令和8年1月29日判決言渡令和7年(行ケ)第10083号審決取消等請求事件口頭弁論終結日令和7年12月15日判決 原告 X 被告特許庁長官同指定代理人圓道浩史 同伊藤隆夫同合田幸裕同北村英隆 主文 1 本件訴えのうち、特許庁が特願2020-87029号事件について令和 6年6月25日にした拒絶査定の取消しを求める部分及び同事件の特許の出願に係る特許査定の義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求特許庁が不服2024-16180号事件で、令和7年7月15日にした審決及び、同事件の元の特願2020-87029号出願事件の起案日令和6年6月25日の査定を取り消す、同出願を特許する。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、令和2年4月14日、発明の名称を「試写カメラ」とする発明について特許出願(特願2020-87029号。請求項の数は1。以下「本願」という。)をした。 ⑵ 原告は、令和6年2月1日付けの拒絶理由通知(以下「本件拒絶理由通知」という。)を受け、同年4月1日付けで手続補正書及び意見書を提出した。 なお、本願の請求項1の記載は、同手続補正書によって補正されていない。 (乙3)⑶ 特許庁は、令和6年6月25日付けで、本願について拒絶査定(以下「原査定」と 続補正書及び意見書を提出した。 なお、本願の請求項1の記載は、同手続補正書によって補正されていない。 (乙3)⑶ 特許庁は、令和6年6月25日付けで、本願について拒絶査定(以下「原査定」という。)をした。 ⑷ 原告は、令和6年9月20日付けで、原査定に対し不服の審判請求(不服 2024-16180号。以下「本件審判請求」という。)をした。本件審判請求における請求の趣旨は次のとおりである。なお、下記の請求の趣旨の記載の中にある「甲」は「特許庁審査官 A」を、「乙」は「特許庁長官」を指すものとされていた(以下、この判決においても、原告の主張に関し、上記の内容を指すものとして「甲」及び「乙」の表記を用いることがある。)。 「Ⅰ 本出願に対する査定(以下単に“査定”とする)を取り消す、特許をすべき、との審決を請求する Ⅱ 甲と乙は折半して、請求人に3千万円支払え。Ⅲ 審判費用は、甲と乙で折半して負担するとの審決を求める。」(以下、上記請求の趣旨に「Ⅰ」、「Ⅱ」、「Ⅲ」として記載された請求を、それぞれ「請求の趣旨Ⅰ」ないし「請求の趣旨Ⅲ」という。) ⑸ 特許庁は、令和7年1月27日付け審理終結通知書をもって、原告に対し、本件審判請求に係る審判事件の審理が終結したことを通知した。原告は、同年2月14日付け審理再開申立書を提出した。 ⑹ 特許庁は、令和7年7月15日、「請求の趣旨中、『Ⅰ 本出願に対する査定(以下単に“査定”とする)を取り消す、特許をすべき、との審決を請 求する』については、その請求は、成り立たない。請求の趣旨中、『Ⅱ 甲 と乙は折半して、請求人に3千万円支払え。Ⅲ 審判費用は、甲と乙で折半して負担するとの審決を求める。』との請求は、却下する。」との審決(以下「本件審決」という。)を 請求の趣旨中、『Ⅱ 甲 と乙は折半して、請求人に3千万円支払え。Ⅲ 審判費用は、甲と乙で折半して負担するとの審決を求める。』との請求は、却下する。」との審決(以下「本件審決」という。)をした。 ⑺ 原告は、令和7年8月27日、本件訴訟を提起した。 原告が提起した訴えの請求の趣旨には、前記第1の請求のほか、金銭請求 も含まれていたが、金銭請求の部分については弁論の分離がされており、この判決における判断の対象とはなっていない。 前記第1の請求は、特許庁が不服2024-16180号事件について令和7年7月15日にした審決(本件審決)の取消しを求める請求、特許庁が特願2020-87029号事件について令和6年6月25日にした拒絶査 定の取消しを求める請求、及び同事件の特許の出願に係る特許査定の義務付けを求める請求から成るものである。 2 特許請求の範囲の記載本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(以下、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本願発明」という。)。 「撮影した画像が保存された記憶媒体を、電気的に、ファインダーのパネルと結んだことを特徴とするディジタルカメラ」 3 本件審決の理由の要旨本件審決は、別紙審決書写しのとおりであり、その内容は、概略、以下のと おりである。 ⑴ア本願発明と、引用文献1(特開2009-267962号公報)に記載された発明(引用発明1)を対比すると、「撮影した画像が保存された記憶媒体を、電気的に、ファインダーのパネルと結んだ ディジタルカメラ」 の点で一致し、相違しないから、本願発明は引用発明1である。 イ本願発明と、引用文献2(特開2007-166319号公報)に記載された発明(引用発明2)を対比 ディジタルカメラ」 の点で一致し、相違しないから、本願発明は引用発明1である。 イ本願発明と、引用文献2(特開2007-166319号公報)に記載された発明(引用発明2)を対比すると、「撮影した画像が保存された記憶媒体を、電気的に、ファインダーのパネルと結んだ ディジタルカメラ」の点で一致し、相違しないから、本願発明は引用発明2である。 ⑵ 請求人(原告)は、審判請求書において、原査定には「査定違法事由」1から10の違法があり、原査定は特許法で定める効力をもっていないと主張するが、「査定違法事由」1から10は、いずれも失当であるか、又は原査 定における特許法29条1項3号についての結論の妥当性及び手続の適法性に影響しないものであり、原査定は特許法に適合するものであって、請求人の主張は受け入れられない。 ⑶ 請求の趣旨Ⅱ及びⅢは、いずれも不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものであるから、特許法135条の規定により、却下 すべきものである。 ⑷ (「付記(審理再開の申立について)」として)請求人は、令和7年2月14日に提出した審理再開申立書において、「審理を再開するとの決定」及び「被請求人に審判請求書を送付し、答弁書の副本を請求人に送達する」ことを求めている。 請求人は、被請求人に審判請求書を送付し、答弁書の副本を請求人に送達することを求める理由として、「まだ審判長から、答弁書の副本が、請求人に送達されていない」ことが、特許法134条1項及び同条3項の規定に違反すると主張している。 しかし、本件は拒絶査定不服審判事件であるから、特許法161条に規定 されたとおり、同法134条1項及び同条3項の規定は適用されない。 そして、請求人は、「ま すると主張している。 しかし、本件は拒絶査定不服審判事件であるから、特許法161条に規定 されたとおり、同法134条1項及び同条3項の規定は適用されない。 そして、請求人は、「まだ審判長から、答弁書の副本が、請求人に送達されていない」ことが、特許法134条1項及び同条3項の規定に違反すること以外に、本件の審理を再開すべき実質的な理由を申し立てていない。 したがって、審理再開の必要を認めない。 4 取消事由 原告が、本件審決の取消事由(違法事由)として主張するものは、以下のとおりである。 ⑴ 取消事由1理由の記載の欠如⑵ 取消事由2 本件審決が原告に送達されていないこと⑶ 取消事由3本件審決に審判官の印がないこと⑷ 取消事由4原告の抗告権が奪われたこと ⑸ 取消事由5甲及び乙に対する裁判を受ける権利が奪われたこと⑹ 取消事由6本件審決をした特許庁審判官が職務に関する罪を犯したこと⑺ 取消事由7 本件審決をした特許庁審判官が虚偽公文書作成の罪を幇助したこと第3 当事者の主張 1 取消事由1(理由の記載の欠如)について〔原告の主張〕下記のとおり、本件審決に理由の記載が無い。これは特許法157条2項に 違反する。 ⑴ 審決理由不記載事由1原告は、本件審判請求において、原査定は、大審院判例明治34年1月10日(民録7輯1巻1頁)第1民事部判決に反するとし、その理由として、原査定には査定違法事由1ないし10があると主張した(判決注:別紙審決書写し14ないし25頁記載のとおり。)。 これに対し、本件審決をした特許庁審判官は、査定違法事由1ないし10はいずれも失当であると判断したが、この判断には以下のアないしコのとおり理由が 決書写し14ないし25頁記載のとおり。)。 これに対し、本件審決をした特許庁審判官は、査定違法事由1ないし10はいずれも失当であると判断したが、この判断には以下のアないしコのとおり理由がない。したがって、本件審決は、原査定が「当該官吏若しくは公吏がその管掌の事項に関して法令の規定により作りたる文書にしてしかも法令の規定したる方式を具備したる」ことを証明しなかった。 そして、本件審決をした特許庁審判官は、本件審決で、原告の審判請求書の「甲は拒絶の理由を見つけられなかった」を覆せなかった。 したがって、本件審決は、特許法51条に違反する。 ア査定違法事由1について原告は、原査定に、審査官の押印がないから違法であると主張した。 これに対し、本件審決をした特許庁審判官は、原査定は、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(以下「特例法」という。)4条1項の「特定処分等」に当たり、同項により「経済産業省令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して」行ったものであるから、査定には査定をした審査官が記名押印しなければならないとする特許法施行規則35条、及 び特許法52条に反しないと判断した。 