令和2刑(わ)2364 詐欺

裁判年月日・裁判所
令和4年1月28日 東京地方裁判所
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判決文本文4,146 文字)

令和4年1月28日東京地方裁判所刑事第7部宣告令和2年刑第2364号,同第2552号詐欺被告事件判決 主文 被告人を懲役8年に処する。 未決勾留日数中360日をその刑に算入する。 理由 【犯罪事実】被告人は,東京都千代田区(住所省略)に本店を置き,磁気治療器の販売等を業とするA株式会社の代表取締役会長として,家庭用磁気治療器(以下「本件商品」という。)の業務提供誘引販売取引,リース債権譲渡取引等に係る契約代金の名目で同社に金銭を支払うよう顧客を勧誘するなどの同社の業務全般を掌握していたものであるが,第1 顧客に対し,本件商品の業務提供誘引販売取引等に係る契約代金の名目で金銭を支払えば,配当金として,その一定割合に相当する金銭を毎月支払う上,契約の解約に伴い,元本の返済として,同契約代金の全額に相当する金銭を返済する旨申し向けるなどして,顧客から同契約代金の名目で金銭をだまし取ろうと考え,別表1(添付省略)記載のとおり,平成29年7月下旬頃から同年11月4日頃までの間,滋賀県近江八幡市(住所省略)B方ほか15か所において,24回にわたり,自ら又は同社役員,同社従業員Cらをして,D(当時71歳)ほか11名に対し,真実は,かねてより新規の顧客から得た金銭は,既存の顧客への元本の返済,配当金の支払等に費消するなどして,顧客への元本の返済等に要する金額が累積し続ける状況にあり,その他にも顧客への元本の返済等を確実に行うことを可能とする事業収益が得られる見込みもなく,既に同社の資金繰りがひっ迫しており,約定どおり顧客からの解約申入れに応じて元本を確実に返済し,かつ,配当金の支払を継続できる見込みがなかったのに,これらの事情を秘し, あたかも同社 なく,既に同社の資金繰りがひっ迫しており,約定どおり顧客からの解約申入れに応じて元本を確実に返済し,かつ,配当金の支払を継続できる見込みがなかったのに,これらの事情を秘し, あたかも同社の業績が好調で財務基盤も安定しているように装った上,本件商品の業務提供誘引販売取引等に係る契約を締結して契約代金を支払えば,同契約代金の年利6パーセント又は7.2パーセントに相当する金銭を支払うとともに,同契約をいつでも解約でき,解約の申入れに応じて確実に同契約代金の全額に相当する金銭を返済する旨うそを言い,Dらをその旨誤信させ,よって,同年8月4日から同年11月7日までの間,22回にわたり,滋賀県近江八幡市(住所省略)株式会社E銀行F代理店ほか14か所において,Dらから東京都豊島区(住所省略)株式会社G銀行H支店ほか3か所に開設された被告人らが管理するA株式会社名義の普通預金口座等に振込送金させるなどの方法により,Dらから現金合計8006万5000円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ第2 顧客に対し,本件商品のリース債権譲渡取引に係る契約代金の名目で金銭を支払えば,配当金として,その一定割合に相当する金銭を毎月支払う上,契約の解約に伴い,元本の返済として,同契約代金の全額に相当する金銭を返済する旨申し向けるなどして,顧客から同契約代金の名目で金銭をだまし取ろうと考え,別表2(添付省略)記載のとおり,平成29年11月5日頃から同年12月2日頃までの間,福島県二本松市(住所省略)A株式会社I店ほか14か所において,26回にわたり,自ら又は同社役員,同社従業員らをして,J(当時57歳)ほか10名に対し,真実は,かねてより新規の顧客から得た金銭は,既存の顧客への元本の返済,配当金の支払等に費消するなどして,顧客への元本の返済等に要する 社役員,同社従業員らをして,J(当時57歳)ほか10名に対し,真実は,かねてより新規の顧客から得た金銭は,既存の顧客への元本の返済,配当金の支払等に費消するなどして,顧客への元本の返済等に要する金額が累積し続ける状況にあり,その他にも顧客への元本の返済等を確実に行うことを可能とする事業収益が得られる見込みもなく,既に同社の資金繰りがひっ迫しており,約定どおり顧客からの解約申入れに応じて元本を確実に返済し,かつ,配当金の支払を継続できる見込みがなかったのに,これらの事情を秘し,あたかも同社の業績が好調で財務基盤も安定しているように装った上,本件商品のリース債権譲渡取引に係る契約を締結して契約代金を支払えば,同契約代金の年利8.57パーセントに相当する金銭を支払うとともに,同契約をいつでも解 約でき,解約の申入れに応じて確実に同契約代金の全額に相当する金銭を返済する旨うそを言い,Jらをその旨誤信させ,よって,同年11月13日から同年12月8日までの間,16回にわたり,福島県会津若松市(住所省略)株式会社K銀行L支店ほか12か所において,Jらから東京都中央区(住所省略)株式会社K銀行M支店ほか1か所に開設された被告人らが管理するA株式会社名義の普通預金口座等に振込送金させるなどの方法により,Jらから現金合計8549万8000円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させた。 