令和5(わ)475 殺人、証拠隠滅教唆、詐欺未遂、詐欺

裁判年月日・裁判所
令和6年11月25日 仙台地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-93643.txt

判決文本文11,000 文字)

- 1 - 令和6年11月25日宣告令和5年(わ) 第475号、第372号、第426号判決(被告人の表示省略) 主文 被告人Aを懲役28年に、被告人Bを懲役20年に処する。 被告人らに対し、未決勾留日数中各390日を、それぞれその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】 被告人両名は、第1 C、D、E及びF(以下C、D、E、Fを併せて「Cら」という。)と共謀の上、いわゆる出会い系サイトを通じて誘い出したG(当時69歳)にDと性交させ、同性交がDの夫であるCに内密にして行われた不義のものであるかのように装い、Gから示談金等の名目で現金をだまし取ろうと考え、令和4年12月13日午後1時 30分頃、宮城県亘理郡山元町(住所省略)において、Gに対し、真実は、被告人ら及びCらが出会い系サイトを通じて、GをDの性交相手として誘い出したもので、GとDとの性交がCに内密にして行われた不義のものではなく、GがCに示談金等を支払う必要はないのに、これらがあるように装い、「Gさんが彼女としていたことは不倫なので民事事件になります。」「奥さんとGさんとの共同不法行為になって、 旦那さんの立場を侵害したことになります。」「Gさんが弁護士を使った場合、こちらの弁護士費用とか、調停費用、訴訟費用とかを含めて、200万円からの請求をするつもりでいます。Gさんが、弁護士を使わず、直接というのであれば減額はできます。」「旦那が、調査にもそこそこかかっていて、引っ越しをすることも考えて100万円は無理だ。150万円だったらGさんとは示談します。もうそれで終わ りにしましょうと言っているがどうしますか。」などとうそを言い、さらに、同月2- 2 - 1日頃、Gから依頼を受けた弁護士に対し、「Gに対し ったらGさんとは示談します。もうそれで終わ りにしましょうと言っているがどうしますか。」などとうそを言い、さらに、同月2- 2 - 1日頃、Gから依頼を受けた弁護士に対し、「Gに対し、口頭での示談内容に基づき、共同不法行為による慰謝料として、150万円を請求します。」などと記載された書面を、仙台市青葉区(住所省略)内の法律事務所に郵送して、その頃、その記載内容を同弁護士を介してGに知らせ、Gを、Dとの性交がその夫であるCに内密に行った不義のもので、GがCに示談金等を支払う必要があるものと誤信させ、Gから現 金の交付を受けようとしたが、Gが支払を拒んだため、その目的を遂げず、第2 Cらと共謀の上、いわゆる出会い系サイトを通じて誘い出したH(当時58歳)にDと性交させ、同性交がDの夫であるCに内密にして行われた不義のものであるかのように装い、Hから示談金等の名目で現金をだまし取ろうと考え、令和4年12月3日午後4時5分頃、宮城県名取市(住所省略)において、Hに対し、真実は、 被告人ら及びCらが出会い系サイトを通じて、HをDの性交相手として誘い出したもので、HとDとの性交がCに内密にして行われた不義のものではなく、HがCに示談金等を支払う必要はないのに、これらがあるように装い、「不貞行為ですよ。」「証拠もありますから。」「裁判になると三桁くらいはかかります。」「50万円で旦那の了解とれました。」などとうそを言い、Hを、Dとの性交がその夫であるCに内 密に行った不義のもので、Cに示談金等を支払う必要があるものと誤信させ、同月8日午前11時頃、同県柴田郡大河原町(住所省略)において、Hから現金5万円の交付を受け、さらに、同月14日午後2時頃、宮城県名取市(住所省略)において、Hから現金25万円の交付を受け、もって 同月8日午前11時頃、同県柴田郡大河原町(住所省略)において、Hから現金5万円の交付を受け、さらに、同月14日午後2時頃、宮城県名取市(住所省略)において、Hから現金25万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ、第3 被告人Aにおいては、Iが被告人ら及びCらが関与したいわゆる美人局の証拠を 握っているとして、Iを殺害することでその証拠等が明るみに出ることを防ぐとともに、Iの退職金などを獲得しようと考え、被告人Bにおいては、被告人AがなりすましたJなる人物(以下「J」という。)