主文 処分行政庁は,申立人の平成21年10月13日付け一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可申請について,平成22年5月25日から同年9月24日又は本案事件の第1審判決言渡しの日のいずれか早い日までの間,別紙1記載の条件を付して,これを仮に認可せよ。 申立人のその余の申立てを却下する。 申立費用は各自の負担とする。 理由 第1申立ての趣旨 処分行政庁は,申立人の平成21年10月13日付け一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可申請(以下「本件申請」という)について,こ。 れを仮に認可せよ。 申立費用は相手方の負担とする。 第2事案の概要等 事案の概要本案事件は,道路運送法に基づき,処分行政庁による一般旅客自動車運送業(以下「タクシー業」という)の許可を受け,同事業等を営む申立人が本件。 ,(「」。)申請について処分行政庁が同申請を却下したこと以下本件処分というは違法であるとして本件処分の取消しを求めるとともに行政事件訴訟法以,,(下「行訴法」という)37条の2第1項に基づき,処分行政庁に本件申請の。 認可を義務付けることを求める事案である。 本件申立ては,申立人が行訴法37条の5第1項に基づき,本件申請を認可することを仮に義務付けるよう求める申立てである。 法令等の定め(1)道路運送法の定め ア道路運送法9条の3第1項(平成21年法律第64号による改正後のもの。同年10月1日施行。以下,単に「法」という)は,一般乗用旅客。 自動車運送事業者(一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者をいう。法8条4項)は,旅客の運賃及び料金(旅客の利益に及ぼす影響が比較的小さいものとして国土交通省令で定める料金を除く。以下,単に「運賃等」。),,ということがあるを定め国 経営する者をいう。法8条4項)は,旅客の運賃及び料金(旅客の利益に及ぼす影響が比較的小さいものとして国土交通省令で定める料金を除く。以下,単に「運賃等」。),,ということがあるを定め国土交通大臣の認可を受けなければならずこれを変更しようとするときも同様とすると規定している。そして,法9条の3第2項は,国土交通大臣は,上記の認可をしようとするときは,①能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであること(1号,②特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをす)るものでないこと(2号,③他の一般旅客自動車運送事業者との間に不)当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること(3号,)④運賃及び料金が対距離制による場合であって,国土交通大臣がその算定の基礎となる距離を定めたときは,これによるものであること(4号)という基準によって,これをしなければならないと規定している。なお,上記の認可に係る国土交通省の権限は,法88条2項,同法施行令1条2項により,地方運輸局長に委任されている。 ,,,イただし法制定附則2は法9条の3第2項1号の規定の適用について当分の間「加えたものを超えないもの」とあるのは「加えたもの」と,,すると規定しているため,法9条の3第2項1号の「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであること」という文言は「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加,えたものであること」と読み替えられる。なお,この法制定附則2の規定(以下「読替規定」という)は,特定地域における一般乗用旅客自動車。 運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(平成21年法律第64号。同年10月1日施行。以下「特措法」という)附則5項に基づき,。 規定」という)は,特定地域における一般乗用旅客自動車。 運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(平成21年法律第64号。同年10月1日施行。以下「特措法」という)附則5項に基づき,。 規定されたものである。 ウ法施行規則10条3項は,法9条の3第1項に基づき一般乗用旅客自動車運送事業の運賃等の設定又は変更の認可を申請する者は,原価計算書その他運賃等の額の算出の基礎を記載した書類(以下「原価計算書等」という)を申請書に添付して提出するものと規定し,一方で,同条4項は,。 申請する運賃等が,地方運輸局長が原価計算書等の添付の必要がないと認める場合として公示したもの(以下「自動認可運賃」という)に該当す。 るときは,その添付を省略することができると定めている。 (2)審査基準公示処分行政庁は,法9条の3第2項に基づく審査の基準として「一般乗用,旅客自動車運送事業の運賃及び料金の認可申請の審査基準について(平成」14年九運公福第47号。平成21年9月29日改正により,同年10月1日から適用されたもの。以下「審査基準公示」という。甲7)を公示しており,タクシー業の運賃等の設定及び変更の認可申請について,この審査基準公示に基づいて審査をしている。 審査基準公示には,次のような内容が定められている。 ア処分行政庁は,自動認可運賃を設定して公示し,これに該当する運賃の認可申請については速やかに認可を行い,これに該当しない運賃の認可申請については,認可要件に沿って,適正な原価に適正な利潤を加えたものであるか否か,他の事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがないか否か等を個別に審査する(4項。 )イ自動認可運賃に該当しない運賃の認可申請については,まず,申請者において,実績年度(最近の実績年度1年間)の原価及び収入を基に,審査 を引き起こすおそれがないか否か等を個別に審査する(4項。 )イ自動認可運賃に該当しない運賃の認可申請については,まず,申請者において,実績年度(最近の実績年度1年間)の原価及び収入を基に,審査基準公示別紙2(以下,審査基準公示の別紙を「公示別紙」という「一。)般乗用旅客自動車運送事業の運賃原価収入算定・処分基準」の第2ないし第8に定められた方法により算定した書類を作成の上,申請書に添付して 提出する。申請者は,公示別紙2第2ないし第8の方法(以下「本来的算定方法」という)によらない場合は,合理的な理由を付した上でこれに。 準じた形で算定した書類を提出する。 処分行政庁は,この添付書類を基に,平年度(実績年度の翌々年度)における申請者の原価及び収入を査定する。なお,申請者の実績値に基づき査定する場合には,その値が申請者の事業の実態を適切に反映した値となっているかどうかについて,申請者の事業計画との照合等により十分に確認するものとし,また,審査に当たっては,類似した事業を行っている事業者の実績値又は同一地域で申請運賃を実施している事業者の実績値を基に査定することとする(公示別紙4第3の1。 )処分行政庁は,以上の査定を行った上で平年度における収支率が100%となる変更後の運賃額(以下「運賃査定額」という)を算定する(公。 示別紙4第3の2。 )処分行政庁は,申請額が運賃査定額以上である場合は,申請額で認可することとする。また,申請額が運賃査定額に満たない場合は,運賃査定額を申請者に通知し,通知後2週間以内に申請額を運賃査定額に変更することができることとしこの変更申請がない場合は当該申請を却下する公,,(示別紙4第3の3。 )ウ輸送力及び輸送効率等については,過去5年間の実績の推移及び将来における合理的な予測を基礎 ることができることとしこの変更申請がない場合は当該申請を却下する公,,(示別紙4第3の3。 )ウ輸送力及び輸送効率等については,過去5年間の実績の推移及び将来における合理的な予測を基礎に算定する(公示別紙2第5。 )運送収入は「実績年度車キロ当たり収入×査定実車走行キロ」という,計算式により算定する(公示別紙2第7。 ) 前提事実(1)当事者ア申立人は処分行政庁から法4条に基づき営業区域を福岡交通圏福,,,(,,,,,,,,岡市春日市大野城市筑紫野市太宰府市前原市古賀市糸島郡 糟屋郡,筑紫郡。ただし,市町村合併前の表示である)とする一般乗用。 旅客自動車運送事業の許可を受け,平成21年1月30日から,同交通圏内でタクシー業を営んでいる者である。 (乙2)イ処分行政庁は,国土交通大臣から,法88条2項,同法施行令1条2項に基づき,一般乗用旅客自動車運送事業に係る許可,運賃及び料金の認可等に関する権限の委任を受けた者である。 (公知の事実)(2)本件処分に至る経緯ア処分行政庁は,申立人に対し,平成21年1月22日付けで,タクシー業の運賃等の設定に関する認可(以下「原設定認可」という)をした。 