令和3年1月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第1233号特許権侵害損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和2年10月22日判決原告大成建設株式会社 同訴訟代理人弁護士伊藤 卓同訴訟代理人弁理士町田能章金井淳一同補佐人弁理士大塚義文被告株式会社大林組 同訴訟代理人弁護士大野聖二木村広行多田宏文 主文 1 被告は,原告に対し,4184万0755円及びこれに対する平成30年1 月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その7を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1億5000万円及びこれに対する平成30年1月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「コンクリート造基礎の支持構造」とする特許第3887248号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である原告が,被告に対し,被告が建設した別紙1 「被告構造物目録」記載の各構造物(以下,同目録の番号欄の番号に対応させて「被告構造物1」などといい,併せて「被告各構造物」という。)における基礎の支持構造は,本件特許の 被告が建設した別紙1 「被告構造物目録」記載の各構造物(以下,同目録の番号欄の番号に対応させて「被告構造物1」などといい,併せて「被告各構造物」という。)における基礎の支持構造は,本件特許の特許請求の範囲の請求項2記載の発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属するものであり,当該基礎の支持構造を構築することが本件発明の実施に当たると主張して,本件特許権侵害の不法行為 に基づき,損害金合計1億5000万円(特許法102条2項,3項又は105条の3によって算定される損害金)及びこれに対する不法行為後の日である平成30年1月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告及び被告は,いずれも総合建設会社である。 (2) 本件特許 原告は,平成14年3月12日,発明の名称を「コンクリート造基礎の支持構造」とする発明につき,特許出願(特願2002-66662号)をし,平成18年12月1日,特許第3887248号として本件特許権の設定の登録(請求項の数4)を受けた(甲1,2。以下,上記出願の願書に添付した明細書(甲2)と図面を併せて「本件明細書」という。また,明細書の発 明の詳細な説明に記載された段落番号及び図面については,単に【0001】, 【図1】などと記載する。)。 (3) 本件発明に係る特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の請求項2(本件発明)の記載は,次のとおりである。 【請求項2】 コン 001】, 【図1】などと記載する。)。 (3) 本件発明に係る特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の請求項2(本件発明)の記載は,次のとおりである。 【請求項2】 コンクリート造基礎を,場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持するコンクリート造基礎の支持構造であって,前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きいことを特徴とするコンクリート造基礎の支持構造。 (4) 本件発明の構成要件の分説本件発明は,次のとおり,構成要件に分説することができる(以下,分説に係る各構成要件については頭書の符号に対応させて「構成要件A」などという。)。 A コンクリート造基礎を,場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持 するコンクリート造基礎の支持構造であって,B 前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きいことC を特徴とするコンクリート造基礎の支持構造。 (5) 被告の行為被告は,別紙1「被告構造物目録」の「所在地」欄記載の各場所において,平成23年以降の同目録の「施工日」欄記載の時期に被告各構造物の建設工事を行い,同目録の「(竣工日)」欄記載の時期にこれを完成させたところ,それらの建設に当たり,いずれもスマートパイルヘッド工法と呼ばれる工法 を用いて,コンクリート造基礎の支持構造(以下,被告各構造物の基礎の支 持構造を併せて「被告各構造」という。)を構築した(甲4ないし14,62,63,乙7,弁論の全趣旨)。 (6) 本件特許についての無効審判請求の経緯ア株式会 ,被告各構造物の基礎の支 持構造を併せて「被告各構造」という。)を構築した(甲4ないし14,62,63,乙7,弁論の全趣旨)。 (6) 本件特許についての無効審判請求の経緯ア株式会社熊谷組(以下「熊谷組」という。)は,平成20年7月30日,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明について特許無 効審判(無効2008-800136号事件。以下「別件無効審判1」という。)を請求した(甲1,59)。 特許庁は,平成21年6月30日,別件無効審判1について,請求項1ないし4に係る発明に無効理由は認められないとして,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「別件審決1」という。)をした(甲1, 乙4)。 熊谷組は,別件審決1の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10224号事件)を提起したが,熊谷組と原告との間での和解に基づいて熊谷組が訴えを取り下げたことによって,別件審決1は同年8月10日に確定した(甲1,88)。 イ被告は,平成30年8月10日,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明について特許無効審判(無効2018-800100号事件。以下「別件無効審判2」という。)を請求した(甲81)。 特許庁は,令和元年6月12日,別件無効審判2について,請求項1ないし4に係る発明に無効理由は認められないとして,「本件審判の請求は, 成り立たない。」との審決(以下「別件審決2」という。)をした(甲81)。 被告は,別件審決2の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所令和元年(行ケ)第10103号事件)を提起したが,知的財産高等裁判所は,令和2年2月26日,被告の請求を棄却する判決をした。被告は,同判決に対して上告及び上告受理の申立て 訴訟(知的財産高等裁判所令和元年(行ケ)第10103号事件)を提起したが,知的財産高等裁判所は,令和2年2月26日,被告の請求を棄却する判決をした。被告は,同判決に対して上告及び上告受理の申立てをしたが(最高裁判所令和2年 (行ツ)第163号,同令和2年(行ヒ)第178号),最高裁判所は,同 年9月15日,「本件上告を棄却する。」,「本件を上告審として受理しない。」との決定をした(甲87,91)。 3 争点(1) 被告各構造が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 損害の発生の有無及びその額(争点2) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告各構造が本件発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張)(1) 被告各構造の構成被告各構造は,それぞれ以下の被告構造1又は被告構造2のいずれかによ るものである。 被告構造1及び被告構造2の本件発明に対応する構成は,それぞれ,次のア,イのとおりであり(以下,符号に対応させて「構成a-1」などという。),それらの側断面図は,それぞれ,別紙2「被告各構造の原告説明図」記載1,2のとおりである(以下,同別紙記載の側断面図を,同目録の記載 に対応させて「原告説明図1-1」などといい,併せて「原告説明図」という。)。 ア被告構造1a-1 コンクリート造基礎を,杭軸部と杭頭接合部から形成されている場所打ちコンクリート杭で支持するコンクリート造基礎の支持構造 であって,a-2 前記杭頭接合部は,杭軸部の杭直径よりも小さい直径の杭頭鋼管と,前記杭頭鋼管の内部及び前記杭軸部と同直径である杭頭下部から構成される一体のコンクリートと,から形成され, a-3 前記コンクリート造基礎の下面に凹部を有し,前記凹部に前記 の杭頭鋼管と,前記杭頭鋼管の内部及び前記杭軸部と同直径である杭頭下部から構成される一体のコンクリートと,から形成され, a-3 前記コンクリート造基礎の下面に凹部を有し,前記凹部に前記杭 頭接合部の上部が剛接合されることなく入り込んでおり,b 前記場所打ちコンクリート杭の杭頭接合部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きいことc を特徴とするコンクリート造基礎の支持構造。 イ被告構造2被告構造1において,コンクリート造基礎と,場所打ちコンクリート杭の杭頭接合部及び杭軸部の所定長さの部分には,所定本数の芯鉄筋が設けられている。 (2) 構成要件Aの充足性について ア 「場所打ちコンクリート杭」について構成要件Bにおいては,「前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部」と記載されており,「建築大辞典第2版」によれば,「杭頭部」とは,「杭の上端部」を意味するものと認められる(甲15)。そうすると,構成要件Aの「場所打ちコンクリート杭」は,その杭の上端部として,「杭頭部」を有し ているものと解釈できる。 そして,構成a-1ないしa-3の「杭頭接合部」は,被告が主張する「鋼管コンクリート部」を含め,「場所打ちコンクリート杭」の上端部を構成していることから,「場所打ちコンクリート杭」の「杭頭部」に相当する。 イ 「載置」について (ア) 「載置」の意義本件明細書においては,「載置とは,コンクリート造基礎を支持するにあたり,当該コンクリート造基礎が杭頭部の上に載せられているだけの状態であり,両者の縁が切れた状態にあることを意味する。」(【0010】)と記載されている。 そして,「縁を切る」とは,「 あたり,当該コンクリート造基礎が杭頭部の上に載せられているだけの状態であり,両者の縁が切れた状態にあることを意味する。」(【0010】)と記載されている。 そして,「縁を切る」とは,「部材と部材とを接合しないこと」(「建築 大辞典第2版」(甲35))を意味する建築現場での慣用語であり,コンクリート工事においては,隣接する部材が一体的に構築されていないことと理解されており,コンクリート杭に関する技術分野においては,「各部材等が積極的に一体となっておらず(分離され),剛接合されていない構造」を説明するために慣用されている。 したがって,「載置」とは,「コンクリート造基礎を支持するにあたり,当該コンクリート造基礎が先に打設されて硬化した杭頭部のコンクリート上に載せられているだけの状態であり」,当該杭頭部と,コンクリート造基礎が剛接合されていないことを意味するものであって,このことは,当業者が出願時の技術常識に照らし,容易に理解できるものである。 なお,本件明細書においては,「コンクリート造基礎に凹部を形成し,当該凹部に鋼管中空杭及び場所打ちコンクリート杭の杭頭部を挿入した状態で当該コンクリート造基礎支持すること…は,載置という支持形式を妨げるものではない。」(【0010】)と記載されており,基礎の凹部の存在は「載置」を妨げるものでないことが明示されている。 (イ) 「載置」該当性被告各構造は,コンクリート造基礎の下面の凹部に,杭頭部に相当する杭頭接合部の突出部が入り込んでいる構造である。 そして,杭頭接合部の上面と,凹部の下面は接触しているのみの状態であり,杭頭接合部とコンクリート造基礎は剛接合されていないことか ら,両者の縁は切れた状態となっており,被告各構造は,コンクリート造基 杭頭接合部の上面と,凹部の下面は接触しているのみの状態であり,杭頭接合部とコンクリート造基礎は剛接合されていないことか ら,両者の縁は切れた状態となっており,被告各構造は,コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に「載置」した状態で支持しているといえる。 したがって,構成a-1ないしa-3の「杭頭接合部」(「場所打ちコンクリート杭」)による「コンクリート造基礎」の支持構造は,構成要件A の「載置」に該当する。 (ウ) 被告の主張について被告は,被告各構造において,「コンクリート造基礎」と「場所打ちコンクリート杭」とが互いに離間して接しておらず,「コンクリート造基礎」が「場所打ちコンクリート杭」の上に載っていない点及び「コンクリート造基礎」と「場所打ちコンクリート杭」とが互いに水平方向に拘束し ている点を指摘するが,それらの指摘を考慮しても,前記(イ)のとおり,構成a-1ないしa-3は「載置」の要件を満たすものである。 a 杭頭部と基礎の離間について(a) 鋼管コンクリート部が杭頭部(杭頭接合部)に含まれるかについて 別紙3「被告各構造の被告説明図」(以下,同別紙の図面を「被告説明図」という。)は,鋼管コンクリート部を誇張しているものである。そのため,被告各構造の説明図としては正確ではなく,杭頭鋼管を断面図で記載した原告説明図1-2及び2-2を参照すべきである。 被告は,鋼管コンクリート部が杭頭部(杭頭接合部)に含まれないと主張するものであるが,杭頭接合部は,杭頭鋼管をコンクリート打設用の型枠兼用部材として用い,凸状に形成されたコンクリート(杭頭鋼管の内部及び杭軸部と同直径である杭頭下部から構成される一体のコンクリート)と一体的に構築することにより形成され ている。 設用の型枠兼用部材として用い,凸状に形成されたコンクリート(杭頭鋼管の内部及び杭軸部と同直径である杭頭下部から構成される一体のコンクリート)と一体的に構築することにより形成され ている。 したがって,鋼管コンクリート部を杭頭部と別体の部材であるかのように主張することは妥当ではない。 また,被告によれば,杭頭鋼管は,拘束効果により杭頭縮小部の回転変形性能,せん断耐力,軸耐力の向上を図ることを目的として 設けられているようであるが,その効果の裏付けはされておらず, 杭頭鋼管は,杭頭接合部の上部を形成するための枠部材等として設けられている付随的部材であるというべきである。したがって,杭頭鋼管の存在により,鋼管コンクリート部において圧縮強度の多少の向上効果を期待し得るとしても,杭頭鋼管で覆われていない部分と比べて,その効果は大きく異なるものではなく,その他の場所打 ちコンクリート部分と耐力・変形性能等が全く異なるほどの作用効果を奏するものではない。 杭軸部と杭頭接合部との間には,杭頭鋼管の下側を囲むように,外側フープ及び内側フープが配筋されている。そして,杭頭鋼管の内部及び当該杭頭鋼管の下方周囲において,同一の設計基準強度の 気中コンクリートが同時に打設されることにより,凸状の杭頭接合部に杭軸部から延びる杭主筋が定着され,鋼管コンクリート部を含む杭頭接合部と杭軸部が一体的に構築されている。その構築工程としては,まず,杭主筋が突出している杭軸部の上面部に,リング状の杭頭鋼管を型枠兼用で設置するとともに,当該杭頭鋼管の下方周 囲に木製の杭頭部型枠を設置する。その後,杭軸部から延びる杭主筋を巻き込むようにして,杭頭鋼管内部及び杭頭部型枠内部に高設計基準強度のコンクリートを,一連の作業によって打設するも 管の下方周 囲に木製の杭頭部型枠を設置する。その後,杭軸部から延びる杭主筋を巻き込むようにして,杭頭鋼管内部及び杭頭部型枠内部に高設計基準強度のコンクリートを,一連の作業によって打設するものである。 以上によれば,被告各構造において,鋼管コンクリート部は杭頭 部(杭頭接合部)に含まれるものであるといえるから,基礎と杭頭部とは離間していない。 (b) 別件無効審判1での原告の主張について被告は,前記(a)の主張が禁反言の法理により許されないと主張するが,原告の別件無効審判1での主張と前記(a)の主張は矛盾するも のではなく,被告の主張は理由がない。 すなわち,原告は,別件無効審判1において,登録実用新案第3058723号公報(本件訴訟における乙第2号証及び乙第12号証,別件無効審判1における甲第3号証である。以下,この公報を「乙2公報」といい,そこに記載された発明を「乙2発明」という。 乙2公報の【図1】は,別紙4「別件無効審判1における引用例の 図面」のとおりである。)の【図1】について,「柱部18」と「スラブ16」のコンクリートが一緒に打設されて一体性を有していること(すなわち,柱部がスラブとともに構築されてコンクリート造基礎を構成していること)を前提に,「柱部18」の存在を無視して「スラブ16」と「場所打ちコンクリート杭12」のみで乙2発明 を特定する無効審判請求人の主張の矛盾点を指摘したものに留まり,柱部がスラブとともに「コンクリート造基礎」を構成する点を否定したものではない。 また,原告は,別件無効審判1において,「場所打ち杭の杭頭半剛接合法の開発」(建築雑誌1999.12増刊日本建築学会技術報告 集第9号 65ないし70頁日本建築学会 1999年12月20日発行 ,原告は,別件無効審判1において,「場所打ち杭の杭頭半剛接合法の開発」(建築雑誌1999.12増刊日本建築学会技術報告 集第9号 65ないし70頁日本建築学会 1999年12月20日発行)(本件訴訟における乙第3号証,別件無効審判1における甲第8号証である。以下,この文献を「乙3文献」といい,そこに記載された発明を「乙3発明」という。乙3文献の図1は,別紙4「別件無効審判1における引用例の図面」のとおりである。)の図1 (b)の構造について,乙2公報の【図1】に関する主張と同様に,接合部とパイルキャップが一緒に打設されて一体性を有していることを前提とした主張をしており,これが別部材であることを前提とした主張をしていたわけではない。 したがって,いずれの主張も本件訴訟における原告の主張と矛盾 するものではない。 b 水平方向の拘束について前記(ア)のとおり,本件明細書(【0010】)には基礎に凹部を設けて杭頭部を挿入した状態で支持することは「載置」を妨げない旨記載されており,「コンクリート造基礎及び鋼管中空杭等の間で水平力を伝達する凹凸部を設けることは,載置という支持形式を妨げるものでは ない。」とも記載されている。これらの記載から,本件発明においては,杭と基礎との間で,水平力を全く伝達しない支持構造を前提にしていないことは明らかであり,基礎と場所打ちコンクリート杭との水平方向の移動を拘束している状態であっても,「載置」に該当する。 また,本件明細書の「鉛直移動,水平移動及び回転を拘束すること がない」(【0012】)との記載は,あくまで,従来技術である杭とコンクリート造基礎が剛接合されている場合と比較して理解する必要がある。仮に,杭頭接合部が基礎の凹部に隙間なく埋め込まれていたと がない」(【0012】)との記載は,あくまで,従来技術である杭とコンクリート造基礎が剛接合されている場合と比較して理解する必要がある。仮に,杭頭接合部が基礎の凹部に隙間なく埋め込まれていたとしても,杭断面の外周に配された主筋が基礎に定着されていない限り,両部材は剛接合されておらず,完全に拘束されていることにはならな いから,「載置」に当たる。そして,この場合であっても,鉛直力,水平力及び曲げ応力が低減されることになるから,「載置」の定義と作用効果の記載に矛盾が生じることはない。 ウ以上のとおり,構成a-1ないしa-3は,「コンクリート造基礎を,場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持する」構成を備えているから, 構成要件Aを充足する。 (3) 構成要件Bの充足性についてア 「場所打ちコンクリート杭の杭頭部」該当性前記(2)アのとおり,構成a-1ないしa-3の「杭頭接合部」が「杭頭部」に該当することから,構成bの「場所打ちコンクリート杭の杭頭接合 部」も,構成要件Bの「場所打ちコンクリート杭の杭頭部」に該当する。 イ 「コンクリートの設計基準強度」について被告は,被告構造物4,8,9及び10における基礎の支持構造に関して,杭頭部のコンクリートの設計基準強度が,基礎部のコンクリートの設計基準強度と同じであるか,それより小さいと主張するところ,そのような構造については,構成要件Bを充足するものではない。しかしながら, 上記を裏付ける資料としては,被告従業員の陳述書(乙7)以外の客観的な資料が提出されていないため,被告構造物4,8,9及び10の支持構造についても,被告構造1又は被告構造2を有すると認めるのが相当である。 したがって,構成bの「場所打ちコンクリート杭の杭頭接合部」及び 出されていないため,被告構造物4,8,9及び10の支持構造についても,被告構造1又は被告構造2を有すると認めるのが相当である。 したがって,構成bの「場所打ちコンクリート杭の杭頭接合部」及び 「コンクリート造基礎」の「コンクリートの設計基準強度」は,構成要件Bに規定された「コンクリートの設計基準強度」に該当する。 なお,被告は,被告構造物1及び3における基礎の支持構造について,「杭頭部」と「コンクリート造基礎」の実強度に差異がないと主張するが,本件発明は,「コンクリートの設計基準強度」を構成要件としているため, 実際のコンクリートの強度を問題とする必要はない。 