により、被告人Aには呪いがかけられてその命に危険が迫っており、その呪いを解くためにはIを殺害するほかないと思い込まされたことにより、Iを殺害することを決意し、共謀の上、令和5年4月17 日午前1時40分頃、宮城県柴田郡柴田町(住所省略)において、被告人Bが、I- 3 - (当時54歳)に対し、殺意をもって、その右腰背部を刺身包丁(刃体の長さ約20センチメートル)で1回刺し、よって、その頃、同所において、Iを腹腔内臓器損傷による失血により死亡させて殺害し、第4 C及びDに、前記殺人事件の証拠を隠滅させようと考え、共謀の上、令和5年4月17日、宮城県角田市(住所省略)において、C及びDに対し、前記殺害に使用し た刺身包丁、I所有の財布等が入ったゴミ袋を手渡して、これらの処分を依頼して証拠の隠滅を教唆し、同日、同県白石市(住所省略)において、C及びDに、前記包丁、財布等を焼却の上、土中に埋めさせ、もって他人の刑事事件に関する証拠を隠滅させ、第5 C及びDに、前記殺人事件につき、被告人両名に有利な証拠を偽造させようと考 え、共謀の上、真実は、被告人Bが、令和5年3月24日に購入した前記の刺身包丁を殺害に使用したにもかかわらず、 第5 C及びDに、前記殺人事件につき、被告人両名に有利な証拠を偽造させようと考 え、共謀の上、真実は、被告人Bが、令和5年3月24日に購入した前記の刺身包丁を殺害に使用したにもかかわらず、同包丁を未使用のまま保管していたように仮装すべく、同年4月21日頃、宮城県角田市内又はその周辺において、C及びDに対し、同包丁と同一商品である刺身包丁1本の購入を依頼して証拠の偽造を教唆し、同日、同県白石市(住所省略)において、前記殺害に使用した刺身包丁と同一商品で ある刺身包丁1本を購入させた上、これを同県角田市(住所省略)の被告人両名が管理する(建物名省略)に備え置かせ、もって他人の刑事事件に関する証拠を偽造させた。 【証拠の標目】(記載省略) 【事実認定及び弁護人の主張に対する補足説明】第1 被告人AがJであることについて 1 Kの証言によると、被告人Bとやり取りをしていたJのLINEアカウントの登録電話番号は被告人Aの祖母方固定回線の電話番号であり、Jは、令和5年4月16日午後8時13分、同14分、同16分、同18分に被告人Aが普段使用してい る携帯電話機のテザリング機能により同携帯電話機の通信回線を使用して、被告人- 4 - Bに対してメッセージを送信し、更に、Jは、同日午後8時37分に、Lが提供するWi-Fiルーター向けのインターネットサービスであるM回線を使用して、被告人Bに対してメッセージを送信しているところ、被告人Aが使用する車両にもLの通信回線を使用するWi-Fiルーターが積載されており、Jがメッセージを送信した同時刻に、被告人Aは同車両に乗り、携帯電話機様のものを操作しているという事 実が認められる。加えて、被告人Aも供述するように、祖母方には祖母がいたことからすると、被告人Aと面 セージを送信した同時刻に、被告人Aは同車両に乗り、携帯電話機様のものを操作しているという事 実が認められる。加えて、被告人Aも供述するように、祖母方には祖母がいたことからすると、被告人Aと面識が全くない第三者が、被告人Aの祖母方固定回線の電話番号を使用してLINEに登録したという可能性は低い上、仮に、このようにしてLINEに登録した者が存在し得たとしても、さらに被告人Aの了解なしに同人が普段使用している携帯電話機をテザリングしてメッセージを送信することができ る状況にあったことをうかがわせる事情が存在しないことからすると、令和5年4月16日午後8時13分、同14分、同16分、同18分にJとして被告人Bにメッセージを送信したのは、被告人Aであることが強く推認される。そのわずか19分後に再度Jがメッセージを送信したのと同時刻(同日午後8時37分)に、被告人Aは、Jが使用した回線と矛盾しないLのM回線が使用可能な自身の車両内で、 携帯電話機様のものを操作していることも併せ考慮すれば、被告人A以外の者がJとしてメッセージを送信した可能性は考えられず、被告人AがJであると認めることができる。 