。 同認可に係る運賃及び料金並びに適用方は別紙2のとおりで,大型車及び中型車の初乗り1.2キロメートルまでの距離制運賃(以下,単に「初乗り運賃」という)を500円などとするものであった。 。 (甲1)イ処分行政庁は,申立人に対し,平成21年6月30日付けで,運賃等の変更に関する認可(以下「原変更認可」という)をした。同認可は,原。 設定認可について,運賃及び料金並びに適用方を別紙3のとおり変更する,。 ものであったが初乗り運賃を500円などとする部分に変更はなかった(甲 (以下「原変更認可」という)をした。同認可は,原。 設定認可について,運賃及び料金並びに適用方を別紙3のとおり変更する,。 ものであったが初乗り運賃を500円などとする部分に変更はなかった(甲2)ウ申立人は,処分行政庁に対し,平成21年10月13日付けで,原設定認可及び原変更認可(以下,併せて「原認可」という)に付された期限。 である平成22年1月21日より後の運賃等の設定に関する認可を申請した(本件申請。同申請に係る運賃及び料金並びに適用方は,別紙4のと)おり,原変更認可に係るそれと基本的には同一内容であり,初乗り運賃を自動認可運賃を下回る500円などとするものであった。 申立人が本件申請に当たり平成22年1月6日付けで処分行政庁に提出した「一般乗用旅客自動車運送事業原価計算書(申立人が内容を補正し」て最終的に提出したもの。以下「本件原価計算書」という。甲9)には,申立人の収支状況について,次のように記載されていた。 (甲3,同9)(ア)実績年度(平成20年3月21日から平成21年3月20日までをいう。以下,同じ)の収支状況。 a収益3915万9000円(うち運送収入3781万4000円)b運送原価9160万2000円c収支率(経常)42.75%(イ)翌年度(平成21年3月21日から平成22年3月20日までをいう。以下,同じ)の収支見積。 a収益5億3363万2000円(うち運送収入5億1907万5000円)b運送原価5億4777万2000円c収支率(経常)97.42%(ウ)平年度(平成22年3月21日から平成23年3月20日までをいう。以下,同じ)の収支見積。 a収益6億3966万1000円(うち運送収入6億2221万2000円,営業外収入1744万9000円) (平成22年3月21日から平成23年3月20日までをいう。以下,同じ)の収支見積。 a収益6億3966万1000円(うち運送収入6億2221万2000円,営業外収入1744万9000円)b運送原価5億3218万6000円c適正利潤556万4000円d収支率(経常)120.20%e収支率(適正利潤込)118.95% エ処分行政庁は,申立人に対し,平成22年1月21日付けで,原認可に付した期限を同年2月12日まで延伸する旨の通知をした。 (甲4)オ処分行政庁は,申立人に対し,平成22年2月10日付けで,原認可に付した期限を同月24日まで延伸する旨を通知するとともに,平年度における初乗り運賃の査定額が570円であるとして,本件申請に係る初乗り運賃を500円から570円以上に変更しない場合は同申請を却下する旨の通知をした。 (甲5,同6)カ申立人は,平成22年2月17日,本件申立てをするとともに,本案事件の訴えを提起した。 (顕著な事実)キ処分行政庁は,申立人に対し,平成22年2月23日付けで,原認可に付した期限を同年3月24日まで延伸する旨の通知をした。 (乙4)ク処分行政庁は,申立人の実績年度(平成21年1月30日から同年3月),,20日までにおける運送収入人件費及び総走行キロ等の実績値に加え平成21年3月度(2月21日から3月20日まで。以下「月度」という場合は,前月21日から当月20日までをいう)ないし同年11月度の。 実績値を基に,平年度の運送収入等を査定したところ,本件申請に係る平年度の運送収入の見込みについて採用すべき合理的理由が見当たらず,初乗り運賃を500円に据え置きした場合に平年度における収支率が100%を満たさない査定結果になったなどとして,本件申請が法9条の3第2項 運送収入の見込みについて採用すべき合理的理由が見当たらず,初乗り運賃を500円に据え置きした場合に平年度における収支率が100%を満たさない査定結果になったなどとして,本件申請が法9条の3第2項1号に適合しないことを理由に,申立人に対し,平成22年2月25日付けで,本件申請を却下する旨の処分(本件処分)をした。 処分行政庁の査定結果は以下のとおりである。 (乙5ないし7)(ア)初乗り運賃を500円に据え置きした場合の収支見積a収益4億8908万6000円(うち運送収入4億7576万5000円)b運送原価5億4621万0000円c収支率89.54%(イ)初乗り運賃を570円とした場合の収支見積a収益5億4781万3000円(うち運送収入5億3289万2000円)b運送原価5億4621万0000円c収支率100.29%ケ処分行政庁は,申立人に対し,平成22年3月23日付けで,原認可に付した期限を同年5月24日まで延伸する旨の通知をした。 (乙30) 争点及び当事者の主張(1)「本案について理由があるとみえるとき」に当たるか(争点1)ア申立人の主張(ア)申立人は,運送収入の算定に際し,平成21年12月度の実績に基づき社歴(申立人における在籍期間)別1稼働当たり運送収入,社歴別,,,月間稼働数等の数値を決定し毎月3名入社3名退社すると仮定して月ごとに従業員の社歴別構成人数とその月間稼働数を算定し,12月度各社歴別1稼働当たり運送収入に当該社歴別月間稼働数を掛けたものを合計して総運送収入を算定したものである。この算定方法によれば,平年度の運送収入は6億2221万円となるし,少なくとも処分行政庁が査定した運送収入5億3289万円を上げることは十分に可能であり,本件申請を却下した本 を算定したものである。この算定方法によれば,平年度の運送収入は6億2221万円となるし,少なくとも処分行政庁が査定した運送収入5億3289万円を上げることは十分に可能であり,本件申請を却下した本件処分は裁量権を逸脱又は濫用したものである。 (イ)申立人の上記算定方法に合理性があり,処分行政庁の査定に合理性がないことは以下の理由から明らかである。 a実績年度の数値には,開業当初の低い運送収入が含まれ,申立人の運送実績が開業後1年2か月を経た現在においても上昇傾向で推移しており,実績年度の数値をそのまま開業3年後の平年度の収入予測とすると実際の収入よりも著しく低い数値となり,将来における合理的な予測とは乖離するものとなる。 b申立人においては,タクシー運転手未経験者を採用していることから,社歴が短い間は,タクシー運転業務そのものに不慣れであり,運送収入が上がらない。社歴が長くなるにつれ,運転手は,タクシー運転業務に慣れて,地理知識の習熟も進み,効率的に運転できるようになる上,無線配車に効率的に応答できるようになって,運送機会が増え,運送収入が増額していくこととなるものであり,おおむね約1年間はほぼ社歴に比例して売上げが高まっていく傾向にある。 申立人はグループ会社においても同様の採用システムを採っており,従業員の社歴が長くなるにつれて,1稼働当たりの運送収入が上昇していく傾向は,経験則上顕著であり,申立人の実績値からも明らかである。 c申立人の平成22年1月度ないし3月度の運送収入の申請値は実績値に近似しており,実績値との乖離が著しい処分行政庁の査定値よりも,申立人の算定方法に合理性が認められる。 また,1日1車当たり運送収入(以下「日車営収」という)につ。 いては,申立人の実績値は,平成21年12月度3万3195円,平成2 処分行政庁の査定値よりも,申立人の算定方法に合理性が認められる。 また,1日1車当たり運送収入(以下「日車営収」という)につ。 いては,申立人の実績値は,平成21年12月度3万3195円,平成22年1月度3万2211円,同年2月度3万3115円,同年3月度3万3872円であるのに対し,処分行政庁が査定した運賃据置の場合の日車営収は2万8284円にすぎず,既に著しく乖離してお り,処分行政庁の査定数値は低額にすぎ,合理性がないことは明らかである。 さらに,処分行政庁が査定した運賃値上げの場合の日車営収は,3万1680円となるものであるが,平成21年12月度ないし平成22年3月度の申立人の上記実績値は,いずれも既にこれを超えているものであって,処分行政庁が運賃値上げにより達成しなければならないとした日車営収は,運賃値上げをせずとも,既に達成できているものである。 (ウ)処分行政庁は,平成22年2月10日までの間に,平成21年12月度の数値を反映した原価計算書の収支見積内訳が提出されず,査定の基礎とし得なかったと主張するが,運送収入については,処分行政庁が運送収入を算定するのに必要なデータである延実在車両数,延実働車両数,実働率,輸送回数,総走行キロ,実車キロ,実車率,運送収入,実車キロ当たり収入のデータは,すべて,申立人が提出した収支計算書,輸送実績に記載されており,処分行政庁は12月度を基礎として運送収入を算定することは可能であった。 (エ)申立人担当者は,処分行政庁の求めに応じて,グループ会社の資料,,も含むできる限りの資料を提出し申請値の算定根拠の説明に努めたが処分行政庁は具体的な理由をはっきり明示せずに,申立人の申請値算定根拠に合理性が認められないと繰り返すのみであった。上記のとおり,申立人の申請値算定方法に合理 提出し申請値の算定根拠の説明に努めたが処分行政庁は具体的な理由をはっきり明示せずに,申立人の申請値算定根拠に合理性が認められないと繰り返すのみであった。上記のとおり,申立人の申請値算定方法に合理性が認められることからすれば,処分行政庁が申立人の説明を合理的理由なく受け入れなかったにすぎないものといえ,申立人担当者が資料提出を怠たり,十分な説明をしなかった等の懈怠や落ち度はない。 (オ)運賃値上げを行ったとしても,運賃値上げによる増収は認められないか,わずかに見込める程度にすぎず,その効果が持続する期間も数か 月の限定的なものであり,その後の運送収入は下落していくものであって,申立人が運賃査定額に値上げした場合,逆に運送収入が落ち込むこ,,とは明らかであり処分行政庁の査定数値こそ実現可能性が認められず合理性を欠くものである。 (カ)相手方は,本件申請に対し,申立人の個別の事情を勘案した運送収入,運送原価を個別に査定すべきであるにもかかわらず,自動認可運賃を下回る運賃は認容すべきでないという誤った認識に基づき,自動認可運賃の範囲内の運賃額に査定される結果となるよう,結論ありきの査定を行ったものと思われ,不当である。 (キ)申立人においては,その営業努力により,他社と比較して安い運賃でありながら,運転手に対する給与は,同地域の平均よりも多額の給与を支給しているものであって,運転手が生活に必要な収入を得るために過重労働をしなければならない環境ではなく,安い運賃であっても,運行の安全は何ら阻害されるものではない。 (ク)審査基準公示上,実績年度とは1年間の実績収支が確定できる年度であることが前提とされている。したがって,実績年度は,1年間に満たない年度を実績年度ととらえる余地はなく,本件申請における実績年度は,平成21年1月 ,実績年度とは1年間の実績収支が確定できる年度であることが前提とされている。したがって,実績年度は,1年間に満たない年度を実績年度ととらえる余地はなく,本件申請における実績年度は,平成21年1月30日から同年3月20日までではなく,平成21年3月21日(4月度)から平成22年3月20日(3月度)までの1年間とされるべきものである。 (ケ)申請者が運賃申請に当たり原価及び収入を算定する方法として準用された公示別紙2第2から第8は,もともとは運賃改定要否の判断を行うに際しての原価及び収入の計算方法を定めたものであり,運賃改定の対象事業者としては3年以上存続している事業者であることが必要とされ,運送収入算定に際しては,過去5年間の実績の推移及び将来における合理的な予測を基礎とするとされていることから,少なくとも3年以 上事業を継続している事業者を対象に定められているものであり,申立人のように事業開始後間もない事業者に対する基準ではない。このように,本件の審査基準は,事業開始後間もない事業者につき,いかなる基準となるのかについての具体性に欠け,基準の公示もなされていないものであるといえる。 したがって,審査基準公示は,事業開始後間もない事業者に対する運賃認可審査基準として具体性に欠けるものであり,行政手続法第5条に違反するものである。 イ相手方の主張(ア)申立人は,運送収入について,社歴別1稼働当たりの輸送実績値や従業員の就職及び退職の状況に基づいて,合理的に算定することができる旨主張するが,その理由は明らかでなく,今後,申立人の運送収入の,,。 増額にどのようにどの程度つながるのかは具体的に明らかではないそして,今後,諸般の経営状況の変化に対応して,申立人が,福岡交通圏において,どのような経営を展開し,これによって運送収 入の,,。 増額にどのようにどの程度つながるのかは具体的に明らかではないそして,今後,諸般の経営状況の変化に対応して,申立人が,福岡交通圏において,どのような経営を展開し,これによって運送収入が増額になるのか否かについても,確たる根拠となるような事情があるとは認められない。 (イ)運送収入の算定基礎とする実績値の範囲について,平成21年3月期以降の実績値を全く考慮せずに,直近2,3か月の金額のみを考慮することについて,合理的な理由は見出せない。 すなわち,タクシー事業において,一般的に,12月は,季節として1年間を通じて最も収入の多くなる時期であり,申立人を含め,福岡市内のタクシー事業者の収入には,月度ごとに季節波動による振幅があるため,運送収入の動向はできるだけ1年間に近い期間の実績値全体を見て総合的に判断することが,運送収入の算定上,より妥当な方法というべきである。 (ウ)処分行政庁として,本件申請に対する審査段階(平成21年10月13日付け認可申請から平成22年2月10日の運賃査定額通知までの間)において,審査に必要となる各月度ごとの収入及び原価に関する原価計算書の収支見積内訳がすべて把握できたのは,本件原価計算書記載,,の平成21年11月度実績値までのものが最新かつ最終でありその後申立人から原価計算書の収支見積内訳に関して,追加補正の資料は提出されなかった。 申立人は,平成21年12月度以降の収入がそれまでより増えた旨主張するが,そもそも,収入が増加すれば,それに伴い,原価が増加するため,これらの原価についても実績値を正確に把握した上で収支を審査することが求められる。しかるに,本件原価計算書は,収入及び原価のごく一部について12月度の実績値を記載するもので,その他の項目は11月度実績値が最新のものとなっ 績値を正確に把握した上で収支を審査することが求められる。しかるに,本件原価計算書は,収入及び原価のごく一部について12月度の実績値を記載するもので,その他の項目は11月度実績値が最新のものとなっていた。なお,申立人から,12月度の収支計算書及び輸送実績の報告を受けているが,同収支計算書における原価項目は,原価計算書と比べ極めて概括的なもので各項目の内訳が不明であり,審査に使用することができないものであった。 以上の経過により,処分行政庁は,申立人の平成21年12月度以降の原価及び収入の実績額について,信用性のあるデータによって確認することができなかった。 (エ)処分行政庁の審査担当者は,申立人に対し,本件申請における運送収入等の算定根拠について,繰り返し説明を求めたが,申立人は,審査,,。 担当者に対し合理的な説明をせず追加資料の提出等も行わなかったそして,上記のとおり,本件申請に係る審査において,平成21年12月度以降の原価及び収入の実績額について,信用性のあるデータによって確認することはできなかった。 「」()(2)償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか争点2 ア申立人の主張本件申請が認可されない場合,申立人は,営業を停止せざるを得なくなり,月額4877万円もの極めて甚大な被害が生じ,従業員の退職,利用者からの信用の失墜,ひいては倒産の危機に瀕すること等の事情から,営業の基盤に重大な支障が生じて事後的にこれを回復することが著しく困難であるといえ,申立人に落ち度もないことからすれば,社会通念に照らして金銭賠償のみによることが著しく不相当と認められるような場合に当たり「償うことのできない損害」が認められる。 ,イ相手方の主張申立人主張の損害は,財産上の損害としてとらえることができ,金銭賠 て金銭賠償のみによることが著しく不相当と認められるような場合に当たり「償うことのできない損害」が認められる。 ,イ相手方の主張申立人主張の損害は,財産上の損害としてとらえることができ,金銭賠償によることが可能なものであるし,また,処分行政庁が,本件処分に至る経緯において,申立人に対し,本件申請における運送収入等の算定根拠について合理的な説明を求めたのに,申立人がこれをしていないことをも併せ考えると,申立人主張の損害は,金銭賠償のみによって損害を甘受させることが社会通念上著しく不合理とはいえない。 (3)「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」があるか(争点3)ア相手方の主張本件申請を認可した場合,過当競争を防止して輸送の安全を確保しようとした法9条の3の趣旨に反する認可がなされることになり,タクシー認,「」可制度の運用が混乱するから公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある。 