ウ以上のとおり,構成bは,「場所打ちコンクリート杭の杭頭部」及びその「コンクリートの設計基準強度」が「コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きい」という構成を備えているから,構成要件Bを充足する。 (4) 構成要件Cの充足性について構成cは,構成要件A及びBを充足する構成a-1ないしa-3及びb「を特徴とするコンクリート造基礎支持構造」であるから,構成要件Cを充足する。 (5) 小括 したがって,被告構造1及び被告構造2はいずれも構成要件AないしCを 充足するから,被告各構造は本件発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張)(1) 被告各構造の構成ア杭頭部のコンクリート強度による分類被告各構造は,その杭頭部のコンクリートの強度によって,次のように 分類すべきである。 (ア) 被告構造物4,8,9及び10における基礎の支持構造は,杭頭部のコンクリートの設計基準強度と,基礎部のコンクリートの設計基準強度とが同じであるか,杭頭部のコンクリートの設計基準強度の方が小さいものである(以下,これ 9及び10における基礎の支持構造は,杭頭部のコンクリートの設計基準強度と,基礎部のコンクリートの設計基準強度とが同じであるか,杭頭部のコンクリートの設計基準強度の方が小さいものである(以下,これらを併せて「被告構造①」という。)。 (イ) 被告構造物1及び3における基礎の支持構造は,杭頭部のコンクリートの設計基準強度よりも基礎部のコンクリートの設計基準強度の方がわずかに(それぞれ6N/mm2)大きいものの,実際の基礎構造において,両者のコンクリートの実強度の範囲が重なり合っており,両者の実強度に差がないものである(以下,これらを併せて「被告構造②」という。)。 (ウ) 被告構造物2,5,6及び7における基礎の支持構造は,杭頭部のコンクリートの設計基準強度が基礎部のコンクリートの設計基準強度よりも大きく,実際の基礎構造においても杭頭部のコンクリートの実強度が基礎部のそれよりも大きくなっているものである(以下,これらを併せて「被告構造③」という。)。 イ被告各構造の構成被告構造①ないし被告構造③は,それぞれ以下の(ア)ないし(ウ)の構成を有し(以下,符号に対応させて「構成①a」などという。),その側断面図は,被告説明図のとおりである。 この被告説明図のとおり,被告各構造においては,共通して,場所打ち コンクリート杭の軸径よりも断面が小さく,基礎と杭頭部との間に存在し, これらを接合する部材である鋼管コンクリート部で,基礎と杭頭部とを接合しているものであり,鋼管コンクリート部は,杭頭部とは区別されるものである。 (ア) 被告構造①①a 基礎と場所打ちコンクリート杭の杭頭部とを,鋼管コンクリート 部を介して接合する基礎の支持構造であって,前記鋼管コンクリート部は,前記基礎及び前記場 ものである。 (ア) 被告構造①①a 基礎と場所打ちコンクリート杭の杭頭部とを,鋼管コンクリート 部を介して接合する基礎の支持構造であって,前記鋼管コンクリート部は,前記基礎及び前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部に隙間なく埋め込まれていて,前記基礎と前記場所打ちコンクリート杭とは互いに少なくとも水平方向に拘束しており,前記基礎と前記場所打ちコンクリート杭とは互いに離間して接しておらず, ①b 前記杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記基礎におけるコンクリートの設計基準強度と等しいか又はこれより小さい①c 基礎の支持構造。 (イ) 被告構造②②a 構成①aと同じ。 ②b 前記杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きいが,実際の前記杭頭部におけるコンクリート強度は,前記基礎におけるコンクリートの強度と差がない②c 構成①cと同じ。 (ウ) 被告構造③③a 構成①aと同じ。 ③b 前記杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きく,かつ,実際の前記杭頭部におけるコンクリート強度も,前記基礎におけるコン クリートの強度と比較して大きい ③c 構成①cと同じ。 (2) 構成要件Aの充足性について被告各構造は,少なくとも,以下の点において「載置」の要件を満たさないため,構成要件Aを充足しない。 ア杭頭部と基礎との離間について (ア) 鋼管コンクリート部が杭頭部に含まれるかについてa 鋼管コンクリート部は,基礎と杭頭部の両方に埋め込まれて両者を接合する部材であり,杭頭部に含まれるものではない。 この点,原告は,杭の上部と鋼管コンクリ クリート部が杭頭部に含まれるかについてa 鋼管コンクリート部は,基礎と杭頭部の両方に埋め込まれて両者を接合する部材であり,杭頭部に含まれるものではない。 この点,原告は,杭の上部と鋼管コンクリート部の両方をまとめて「杭頭接合部」とした上で,これが「杭頭部」に当たると主張するが, 鋼管コンクリート部は,その他の場所打ちコンクリート部分とは異なり,鋼管にコンクリートが充填されたものであり,両者は耐力・変形性能等が全く異なるものであるから,当業者が,これらを一体として捉えることはない。 b 被告各構造の鋼管は拘束効果を有しており,これによって鋼管コン クリート部は回転変形性能,せん断耐力,軸耐力が向上している。また,鋼管コンクリート部は,基礎,杭の両方にめり込むように,それら両部材と別に動作する。したがって,鋼管コンクリート部は,力学的にも構造的にも,杭と別部材である。 原告は,杭頭部コンクリート打設工程において,杭頭部型枠内部と 鋼管内部にコンクリートを一連の作業によって打設することを指摘して,鋼管コンクリート部が杭頭部に含まれると主張するが,技術常識に外れた主張である。すなわち,当業者は,コンクリートが一体的に打設されていても,その耐力や変形性能からして力学的挙動が異なると,別部材として理解するのが通常であるから,被告各構造における 杭頭部と鋼管コンクリート部を一体として理解することはあり得ない。 また,原告は,杭頭部に外側フープ及び内側フープが配されることに依拠して,鋼管コンクリート部が杭頭部と一体であるかのように主張しているが,フープは杭頭部に配置されるにすぎず,鋼管コンクリート部と杭頭部を繋ぐものではない。 (イ) 別件無効審判1における原告の主張について 原告は,別件無効審 体であるかのように主張しているが,フープは杭頭部に配置されるにすぎず,鋼管コンクリート部と杭頭部を繋ぐものではない。 (イ) 別件無効審判1における原告の主張について 原告は,別件無効審判1において,以下のとおり,コンクリートが一体打設されている部材についても別部材であることを主張していたものである。よって,原告が,本件訴訟において,被告各構造における鋼管コンクリート部と杭頭部のコンクリートが一体打設されていることを理由として鋼管コンクリート部と杭頭部が一体であると主張することは, 別件無効審判1における原告の主張と矛盾するものであるから,包袋禁反言の法理に照らし,許されない。 a 乙2公報に関する主張について乙2公報の【図1】(A)における「基礎コンクリートスラブ16」と「柱部18」とは,一体的にコンクリートが打設され,しかも「ず れ止め鉄筋20」が両者を貫通している構造である。 原告は,別件無効審判1においては,乙2公報の【図1】(A)の構造につき,「基礎コンクリートスラブ16を杭頭部12Aに載置した状態で支持するものではなく,むしろ,杭頭部12Aと基礎コンクリートスラブ16とが離間した(直に接しない)支持構造」と主張してい た。 これは,「柱部18」の存在を理由として,「杭頭部12Aと基礎コンクリートスラブ16とが離間した(直に接しない)支持構造」であると主張するものであり,すなわち,「基礎コンクリートスラブ16」と一体打設され鉄筋が貫通した「柱部18」が,「基礎コンクリートス ラブ16」と別部材であることを主張するものであった。 しかも,別件審決1においては,この主張を前提として,乙2発明と本件発明との相違点が認定され,本件特許に無効理由がないと判断されている。 これ 部材であることを主張するものであった。 しかも,別件審決1においては,この主張を前提として,乙2発明と本件発明との相違点が認定され,本件特許に無効理由がないと判断されている。 これらの原告の主張や別件審決1の判断は,柱部のコンクリートが基礎コンクリートと一体打設されていても,両者は別部材であるとい うものであり,被告各構造において,鋼管コンクリート部が杭頭部のコンクリートと一体打設されているとしても,これらが別部材であるという,本件訴訟での被告の主張を裏付けるものとなっている。 原告は,無効審判請求を回避する際には,コンクリートが一体打設されている部材について別部材であることを主張し,これが容れられ て特許に無効理由がないとの判断を得ておきながら,侵害訴訟である本件訴訟の場面では,一転して,コンクリートが一体打設されていることのみを理由として鋼管コンクリート部と杭頭部が一体であると主張しているものであって,これらは,明らかに矛盾した主張である。 b 乙3文献に関する主張 乙3文献の図1(b)の構造は,「実際の施工に当たっては,杭頭コンクリートのはつり作業を行った後に,接合部の鋼管を設置し,接合部およびパイルキャップのコンクリートを打設し一体化させる。」ものであり,鋼管を用いた接合部のコンクリートは,パイルキャップと一体に打設されている。 原告は,別件無効審判1においては,乙3文献の図1(b)の構造について,「パイルキャップを杭頭部に載置した状態で支持する支持構造ではない。パイルキャップと一体成形された接合部を,杭頭部に含めることはできないから,杭頭部とパイルキャップとが離間した(直に接しない)支持構造」であると主張していた。 これは,パイルキャップと接合部は両者「一体成形」され された接合部を,杭頭部に含めることはできないから,杭頭部とパイルキャップとが離間した(直に接しない)支持構造」であると主張していた。 これは,パイルキャップと接合部は両者「一体成形」されていると 認める一方で,接合部が杭頭部とパイルキャップとの間に存在することを理由として杭頭部とパイルキャップが離間しており「載置」に該当しないと主張するものであり,接合部がパイルキャップに「一体成形」されていたとしても両者が別部材であることを前提とした主張である。 そうすると,前記a 同様,別件無効審判1における乙3文献に関する原告の主張と,コンクリートが一体打設されていることを理由として鋼管コンクリート部が杭頭部と一体であるとする本件訴訟での原告の主張とは,矛盾するものである。 (ウ) 基礎と杭頭部の離間の有無について 以上によれば,被告各構造において,鋼管コンクリート部は杭頭部に含まれないというべきであり,基礎と杭頭部との間には別部材である鋼管コンクリート部が介在しているから,基礎と場所打ちコンクリート杭とは,互いに離間しており,接していない。 したがって,被告各構造においては,基礎が「杭頭部の上に載せられ て」(【0010】)おらず,被告各構造は「載置」(構成要件A)の要件を満たさない。 イ水平方向の拘束について(ア) 本件明細書における「載置」の定義について本件明細書の記載によれば,「載置」といえるためには,コンクリート 造基礎が杭に「載せられているだけの状態であり,両者の縁が切れた状態」(【0010】)である必要があり,「両者の縁が切れた状態」とは,少なくとも「両者が互いに鉛直移動,水平移動及び回転を拘束することがない」(【0012】)ものと理解されるべきことになる。 (イ) (【0010】)である必要があり,「両者の縁が切れた状態」とは,少なくとも「両者が互いに鉛直移動,水平移動及び回転を拘束することがない」(【0012】)ものと理解されるべきことになる。 (イ) 「載置」該当性について 被告各構造においては,「前記鋼管コンクリート部は,前記基礎及び前 記場所打ちコンクリート杭の杭頭部に隙間なく埋め込まれていて,前記基礎と前記場所打ちコンクリート杭とは互いに少なくとも水平方向に拘束して」いる(構成①a)から,基礎と杭との「両者の縁が切れ」ておらず,これらの関係は,構成要件Aの「載置」に該当しない。 (ウ) 原告の主張について 原告は,本件明細書に,「コンクリート造基礎に凹部を形成し,当該凹部に鋼管中空杭及び場所打ちコンクリート杭(…)の杭頭部を挿入した状態で当該コンクリート造基礎支持すること…は,載置という支持形式を妨げるものではない。」(【0010】)との記載があることを根拠に,凹部の存在は「載置」を妨げるものではないと主張する。 しかしながら,この記載は,前記(ア)の「載置」の定義を前提にしたものであるから,「当該コンクリート造基礎が杭頭部の上に載せられているだけの状態であり,両者の縁が切れた状態にある」という前提を満たす限りにおいて,凹部が存在しても構わないということを念のために述べているにすぎない。構成①aでは,鋼管コンクリート部が隙間なく基礎 及び杭頭部に入り込んで,少なくとも水平方向には基礎と杭とが完全に拘束されており,基礎又は杭頭部が破壊されない限り水平方向に互いにずれることはできないものであって,このような構成は「載置」に当たらない。 また,原告は,「縁を切る」とは「部材と部材とを接合しないこと」で あると主張するが,これを前提にしても 向に互いにずれることはできないものであって,このような構成は「載置」に当たらない。 また,原告は,「縁を切る」とは「部材と部材とを接合しないこと」で あると主張するが,これを前提にしても,被告各構造においては,鋼管コンクリート部で基礎と杭頭部が接合されているといえるから,この点でも「載置」に当たらない。 (3) 構成要件Bの充足性について前記(2)アのとおり,鋼管コンクリート部は,構成要件Bの「杭頭部」に該 当せず,被告各構造はいずれも構成要件Bを充足しない。 さらに,被告構造①においては,杭頭部の設計基準強度と基礎の設計基準強度の関係から,構成要件Bを充足する余地はない。 (4) 構成要件Cの充足性について被告各構造は,構成要件A及びBを充足しないから,構成要件Cも充足しない。 (5) 小括以上のとおり,被告各構造は,構成要件AないしCをいずれも充足しないから,本件発明の技術的範囲に属しない。 2 争点2(損害の発生の有無及びその額)について(原告の主張) (1) 特許法102条2項による損害額についてア限界利益算定の対象(ア) 本件発明は「コンクリート造基礎の支持構造」についての発明であるが,発明における「構造」とは,複数の部材が一体的にその発明の全体を形成しているものである。 本件発明は,「コンクリート造基礎」が「場所打ちコンクリート杭」に載置された状態で支持されており,「コンクリート造基礎」と「場所打ちコンクリート杭」の2つの部材が,「載置」という特定の支持形態上の関連を持って一体をなしているといえる。 そして,本件明細書の記載によれば,本件発明の効果は,「コンクリー ト造基礎及び場所打ちコンクリート杭に過剰な断面力が発生することを防止する 形態上の関連を持って一体をなしているといえる。 そして,本件明細書の記載によれば,本件発明の効果は,「コンクリー ト造基礎及び場所打ちコンクリート杭に過剰な断面力が発生することを防止することができ,コンクリート造基礎の構造が簡単であり,配筋作業の省力化を図り,施工費用を低減させることができるなど,設計の合理性及び施工の容易性が担保されることになるとともに,杭頭部が損傷等をすることを防止することができる」というものであって(【001 2】,【0022】及び【0023】参照),その効果は,「コンクリート 造基礎」と「場所打ちコンクリート杭」の全体に及んでおり,「コンクリート造基礎」と「場所打ちコンクリート杭」の全体の施工において,機能的,営業的(需要者に対する採用動機の増進)に寄与し,ひいては対象構造物についての受注増加に貢献している。 したがって,被告各構造の限界利益額は,本件発明の効果を享受して いるコンクリート造基礎と場所打ちコンクリート杭を一体として含む下部構造の全体を対象として算出されるべきである。 (イ) 仮に,本件発明がコンクリート造基礎と場所打ちコンクリート杭の下部構造の全体を対象とするものではないと判断されるとしても,被告が主張する「鋼管コンクリート部」のみを対象とすることは妥当ではない。 場所打ちコンクリート杭は,地中の支持地盤にまで打設され,コンクリート造基礎を支持した状態で,当該コンクリート造基礎を介して上部構造の荷重を支持地盤にまで伝えていることからすれば,限界利益額は,少なくとも場所打ちコンクリート杭の全体を対象として算出されるべきである。 イ杭全体及び基礎の完成工事高(ア) 杭全体の完成工事高a 鑑定人甲(以下「本件計算鑑定人」という。)による計算鑑 も場所打ちコンクリート杭の全体を対象として算出されるべきである。 イ杭全体及び基礎の完成工事高(ア) 杭全体の完成工事高a 鑑定人甲(以下「本件計算鑑定人」という。)による計算鑑定(以下「本件計算鑑定」という。)の結果を記載した令和元年12月6日付け計算鑑定書(以下「本件計算鑑定書」という。)では,被告構造物1, 2,3,5,6及び7における杭全体の完成工事高は,それぞれ,次のとおり算定されている。 被告構造物1 ●(省略)●円被告構造物2 ●(省略)●円被告構造物3 ●(省略)●円 被告構造物5 ●(省略)●円 被告構造物6 ●(省略)●円被告構造物7 ●(省略)●円b 被告構造物4,8,9及び10については,本件計算鑑定の対象となっていないため,正確な完成工事高は不明であるが,構造面積等を考慮すれば,被告構造物4及び8は上記被告構造物6の,被告構造物 9は上記被告構造物5の,被告構造物10は上記被告構造物1の各完成工事高を下回らない。 (イ) 基礎の完成工事高被告構造物1について行った原告の概算に基づけば,被告各構造物におけるコンクリ-ト造基礎の完成工事高は,それぞれ杭全体の完成工事 高の約32%と考えられる。 (ウ) 杭全体及び基礎の完成工事高以上によれば,被告各構造物における杭全体及び基礎の完成工事高は,前記(ア)及び(イ)を合算した別紙5「原告による損害額計算表」の「杭及び基礎の完成工事高(万円)」記載の各金額を下らない。 ウ被告の限界利益額(原告の損害額)本件計算鑑定書によれば,杭全体の完成工事高に対する限界利益率は,●(省略)●%である。 杭の施工では,大型重機を使用し,地中において作業をすること等,時間及び想定 の限界利益額(原告の損害額)本件計算鑑定書によれば,杭全体の完成工事高に対する限界利益率は,●(省略)●%である。 杭の施工では,大型重機を使用し,地中において作業をすること等,時間及び想定外の費用を要する一方,基礎の施工は大気中において人力で行 うことが可能であり,施工等も比較的容易であることから,一般に利益率も高い。このような事情に鑑みると,被告各構造物における基礎及び杭全体の限界利益率は6%を下回らない。 したがって,被告の限界利益額は,前記イ(ウ)の杭全体及び基礎の各完成工事高の6%に相当する,別紙5「原告による損害額計算表」の「102 条2項による損害額(万円)」欄記載の各金額(合計1億5000万円)を 下回らず,特許法102条2項により,同額が原告の受けた損害額と推定される。 エ本件計算鑑定書の妥当性について本件計算鑑定書による限界利益額の算定は,以下のとおり,一部に妥当でない部分があるから,被告の限界利益額は,前記ウのとおり算定すべき である。 (ア) 基礎資料について本件計算鑑定書は,財務会計データのみから限界利益を試算したものであり,当該財務会計データに被告各構造物の使用材料,当該材料の使用量,被告各構造物の構築内容及び作業内容が,被告作成の「完成工事 原価構成表」に正確に反映されているか否かの確認がされていない。 本件計算鑑定書の妥当性は,上記の被告各構造物の構築内容等が「完成工事原価構成表」に正確に反映されていることにより担保されるものである。しかしながら,本件計算鑑定書において,被告各構造物の構築内容等についての,保存義務がある契約書等に記載されている契約内容 及び契約金額が財務会計データと整合していることの確認は行われておらず,この点に関し,本件計算 書において,被告各構造物の構築内容等についての,保存義務がある契約書等に記載されている契約内容 及び契約金額が財務会計データと整合していることの確認は行われておらず,この点に関し,本件計算鑑定書は不十分である。 (イ) 杭工事における経費の算定について本件計算鑑定書では,「杭全体についての実際原価べースの経費相当額」を算出する際に,工事全体の完成工事原価における材料費相当額及び外 注費相当額の合計額とその他の経費相当額との比率に基づいて,杭工事における材料費相当額及び外注費相当額から,それ以外の経費相当額の算定をしている。 この算定方法は,完成工事原価における材料費及び外注費以外の経費相当額の割合が,杭工事の施工期間と全体工事の施工期間において等し いという仮定に基づくものである。しかしながら,杭工事は,全体工事 の初期段階において行われる工事であり,外注業者も杭施工業者に限られることから,工程管理業務等も複雑ではなく,工事事務所に常駐する被告社員数も少ないため,その運営経費である事務諸経費等は,上部構造の構築時と比較して少額となる。また,仮設機材費,機械器具費及び仮設経費に関しても,同様に少額となる。そのため,上記の仮定は成り 立たず,本件計算鑑定書では,材料費及び外注費以外の過大な諸経費が控除されていることになる。