しかし、原告は、特許庁に保管の査定に審査官の記名及び押印がないとは主張しておらず、原告に届いた原査定に審査官の押印がないと主張しているのである。 特例法4条1項は、「処分」、「判定」、及び「文書をもって行うものとさ れている行為」は、「電子情報処理組織を使用して行うことができる」とさ れているが、これらの行為は行政行為に当たり、行政庁の行為のうち、事実行為、私法上の行為及び立法行為を除外したものである。原告に届いた原査定に審査官の押印が無くても違法ではないとするには、送達という事実行為を規定する 行為は行政行為に当たり、行政庁の行為のうち、事実行為、私法上の行為及び立法行為を除外したものである。原告に届いた原査定に審査官の押印が無くても違法ではないとするには、送達という事実行為を規定する法令に、その旨の記載がなければならない。 また、本件審決をした特許庁審判官は、本件審決の30頁において、工 業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則(以下「特例法施行規則」という。)23条の3に「記名押印に代えて」とあることを理由に、査定に、これらの処分をした者の押印がなくても、特許法施行規則35条及び50条の10に違反しないとした。しかし、原告に届いた原査定にも本件審決にも、審査官・審判官の記名が存在する。「記名押印に代えて」と いうことは、記名も押印もしないという意味であるから、押印のみせず、記名だけした場合も違法でないとする根拠、すなわち特例法施行規則23条の3ではない根拠となる法規を示す必要がある。 査定や審決は、特例法5条の「通知又は命令」に当たり、送達に関しては特例法4条ではなく5条が適用され、査定や審決は、特例法5条に規定 される「特定通知等」に当たらないから、本件審決をした特許庁審判官の主張には理由がない。 イ査定違法事由2について原告は、本件審判請求で、原査定が原告に送達されていないと主張した。 これに対し、本件審決をした特許庁審判官は、原査定は送達されていると 主張し、その根拠として、原査定が「特定処分等」に当たることを前提としているが、上記アのとおり、査定の送達は「特定処分等」に当たらないから、査定に特例法10条1項を適用することはできず、特許法52条2項に違反しないとの主張に理由はない。 また、郵便により原告に送達されたとするには、郵便法に従って送達さ れなければならない。 ら、査定に特例法10条1項を適用することはできず、特許法52条2項に違反しないとの主張に理由はない。 また、郵便により原告に送達されたとするには、郵便法に従って送達さ れなければならない。 さらに、本件審判請求の請求書に記載した「また、請求人が、査定を受け取ったとき査定が入っていた封筒(証拠4)に配達証明を示すものが貼られていない事から明らか」との主張を、本件審決をした特許庁審判官は否認しなかったのであるから、民事訴訟法159条1項により、原査定は送達されていないとしなくてはならない。 本件審決についても、証拠5から明らかなように、本件審決が原告に届いたとき入っていた封筒に日本郵便が貼り付けた白いバーコードは、原査定の封筒に貼られていたものと同じものであるから、本件審決も原告に送達されていない。 ウ査定違法事由3について 本件審決をした特許庁審判官は、原査定の記載「起案日令和6年6月25日」の記載が、特許法施行規則35条6号に規定される「査定の年月日」と主張するが、その理由の記載が本件審決になく、原査定は同号に違反する。 エ査定違法事由4について 原告は、本件審判請求において、特許法150条の規定が審査においても準用されることを理由に、審査官は、拒絶理由の根拠とする証拠の写しを、原告に送付する義務があると主張したが、本件審決をした特許庁審判官は、本件審決の32頁において、本件拒絶理由通知又は原査定の引用文献について、「審査官が審査請求人に送付しなければならないとする法的 根拠はない」、同条は審査において適用されないと主張した。 しかし、民事訴訟規則137条1項、2項の規定によれば、証拠調べをするには、挙証者の相手方と裁判所に書証が送られなければならないところ、審査において 」、同条は審査において適用されないと主張した。 しかし、民事訴訟規則137条1項、2項の規定によれば、証拠調べをするには、挙証者の相手方と裁判所に書証が送られなければならないところ、審査において審査官は一方の当事者と裁判所を兼ねるから、甲は、引用文献を請求人に送付しなければならない。それにもかかわらず、本件審 決をした特許庁審判官は、審査官が審査請求人に送付しなければならない 法的根拠はないとしたし、引用文献1及び2を原告に送付しなかったのであるから、審査においても、審判においても、引用例1及び2について、証拠調べをしていないし、しなくても違法ではないと主張したと理解せざるを得ない。 甲は、引用文献1及び2の成立が不真正としても、引用文献1及び2を 査定の根拠にできると判断し、証拠調べをしなかった。そして、本件審決をした特許庁審判官は、審査には特許法150条1項は適用されず、審判に関しても、同項は「証拠調をすることができる」とあるから、証拠調べをしなくても違法ではないと主張するが、同項は、審査においても審判においても、証拠調べをすることができないと規定しておらず、同法の他の 条文にもそのような規定はない。そして、審査も審判も、行政事件訴訟法3条1項にいう「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」の取扱範囲であるところ、同法1条及び7条によれば、審査、審判は、特許法及び行政事件訴訟法に定めがない事項については、民事訴訟法によることになるから、審査において証拠調べに関する規定は、民事訴訟法による。 そして、原査定も、本件審決も、引用文献1及び2という証拠に、本願発明の記載があることのみを理由にしたのであるから、民事訴訟法247条によれば、審査においても、審判においても、証拠調べをしなくてはならない。 査定も、本件審決も、引用文献1及び2という証拠に、本願発明の記載があることのみを理由にしたのであるから、民事訴訟法247条によれば、審査においても、審判においても、証拠調べをしなくてはならない。 そうすると、本件審決をした特許庁審判官の、証拠調べをしなくても違 法ではないとの判断には理由がない。 そして、本件審決をした特許庁審判官も、甲も、引用文献1及び2の証拠調べをしなかったから、引用文献1及び2を審決及び査定の根拠とすることはできない。 したがって、本件審決及び原査定に理由の記載は無い。 オ査定違法事由5について (ア) 本件審決をした特許庁審判官は、「原査定における『この出願については、令和6年2月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。』という記載を見れば、」との理由で、原査定の理由は本件拒絶理由通知に記載があるとした。しかし、原査定の「備考」の下にも「理由1」、「理由2」の記載がある。そうすると、原査定 の冒頭の上記記載の「理由1、2」は、本件拒絶理由通知に記載の理由及び原査定の「備考」以下の理由と同一であり、これらの理由は「備考」であると、甲は言いたいと解釈するのが自然である。そして、「備考」は、審判請求書に記載のとおり、「他人の意見や他の事例・資料など」などであり、甲の考えではないから、原査定に理由の記載はない。 また、本件審決の33頁の「ウ」と、36頁の「ケ」の記載から、本件審決をした特許庁審判官は、拒絶の理由から特許法29条2項を取り下げたとしなければならないが、これは本件審決33頁の「イ」と矛盾する。これでは、本件審決を読んでも、同条1項と2項を根拠としているのか、同条1項のみを根拠としているのか、読んでいる人に分からな としなければならないが、これは本件審決33頁の「イ」と矛盾する。これでは、本件審決を読んでも、同条1項と2項を根拠としているのか、同条1項のみを根拠としているのか、読んでいる人に分からな い。したがって、原査定に理由の記載はなく、原査定に理由の記載があるとする本件審決にも理由の記載がない。 (イ) 本願が拒絶された理由について、本件拒絶理由通知からは、本願発明が、特許法29条1項3号のうち、a:「頒布された刊行物」に記載されているという理由か、b:「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっ た発明」に該当するという理由なのか、分からないが、原査定には、「・・・実施(搭載)の有無は、それぞれ引用文献1及び2が『本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物』に該当するか否かの判断において、影響しない」と、aについてのみしか述べていない。 本件審決をした特許庁審判官は、本件審決の34頁の「カ」で、本件 拒絶理由通知にaかbか「選択的に記載している」ことと、本件拒絶理 由通知にaの理由の記載があることを理由に、同号に当たる理由はaであるとした。しかし、本件拒絶理由通知の理由1には、「・・・刊行物に記載された発明又は電気通信・・・となった発明であるから」と、aとbの間を「又は」で結んでおり、原査定の理由として「a又はb」の記載があれば、それだけで、aもbも原査定の理由とみなさなければなら ない。原査定にbの理由の記載がなければ、最高裁昭和42年3月7日第三小法廷判決・民集21巻2号262頁の「判断を遺脱することなく完全に行われなければならない」に違反し、本願発明が同号に当たる理由の記載は原査定にないとしなければならない。