イ申立人の主張本件申請は現状の維持を求めるものであるからこれを認可しても公,,「共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」があるとはいえない。 第3当裁判所の判断 争点1(本案について理由があるとみえるとき」に当たるか)について「 (1)本件申請及び本件処分ア本件処分の基礎資料となる申立人の実績数値申立人が処分行政庁に対して平成22年1月6日付けで提出した本件原価計算書には,平成21年2月度ないし平成21年12月度の①運送収入②日車営収③実車率④実車走行キロ(いずれも実績値)について,以下のように記載されていた。 なお,本件原価計算書では,平成21年12月度の収支に関し,運送収入,運転手の給料及び教習手当の実績値は記載されていたが,それ以外の収入及び原価の費目及び内訳については試算値のみが記載されていたものであって,収入の 書では,平成21年12月度の収支に関し,運送収入,運転手の給料及び教習手当の実績値は記載されていたが,それ以外の収入及び原価の費目及び内訳については試算値のみが記載されていたものであって,収入の項目及び原価の費目の実績値は,平成22年1月26日付けで提出された平成21年12月度の収支計算書(以下「12月度収支報告書」という)によって明らかとなった。 。 (甲9,乙18,同20)(ア)平成21年2月度①1252万9770円②1万3937円③22.8%④3万8992キロメートル(イ)同年3月度①2528万4020円②2万0374円③27.7%④7万9096キロメートル(ウ)同年4月度①3569万0630円②2万4530円③29.5%④11万1176キロメートル(エ)同年5月度①4020万6380円②2万7882円③31.2%④12万4173キロメートル(オ)同年6月度 ①4493万4060円②3万0547円③37.5%④14万0721キロメートル(カ)同年7月度①4326万5280円②3万1766円③40.7%④13万4408キロメートル(キ)同年8月度①4188万5360円②3万0004円③40.6%④13万3388キロメートル(ク)同年9月度①4173万3210円②2万9661円③39.5%④13万6510キロメートル(ケ)同年10月度①3907万6040円②2万8011円③38.5%④12万7749キロメートル(コ)同年11月度①4376万9950円②3万0999円③39.8%④14万3598キロメートル(サ)同年12月度①4660万5820円②3万3195円③41.5%④15万0948キロメートルイ申立人の行った運送収入の算定方法申立人は,平成22年1月度以降,毎 98キロメートル(サ)同年12月度①4660万5820円②3万3195円③41.5%④15万0948キロメートルイ申立人の行った運送収入の算定方法申立人は,平成22年1月度以降,毎月3名が入社し,3名が退職する(この退職者3名の内訳については,入社1か月目の社員が1名,入社2か月目の社員2分の1人,入社4か月目の社員が2分の1人,入社7か月目の社員が3分の1人,入社10か月目の社員が3分の1人,入社1年以上の社員が3分の1人とする)と仮定して,平成22年1月度以降の。 月ごとの社歴別運転手数を予測した上で,運転手の社歴の長短に応じて,平成21年12月度の社歴別運転手1人当たり月間稼働数及び1稼働当たり運送収入を算出し,これらに平成22年1月度以降の社歴別運転手数を乗じたものを合計して,申立人の月ごとの運送収入を算定した(以下,申立人が採用した運送収入の算定方法を「本件算定方法」という。本件。)算定方法によれば,平成22年1月度ないし同年3月度の各月及び平年度の①運送収入②日車営収(いずれも試算値)は,それぞれ平成22年1月度が,①4782万1874円②3万3511円,同年2月度が,①4898万5082円②3万4326円,同年3月度が,①4510万1311円②3万4991円となり,平年度には,①6億2221万2072円②3万7031円に達する計算となる。 なお,本件原価計算書に記載された申立人の平成21年12月度における社歴別の①運転手数②1稼働当たり運送収入③運転手1人当たり月間稼働数(いずれも実績値)は,以下のとおりである。 (甲9)(ア)社歴0か月①4人②1万2556円③11.75(イ)社歴1か月①6人②1万3135円③22.17(ウ)社歴2~3か月①11人②1万4528円③22.00( おりである。 (甲9)(ア)社歴0か月①4人②1万2556円③11.75(イ)社歴1か月①6人②1万3135円③22.17(ウ)社歴2~3か月①11人②1万4528円③22.00(エ)社歴4~6か月①3人②1万7632円③22.33(オ)社歴7~9か月①35人②2万1157円③22.26(カ)社歴10~12か月 ①20人②2万3097円③22.55(キ)社歴1年以上①23人②2万3689円③23.26ウ本件処分の根拠処分行政庁は,申立人の平年度における収支について査定した結果,初乗り運賃を500円とした場合,申立人の平年度の運送収入は,4億7576万5000円である等と査定し,これによっては,申立人の事業について採算が取れないことを理由に,本件申請は法9条の3第2項1号の基準に適合しないとして,本件申請を却下する本件処分をした。 処分行政庁は,申立人の平年度の運送収入を査定するに当たり,実績年度である平成21年1月30日から同年3月20日までの期間が,申立人の開業後間もない時期であることから,平成21年4月度ないし同年11(),,月度の運送収入実績値についても査定の基礎に含めることとし一方(。 ),平成21年2月度の運送収入1252万9770円甲9については同年3月度以降の期間の運送収入より著しく低額であったことから,査定の基礎としないこととした。また,処分行政庁は,12月度収支報告書における原価費目の記載が本件原価計算書の記載に比べて概括的であり,各費目の内訳が不明であるために審査に使用できないと判断し,平成21年12月度の運送収入の実績値は,算定の基礎としなかった。 すなわち,処分行政庁は,申立人の平成21年3月度ないし同年11月度の運送収入(実績値)を基に,審査基準公示 に使用できないと判断し,平成21年12月度の運送収入の実績値は,算定の基礎としなかった。 すなわち,処分行政庁は,申立人の平成21年3月度ないし同年11月度の運送収入(実績値)を基に,審査基準公示に従って以下のとおり計算し,平年度の運送収入の見積額を査定したものである。なお,審査基準公示によれば,運送収入は実績年度の車キロ当たり収入に査定実車走行キロを乗じて算定し(公示別紙2第7の1,輸送力は過去5年間の実績の推)移及び将来における合理的な予測を基礎に算定するとされているところ(公示別紙2第5,処分行政庁は,申立人の実績年度及び翌年度の輸送) 力が平年度まで変動しないものとして,算定したものである。 (甲9,乙5ないし7)(ア)平成21年3月21日から同月11月20日まで期間の運送収入の合計額3億5584万4930円(イ)上記期間における合計査定実車走行キロ113万0819キロメートル(ウ)実車キロ当たりの運送収入(平均)314.68円/キロメートル上記期間における運送収入の合計額(上記(ア))を,同期間における合計実車走行キロ(上記(イ))で除したもの(エ)年間実車キロ151万1901キロメートル上記期間における合計実車走行キロ(上記(イ))を1年に換算したもの(オ)平年度の運送収入4億7576万5000円上記期間における実車キロ当たりの運送収入(上記(ウ))に年間実車キロ(上記(エ))を乗じたもの。平年度の日車営収は,平均2万8284円という査定である。 (2)法9条の3第2項1号(読み替え後のもの「能率的な経営の下におけ)る適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むものであること」の意義についてア平成12年法律第86号による改正前の道路運送法(以下「旧法」という)の規定。 ,「( 「能率的な経営の下におけ)る適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むものであること」の意義についてア平成12年法律第86号による改正前の道路運送法(以下「旧法」という)の規定。 ,「(),旧法は貨物自動車運送事業法平成元年法律第83号と相まって道路運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保するとともに,道路運送に関する秩序を確立することにより,道路運送の総合的な発展を図り,もつて公共の福祉を増進すること」を目的とし(同法1条,一般乗用旅客) 自動車運送事業の開始について免許制を採用して(同法4条1項,申請)者の事業の開始によって当該事業区域に係る供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないか否か等について審査することとしていた(同法6条1項。