主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 (主位的請求)被告が株式会社対鶴ビルに対し、平成13年4月24日付けでした場外車券売場「サテライト津山」設置許可処分は、無効であることを確認する。 2 (予備的請求)被告が株式会社対鶴ビルに対し、平成13年4月24日付けでした場外車券売場「サテライト津山」設置許可処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は、被告が自転車競技法(以下「法」という。)4条1項に基づき、株式会社対鶴ビル(以下「対鶴ビル」という。)に対してした場外車券売場設置許可処分(以下「本件処分」という。)について、当該場外車券売場の設置場所である岡山県津山市の住民であり、同市民により組織される「市民オンブズマンつやま」の代表である原告が、本件処分は、被告が法及び法施行規則(以下「規則」という。)に違反し、その裁量権の範囲を逸脱して行った違法な処分であるとして、主位的にその無効確認を、予備的にその取消しを求めている事案である。 1 関係法令の定め(1) 車券売場施設の設置競輪の車券の発売又は払戻金若しくは返還金の交付(以下「車券の発売等」という。)の用に供する施設を競輪場外に設置しようとする者は、経済産業省令の定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。この許可を受けて設置された場外車券売場を移転しようとするときも、同様に経済産業大臣の許可を受けなければならない(法4条1項)。 経済産業大臣は、この許可の申請があったときは、申請に係る施設の位置、構造及び設備が命令で定める基準に適合する場合に限り、その許可をすることができる(同条2項)。 (2) 場外車券売場設置等の許可申請場外車券売場の設置又は移転の許可を受けようとする者 施設の位置、構造及び設備が命令で定める基準に適合する場合に限り、その許可をすることができる(同条2項)。 (2) 場外車券売場設置等の許可申請場外車券売場の設置又は移転の許可を受けようとする者は、申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名その他の所定の事項を記載した許可申請書を当該場外車券売場を設置し又は移転しようとする場所を管轄する経済産業局長を経由して、経済産業大臣に提出しなければならない(規則4条の2第1項)。 また、上記許可申請書には、以下の書面を添付しなければならない(規則4条の2第2項)。 (ア) 場外車券売場付近の見取図(敷地の周辺から1000メートル以内の地域にある学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設の位置並びに名称を記載した1万分の1以上の縮尺による図面(同項1号)(イ) 場外車券売場を中心とする交通の状況図(同項2号)(ウ) 場外車券売場の施設の配置図(1000分の1以上の縮尺による図面(同項3号)(3) 場外車券売場の許可基準ア法4条2項の規定を受けて、規則4条の3第1項は、場外車券売場(払戻金又は返還金の交付のみの用に供する施設を除く。)の許可基準について、次のとおり定めている。 (ア) 学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設から相当の距離を有し、文教上又は保健衛生上著しい支障をきたすおそれがないこと(同項1号)。 (イ) 施設は、入場者数及び必要な設備に応じた適当な広さであること(同項2号)。 (ウ) 車券の発売等の公正かつ円滑な実施に必要な次の構造、施設及び設備を有すること(同項3号)。 a 車券の発売等の用に供する施設及び設備(同号イ)b 入場者の用に供する施設及び設備(同号ロ)c その他管理運営に必要な施設及び設備(同号ハ)d 外部とのしゃ断に必要な構造(同号 (同項3号)。 a 車券の発売等の用に供する施設及び設備(同号イ)b 入場者の用に供する施設及び設備(同号ロ)c その他管理運営に必要な施設及び設備(同号ハ)d 外部とのしゃ断に必要な構造(同号ニ)(エ) 施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置は、入場者の利便及び車券の発売等の公正な運営のため適切なものであり、かつ、周辺環境と調和したものであって、告示で定める基準に適合するものであること(同項4号)。 イ上記ア(エ)の「告示で定める基準」については、「自転車競技法施行規則第4条の3第1項第4号の規定に基づく場外車券売場の施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置の基準を定めた件に関する告示」(平成6年通商産業省告示第109号、以下「場外告示」という。)がこれを定めている。 