平成23(ワ)19435等 特許権侵害行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年2月28日 東京地方裁判所
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判決文本文55,437 文字)

平成25年2月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第19435号,同第19436号各特許権侵害行為差止等請求事件口頭弁論の終結の日平成24年10月18日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり主文原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求1(1) 主位的請求ア被告日新製薬は,別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤を,被告高田製薬は,同目録記載5ないし8の各製剤を,被告富士フイルムファーマは,同目録記載9ないし12の各製剤を,被告サンドは,同目録記載13及び14の各製剤を,被告第一三共エスファは,同目録記載15ないし18の各製剤を,被告テバ製薬は,同目録記載19ないし22の各製剤を,被告日医工は,同目録記載23ないし26の各製剤を,被告辰巳化学は,同目録記載27ないし30の各製剤を,被告小林化工は,同目録記載31ないし34の各製剤を,被告持田製薬は,同目録記載35及び36の各製剤を,それぞれ製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 イ被告日新製薬は,別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤について,被告高田製薬は,同目録記載5ないし8の各製剤について,被告富士フイルムファーマは,同目録記載9ないし12の各製剤について,被告サンドは,同目録記載13及び14の各製剤について,被告第一三共エスファは,同目録記載15ないし18の各製剤について,被告テバ製薬は,同目録記載 19ないし22の各製剤について,被告日医工は,同目録記載23ないし26の各製剤について,被告辰巳化学は,同目録記載27ないし30の各製剤について,被告小林化工は,同目録記載31ないし34の各製剤について,被告持田製薬は,同目録記載35及び36の各製 載23ないし26の各製剤について,被告辰巳化学は,同目録記載27ないし30の各製剤について,被告小林化工は,同目録記載31ないし34の各製剤について,被告持田製薬は,同目録記載35及び36の各製剤について,それぞれ健康保険法に基づく薬価基準収載品目削除願の提出をせよ。 ウ被告日新製薬は,別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤を,被告高田製薬は,同目録記載5ないし8の各製剤を,被告富士フイルムファーマは,同目録記載9ないし12の各製剤を,被告サンドは,同目録記載13及び14の各製剤を,被告第一三共エスファは,同目録記載15ないし18の各製剤を,被告テバ製薬は,同目録記載19ないし22の各製剤を,被告日医工は,同目録記載23ないし26の各製剤を,被告辰巳化学は,同目録記載27ないし30の各製剤を,被告小林化工は,同目録記載31ないし34の各製剤を,被告持田製薬は,同目録記載35及び36の各製剤を,それぞれ廃棄せよ。 (2) 予備的請求ア被告日新製薬は,別紙医薬品目録記載1,2又は3の医薬品と組み合わせて糖尿病の予防・治療用医薬として使用される別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤を,被告高田製薬は,上記と同様に使用される同目録記載5ないし8の各製剤を,被告富士フイルムファーマは,上記と同様に使用される同目録記載9ないし12の各製剤を,被告サンドは,上記と同様に使用される同目録記載13及び14の各製剤を,被告第一三共エスファは,上記と同様に使用される同目録記載15ないし18の各製剤を,被告テバ製薬は,上記と同様に使用される同目録記載19ないし22の各製剤を,被告日医工は,上記と同様に使用される同目録記載23ないし26の各製剤を,被告辰巳化学は,上記と同様に使用される同目録記載27ないし30の各製剤を,被告小林化工は,上記と同様に使用 22の各製剤を,被告日医工は,上記と同様に使用される同目録記載23ないし26の各製剤を,被告辰巳化学は,上記と同様に使用される同目録記載27ないし30の各製剤を,被告小林化工は,上記と同様に使用される同目録記載31 ないし34の各製剤を,被告持田製薬は,上記と同様に使用される同目録記載35及び36の各製剤を,それぞれ自己又は第三者のために製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 イ被告日新製薬は,別紙医薬品目録記載1,2又は3の医薬品と組み合わせて糖尿病の予防・治療用医薬として使用される別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤を,被告高田製薬は,上記と同様に使用される同目録記載5ないし8の各製剤を,被告富士フイルムファーマは,上記と同様に使用される同目録記載9ないし12の各製剤を,被告サンドは,上記と同様に使用される同目録記載13及び14の各製剤を,被告第一三共エスファは,上記と同様に使用される同目録記載15ないし18の各製剤を,被告テバ製薬は,上記と同様に使用される同目録記載19ないし22の各製剤を,被告日医工は,上記と同様に使用される同目録記載23ないし26の各製剤を,被告辰巳化学は,上記と同様に使用される同目録記載27ないし30の各製剤を,被告小林化工は,上記と同様に使用される同目録記載31ないし34の各製剤を,被告持田製薬は,上記と同様に使用される同目録記載35及び36の各製剤を,それぞれ廃棄せよ。 ウ被告日新製薬は,別紙医薬品目録記載1,2又は3の医薬品と組み合わせて糖尿病の予防・治療用医薬として使用するとの効能効果を備えた別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤を,被告高田製薬は,上記効能効果を備えた同目録記載5ないし8の各製剤を,被告富士フイルムファーマは,上記効能効果を備えた同目録記載9ないし12の各製剤を を備えた別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤を,被告高田製薬は,上記効能効果を備えた同目録記載5ないし8の各製剤を,被告富士フイルムファーマは,上記効能効果を備えた同目録記載9ないし12の各製剤を,被告サンドは,上記効能効果を備えた同目録記載13及び14の各製剤を,被告第一三共エスファは,上記効能効果を備えた同目録記載15ないし18の各製剤を,被告テバ製薬は,上記効能効果を備えた同目録記載19ないし22の各製剤を,被告日医工は,上記効能効果を備えた同目録記載23ないし26の各製剤を,被告辰巳化学は,上記効能効果を備えた同目録記載27ないし 30の各製剤を,被告小林化工は,上記効能効果を備えた同目録記載31ないし34の各製剤を,被告持田製薬は,上記効能効果を備えた同目録記載35及び36の各製剤を,それぞれ自己又は第三者のために製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 エ被告日新製薬は,別紙医薬品目録記載1,2又は3の医薬品と組み合わせて糖尿病の予防・治療用医薬として使用するとの効能効果を備えた別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤を,被告高田製薬は,上記効能効果を備えた同目録記載5ないし8の各製剤を,被告富士フイルムファーマは,上記効能効果を備えた同目録記載9ないし12の各製剤を,被告サンドは,上記効能効果を備えた同目録記載13及び14の各製剤を,被告第一三共エスファは,上記効能効果を備えた同目録記載15ないし18の各製剤を,被告テバ製薬は,上記効能効果を備えた同目録記載19ないし22の各製剤を,被告日医工は,上記効能効果を備えた同目録記載23ないし26の各製剤を,被告辰巳化学は,上記効能効果を備えた同目録記載27ないし30の各製剤を,被告小林化工は,上記効能効果を備えた同目録記載31ないし34の各製剤を,被告持田製薬は 同目録記載23ないし26の各製剤を,被告辰巳化学は,上記効能効果を備えた同目録記載27ないし30の各製剤を,被告小林化工は,上記効能効果を備えた同目録記載31ないし34の各製剤を,被告持田製薬は,上記効能効果を備えた同目録記載35及び36の各製剤を,それぞれ廃棄せよ。 オ被告日新製薬は,別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告高田製薬は,同目録記載5ないし8の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告富士フイルムファーマは,同目録記載9ないし12の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告サンドは,同目録記載13及び14の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告第一三共エスファは,同目録記載15ないし18の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告テバ製薬は,同目録記載19ないし22の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告日医工は,同目録記載23ないし26の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告辰巳化学は,同目録 記載27ないし30の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告小林化工は,同目録記載31ないし34の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,被告持田製薬は,同目録記載35及び36の各製剤の添付文書,包装その他の媒体に,それぞれ別紙医薬品目録記載1,2又は3の医薬品と組み合わせて糖尿病の予防・治療用医薬として使用するとの効能効果の記載をしてはならない。 カ被告日新製薬は,別紙医薬品目録記載1,2又は3の医薬品と組み合わせて糖尿病の予防・治療用医薬として使用するとの効能効果の記載をした別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告高田製薬は,上記効能効果の記載をした同目録記載5ないし8の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告富士フイルムファーマは た別紙製剤目録記載1ないし4の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告高田製薬は,上記効能効果の記載をした同目録記載5ないし8の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告富士フイルムファーマは,上記効能効果の記載をした同目録記載9ないし12の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告サンドは,上記効能効果の記載をした同目録記載13及び14の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告第一三共エスファは,上記効能効果の記載をした同目録記載15ないし18の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告テバ製薬は,上記効能効果の記載をした同目録記載19ないし22の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告日医工は,上記効能効果の記載をした同目録記載23ないし26の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告辰巳化学は,上記効能効果の記載をした同目録記載27ないし30の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告小林化工は,上記効能効果の記載をした同目録記載31ないし34の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,被告持田製薬は,上記効能効果の記載をした同目録記載35及び36の各製剤の添付文書,包装その他の媒体を,それぞれ廃棄せよ。 2 被告らは,各自1500万円並びにうち500万円に対する訴状送達の日の翌日から,うち1000万円に対する平成24年6月20日付「訴えの追加的 変更申立書」送達の日の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,糖尿病又は糖尿病性合併症の予防・治療用医薬に関する特許権を有する原告が,被告らがピオグリタゾン製剤を製造,販売する行為が原告の特許権を侵害するか,又はこれを侵害するものとみなされると主張して,被告らに対し,(1) 主位的に,それぞれのピオグリタゾン製剤の製造,販売 が,被告らがピオグリタゾン製剤を製造,販売する行為が原告の特許権を侵害するか,又はこれを侵害するものとみなされると主張して,被告らに対し,(1) 主位的に,それぞれのピオグリタゾン製剤の製造,販売及び販売の申出の差止めと廃棄を,予備的に,別紙医薬品目録記載1,2又は3の医薬品と組み合わせて糖尿病の予防・治療用医薬として使用されるそれぞれのピオグリタゾンの製造,販売及び販売の申出の差止めと廃棄,上記糖尿病の予防・治療用医薬として使用するとの効能効果を備えたそれぞれのピオグリタゾンの製造,販売及び販売の申出の差止めと廃棄並びに添付文書等への上記効能効果の記載の差止めと廃棄を求めるとともに,(2) 民法709条に基づく損害賠償金として,それぞれ1500万円及びうち500万円に対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日から,うち1000万円に対する不法行為の後である平成24年6月20日付「訴えの追加的変更申立書」送達の日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。)(1) 本件特許権原告は,次の各特許(以下「本件第1特許」,「本件第2特許」といい,併せて「本件各特許」という。)に係る特許権(以下「本件第1特許権」,「本件第2特許権」といい,併せて「本件各特許権」という。)を有している。 ア本件第1特許権 特許番号第3148973号発明の名称医薬出願日平成8年6月18日国内優先権主張日平成7年6月20日登録日平成13年1月19日イ本件第2特許権特許番号 出願日平成8年6月18日国内優先権主張日平成7年6月20日登録日平成13年1月19日イ本件第2特許権特許番号第3973280号発明の名称医薬出願日平成9年12月26日原出願日平成8年6月18日国内優先権主張日平成7年6月20日登録日平成19年6月22日(2) 本件各発明ア本件第1特許の願書に添付した明細書(以下「本件第1明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び5の記載は,次のとおりである(この記載は,平成22年7月27日付けの訂正請求による訂正後のものである。以下,この請求項1に係る発明を「本件第1発明1」と,この請求項5に係る発明を「本件第1発明2」といい,併せて「本件第1発明」という。)。 「【請求項1】(1)ピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と,(2)アカルボース,ボグリボースおよびミグリトールから選ばれるα-グルコシダーゼ阻害剤とを組み合わせてなる糖尿病または糖尿病性合併症の予防・治療用医薬。」「【請求項5】α-グルコシダーゼ阻害剤がボグリボースである請求項1記載の医薬。」イ本件第2特許の願書に添付した明細書(以下「本件第2明細書」とい う。)の特許請求の範囲の請求項1ないし3及び7の記載は,次のとおりである(この記載は,平成22年7月27日付けの訂正請求による訂正後のものである。以下,この請求項1に係る発明を「本件第2発明1」,この請求項2に係る発明を「本件第2発明2」,この請求項3に係る発明を「本件第2発明3」,この請求項7に係る発明を「本件第2発明4」とい のである。以下,この請求項1に係る発明を「本件第2発明1」,この請求項2に係る発明を「本件第2発明2」,この請求項3に係る発明を「本件第2発明3」,この請求項7に係る発明を「本件第2発明4」といい,併せて「本件第2発明」という。)