したがって,本件計算鑑定書は,この点で妥当でなく,杭工事の経費の算定に関しては,経費割合を減少補正した上で,限界利益額を算定すべきである。 (ウ) 本件計算鑑定書に対する被告の主張について a 被告は,杭全体の完成工事高について,前記イ(ア)a の本件計算鑑定書の額によるのではなく,被告と施主との間で締結された契約の契約明細に記載された額によるべきと主張する。 しかし て a 被告は,杭全体の完成工事高について,前記イ(ア)a の本件計算鑑定書の額によるのではなく,被告と施主との間で締結された契約の契約明細に記載された額によるべきと主張する。 しかしながら,被告は,下請業者のように杭工事等の部分的な工事を受注することにより利益を上げているのではなく,建物全体の工事 を受注することで利益を上げており,競業他社との受注競争を行うに当たり,各工事における利益額をどのように定めるかは,被告の営業判断等に基づくものである。 本件計算鑑定書では,このような観点を考慮し,契約明細における杭工事の請負金額には適正な利益が付加されていないと判断して,上 記の完成工事高を算定したものであるから,この点の算定は妥当であり,被告の上記主張は失当である。 b 限界利益額がマイナスとなる構造物の取扱いについて被告は,本件計算鑑定書が,●(省略)●に係る限界利益をゼロとした点について,限界利益額はマイナスであるから,ゼロと計算する のは誤りであると主張する。 しかしながら,被告各構造物は,大量生産される工業製品でなく,個別に受注生産されるものであるため,原価計算は,個別原価計算制度により行われるものであり,限界利益額は,構造物ごとに算定されるべきものである。したがって,仮に,限界利益額がマイナスになったとしても(原告は,この点を認めるものではない。),他の被告各構 造物の限界利益額に影響を与えるものではないことから,マイナスの値とする必要はなく,被告の上記主張は失当である。 オ推定覆滅事由について(ア) 本件発明の寄与度についてa 本件発明の技術的意義について (a) 本件発明の発明者らは,他社に先駆けて半剛接合構造の研究に着手し,試験的な研究を数年間にわ 定覆滅事由について(ア) 本件発明の寄与度についてa 本件発明の技術的意義について (a) 本件発明の発明者らは,他社に先駆けて半剛接合構造の研究に着手し,試験的な研究を数年間にわたり継続することにより,支承等の装置を設ける構造,あるいは,杭頭部にリング部材を設ける複雑な構造にするのではなく,コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に載置する単純な構造に実用可能性があることを見出した。 上記発明者らは,更なる検討を行った結果,杭頭部を半剛接合構造にして固定度を小さくすることにより,杭頭部において,剛接合構造では考慮する必要がなかった支圧力の影響が大きくなることに気がついた。そして,支圧力により杭頭部が損傷する可能性が高まることを認識するに至り,この点を解決しなければ,載置形式の半 剛接合構造を実際の構造物に適用できないことが明確となった。 上記課題の解決に当たり,本件発明では,杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度を高強度にして,杭頭部のコンクリート強度を基礎のコンクリート強度と比較して大きくすることにより,杭頭部の損傷を防止して安全性を高めるとともに,杭と基礎を含めた下 部構造体の工事費を削減することを可能としたものである。 このように,本件発明は,地震時の性状や性能が未解明であり,設計基準等はもとより,半剛接合構造の構造解析を行うための解析モデルさえも存在しない状況において,着想のみにすぎず,開発の黎明期にあった載置形式の半剛接合構造の安全性を確保するため,数々の実験とその結果を用いた解析による検証を重ねて得られた知 見に基づいており,その実用化に必要不可欠な技術を提供するものである。したがって,本件発明の全ての構成要件を適用することにより,初めて載置形式の半剛接合構 いた解析による検証を重ねて得られた知 見に基づいており,その実用化に必要不可欠な技術を提供するものである。したがって,本件発明の全ての構成要件を適用することにより,初めて載置形式の半剛接合構造を実際の構造物に適用することが可能となり,基礎・杭工事費の低減効果が実現されることになる。 これに対し,被告は,被告各構造による基礎・杭工事費の低減効果は,半剛接合構造という従来技術によるものにすぎない旨主張するが,同主張は,本件発明の出願当時の技術水準に関して事後的に推測した誤った考えに依拠するものであり,失当である。 (b) 被告は,構成要件Bに係る構成について,杭頭部が損傷等するか どうかは,杭頭部に生じた応力が杭頭部の強度を超えるか否かの問題であり,杭頭部が損傷等するかどうかと杭頭部及びコンクリート造基礎の設計基準強度の大小関係とは無関係であって,支圧強度の考え方からも,許容応力度の考え方からも,コンクリート造基礎の設計基準強度を境目とすること自体に技術的意義はなく,需要喚起 等に寄与しないと主張する。 しかしながら,別件審決2においても説示されているように,本件発明の作用効果は,いかなる場合でも杭頭部が損傷することはないというような絶対的効果を意図していないことは明らかである上,構成要件Bに規定される①「場所打ちコンクリート杭の杭頭部にお けるコンクリートの設計基準強度は,前記コンクリート造基礎にお けるコンクリートの設計基準強度と比較して大きい」場合は,「コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度」を基準として見れば,杭と基礎の設計基準強度の大小関係が異なる他の態様である,②「場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度」が「コンクリート造基礎におけるコ の設計基準強度」を基準として見れば,杭と基礎の設計基準強度の大小関係が異なる他の態様である,②「場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度」が「コンクリート造基礎におけるコンクリートの 設計基準強度」と同じ場合や③「場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度」が「コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度」と比較して小さい場合よりも,「場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度」は大きくなり,それに伴い,実際のコンクリートの強度及 び許容応力度も,②の場合や③の場合の実際のコンクリートの強度及び許容応力度と比較して大きくなることは明らかであり,その分,耐力の増強が図られているといえる。よって,本件発明の構成要件Bに係る前記①の構成には技術的意味がある。 そして,当該構成要件が技術的意義を有することは,別件審決2 についての審決取消訴訟の判決でも認められている。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 b 被告の技術力,信用,実績及び知名度並びに他の特許発明の実施等について被告は,原告より10年程度遅れて,原告同様の実験を開始し,特 許権を侵害した技術を採用することにより,原告の建設する本件発明を実施した構造物と競合した被告各構造物を開発した。 被告の上記行為は,特許権侵害行為によって初めて可能となったものであり,特許権で守られるべき原告の先駆者としての地位を奪い,自らの価格競争力を高め,原告の受注機会を排除することにより受注 を獲得するに至ったものである。 仮に,被告の主張のとおり,被告各構造物に被告が保有する複数の特許発明及び特殊工法が使用されていたとしても,被告各構造物は,本件発明の特徴を備えていた を獲得するに至ったものである。 仮に,被告の主張のとおり,被告各構造物に被告が保有する複数の特許発明及び特殊工法が使用されていたとしても,被告各構造物は,本件発明の特徴を備えていたからこそ,原告の建設する本件発明を実施した構造物と競合するものとして原告の構造物を排除し,被告が受注を獲得できたものである。 したがって,被告による本件特許権の侵害行為がなければ原告の取引機会の消失がなかったことは明らかであり,被告の信用及び実績等並びに被告の自社技術が採用されている等の事情により,損害額の推定が覆滅されるものではない。 なお,仮に,被告各構造物に被告の自社技術が使用されていたとし ても,被告各構造物それぞれに使用されている技術が異なっており,しかも,具体的な使用態様等に関して何ら立証されていないことから,被告各構造物の受注に関していかなる影響を及ぼしているのか不明である。 (イ) シェアに応じた減額について 被告は,仮に,被告が本件発明を実施しないことにより,被告に対して発注しない需要者が存在していたとしても,そのうち,約89%以上は,原告ではなく,被告以外の競業他社に発注したことが明らかであると主張する。 この点,平成23年当時,日本国内には,連結売上高が9700億円 を超えるいわゆるスーパーゼネコンと称される5社の総合建設会社(原告,被告,清水建設株式会社,鹿島建設株式会社及び株式会社竹中工務店)が存在しており,各社は,同規模の売上高を有し,激しい受注競争を行っていた。そして,建築される構造物が所定の性能を有していることは発注を決める前提条件であり,上記各社の認知度及び技術力等には 著しい差異がなかった状況の下,需要者にとっては,総構築費用の多寡 が発注の重要な判断要 が所定の性能を有していることは発注を決める前提条件であり,上記各社の認知度及び技術力等には 著しい差異がなかった状況の下,需要者にとっては,総構築費用の多寡 が発注の重要な判断要素となっていた。 そのため,本件発明を実施している被告各構造が採用されることにより,多額の基礎・杭工事費を削減することが可能となり,総工費の削減に大きく寄与する結果,受注に際して,大きく競争上の優位性(価格優位性)を確保できたものである。 したがって,被告以外の競業他社が存在していたとしても,被告各構造を採用した構造物が存在していなければ,相対的に原告の優位性が向上し,受注機会が大きく増加し得ることになっていたものであり,被告主張の上記理由により,損害額の推定が覆滅されるものではない。 (ウ) 以上によれば,被告各構造についての本件発明の実施について,特許 法102条2項の推定を覆滅すべき事情はない。 仮に,被告各構造に関し,上記推定の覆滅が認められた場合には,当該覆滅部分についても,無許諾の実施であることには変わりがない以上,同条3項による実施料相当額の損害が認められるべきである。 (2) 特許法102条3項による損害額について ア完成工事高について実施料相当額の算定に当たって考慮すべき完成工事高は,前記(1)イの杭全体及び基礎の完成工事高と同じである。 イ相当な実施料率について(ア) 統計上の平均的な実施料率について 本件発明が属する技術分野である「建造物」に関し,近年の統計上の平均的な実施料率は3.8%(甲82)であり,本件特許権を侵害した者との関係で事後的に定められるべき,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額を算定する料率は,当該実施料率を下回るものではない。 (イ) 類似する特許発明 8%(甲82)であり,本件特許権を侵害した者との関係で事後的に定められるべき,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額を算定する料率は,当該実施料率を下回るものではない。 (イ) 類似する特許発明の実施料率について 原告は,本件発明と類似する杭と基礎との半剛接合構造の特許発明に 関し,特許第3661997号(特願2001-46195 構造物基礎の支持構造)及び特許第4116811号(特願2002-1188 09 コンクリート造基礎の支持構造)を有しており,他社に対して実施許諾を行っている。 これらの2件の特許に関する実施許諾契約の実施料率(定額実施料/ 杭及び基礎の完成工事高相当額)は●(省略)●%である。そして,これらの特許は,それぞれ関連する2件の特許であること,当該実施許諾契約が類似特許の権利化前に行われていること,及び,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき実施料率は通常の実施料率に比べて自ずと高額になること等を考慮すれば,2件の特許のそれぞれの実施 料率は,平均実施料率3.8%を下回るものとはいえない。 (ウ) 本件発明のライセンス実績についてa 本件発明についてのライセンス実績はない。 b 別件審決1に係る審決取消訴訟の中で,原告と熊谷組は,熊谷組が,当該審決取消訴訟及び関連特許の無効審判請求の取下げを行い,和解 金を支払うことを条件に,原告が熊谷組に対して各特許権に基づく権利行使をしないことを内容とする和解(以下「別件和解」という。)をした。 しかしながら,別件和解は,一般的な実施許諾契約とは異なるものであるから,本件発明の実施料率を算定するに当たり,その和解金額 を根拠とすべきではない。 仮に,別件和解が実質的に本件発明の実施許諾契約と評価され得るとしても, 実施許諾契約とは異なるものであるから,本件発明の実施料率を算定するに当たり,その和解金額 を根拠とすべきではない。 仮に,別件和解が実質的に本件発明の実施許諾契約と評価され得るとしても,別件和解は,対象製品の本件発明の技術的範囲への属否や本件特許が無効にされるべきものか否かが明確でない段階でされたものであったこと,関連特許の無効審判請求を取り下げることが内容と されていること,当時,建設業界全体の業績悪化が深刻であったため, 原告は,建設業界のリーディングカンパニーとしての配慮から,低額の和解金額とせざるを得なかったことといった事情が考慮されるべきである。 そのため,別件審決2のとおり,本件特許が無効にされるべきものではないことが明確であると判断され,かつ,本件訴訟において,被 告各構造が本件発明の技術的範囲に属し,被告の行為が権利侵害に当たると判断される場合には,実施料率を定めるに当たり,上記の和解金額に基づかなければならない必然性はなく,それよりも高額とされるべきである。 c 前記bの熊谷組との紛争においては,熊谷組と同じ工法を使用して いた●(省略)●が存在し,原告は,熊谷組との和解と併せて,●(省略)●和解をすることとした。 したがって,仮に,熊谷組との和解が実質的に本件発明の実施許諾契約と評価され得るとしても,本件訴訟における実施料率を定めるに当たって考慮要素となり得る和解金額は,●(省略)●受領した和解 金額の総額を下回るものではない。 (エ) 本件発明の価値について前記(1)オ(ア)aのとおり,本件発明は大きな技術的価値を有している。 したがって,少なくとも,前記(ア)の平均的な実施料率が減額されるものではない。 (オ) 本件発明の実施料率について以上によ オ(ア)aのとおり,本件発明は大きな技術的価値を有している。 したがって,少なくとも,前記(ア)の平均的な実施料率が減額されるものではない。 (オ) 本件発明の実施料率について以上によれば,本件特許権侵害についての本件発明の実施料率は3. 8%を下らない。 ウ実施料相当額について特許法102条3項により算定される損害額である,被告各構造の構築 についての実施料相当額は,被告各構造物における杭全体及び基礎の各完 成工事高の3.8%に当たる別紙5「原告による損害額計算表」の「102条3項による損害額(万円)」欄記載の各金額(合計9500万円)を下回らない。 エ時機に後れた攻撃防御方法であるとの主張について原告は,損害額の算定に要する各種資料を有しておらず,本件計算鑑定 の結果が出るまで,損害額について概括的に主張せざるを得なかった。 したがって,本件計算鑑定の結果を受けて,損害額の主張を変更し,特許法102条3項による損害額の主張をすることは,時機に後れた攻撃防御方法の提出には当たらず,また,訴訟を遅滞させるものでもない。 (3) 特許法105条の3による損害額について 前記(1)ウのとおり,●(省略)●における実施についても被告の限界利益は生じているものであるが,本件計算鑑定書では,●(省略)●における杭全体の限界利益についてゼロと算定しており,その原因となる状況は明らかでないとされている。 仮に,特許法102条2項の損害が認められない場合,●(省略)●にお ける実施による損害については,「損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難」な場合に該当するといえるから,同法105条の3の規定に基づき,相当な損害額が認定されるべきであり,その額は,少な は,「損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難」な場合に該当するといえるから,同法105条の3の規定に基づき,相当な損害額が認定されるべきであり,その額は,少なくとも前記(2)の実施料相当額を下らない。 (4) 小括 以上のとおり,被告が被告各構造の構築において本件発明を実施して本件特許権を侵害したことによる原告の損害額は,特許法102条2項によって算定すると合計1億5000万円,同条3項によって算定すると合計9500万円となる。また,仮に,●(省略)●における実施について損害額が算定できない場合には,同法105条の3の規定に基づく相当な損害額が認定 されるべきである。 (被告の主張)(1) 特許法102条2項による損害額についてア限界利益額算定の対象について(ア) 本件発明の対象は,「コンクリート造基礎」を「支持」する構造部分であるから,本件発明の技術的範囲に含まれるのは,本来,コンクリー ト造基礎を支持している部分である鋼管コンクリート部のみであり,少なくとも,コンクリート造基礎は,本件発明の技術的範囲に含まれず,限界利益額算定の対象とはならない。 原告は,本件発明の効果がコンクリート造基礎にも及ぶと主張するが,原告が基礎に及ぶと主張する効果は,従来技術である半剛接合構造を採 用したことによる効果であり,本件発明による効果とはいえない。仮に,本件発明により杭頭部の損傷等を防止するという効果があるとしても,これは,あくまで杭頭部についての効果であり,コンクリート造基礎に及ぶものではない。 (イ) また,被告各構造における本件発明の実施範囲は,「コンクリート造 基礎の支持構造」という部品部分においてのみであることからも,特許法102条2項 クリート造基礎に及ぶものではない。 (イ) また,被告各構造における本件発明の実施範囲は,「コンクリート造 基礎の支持構造」という部品部分においてのみであることからも,特許法102条2項における損害額の推定においては,当該部品部分に係る利益額のみを問題とするのが相当である。 (ウ) したがって,被告各構造物に係る限界利益額を算定するに当たり,「コンクリート造基礎」を対象に加えるべきではない。 イ杭全体の完成工事高について(ア) 被告各構造物については,被告と施主との間で締結された契約の契約明細が存在する。これは,被告と施主との間での合意内容を示すものであり,被告と施主との間で杭の代金を以下の各金額で合意したことが明確に記載されている。 被告構造物1 ●(省略)●円 被告構造物2 ●(省略)●円被告構造物3 ●(省略)●円被告構造物5 ●(省略)●円被告構造物6 ●(省略)●円被告構造物7 ●(省略)●円 したがって,被告の限界利益額を算定するに当たっては,これらの金額を採用すべきである。 (イ) 本件計算鑑定書では,杭全体の売上高として前記(ア)の金額を採用すると限界利益額が赤字となるという極めて便宜的な理由で,本来採用すべきこれらの数字を採用せず,変動費及び個別固定費から逆算して,極 力利益が出るように売上高を推計しているが,法的に,当事者間で合意した金額こそが売上であることは明らかであり,この点において,本件計算鑑定書の計算は誤りである。 ウ杭全体についての被告の限界利益額(ア) 前記イ(ア)の杭の売上高を前提として,本件計算鑑定書に示された変 動費及び個別固定費を用いて計算するならば,杭全体の限界利益額は次のとおりとなる。 被告構造物1 ● の限界利益額(ア) 前記イ(ア)の杭の売上高を前提として,本件計算鑑定書に示された変 動費及び個別固定費を用いて計算するならば,杭全体の限界利益額は次のとおりとなる。 被告構造物1 ●(省略)●円被告構造物2 ●(省略)●円被告構造物3 ●(省略)●円 被告構造物5 ●(省略)●円被告構造物6 ●(省略)●円被告構造物7 ●(省略)●円(イ) このように,仮に,被告が被告各構造物の杭において本件発明を実施しているとしても,本件発明が被告の利益獲得に寄与していないことは 明らかである。 本件計算鑑定書においては,●(省略)●について,限界利益額がマイナスであるからゼロとして計算しているが,赤字の物件について,その分の変動費及び個別固定費は被告が支出しているのであり,その事実をなかったこととし,利益額をゼロとして計算する根拠は存在せず,この部分は,当然,マイナスとして計算し,他の構造物に係る限界利益額 と通算すべきものである。 エ推定覆滅事由について(ア) 本件発明の寄与度a 本件発明の技術的意義について本件発明に従来周知の杭頭半剛接合構造と異なる点があるとしても, それは,構成要件Bの「前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きいこと」という点のみである。 しかしながら,被告のスマートパイルヘッド工法において,基礎と 鋼管コンクリート部(原告の主張によれば,杭頭部の一部とされる。)