令和7(行ケ)10076 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和8年1月22日 知的財産高等裁判所 1部 判決 請求棄却
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判決文本文18,628 文字)

- 1 -令和8年1月22日判決言渡令和7年(行ケ)第10076号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和7年11月26日判決 原告中日本高速道路株式会社 同訴訟代理人弁護士前田泰志同訴訟代理人弁理士宮部岳志 被告有限会社PXZ 同訴訟代理人弁護士鷹見雅和同訴訟代理人弁理士森 哲也田中秀喆 渋谷智子坂田 樹主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2024-800108号事件について令和7年6月27日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 本件は、原告が、特許無効審判請求を不成立とした審決の取消しを求める事案 - 2 -である。 1 特許庁における手続の経緯等(証拠を掲記していない事実は、当事者間に争いがないか、又は当裁判所に顕著である。)(1) 本件特許被告代表者は、平成16年9月13日にした特許出願(特願2004-30 0749号)を最初の原出願とする第7世代の分割特許出願(以下、分割特許出願を単に「分割出願」という。)として、平成28年4月4日に特許出願(特願2016-75107号。以下「本件出願」という。)をし、平成29年6月16日、特許権の設定登録(特許第6159845号、請求項の数2。以下、この特許を「本件特許」といい、本件特許に係る特許権を「本件特許権」とい う。)を受けた。被告は、本件特許権の特許権者である。 本件出願に係る最初の原出願からの分割出願の経緯は、次表のとおりである(以下、各出願を次表の「出願」欄記載のとお 権を「本件特許権」とい う。)を受けた。被告は、本件特許権の特許権者である。 本件出願に係る最初の原出願からの分割出願の経緯は、次表のとおりである(以下、各出願を次表の「出願」欄記載のとおり呼称する。)。 出願出願日特許出願番号最初の原出願平成16年9月13日特願2004-300749号(甲7)第1世代分割出願平成20年11月28日特願2008-303530号(甲12)第2世代分割出願平成23年12月28日特願2011-287837号第3世代分割出願平成25年2月12日特願2013-24483号(甲11)第4世代分割出願平成26年4月23日特願2014-89069号(甲10)第5世代分割出願平成26年12月2日特願2014-243621号(甲9)第6世代分割出願平成27年5月13日特願2015-98590号(甲8)本件出願平成28年4月4日特願2016-75107号(乙2)(2) 本件審決原告は、令和6年9月17日、本件特許につき無効審判請求をした(無効2 024-800108号事件)。 特許庁は、令和7年6月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との - 3 -審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年7月3日、原告に送達された。 原告は、令和7年8月4日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載(本件各発明)本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、次のとおりである (乙2。以下、請求項1記載の発明を「本件発明1」、請求項2記載の発明を「本件発明2」といい、併せて「本件各発明」という。なお、本件発明1につき、原告が審判手続においてした分説に従って である (乙2。以下、請求項1記載の発明を「本件発明1」、請求項2記載の発明を「本件発明2」といい、併せて「本件各発明」という。なお、本件発明1につき、原告が審判手続においてした分説に従ってA~Lの符号を付した。以下、各構成要件を同符号に応じて「構成要件A」などという。)。 【請求項1】(本件発明1) A 有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに設置されている、ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステムであって、B 前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに出入りをする車両を検知する第1の検知手段と、 C 前記第1の検知手段に対応して設置された第1の遮断機と、D 車両に搭載されたETC車載器とデータを通信する通信手段と、E 前記通信手段によって受信したデータを認識して、ETCによる料金徴収が可能か判定する判定手段と、F 前記判定手段により判定した結果に従って、ETCによる料金徴収が可能 な車両を、ETCゲートを通って前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入る、または前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアから出るルートへ通じる第1のレーンへ誘導し、GETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる第2のレーンへ誘導する H 誘導手段と、を備え、 - 4 -I 前記誘導手段は、前記第1のレーンに設けられた第2の遮断機と、前記第2のレーンに設けられた第3の遮断機と、を含み、J さらに、前記第2の遮断機を通過した車両を検知する第2の検知手段と、前記第3の遮断機を通過した車両を検知する第3の検知手段と、を備え、K 前記第1の検知手段により車両 3の遮断機と、を含み、J さらに、前記第2の遮断機を通過した車両を検知する第2の検知手段と、前記第3の遮断機を通過した車両を検知する第3の検知手段と、を備え、K 前記第1の検知手段により車両の進入が検知された場合、前記車両が通過 した後に、前記第1の遮断機を下ろし、L 前記第2の検知手段により車両の通過が検知された場合、前記車両が通過した後に、前記第2の遮断機を下ろすことを特徴とする車両誘導システム。 