1令和6年7月2日宣告令和3年(わ)第205号 住居侵入、強盗殺人被告事件 主 文被告人を死刑に処する。 理 由(罪となるべき事実)被告人は、窃盗の目的で、令和2年2月2日午後7時22分頃から同日午後7時56分頃までの間に、大分県宇佐市a町b番地c所在のA方に侵入した後、A及びAの長男であるBを殺害して金品を強奪しようと考え、その頃から同日午後10時20分頃までの間に、いずれも殺意をもって、A(当時79歳)に対し、その頸部、頭部等をはさみ、菜切り包丁等で多数回突き刺すなどし、B(当時51歳)に対し、その左右肩甲上部、頸部等を前記はさみ、前記菜切り包丁等で多数回突き刺すなどし、よって、その場で、Aを左総頸動脈刺創に基づく失血により、Bを左右深頸動脈刺創に基づく失血により、それぞれ死亡させて殺害した上、A所有又は管理の現金少なくとも5万4000円を奪った。 (争点に対する判断)第1 本件の争点本件の主たる争点は、被告人の犯人性である。また、弁護人は、事件性に関し、犯人が公訴事実記載の現金約8万8000円を奪った事実は認められない旨主張する。 そこで、以下、これらの争点に対する当裁判所の判断を示す(以下、令和2年の表記は省略する。)。 第2 本件の事件性1 事実関係関係証拠によれば、本件の事件性に関する事実関係は、以下のとおりである。 2⑴ 判示のA方にはAとBの2人が居住していたところ、2月3日午前11時4分頃、A方のダイニングにおいて、顔面に大量の血液が付着するなどした状態で死亡しているAと、台所において、顔面に大量の血液が付着するなどし、後頭部に箸が、背部に千枚通し(以下「本件千枚通し」という。)の針がそれぞれ突き刺さった状態で死亡しているBが 着するなどした状態で死亡しているAと、台所において、顔面に大量の血液が付着するなどし、後頭部に箸が、背部に千枚通し(以下「本件千枚通し」という。)の針がそれぞれ突き刺さった状態で死亡しているBが発見された。Aの遺体には頸部や頭部等に合計50個以上の刺切創等があり、死因は左総頸動脈刺創に基づく失血であった。Bの遺体には、前記の創傷のほか、左右肩甲上部や頸部等に合計60個以上の刺切創等があり、死因は左右深頸動脈刺創に基づく失血であった。台所のシンク内には菜切り包丁(刃先に刃こぼれは認められず、刃体部分が湾曲していた。以下「本件菜切り包丁」という。)、はさみ(刃先に刃こぼれは認められず、持ち手の片方のプラスチック部分が欠けており、欠けたプラスチック片がダイニングで発見された。以下「本件はさみ」という。)、本件千枚通しの柄が置かれていた。ダイニングと台所には大きな血だまりやそれを拭き取った痕跡がある一方、それ以外の場所では点々とした血痕や血液足跡、血液靴下痕等が残されているのみであった。 ⑵ Aの最終生存確認日時は本件当日である同月2日午前11時頃、Bのそれは同日午後7時35分頃であり、両名の死亡推定日時は同日午後6時30分頃から翌3日午前1時頃までの間のいずれかの時点であった。ダイニングに設置されていた固定電話機の受話器等には血痕が付着しており、AのDNA型、AとBの各DNA型の混合と考えて矛盾のないDNA型が検出された。また、同電話機の最終発信日時は本件当日午後7時56分であり、番号「1」のみが入力されていた。 2 検討⑴ Aらの遺体の状況や死因、台所のシンク内に置かれていた本件菜切り包丁等の状態、A方の血痕の付着状況に加え、Aらの遺体を解剖した証人Cの「本件はさみや本件菜切り包丁等によってAらの遺体にあった刺切創等を生じさせ の状況や死因、台所のシンク内に置かれていた本件菜切り包丁等の状態、A方の血痕の付着状況に加え、Aらの遺体を解剖した証人Cの「本件はさみや本件菜切り包丁等によってAらの遺体にあった刺切創等を生じさせることは可能である」旨の供述(その信用性を疑わせる事情はない。)を併せて考慮すると、AとBは、A方において、犯人に殺害されたと認められる。また、固定電話機に関3する事実関係は、遅くとも本件当日午後7時56分頃には犯人がA方におり、Aらが、犯人の存在を認識し、あるいは、犯人に襲われ始めた後、番号「1」から始まる緊急電話、すなわち、警察機関や消防機関への通報を試みたものの、果たせなかった可能性を示しているから、犯人がその頃にはAらを襲い始めていたと合理的に推認できる。 ⑵ 次に、関係証拠によれば、Aらの遺体発見後、ダイニングに置かれていたAのショルダーバッグの中には財布とポーチが入っており、財布に現金約2000円が在中していたほか、ショルダーバッグの内側と財布・ポーチの各背面にBの血痕が付着していたことが認められる。 その上で、検察官は、Aの日記や残されていたレシート等から算出すると、本件当時、Aは少なくとも約9万円の現金を所持していたと推定されるところ、Aらの遺体発見後、Aの財布に在中していた現金は約2000円のみであったことから、犯人が物色してこの財布を見つけ、差額の現金約8万8000円を奪ったと認められる旨主張する。 そこで検討すると、前記の約9万円という金額は飽くまで推計にとどまり、弁護人が主張するとおり、Aの日記に記載されず、レシート等の記録に残らない使途での現金支出が全くなかったとは言い切れないから、本件当時のAの所持金はその金額より少なかった疑いを差し挟む余地がある。