とのコンクリートの設計基準強度の大小は何らの意味も有しておらず,この点は,被告による利益獲得に何らの貢献もしていない。実際に,スマートパイルヘッド工法を採用した被告構造物4 頭部の一部とされる。)とのコンクリートの設計基準強度の大小は何らの意味も有しておらず,この点は,被告による利益獲得に何らの貢献もしていない。実際に,スマートパイルヘッド工法を採用した被告構造物4,8,9及び10において,鋼管コンクリート部のコンクリートの設計基準強度は,基 礎のコンクリートの設計基準強度よりも大きくなっていないにもかかわらず,その他の被告各構造物と何らの差異は生じていない。そして,顧客においても,その点に何らの関心も示していないのであり,構成要件Bに係る構成に着目して被告各構造物を発注しているわけではない。 被告各構造において,鋼管コンクリート部のコンクリートの設計基 準強度が基礎のコンクリートの設計基準強度よりも大きくなっているものがあるのは,鋼管コンクリート部と基礎のコンクリートの設計基準強度を,それぞれに生じ得る応力が強度を超えないように独立して設計した結果,たまたま,そのような関係になっているにすぎず,かかる大小関係自体に何の意味もない。スマートパイルヘッド工法は, 周知の杭頭半剛接合構造を採用しているが,これに加えて本件発明を実施すること,すなわち鋼管コンクリート部のコンクリートの設計基準強度を基礎のコンクリートの設計基準強度よりも高くするという構成を採用することによる効果は存在しない。 したがって,本件発明の技術的意義はなく,その寄与度は無いに等 しいから,本件発明が被告の利益獲得に寄与していないことは明らかである。 b 被告の技術力,信用,実績及び知名度並びに他の特許発明の実施等について被告による利益獲得は,主に,被告の技術力,信用,実績及び知名 度によるのであって,本件発明によるものではない。 需要者は,信用,実績及び知名度のある被告が施工等を行う 明の実施等について被告による利益獲得は,主に,被告の技術力,信用,実績及び知名 度によるのであって,本件発明によるものではない。 需要者は,信用,実績及び知名度のある被告が施工等を行うからこそ建物を発注するのであり,その際に,建物に含まれるごく一部として,「コンクリート造基礎の支持構造」が付随してくるものにすぎないから,本件発明は被告の利益獲得に貢献していない。このことは,前 記aのとおり,鋼管コンクリート部のコンクリートの設計基準強度が基礎より大きくなっていない構造であっても,需要者は何も気にせずに建物を発注していることなどからも裏付けられている。 また,被告各構造物においては,スマートパイルヘッド工法が採用されているところ,スマートパイルヘッド工法では,本件発明とは異 なる,少なくとも4件の特許(特許5545351号,特許5233 796号,特許5640768号,特許5077123号)に係る発明が実施されている。 さらに,被告各構造物では,スマートパイルヘッド工法のほかにも,被告が開発した画期的な工法が用いられており,これによって顧客は被告に対し被告各構造物を発注している。すなわち,(A)LRV工法 (被告構造物2で採用),(B)デュアル・フレーム・システム工法(被告構造物1,3で採用),(C)ナックルパイル工法(被告構造物3で採用),(D)スマートベース工法(被告構造物5で採用),(E)ウィングビーム工法(被告構造物5で採用),(F)免震構造(被告構造物6,7で採用),(G)粘性制振壁(被告構造物2で採用)といっ た特殊な工法が用いられており,しかも,被告は,それぞれの工法について様々な特許を取得している。 このように,被告各構造物においては,それぞれ,品質向上,工期短縮,コ 造物2で採用)といっ た特殊な工法が用いられており,しかも,被告は,それぞれの工法について様々な特許を取得している。 このように,被告各構造物においては,それぞれ,品質向上,工期短縮,コスト低減,安全性向上,広い空間の実現等に資する技術が採用されており,これらの技術の需要者に対する訴求力が強力なもので あることは明白である。 他方,本件発明の特徴は,前記aのとおり,単に,コンクリート造基礎のコンクリートよりも杭頭部のコンクリートの設計基準強度を大きくするというものにすぎず,これだけでは杭頭部の安全性すら全く担保されない無意味かつ無価値な技術であり,需要者に対する訴求力 はない。 そうすると,鋼管コンクリート部に関して被告の利益が認められるとしても,それは被告各構造物全体の利益に付随して生じるものにすぎず,かつ,その利益は,結局,上記各工法及びそこに含まれる複数の特許の独占権,被告の技術力,知名度,信用力,実績,広告などの 営業努力等に専ら由来するものであって,本件発明の寄与度は皆無に 等しい。 (イ) シェアに応じた減額原告の建設業界における市場シェアは,平成24年度(平成25年3月期)をベースに計算すると9.76%である。一方,被告の市場シェアは約10.70%であるから,残りの79.54%前後はその他の競 合企業のシェアである。そして,前記(ア)の事情から,本件発明の実施の有無にかかわらず,需要者は被告に対して建物を発注したことは明らかであるところ,仮に,本件発明の実施との関係で被告に対して発注しない需要者が僅かに存在していたとしても,そのうち,約89%以上は,競合企業に発注したことは明らかである。 (ウ) 小括以上によれば,特許法102条2項に基づく損害額を算定する て発注しない需要者が僅かに存在していたとしても,そのうち,約89%以上は,競合企業に発注したことは明らかである。 (ウ) 小括以上によれば,特許法102条2項に基づく損害額を算定するとしても,推定覆滅事由があり,その覆滅割合は99%以上である。 また,原告は,損害推定が覆滅される部分について,特許法102条3項に基づく損害額が認められるべきと主張するが,同主張は争う。 (2) 特許法102条3項による損害額についてア時機に後れた攻撃防御方法原告の特許法102条3項による損害額の主張は,時機に後れた攻撃防御方法の提出として,却下されるべきものである。 すなわち,原告は,平成30年9月12日の第5回弁論準備手続期日に おいて,明確に「特許法102条2項以外の損害論は主張しない。」と述べており,遅くともこの時点で,同項に基づく主張を提出することができたのに,漫然とこれを怠り,提出しなかったのであって,この点に重過失があることは明らかである。 したがって,原告による同項に基づく主張の追加は,重過失により訴訟 の完結を遅延させるものであり,これが時機に後れた攻撃防御方法(民事 訴訟法157条1項)に該当することは明らかである。 加えて,前記のとおり,被告は,特許法102条2項以外の損害は主張しないとの原告の主張を前提に防御活動を行い,同項の限界利益額を対象とする本件計算鑑定にも協力してきたのであり,そうであるにもかかわらず,自らの言明を覆し,同条3項に基づく主張を行うことは,訴訟上の信 義則(民事訴訟法2条)に反することも明白である。 イ売上高について前記(1)イのとおり,被告各構造物については,被告と施主との間で,杭の代金について明確に合意されており,同(ア)記載の金額が杭の (民事訴訟法2条)に反することも明白である。 イ売上高について前記(1)イのとおり,被告各構造物については,被告と施主との間で,杭の代金について明確に合意されており,同(ア)記載の金額が杭の売上であることは明らかである。しかも,特許法102条3項との関係では,本件計 算鑑定において行われた,限界利益額をプラスにするといった便宜的な考慮は一切妥当しないから,より一層,上記の契約における金額を売上高として採用すべきものである。 ウ相当な実施料率について(ア) 実際の実施許諾契約における実施料率について 本件発明の実際の実施許諾契約においては,原告が主張する3.8%という高額の実施料率は定められていない。 (イ) 他の特許発明の実施料率について原告は,他の2つの特許発明の実施料率が5.2%であることから,本件発明の相当実施料率も統計上の平均実施料率である3.8%を下回 るものではないと主張する。 しかしながら,上記の他の特許発明に係る実施許諾契約については,その許諾を受ける者や,その許諾の対象となる建築物等が全く特定されていない上,同契約を締結しなければならなかった状況も不明であるし,原告から提出された資料は,大半が黒塗りされているため,詳細な条件 や許諾料の算定根拠も不明である。 したがって,このような前提の全く不明な個別の案件にかかる対価の額から実施料率のようなものを導き出したとしても,これを一般化することは許されない。 (ウ) 特許発明の技術内容や重要性,代替可能性についてそもそも,被告各構造物において本件発明を実施しなくとも何らの技 術的問題も生じないことは,それらのうちの約半分で本件発明を実施せずに問題なく施工,引渡しがされていることから明らかである。したがって も,被告各構造物において本件発明を実施しなくとも何らの技 術的問題も生じないことは,それらのうちの約半分で本件発明を実施せずに問題なく施工,引渡しがされていることから明らかである。したがって,代替技術が存在するかどうかを検討するまでもなく,本件発明に係る構成は,単に本件発明を実施しない構成によって代替可能である。 したがって,本件発明の技術に重要性はなく,極めて容易に代替可能 であるといえる。 (エ) 本件発明を用いた場合の売上げ及び利益への貢献について前記(1)ウのとおり,被告各構造物においては,杭について利益が出ておらず,むしろ損失が発生しているから,本件発明が売上及び利益に貢献していないことは明らかである。 また,被告各構造物のうちの約半分で,本件発明が実施されていないにもかかわらず,何らの問題もなく施工及び引渡しがされていることからしても,本件発明の実施は,需要者との関係で何らの意味も有していないといえる。 (オ) 小括 以上によれば,本件発明の相当な実施料率は,最大限多く見積もっても0.1%を上回るものではない。 (3) 特許法105条の3による損害額について原告の主張は争う。 この主張についても,特許法102条3項による損害額の主張と同様に, 時機に後れた攻撃防御方法であるから,却下されるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載事項等(1) 本件明細書(甲2)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する【図1】ないし【図3】については,別紙6「本件明細書の図面」参照)。 ア 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,杭によるコンクリート造基礎の支持構造に関する。 イ 【0002】【従来の技術】従来,例えば,フーチン 明細書の図面」参照)。 ア 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,杭によるコンクリート造基礎の支持構造に関する。 イ 【0002】【従来の技術】従来,例えば,フーチング基礎20’(コンクリート造基礎)を,鋼管中空 杭10’により支持するための支持構造は,以下のように両者を剛接合することにより行うことが一般的であった。 【0003】すなわち,第1の接合構造50は,図3(a)に示すように,鋼管中空杭10’の上端部をフーチング基礎20’の内部に貫入し,当該鋼管中空杭 10’の中空部における所定位置に底板13’を設け,当該底板13’の上部の中空部内に中埋コンクリート14’を充填して,フーチング基礎20’と一体化して剛接合する。そして,接合部に生じる曲げ応力及びせん断応力(以下,「曲げ応力等」という場合がある)に抵抗させるために,前記中埋めコンクリート14’の充填部からフーチング基礎20’内に突出 させた杭軸方向の軸方向補強鉄筋35’と当該軸方向補強鉄筋35’を囲繞する補強帯筋36’(以下,「補強鉄筋」という場合がある)をそれぞれ複数本配筋することにより,接合部を構成する構造とするものである。 【0004】また,第2の接合構造60は,図3(b)に示すように,鋼管中空杭10’ の上端部から,その杭径以上の長さをフーチング基礎20’の内部に貫入 し,当該鋼管中空杭10’の中空部における所定位置に底板13’を設け,当該底板13’の上部の中空部内に中埋コンクリート14’を充填してフーチング基礎20’と一体化することにより,鋼管中空杭10’の貫入によって接合部に生じる曲げ応力等に抵抗する構造とするものである。 ウ 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし,前記 グ基礎20’と一体化することにより,鋼管中空杭10’の貫入によって接合部に生じる曲げ応力等に抵抗する構造とするものである。 ウ 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし,前記第1の接合構造50を採用した場合には,フーチング基礎20’と鋼管中空杭10’とを剛接合したことにより発生する曲げ応力等が過大となるため,大量に補強鉄筋を配筋しなければならず,過大な断面を有するフーチング基礎20’とする必要があった。加えて,補強鉄筋がフ ーチング基礎20’の鉄筋(図示せず)と干渉してしまうため,配筋工事に支障をきたすことになってしまっていた。 また,第2の接合構造60を採用した場合にも,鋼管中空杭10’の貫入部が,フーチング基礎20’の鉄筋と干渉してしまうという,第1の接合構造50を採用した場合と同様の問題が生じてしまっていた。 【0006】さらに,近年における研究の進展から,フーチング基礎20’と鋼管中空杭10’との接合部に作用する荷重と応力の状態の関係についての解析が進んできており,地盤条件,荷重条件或いは施工方法等により,必ずしも前記接合部を剛接合する必要がない箇所が設計段階で明らかになることが 多くなってきている。ところが,そのような場合であっても,前記支持構造に代替する方法が開発されていないために,画一的に前記支持構造を採用せざるを得ず,その結果,支持構造の設計作業が繁雑になるとともに,過大設計を余儀なくされ,また,施工上においても,フーチング基礎20’に配筋する際の作業効率が低下し,施工費用が増加するという問題が生じ ることになってしまっていた。 【0007】本発明は,前記の問題点を解決するためになされたものであり,コンクリート造基礎や杭が大きな水平力を受けた場合に するという問題が生じ ることになってしまっていた。 【0007】本発明は,前記の問題点を解決するためになされたものであり,コンクリート造基礎や杭が大きな水平力を受けた場合においても,過剰な断面力が発生せず,設計の合理性及び施工の容易性が担保できるコンクリート造基礎の支持構造を提供することを目的としている。 エ 【0008】【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために,本発明のコンクリート造基礎の支持構造(以下,「支持構造」という)は,コンクリート造基礎を,先端部にコンクリートが充填されている杭頭部を有する鋼管中空杭に載置することにより支持 するコンクリート造基礎の支持構造であって,前記鋼管中空杭におけるコンクリートの設計基準強度は,前記コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きいことを特徴としている。 【0009】また,本発明の支持構造は,コンクリート造基礎を,場所打ちコンクリー ト杭に載置した状態で支持するコンクリート造基礎の支持構造であって,前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きいことを特徴としている。 【0010】 ここで,載置とは,コンクリート造基礎を支持するにあたり,当該コンクリート造基礎が杭頭部の上に載せられているだけの状態であり,両者の縁が切れた状態にあることを意味する。なお,コンクリート造基礎に凹部を形成し,当該凹部に鋼管中空杭及び場所打ちコンクリート杭(以下,「鋼管中空杭等」と省略する場合がある)の杭頭部を挿入した状態で当該コンク リート造基礎支持することや,コンクリート造基礎及び鋼管中空杭等の間 で 及び場所打ちコンクリート杭(以下,「鋼管中空杭等」と省略する場合がある)の杭頭部を挿入した状態で当該コンク リート造基礎支持することや,コンクリート造基礎及び鋼管中空杭等の間 で水平力を伝達する凹凸部を設けることは,載置という支持形式を妨げるものではない。 【0011】また,コンクリートは,鋼管中空杭等の杭頭部において硬化して一体になる材料であり,そのような性質を有する材料であればその種類は問わない が,鋼管中空杭を用いた場合に膨張性コンクリートを使用すれば,硬化する際の膨張力で,膨張コンクリートと当該鋼管中空杭を形成する外殻鋼管とが強固に一体化され,応力の伝達を確実に行うことができるため,非常に好適である。 【0012】 本発明によれば,コンクリート造基礎を,鋼管中空杭等に載置した状態で支持することにより,当該コンクリート造基礎等に水平力が作用した場合であっても,両者が互いに鉛直移動,水平移動及び回転を拘束することがないことから,当該コンクリート造基礎及び鋼管中空杭等に過剰な断面力が発生することを防止することができ,設計の合理性及び施工の容易性が 担保されることになる。 また,杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度が,コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きいことから,当該杭頭部に過大な支圧力が作用した場合においても,当該杭頭部が損傷等をすることを防止することができる。 【0013】また,前記コンクリート造基礎の支持構造において,コンクリート造基礎と杭頭部との間に芯鋼材を配筋する構成とすれば,当該コンクリート造基礎と杭頭部との間に発生する引抜力に効果的に抵抗することができる。 オ 【0015】 【発明の実施の形態】 本発明の実施 間に芯鋼材を配筋する構成とすれば,当該コンクリート造基礎と杭頭部との間に発生する引抜力に効果的に抵抗することができる。 オ 【0015】 【発明の実施の形態】 本発明の実施の一形態について,図面を参照して詳細に説明する。 なお,各実施形態の説明において,同一の構成要素に関しては同一の符号を付し,重複した説明は省略するものとする。 【0016】[第1実施形態] 本発明の支持構造Sの第1実施形態は,フーチング基礎20を鋼管中空杭10により支持する構造である。 図1に示すように,鋼管中空杭10は,円形断面の外殻鋼管11を本体部としており,下端部が地盤Gの支持層(図示せず)にまで到達している。 前記外殻鋼管11の上端部(先端部)の中空部における所定位置には底板 13が設けられており,当該底板13の上部の中空部内に後記コンクリート14が充填されている。これにより杭頭部12が形成されており,当該杭頭部12において外殻鋼管11とコンクリート14が一体的になっている。 そして,フーチング基礎20は,鋼管中空杭10に載置した状態で支持さ れている。 【0017】さらに,本発明の支持構造Sの特徴の一つとして,フーチング基礎20におけるコンクリート21と,中空鋼管杭10の杭頭部12に充填されているコンクリート14に関して,異なる設計基準強度のコンクリートが打ち 分けられて用いられている。 【0018】すなわち,杭頭部12のコンクリート14には,フーチング基礎20のコンクリート21よりも設計基準強度が大きいコンクリートが使用されている(前記例では,それぞれのコンクリートの設計基準強度は60N/mm2 と36N/mm2)。このように,設計基準強度が異なるコンクリートを打ち 分け 大きいコンクリートが使用されている(前記例では,それぞれのコンクリートの設計基準強度は60N/mm2 と36N/mm2)。このように,設計基準強度が異なるコンクリートを打ち 分けることは,フーチング基礎20の底部と杭頭部12に作用する支圧応力に対して補強を行うことをその理由とするものであり,特に,断面積が小さい杭頭部12に特に設計基準強度が大きいコンクリートを用いて耐力の増強を図ったものである。 【0019】 なお,前記支持構造Sにおけるフーチング基礎20と杭頭部12との間に芯鉄筋を配筋するものであってもよい。 また,杭頭部12の外殻鋼管11の内壁面において,周方向に鋼材からなる溝状等の横リブ部材や,杭軸方向に縦リブ部材を設けるものであってもよい。この縦リブ部材には,コンクリートとの一体性を確保するために, 貫通孔が形成されていると更に好適である。 【0020】続いて,前記支持構造Sの作用効果について説明する。 地震が発生した場合に,地盤Gと一体である鋼管中空杭10が,当該地盤Gの振動に応答して振動するとともに,フーチング基礎20も鋼管中空杭 10を介して振動する。 【0021】このとき,フーチング基礎20及び鋼管中空杭10は,固有振動周期がそれぞれ異なることから,夫々が別個独立に振動しようとする。すると,フーチング基礎20と杭頭部12との間で摩擦力が発生するため,両者は互 いに水平力を受けることになる。 【0022】しかし,本発明の支持構造Sは,従来の支持構造のようにフーチング基礎及び中空鋼管杭が互いに鉛直移動,水平移動及び回転を拘束する構造ではなく,フーチング基礎20を鋼管中空杭10の上に載置して,その荷重を 面受している構造であるため,当該フーチング基礎20と鋼 及び中空鋼管杭が互いに鉛直移動,水平移動及び回転を拘束する構造ではなく,フーチング基礎20を鋼管中空杭10の上に載置して,その荷重を 面受している構造であるため,当該フーチング基礎20と鋼管中空杭10 に過剰な断面力が発生することを防止することができる。