令和3年12月2日判決言渡令和3年(行コ)第74号懲戒処分取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和元年(行ウ)第174号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 処分行政庁が令和元年6日6日付けで控訴人に対してした税理士業務の禁止の処分を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 税理士である控訴人は,東京都新宿区(住所省略)に本店を置く株式会社Aの平成25年4月から平成26年3月までの事業年度(以下「平成26年3月期」という。)の法人税の申告に当たり,Aの関与税理士であったB(横浜市に事務所を置く税理士。以下「B税理士」という。)からAの所得金額を圧縮することの相談を受け,Aの代表取締役であった亡C(平成26年▲月▲日死亡。)がAに対する貸付金債権のうち4億1300万円について生前に債権放棄していたにもかかわらず,債権放棄額を3億円に減額した債権放棄通知書を作成し,Aの債務免除益を1億1300万円減少させることによって,その相談に応じたが,その行為は税理士法36条,45条1項(平成26年法律第10号による改正前のもの)の規定に該当するとして,処分行政庁から,令和元年6月6日付けで,税理士業務の禁止の処分(以下「本件処分」という。)を受けた。 本件は,控訴人が,控訴人の行為は税理士法36条が禁止する脱税に関する 「相談」に当たらないから本件処分は違法であるなどと主張して,被控訴人を相手に,本件処分の取消しを求める事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却したので,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。 2 関係法令等の定め,前提事実,争点及 などと主張して,被控訴人を相手に,本件処分の取消しを求める事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却したので,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。 2 関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点についての当事者の主張は,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1から4までに記載のとおりであるから,これを引用する(当審における当事者の主張は,適宜,原審における当事者の主張に加える。)。ただし,原判決を次のとおり補正する。 原判決4頁25行目及び5頁3行目の「第1債権放棄通知書」をいずれも「後記第1債権放棄通知書のひな型」と,5頁4行目の「Aを含む」を「A,D株式会社及び株式会社Eを含む」と,9行目の「債務免除」を「債権放棄(債務免除)(以下「債務免除」という。」とそれぞれ改め,10行目の「債権放棄通知書(以下「第1債権放棄通知書」という。)」の次に「のひな型」を加え,11行目から12行目にかけての「同データファイルを印刷したものをFに交付した」を「Fに対し,同データファイルを印刷した第1債権放棄通知書のひな型を交付して,これに亡Cから押印をもらうよう依頼した」と,13行目の「第1債権放棄通知書に」を「第1債権放棄通知書のひな型に」と,18行目の「第2債権放棄通知書」を「後記第2債権放棄通知書のひな型」と,26行目の「第2債権放棄通知書」を「後記第2債権放棄通知書等のひな型」とそれぞれ改める。 原判決5頁21行目の「打合せ」の次に「(以下「本件打合せ」という。)」を加え,24行目から25行目にかけての「が,これが生じないようにしてほしい。」旨言われ,これに応じることとした。」を「。」旨言われた(その際の控訴人とB税理士らとのやりとりについては争いがある。)。」と改める。 原判決6頁1行目の冒頭に「」を加え, ようにしてほしい。」旨言われ,これに応じることとした。」を「。」旨言われた(その際の控訴人とB税理士らとのやりとりについては争いがある。)。」と改める。 原判決6頁1行目の冒頭に「」を加え,2行目から3行目にかけての「債権放棄通知書(以下「第2債権放棄通知書」という。)」の次に「のひな型」 を加え,4行目から5行目にかけての「同データファイルを印刷したものをFに交付した上」を「Fに対し,同データファイルを印刷した第2債権放棄通知書のひな型を交付して,これに亡Cの印章を押印するよう依頼するとともに」と改め,5行目の次に改行して次のとおり加える。 