平成17(行ウ)11 退去強制令書発付処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年2月9日 名古屋地方裁判所
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判決文本文19,000 文字)

- 1 -平成18年2月9日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成17年(行ウ)第11号退去強制令書発付処分等取消請求事件口頭弁論終結の日平成17年11月21日判決主文 被告名古屋入国管理局長に対する訴えを却下する。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1原告の請求 被告名古屋入国管理局長が平成16年12月13日付けで原告に対してした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 被告名古屋入国管理局主任審査官が平成16年12月13日付けで原告に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前のもの。以下,条文を示すときは「法」といい,法律名を示すときは「入管法」という)24条4号ロ所定の退去強制事由に該当するとの認定及び判定を受けた。 外国人である原告が,同法49条1項に基づいて法務大臣に対し異議を申し出たところ,権限の委任を受けた被告名古屋入国管理局長(以下「被告入管局長」という)から上記申出は理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という)を受。 。 ,,(「」。)けさらに被告名古屋入国管理局主任審査官以下被告主任審査官というから退去強制令書の発付処分(以下「本件発付処分」という)を受けたため,。 本件裁決には裁量権の範囲を逸脱し又は濫用して在留特別許可を付与しなかった,,違法があり本件裁決を前提としてされた本件発付処分も違法であると主張して- 2 -これらの処分の取消しを求めた抗告訴訟である。 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)( )当事者 ア原告は,1968年(昭和 処分も違法であると主張して- 2 -これらの処分の取消しを求めた抗告訴訟である。 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)( )当事者 ア原告は,1968年(昭和43年)8月19日,中国(台湾)において出生した中国国籍を有する外国人である。 イ被告入管局長は,法69条の2,法施行規則61条の2に基づいて法務大臣から法49条3項に基づく裁決を行う権限の委任を受けた者であり,被告主任審査官は,同条5項に基づいて退去強制令書の発付権限を有する者である。 ( )原告の入国の経緯 原告は,平成13年3月19日,在留資格「短期滞在,在留期間「90」日」とする上陸許可を受けて羽田空港から本邦に入国したが,在留期限である同年6月17日を超えて本法に不法残留している。 ( )日本人との婚姻届の提出 原告は,平成16年1月8日,静岡県下田市役所にAとの婚姻届を提出した。 ( )本件裁決及び本件発付処分に至る経緯 ア原告は,平成16年9月28日,入管法違反の被疑事実で逮捕され,同年11月15日,静岡地方裁判所沼津支部において,懲役1年6月,執行猶予4年の判決を言い渡され,同日,法24条4号ロ違反容疑により,名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という)に収容された。 。 イ名古屋入管入国警備官は,同日,原告について違反調査を実施し,さらに,名古屋入管入国審査官は,同月16日及び17日,同様に違反審査を実施して,原告が法24条4号ロに該当する旨認定した。原告は,同日,口頭審理を請求したため,名古屋入管特別審理官は,同月30日,原告について口頭審理を実施し,同日,入国審査官の上記認定には誤りがない旨- 3 -判定した。そこで,原告は,同日,法務大臣に対して異議の申出をした。 ウ法務大臣から権限の委任を受け 同月30日,原告について口頭審理を実施し,同日,入国審査官の上記認定には誤りがない旨- 3 -判定した。そこで,原告は,同日,法務大臣に対して異議の申出をした。 ウ法務大臣から権限の委任を受けた被告入管局長は,同年12月13日付,,,けで原告の異議の申出には理由がない旨の本件裁決をしこれを受けて被告主任審査官は,同日,本件発付処分をした。 ( )本訴の提起及び出国の状況 原告は,平成16年12月17日,西日本入国管理センターに移収されたが,平成17年2月24日,本件裁決及び本件発付処分の取消しを求める本訴を提起した。しかし,原告は,本人尋問を受けた後,自ら出国を希望したため,同年9月30日,本件発付処分に基づく退去強制令書の執行により,中国(台湾)に送還された。 本件の争点( )本案前の争点 本件裁決の取消しを求める訴えについて,訴えの利益が認められるか。 ( )本案の争点 本件裁決及びこれを前提とする本件発付処分は違法か。 具体的には,日本人であるAと婚姻した原告に対して在留特別許可を付与することなく異議の申出は理由がない旨の本件裁決をしたことが裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したことに当たるか。 当事者の主張( )争点( )(本件裁決の取消しを求める訴えについて,訴えの利益が認めら れるか)について(被告入管局長)以下の理由から,原告には本件裁決の取消しを求める訴えの利益が認められず,同訴えは不適法である。 