もっとも、Aの日記には万単位の収支に関する記載が複 ート等の記録に残らない使途での現金支出が全くなかったとは言い切れないから、本件当時のAの所持金はその金額より少なかった疑いを差し挟む余地がある。もっとも、Aの日記には万単位の収支に関する記載が複数あることに照らすと、それらの記載以外に万単位の現金支出がありながら、日記に記載されず、レシート等の記録にも残らなかった可能性は低く、現にそのような現金支出があったことを具体的に疑わせる事情は見当たらない。 また、前記のような差額現金が捜査機関に発見されないままA方等に残されていることを具体的に疑わせる事情も見当たらない。さらに、Aのショルダーバッグの内側と財布・ポーチの各背面といった場所にBの血痕が付着していた状況に照らすと、かかる血痕は、犯人がBを襲い始めた後、犯人又は生存中のBらがそれらの場所に触れたことで付着した可能性が高いところ、前記1⑴のようなBらの負傷状況を踏4まえれば、その段階でBらがショルダーバッグの内側等を触ることは考えにくいから、この血痕付着状況は、犯人がショルダーバッグの内側等を物色したことを相当程度推認させる事情といえる。 以上の諸事情を総合考慮すると、犯人が、前記の差額約8万8000円を奪ったとは認められないものの、Aのショルダーバッグ等を物色するなどして、相当額の現金を奪ったという限度ではこの事実を推認することができる。 3 小括前記の検討をまとめると、犯人は、遅くとも本件当日午後7時56分頃にはA方におり、A及びBに対し、それぞれその頸部等を本件はさみ、本件菜切り包丁等で多数回突き刺すなどして殺害した上、A所有又は管理に係る相当額の現金を奪ったと推認できる。 第3 被告人の犯人性1 被告人が使用していた普通乗用自動車(黒色プリウス、以下「被告人車両」という。)に関する積極的間接事実⑴ 事 有又は管理に係る相当額の現金を奪ったと推認できる。 第3 被告人の犯人性1 被告人が使用していた普通乗用自動車(黒色プリウス、以下「被告人車両」という。)に関する積極的間接事実⑴ 事実関係関係証拠によれば、被告人車両に関する事実関係は、以下のとおりである。 ア 被告人は、本件当日午後5時18分頃、被告人車両を運転して被告人方を出発した。 イ 被告人車両は、同日午後7時22分頃から午後10時20分頃までの間、A方の北方約550m付近に存在していた。 ウ 被告人は、同日午後11時52分頃、被告人車両を運転して大分県由布市内のコインランドリー(以下「本件コインランドリー」という。)に立ち寄り、翌3日午前0時9分頃、妻に電話をした後、帰宅した。 エ 同月9日、被告人車両のトランクからAの血液等が、運転席ヘッドレストからAと被告人の各DNA型の混合である可能性が極めて高いDNA型のヒト由来成分がそれぞれ採取された。 5⑵ 検討ア 前記⑴ア、ウの事実関係に加え、個人が所有する普通乗用自動車を一時的にせよ第三者に貸し渡すという事態は通常ないことを併せて考慮すると、前記⑴イの際も、被告人車両を使用していたのは被告人であったと合理的に推認できる。この事情は、その時間帯が、犯人がA方に存在していた時刻(午後7時56分頃)を含んでいることを踏まえると、被告人には本件犯行に及ぶ機会があったことを意味する。 イ また、前記⑴イの事実に加え、Aは被告人と面識がなく、本件犯行時以外の機会にA由来のDNA型が被告人車両内に遺留される可能性が低いことを併せて考慮すると、前記⑴エの事実関係は、前記アの事情とも相まって、本件犯行の機会に、同犯行によって生じたAの血液等の成分が被告人車両に持ち込まれたこと、ひいては、それを持ち れる可能性が低いことを併せて考慮すると、前記⑴エの事実関係は、前記アの事情とも相まって、本件犯行の機会に、同犯行によって生じたAの血液等の成分が被告人車両に持ち込まれたこと、ひいては、それを持ち込んだのは当時被告人車両を使用していた被告人であったこと、すなわち、被告人の犯人性を強く推認させる事情といえる。 2 A方に遺留された血液靴下痕と運動靴痕に関する積極的間接事実⑴ A方に遺留された血液靴下痕と被告人の足裏のフットプリント(以下「本件フットプリント」という。)の同一性この点の鑑定を行った証人Dの供述要旨は、以下のとおりである。 「E大学の教授が平成4年から平成5年までの間に採取した566人分の足跡から17歳以下の者、外国人と思われる者、足跡が二重になっていたり計測点と思われる部分が欠けていたりするものを除外した477人分の男性の足跡を比較資料とし、その各部の長さや角度を計測して集成するとともに、前記血液靴下痕のうち計測点を定義することができた3つと本件フットプリントについても、同様の計測をし、これらを分析した結果、当該血液靴下痕と本件フットプリントは、小指付け根下部の外側部輪郭に局所的な飛び出しがある、小指が内側に傾いている角度が非常に大きい、足長に対して足幅が広いという稀な形状が共通していると認められる。 