場外告示は、入場者の用に供するため、適当な数及び広さを有する駐車場その他の所定の施設が利用しやすい場所に設けてあることを場外車券売場の設備等に関する基準の1つとして定めており(場外告示第1の2(4))、このうち駐車場については、駐車場は立地条件に応じ場外車券売場周辺の道路交通等に支障を及ぼすことのないよう入場者等を収容するのに十分な広さであること、自ら設置することが困難である場合には、車券発売中については他の駐車場の所有者等との契約により十分な広さの駐車場を確保することと定められている(同告示第1の2(4)チ)。 2 前提となる事実(以下の事実は、括弧内に認定根拠を掲げた事実のほかは当事者間に争いがないか弁論の全趣旨によって容易に認められる事実である。)(1) 原告は、場外車券売場「サテライト津山」(以下「本件場外車券売場」という。)の設置場所である岡山県津山市に居住し、本件場外車券売場の周辺に事務所を設けて営業を営む者であり、津山市民によって組織されている は、場外車券売場「サテライト津山」(以下「本件場外車券売場」という。)の設置場所である岡山県津山市に居住し、本件場外車券売場の周辺に事務所を設けて営業を営む者であり、津山市民によって組織されている「市民オンブズマンつやま」の代表者である(甲1の1、甲1の2)。 (2) 対鶴ビルは、岡山県津山市α5番地の10他6筆、1474.57平方メートルの土地に存する自己所有建物内(鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付5階建、延床面積6314.44平方メートルのうち1階651.00平方メートル、2階1264.00平方メートル、3階1264.00平方メートル)に本件場外車券売場を設置する計画を立て、平成13年4月10日、法4条1項及び規則4条の2に基づき、被告に対し、その設置の許可を求める申請書を中国経済産業局長を経由して提出した。 (3) 被告は、平成13年4月24日、法4条2項に基づき、本件場外車券売場の設置を許可する旨の本件処分をした。 3 争点(1) 原告適格の有無について(争点1)ア被告の主張(ア) 行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条に規定する「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益も上記の法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有すると解すべきである。 そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個 よりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有すると解すべきである。 そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。 また、行訴法36条は、無効等確認の訴えの原告適格について規定するが、同条にいう当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」の意義についても、上記の取消訴訟の原告適格の場合と同義に解すべきである。 (イ) 法は、以下のとおり、場外車券売場周辺の住民等の個々人の個別的利益を保護すべきものとする趣旨を含むとは解されない。 a 法の目的法は、その目的を明記していないが、全体として競輪事業について定めており、競輪施行の目的は「自転車その他の機械の改良及び輸出の振興、機械工業の合理化並びに体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に寄与するとともに、地方財政の健全化を図る」こととされている(法1条1項、11条、12条)。このほかの目的を示す規定としては、公安上及び競輪の運営上の基準の確保(法3条4項)、競輪の公正かつ安全な実施等(法5条2項、14条、14条の2,16条の3)、競輪場内等における秩序の維持(法14条、14条の2)に関する規定がある。 これらを総合すると、法は、競輪事業のさまざまな局面における公正・円滑な運用、安全・秩序を確保し、もって収益を公共的な目的に用いることを規定した法律であると解される。 そして、法には、場外車券売場の周辺住民など当該場外車券売場が所在する地方公共団体に居住する住民の個別的利益の保護を目的とするような規定は置かれてい 的に用いることを規定した法律であると解される。 そして、法には、場外車券売場の周辺住民など当該場外車券売場が所在する地方公共団体に居住する住民の個別的利益の保護を目的とするような規定は置かれていない。 b 場外車券売場の設置許可制度の趣旨法は、競輪の場外車券売場の設置について、経済産業大臣の許可にかからしめ(法4条1項)、「申請に係る施設の位置、構造及び設備が経済産業省令で定める基準に適合する場合に限り、その許可をすることができる。」と規定し(同条2項)、これを受けて、その許可基準について、規則4条の3第1項各号、さらには同4号に基づく場外告示が定められている。 