【請求項2】(本件発明2) 請求項1のシステムにおいて、さらに、前記第3の検知手段により車両の通過が検知された場合、前記車両が通過した後に、前記第3の遮断機を下ろすことを特徴とする車両誘導システム。 3 本件審決の理由の要旨(1) 原告が主張した無効理由 本件発明1の構成要件Bに含まれる事項のうち、「有料道路料金所から出る車両を検知する手段」、「サービスエリアに入る車両を検知する第1の検知手段」、「パーキングエリアに入る車両を検知する第1の検知手段」、「サービスエリアから出る車両を検知する第1の検知手段」及び「パーキングエリアから出る車両を検知する第1の検知手段」は、いずれも、第4世代分割出願の願書に 最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(甲10。以下、併せて「当初明細書等」といい、その段落番号等を〔〕で示す。)に記載されておらず、新たな事項を追加するものである。 また、本件発明1の構成要件Fに含まれる事項のうち、「ETCゲートを通って有料道路料金所に入るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを通 って有料道路料金所から出るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを - 5 -通ってサービスエリアに入るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを通ってパー ゲートを通 って有料道路料金所から出るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを - 5 -通ってサービスエリアに入るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを通ってパーキングエリアに入るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを通ってサービスエリアから出るルートへ通じる第1のレーン」及び「ETCゲートを通ってパーキングエリアから出るルートへ通じる第1のレーン」は、いずれも、当初明細書等に記載されておらず、新たな事項を追加するものであ る。 以上のとおり、本件出願は、新たな事項を追加した分割要件違反があるから、特許法44条2項による出願日遡及の効果を受け得ず、その出願日は第5世代分割出願の出願日である平成26年12月2日となる。そうすると、本件各発明は、同日前に公開された甲7(最初の原出願の特許掲載公報)に記載された 発明と同一であるから、本件特許は、特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきものである。 (2) 構成要件Bに含まれる事項が当初明細書等に記載されているかア 「有料道路料金所から出る車両を検知する手段」 当初明細書等には、車両が一般道路8から有料道路7に向かって進行し、その間に料金所9が設けられている入口料金所において、車両検知装置2aが設けられ、これが車両の進入を検知すると、遮断機1を閉じることが記載されている(〔0031〕~〔0033〕、〔0040〕、〔図3〕)。また、これにより進入車両の不法な逆方向走行を阻止する効果が得られることが記載 されている(〔0046〕)。ここで、車両検知装置2aが「第1の検知装置」に対応することは明らかである。 そして、当初明細書等には、車両が有料道路7から一般道路8 る効果が得られることが記載 されている(〔0046〕)。ここで、車両検知装置2aが「第1の検知装置」に対応することは明らかである。 そして、当初明細書等には、車両が有料道路7から一般道路8に向かって進行し、その間に料金所9が設けられている出口料金所において、車両検知装置2aが設けられ、これが車両の進入を検知すると、遮断機1を閉じるこ とが記載されている(〔0047〕~〔0050〕、〔図6〕)。また、「同じ効 - 6 -果」(進入車両の不法な逆方向走行の阻止)が得られることが明らかである。 構成要件Bにおける「有料道路料金所から出る」ことは、「有料道路料金所に入る」ことと逆であるから、「有料道路料金所から出る車両を検知する手段」は、当初明細書等の〔0047〕から〔0050〕まで及び〔図6〕に示されている車両検知装置2aに対応していると解するのが自然である。 したがって、「有料道路料金所から出る車両を検知する手段」は、当初明細書に記載されている。 イ 「サービスエリア又はパーキングエリアに入る車両を検知する手段」及び「サービスエリア又はパーキングエリアから出る車両を検知する手段」当初明細書等には、一般道路8から有料道路7との間に、パーキングエリ ア又はサービスエリア11が設けられ、入口料金所12と出口料金所13があること、これらのレーンの各役割は、図3、4、6、7と同じであることが記載されている(〔0064〕)。