。 「【請求項1】ピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と,ビグアナイド剤とを組み合わせてなる,糖尿病または糖尿病性合併症の予防・治療用医薬。」「【請求項2】ビグアナイド剤がフェンホルミン,メトホルミンまたはブホルミンである請求項1記載の医薬。」「【請求項3】ビグアナイド剤がメトホルミンである請求項1記載の医薬。」「【請求項7】0.05~5mg/kg体重の用量のピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と,グリメピリドとを組み合わせてなる,糖尿病または糖尿病性合併症の予防・治療用医薬。」(3) 被告らは,いずれもピオグリタゾン塩酸塩錠又はピオグリタゾン塩酸塩口腔内崩壊錠である別紙製剤目録記載の各ピオグリタゾン錠(以下「被告ら各製剤」という。)につき,それぞれ薬事法に基づく製造販売承認を受けて,これらの製造販売を開始した。また,被告ら各製剤については健康保険法に基づく薬価基準への収載が行われた。 被告ら各製剤の添付文書には,次の記載がある。(甲9,10,12ないし20)「【効能・効果】2型糖尿病ただし,下記のいずれかの治療で十分な効果が得られずインスリン抵抗性 が推定される場合に限る。 1.①食事療法,運動療法のみ②食事療法,運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用③食事療法,運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用④食事療法,運動療法に加えてビグアナイド系薬 ②食事療法,運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用③食事療法,運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用④食事療法,運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用2.食事療法,運動療法に加えてインスリン製剤を使用【用法・用量】1.食事療法,運動療法のみの場合及び食事療法,運動療法に加えてスルホニルウレア剤又はα-グルコシダーゼ阻害剤若しくはビグアナイド系薬剤を使用する場合通常,成人にはピオグリタゾンとして15~30mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお,性別,年齢,症状により適宜増減するが,45mgを上限とする。 2.食事療法,運動療法に加えてインスリン製剤を使用する場合通常,成人にはピオグリタゾンとして15mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお,性別,年齢,症状により適宜増減するが,30mgを上限とする。」(4) 被告ら各製剤は,本件第1発明及び本件第2発明(以下,併せて「本件各発明」という。)の「ピオグリタゾンの薬理学的に許容しうる塩」に該当する。 2 争点(1) 被告らが被告ら各製剤を製造販売等することが本件各特許権を侵害するか否か(争点1)ア被告らが医療関係者や患者の行為を利用,支配して本件各発明を実施しているといえるか否か(争点1-1)イ被告らが医療関係者を教唆して本件各発明を実施しているといえるか否 か(争点1-2)(2) 被告らが被告ら各製剤を製造販売等することが特許法101条2号に掲げる行為に該当するか否か(争点2)ア被告ら各製剤が「その物の生産に用いる物」に当たるか否か(争点2-1)イ被告ら各製剤が「日本国内において広く一般に流通して が特許法101条2号に掲げる行為に該当するか否か(争点2)ア被告ら各製剤が「その物の生産に用いる物」に当たるか否か(争点2-1)イ被告ら各製剤が「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たるか否か(争点2-2)ウ被告ら各製剤が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるか否か(争点2-3)エ被告らが「その発明が特許発明であること及びその物の発明の実施に用いられることを知りながら」被告ら各製剤の生産等をしていたか否か(争点2-4)(3) 本件各特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか否か(争点3)ア本件各発明が「産業上利用することができる発明」に該当しないか否か(争点3-1)イ本件各発明が新規性を有しないか否か(争点3-2)(ア) 本件各発明が別紙引用例目録記載1の刊行物(以下「引用例1」という。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)と同一であるか否か(争点3-2-1)(イ) 本件各発明が同目録記載2の刊行物(以下「引用例2」という。)に記載された発明(以下「引用発明2」という。)と同一であるか否か(争点3-2-2)(ウ) 本件第1発明及び本件第2発明4が同目録記載3の刊行物(以下「引用例3」という。)に記載された発明(以下「引用発明3」という。)と同一であるか否か(争点3-2-3) (エ) 本件第2発明1ないし3が同目録記載4の刊行物(以下「引用例4」という。)に記載された発明(以下「引用発明4」という。)と同一であるか否か(争点3-2-4)(オ) 本件第2発明4が同目録記載5の刊行物(以下「引用例5」という。)に記載された発明(以下「引用発明5」という。)と同一であるか否か(争点3-2-5)ウ るか否か(争点3-2-4)(オ) 本件第2発明4が同目録記載5の刊行物(以下「引用例5」という。)に記載された発明(以下「引用発明5」という。)と同一であるか否か(争点3-2-5)ウ本件各発明が進歩性を有しないか否か(争点3-3)(ア) 本件各発明は引用発明1,2又は3に基づき当業者が容易に発明することができたか否か(争点3-3-1)(イ) 本件第2発明1ないし3は引用発明4,5又は同目録記載6の刊行物(以下「引用例6」という。)に記載された発明(以下「引用発明6」という。)に基づき当業者が容易に発明することができたか否か(争点3-3-2)(ウ) 本件第2発明4は引用発明4,5又は同目録記載7の刊行物(以下「引用例7」という。)に記載された発明(以下「引用発明7」という。)に基づき当業者が容易に発明することができたか否か(争点3-3-3)エ本件各発明において,明確性要件,実施可能要件又はサポート要件を充足しないか否か(争点3-4)オ本件各特許につき補正要件を充足しないか否か(争点3-5)(4) 原告が差止めを請求することができるか否か(争点4)(5) 原告が薬価基準収載品目削除願の提出を請求することができるか否か(争点5)(6) 原告が廃棄を請求することができるか否か(争点6)(7) 原告の損害額(争点7) 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(被告らが被告ら各製剤を製造販売等することが本件各特許権を侵害するか否か)ア争点1-1(被告らが医療関係者や患者の行為を利用,支配して本件各発明を実施しているといえるか否か)について(原告)医療現場においては,ピオグリタゾン製剤とα-グルコシダーゼ阻害剤,ビグアナイド剤又はスルフォニル尿 為を利用,支配して本件各発明を実施しているといえるか否か)について(原告)医療現場においては,ピオグリタゾン製剤とα-グルコシダーゼ阻害剤,ビグアナイド剤又はスルフォニル尿素剤(以下「SU剤」という。これら3種を併せて「本件各併用薬」という。)の併用治療を必要とする極めて多数の患者が存在するところ,被告らが被告ら各製剤を医療機関及び保険薬局に対して販売した場合,医師は,2型糖尿病患者の症状等を勘案し,① ピオグリタゾンとα-グルコシダーゼ阻害剤との併用投与,② ピオグリタゾンとSU剤(グリメピリド)との併用投与,又は③ ピオグリタゾンとビグアナイド剤との併用投与の必要があると判断したときは,患者に対して当該処方せんを交付しなければならないが(医師法22条柱書),医師が上記各併用を実施する方針を決定し,当該併用の実施に係る処方せんを作成,発行して,患者に対して当該併用に係る服薬の指導をした後は,これに基づいて薬剤師が患者に対してピオグリタゾンと本件各併用薬とを用意して併せまとめて交付し,これにより,患者はピオグリタゾンと本件各併用薬とを服用するという因果の流れをたどることになる。このように,医療現場においては,ピオグリタゾンと本件各併用薬との併用投与による治療が必要な症状を有する患者が多数存在する限り,医師,薬剤師,患者の自由意思によらず,当然に本件各発明の実施行為が招来される。そして,被告らは,被告ら各製剤が原告の製造販売するピオグリタゾン製剤「アクトス」と同様の実態で使用されることを十分に認識し,そのような実態を利用することで利益を得ている。 被告らは,医療現場の実態に加え,ピオグリタゾンと本件各併用薬との 併用投与による治療を必要とする患者の症状等の制約に起因して,自由意思によらずに本 利用することで利益を得ている。 被告らは,医療現場の実態に加え,ピオグリタゾンと本件各併用薬との 併用投与による治療を必要とする患者の症状等の制約に起因して,自由意思によらずに本件各発明を実施する医師,薬剤師,患者の行為を道具として利用し,これを支配することによって,本件各発明の実施を招来せしめているから,被告らは,被告ら各製剤を製造販売することにより,他者(医師,薬剤師,患者)をして,本件各発明を実施していると規範的に評価することができる。 (被告ら)ピオグリタゾンと他の経口糖尿病薬を準備して,それらを併せまとめる行為は,そもそも,本件各発明の実施行為(生産等)に当たらない。 医療現場において,医師は,患者を診断し,個々に相違する患者の年齢,性別,体格,体質,病歴等に応じ,自らの裁量に基づいて最良と判断する治療方針に基づいて処方薬剤等を決定するのであり,この極めて高度で専門的な判断について,製薬会社が医師を道具として利用,支配しているということはあり得ない。また,薬剤師,患者の行為は,医師の処方に基づくものであって,医師が道具として認められないときに,薬剤師や患者を道具として観念する余地はない。しかも,ピオグリタゾン単剤の処方や本件各発明と関係のない併用処方が多様な組合せで数多くされているのであって,常に本件各発明の実施行為が招来されるということもない。 イ争点1-2(被告らが医療関係者を教唆して本件各発明を実施しているといえるか否か)について(原告)被告らは,ピオグリタゾンと本件各併用薬とが数多く併用されている実態を認識した上で,被告ら各製剤のみならず本件各併用薬をもそれぞれ医療機関や保険薬局に継続的かつ大量に供給し,また,被告ら各製剤の添付文書その他の情報提供文書に 件各併用薬とが数多く併用されている実態を認識した上で,被告ら各製剤のみならず本件各併用薬をもそれぞれ医療機関や保険薬局に継続的かつ大量に供給し,また,被告ら各製剤の添付文書その他の情報提供文書において,本件各発明に係る効能,効果を明記し,【用法・用量】欄に併用時の具体的用量を明記することによって,医 師に対して本件各発明に係る処方が可能であることを積極的に情報提供している。さらに,被告らは,医療関係者に対して被告ら各製剤と自身が販売する本件各併用薬を併せて購入し,これらを組み合わせて併用投与を行うよう積極的に推奨している。 このように,被告らは,医療関係者に対し,① 被告ら各製剤と被告らが製造する本件各併用薬を購入すること,② 被告ら各製剤と被告らが製造する本件各併用薬の併用投与が可能であること,③ 併用する際には,被告ら各製剤と被告らが製造する本件各併用薬の併用が望ましいと考えていることについて,それぞれ積極的に情報提供し,働きかけているのであり,このような併用投与の教唆行為は,それ自体として本件各特許権の直接侵害を構成する。 (被告ら)そもそも,積極的に教唆行為を行った場合に,これが特許権の侵害行為を構成することの法的根拠はない。 また,被告らが被告ら各製剤を販売するに当たり,本件各併用薬との併用使用を薦めたり促したりする事実はないし,被告ら各製剤の添付文書の記載も,あくまでピオグリタゾンが有する効能,効果等についての客観的な情報や使用についての注意事項を述べたものであって,本件各併用薬との2剤併用の形で使用することを推奨,助長するものではなく,被告ら各製剤を単剤で使用するか,併用するかは,個々の患者を前にして,医師がその裁量によって判断をするもので,当該医師の高度な裁量判断が添 の2剤併用の形で使用することを推奨,助長するものではなく,被告ら各製剤を単剤で使用するか,併用するかは,個々の患者を前にして,医師がその裁量によって判断をするもので,当該医師の高度な裁量判断が添付文書の記載内容によって左右されるものではない。 (2) 争点2(被告らが被告ら各製剤を製造販売等することが特許法101条2号に掲げる行為に該当するか否か)ア争点2-1(被告ら各製剤が「その物の生産に用いる物」に当たるか否か)について (原告)(ア) 「その物」の意義と該当性について特許発明に係る「物」及び特許発明と対比されるべき対象は,いずれも特許製品(直接侵害品)に具現化された技術的思想としての「物」であり,有形物それ自体ではない。 これを本件各発明のような組合せ医薬発明についてみれば,特許請求の範囲及び明細書によって特段の限定がされていない限り,本件各発明の技術的思想は,有形物それ自体の存在形態に左右されるものではなく,物理的に別々の製剤形態をとっていたとしても,同一対象に投与する目的で併せまとめられたり,各製剤の組合せによって患者の体内において所定の薬効が実現されたりして技術的思想が具現化されたものとして把握できるのであれば,そのような組合せ態様は,当該技術的思想を具現化した特許発明に係る「物」及び特許発明と対比されるべき対象に該当する。 本件各発明は,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを「組み合わせてなる」医薬として規定されているが,本件各発明に係る特許請求の範囲の「組み合わせてなる」とは,文字どおり,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを組み合わせて一つのまとまりのある医薬が作出される状態を意味するのであって,その文言形式上,組合せ態様を具体的に限定していないし,配合剤やキット製品であることを り,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを組み合わせて一つのまとまりのある医薬が作出される状態を意味するのであって,その文言形式上,組合せ態様を具体的に限定していないし,配合剤やキット製品であることを要求するものでもない。 また,本件第1明細書及び本件第2明細書(以下,併せて「本件各明細書」という。)の発明の詳細な説明に,「有効成分を別々に製剤化した場合,別々に製剤化したものを使用時に希釈剤などを用いて混合して投与することができるが,別々に製剤化したものを,別々に,同時に,または時間差をおいて同一対象に投与してもよい。」(【0035】)と記載されていることからすれば,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを 組み合わせる態様としては,① ピオグリタゾン(有効成分)と本件各併用薬に係る他の有効成分とを医薬組成物とする態様(医薬組成物類型)のみならず,② 別々に製剤化したピオグリタゾン製剤と本件各併用薬製剤とを使用時に希釈剤などを用いて混合する態様(混合類型)や③ 別々に製剤化したピオグリタゾン製剤と本件各併用薬製剤とを別々にしたままで同一対象に投与するために単に併せまとめる態様(併せとりまとめ類型)が含まれる。 そして,各製剤の組合せによって患者の体内において所定の薬効を実現する医薬であれば,技術的思想が具現化したものとして把握することができるのであって,そのような組合せ態様も,技術的思想を具現化した特許発明に係る「物」及び特許発明と対比されるべき対象に該当する。 (イ) 「生産」の意義と該当性についてa 特許製品の「生産」とは,一般的に,特許発明の実施物を作出することを意味し,実施物を作り出したか否かについては,当該物に当該発明の技術的思想が具現化し,当該発明の作用効果を奏し得る状況に達しているか否かを本来的な基準として 般的に,特許発明の実施物を作出することを意味し,実施物を作り出したか否かについては,当該物に当該発明の技術的思想が具現化し,当該発明の作用効果を奏し得る状況に達しているか否かを本来的な基準として判断すべきであって,特許製品が物理的一体性をもって作出されている場合に限定する必要はない。 本件各発明は,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを組み合わせることによって,「糖尿病時の高血糖に対して優れた低下作用を発揮」(本件各明細書の発明の詳細な説明の【0045】)するという効果を実現するものであるから,ピオグリタゾンと本件各併用薬とが体内でそれぞれ薬効を発揮する結果,血糖値の低下作用という本件各発明の効果が実現することをもって,「生産」と捉えることができる。