従って,フーチング基礎20と鋼管中空杭10との接合部に多数の補強鉄筋を配筋する必要がないことから,当該フーチング基礎20を過大な断面の構造とすることがなく,加えて,杭頭部に配筋した補強鉄筋が,フーチング基礎の鉄筋と干渉してしまうことがないため,構造が簡単であり,配筋作業の省力化 を図ることができるとともに,施工費用を低減させることができる。 【0023】また,杭頭部12におけるコンクリート14の設計基準強度が,フーチング基礎20におけるコンクリート21の設計基準強度より大きくなるように設定されていることから,当該杭頭部12に過大な支圧力が作用した場 合においても,当該杭頭部12が損傷等をすることを防止することができる。 【0024】[第2実施形態]本発明の支持構造S’の第2実施形態は,第1実施形態の支持構造Sの場 合と異なり,中空鋼管杭10のかわりに場所打ちコンクリート杭10’を用いている(図2参照)。 【0025】そして,本実施形態の支持構造S’においても,場所打ちコンクリート杭10’のコンクリート14には,フーチング基礎20の領域のコンクリー ト21よりも設計基準強度が大きいコンクリートが使用されている。 【0026】さらに,前記フーチング基礎20と場所打ちコンクリート10’の杭頭部12’との間には,当該杭頭部12’の断面中心近傍に定着されている複数本の芯鉄筋30(芯鋼材)が配筋されている。この芯鉄筋30は,フー 前記フーチング基礎20と場所打ちコンクリート10’の杭頭部12’との間には,当該杭頭部12’の断面中心近傍に定着されている複数本の芯鉄筋30(芯鋼材)が配筋されている。この芯鉄筋30は,フー チング基礎20のコンクリート21と,杭頭部12’の間に設けられてい る。 【0027】従って,本実施形態の支持構造S’によれば,杭の種類は異なるが,第1実施形態の支持構造Sと同様の作用効果を奏するとともに,フーチング基礎20と杭頭部12’との間に芯鉄筋30を配筋していることから,当該 フーチング基礎20と杭頭部12’との間に発生する引抜力に効果的に抵抗することが可能となる。また,芯鉄筋30が,当該杭頭部12’の断面中心近傍に定着されていることから,当該芯鉄筋30による曲げモーメントの伝達を小さくすることができる。 カ 【0029】 【発明の効果】本発明の支持構造によれば,コンクリート造基礎や杭が大きな水平力を受けた場合においても,過剰な断面力が発生せず,設計の合理性及び施工の容易性を担保することが可能となる(2) 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書には,本件発明に関し,次のよ うな開示があると認められる。 ア杭によるコンクリート造基礎の支持構造において,従来は,杭の上端部を基礎の内部に貫入して,両者を剛接合することが一般的であったが,そのような接合構造を採用した場合には,剛接合したことにより発生する曲げ応力等が過大となるため,大量に補強鉄筋を配筋しなければならず,基 礎の断面を過大なものとする必要があり,また,補強鉄筋が基礎の鉄筋と干渉してしまうため,配筋工事に支障をきたしていた(【0001】ないし0005))。さらに,近年,必ずしも剛接合する必要がない箇所が設計段階で明らかにな する必要があり,また,補強鉄筋が基礎の鉄筋と干渉してしまうため,配筋工事に支障をきたしていた(【0001】ないし0005))。さらに,近年,必ずしも剛接合する必要がない箇所が設計段階で明らかになってきたものの,代替する方法が開発されていないために上記の支持構造を採用せざるを得ない結果,設計作業が繁雑になるととも に,過大設計を余儀なくされ,また,施工上においても,基礎に配筋する 際の作業効率が低下し,施工費用が増加するという問題が生じていた(【0006】)。 イ本件発明は,前記アの問題を解決するために,コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持するコンクリート造基礎の支持構造であって,場所打ちコンクリート杭の杭頭部における設計基準強度 をコンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きいことを特徴とする支持構造を採用した(【0007】,【0009】)。 本件発明によれば,コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持することにより,コンクリート造基礎等に水平力が作用した場合であっても,両者に過剰な断面力が発生することを防止でき,設 計の合理性及び施工の容易性が担保され,また,杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度がコンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きいことから,杭頭部に過大な支圧力が作用した場合においても,杭頭部が損傷等することを防止することができる(【0012】,【0029】)。 2 争点1(被告各構造が本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 構成要件Aの充足性についてア本件発明の「場所打ちコンクリート杭」について(ア) 「場所打ちコンクリート杭」の意義とその範囲についてa 本件特許の特許請 範囲に属するか)について(1) 構成要件Aの充足性についてア本件発明の「場所打ちコンクリート杭」について(ア) 「場所打ちコンクリート杭」の意義とその範囲についてa 本件特許の特許請求の範囲の請求項2においては,「場所打ちコンク リート杭」(構成要件A),「前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部」(構成要件B)との記載がある。 そして,「建築大辞典第2版」(甲15)には,「杭頭(くいがしら,くいあたま,くいとう)」との用語について,「コンクリート杭,鋼管杭,木杭など各種杭の上端部」との記載がある。 これらの記載から,本件発明の「場所打ちコンクリート杭」につい ては,その上端部に「杭頭部」が形成されているものと理解することができる。 b また,本件明細書には,「先端部にコンクリートが充填されている杭頭部を有する鋼管中空杭」(【0008】),「場所打ちコンクリート杭のの杭頭部」(【0009】),「鋼管中空杭10は,円形断面の外殻鋼管1 1を本体部としており,…前記外殻鋼管11の上端部(先端部)の中空部における所定位置には底板13が設けられており,当該底板13の上部の中空部内に後記コンクリート14が充填されている。これにより杭頭部12が形成されており,当該杭頭部12において外殻鋼管11とコンクリート14が一体的になっている。」(【0016】),「場 所打ちコンクリート10’の杭頭部12’」(【0026】)との記載があり,「第1実施形態」の側断面図においては,「鋼管中空杭10」(「外殻鋼管11」)のフーチング基礎20側の先端部に,「コンクリート14」が充填された「杭頭部12」が形成されていること(【図1】(a))が,「第2実施形態」の側断面図においては,「場所打ちコンクリ ート杭10 フーチング基礎20側の先端部に,「コンクリート14」が充填された「杭頭部12」が形成されていること(【図1】(a))が,「第2実施形態」の側断面図においては,「場所打ちコンクリ ート杭10'」のフーチング基礎20側の先端部に,「杭頭部12'」が形成されていること(【図2】(a))が,それぞれ示されている。 上記の各記載及び図面から,鋼管中空杭においては,その本体部である外殻鋼管の上端部(先端部)の中空部にコンクリートが充填されることによって,杭頭部が鋼管中空杭の本体である外殻鋼管と一体的 に形成されており,そのような杭頭部と杭との関係は,本件発明に係る「場所打ちコンクリート杭」にも同様に当てはまるものと理解することができる。 c 以上によれば,本件発明に係る「場所打ちコンクリート杭」は,その先端部(「コンクリート造基礎」を「場所打ちコンクリート杭」の上 方に施工する場合の同杭の上端部)に,同杭と一体的に「杭頭部」が 形成されているものを指すと解するのが相当である。 (イ) 被告各構造の構成についてa 被告各構造の構成要素等証拠(甲3,4,23,38,41,乙7)及び弁論の全趣旨によれば,被告各構造の構成要素,構築方法等について,以下の事実が認 められる。 (a) 被告各構造は,被告が,「スマートパイルヘッド工法」との名称により,一般財団法人日本建築総合試験所から建築技術性能証明を取得して,採用している工法によるものであり,概要,原告説明図1-1及び1-2又は原告説明図2-1及び2-2のいずれかの構 造を有する。 なお,原告説明図の「気中コンクリート」とは大気中で打設したコンクリートを,同「杭主筋」とは杭の鉛直方向に配筋された鉄筋を,同「フープ」とは複数本の杭主筋を囲繞するように直 造を有する。 なお,原告説明図の「気中コンクリート」とは大気中で打設したコンクリートを,同「杭主筋」とは杭の鉛直方向に配筋された鉄筋を,同「フープ」とは複数本の杭主筋を囲繞するように直角方向に配筋される補強鉄筋(帯筋)を,それぞれ指すものである。 (b) 被告各構造の構築に際し,場所打ちコンクリート杭及びコンクリート造基礎は,概要,以下の工程を順に経ることより施工される。 ① 杭孔掘削工程杭を形成する地盤を掘削して,所定の深さの杭孔を形成する。 ② 杭鉄筋セット工程 上記杭孔内に杭主筋等の杭鉄筋を設置する。 原告説明図2-1及び2-2の構造では,この工程において,芯鉄筋の配筋も行う。 ③ 杭コンクリート打設工程上記杭孔内にコンクリートを打設し,杭軸部を構築する。 ④ 杭頭処理工程 余分に打設した不純物等を含む杭軸部における所定長のコンクリートを除去し(はつり),杭軸部の高さを設計位置にそろえる作業を行う。 被告各構造においては,②で配筋された杭主筋の一部が杭軸部の上部から突き出ている状態になり,原告説明図2-1及び2- 2の構造では,芯鉄筋についても杭軸部の上部から突き出ている状態となる。 ⑤ 杭頭鋼管セット工程杭軸部の上部において,その中心部に杭軸部よりも直径の小さな杭頭鋼管を設置し,当該杭頭鋼管の周囲に杭頭部型枠を設置す る。 ⑥ 杭頭部コンクリート打設工程杭頭鋼管内部及び杭頭部型枠内部に,杭軸部のコンクリートの設計基準強度と比較して高強度のコンクリートを打設し,原告説明図1-2,2-2の杭頭接合部を形成する。 原告説明図2-1及び2-2の構造では,芯鉄筋の上部が杭頭接合部の上部から突き出ている状態となる。 ⑦ 基礎配筋・コンクリート を打設し,原告説明図1-2,2-2の杭頭接合部を形成する。 原告説明図2-1及び2-2の構造では,芯鉄筋の上部が杭頭接合部の上部から突き出ている状態となる。 ⑦ 基礎配筋・コンクリート打設工程基礎の配筋を行って,コンクリートを打設し,(鉄筋)コンクリート造基礎を構築する。 なお,原告説明図の「緩衝材」としてはスタイロフォームなどが用いられる。 b 「杭頭鋼管」,「杭頭接合部」及び「杭軸部」の一体性について前記a(b)③,⑥の工程によれば,原告説明図の「杭軸部」と「杭頭接合部」とは,それぞれ別途にコンクリートが打設されているもので あるが,同④の工程及び原告説明図のとおり,「杭軸部」から上部に突 き出ている杭主筋が「杭頭接合部」にまで配筋されていることに照らし,「杭軸部」及びその上部に位置する「杭頭接合部」は,一体として場所打ちコンクリート杭を形成すると認めるのが相当である。 そして,前記a(b)⑥の工程及び原告説明図によれば,「杭頭接合部」は,「杭頭鋼管」内部及び杭頭部型枠内部に同じ設計基準強度のコンク リートを同時に打設して形成されるものであるから,「杭頭鋼管」及びその内部に打設されたコンクリート(これは,被告説明図の「鋼管コンクリート部」に対応する。)は,「杭頭接合部」と一体のものとして,これに含まれると認めるのが相当である。 以上によれば,「杭頭接合部」は,「杭頭鋼管」及びその内部に打設 されたコンクリート(被告説明図の「鋼管コンクリート部」)を含むものであって,かつ,「杭軸部」の上部に位置し,これと一体となって「場所打ちコンクリート杭」を形成するものであると認められる。 c 被告の主張について被告は,①被告各構造の鋼管が拘束効果を有しており,これによっ て, の上部に位置し,これと一体となって「場所打ちコンクリート杭」を形成するものであると認められる。 c 被告の主張について被告は,①被告各構造の鋼管が拘束効果を有しており,これによっ て,被告説明図の「鋼管コンクリート部」は,回転変形性能,せん断耐力,軸耐力が向上していること,また,②「鋼管コンクリート部」が,基礎及び杭の両方にめり込み,それら両部材と別に動作することから,「鋼管コンクリート部」が力学的にも構造的にも「場所打ちコンクリート杭」と別部材であることは明らかであると主張する。 上記①の点に関し,「建築大辞典第2版」(甲36)においては,「拘束効果」について,「圧縮応力を受ける鉄筋コンクリート部材において,帯筋などで外側から有効に拘束されたコンクリートは,横方向筋の拘束効果によって三軸応力状態下にあり,耐力及び靭力ともに大幅に増大する」ものとの記載があり,スマートパイルヘッド工法につ いて被告従業員が報告した論文(乙他2名「場所打ち杭の杭頭半剛接 接合工法「スマートパイルヘッド工法」」GBRCVol37 No. 3 平成24年7月。以下「甲4文献」という。)においては,スマートパイルヘッド工法の鋼管コンクリート部について,「鋼管による拘束効果により杭頭縮小部の回転変形性能,せん断耐力,軸耐力の向上を図ることを目的としている」との記載がある(なお,甲4文献におけ る「杭頭縮小部」は,被告説明図の「鋼管コンクリート部」に対応するものである。)。 しかしながら,前記bのとおり,被告説明図の「鋼管コンクリート部」がその周囲の部材と同じ設計基準強度のコンクリートを同時に打設して形成されることに照らせば,「杭頭鋼管」を設けることによって 「鋼管コンクリート部」の回転変形性能,せん断耐力,軸 クリート部」がその周囲の部材と同じ設計基準強度のコンクリートを同時に打設して形成されることに照らせば,「杭頭鋼管」を設けることによって 「鋼管コンクリート部」の回転変形性能,せん断耐力,軸耐力がその周囲の部材よりも向上しているとしても,その点によって直ちに「鋼管コンクリート部」と「場所打ちコンクリート杭」の一体性が否定されるものではない。 また,上記②の点については,被告説明図の「鋼管コンクリート部」 が「場所打ちコンクリート杭」とは力学的又は構造的に独立していることを認めるに足りる証拠はないから,「鋼管コンクリート部」が杭と別異に動作するものと認めることはできない。 したがって,被告説明図の「鋼管コンクリート部」が「場所打ちコンクリート杭」に含まれないとの被告の主張は採用することができな い。 (ウ) 被告各構造が本件発明の「場所打ちコンクリート杭」を備えるかについてa 「場所打ちコンクリート杭」の具備とその範囲について前記(イ)によれば,被告各構造において,「杭頭鋼管」及びその内部 に打設されたコンクリートを含む「杭頭接合部」は,「杭軸部」の上部 と一体となることで「場所打ちコンクリート杭」を形成している。そうすると,被告各構造の「杭頭接合部」は,被告説明図の「鋼管コンクリート部」を含め「場所打ちコンクリート杭」の先端部において,同杭と一体的に形成されたものということができ,本件発明の「杭頭部」に該当する。 したがって,被告各構造は,本件発明の「場所打ちコンクリート杭」を備え,その範囲は,本件発明の「杭頭部」に当たる被告各構造の「杭頭接合部」を含み,さらには「杭頭接合部」の一部である被告説明図の「鋼管コンクリート部」を含むものと認められる。 b 別件無効審判1における原告 範囲は,本件発明の「杭頭部」に当たる被告各構造の「杭頭接合部」を含み,さらには「杭頭接合部」の一部である被告説明図の「鋼管コンクリート部」を含むものと認められる。 b 別件無効審判1における原告の主張との関係について (a) 証拠(甲59,乙1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば,別件無効審判1においては,請求人である熊谷組から,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明について,進歩性欠如の無効理由の引用例として乙2公報(別件無効審判1における甲第3号証)及び乙3文献(別件無効審判1における甲第8号証)が提出 されたこと,被請求人である原告が進歩性欠如の無効理由についていずれも争い,別件審決1において,進歩性欠如の無効理由は認められないとの判断がされたことが認められる。 (b) 被告は,原告が,別件無効審判1において進歩性欠如の無効理由を争う際には,乙2発明及び乙3発明について,コンクリートが一 体打設されている部材であっても別部材である旨を主張していた以上,本件訴訟において,コンクリートが一体打設されていることを理由として被告説明図の「鋼管コンクリート部」と「杭頭部」が一体である旨主張することは,別件無効審判1における原告の主張と矛盾するものであり,禁反言違反として許されない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲59,乙1ないし5)及び弁論の全趣旨 によれば,別件無効審判1における原告の主張は,乙2公報の【図1】に関しては柱部18を杭頭部12Aに含めることができないとするもの,乙3文献の図1(b)に関してはパイルキャップと杭頭部との間の接合部を杭頭部に含めることができないとするものであって,それらの理由については,部材同士が一体となるようにコンクリー トが打設されていないと 図1(b)に関してはパイルキャップと杭頭部との間の接合部を杭頭部に含めることができないとするものであって,それらの理由については,部材同士が一体となるようにコンクリー トが打設されていないと説明するものであると認められる。このような別件無効審判1における原告の主張は,一緒にコンクリートが打設された被告説明図の「鋼管コンクリート部」と「杭頭部」が一体である旨の本件訴訟における原告の主張と矛盾するものではない。 (c) したがって,別件無効審判1における原告の主張を理由として, 原告が本件訴訟において「鋼管コンクリート部」と「杭頭部」が一体であると主張することが許されないとはいえず,この点は,前記aの判断を左右するものではない。 イ 「載置」について(ア) 「載置」の意義について a 本件特許の特許請求の範囲の請求項2には,「コンクリート造基礎を,場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持するコンクリート造基礎の支持構造」(構成要件A)との記載がある。 この記載から,「載置」とは,本件発明の「コンクリート造基礎の支持構造」において,「コンクリート造基礎」と「場所打ちコンクリート 杭」との関係に係る「状態」を規定するものであると理解することができる。 b(a) 本件明細書においては,「【従来の技術】」及び「【発明が解決しようとする課題】」として,「従来,例えば,フーチング基礎20'(コンクリート造基礎)を,鋼管中空杭10'により支持するため の支持構造は,以下のように両者を剛接合することにより行うこと が一般的であった。」(【0002】),「すなわち,第1の接合構造50は,図3(a)に示すように,鋼管中空杭10'の上端部をフーチング基礎20'の内部に貫入し,当該鋼管中空杭10'の中空部 が一般的であった。」(【0002】),「すなわち,第1の接合構造50は,図3(a)に示すように,鋼管中空杭10'の上端部をフーチング基礎20'の内部に貫入し,当該鋼管中空杭10'の中空部における所定位置に底板13'を設け,当該底板13'の上部の中空部内に中埋コンクリート14'を充填して,フーチング基礎20 'と一体化して剛接合する。」(【0003】),「しかし,前記第1の接合構造50を採用した場合には,フーチング基礎20'と鋼管中空杭10'とを剛接合したことにより発生する曲げ応力等が過大となる」(【0005】)との記載があり,【図3】(a)において,鋼管中空杭10'の上端部がフーチング基礎20'の内部に貫入し,鋼管 中空杭10'にフーチング基礎20'と一体となった中埋コンクリート14'が充填されている構造が示されており,「【課題を解決するための手段】」として,「本発明の支持構造は,コンクリート造基礎を,場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持するコンクリート造基礎の支持構造であ」る(【0009】)との記載がある。 そして,「建築ヴィジュアル辞典英和対照」(甲21)には,「剛接合」との用語につき,「接合された部材相互間の角度を維持し,あらゆる方向の回転,移動を拘束した構造接合」との記載がある。 これらの記載から,本件発明は,「剛接合」によって生じる問題点を解決するため,「コンクリート造基礎」を「場所打ちコンクリート 杭」が支持する構造として,部材相互間の角度を維持してあらゆる方向の回転,移動を拘束する「剛接合」ではなく,「コンクリート造基礎」を「場所打ちコンクリート杭」に「載置」することにより支持する支持構造を採用したものと理解することができる。 (b) さらに,本件明細書には,「【課題を解決 剛接合」ではなく,「コンクリート造基礎」を「場所打ちコンクリート杭」に「載置」することにより支持する支持構造を採用したものと理解することができる。 (b) さらに,本件明細書には,「【課題を解決するための手段】」とし て,「載置とは,コンクリート造基礎を支持するにあたり,当該コン クリート造基礎が杭頭部の上に載せられているだけの状態であり,両者の縁が切れた状態にあることを意味する。