「控訴人は,平成26年6月4日,亡CがDに対する貸付金債権のうち7億3400万円について債務免除する旨の同年2月7日付けの債権放棄通知書のひな型と,亡CがEに対する貸付金債権のうち3億1700万円について債務免除する旨の同年2月7日付けの債権放棄通知書のひな型の各データファイルを作成し,同年6月12日,Fに対し,上記各データファイルを印刷した債権放棄通知書のひな型を交付して,これらに亡Cの印章を押印するよう依頼した(乙1)。」原判決6頁8行目の「申告書を」の次に「,①亡CのAに対する債務免除額が3億円であること,②亡CがDに対する貸付金債権のうち7億3400万円について同年2月7日付けで債務免除したこと,③亡CがEに対する貸付金債権のうち3億1700万円について同年2月7日付けで債務免除したことを前提とした内容で」を,9行目の「提出した」の次に「(乙1)」をそれぞれ加える原判決8頁20行目の次に改行して次のとおり加え,21行目の「ア」,9頁12行目の「イ」,19行目の「ウ」を,それぞれ「イ」,「ウ」,「エ」と改め,23行目の「上記ア及びイ」を「上記イ及びウ」と改め 原判決8頁20行目の次に改行して次のとおり加え,21行目の「ア」,9頁12行目の「イ」,19行目の「ウ」を,それぞれ「イ」,「ウ」,「エ」と改め,23行目の「上記ア及びイ」を「上記イ及びウ」と改め,10頁5行目の「上記ア」を「上記イ」と改める。 「ア本件打合せの際の控訴人とB税理士らとのやりとり 本件打合せにおいて,FがB税理士に電話連絡した際,控訴人は,B税理士から,「今期,Aに8000万円程度の利益が出る。繰越欠損金4億1300万円全額を債務免除すれば,利益が出て税金を払わなければならない。会社にお金もない。組合対策があるので,会長から 「利益を出すな」と指示されてました。利益が出ないようにしてください。」と言われた(なお,上記の会長とは亡Cのことである。)。 控訴人は,Fに対し,上記の電話連絡の内容を伝えた上,「8000万円が概算なので,念のため1億円ほど残しますか。端数を切り捨て,キリのよいところ3億円にしましょうか。」と告げたところ,Fから「それでお願いします。」との返答を得た。 控訴人は,上記のやりとりを踏まえ,亡CのAに対する貸付金のうち,債務免除額を4億1300万円から3億円に変更して債権放棄通知書を改めて作成することとした。」 原判決10頁18行目の次に改行して次のとおり加える。 「ア本件打合せの際の控訴人とB税理士らとのやりとり被控訴人主張アは争う。 本件打合せに際し,B税理士は,電話で,控訴人に対し,「今期,Aに8000万円程度の利益が出る。繰越欠損金4億1300万円全額を債務免除すれば,利益が出て税金を払わなければならない。」,「利益が出ないようにしてください。」と言って,亡CのAに対する債権放棄額を減らすよう指示してきた。 る。繰越欠損金4億1300万円全額を債務免除すれば,利益が出て税金を払わなければならない。」,「利益が出ないようにしてください。」と言って,亡CのAに対する債権放棄額を減らすよう指示してきた。 これを受け,控訴人は,自らの依頼者であるFに対し,相続税の節約額の方が法人税の節約額より多いことを説明して,亡CのAに対する債権放棄額を減らすことに反対した。すなわち,控訴人は,Fに対し,「亡Cの債権放棄額を3億円に減額することは,当初債権放棄していたAに対する貸付金1億1300万円を相続財産に戻し入れることになり,その結果として相続税を増加させることになる。」,「相続税の税率を50%として相続税額を5650万円増加させることになる。」と具体的に説明し,B税理士の指示には反対である旨を告げた。 しかし,F及びB税理士は,控訴人に対し,「労働組合対策のため,Aに課税所得が生じないようにすることは亡Cの遺言です。 絶対に守らなければならない。」と言い,さらに,Fは,「Aの法人税は5月末までに納付しなければならないとB先生(B税理士のこと)から言われていますが,Aには資力がなく,借入れもできません。相続税の支払には時間的に余裕があり,個人で借入れもできます。」,「全責任は私がとります。」と言って,控訴人の反対に耳を貸そうとしなかったのである。 原判決10頁19行目冒頭の「ア」を「イ」と改め,11頁7行目の次に改行して次のとおり加え,8行目の「イまた,」を「ウまた,前記アのとおり,」と改める。 