ア法49条の裁決の効果入国審査官によって不法残留に該当するものと認定され,さらに口頭審- 4 -理の結果,特別審理官から入国審査官の認定に誤りがないとの判定の通知を受けた外国人は,法務大臣に対して,上記判定に対する異議を申し出ることができるが,この異議の申出に対する裁決においては,① 4 -理の結果,特別審理官から入国審査官の認定に誤りがないとの判定の通知を受けた外国人は,法務大臣に対して,上記判定に対する異議を申し出ることができるが,この異議の申出に対する裁決においては,①容疑者の異議申出に対応して特別審理官の判定を審査し,その結果これを是認するか否かという申立事項に対する判断(法49条3項)と,②この審査とは別に,在留特別許可を与えるべきかどうかを検討し,裁量に基づいて,その許否を決するという職権判断がされることになる。そして,法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長(以下「法務大臣等」という)が,①の判断において異議の申出を認容した場合には,収容令。 書により収容されている容疑者を放免しなければならないから,この判断は,容疑者が収容令書に基づいて収容されていることを当然の前提とし,また,②の判断は,一定の事由があるときに,その在留を特別に許可するか否かを判断するものであるから,異議を申し出た容疑者が本邦に在留していることを当然の前提としている。 イ原告の出国と訴えの利益の消滅,,,,,しかるに原告は前記前提事実のとおり既に本邦から出国し現在収容令書に基づいて収容されておらず,かつ,本邦に在留もしていないから,仮に本件裁決が取り消されても,収容令書に基づく収容がなされていない原告は,放免という利益を受けることはなく,在留特別許可を受ける余地もない。 (原告)被告入管局長の主張は争う。 ( )争点( )(本件裁決及びこれを前提とする本件発付処分は違法か)につい て(原告)以下のとおり,本件裁決は法務大臣等の裁量権を逸脱・濫用したものとし- 5 -て違法であり,これを前提とする本件発付処分も違法であるから,これらは取り消されるべきである。 ア原告及びAによ 告)以下のとおり,本件裁決は法務大臣等の裁量権を逸脱・濫用したものとし- 5 -て違法であり,これを前提とする本件発付処分も違法であるから,これらは取り消されるべきである。 ア原告及びAによる婚姻の届出婚姻した当事者は,憲法24条により婚姻の保護を受け,市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「B規約」という)23条により家族。 の保護を受け,同規約17条により家族の結合の権利を有しているから,最大限保護されるべきである。そのため,法2条の2及び同法別表第2においても「日本人の配偶者」に在留資格が認められている。 ,原告は,Aとの婚姻を届け出たことにより「日本人の配偶者」に法律,的にも実質的にも明白に該当するに至ったにもかかわらず,本件裁決は,在留特別許可を認めていない点で,家族の結合に関する配慮を欠き,憲法24条,B規約17条,23条に反するものとして,違法である。 イ原告とAとの婚姻関係の実体被告らは,原告とAとの夫婦関係には実体がなく真摯なものではない旨主張するが,原告らの夫婦関係が真摯なものであり,婚姻後も安定して夫婦生活を営んでいることは,以下の事情から明らかである。 (ア)原告とAの夫婦生活が実体を備えたものであること原告は,平成13年夏ころからAと同棲しているが,Aが漁に出ている間は,基本的に伯母であるB宅に居住していた。そのため,伯母宅に居住していた期間の方が長いことになるが,これは,原告にとって日本における実家ともいえる伯母宅がA宅から100メートル程度の至近距離にあったこと,Aが漁師という特殊な職業に就いていることが理由である。 例えば,日本人同士の夫婦であっても,妻の実家が近くにあれば,夫不在の間に妻が実家に帰っていても何ら不自然ではないところ,本件の場合,原告とAとの間に子はないので,Aが漁に いることが理由である。 例えば,日本人同士の夫婦であっても,妻の実家が近くにあれば,夫不在の間に妻が実家に帰っていても何ら不自然ではないところ,本件の場合,原告とAとの間に子はないので,Aが漁に出ている1週間から1- 6 -0日間もの間,ただ1人で生活することが原告にとって精神的な苦痛をもたらすことは明白である。原告は,外国人にして不法残留状態にあることから,非常に不安定な地位にあり,周囲に友人もいないという事情に照らしても,このことはなおさらである。 それでも,原告は,Aが帰宅したときのために掃除・洗濯をきちんと行っており,Aが帰宅したときには,食事を作り,一緒に遊び,性交渉もあったのであるから,夫婦としての十分な同居の実体を備えている。 ,,(),また原告は台湾に住む娘現在小学校1年生を日本に呼び寄せAと一緒に遊びに行くなどしており,原告及び娘とAは,仲むつまじく交流を図っている。 (イ)夫婦生活を裏付ける事実a出頭準備について原告は,平成16年1月8日にAと婚姻した後,入管への出頭準備(平成16年1月21日付け外国人登録証明書,同年2月18日付け名古屋入管調査部門在宅担当者による提出書類についての指示書,同年2月17日付けの婚姻届受理証明書,陳述書,履歴書,自白書などの収集・作成,行政書士への依頼等)を進めているが,このことは,原告とAが今後も永続的な夫婦関係を続けていく意思を有していたことの表れである。 b逮捕後の交流について原告は,西日本入国管理センターに収容された後も,Aに対して,手紙を送付し続け,Aが帰宅したときは毎日電話をかけるなどしている。他方,Aも,原告に対して,手紙,衣類,食料品,毎月3万円な,,いし5万円の現金等を送付しているなど名古屋入管による摘発後も原告とAとの交流は継 Aが帰宅したときは毎日電話をかけるなどしている。