そして、場外車券売場設置許可制度についての法改正の経過等に照らせば、場外車券売場設置許可制度の目的は、申請に係る施設の位置、構造及び設備が公安上及び競輪事業の運営上適当であるか否かを審査することにあるのであって、場外車券売場周辺の住民等の個々人の個別的利益の保護を目的とはしていないと解される。 c 場外車券売場設置許可申請と審査基準、指導要領について法、規則及び告示の規定は、いずれも申請の内容が公安上及び競輪の運営上適当であるか否かを審査する観点から定められた基準である。 また、平成7年4月3日付け通商産業省機械情報産業局長通達「場外車券売場の設置に関する指導要領について」(以下「設置要領通達」という。)は、場外車券売場を「設置するに当たっては、当該場外車券売場の設置場所が属する地域社会との調和を図るため、当該施設が可能な限り地域住民の利便に役立つものとなるよう指導すること」、設置するに当たっては、当該場外車券売場の設置場所を管轄する警察署、消防署等とあらかじめ密接な連絡を行うとともに、地域社会との調整を十分行うよう指導すること」としているが、設置要領通達は、機械情報 、設置するに当たっては、当該場外車券売場の設置場所を管轄する警察署、消防署等とあらかじめ密接な連絡を行うとともに、地域社会との調整を十分行うよう指導すること」としているが、設置要領通達は、機械情報産業局長の各通商産業局長に対する行政内部の通達であり、場外車券売場の設置・運営が適正かつ円滑に行われるようにするための行政指導上の指針にすぎない。 以上のとおり、法及びその関連法規の規定は、場外車券売場周辺の住民等個々人の個別的利益の保護を目的とする趣旨を含むものと解することはできず、原告は本件処分の無効確認及び取消しを求める原告適格を有しないのであるから、本件訴えはいずれも不適法であり、却下されるべきである。 イ原告の主張本件場外車券売場の開設は、対鶴ビルによる営利事業であるが、場外車券売場が開設されることにより、競輪事業によるギャンブル自体の悪影響のみならず、交通渋滞等の交通環境の悪化、来場者が与える場外車券売場周辺の諸環境への悪影響、とりわけ学校、病院などへの文教上、保健衛生上の悪影響が十分に予想されるところである。 上記のような悪影響があること及び行訴法9条の趣旨にかんがみれば、同条は、本件場外車券売場の周辺区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民及び本件場外車券売場の周辺区域を往来する不特定多数の人の生命、身体の安全等を、個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと理解すべきであり、原告は市民オンブズマンつやまの代表者でもあるから、原告には原告適格が認められるというべきである。判例も、周辺区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民に原告適格が認められるかについては、多岐に分かれている。 (2) 本件処分の違法性について(争点2)ア原告の主張本件処分は、以下のとおり、被告が法及び規則に違反し、その裁量権の範 居住する住民に原告適格が認められるかについては、多岐に分かれている。 (2) 本件処分の違法性について(争点2)ア原告の主張本件処分は、以下のとおり、被告が法及び規則に違反し、その裁量権の範囲を逸脱してしたものである点で違法な処分である。 (ア) 規則4条の3第1項1号は、「学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設から相当の距離を有し、文教上又は保健衛生上著しい支障をきたすおそれがないこと」(以下「位置基準」という。)を場外車券売場設置の許可条件の1つとしているが、「相当の距離」とは、社会通念上相当程度の距離を保つことが要求されているところ、その範囲内と考えられる所には、通学路、通院経路を含めて多くの文教施設や医療施設が存在していること及びそのためこれまでに行われてきた設置反対運動が行われていることに照らしても、本件場外車券売場は、上記位置基準に適合しないものというべきである。 (イ) 通商産業省機械情報産業局長(当時)は、平成7年4月3日付けで「場外車券売場の設置に関する指導要領について」との通達を発しており、その中で、場外車券売場を設置するに当たっては、その設置場所を管轄する警察署、消防署等とあらかじめ密接な連絡を行うとともに、地域社会との調整を十分行うよう指導している。 しかるに、本件場外車券売場の設置については、上記の反対運動にもみられるように、地域社会との調整が十分行われたとは言い難く、上記指導要領の定めに明らかに反しており、それにもかかわらずなされた本件処分は、明白に違法な処分というべきである。 (ウ) また、場外告示第1の2(4)チは、場外車券売場については、立地条件に応じ場外車券売場周辺の道路交通等に支障を及ぼすことのないよう入場者の自動車等を収容するのに十分な広さの駐車場を設け、自らこれを設置することが困難 1の2(4)チは、場外車券売場については、立地条件に応じ場外車券売場周辺の道路交通等に支障を及ぼすことのないよう入場者の自動車等を収容するのに十分な広さの駐車場を設け、自らこれを設置することが困難である場合には、車券発売中については他の駐車場の所有者等との契約により十分な広さの駐車場を確保することを設備等に関する重要な基準の1つとして定めている。 しかし、対鶴ビルは、本件場外車券売場について、自社ガレージ「津山ガレージ」(収容台数80台)以外は、他所有の駐車場を借り上げて専用又は臨時駐車場とする旨を申請しているところ、これらはすべて他の月極契約者の既契約と抵触するものであるから、許可基準でいうところの指定契約駐車場とは到底認められない上、申請書添付の書面があるとしても、同書面は形式的な書類にすぎない。そうすると、本件場外車券売場の来場者のための駐車場は、事実上設けられていないに等しく、駐車場基準に適合していないことは明らかである。 以上のように、本件場外車券売場は、許可基準を満たしていないことが明白であるにもかかわらず、本件処分は、許可を求める申請に対して、補正を求めることもなく2週間で行われたものであるから、被告の審査が形式的で適正さを欠くことは明らかである。 イ被告の主張原告の主張を争う。 本件処分により、原告の主張するような悪影響は生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について(1) 行訴法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうものであり、当該処分の根拠となった行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消 り自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうものであり、当該処分の根拠となった行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も上記「法律上保護された利益」に当たり、当該処分によりこれを侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。 また、行訴法36条は、無効等確認の訴えの原告適格について規定するが、同条にいう当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」の意義についても、この取消訴訟の原告適格の場合と同義に解するのが相当である(最高裁判所平成4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁)。 (2) そこで、上記見解に基づいて、本件処分の無効確認ないしはその取消しを求める本件訴えについて、本件の原告に原告適格が認められるかを検討する。 ア前記第2、1の関係法令の定めに記載したとおり、場外車券売場を設置するためには、被告の許可を受けなければならず(法4条1項)、被告は、申請に係る施設の位置、構造及び設置が命令で定める基準に適合する場合に限り、その許可をすることができると規定されている(同条2項)。 上記場外車券売場設置許可制度は、昭和27年法律第220号により設けられたものであるが、同法による改正後の法4条2項 に適合する場合に限り、その許可をすることができると規定されている(同条2項)。 上記場外車券売場設置許可制度は、昭和27年法律第220号により設けられたものであるが、同法による改正後の法4条2項は、「申請が命令で定める基準に適合する場合に限り、その許可をすることができる」旨規定していた。また、昭和27年法律第220号は、競輪の用に供する競走場の設置についても通商産業大臣(当時)の許可にかからしめることとし、同法律による改正後の法3条4項は、「申請に係る競走場の位置、構造及び設備が公安上及び競輪の運営上適当であると認めるときに限り、その許可をすることができる。」旨規定していた。この競走場及び場外車券売場設置の許可に係る規定は、昭和32年法律第168号により、競走場については、「申請に係る競走場の位置、構造及び設備が命令で定める公安上及び競輪の運営上の基準に適合する場合に限り、その許可をすることができる」との文言に、場外車券売場については、「申請に係る施設の位置、構造及び設備が命令で定める基準に適合する場合に限り、その許可をすることができる」との文言にそれぞれ一部改正され、現在に至っている。 そして、上記場外車券売場設置許可制度と、競輪場設置許可制度とは、異なる趣旨・目的を持って設けられた制度であると解すべき合理的根拠はなく、両者は、同一の目的を持って設けられたものと解するのが相当であるところ、両者の上記設置許可に係る法の定め及びその改正の経過に照らせば、場外車券売場設置許可制度は、競走場設置許可制度と同様に、申請に係る施設の位置、構造及び設備が、公安上及び競輪事業の運営上適当であるか否かを審査することを目的とするものであり、周辺住民等の生活環境の保護に主眼を置くものでないことは明らかである。