平成14年10月30日判決言渡平成13年(ワ)第332号約束手形返還請求事件口頭弁論終結日平成14年8月28日判決 主文 1 原告の被告に対する,原告が被告から別紙原告計算表1の「年月日」欄及び「借入金額」欄記載のとおり借入れた貸金債務は41万8921円及びこれに対する平成12年2月2日から支払済みに至るまで年1割5分の割合による金員を超えては存在しないことを確認する。 2 被告は,原告から41万8921円及びこれに対する平成12年2月2日から支払済みに至るまで年1割5分の割合による金員の支払を受けるのと引換えに,原告に対し,別紙手形目録記載の各約束手形を返還せよ。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告の被告に対する,原告が被告から別紙原告計算表1の「年月日」欄及び「借入金額」欄記載のとおり借入れた貸金債務は23万3076円を超えては存在しないことを確認する。 2 被告は,原告から23万3076円の支払を受けるのと引換えに,原告に対し,別紙手形目録記載の各約束手形を返還せよ。 第2 事案の概要本件は,いわゆる商工ローン業者である被告から継続的に手形貸付を受けていた原告が,その手形貸付債務について,原告がこれまでに支払った返済金を利息制限法に基づいて充当計算すると残債務は23万3076円になると主張して,被告に対し,この残債務23万3076円を超える債務の不存在確認及びこの残債務23万3076円の支払と引換えに被告が所持する別紙手形目録記載の各約束手形の返還を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実は証拠を掲記しない。)(1) 原告は,金属製品製造業を営む有限会社であり,被告は,中小企業向けの金融を業 手形目録記載の各約束手形の返還を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実は証拠を掲記しない。)(1) 原告は,金属製品製造業を営む有限会社であり,被告は,中小企業向けの金融を業とするいわゆる商工ローン最大手の株式会社である。 A信用保証株式会社(以下「A信用保証」という。)は,被告の100パーセント出資の子会社であり,専ら被告の貸付先の信用保証を業とする株式会社である。 (2) 原告は,平成7年9月14日,被告(船橋支店担当)との間で,手形貸付取引約定を締結した(以下「本件取引約定」という。)。 本件取引約定では,手形貸付取引の元本極度額は1000万円(なお,元本極度額は,平成9年10月17日,1500万円に変更されている。),契約期間は5年間とされ,期間満了時に特段の申出がないときは,同一条件にて更に5年間継続されるとされている(乙31。枝番を含む。以下同じ。)。 また,原告は,本件取引約定を締結した際に,A信用保証との間で,本件取引約定に基づく取引により発生する原告の被告に対する一切の債務をA信用保証が保証する旨の,信用保証委託契約を締結した(なお,本件取引約定の元本極度額が,平成9年10月17日,1500万円に変更されたのに伴い,同日,上記信用保証委託契約上の保証元本極度額も1500万円に変更された。乙32)。 (3) 被告は,原告に対し,本件取引約定に基づき,別紙原告計算表1「年月日」欄記載の日に,「借入金額」欄記載の金額を手形貸付の方法により貸し付けた。 なお,被告は,平成7年9月14日から平成10年6月8日までの上記貸付に当たっては,原告に対し,別紙原告計算表1「借入金額」欄記載の貸付金額から,被告に対する支払分として同計算表の「債権者徴収金額」欄の「利息」欄,「調査料」欄,「取立料」欄及び「振込手数料」 記貸付に当たっては,原告に対し,別紙原告計算表1「借入金額」欄記載の貸付金額から,被告に対する支払分として同計算表の「債権者徴収金額」欄の「利息」欄,「調査料」欄,「取立料」欄及び「振込手数料」欄記載の金額並びにA信用保証に対する支払分として同計算表の「保証料」欄及び「事務手数料」欄記載の金額を合計したものを天引きした金額を交付していた。 被告は,同年7月10日以降の上記貸付に当たっては,主として,前記利息等(「振込手数料」を除く。)の徴収を,あらかじめ天引きする形でするのではなく,別途原告に利息等相当額を額面額とする手形を振り出させ(以下,このようにして振り出された手形を「利息手形」という。)これを決済させる形で行った。 (4) 原告は,被告に対し,上記手形貸付の返済として,別紙原告計算表1「年月日」欄記載の日に,「期日手形額面」欄及び「利息手形」欄記載の各金員を支払った。 (5) 原告は,平成12年1月31日,被告に対して上記手形貸付の残債務を弁済しようとしたが,被告がこの受領を拒絶したので,同年3月3日,千葉地方法務局船橋支局に,被告を被供託者として,被告の原告に対する手形貸付に基づく債務の返済に充てるため,19万1167円を供託した(甲2)。 (6) 被告は,別紙手形目録記載の各手形を所持している。 2 争点本件の争点は,原告のA信用保証に対する保証料及び事務手数料の支払が利息制限法3条所定のみなし利息に当たるか(争点1)及び本件の手形貸付取引の過程で生じた過払金を,発生時点で存在する他の債務に充当することができるか(争点2)である。 (1) 争点1(原告のA信用保証に対する保証料及び事務手数料の支払が利息制限法3条所定のみなし利息に当たるか。)ア原告の主張原告のA信用保証に対する保証料及び事務手数料の支払は,利息制限 。 (1) 争点1(原告のA信用保証に対する保証料及び事務手数料の支払が利息制限法3条所定のみなし利息に当たるか。)ア原告の主張原告のA信用保証に対する保証料及び事務手数料の支払は,利息制限法3条所定のみなし利息に当たるというべきである。 すなわち,A信用保証は,形式的には被告と別個の法人とされているが,独自の審査部門を持たず,被告が貸付を決定した場合には必ず信用保証をすることとなっていること,A信用保証が行う信用保証は被告による貸付に限られていること,A信用保証の役員は被告の役員とほぼ共通し,従業員も大半が原告から転属させられた者であること,A信用保証はその債権回収業務を被告の従業員に事務代行させることもあることなどを考慮すると,実質的にはA信用保証の被告からの独立性は否定されるというべきである。 また,A信用保証は,被告の100パーセント出資の子会社であることから,A信用保証の損失は最終的には被告が被ることになるのであり,貸し倒れによる危険の分散という信用保証会社としての機能を果たしてはいない。 以上を総合的に考慮すると,A信用保証による保証料及び事務手数料の徴収は,実質的には被告の金利を徴収しているものといえるのであり,これは,利息制限法3条を潜脱するために被告が考案した一つのシステムにすぎないというべきである。 イ被告の主張(ア)原告のA信用保証に対する保証料及び事務手数料の支払は,利息制限法3条所定のみなし利息には当たらないというべきである。 すなわち,信用保証制度は,顧客に信用を与え,貸し倒れのリスクを分散する等の目的の下に,経済社会一般で広く行われていることであり,被告が,被告による貸付を信用保証させるために,A信用保証を被告の子会社として設立し,A信用保証に対して人的及び物的設備の面で協力を行ったところ 目的の下に,経済社会一般で広く行われていることであり,被告が,被告による貸付を信用保証させるために,A信用保証を被告の子会社として設立し,A信用保証に対して人的及び物的設備の面で協力を行ったところで,A信用保証の被告からの独立性が否定されるわけではない。A信用保証は,融資保証業務,債権買取・総合管理業務,信用調査業務その他を目的として,適式な手続きを経て設立された株式会社であり,保証料の徴求と管理債権の回収において,親会社である被告とは独立して運営され,毎期独自の決算を行い,独自の確定申告を行い,独自の支店を有し,独立した利益追求主体として営業活動を行っている。A信用保証の代表取締役は,被告の役員ではなく,3名いる監査役のうち2名は被告の役員を兼ねるものではない。A信用保証と被告の従業員は,別系統で人事管理され,給与の体系も異なっており,また,被告からA信用保証へ移籍する場合にも被告を退職した上,新規にA信用保証に入社し,新規入社社員として適格年金への加入手続が取られている。A信用保証は,ある程度,信用情報機関を通じて信用調査を行うことができる被告に依拠して顧客の信用調査を行っているが,これは,保証業者が主体となって行う信用調査では十分な信用情報を取得できないからであり,経済的な合理性を有するものである。なお,A信用保証は,独自に信用調査を行っているものであり,被告の保証依頼を拒絶する場合も存する。また,A信用保証は,現に,保証料及び事務手数料等を収受してこれを自社の収入として計上し,代位弁済金を被告に支払って代位弁済を行うなどしているのであり,これらのA信用保証の業務が,被告の利息制限法潜脱のために行われているという実態はない。 (イ)なお,別紙原告計算表1及び同2によると,原告は,被告が原告から受け取った「振込手数料」をもみなし り,これらのA信用保証の業務が,被告の利息制限法潜脱のために行われているという実態はない。 (イ)なお,別紙原告計算表1及び同2によると,原告は,被告が原告から受け取った「振込手数料」をもみなし利息に当たるとして充当計算をしているが,この「振込手数料」は,取扱銀行が収受すべきことになる手数料であって,本件取引約定上,原告が負担すべき費用とされているのであるから,みなし利息に当たらないことは明白である。 (2) 争点2(本件の手形貸付取引の過程で生じた過払金は,発生時点で存在する他の債務に充当することができるか。)ア原告の主張(ア)被告の原告に対する手形貸付は,本件取引約定に基づいて借り換えと借り増しが連続してなされたにすぎず,全体として一連の貸付と評価することができ,本件取引の過程で生じた過払金は,発生時点で存在する他の債務に順次充当されるべきである。 すなわち,被告による一連の手形貸付による取引は,債務者が自力で手形を決済することが困難となるように短期でかつ資金繰りの苦しい時期に満期日を設定するなどして手形貸付を行い,そのため自力で手形を決済することが困難となった債務者に対し,その手形の決済資金に当てられることを予定してさらに新たな手形貸付を行うことを繰り返すというものであり,債務者にとっては,実質的には,貸付金の支払期間が順次延長され,その間の高金利の利息の支払が継続することとなるものである。 そうすると,被告による一連の手形貸付による取引は,被告が貸付金の元本を減少させずに長期間にわたって高金利の利息等を徴収できるように考案された一つのシステムであるということができ,被告による各手形貸付は,実質的には本件取引約定に基づく一連の取引の中で,繰り返し借り換えや借り増しがなされているに過ぎないというべきものである。 (イ れた一つのシステムであるということができ,被告による各手形貸付は,実質的には本件取引約定に基づく一連の取引の中で,繰り返し借り換えや借り増しがなされているに過ぎないというべきものである。 (イ) また,仮に,本件の各手形貸付が別個独立した貸付として評価されるとしても,各手形貸付について原告が任意に支払った利息制限法の制限を超える過払部分は,金銭消費貸借上の債務者を保護しようとする利息制限法の趣旨にかんがみ,民法491条により,順次別口の手形貸付の元本に充当されるというべきである。 (ウ) 以上の理で充当計算をすると,原告の被告に対する残債務は,別紙原告計算表1のとおり23万3076円となる。 (エ) なお,仮に,被告による一連の手形貸付が全体としては一連の貸付と評価されないとしても,前に振り出した手形の満期日において新たに行われた手形貸付は,前の手形貸付と同一の系列に属する一体の貸付であるから,これを一つの系列としてグループ分けをし,その系列における取引過程で過払金が生じた場合には,発生時点で存在する他の系列における債務に順次充当されると考えるべきである。 このように充当計算した結果は,別紙原告計算表2のとおりとなるのであって,各系列の残債務の合計は48万5144円となり,これから,前記1,(5)記載の供託金19万1167円を控除した,29万3977円が原告の被告に対する残債務額となるというべきである。 イ被告の主張被告の原告に対する各手形貸付は,たとえ前の手形の決済日と新たな手形貸付日とが一致している場合であっても,各貸付ごとに,被告が,原告からの融資申込を受け,原告の信用状態を調査し,貸付金額,利率等を決め,稟議決済を経て,現実に貸付金を原告の口座に振り込み送金する方法で行っているものであり,また,仮に被告が前の手形 ,被告が,原告からの融資申込を受け,原告の信用状態を調査し,貸付金額,利率等を決め,稟議決済を経て,現実に貸付金を原告の口座に振り込み送金する方法で行っているものであり,また,仮に被告が前の手形貸付の決済資金として使われることを期待して新たな手形貸付をしていたとしても,新たな手形貸付による貸付金は現実に原告の当座預金口座に入金されているのであり,貸付金がいったん原告の当座預金口座に入金された後は,その使途は無限定で被告のコントロールに服するものではないことを考慮すると,各手形貸付は,それぞれ別個独立した金銭消費貸借として評価されるべきものである。 