他方,Aも,原告に対して,手紙,衣類,食料品,毎月3万円な,,いし5万円の現金等を送付しているなど名古屋入管による摘発後も原告とAとの交流は継続している。 c原告が収容に耐えていたことについて- 7 -原告は,平成16年9月に不法残留を理由として逮捕されてから,約1年間にわたって収容されていた。その間,台湾に住む原告の娘は幼稚園から小学校に進学しており,娘に会いたいという原告の思いは非常に強いものであった。にもかかわらず,1年間の収容に耐えてきたのは,Aと一緒に生活することを強く希望したからである。 dA宅における原告の荷物について名古屋入管警備官の報告書(乙19)には「室内には女性が生活,していたような様子が感じられず,また,容疑者の衣類,くつ,化粧品等の生活用品がほとんどなかった」などと記載されているが,こ。 の調査は,原告が逮捕された平成16年9月から3か月後の同年12月に行われたものであり,Aの1人暮らしの生活が長期化したことから,生活様式が変わることは当然であり,また,収容されている原告の生活に必要な衣類等を差し入れたことにより,原告の荷物が少なくなっていたとしても不思議ではない。 むしろ,原告は,男物の洋服を好んで着用していたから,女物の衣類が少ないことは当然であり,上記調査は,原告の生活実態を十分に把握しないまま,一般的感覚を基に結論づけられた誤ったものであるといわざるを得ない。 (ウ)売春・愛人問題被告らは,原告が売春をしていたことや,愛人がいたことを理由に,Aとの婚姻関係は実体を伴っていない旨主張するが,以下のとおり,原告は,Aとの婚姻後は愛人と縁を切り,売春をしたこともなく,Aは,これらの原告の過去の不貞行為について寛大な気持ちを持ち合わせている Aとの婚姻関係は実体を伴っていない旨主張するが,以下のとおり,原告は,Aとの婚姻後は愛人と縁を切り,売春をしたこともなく,Aは,これらの原告の過去の不貞行為について寛大な気持ちを持ち合わせている。そして,原告及びAともに,これからも一緒に生活して行きたいと願っていることを考慮すれば,今後も原告とAの婚姻生活は安定したものとして継続していくことは疑いなく,原告とAの夫婦関係は実体を伴- 8 -ったものであることは明らかである。 a売春をしていた時期原告は,平成13年12月ころから3か月間売春していただけであ,。 り原告がAとの婚姻以降に売春していたことを裏付ける証拠はないこの点について,原告が稼働していたスナックC(経営者は伯母)のホステス2人は,原告が逮捕直前まで売春をしていた旨供述している(乙17,18)が,原告は,逮捕以前に同人らと口論をして不仲になっており,退去強制が確実である同人らが,日本人と婚姻して在留特別許可を受ける可能性のあった原告をねたんで,原告を陥れるべく嘘の供述をしたと考えられる。そもそも,原告がスナックCで働いていたことは原告も自認するところであり,上記供述者らは,原告がスナックCで働いていたことイコール原告が売春していたと安易に決めつけてしまった可能性も否定できない。 また,スナックCの経営者である伯母の供述調書(乙21ないし23)やチーママの供述調書(乙24)にも,原告が売春していたことについての具体的記載はない。 b愛人のいた時期原告は,平成14年3月ころからと,平成15年ころから,2人の男性と愛人関係になっており,金銭をもらっていた。しかし,Aと結婚することを決めた平成15年11月以降は,愛人からお金をもらうことはなくなっており,原告は,Aとの結婚を境に,2人との愛人関,。 係を絶ってA 係になっており,金銭をもらっていた。しかし,Aと結婚することを決めた平成15年11月以降は,愛人からお金をもらうことはなくなっており,原告は,Aとの結婚を境に,2人との愛人関,。 係を絶ってAとの夫婦関係を真剣に考えていたことを裏付けているそして,原告は,Aに対し,愛人がいたことを説明し,Aは,このことについて,過去のことであるとしてこだわりを見せていない。 ウ在留特別許可が認められた事例との平等取扱い法務省入国管理局では,平成15,16年度に在留特別許可が認められ- 9 -た事例(54例)をホームページで公開しているところ,この中から,本件と同様に日本人,定住者,永住者等と婚姻した不法残留者の事例(17例)を抽出,分析すると,不法残留者が日本において安定的に在住している者と婚姻し,安定した生活を営んでいる場合には,在留特別許可が認められているということができる。また,不法残留者が,入管当局への出頭前に摘発された場合であっても,在留特別許可が認められた事例もある。 これらは,憲法24条の定める婚姻の保護,B規約23条の定める家族,。 の保護同規約17条の定める家族の結合の保護を具体化したものであるそして,原告が日本人であるAと婚姻し,安定した生活を営んでいることは客観的に明らかであるから,平等取扱いを定めた憲法14条に照らしても,本件裁決や本件発付処分は違法として取り消されるべきである。 (被告ら)原告の主張は争う。 ア法務大臣等の裁量(ア)法50条1項3号の在留特別許可の性質と裁量権外国人は,憲法上,在留の権利を保障されていない。憲法22条1項は,日本国内における居住・移転の自由を保障するものにすぎない。このことは,国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うもので,,,はなく特別の条約がない限り外国人を自 い。憲法22条1項は,日本国内における居住・移転の自由を保障するものにすぎない。このことは,国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うもので,,,はなく特別の条約がない限り外国人を自国内に受け入れるかどうかまた,これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを,当該国家が,。 