したがって、両者は同一人のものだとしても矛盾がない」6証人Dは、生体学分野の第一人者であり、前記のような判断過程に不合理な点は見当たらず、その意見は十分に尊重できるから、A方に遺留された血液靴下痕と本件フットプリントは、証人Dが指摘する3点において特徴的な形状が共通すると認められ、このことは、被告人が本件当時A方に存在したことを推認させる事情となり得る。もっとも、弁護人が主張するとおり、前記比較資料は本件発 トは、証人Dが指摘する3点において特徴的な形状が共通すると認められ、このことは、被告人が本件当時A方に存在したことを推認させる事情となり得る。もっとも、弁護人が主張するとおり、前記比較資料は本件発生時から30年近く前のものであり、本件発生時における日本人成人男性の足跡の形状を適切に代表するものであるのか、前記比較資料には外国人の足跡が含まれておらず、前記血液靴下痕等の形状が外国人集団の足跡の形状と比較してみても稀であるといえるのかは証拠上明らかではないから、前記の推認力は限定的なものとならざるを得ない。 ⑵ A方に遺留された運動靴痕と被告人が購入した靴(メンズカインドシューズ、以下「本件靴」という。)の同一性ア 関係証拠によれば、本件靴に関する前提事実として、① 被告人は、本件の2日前である1月31日、大分市内の量販店において、本件靴1足等を購入したこと、② 被告人は、本件当日午後11時52分頃、本件コインランドリーにおいて、持ち込んだ3袋の中身を衣類用洗濯機と靴用洗濯機の中に投入し、翌3日午前5時9分頃、手袋を着用して本件コインランドリーに現れ、両洗濯機の中に入れていた物を取り出して持参した袋に入れたこと、③ 被告人は、同月4日の朝、被告人方付近地区のゴミ収集所に5足以上の靴が入ったゴミ袋を捨てたこと、④ 本件靴は、同月7日から同月16日にかけて実施された被告人方と被告人車両の捜索において発見されなかったことが認められる。 イ 次に、A方に遺留された運動靴痕と被告人が購入したものと同種の靴の同一性につき精査、検討を行った警察職員である証人Fは、「当該運動靴痕は、そこまで摩耗しているものとは思わなかった。また、両者は、底模様の特徴がおおむね一致しており、サイズに大きな矛盾はなかった」旨供述しているところ、その信用性を疑わ である証人Fは、「当該運動靴痕は、そこまで摩耗しているものとは思わなかった。また、両者は、底模様の特徴がおおむね一致しており、サイズに大きな矛盾はなかった」旨供述しているところ、その信用性を疑わせる事情は見当たらない。 7証人Fが供述するとおり、A方に遺留された当該運動靴痕と本件靴の特徴が酷似していたことは、被告人が本件当時A方に存在したことを推認させる事情となり得るものの、固有の特徴が一致しているとはいえず、本件靴は量販店で販売されていたように広く流通していたと考えられる商品であるため、この事情単独では、前記の推認力は限定的なものとならざるを得ない。もっとも、前記アの事実関係によれば、被告人は、本件の2日前に購入した本件靴を本件の2日後に捨てたことが合理的に推認できるところ、前記の事情に、かかる被告人の不審な行動が加わると、その時間的近接性にも照らし、前記の推認力は高まるといえる。 3 本件前後の被告人の行動に関する積極的間接事実⑴ 本件前の被告人の行動ア 事実関係関係証拠によれば、本件前の被告人の行動等に関する事実関係は、以下のとおりである。 被告人は、本件の2日前である1月31日午後4時45分頃、勤務先を退社した後、被告人車両を運転し、午後5時21分頃、大分県中津市内のアウトレット商品販売店に立ち寄り、ジャンパー1着(以下「本件ジャンパー」という。)を購入し、午後5時56分頃、妻に「ちょっと今眠気が来てて、30分くらい仮眠して帰ろうかな。帰りは高速使うよ」などというメッセージを送信した。 被告人車両は、同日午後6時4分頃から午後7時18分頃までの間はA方の北北東約2.9kmの地点にあるd駐車場(以下「本件駐車場」という。)付近に、午後7時32分頃から午後7時43分頃までの間はA方の北方約2 両は、同日午後6時4分頃から午後7時18分頃までの間はA方の北北東約2.9kmの地点にあるd駐車場(以下「本件駐車場」という。)付近に、午後7時32分頃から午後7時43分頃までの間はA方の北方約250m付近に、午後7時51分頃から午後8時35分頃までの間はA方の北方約550m付近にそれぞれ存在した後、高速道路を走行した。 同日午後7時18分頃から午後8時36分頃までの間は、被告人車両の位置情報と被告人のスマートフォンのロケーション履歴が連動しておらず、被告人のスマートフォンは本件駐車場に存在していた。 8 被告人は、同日午後9時46分頃、被告人車両を運転して大分市内の量販店に立ち寄り、本件靴1足等を購入した後、帰宅した。 被告人車両は、本件当日午後7時2分頃から午後7時6分頃までの間は本件駐車場の南方約700m付近に、午後7時22分頃から午後10時20分頃までの間はA方の北方約550m付近にそれぞれ存在しており、午後7時7分頃から午後10時21分頃までの間は、被告人車両の位置情報と被告人のスマートフォンのロケーション履歴が連動しておらず、被告人のスマートフォンは本件駐車場に存在していた。 イ 検討1月31日の被告人の行動に関しては、前記ア、の事実関係に照らすと、前記アの時間帯も、被告人が被告人車両を使用していたと合理的に推認できる。