同記載が参照する〔図11〕には、2aと1が記載され、それぞれ車両検知装置2aと遮断機1を示し、上記アに述べたのと同様の効果が得られることが明らかである。 入口料金所12の車両検知装置2aは、パーキングエリア又はサービスエリア11に入ろうとする車両を検知するものであり、出口料金所13の アに述べたのと同様の効果が得られることが明らかである。 入口料金所12の車両検知装置2aは、パーキングエリア又はサービスエリア11に入ろうとする車両を検知するものであり、出口料金所13の車両検知装置2aは、パーキングエリア又はサービスエリア11から出ようとする車両を検知するものであることは明らかである。 したがって、「サービスエリア又はパーキングエリアに入る車両を検知す る手段」及び「サービスエリア又はパーキングエリアから出る車両を検知する手段」は、いずれも当初明細書等に記載されている。 (3) 構成要件Fに含まれる事項が当初明細書等に記載されているかア 「ETCゲートを通って前記有料道路料金所に入るルートへ通じる第1のレーン」及び「ETCゲートを通って前記有料道路料金所から出るルートへ 通じる第1のレーン」 - 7 -当初明細書等の〔0031〕から〔0034〕まで及び〔図3〕には、入口料金所において、通信可能か否かを判定し、通信可能であれば、誘導装置4-1が開き、車両検知装置2cの側を通り、路側アンテナ(ETCゲート)5から有料道路7へ進むことが示されている。 当初明細書等の〔0047〕から〔0050〕まで及び〔図6〕には、出 口料金所において、通信可能か否かを判定し、通信可能であれば、誘導装置4-1が開きレーンDに進むことと、路側アンテナ(ETCゲート)5が示されている。出口料金所の路側アンテナ(ETCゲート)5は、〔図6〕において、出口料金所から出るルート上に設けられているから、「ETCゲートを通って前記有料道路料金所から出るルートへ通じる第1のレーン」の「E TCゲート」に対応し、誘導装置4-1は、「第1のレーン」に誘導するものに対応する。したがって、「ETCゲートを通って前 を通って前記有料道路料金所から出るルートへ通じる第1のレーン」の「E TCゲート」に対応し、誘導装置4-1は、「第1のレーン」に誘導するものに対応する。したがって、「ETCゲートを通って前記有料道路料金所から出るルート」は、〔図6〕における誘導装置4-1から路側アンテナ(ETCゲート)5までの区間に対応し、「…へ通じる第1のレーン」は、〔図6〕における車両検知装置2bから誘導装置4-1までの区間に対応すると解す るのが自然である。 ここで、「前記有料道路料金所に入る」ことは、「前記有料道路料金所から出る」ことと逆であるから、入口料金所の構成も、出口料金所の構成と同様に記載されているとみることができる。この点について、「ETCゲートを通って前記有料道路料金所に入るルート」とは、文言上、ETCゲートの先 に有料道路料金所の入口があることを意味するものとも解し得るが、ETCゲートは有料道路の入口料金所等に設けられる設備であることからして、その先に他の有料道路料金所の入口が存在することは通常あり得ないことである。よって、「ETCゲートを通って前記有料道路料金所に入るルート」は、〔図3〕における誘導装置4-1から路側アンテナ(ETCゲート)5ま での区間に対応し、「…へ通じる第1のレーン」は、〔図3〕における車両検 - 8 -知装置2bから誘導装置4-1までの区間に対応すると解するのが自然である。 したがって、「ETCゲートを通って前記有料道路料金所に入るルートへ通じる第1のレーン」及び「ETCゲートを通って前記有料道路料金所から出るルートへ通じる第1のレーン」は、いずれも当初明細書等に記載されて いる。 イ 「ETCゲートを通ってサービスエリア又はパーキングエリアに入るルートへ通じる第1のレーン 有料道路料金所から出るルートへ通じる第1のレーン」は、いずれも当初明細書等に記載されて いる。 イ 「ETCゲートを通ってサービスエリア又はパーキングエリアに入るルートへ通じる第1のレーン」及び「ETCゲートを通ってサービスエリア又はパーキングエリアから出るルートへ通じる第1のレーン」当初明細書等には、一般道路8から有料道路7との間に、パーキングエリ ア又はサービスエリア11が設けられ、入口料金所12と出口料金所13があること、これらのレーンの各役割は、図3、4、6、7のそれと同じであることが記載されている(〔0064〕)。同記載が参照する〔図11〕には、4-1、4-2及び5が記載され、これらが誘導装置4-1、4-2、路側アンテナ(ETCゲート)5に対応することは明らかである。 したがって、「ETCゲートを通ってサービスエリア又はパーキングエリアに入るルートへ通じる第1のレーン」及び「ETCゲートを通ってサービスエリア又はパーキングエリアから出るルートへ通じる第1のレーン」は、いずれも当初明細書等に記載されている。 (4) 結論 以上のとおり、構成要件B及びFに含まれる事項は、いずれも当初明細書等に記載されているため、本件特許の出願日が、第5世代分割出願の出願日である平成26年12月2日であるとする根拠はない。したがって、甲7は、本件特許の出願日前に公開されたものとはいえない。 よって、本件特許が特許法29条1項3号の規定に違反して特許されたとい うことはできない。 - 9 -第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(分割要件違反を前提とする新規性判断の誤り)(1) 構成要件Bに含まれる事項が当初明細書等に記載されているとした誤り当初明細書等における発明が解決すべき課題 主張の審決取消事由 1 取消事由1(分割要件違反を前提とする新規性判断の誤り)(1) 構成要件Bに含まれる事項が当初明細書等に記載されているとした誤り当初明細書等における発明が解決すべき課題の記載等によると、本件各発明は「料金所」内で発生する課題を解決しようとするものであるから、請求項の 記載は、料金所を起点に解釈されるべきである。