また,原告の被告に対する貸付金の弁済は,各手形を決済するという方法でなされている以上,当事者の合理的意思としては,各弁済はその決済された当該手形による手形貸付に対して充当される意思でしたものということができるのであるから,過払金の弁済充当について,民法489条,491条は適用されない。 以上からすれば,被告の原告に対する各手形貸付における,原告の被告に対する過払金については,各手形貸付ごとに発生した過払金が累積した合計額が残存しているものと考えるべきであり,原告の被告に対する残債務額は,この過払金の累積合計額と未決済の貸付金及びこれに対する既発生利息とを相殺して求めるべきである。そして,天引き利息については,貸付元本を手形の額面金額として利息計算すべきであるところ,これにより計算すると,原告の被告に対する残債務額は,別紙被告計算表のとおり578万2041円となる。 第3 争点に対する判断 1 争点1(原告のA信用保証に対する保証料及び事務手数料の支払が利息制限法3条所定のみなし利息に当たるか。)(1) 証拠(甲9,10,13ないし17,31,34ないし36,45ないし47,49ないし52 1(原告のA信用保証に対する保証料及び事務手数料の支払が利息制限法3条所定のみなし利息に当たるか。)(1) 証拠(甲9,10,13ないし17,31,34ないし36,45ないし47,49ないし52,54,55,60ないし62,71,乙19,20,25,原告代表者)によれば以下の事実が認められる。 ア A信用保証は,被告の手形貸付取引を信用保証させるために,被告が100パーセント出資して平成3年5月27日に設立した株式会社であって,被告とは独立して決算,納税等を行っていた。 イ A信用保証が設立されて以降,被告が貸付を行う際には,すべてA信用保証による信用保証が付される運用がなされており,また,A信用保証は,被告以外の者による貸付については信用保証をしていなかった。 ウ被告は,A信用保証が設立される以前には,貸付にあたって出資法所定の上限金利に近い高金利を設定していたが,A信用保証が設立されて以後は,貸付利率及び調査料を減額し,A信用保証がこの減額分と同額ないしこれを若干上回る保証料等を徴収するようになった。 エ A信用保証は,顧客と信用保証委託契約を締結するに当たっては,その顧客に貸付をするか否かを被告の判断に依存し,独自の信用調査を行っていなかった。また,A信用保証は,被告に保証契約締結の事務を委ね,保証料及び事務手数料の徴収手続も被告に代行してもらっていた。また,被告の貸付明細書とA信用保証の保証受託書(甲15)は,1枚の書式になったものを用いていた。 オ A信用保証の従業員は,被告の本店や支店内の一部を賃借した事務所において業務を遂行し,また,そのほとんどが元被告の従業員であった者であった。A信用保証の社員が自社の債権の回収に当たる場合,被告の名前で債権回収をすることが多かった。そして,被告の社長名義で,「管理部社員 A信用保証㈱社 た,そのほとんどが元被告の従業員であった者であった。A信用保証の社員が自社の債権の回収に当たる場合,被告の名前で債権回収をすることが多かった。そして,被告の社長名義で,「管理部社員 A信用保証㈱社員各位」,「(全社員に徹底の事)」と記載された債権回収に関する文書(甲17)が配布されることなどがあった。 (2) 以上の認定事実によれば,A信用保証は,被告から独立して決算等を行っており,形式的には,被告と別個の法人格を有していることが明らかであるが,A信用保証は,被告の本店や支店内の一部を賃借して事務所としているのみならず従業員のほとんどが元被告の従業員であった者である上,被告の社長名義で「管理部社員A信用保証㈱社員各位」,「(全社員に徹底の事)」と記載された債権回収に関する文書が配布されるなどしていたというのであるから,人的,物的側面において被告と密接不可分に結び付いていることが明らかである。また,これにとどまらず,A信用保証は,被告の行う貸付すべてについて信用保証することとしており,顧客の信用調査及びこれに基づく貸付をするか否かの判断を被告に依存して独自には行わず,また,保証料及び事務手数料の徴収手続も被告の従業員に代行してもらっており,かつ,被告以外の業者に対する信用保証を一切行っていなかったというのである。