【量刑の理由】 本件は,被告人が,自ら設立しワンマン体制の下で全国規模にまで成長させたAの経営を長らく続けるうちに,やがて経営状態が悪化し始め,ついには資金繰りがひっ迫する状態にまで陥っていたのに,全国各地において,4か月余りの間に,20名の被害者から,利殖商品の契約代金の名目で合計1億6500万円余りの現金をだまし取ったという,企業活動の形で行われた りがひっ迫する状態にまで陥っていたのに,全国各地において,4か月余りの間に,20名の被害者から,利殖商品の契約代金の名目で合計1億6500万円余りの現金をだまし取ったという,企業活動の形で行われた大型詐欺事犯である。 Aにおいては,連日のように各地で開催する催事等と呼ばれる説明会において,会長である被告人をはじめとする幹部等が講師を務め,社員らもこれと一体となって,集めた顧客に対し,老後の生活への不安を巧みについたりあおったりする活発な営業活動を繰り返し,いかにAの業績が好調であるかを謳いながら,Aの利殖商品が安心・安全で高利回りであることを強調して次々に契約を締結させていった。そして,被告人は,Aの経営ひっ迫状態については,顧客はもちろん,全国の社員らにも知らせずに,その社員らが自分の指示通りに動く企業体質であることを利用してそのような営業をさせていたのである。したがって,Aの企業活動として行われた本件犯行はひとえに被告人の指示によるものであるから,被告人がその責任を一手に担うべきは当然である。 本件に至る経緯について,被告人は加盟店等に対する指導,管理が不十分であったことなどを挙げるが,そういう問題ではないことは被告人自身がよく分かっているはずである。すなわち,被告人は,既に平成20年の時点において,当時 の監査役から,被告人の経営方針及び決算の不健全性,それらがいずれ刑事問題となる可能性を指摘されてそれを諫められながら,それらを改めることなく経営を続けた結果,Aの財政状態が悪化していく中で,平成28年12月には消費者庁から最初の行政処分(業務停止命令等)を受け,平成29年3月にも消費者庁から二度目の行政処分(同上)を受けるとともに,巨額の負債を隠蔽していた旨経営上深刻な指摘を受け,これを顧客に通知した上,監査法人等 最初の行政処分(業務停止命令等)を受け,平成29年3月にも消費者庁から二度目の行政処分(同上)を受けるとともに,巨額の負債を隠蔽していた旨経営上深刻な指摘を受け,これを顧客に通知した上,監査法人等による監査結果をも顧客に通知するよう求める措置命令を受けている。このように消費者庁が消費者の被害拡大防止策を講じ,Aの顧客に対し返金請求を促したことから,顧客による返金請求が増加する一方で,Aに融資する金融機関もなくなり,Aが自転車操業の状態に陥っていったのであるから,被告人としては,遅くともここで立ち止まって顧客らの被害拡大を少しでも食い止めるべきであった。にもかかわらず,被告人は,消費者庁の指摘等に十分耳を傾けずに問題のある経営方針を貫き,その後の監査によって巨額の債務超過まで指摘されながら,顧客に対しては消費者庁の求める通知をする一方で消費者庁の措置の不当性やAの業績の好調ぶりを訴えるだけでなく,返金を求める顧客に対し強く撤回を求めるよう全国の社員らに繰り返し指示していたのである。そうすると,被告人は,顧客の大切な財産をないがしろにしてでもAの延命を図るために本件犯行に及んだというほかなく,その経緯,動機においても非常に強い非難が妥当する。 もとより被害合計額は相当高額で,招くべくして招いた結果は非常に重大である上,その大部分が返還されずにいる。老後の蓄え等を失った被害者らの処罰感情が厳しいのは当然である。 以上のとおり,本件犯情は相当悪く,その刑事責任は重大であることから,長期の実刑は避けられない。 2 そうすると,被告人としては健康な体を作る商品を開発して病気の苦しみから救いたいとの思いでAを設立し,当初から詐欺の目的があったわけではないことや,被告人の得た高額の報酬はAに貸し付けられるなどしており,被告人が私利私 な体を作る商品を開発して病気の苦しみから救いたいとの思いでAを設立し,当初から詐欺の目的があったわけではないことや,被告人の得た高額の報酬はAに貸し付けられるなどしており,被告人が私利私 欲を図ったとする証拠がないことのほか,被告人が事実を認め,公判廷で被害者らに対して謝罪の言葉を述べるなどして被告人なりに反省の態度を示し,妻が被告人の社会復帰を待っていることや,被告人が高齢で健康状態に相当な問題と抱えていることなど被告人のために考慮すべき事情を踏まえても,主文程度の刑期は免れないと判断した。 (求刑懲役10年)令和4年1月28日東京地方裁判所刑事第7部 裁判長裁判官浅香竜太 裁判官野澤晃一 裁判官金井千夏

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