2 これに対し、自分はJではないとする被告人Aの供述は信用できず、かかる供述を前提とする被告人Aの弁護人の主張も採用できない。 また、被告人Bの弁護人は、Jが被告人Aの知人のNを名乗り、被告人Aも同姓同名の幼馴染がいると述べることから、同人がJである可能性を指摘するが、被告人両名の供述以外に、Nなる人物の存在をうかがわせる証拠は存在しないし、仮に存在したとしても、同人が被告人A祖母方の固定電話の番号を利用してLINEアカウントを作成できたとは考え難い。同弁護人は、EがJのLINEアカウントを 登録した可能性も指摘してい ないし、仮に存在したとしても、同人が被告人A祖母方の固定電話の番号を利用してLINEアカウントを作成できたとは考え難い。同弁護人は、EがJのLINEアカウントを 登録した可能性も指摘しているが、EはLINEアカウントの登録自体は可能であ- 5 - ったとしても、防犯カメラ映像によれば、Eは、Jが被告人Bにメッセージを送信した令和5年4月16日午後8時37分に、コンビニエンスストアで自身の携帯電話機を使用してバーコード決済を行っていると認められることからすると、EがJとしてメッセージを送信することはおよそ不可能であり、EがJである可能性は認められない。また、同弁護人は、Jが被告人Aであるとすると矛盾する事実が認め られるなどと主張するが、それらの主張はいずれも前提を欠いているし、長期間にわたり、被告人Aが、Eや被告人Bに知られずにJとして被告人Bに連絡を取っていくことは不可能であると指摘する点も、それが不可能であるとの具体的根拠は認められない。したがって、被告人Bの弁護人の主張はいずれも採用できない。 3 以上によれば、被告人AがJであると認めることができる。 第2 被告人両名に殺人の共謀が認められることについて 1 証拠により認定できる事実関係証拠によれば、以下の事実を認定することができる。 (1) 被告人Bは、令和2年頃からJと連絡を取り合っていたところ、Jが被告人Bの身の周りに起きた出来事を言い当てたことなどから、Jには霊的な力があると 思うようになり、折に触れてJにアドバイスを求めるようになっていった。また、この頃までに、被告人Bは、自身を苦境から助けてくれた被告人Aに対して恋愛感情を抱くようになり、肉体関係を持つに至っていた。 (2) 被告人Aは脳梗塞を発症していたところ、令和5年に入り、被 また、この頃までに、被告人Bは、自身を苦境から助けてくれた被告人Aに対して恋愛感情を抱くようになり、肉体関係を持つに至っていた。 (2) 被告人Aは脳梗塞を発症していたところ、令和5年に入り、被告人Bは、Jから、被告人Aは呪いによって徐々に病気が悪化しており、呪いを解くためには被 告人Bの母(以下「実母」という。)の命を奪わなければいけないと告げられた。 また、Jからは、Iも実母を助けており、実母かIを殺さなければ被告人Aが死んでしまう旨を告げられた。さらに、令和5年5月で脳梗塞発症から2年になると被告人Aが死ぬ可能性が高くなるという話があり、これを聞いた被告人Bは被告人Aの命のリミットが令和5年5月だと理解した。Jからの話によれば、被告 人Aはいつ命が尽きてもおかしくない状態でJが少しずつ命を分け与えているた- 6 - め、Jの命も危ないとのことであり、このような状態になっていることを被告人Aにも知らせたところ、被告人Aは、呪いをかけられていることは自分でも把握しているが、自分の命と引き換えに人の命を奪うことはできない、被告人Bに人殺しをさせるわけにもいかないと言っていた。もっとも、被告人Aは「生きたい」と言って悩んでいる様子であった。 (3) 被告人Bは、思い悩んだ末、東京にいる実母を殺すことは難しかったことから、Iを殺害することを決意し、令和5年3月24日頃から人を確実に殺す方法などをインターネットで調べ、凶器となる包丁を購入した。 (4) 同年4月1日、被告人Bは、被告人Aに対して、Iには痛い目を見てもらうしかないという話をした。被告人Bは、被告人Aも、被告人BがIを殺そうとして いることを理解したと考えた。 (5) 同年4月2日、被告人Bは、Iの家へ麻雀をしに行く前に、JからAを介して、今日 かないという話をした。被告人Bは、被告人Aも、被告人BがIを殺そうとして いることを理解したと考えた。 (5) 同年4月2日、被告人Bは、Iの家へ麻雀をしに行く前に、JからAを介して、今日麻雀に行ったときに流れが変わる何かがあるという連絡をもらった。