令和6(わ)510 恐喝未遂、破産法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月7日 岡山地方裁判所
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判決文本文13,295 文字)

主文 被告人を懲役2年6月に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)第1(令和5年9月8日付け起訴状記載の公訴事実)被告人は、A市議会議員であるが、A市内のBスタジアムで開催予定の音楽イベントに関し、その主催者であるC(当時33歳)から暴力団対策等に対する報酬等の名下に金員を脅し取ろうと考え、令和元年7月23日午後7時2分頃から同日午後8時 29分頃までの間、同市内の事務所において、かねてより被告人からの前記報酬等としての300万円の交付要求に応じていなかったCらに対し、「土地柄っていうのがあって、地域的によくないとこの一つなんですよ。元反社会勢力たちの親分の家が真横なんですよ。Bの方も苦情が出てトラブルになるの分かっとるから貸してないっていうのも事実」「親分とこにも行って、『おめえするんじゃったらええぞ』言うてく れて、県の方に言うてもろうたいうのが経緯なんですよ。ほんでまあオッケーになったと」「地域のめんどくせえおっさんとこにも頭下げ行って、『もうおめえすんだったらええわ』て言うてくれとる人らがおって、ほんで県も安心して貸せたんじゃと思うんすよ」「営利の中で後援を出すのは難しいんすよ。それを無理くり出さしとんですよ、今回」「市の方も僕が入っとるけん今まで動けた部分があるんじゃけん」など と、あたかも被告人の働きかけが奏功したことにより前記スタジアムでのイベント開催が可能となり、A市から後援が得られたかのように申し向けるとともに、「僕はこないだから300万を言うとんじゃけん、言うてくれた分はちゃんとしてくれえよとい たことにより前記スタジアムでのイベント開催が可能となり、A市から後援が得られたかのように申し向けるとともに、「僕はこないだから300万を言うとんじゃけん、言うてくれた分はちゃんとしてくれえよというのももちろん言いますよね」「言うたようにもう、地元の方にももう僕せんからいうことを言いますから。そうなったら地元の方もうんとは言わんと思います」「そ んけえのお金で渋られて、ぐずぐず言うんじゃったら、もう僕、降りさせてもろうて も全然ええと思うて来とんです」「取り下げの申請だけ出してもらわんといけんかなと思うんで。じゃあねかったら、こっちがもう強引にもし取り下げよう思うたら、たぶん彼に傷がつくと思うんですよ」「傷がついたら後のこともやりにくくなろうけん、自分から取り下げてもらうのが一番えんかなと」「僕から言うのはみやしい話なんですけど、言うたらもう一生、おめえの名前じゃ借りれんようなるけん」などと申し向 けて300万円の交付を要求し、Cをして、その要求に応じなければ、被告人の働きかけによって地元である前記スタジアム付近の反社会的勢力等が前記イベントの開催に反対し、同スタジアムにおいて同イベントを開催することができなくなるだけでなく、Cがイベント開催者としての信用を失い、今後同人の名前で施設を借用することができなくなるかも知れないと畏怖困惑させ、同人から現金300万円を脅し取ろ うとしたが、同人が警察に届け出たため、その目的を遂げなかった。 第2(令和5年12月6日付け追起訴状記載の公訴事実)被告人は、令和3年9月2日にI地方裁判所A支部により破産手続開始決定を受け、同決定は同月25日に確定したものであるところ、別表債権者欄記載のDら5名と共謀の上、債権者を害する目的で、被告人がDらに多額の債務を負担していたかのよう 方裁判所A支部により破産手続開始決定を受け、同決定は同月25日に確定したものであるところ、別表債権者欄記載のDら5名と共謀の上、債権者を害する目的で、被告人がDらに多額の債務を負担していたかのよう に仮装しようと考え、別表記載のとおり、Dらが、同年9月10日から令和5年5月29日までの間に、被告人がDらに対して合計5195万円の債務を負担していた旨の内容虚偽の破産債権届出書を同支部に提出して受理させ、もって被告人の債務の負担を仮装する行為をした。 (証拠の標目) 【省略】(判示第1の事実認定についての補足説明) 1 本件の争点等被告人が、判示の日時場所において、判示記載の各発言(以下「本件発言」という。)