端的にいえば,薬効が発揮されて発明の効果が実現されていれば,「生産」がされたといえる。すなわち,前記(ア)記載のいかなる態様によってであれ,ピオグリタゾンと本件各併用薬とが組み合わせられさえ すれば,本件各発明の技術的範囲に属する医薬が「生産」されたということができる。 b 医師は,2型糖尿病患者を診察し,その治療のためにピオグリタゾンと本件各併用薬との併用投与の必要があると判断したときは,当該併用の実施に係る処方せんを作成,発行して,当該患者に対して,当該併用に係る指導をする。患者は,医師から処方せんを受領し,薬局でこれを薬剤師に提示し,薬剤師は,患者から提示された処方せんに従い,患者に対して,別々に製剤化されたピオグリタゾンと本件各併用薬とを用意して併せまとめて交付し,薬剤の使用に関する情報提供をする。患者は,このようにして受領したピオグリタゾン及び本件各併用薬を,医師及び薬剤師の指導に従い服用する。 こうした流れにおいては,以下に述べるとおり,薬剤師,患者及び医師のいず する情報提供をする。患者は,このようにして受領したピオグリタゾン及び本件各併用薬を,医師及び薬剤師の指導に従い服用する。 こうした流れにおいては,以下に述べるとおり,薬剤師,患者及び医師のいずれを本件各発明の実施行為者ととらえても,「組み合わせてなる医薬」の「生産」がされているということができる。 (a) 薬剤師による「生産」別々に製剤化したピオグリタゾンと本件各併用薬とを別々の製剤のまま同一対象に投与するために併せまとめる態様(併せとりまとめ類型)が本件各発明の技術的範囲に含まれることは,前記のとおりであり,薬剤師が,同一の患者に交付するために,被告ら各製剤と本件各併用薬の双方を用意し,これらの各薬剤を併せまとめる行為は,薬剤師を実施行為者として,本件各発明の技術的範囲に属する医薬を「生産」するものと解することができる。また,別々に製剤化したピオグリタゾンと本件各併用薬とを同一対象に投与することは,本件各発明の医薬の「使用」に該当するところ,予め「生産」された医薬が投与(使用)されると解することが自然であることからすると,投与(使用)される前提として,本件各発明として の組み合わせてなる医薬が予め「生産」されるということもできる。 (b) 患者による「生産」患者が薬剤師から被告ら各製剤と本件各併用薬を受領し,これらを同時又は異時に経口服用することによって,患者の体内において「組み合わせてなる医薬」が生産され,これにより本件各発明の薬効や治療上の効果(作用効果)が実現される。すなわち,個々の医薬(有効成分)を組み合わせた集合体としての医薬自体は,必ずしも配合剤(医薬組成物)として一体製剤化されていないとしても,個々の医薬(有効成分)を組み合わせて順次所定の投与量,投与間隔にて患者に投与 (有効成分)を組み合わせた集合体としての医薬自体は,必ずしも配合剤(医薬組成物)として一体製剤化されていないとしても,個々の医薬(有効成分)を組み合わせて順次所定の投与量,投与間隔にて患者に投与されることによって,規範的,概念的に特許発明に係る医薬が生み出され,その結果として特許発明が所定する薬効や治療上の効果が実現され,「生産」がされたものと評価することができる。これは,ソフトウェアをパソコンにインストールする行為が特許法101条2号所定の「生産」に該当するのと同様である。 本件において患者がピオグリタゾンと本件各併用薬とを服用し,体内でそれぞれ薬効を発揮する結果,血糖値の降下作用が発生し,本件各発明の効果が実現することをもって,患者を実施行為者として,特許請求の範囲の「組み合わせてなる医薬」が「生産」されたと認められるというべきである。 (c) 医師による「生産」医師が,ひとたび被告ら各製剤と本件各併用薬との併用処方方針を決定して,当該処方にかかる処方せんを作成し,患者に当該併用に係る服薬の指導をすれば,薬剤師は,必然的に,患者に対してピオグリタゾンと本件各併用薬とを併せまとめて交付し,患者は,必然的に,それらを同時又は異時に服用する。 そうすると,医師は,「組み合わせてなる医薬」の生産を物理的 に自ら直接行うわけではないが,規範的に見れば,医師は,薬剤師又は患者による「組み合わせてなる医薬」の「生産」の行為主体であると評価することができる。 (被告ら)(ア) 「その物」の意義について被告らによる被告ら各製剤の製造,販売等について間接侵害が認められるためには,被告ら各製剤を用いて生産される物が,本件各発明の構成要件を充足し,本件各発明の技術的範囲に属する「物」と認められること 被告らによる被告ら各製剤の製造,販売等について間接侵害が認められるためには,被告ら各製剤を用いて生産される物が,本件各発明の構成要件を充足し,本件各発明の技術的範囲に属する「物」と認められることが必要である。そして,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならず(特許法70条1項),特許発明の技術的範囲を定める場合には,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈すべきものとされている(同条2項)。 本件各発明に係る「物」は,いずれも2種の有効成分を「組み合わせてなる」「予防・治療用医薬」という「物」であるから,文理上,社会的に1個の医薬として観念できる有体物ないしは有体物と観念できるものでなければならないし,組合せに用いられる医薬とは別個の医薬と認識することができるものでなければならない。そうすると,両成分が別々に製剤化されたものを,別々のままで同時に又は時間を置いて同一対象に投与する場合には,1個の「医薬」を観念することはできない。 (イ) 「生産」の意義についてa 「生産」とは,その社会通念上の意味に照らし,特許発明の対象たる物を何らかの加工,組立て等の行為により新たに作り出す行為を指し,素材の本来の用途に従って使用するに過ぎない行為は含まれないと解すべきである。 被告ら各製剤は,そのまま譲渡されたり使用(投与)されたりする ことこそあれ,それを素材として新たな物を作り出す行為には用いられないから,被告ら各製剤を譲渡したり使用したりする行為があるとしても,これはあくまでも被告ら各製剤そのものの「譲渡」ないしは「使用」という行為に該当するにすぎず,これを素材とした新たな物の「生産」には該当しない。 たり使用したりする行為があるとしても,これはあくまでも被告ら各製剤そのものの「譲渡」ないしは「使用」という行為に該当するにすぎず,これを素材とした新たな物の「生産」には該当しない。 b 医師は2つの単剤を単剤のまま服用するように患者に処方し,薬剤師は2つの単剤を単剤のまま患者に交付し,患者は2つの単剤を単剤のまま服用するのであり,この一連の行為において新たな医薬品は何も生産されない。医薬品メーカーにおいて既に医薬品として別々に生産されて,別々の販売名を付された2つの単剤を,それぞれ単剤のまま患者が服用するだけの過程である。この一連の過程に,「組み合わせてなる医薬」は存在しないし,「生産」という実施行為もなく,医師の処方に従って薬剤師が交付した2つの単剤を患者が服用するという「方法の使用」だけが認められるのであって,併用療法は,「物の発明」に該当せず,本件各発明の技術的範囲に含まれない。 (a) 薬剤師が,処方せんに従い患者のために調剤する過程で複数の薬剤を取り揃えて寄せ集めるなど,複数の薬剤を「併せまとめる行為」は,「生産」の通常の意味からしても,独立して一体的・商業的に譲渡の対象となるような新たな「物」を作り出す行為ともいえないことからしても,社会通念上,「生産」に該当しない。 (b) 患者の服用行為は,特許法の定める「使用」行為以外の何物でもなく,「生産」行為ではあり得ないし,患者の体内においては,いかなる医薬も「組み合わされて」いないし,組み合わされた状態に「なる」こともない。 (c) 医師等が複数の医薬を併用投与することは投薬行為であり,医師等の処方により複数の医薬が併せまとめられた状態は,投薬行為 の結果そのものであって,この段階ではいまだ医師等の投薬行為の結果そのものと明確に区別し得る対象物の ることは投薬行為であり,医師等の処方により複数の医薬が併せまとめられた状態は,投薬行為 の結果そのものであって,この段階ではいまだ医師等の投薬行為の結果そのものと明確に区別し得る対象物の存在を観念することができず,本件各発明に係る「医薬」が「生産」されたと評価することはできない。 イ争点2-2(被告ら各製剤が「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たるか否か)について(被告ら)「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,汎用の部品や材料が,特許発明の侵害する製品の製造に用いられたとしても,間接侵害とならないように設けられた規定であるから,これに該当するのは,特注品ではなく,他の用途にも用いることができ,市場において一般に入手可能な状態にある規格品,普及品を指すと解すべきである。 被告ら各製剤は,ピオグリタゾン塩酸塩錠若しくはピオグリタゾン塩酸塩口腔内崩壊錠であるが,これらは日本薬局方で明確に規格が規定されているから,明らかに規格品に該当する。また,ピオグリタゾン製剤は,本件各併用薬と併用されるものではあるが,他方で,単剤としても多く使用され,本件各併用薬以外の糖尿病予防・治療薬との併用に用いることも可能であって,そうした処方が実に7割を占め,多様なバリエーションで使用可能な汎用性を有している。そして,被告ら各製剤は,医師が処方せんを作成すれば,一般に入手することが可能である。 したがって,被告ら各製剤は,特注品ではなく,他の用途にも用いることができ,市場において一般に入手可能な状態にある規格品,普及品であるから,「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たる。 (原告)「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,典型的には,ねじ,釘,電球,ト 態にある規格品,普及品であるから,「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たる。 (原告)「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,典型的には,ねじ,釘,電球,トランジスター等のような,日本国内において広く普及 している一般的な製品,すなわち,特注品ではなく,他の用途にも用いることができ,市場において一般に入手可能な状態にある規格品,普及品を意味するが,その趣旨は,規格品,普及品のようなものについてまで広く間接侵害の成立を認めることになれば,市場において一般に入手可能な製品を業として製造販売している者にとって,いつ何時特許権侵害を主張されるか予想できず,取引の安定性を害することになるから,これらを対象外としたものであると解される。 ピオグリタゾンは,2型糖尿病患者が医療機関を受診した結果,医師が,インスリン抵抗性改善の治療効果を得る必要があると判断した患者に限り作成する処方せんに基づいて,初めて入手可能となる処方せん医薬品であるから,市場において一般に入手可能な状態にある規格品,普及品であるということはできないし,その用途も,2型糖尿病の予防・治療の用途しかなく,単剤使用やインスリン製剤との併用を除けば,本件各併用薬との組み合わせてなる医薬としての用途しかないから,およそ汎用品ということもできない。 したがって,ピオグリタゾンが「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たるとはいえない。 ウ争点2-3(被告ら各製剤が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるか否か)について(原告)(ア) 本件各発明が解決しようとする課題は,糖尿病予防・治療薬において,個々の単剤を投与する場合に比して,より優れた薬効を備えるとともに,可及的に副作用を低減させた て(原告)(ア) 本件各発明が解決しようとする課題は,糖尿病予防・治療薬において,個々の単剤を投与する場合に比して,より優れた薬効を備えるとともに,可及的に副作用を低減させた組合せ医薬を開発することにあるところ,ピオグリタゾンは,これを用いることにより,初めて本件各発明が上記課題を解決することができる重要な成分であり,これがなければ,本件各併用薬との組合せという従来技術には見られない特徴的技術手段 をもたらすことはできず,これを他の有効成分に置き換えることもできないから,当該手段を特徴付ける特有の成分(組み合わせてなる医薬の薬効成分)を直接もたらす特徴的な部材である。 ピオグリタゾンが本件各発明の課題の解決に不可欠なものであることは明らかであり,被告ら各製剤は,有効成分としてピオグリタゾンを含んでいるから,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当する。 (イ) 「その発明による課題の解決に不可欠なもの」とは,字義どおり,発明が解決した課題との関係において,当該課題の解決に不可欠であると評価できるものを意味し,間接侵害品がその発明によって新たに開示されたものであることを必要としないから,当該「もの」が従来(公知)技術である場合がこれに当たらないと解すべき根拠はない。そうであるから,ピオグリタゾンがたとえ公知の部材であったとしても,これが「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当することを否定する理由はない。 仮にそうでないとしても,本件各発明との関係において新たに見出されたピオグリタゾンの物質属性は,ピオグリタゾンが単剤として存在していたことによって当然に公知となっていたものではなく,原告は,本件各発明を完成するに当たり,ピオグリタゾンを他の糖尿病治療薬と組み合わせる グリタゾンの物質属性は,ピオグリタゾンが単剤として存在していたことによって当然に公知となっていたものではなく,原告は,本件各発明を完成するに当たり,ピオグリタゾンを他の糖尿病治療薬と組み合わせるまでは発揮されなかったところの従来技術(ピオグリタゾン単剤)に見られない物質属性を新たに見出したのであるから,ピオグリタゾンは,本件各発明に係る「組み合わせてなる医薬」との関係において,それ(ピオグリタゾンが他の糖尿病治療薬と組み合わされるまでは発揮されなかった物質属性)を用いることにより初めて発明が解決しようとする課題が解決されるような部品,道具,原料等に該当し,組み合わせてなる医薬発明にとって些末な部品等ではなく,重要な部品等であ ることが明らかである。また,ピオグリタゾンが他の糖尿病治療薬と組み合わされるまで発揮されなかった物質属性は,組み合わせてなる医薬発明が新たに開示する,従来技術に係る医薬には見られない特徴的技術手段(ピオグリタゾンと本件各併用薬との組合せ)について,当該技術事項を特徴付けている特有の成分を直接もたらすものであり,ピオグリタゾンが他の糖尿病治療薬と組み合わされるまでは発揮されなかった物質属性は,本件各発明の解決した「課題の解決に不可欠なもの」に該当する。 (被告ら)(ア) 特許発明の実施対象となる物を生産するための物品のうち,特許発明による課題解決を前提とした特有の技術的特徴を有する物品は,たとえ特許発明の実施以外の他用途が存在するとしても,特許発明の実施に用いられる蓋然性が極めて高いから,当該物品の生産,譲渡等の差止めを認めることに合理性があるが,これに対して,特許発明の技術的課題とは関係なく,従来技術との関係でも一般に用いられる物品は,特許発明の実施以外の用途でも使用される可能性が 物品の生産,譲渡等の差止めを認めることに合理性があるが,これに対して,特許発明の技術的課題とは関係なく,従来技術との関係でも一般に用いられる物品は,特許発明の実施以外の用途でも使用される可能性が高いから,間接侵害の成立を認めるのは妥当ではない。 特許法101条2号の「発明による課題の解決に不可欠なもの」は,特許請求の範囲に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念で,当該発明の構成要素以外の物であっても,物の生産や方法の使用に用いられる道具,原料などを含むが,他方,特許請求の範囲に記載された発明の構成要素であっても,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものはこれに当たらない。すなわち,それを用いることにより,初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような部品,道具,原料等が「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当するものというべきであり,言い換えれば,従 来技術の問題点を解決するための方法として,当該発明が新たに開示する,従来技術に見られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらす特徴的な部材,原料,道具等が,これに該当するのである。