「税理士法45条は,税理士が,真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき,又は同法36条の規定に違反する行為をしたときに,懲戒処分をすることができると規定している。これは,同法2条が「他人の求めに応じ」て,「 真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき,又は同法36条の規定に違反する行為をしたときに,懲戒処分をすることができると規定している。これは,同法2条が「他人の求めに応じ」て,「税務代理」,「税務書類の作成」及び「税務相談」を行うことを税理士業務と定義していることに対応するものであると解される。つまり,同法45条は,税務の専門家である税理士が,同法2条により独占的に行うことを認められた税理士業務全般において,納税義務の適正な実現を害する事態を生じさせた場合には,財務大臣は当該税理士に対して懲戒処分を科すことができるとしたのである。 そうすると,同法2条は,税理士業務を上記のように「他人の求めに応じ」て行うものであると定義するのであるから,税理士に対する懲戒処分は,当該税理士が納税義務者から税務代理,税務申告書類の作成又は税務相談を具体的に「求め」られた場合,すなわち,当該税理士が納税義務者と同法2条に規定された税理士業務に係る税務上の契約関係 (以下「税務上の契約関係」という。)にある場合にのみ科されることがあると解すべきである。 実質的に考えても,税理士が,税務上の契約関係がないにもかかわらず,脱税相談に応じ,これによって,納税義務の適正な実現を害する事態を生じさせることは考え難い。なぜなら,税務上の契約関係がない者に対して税の逋脱の方法を教示するということは,当該税理士にとってみれば,税務上の否認や懲戒のリスクをとりながら,これに対する報酬対価等の一切のメリットを伴わないことになるからである。 Aの法人税申告について何らの税務上の契約関係もない控訴人が,Aの債務免除益を減少させることは不可能である。 Aの債務免除益の減少なるものは,①Aから法人税申告の税務代理を受任 Aの法人税申告について何らの税務上の契約関係もない控訴人が,Aの債務免除益を減少させることは不可能である。 Aの債務免除益の減少なるものは,①Aから法人税申告の税務代理を受任しているB税理士が,税務仕訳を行い,法人税の申告書を提出すること,②法人税申告時点においてAの実質的代表者になっていたFが債務免除益の減少を承認することによって行われ得るものである。 ①については,税務の専門家であるB税理士の判断と責任において行われたことであり,控訴人には何らの関係もないのであるから,Aの法人税申告について税務代理を受任しているB税理士が行った税務仕訳及び法人税申告について,控訴人が税理士としての責任を問われることはあり得ない。 ②については,Fが判断したことであり,控訴人には何らの関係も責任もない。」原判決11頁11行目から25行目までを次のとおり改める。 「エ東京国税局は,平成28年頃に行った亡Cの相続税申告に係る税務調査の際,亡CのAに対する債務免除額を3億円のままにするよう指示し,Aの債務免除益を3億円とすることを東京国税局の職権と責任において承認した。そのため,B税理士が作成したAの法人税の申告書 は真正の事実に反するものではない。それゆえ,Aから法人税の申告の税務代理を受任していたB税理士が税理士としての責任を問われることはない。Aから法人税の申告の税務代理を受任していたB税理士において,税理士としての責任がない以上,Aとは税務上の契約関係に一切ない控訴人において,Aの法人税の申告について税理士としての責任を問われることはない。 G税務署長が,亡Cが生前に承認した行為を基礎にして相続税の申告書を作り直し,相続税額を減額・還付する更正処分を行ったことにより 告について税理士としての責任を問われることはない。 G税務署長が,亡Cが生前に承認した行為を基礎にして相続税の申告書を作り直し,相続税額を減額・還付する更正処分を行ったことにより,控訴人が作成した相続税の申告書は税務上減額更正を受けた。そのため,控訴人が相続税の申告について税理士としての責任を問われることはない。 オ前記アのとおり,相続税の申告の税務代理をFら相続人から受任していた控訴人は,Fら相続人の相続税額が増えるため,債権放棄額の減額に反対していたのであるから,本件処分において処分理由とされた事実は存在しない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も控訴人の請求は棄却すべきものと判断するが,その理由は原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり補正する。 