を行ったことは証拠によって認められ、当事者間にも争いがない。この点検 察官は、同発言が恐喝罪の実行行為に該当すると主張する一方、弁護人は、自分の行った業務説明をしただけであるなどとして、恐喝罪の実行行為に当たらないと主張する。本件の争点は、被告人の本件発言が、恐喝罪の実行行為に当たるかである(弁護人は、恐喝罪の実行行為に当たったとしても、違法性が阻却されるなどとも主張しているが、結局は、違法性を欠くために恐喝罪の実行行為に当たらないと主 張するものと解される。)。 2 本件に関する事実関係本件に至る経緯等について、関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ Cは、平成29年頃、Eが中心となり、A市内に所在するBスタジアム(以下「本件スタジアム」という。)で開催することを計画する音楽イベント(以下「イベン トF」という。)の実施計画に関与していた。 C及びEは、関係者2名とともに、同年10月17日、本件スタジアムを管理する公益財団法人G(以下「G」という。)の 楽イベント(以下「イベン トF」という。)の実施計画に関与していた。 C及びEは、関係者2名とともに、同年10月17日、本件スタジアムを管理する公益財団法人G(以下「G」という。)の事務所に、イベントFの企画書を持参して訪れ、同財団の職員らと協議をした。この協議において、G側から、Eらが開催を希望する8月から9月の開催は厳しいことに加え、騒音、地元対策、交 通渋滞等、イベントを実施する場合の懸念点が述べられた。 ⑵ Cは、平成30年1月頃、友人であるHに対し、本件スタジアムで音楽イベントを開催しようと思っていたが、日程の問題等により施設を利用することができなかったこと、開催するためにはどうすればいいかといったことを相談した。Hは、後日、Cに対して、議員にお願いしてみてはどうかと提案したところ、Cは それで前に進むならお願いしたいと応じた。 ⑶ その後、Hは、A市議会議員である被告人をCに紹介し、Cが被告人に、計画しているイベントについて説明したところ、被告人は応援する旨述べた。 ⑷ 被告人は、I県議会議員の秘書であるJをEとCに紹介し、Jは、同人らのイベント開催に協力することとした。 ⑸ C、E及びJは、平成30年1月29日、新たなイベントFの企画書を持参して、G事務所を訪れ、同財団の職員らと協議をした。この協議では、イベントの開催時期は、平成30年11月もしくは12月とされ、開催決定後は、I県、A市に後援を依頼し、大々的に開催したい等とされていた。G側からは、天然芝の養生等懸念点が述べられたが、開催できる条件が整えば、開催に向けて協議・協 力をしていくつもりである旨述べられた。 ⑹ イベントFの実行委員長であったEは、費用を準備することができなかったこと等から、同イベント れたが、開催できる条件が整えば、開催に向けて協議・協 力をしていくつもりである旨述べられた。 ⑹ イベントFの実行委員長であったEは、費用を準備することができなかったこと等から、同イベントの開催を断念した。 Cは、同年2月6日、Gに電話で、この年のイベントの実現を見合わせることを伝えた。その際、翌年以降7ないし9月にコンサートを開催することができな いか尋ねたところ、野球等の大会の関係で、本件スタジアムを1週間押さえるのは無理である旨の回答があった。 Cは、イベントFが開催できなくなったことから、自分で新たにイベント(以下「イベントK」という。)を立ち上げて開催を目指すこととし、企画、運営や出演アーティストの手配等に関しては、株式会社Lと協力して行うこととした。 Cは、その頃、Jに、イベントが開催されないことになった旨電話で連絡したほか、同人に、問題を解決してフェスをぜひやりたいので協力してほしい、具体的には、本件スタジアムにおける芝の養生の問題、申請等のスケジュール、申請に関する資料の準備内容等について教えてほしいと依頼した。Jは、Cの依頼を受けて、Gに対し、他県の天然芝の会場でのフェス開催事例などをもとにどうし たら開催できるのか調べてほしいと申し入れをし、Cにも、全国のイベント会社が、天然芝の会場でどのような養生をしているのか調べるよう指示をした。 Cは、被告人に対しても、イベントFがなくなったこと、イベントKを開催することを伝えた。 ⑺ 同年7月頃、A市周辺で、豪雨災害(以下「西日本豪雨」という。)があった。 