また、本件審決は、拒絶の理由はaであるとしているが、bに当たる理由を甲が単に ることなく完全に行われなければならない」に違反し、本願発明が同号に当たる理由の記載は原査定にないとしなければならない。また、本件審決は、拒絶の理由はaであるとしているが、bに当たる理由を甲が単に書き忘れ たことも考えられ、この主張には理由がない。 (ウ) 本件審判請求において、原告が、公開特許公報は特許法29条1項3号中の「刊行物」に当たらないと主張したのに対し、本件審決をした特許庁審判官は、本件審決で、公開特許公報は同号の「刊行物」に当たるとし、その理由として「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説[第2 1版]」235頁の記載のみを根拠に挙げたが、同著作は特許庁すなわち被告の作成によるものであり、その証拠力はない。 (エ) 原告は、本件拒絶理由通知に対して提出した意見書で、引用文献1及び2の成立を否認した。 本件審決をした特許庁審判官は、本件審決で、原査定の紙面には査定 の理由の記載はなく、本件拒絶理由通知にその記載があるとしたが、上記意見書は、本件拒絶理由通知が原告に届いた後に特許庁に提出したものであるから、本件拒絶理由通知には上記意見書に対する反論の記載はない。そうすると、引用文献1と2の成立は不真正との意見書における原告の主張を退けた理由の記載が、原査定に無いことになるから、原査 定には理由の記載がない。 (オ) 本件審判請求における「引用文献1、2が同項3号の『本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物』であるかどうか判断するには、引用文献1、2の成立が真正であるかどうかの判断をしなくてはならない。そうすると意見書棄却事由は虚偽と言わざるを得ない。」との主張を、本件審決をした特許庁審判官は却下せず、原告の上記主張を 自白した。すなわち、本件審決をした特許庁審判官は をしなくてはならない。そうすると意見書棄却事由は虚偽と言わざるを得ない。」との主張を、本件審決をした特許庁審判官は却下せず、原告の上記主張を 自白した。すなわち、本件審決をした特許庁審判官は、甲1の「引用文献1、2の成立が不真正としても」これらを査定の根拠にできるという、上記主張に対して矛盾した判断をしているから、本件審決に理由の記載が無い。 (カ) 審査も審判も、行政事件訴訟法3条1項における「行政庁の公権力の 行使に関する不服の訴訟」の取扱範囲であり、審査、審判に関する不服の訴訟は、同項に規定された「抗告訴訟」であって、同法2条に規定された「行政事件訴訟」に当たり、同法1条及び7条によれば、審査、審判は、特許法及び行政事件訴訟法に定めがない事項について、民事訴訟法による。 そして、文書が偽造されやすいことは、審査においても、民事訴訟においても同じであるから、民事訴訟法228条1項は審査には適用できないとの特許庁審判官の主張は虚偽と言わざるを得ず、また、原告が引用文献1と2の成立の不真正を証明しなければこれらを原査定の根拠にできるとした判断に根拠はないから、本件審決に理由の記載は無い。 (キ) 原告が、引用文献1と2の成立を不真正とする理由として、意見書で、「不真正事由1から8」を記載したのに対して、甲も、本件審決をした特許庁審判官も、不真正事由1から8を争うことを明らかにしなかったから、民事訴訟法159条1項により、不真正事由1から8を自白した。 また、原告は、意見書に「同じく下記“公報違法事由”に記載のよう に、引用文献1及び、引用文献2に記載の要約の解決手段の項には、解 決手段の記載が無い。すなわち、これら引用文献に記載の出願書類には、その出願しようとする発明の記載が無い。」 よう に、引用文献1及び、引用文献2に記載の要約の解決手段の項には、解 決手段の記載が無い。すなわち、これら引用文献に記載の出願書類には、その出願しようとする発明の記載が無い。」と記載したが、甲も、本件審決をした特許庁審判官も、これを争うことを明らかにしなかったから、引用文献1と2は、特許法64条2項に違反することを自白した。 そうすると、本件審決36頁4行目における「引用文献1、2には、 同項(特許法第64条第2項)第1号から第5号、第7号、及び第8号の事項が掲載されて」いるとの主張は失当である。 また、特許法64条2項によれば、「出願した」発明についての同項各号の記載を特許公報に載せなければならず、特許を受けようとする発明が無い限り、出願はできない。そうすると、特許公報の要件を満たして いれば、発明の記載が無くても、その特許公報は本物であるとの特許庁審判官の主張は虚偽といわざるを得ない。 そうすると、本件審決に、不真正事由1ないし8を却下した理由の記載が無く、引用文献1と2の成立は、不真正としなくてはならない。 そうすると、原査定にも本件審決にも理由の記載が無い。 カ査定違法事由6について原告は、本件審判請求で、「査定は、特許法第29条第2項も拒絶の根拠にしているにも係わらず、その理由を理由通知に記載しなかった。」と主張したが、本件審決をした特許庁審判官は、本件審決に「上記⑹ウと同様、原査定における特許法第29条第1項第3号についての結論の妥当性及 び手続の適法性に影響しない」と記載した。しかし、この主張には理由がない。 キ査定違法事由7について原告は、本件審判請求で、引用文献1、2の成立が真正とする理由は、拒絶理由の一部であり、この理由の不記載は特許法50条に違反すると 。しかし、この主張には理由がない。 キ査定違法事由7について原告は、本件審判請求で、引用文献1、2の成立が真正とする理由は、拒絶理由の一部であり、この理由の不記載は特許法50条に違反すると主 張したのに対し、本件審決をした特許庁審判官は、本件審決で、「上記⑹キ と同様、請求人の主張は、失当であり受け入れられない」とのみ記載した。 しかし、この主張には理由がない。 ク査定違法事由8について原告は、本件審判請求において、原査定が審査官により作成されておらず、特許法47条に違反すると主張したが、本件審決をした特許庁審判官 は、査定違法事由8が請求の趣旨Ⅰとの関係が明らかでなく、主張の客観的な証拠も明らかではないとした。 原告は、原査定が、大審院明治34年1月10日第1民事部判決・民録7輯1巻1頁の判旨第1点である「公正証書がその公正証書なること及びその記載事項の真正なることについて反証あらざる間証拠力を有するに は必ずや当該官吏若しくは公吏がその管掌の事項に関して法令の規定により作りたる文書にしてしかも法令の規定したる方式を具備したるものなることを要す」に違反することを挙げた。上記判例に「当該官吏若しくは公吏」とあり、甲が、審査官でなければ、同判例に反することは明白であり、「請求の趣旨Ⅰとの関係が明らかでなく」との主張は失当である。 また、原告は、甲が審査官でない理由として、①特許法29条2項中の、「前項各号に掲げる発明」と、「その発明」が異なるものでなくてはならないことを知らなかったこと、②甲が拒絶理由を記載しなかったこと、③「査定の年月日」及び「査定の結論及び理由」を記載しろと決まっているにもかかわらず、甲はこれらを記載しなかったこと、④引用文献1、2の請求 人への送付及び査定へ 絶理由を記載しなかったこと、③「査定の年月日」及び「査定の結論及び理由」を記載しろと決まっているにもかかわらず、甲はこれらを記載しなかったこと、④引用文献1、2の請求 人への送付及び査定への押印をしなかったこと、⑤原査定に「拒絶すべきものです」と記載したこと、⑥原査定に、本件拒絶理由通知記載の理由で拒絶すると記載したにもかかわらず、本件拒絶理由通知記載の拒絶理由と異なる理由を原査定に記載したこと、⑦原査定の「備考」の下に理由を記載し、この理由は自身の考えによらないとしたこと、⑧虚偽を公文書であ る原査定に記載したことを挙げた。これらが「客観的な証拠」でないとす る本件審決をした特許庁審判官の主張には理由がない。さらに、査定違法事由2のとおり、甲は、原査定を送達しなかった。 ケ査定違法事由9について原告は、本件審判請求で、被告(特許庁長官)が原査定制作に関与したと主張したのに対し、本件審決をした特許庁審判官は、「請求の趣旨Ⅰとの 関係が明らかでなく、また、それら主張の客観的な証拠も明らかではない」とした。 しかし、特許庁長官は審査官ではなく、前記クに挙げた大審院判決中の「当該官吏若しくは公吏」ではなく、同判例に違反することは明白であり、特許庁審判官の上記主張は失当である。 また、原告は、本件審判請求において、「乙は、2章⑵に記載のように偽物の引用文献1、2を作成し、審査官の資格のない甲に、本出願の審査を担当させた、上記のように、甲は審査官ではないのであるから、すなわち、この本願発明の分野に関して素人であるから、乙が、引用文献1、2を偽造し、公開公報として登録しても、甲は引用文献1、2を見つけられない し、これら文献のどの部分が、本願発明であるか、一人では認識できないのである。そうする であるから、乙が、引用文献1、2を偽造し、公開公報として登録しても、甲は引用文献1、2を見つけられない し、これら文献のどの部分が、本願発明であるか、一人では認識できないのである。そうすると、引用文献1、2を偽造した乙が、理由通知と、査定の作成に関与したと言わざるを得ない。」と主張した。引用文献1及び2に記載の内容は、電子工学の最先端を扱っており、また、この分野の特許公報は膨大な数があることからすれば、「(甲は)この本願発明の分野に関 して素人である」から、甲が引用文献1、2を見つけられない、これら文献のどの部分が本願発明であるか、一人では認識できない、とする主張は、当然である。これらの主張を、「客観的な証拠も明らかではない」というのみで却下することは、経験則に反し、民事訴訟法247条に反する。 