以上の諸点を考慮すると,A信用保証は,実質的には,その営業を完全に被告に依存し,いわば被告の一部門にすぎない実態を有していたということができる。 また,A信用保証は,その親会社である被告の100パーセント出資により設立された信用保証会社であるから,A信用保証の損益は,結局は,親会社である被告にそのまま還元されることとなるのであり,被告の貸付に対するA信用保証の保証は,本来,信用保証の有するリスク分散機能を果たしていない。 保証会社であるから,A信用保証の損益は,結局は,親会社である被告にそのまま還元されることとなるのであり,被告の貸付に対するA信用保証の保証は,本来,信用保証の有するリスク分散機能を果たしていない。 以上に加え,被告は,A信用保証を設立した以後,それ以前に設定していた利率及び調査料の額を減額し,A信用保証がこの減額分と同額ないしこれを若干上回る保証料等を徴収するようになったことを併せ考慮すると,被告は,A信用保証を形式的に被告と別個の法人として設立することにより,A信用保証による保証料及び事務手数料名目で徴収する金員を被告が徴収する金員ではないと言い得る状態を造り出し,もって,利息制限法3条の適用を免れ,A信用保証の取得する保証料及び事務手数料を合わせてより多くの金員を徴収することをねらってA信用保証を設立したということができる。 これに対し,被告は,A信用保証が被告とは独自に貸付の審査を行うなどしており,被告とA信用保証が実質的にも別個の法主体である旨,A信用保証が被告において利息制限法の制限を潜脱する目的で設立したものではない旨るる主張する。しかし,上記(1)の事実に加えて,被告は,被告の貸付にはすべてA信用保証の保証が付されるところ,貸付の当否を判断するのは被告であることを前提とする照会文書を弁護士あてに出している(甲32,33)ことを考慮すると,A信用保証が被告とは独自に貸付の審査を行っており,被告とA信用保証が実質的にも別個の法主体であるなどの被告の上記主張は,にわかに信用し難いものであり,これを認めることができない。 そして,上記のようなA信用保証の設立された目的や,被告との業務上,人事上の密接関連性,経済上の一体性等を考慮すると,A信用保証が保証料及び事務手数料名目で徴収した金員は,実質的には被告に帰属する経済的利益と 記のようなA信用保証の設立された目的や,被告との業務上,人事上の密接関連性,経済上の一体性等を考慮すると,A信用保証が保証料及び事務手数料名目で徴収した金員は,実質的には被告に帰属する経済的利益と見るべきであって,これは,利息制限法3条にいう金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭,すなわち,みなし利息に当たるものというべきである。 (3) なお,被告は,被告が原告から徴収した「振込手数料」は,取扱い銀行が収受すべきことになる手数料であって,本件取引約定上,原告が負担すべき費用とされているのであるから,みなし利息に当たらないと主張する。 しかしながら,利息制限法3条は,金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は,何らの名義をもってするを問わず,利息とみなすとして,債務者の保護を図っているのであり,「振込手数料」名目の徴収がこの利息制限法3条にいう債権者の受ける元本以外の金銭に当たらないとする合理的理由は見当たらない。 したがって,本件の「振込手数料」も利息制限法3条の適用を受けるというべきである。 2 争点2(本件の手形貸付取引の過程で生じた過払金を,発生時点で存在する他の債務に充当することができるか。)(1) 証拠(甲3ないし7,9,45ないし52,54ないし56,63,64,71,75,76,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 ア被告による手形貸付取引は,銀行からの融資を受けられない中小零細事業者を専ら顧客として行うものであり,これらの顧客を電話で勧誘するなどして,融資をするものである。その手形貸付の方法は,まず,被告と顧客との間で基本契約である手形貸付取引約定(本件取引約定もこれに当たる。)を締結し,貸付元本極度額を定め,その範囲内で手形貸付をするというものである るものである。その手形貸付の方法は,まず,被告と顧客との間で基本契約である手形貸付取引約定(本件取引約定もこれに当たる。)