その後、イベントKの開催理由について、西日本豪雨の復興支援が挙げられるようになり、企画書にも記載された。 ⑻ Gは、平成30年10月1日付けで、 日本豪雨」という。)があった。 その後、イベントKの開催理由について、西日本豪雨の復興支援が挙げられるようになり、企画書にも記載された。 ⑻ Gは、平成30年10月1日付けで、理事長名義で、「Bスタジアムでのコンサートについて(主催者側に求める開催時の利用条件)」と題する書面(以下、「本件条件書面」という。)を作成した。Gの担当者であるMは、この頃、Cに 対して、上記書面を渡し、本件スタジアムにおける音楽イベントの開催条件について説明した。その際、Mからは、「周辺住民への開催説明等を行い理解を得ること」との条件については、町内会長に挨拶してほしい旨説明があった。 ⑼ Cは、平成31年1月、イベントKにつき、本件スタジアムの利用予約をし、Jに、本件スタジアムを正式に借りることができたことを伝えた。 ⑽ Cは、令和元年5月11日、Gから要望のあった、本件スタジアム周辺の各町内会の町内会長らへの説明を行った。 ⑾ Cは、同年6月5日、A市に対して、イベントKに関する後援の申請をした。 同月7日付けで後援決定がされ、Cは、同月10日、被告人から関係書類を受け取った。 Cは、同書類を受け取る際、被告人から、300万円の支払を求められたが、請求書をもらわないと支払えない等と述べ、支払わなかった。 ⑿ Cは、被告人からの支払要求について、Jや実行委員会のNに相談していたところ、Nが、被告人と話をするから自分の事務所に連れてきてほしい旨言ったため、被告人とC及びNが、Nの経営する会社の事務所(公訴事実記載の事務所。 以下「本件事務所」という。)で会うこととなった。 ⒀ 被告人とC及びNは、判示記載の日時場所において、話合いを行った。その中で、被告人は、本件発言をした。 ⒁ 同年9月1 の事務所。 以下「本件事務所」という。)で会うこととなった。 ⒀ 被告人とC及びNは、判示記載の日時場所において、話合いを行った。その中で、被告人は、本件発言をした。 ⒁ 同年9月14日及び同月15日、本件スタジアムにおいてイベントKが実施された。その際、地元住民から、本件スタジアムで音楽イベントを行うことに対す る反対やクレームはなかった。 3 被告人とCとの間における契約締結の有無弁護人は、被告人の供述に基づき、平成30年1月中旬から下旬頃、Cとの間で、本件スタジアムで行うイベントの実施のために、近隣対策や消防関係の調整、アーティストやダンサーの手配、イベントに関するスポンサー集めへの協力、チケットのPRとい った業務を行い、その報酬として300万円を受け取るという内容のコンサルタント契約を結んだ旨主張するため、同契約締結の有無について検討する。 ⑴ 被告人は、Cと上記のとおり契約を締結し、報酬を300万円にすることについてはCが選択した、などと述べる一方、Cは、被告人に対して、本件スタジアムでのイベント開催に際して具体的に何かすることを依頼したことはなく、契約の締結や報 酬に関する話をしたこともないと述べる。また、被告人の述べる契約に関する契約書等、契約の存在を直接裏付ける物的証拠はなく、契約の存在を直接示唆する第三者の供述も存在しない。 ⑵ 契約の内容のうち報酬額について、被告人は、当時想定していたイベントの売上げから想定される利益の0.5パーセントである300万円と、実際にイベントを開催 して得られた利益の1パーセントの2つを提案したところ、Cが300万円を選択したと述べる。しかし、被告人が契約を締結したと述べる時期は、未だ本件スタジアムが使用できるかすら不透明だった 開催 して得られた利益の1パーセントの2つを提案したところ、Cが300万円を選択したと述べる。しかし、被告人が契約を締結したと述べる時期は、未だ本件スタジアムが使用できるかすら不透明だった時期であり、そのようなタイミングで、想定される利益を前提とした報酬額の支払を約束するとは考え難い。しかも、被告人は、報酬の支払時期は特に決めていなかったとのことであるが、Cらイベントを開催し、被告 人に報酬を支払う側に潤沢な資金があったことはうかがわれず、むしろ資金繰りに窮していた様子もうかがわれるのであるから、イベントによる収入が得られる時期との関係等、支払時期は極めて重要であると思われる。これらは、被告人の述べる契約締結の存在自体を疑わせる事情である。 ⑶ 被告人がCと契約を締結したと述べる時期は、Eを実行委員長として、イベントF の開催を目指していた時期である。