原判決14頁13行目及び17行目の「Aを含む」をいずれも「A,D及びEを含む」と,25行目及び26行目の「第1債権放棄通知書」をいずれも「第1債権放棄通知書のひな型」と,それぞれ改める。 原判決15頁6行目の「債権放棄通知書」,8行目の「(第1債権放棄通知書)」,9行目及び11行目の「第1債権放棄通知書」,11行目及び14行目の「各債権放棄通知書」並びに19行目の「第2債権放棄通知書」の次にいずれも「のひな型」を加える。 原判決16頁11行目の「第2債権放棄通知書」を「第2債権放棄通知書等のひな型」と改め,14行目の「(第2債権放棄通知書)」の次に「のひな型」を加え,16行目から17行目にかけての「第2債権放棄通知書のデータファイルを印刷したものを交付するとともに」を「同データファイルを印刷した第2債権放棄通知書のひな型を交付して,これに 「のひな型」を加え,16行目から17行目にかけての「第2債権放棄通知書のデータファイルを印刷したものを交付するとともに」を「同データファイルを印刷した第2債権放棄通知書のひな型を交付して,これに亡Cの印章を押印するよう依頼するとともに」と改め,18行目の「持って」の次に「亡Cの印章を」を加え,18行目の次に改行して次のとおり加える。 「 また,控訴人は,平成26年6月4日,亡CがDに対する貸付金債権のうち7億3400万円について債務免除する旨の同年2月7日付けの債権放棄通知書のひな型と,亡CがEに対する貸付金債権のうち3億1700万円について債務免除する旨の同年2月7日付けの債権放棄通知書のひな型の各データファイルを作成し,同年6月12日,Fに対し,上記各データファイルを印刷した債権放棄通知書のひな型を交付して,これらに亡Cの印章を押印するよう依頼した(乙1)。 ウ亡Cに係る相続税申告」原判決16頁24行目の「申告書を」の次に「,①亡CのAに対する債務免除額が3億円であること,②亡CがDに対する貸付金債権のうち7億3400万円について同年2月7日付けで債務免除したこと,③亡CがEに対する貸付金債権のうち3億1700万円について同年2月7日付けで債務免除したことを前提とした内容で」を加え,26行目を削除する。 原判決17頁2行目の「第2債権放棄通知書」の次に「のひな型のデータファイルを印刷したもの」を加え,21行目の「H税務署」を「H税務署長」と改める。 原判決17頁25行目の「(本件記録書の証拠能力について)」を削除し,25行目の次に改行して次のとおり加える。 「本件記録書の証拠能力について」 原判決19頁5行目の次に改行して次のとおり加える。 「本件打合せの際の控訴人とB税理 」を削除し,25行目の次に改行して次のとおり加える。 「本件記録書の証拠能力について」 原判決19頁5行目の次に改行して次のとおり加える。 「本件打合せの際の控訴人とB税理士らとのやりとり控訴人は,本件打合せの際のやりとりについて,B税理士から指示を受けたもので,控訴人はFら相続人の相続税額が増えるため債権放棄額の減額に反対したと主張し,控訴人が平成31年4月3日付けで作成して処分行政庁に提出した陳述書(甲5)には上記主張に沿う記載が存在する。 しかしながら,証拠(乙1)によれば,控訴人は,平成30年4月16日の大阪国税局における質問検査において,「B税理士から,「今期,Aに8000万円程度の利益が出る。繰越欠損金4億1300万円全額を債務免除すれば,利益が出て税金を払わなければならない。会社にお金もない。組合対策があるので,会長から「利益を出すな」と指示されてました。利益ができないようにしてください。」と言われました。この話の内容は,Fさんにも伝え,私は,『納税となれば会社は回らない。 会社を潰せば従業員たちが路頭に迷うので潰せない。』と思い,Fさんに「8000万円が概算なので,念のため1億円ほど残しますか。端数を切り捨て,きりのよいところで3億円にしましょうか。」と話したところ,「それでお願いします。」との返答がありました。この電話で,B税理士に,「3億円にしときます。」と話したら,「わかりました。」と返答がありました。」(乙1の9頁~10頁)と説明したことが認められ,上記陳述書の記載は,上記説明に照らし,信用できない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」原判決20頁11行目の「第1債権放棄通知書」の次に「のひな型」を加え,26行目の次に改行して次のとおり加える し,信用できない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」原判決20頁11行目の「第1債権放棄通知書」の次に「のひな型」を加え,26行目の次に改行して次のとおり加える。 