これに対し,特許請求の範囲に記載された部材,成分等であっても,課題解決のために当該発明が新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものに当たらないものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しないし,当該部品,道具,原料等が特許出願前から公知であったときには,その部品等そのものが特許発明による従来技術への貢献ということはあり得ないから,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しない。 本 発明による従来技術への貢献ということはあり得ないから,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しない。 本件各発明は,本件各明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】ないし【0004】に記載されているように,いずれもピオグリタゾンに代表されるインスリン感受性増強剤を従来技術とし,個々の薬剤の単独投与においては,症状によっては十分な効果が得られないこと等の種々の問題を解決するために,他の作用機序を有する他の糖尿病予防・治療薬を組み合わせたことを特徴的技術手段とする発明である。 これに対し,被告ら各製剤は,本件各発明において従来技術とされている公知物質のピオグリタゾンであり,その有効成分は,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたもので,それ自体では,本件各発明の特徴的技術手段である,他の作用機序を有する他の糖尿病治療・予防薬との組合せを有しないし,当該組合せに特徴的な部材,原料,道具等でもない。 したがって,被告ら各製剤は,「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しない。 (イ) 本件各発明は,個々の糖尿病予防・治療薬を単独で投与した場合に 生じる問題を,ピオグリタゾンと本件各併用薬を組み合わせることで解決するとするものであって,本件各発明がその解決手段として新たに開示したのは,本件優先日前から公知であったピオグリタゾン自体ではなく,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを「組み合わせる」ことであるから,ピオグリタゾン製剤自体は,本件各併用薬との「組合せ」という本件各発明の特徴的技術手段とはいえない。 また,ピオグリタゾン単剤に見られない物質属性が発揮されるためには,ピオグリタゾンと本 るから,ピオグリタゾン製剤自体は,本件各併用薬との「組合せ」という本件各発明の特徴的技術手段とはいえない。 また,ピオグリタゾン単剤に見られない物質属性が発揮されるためには,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを「組み合わせる」という技術的解決手段こそが不可欠である。 エ争点2-4(被告らが「その発明が特許発明であること及びその物の発明の実施に用いられることを知りながら」被告ら各製剤の生産等をしていたか否か)について(原告)被告らが,訴状送達の日以降に本件各発明が特許発明であることを認識したことは明らかであるが,被告らを含めた後発医薬品メーカー合計27社が平成23年1月に薬事法に基づく製造承認を受け,原告が,被告らに対し本件各発明を明記した文書を送付しているから,被告らは,少なくとも同月以降は,本件各発明が特許発明であることを認識している。 (被告ら)被告ら各製剤は,現場の医師の裁量の下で,各患者にそれぞれ適合した個別的な判断に基づき,様々な方法で患者に投与されるものであり,被告らは,被告ら各製剤が医療現場で現実にどのように用いられるかを知る立場になく,もとより何らかの医薬品の「生産」やその後の実施に用いられるという認識もないから,被告ら各製剤が「その発明の実施に用いられること」を認識していない。 (3) 争点3(本件各特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認め られるか否か)ア争点3-1(本件各発明が「産業上利用することができる発明」に該当しないか否か)について(被告ら)本件各発明に係る物は,いずれも2種の有効成分を「組み合わせてなる」医薬であるところ,患者に対し,いつどのような方法によりどの薬剤を投与するかの決定は,医師の専権に属 (被告ら)本件各発明に係る物は,いずれも2種の有効成分を「組み合わせてなる」医薬であるところ,患者に対し,いつどのような方法によりどの薬剤を投与するかの決定は,医師の専権に属する事項であり,別々に製剤化した2種の薬剤を患者に投与する場合に,その2種の薬剤が「組み合わせてなる」医薬に該当するとすれば,その2種の薬剤を組み合わせた医師が本件各発明を実施することになるから,仮に,原告が主張するように,両有効成分が別々に製剤化されたものを別々のままで同時に又は時間を置いて同一対象に投与する行為が本件各発明の技術的範囲に含まれるというのであれば,本件各発明は,実質的には医療方法に関する発明となり,「産業上利用することができる発明」に該当しないこととなる。 したがって,原告の主張を前提にすると,本件各発明は,特許法29条1項に違反する。 (原告)本件各発明は,あくまでも医薬という物の発明であり,医療方法の発明ではないから,およそ産業上の利用可能性の問題は生じない。 イ争点3-2(本件各発明が新規性を有しないか否か)(ア) 争点3-2-1(本件各発明が引用発明1と同一であるか否か)について(被告ら)a 引用例1には,インスリン抵抗性改善剤としてピオグリタゾン(AD-4833)等があること,α-グルコシダーゼ阻害剤としてアカルボース,ミグリトール及びボグリボースがあること,SU剤の一種 としてグリメピリドがあることの記載や,これらの薬剤の効果効用についての記載があるほか,これらの併用投与に関し,次の記載がある。 「糖尿病状態になれば,病状と分泌不全と抵抗性とのバランスにより,以下の薬剤の組み合わせが試みられる(図6)。」「空腹時血糖が110mg/dlから139 これらの併用投与に関し,次の記載がある。 「糖尿病状態になれば,病状と分泌不全と抵抗性とのバランスにより,以下の薬剤の組み合わせが試みられる(図6)。」「空腹時血糖が110mg/dlから139mg/dlであれば,空腹時の肝糖産生抑制するために就寝前にスルフォニール尿素剤の経口投与,あるいはインスリン抵抗性改善剤やビグアナイド剤の投与が試みられるが,やはりそれらとα-グルコシダーゼ阻害剤の併用が好ましい。次に空腹時血糖が140mg/dlから199mg/dlであれば,スルフォニール尿素剤単独投与,スルフォニール尿素剤とインスリン抵抗性改善薬との併用が試みられる。しかし同様にα-グルコシダーゼ阻害剤の併用という3者併用療法が好ましい。」「やはりα-グルコシダーゼ阻害剤の併用による食後過血糖のより効果的な是正が好ましい。さらに必要に応じてインスリン抵抗性改善薬との併用によりインスリン需要量の軽減が期待される。」そして,別紙「図6 NIDDMの新薬と新しい治療プラン」には,インスリン抵抗性改善薬と,α-グルコシダーゼ阻害剤,ビグアナイド剤,又はSU剤との併用についての記載がある。 b(a) 本件第1発明について引用例1には,ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容しうる塩の記載,アカルボース,ボグリボース及びミグリトールから選ばれるα-グルコシダーゼ阻害剤の記載,両者の併用投与についての記載があるところ,併用療法に適した複数の医薬を併用投与する場合に,その一態様として,両剤を組み合わせた医薬とすることが可能であることは技術常識であるから,引用例1にいう薬剤の「併用」の態様の中には,組合せ医薬であることも含有される。 したがって,本件第1発明は,引用発明1と同一又は実質的に同一である。 (b) 本件第2発明1 あるから,引用例1にいう薬剤の「併用」の態様の中には,組合せ医薬であることも含有される。 したがって,本件第1発明は,引用発明1と同一又は実質的に同一である。 (b) 本件第2発明1ないし3について本件第2発明1ないし3は,ピオグリタゾンとビグアナイド剤とを組み合わせてなる糖尿病薬に係る発明であるから,本件第2発明1ないし3は,引用発明1と同一又は実質的に同一である。 (c) 本件第2発明4について引用例1には,ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容しうる塩の記載,グリメピリドの記載,両者の併用投与についての記載があるところ,組合せ医薬が引用例1にいう「併用」に含まれることは前記(a)記載のとおりである。 もっとも,本件第2発明4は,「0.05~5mg/kg体重」との限定があるが,これは,体重60kgの患者の場合に3mg~300mgというピオグリタゾンの有効成分量としては極めて広範な用量を定めるもので,本件第2明細書の発明の詳細な説明に,「例えばインスリン感受性増強剤は,成人1人当たり経口投与の場合,臨床用量である0.01~10mg/kg体重(好ましくは0.05~10mg/kg体重,さらに好ましくは0.05~5mg/kg体重),非経口的に投与する場合は0.005~10mg/kg体重(好ましくは0.01~10mg/kg体重,さらに好ましくは0.01~1mg/kg体重)の範囲で選択でき」(【0039】)と記載されていることからしても,上記限定は,臨床用量に比しても幅広く,実質的にみて技術的な意味はないから,引用例1の記載をもって,本件第2発明4の「0.05~5mg/kg体重の用量のピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と,」との要件についても同一又は実質的に同一の記載があるといえる。 の記載をもって,本件第2発明4の「0.05~5mg/kg体重の用量のピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と,」との要件についても同一又は実質的に同一の記載があるといえる。 したがって,本件第2発明4は,引用発明1と同一又は実質的に同一である。 (原告)a 薬効の増大,副作用の低減といった課題を解決するために,2以上の医薬成分を組み合わせることは,本件各発明が属する医薬の分野において通常行われることであるが,医薬の特性上,現実に使用してみなければ実際の併用効果の有無は分からないということも,当該分野で周知の事実である。 本件各特許の国内優先権主張日当時,ピオグリタゾンはまだ臨床試験中で,市場にはインスリン感受性増強剤自体存在せず,同じチアゾリジン系インスリン感受性増強剤であるトログリタゾン(CS-450)では,SU剤やメトホルミンとの併用で,単独投与と差異がないとの報告がされていた(甲90,乙丙共2-7)のであり,本件各特許によりピオグリタゾンの併用効果(相乗効果)が実証される以前は,ピオグリタゾンが異なる作用機序を有する血糖降下剤との併用により併用効果を発揮するとの予測可能性は極めて低かった。 被告らが挙げるいずれの文献においても,インスリン感受性増強剤と他の経口血糖降下剤との併用効果は開示されていない。なお,ここにいう併用効果とは,各薬剤を単独で使用する場合と比較して,併用により優れた効果が得られるか否かの問題である。被告らが主張しているのは,ある薬剤では十分な効果が得られない患者に対し,別な薬剤を追加投与した場合に効果があるか否かという臨床上の併用の有用性の問題であるに過ぎず,これが認められるのみでは併用医薬は特許されないのである。 b 引用例1には,ピオグリタゾンと,アカル 別な薬剤を追加投与した場合に効果があるか否かという臨床上の併用の有用性の問題であるに過ぎず,これが認められるのみでは併用医薬は特許されないのである。 b 引用例1には,ピオグリタゾンと,アカルボース,ボグリボース 及びミグリトールから選ばれるα-グルコシダーゼ阻害剤,ビグアナイド剤並びにグリメピリドを併用することにより,実際に糖尿病治療が行われたことは一切記載されていないし,その併用について糖尿病治療に係る薬理効果を実際に確認したことの記載もない。 しかも,ピオグリタゾンは,インスリン抵抗性改善剤の例示として記載されているだけで,特にその中からピオグリタゾンに着眼し,これを選択し,これとアカルボース,ボグリボース及びミグリトールから選ばれるα-グルコシダーゼ阻害剤,ビグアナイド剤並びにグリメピリドとの組み合わせにより,併用治療を行うことについての記載や示唆は全くない。 (イ) 争点3-2-2(本件各発明が引用発明2と同一であるか否か)について(被告ら)a 引用例2には,ピオグリタゾン,α-グルコシダーゼ阻害剤,ビグアナイド剤(BG剤)及びグリメピリドの効用効果について記載があるほか,これらの併用投与に関し,次の記載がある。 「2)併用療法の可能性と危険性血糖降下に対する併用療法については,インスリン製剤とSU剤,SU剤とBG剤との併用が古くから提唱され,症例によっては用いられている。とりわけ,前者に関してはSU剤の二次無効例にインスリン治療への切り換え前に一時的に用いることが多い。後者については,両剤の作用メカニズムが異なることから理論的には,各単独に比べてより良い効果は十分期待できるので,乳酸アシドーシスと低血糖に注意して,処方を試みてもおもしろい。 しかし,新しい作用メカニズム は,両剤の作用メカニズムが異なることから理論的には,各単独に比べてより良い効果は十分期待できるので,乳酸アシドーシスと低血糖に注意して,処方を試みてもおもしろい。 しかし,新しい作用メカニズムをもった経口血糖降下剤が登場することになれば,各薬剤間での併用療法にも新しい展開がみられること が十分予測されるところである。その可能性を示せば図3となる。インスリン作用増強剤は,インスリン治療下の患者以外で十分効果が期待できるのに対し,糖質吸収阻害剤はあらゆる治療法との併用が可能である。ただし,インスリン製剤およびSU剤との併用にさいしては,厳に低血糖に注意することが肝要である。ここでいう糖質吸収阻害剤は,ブドウ糖以外の糖質を意味し,万が一糖質吸収阻害剤で低血糖発作が出現したさいには,その解消はブドウ糖のみであることを忘れてはならない。」そして,別紙「図3 1990年代の経口血糖降下剤による治療-併用療法-」には,インスリン作用増強剤と糖質吸収阻害剤(α-グルコシダーゼ阻害剤)との併用,インスリン作用増強剤とBG剤(ビグアナイド剤)との併用,インスリン作用増強剤とSU剤との併用が記載されている。 b(a) 本件第1発明について引用例2には,ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容しうる塩の記載,α-グルコシダーゼ阻害剤としてアカルボース及びボグリボースの記載,両者の併用投与についての記載があるところ,組合せ医薬が引用例2にいう「併用」に含まれることは,前記(ア)(被告ら)b(a)に記載のとおりである。 したがって,本件第1発明は,引用発明2と同一又は実質的に同一である。 (b) 本件第2発明1ないし3について引用例2には,ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容しうる塩の記載,ビグア 1発明は,引用発明2と同一又は実質的に同一である。 (b) 本件第2発明1ないし3について引用例2には,ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容しうる塩の記載,ビグアナイド剤の記載,両者の併用投与についての記載があるところ,組合せ医薬が引用例2にいう「併用」に含まれることは前記(a)と同様である。そして,引用例2には,単に「ビグアナ イド剤」との記載しかないが,本件第2発明に係る国内優先権主張日(平成7年6月20日)当時,ビグアナイド剤としては,フェンホルミン,メトホルミン及びブホルミンが広く知られていたから,引用例2に記載された「ビグアナイド剤」がこれらを意味することは当業者に自明であり,引用例2には,「フェンホルミン,メトホルミンまたはブホルミン」ないし「メトホルミン」の記載があるということができる。 したがって,本件第2発明1ないし3は,引用発明2と同一又は実質的に同一である。 (c) 本件第2発明4について引用例2には,ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容しうる塩の記載,グリメピリドの記載,両者の併用投与についての記載があるところ,組合せ医薬が引用例2にいう「併用」に含まれることは前記(a)と同様である。