自由に決定することができることとその趣旨を同じくするものであるしたがって,外国人は,憲法上,本邦に入国する自由を保障されているものではなく,在留の権利ないし引き続き本邦に在留することを要求する権利を保障されているものでもない(最高裁昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁。以下「最高裁マクリーン判決」という。 。)- 10 -そして,外国人の出入国管理は,国内の治安と善良の風俗の維持,保健・衛生の確保,労働市場の安定など国益の保持を目的として行われるものであって,その判断については,広く情報を収集し,その分析の上に立って,時宜に応じた的確な判断を行うことが必要であり,ときには高度な政治的な判断を要する場合もあり得る。加えて,在留特別許可の対象となる容疑者は,既に法24条各号所定の退去強制事由に該当し,本来的には本邦から退去強制されるべき地位にあることが前提であるから,在留特別許可は,本邦からの退去を強制されるべき者に対し,特に在留を認める処分であって,恩恵的な処分である。それゆえ,法50条1項3号も,在留を許可すべき事情について,判断を羈束するような定めをおいていない。 したがって,在留特別許可を与えるか否かは,法務大臣等の極めて広範な裁量にゆだねられているというべきである(最高裁昭和34年11月10日第三小法廷判決・民集13巻12号1493頁参照。 )(イ)司法審査の在り方このような在留特別許可の性質から,その許否の 範な裁量にゆだねられているというべきである(最高裁昭和34年11月10日第三小法廷判決・民集13巻12号1493頁参照。 )(イ)司法審査の在り方このような在留特別許可の性質から,その許否の判断についての司法審査も,裁判所が法務大臣等と同一の立場に立って在留特別許可をすべきであったか又はいかなる処分を選択すべきかについて判断すべきではなく,法務大臣等の第一次的な裁量判断が既に存在することを前提として,その判断が社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権を付与した目的を逸脱し又はこれを濫用したと認められるかどうかを審査すべきである。 そして,最高裁マクリーン判決で問題となった在留期間の更新と比較すると,在留期間の更新が適法に在留する外国人を対象として行われ,その申請権も認められているのに対し,上記のとおり,在留特別許可は法24条各号所定の退去強制事由に該当する容疑者を対象とするもので- 11 -あって,申請権も認められておらず,また,法50条1項3号は,在留特別許可を付与すべき要件について何ら具体的に定めていないことにかんがみれば,その裁量権の範囲は格段に広範なものというべきである。 したがって,在留特別許可を与えない処分が違法となるのは,法律上当然に退去強制されるべき外国人についてなお我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由が認められるときなど,法務大臣等がその付与された権限の趣旨に明らかに背いて裁量権を行使したと認め得るような特別の事情がある場合であることを要するのであって,極めて例外的な場合に限られるというべきである。 イ本件裁決及び本件発付処分の適法性原告は,本邦に不法に残留していた者であって,退去強制事由に該当していることは明らかであるから,入管法上,原則として退去強制されるべきであり,たとえ日本人との婚 イ本件裁決及び本件発付処分の適法性原告は,本邦に不法に残留していた者であって,退去強制事由に該当していることは明らかであるから,入管法上,原則として退去強制されるべきであり,たとえ日本人との婚姻が在留特別許可を認めるか否かを判断する際の一事情として考慮されることがあるにしても,日本人との婚姻をもって当然に本法に在留する権利が認められるものではない。 本件裁決が違法であるというためには,原告において「在留を特別に許可すべき事情」を主張立証する必要があり,この点について,原告は,Aとの婚姻が実体を伴う真摯なものである旨主張するが,以下のとおり,およそ原告らの婚姻が真摯なものであり,社会通念上の夫婦として相互扶助を行っていたとは認められないから,本件裁決は適法である。 また,法務大臣等から異議の申出は理由がないとの裁決の通知を受けた主任審査官は,速やかに退去強制令書を発付しなければならず(法49条5項,発付に当たり,裁量の余地は全くないから,本件裁決を前提とす)る本件発付処分も当然に適法である。 (ア)原告は,遅くとも平成13年12月ころから平成16年9月28日に警察に逮捕されるまでの間,伯母の経営するスナックCにおいて,売- 12 -春婦として稼働しており,Aとの婚姻届を提出した後も,売春婦として稼働していた。原告の売春の目的は金を稼ぐことにあり,売春を伯母から強要されたことはなく,自らの意思で行い,稼いだお金の中から本国に少なくとも毎月10万円を送金していた。 この事実は,原告自身,口頭審理の際の陳述(乙10,スナックC)の同僚ホステス2人の供述(乙17,18,伯母の供述(乙21,2)3,チーママの供述(乙24,男性客の供述(乙31)等からも明))らかである。 (イ)原告が,A方で寝泊まりするのは,1か月のうち7日程度 ス2人の供述(乙17,18,伯母の供述(乙21,2)3,チーママの供述(乙24,男性客の供述(乙31)等からも明))らかである。 (イ)原告が,A方で寝泊まりするのは,1か月のうち7日程度であり,それ以外の日は,Dビル303号室の伯母方や同ビル302号室の他のホステスが居住する部屋(以下「伯母方等」という)において寝泊ま。 りしており,そこからスナックCに出勤し,特別な事情がない限り,A方に出入りすることはなかった。したがって,原告の生活拠点はA方ではなく,同人との同居の事実はない。 