「 なお,控訴人は,第2債権放棄通知書のひな型を作成したにすぎず,同ひな型に亡Cの印章を押印して第2債権放棄通知書を完成させたものでは ないが,控訴人において,亡CのAに対する債務免除額を3億円に変更することを提案し,同提案を実現するために,第2債権放棄通知書のひな型を作成してFに交付して,これに亡Cの印章を押印するよう依頼し,Fにおいて,その依頼に応じて,第2債権放棄通知書のひな型に亡Cの印章を押印して第2債権放棄通知書を完成させているのであるから,控訴人は,Fと共同して,第2債権放棄通知書を作成したものといえる。」 原判決22頁2行目の次に改行して次のとおり加える。 「 控訴人は,税理士法45条は,税務の専門家である税理士が,同法2条により独占的に行うことを認められた税理士業務全般において,納税義務の適正な実現を害する事態を生じさせた場合には,財務大臣は当該税理士に対して懲戒処分を科すことができるとしたものであるところ,同法2条は,税理士業務を上記のように「他人の求めに応じ」て行うものであると定義するのであるから,税理士に対する懲戒処分は,当該税理士が納税義務者から税務代理,税務申告書類の作成又は税務相談を具体的に「求め」られた場合,すなわち,当該税理士が納税義務者と同法2条に規定された税理士業務に係る税務上の契約関係(税務上の契約関係)にある場合にのみ科されることがあると解すべきであり,実質的に考えても,税務上の契約関係がない者に対して税の逋脱の方法を教示するということは,当該税理士にとってみれば,税務上の (税務上の契約関係)にある場合にのみ科されることがあると解すべきであり,実質的に考えても,税務上の契約関係がない者に対して税の逋脱の方法を教示するということは,当該税理士にとってみれば,税務上の否認や懲戒のリスクをとりながら,これに対する報酬対価等の一切のメリットを伴わないことになるから,税理士が,税務上の契約関係がないにもかかわらず,脱税相談に応じ,これによって,納税義務の適正な実現を害する事態を生じさせることは考え難いと主張する。 しかしながら,税理士法45条は,財務大臣が,税理士が,故意に,真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき,又は同法36条の規定に違反する行為をしたときは,1年以内の税理士業務の停止又 は税理士業務の禁止の処分をすることができる旨規定しており,税理士が,当該税理士が納税義務者から具体的に「求め」られた場合に不正な行為をしたときとは別に,同法36条の規定に違反する行為をしたときも処分の対象としているのであるから,税理士に対する懲戒処分が,当該税理士が納税義務者から具体的に「求め」られた場合,すなわち,当該税理士が納税義務者と同法2条に規定された税理士業務に係る税務上の契約関係(税務上の契約関係)にある場合にのみ科されることがあると解することはできない(なお,当該税理士が納税義務者から具体的に「求め」られた場合でなく,直接の依頼者ではない者や他の税理士から脱税に関する相談を受けた場合であっても,当該税理士が,税の逋脱の具体的方法について相談相手となり,肯定的な回答をする行為に至った場合には,上記の肯定的な回答を契機に,上記の直接の依頼者ではない者や他の税理士が脱税に至る可能性が高まることは否定できないから,当該行為は税理士の使命に反する行為であり,当該税理士は税理士として 場合には,上記の肯定的な回答を契機に,上記の直接の依頼者ではない者や他の税理士が脱税に至る可能性が高まることは否定できないから,当該行為は税理士の使命に反する行為であり,当該税理士は税理士として不適格であるというべきである。)。なお,税務上の契約関係がない者に対して税の逋脱の方法を教示した場合,そのこと自体に対する直接の報酬対価等が伴わないとしても,それを契機に,将来,上記の税務上の契約関係がない者から何らかの便宜を図ってもらえることを期待し得るのであるから,税理士が,税務上の契約関係がないにもかかわらず,脱税相談に応じ,これによって,納税義務の適正な実現を害する事態を生じさせることは考え難いとはいえない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 また,控訴人は,Aの債務免除益の減少なるものは,Aから法人税申告の税務代理を受任しているB税理士が,税務仕訳を行い,法人税の申告書を提出すること,法人税申告時点においてAの実質的代表者になっていたFが債務免除益の減少を承認することによって行われ得るものであるから,Aの法人税申告について何らの税務上の契約関係もない控訴人が,A の債務免除益を減少させることは不可能であると主張する。 