その後、Eの判断で開催が断念されたことからも、資金繰りを含めて、イベントに関する判断はEが主として行っていたと考えられる。 また、上記のとおり、当時は、本件スタジアムを使用することができるかどうか、ひいてはイベントの開催ができるかどうかも不透明な時期であった。このような状況において、EではなくCが、被告人との間で、イベントで得られる利益を前提とした 報酬の支払を含む契約を締結することは不自然である。さらに、被告人がCと契約を締結したと述べる平成30年1月頃以降、EによるイベントF開催の断念、CによるイベントKの立ち上げ、西日本豪雨によるイベントの方向性の変更等があり、イベントの内容等は何度も変わっているのであるから、被告人とCとの間で契約が存在するのであれば、報酬を含めたその内容について、変更の要否を含め協議をする必要が あると考えられるが、被告人 り、イベントの内容等は何度も変わっているのであるから、被告人とCとの間で契約が存在するのであれば、報酬を含めたその内容について、変更の要否を含め協議をする必要が あると考えられるが、被告人の供述によっても、令和元年6月に報酬の支払請求をするまで、被告人とCとの間で契約に関する話はなかったというのであるから、そもそも契約がなかったと考えるのが自然である。被告人からCへの支払請求について見ても、令和元年7月23日の、公訴事実記載のやり取りを行って以降、300万円の支払を求めることがなくなっている。この点被告人は、イベントが赤字である等の説 明を聞いて、報酬の受取を諦めたなどと述べるが、被告人によれば、イベントにより得られた現実の利益にかかわらず支払われるものとして報酬額を設定したのであるから、なお誠実な契約の実行を求めるのが素直であり、真に契約があったとすれば不合理な行動であるというべきである。 ⑷ 被告人と同様に、本件スタジアムでのイベント開催に協力し、Gとの協議にも同席 するなど、被告人よりも関与の程度が大きいと言えるJが、Cとの間に契約を結んでおらず、報酬も受け取っていないことも、被告人に対する報酬を伴う契約の存在を疑わせる事情である。 ⑸ 被告人の、イベントK開催への関与について検討する。 ア被告人は、歌手であるOにイベントKへの出演依頼をし、キッズダンサーの手配 等を行っているPに、イベントKに出演してくれるキッズダンサーの手配等を依頼した。その紹介を受けたCは、上記O及びPと、イベントKへの出演交渉等を行った。また、被告人は、A市から後援を取得するに際し、A市の担当職員とやり取りをし、提出資料の内容等について、Cにアドバイスをする等の関与をしたことが認められる。このほか、被告人は の出演交渉等を行った。また、被告人は、A市から後援を取得するに際し、A市の担当職員とやり取りをし、提出資料の内容等について、Cにアドバイスをする等の関与をしたことが認められる。このほか、被告人は、自己の後援会等において、CがイベントKの宣 伝をする機会を設けることや、イベントKに出店する店舗の紹介等を行ったと認められ、これら被告人による関与は、いずれもイベントK開催のために意義のあるものであったといえる。 イしかし、Cは、Gから、本件スタジアムでのイベントの開催が難しいとの話を聞き、その開催に協力してくれる市議会議員の人物として被告人と関係を持つよう になったのであるが、その頃、開催を困難にしている事情としては、資金繰りの問題を別にすれば、スケジュールや芝の養生の問題等であり、アーティストの手配等イベントの内容に関する部分ではなかった。実際に実施されたイベントKに関し、Cは、イベントの企画運営等を行う会社である株式会社Lとともに企画運営を行っており、被告人の協力がなければアーティストの手配や出店する店舗の確保が できなかったような事情もうかがわれない。とすれば、イベントの企画やアーティストのあっせんを事業としているわけでもない被告人に対して、アーティストやダンサーの手配や出店する店舗の紹介、イベントの宣伝を有償で依頼することは考え難い。 また、本件条件書面の記載や、いずれもGの職員であるM及びQの証言によ れば、A市からの後援の取得がイベントの開催要件とされていたとは認められず、被告人の協力がなければA市からの後援の取得が困難であったといった事情もうかがわれないのであるから、Cが、被告人に対して、報酬を支払って後援の取得を依頼することも考え難い。 