〔図6〕の出口料金所9における車両検知装置2aは、出口料金所9に「入る」車両を検知するものであって、「有料道路料金所から出る」車両を検知するものではない。したがって、当初明細書等には、「有料道路料金所から出る車両を検知する手段」は記載されていない。 次に、本件審決は、〔図11〕の入口料金所12の車両検知装置2aが「サービスエリア等に入る車両を検知する手段」に、出口料金所13の車両検知装置2aが「サービスエリア等から出る車両を検知する手段」に、それぞれ対応するとするが、上記のとおり、本件各発明は「料金所」内で発生する課題を解決しようとするものであることからすると、車両検知装置2aは、「ETC車専 用レーンへの車両の進入を検知するもの」と解釈するほかはなく、本件審決のように解する余地はない。 したがって、「有料道路料金所から出る車両を検知する手段」、「サービスエリア又はパーキングエリアに入る車両を検知する手段」及び「サービスエリア又はパーキングエリアから出る車両を検知する手段」が当初明細書等に記載さ れているとした本件審決の認定は誤っている。 (2) 構成要件Fに含まれる事項が当初明細書等に記載されているとした誤り本件審決は、ETCゲートが有料道路の入口料金所等に設けられる設備であることからすれば、その先に他の有料道路料金所の入口が存在することは通常あり得ないとか、「前記有 書等に記載されているとした誤り本件審決は、ETCゲートが有料道路の入口料金所等に設けられる設備であることからすれば、その先に他の有料道路料金所の入口が存在することは通常あり得ないとか、「前記有料道路料金所に入ることは前記有料道路料金所から 出ることと逆である」などとして、「ETCゲートを通って前記有料道路料金 - 10 -所に入るルート」が〔図3〕における誘導装置4-1から路側アンテナ(ETCゲート)5までの区間に対応し、「…へ通じる第1のレーン」は〔図3〕における車両検知装置2bから誘導装置4-1までの区間に対応すると解するのが自然であるなどとした。 しかし、発明は新規なものであるから、発明特定事項を技術常識に基づいて 解釈すべきではないし、実際、ETCゲートの先に料金所が設けられている例(甲14)もあるから、「通常あり得ない」という前提自体がなく、本件審決による認定は誤っている。また、特許請求の範囲の文理からして、「ETCゲートを通って何らかの施設に入る」場合、ETCゲートの先に当該施設が存在することになるが、「ETCゲートを通って何らかの施設から出る」場合には、 ETCゲートの手前に当該施設が存在することになるため、これらを「逆」の関係にあるということもできない。 次に、当初明細書等の記載によると、本件各発明は、一般車や路側アンテナと正常に通信ができない車両を誘導することを目的とする発明であり、その具体的手段として、実施例にいう「再進入レーンE」が、これらの車両を誘導す るために設けられている。〔図3〕及び〔図6〕における誘導装置4-1から路側アンテナ(ETCゲート)5までの区間は、従来も存在していたルートにほかならず、一般車や路側アンテナと正常通信ができない車両の誘導に供されるものではな 3〕及び〔図6〕における誘導装置4-1から路側アンテナ(ETCゲート)5までの区間は、従来も存在していたルートにほかならず、一般車や路側アンテナと正常通信ができない車両の誘導に供されるものではないから、これらはそれぞれ「有料道路7へ進むルート」及び「一般道路8へ進むルート」と解するのが自然であって、本件審決がしたような異な る解釈の余地はないというべきである。このことは、スマートインターチェンジに関する〔図11〕の記載についても同様である。 したがって、「ETCゲートを通って前記有料道路料金所に入るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを通って前記有料道路料金所から出るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを通ってサービスエリア又はパーキ ングエリアに入るルートへ通じる第1のレーン」及び「ETCゲートを通って - 11 -サービスエリア又はパーキングエリアから出るルートへ通じる第1のレーン」が当初明細書等に記載されているとした本件審決の認定は誤っている。 (3) 新規性判断の誤り上記(1)及び(2)のとおり、本件各発明は、当初明細書等に記載されたものではないから、本件特許の出願日は、第5世代分割出願の出願日である平成26 年12月2日であるとすべきである。 そして、同日より前に発行された甲7(最初の原出願に係る特許の特許公報)には、本件各発明の構成要件Fの「第1のレーン」及び同Gの「第2のレーン」以外の全ての発明特定事項が記載されている上、本件審決をした審判官3名及び別件の特許権侵害訴訟に関与した裁判官4名の解釈によると、構成要件Fの 「第1のレーン」は、同構成要件中の「ルート」と同義であるというのである。 そうすると、上記7名にとっては、同様の類推解釈により構成要件Gの「第2のレーン 判官4名の解釈によると、構成要件Fの 「第1のレーン」は、同構成要件中の「ルート」と同義であるというのである。 そうすると、上記7名にとっては、同様の類推解釈により構成要件Gの「第2のレーン」も甲7に記載されていることとなる。 したがって、本件各発明は、その出願日(平成26年12月2日)の前に、少なくとも上記7名によって公然知られ得る状態にあったというべきである から、特許法29条1項1号又は3号により、特許を受けることができないものである。 