なお,コンクリート造基礎に凹部を形成し,当該凹部に鋼管中空杭及び場所打ちコンクリート杭(…)の杭頭部を挿入した状態で当該コンクリート造基礎支持することや,コンクリート造基礎及び鋼管中空杭等の間で水平 力を伝達する凹凸部を設けることは,載置という支持形式を妨げるものではない。」(【0010】)との記載があり,「【発明の実施の形態】」として,「フーチング基礎20と杭頭部12との間に芯鉄筋を配筋するものであってもよい。」(【0019】),「フーチング基礎20と場所打ちコンクリート10'の杭頭部12'との間には,当該 杭頭部12'の断面中心近傍に定着されている複数本の芯鉄筋30(芯鋼材)が配筋されている。」(【0026】),「フーチング基礎20と杭頭部12'との間に芯鉄筋30を配筋していることから,当該フーチング基礎20と杭頭部12'との間に発生する引抜力に効果的に抵抗することが可能となる。」(【0027】)との記載がある。 そして,「建築大辞典第2版」(甲35)には,建築分野における「縁を切る」との用語につき,「分けること,分離すること,部材と部材とを接合しないこと」との記載がある。 これらの記載から,本件発明における「載置」とは,コンクリート造基礎と杭頭部とが接合されることなく,前者が後者の上に載せ られている ること,部材と部材とを接合しないこと」との記載がある。 これらの記載から,本件発明における「載置」とは,コンクリート造基礎と杭頭部とが接合されることなく,前者が後者の上に載せ られているだけの状態であるが,コンクリート造基礎に凹部を形成し,当該凹部に場所打ちコンクリート杭の杭頭部を挿入する構造,コンクリート造基礎と場所打ちコンクリート杭との間で水平力を伝達する凹凸部を設ける構造,コンクリート造基礎と杭頭部との間に芯鉄筋を配筋し,両者の間に発生する引抜力に効果的に抵抗するこ とができる構造を設けるものも含むと理解することができる。 c 以上によれば,本件発明において,コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に「載置」するとは,両者について剛接合せず,コンクリート造基礎が杭頭部の上に載せられているだけの状態を指し,かつ,その状態には,コンクリート造基礎の凹部に杭頭部を挿入した構造,同基礎及び場所打ちコンクリート杭との間で水平力を伝達する凹 凸部を設ける構造及び両者の間に引抜力に抵抗するための芯鉄筋を配筋する構造を設けたものも含むものと解するのが相当である。 (イ) 被告各構造が本件発明の「載置」する構成を備えるかについて前記ア(イ)によれば,被告各構造は,前記ア(イ)a(b)の①ないし⑦の工程に従い,場所打ちコンクリート杭の施工をした後,その上に接するよ うに基礎のコンクリートを打設するものであり,場所打ちコンクリート杭の上部とコンクリート造基礎との間には,原告説明図2-1及び2-2の構造において芯鉄筋が存在していることを除けば,両者を接合する部材等は存在していないものである。 そして,前記(ア)cのとおり,本件発明の「載置」は,コンクリート造 基礎を場所打ちコンクリート杭に剛接合せず 筋が存在していることを除けば,両者を接合する部材等は存在していないものである。 そして,前記(ア)cのとおり,本件発明の「載置」は,コンクリート造 基礎を場所打ちコンクリート杭に剛接合せず,コンクリート造基礎が杭頭部の上に載せられているだけの状態であって,かつ,両者の間に芯鉄筋を配筋する場合を含むものである。 したがって,被告各構造は,いずれも,本件発明の「載置」する構成を備えるものと認められる。 (ウ) 被告の主張についてa 被告説明図の「基礎部」と「杭頭部」(「場所打ちコンクリート杭」)との離間について被告は,被告各構造において,被告説明図の「基礎部」と「杭頭部」とは,「鋼管コンクリート部」によって接合されており,「基礎部」と 「場所打ちコンクリート杭」とは,互いに離間していて,接していな いから,被告各構造は「載置」の要件を満たさないと主張する。 しかしながら,前記ア(イ)のとおり,被告説明図の「鋼管コンクリート部」は「場所打ちコンクリート杭」に含まれるものであるから,被告の上記主張は理由がない。 b 水平方向の拘束について (a) 被告は,被告各構造において,被告説明図の「鋼管コンクリート部」は,「基礎部」に隙間なく埋め込まれていて,「基礎部」と「場所打ちコンクリート杭」とは,互いに少なくとも水平方向に拘束しているから,「基礎部」と「場所打ちコンクリート杭」との縁が切れておらず,「載置」の要件を満たさない旨主張する。 この点,前記ア(イ)aによれば,被告各構造においては,原告説明図のとおり,杭軸部よりも直径の小さな杭頭鋼管の存在により,場所打ちコンクリートの杭頭接合部において凸部が形成されており,その上にコンクリート造基礎のコンクリートが打設されることによって,同 説明図のとおり,杭軸部よりも直径の小さな杭頭鋼管の存在により,場所打ちコンクリートの杭頭接合部において凸部が形成されており,その上にコンクリート造基礎のコンクリートが打設されることによって,同基礎には杭頭接合部の凸部が隙間なく挿入される凹部が形 成されているものと認められる。 しかしながら,前記(ア)cのとおり,「載置」に該当する構造については,コンクリート造基礎の凹部に杭頭部を挿入した構造も含むと認められる以上,上記のとおりコンクリート造基礎の凹部に杭頭接合部の凸部が隙間なく挿入されていても,そのことによって「載 置」の要件が否定されるものではない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (b) 被告は,本件明細書の「本発明によれば,コンクリート造基礎を,鋼管中空杭等に載置した状態で支持することにより,当該コンクリート造基礎等に水平力が作用した場合であっても,両者が互いに鉛 直移動,水平移動及び回転を拘束することがない」(【0012】)と の記載を根拠として,「載置」に該当する「コンクリート造基礎」と「場所打ちコンクリート杭」の縁が切れた状態とは,少なくとも「両者が互いに鉛直移動,水平移動及び回転を拘束することがない」ものであり,これに対して,被告各構造は,被告説明図の「鋼管コンクリート部」が「杭頭部」に隙間なく埋め込まれていて,互いに 少なくとも水平方向に拘束しているから,「載置」に該当しないと主張する。 しかしながら,上記の記載は,前記(ア)b(a)のとおり,従来の「剛接合」との対比をする趣旨の記載であると理解することができ,他方,甲4文献によれば,被告各構造を形成するスマートパイルヘ ッド工法も,杭と基礎とを半剛接合とすることによって,剛接合による問題点を解決 の対比をする趣旨の記載であると理解することができ,他方,甲4文献によれば,被告各構造を形成するスマートパイルヘ ッド工法も,杭と基礎とを半剛接合とすることによって,剛接合による問題点を解決することを目的とするものと認められる。 また,証拠(甲4,37)及び弁論の全趣旨によれば,被告各構造において,基礎の凹部に挿入される杭の凸部の高さは,杭軸径や杭頭鋼管の径と比較して小さいものに留まり(甲4文献に紹介され ている施工例(同文献8ないし10頁)では,凸部の高さは10センチメートルであるのに対して,杭軸径は210センチメートルないし230センチメートル,杭頭鋼管の径は杭軸径の約0.6倍とされている。),その挿入の程度が大きいとはいえず,よって,杭頭の固定度合も大きいとはいえない(なお,甲4文献によれば,杭頭 固定度は,杭頭鋼管径を小さくするほど低減するところ,上記施工例の杭頭鋼管径は,せん断力及び軸力を十分に伝達できる範囲で可能な限り小さく設計されている。)。 以上の点を考慮すれば,被告各構造において,上記のとおり,コンクリート造基礎の凹部に杭頭接合部の凸部が隙間なく挿入されて いることによって,被告各構造における「載置」の要件が否定され ることはないというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウ前記ア及びイ及び弁論の全趣旨によれば,被告各構造は,いずれも,構成a-1,a-2及びa-3を備えるものであり,構成要件Aを充足するものと認められる。 (2) 構成要件Bの充足性についてア被告各構造が本件発明の「杭頭部」を備えるかについて前記(1)ア(ウ)のとおり,被告各構造の「杭頭接合部」は,本件発明の「杭頭部」に該当するから,被告各構造は,「杭頭部」を備える 性についてア被告各構造が本件発明の「杭頭部」を備えるかについて前記(1)ア(ウ)のとおり,被告各構造の「杭頭接合部」は,本件発明の「杭頭部」に該当するから,被告各構造は,「杭頭部」を備えるものと認められる。 イ被告各構造物が本件発明の「杭頭部」及び「コンクリート造基礎」の「コンクリートの設計基準強度」を備えるかについて証拠(乙7)及び弁論の全趣旨によれば,被告各構造物のうち,被告構造物1,2,3,5,6及び7は,場所打ちコンクリート杭の杭頭部のコンクリートの設計基準強度が基礎部のコンクリートの設計基準強度よりも 大きいものであること,他方で,被告構造物4,8,9及び10は,場所打ちコンクリート杭の杭頭部のコンクリートの設計基準強度と基礎部のコンクリートの設計基準強度とが同じであるか,杭頭部のコンクリートの設計基準強度の方が基礎部のコンクリートの設計基準強度より小さいものであることが認められる。 したがって,被告各構造のうち,被告構造物1,2,3,5,6及び7におけるものは,構成bを有していると認められるから,構成要件Bを充足するが,被告構造物4,8,9及び10は,構成bを有しているとは認められないから,構成要件Bを充足しないというべきである。 これに対し,原告は,被告従業員作成の陳述書(乙7)の信用性を争う が,その記載内容の不自然性や不合理性等を具体的に指摘するものではな いから,原告の同主張は上記の認定を覆すに足りるものではない。 また,被告は,被告各構造の「鋼管コンクリート部」が構成要件Bの「杭頭部」に該当しないことを理由として,被告各構造はいずれも構成要件Bを充足しないと主張するが,前記アのとおり,「鋼管コンクリート部」は構成要件Bの「杭頭部」に該当するから,被告の同主 成要件Bの「杭頭部」に該当しないことを理由として,被告各構造はいずれも構成要件Bを充足しないと主張するが,前記アのとおり,「鋼管コンクリート部」は構成要件Bの「杭頭部」に該当するから,被告の同主張は採用すること ができない。 (3) 構成要件Cの充足性について前記(1)ア(イ)によれば,被告各構造は,コンクリート基礎の支持構造(構成c)であると認められるから,構成要件Cを充足する。 (4) 小括 以上によれば,被告各構造のうち,被告構造物1,2,3,5,6及び7におけるものは,本件発明の技術的範囲に属し,その余のものは,本件発明の技術的範囲に属しない。 3 争点2(損害の発生の有無及びその額)について(1) 不法行為による損害の発生について 前記2(4)のとおり,被告各構造のうち,被告構造物1,2,3,5,6及び7におけるものは,本件発明の技術的範囲に属するから,被告が,これらの構造を構築することは,物の生産として,本件発明の実施に当たり,本件特許権侵害の不法行為が成立するというべきである。 原告は,この不法行為による原告の損害額について,選択的に,特許法1 02条2項,同条3項又は同法105条の3に基づく主張をするものと理解できるので,以下,この順に損害額を検討する。 (2) 特許法102条2項による損害額についてア特許法102条2項の利益の意義特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は, 侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を販売することによ りその販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきである。 イ限界利益額算定の対象となるべき侵害品について(ア) りその販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきである。 イ限界利益額算定の対象となるべき侵害品について(ア) 本件発明の名称は,「コンクリート造基礎の支持構造」であり,本件発明に係る特許請求の範囲(請求項2)においても,「コンクリート造基 礎を,場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持するコンクリート造基礎の支持構造」と記載されていることから,本件発明において,コンクリート造基礎は,支持構造によって支持される対象と位置付けられているものと認められる。 また,上記特許請求の範囲の記載において,「前記場所打ちコンクリー ト杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度は,前記コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度と比較して大きい」と記載されていることから,本件発明においては,前記場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度を大きくすることに主眼があり,コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度 は,その比較対象として位置付けられているに留まるものと認められる。 そして,前記1(2)で認定したところに照らせば,本件明細書においても,コンクリート造基礎について,場所打ちコンクリート杭に支持される客体であって,かつ,場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度の比較の対象であるとされていると理解するこ とができ,この理解は,【図1】(a)及び【図2】(a)では,「支持構造(コンクリート造基礎の支持構造)」を示す符号である「S」及び「S’」の矢印により,基礎を含む下部構造全体ではなく,場所打ちコンクリート杭の杭頭部の上部が指し示されていることとも整合的である。 以上に照 クリート造基礎の支持構造)」を示す符号である「S」及び「S’」の矢印により,基礎を含む下部構造全体ではなく,場所打ちコンクリート杭の杭頭部の上部が指し示されていることとも整合的である。 以上に照らせば,本件において上記限界利益額の算定に当たって対象 とすべき侵害品は,被告構造物1,2,3,5,6及び7におけるコン クリート造基礎を支持する場所打ちコンクリート杭であると解するのが相当である。 (イ) 原告は,本件発明の作用効果が,「コンクリート造基礎及び場所打ちコンクリート杭に過剰な断面力が発生することを防止することができ,コンクリート造基礎の構造が簡単であり,配筋作業の省力化を図り,施 工費用を低減させることができるなど,設計の合理性及び施工の容易性が担保されることになるとともに,杭頭部が損傷等をすることを防止することができる」ものであり,「コンクリート造基礎」と「場所打ちコンクリート杭」の全体に及んでいるから,本件発明の実施による限界利益額は,本件発明の効果を享受しているコンクリート造基礎と場所打ちコ ンクリート杭を一体として含む下部構造の全体を対象として算出されるべきと主張する。 しかしながら,明細書に開示された発明の作用効果が及んでいるからといって,直ちにその物について発明が実施されているということにはならず,発明が実施されている物とその実施による作用効果が及ぶ物と が必ずしも一致するわけではない。 したがって,本件発明の作用効果に基づく原告の上記主張は,前記(ア)の判断を覆すに足りるものではない。 (ウ) 被告は,被告各構造に関し,本件発明の技術的範囲に含まれるのは,コンクリート造基礎を直接支持している部分である,被告説明図の「鋼 管コンクリート部」のみであり,限界利益額を算定す 。 (ウ) 被告は,被告各構造に関し,本件発明の技術的範囲に含まれるのは,コンクリート造基礎を直接支持している部分である,被告説明図の「鋼 管コンクリート部」のみであり,限界利益額を算定するに当たっては,その部分のみを対象とするのが相当であると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(イ)のとおり,被告各構造における「鋼管コンクリート部」は,場所打ちコンクリート杭と一体となった杭頭部に含まれるものであるから,本件発明が実施されている物として限界利益 額算定の対象となるのは,場所打ちコンクリート杭全体であると解する のが相当である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (エ) 以上によれば,本件発明の実施による被告の限界利益の額は,被告構造物1,2,3,5,6及び7(以下,これらの構造物を,併せて「本件実施に係る各構造物」ということがある。)について,それぞれ,その 場所打ちコンクリート杭全体(以下,併せて「本件実施に係る場所打ちコンクリート杭」ということがある。)の売上高に基づいて算出するのが相当である。 ウ計算鑑定による限界利益の算定結果本件計算鑑定においては,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭の構 築による被告の限界利益の額について,以下のとおり算定した。 (ア) 算定結果a 売上高(完成工事高)被告構造物1 ●(省略)●円被告構造物2 ●(省略)●円 被告構造物3 ●(省略)●円被告構造物5 ●(省略)●円被告構造物6 ●(省略)●円被告構造物7 ●(省略)●円b 控除すべき経費の額(完成工事原価) 被告構造物1 ●(省略)●円被告構造物2 ●(省略)●円被告構造物3 ●(省略)●円被告構造物5 ●(省略)●円 7 ●(省略)●円b 控除すべき経費の額(完成工事原価) 被告構造物1 ●(省略)●円被告構造物2 ●(省略)●円被告構造物3 ●(省略)●円被告構造物5 ●(省略)●円被告構造物6 ●(省略)●円 被告構造物7 ●(省略)●円 c 限界利益額被告構造物1 ●(省略)●円被告構造物2 ●(省略)●円被告構造物3 ●(省略)●円被告構造物5 ●(省略)●円 被告構造物6 ●(省略)●円被告構造物7 ●(省略)●円合計4605万0830円(イ) 算定方法の概要a 参照した資料等 (a) 鑑定に当たって,本件訴訟記録のほか,被告作成の●(省略)●契約明細(最初の請負契約締結時点に被告が施主に提出した,各工事の利益を含んだ請負金額とその内訳を記載した文書),完成工事原価構成表(工事開始から工事終了に至るまでの間,整理費目別に工事原価の予算額と実績額とを比較し,管理を行う文書。工事終了後 には,各工事の竣工後の追加工事等も全て含む,最終的な請負金額と完成工事原価(整理費目ごとに分類した内訳を含む)が記載されている。),各種工事図面,被告の経理に関する規程等の内部資料を確認した。 (b) 前記(a)の完成工事原価構成表には,本件実施に係る各構造物に ついて,それぞれ,構造物全体に係る工事終了時点での最終的な請負金額と完成工事原価が記載されているが,これらの各構造物中の杭工事部分の完成工事原価が分かる記載はなく,その他,杭工事部分の完成工事原価相当額が実際原価として計上されている文書については,鑑定時点において存在していないとの理由で,被告から入 手できなかった。 b 杭工事に係る完成工事原価相当額の算定方法前記a(b) 実際原価として計上されている文書については,鑑定時点において存在していないとの理由で,被告から入 手できなかった。 b 杭工事に係る完成工事原価相当額の算定方法前記a(b)の理由のため,前記(ア)bの杭工事に係る完成工事原価相当額については,以下のように,材料費及び外注費とそれ以外の経費に分けて算出した上,これを合算した。 また,以下の材料費,外注費,仮設機材費,機械器具費,仮設経費 及び事務諸経費等については,いずれも,本件実施に係る各構造物の製造・販売に直接的因果関係を有する原価として,限界利益額の算定に当たって控除すべきものと判断した。 なお,前記a(a)の完成工事原価構成表に記載された各経費には販売費及び一般管理費は含まれていなかった。 (a) 材料費及び外注費①●(省略)●から,物件全体の工事原価総額の●(省略)●に占める杭全体の材料費及び外注費の割合を算出し,②完成工事原価構成表の完成工事原価全体に上記①の割合を乗じて,杭工事における実際原価ベースの材料費及び外注費を算出する。 (b) 材料費及び外注費以外の経費仮設機材費,機械器具費,仮設経費及び事務諸経費等からなる材料費及び外注費以外の経費については,③完成工事原価構成表に記載された各構造物全体に係る材料費及び外注費の合計額に対するこれら以外の費用の割合を算出し,④前記(a)②の杭工事における実際 原価ベースの材料費及び外注費に上記③の割合を乗じて算出する。 c 杭工事に係る売上高(完成工事高)及び限界利益の算定方法(a) 契約明細の記載を採用しなかったこと契約明細には請負金額の内訳としての杭工事部分の売上高に相当する記載があったが,当該記載を杭工事に係る売上高としては採用 しなかった。 (a) 契約明細の記載を採用しなかったこと契約明細には請負金額の内訳としての杭工事部分の売上高に相当する記載があったが,当該記載を杭工事に係る売上高としては採用 しなかった。 これは,本件実施に係る各構造物について,請負契約締結時点で作成された文書である契約明細と●(省略)●を比較検討した結果,6物件のうちの4物件について,構造物全体について,●(省略)●よりも契約明細における請負金額の方が金額が小さくなっており,杭工事部分について,契約明細上の請負金額と●(省略)●を比較 しても,6物件中2物件が契約明細上の請負金額の方が小さく,2物件が契約明細上の請負金額と●(省略)●が同額となっていることを踏まえたものである。