そして,本件第2発明4の「0.05~5mg/kg体重」との限定に技術的な意味がないことについては,前記(ア)(被告ら)b(c)に記載のとおりである。 したがって,本件第2発明4は,引用発明2と同一又は実質的に同一である。 (原告)引用例2には,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを併用することにより,実際に糖尿病治療が行われたことについて一切記載されていないし,その併用について糖尿病治療に係る薬理効果を実際に確認したことの記載もない。 しかも,ピオグリタゾ 件各併用薬とを併用することにより,実際に糖尿病治療が行われたことについて一切記載されていないし,その併用について糖尿病治療に係る薬理効果を実際に確認したことの記載もない。 しかも,ピオグリタゾンは,インスリン作用増強剤の例示として記載されているだけで,特にその中からピオグリタゾンを選択し,これに着目し,これとアカルボース,ボグリボース及びミグリトールから選ばれ るα-グルコシダーゼ阻害剤,ビグアナイド剤並びにグリメピリドとの組み合わせにより,併用治療を行うことについての記載や示唆は全くない。 (ウ) 争点3-2-3(本件各発明が引用発明3と同一であるか否か)について(被告ら)a 引用例3には,ピオグリタゾン(AD4833),α-グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース,ボグリボース及びミグリトール,グリメピリド(HOE490)の効果効用の記載があるほか,これらの併用投与につき,「新たな治療薬の参入によって今後のNIDDMの薬物治療の在り方も変わってゆくものと思われる(図3)。」として,別紙「図3 将来のNIDDM薬物療法のあり方」が記載されている。 b(a) 本件第1発明について引用例3には,ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容しうる塩の記載,アカルボース,ボグリボース及びミグリトールから選ばれるα-グルコシダーゼ阻害剤の記載,両者の併用投与についての記載があるところ,組合せ医薬が引用例3にいう「併用」に含まれることは,前記(ア)(被告ら)b(a)に記載のとおりである。 したがって,本件第1発明は,引用発明1と同一又は実質的に同一である。 (b) 本件第2発明1ないし3について本件第2発明1ないし3は,ピオグリタゾンとビグアナイド剤とを組み合わせてなる糖尿病薬 用発明1と同一又は実質的に同一である。 (b) 本件第2発明1ないし3について本件第2発明1ないし3は,ピオグリタゾンとビグアナイド剤とを組み合わせてなる糖尿病薬に係る発明であり,引用発明3と同一又は実質的に同一である。 (c) 本件第2発明4について引用例3には,ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容しうる塩 の記載,グリメピリドの記載,両者の併用投与についての記載があるところ,組合せ医薬が引用例3にいう「併用」に含まれることは前記(a)と同様であって,本件第2発明4の「0.05~5mg/kg体重」との限定に技術的な意味がないことについては,前記(ア)(被告ら)b(c)に記載のとおりである。 したがって,本件第2発明4は,引用発明3と同一又は実質的に同一である。 (原告)引用例3には,ピオグリタゾンと,アカルボース,ボグリボース及びミグリトールから選ばれるα-グルコシダーゼ阻害剤,ビグアナイド剤並びにグリメピリドとを併用することにより,実際に糖尿病治療が行われたことについて一切記載されていないし,その併用について糖尿病治療に係る薬理効果を実際に確認したことの記載もない。 しかも,ピオグリタゾンは,インスリン作用増強薬の一つとして記載されているだけで,特にその中からピオグリタゾンに着眼し,これを選択し,これと本件各併用薬との組み合わせにより,併用治療を行うことについての記載や示唆は全くない。 (エ) 争点3-2-4(本件特許発明B-1ないし3が引用発明4と同一であるか否か)について(被告ら)a 引用例4引用例4には,チアゾリジンジオン類が,既にSU剤やメトホルミンで治療中の患者の併用療法にお が引用発明4と同一であるか否か)について(被告ら)a 引用例4引用例4には,チアゾリジンジオン類が,既にSU剤やメトホルミンで治療中の患者の併用療法において,インスリン感受性増強剤として有用な役割を果たす可能性が高い旨の記載やそのようなチアゾリジンジオン類のうち,研究が進められているものとしてピオグリタゾンがあることが記載されている。 b 引用例4には,ピオグリタゾンとメトホルミンとのNIDDM治療のための併用についての記載があり,本件特許発明Bに係る国内優先権主張日当時において,メトホルミンがビグアナイド剤であることは技術常識として知られていた。そして,組合せ医薬が引用例4にいう「併用」に含まれることは,前記(ア)(被告ら)b(a)に記載のとおりである。 したがって,本件第2発明1ないし3は,引用発明4と同一又は実質的に同一である。 (原告)引用例4は,単に,チアゾリジンジオン類がメトホルミン又はSU剤で治療中の患者の併用療法において一定の役割を果たす可能性があると記載しているだけであって,ピオグリタゾン,ビグアナイド剤とを併用することにより,実際に糖尿病治療が行われたことは一切記載されていないし,その併用について糖尿病治療に係る薬理効果を実際に確認したことの記載もない。 しかも,ピオグリタゾンは,インスリン感受性増強剤の例示として記載されているだけで,特にインスリン抵抗性改善剤の中からピオグリタゾンを選択し,これに着目し,これとビグアナイド剤との組み合わせにより併用治療を行うことについての記載や示唆は全くない。 (オ) 争点3-2-5(本件第2発明4が引用発明5と同一であるか否か)について(被告ら)a 引用例5には,ピオグ により併用治療を行うことについての記載や示唆は全くない。 (オ) 争点3-2-5(本件第2発明4が引用発明5と同一であるか否か)について(被告ら)a 引用例5には,ピオグリタゾン(AD-4833)とSU剤との併用につき,SU剤(グリベンクラミド又はグリクラジド)を使用中のNIDDMにピオグリタゾンを併用し,SU剤の血中濃度推移への影響,血糖,IRIの推移について検討したところ,空腹時血糖(FP G)は194→173mg/dlと21mg/dl低下し,血糖日内変動でも15~52mg/dlの低下を認めた旨や,SU剤とピオグリタゾンの併用投与により,SU剤の血中濃度に大きな影響及び副作用は認めず,危惧すべき相互作用は見られなかった旨,軽度の血糖改善を認めたが,十分な効果を得るには,より長期の投与が必要と判断された旨が記載されている。 b 引用例5には,ピオグリタゾンと,SU剤であるグリベンクラミドやグリクラジドとを,NIDDM(インスリン非依存型糖尿病)患者に併用投与した試験についての記載があり,グリベンクラミド等の作用機序はグリメピリドと同じであるから,本件第2発明4は,引用発明5と同一又は実質的に同一である。 (原告)引用例5には,グリベンクラミド又はグリクラジドを使用中のNIDDM入院患者10例に,ピオグリタゾンの30mg/日を7日間投与した臨床試験の結果が記載されているが,ピオグリタゾンとグリメピリドとを併用することにより実際に糖尿病治療が行われたことは一切記載されていないし,その併用について糖尿病治療に係る薬理効果を実際に確認したことの記載もない。 ウ争点3-3(本件各発明が進歩性を有しないか否か)(ア) 争点3-3-1(本件各発明は引用発明1,2又は3に基づき て糖尿病治療に係る薬理効果を実際に確認したことの記載もない。 ウ争点3-3(本件各発明が進歩性を有しないか否か)(ア) 争点3-3-1(本件各発明は引用発明1,2又は3に基づき当業者が容易に発明することができたか否か)について(被告ら)a 本件各発明の国内優先権主張日当時における技術常識等について当業者の一般的知見として,同じ効果を発現する薬剤の併用ないし組合せについては,作用点の同一のものは相加的に作用し,作用点の異なるものは相乗的に作用することが知られているから,2以上の医 薬成分を組み合わせた医薬につき,薬効の増大,副作用の低減といった課題を解決するために複数の医薬成分の組合せを最適化することは,当業者であれば誰もが当然に動機付けられる。 2型糖尿病の治療の基本は血糖値を管理することにあり,また,糖尿病の病態は複雑であるため,経口血糖降下剤を用いる治療にあっては,その作用機序の特性に応じて,患者の病状に適した薬剤を選択することになる。2型糖尿病において,血糖値を管理する手段としては,① 糖質が腸管から吸収される速度の抑制,② 糖が肝臓で生産される率の抑制,③ インスリンの作用の増強,④ インスリンの分泌の促進等があるが,ピオグリタゾンは③,α-グルコシダーゼ阻害剤は①,ビグアナイド剤は①及び②,SU剤は④の各手段により血糖値のコントロールを図るものであって,それぞれ作用機序を異にする。作用機序の異なる薬剤を複数併用すれば,それぞれの機序に従った効果が生じ,単独投与の場合よりも効果的な血糖コントロールが期待できるため,2型糖尿病の治療では,薬効増大や副作用低減のために,作用機序の異なる複数の糖尿病治療薬を併用投与することが一般的に試みられていた。具体的には,SU剤とビグ 果的な血糖コントロールが期待できるため,2型糖尿病の治療では,薬効増大や副作用低減のために,作用機序の異なる複数の糖尿病治療薬を併用投与することが一般的に試みられていた。具体的には,SU剤とビグアナイド剤,α-グルコシダーゼ阻害剤とSU剤,ピオグリタゾンと同じくインスリン抵抗性改善剤であるトログリタゾンとSU剤やビグアナイド剤,ピオグリタゾンとSU剤といった各併用療法が行われ,その効果が文献上も確認されていた。とりわけ,2型糖尿病治療薬においては,組合せの対象となり得るような有効な医薬の数は限られ,ピオグリタゾンが新規に開発された時点では,例えばα-グルコシダーゼとしてアカルボース,ボグリボース,ミグリトール,SU剤としてグリベンクラミド,グリメピリド,ビグアナイド系薬剤としてフェンホルミン,メトホルミン,ブホルミンといった医薬が知られている程度であったから,本件各発 明に係る併用,組合せについても,ピオグリタゾンという新たな薬剤の開発に伴い,当業者において,当然に併用等が試行されるべきものに過ぎなかった。そして,作用機序が異なる医薬を併用する場合,通常は,薬剤同士が拮抗するとは考えにくいから,当業者において,併用する薬剤がそれぞれの機序によって作用し,それぞれの効果が個々に発揮され,少なくともいわゆる相加的効果が得られるであろうことまでは当然に想定するものであった。 そうであるから,当業者には,ピオグリタゾンと本件各併用薬との併用投与を行う強い動機があったといえ,本件各発明に係る構成は,当業者が容易に想到できたものである。 b 本件各発明に格別顕著な効果が見られないことについて本件各発明に格別顕著な効果があるというためには,単剤投与の場合よりも当該組合せによる投与の方が効果的な血糖効果作用 b 本件各発明に格別顕著な効果が見られないことについて本件各発明に格別顕著な効果があるというためには,単剤投与の場合よりも当該組合せによる投与の方が効果的な血糖効果作用が得られるというだけでは足りず,他の組合せによっても得られることのできない格別に顕著な効果を得られることが必要であり,このことが明細書に記載されていなければならない。 本件各明細書には,実験例1として,遺伝性肥満糖尿病ウイスター・ファティ・ラットにピオグリタゾンとボグリボースとの併用投与の場合と各々を単独で投与した場合の作用効果の比較実験結果が記載されているに過ぎず,実験例2は,ピオグリタゾンとグリベンクラミドとの併用投与の場合のものであり,そもそもピオグリタゾンとボグリボース以外の本件各併用薬との組合せの場合についての効果については全く記載がなく,実験例1も,薬剤投与時から血液採取時までの時間が記載されていないことなどから,顕著な効果が発生しているとの根拠とはならない。そして,他の刊行物等の記載を考慮しても,本件各発明において,格別顕著な効果があるとは認められず,その効果 は当業者が予測可能な範囲のものにとどまっている。 c したがって,仮に,引用例1ないし3に併用についての薬理効果を実際に確認したことの記載や,ピオグリタゾンと本件各併用薬とを組み合わせてなる糖尿病治療薬の記載がないことなどをもって,本件各発明と引用発明1ないし3が相違すると解するにしても,本件各発明は,当業者が引用発明1,2又は3に基づいて容易に想到することができたものであって,格別顕著な効果があるともいえない。 (原告)a 本件第1発明について(a) 医薬の特性上,現実に使用してみなければ実際の併用効果の有無は とができたものであって,格別顕著な効果があるともいえない。 (原告)a 本件第1発明について(a) 医薬の特性上,現実に使用してみなければ実際の併用効果の有無は分からないし,仮に効果があるにしても,それが相加的か相乗的かを予測することはできない。とりわけ,同じ血糖効果作用を有する薬剤を併用すれば,当該効果が向上する可能性があると同時に,効果が予想以上に増強されて低血糖を招く危険もあるのである。 引用例1ないし3は,将来の可能性や期待として,経口糖尿病治療薬の併用を漠然と記載したもので,本件第1発明の構成や効果を何ら具体的に開示するものではなく,被告らの引用例を含めたあらゆる公知文献において,インスリン抵抗性改善剤とα-グルコシダーゼ阻害剤とを実際に組み合わせて使用したとの記載はなく,併用医薬特許の特許性において問題とすべき併用効果については記載も示唆もない。むしろ,国内優先権主張日当時,チアゾリジン系インスリン感受性増強剤については,他の血糖降下剤であるSU剤やメトホルミンとの併用に関して単独投与と差異がないことを報告した論文があったから,ピオグリタゾンとα-グルコシダーゼ阻害剤との併用による血糖効果作用における優れた効果(相乗的効果)は,当業者が容易に予測することはできなかった。 (b) 本件第1発明の構成を採用することにより,ピオグリタゾンと本件各併用薬とをそれぞれ単独で使用する場合に比較して,少量で優れた血糖効果作用(相乗的効果)が得られ,それゆえ副作用を低減し得るという作用効果が達成される。 本件第1明細書の発明の詳細な説明の実験例1には,「遺伝性肥満糖尿病ウイスター・ファティー(Wistarfatty)ラットにおける塩酸ピオグリタゾンとα という作用効果が達成される。 本件第1明細書の発明の詳細な説明の実験例1には,「遺伝性肥満糖尿病ウイスター・ファティー(Wistarfatty)ラットにおける塩酸ピオグリタゾンとα-グルコシダーゼ阻害剤との併用効果」として,遺伝性肥満糖尿病ラットに塩酸ピオグリタゾンあるいはα-グルコシダーゼ阻害剤であるボグリボースをそれぞれ単独あるいは併用して14日間経口投与し,その結果,血漿グルコース及びヘモグロビンA1が併用投与による場合の方が単独投与の場合よりも著しく低下したことが記載されている(段落【0043】)が,この効果は相乗的なものである。 そして,本件第1特許の審査過程等で原告が提出した実験データにおいても相乗的効果が認められていることや,他の多くの経口糖尿病治療薬との併用が可能なピオグリタゾンは,併用により優れた相乗効果を示すことが実使用でも確認されて商業的に大きな成功を収めていることからしても,本件第1発明に係る医薬が顕著な効果を有することは明らかである。 b 本件第2発明について(a) 引用例1ないし3や他の公知文献の大半には,本件第2発明の具体的構成の記載はなく,将来の可能性や期待として,経口糖尿病治療薬の併用を漠然と記載したもので,具体的な併用の態様や併用の効果について何ら具体的に開示しない。トログリタゾンとビグアナイド剤やSU剤との併用につき具体的な記載のある文献においても,単に臨床上の併用の有用性が記載されているに過ぎず,本件の ような併用医薬特許の特許性において問題とすべき併用効果については記載も示唆もない。むしろ,医薬の特性やチアゾリジン系インスリン感受性増強剤とSU剤やメトホルミンとの併用に関して単独投与と差異がないことを報告した論文が存在したこと,特に本件 き併用効果については記載も示唆もない。むしろ,医薬の特性やチアゾリジン系インスリン感受性増強剤とSU剤やメトホルミンとの併用に関して単独投与と差異がないことを報告した論文が存在したこと,特に本件第2発明4に関しては,SU剤が膵β細胞からのインスリン分泌を促進することで強い血糖効果作用を発揮する薬剤であり,重大な副作用として低血糖が知られているために,インスリン抵抗性を改善して血糖効果作用を示すピオグリタゾンとSU剤とは,無条件に併用可能なものとは考えられておらず,両者の併用は肥満のリスクを高めることからして通常避けるべき組合せであるといえたことからすると,ピオグリタゾンとビグアナイド剤やグリメピリドとの併用による血糖効果作用における優れた効果(相乗的効果)は,当業者が容易に予測することはできなかった。 (b) 本件第2発明は,ピオグリタゾンとビグアナイド剤又はグリメピリドとを組み合わせることにより,それぞれ単独で使用する場合に比較して,少量で優れた血糖値降下作用が得られ,それゆえ副作用を低減し得るという顕著な効果を有する。 本件第2発明1ないし3については,本件第2特許の審査過程等で原告が提出した実験データにおいても併用投与による場合の方が単独投与の場合よりも血漿グルコース濃度が著しく低下する相乗的効果を示したことが実証されている。また,本件第2発明4については,本件第2明細書の発明の詳細な説明の実験例2に,「遺伝性肥満糖尿病ウイスター・ファティー(Wistarfatty)ラットにおける塩酸ピオグリタゾンとインスリン分泌促進剤との併用効果」として,塩酸ピオグリタゾンと,構造的にも機能的にもグリメピリドと類似するSU剤グリベンクラミドとを用いた遺伝性肥満糖尿病ラッ トによる経口ブドウ糖負荷試 インスリン分泌促進剤との併用効果」として,塩酸ピオグリタゾンと,構造的にも機能的にもグリメピリドと類似するSU剤グリベンクラミドとを用いた遺伝性肥満糖尿病ラッ トによる経口ブドウ糖負荷試験結果が記載され,併用投与による場合の方が単独投与の場合よりも血漿グルコース濃度が著しく低下したことが記載されている上,本件第2特許の審査過程等で原告が提出した塩酸ピオグリタゾンとグリメピリドとを用いた同様の試験においても血漿グルコース濃度の低下において相乗的効果が認められた。 そして,ピオグリタゾンが商業的に大きな成功を収めていることからしても,本件第2発明に係る医薬が顕著な効果を有することは明らかである。 (イ) 争点3-3-2(本件第2発明1ないし3は引用発明4,5又は6に基づき当業者が容易に発明することができたか否か)について(被告ら)a 引用例4にはピオグリタゾンとメトホルミンとのNIDDM治療のための併用の構成が明記され,引用例5及び6には,ピオグリタゾンと他の経口血糖降下剤とのNIDDM治療のための併用やビグアナイド剤と他の経口血糖降下剤とのNIDDM治療のための併用についての記載がある。本件各発明の国内優先権主張日当時における技術常識は,前記(ア)(被告ら)a記載のとおりであり,特に,「Apilotclinicaltrialofaneworalhypoglycemicagent, CS-045, inpatientswithnon-insulindependentdiabetesmellitus 」(DiabetesResearchandClinicalPracticeVol.11・147~153頁。1991年刊行。甲90,乙丙共2-7)には,インスリ etesmellitus 」(DiabetesResearchandClinicalPracticeVol.11・147~153頁。1991年刊行。甲90,乙丙共2-7)には,インスリン感受性増強剤とビグアナイド剤とを実際に併用投与した臨床試験の結果が記載されていた。 そうすると,当業者であれば,引用発明4,5又は6に基づき,本件第2発明1ないし3を容易に構成することができたものである。 b そして,本件第2明細書に,本件第2発明1ないし3に係る実施例の記載はなく,これらの作用効果を具体的に認識することができるような開示はないから,本件第2発明1ないし3は,引用発明5と比較して顕著な効果を奏するとはいえない。 c したがって,ピオグリタゾンとビグアナイド剤との組合せが開示されており,本件第2発明1ないし3は,当業者が引用発明4,5又は6に基づき容易に想到することができたものであって,格別顕著な効果があるともいえない。 (原告)引用例4には,本件第2発明1ないし3の具体的構成の記載はなく,将来の可能性や期待として,経口糖尿病治療薬の併用を漠然と記載したもので,引用例5には,ピオグリタゾンとビグアナイド剤とを併用することにより実際に糖尿病治療が行われたことは一切記載されていないし,引用例6にも単に臨床上の併用の有用性が記載されているに過ぎず,併用医薬特許の特許性において問題とすべき併用効果については記載も示唆もない。そうであるから,本件第2発明1ないし3は,当業者が引用発明4,5又は6に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (ウ) 争点3-3-3(本件第2発明4は引用発明4,5又は7に基づき当業者が容易に発明することができたか否か)について(被告ら) 容易に発明をすることができたとはいえない。 (ウ) 争点3-3-3(本件第2発明4は引用発明4,5又は7に基づき当業者が容易に発明することができたか否か)について(被告ら)a 引用例4にはインスリン感受性増強剤とSU剤との組合せの記載があり,引用例5にはピオグリタゾンとSU剤とのNIDDM治療のための併用の記載があり,引用例7には,ピオグリタゾンと同じチアゾリジン薬の一種であるトログリタゾン(CS-045)と,SU剤との併用につき,SU剤を投与しても血糖コントロールが不十分であっ た患者に対し,トログリタゾンを投与することにより,血糖コントロールを改善する効果があり,特に問題となる副作用が存在しないという発明(引用発明7)が記載されている。 ピオグリタゾンとSU剤との組合せにつき記載する引用発明4又は5に,前記( ア) (被告ら)a記載の技術常識や前記「Apilotclinicaltrialofaneworalhypoglycemicagent, CS-045, inpatientswithnon-insulindependentdiabetesmellitus」を参照すれば,当業者であれば,本件第2発明4を容易に構成することができた。また,30mg/日の用量のピオグリタゾンとグリメピリドとのNIDDM治療のための構成につき記載する引用発明3や技術常識を参照することで,糖尿病治療目的で使用可能なピオグリタゾンとSU剤とのNIDDM治療のための併用についての技術的思想を開示する引用発明5から本件第2発明4に係る構成を容易に想到することができた(本件第2発明4におけるピオグリタゾンの用量の限定は単なる設計事項に過ぎない。)。さらに,引用発明7は,ピオグリタゾンと同じ機序を 用発明5から本件第2発明4に係る構成を容易に想到することができた(本件第2発明4におけるピオグリタゾンの用量の限定は単なる設計事項に過ぎない。)。さらに,引用発明7は,ピオグリタゾンと同じ機序を持つトログリタゾンとSU剤との併用につき開示しているから,トログリタゾンを同じチアゾリジン系薬であるピオグリタゾンに代えることは,当業者にとって容易に想到することができたところである。 b そして,本件第2明細書には,本件第2発明4の具体的な製造例や薬理効果についての記載はなく,本件第2発明4が公知技術に比して顕著な効果を奏するとはいえない。 c したがって,本件第2発明4は,当業者が引用発明4,5又は7に基づいて容易に想到することができたもので,格別顕著な効果があるともいえない。 (原告) 引用例7の記載内容は,CS-045(トログリタゾン)とSU剤との併用試験が行われたことを示すにとどまり,引用例4,5及び7のいずれにもピオグリタゾンとグリメピリドを併用することにより実際に糖尿病治療が行われたことについての記載はなく,その併用につき糖尿病治療に係る薬理効果を実際に確認したことの記載もないのであって,併用医薬特許の特許性において問題とすべき併用効果は記載も示唆もない。 そうであるから,本件第2発明4は,当業者が引用発明4,5又は7に基づいて容易に想到することができたとはいえない。 エ争点3-4(本件各発明において,明確性要件,実施可能要件又はサポート要件を充足しないか否か)について(被告ら)(ア) 本件各発明について本件各発明の特許請求の範囲における「組み合わせてなる」との文言が,原告が主張するように,一般的にある物とある物とをまとめることを意味し,その具体的な態様について何 (ア) 本件各発明について本件各発明の特許請求の範囲における「組み合わせてなる」との文言が,原告が主張するように,一般的にある物とある物とをまとめることを意味し,その具体的な態様について何らの指定をするものではないというのであれば,本件各発明は,具体的解決方法が示されていないことになり,特許法2条1項にいう「発明」に該当せず,特許・実用新案審査基準の「発明を特定するための事項の技術的意味が理解できず,さらに,出願時の技術常識を考慮すると発明を特定するための事項が不足していることが明らかである場合」として,本件各発明の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号の「特許を受けようとする発明が明確であること」との要件(以下「明確性要件」という。)を充足しないし,また,例えばピオグリタゾンを投与した3か月後に本件各併用薬を投与する場合のように,本件各発明における課題を解決し得ないものも包含することになるから,本件各明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものと いうことはできず,本件各明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号に規定する要件(以下「実施可能要件」という。)を充足しない。 (イ) 本件第1発明について医薬の発明では,医薬用途を裏付ける実施例として,薬理試験結果の記載が求められるが,本件第1明細書には,ピオグリタゾンとα-グルコシダーゼ阻害剤のうちのボグリボースとの組合せの薬理試験しか記載がなく,アカルボース又はミグリトールとの組合せについては試験をしていない。ボグリボース,アカルボース及びミグリトールは,それぞれ作用する酵素が異なり,本件第1明細書に記載のないアカルボースやミグリトールとピオグリタゾンとの組合せを実 の組合せについては試験をしていない。ボグリボース,アカルボース及びミグリトールは,それぞれ作用する酵素が異なり,本件第1明細書に記載のないアカルボースやミグリトールとピオグリタゾンとの組合せを実施することは,当業者にとって困難であるというべきであるから,本件第1明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件を充足しないし,また,本件第1発明の特許請求の範囲の記載は,発明の詳細な説明に記載したものということはできず,特許法36条6項1号に規定する要件(以下「サポート要件」という。)を充足しない。 (ウ) 本件第2発明について本件第2明細書には,ピオグリタゾンとビグアナイド剤やグリメピリドとの組合せについての実施例の記載はなく,その効果は何ら確認されていない。本件第2明細書に,薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載が一切ないから,本件第2明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件を充足しないし,また,本件第2発明の特許請求の範囲の記載は,サポート要件を充足しない。 (原告)(ア) 本件各発明について原告は,「組み合わせてなる」の具体的態様について,何らの指定を するものではないといった主張をしていないし,本件各明細書の記載に鑑みれば,ピオグリタゾンを投与して3か月後に本件各併用薬を投与するといった極端な事例にまで本件各発明の権利範囲が及ばないことは明らかであるから,本件各明細書の記載は,明確性要件や実施可能要件を充足している。 (イ) 本件第1発明についてアカルボース及びミグリトールは,ボグリボースと同じα-グルコシダーゼ阻害剤であり,構造及び機能が酷似しているから,ボグリボースと同様の併用効果が期待できる。そうであるから,本件第1明細書の記載は,実施可能要件やサポート要件を充 ボグリボースと同じα-グルコシダーゼ阻害剤であり,構造及び機能が酷似しているから,ボグリボースと同様の併用効果が期待できる。そうであるから,本件第1明細書の記載は,実施可能要件やサポート要件を充足している。 (ウ) 本件第2発明についてa 医薬発明においてサポート要件を充足するかどうかは,明細書の発明の詳細な説明に薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載があるか否かのみによって判断されるものではなく,発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲とを対比した上で,出願時の技術常識に照らして,発明の詳細な説明の記載により当該発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 また,医薬発明において実施可能要件を充足するかどうかは,発明の解決課題や解決手段等技術的意義を理解した上で,出願時に当業者が発明を実施できるか否かを一切の事情に照らして判断すべきものであって,やはり薬理データがあるか否かのみによって判断されるものではない。 b 本件第2明細書には,ピオグリタゾンという特定のインスリン感受性増強剤に着眼すれば,それと相互補完的な作用機序を有する他の血糖降下剤と組み合わせることにより,併用による効果の増強をし得る という知見が開示されているのであって,これに基づけば,当業者は,ピオグリタゾンとビグアナイド剤との併用によっても,実施例1と同様に効果の向上と副作用の低減を図ることができるだろうと認識できるから,本件第2発明1に係る本件第2明細書の記載は,サポート要件及び実施可能要件を充足し,本件第2発明2,3は,それぞれビグアナイド剤の種類を限定したものに過ぎないから,本件第2明細書の記載は,同様にサポート要件及び実施可能要件を充足する。 c また,本件第2明細書には,グリベンク ,本件第2発明2,3は,それぞれビグアナイド剤の種類を限定したものに過ぎないから,本件第2明細書の記載は,同様にサポート要件及び実施可能要件を充足する。 c また,本件第2明細書には,グリベンクラミドを用いた実施例2などの記載があり,グリメピリドとグリベンクラミドは,いずれもSU剤であって,構造と機能が類似し,共通の作用効果を発揮することが知られていたので,当業者は,ピオグリタゾンとグリメピリドとの併用によっても,効果の向上と副作用の低減を図ることができるだろうと認識できるから,本件第2発明4に係る本件第2明細書の記載は,サポート要件及び実施可能要件を充足する。 オ争点3-5(本件各特許につき補正要件違反があるか否か)について(被告ら)第3世代SU剤であるグリメピリドは,第2世代SU剤であるグリベンクラミドと作用機序が異なるため,両者は区別されている。本件第2明細書においては,各種SU剤の一つとしてグリメピリドの記載があるのみで,実施例においてピオグリタゾンとグリメピリドとの併用の効果を開示する記載はない。原告は,請求項にグリメピリドを新たに加える補正をしたが,これは,新規事項の追加として特許法17条の2第3項の規定に違反する。 (原告)本件第2発明4に係る出願当時の特許請求の範囲には,インスリン感受性増強剤とインスリン分泌促進剤とを「組み合わせてなる医薬」が記載され,当初明細書には,インスリン分泌促進剤の一種としてグリメピリドが 記載されていたから,本件第2発明4に係る補正は,新規事項の追加に当たらない。 (4) 争点4(原告が差止めを請求することができるか否か)について(原告)被告らが被告ら各製剤を製造販売する行為は,本件各特許権を侵害するものとみなされるから,原告は,被告らそ ない。 (4) 争点4(原告が差止めを請求することができるか否か)について(原告)被告らが被告ら各製剤を製造販売する行為は,本件各特許権を侵害するものとみなされるから,原告は,被告らそれぞれに対し,被告ら各製剤の製造,販売及び販売の申出の差止めを請求することができる。 特許法101条が定める間接侵害制度は,専用品型(1号,4号)であれ,中用品型(2号,5号)であれ,不特定又は多数の直接侵害者を捕捉することが困難な場合について,それらに原料や部品を供給する特定少数の間接侵害者を捕捉することを通じて,特許権の実効的な保護を図るために設けられたものであるから,特許権者が中用品の製造販売の差止めを求めるに当たって,当該物品の現実の用途を逐一立証する必要はないと解すべきである。 また,差止めの対象となる間接侵害物品の用途の不確実性は,中用品型の間接侵害においては常に生じる問題であるが,そのリスクを特許権者側が負わなければならないとすると,特許法が専用品型に加えて中用品型の間接侵害制度を置いた実益が失われることになるから,直接行為者による将来用途が非侵害であることは,執行段階において間接侵害者の側が明らかにすべき事情として扱うべきである。すなわち,まず,特許法101条2号の要件を満たす被告ら各製剤について差止請求を認容し,それによる不都合は,被告らが執行段階において請求異議の訴えを提起し,強制執行の不許を求めることにより除去すべきである。 