被告人Bは、この日、Iの殺害を実行しようと考えていたが、麻雀の席でIから実母の逃亡の援助をFから頼まれたという話がされ、麻雀終了後、Aから「中止中止、何 とかする、変わったじゃん」などと言われたため、この日は殺害を断念した。 (6) 後日、被告人Bは、被告人Aから、何とかする方法つまりIを殺害する以外の方法として、Iに実母に対する強い悪感情を持たせて、Iのことを実母から完全に引き離す方法を説明されたため、Iに、被告人Aは悪くなくて実母が悪いという話をした。その後、Jに対して、真実をIに伝えてIを実母から遠ざけること ができたと思う旨伝えたところ、Jからは、被告人A経由で、呪いが解けなかったという連絡があった。これを受けて、被告人Bは、やはり呪いを解くにはIを殺さなければならないと考えるに至った。 (7) 同年4月16日、被告人B、被告人A、C及びDは、コンビニの駐車場に集合した。その場で、被告人Bは、被告人Aの促しを受けて、C及びDに対して、Iの 殺害を示唆する発言をした。その後、4人は、Iの自宅や勤務先を被告人Aの運- 7 - 転する車で確認し、逃走時のシミュレーションを行った。C及びDと別れた後、被告人Bは、被告人Aから、C及びDを巻き込もうとしたことを怒られた。 被告人Bは、同日午後8時18分頃に、Jに対して、父を殺してもう終わりにしようと思う旨を伝えたところ、Jからは一時の気持ちや考えで行動するのはよくありませんとの返事があったが、被告人Bは、必ず守 被告人Bは、同日午後8時18分頃に、Jに対して、父を殺してもう終わりにしようと思う旨を伝えたところ、Jからは一時の気持ちや考えで行動するのはよくありませんとの返事があったが、被告人Bは、必ず守ります、手伝っていただ けませんかと伝えた。 被告人Bは、同日午後11時頃、Iとの麻雀の最中に、Jに対して、機会を見計らい、まもなくIの殺害を実行する旨の決意表明のメッセージを送信し、メッセージに既読が付いたのを確認した後、すぐにその場で送信履歴を削除した。 (8) 同年4月17日午前1時40分頃、被告人Bは、Iを殺害し、帰宅後、被告人 Aにその旨を告げた。Jに対しては、何かあったら被告人Aを通して連絡をしてほしい旨伝え、その後何度か被告人Aを介して連絡を取り合ったことがあった。 (9) 同日、被告人Aは、C及びDに指示して、被告人Bが犯行に使用した包丁等の処分を依頼するとともに、同種の包丁を購入してほしい旨強く要求し、証拠を偽造した。 2 被告人Bの供述について上記の認定には、被告人Bの捜査段階の供述(検察官調書〔却下部分を除く。〕及び公判供述において捜査段階で述べた旨認めたもの)に依るところが大きいが、被告人Bは、捜査段階では、被告人Aに対して恋愛感情を抱き、不倫関係にあったところ、被告人Aとの共謀を疑われていると認識していたと述べていることからする と、被告人Bは、捜査段階において、あえて被告人Aに不利な虚偽の事実を供述するということは考え難い。また、被告人Bは、Jは被告人Aとは別に存在すると考えているところ、Jとの間で、虚偽の供述を述べる動機は見当たらず、加えて、被告人BのJとのやり取りの一部は、被告人Bの携帯電話機の入力履歴といった客観証拠と整合している。他方、被告人Bは、公判廷では、JからのLINEメ の間で、虚偽の供述を述べる動機は見当たらず、加えて、被告人BのJとのやり取りの一部は、被告人Bの携帯電話機の入力履歴といった客観証拠と整合している。他方、被告人Bは、公判廷では、JからのLINEメッセージで 自分がそう理解したにすぎないと供述し、Jからは指示されていないと供述したり、- 8 - Jと被告人Aが連絡を取っていたことはないと供述したりなどしている。そして、被告人Bは、この供述変遷の理由について、自分が理解したといっているのを検察官がそのようにまとめた、検察官がJに関して自分の話を信じてくれなかったので嘘をついた、などと説明するが、これらはいずれもJが被告人Aである場合に、被告人Aに共謀が認められる可能性がある事実であることからすると、公判における 供述は、被告人Aの弁解内容を知った上で、被告人Aの関与を矮小化する方向で、虚偽の事実を述べたものと解するのが相当である。また、被告人Bが、あえて被告人Aにとって不利になる方向で、Jに関して虚偽の供述をするとは考え難いのは上記認定のとおりである。 