また、法には、進んで売場周辺の住民等の個別 が、公安上及び競輪事業の運営上適当であるか否かを審査することを目的とするものであり、周辺住民等の生活環境の保護に主眼を置くものでないことは明らかである。また、法には、進んで売場周辺の住民等の個別的利益を直接保護することを目的とする明文の規定は存在していないのみならず、その手がかりとなるような規定を見いだすこともできない。 さらに、原告の主張するように、場外車券売場設置により周辺住民が、交通・風紀・衛生・教育等の関係を含め広い意味での生活環境の悪化等の不利益を受ける可能性があること及び交通・風紀等が住民の良好な生活環境を支える重要な要素であることは否定できないものの、場外車券売場の設置という事柄の性質からして、その設置により、直ちに周辺住民の生命、身体の安全が脅かされ、あるいはその財産に著しい被害が生ずることは、一般的には想定し難く、法に明文の根拠がないにもかかわらず、いわば当然に、法が周辺住民等の利益を個別的利益として保護する趣旨までもを含むと解するのは困難であるといわざるを得ない。 イ他方、規則4条の3第1項1号は、「学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設から相当の距離を有し、文教上又は保健衛生上著しい支障をきたすおそれがないこと」(位置基準)と規定するとともに、同項4号は「施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置は、(中略)周辺環境と調和したものであって、告示で定める基準に適合するものであること」(構造等環境調和基準)と規定しており、この規定を受けて定められた場外告示第1の2(4)チは、立地条件に応じ場外車券売場周辺の道路交通等に支障を及ぼすことのないよう入場者の自動車等を収容するのに十分な広さの駐車場を設け、自らこれを設置することが困難である場合には、車券発売中については他の駐車場の所有者等との契約により十分な広さの 等に支障を及ぼすことのないよう入場者の自動車等を収容するのに十分な広さの駐車場を設け、自らこれを設置することが困難である場合には、車券発売中については他の駐車場の所有者等との契約により十分な広さの駐車場を確保すること(駐車場基準)を定めている。また、規則4条の2第2項1号は、場外車券売場設置許可申請書には、場外車券売場付近の見取図(敷地の周辺から1000メートル以内の地域にある学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設の位置並びに名称を記載した1万分の1以上の縮尺による図面)を添付しなければならないと規定している。これらにかんがみれば、許可基準等が、場外車券売場の設置により周辺環境が受ける影響について、一定の配慮をしていることが認められるものの、その配慮においても、学校等の文教施設及び病院等の医療施設については、それらの施設の運営に関する個別的利益の保護を図る趣旨を含むものと考えられないでもないが、それ以外の一般周辺住民や周辺で事業を営む者の個別的利益の保護を図る趣旨が含まれているとは認められず、これらの者の利益は専ら公益の保護を通して間接的に考慮されているにすぎないと解するのが相当である。 ウ以上によれば、法の趣旨・目的、保護しようとしている利益・性質等に照らし、法が、周辺住民の良好な生活環境等を享受する利益を、個々人の個別的利益として保護する趣旨であると解することはできず、法は、周辺住民の個別的利益を上記法が目的としている公益の中に吸収解消させ、その保護は、専ら上記公益の実現を通じて図ることとしているものと解するのが相当である。 そうすると、場外車券売場の周辺に存する文教施設及び医療施設の設置者の原告適格の有無については、なお検討の余地があるものの、原告はこれらの者に当たるとは認められないし、これらの者以外の周辺住民については すると、場外車券売場の周辺に存する文教施設及び医療施設の設置者の原告適格の有無については、なお検討の余地があるものの、原告はこれらの者に当たるとは認められないし、これらの者以外の周辺住民については、本件処分の取消しを求めるについて行訴法9条の定める法律上の利益があるとは認められないのであるから、原告には本件処分の取消しを求める原告適格が認められない。そして、前記のとおり、無効確認の訴えの原告適格についても取消訴訟の原告適格と同義に解するのが相当であるから、本件訴えはいずれも不適法として却下すべきものといわざるを得ない。 2 よって、争点2について判断するまでもなく、本件訴えは、いずれも原告適格を欠く不適法な訴えであるから、却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官廣澤諭裁判官加藤晴子
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