コ査定違法事由10について 原告は、本件審判請求で、「甲は、本願発明が特許法29条1項3号に当 たるとしたが、その理由として、本願発明が同号中のa:『頒布された刊行物』に記載されているという理由か、b:『電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明』に該当するという理由なのか記載しなかった、これは同法50条に反する」旨主張したが、本件審決をした特許庁審判官は、選択的記載の一方と整合するとしか記載しなかった。この判断に理由はな い。 ⑵ 審決理由不記載事由2原告は、審査及び審判において、本件審決で原告の主張を棄却した証拠となった文書(引用文献1及び2)の成立を否認したが、審判において、本件審決をした特許庁審判官は、その成立を証明しなかった。それにもかかわら ず上記引用例を本件審決の結論の根拠としたことは、民事訴訟法228条1項に違反し、本件審決に理由の記載はない。 ⑶ 審決理由不記載事由3 審判官は、その成立を証明しなかった。それにもかかわら ず上記引用例を本件審決の結論の根拠としたことは、民事訴訟法228条1項に違反し、本件審決に理由の記載はない。 ⑶ 審決理由不記載事由3本件審決をした特許庁審判官は、前記⑴オ(キ)の不真正事由1ないし8を否認せず、自白しており、これらの不真正事由を認めた。それにもかかわら ず、本件審決の35頁に「なお、公開特許公報である引用文献1、2が、真正のものではないとすべき理由はない」と判断したことには理由がない。 ⑷ 審決理由不記載事由4本件審決が、本件審判請求の記載の請求の趣旨Ⅱ及びⅢを却下した理由は、「(請求に)特許法上の根拠はない」であった。しかし、上記請求の趣旨Ⅱ及 びⅢにより提起される訴訟は、行政事件訴訟法4条にいう当事者訴訟である。 そして、同法2条及び7条によれば、上記請求の趣旨Ⅱ及びⅢに関わる訴訟について、特許法及び行政事件訴訟法に定めがない事項については、民事訴訟法による。そうすると、本件審決に、上記請求の趣旨Ⅱ及びⅢを却下した理由の記載はない。 〔被告の主張〕 ⑴ 本件審決には、特許法157条2項1号に規定された「審判の番号」が記載され(本件審決1頁2行)、同項2号に規定された「当事者及び参加人並びに代理人の氏名又は名称及び住所又は居所」が記載され(同1頁3行及び4行)、同項3号に規定された「審判事件の表示」が記載され(同1頁5行及び6行)、同項4号に規定された「審決の結論及び理由」が記載され(同1頁7 行ないし41頁10行)、同項5項に規定された「審決の年月日」が記載されている(同41頁11行)から、本件審決は特許法157条2項の規定に適合しており、原告の主張はそもそも失当である。 ⑵ 〔原告の主張〕⑴の主張について 同項5項に規定された「審決の年月日」が記載されている(同41頁11行)から、本件審決は特許法157条2項の規定に適合しており、原告の主張はそもそも失当である。 ⑵ 〔原告の主張〕⑴の主張についてア査定違法事由1に関する原告の主張について (ア) 原査定の謄本の送達は、特許法52条2項の規定による査定の謄本の送達に該当するから、特例法5条1項における「特定通知等」に該当し、同項の規定が適用される。 特例法5条1項は、「特定通知等」について、「電子情報処理組織を使用して行うことができる」ことを規定しているが、例外として、「ただし、 特許等関係法令の規定によりその特定通知等を書類の送達により行うものとされている場合において、当該特定通知等の相手方が、送達を受ける旨の経済産業省令で定める方式による表示をしないときは、この限りでない。」と規定している。そして、査定の謄本の送達は、特例法5条1項ただし書における「特許等関係法令の規定によりその特定通知等を書 類の送達により行うものとされている場合」に該当する。また、同項ただし書における「送達を受ける旨の経済産業省令で定める方式」とは、特例法施行規則23条の6により「識別番号の入力並びに電子署名及び電子証明書の送信」とされているところ、本件審決に係る審判請求人(原告)が特許庁に対して当該方式による表示を行った事実は存在しない。 そうすると、原査定の謄本の送達については、特例法5条1項ただし書 の規定により、同項本文にある「電子情報処理組織を使用して行うこと」はできない。 (イ) 本件審決は、「特例法2条が規定する『電子情報処理組織』における『特許庁の使用に係る電子計算機』であって、審査官が拒絶査定の起案に使用する電子計算機は、『特許庁長官が指定する はできない。 (イ) 本件審決は、「特例法2条が規定する『電子情報処理組織』における『特許庁の使用に係る電子計算機』であって、審査官が拒絶査定の起案に使用する電子計算機は、『特許庁長官が指定する職員が交付した識別 カードを使用し、又は個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した符号その他の審判官等を認証するための符号を使用するとともに、あらかじめファイルに記録した暗証番号を入力することにより、審判官等を明らかに』(特例法施行規則23条の3)しない限り使用できない措置が講じられており、原査定の文面には、審査官の氏名 が印字されているから、原査定は、当該審査官が、『特許等関係法令の規定により、特定処分等を文書をもって行い、審判官等がこれに記名押印しなければならないものとされている場合において、法第四条第一項の規定によりその特定処分等を電子情報処理組織を使用して行うときは、その記名押印に代えて、特許庁長官が指定する職員が交付した識別カー ドを使用し、又は個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した符号その他の審判官等を認証するための符号を使用するとともに、あらかじめファイルに記録した暗証番号を入力することにより、審判官等を明らかにする措置を講じなければならない。』との特例法施行規則23条の3の規定に従い、審査官の記名押印に代えて、『電子情 報処理組織』を使用して行ったものと認められ、さらに、特例法4条2項における『前項の規定により行われた特定処分等については、当該特定処分等を文書をもって行うものとして規定した特許等関係法令の規定に規定する文書をもって行われたものとみなして、特許等関係法令の規定を適用する。』との規定により、原査定は、文書をもって行われたも のとみなされ、した うものとして規定した特許等関係法令の規定に規定する文書をもって行われたものとみなして、特許等関係法令の規定を適用する。』との規定により、原査定は、文書をもって行われたも のとみなされ、したがって、原査定は、特許法施行規則35条本文にお ける『査定には、・・・査定をした審査官がこれに記名押印しなければならない。』との規定、及び、特許法52条1項における『査定は、文書をもつて行い』との規定に適合するものであるから、請求人(原告)の主張は失当である」旨判断しているところ、この判断は妥当である。 そして、原査定3頁10行及び11行には、原査定に記載された内容 がファイルに記載されている事項と相違ないことを認証する旨の記載、並びに経済産業事務官の記名及び押印がなされているから、郵便により原告に送達された書類(拒絶査定)に記載された事項が、特例法10条1項における「その処分についてファイルに記録されている事項」と相違ないことは、特許法施行規則18条1項の規定に従い、特許庁長官が 指定する職員である経済産業事務官によって認証されているのであって、郵便により原告に送達された当該書類(拒絶査定)は、特例法10条1項の規定により「当該文書の謄本」すなわち「処分に係る文書の謄本」とみなされるべきである。 そして、郵便により原告に送達された当該書類(拒絶査定)は、真正 に成立した公文書といえる。 以上によれば、原告に届いた査定に審査官の押印がないことを理由に違法であるとする原告の主張は、失当である。 イ査定違法事由2に関する原告の主張について本件においては、特例法10条1項の規定により「査定の謄本」とみな される書類が、特許法190条の規定により準用される民事訴訟法98条2項及び同法99条1項の規定に従って 原告の主張について本件においては、特例法10条1項の規定により「査定の謄本」とみな される書類が、特許法190条の規定により準用される民事訴訟法98条2項及び同法99条1項の規定に従って「郵便」により請求人へ送達されており、何ら違法な点はないから、請求人の主張は、失当であり受け入れられない。 原告は、本件審決も原告に送達されていないと主張するが、本件審決も 原告に送達されている。 原告は、民事訴訟法159条1項の規定が審判に準用されることを前提として、審判請求書における「査定は送達されていない」や「請求人は、査定を特別送達として受け取っていないし、査定の送達報告書に書名も押印もしていない」といった審判請求人の主張を、審判合議体が認めた(自白した)かのように主張しているが、本件審決にはその旨の記載はないし、 そもそも特許法には、自白の擬制は規定されておらず、また民事訴訟法159条1項を準用する規定はないから、原告の当該主張は、その前提において誤りがあり失当である。 ウ査定違法事由3に関する原告の主張について特例法10条1項の規定により原査定の謄本とみなされる書類には、起 案日「令和6年6月25日」と記載されており、また、この記載がファイルに記録された事項と相違ないことは、上記ア(イ)で指摘したとおり認証されている。 そして、原査定についての「査定の年月日」は、「拒絶査定」の起案日の令和6年6月25日であることが明らかである。