また、本件当日の被告人の行動に関し、前記アの時間帯に被告人が被告人車両を使用していたと合理的に推認できることは、前記1⑵アのとおりである。その上で、1月31日の本件駐車場付近及びA方付近における被告人車両の動静とその際の被告人のスマートフォンのロケーション履歴の位置関係が、本件当日のそれと共通していることを考慮すると、被告人のこれらの行動は、A方及びその周辺の下見やス びA方付近における被告人車両の動静とその際の被告人のスマートフォンのロケーション履歴の位置関係が、本件当日のそれと共通していることを考慮すると、被告人のこれらの行動は、A方及びその周辺の下見やスマートフォンのロケーション履歴を利用したアリバイ工作を図ったものとも評価でき、被告人が本件犯行の犯人であることと整合的な事情といえる。 ⑵ 本件後の被告人の行動(その1)ア 事実関係関係証拠によれば、本件後の被告人の行動に関する事実関係は、前記2⑵アの本件靴に関する事実関係のほか、以下のとおりである。 被告人は、インターネットで、本件の翌日である2月3日午前1時52分頃から「灯油に火をつける」と検索して「事件などで犯人が床に灯油をまき、火をつけ」などのサイトを閲覧し、午前9時38分頃から「zippoオイルはガソリン」「zippoオイル 成分」などと検索して「オイルライターは、ガソリンや灯油9でも着きますか?」「ジッポーのオイルの成分は、なんですか?灯油と同じですか?」などのサイトを閲覧し、午後3時38分頃から大分市内の3店舗でジッポーオイルとオイルライター専用オイル合計6点(合計約600ml)等を購入し、午後4時52分頃、被告人車両を運転してA方付近を通過した。 被告人は、インターネットで、同日午後2時53分頃から「宇佐警察署」「宇佐市 ニュース 速報」と検索して「宇佐警察署」「宇佐新聞─大分のニュースなら」「宇佐市の地域ニュース」といったサイトを閲覧し、午後5時34分頃から「殺人犯が捕まるまで」と検索して「警察に逮捕される前兆と流れ(逮捕前に電話が来る?)」「殺人罪で逮捕。死刑となる可能性は?死刑回避の為の弁護活動とは?(福岡の刑事事件に強い弁護士による無料相談)」といったサイトを閲覧し、午後8時6分頃から「殺 る前兆と流れ(逮捕前に電話が来る?)」「殺人罪で逮捕。死刑となる可能性は?死刑回避の為の弁護活動とは?(福岡の刑事事件に強い弁護士による無料相談)」といったサイトを閲覧し、午後8時6分頃から「殺人犯が捕まるまで」「宇佐市 事件」などと検索して「a町の住宅で男女2人の遺体(2020/02/03(月)」「宇佐警察署からのお知らせ」などのサイトを閲覧した。 被告人は、同月4日午前6時29分頃から午前6時49分頃までの間、大分市内のガソリンスタンドにおいて、被告人車両内を清掃し、午後8時9分頃からインターネットで「血液 車 落とすには」と検索して「車のシートに血液などの汚れ・シミがついた時の染み抜きの方法」「車のシートに血がついてしまった場合の汚れの落とし方教えてください」といったサイトを閲覧した。 イ 検討以上のような被告人の不審行動は、前記1⑵イの事情とも相まって、本件犯行の発覚を恐れ、それを免れるために種々の罪証隠滅工作を図るなどしたものとも評価でき、被告人が本件犯行の犯人であることと整合的な事情といえる。 ⑶ 本件後の被告人の行動(その2)ア 事実関係関係証拠によれば、被告人は、本件の翌日である2月3日午後3時56分頃から午後3時58分頃までの間、大分市内のコンビニエンスストアのATM機を操作し10て、2銀行の被告人の口座に各2万円を入金するなどし(なお、各口座の入金等前残高は3823円と1899円であった。)、消費者金融業者に1万4000円を返済する一方、午後6時2分頃、母に対し、月額7万円の家賃の援助を願い出るメッセージを送信したことが認められる。 イ 検討前記第2の3のとおり、犯人は、本件犯行において、A所有又は管理に係る相当額の現金を奪ったと推認できるところ、その当時、被告人に特段の臨 出るメッセージを送信したことが認められる。 イ 検討前記第2の3のとおり、犯人は、本件犯行において、A所有又は管理に係る相当額の現金を奪ったと推認できるところ、その当時、被告人に特段の臨時収入があったことをうかがわせる事情がないことを踏まえると、それにもかかわらず、自己の口座の残高が乏しく、消費者金融業者からの借入れがあり(借入残高は167万円余)、母に家賃の援助を願い出るような経済状況であった被告人が、本件の翌日という犯行に近接した時期に、5万4000円もの原資不明の現金を手にしていたことは、被告人が本件犯行の犯人であることと整合的な事情といえる。なお、被告人は、そのような金銭的にひっ迫した状況、特に、消費者金融業者からの借入れがあることを妻や両親に話せずにいたものであり、かかる事情は、借金の返済に充てる資金等欲しさに侵入窃盗に及ぶことを計画したと考えて不自然ではないという意味で、被告人の犯人性と矛盾しない。 