さらに,特許法100条1項によれば,間接侵害が現在化する前段階での予防請求をすることができるのであるから,被告らが被告ら各製剤を譲渡する相手方である医師や薬剤師が,それを本件各併用剤とともに使用するかどうかが未確定な時点でも,そのおそれがある場合には,予防請求として,被 告 きるのであるから,被告らが被告ら各製剤を譲渡する相手方である医師や薬剤師が,それを本件各併用剤とともに使用するかどうかが未確定な時点でも,そのおそれがある場合には,予防請求として,被 告ら各製剤の生産と譲渡を差し止めることができる。 (被告ら)差止請求権には,第三者の既存の利益を害するような過剰執行は許されないという内在的制約が存在するのであり,特許法101条2号の間接侵害において,対象となる部材等を侵害用途とは無関係の他用途に使用する者の利益を害するような無条件の差止めは許されない。本件においては,供給されたピオグリタゾンのせいぜい30%程度が本件各併用薬と併用され,それ以外の70%は単剤で使用されるか本件各併用薬以外の医薬と併用されるというのであり,この場合に事前の一括差止めを認めると,本来パブリックドメインに属するような用途を含めて全てが制限されることになって不当である。 将来の具体的な用途が明らかではない段階で,一括差止めを認めることは,上記70%が適法に使用されるものであることを考えれば,明らかに過剰な差止めである。 なお,全面的な差止請求を認容する確定判決の問題点は,判決に,本来差止めが許容されるべき範囲と許容されない範囲が含まれることにあるが,確定判決についての請求異議の事由は,口頭弁論の終結後に生じたものに限られる(民事執行法35条2項)から,請求異議の訴えにより上記問題点は解決しない。 (5) 争点5(原告が薬価基準収載品目削除願の提出を請求することができるか否か)について(原告)被告らが被告ら各製剤について健康保険法に基づく薬価基準への収載が行われた場合,厚生労働省が定める通達上,収載された日から3か月以内に対象医薬品を製造販売して医療機関に対する供給を開始するとともに,以降も継続 ら各製剤について健康保険法に基づく薬価基準への収載が行われた場合,厚生労働省が定める通達上,収載された日から3か月以内に対象医薬品を製造販売して医療機関に対する供給を開始するとともに,以降も継続して供給しなければならない。そうであれば,被告らに対し,被告ら各製剤の製造販売等の差止めを命じたとしても,被告らは,医療機関に対する 被告ら各製剤の供給を即座に停止することなく,継続的に供給するおそれが極めて高いのであって,この場合には,原告の被害及び損害は一層拡大し甚大なものとなるから,原告は,被告らに対し,特許法101条1項所定の差止請求をするに際し,健康保険法に基づく薬価基準収載品目削除願の提出という公法上の意思表示をすることを請求することができるというべきである。 (被告ら)特許法100条2項にいう「侵害の予防に必要な行為」とは,特許発明の内容,現に行われ又は将来行われるおそれがある侵害行為の態様及び特許権者が行使する差止請求権の具体的内容等に照らし,差止請求権の行使を実効あらしめるものであって,かつ,それが差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要する。 薬価基準への収載及び薬価基準からの削除は,厚生労働大臣が健康保険法に基づき行うものであるが,薬価基準への収載及び薬価基準からの削除について,製造販売業者からの申請に関する定めはなく,厚生労働大臣は,製造販売業者からの申請の有無にかかわらず,収載又は削除を行うことができるところ,行政上の取扱いとして,厚生労働省医政局長及び保険局長が発した通知により,製造販売業者から薬価基準収載希望書を提出させているが,薬価基準からの削除については行政庁の発する通知すらない。そうであるから,法令上の根拠がなく,行政庁の発する通知による根拠もない薬価基準収載品目削除願の 者から薬価基準収載希望書を提出させているが,薬価基準からの削除については行政庁の発する通知すらない。そうであるから,法令上の根拠がなく,行政庁の発する通知による根拠もない薬価基準収載品目削除願の提出を命ずる意味はなく,差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであるとはいえず,薬価基準収載品目削除願の提出は,「侵害の予防に必要な行為」に当たらない。 (6) 争点6(原告が廃棄を請求することができるか否か)について(原告)被告らは,平成23年6月以降にそれぞれ被告ら各製剤の製造販売を開始し,極めて多くの数量に上る在庫を保有するものと考えられる。このような 被告ら各製剤を廃棄することが,被告らによる本件各特許権の侵害の予防に必要な行為であることは明らかであるから,原告は,特許法101条2項に基づき,被告らそれぞれに対し,被告ら各製剤の廃棄を請求することができる。 (被告ら)特許法101条2号の間接侵害において,製造者が管理する部材等については,他用途に使用することができるものであるから,その廃棄を命ずることは,過剰な廃棄を命ずるものとして許されない。 (7) 争点7(損害額)について(原告)原告は,本件を解決するために専門家である弁護士に委任して,被告らに対し訴訟を提起せざるを得なかったところ,本件における差止等請求の経済的利益及び本件が特許事件という困難な事件であること等を考慮すると,上記委任事務に係る委任報酬等は,少なくとも各被告らにつきそれぞれ500万円を下回ることはない。これらの費用の出捐は,被告らの本件各特許権侵害に係る不法行為と相当因果関係のある損害に当たる。 また,被告らが被告ら各製剤を販売したことによって,平成24年4月に原告の製剤の薬価が引き下げられて,その売上高が減少し, らの本件各特許権侵害に係る不法行為と相当因果関係のある損害に当たる。 また,被告らが被告ら各製剤を販売したことによって,平成24年4月に原告の製剤の薬価が引き下げられて,その売上高が減少し,これにより,原告が受けた損害は少なくとも1億8000万円を下らない。 (被告ら)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告らが被告ら各製剤を製造販売等することが本件各特許権を侵害するか否か)について(1) 争点1-1(被告らが医療関係者や患者の行為を利用,支配して本件各発明を実施しているといえるか否か)について 被告らは,被告ら各製剤を製造販売しているが,さらに進んで,これと本件各併用薬とを組み合わせてなる医薬を生産等したことを認めるに足りる証拠はない。 原告は,被告らが,自由意思によらずに本件各発明を実施する医師,薬剤師,患者の行為を道具として利用し,これを支配することによって,本件各発明の実施を招来せしめているのであり,被告らは,被告ら各製剤を製造販売することにより,医師,薬剤師,患者をして本件各発明を実施していると規範的に評価することができると主張する。 しかしながら,医師がピオグリタゾン製剤や本件各併用薬などの薬剤をどのように使用するかについては,その裁量によって決するものであり,また,薬剤師がピオグリタゾン製剤や本件各併用薬などの薬剤をどのように調剤するかについては,医師の処方せんによらなければならないものであるし,さらに,患者が被告ら各製剤と本件各併用薬とを服用するのは,医師や薬剤師の指示や指導に従って行うに過ぎないから,これらをもって,被告らが医師,薬剤師,患者の行為を道具として利用したとか,これを支配したということはできない。 原告の上記主張は,到底採用することができない 指示や指導に従って行うに過ぎないから,これらをもって,被告らが医師,薬剤師,患者の行為を道具として利用したとか,これを支配したということはできない。 原告の上記主張は,到底採用することができない。 (2) 争点1-2(被告らが医療関係者を教唆して本件各発明を実施しているといえるか否か)について教唆をする者は,自らが発明を実施するわけではないし,前記(1)に判示したところに照らせば,被告らが,医師や薬剤師等の医療関係者を教唆したということもできない。 (3) したがって,被告らが被告ら各製剤を製造販売等することは,本件各特許権を侵害しない。 2 争点2(被告らが被告ら各製剤を製造販売等することが特許法101条2号に掲げる行為に該当するか否か)について (1) 特許法101条2号における「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは,特許請求の範囲に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念で,発明の構成要素以外にも,物の生産に用いられる道具,原料なども含まれ得るが,発明の構成要素であっても,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは,これに当たらない。 すなわち,それを用いることにより初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるようなもの,言い換えれば,従来技術の問題点を解決するための方法として,当該発明が新たに開示する,従来技術に見られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらすものが,これに該当すると解するのが相当である。そうであるから,特許請求の範囲に記載された部材,成分等であっても,課題解決のために当該発明が新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものに当たらないものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しない ,特許請求の範囲に記載された部材,成分等であっても,課題解決のために当該発明が新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものに当たらないものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しない。 (2) 証拠(甲5,7の1・2)によれば,本件各明細書の発明の詳細な説明には,次の記載があることが認められる。 ア発明の属する技術分野「本発明は,インスリン感受性増強剤とそれ以外の作用機序を有する他の糖尿病予防・治療薬とを組み合わせてなる医薬に関する。」(【0001】)イ従来の技術「近年,糖尿病の病態の解明が進み,それに対応する薬物の開発が進められた結果,次々と新しい作用機序をもった薬物が臨床の場に登場してきた。なかでも,インスリン感受性増強剤は,インスリン作用が障害を受けている受容体の機能を正常化する作用,すなわち,インスリン抵抗性解除剤とも言われるもので,脚光を浴びつつある。このインスリン感受性増強剤としては,ピオグリタゾンに代表される優れたインスリン感受性増強剤 が開発されている〔…〕。ピオグリタゾンは,障害を受けているインスリン受容体の機能を元に戻すことによって,糖輸送担体の細胞内局在性を正常化したり,グルコキナーゼ等の糖代謝の中心となる酵素系あるいはリポ蛋白リパーゼ等の脂質代謝関連酵素系を正常化する。その結果,インスリン抵抗性は解除され,耐糖能が改善されるのみならず,中性脂肪や遊離脂肪酸も低下する。このピオグリタゾンの作用は比較的緩徐であり,長期投与においても殆ど副作用がなく,肥満を伴うインスリン抵抗性の強いと思われる患者には極めて有効である。また,インスリン感受性増強剤であるCS-045,チアゾリジン誘導体または置換チアゾリジン誘導体とインスリンとを併用した報告がある(…)。しかしながら,本発明の と思われる患者には極めて有効である。また,インスリン感受性増強剤であるCS-045,チアゾリジン誘導体または置換チアゾリジン誘導体とインスリンとを併用した報告がある(…)。しかしながら,本発明の特定の組み合わせを有する医薬については知られていない。」(【0002】)ウ発明が解決しようとする課題「糖尿病は慢性の病気であり,かつその病態は複雑で,糖代謝異常と同時に脂質代謝異常や循環器系異常を伴う。その結果,病状は多種の合併症を伴って進行してゆく場合が多い。従って,個々の患者のそのときの症状に最も適した薬剤を選択する必要があるが,個々の薬剤の単独での使用においては,症状によっては充分な効果が得られない場合もあり,また投与量の増大や投与の長期化による副作用の発現など種々の問題があり,臨床の場ではその選択が困難な場合が多い。」(【0003】)エ課題を解決するための手段「本発明者らは上記した状況に鑑み,薬物の長期投与においても副作用が少なく,且つ多くの糖尿病患者に効果的な糖尿病予防・治療薬について鋭意研究を重ねた結果,インスリン感受性増強剤を必須の成分とし,さらにそれ以外の作用機序を有する他の糖尿病予防・治療薬を組み合わせることでその目的が達成されることを見いだし,本発明を完成した。」(【0004】) 「本発明に用いられるインスリン感受性増強剤は,障害を受けているインスリン受容体機能を元に戻し,インスリン抵抗性を解除し,その結果インスリンの感受性を増強する薬剤の総称であって,その具体例としては,例えば前記した一般式(Ⅰ)で表される化合物またはその薬理学的に許容しうる塩が挙げられる。」(【0005】)「一般式(Ⅰ)で示される化合物の好適な例としては,例えば…(一般名:ピオグリタゾン)…などが挙げ 般式(Ⅰ)で表される化合物またはその薬理学的に許容しうる塩が挙げられる。」(【0005】)「一般式(Ⅰ)で示される化合物の好適な例としては,例えば…(一般名:ピオグリタゾン)…などが挙げられる。一般式(Ⅰ)で示される化合物は,特に好ましくはピオグリタゾンである。」(【0025】)「一般式(Ⅱ)で示される化合物は,好ましくは一般式(Ⅲ)で示される化合物…であり,さらに好ましくはピオグリタゾンである。」(【0026】)「…前記した一般式(Ⅲ)で示される化合物の薬理学的に許容し得る塩は,好ましくは無機酸との塩であり,さらに好ましくは塩酸との塩である。 特にピオグリタゾンは塩酸塩として用いることが好ましい。」(【0027】)「本発明において,前述のインスリン感受性増強剤と組み合わせて用いられる薬剤としては,α-グルコシダーゼ阻害剤,…ビグアナイド剤…が挙げられる。α-グルコシダーゼ阻害剤は,アミラーゼ,マルターゼ,α-デキストリナーゼ,スクラーゼなどの消化酵素を阻害して,澱粉や蔗糖の消化を遅延させる作用を有する薬剤である。該α-グルコシダーゼ阻害剤の具体例としては,例えばアカルボース,N-(1,3-ジヒドロキシ-2-プロピル)バリオールアミン(一般名:ボグリボース),およびミグリトールなどが挙げられ,なかでもボグリボースが好ましい。…ビグアナイド剤は,嫌気性解糖促進作用,抹消でのインスリン作用増強,腸管からのグルコース吸収抑制,肝糖新生の抑制,脂肪酸酸化阻害などの作用を有する薬剤である。該ビグアナイド剤の具体例としては,例えばフェンホ ルミン,メトホルミン,ブホルミンなどが挙げられる。」(【0030】)「本発明において,一般式(Ⅱ)で示される化合物またはその薬理学的に許容し得る塩と組み合わせて用い ,例えばフェンホ ルミン,メトホルミン,ブホルミンなどが挙げられる。」(【0030】)「本発明において,一般式(Ⅱ)で示される化合物またはその薬理学的に許容し得る塩と組み合わせて用いられる薬剤としては,インスリン分泌促進剤および/またはインスリン製剤が挙げられる。インスリン分泌促進剤は,膵β細胞からのインスリン分泌促進作用を有する薬剤である。該インスリン分泌促進剤としては,例えばスルフォニル尿素剤(SU剤)が挙げられる。該スルフォニル尿素剤(SU剤)は,細胞膜のSU剤受容体を介してインスリン分泌シグナルを伝達し,膵β細胞からのインスリン分泌を促進する薬剤である。SU剤の具体例としては,例えば…グリベンクラミド(グリブリド)…グリメピリド(Hoe490)等が挙げられる。 …」(【0033】)「本発明において,特に一般式(Ⅱ)で示される化合物またはその薬理学的に許容しうる塩とインスリン分泌促進剤とを組み合わせてなる医薬が好ましい。ここにおいて,一般式(Ⅱ)で示される化合物またはその薬理学的に許容しうる塩は,特に好ましくはピオグリタゾンであり,インスリン分泌促進剤は,特に好ましくはグリベンクラミドである。」(【0034】)「本発明の,インスリン感受性増強剤とα-グルコシダーゼ阻害剤,アルドース還元酵素阻害剤,ビグアナイド剤,スタチン系化合物,スクアレン合成阻害剤,フィブラート系化合物,LDL異化促進剤およびアンジオテンシン変換酵素阻害剤の少なくとも一種とを組み合わせてなる医薬;および一般式(Ⅱ)で示される化合物またはその薬理学的に許容しうる塩とインスリン分泌促進剤および/またはインスリン製剤とを組み合わせなる医薬は,これらの有効成分を別々にあるいは同時に,生理学的に許容されうる担体,賦形剤,結合剤,希釈剤などと混合し 的に許容しうる塩とインスリン分泌促進剤および/またはインスリン製剤とを組み合わせなる医薬は,これらの有効成分を別々にあるいは同時に,生理学的に許容されうる担体,賦形剤,結合剤,希釈剤などと混合し,医薬組成物として経口 または非経口的に投与することができる。このとき有効成分を別々に製剤化した場合,別々に製剤化したものを使用時に希釈剤などを用いて混合して投与することができるが,別々に製剤化したものを,別々に,同時に,または時間差をおいて同一対象に投与してもよい。