平成28(行ケ)10164 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年1月24日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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平成29年1月24日判決言渡 平成28年(行ケ)第10164号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成28年12月12日判決 原告 株式会社ファインフードネットワーク 訴訟代理人弁護士 宇佐見英司 弁理士 森寿夫 被告 株式会社ローソン 訴訟代理人弁理士 新井悟 宮城和浩 中川拓和 田阿佐子 宮田佳代子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 原告の求めた判決 1 特許庁が無効2015-890083号事件について平成28年6月17日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 本件は,商標登録無効審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。争点は,商標法4条1項11号該当性(類似性)の有無である。 1 本件商標 被告は,下記の本件商標の商標権者である(甲1,2)。 ゲンコツメンチ(標準文字) ① 登録番号第5752792号 ② 出願日平成25年6月12日 ③ 登録日平成27年3月27日 ④ 商品及び役務の区分並びに指定商品第30類メンチカツを材料として用いたパン,メンチカツ入りのサンドイッチ,メンチカツ入りのハンバーガー,メンチカツ用調味料,メンチカツ 成27年3月27日④ 商品及び役務の区分並びに指定商品第30類メンチカツを材料として用いたパン,メンチカツ入りのサンドイッチ,メンチカツ入りのハンバーガー,メンチカツ用調味料,メンチカツ入り弁当,メンチカツ入りの調理済み丼物(本件指定商品) 2 特許庁における手続の経緯原告は,平成27年10月15日,特許庁に対し,本件商標が,指定商品「メンチカツを材料として用いたパン,メンチカツ入りのサンドイッチ,メンチカツ入りのハンバーガー,メンチカツ入り弁当,メンチカツ入りの調理済み丼物」について,商標法4条1項11号に該当するとして,その登録を無効とすることについて審判を請求した(無効2015-890083号)。 特許庁は,平成28年6月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審 - 3 -決をし,その謄本は,同月27日に原告に送達された。 3 本件審決の理由の要旨(1) 引用商標(甲3,4) ゲンコツ (標準文字) ① 登録番号第5100230号② 出願日平成19年5月9日③ 登録日平成19年12月21日④ 商品及び役務の区分並びに指定商品第30類おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ(2) 本件商標についてア(ア) 本件商標は,「ゲンコツメンチ」の片仮名を標準文字により表してなるところ,その構成態様は,同じ大きさ,同じ間隔,同じ書体をもって,視覚上,まとまりよく一体的に表されているものであって,その外観上,「ゲンコツ」の文字部分だけが独立して見る者の注意を引くように構成されているものではない。 (イ) その構成文字の じ書体をもって,視覚上,まとまりよく一体的に表されているものであって,その外観上,「ゲンコツ」の文字部分だけが独立して見る者の注意を引くように構成されているものではない。 (イ) その構成文字の全体から生じる「ゲンコツメンチ」の称呼も,格別冗長ではなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。 (ウ) 本件商標は,「メンチ」の文字部分が,その指定商品との関係において,商品の品質,原材料を表したものと理解される場合があるとしても,構成中の「ゲンコツ」の文字も,「げんこつのような形(又は大きさ)」として,商品の形状を暗示させる場合があることを否定し得ないから,「ゲンコツ」の文字部分は,それ自体が自他商品を識別する機能が全くないとまではいえないものの,取引者,需要 - 4 -者に対して商品の出所標識として強く支配的な印象を与えるものともいえない。 (エ) そうすると,本件商標は,「ゲンコツ」の文字部分が,独立して自他商品の識別標識として機能するというよりも,一体的なまとまりのあるものとして看取,把握されるとみるのが自然である。 (オ) したがって,本件商標は,その構成全体をもって,特定の意味合いを有しない一体不可分の造語を表したものと認識されるとみるのが相当であり,その構成文字に相応して,「ゲンコツメンチ」の一連の称呼のみを生じるものであり,特定の観念は生じない。 イ被告の製造,発売に係る「ゲンコツメンチ」と称するメンチカツは,平成25年6月に発売したとされるものであって,年間3,000万個が販売され,同月に国内全域のテレビCMにより紹介され,その回数は3,195回に及んでいる。そして,「ゲンコツメンチ」は,日経MJの2013年ヒット番付において,西の前頭に選ばれている。 ウそうすると,上記取引の実情に ビCMにより紹介され,その回数は3,195回に及んでいる。そして,「ゲンコツメンチ」は,日経MJの2013年ヒット番付において,西の前頭に選ばれている。 ウそうすると,上記取引の実情によれば,本件商標は,これに接する取引者,需要者をして,一連一体の造語からなるものとして認識されるとみるのが相当である。 (3) 引用商標について引用商標は,「ゲンコツ」の片仮名を標準文字により表してなるところ,その構成文字に相応し,「ゲンコツ」の称呼が生じ,また,「にぎりこぶし」の観念を生じるものである。 (4) 本件商標と引用商標の類比についてア両商標の外観を対比すると,その構成文字数,「メンチ」の文字部分の有無において明らかな差異を有するものであるから,外観上,判然と区別することができるものである。 イ両商標の称呼を対比すると,本件商標から生じる「ゲンコツメンチ」の称呼と引用商標から生じる「ゲンコツ」の称呼とは,後半における「メンチ」の音 - 5 -の有無という顕著な差異を有し,構成音数を異にするものであるから,それぞれを一連に称呼するときは,明瞭に聴別し得るものである。 ウ両商標の観念を対比すると,本件商標は,特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標は,「にぎりこぶし」の観念が生じるものであるから,観念において,相紛れるおそれはないものといえる。 エそうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれがない非類似の商標というべきものである。 したがって,本件商標の指定商品中の請求に係る商品が,引用商標の指定商品と同一又は類似であったとしても,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 件商標の指定商品中の請求に係る商品が,引用商標の指定商品と同一又は類似であったとしても,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(本件商標についての認定誤り)(1) 本件商標を一体的なまとまりのあるものとみる認定の誤りア(ア) 各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,しばしばその一部だけによって簡略に称呼・観念され,一個の商標から2個以上の称呼・観念の生ずることがあることは経験上の教えるところである(後記第5,1の最高裁判所昭和38年12月5日判決)。 (イ) 「ゲンコツメンチ」は,「ゲンコツ」と「メンチ」の結合商標である。 称呼する際には,「ゲンコツ」と「メンチ」との間に必ず区切りがあり,「ゲンコツ」と「メンチ」のそれぞれにアクセントが置かれており,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどの不可分的結合は認められない。 そして,「ゲンコツ」と「メンチ」には,それぞれ固有の観念がある。 イ(ア) 前記第2,3(2)ア(ア)及び(イ)の部分は,審決の認定の根拠とはなら - 6 -ない。 被告が実際に本件商標を使用している状況は,甲19,20,41のとおりであり,「ゲンコツ」の文字部分が独立して見る者の注意を引くよう構成されている。 