4 小括以上のとおり、① 本件犯行当時、A方付近に存在する被告人車両を使用していたのはほかならぬ被告人であったところ、その機会に、同犯行によって生じたAの血液等の成分が被告人車両に持ち込まれたこと、② A方に遺留された血液靴下痕と被告人の足裏のフットプリントは特徴的な形状が共通し、また、A方に遺留された運動靴痕と被告人が本件の2日前に購入した靴の特徴が酷似しており、被告人が本件の2日後にその靴を捨てるという不審な行動をしていたこと、③ 被告人が、本件前、A方の下見やスマートフォンのロケーション履歴を利用したアリバイ工作を図ったものとも評価できる行動をし、本件後、本件犯行の発覚を恐れ、それを免れるために種々の罪証隠滅工作を図るなどしたものとも評価できる行動をしていた11こと、④ 被告人が、金銭的にひっ迫し 作を図ったものとも評価できる行動をし、本件後、本件犯行の発覚を恐れ、それを免れるために種々の罪証隠滅工作を図るなどしたものとも評価できる行動をしていた11こと、④ 被告人が、金銭的にひっ迫した状況であったにもかかわらず、本件の翌日、5万4000円もの原資不明の現金を手にしていたことといった諸事情は、それぞれが独立して被告人の犯人性を指向しており、①の事情は強い推認力を有し、それ以外の事情はその推認力を補強し、あるいは支えるものと評価できる。 5 被告人の供述とその信用性⑴ 被告人の供述要旨これに対し、被告人の公判供述の要旨は、以下のとおりである。 「1月31日、勤務先からの帰宅途中、本件駐車場に被告人車両をとめて仮眠をとっていると、プロレスマスクをかぶったユーチューバーを名乗る男(以下「甲」という。)から、道の駅の利用状況に関するアンケートを受け、その後、近くのサーキット場で行われているイベントにおいて被告人車両を並べて撮影することなどに協力してほしいとして送迎を依頼された。撮影に協力すれば、甲のユーチューブ動画に出演でき、子が見ると喜ぶなどと考え、了承した。被告人車両の横には白い車がとめられており、甲が同車の中にいる人物と話すことがあった。甲から撮影代として2万円を受け取り、撮影に使うカメラにノイズが走るのを防ぐためという甲の指示に従ってスマートフォンを本件駐車場に置いたまま、甲を被告人車両に乗せて甲が指示する場所まで送り届け、甲の指示に従って甲に被告人車両の鍵を預け、同所で待機した。その後、戻ってきた甲から、トラブルにより撮影ができず、2月2日に行う撮影にも協力してほしいと依頼されるとともに、甲を被告人車両に乗せて本件駐車場に戻る際、靴1足を買ってくることを依頼され、了承した。 2月2日、被告人車両を運転し より撮影ができず、2月2日に行う撮影にも協力してほしいと依頼されるとともに、甲を被告人車両に乗せて本件駐車場に戻る際、靴1足を買ってくることを依頼され、了承した。 2月2日、被告人車両を運転して集合場所として指定された空き地へ向かい、集合時刻として指定された午後6時を過ぎた午後6時20分頃に到着した。待っていると、甲とプロレスマスクをかぶった男2人(以下「乙」「丙」という。)が白い車に乗ってやってきた。甲から乙と丙を紹介された後、甲に頭を抱え込まれて顔を甲の着衣にこすりつけられ、乙にヘッドロックをされて頭を強くごしごしとされ、「髪をもらった」などと言われた。甲らから、空き地にスマートフォンを置いてお12くよう言われたが、断り、自ら置き場所として本件駐車場を提案すると、甲らは了承した。甲を被告人車両に乗せ、本件駐車場にスマートフォンを置き、甲を1月31日と同じ場所に送り届け、甲に被告人車両の鍵を預け、同所で仮眠した。その後、戻ってきた甲は、事故があって撮影をすることができなくなったとして、被告人車両を運転してどこかへ移動させ、トランク内に荷物を積み、再び被告人車両を運転して移動させた。途中、甲と交代して被告人車両を運転し、本件駐車場へ向かっていると、甲から、サーキット場で走行中の車が観客にぶつかる事故があり、その場にいた人たちで飛び散った血液や散乱した物を片付け、その一部をトランク内に載せたと言われた。本件駐車場でスマートフォンを回収して妻と電話をした後、甲の案内に従って運転を続け、道中、トランク内に載せたゴミの処分を依頼され、了承したほか、甲から「これ要る?」と言われ、はさみ様のものを渡されたが、必要性を感じなかったため、返した。その際、運転席と助手席の間の肘掛けの部分に封筒が置かれていることに気付いた。甲の案内で白い車と合流 ほか、甲から「これ要る?」と言われ、はさみ様のものを渡されたが、必要性を感じなかったため、返した。その際、運転席と助手席の間の肘掛けの部分に封筒が置かれていることに気付いた。甲の案内で白い車と合流した後、被告人車両のトランクを確認したところ、血液が付着している衣類や5足以上の靴が入ったビニール袋が4個から6個ほどあり、衣類の中に本件ジャンパーに似たものが入っていることに気付いたので、「何で俺の服?」などとつぶやいたが、甲は何も言わなかった。ビニール袋を確認したときに手に付着した血を拭くために運転席に行った際、甲が白い車の運転席の人物に対して「共犯やな」と言った。甲らと別れ、被告人車両を運転していた際、封筒に入っていた10万数千円を取り出し、甲らからの謝礼と考えて財布の中に入れた。 