上記医薬組成物としては,経口剤として,例えば顆粒剤,散剤,錠剤,カプセル剤,シロップ剤,乳剤,懸濁剤等,非経口剤として,例えば注射剤(例,皮下注射剤,静脈内注射剤,筋肉内注射剤,腹腔内注射剤等),点滴剤,外用剤(例,経鼻投与製剤,経皮製剤,軟膏剤等),坐剤(例,直腸坐剤,膣坐剤等)等が挙げられる。これらの製剤は,製剤工程において通常一般に用いられる自体公知の方法により製造することができる。…」(【0035】)「本発明の医薬は,毒性も低く,哺乳動物(例,ヒト,マウス,ラット,ウサギ,イヌ,ネコ,ウシ,ウマ,ブタ,サル等)に対し,安全に用いられる。本発明の医薬の投与量は,個々の薬剤の投与量に準ずればよく,投与対象,投与対象の年齢および体重,症状,投与時間,剤形,投与方法,薬剤の組み合わせ等により,適宜選択することができる。例えばインスリン感受性増強剤は,成人1人当たり経口投与の場合,臨床用量である0. 01~10mg/kg体重(好ましくは0.05~10mg/kg体重,さらに好ましくは0.05~5mg/kg体重)の範囲で選択でき,…それらと組み合わせて用いる他の作用機序を有する薬剤も,それぞれ臨床上用いられる用量を基準として適宜選択することができる。投与回数は,一日1~3回 くは0.05~5mg/kg体重)の範囲で選択でき,…それらと組み合わせて用いる他の作用機序を有する薬剤も,それぞれ臨床上用いられる用量を基準として適宜選択することができる。投与回数は,一日1~3回が適当である。」(【0039】)「本発明の医薬において,薬剤の配合比は,投与対象,投与対象の年齢および体重,症状,投与時間,剤形,投与方法,薬剤の組み合わせ等により,適宜選択することができる。…本発明の医薬は,各薬剤の単独投与に比べて著しい増強効果を有する。例えば,遺伝性肥満糖尿病ウイスター・ファティー(Wistarfatty)ラットにおいて,2種の薬剤をそれぞれ単独 投与した場合に比較し,これらを併用投与すると高血糖あるいは耐糖能低下の著明な改善がみられた。したがって,本発明の医薬は,薬剤の単独投与より一層効果的に糖尿病時の血糖を低下させ,糖尿病性合併症の予防あるいは治療に適用しうる。また,本発明の医薬は,各薬剤の単独投与の場合と比較した場合,少量を使用することにより十分な効果が得られることから,薬剤の有する副作用(例,下痢等の消化器障害など)を軽減することができる。」(【0040】)オ発明の効果「本発明の医薬は,糖尿病時の高血糖に対して優れた低下作用を発揮し,糖尿病の予防及び治療に有効である。また,該医薬は高血糖に起因する神経障害,腎症,網膜症,大血管障害,骨減少症などの糖尿病性合併症の予防及び治療にも有効である。さらに,症状に応じて各薬剤の種類,投与法,投与量などを適宜選択すれば,長期間投与しても安定した血糖低下作用が期待され,副作用の発現も極めて少ない。」(【0045】)(3) 以上の本件各明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,2型糖尿病に対しては,個々の患者のそのときの症状に最も適した薬剤を選択する必要 期待され,副作用の発現も極めて少ない。」(【0045】)(3) 以上の本件各明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,2型糖尿病に対しては,個々の患者のそのときの症状に最も適した薬剤を選択する必要があるが,個々の薬剤の単独使用においては,症状により十分な効果が得られなかったり,投与量の増大や長期化により副作用が発現する等の問題があり,臨床の場でその選択が困難であったこと,本件各発明は,これを解決するために,インスリン感受性増強剤であり副作用のほとんどないピオグリタゾンと消化酵素を阻害して澱粉や蔗糖の消化を遅延させる作用を有するα-グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース,ボグリボース,ミグリトール),嫌気性解糖促進作用等を有するビグアナイド剤(フェンホルミン,メトホルミン,ブホルミン),膵β細胞からのインスリン分泌を促進するSU剤であるグリメピリドのいずれかとを組み合わせ,これにより,薬物の長期投与においても副作用が少なく,かつ多くの2型糖尿病患者に効果的な糖尿病の予防や治 療を可能にしたことが認められる。これによると,本件各発明が,個々の薬剤の単独使用における従来技術の問題点を解決するための方法として新たに開示したのは,ピオグリタゾンと本件各併用薬との特定の組合せであると認められる(ピオグリタゾンや本件各併用薬は,それ自体,本件各発明の国内優先権主張日より前から既に存在して2型糖尿病に用いられていたのであり,本件各発明がピオグリタゾンや本件各併用薬自体の構成や成分等を新たに開示したということができないのは当然である。)。 そうすると,ピオグリタゾン製剤である被告ら各製剤は,それ自体では,従来技術の問題点を解決するための方法として,本件各発明が新たに開示する,従来技術に見られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けて と,ピオグリタゾン製剤である被告ら各製剤は,それ自体では,従来技術の問題点を解決するための方法として,本件各発明が新たに開示する,従来技術に見られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらすものに当たるということはできないから,本件各発明の課題の解決に不可欠なものであるとは認められない。 (4) 原告は,ピオグリタゾンが公知であったとしても,これが「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当することを否定すべき理由はないし,ピオグリタゾンは,これを用いることによって本件各発明の課題を解決することができる重要な成分であり,ピオグリタゾンがなければ本件各併用薬との組合せという従来技術には見られない特徴的技術手段をもたらすことはできず,これを他の有効成分に置き換えることもできないから,当該手段を特徴付けている特有の成分に当たると主張する。 しかしながら,本件各発明は,ピオグリタゾンと本件各併用薬という,いずれも既存の物質を組み合わせた新たな糖尿病予防・治療薬の発明であり,このような既存の部材の新たな組合せに係る発明において,当該発明に係る組合せではなく,単剤としてや,既存の組合せに用いる場合にまで,既存の部材が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当すると解するとすれば,当該発明に係る特許権の及ぶ範囲を不当に拡張する結果をもたらすとの非難を免れない。このような組合せに係る特許製品の発明においては, 既存の部材自体は,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものに過ぎず,既存の部材が当該発明のためのものとして製造販売等がされているなど,特段の事情がない限り,既存の部材は,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しないと解するのが相当である たものに過ぎず,既存の部材が当該発明のためのものとして製造販売等がされているなど,特段の事情がない限り,既存の部材は,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しないと解するのが相当である。 被告ら各製剤の添付文書には,前記前提事実のとおり,【効能・効果】,【用法・用量】欄に,食事療法と運動療法,又は,食事療法と運動療法に加え,本件各併用薬等を使用する治療で十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定される2型糖尿病に対して被告ら各製剤が効能,効果を有することやそれらの場合における被告ら各製剤の用量や投与回数及び時期等についての記載があるほか,薬剤の併用投与の場合の注意事項等についての記載はあるが,本件各併用薬との併用投与を推奨するような記載や被告ら各製剤が本件各併用薬との組合せのためのものであるとの趣旨の記載はないから,添付文書の記載内容をもって,被告ら各製剤が本件各発明のためのものとして製造販売等されているということはできず,その他,特段の事情があることを認めるに足りる証拠はない。 原告の上記主張は,採用することができない。 (5) また,原告は,本件各発明により,ピオグリタゾンを他の糖尿病治療薬と組み合わせるまでは発揮されなかったところの従来技術(ピオグリタゾン単剤)に見られない物質属性を新たに見出したものであると主張する。 しかしながら,ピオグリタゾン自体は,本件各発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものであり,これが本件各発明のためのものとして製造販売等がされているなど,特段の事情があることは認められないから,被告ら各製剤は,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」であるということはできない。 原告の上記主張も,これを採用することはできない。 (6) したがって,被告ら められないから,被告ら各製剤は,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」であるということはできない。 原告の上記主張も,これを採用することはできない。 (6) したがって,被告らが被告ら各製剤を製造販売等することは,特許法101条2号に掲げる行為に該当しない。 3 以上によれば,原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく,全て理由がない。 4 よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官髙野輝久 裁判官三井大有 裁判官志賀勝 別紙当事者目録大阪市<以下略>両事件原告武田薬品工業株式会社(以下「原告」という。)上記平成23年(ワ)第19435号事件訴訟代理人弁護士国谷史朗長澤哲也重冨貴光古賀大樹高田真司黒田佑輝同訴訟復代理人弁護士長谷部 陽 平上記平成23年(ワ)第19436号事件訴訟代理人弁護士室谷和彦面谷和範山形県天童市<以下略>平成23年(ワ)第19435号事件被告日新製薬株式会社 室谷和彦面谷和範山形県天童市<以下略>平成23年(ワ)第19435号事件被告日新製薬株式会社(以下「被告日新製薬」という。)東京都台東区<以下略>平成23年(ワ)第19435号事件被告高田製薬株式会社(以下「被告高田製薬」という。)富山市<以下略>平成23年(ワ)第19435号事件被告 日医工株式会社(以下「被告日医工」という。)上記3名訴訟代理人弁護士新保克芳高崎 仁近藤元樹洞敬井上 彰酒匂禎裕東京都港区<以下略>平成23年(ワ)第19435号事件被告富士フイルムファーマ株式会社(以下「被告富士フイルムファーマ」という。)同訴訟代理人弁護士笹本 摂同訴訟代理人弁理士福本 積同訴訟復代理人弁護士向 多美子同補佐人弁理士田坂一朗東京都港区<以下略>平成23年(ワ)第19435号事件被告サンド株式会社(以下「被告サンド」という。) 朗東京都港区 平成23年(ワ)第19435号事件 被告サンド株式会社(以下「被告サンド」という。) 同訴訟代理人弁護士三村まり子 古島ひろみ 椙山敬士 曽根翼 片山史英 同補佐人弁理士森本敏明 東京都中央区 平成23年(ワ)第19435号事件 被告第一三共エスファ株式会社(以下「被告第一三共エスファ」という。) 同訴訟代理人弁護士増井和夫 橋口尚幸 齋藤誠二郎 名古屋市 旧商号大洋薬品工業株式会社 平成23年(ワ)第19435号事件 被告テバ製薬株式会社(以下「被告テバ製薬」という。) 同訴訟代理人弁護士吉原省三 小松勉 三輪拓也 上田敏成 同補佐人弁理士石井良夫 後藤さなえ 佐川冴子 金沢市 補佐人弁理士石井良夫 藤さなえ 佐川冴子 金沢市<以下略> 平成23年(ワ)第19435号事件 被告辰巳化学株式会社(以下「被告辰巳化学」という。) 同訴訟代理人弁護士久保精一郎 福井県あわら市<以下略> 平成23年(ワ)第19435号事件 被告小林化工株式会社(以下「被告小林化工」という。) 同訴訟代理人弁護士飯田秀郷 栗宇一樹 大友良浩 隈部泰正 和氣満美子 戸谷由布子 辻本恵太 林由希子 森山航洋 東京都新宿区<以下略> 平成23年(ワ)第19436号事件 被告持田製薬株式会社(以下「被告持田製薬」という。) 同訴訟代理人弁護士飯塚卓也 齋藤浩貴 辰野嘉則 別紙製剤目録以下の各販売名を有する製剤。 (被告 齋藤浩貴 辰野嘉則 別紙製剤目録以下の各販売名を有する製剤。 (被告日新製薬) 1 ピオグリタゾン錠15mg「NS」 2 ピオグリタゾン錠30mg「NS」 3 ピオグリタゾンOD錠15mg「NS」 4 ピオグリタゾンOD錠30mg「NS」 (被告高田製薬) 5 ピオグリタゾン錠15mg「タカタ」 6 ピオグリタゾン錠30mg「タカタ」 7 ピオグリタゾンOD錠15mg「タカタ」 8 ピオグリタゾンOD錠30mg「タカタ」 (被告富士フイルムファーマ) 9 ピオグリタゾン錠15mg「FFP」 10 ピオグリタゾン錠30mg「FFP」 11 ピオグリタゾンOD錠15mg「FFP」 12 ピオグリタゾンOD錠30mg「FFP」 (被告サンド) 13 ピオグリタゾン錠15mg「サンド」 14 ピオグリタゾン錠30mg「サンド」 (被告第一三共エスファ) 15 ピオグリタゾン錠15mg「DSEP」 16 ピオグリタゾン錠30mg「DSEP」 17 ピオグリタゾンOD錠15mg「DSEP」 18 ピオグリタゾンOD錠30mg「DSEP」 (被告テバ製薬) 19 ピオグリタゾン錠15mg「タイヨー」 20 ピオグリタゾン錠30mg「タイヨー」 21 ピオグリタゾンOD錠15mg「テバ」 22 ピオグリタゾンOD錠30mg「テバ」 (被告日医工) 23 ピオグリタゾン錠15mg「日医工」 24 ピオグリタゾン錠30mg「日医工」 25 ピオグリタゾンOD錠15mg「日医工」 26 ピオグリタゾンOD錠30mg「日医工」 (被告辰巳化学) 27 ピオグリタゾン錠15mg「辰巳」 「日医工」 24 ピオグリタゾン錠30mg「日医工」 25 ピオグリタゾンOD錠15mg「日医工」 26 ピオグリタゾンOD錠30mg「日医工」(被告辰巳化学) 27 ピオグリタゾン錠15mg「TCK」 28 ピオグリタゾン錠30mg「TCK」 29 ピオグリタゾンOD錠15mg「TCK」 30 ピオグリタゾンOD錠30mg「TCK」(被告小林化工) 31 ピオグリタゾン錠15mg「MEEK」 32 ピオグリタゾン錠30mg「MEEK」 33 ピオグリタゾンOD錠15mg「MEEK」 34 ピオグリタゾンOD錠30mg「MEEK」(被告持田製薬) 35 ピオグリタゾン錠15mg「モチダ」 36 ピオグリタゾン錠30mg「モチダ」 別紙医薬品目録 1 アカルボース,ボグリボース又はミグリトールを含む医薬品 2 ビグアナイド剤を含む医薬品 3 グリメピリドを含む医薬品 別紙引用例目録 1 「経口糖尿病薬-新薬と新しい治療プラン-」(綜合臨牀vol.43,no.11・2615~2621頁。平成6年11月刊行。乙丙共2-4,乙G4,丙11) 2 「経口血糖降下剤の選択と用い方」(糖尿病UP-DATE 10・68~77頁。平成6年4月刊行。乙A4,乙B9,乙E8,丙15) 3 「NIDDMの新しい治療薬」(TherapeuticResearchvol.14 no.10・4122~4126頁。平成5年10月刊行。乙丙共2-3,乙G3,丙10) 4 「UsingtheOralHypoglycemicAgents」(TheEndocrinologistVol.3no.5・321~329頁。1993年刊行。乙B8,乙C24,乙D14,乙E13) 5 「インスリン感受性 oglycemicAgents」(TheEndocrinologistVol.3no.5・321~329頁。1993年刊行。乙B8,乙C24,乙D14,乙E13) 5 「インスリン感受性改善剤,AD-4833(pioglitazone)のSU剤との併用試験(糖尿病第37巻臨時増刊号・413頁。平成6年4月刊行。乙A11,乙B7,乙C15,乙E9,丙16) 6 「新しい経口血糖降下剤CS-045のインスリン非依存性糖尿病患者に対する初期第Ⅱ相治験成績」(臨床医薬9巻Suppl.3・3~18頁。平成5年7月刊行。乙C25,乙D16,乙G12) 7 「新しい経口血糖降下薬CS-045のインスリン非依存糖尿病患者に対するSU剤との併用投与における臨床評価-プラセボを対照薬とした二重盲検比較試験-」(臨床医薬第9巻Suppl.3・95~126頁。平成5年7月刊行。 乙A7,乙B11,乙C19,丙18) 別紙 別紙 別紙

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