以下「需要調整規制」という。また,同法は,旅客の運賃その。)他運輸に関する料金の設定又は変更に関して認可制を採用し(同法9条1項,同認可基準として「能率的な経営の下における適正な原価を償い,),かつ,適正な利潤を含むものであること(1号)や「他の一般旅客自動」車運送事業者(中略)との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれ」()()。 がないものであること4号などの基準を設けていた同法9条2項イ平成12年法律第86号による改正後の道路運送法(ただし,平成18。 「」。)年法律第40号による改正前のもの以下平成12年改正法というの規定及び改正内容,「()平成12年改正法は貨物自動車運送事業法平成元年法律第83号と相まって,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,道路運送の利用者の利益を保護するとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もつて公共の福祉を増進すること」を目的とすることとし(同法1条,一般乗用旅 業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,道路運送の利用者の利益を保護するとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もつて公共の福祉を増進すること」を目的とすることとし(同法1条,一般乗用旅客自動車運送事業の開始について許可制を採用して)(同法4条1項,需要調整規制を廃止した。 )また,同法は,旅客の運賃及び料金の設定又は変更に関して認可制を維持した上で(同法9条の3第1項,同認可基準について「他の一般旅),客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること(4号)という基準は維持しつつ「能率的な経営」,,,」の下における適正な原価を償いかつ適正な利潤を含むものであることという従来の基準に代えて「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであること(1号)という基準を設」けた(同法9条の3第2項。すなわち,同項1号は,利用者保護の観点) から,運賃等の上限についてのみ規制し,運賃の下限については,不当競争の防止の観点から,同項3号で規制されることとなった。 ウ平成18年法律第40号による改正後の道路運送法(ただし,平成21年法律第64号による改正前のもの平成18年10月1日施行以下平。 。 「成18年改正法」という)の規定及び改正内容。 平成18年改正法は,前記許可制や運賃及び料金の設定及び変更に関する認可基準等については平成12年改正法と同一の規定を置くが,その目的については「貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)と相まって,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし,並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用 業の運営を適正かつ合理的なものとし,並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もつて公共の福祉を増進すること」と規定し,利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るという目的がさらに明確に定められている。 エ平成12年及び平成18年の道路運送法改正の趣旨上記アないしウのような改正経緯及び内容に照らすと,一般乗用旅客自動車運送事業に係る平成12年及び平成18年の道路運送法改正は,運賃の大幅な規制緩和を行うものであり,その内容は,需給調整規制を廃止す,,ることでタクシー業への新規参入を容易にして事業者間の競争を促進し事業者の創意工夫を活かした多様なサービスの提供や事業の効率化,活性化を図り,もって,多様化した利用者の需要に適合し,利用者の利便の確保,向上を図るという立法政策の下において,利用者の需要に対応して創意工夫を活かしたサービスを提供するために機動的・弾力的な運賃(特に安価な運賃)等の設定を可能にしたものである。他方で,運賃の不当な値下げ競争(いわゆるダンピング競争)が起こった場合には,過労運転の常態 化,輸送の安全確保の困難により,利用者の利便を損なう結果になるおそれがあることにかんがみ,引き続き運賃及び料金の設定及び変更について認可制が維持され,運賃の下限が規制されることとなった。 オ読替規定の趣旨前記のとおり,特措法に伴い制定された読替規定により,運賃及び料金の設定及び変更に関する認可基準のうち,法9条の3第2項1号は「能,率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであること」という文言を「 た読替規定により,運賃及び料金の設定及び変更に関する認可基準のうち,法9条の3第2項1号は「能,率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであること」という文言を「能率的な経営の下における適正な原価,に適正な利潤を加えたものであること」と読み替えられることになった。 すなわち,法9条の3第2項1号の規定は,運賃の上限のみを規制する内容から,当分の間,旧法と同様,運賃の下限についても規制する内容となった。 上記読替規定の内容に加え,特措法及び読替規定の制定過程における国土交通省及び国会内での審議の内容(乙9ないし13)や衆・参議院国土交通委員会の特措法に対する附帯決議の内容(乙10,同14)等に照らすと,法9条の3第2項1号についての読替規定は,健全な運賃競争が利用者の利益にかなうとともに,それによりタクシー業界全体の需要の増加がもたらされれば事業者やタクシー運転手にも有益である一方で,事業者が収支の採算を度外視した過度に低い運賃で事業を行う場合には,当該事業者の収益基盤の悪化や労働条件の悪化が予想されるとともに,他の事業者との間に過度の運賃競争を引き起こし,ひいては輸送の安全を害するおそれがあることから,自動認可運賃の下限を下回る運賃(以下「下限割れ運賃」という)を採用するに当たっては,当該運賃によって事業者の収。 支採算性,すなわち申請に係る運賃を採用した場合における収入及び原価を的確に審査することが求められているというべきである。 他方で,法は,特措法制定後においても「利用者の需要の多様化及び, 高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図る」という目的を維持し,事業開始時の免許制ないし需要調整 度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図る」という目的を維持し,事業開始時の免許制ないし需要調整規制を再び採用することをしていないのであるから,新規参入を容易にして,事業者間の競争を促進し,事業者の創意工夫を活かした多様なサービスの提供や事業の効率化,活性化を図り,もって,多様化した利用者の需要に適合し,利用者の利便の確保,向上を図るという立法政策自体に根本的な変更はないのであって,法9条の3第2項1号の定める収支採算性に関して,事業者が機動的・弾力的な運賃(特に安価な運賃)等を設定することを著しく困難ならしめるような審査をすることは法の趣旨に反し許されないというべきである。 (3)審査基準公示の内容法9条の3第2項1号(読み替え後のもの)の基準は,抽象的,概括的なものであって,同基準に適合するか否かは,処分行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし,必要な限度でその裁量によるべきものであるところ,審査基準公示は,自動認可運賃を下回る運賃の申請があった場合には,申請者の実績年度の原価及び収入を基に,原則として公示別紙2第2から第8までに定められた方法(本来的算定方法)に基づき,翌々年度である平年度の収入及び原価を査定して収支採算性を審査することとしている。 そして,公示別紙2第7において,平年度の運送収入については「車キロ,当たり収入×査定実車走行キロ」の計算式によって算出することとして,車キロ当たり収入については,実績年度の車キロ収入によることとし,実車走行キロを査定するための輸送力等については,公示別紙2第5で,過去5年間の実績の推移及び将来における合理的な予測を基礎に算定することとした上で,平年度の収入の査定に当 キロ収入によることとし,実車走行キロを査定するための輸送力等については,公示別紙2第5で,過去5年間の実績の推移及び将来における合理的な予測を基礎に算定することとした上で,平年度の収入の査定に当たって,合理的な理由があれば,これらの方法によらず,これに準じた形で算定することができる旨を定めている。 