この点について,原告は,Aが漁に出ている間,寂しいからという理由で伯母方等に寝泊まりしていた旨述べるが,原告が真摯な夫婦としてA方において婚姻生活を送っていたならば,Aが不在であっても,大半の日はA方において寝泊まりするのが通常である。原告の場合,売春婦の一員として,あるいは他の売春婦を管理するために,伯母方等で生活していたのであり,生活拠点は伯母方等にあり,ただAが漁から帰った時だけ,A方に寝泊まりしていたにすぎない。 (ウ)原告は,A以外の男性2人(1人は平成14年3月ころから,もう1人は平成15年中から)と愛人関係にあって,経済的な援助を受け。 ており,Aと婚姻した後も,同関係を継続していた。 このことは,Aとの婚姻関係がいかに実体のないものであったかを示すに十分である。 - 13 -(エ)原告の子は,平成14年8月以降,4回にわたって来日し,それぞ,,「」れ約90日滞在しているが同人に係る入国記録には日本の連絡先に伯母の居住地が記載されており,来日中,原告と一緒に伯母方に寝泊まりし,原告が出勤している間,Aが面倒を見るわけでもなく,時々,A方に連れて行く程度であった。また,原告が逮捕された後,原告の子とAとの間で,直接会 載されており,来日中,原告と一緒に伯母方に寝泊まりし,原告が出勤している間,Aが面倒を見るわけでもなく,時々,A方に連れて行く程度であった。また,原告が逮捕された後,原告の子とAとの間で,直接会話や意思疎通をした事実もない。 このように,原告の子とAは,原告を介して一時的な接触があった程度であり,親族としての深い交流はなかった。 第3当裁判所の判断 本案前の争点-本件裁決の取消しを求める訴えの利益の有無について( )行政事件訴訟法9条1項は「処分の取消しの訴え……は,当該処分… ,…の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分……の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分……の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む)に限り,提起すること。 ができる」と定めているところ,ここにいう「法律上の利益を有する者」。 ,,とは当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう(最高裁判所昭和53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁等参照。 )以上は,当該抗告訴訟につき原告が訴訟を追行する正当な資格を有するか,,という主観的な側面からする原告適格の問題であるがこれが肯定されてもさらに,当該公権力の行使を巡る具体的な状況に照らし,本案判決をすることによって当該争訟の解決をもたらすことができるかという客観的な側面,,(,すなわち狭義の訴えの利益の検討が必要となるこの意味の訴えの利益はあらゆる訴えにおいて必要とされる。 。)しかるところ,行政処分の取消訴訟における訴えの利益の有無は,口頭弁論終結時において,被処分者が,当該処分がその公定力によって有効なもの- 14 -として存在しているために生じている法的効果を )しかるところ,行政処分の取消訴訟における訴えの利益の有無は,口頭弁論終結時において,被処分者が,当該処分がその公定力によって有効なもの- 14 -として存在しているために生じている法的効果を除去することによって回復すべき権利又は法律上の利益を有しているか否かという観点から検討されるべきである。 ( )ところで,法49条及び50条によれば,法務大臣に対する異議の申出 を棄却する裁決は,退去強制事由の存在を肯定した特別審理官の判定に対する異議を排斥する行政事件訴訟法3条3項所定の裁決としての性質のほか,在留特別許可をすべき場合にも当たらないとしてこれを付与しないとの別個の(原)処分としての性質をも併せ有すると解される。 そうすると,仮に,異議の申出に対する棄却裁決が判決によって取り消された場合,法務大臣等は,当該取消判決の拘束力により,判定に対する異議を認めなかった点に違法があるとの理由によるときは,その理由の趣旨に従って異議を再審査すべきことになるし,在留特別許可を付与しなかった点に違法があるとの理由によるときは,同様に同許可を付与すべきかを改めて判断すべきことになる。このことを異議の申出をした外国人側からみれば,判定に対する異議を認める旨の裁決を受けた場合には,収容令書に基づく収容から放免され,国外への退去を強制されないという法的利益を受けることになるし,在留特別許可が付与された場合には,収容から放免された上,退去強制されることなく,一定期間適法に本邦に在留できる法律上の地位が認められるという法的利益を受けることになる。 ( )しかるに,前記前提事実( )のとおり,原告は,自ら出国を希望し,平成 17年9月30日本件発付処分に係る退去強制令書の執行により中国台,,(湾)に送還されており,現在,収容令書に基づく収 かるに,前記前提事実( )のとおり,原告は,自ら出国を希望し,平成 17年9月30日本件発付処分に係る退去強制令書の執行により中国台,,(湾)に送還されており,現在,収容令書に基づく収容を受けていることもなければ,本邦に在留している事実もないことが明らかであるから,本件裁決の取消しによって,収容から放免されたり,本邦に適法に在留できるという法的利益を得る余地がないことが明らかである。 したがって,原告は,現時点では,本件裁決の取消しを求める訴えの利益- 15 -を有していないと解するのが相当である(なお,本件発付処分については,同処分が執行されたことによって,処分の本来的な効果は消滅するが,法5条によれば,退去強制令書の執行によって退去した日から5年間は,本邦への上陸を拒否されることから,本件発付処分の取消しを求める利益は失われることはないと解される。 