これと異なる本件審決の判断は誤っている。 2 取消事由2(手続違背)原告は、審判手続において、当初、新規性欠如の根拠条文として特許法29条 1項1号を掲げていた。しかし、審判長が、甲7(最初の原出願に係る特許の特許公報)は刊行物であるとの認識を示し、根拠条文を同項3号と読み替えて差し支えないかと誘導したため(甲6)、原告はこれに応じた。ところが、本件審決は、甲7の内容を全く検討しておらず、原告がそのような読替えに応じる必要はなかったことが明らかとなった。 原告としては、上記1のとおり、本件各発明は、その出願日前に公知となった - 12 -発明と主張するものである。それにもかかわらず、審判官が、原告に根拠条文の読み替えを誘導してこれに応じさせた上、不成立審決をしたことは、不公正であって違法というべきである。 したがって、本件審決には取り消されるべき違法がある。 第4 被告の反論 1 取消事由1(分割要件違反を前提とする新規性判断の誤り)に対して(1) 構成要件Bに含まれる事項について原告は、あたかも「有料道路料金所」という施設があって、これに出入りすることが構成要件Bに含まれる事項であるという前提に立っているが、そのような解釈は、本件各発明 構成要件Bに含まれる事項について原告は、あたかも「有料道路料金所」という施設があって、これに出入りすることが構成要件Bに含まれる事項であるという前提に立っているが、そのような解釈は、本件各発明の技術思想を理解せず、一般常識的な文言解釈からも かけ離れている。 すなわち、自動車を運転する者にとって、「有料道路料金所に入る」とは「有料道路に乗り入れるために有料道路料金所を通過すること」をいい、「有料道路料金所から出る」とは「有料道路から一般道路に出るために有料道路料金所を通過すること」をいうことは常識であり、日常的に用いる表現でもある。加 えて、本件特許に係る明細書及び図面(乙2。以下「本件明細書等」といい、その段落番号等を【】で示す。)には、入口料金所及び出口料金所で使用するETCシステムを利用した車両誘導システムが記載され、また、その応用例としてスマートインターチェンジ(サービスエリア又はパーキングエリアを介して有料道路に乗り入れ又は降りることのできるインターチェンジ)について、実 施例を交えて詳細な説明が記載されている。 これらのことからして、本件各発明においては、有料道路の入口料金所を通過しようとすることを「有料道路料金所に入る」と、有料道路の出口料金所を通過しようとすることを「有料道路料金所から出る」という各表現を用いて特許請求の範囲が記載されていることは明らかであり、これはサービスエリア又 はパーキングエリアへの出入りについても同様である。 - 13 -以上のとおり、本件明細書等の記載に基づいて構成要件Bを解釈することができるところ、当初明細書等の記載は、本件明細書等の記載と実質的に異なるところはない。 したがって、構成要件Bに含まれる事項は、当初明細書等に記載されたものであるとい て構成要件Bを解釈することができるところ、当初明細書等の記載は、本件明細書等の記載と実質的に異なるところはない。 したがって、構成要件Bに含まれる事項は、当初明細書等に記載されたものであるといえる。 (2) 構成要件Fに含まれる事項について原告は、構成要件Fに含まれる「ETCゲートを通って前記有料道路料金所に入るルート」及び「ETCゲートを通って前記有料道路料金所から出るルート」という事項について、「ETCゲート」と「前記有料道路料金所」との位置関係を規定しているという前提に立っているが、そのような解釈は誤っている。 すなわち、前記(1)のとおり、「有料道路料金所に入る」とは「有料道路に乗り入れるために有料道路料金所を通過すること」をいい、「有料道路料金所から出る」とは「有料道路から一般道路に出るために有料道路料金所を通過すること」をいうことは、常識的にも、また本件明細書等の記載からも明らかである。そうすると、本件各発明においては、「ETCゲートを通って有料道路料 金所に入る」とは、「入口料金所を通過するに際してETCゲートを通る」という意味にすぎず、原告が主張するようにETCゲートの先に有料道路料金所がなくてはならないというものではない。このことは、出口料金所を通過する場合や、サービスエリア又はパーキングエリアへの出入りについても同様である。 当初明細書等の記載のうち、入口料金所での実施例に関する〔図3〕を例にすると、誘導装置4-1よりも先の部分が「ETCゲートを通って前記有料道路料金所…に入る…ルート」に相当し、誘導装置4-1の手前の部分は、このルートに通じているから「第1のレーン」に相当する。これらの事項は、いずれも当初明細書等に記載されたものである。このことは、出口料金所に関する 」に相当し、誘導装置4-1の手前の部分は、このルートに通じているから「第1のレーン」に相当する。これらの事項は、いずれも当初明細書等に記載されたものである。このことは、出口料金所に関する 〔図6〕、スマートインターチェンジに関する〔図11〕についても同様に妥 - 14 -当する。 したがって、構成要件Fに含まれる事項は、当初明細書等に記載されたものであるといえる。 (3) 新規性判断の誤りとの点について上記(1)及び(2)のとおり、本件各発明は、当初明細書等に記載されたもので あるから、本件出願は、最初の原出願の出願日である平成16年9月13日にされたものとみなされる(特許法44条2項本文)。したがって、平成21年12月9日に発行された甲7に記載された事項に基づいて新規性欠如をいう原告の主張は、前提を欠くものである。 