を締結し,貸付元本極度額を定め,その範囲内で手形貸付をするというものである。 イそして,平成10年ころ以前は,借主が被告に対して,貸付額を額面とし,弁済期を満期日とした手形を振り出し,被告がその貸付額から利息等を天引きした額の金員を借主に対して交付することにより貸付を行い,当該手形を決済することにより返済がされていたのであり,当該手形の決済が困難な場合は,借主に前の手形の満期日を振出日とし,額面を同じくする新たな手形を振り出させ,同様に利息等を天引きした額の金員を送金するなどして現実に交付して手形額面金額を貸し付け,借主は,その新たに貸し付けられた金員に天引きに係る不足分を上乗せして前の手形を決済するということが繰り返されていた。 ウまた,平成10年ころからは,被告が手形貸付を行うに当たって,利息等の天引きは行われなくなり,その代わり,借主が貸付元本に相当する手形を振り出すとともに,さらにその利息等に相当する手形又は小切手を振り出し,これらを各満期日に決済する方法がとられ,やはり,手形の決済が困難な場合は,元本額について上記と同様の方法で再度手形貸付をし,借主は,これにより元本手形を決済するとともに,別途資金を調達して,利息手形を決済するということが繰り返されていた。 エ被告の従業員は,被告本社から,顧客に対する貸出額が100パーセント以上(すなわち,当初の貸出額と同額か又はそれ以上の額)で維持されるようにするため,「折り返し(反復)交渉心得七ヶ条」なる書面(甲56)を交付されるなどして反復継続して融資をする形で顧客管理をするように指導され,そのため,手形貸付の際に,顧客に振り出させる手形の決済日を,短期で,か 折り返し(反復)交渉心得七ヶ条」なる書面(甲56)を交付されるなどして反復継続して融資をする形で顧客管理をするように指導され,そのため,手形貸付の際に,顧客に振り出させる手形の決済日を,短期で,かつ,顧客が当該手形の決済をすることが困難な売上金集金日の少し前に設定するなどして,当該手形決済のため再度被告から手形貸付を受けることを余儀なくさせ,顧客が自己の資金繰りで手形を決済して被告との取引を絶ってしまうことのないようにしたり,当該手形の満期日が近づくと,被告から顧客に対して,被告からの振込金額及び顧客において用意すべき準備金額などが示された再度の貸付についての「継続融資のご案内」と題する書面又は「貴社振出のお手形の延長をお願い致します。」などと記載された上記と同様の書面(甲6)をファックスにより送付するなどしていた。また,上記のような貸付方法のため,顧客は,ほとんどの場合,再度被告から手形貸付を受けた金員を従前の手形の決済に充てざるを得ない状況に置かれていた。 オさらに,被告は,より高額な利息の支払に耐え得る資金力を有する顧客に対しては,キャンペーンなどと称した積極的な勧誘を行い,新たな貸付に応じなければ従前の手形貸付の延期(ジャンプ)に応じないなどと述べて前に振り出された手形の決済とは関係のない新たな手形貸付を受けることを顧客に応じさせ,その顧客に対する総貸出額を増額する方策をとっていた。 カ原告は,平成7年9月14日,元本極度額を1000万円(なお,元本極度額は,平成9年10月17日,1500万円に変更されている。)と定めて被告との取引を開始したが,これは,上記アないしオに示した被告が一般的に行っている手形貸付の方法とほぼ同じものであった。 すなわち,原告は,銀行による貸し渋りのためその資金繰りに窮していたところ,被告船橋支 引を開始したが,これは,上記アないしオに示した被告が一般的に行っている手形貸付の方法とほぼ同じものであった。 すなわち,原告は,銀行による貸し渋りのためその資金繰りに窮していたところ,被告船橋支店の担当者から,被告から借入れる方が銀行よりも速やかに資金調達できる上,貸付金の弁済期が来ても,被告に対して利息分のみを支払えば,借入金を継続して長期的に運用できるなどの説明を受けて勧誘され,平成7年9月14日,本件取引約定の締結に至り,同日,200万円の手形貸付(利息天引き額20万7111円)を受け,さらに,同年11月29日,新たに手形貸付を受けて借入額を増加させるよう勧誘され,新たに300万円の手形貸付(利息天引き額及び未払利息充当額合計36万1013円)を受け,その後,別紙原告計算表1のとおり,手形貸付と手形決済を繰り返した。原告は,被告との取引を継続する間,会社の利潤のほとんどを被告に対する利息等の支払に充てるといった状態であった。 (2) 第2,1記載の前提事実及び上記(1)の認定事実に基づき判断する。 ア確かに,被告が原告に対してした手形貸付は,形式的にみると,各手形貸付ごとに手形の振出と貸付金の入金がなされ,満期日に決済がなされているのであるから,それぞれが別個に完結する手形貸付が複数回繰り返されているようにも見える。また,前の手形貸付の満期日に行われる新たな手形貸付については,その手形貸付により,いったんは借主の元に現実に入金がされるのであるから,その意味では,貸付金の使途は借主に委ねられていると形式的にはいえないこともないであろう。 イしかしながら,被告の顧客層は,銀行からの融資を受けられない中小零細事業者を主としているのであるから,その顧客において,前に振り出した手形を,短期間のうちに自己の資金繰りで決済することは極めて困 イしかしながら,被告の顧客層は,銀行からの融資を受けられない中小零細事業者を主としているのであるから,その顧客において,前に振り出した手形を,短期間のうちに自己の資金繰りで決済することは極めて困難な状態にあり,その手形の決済資金の調達は事実上被告に頼らざるを得ない場合がほとんどであるといえるのであり,また,事業の継続を望む者にとっては,手形の不渡りは何としてでも避けたい事態であることは当然であるから,被告からの借入金を,その顧客が,従前に振り出した手形の決済資金以外の使途に使うことは事実上想定することが困難であるということができる。 ウさらに,以上に加え,①被告が顧客に対して手形貸付をするに当たっては,各手形貸付ごとに契約書を交わすのではなく,被告が顧客と取引を開始する当初に元本極度額を定めた基本契約である手形取引約定を締結し,これに基づき,その範囲内において反復継続して手形貸付がされていること,②被告は,顧客に対する貸出額が減額することのないようにする目的で,その従業員に対し,顧客が自己の資金繰りで手形を決済してしまわぬように顧客管理するように指導していたこと,③前に振り出した手形の決済日が近づくと,その顧客に対し再度の手形貸付の案内文書が送付され,これに基づき,前に振り出された手形の決済日に新たな手形貸付がされ前の手形が決済されるという形式で被告の顧客との取引が連綿として繰り返されていたこと,④被告担当者が原告に本件取引約定の締結を勧誘するに当たって,貸付金の弁済期が来ても,被告に対して利息分のみを支払えば,借入金を継続して長期的に運用できるとの説明をしていたことなどの事実を併せ考慮すると,被告による手形貸付は,その基本契約である手形取引約定を締結した当初から,各手形貸付がそれぞれ別個に完結するものではなく,前に振り出された手 用できるとの説明をしていたことなどの事実を併せ考慮すると,被告による手形貸付は,その基本契約である手形取引約定を締結した当初から,各手形貸付がそれぞれ別個に完結するものではなく,前に振り出された手形の決済のために新たな手形貸付がなされるということが反復継続されることが予定され,また,それが当然の前提となっていたものとみることができる。 エまた,基本契約である手形貸付約定を締結する際には,元本極度額が定められ,被告は,より高額な利息の支払をすることに耐え得る資金力を有する顧客に対しては,キャンペーンなどと称して元本極度額の範囲内で総貸出額を上げるための手形貸付を積極的に行い,貸付額を増額していったというのであるから,被告と顧客との手形貸付取引は,その取引開始の当初から,取引過程の中で,元本極度額という一定の貸出枠の範囲内で被告の顧客に対する総貸出額を変動(多くは増加)させることが予定されていたものということができる。 オなお,上記のような各手形貸付とその手形決済が繰り返されるということは,顧客にとっては,被告に対する貸出総額は維持されたまま,次々と発生する天引き分名目の利息等の支払又は利息手形の支払を絶え間なく続けていることと変わりはなく,被告にとっては,貸付金の返済を受けるよりもこのような利息等を徴収することにより多大な利益があるというべきである。 カ以上のような被告による手形貸付取引の実情にかんがみるならば,被告による各手形貸付は,形式的には,各個別の貸付であるといい得るとしても,実質的には,前に振り出された手形の満期日に新たな手形貸付がされた場合には,借り換えにより返済期が延長されたものであり,前に振り出された手形の満期日と連続性がなく新たな手形貸付がされた場合には,基本契約である手形取引約定により設定された一定の取引枠である された場合には,借り換えにより返済期が延長されたものであり,前に振り出された手形の満期日と連続性がなく新たな手形貸付がされた場合には,基本契約である手形取引約定により設定された一定の取引枠である元本極度額の範囲内で借り増しがあったということができるのであって,いずれにせよその取引枠内で継続される一連の取引であるということができる。 (3) 利息制限法は,経済的弱者の地位にある債務者の保護を主たる目的とするものである(最高裁判所昭和39年11月18日大法廷判決民集18巻9号1868頁)ところ,その趣旨にかんがみると,同法2条は,金銭を目的とする消費貸借契約において,借主に利息制限法所定の制限利息を超える利息等の支払があった場合には,これによる経済的利益を貸主に帰属させるのではなく,残元本に充当して残債務を直ちに減少させ,これによりその後に発生する利息等の額を減少させ,もって,貸主と借主の実質的な公平を図るという趣旨を含むというべきである(東京高等裁判所平成13年(ネ)第2908号同年12月11日判決〔甲53〕参照)。 そして,同条の趣旨に照らすと,原告が被告からの手形貸付に関し支払った金員が過払いになった場合には,その過払金は,その発生時点で存在する他の債務等に順次充当されたものと解するのが相当である。被告は,被告の原告に対する各手形貸付における,原告の被告に対する過払金については,各手形貸付ごとに発生した過払金が累積した合計額が残存しているものと考えるべきであり,原告の被告に対する残債務額は,この過払金の累積合計額と未決済の貸付金及びこれに対する既発生利息とを相殺して求めるべきである旨主張するが,そのような主張は,経済的弱者の地位にある債務者の保護を図り,また貸主と借主の実質的な公平を図るという利息制限法の趣旨に反するものであって,採 る既発生利息とを相殺して求めるべきである旨主張するが,そのような主張は,経済的弱者の地位にある債務者の保護を図り,また貸主と借主の実質的な公平を図るという利息制限法の趣旨に反するものであって,採用することはできない。 以上の理に従い,原告の被告に対する利息制限法所定の制限利息を超える利息等の過払金を法定充当の方法により,かつ,順次過払金を別口の債務に充当する方法で充当計算すると,別紙原告計算表1のとおり,原告の被告に対する残債務の額は,平成12年2月1日の時点で,41万8921円となる。 ところで,被告は,利息制限法に基づく利息計算をする場合には,手形の額面金額を元本として計算すべきであり,原告が交付を受けた金額を元本として計算すべきではない旨主張するが,本件では,原告のした弁済経過にかんがみると,上記の弁済充当の方法による限り,いずれの計算によっても結果的には残元利金の額は同一になるので,便宜,原告が交付を受けた金額を元本として利息計算をすることとする。 (4) なお,原告は,平成12年3月3日,千葉地方法務局船橋支局に,被告を被供託者として,被告の原告に対する手形貸付に基づく債務の返済に充てるため,19万1167円を供託しているが,この供託は,その当時の残元金である41万8921円及びこれに対する平成12年2月2日から同年3月3日までの利息金の合計額に満たない一部供託であるから,債務の本旨に従った履行とはいえず,無効であるといわざるを得ない。 また,本件の被告の原告に対する各手形貸付は,前記のとおり,元本極度額という一定の取引枠内で継続される一連の取引ということができるところ,取引開始当初から最後になされた手形貸付までの間,被告の原告に対する総貸出額は常に100万円以上であったのであるから,制限利息の計算利率は,一律,利息制限 続される一連の取引ということができるところ,取引開始当初から最後になされた手形貸付までの間,被告の原告に対する総貸出額は常に100万円以上であったのであるから,制限利息の計算利率は,一律,利息制限法1条1項所定の年1割5分と解すべきであり,原告の被告に対する残債務41万8921円には,平成12年2月2日から支払済みに至るまでこの年1割5分の割合による利息金が発生している。 3 よって,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第1部裁判長裁判官小林正裁判官瀬木比呂志裁判官深野英一別紙(省略)
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