主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 本件を東京地方裁判所に差し戻す。 第2 原審における請求の趣旨 1 処分行政庁が平成22年8月2日付けでした控訴人に対する地方税法(以下「法」という。)433条5項に基づく照会についての回答(○世税評第○号)のうち,同項本文(当該申出に係る主張に理由があることを明らかにするために必要な事項)に該当しないため回答できないとした照会事項に対する不回答処分を取り消す。 2 処分行政庁が平成22年8月2日付けでした控訴人に対する法433条5項に基づく照会についての回答(○世税評第○号)のうち,同項本文(当該申出に係る主張に理由があることを明らかにするために必要な事項)に該当しないため回答できないとした照会事項に対する不回答処分を取り消す。 3 処分行政庁は,控訴人に対し,控訴人が平成22年7月21日付けでした法433条5項による申出人の照会2件(○東固審委申第○号事件に係るもの及び○東固審委申第○号事件に係るもの)について,書面で回答せよ。 4 訴訟費用は,被控訴人の負担とする。 第3 事案の概要 1 本件は,原判決別紙物件目録記載の各建物(原判決にいう「本件各家屋」。 以下この語を用いる。)の平成21年度固定資産税・都市計画税の納税義務者であり,同年度の固定資産課税台帳に登録された本件各家屋の価格について,東京都固定資産評価審査委員会に法432条1項の審査の申出をした控訴人 が,処分行政庁に対して法433条5項に基づく照会をしたところ,処分行政庁から,その一部について同項本文所定の「当該申出に係る主張に理由があることを明らかにするために必要な事項」に該当しないことを理由に回答 行政庁に対して法433条5項に基づく照会をしたところ,処分行政庁から,その一部について同項本文所定の「当該申出に係る主張に理由があることを明らかにするために必要な事項」に該当しないことを理由に回答しないとの通知(原判決にいう「本件各不回答」。以下この語を用いる。)を受けたことから,これが違法であるとして,その取消しを求めるとともに,行政事件訴訟法37条の3に基づき,上記不回答部分に相当する事項についての回答の義務付けを求める事案である。 2 原審は,本件各不回答が行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」には該当しないから本件取消しの訴えは不適法であり,本件義務付けの訴えも,同条6項2号に違反しており,同法37条の3第3項所定の訴訟要件も満たしていないから不適法であるとして,本件訴えをいずれも却下した。これを不服として,控訴人(一審原告)が控訴したものである。 3 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,当審における控訴人の主張を次のとおり加えるほか,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1から3まで(原判決2頁14行目~7頁21行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決2頁24行目の「処分行政庁が,」の次に「法411条1項及び東京都都税条例4条の3第1項の規定に基づき,」を加える。 (当審における控訴人の主張)本件各不回答が行政事件訴訟法3条2項の「処分」に該当することは明らかであり,これを否定した原判決は,次の点で誤りがある。 (1) 市町村長の回答義務について法433条5項に基づく照会を受けた市町村長には回答義務があると解すべきであり(同項の新設に当たり参考にされたとされる民事訴訟法163条についても,同条の当事者照会を受けた当事者には回答義務があると解されている。),そうすると, た市町村長には回答義務があると解すべきであり(同項の新設に当たり参考にされたとされる民事訴訟法163条についても,同条の当事者照会を受けた当事者には回答義務があると解されている。),そうすると,同照会に対する回答を拒否する行為は,審査申出 人の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものということができる。 したがって,本件各不回答は,処分に該当する。 (2) 法433条3項の資料提出要求の制度について原判決は,市町村長が適法な照会に回答しないなどの対応をした場合には法433条3項による資料請求をすることができると指摘し,これを,市町村長の不回答を抗告訴訟で争うことが予定されていない理由の一つに挙げるが,審査の申出の実務上,法433条5項による申出人照会制度と同条3項による資料提出要求制度は同一事項についての2段構えの制度として運用されていない。