。) 本案の争点-本件裁決及び本件発付処分の違法性の有無について( )法49条5項は,主任審査官は,法務大臣から異議の申出が理由がない と裁決した旨の通知を受けたときは,速やかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるとともに,退去強制令書を発付しなければならないと規定し,このような通知を受けたにもかかわらず,退去強制令書の発付をしないことが許されることをうかがわせる規定を全く置いていない(逆に異議の申出が理由があるとの裁決の通知を受けたときも,同条4項は,直ちに容疑者を放免しなければならない旨定めている。そうすると,主任審査官は,退去強制。)令書の発付ないし放免については,法務大臣等による裁決の結果に無条件に従うべきものであり,これらについて独自の判断権を有していないと解するのが相当である。 しかして,本件発付処分は,被告入管局長による本件裁決を受けて行われた は,法務大臣等による裁決の結果に無条件に従うべきものであり,これらについて独自の判断権を有していないと解するのが相当である。 しかして,本件発付処分は,被告入管局長による本件裁決を受けて行われたものであることは,前記前提事実( )ウのとおりであり,独自の違法事由 の存在は考えられない(原告も,在留特別許可を与えないことが違法である旨主張しているとおり,その違法事由は本件裁決に関わるものである)か。 ら,その違法性の有無を確定するには,これを前提とする本件裁決のそれを判断すべきことになる。 ( )そこで,在留特別許可の性質と司法審査の在り方について検討する。 ア国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別の条約等がない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかは,専ら当該国家の立法政- 16 -策にゆだねられているところであって,当該国家が自由に決定することができるものとされている。我が国の憲法上も,外国人に対し,我が国に入国する自由又は在留する権利(ないしは引き続き在留することを要求することができる権利)を保障したり,我が国が入国又は在留を許容すべきことを義務付けたりしている規定は存在しない(最高裁マクリーン判決参照。 )ところで,法50条1項は,法務大臣が法49条1項所定の異議の申出に理由があるかどうかを裁決するに当たって,当該容疑者について法24条各号に規定する退去強制事由が認められ,異議の申出に理由がないと認める場合でも,当該容疑者が,永住許可を受けているとき(1号,かつ)て日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき(2号,その他法)務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき(3号)には,その者の在留を特別に許可することがで いるとき(1号,かつ)て日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき(2号,その他法)務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき(3号)には,その者の在留を特別に許可することができると規定しており,法50条3項は,この許可をもって異議の申出が理由がある旨の裁決とみなすと定めている。 このように,法50条1項は,既に法24条各号の規定する退去強制事由が存在すると認定され,本来的には我が国から退去を強制されるべき地位にある外国人に対し,特別に在留を許可できる場合を定めたものであるから,その許可が例外的,恩恵的な性質を有することは否定できない。しかも,1号と2号は具体的な許可事由を定めているものの,3号については,その許否の判断に当たって必ず考慮しなければならない事項など,上記判断を羈束するような文言を用いていないところ,外国人の出入国管理は,国内の治安と善良の風俗の維持,保健・衛生の確保,労働市場の安定などの国益の保持を目的として行われるものであるが,このような目的に沿うか否かの判断については,内外の情報を広く収集し,これを精密に分析した上で,時宜に応じて的確になされる必要があり,ときには高度な政- 17 -治的な要素の考慮を要求される場合もあり得ると考えられる。 これらを総合的に勘案すれば,法務大臣等は,異議の申出に対し,我が国の国益を保持し出入国管理の公正な管理を図る観点から,当該外国人の在留状況,特別に在留を求める理由の当否のみならず,国内の政治・経済・社会等の諸事情,国際情勢,外交関係,国際礼譲などの諸般の事情を総合的に勘案して,当該外国人に対して在留特別許可を付与すべきか否かを判断する広範な裁量権を与えられているというべきである。 したがって,在留特別許可を付与するか否かに係る法務大臣等の判断が違法となるの 的に勘案して,当該外国人に対して在留特別許可を付与すべきか否かを判断する広範な裁量権を与えられているというべきである。 したがって,在留特別許可を付与するか否かに係る法務大臣等の判断が違法となるのは,上記判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,法務大臣等に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した場合に限られるというべきであり,かつ,その主張立証責任は,在留特別許可を求める外国人に課せられているというべきである。 