同日から同月4日までの間、前記のゴミを本件コインランドリーで洗濯してゴミ収集所に捨てたり、被告人車両内を掃除するために掃除用具等を購入したり、被告人車両内を除菌するために灯油やジッポーオイルについて検索したり、前記の事故のことが気になって宇佐市の事故の情報を検索したり、甲らが大量殺人に関与しており、それに巻き込まれたのではないかと不安になって殺人事件に関する検索をしたりした。その間の同月3日、甲らから謝礼として受け取った現金のうち5万401300円を入金するなどした」⑵ 被告人の供述の信用性しかし、被告人の供述内容は、以下のとおり、不自然、不合理な点が多々ある。 まずもって、夜間で暗く、人気のない本件駐車場で、プロレスマスクをかぶった見ず知らずの男からいきなり声を掛けられるという不審を抱き得る状況でありながら、特に警戒するそぶりも見せず、その場で依頼に応じ、スマートフォンを屋外に放置させられた上、未知の場所へ送迎することや被告人車両の鍵を預 からいきなり声を掛けられるという不審を抱き得る状況でありながら、特に警戒するそぶりも見せず、その場で依頼に応じ、スマートフォンを屋外に放置させられた上、未知の場所へ送迎することや被告人車両の鍵を預けることを承諾したり、本件当日は、自らスマートフォンを放置する場所を提案したり、血液が付着している衣類等が入った複数個のビニール袋の処分を承諾したりしたという内容自体、あまりに不自然、不合理であって、およそ了解し難い。また、被告人の供述を前提にすると、本件の犯人である甲らは、無関係の被告人を犯行に巻き込み、何ら口止めや脅迫等もせずに犯行の重要な証拠となりかねない血痕が付着している衣類や靴の処分を依頼したことになるが、そのような行為は、被告人が警察に相談するなどして犯行が発覚するリスクを増大させるものであるから、甲らがあえてそのような選択をすることは通常考えにくく、犯人の行動として不自然、不合理である。さらに、関係証拠によれば、被告人は、2月4日から同月6日にかけ、上司、妻及び警察官に対し、「1月31日、本件当日共に、本件駐車場でプロレスマスクをかぶった男らに被告人車両を貸し、自身は本件駐車場で待機していた」旨、公判供述の内容と大きく異なる説明をしていたことが認められ、そのような経過自体、供述の信用性を低下させる事情となり得るところ、被告人は、当時虚偽の説明をした理由として、家族に及ぶ危害を恐れたことなどを種々弁解するが、甲らの存在については言及していながら、なぜ本件犯行現場付近まで被告人車両で送ったと説明するよりも被告人車両を貸したと説明する方が家族に危害が及ぶ恐れが低減することになるのかなど、この部分の弁解についても了解し難い点が散見される。 以上によれば、被告人の公判供述は信用できない。 6 弁護人の主張に対する検討14⑴ に危害が及ぶ恐れが低減することになるのかなど、この部分の弁解についても了解し難い点が散見される。 以上によれば、被告人の公判供述は信用できない。 6 弁護人の主張に対する検討14⑴ 弁護人は、A方には多数の種類の足跡が遺留されているから、複数人が本件犯行に関与している可能性を否定することはできない旨主張する。 しかし、関係証拠によれば、本件後のA方は、下足箱のある玄関付近にも血液足跡を含む足跡が遺留されており、下足箱内は履物が入れられるスペースが空いていたこと、ダイニングにあった掃除機は本体、カップカバー、ダストカップが散乱し、ヘッド部分は見当たらず、ダストカップからA又はBの血痕が付着した人毛が採取されたことが認められ、これらの事実関係に照らせば、犯人は、Aらを殺害した後、掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を図ったと合理的に推認できるから、罪証隠滅工作の一環として、複数人による犯行に見せかけるため、A方の履物を順次履き替えるなどして多種の足跡を残した可能性が考えられる。前記2⑵アのとおり、被告人が本件の2日後に5足以上の靴が入ったゴミ袋を捨てたことなどの事情は、その可能性と整合的であるのに対し、仮に犯人が複数人であったとすると、掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を図る一方、複数人が犯行に関与していることを示す多種の足跡をそのまま残していったことになり、むしろ不自然ともいえる。 ⑵ 弁護人は、2月9日、被告人車両のトランクからAら及び被告人と異なる第三者の血痕が発見されており、これは、犯人がAらから抵抗されて負傷したり、Aらを攻撃する際に自傷したりしたことによって生じた血液が遺留されたものである可能性があるから、被告人以外の第三者が本件犯行に及んだ可能性がある旨主張する。 しかし、科学捜査研究所技術職員である証人G 攻撃する際に自傷したりしたことによって生じた血液が遺留されたものである可能性があるから、被告人以外の第三者が本件犯行に及んだ可能性がある旨主張する。 しかし、科学捜査研究所技術職員である証人Gの供述によれば、様々な荷物や人が乗る自動車内から第三者のDNA型が検出されることはありふれた事象といえるところ、関係証拠によれば、被告人は、サッカークラブに通う子の送迎のために被告人車両を使用することがあり、他の子の荷物を被告人車両に載せることもあったことが認められるから、例えば、被告人の子らがサッカー中に負傷して出血し、その血痕が荷物に付着して被告人車両のトランクに持ち込まれることで遺留された可能性も考えられる。