すなわち,実務上,同条3項の制度は,同条5項では回答を得られない事項のためのものと位置付けられており,固定資産評価審査委員会は,審査申出人が同条5項の照会によって入手し得る資料については,同条3項に基づいて資料提出を求めることはしていないから,同項による資料請求ができることは,同条5項に基づく照会に対する不回答を抗告訴訟で争えない根拠にはなり得ない。 (3) 審査決定までの期間について原判決は,審査の申出を受けた日から30日以内に審査の決定をしなければならないとする法433条1項を,同条5項における市町村長の対応自体を抗告訴訟で争うことを法が予定していない根拠の一つに挙げるが,同項は訓示規定にすぎないと解されており,実務上,審査の申出から審査の決定までの期間は長期に及んでいる。したがって,この規定を根拠に,同条5項に基づく照会に対する不回答を抗告訴訟で争うことを法が予定 項は訓示規定にすぎないと解されており,実務上,審査の申出から審査の決定までの期間は長期に及んでいる。したがって,この規定を根拠に,同条5項に基づく照会に対する不回答を抗告訴訟で争うことを法が予定していないとすることはできない。 (4) 審査決定の取消訴訟という手段について原判決は,固定資産評価審査委員会の審査の決定に不服がある審査申出人は,その取消しの訴えを提起でき,その訴訟手続内で必要な主張立証等ができることを指摘し,法433条5項に基づく照会に対する不回答が処分でな いと解する根拠の一つに挙げる。しかし,固定資産評価審査委員会の決定に対する抗告訴訟では,市町村長の不回答の違法を争うことができない。また,仮に納税者が同訴訟の中で求める資料を入手できたとしても,その結果,固定資産の評価についての納税者の主張に理由がないことが明らかになると,納税者は敗訴してしまうことになるから,法433条5項で回答を得ておく必要性は否定されない。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の本件訴えはいずれも不適法であるから却下すべきものと判断する。その理由は,次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の1及び2(原判決7頁23行目~12頁7行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決9頁15行目の「433条3項」の次に「に相当する規定。」を加える。 (2) 同10頁20行目の「任意に(誠実に)」を削る。 (3) 同11頁2行目の「実際に回答するか否かは相手方の任意に委ねられ,」を削り,8行目の「市町村長に対し,」の次に「固定資産評価審査委員会の審査手続を離れて,」を加える。 2 当審における控訴人の主張に鑑み,説明を付加する。 (1) 控訴人は,法433条5項に基づく 削り,8行目の「市町村長に対し,」の次に「固定資産評価審査委員会の審査手続を離れて,」を加える。 2 当審における控訴人の主張に鑑み,説明を付加する。 (1) 控訴人は,法433条5項に基づく照会を受けた市町村長には回答義務があり,回答を拒否する行為は審査申出人の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすとし,このことを理由に,本件各不回答は処分に該当する旨主張する。 確かに,法433条5項は,固定資産評価審査委員会の審査の迅速化を図るために,審査申出人に市町村長に対する照会の権限を認めたものであって,同照会を受けた市町村長は,同項ただし書の各号に該当しない限り,照会に対する回答をすることが当然に予定されているものである。 しかしながら,上記訂正の上引用した原判決の説示するとおり,法433条5 項は,固定資産評価審査委員会が主宰して行う審査手続を充実させ,迅速化させるために,審査申出人の書面による照会とこれに対する市町村長の書面による回答とによって両者の間で審査に必要な資料が収集され,争点整理が円滑に行われることを期待してそのための制度を整備したものであり,同項に基づく照会に対し市町村長が一方的に優越的な地位に立って審査申出人の手続上の権利利益の内容を決定する権限を市町村長に付与する趣旨のものでないことは明らかである。このことは,同項に基づく照会に対する市町村長の対応自体に対する不服申立ての手続や制裁等が法に規定されておらず,むしろ当該照会をすることができる期間が審査の申出がされてから固定資産評価審査委員会が審査の決定をするまでの間(同条1項によれば,その申出を受けた日から30日以内である。)に限られることにも表れているというべきである。上記の法の規定の文言及び法433条5項の立法趣旨等を総合すれば,法433条5項の審査 間(同条1項によれば,その申出を受けた日から30日以内である。)に限られることにも表れているというべきである。