したがって、被告人Bの捜査段階の供述は信用できる。 この点、被告人Aの弁護人は、被告人Bには特異な受止め方をする傾向がある上に、そもそもJとのやり取りの具体的内容は再現されていないとして、その供述の信用性に疑義を呈する。確かに、JとのLINEのやり取りは再現されていないが、被告人Bの捜査段階の供述は信用でき、また、一部に入力履歴による裏付けもあることから、弁護人の主張は採用できない。 3 殺人の共謀の有無の検討(1) 上記第1で認定したとおり、Jが被告人Aであることを前提に、上記1で認定した一連の事実をみると、被告人Aと被告人Bとの間で殺人の共謀が成立していたと認めるのが相当である。特に、(6)の事実 (1) 上記第1で認定したとおり、Jが被告人Aであることを前提に、上記1で認定した一連の事実をみると、被告人Aと被告人Bとの間で殺人の共謀が成立していたと認めるのが相当である。特に、(6)の事実のうち、Jから被告人A経由で呪いが解けなかったという連絡があったことは、(1)から(5)までの経緯からして、か かる発言が被告人Bを再度I殺害に向かわせることは明らかであり、そうすると、被告人Aは、被告人Bに対し、I殺害を決意させるために、かかる発言をしたと認められる。そして、かかる発言によって、被告人Bは、やはり呪いを解くためにはIを殺さなければならないと決意していることからすると、かかる発言がされた時点で、被告人A(J)と被告人Bとの間で、I殺害の共謀が成立したと認める のが相当である。そして、I殺害後に、(9)に認定のとおり、被告人BからIの殺- 9 - 害を告げられ、殺害に使用した包丁等の隠滅を依頼された被告人Aが、特にためらう様子を見せずにその証拠の隠滅をC及びDに指示した上で、その後に証拠の偽装についてもC及びDに強く依頼している事実は、被告人Aが殺人について被告人Bと共謀していたことと整合する事情である。 なお、(7)に認定のとおり、被告人Aは、Jとして、一時の気持ちや考えで行動 するのはよくありませんと返信したが、被告人Bは、必ず守ります、手伝っていただけませんかと伝え、I殺害の意思を変更することはなく、その後も同日午後11時頃にIの殺害を実行する旨の決意表明のメッセージを送信したにもかかわらず、被告人Aはこれを制止することはなかったことからすると、上記Jの返信は、殺人の共謀の成立を妨げる事情とはならない。 以上によれば、被告人A(J)と被告人Bとの間で、I殺害の共謀が成立したと認められる。 制止することはなかったことからすると、上記Jの返信は、殺人の共謀の成立を妨げる事情とはならない。 以上によれば、被告人A(J)と被告人Bとの間で、I殺害の共謀が成立したと認められる。 (2) なお、被告人Aの弁護人は、被告人Aには、Iを殺害する動機がない旨主張するが、被告人Bの供述並びに実母及びFの各証言によれば、実母の県外への逃走の協力者の存在が被告人らにとって脅威になっており、被告人らは、Fが協力者 ではないかと疑っていたこと、美人局の証拠を持っているのは誰なのかが厄介な問題となっており、Iが協力者であることが分かると、Iが美人局の証拠を持っていないかを確認したりしていたとの事実が認められ、かかる事実からすると、被告人Aには、美人局の証拠を握っている可能性があるIの存在を脅威に感じ、証拠等が明るみになることを防ぐためにIを殺す動機があったと認めることがで きる。また、Iが長年会社勤務をしていたことは被告人Aも認識しており、Iの息子であるEの妻である被告人Aが、Iが死亡した場合に退職金が支払われることを知ることは容易であった上、実際にI死亡後、葬儀の場において、Iの実姉を差し置いて、Eが退職金を受け取ることがすぐに決まっており(証人Oの公判供述)、退職金が振り込まれたE名義の口座はEとともに被告人Aが管理していた - 10 - こと(証人Eの公判供述)、実際に被告人AがIの退職金を引き出すこともあったことからすると、Iの退職金等を獲得するために、Iを殺す動機があったと認めることができる。弁護人の主張は採用できない。 また、被告人Aの弁護人は、被告人Bとの個別のやりとりのほとんどが記憶にすら残らない被告人Aとの間では、共謀の基礎が欠けている旨指摘するが、上記 1(2)で説示したことからも明らか きない。 