この点,登録商標の効力は,登録を受けた字面の範囲に限定されるものであれば,被告が実際の商品に使用している商標は本件商標の字面そのものとはいえないから,登録の効果は及ばないといわざるを得ず,取引の実情を積み上げても本件商標の有 録を受けた字面の範囲に限定されるものであれば,被告が実際の商品に使用している商標は本件商標の字面そのものとはいえないから,登録の効果は及ばないといわざるを得ず,取引の実情を積み上げても本件商標の有効性の根拠とならない一方,もし,登録の効果が及ぶとしたら,同じ大きさ,同じ間隔,同じ書体をもって,視覚上まとまりよく一体的に表されているものであるという認定事実は意味のないものとなるはずである。 (イ) 前記第2,3(2)ア(ウ)の部分も,審決の認定の根拠とはならない。 特許庁は,「ゲンコツ」に自他商品識別力が認められるから,引用商標のほか,甲23,24,50~54の6件の商標登録,出願を認めており,「ゲンコツ」に自他商品識別力がないとするのであれば,自己矛盾である。 (2) 本件商標は,その構成全体をもって特定の意味合いを有しない一体不可分の造語を表したものとする認定の誤り本件商標は,一体不可分でもないし,造語でもなく,「ゲンコツ」というブランド名を掲げた「メンチ(カツ)」という観念が生じている。 (3) 本件商標が「ゲンコツメンチ」の一連の称呼のみを生じているものであり,特定の観念は生じないものであるとの認定の誤り本件商標は,「ゲンコツ」ブランドの名を冠した「メンチ」(カツ)という観念が生じており,「ゲンコツメンチ」という一連の称呼のみが生じているものでもないし,特定の観念がないなどということもない。 (4) 本件商標は,これに接する取引者,需要者をして,一連一体の造語からなるものとして認定されているとする認定の誤り甲38,39,44で示された各取引の実情は,前記甲19,20,41で示された本件商標の表示を前提としているものと思われ,そうであれば,いずれも一連 - 7 -一体の表示とはなっていないから,前記 39,44で示された各取引の実情は,前記甲19,20,41で示された本件商標の表示を前提としているものと思われ,そうであれば,いずれも一連 - 7 -一体の表示とはなっていないから,前記認定の根拠となるものではない 2 取消事由2(本件商標と引用商標とが非類似とした判断の誤り)本件商標と引用商標とは,いずれも「ゲンコツ」部分に自他商品識別標識としての機能が認められ,類似するものである。 (1) 「ゲンコツメンチ」は,外観上一体的に表記されていたとしても,「ゲンコツ」と「メンチ」との間には,明らかに区別があり,称呼上一体的に呼んだとしても,必ず両語の間には短くとも一拍の間隙がある。 そして,それぞれ固有の観念を有している。 (2) 被告における本件商標の使用状況の実態は,甲19,甲20,甲41で表示されているとおりであり,「ゲンコツ」と「メンチ」は明確に区分されており一連一体の造語ではない。 (3) 被告においては,「ゲンコツメンチ」の販売後,ゲンコツシリーズ第2弾として「ゲンコツコロッケ」の販売を開始し,「ゲンコツクリームコロッケ」,被告設立40周年記念商品としてゲンコツシリーズ新作「ゲンコツチーズメンチ」の販売を行い,甲26ののれんにおける「ゲンコツ」の強調に見られるように,「ゲンコツ」に特別なブランド価値を付与した商品展開をしていることからして,「ゲンコツ」が取るに足らない用語であるかのような扱いはしていない。 (4) 結合商標の構成の一部に指定商品と密接に関係する語が含まれている場合は,当該部分からは出所表示機能としての称呼や観念を生じない。 「メンチ」部分は,指定商品である「メンチカツを材料として用いたパン」等と密接に関係する語であるから,同部分は,出所識別標識として機能するものではない。 (5) 一 しての称呼や観念を生じない。 「メンチ」部分は,指定商品である「メンチカツを材料として用いたパン」等と密接に関係する語であるから,同部分は,出所識別標識として機能するものではない。 (5) 一方「ゲンコツ」部分は,「にぎりこぶし」の観念にとどまるものでなく,「大きく硬い親爺のゲンコツ」という連想から,「がんこ」「一徹」「力強さ」「こだわり」「職人気質」といった連想を導くものであって,「一徹な職人手作りのこだわ - 8 -りの一品」という観念を与えるものであり,被告は,それをブランドとして利用しているのが実態であると考えられる。 そのような観点をもつ「ゲンコツ」であるからこそ,多くの商標登録が認められているものである。 