以上によれば、被告人の行った上記関与か 市からの後援の取得が困難であったといった事情もうかがわれないのであるから、Cが、被告人に対して、報酬を支払って後援の取得を依頼することも考え難い。 以上によれば、被告人の行った上記関与から、Cとの間に契約が存在したと考え ることは困難である。 ウ上記関与に加え、被告人は、Gの理事長と電話や対面で話をして本件スタジアムでイベントをする際の問題点について確認し、同人から、本件スタジアム周辺に住む反社会的勢力の方や、隣接する地域に住む住民の同意が取れない等の話を聞いたことから、本件スタジアム周辺に住む元反社会的勢力の人物と話をした上、本件 スタジアムの東側の広場で、同人物を含む周辺住民十数名に対し、2回、住民らの要望を聞く等する集会を開催したと述べるため検討する。 この点、本件スタジアム周辺住民の説得が本件スタジアムにおいてイベントを開催するための必須の条件であり、それが容易ではなく、被告人であればこそ可能なことであるとすれば、報酬を支払ってそのような依頼をすることも考えられる。 しかし、被告人がGの理事長と話をしたことや、本件スタジアムの周辺住民を集めて集会を開催したことについては、被告人供述のほか裏付ける証拠がなく、係る事実の存在自体疑われる。また、関係証拠によっても、Gが、スタジアム周辺に住む具体的な住民の同意が得られないことが理由で本件スタジアムでのイベントが開催できていなかったことや、それら住民の同意を得ることをイベント開催の条 件としていたことは認められず、Cが、そのような条件があると認識していたとも認められない。 とすれば、Cが、被告人に対し、上記集会の開催等を依頼したとは認め難く、Cと被告人との間で、係る内容を含む契約が締結されたことを推認させるよう な条件があると認識していたとも認められない。 とすれば、Cが、被告人に対し、上記集会の開催等を依頼したとは認め難く、Cと被告人との間で、係る内容を含む契約が締結されたことを推認させるような事情は認められない。 なお、弁護人は、イベントKのチケット販売等を行った会社に勤務するRが、本件スタジアムにおいて音楽イベントが難しいのは周辺住民の苦情があるからであり、イベントを行う際には近隣への根回しが必要である等と証言していることに基づき、Cが近隣対策の必要性について認識しており、近隣対策について人脈等のある被告人に近隣対策を含むコンサルタント契約を締結する動機があったなどと 主張する。しかし、Rは、あくまで自らの認識を述べるに過ぎず、同人の証言内容が、関係者の共通認識だったことを示す事情はない。本件条件書面の記載や、M及びQの証言等関係証拠からすれば、イベントK開催に際して、Cが行った、本件スタジアム周辺の各町内会の町内会長らへの説明以上に、本件スタジアム周辺の住民に関する対策等をすることが求められていたとはいえず、そのよう な対策をしなければイベント実施は困難であったとも、そのような対策の必要性をCが認識していたとも認められない。したがって、弁護人の上記主張は採用できない。 ⑹ 被告人は、令和元年7月頃、CからJを介して、300万円の報酬の一部である50万円の支払を受けたと述べるため係る事情についても検討する。この点、CがJを 介して被告人に50万円を支払ったことについては、C及びJも証言している。しかし、C及びJは、平成30年11月頃に、被告人が東京にイベント出演者に会いに行くために必要な経費として支払ったものであると述べている。その他、時期及び支払の趣旨について、被告人供述を裏 ている。しかし、C及びJは、平成30年11月頃に、被告人が東京にイベント出演者に会いに行くために必要な経費として支払ったものであると述べている。その他、時期及び支払の趣旨について、被告人供述を裏付ける証拠は存在しない。したがって、被告人の述べる報酬の一部支払の事実は認められず、Cが被告人に50万円を支払った事実は、 被告人とCとの契約の存在を推認させるものであるとはいえない。 ⑺ 以上のとおり、被告人の主張するCとの契約は、内容や締結時期、経緯の点において不自然である上、被告人の言動とも合致せず、被告人のイベントK開催に関する関与の事実等にも契約があったことをうかがわせる事情は認められない。よって、被告人とCとの間には、被告人の主張する300万円の報酬支払を内容とする契約締結 の事実はなかったと認められる。 4 恐喝罪の実行行為の有無⑴ 被告人の本件発言に至る経緯等ア上記認定事実及び関係証拠によれば、被告人からCに対する300万円の支払請求等に関し、以下の事実が認められる。 