また、被告人Aの弁護人は、被告人Bとの個別のやりとりのほとんどが記憶にすら残らない被告人Aとの間では、共謀の基礎が欠けている旨指摘するが、上記 1(2)で説示したことからも明らかなとおり、被告人Aは、自身のそれまでの言動を前提に行動を起こしているのであるから、上記弁護人の主張は採用できない。 第3 被告人Bが殺人の犯行当時、完全責任能力であったことについて被告人Bの精神鑑定を実施したP医師は、被告人Bには、本件犯行当時、明確に診断できる精神障害はなく、被告人Bが述べる霊的な言動等については、成育歴や 周囲の影響、本人の思考の偏りなどの正常心理から説明が可能であると判断するところ、かかる鑑定結果の信用性に疑いを生じさせる事情はなく、同鑑定結果は信用することができる。また、犯行状況についてみても、偶々被害者と二人きりになったことに乗じて犯行を実行し、犯行後には偽装工作にも及んでいるのであるから、自己の行為の違法性を認識しつつ犯行に及んでいることは明らかで、責任能力に疑 念を生じさせるような事情は認められない。そうすると、本件犯行当時、被告人Bは完全責任能力の状態であったと認めることができる。 【法令の適用】(記載省略)【量刑の理由】 量刑判断の中心となる殺人事件についてみると、本件犯行は、Iの背後から、殺傷能力の高い刺身包丁で、身体の枢要部を突き刺し、深さ約17cmの傷を負わせ、短時間で多量の出血を生じさせて死亡させたものであり、その犯行態様は極めて悪質なものである。Iは何らの落ち度もないなか理不尽にその命を奪われたものであり、結果は取り返しのつかない重大で深刻なものである。 被告人Aは、本件殺人事件の首謀者として、Jにも成りすまして、被告人Bを言葉巧- 11 - みにI 尽にその命を奪われたものであり、結果は取り返しのつかない重大で深刻なものである。 被告人Aは、本件殺人事件の首謀者として、Jにも成りすまして、被告人Bを言葉巧- 11 - みにI殺害へと誘導し、自己の手駒として自らの手を汚さないようにして本件殺人を実行したものである上、その動機についてみても、美人局の証拠等が明るみに出ることを防ぐとともにIの退職金等の獲得を企図したものであり、その犯情は総じて悪質性が顕著である。事後の証拠隠滅についてみても、犯罪の発覚を免れるために、C及びDに対して主体的に働きかけている。こうした犯情の重さに照らすと、被告人Aは相当長期の 実刑は免れない。 また、被告人Bは、本件殺人事件の実行犯として、事前に凶器を購入し、確実に刃物で刺し殺す方法などを調べた上で、計画的かつ強固な殺意に基づいて本件犯行に及び、実父の殺害を完遂したものであり、犯行後のIとのやり取りで自らの行為の意味に気付く機会を与えられながらも、これに気付くことなく、財布を奪って強盗に見せかけたり、 Iの生存を偽装したりしたほか、判示第4、第5の犯行に及んだことを踏まえると、その犯情の悪質性は強い。しかしながら、被告人Bは、認識の偏りによる思い込みの強さや被告人Aに対する思いを良いように利用されていた側面は否定できない上、動機についてみても、上記のとおり退職金等の獲得も企図していた被告人Aとは異なり、被告人Aにかかった呪いを解いて被告人Aの命が救えると思い込んで、本件犯行に及んだもの である。これらを踏まえると、その犯情は被告人Aほど悪質とまではいえない。 以上の点に加え、被告人両名が、判示第1、第2の犯行も行っていること、他方、被告人Aは、息子が社会復帰後に被告人Aを受け入れる旨述べていること、被告人Bは、自己が 人Aほど悪質とまではいえない。 以上の点に加え、被告人両名が、判示第1、第2の犯行も行っていること、他方、被告人Aは、息子が社会復帰後に被告人Aを受け入れる旨述べていること、被告人Bは、自己が行った犯罪事実については概ね認めており、伯母が出所後に被告人Bを受け入れる旨述べていることなどの事情も踏まえ、主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑被告人Aについて懲役30年、被告人Bについて懲役23年)令和6年11月25日 仙台地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官宮田祥次- 12 - 裁判官米満祥人 裁判官浅野雄一朗

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る