したがって、原査定の謄 本とみなされる書類には「査定の年月日」が記載されており、特許法施行規則35条6号の規定に適合するものであるから、原告の主張は、失当である。 エ査定違法事由4に関する原告の主張について特許法150条の規定が審査においても準用されると 載されており、特許法施行規則35条6号の規定に適合するものであるから、原告の主張は、失当である。 エ査定違法事由4に関する原告の主張について特許法150条の規定が審査においても準用されるとの主張について は、その前提において誤りがある。また、拒絶理由の根拠とする証拠の写しを、原告に送付する義務があるとの主張についても、何ら法的根拠はないことから、審査官が引用文献1、2を審査請求人(原告)に送付しなかったことに何ら違法な点はない。 特許法には、民事訴訟法247条を準用する規定は存在しないから、同 条に基づいて「審査においても、審判においても、証拠調べをしなくては ならない」とする原告の主張は、その前提に誤りがあり失当である。 また、証拠調について、特許法には、「審判に関しては、当事者若しくは参加人の申立により又は職権で、証拠調をすることができる。」(150条1項)と規定されており、審判に関する証拠調は、必ず行われなければならないとはいえないから、証拠調がなされなかったことを理由とする原告 の主張は、失当である。 オ査定違法事由5に関する原告の主張について(ア) 原告は、本件審決を読んでも、特許法29条1項と2項を根拠としているのか、同条1項のみを根拠としているのか、読んでいる人に分からないから、原査定に理由の記載は無く、原査定に理由の記載があるとす る本件審決にも理由の記載は無いと主張するが、本件審決の記載(37頁4行ないし6行、40頁12行ないし15行)によれば、本件審決において、審判請求書における請求の趣旨Iを成り立たないと結論付けた理由が特許法29条1項3号のみを根拠としていることは明らかであるから、原告の主張は、失当である。 (イ) 本件審決が指摘するとおり、原査定にお おける請求の趣旨Iを成り立たないと結論付けた理由が特許法29条1項3号のみを根拠としていることは明らかであるから、原告の主張は、失当である。 (イ) 本件審決が指摘するとおり、原査定における新規性についての拒絶理由は、請求項に係る発明が、「頒布された下記の刊行物に記載された発明」であることと、「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」であることを選択的に記載している。しかし、原告の主張のうち、査定の理由として、「a又はb」の記載があれば、aもbも、査定の理由とみな さなければならないことを前提として、査定にbの理由の記載が無ければ、最高裁昭和42年3月7日判決の「判断を遺脱することなく完全に行われなければならない」に違反する、との部分は失当である。 また、原告の主張のうち、「審決は、・・・拒絶の理由は、aであるとしているが、bに当たる理由を甲が単に書き忘れたことも考えられ、こ の主張には理由がない。」とする部分について、引用文献1、2が「頒布 された刊行物」に該当することは、次項(ウ)で指摘するとおりであるから、「bに当たる理由を甲が単に書き忘れた」と解することはできず、原告の主張は、失当である。 (ウ) 本件審決の34頁6行ないし16行の記載のとおり、公開特許公報である引用文献1及び2は、特許法29条1項3号にいう「頒布された刊 行物」であり、公開特許公報が「刊行物」に当たらないとする原告の主張は理由がない。 (エ) 本件審決には、「原査定における『この出願については、令和6年2月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。』という記載を見れば、査定の結論及び理由が実質的に記載さ れているから、『査定に、“査定の結論及び理由”が記載されていない。』 絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。』という記載を見れば、査定の結論及び理由が実質的に記載さ れているから、『査定に、“査定の結論及び理由”が記載されていない。』との請求人の主張は、失当であり受け入れられない。」との記載がある(審決書33頁11行ないし15行)。 本件審決における上記記載は、本件拒絶理由通知を参照することにより、原査定における「理由1、2」の内容を理解することができる点を 指摘したものである。すなわち、本件審決における上記記載は、原査定における特許法で規定された「理由」が、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないこと、及び同条2項の規定により特許を受けることができないことである点を指摘したものである。 また、原査定の結論とは、「この出願については、・・・拒絶をすべき ものです。」の部分を意味することが明らかである。 したがって、原査定には「査定の結論及び理由」が記載されており、本件審決の上記記載の判断に誤りはないから、「引用文献1と2の成立は不真正との意見書の主張を退けた理由の記載が、原査定にないことになるから、原査定には、理由の記載が無い。」とする原告の主張は、失当で ある。 (オ) 特許法には、自白の擬制は規定されておらず、民事訴訟法159条1項を準用する規定はないから、〔原告の主張〕⑴オ(オ)の主張は、その前提に誤りがあり失当である。 また、本件審決において、「引用文献1と2の成立の真正が証明されなければ、査定の根拠にできない」という審判請求人(原告)の主張を認 めた事実はないから、原告の主張は、失当である。 (カ) 本件審決には、「請求人は、『(中略)特許法150条第1項及び第2項中の“審判”は“審査”と読み替えなく う審判請求人(原告)の主張を認 めた事実はないから、原告の主張は、失当である。 (カ) 本件審決には、「請求人は、『(中略)特許法150条第1項及び第2項中の“審判”は“審査”と読み替えなくてはならないのであるから、同法第151条により、審査に準用される民事訴訟法228条第1項『文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。』と、文書 の証拠の成立の真正は、文書と関わりの深い証拠を提出した方に証明する責任を与えた。・・・そして、挙証者である甲は、引用文献1、2の成立の真正を証明しなかったのであるから、査定に拒絶の理由の記載が無いことになる。』とも主張している。ここで、請求人の当該主張は、特許法第150条の各規定が審査にも適用されることを前提にしているが、 そのような前提に誤りがあることは(中略)説示したとおりであるから、かかる誤った前提に基づく当該主張は、失当であり受け入れられない。」との記載がある(審決書35頁8行ないし19行)。特許法150条の規定が審査にも適用されるとの前提に誤りがあるとした本件審決の上記判断に誤りはないから、〔原告の主張〕⑴オ(カ)の主張のうち、民事訴訟 法228条1項は審査に適用できないとの主張が虚偽であるとの部分は失当である。 原告の主張は、本件審決が、審判で準用される民事訴訟法228条1項の規定に違反する旨を含んでいるとも解され得るが、特許法150条1項の規定による審判の証拠調は、必ず行われなければならないとは規 定されていないから、「本件審決に理由の記載は無い。」とする部分は、 失当である。 さらに予備的に主張すると、審判において、民事訴訟法228条が準用されるとしても、公開特許公報である引用文献1、2は、同法2項の「文書は、その方式及び趣旨に する部分は、 失当である。 さらに予備的に主張すると、審判において、民事訴訟法228条が準用されるとしても、公開特許公報である引用文献1、2は、同法2項の「文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。」との規定における「そ の方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべき」文書に相当し、「真正に成立した」公文書と推定されるべきであるから、原告がその推定を覆すに足りる証拠を示さない限り、原告の主張は失当である。 (キ) 特許法には、自白の擬制は規定されておらず、民事訴訟法159条1 項を準用する規定はないから、〔原告の主張〕⑴オ(キ)の主張のうち、本件審決をした特許庁審判官が不真正事由1から8を自白したかのような主張は、その前提に誤りがあり失当である。 また、引用文献1及び2が特許法64条2項に違反することを審判合議体が自白したかのような原告の主張も、民事訴訟法159条1項が準 用されることを前提とするものと善解され、その前提に誤りがあるから、失当である。 さらに、原告は、本件審決をした特許庁審判官が、本件審決に「特許公報の要件を満たしていれば、発明の記載が無くても、その特許公報は本物である」と記載したかのように主張しているが、本件審決にそのよ うな記載はなく、原告の主張は本件審決に対する誤解に基づくものであるから、失当である。その上、引用文献1及び2が、特許法64条2項の規定に適合することは、本件審決が判断するとおりであり(審決書35頁27行ないし36頁7行)、かつ、乙4及び5からも認められる。 カ査定違法事由6に関する原告の主張について 本件審決が請求の趣旨Iを成り立たないと結論付けた理由が特許法2 書35頁27行ないし36頁7行)、かつ、乙4及び5からも認められる。 カ査定違法事由6に関する原告の主張について 本件審決が請求の趣旨Iを成り立たないと結論付けた理由が特許法2 9条1項3号のみであることは、上記オ(ア)で指摘したとおりであるから、原告の主張は、失当である。 