なお,上記規定の内容に加え,公示別紙4において,新規参入事業者から自動認可運賃に該当しない運賃申請があった場合は,少なくとも1年間は自動認可運賃を採用することを指導する旨の規定があることも併せ考慮すると,審査基準公示は,平年度の輸送力ないし実車走行キロを査定するに当たり,過去の実績数値を重視しているということができるが,他方,審査基準公示によっても,過去5年間の輸送実績を基に,具体的にどのような手法を用いて,平年度の輸送力を合理的に予測するのかについての規定はなく,これが将来に関する予測であることからすると,必ずしも過去の実績数値から一義的な手法で算出しなければならないことまでを定めたものではないと考えられる。したがって,この点については,原則として,過去5年間の輸送実績を基礎とした査定を行うべきであるが,それによって,平年度の輸送力の予測がむしろ困難となる等の合理的な理由が存する場合には,個別具体的事情に応じて,輸送力査定の基礎となる実績期間を調整することも許容されているものと解される。 (4)本件処分についての裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無ア本件算定方法による運送収入計算の合理性について(ア)審査基準公示の定める算定方法申立人は,本件算定方法を用いて,平年度の運送収入の予測を行っているところ,これは,審査基準公示の定めた本来的算定方法に直接依拠するものではないが,前記のとおり,審査基準公示は,収支の算定について, 立人は,本件算定方法を用いて,平年度の運送収入の予測を行っているところ,これは,審査基準公示の定めた本来的算定方法に直接依拠するものではないが,前記のとおり,審査基準公示は,収支の算定について,本来的算定方法によらない場合は,合理的理由を付した上で,これに準じた形で算定することとし,これを基に平年度における申請者の原価及び収入を査定することとしているから(公示別紙4第3,合理)的理由があれば,上記算定によらないことを容認していると考えられ,その場合,審査基準公示の上記規定からすれば,上記算定によることができない相当の理由があり,かつ,採用した算定方法に合理的な理由が あることを要すると解すべきである。 (イ)本来的算定方法によらない算定方法の許容性そこで,まず,本件において,本来的算定方法によることができない相当の理由があるかについてみると,申立人は,平成21年1月に開業したばかりで,最近の実績年度1年間の収支も,本件処分当時まだ明らかになってもいなかったものであるから,過去5年間の輸送実績はもとより,そもそも実績を基に算定することが困難な事情があったものということができ,処分行政庁も,前記のとおり,厳密に本来的算定方法による査定を行ったというわけではない。 そして,本件においては,原認可の後に法改正があり,運賃の額を変更せず,維持するためには,本来的算定方法によれば実績が必要であるところ,上記の理由から,実績によることが困難であるという事情が認められることからすれば,このような例外的な場合においては,本来的算定方法によることができない相当の理由を肯定すべきである。 (ウ)本件算定方法の合理性a次に,本件算定方法自体の合理性についてみると,上記のとおり,,,,本件算定方法は平成22年1月度以降毎月3名が入社する一 きない相当の理由を肯定すべきである。 (ウ)本件算定方法の合理性a次に,本件算定方法自体の合理性についてみると,上記のとおり,,,,本件算定方法は平成22年1月度以降毎月3名が入社する一方で所定の割合に応じた社歴の社員3名が退職し,申立人の社員は,平成22年1月度以降も,その社歴に応じて,平成21年12月度の社歴別運転者1人当たり月間稼働数及び1稼働当たり運送収入と同程度の成果を上げることができるという前提に依拠するものであるが,上記予測は現に,平成21年6月から同年10月までの5か月間で,申立人では合計24名が退職している事実(甲11)に照らしても,必ずしも十分な正確性を有するものとは認められず,ある程度長期的にみた場合には,相当の誤差が生じるおそれがあり,本件算定方法を,全くそのまま,蓋然性の高い予測方法と評価することは困難であるとい わざるを得ない。 bしかしながら,本件においては,申立人は,開業時にほぼ全員の運転手をタクシー運転手の経験のない者の中から新規採用し,様々な社員教育を施していること,申立人の運転手らは,社歴が短い間は,タクシー業務に不慣れなために運送収入が低いが,社歴が長くなるにつれ,運転手は,タクシー業務に慣れて地理知識の習熟も進み,効率的に運転できるようになってくることが一応認められ(甲9,同10の1ないし3,同13,同15,同33,同47,審尋の全趣旨,社)歴が長くなるに従って,1人当たりの運送収入の額も増額傾向になるといった正の相関関係の存在を肯定することができる。 また,一般に,開業直後のタクシー業者の運送収入が低い水準にとどまることも明らかであり,実際に,申立人の運送収入も,平成21年2月度から同年6月度にかけて,飛躍的に上昇しており,その後,月ごとの運送収入ないし日車営収は若干 クシー業者の運送収入が低い水準にとどまることも明らかであり,実際に,申立人の運送収入も,平成21年2月度から同年6月度にかけて,飛躍的に上昇しており,その後,月ごとの運送収入ないし日車営収は若干上下しているが,全体としては少なくとも平成21年12月度までの間,増加傾向にあったということができる(乙22。 )そして,申立人は,利用者が申立人のタクシーを利用しやすいように繁華街などに専用乗り場を開設しており,申立人の専用乗場と無線予約による運送の割合は,平成21年6月度から平成22年1月度までの間,毎月65%以上を維持していること,利用頻度の高い利用者を対象とする会員制度を設けており,申立人の会員数は,開業以来増加していること等が一応認められ(甲13の1及び2,同15,同43,審尋の全趣旨,上記のような営業方法の採用によって,申立人)は相当数の固定顧客を確保しているということができる。 さらに,開業後2年以上経過している東京,名古屋,大阪,神戸の申立人のグループ会社の日車営収の推移をみても,日車営収が安定す るに至るには開業後約1年を要していること(甲33)からすると,平成21年7月度から同年11月度までにかけても,申立人の運送収,,入はいまだ過渡期の数値にとどまるものであって平年度においてもこれと同程度の運送収入にとどまるとは限らないと見るのがむしろ自然で常識的な予測ということができる。 以上からすれば,本件算定方法は,12月が一般的に運送収入が1年のうちで最も高くなる時期とされていることを踏まえても,また,前記のとおり従業員の入退社数における誤差があるとしても,少なくとも上記の誤差の影響が比較的小さいと考えられる3か月程度の短期的な予測としては,合理性を失わないものというべきであり,その後の運送収入の季節的変動を考慮 入退社数における誤差があるとしても,少なくとも上記の誤差の影響が比較的小さいと考えられる3か月程度の短期的な予測としては,合理性を失わないものというべきであり,その後の運送収入の季節的変動を考慮しても,少なくとも上記期間と同水準の運送収入を維持していく可能性が相当高いということができる。このことは,本件処分の時点では明らかになっていなかった数値ではあるものの,申立人の平成22年1月度ないし3月度の運送収入がそれぞれ4796万2850円,4877万8400円,4511万7000円であったこと(甲32)によって,実際に裏付けられる形となっている。 cそうすると,少なくとも,平年度における申立人の運送収入が,平成21年12月度及び平成22年1月度ないし3月度までの本件算定方法による運送収入の水準を維持することができるという限度では,申立人は,蓋然性の高い現実的な予測を行っているものと認めることができ,その限度で,本件算定方法の合理性は肯定し得るものというべきである。 (エ)収支の比較そして,平年度の各原価の計算において,費目ごとに,申立人の申請値と処分行政庁の査定数値を比較し,いずれか高い方を採用すると,人 件費3億6987万7000円,燃料油脂費4561万1000円,車両修繕費967万7000円,車両償却費63万2000円,その他運送費6119万2000円,一般管理費6401万9000円,営業外費用360万円となり,その合計から,処分行政庁の査定数値である営業外収益149万21000円を控除して,これと収支相償う運送収入を計算すると,5億3968万7000円となり,これを12か月で除すると,約4497万4000円となるところ,上記平成21年12月度の実績及び平成22年1月度ないし3月度の本件算定方法による推計値はいずれも と,5億3968万7000円となり,これを12か月で除すると,約4497万4000円となるところ,上記平成21年12月度の実績及び平成22年1月度ないし3月度の本件算定方法による推計値はいずれもこれを上回っており,同水準の運送収入が継続すれば,上記原価をかなり上回るものと一応認められる。 