建設業においては,物件全体が一つの商品であり,物件全体として利益を計上することを目的としているので,物件全体についても,物件中の杭工事部分についても,通常は, 請負金額は●(省略)●に適正な利益を付加した金額であることが前提となると考えられるが,本件実施に係る各構造物の契約明細と●(省略)●は,そのような関係にはなく,その理由も不明であるから,杭の限界利益額の算定上,契約明細上の売上高に相当する記載を合理的な売上高として使用することはできないと判断したもの である。 (b) ⑤完成工事原価構成表において,請負金額から完成工事原価を控除することで,本件実施に係る各構造物について,それぞれ構造物全体における限界利益額が算出でき,この限界利益額を上記請負金額で除することで,それぞれ構造物全体の限界利益率が算出できる。 そして,建設業においては建物全体が一つの商品であり,被告も建物全体として損益管理を行っているという点を重視し,杭工事も,建物全体として獲得した限界利益額の 全体の限界利益率が算出できる。 そして,建設業においては建物全体が一つの商品であり,被告も建物全体として損益管理を行っているという点を重視し,杭工事も,建物全体として獲得した限界利益額の一部について,その完成工事原価相当額に応じた割合で獲得していると考え,⑥前記bによって算出した前記(ア)bの杭工事に係る完成工事原価を「1から⑤の限界 利益率を減じた割合」で除することによって,杭工事全体の完成工 事高相当額を前記(ア)aのとおり算出し,また,当該杭工事全体の完成工事高相当額から前記(ア)bの杭工事に係る完成工事原価を控除することで,杭全体の限界利益額を前記(ア)cのとおり算定した。 その際,被告構造物6については,構造物全体の限界利益額がマイナスとなり,上記の計算による完成工事高相当額は,完成工事原 価を下回ることになるが,それをもって直ちにこれらの額が異常な金額ということはできないと判断し,その上で,場所打ちコンクリート杭に係る限界利益の額についてはゼロとした。 エ鑑定結果の検討(ア) 本件計算鑑定の結果の相当性について 前記ウ(ア)の本件計算鑑定の結果は,前記ウ(イ)の方法によって算定されたものであるところ,参照した資料等の範囲や相当な資料がない部分における推定等の過程はいずれも合理的なものといえるから,前記ウ(ア)の本件計算鑑定の結果は相当というべきである。 (イ) 原告の主張について a 鑑定の基礎資料について原告は,本件計算鑑定において,被告各構造物の使用材料,当該材料の使用量,各構造物の構築内容及び作業内容が被告作成の完成工事原価構成表に正確に反映されているかの確認がされていないから,本件計算鑑定は不十分であると主張する。 しかしながら,本件計算鑑定に 使用量,各構造物の構築内容及び作業内容が被告作成の完成工事原価構成表に正確に反映されているかの確認がされていないから,本件計算鑑定は不十分であると主張する。 しかしながら,本件計算鑑定に当たっては,鑑定事項を定める際,原告が被告に対して本件訴訟で開示を求めた文書について,本件計算鑑定人において参照すべきことを留意事項として定めており,本件計算鑑定書には,実際に,本件計算鑑定人は,被告に対してそれらの文書の開示を求めて,前記ウ(イ)のとおり,各種の資料を参照したとの記 載がされている。 確かに,原告が指摘するように,本件計算鑑定書において,完成工事原価構成表の記載内容については,構造特記仕様書等に記載されている使用材料,当該材料の使用量,各構造物の構築内容及び作業内容が正確に反映されているかを確認することはできなかったとの記載がされているが,他方で,完成工事原価構成表に記載された完成工事高 及び完成工事原価について,有価証券報告書中の損益計算書及び法人税確定申告書添付書類の請負工事収支一覧表と整合していることを確認し,これによって正常なものであることを確認した旨の記載もされている。 そうすると,構造特記仕様書等の記載内容との整合性を資料によっ て確認できなかったことをもって,本件計算鑑定における基礎資料が不十分であったとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 b 杭工事における経費の算定について原告は,前記ウ(イ)b(b)の材料費及び外注費以外の経費の算定にお いて,杭工事は,その後に行われるその他の工事と比較して,これらの経費が少額であるから,工事の経費の算定に関して,経費割合を減少補正すべきと主張する。 しかしながら,原告は,杭工事とその他の工事と いて,杭工事は,その後に行われるその他の工事と比較して,これらの経費が少額であるから,工事の経費の算定に関して,経費割合を減少補正すべきと主張する。 しかしながら,原告は,杭工事とその他の工事とで仮設機材費,機械器具費,仮設経費及び事務諸経費等にどの程度の差があるのかにつ き,具体的に主張立証するものではないから,原告の上記指摘をもって,直ちに,本件計算鑑定において考慮された金額よりも実際の経費が少額であったと認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 被告の主張について a 契約明細に記載された売上高を採用しなかったことについて 被告は,本件実施に係る各構造物については場所打ちコンクリート杭の価格を示す契約明細(乙38ないし43)が存在するため,場所打ちコンクリート杭に係る売上高(完成工事高)は,これらの契約明細に記載された金額によるべきであり,これに基づかずに算定した前記ウ(ア)aの算定結果は誤りであると主張する。 しかしながら,前記ウ(イ)c(a)のとおり,本件計算鑑定人は,契約明細に記載された請負金額を確認した上で,それが,●(省略)●における材料費及び外注費と一致する額であったことなどから,通常の取引におけるような適正な利益が付された額でないと判断して,これを採用しないとしたものであり,その判断が不合理とはいえない。 また,本件計算鑑定書によれば,上記契約明細(乙38ないし43)に記載された請負金額は,請負契約締結時点におけるものであって,追加工事等による変更は反映されていないものであり,契約明細に記載された請負代金額と完成工事原価構成表における最終的な請負金額とは必ずしも一致していないものであるから,この点からも,限界利 益 加工事等による変更は反映されていないものであり,契約明細に記載された請負代金額と完成工事原価構成表における最終的な請負金額とは必ずしも一致していないものであるから,この点からも,限界利 益額の算定に当たって,契約明細に記載された請負金額を当然に売上高として採用すべきとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 b ●(省略)●の限界利益額について前記ウ(イ)c(b)のとおり,本件計算鑑定においては,●(省略)● について,算出した場所打ちコンクリート杭の完成工事高相当額が,完成工事原価を下回ることになったために,場所打ちコンクリート杭の限界利益額をゼロと判断している。 これに対して,被告は,このような場合の限界利益額は,ゼロではなく,マイナスとして計算し,他の構造物に係る限界利益額と通算す べきものであると主張する。 しかしながら,本件実施に係る各構造物における損益計算は個別性が強いものと考えられ,本件計算鑑定書によれば,被告の会計処理においても構造物ごとに損益管理がされているとされている。そうすると,特許法102条2項の利益の額を算定するに当たって,●(省略)●における場所打ちコンクリート杭の構築によって損失が発生したとし ても,当該損失相当額を,他の構造物における場所打ちコンクリート杭の構築による利益の額から差し引くのは相当ではないというべきである。 したがって,●(省略)●について,場所打ちコンクリート杭の限界利益額をゼロと算定した本件計算鑑定の判断は相当であり,被告の 上記主張は採用することができない。 (エ) 以上によれば,原告及び被告の指摘する点を考慮しても,前記ウ(ア)の本件計算鑑定の結果は合理的なものとして採用できるというべきであり,本件実 の 上記主張は採用することができない。 (エ) 以上によれば,原告及び被告の指摘する点を考慮しても,前記ウ(ア)の本件計算鑑定の結果は合理的なものとして採用できるというべきであり,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭の構築による被告の限界利益の額は,それぞれ前記ウ(ア)cのとおりと認めるのが相当である。 オ推定覆滅事由について(ア) 本件発明の損害に対する寄与の程度についてa 本件発明の技術的意義について(a) コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持すること(構成要件A)の技術的意義について 丙外6名「場所打ち杭の杭頭半剛接合法の開発」日本建築学会技術報告集9号(平成11年12月)65頁ないし70頁(乙3)には,「従来から,杭頭の接合方法をピン接合に近づけることが可能であれば,地震時に生じる杭頭曲げモーメントを低減できると考えられている。…ピン接合に近づけることは技術的には十分可能であり, 多くの特許・実用新案等が発表されている。」(65頁)との記載が あり(「建築ヴィジュアル辞典英和対照」株式会社彰国社(平成10年9月)(甲21)によれば,「ピン接合」とは,「接合面に対しどの方向にも移動できないが,回転することができる構造接合」とされている。),丁外6名「杭頭接合法の開発に関する実験的研究(その1)実験概要」日本建築学会大会学術講演梗概集(関東)(平成1 3年9月)459頁ないし460頁(乙6)にも,「近年,より合理的な杭断面の設計を目的として,杭先端部の形状を工夫し,従来よりも高い鉛直支持力を有する鋼管杭の開発が進められ実用化に至っている。ただし,杭頭接合部を従来の剛接合とした場合,その高い支持能力ゆえに地震時に発生する杭頭モーメントも大きくな 形状を工夫し,従来よりも高い鉛直支持力を有する鋼管杭の開発が進められ実用化に至っている。ただし,杭頭接合部を従来の剛接合とした場合,その高い支持能力ゆえに地震時に発生する杭頭モーメントも大きくなり,結 果的に杭頭部の補強が必要となったり基礎梁等の断面が過大となったりすることが多い。一方,場所打ちコンクリート杭やPHC杭においては,地震時の杭頭曲げモーメントを低減することを目的とした杭頭接合法,いわゆる半剛接合法の研究開発が多くなされており,実用化された例もある。しかしながら,施工性及び経済性の観点か らみると比較的複雑な形状が多いのが現状である。」(459頁)との記載がある。 これらの記載からすれば,本件特許の出願日である平成14年3月12日より前から,コンクリート基礎を支持する場所打ちコンクリート杭の杭頭における曲げモーメントを低減させるために,杭頭 の接合方法について,剛接合ではなく回転を拘束しないピン接合に近づけた接合方法である半剛接合法を採ることは,公知の技術であったものと認められる。 また,証拠(乙8,甲81,87)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許の出願前に頒布された刊行物(特開昭58-153823 号公報(乙8))において,上記の半剛接合法を実現する具体的な構 造として,本件発明の構成要件Aに対応する,コンクリート造り基礎を場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持するコンクリート造基礎の支持構造が開示されていたことが認められる。 以上によれば,前記1(2)イの本件明細書に開示された本件発明の作用効果のうち,構成要件Aに係る,コンクリート造基礎を場所打 ちコンクリート杭に載置した状態で支持することにより,コンクリート造基礎等に水平力が作用した場合であっても,両者に過剰な断 件発明の作用効果のうち,構成要件Aに係る,コンクリート造基礎を場所打 ちコンクリート杭に載置した状態で支持することにより,コンクリート造基礎等に水平力が作用した場合であっても,両者に過剰な断面力が発生することを防止でき,設計の合理性及び施工の容易性が担保されるとの作用効果は,前記の公知技術によって奏することが可能であったものであり,本件発明において新たに見出されたもの ではないというべきである。 (b) 杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度をコンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きくすること(構成要件B)の技術的意義について戊「コンクリート総覧」技術書院(平成10年6月)(乙36の3) には,「支圧強度とは,コンクリートが局部的に大きな荷重を受ける場合の圧縮強度のことである。…基本的には…支圧を受ける面積(Aa)よりもその支圧が分布する面積(A)のほうが大きいことから,支圧強度は圧縮強度よりも大きくなる。」との記載がある。このような本件特許の出願よりも前に頒布された刊行物の記載から, 当業者は,コンクリート造基礎の支持構造において,支圧を受ける面積よりもその支圧が分布する面積のほうが大きいコンクリート造基礎におけるコンクリートの支圧強度は,場所打ちコンクリート杭の杭頭部におけるコンクリートの圧縮強度よりも大きくなることを認識し得たものといえる。 他方で,上記文献には,コンクリート造基礎の支持構造を半剛接 合とした場合に,杭頭部の損傷を防ぐために,本件発明の構成要件Bの構成である,杭頭部コンクリートの設計基準強度を基礎コンクリートの設計基準強度より大きくする構成を採る必要があることは記載されておらず,本件証拠上,本件特許の出願時において,そのような構成を採る の構成である,杭頭部コンクリートの設計基準強度を基礎コンクリートの設計基準強度より大きくする構成を採る必要があることは記載されておらず,本件証拠上,本件特許の出願時において,そのような構成を採る必要性を明示し又は示唆した文献が存在したとも 認められない。また,コンクリート造基礎の支持構造を半剛接合とした場合に,上記の構成を採用した施工が一般的であったことを認めるに足りる証拠もない。そうすると,コンクリート造基礎の支持構造を半剛接合とした場合に構成要件Bに係る上記の構成を採ることが技術常識であったと認めることはできない。 したがって,本件明細書に記載された前記1(2)イの作用効果のうち,杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度がコンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きいことから,杭頭部に過大な支圧力が作用した場合においても,杭頭部が損傷等することを防止することができるとの点は,従来技術と比較して一定 の技術的意義を有するものというべきである。 この点について,被告は,構成要件Bに係る構成を採用しても,コンクリートの強度を超える応力が生じれば,場所打ちコンクリート杭は損傷することになるから,基礎と杭頭部との設計基準強度の大小は何らの意味も有していないと主張する。 そこで検討するに,前記1(2)のとおり,構成要件Bに係る構成は,杭頭部の損傷等を防ぐために,杭頭部の強度を大きくし,強度を大きくする基準として,基礎部分のコンクリートの設計基準強度よりも杭頭部部分のコンクリートの設計基準強度を大きくするという基準を用いることとしたものであり,証拠(甲19)及び弁論の全趣 旨によれば,設計基準強度とは,構造設計において基準とするコン クリートの圧縮強度のことであり,構造体コンク るという基準を用いることとしたものであり,証拠(甲19)及び弁論の全趣 旨によれば,設計基準強度とは,構造設計において基準とするコン クリートの圧縮強度のことであり,構造体コンクリートが満足しなければならない強度を指すものと認められる。このように,設計基準強度は,建築における構造設計の際に検討されるべきものであることに照らせば,杭頭部の損傷等防止の効果が得られるか否かは,特定の建築を行うに当たって,種々の要素を検討した上で設計基準 強度を設定するに際し,基礎部分のコンクリートよりも設計基準強度の大きいコンクリートを杭頭部に用いた場合とそうでない場合とを比較することにより判断されることとなるというべきである。そして,構成要件Bに係る構成を採用した場合でも,支圧力の大きさによっては,杭頭部の損傷が免れない場合があるのは当然のことで ある以上,本件発明の作用効果は,構成要件Bに係る構成を採用することによって,必ず損傷等が生じないようにするというものではなく,当該構成を採用していない場合に比べて,損傷等が生じる可能性を低くするというものと解するのが相当である。また,設計基準強度は,上記のとおり,構造体コンクリートが満足しなければな らない強度であることから,コンクリートは,その強度が設計基準強度と整合するように製造されるはずであって,通常,設計基準強度を大きくすれば,それに比例して実強度も大きくなり,その結果,構成要件Bに係る構成を採用しない場合に比べて,杭頭部の損傷等を防止することができるものと考えられる。 したがって,設計基準強度の大小は何らの意味もないとの被告の上記主張を採用することはできず,構成要件Bに係る構成を採ることについて,従来技術と比較した技術的意義がないということはできない したがって,設計基準強度の大小は何らの意味もないとの被告の上記主張を採用することはできず,構成要件Bに係る構成を採ることについて,従来技術と比較した技術的意義がないということはできない。 (c) 本件発明が本件実施に係る場所打ちコンクリート杭の顧客吸引力 等に及ぼす影響 前記(a)のとおり,前記1(2)の本件明細書に開示された本件発明の作用効果のうち,剛接合によることなく,コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に載置することにより支持することで,水平力が作用した場合であっても,両者に過剰な断面力が発生することを防止できるため,設計の合理性及び施工の容易性が担保される という点については,本件特許の出願時より前の技術によって奏することが可能であったものである。そうすると,上記の作用効果は,本件発明において新たに見出されたものではないから,本件発明の顧客吸引力を示すものとはいえない。 他方で,前記(b)のとおり,構成要件Bに係る,杭頭部におけるコ ンクリートの設計基準強度をコンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きくするという構成は,当該構成を採用していない場合に比べて杭頭部の損傷等が生じる可能性を低くするという作用効果を奏するものであり,この点で,本件発明は従来技術との比較で一定の技術的意義を有するものといえる。 ただし,前記2のとおり,被告各構造物における被告各構造は,コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に載置することにより支持するという構成を採り,構成要件Aを充足するものではあるが,構成要件Bに係る構成については,これを採用しないものが存在しており,本件全証拠によっても,コンクリート造基礎を場所打 ちコンクリート杭に載置する支持構造を実現する を充足するものではあるが,構成要件Bに係る構成については,これを採用しないものが存在しており,本件全証拠によっても,コンクリート造基礎を場所打 ちコンクリート杭に載置する支持構造を実現するために,構成要件Bに係る構成を採ることが必須であったと認めることはできない。 また,被告各構造は,いずれも被告におけるスマートパイルヘッド工法を採用したものであるところ,同工法に係るホームページ上での紹介においては,「さらに,杭上面から鋼管上面までの間に別途 高強度コンクリートを打設することで杭頭接合部の耐力及び変形性 能の向上を図ります」(甲41の1),「さらに杭頭接合部には杭よりも強度が高いコンクリートを打設することで,杭頭接合部の曲げ変形性能を向上させるとともに支圧破壊を防止します。」(甲41の2)との記載がある。これらは,本件発明の作用効果と共通する杭頭部の損傷防止の作用効果に関する記載ではあるものの,直接的には杭 軸部と比較して杭頭部に高強度のコンクリートを打設することを述べるものであって,杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度をコンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きくする構成を採ることによる作用効果を説明するものではない。その他,被告がスマートパイルヘッド工法の紹介に当たって,当該構 成による作用効果を明示的に説明していたことを認める証拠はない。 以上の点を考慮すれば,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭について,本件発明の作用効果が顧客吸引力に与えた影響はある程度限定的であったというべきであり,この点は,102条2項による損害額の推定を一部覆滅すべき事情として考慮すべきである。 b 被告の技術力,信用,実績及び知名度による影響について被告は,被告による利益獲得は うべきであり,この点は,102条2項による損害額の推定を一部覆滅すべき事情として考慮すべきである。 b 被告の技術力,信用,実績及び知名度による影響について被告は,被告による利益獲得は,主に,被告の技術力,信用,実績及び知名度によるものであり,本件発明はそれに寄与していないと主張する。 しかしながら,証拠(乙34)及び弁論の全趣旨によれば,原告と 被告は,共に日本を代表する総合建設会社であると認められ,他方,本件実施に係る各構造物が建設された当時において,技術力,信用,実績及び知名度等の点で顧客吸引力に特段の差異があったと認めるに足りる証拠はない。 