また、原査定の結論が妥当であり、手続に違法がないことは、本件審決において、「原査定及び対応する拒絶理由通知において、請求人が主張するように、『甲は、本願発明が、特許法第29条第1項に当たる理由のみ理由 通知に記載し、同条第2項に当たる理由(当審注:具体的な説明を意図していると解される)は記載しなかった。』としても、このことは、原査定における特許法第29条第1項第3号についての結論の妥当性及び手続の適法性に影響しない。」と指摘したとおりである(審決書33頁24行ないし29行)。 キ査定違法事由7に関する原告の主張について引用文献1及び2が出願公開について定めた特許法64条2項の規定に適合することは、上記オ(キ)で指摘したとおりであり、また、公文書とは「国または地方公共団体の機関、または公務員がその職務上作成した文書」を意味するところ(広辞苑第6版)、引用文献1及び2は、同条1項及び2 項の規定に従い、特許庁長官が出願公開をしたものであるから明らかに公文書といえる。また公務員が職務上作成したものであるから、民事訴訟法228条2項により、「真正に成立した公文書と推定」されるべきである。 したがって、本件審決で「公開特許公報である引用文献1、2が、真正のものではないとすべき理由はない。」(35頁20行及び21行)としたこ とに違法はないから、原告の主張は、失当である。 ク査定違法事由8に関する原告の主張について 引用文献1、2が、真正のものではないとすべき理由はない。」(35頁20行及び21行)としたこ とに違法はないから、原告の主張は、失当である。 ク査定違法事由8に関する原告の主張について原告の挙げる大審院明治34年1月10日第1民事部判決・民録7輯1巻1頁の判旨第1点が対象とする「公正証書」は、公証人が作成するものであって、審判官が作成する審決とは何ら関係がないものであるから、本 件審決が上記大審院判決に違反するとの原告の主張は、その前提に誤りが あり失当である。 また、原査定が審査官により行われたものであることは、上記ア(イ)で指摘したとおりであるから、特許法47条に違反するとの原告の主張は、失当である。 さらに、原査定に記載された事項が事実でないこと(「虚偽」であること) は、客観的証拠により立証されていないから、公文書である原査定に虚偽を記載したとする原告の主張は、失当である。 ケ査定違法事由9に関する原告の主張について原告が挙げる大審院判例の判旨第1点に本件審決が違反しないことは、上記クで指摘したとおりであるから、原告の当該主張は、その前提に誤り があり失当である。 また、上記クで指摘したとおり、特許法47条違反についての原告の主張は、失当である。 さらに、特許法には、民事訴訟法247条を準用する規定はないから、本件審決が同条に違反する旨の原告の主張は、その前提に誤りがあり失当 である。 コ査定違法事由10に関する原告の主張について前記オ(イ)で指摘したとおりであるから、原告の主張は、失当である。 ⑶ 〔原告の主張〕⑵の主張について前記オ(カ)で指摘したとおりであるから、原告の主張は、失当である。 ⑷ 〔原告の主張〕⑶の主張について原告の主張のうち、 告の主張は、失当である。 ⑶ 〔原告の主張〕⑵の主張について前記オ(カ)で指摘したとおりであるから、原告の主張は、失当である。 ⑷ 〔原告の主張〕⑶の主張について原告の主張のうち、民事訴訟法159条1項が審判に準用されることを前提とする部分は、その前提に誤りがあるから、失当である。 また、引用文献1及び2が真正なものといえることについては、前記⑵キで指摘したとおりであるから、原告の主張は、失当である。 ⑸ 〔原告の主張〕⑷の主張について 本件審決には、請求の趣旨Ⅱ及びⅢのそれぞれについて、却下すべき理由が記載されているから、原告の主張は、失当である。 2 取消事由2(本件審決が原告に送達されていないこと)について〔原告の主張〕本件審決は原告に送達されていない。 本件審決が原告に届いた際に審決が入っていた封筒の写真から、日本郵便が上記封筒に記載したものは、上記写真に写っている白い文字の記載が無いバーコードのみである。この白いバーコードは、日本郵便により付けられた。 日本郵便は、特別送達は、他の郵便と異なった手続をするから、特別送達として郵便物を受領した際、この郵便物を特別送達として扱うよう社員に分かる ように印を付ける必要がある。それにもかかわらず、日本郵便が上記封筒に付けた印は、何も文字の記載の無い白いバーコードのみである。したがって、本件審決は、特別送達で発送されておらず、送達されていない。これは特許法157条3項に違反する。 〔被告の主張〕 訴状における「同年8月1日に、・・・原告は、・・・同年7月15日付け審決(以下単に“審決”とする)を原告は受け取る。」(訴状3頁17行及び18行)との記載、及び「審決が原告に届いたとき入っていた封筒」(訴状9頁5行)との記 ・・・原告は、・・・同年7月15日付け審決(以下単に“審決”とする)を原告は受け取る。」(訴状3頁17行及び18行)との記載、及び「審決が原告に届いたとき入っていた封筒」(訴状9頁5行)との記載によれば、本件審決が原告に送達されたことは明らかである。本件審決が原告に送達されたことを立証するために、被告は、「郵便送達報告書」を乙 2として提出する。 また、原告は、特別送達によらない送達は特許法157条3項に違反する旨主張しているが、当該主張に対しては、本件審決で、「また、請求人は、『査定を特別送達として受け取っていない』と、特別送達されなかったことをことさら指摘するが、民事訴訟法は郵便による送達は、送達を受けるべき者に送達書 類の謄本を交付して行う旨定めているだけで、郵便法および郵便規則による特 別送達の取扱によらなければならないことまでは規定していないところ、特許庁の採用する書留郵便は全体としてほぼ郵便法による特別送達と同視してよい程度のものであり、民事訴訟法上の郵便による送達に該当するといって差支えないことは既に判示されているとおりである(昭和53年5月2日東京高裁判決・昭和50年(行ケ)第82号)。」(審決31頁22行ないし30行)と指摘 したとおりであるから、原告の主張は、失当である。 3 取消事由3(本件審決に審判官の印がないこと)について〔原告の主張〕本件審決に審判官の印がない。これは特許法施行規則50条の10に違反する。 〔被告の主張〕審決については、特許法157条2項に「審決は、・・・文書をもつて行わなければならない。」との規定があり、また、特許法施行規則50条の10に「審決書には、審決をした審判官が記名押印しなければならない。」との規定がある。 一方、審決は、査定と同 ・・・文書をもつて行わなければならない。」との規定があり、また、特許法施行規則50条の10に「審決書には、審決をした審判官が記名押印しなければならない。」との規定がある。 一方、審決は、査定と同様に、特例法4条1項が規定する「特定処分等」に 該当し、同項の規定により「経済産業省令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して行うことができる」ところ、本件審決は、特例法施行規則23条の3の規定に従い、審判長及び審査官の記名押印に代えて「電子情報処理組織」を使用して行われた。 また、本件審決は、原査定と同様に、特例法4条2項の規定により、文書を もって行われたものとみなされる。 そうすると、本件審決は、特許法157条2項及び特許法施行規則50条の10の規定に適合するものであるから、原告の主張は、失当である。 4 取消事由4(原告の抗告権が奪われたこと)について〔原告の主張〕 本件審決をした特許庁審判官は、特許法156条1項で審判長に義務付けら れる審理の終結の通知をしなかった。 原告は、発送日2025年(令和7年)2月4日の審理終結通知に対し、同月14日付け審理再開申立書を発送した。 しかし、本件審決をした特許庁審判官は、上記申立てを棄却する決定を出さずに、本件審決を出し、その審決に上記申立てを棄却する旨記載した。すなわ ち、特許庁審判官は、上記申立てに対する決定を出す前に本件審決を出し、決定に対する原告の抗告権を奪った。これは、審査、審判においても準用される民事訴訟法150条及び328条1項に反する。 〔被告の主張〕特許法156条1項に規定された「審理の終結」が、審判請求人(原告)に 通知されたことは明らかであるから、本件審決をした特許庁審判官が審理の終結の通知をしなかったとする 。 〔被告の主張〕特許法156条1項に規定された「審理の終結」が、審判請求人(原告)に 通知されたことは明らかであるから、本件審決をした特許庁審判官が審理の終結の通知をしなかったとする原告の主張は、失当である。 また、特許法156条3項は、審理の再開を義務付けた規定ではなく、かつ、同法には、審理再開申立てを受け入れない場合に審決に先立ち通知をすることを義務付ける規定はないから、本件審決は同法に適合するものである。 そして、特許法には、民事訴訟法150条及び328条1項を準用する規定はないから、本件審決が同法150条及び328条1項に違反する旨の原告の主張は、その前提に誤りがあり失当である。 5 取消事由5(甲及び乙に対する裁判を受ける権利が奪われたこと)について〔原告の主張〕 原告は、2025年(令和7年)2月14日付け審理再開申立書において、請求の趣旨として「審理を再開するとの決定、及び被請求人に審判請求書を送付し、答弁書の副本を請求人に送達するよう求める。」と記載し、その根拠として特許法134条1項及び同条3項を挙げ、また、同申立書で、特許法161条を引用しつつ、請求の趣旨Ⅱ及びⅢについては、民法709条に基づいてい るとした。 