Cは、本件スタジアムでの音楽イベントの開催を計画し、その準備をするに当たり、近隣住民の苦情により開催することが困難で、事前の根回しが必要であるとの認識は持っておらず、被告人に近隣住民への対応を依頼したこともなかった。そして、被告人とCとの間で、被告人が近隣住民への対応等をし、Cが報酬を支払うという内容の契約が締結されたことはなかった。 令和元年6月以降、被告人は、被告人が行ったことの対価として300万円の支払を求めていた。Cは、被告人から「暴力団対策費」の支払を求められていると認識しており、その内容について明確に認識していたとはいえないが、少なくとも、理由がなく、払う必要のないものである 0万円の支払を求めていた。Cは、被告人から「暴力団対策費」の支払を求められていると認識しており、その内容について明確に認識していたとはいえないが、少なくとも、理由がなく、払う必要のないものであると認識していた。 Cは、JやHに被告人から300万円の支払を求められていることについて 相談する等していたが、Nに話をしたところ、被告人と話をする提案があったため、Nを含め被告人と話をすることとした。そして、Cから被告人に対し、Nへの説明を求めたところ、被告人がこれに応じたため、Nが経営する会社の事務所である本件事務所において、C及びNと話合い(以下「本件話合い」という。)をすることになった。被告人による本件発言は同話合いの中で発せられたもの である。 イ弁護人は、被告人が、令和元年6月5日、Cに対し、「私は少なくともお話ししたことはすべてこなしてきたとおもいますCくんもお話しした事はこなすのが当たり前だと思います」とのメッセージを送っていることや、被告人がJに、Cが300万円を支払わないことからA市からの後援許可証を渡すのをやめたことを伝 えたところ、Jが被告人に「C君自業自得だから小がないね」とメッセージを送信していることからすれば、Cは被告人に300万円を支払わなければならなかったのであり、被告人は、自身のした業務の対価として300万円の支払を求めていたことは明らかで、Cもそのことを理解していた旨主張する。 しかし、被告人のCに対する上記メッセージはOとの出演交渉に関するやり取 りの中で送られたものであり、300万円の報酬支払に関するものかは不明である。また、証拠上認められるJと被告人とのやり取りでは、被告人からの「A市の後援ストップかけました!」とのメッセージに対してJが、 中で送られたものであり、300万円の報酬支払に関するものかは不明である。また、証拠上認められるJと被告人とのやり取りでは、被告人からの「A市の後援ストップかけました!」とのメッセージに対してJが、上記のとおり返信していることが分かるのみであり、Jが被告人に対してCの「自業自得」だとしていることの意味は不明であり、300万円の報酬を支払う必要があることを意味して いるかは定かではない。以上によれば、弁護人の指摘する上記証拠から、被告人からの300万円の請求についてのCの認識を推認することはできない。 ⑵ 被告人による本件発言の趣旨及びCの受け止めア本件話合いにおける、被告人の本件発言は、まず、本件スタジアム周辺は、土地柄が良くなく、元反社会勢力関係者が住んでいる地域であり、周辺住民から の苦情等により本件スタジアムでのイベント開催が困難になっていたところ、被告人が働きかけたことによって、元反社会勢力関係者等が納得し、本件イベント開催が可能となり、A市からの後援も、被告人が協力したことにより得られた旨を説明した上で、以前から300万円の支払を求めていることを告げ、改めてその支払を求めるものである。その上で、支払がなければ、被告人は、 イベントK開催への関与をやめ、本件スタジアム周辺の住民にそれを伝えることになるが、そうすると、本件スタジアム付近の住民がイベントの開催に賛成はしないことになるとして、後援等は取り下げるべきであるし、被告人が後援等の取下げをすれば、今後Cの名前で本件スタジアム等の施設を借用することができなくなるかも知れないと伝えるものである。 これは、従前よりCに支払を求めてきた300万円の支払を改めて求めるとともに、その支払がなかった場合に起こることを伝えるものである。被告人には なるかも知れないと伝えるものである。 これは、従前よりCに支払を求めてきた300万円の支払を改めて求めるとともに、その支払がなかった場合に起こることを伝えるものである。