したがって,上記の点は,特許法102条2項の推定を覆滅すべき 事情とは認められない。 c 本件実施に係る各構造物における他の特許発明等の実施について被告は,本件実施に係る各構造物では,スマートパイルヘッド工法が採用されており,本件特許とは異なる,少なくとも4件の特許に係る発明が実施されており,さらに,スマートパイルヘッド工法以外にも,被告が開発した,品質向上,工期短縮,コスト低減,安全性向上, 広い空間の実現等に資する画期的な工法が用いられており,それぞれの工法について被告は様々な特許を取得しているといった点を,推定覆滅事由として主張する。 しかしながら,被告が主張するいずれの特許発明についても,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭又は本件実施に係る各構造物にこ れらが実施されていることについて,具体的な主張立証はない。また,スマートパイルヘッド工法,被告構造物3で採用されているとするナックルパイル工法以外の工法については,被告の主張を前提としても,基礎を支持する杭に関するものではないから,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭の利 ヘッド工法,被告構造物3で採用されているとするナックルパイル工法以外の工法については,被告の主張を前提としても,基礎を支持する杭に関するものではないから,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭の利益に寄与しているとは直ちにいい難い。 したがって,上記の点は,特許法102条2項の推定を覆滅すべき事情とは認められない。 d 「鋼管コンクリート部」に限定して利益を考慮すべきとの主張について被告は,前記イで検討したとおり,限界利益額算定の対象となるべ き侵害品は被告説明図の「鋼管コンクリート部」に限定されるべきであると主張する。 被告の上記主張を採用できないことは,既に説示したとおりであるが,この点を覆滅事由に係る主張と捉えるとしても,前記2(1)ア(イ)のとおり,被告各構造における鋼管コンクリート部は場所打ちコンク リート杭と一体となっているものである上,前記a(b)の構成要件Bに 係る構成をとって,損傷しやすい杭頭部の損傷等を防ぐという本件発明の技術的意義は,杭頭部のみに関するものではなく,場所打ちコンクリートの利益全体に貢献していると認めるのが相当であることからすれば,覆滅事由としても,特許法102条2項による損害額の算定に当たって,鋼管コンクリート部に係る利益に限定して考慮すべきと はいえない。 e 覆滅割合について以上のとおり,本件発明の損害に対する寄与の程度についての被告の各主張を検討したところ,前記aのとおり,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭について,本件発明の作用効果が顧客吸引力に与えた 影響は一定の限定があり,この点を特許法102条2項の推定を覆滅すべき事情として考慮すべきであり,その覆滅割合は3割と認めるのが相当である。 (イ) シェアに応じた減額について被 えた 影響は一定の限定があり,この点を特許法102条2項の推定を覆滅すべき事情として考慮すべきであり,その覆滅割合は3割と認めるのが相当である。 (イ) シェアに応じた減額について被告は,原告と被告の建設業界における市場シェアは,それぞれ約1 0%前後であり,残りの79.54%前後は競合企業のシェアであるとして,本件発明を被告が実施しなかった場合にも,その需要者の多くは原告以外の競合企業に発注したはずであると主張する。 しかしながら,被告の上記主張は,建築工事全般の受注実績に基づくものであり(乙34),本件発明と同様の構成を採る工法についての,競 合企業のシェアについての具体的な主張立証をするものではないから,この点について,特許法102条2項の推定を覆滅すべき事情があるとは認められない。 カ推定覆滅後の特許法102条2項による損害額前記ウ(ア)cの被告の限界利益について,前記オ(ア)による3割の割合に よる損害推定の覆滅を考慮すると,本件実施に係る場所打ちコンクリート の構築について,特許法102条2項による損害額は,それぞれ以下のとおりとなる。 被告構造物1 ●(省略)●円被告構造物2 ●(省略)●円被告構造物3 ●(省略)●円 被告構造物5 ●(省略)●円被告構造物6 ●(省略)●円被告構造物7 ●(省略)●円合計3223万5579円キ推定覆滅部分についての特許法102条3項の適用について 原告は,特許法102条2項による損害の推定が覆滅される部分について,同条3項による損害が認められるべきであると主張するが,前記オ(ア)の寄与の程度による覆滅という覆滅事由の性質に照らして,上記覆滅部分について,原告がライセンス機会を喪失したとは認められず, いて,同条3項による損害が認められるべきであると主張するが,前記オ(ア)の寄与の程度による覆滅という覆滅事由の性質に照らして,上記覆滅部分について,原告がライセンス機会を喪失したとは認められず,当該部分に同条3項による損害を認めるのは相当でないから,原告の主張は採用する ことができない。 (3) 特許法102条3項による損害額についてア時機に後れた攻撃防御方法の主張について被告は,原告による特許法102条3項による損害額の主張について,時機に後れた攻撃防御方法の提出ないしは訴訟上の信義則違反として,却 下の申立てをする。 そこで検討するに,原告は,訴状においては同条2項による損害額の主張のみをしていたが,本件計算鑑定書が令和元年12月6日に提出されたことを受け,同月18日付け訴えの変更申立書において同条2項の損害額の主張の整理をするとともに,同条3項の損害額の主張を追加したもので あるが,これらの同条2項と3項の損害額の主張において,侵害品の売上 高に係る主張は共通しており,本件計算鑑定を経るまでに同条3項の具体的な損害額の主張をすることは困難であったといえるし,その後の審理についても,同条2項と3項に基づく損害額の審理は一部並行して行うことが可能であったものである。そうすると,原告が本件計算鑑定の結果を踏まえて同条3項の主張を追加したことが,時機に後れた主張を追加するも のであったとまではいえず,また,これによって訴訟の完結を遅延させることとなるものであったともいえない。 この点は,原告が,損害論の審理の当初に開かれた,平成30年9月12日の第5回弁論準備手続において「特許法102条2項以外の損害論は主張しない。」と述べていたことを考慮しても同様であり,また,このよう に原告が 害論の審理の当初に開かれた,平成30年9月12日の第5回弁論準備手続において「特許法102条2項以外の損害論は主張しない。」と述べていたことを考慮しても同様であり,また,このよう に原告が述べたことをもって,原告が同条3項の損害の主張を追加することが訴訟上の信義則に反して許されないともいえない。 したがって,原告の上記主張について,時機に後れた攻撃防御方法ないしは訴訟上の信義則に反するものとして却下を求める被告の上記申立てについては,これを却下する。 イ実施料相当額の算定方法特許法102条3項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準とし,そこに,実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。 そして,特許発明の実施に対し受けるべき料率を認定するに当たっては,①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それが明らか でない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様,④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきで ある。 ウ侵害品の売上高(完成工事高)について(ア) 前記(2)イで検討したところによれば,特許法102条3項の損害を算定するに当たっても,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭の売上高(完成工事高)を侵害品の売上高と認めるのが相当である。 (イ) そして,前記(2)ウ及びエのとおり,本件実施に係る場所打ちコンク リート杭の売上高(完成工事高)の算定について,本件計算鑑定の結果は相当であるから,本件実施に係る場所打ちコンク る。 (イ) そして,前記(2)ウ及びエのとおり,本件実施に係る場所打ちコンク リート杭の売上高(完成工事高)の算定について,本件計算鑑定の結果は相当であるから,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭の売上高(完成工事高)は,それぞれ前記(2)ウ(ア)aのとおりと認めるのが相当である。 この点,被告は,特許法102条3項については,同条2項の場合よ りも,より一層,契約明細における金額を売上高とすべき理由があると主張するが,前記(2)エ(ウ)aで検討した点は同条3項の場合にも当てはまるというべきであり,被告の主張は採用することができない。 エ実施料率認定の考慮要素に係る事情(ア) 原告における本件発明の実施許諾の実績 証拠(甲88,89)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,別件審決1の審決取消訴訟において,平成22年3月,別件無効審判1の請求人であった熊谷組との間で訴訟上の和解をしたこと,当該和解は,和解金として熊谷組が●(省略)●円を原告に支払う,原告は熊谷組に対して本件特許権及び原告が有する特許第4116811号の特許権に基づく 権利行使をしない,熊谷組はこれらの二つの特許権に関する無効審判についての無効審判請求をいずれも取り下げ,これらに係る特許権の有効性を争わないといった内容であったこと,原告は,●(省略)●和解契約を締結したことが認められる。 そして,本件発明について,原告が上記の訴訟上の和解及び和解契約 以外に実施許諾契約を締結したとの事実を認めるに足りる証拠はない。 (イ) 原告におけるその他の特許発明の実施許諾の実績a 証拠(甲84)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,コンクリート基礎を杭に載置する支持構造に関する2件の特許発明(特許第3661997号(発明の名称「 告におけるその他の特許発明の実施許諾の実績a 証拠(甲84)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,コンクリート基礎を杭に載置する支持構造に関する2件の特許発明(特許第3661997号(発明の名称「構造物基礎の支持構造」)及び特許第4116811号(発明の名称「コンクリート造基礎の支持構造」))につい て,平成16年4月,特定の構造物を対象として,実施の対価を併せて●(省略)●円とする実施許諾契約を締結したことが認められる。 b 証拠(甲85,86)及び弁論の全趣旨によれば,前記aの実施許諾契約に先立ち,原告の内部において,実施許諾料を「●(省略)●」との検討がされていたこと,実際に締結された上記の実施許諾契約に おいて,契約の対象となった構造物の完成工事高を示す資料は現存していないこと,原告が図面等から基礎と杭の完成工事高を推定すると,上記の●(省略)●円は基礎と杭の完成工事高相当額の約●(省略)●%,杭の完成工事高の約●(省略)●%に相当するとの結果となることが認められる。 (ウ) 文献に記載された実施料の相場等経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック~特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ」(平成22年8月)(甲82)においては,「建造物」の技術分類におけるロイヤルティ料率につき,その平均値は3.8%,最大値は15.5%,最小値は0. 5%,標準偏差は2.7%であるとの記載がある。 (エ) 本件発明の技術内容や重要性,代替可能性,売上及び利益への貢献本件発明の技術的意義は前記(2)オ(ア)aで検討したとおりであり,構成要件Bに係る,杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度を,コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きくするこ とによる作用効果 (2)オ(ア)aで検討したとおりであり,構成要件Bに係る,杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度を,コンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きくするこ とによる作用効果については,当該構成を採用していない場合に比べて, 損傷等が生じる可能性を低くするという作用効果を奏するものであり,この点で,本件発明は従来技術と比較した技術的意義を有するものであったといえる。 他方で,コンクリート造基礎を場所打ちコンクリート杭に載置する支持構造を実現するために,構成要件Bに係る構成を採ることが必須であ ったとは認められず,本件発明が他の技術によって代替不可能な重要性を持つものであったとはいえない。 また,前記(2)オ(ア)a(c)のとおり,被告が採用していたスマートパイルヘッド工法には,本件発明の構成要件Bを充足するものが含まれていたにも関わらず,被告がホームページその他の媒体において同工法を紹 介する際に,構成要件Bに係る,杭頭部におけるコンクリートの設計基準強度をコンクリート造基礎におけるコンクリートの設計基準強度より大きくするという構成要件Bに係る構成を採用することによる作用効果につき,明示的に説明していたとは認められず,当該構成を採用することが顧客誘引力を持つものとしてどの程度売上げ及び利益に貢献したの かは明らかではない。 (オ) 原告と被告との競業関係,原告の営業方針,その他の事情a 証拠(乙34)及び弁論の全趣旨によれば,原告及び被告は,ともに日本を代表する総合建設会社であり,競業関係にある。 b 前記前提事実(6)のとおり,原告と被告との間では,別件無効審判2 について,本件特許に無効理由は認められないとした別件審決2が確定している。 オ実施料率の認定(ア) 係にある。 b 前記前提事実(6)のとおり,原告と被告との間では,別件無効審判2 について,本件特許に無効理由は認められないとした別件審決2が確定している。 オ実施料率の認定(ア) 前記エ(ア)ないし(ウ)によれば,①実際の実施許諾契約における実施料率,業界における実施料の相場等について,次の点を指摘することがで きる。 前記エ(ア)のとおり,本件発明についての和解による許諾の例があるところ,当該和解では許諾対象の構造物が限定されていないため,実施料率の算定は不可能である。そこで,仮に,前記(2)ウ(ア)の本件実施に係る場所打ちコンクリート杭の売上高に基づいて計算すると,当該和解における●(省略)●円の和解金は,各売上高の約●(省略)●%から約 ●(省略)●%に相当するものであり,上記のとおり,対象の構造物が一つに限定されていないことや,和解において権利行使しないとされた特許権は本件特許権を含む2件であることから,本件発明に係る実質的な料率はそれよりもさらに低くなることが考えられる。他方で,当該和解については,前記エ(ア)のとおり,本件特許権を含め2件の特許権に係 る無効審判請求をいずれも取り下げ,今後これらの有効性を争わない旨の合意が含まれており,これが実施料率を引き下げる要因となったものと考えられる。 前記エ(イ)の本件発明の構成と共通する構成を含む別の特許発明に関する実施例を見ると,特許発明2件の実施許諾で,杭の完成工事高の約● (省略)●%程度の例があったことが窺われるが,この許諾契約の対象構造物の完成工事高を示す資料は現存していない等として提出されておらず,上記の約●(省略)●%との割合も,本件訴訟の中で原告が図面等から推定した杭の完成工事高に基づくものであるから,確実 契約の対象構造物の完成工事高を示す資料は現存していない等として提出されておらず,上記の約●(省略)●%との割合も,本件訴訟の中で原告が図面等から推定した杭の完成工事高に基づくものであるから,確実なものとはいえない。 そうすると,合理的な実施料率の算定に当たっては,前記エ(ア)及びエ(イ)の原告における実施許諾の例に加えて,前記エ(ウ)の文献に記載された実施料の相場(平均値3.8%,最大値は15.5%,最小値は0. 5%,標準偏差は2.7%)も参考とすべきである。 (イ) 前記(ア)に加え,前記エ(エ)のとおり,②本件発明が他の技術によって 代替不可能な重要性を持つものであったとはいえず,③本件発明を実施 することによってどの程度,売上や利益に貢献するかは明らかでないこと,前記エ(オ)のとおり,④原告と被告は競業関係にあること,原告と被告との間では,別件無効審判2について,本件特許に無効理由は認められないとした別件審決2が既に確定していることといった事情を総合考慮すれば,本件発明について,本件実施に係る場所打ちコンクリート杭 の構築に対して受けるべき実施料率は3%と認めるのが相当である。 カ特許法102条3項による損害額以上によれば,本件実施に係る場所打ちコンクリートの構築について,特許法102条3項による損害額は,それぞれ前記(2)ウ(ア)aの場所打ちコンクリート杭の売上高の3%に相当する,次の額と認められる。 被告構造物1 ●(省略)●円被告構造物2 ●(省略)●円被告構造物3 ●(省略)●円被告構造物5 ●(省略)●円被告構造物6 ●(省略)●円 被告構造物7 ●(省略)●円(4) 特許法105条の3による損害額についてア時機に後れた攻撃防御方法の主張につ ●円被告構造物5 ●(省略)●円被告構造物6 ●(省略)●円 被告構造物7 ●(省略)●円(4) 特許法105条の3による損害額についてア時機に後れた攻撃防御方法の主張について原告は,令和2年2月27日付け原告第13準備書面で特許法105条の3による損害額の主張を追加したものであるが,被告は,この点につい ても,時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきであるとの申立てをする。 しかしながら,本件において,同条による損害額の主張について判断することによって訴訟の完結を遅延させることとなるとはいえないから,当該主張について,時機に後れた攻撃防御方法として却下を求める被告の上 記申立てについては,これを却下する。 イ原告は,●(省略)●の場所打ちコンクリート杭における実施について,特許法102条2項の損害が認められない場合には,同法105条の3の規定に基づき,相当な損害額が認定されるべきと主張するが,前記(3)のとおり,当該実施については,本件計算鑑定によって算定された売上高に基づいて,同法102条3項の損害が認定できるものであり,同法105条 の3に規定する「損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難」な場合に該当するとはいえない。 したがって,同条による損害を認定すべきとの原告の上記主張は採用することができない。 (5) 小括 以上によれば,前記(1)の被告の不法行為による損害については,本件実施に係る各構造物ごとに,特許法102条2項及び3項によって算定した損害額のうち,より額が大きいものを原告の損害額として認定するのが相当である。 そうすると,次のとおりの損害額を認定することができる。 被告構造物1 ●(省略) 項及び3項によって算定した損害額のうち,より額が大きいものを原告の損害額として認定するのが相当である。 そうすると,次のとおりの損害額を認定することができる。 被告構造物1 ●(省略)●円●(省略)●被告構造物2 ●(省略)●円●(省略)●被告構造物3 ●(省略)●円●(省略)●被告構造物5 ●(省略)●円●(省略)●被告構造物6 ●(省略)●円●(省略)● 被告構造物7 ●(省略)●円●(省略)●合計 4184万0755円 4 結論よって,原告の請求は,被告に対して,本件特許権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金4184万0755円及びこれに対する訴状送 達の日の翌日である平成30年1月24日から支払済みまで民法所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 矢野紀夫 別紙一覧別紙1 被告構造物目録別紙2 被告各構造の原告説明図別紙3 被告各構造の被告説明図別紙4 別件無効審判1における引用例の図面 別紙5 原告による損害額計算表別紙6 本件明細書の図面 録別紙2 被告各構造の原告説明図 別紙3 被告各構造の被告説明図 別紙4 別件無効審判1における引用例の図面 別紙5 原告による損害額計算表 別紙6 本件明細書の図面 別紙1 被告構造物目録 (省略) 別紙2 被告各構造の原告説明図 1 被告構造1原告説明図1-1 原告説明図1-2 2 被告構造2原告説明図2-1 原告説明図2-2 別紙3 被告各構造の被告説明図 被告説明図 基礎部鋼管コンクリート部杭頭部場所打ちコンクリート杭 別紙4 別件無効審判1における引用例の図面 1 乙2公報 2 乙3文献 別紙5 原告による損害額計算表 (省略) 別紙6 本件明細書の図面【図1】 【図2】 【図3】
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