯行というほかない。 しかしながら,本件の立証上,上記のとおり被告人が供述するような事情の不存在について,合理的な疑いがあるとまではいえないが,本件犯行を被告人が単独でしたとするには不自然な点があり,他方,共犯者の存在をうか ながら,本件の立証上,上記のとおり被告人が供述するような事情の不存在について,合理的な疑いがあるとまではいえないが,本件犯行を被告人が単独でしたとするには不自然な点があり,他方,共犯者の存在をうかがわせるような証拠もなく,結局,いまだに解明されていない点があることは否定できず,この点は,量刑に当たって,考慮せざるを得ない。さらに,被告人は,かばんを持ち去ったこと自体は認め,安易にこのような犯行をしたことを反省していること,本件犯行の翌日に自ら警察に出頭し,犯行を申告して自首していること,被告人には,少年時代の平成9年に窃盗(車上狙い)の前歴がある他は一般前科,前歴はないこと,結婚して1子をもうけ,父の事業を手伝うなどして相応の社会生活を営んでいることに加え,現時点では受け取りは拒否されたものの,被告人の父が,被害会社に100万円を持参し,示談交渉をするなど,被害弁償の意向を示していることなど,酌むべき情状も認められる。 そこで,これらの事情を総合考慮し,被告人に対し,刑の執行を猶予することとした。 (求刑懲役2年)平成16年10月13日神戸地方裁判所第4刑事部裁判官笹野明義

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