原告は、本件各発明が、本件審決をした審判官3名及び別件の特許権侵害訴 訟に関与した裁判官4名によって公然知られ得る発明になったと主張するが、審判官や裁判官が主引用例である甲7に接したのは、無効審判が請求された日(令和6年9月17日)や別件の侵害訴訟が提起された日(令和5年2月21日)よりも後であるから、これらの者により公然知られたことを無効理由とする原告の主張は失当である。 2 取消事由2(手続違背)に対して原告は、審判官の要請に応じて、自らの判断で新規性欠如の根拠条文を特許法29条1項1号から同項3号に読み替えて差し支えない旨を述べたのであるから、審判手続に違法はない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(分割要件違反を前提とする新規性判断の誤り)について(1) 構成要件Bに含まれる事項が当初明細書等に記載されているかア原告は、当初明細書等には、構成要件 裁判所の判断 1 取消事由1(分割要件違反を前提とする新規性判断の誤り)について(1) 構成要件Bに含まれる事項が当初明細書等に記載されているかア原告は、当初明細書等には、構成要件Bのうち「有料道路料金所から出る車両を検知する手段」、「サービスエリア又はパーキングエリアに入る車両を検知する手段」及び「サービスエリア又はパーキングエリアから出る車両を 検知する手段」が記載されていない旨主張する。 - 15 -そこで検討すると、まず、本件各発明に係る特許請求の範囲の記載においては、本件各発明は、「有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに設置されている、ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステム」(構成要件A)であるとされ、これを受けた構成要件Bでは、「前記」として、「有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリア に出入りをする車両」を検知する検知手段を規定している。このような特許請求の範囲の記載からすると、本件各発明における「出入りをする車両」とは、構成要件Aに規定するような、「ETC車専用出入口」を通過して、有料道路、サービスエリア又はパーキングエリアと、一般道路との間を「出入り」しようとする車両を意味すると解するのが自然である。 このような解釈は、本件明細書等の記載からも裏付けることができる。 すなわち、課題を解決する手段に係る段落には、「本発明に係る車両誘導システムは、ETC車載器搭載車が一般道路と有料道路との出入りをする時に、ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステムであって、一般道路と有料道路との出入りをする車両を検知する検知手段」(【001 7】)と記載され、車両の出入りが一般道路と有料道路との出入りであって、その際、ETC車 車両を誘導するシステムであって、一般道路と有料道路との出入りをする車両を検知する検知手段」(【001 7】)と記載され、車両の出入りが一般道路と有料道路との出入りであって、その際、ETC車専用出入口を通過する旨が示されている。 また、実施例に係る段落には、「入口料金所」に関する実施例が記載され(【0031】~【0046】、【図3】~【図5】)、そこでは「車両は、一般道路8から有料道路7向かって進行し、その間に料金所9が設けられてい る。」(【0032】)とか、「路側アンテナ(ETCゲート)5から車載器に対する入口情報を受信して、車両は有料道路7へと進むことが出来る。」(【0034】)などとして、一般道路から有料道路に進むに際して路側アンテナ(ETCゲート)を通過する態様が記載されているし、「出口料金所」に関する実施例も記載され(【0047】~【0053】、【図6】~【図8】)、「車 両は、有料道路7から一般道路8向かって進行し、その間に料金所9が設け - 16 -られている。」(【0048】)とか、「図6の出口料金所用のETCシステム利用車両誘導システムは、基本的に、図3、4のそれと同じである。」(【0049】)などと、上記入口料金所での通過態様の裏返しとして、有料道路から一般道路に進むに際して路側アンテナ(ETCゲート)を通過する態様が記載されている。さらに、スマートインターチェンジ、すなわちサービスエ リア又はパーキングエリアにETCゲートを設置して一般道と接続する、ETC車専用のインターチェンジ(料金所)についても、同様の構成が同様の役割を果たし得ることが記載されている(【0063】~【0065】、【図11】)。そして、一般に、「入口」を通過することを「入る」と、「出口」を通過することを「出る )についても、同様の構成が同様の役割を果たし得ることが記載されている(【0063】~【0065】、【図11】)。そして、一般に、「入口」を通過することを「入る」と、「出口」を通過することを「出る」と表現することは、慣用されているといえる。 以上によると、構成要件Bの「前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに出入りをする車両を検知する第1の検知手段」とは、一般道路から有料道路、サービスエリア若しくはパーキングエリアに「入る」ために、又は、有料道路、サービスエリア若しくはパーキングエリアから一般道路に「出る」ために、ETC車専用出入口を通過しようとする車両を検 知する検知手段をいうと解するのが相当である。 そして、このような検知手段としては、本件明細書等において、入口料金所につき【0033】及び【図4】に、出口料金所につき【0050】及び【図6】に、スマートインターチェンジにつき【図11】に、それぞれ記載されている2a(車両検知装置)がこれに相当するということができる。 