それに対して、本件審決をした特許庁審判官は、上記申立てを棄却し、その理由として、本件審決の40、41頁に記載のように、「本件請求の趣旨のうち、Ⅱ及びⅢについては、特許法に定められた審判の請求に当たらない」のみを挙げたが、請求の趣旨Ⅱ及びⅢにより提起される事件は、行政事件であり、特許法に定めがないことについては民事訴訟法によるから、本件審決には、上記申 立てを棄却した理由が示されていない。 〔被告の主張〕本件審決40頁21行ないし41頁5行に、 、行政事件であり、特許法に定めがないことについては民事訴訟法によるから、本件審決には、上記申 立てを棄却した理由が示されていない。 〔被告の主張〕本件審決40頁21行ないし41頁5行に、原告の審理再開申立てを棄却した理由が記載されており、本件審決に同申立を棄却した理由が示されていないとする原告の主張は、失当である。 6 取消事由6(本件審決をした特許庁審判官が職務に関する罪を犯したこと)について〔原告の主張〕本件審決をした特許庁審判官は、本件審判請求による審判手続において、次のとおり、職務に関する罪を犯した。 ⑴ 前記査定違法事由2のとおり、本件審決をした特許庁審判官は、査定の送達が特例法4条1項にいう「特定処分等」に当たらないことを知っていた(前記1〔原告の主張〕⑴イ)。それにもかかわらず、査定の送達が「特定処分等」に当たるとしたのは、虚偽公文書作成の罪に当たる。 ⑵ 前記査定違法事由5のとおり、文書が偽造されやすいことは、審査におい ても、民事訴訟においても同じであるから、民事訴訟法228条1項は審査には適用できないとの、本件審決をした特許庁審判官の主張は虚偽と言わざるを得ない(前記1〔原告の主張〕⑴オ(カ))。 ⑶ 前記査定違法事由5のとおり、特許公報の要件を満たしていれば、発明の記載が無くても、その特許公報は本物であるとの特許庁審判官の主張は虚偽 といわざるを得ない(前記1〔原告の主張〕⑴オ(キ))。 〔被告の主張〕上記⑴については、前記1〔被告の主張〕⑵イにおいて、上記⑵については、前記1〔被告の主張〕⑵オ(カ)において、上記⑶については、前記1〔被告の主張〕⑵オ(キ)において、それぞれ指摘したとおりであるから、原告の主張は失当である。 7 取消事由7 ⑵については、前記1〔被告の主張〕⑵オ(カ)において、上記⑶については、前記1〔被告の主張〕⑵オ(キ)において、それぞれ指摘したとおりであるから、原告の主張は失当である。 7 取消事由7(本件審決をした特許庁審判官が虚偽公文書作成の罪を幇助したこと)について〔原告の主張〕本件審決をした特許庁審判官は、原査定に、拒絶の理由の記載がないこと、すなわち、原査定が特許法52条に違反することを認識していたにもかかわら ず、原査定を取り消さず、まるで、原査定も、本件審決も、引用文献1及び2の成立を真正と判断し、その判断に基づいて本願を拒絶したと思い込ませようとした。 本件審決をした特許庁審判官は、弁護士でもなく法律に疎い原告の弱みに付け込み、拒絶の理由があると原告に思い込ませて、原告の請求を退けた。 これは、甲の虚偽公文書作成による原告の審査請求という業務を妨害する犯罪(刑法233条)を幇助したことに当たる。 〔被告の主張〕原告の主張は、客観的証拠に基づくものではなく、何ら立証されていないから、失当である。また、審判合議体が刑法233条に当たる行為及びその幇助 をした事実はない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(理由の記載の欠如)について⑴ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕のとおり、本件審決には理由の記載が無く、特許法157条2項に違反すると主張する。 しかし、本件審決は、「理由」の箇所(審決書1頁ないし41頁)で、請求 の趣旨Ⅰの請求は成り立たない、請求の趣旨Ⅱ及び請求の趣旨Ⅲの各請求は却下するとの結論を導いた理由を具体的に記載しており、特許法157条2項4号にいう「審決の・・・理由」の記載が無いなどということはない。 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴ないし⑷におい 各請求は却下するとの結論を導いた理由を具体的に記載しており、特許法157条2項4号にいう「審決の・・・理由」の記載が無いなどということはない。 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴ないし⑷において、審決理由不記載事由1ないし4として様々な事項を挙げて、これらの事項について本件審 決に理由の記載が無いと主張しているが、原告が主張する内容を検討すると、これらの主張は、上記各事項に関して本件審決の記載が判断として不十分、不相当であるとの原告の見解を述べるものにすぎない。また、原告が前記第3の1〔原告の主張〕⑴ないし⑷で挙げる事項の全てについて本件審決が判断を示していなければ、本件審決に理由の記載が無いことになる、と解する こともできない。 ⑵ 上記⑴の説示によれば、原告の主張する取消事由1は理由がないものであり、本来これ以上の検討は不要であるが、念のため、審決理由不記載事由1ないし4に挙げた事項に関する本件審決の判断が不十分、不相当である旨の原告の主張につき、本件審決の取消事由となるか否かの観点から検討すると、 以下のアないしエのとおり、原告の主張する内容が本件審決の取消事由になるとは解されない。 ア原告は、審決理由不記載事由1において、原告が本件審判請求において主張した、原査定に係る違法事由(査定違法事由1ないし10)に関する本件審決の判断が不十分、不相当である旨の主張をしている。 しかし、査定違法事由1ないし10は、原査定の違法事由であると原告が本件審判請求で主張していた事情であるところ、原査定の違法事由が直ちに本件審決の取消事由になると解することはできない上、これらの違法事由に係る原告の主張は、いずれも理由がない。 イ原告は、審決理由不記載事由2において、原告は、審査及び審判におい て、引用 に本件審決の取消事由になると解することはできない上、これらの違法事由に係る原告の主張は、いずれも理由がない。 イ原告は、審決理由不記載事由2において、原告は、審査及び審判におい て、引用文献1及び2の成立を否認したが、審判において、本件審決をし た特許庁審判官は、その成立を証明しないまま、上記引用文献を審決の結論の根拠としており、これが民事訴訟法228条1項に違反する旨の主張をしている。 しかし、引用文献1及び2は、いずれも公開特許公報であり、これらが特許法64条に基づき特許庁長官が出願公開したものでないとは認めら れず、本件審決をする合議体が上記公開特許公報は真正に成立したものであると立証しない限りこれを引用文献として用いることができないとは解されない。 ウ原告は、審決理由不記載事由3において、本件審決をした特許庁審判官は前記第3の1〔原告の主張〕⑴オ(キ)の不真正事由1ないし8を否認せず、 自白しており、これらの不真正事由1ないし8を認めたにもかかわらず、「公開特許公報である引用文献1、2が、真正のものではないとすべき理由は無い」と判断したことには理由がないと主張している。 しかし、拒絶査定不服審判請求である本件審判請求に係る審判手続は、特許法の規定に基づくものであって、司法機関である裁判所が行う訴訟手 続とは異なるものであり、当然に民事訴訟法の規定が適用又は準用されることはない。そして、民事訴訟法において自白の擬制について規定する同法159条1項の規定が、拒絶査定不服審判請求に係る審判手続に適用又は準用されると解すべき根拠があるとは認められない。 また、引用文献1及び2は、いずれも公開特許公報であり、これらが特 許法64条に基づき特許庁長官が出願公開したものでないと認められない 又は準用されると解すべき根拠があるとは認められない。 また、引用文献1及び2は、いずれも公開特許公報であり、これらが特 許法64条に基づき特許庁長官が出願公開したものでないと認められないことは、前記イのとおりである。 エ原告が審決理由不記載事由4において主張する内容は、取消事由4において主張する内容と同一であり、この主張を採用することができないことは、後記4の説示のとおりである。 ⑶ 上記⑴及び⑵によれば、取消事由1に関する原告の主張は、採用すること ができない。 2 取消事由2(本件審決が原告に送達されていないこと)について⑴ 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕のとおり、本件審決が原告に送達されておらず、この点において本件審決が違法である旨主張する。 ⑵ しかし、乙2及び弁論の全趣旨によれば、本件審決について、原告に対し 令和7年8月1日に送達がされた旨の郵便送達報告書が作成されたことが認められる。 ⑶ 拒絶査定不服審判請求に対する審決は、特例法4条1項にいう「特定処分等」に該当し(特例法施行規則23条7号)、電子情報処理組織を使用して行うことができるものであり(特例法4条1項)、この手続又は処分についてフ ァイルに記録されている事項を記載した書類は、当該文書の謄本とみなされる(特例法10条1項)。本件審決は電子情報処理組織を使用して行われたものである(弁論の全趣旨)。 ⑷ 上記⑵及び⑶の事実並びに弁論の全趣旨によれば、本件審決について、その謄本とみなされるものである、ファイルに記録されている事項を記載した 書類が、令和7年8月1日に原告に対して送達されたものと認められ、この認定に反する証拠はない。 ⑸ 原告は、特別送達であれば、その郵便物を特別送達として扱うことが分かるよう 事項を記載した 書類が、令和7年8月1日に原告に対して送達されたものと認められ、この認定に反する証拠はない。 ⑸ 原告は、特別送達であれば、その郵便物を特別送達として扱うことが分かるような印が付けられているはずであるところ、本件審決が原告に届いた際に審決が入っていた封筒には、文字の記載が無い白いバーコードが貼られて いたのみであるから、本件審決の送達がされていないと主張する。しかし、バーコード部分における文字の記載の有無によって特別送達か否かが判別されるとの原告の主張に根拠はなく、その他、原告が主張する事情について裏付けがあるとは認められず、原告の主張をもって、本件審決について送達がされていないと認めることはできない。 ⑹ したがって、取消事由2に関する原告の主張は、採用することができない。 3 取消事由3(本件審決に審判官の印がないこと)について原告は、前記第3の3〔原告の主張〕のとおり、本件審決に審判官の印がなく、これが特許法施行規則50条の10に違反すると主張する。 しかし、特例法施行規則23条の3は、特例法4条1項にいう特定処分等を文書をもって行い、審判官等がこれに記名押印しなければならないものとされ ている場合において、この特定処分等を電子情報処理組織をもって行うときは、審判官等を明らかにする措置として、記名押印に代えて、特例法施行規則23条の3に規定する措置を講ずるべき旨定めている。同条の規定は、特許法施行規則50条の10の特例を定めたものといえる。 前記2⑶の説示によれば、本件審決は、特例法4条1項にいう特定処分等に 該当し、かつ、電子情報処理組織をもって行われたと認められるから、特例法施行規則23条の3が適用され、特許法施行規則50条の10は適用されないのであって、本 特例法4条1項にいう特定処分等に 該当し、かつ、電子情報処理組織をもって行われたと認められるから、特例法施行規則23条の3が適用され、特許法施行規則50条の10は適用されないのであって、本件審決に審判官の印がないことが、特許法又は特許法施行規則違反になるとは解されず、本件審決を取り消すべき事情となるとも解されない。 したがって、取消事由3に関する原告の主張は、採用することができない。 4 取消事由4(原告の抗告権が奪われたこと)について原告は、前記第3の4〔原告の主張〕のとおり、本件審決をした特許庁審判官は、原告の審理再開申立てに対する決定を出す前に本件審決を出し、決定に対する原告の抗告権を奪っており、審査、審判においても準用される民事訴訟法150条及び328条1項に反すると主張する。 しかし、拒絶査定不服審判請求である本件審判請求に係る審判手続は、特許法の規定に基づくものであって、司法機関である裁判所が行う訴訟手続とは異なり、当然に民事訴訟法の規定が適用又は準用されるものではない。そして、原告が挙げる民事訴訟法150条及び328条1項が、拒絶査定不服審判請求に係る審判手続に適用又は準用されると解すべき根拠はない。 原告は、取消事由4に関し、本件審決をした特許庁審判官は、特許法156 条1項で審判長に義務付けられる審理の終結の通知をしなかったとも主張している。 しかし、特許庁は、本件審判請求に係る審判手続において、令和7年1月27日付け審理終結通知書をもって、原告に対し、本願に係る審判事件の審理が終結したことを通知していた(前記第2の1⑸)。原告の上記主張は、原告の同 年2月14日付け審理再開申立書(前記第2の1⑸)に対して特許庁が独立の判断を示さずに本件審決をしたことが違法であると 終結したことを通知していた(前記第2の1⑸)。原告の上記主張は、原告の同 年2月14日付け審理再開申立書(前記第2の1⑸)に対して特許庁が独立の判断を示さずに本件審決をしたことが違法であると主張していると解する余地もあるが、特許に係る審判手続に関して、審理終結通知がされた後に審判の請求人が審理再開申立書を提出した場合に、特許庁が同申立書による申立てに対して独立の判断をする必要があると解すべき根拠となる特許法上の規定は存在 せず、原告の審理再開申立書に対して特許庁が独立の判断をせずに本件審決をしたことが違法であると解することはできない。 したがって、取消事由4に関する原告の主張は、採用することができない。 5 取消事由5(甲及び乙に対する裁判を受ける権利が奪われたこと)について原告は、前記第3の5〔原告の主張〕のとおり、請求の趣旨Ⅱ及びⅢにより 提起される事件は、行政事件であり、特許法に定めがないことについては民事訴訟法によるから、本件審決には、上記申立てを棄却した理由が示されていないと主張する。 しかし、前記4のとおり、拒絶査定不服審判請求である本件審判請求に係る審判手続は、特許法の規定に基づくものであって、司法機関である裁判所が行 う訴訟手続とは異なるものである。請求の趣旨Ⅱ及びⅢは、原査定に対し特許庁に対して行った拒絶査定不服審判請求に含まれていた請求であり、この請求に基づいて特許庁で行われる手続が行政訴訟であるということはなく、特許法に定めがないことについて民事訴訟法によるとも解されない。 したがって、取消事由5に関する原告の主張は、その前提を欠いたものであ って、採用することができない。 6 取消事由6(本件審決をした特許庁審判官が職務に関する罪を犯したこと)について原告は 事由5に関する原告の主張は、その前提を欠いたものであ って、採用することができない。 6 取消事由6(本件審決をした特許庁審判官が職務に関する罪を犯したこと)について原告は、前記第3の6〔原告の主張〕のとおり、本件審決をした特許庁審判官が職務に関する罪を犯したと主張する。 原告は、本件審決をした特許庁審判官が職務に関する罪を犯したという原告 の主張に係る事情が本件審決の取消事由となると解すべき根拠を何も述べておらず、このように解する根拠は認められないから、原告の主張はこの点においてそもそも主張自体失当である。 また、上記の点を措くとしても、原告が前記第3の6〔原告の主張〕において挙げる事情は、誤った法律解釈に基づくものであるか、証拠に基づいて認め られないものであり、職務に関する罪その他の犯罪を構成するとは認められない。 したがって、取消事由6に関する原告の主張は、採用することができない。 7 取消事由7(本件審決をした特許庁審判官が虚偽公文書作成の罪を幇助したこと)について 原告は、前記第3の7〔原告の主張〕のとおり、本件審決をした特許庁審判官が、甲の虚偽公文書作成による原告の審査請求という業務を妨害する犯罪(刑法233条)を幇助したと主張する。 しかし、取消事由6に関する原告の主張と同様、取消事由7に関する原告の上記主張についても、本件審決をした特許庁審判官が虚偽公文書作成の罪の幇 助をしたという原告の主張に係る事情が本件審決の取消事由となると解すべき根拠を何も述べておらず、このように解する根拠は認められない上、原告が前記第3の7〔原告の主張〕において挙げる事情は、誤った法律解釈に基づくものであるか、証拠に基づいて認められないものであり、虚偽公文書作成の罪の幇助を構成するとは 解する根拠は認められない上、原告が前記第3の7〔原告の主張〕において挙げる事情は、誤った法律解釈に基づくものであるか、証拠に基づいて認められないものであり、虚偽公文書作成の罪の幇助を構成するとは認められない。 したがって、取消事由7に関する原告の主張は、採用することができない。 8 前記1ないし7の検討によれば、取消事由1ないし7は、いずれも理由がない。 9 本件の請求(前記第1)には、本件審決の取消し請求のほか、原査定の取消しの請求、及び「同出願を特許する」との請求が含まれている。 このうち、原査定の取消しについては、拒絶査定を受けた者は、その査定に 不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求することとされており(特許法121条1項)、拒絶査定不服審判請求に対する審決がされた後に提起した訴訟において、上記審決において判断の対象とされた拒絶査定の取消しを求めることはできない。したがって、原告の訴えのうち、原査定の取消しを求める訴えは不適法であるから、これを却下すべきである。 また、「同出願を特許する」との請求に係る訴えは、本願に係る特許査定の義務付けを求める訴えであると解される。しかし、裁判所は、審決に対する訴えの提起があった場合において、当該請求を理由があると認めるときは、当該審決を取り消すべきものとされており(特許法181条1項)、審決の取消しの判決が確定したときは、審判官が更に審理を行い、審決をしなければならないの であって(同条2項)、裁判所が、審決に対する訴えについて、当該審決において取り扱われている特許の特許査定の義務付けを命ずる判決をすることはできない。したがって、本願に係る特許査定の義務付けを求める訴えは不適法であるから、これを却下すべきである。 10 その他、原告が縷々主張 われている特許の特許査定の義務付けを命ずる判決をすることはできない。したがって、本願に係る特許査定の義務付けを求める訴えは不適法であるから、これを却下すべきである。 その他、原告が縷々主張する内容を検討しても、前記1ないし9の判断は左右されない。 結論以上のとおりであり、原告の訴えのうち、原査定の取消しを求める訴え及び本願に係る特許査定の義務付けを求める訴えは、不適法であるからこれを却下すべきである。また、原告が主張する取消事由1ないし7はいずれも理由がなく、本件審決について、これを取り消すべき違法はないから、本件審決の取消請求は棄却されるべきである。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官中平健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 (別紙)省略
▼ クリックして全文を表示