なお、弁護人が指摘する第三者の血痕がA方に遺留していたこ15とをうかがわせる事情はない。 ⑶ 弁護人は、犯人はAらに対して不必要に本件はさみ以外の複数の凶器を振るった可能性があること、単独犯が有形無形の抵抗を試みるAらをA方から逃がさずに殺害するのは至難の業であることから、本件は複数犯による犯行の可能性がある旨主張する。 しかし、証人Cの供述によれば、Aらの創傷について、単独犯による犯行では合理的に説明することができない、あるいは、説明が極めて困難であるものはなかったと認められるし、弁護人が指摘する点は、手近にあった本件はさみ等の物品を手あたり次第に凶器として用いた可能性、複数人による犯行に見せかけるため、Aらの死亡前後にあえて複数の凶器で攻撃した可能性、Aらの不意をついた可能性、Aらが早々に反抗を抑圧されていた可能性、Aらを順次殺害した可能性等、単独犯であることと矛盾しない犯行状況は様々に想定し得る。 ⑷ 弁護人は、A方から被告人の毛髪、血痕、指紋が発見されていないことは、被告人が犯人であれば不自然な事情である旨主張 殺害した可能性等、単独犯であることと矛盾しない犯行状況は様々に想定し得る。 ⑷ 弁護人は、A方から被告人の毛髪、血痕、指紋が発見されていないことは、被告人が犯人であれば不自然な事情である旨主張する。 しかし、犯人が、Aらを殺害した後、掃除機をかけるなどの罪証隠滅工作を図ったと合理的に推認できることは、前記⑴のとおりである上、犯行前に手袋を着用するなどの工夫をしていればA方に犯人の特定につながるような痕跡を残さないことも可能であるし、被告人が本件当時出血していたことをうかがわせる事情もないから、弁護人の指摘は、被告人が犯人であっても不自然な事情とはいえない。 ⑸ 弁護人は、被告人が、アリバイ偽装に用いたことになるスマートフォンで本件後一見して犯人であると疑われるインターネット検索をしていること、本件前後に防犯カメラや販売記録等に残る形で買物等をしていること、本件後まもなく自ら上司や妻、警察官に事件の話をしていることなどは、被告人が犯人であれば不自然な事情である旨主張する。 しかし、これらの事情については、本件犯行に及んだ被告人が、A方に自身の毛髪等の痕跡が遺留されている可能性を懸念し、捜査機関がこれを発見した場合に備16え、プロレスマスクをかぶったユーチューバーを名乗る甲らに被告人車両を貸すなどした旨の虚偽の弁解を考え出し、この弁解に沿うような行動をとったとの見方も成り立ち得る。なお、関係証拠によれば、被告人は、最初に上司に虚偽弁解の説明をした後、同人から警察に相談したか確認されたのに対し、妻に伝えてから警察に相談しようと思う旨答え、その後、妻に同様の説明をしたところ、妻からも警察に相談するよう勧められたことが認められるから、必ずしも自発的に妻及び警察官に説明したわけではなく、説明せざるを得ない状況に追い込まれたものとい 答え、その後、妻に同様の説明をしたところ、妻からも警察に相談するよう勧められたことが認められるから、必ずしも自発的に妻及び警察官に説明したわけではなく、説明せざるを得ない状況に追い込まれたものといえる。 ⑹ そのほかにも、弁護人は、被告人が犯人であれば不自然な事情があるとして種々主張するが、いずれもその前提を欠くか、被告人が犯人であることを前提としても矛盾なく説明できる事情であり、被告人の犯人性につき合理的な疑いを生じさせるものではない。 7 総合評価本件犯行当時、A方付近に存在する被告人車両を使用していたのはほかならぬ被告人であったところ、その機会に、同犯行によって生じたAの血液等の成分が被告人車両に持ち込まれたという事情は、被告人の犯人性につき強い推認力を有し、それ以外の諸事情、すなわち、A方に遺留された血液靴下痕と運動靴痕に関する積極的間接事実及び本件前後の被告人の行動に関する積極的間接事実は、その推認力を補強し、あるいは支えるものと評価できることは、前記4のとおりであり、被告人が犯人であることを前提とすればこれらの事情を矛盾なく説明できる。これに対し、Aの血液等の成分を被告人車両に持ち込んだのは甲らである旨の被告人の公判供述は信用できず、弁護人の主張も含めそれ以外に前記の推認を妨げるような事情も見当たらない。前記のような被告人車両に関する積極的間接事実は、まさに被告人が犯人でないとしたならば合理的な説明が極めて困難な事実といえる。 8 結論以上によれば、被告人が本件の犯人であると優に認められ、この認定に合理的な疑いを差し挟む余地はない。 17そうすると、被告人は、2月2日午後7時22分頃(前記1⑴イ)から午後7時56分頃までの間に、A方に侵入した後、その頃から午後10時20分頃(同)までの間に、A及 を差し挟む余地はない。 17そうすると、被告人は、2月2日午後7時22分頃(前記1⑴イ)から午後7時56分頃までの間に、A方に侵入した後、その頃から午後10時20分頃(同)までの間に、A及びBに対し、それぞれその頸部等を本件はさみ、本件菜切り包丁等で多数回突き刺すなどして殺害した上、A所有又は管理の現金少なくとも5万4000円(前記3⑶)を奪ったと認められる。