イこの点に関し,原告は,憲法24条,B規約17条,23条によって,婚姻した当事者は最大限保護されるべきであり,法2条の2及び法別表第,「」,2においても日本人の配偶者には在留資格が認められているところAとの婚姻を届け出た原告に対して在留特別許可を認めない本件裁決は,上記の各法条に反するものとして違法である旨主張する。 しかしながら,入管法は,外国人が本邦で一定の活動を行って在留することができる地位としての「在留資格」を定めており,本邦に在留する外国人は,それぞれ,当該外国人に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格又はそれらの変更に係る在留資格をもって在留するのが(),,,原則である2条の2第1項のに対し在留特別許可は上記のとおりかかる資格がない場合について,50条1項各号に該当するときに与えられるものであるから,退去強制事由に当たる者が日本人との婚姻を届け出たからといって,適法に在留資格を有する者と同じ扱いをしなければなら- 18 -ないと解することはできない上,退去強制を免れるために婚姻を仮装し又は形式的な婚姻届を提出する例が少なくないことからすれば,退去強制事由に当たる外国人が日本人との婚姻届を提出しさえすれば必ず在留特別許可を付与 ことはできない上,退去強制を免れるために婚姻を仮装し又は形式的な婚姻届を提出する例が少なくないことからすれば,退去強制事由に当たる外国人が日本人との婚姻届を提出しさえすれば必ず在留特別許可を付与すべきであると解するのは相当でない。 もっとも,婚姻は,夫婦が同等の権利を有することを基本とし,相互の協力により維持されなければならないものであり(憲法24条参照,B)規約17条1項が「何人も,その私生活,家族,住居若しくは通信に対,して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない」と定め,同規約23条1項が「家族は,社会の自然かつ基礎的。 ,な単位であり,社会及び国による保護を受ける権利を有する」と定めて。 いること,入管法が「日本人の配偶者」を在留資格の一つとして定めていることなどに照らせば,家族的結合についての利益が入管法上も尊重されるべきことは当然であり,したがって,夫婦の一人が日本人であって,日本国内に生活の本拠を有することは,法務大臣等が上記裁量権を行使するに当たり,重要な考慮要素とされるべきであり,日本人と外国人との間で正常な婚姻関係が形成されているにもかかわらず,在留特別許可を付与しないことは,特段の事情が存しない限り,法務大臣等の裁量権の逸脱ないし濫用を基礎付け得ると解するのが相当である。 ,(,( )これを本件について検討するに前記前提事実及び証拠甲8の1・2 ,,,,, 10の1ないし411の1ないし312の1・213ないし41,,,,,,,,,42の1ないし843ないし52乙3 21ないし23,25,27,28,30,31,A証人,原告本人)を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,1968年(昭和43 ないし843ないし52乙3 21ないし23,25,27,28,30,31,A証人,原告本人)を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,1968年(昭和43年,中国(台湾)の花蓮市で出生し,)高校卒業後,台北市でダンサーやカラオケ店員として稼動し,1999年(平成11年)には,娘を出産した。しかし,原告は,薬物使用の罪で服- 19 -役した経験を有しており,これを絶つために現地を離れる必要があったことと,日本人と婚姻し,静岡県下田市内でスナックを経営していた伯母の健康状態がすぐれず,手伝う必要があったことから,平成13年3月19,「」,「」,日在留資格短期滞在在留期間90日とする上陸許可を受けて羽田空港から本邦に入国した。 イ原告は,入国後,伯母の経営するスナックCを手伝い,給料等から毎月10万円を台湾にいる娘に送金するなどしていたところ,同年4月ころ,知人の紹介で,客として来店したこともあるAと知り合い,互いに好意を抱いた結果,同年5月ころ,A宅で寝泊まりするなどの交際を始めるようになった。もっとも,原告は,交際を始めてからも,Aが漁に出て不在の日(月のうち少なくとも20日を超える期間)は,アパート内の伯母宅等に寝泊まりし,そこから,スナックCに働きに出ていた(そのため,原告の衣類等の大半は伯母宅等にあり,後記のとおり,伯母が売春防止法違反の罪で逮捕されてから,これらはA宅に預けられた。 。)ウ原告は,交際を始めてから間もなく,Aに結婚を申し込み,Aも了承したが,Aの職業に難色を示した伯母が反対したため,そのままになってい。 ,,,た原告はAとの交際中生活費として1か月に約15万円を受け取りAの漁が休みのときには,一緒にパチンコをしたり,Aの衣類を 職業に難色を示した伯母が反対したため,そのままになってい。 ,,,た原告はAとの交際中生活費として1か月に約15万円を受け取りAの漁が休みのときには,一緒にパチンコをしたり,Aの衣類を洗濯したり,食事の支度をしたりし,原告の子が来日した際(4回)には,一緒に遊びに行ったこともあった。 やがて,伯母も軟化したことから,原告とAは,平成16年1月8日,下田市役所に婚姻届を提出して,正式に婚姻した。原告とAは,婚姻届を提出した後,入国管理局に在留資格を得るためにどのような書類が必要かを問い合わせ,必要な書類を集め始めた。 エスナックCは,通常の飲食業のほか,ホステスに売春をさせており,その経営者である伯母は,姪である原告とチーママを除くホステスに対して- 20 -は固定給を払わず,売春の対価のみを与えていたところ,原告も,スナックCで働くようになって間もなく,伯母から売春をするように勧められ,当初はこれを断っていたが,やがてこれに応じて,週に数回,客を相手に。 ,,売春をするようになった原告の売春はAとの婚姻届を提出してからも頻度こそ減少したものの,不法残留の罪で逮捕されるころまで継続していた。 また,原告は,Aと交際中の平成14年3月ころから,スナックCの客である日本人男性と愛人関係となり,また,平成15年ころからも,町で,,知り合った別の男性と愛人関係になってホテルで密会する報酬等としてそれぞれから,1か月20万円と10万円ずつを受け取っていたが,このような関係は,原告がAと婚姻するころまで継続していた。 これに対し,Aは,スナックCが売春を行っていることは下田市内では広く知られていたことから,原告も売春しているかもしれないと疑っていたが,交際するようになって少し経過したころ,原告が売春はしないと約束したことか は,スナックCが売春を行っていることは下田市内では広く知られていたことから,原告も売春しているかもしれないと疑っていたが,交際するようになって少し経過したころ,原告が売春はしないと約束したことから,売春をしていないと思っていた。 オ原告は,平成16年9月28日,静岡県警下田署員に入管法違反の容疑で逮捕され,同年11月15日,静岡地裁沼津支部において,懲役1年6月,執行猶予4年の有罪判決を受けた(これと前後して,伯母やスナックCのホステスらも,売春防止法違反の容疑で逮捕,起訴されている。 。)原告は,上記有罪判決の言渡しを受けると同時に,名古屋入管によって収容され,同年12月17日,西日本入国管理センターに移収された。 Aは,原告が身柄を拘束されてからも現金や季節の衣類等を送り続け,原告との間で手紙や電話によるやりとりを続けていたが,原告は,平成17年9月30日,出国を希望して,母国に送還された。 なお,Aは,本訴提起後,原告から愛人がいたことについて知らされ,そのことについては過去のことであるからこだわることはない旨述べてい- 21 -るが,愛人から金銭を受け取っていたことや原告が売春をしていたことについては,知らされていなかった。 ( )上記認定事実によれば,原告は,Aと知り合った後,同人が漁船から帰 宅したときにはA宅に寝泊まりするようになるなど,親密な交際をするようになり,最終的には婚姻届を提出するに至ったものであって,外形的にはそれなりの夫婦関係を築きつつあったと認められる。 その一方で,原告は,Aとの交際を始めた後も,スナックCでの売春行為を継続し,さらには2人の男性と金銭の授受を伴う愛人関係を結び,継続していたものであり,婚姻届を提出した後も,頻度こそ減少したとはいえ,売春行為をやめなかったというのであるから,少な Cでの売春行為を継続し,さらには2人の男性と金銭の授受を伴う愛人関係を結び,継続していたものであり,婚姻届を提出した後も,頻度こそ減少したとはいえ,売春行為をやめなかったというのであるから,少なくとも,婚姻に対する原告の姿勢が真摯なものであったと評価することはできず,社会通念上,相互扶助を本質とする正常な夫婦関係が形成されていたとはいえない。かえって,原告がAから通常程度の家計費を渡されていたにもかかわらず,売春行為等を継続していたことに照らすと,原告の主要な関心事は,Aとの安定した家庭を築くことよりも,むしろ,金銭の獲得にあったと推測することさえ可能というべきである。 ,,,この点について原告は①婚姻届を提出した後は売春をしていないこと②Aが不貞について寛大であることから,両名の婚姻関係は安定していること,③憲法14条は平等取扱いを定めているところ,本件と類似の事例で在留特別許可が認められていることなどを主張し,これに沿う内容の証拠(甲43,52,53)も存在する。 しかしながら,原告が婚姻届提出後も売春をやめなかったことは,原告自身が認めている(乙10,本人尋問)上,平成16年6月からスナックCで勤めるようなったホステスや同年2月以降に来店するようになった客らが原告が売春していたと供述している(乙17,27,28,30,31)ことなどから明らかであり,また,Aの証言によれば,同人が原告に愛人がいた- 22 -ことについて寛大な態度を示していることはうかがえるものの,Aが原告の所業の全ぼうを把握した場合に,果たして,将来的にも安定した夫婦生活が営まれるかは疑問といわざるを得ない。さらに,証拠(甲53)によれば,不法残留者である外国人が日本人等と婚姻した場合に,在留特別許可が与えられた事例が相当数存在することが認められるが した夫婦生活が営まれるかは疑問といわざるを得ない。さらに,証拠(甲53)によれば,不法残留者である外国人が日本人等と婚姻した場合に,在留特別許可が与えられた事例が相当数存在することが認められるが,本件における婚姻関係の実体は上記の判断・認定のとおりであり,在留特別許可が与えられた事例と同視することはできないから,異なった扱いを受けたからといって,平等原則に反するとはいえず,結局,上記判断を覆すことはできない。 ( )以上の認定・判断に,原告は,当初から在留期限を経過した後も不法に 残留する意思で我が国に入国したと推認できること,立件されてはいないものの,我が国において売春防止法に違反する行為を繰り返していたことなどを総合すれば,被告入管局長が,原告に対して在留特別許可を付与することなく異議の申出を却下した本件裁決に裁量権を逸脱・濫用した違法が存するとまでは認められず,したがって,本件裁決を前提としてなされた本件発付処分も違法ではないと判断するのが相当である。 結論 以上の次第で,被告入管局長に対する訴えは不適法であるから却下し,原告のその余の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部加藤幸雄裁判長裁判官- 23 -舟橋恭子裁判官片山博仁裁判官

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