確かに,Aの債務免除益を減少させるためには,Aから法人税申告の税務代理を受任しているB税理士が,税務仕訳を行い,法人税の申告書を提出すること,法人税申告時点においてAの実質的代表者になっていたFが債務免除益の減少を承認することが必要であるから,控訴人のみでAの債務免除益を減少させることは不可能であるが,控訴人において,B税理士やFと共同して,Aの債務免除益を減少させることは可能である(なお,Aの法人税の申告についての関与税理士であったB税理士としては,Aの平成26年 させることは不可能であるが,控訴人において,B税理士やFと共同して,Aの債務免除益を減少させることは可能である(なお,Aの法人税の申告についての関与税理士であったB税理士としては,Aの平成26年3月期における法人税の納税義務を免れるためには,亡Cの相続に係る相続税の申告内容とAの法人税の申告内容とが矛盾しないように,相続税の申告に関与していた控訴人の協力を得る必要があったのであるから,控訴人がAの平成26年3月期の法人税の逋脱に寄与した程度は小さくない。)。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」 原判決22頁8行目から15行目までを次のとおり改め,18行目の「指示をし」を「・・・相談に応じ」と改める。 「イ控訴人は,東京国税局が,平成28年頃に行った亡Cの相続税申告に係る税務調査の際,亡CのAに対する債務免除額を3億円のままにするよう指示し,Aの債務免除益を3億円とすることを東京国税局の職権と責任において承認したため,B税理士が作成したAの法人税の申告書は真正の事実に反するものではなくなっており,それゆえに,Aから法人税の申告の税務代理を受任していたB税理士が税理士としての責任を問われることはなくなっているところ,Aから法人税の申告の税務代理を受任していたB税理士において,税理士としての責任がない以上,Aとは税務上の契約関係に一切ない控訴人において,Aの法人税の申告について税理士としての責任を問われることはないと 主張する。 しかしながら,東京国税局が,平成28年頃に行った亡Cの相続税申告に係る税務調査の際,亡CのAに対する債務免除額を3億円のままにするよう指示したことを認めるに足りる証拠はなく,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであるから,失当である。 控訴人は, る税務調査の際,亡CのAに対する債務免除額を3億円のままにするよう指示したことを認めるに足りる証拠はなく,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであるから,失当である。 控訴人は,G税務署長が,亡Cが生前に承認した行為を基礎にして相続税の申告書を作り直し,相続税額を減額・還付する更正処分を行ったことにより,控訴人が作成した相続税の申告書は税務上減額更正を受けた。そのため,控訴人が相続税の申告について税理士としての責任を問われることはないと主張する。 しかしながら,控訴人は,本件処分において,相続税の申告について税理士としての責任を問われているのではなく,Aの法人税の申告について税理士としての責任を問われているのであるから,控訴人の上記主張は主張自体失当である。 ウ控訴人は,相続税の申告の税務代理をFら相続人から受任していた控訴人は,Fら相続人の相続税額が増えるため,債権放棄額の減額に反対していたのであるから,本件処分において処分理由とされた事実は存在しないと主張するが,補正した上で引用した原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の2のとおり,その事実は認められない。」第4 結論以上によれば,控訴人の請求は理由がないから,これを棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。 よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官水野有子 裁判官大西忠重 裁判官達野ゆき 官達野ゆき
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