そして、被告人は、本件犯行当時、金銭的にひっ迫した状況にあったところ、凶器を携えず、面識がないA方に侵入し、現金を奪ったのであるから、侵入時、窃盗の目的を有していたことが合理的に推認できるし、侵入後の犯行態様に照らすと、強盗殺人の故意に欠けるところはなかったと認められる。 よって、判示の事実を認定した。 (量刑の理由)本件の犯行状況を直接示す証拠はないが、被告人がA方付近に到着した時刻(午後7時22分頃)、Bが帰宅したと思われる時刻(午後7時47分頃ないし午後7時51分頃)、A方のダイニングに設置されていた固定電話機の最終発信日時(午後7時56分)、Aらの遺体の状況、A方の血痕の付着状況等を総合考慮すれば、被告人は、窃盗の目的で、A方に侵入したところ、在宅中のAと出くわしたことから、居直り強盗の意図に加え、自らの犯行であることが捜査機関に発覚するのを恐れ、口封じのため、Aに対する殺意を形成して実行行為に着手し、その後帰宅したBに対しても、同様の目的で、殺意を形成して実行行為に及び、両名を失血死させて殺害した上、現金少なくとも5万4000円を奪って逃げたと合理的に推認できる。 殺害態様は、Aに対し、頸部、頭部、胸部といった急所を有尖鋭利な本件はさみ等を用いて頭蓋骨が貫通したり肋骨骨折が生じたりするほどの力で40回以上突き刺したり、切りつけたりする攻撃を加えて殺 る。 殺害態様は、Aに対し、頸部、頭部、胸部といった急所を有尖鋭利な本件はさみ等を用いて頭蓋骨が貫通したり肋骨骨折が生じたりするほどの力で40回以上突き刺したり、切りつけたりする攻撃を加えて殺害し、Bに対し、致命傷を負わせた左右肩甲上部のほか、頸部、頭部、顔面、背部といった急所を本件はさみ等を用いて頭蓋骨骨折が生じたり木製の箸が後頭部に突き刺さったままの状態になったりする18ほどの力で50回以上突き刺したり、切りつけたりする攻撃を加えて殺害したというものである。被告人は、侵入当初から殺害を計画していたものではなかったのであるから、Aに出くわした際やBの帰宅を認識した際の心理状態は少なからず切迫したものと考えられ、各殺害態様に相応の影響が及んだ可能性は否定できない。しかし、その点を踏まえて検討しても、防御創が少なく早々に反抗を抑圧されていたと考えられるAらに対して行った各殺害の態様は、瀕死の状態となった後も攻撃を加え続けてとどめを刺すという、いずれも極めて強固な殺意に基づく執拗かつ残酷なものであり、生命侵害の危険性が高く、生命軽視の度合いが甚だしい。もとより、何ら落ち度のない2名の生命が奪われた結果は重大であり、本件の深刻な被害状況を前提にすると、遺族らの悲痛な感情は十分理解できる。 被告人は、平成31年1月頃から減らすことができなくなった自身の借金や苦しい経済状況について、妻や両親に打ち明け、特に、母に相談すれば一定の援助を得ることが可能であったにもかかわらず、それをしないまま、借入れや利息分の返済を繰り返す場当たり的な生活を送った末、面識のないA方から金品を窃取して利息分の返済に充てる資金等を得ようとしたものであり、その自己中心的で身勝手な動機に酌量の余地はない。また、被告人は、Aと出くわした際、逃走することが可能であった 、面識のないA方から金品を窃取して利息分の返済に充てる資金等を得ようとしたものであり、その自己中心的で身勝手な動機に酌量の余地はない。また、被告人は、Aと出くわした際、逃走することが可能であったのに、その選択をせず、居直り強盗を意図するとともに、口封じのため、Aに対する殺害行為に着手し、その後帰宅したBに対しても、同様の目的で、殺害行為に及んだものであり、かかる意思決定は強い社会的非難に値する。 被告人は、Aらを殺害した直後から種々の罪証隠滅工作に及び、当公判廷においても不合理な弁解を続け、反省の態度を示していないのであって、犯行後の事情に何ら有利に斟酌すべき点がない。 以上の諸事情に照らすと、被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ない。 そうすると、死刑は究極の刑罰であり、その適用は慎重に行われなければならないという観点及び公平性の観点(特に、死刑が求刑された死亡被害者が2名の単独19犯による強盗殺人事件のうち、同一機会における犯行で、一連の犯行の前には強盗殺人の犯意のない類型の裁判例の検討結果を裁判体の共通認識とした。)を踏まえ、前記のとおり本件犯行は侵入当初から殺害を計画していたものではないこと、本件犯行前は前科がなかったことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、死刑を選択することは真にやむを得ない。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑:死刑)令和6年7月4日大分地方裁判所刑事部 裁判官 辛 島 靖 崇 裁判官 北 島 聖 也 裁判官 山 西 健 太 也 裁判官 山 西 健 太
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