これらの点に関し、当初明細書等の記載は、本件明細書等の記載と実質的に異なるところはないから、構成要件Bに記載された事項は、当初明細書等にも記載されているということができる。 イ原告は、本件各発明は「料金所」内で発生する課題を解決しようとするものであるから、請求項の記載は、料金所を起点に解釈されるべきであると主 張する。 - 17 -しかし、発明の要旨を認定するに際して、発明特定事項が、課題が発生する場所を起点に位置関係等を規定したものと常に解釈すべきとする根拠はない。発明の要旨は、特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきところ、特許請求の範囲から導かれる自然な構成要件Bの解釈は上記アのとおりである。本件明細 係等を規定したものと常に解釈すべきとする根拠はない。発明の要旨は、特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきところ、特許請求の範囲から導かれる自然な構成要件Bの解釈は上記アのとおりである。本件明細書等の記載も、上記解釈を裏付けているというべきである。 本件各発明が料金所内で発生する課題を解決しようとするものであるとしても、それは、上記と異なる解釈をすべき理由とはならない。原告の主張は採用することができない。 (2) 構成要件Fに含まれる事項が当初明細書等に記載されているかア原告は、当初明細書等には、構成要件Fのうち「ETCゲートを通って前 記有料道路料金所に入るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを通って前記有料道路料金所から出るルートへ通じる第1のレーン」、「ETCゲートを通ってサービスエリア又はパーキングエリアに入るルートへ通じる第1のレーン」及び「ETCゲートを通ってサービスエリア又はパーキングエリアから出るルートへ通じる第1のレーン」が記載されていない旨主張す る。 そこで検討すると、前記(1)アのとおり、本件明細書等の記載によると、本件各発明における「出入りをする車両」とは、構成要件Aに規定するような、「ETC車専用出入口」を通過して、有料道路、サービスエリア又はパーキングエリアと、一般道路との間を「出入り」しようとする車両を意味する ものと解される。ここで、本件明細書等には、「ETC車専用出入口」に相当する構成として、「ETCゲート」(【0015】等)及び「ETCゲート5」(【0032】等)が記載されている。 そうすると、構成要件Fの「ETCゲートを通って前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入る、または前記有料道路料金所、 サービスエリア又はパーキングエリア 記載されている。 そうすると、構成要件Fの「ETCゲートを通って前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入る、または前記有料道路料金所、 サービスエリア又はパーキングエリアから出るルートへ通じる第1のレー - 18 -ン」は、一般道路から有料道路、サービスエリア若しくはパーキングエリアに「入る」ために、又は、有料道路、サービスエリア若しくはパーキングエリアから一般道路に「出る」ために、有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに設置されたETCゲートを通過するためのルートへ通じる車線(レーン)であると解するのが相当である。 そして、本件明細書等には、入口料金所での実施例中に、「本実施形態では、新たにAから分岐するレーンE(「再進入レーン」ともいう。)が用意されている。ここで、ルートA→DはETCゲート5を通り有料道路7へ進むルートであり」(【0032】)との記載があり、この「ルートA→D」は、「ETCゲートを通過して有料道路に入るルート」にほかならない。さらに、 本件明細書等では、「レーンA→Dには、基本的には、路側アンテナ3、5が備えられ、車載器との間で無線通信を行なっている」(【0033】)と、「ルート」と「レーン」とが特に区別されることなく記載されているから、構成要件Fの「ETCゲートを通って前記有料道路料金所に入るルートへ通じる第1のレーン」も、「ルート」と同義のものとして、本件明細書等に記載され ているとみるべきである。また、本件明細書等には、スマートインターチェンジについても、同様の構成が同様の役割を果たし得ることが記載されている(【0064】)から、サービスエリア又はパーキングエリアと一般道路との「出入り」に関する「ルートへ通じる第1のレーン」についても、上記 いても、同様の構成が同様の役割を果たし得ることが記載されている(【0064】)から、サービスエリア又はパーキングエリアと一般道路との「出入り」に関する「ルートへ通じる第1のレーン」についても、上記と同義のものとして、本件明細書等に記載されているということができる。 これらの点に関し、当初明細書等の記載は、本件明細書等の記載と実質的に異なるところはないから、構成要件Fに記載された事項は、当初明細書等にも記載されているということができる。 イ原告は、本件審決が「ETCゲートが有料道路の入口料金所等に設けられる設備であることからすれば、その先に他の有料道路料金所の入口が存在す ることは通常あり得ない」との前提に立って構成要件Fを解釈したことにつ - 19 -き、実際にETCゲートの先に料金所が設けられている例もあるし、発明特定事項を技術常識に基づいて解釈すべきでないとして、本件審決の判断を論難する。 しかし、発明の要旨認定の場面において、特許請求の範囲の記載を解釈するに当たり、当業者の技術常識を考慮することが禁止されるとする根拠はな いというべきである。