イ処分行政庁の査定の合理性についてこれに対し,本件処分における処分行政庁の査定の合理性を見るに,前記のとおり,処分行政庁は,申立人の平成21年3月度ないし同年11月度の実車走行キロ及び運送収入の実績値に基づき,この期間の申立人の輸送力が平年度まで変動しないものとして,初乗り運賃を500円とした場合の平年度の運送収入を4億7576万6000円(この場合の日車営収は2万8284円)と査定したものであるが,申立人の平成21年3月度ないし同年5月度の①実車走行キロ,②実車率は,同年3月度が,①7万9096km,②27.7%,同年4月度が①11万1176km,②29.5%,同年5月度が,①12万4173km,②31.2%であったところ,その後の期間において,実車走行キロが12万5000km以下となった月や実車率が35%以下となった月はなく,同年6月度ないし同年12月度の平均をみると,同年2月度を除外した平成21年3月度ないし同年5月度の平均と比較しても,実車走行キロにおいて31%増加している。これらの数値からみて,少なくとも平成21年5月度までは,開業直後の時期のため,それ以後の時期に比して,明らかに低い数値となって おり,これが平年度の申立人の輸送力を合理的に予測する上での実績数値としての意味を有するとするのは合理的とは言い難い。 また,申立人の日車営収をみても,処分行政庁は,これを2万8284円と査定しているところ(乙6,平成21年3月度から同年 的に予測する上での実績数値としての意味を有するとするのは合理的とは言い難い。 また,申立人の日車営収をみても,処分行政庁は,これを2万8284円と査定しているところ(乙6,平成21年3月度から同年5月度まで)は,2万8000円を下回るものであったが,同年6月度以降はすべてこれを上回っており,平成21年12月度の日車営収は3万3195円に達していること(乙22)等に照らすと,平年度の運送収入に関する処分庁の上記査定結果は低きに失するものといわざるを得ない。なお,本件処分後の事情ではあるが,平成22年1月度ないし同年3月度の日車営収の額はいずれの月も3万2000円を上回っており,処分庁の査定数値とは顕著な乖離が存する(甲32。 )確かに,平年度の輸送力に関して正確な予測を行うためには,一般的には,一定程度のまとまった期間の申請業者の実績数値を踏まえる必要があると考えられるものの,本件のように,申請者が開業後間もない業者である場合については,開業後数か月で輸送力や運送収入が安定するとは考え難く,前記のとおり,申立人のグループ会社の開業後の日車営収の推移を,,みると日車営収が安定するのは開業後約1年を経過したころであるから開業して間もない時期も含めた実績数値を用いることは,むしろ平年度の輸送力や運送収入の予測の正確性を損ねることにつながるのであって,少なくとも,前記のとおり,平成21年3月度ないし同年5月度の申立人の実績値を平年度の運送収入の査定の基礎から除外しなかったことは,平年度の運送収入につき蓋然性の高い予測を行うといった観点からすると,不適切であったといわざるを得ない。 また,本件処分に際しては,同年12月度の実績値を査定の基礎に含めることが可能であったのに,申立人にとって重要な意味を持つ直近の実績値を査定の基礎から除外し と,不適切であったといわざるを得ない。 また,本件処分に際しては,同年12月度の実績値を査定の基礎に含めることが可能であったのに,申立人にとって重要な意味を持つ直近の実績値を査定の基礎から除外したことにも問題がないとはいえない。 そうすると,上記のような運送収入の査定については,処分行政庁に一定の裁量の余地があることを踏まえてもなお,合理性に疑問がある。 以上によれば,前記のとおり,審査基準公示も合理性を有する算定方法を排斥するものでないと解され,平成21年12月度の実績及び本件算定方法による平成22年1月度ないし3月度の推計値については,合理的と,,,一応認められるから処分行政庁がこれを不合理として排斥したことはその裁量権を逸脱するものと一応いうことができ,本件申請は審査基準公示に基づく条件を付した上でこれを認可すべきであったというべきである。なお,本件申請と原認可の間で「運賃及び料金並びに適用方」においてわずかな差異があるが,この差異をもって認可の可否につながるようなものであると認めるに足りる主張及び疎明はない。 ウ相手方の主張について(ア)相手方は,社歴別輸送実績値等を運送収入の算定基礎とする理由が明らかでなく,また合理性もないし,今後,申立人の運送収入の増額につながることについて確たる根拠がない旨の主張をする。 しかしながら,上記のとおり,申立人の事業形態及び社歴別輸送実績に照らせば,現時点で社歴の浅い運転手が今後経験を積み,全体として社歴の長い運転手が増えることによって,一定程度の増収が見込まれるのであって,申立人の本件算定方法には前記の限度ではあるが,一定の合理性が一応認められる。 また,相手方は,申立人の今後の増収について確たる根拠を求めるようであるが,もともと将来の年度である平年度の収支採算性を審査する 本件算定方法には前記の限度ではあるが,一定の合理性が一応認められる。 また,相手方は,申立人の今後の増収について確たる根拠を求めるようであるが,もともと将来の年度である平年度の収支採算性を審査する以上,合理的な推計によることがやむを得ない場合はあり得るというべきであり,相手方の上記主張は採用できない。 (イ)また,相手方は,タクシー業者の収入に季節変動があることに照らし,平成21年12月度以外の運送収入の実績値を全く考慮せずに,同 月度の金額のみを考慮することは合理的でない旨主張し,確かに,12月は1年のうちで最も運送収入が高くなる時期であることからすると,平成21年12月度前後の実績値のみを算定の基礎とすることには疑問がないわけではない。 しかしながら,前記の諸事情,すなわち,社歴と1人当たりの運送収入に正の相関関係があること,開業後数か月で運送収入が安定するとは考え難いこと,実際,申立人グループ会社の開業後の日車営収が安定したとみられるのは開業後約1年を経過したころであること等からすると,今後の運送収入及び日車営収の推移を予測する上では,開業からより期間が経過した時点での実績値の方が価値があるというべきであるし,本件処分後に判明した平成22年1月度ないし3月度の実績に照らしても,上記12月の実績値を算定に当たって重視することには合理性,。 が一応認められるというべきであり相手方の上記主張は採用できないなお,平成21年11月度以降の実績については,本件申請後の事情であるから,申立人において,本件申請の審査等を有利にするため,従業員に特に長時間の運転を指示するなどして実績を上げさせているなどの可能性も考え得ないではなく,仮に,申立人がそのような労働条件の悪化ひいては輸送の安全を害するような営業方法を採っているのであれば, 員に特に長時間の運転を指示するなどして実績を上げさせているなどの可能性も考え得ないではなく,仮に,申立人がそのような労働条件の悪化ひいては輸送の安全を害するような営業方法を採っているのであれば,それは前記の法の趣旨にもとるものであるから,そもそもそのような実績に基づく算定も許されないというべきであるが,現時点では,そのような事情を窺わせる主張及び疎明はない。 ,,,(ウ)さらに相手方は申立人が算定根拠について合理的な説明をせず申立人の平成21年12月度以降の原価及び収入の実績額について,信用性のあるデータによって確認することができなかった旨の主張をする。 ,,,しかしながら申立人は本件原価計算書に社歴別輸送実績を記載し 社歴の長い運転手が増えることによって,申立人の運送収入が増加する見込みであることを説明していたと認められるし(甲37,また,平)成21年12月度の原価及び収入については,本件処分以前に,申立人は一応の資料を提出しており(甲9,同10の1,同12,同37,乙20,これで処分行政庁が不十分と考えたのであれば,さらにその詳)細を提出させることも可能であったと考えられるから,平成21年12月度のデータを確認することができなかったとする相手方の主張は採用できない。 (5)小括以上のとおり,申立人の行った平年度の運送収入の予測は,前記の限度では,是認することのできるものであったにもかかわらず,処分行政庁は,これを排斥して,開業して間もない時期の実績数値も査定の基礎に含める一方で,直近の平成21年12月度の実績を除いた実績期間の設定を行い,平年度の運送収入の査定を行った結果,本件処分を行ったものであって,現時点の主張及び疎明資料を前提とする限り本件申請が法9条の3第2項1号読,(み替え後のもの「能率 除いた実績期間の設定を行い,平年度の運送収入の査定を行った結果,本件処分を行ったものであって,現時点の主張及び疎明資料を前提とする限り本件申請が法9条の3第2項1号読,(み替え後のもの「能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適)正な利潤を含むものであること」の要件を充足し,本件処分が裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであるとの申立人の主張には理由があると一応認められるから,本件は「本案について理由があるとみえるとき」に当たるというべきである。 争点2(償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか)について(1)行訴法37条の5第1項は,仮の義務付けの要件として「償うことので」,,きない損害を避けるため緊急の必要があることを要求しているがこれは仮の義務付けが本案判決の前に本案訴訟の結果と同じ内容を仮の裁判で実現するものであることから,そのような救済にふさわしい損害の重大性と緊急 の必要性を要求したものであると解される。そうすると「償うことのでき,ない損害を避けるため緊急の必要がある」とは,仮の義務付けに係る処分又は裁決がされないことによって生じる損害が,事後的な金銭賠償により回復することが不可能であるか,又は金銭賠償のみによって損害を甘受させることが,社会通念上著しく不相当とみられる場合であって,そのような損害の発生が切迫しており,これを避けなければならない緊急の必要性が存在することをいうと解するべきである。 (2)これを本件についてみると,原認可についての延長後の期限は平成22年5月24日であり,さらなる延長は見込めないこと,申立人は,従業員であるタクシー運転手らとの雇用契約上,歩合給を含む約定をしていること,申立人は,開業に当たって,タクシー運転手の経験のない者多数を新規採用して社員 ,さらなる延長は見込めないこと,申立人は,従業員であるタクシー運転手らとの雇用契約上,歩合給を含む約定をしていること,申立人は,開業に当たって,タクシー運転手の経験のない者多数を新規採用して社員教育を施し,さらにタクシー運転手としての経験を積ませるという従業員に対する教育方法を採っていること,タクシー運転手としての経験期間と1人当たりの運送収入の間には正の相関関係があること,申立人の事業は,いわゆる流し営業よりは,専用乗り場と無線予約による営業を中心としており,また,会員を募集して営業を行っていること,申立人の営業収入はほとんどすべて福岡地区におけるタクシー営業によるものであること,同営業の固定経費も1日100万円に上るものであること等の事情が一応認めら(,,,,,)。 れる甲9同10の1ないし3同13同43乙30審尋の全趣旨そうすると,本件申請について認可がされない場合,申立人は,原認可に付された期限である平成22年5月24日の経過をもって,そのタクシー事業に係る営業を停止せざるを得ないものと考えられるところ,営業停止によって,タクシー運転手である申立人の従業員が減収等を理由に退職するおそれは大きいし,その場合,上記のような教育等を行ってきたことが無為に帰,。 することになり申立人の営業上の人的基盤が失われることになりかねないまた,上記のような申立人の営業方法に照らし,営業停止が,会員となっ た顧客や予約をして申立人のタクシーを利用してきた顧客に対する営業上の信頼関係を直ちに毀損するものであることも明らかである。 さらには,申立人の営業収入が失われ,固定経費の支出が続くとすれば,申立人の経営自体に重大な影響が及ぶ可能性も否定できず,そのような結果が生じたような場合にはもはや金銭賠償によりその損害を回復 る。 さらには,申立人の営業収入が失われ,固定経費の支出が続くとすれば,申立人の経営自体に重大な影響が及ぶ可能性も否定できず,そのような結果が生じたような場合にはもはや金銭賠償によりその損害を回復することが不可能であることは明らかである。 上記のとおり,認可がされない場合の申立人の損害は,会社の人的基盤の喪失や顧客等との信頼関係の破壊を含むものと考えられ,金銭的損害にとどまるものではないといえるし,仮に究極的には金銭によって賠償し得ないではないとしても,上記のような性質の損害は,金銭賠償のみによって甘受させることが社会通念上著しく不相当であるというべきである。 以上によれば,本件申請について認可がされないことによって申立人が被る上記損害は「償うことのできない損害」に該当し,また,原認可の期限は平成22年5月24日であるから,損害の発生が切迫しており,上記損害を避ける緊急の必要性も肯定することができる。 (3)次に,上記の観点から,償うことのできない損害が生じるおそれのある,,,期間についてみると現時点から平成22年5月24日までの間にはまだ原認可の効力が継続しているのであるから,そのおそれはないというべきである。 また,申立人は,今後,本件処分後の実績をも踏まえた収支計算に基づいて,再度の認可申請を行うことが可能であり,申立人の運送収入は,本件処分においては考慮されていない平成22年1月度以降の期間にも順調に上昇しているというのであるから,処分行政庁がこれら直近の実績数値をも加え,。 て査定を行う場合には査定結果が異なる結論に達する可能性も十分にあるそうすると,今後原認可の期限が経過するまでに申請を行えば,その標準審理期間が3か月であること(乙23)に照らし,遅くともその4か月後まで には,相当な運賃額による認可を得られ 能性も十分にあるそうすると,今後原認可の期限が経過するまでに申請を行えば,その標準審理期間が3か月であること(乙23)に照らし,遅くともその4か月後まで には,相当な運賃額による認可を得られる見込みが高いというべきであるから,その後の期間については,現時点で償うことのできない損害が生じるおそれがあるということはできない。 さらに,本案事件の第1審判決の言渡しの後についても,上記損害発生のおそれがあるとはいえないから,仮の義務付けの終期は,平成22年9月24日又は本案事件の第1審判決の言渡しの日のいずれか早い日とするのが相当である。 なお,申立人は無条件での認可の仮の義務付けを求めているが,原認可に付されている条件を解除する理由はなく,審査基準公示上も条件を付することが定められている(甲7)から,原認可と同一の条件を付して認可することを仮に義務付けることが相当である。 争点3(公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないか)について相手方は,本件申請を認可した場合,過当競争を防止して輸送の安全を確保しようとした法9条の3(読み替え後のもの)の趣旨に反する認可がなされることによって,認可制度の運用が混乱する等と主張する。 しかしながら,個別の事情の下に,単独の案件である本件申請の認可を仮に義務付けたとしても,直ちに運賃認可制度の運用に重大な混乱が生じるとは認め難いし,そもそも申立人は平成21年1月30日の開業以来,初乗り運賃を500円と設定してタクシー業を行っているところ,これによって実際に過当競争が生じたり,輸送の安全が害されたりしたという主張及び疎明はなされて,,いないのであるから現行運賃によるタクシー業の継続を認めることによって公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとはいえない。 結論 以上によれば,本件申立ては主 う主張及び疎明はなされて,,いないのであるから現行運賃によるタクシー業の継続を認めることによって公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとはいえない。 結論 以上によれば,本件申立ては主文1項の限度で理由があるから認容し,その余の申立ては理由がないから却下することとして,主文のとおり決定する。 平成22年5月12日 福岡地方裁判所第3民事部裁判長裁判官増田隆久裁判官橋爪信裁判官關隆太郎 別紙1認可の条件 運転者の労働条件の著しい低下につながらないように配慮すること。 事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準(国土交通省告示第千六百七十五号)に抵触しないこと。 一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金に係る法令に抵触しないこと。 実施期間において道路運送法第94条第1項及び旅客自動車運送事業等報告規則第3条に基づき九州運輸局が定める報告書を歴月ごとにとりまとめ、翌月の15日までに九州運輸局あてに提出すること。 上記1~4の条件に違反した場合には認可を取り消すことがある。
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