被告人には、イベントKの出資者であるNに対して経緯を説明し、支払を求める意図もあったと思われるが、これまでCに支払を求めてきた経緯や、イベントKが開催できなくなることなどを示してその支払を求めていることからすれば、Cに 向けての発言でもあるというべきであり、Cとしては、当然自分に対して言われていると認識したといえる。 イ Cは、本件スタジアム周辺に、反社会勢力関係者等、本件スタジアムでのイベント開催について反対をするような住民が住んでいることや、被告人の働きかけによりそのような住民が納得をし、イベントが開催できるようになったこ とについて、何ら認識していたとはいえないのであるから、上記趣旨の被告人の発言を聞いたCが、被告人に300万円を支払わなければ、本件スタジアム周辺の反社会的勢力関係者等の住民が、Cやイベント関係者に対して危害を加えるなどしたり、イベントの開催を妨害するなどして、イベントKが開催できなくなり、のみならず、今後本件スタジアム等の施設を利用できなくなるので はないかと考えるのは当然であるから、被告人の発言は、Cを畏怖困惑させるのに十分なものであるというべきである。 ウ弁護人は、被告人による本件発言は、自身のした業務の説明をし、その対価が支払われなければコンサルタント契約を解除して自身のした業務の影響力を除去することを示唆したに過ぎず、Cは、被告人の述べるような、周辺住民 に対する被告人の働きかけやその意味合い、被告人がイベントへの関与をやめた場合の影響について十分に理解していたのであるから、 去することを示唆したに過ぎず、Cは、被告人の述べるような、周辺住民 に対する被告人の働きかけやその意味合い、被告人がイベントへの関与をやめた場合の影響について十分に理解していたのであるから、被告人の発言によって畏怖することはない、あるいは、被告人の各発言がCを畏怖させるようなものであるとしても、報酬を支払う義務を負うCが債務者として受忍すべきものと認められる限度を超えない旨主張する。しかし、係る主張はいずれも被告人 とCの間に契約関係が存在することを前提とするものであり、上記判断と前提を異にするものである。そして、契約関係の不存在を前提とすれば、被告人の本件発言は、Cを畏怖困惑させるに十分なものであることは上記のとおりであり、Cがこれを受忍すべき理由は何ら存在しない。弁護人の上記主張は採用できない。 ⑶ 結論以上により、被告人による公訴事実記載の発言は、恐喝罪の実行行為に当たる。 (法令の適用)罰条判示第1の所為刑法250条、249条1項 判示第2の所為破産法265条1項2号、刑法60条刑種の選択判示第2の罪について懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重)未決勾留日数算入刑法21条 刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)(量刑の理由)恐喝未遂事件については、A市の市議会議員であった被告人が、音楽イベントの開催を目指す被害者に対して、A市からの後援取得等で協力する一方で、自らの元反社 会的勢力の住民との関係性を強調するなどして、自らの行いに対する報酬を支払わなければ、将来に渡り施設を ベントの開催を目指す被害者に対して、A市からの後援取得等で協力する一方で、自らの元反社 会的勢力の住民との関係性を強調するなどして、自らの行いに対する報酬を支払わなければ、将来に渡り施設を借りることができなくなる等と脅したものであり、犯行態様は悪質である。 破産法違反事件については、被告人は、5名の仮装債権者の協力を得て、5000万円を超える債務を仮装したものであり、破産管財人に不必要な調査等の事務負担を 課す等、破産手続の円滑な進行を阻害するものであった。また、被告人には、現実の債権者に返済したくないという動機があったこともうかがわれる。 これらの犯情に加え、恐喝未遂事件については財産的被害は生じていないこと、破産法違反事件については、事実を認めて反省の弁を述べているほか、仮装債権者が債権を取り下げたことにより、破産手続への影響は減少しているといえること等の事情 があり、その他、被告人には量刑上考慮すべき前科がないこと等の事情も考慮の上、 被告人に対しては、主文の懲役刑に処した上でその執行を猶予することとした。 (求刑-懲役3年6月)令和7年2月13日岡山地方裁判所第1刑事部裁判官石黒史岳

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