また、ETCゲートの先に料金所が設けられている例が存在するとしても、本件発明1の構成要件Aは、「有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに設置されている、ETC専用出入口」と記載されているのであって、原告が例示するような料金所とETCゲートが離れた態様を前提としているとは読み難いのであるから、原告の提出する例 によっては、上記解釈を左右するに至らないというべきである。原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、本件各発明が、一般車や路側アンテナと正常に通信ができない車両を誘導することを目的とする発明であり、その解決手段は「再進入レ というべきである。原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、本件各発明が、一般車や路側アンテナと正常に通信ができない車両を誘導することを目的とする発明であり、その解決手段は「再進入レーンE」であると主張した上で、本件審決が「ETCゲートを通って前記有料道 路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入る、または前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアから出るルート」及び「…へ通じる第1のレーン」と解釈した区間は、一般車等の誘導に供されるものではないから、「有料道路7へ進むルート」及び「一般道路8へ進むルート」と解釈すべきであって、他の解釈の余地はない旨主張する。 しかし、本件各発明や当初明細書等に記載された発明は、ETC通信が可能な車両とそうではない車両を判別し、誘導装置により、通信可能な車両を正規のルート(ETCゲートがあるルート)へ通じるレーンに、通信不可能な車両を分岐された再進入レーンにそれぞれ振り分けることを特徴とするものであって、一般車や路側アンテナと正常に通信ができない車両のみを誘 導することを目的とする発明ということはできないから、原告の主張は前提 - 20 -を誤るものである。原告の上記主張は採用することができない。 (3) 新規性について前記(1)及び(2)において認定説示したとおり、本件各発明の特許請求の範囲に記載された事項は、いずれも当初明細書等に記載されたものということができるから、分割特許出願の要件に欠けるところはなく、本件出願は、最初の原 出願の出願日である平成16年9月13日にされたものとみなされる(特許法44条2項本文)。 そうすると、平成21年12月9日に発行された甲7によって、本件各発明が新規性を欠くものということはできず、本件 出願日である平成16年9月13日にされたものとみなされる(特許法44条2項本文)。 そうすると、平成21年12月9日に発行された甲7によって、本件各発明が新規性を欠くものということはできず、本件特許に新規性欠如の無効理由はないということに帰する。 なお、原告は、甲7の発行により、本件各発明が、本件審判を担当した審判官3名及び別件の特許権侵害訴訟に関与した裁判官4名により公然知られ得る状態にあったとも主張するが、上記のとおり、本件出願は、平成16年9月13日にされたものとみなされるのであるから、いずれにしても原告の主張は失当である。 したがって、原告の主張する取消事由1には理由がない。 2 取消事由2(手続違背)について原告は、審判手続において、無効理由の根拠条文を特許法29条1項1号としていたが、審判長により、これを同項3号に読み替えることを誘導されたところ、その結果、本件審決が主引用例である甲7の内容を全く検討せず、請求不成立と の判断をしたことが、不公正であって違法である旨主張する。 しかし、証拠(甲5、7)によると、原告は、無効審判請求に際して、最初の原出願に係る特許公報を審判甲第1号証として提出し、これに記載された発明と本件各発明が同一のものである旨主張していたと認められる。ここで、特許公報や公開特許公報等は一般に公開される文書であるから、これらを主引用例として 認定される発明は、特許法29条1項3号に掲げる発明として整理されることが - 21 -多いことは、当裁判所に顕著である。 そうすると、審判長が、新規性欠如の無効理由の根拠条文として、原告が特許法29条1項1号と主張しているのを、同項3号と読み替えてよいかと釈明を求めることが、手続上違法であるということはできない。ましてや すると、審判長が、新規性欠如の無効理由の根拠条文として、原告が特許法29条1項1号と主張しているのを、同項3号と読み替えてよいかと釈明を求めることが、手続上違法であるということはできない。ましてや、原告は、求釈明に応じて読み替えに同意しているのであるからなおさらである。 なお、本件審決が甲7の内容を検討していないのは、上記のとおり本件出願に分割要件違反が認められず、本件出願が平成16年9月13日にされたものとみなされることから、平成21年12月9日に発行された甲7が、主引用例としての適格を失ったことによるものであって、何ら不当なものではない。 したがって、原告の主張する取消事由2には理由がない。 3 結論以上のとおり、原告の主張する取消事由にはいずれも理由がなく、本件審決に取り消されるべき違法はない。 よって、原告の請求には理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官増田 稔 - 22 - 裁判官伊藤清隆 裁判官 天野研司

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