上記の法の規定の文言及び法433条5項の立法趣旨等を総合すれば,法433条5項の審査申出人の市町村長に対する照会は,固定資産評価審査委員会の審査手続の一環として,審査申出人が市町村長から固定資産の評価に必要な資料等の審査の申出に係る主張に理由があることを明らかにするために必要な事項に関する情報を入手し,固定資産評価審査委員会が判断すべき争点を明らかにするために認められたものにすぎないから,法は,同照会に対する市町村長の対応自体を,同審査手続から離れて,別個に抗告訴訟で争うことが可能な処分として構成していないことが明らかというべきであり,また,そのように解しても,固定資産評価審査委員会の審査の決定の取消訴訟を提起してその訴訟手続内において必要な資料を入手し,主張立証を行うことが可能であるから,固定資産課税台帳に登録された価格に係る審査申出人の権利の救済の目的は,十分に達することが可能である。 したがって,本件各不回答が処分に該当する旨の控訴人の主張は,採用できない。 (2) 控訴人は,固定資産評価審査委員会の審査の実務上,法433条3項の制度 は,同条5項では回答を得られないもののためのものと位置付けられており,固定資産評価審査委員会が,審査申出人が同条5項の照会によって入手し得る資料については,同条3項に基づいて資料提出を求めることはしていないこと,審査の申出を受けた日から30日以内に審査の決定をしなければならないとする法433条1項は訓示規定にすぎないと解されており,実務上,審査の申出から審査の決定までの期間は長期に及んでいることを指摘し,法433条3項による資料提出要求制度が存在することや同条1項で審査の申出を 433条1項は訓示規定にすぎないと解されており,実務上,審査の申出から審査の決定までの期間は長期に及んでいることを指摘し,法433条3項による資料提出要求制度が存在することや同条1項で審査の申出を受けた日から30日以内に審査の決定をしなければならないことは,同条5項に基づく照会に対する不回答を抗告訴訟で争うことを否定する根拠になり得ないとの趣旨の主張をする。 しかし,仮に上記審査の実務上控訴人の指摘するような運用がされているとしても,前示のとおり,法の規定の文言及び法433条5項の立法趣旨等から,法433条5項の審査申出人の市町村長に対する照会は,固定資産評価審査委員会の審査手続の一環として認められたものにすぎず,その回答が抗告訴訟で争うことが可能な処分として構成されていないことは明らかであって,上記の運用は,このような法の構成を左右するものとはいえない。 したがって,この点についての控訴人の主張は,採用できない。 (3) 控訴人は,固定資産評価審査委員会の審査の決定に対する抗告訴訟では,市町村長の不回答の違法を争うことができないし,仮に納税者が同訴訟の中で求める資料を入手できたとしても,その結果,固定資産の評価についての納税者の主張に理由がないことが明らかになると,納税者は敗訴してしまうことになるから,法433条5項で回答を得ておく必要性は否定されない旨主張する。 しかし,前示のとおり,法が定める固定資産の価格に係る不服審査制度は,固定資産課税台帳に登録された価格についての不服に理由があるかどうかを審査の対象とするものであるところ,法433条5項の審査申出人の市町村長に対する照会は,固定資産評価審査委員会の審査手続の一環として,審査申出人が市町村 長から固定資産の評価に必要な資料等の審査の申出に係る主張に理由があること 法433条5項の審査申出人の市町村長に対する照会は,固定資産評価審査委員会の審査手続の一環として,審査申出人が市町村 長から固定資産の評価に必要な資料等の審査の申出に係る主張に理由があることを明らかにするために必要な事項に関する情報を入手し,固定資産評価審査委員会が判断すべき争点を明らかにするために認められたものにすぎないから,固定資産評価審査委員会の審査の決定に対する取消訴訟で同決定の違法を争うほかに,市町村長の不回答自体の違法を争う機会を保障する必要性があるとは認められない。また,固定資産の評価について理由のない主張をしている納税者にとって,固定資産評価審査委員会の審査の決定に対する取消訴訟の提起に先立ち,無駄な訴訟を提起しないで済むように,十分な資料を得ておく必要性があることは否定できないとしても,法433条5項の照会制度はそのためのものではないのであって,このような必要性は法的なものとはいい難く,このことを理由に,同項による市町村長の回答を「処分」と構成することはできない。 したがって,控訴人の上記主張も採用できない。 3 よって,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官髙世三郎 裁判官森一岳 裁判官廣田泰士
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