第4 被告の反論 1 取消事由1について(1) 本件商標は,その構成態様等を総合勘案すると,全体で一体不可分の一種の複合語ないし単一の造語のように認識されるとみるのが自然であり,「メンチ」のみを分離,抽出し,「メンチカツ」は略称であるとし,この部分が省略されるとするのは,不自然であるから,「本件商標は,一体的なまとまりあるものとして看取,把握されるとみるのが自然である」とした審決に誤りはない。 ア結合商標であったとしても,全体観察を行うのが原則であり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて商標の構成部分の一部を抽出し,類否を判断することは,その部分が取引者,需用者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などに限定して行うべきである。 イ仮に「メンチ」の「メ」の部分にアクセントがあるとしても,そのこと自体は,本件商標が,結合商標として認識,把握される としての称呼,観念が生じないと認められる場合などに限定して行うべきである。 イ仮に「メンチ」の「メ」の部分にアクセントがあるとしても,そのこと自体は,本件商標が,結合商標として認識,把握されるとする理由にはならない。 本来,独立した単語が2つ以上結合して,新たに1つの単語として機能している複合語は,多数存在しており,その中には,後部の要素の頭部分にアクセントを持つものも多く存在するが,取引者,需要者は,そのような2つの要素を結合させた複合語に関して,2つの単語からなるものとは認識せず,1つの語として一体的に認識,理解する。 - 9 -ウむしろ,本件商標は,片仮名7文字と文字数が少なく,その表示態様も,同じ書体,同じ間隔で,間隔を空けることなく一体的に表記されていること,7音から構成され,全体の称呼も短く,よどみなく一連に称呼できることから,本件商標に接した取引者,需要者は,全体で一体不可分の1つの語として認識,理解するとみるのが自然である。 エこのような商標につき,いわゆる結合商標として商標の類比を判断する必要はなく,構成全体をもって一体不可分の造語,すなわち,単一の商標として認定し,全体観察をもって商標の類比を判断するのが妥当である。 (2)ア登録商標の範囲は,願書に記載された商標見本に基づいて定められている(商標法27条1項)から,商標の類比判断は,願書に記載された商標に基づき判断するのが妥当であり,使用の態様に基づき,本件商標の構成態様を認定するのは不適切である。 また,甲19,20,41で示された使用状況は,商品「メンチカツ」及び「コロッケ」に関する使用であって,本件商標の指定商品に関する使用ではない。 さらに,甲19,20,40の使用態様は,「ゲンコツメンチ」の文字を,同じ書体の筆文字で,間隔 は,商品「メンチカツ」及び「コロッケ」に関する使用であって,本件商標の指定商品に関する使用ではない。 さらに,甲19,20,40の使用態様は,「ゲンコツメンチ」の文字を,同じ書体の筆文字で,間隔を空けることなく横一連に表しているから,これを考慮したとしても,一体不可分のものと認識,把握されるとみるのが自然である。 イ(ア) 食品の分野においては,「ゲンコツ」は,「げんこつ状」又は「げんこつ大」の商品として,商品の形状を暗示させるものであるから,「ゲンコツ」文字部分についても,取引者,需要者に対して商品の出所標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえない。 審決は,「ゲンコツ」も「メンチ」も自他商品識別力を有しないから,「ゲンコツメンチ」の一体として識別力が認められるというような認定は行っておらず,原告の主張は,失当である。 「ゲンコツ」の語は,食品の分野において,「げんこつ大」又は「げんこつのような形」の商品(食品)を表す語として普通に使用されているから,仮に,本件商標 - 10 -が「ゲンコツ」と「メンチ」の語の結合からなると認識される場合があるとしても,「ゲンコツ」の自他商品識別力は極めて弱いものであり,この部分は,取引者,需用者に対して商品の出所標識として強く支配的な印象を与えるものではない。 (イ) 甲23は,「厳骨」の文字より構成される登録商標で,造語商標というべきであり,「ゲンコツ」の文字が,自他商品識別力を有することの根拠とはならない。甲50~54は,「げんこつ」の平仮名により構成されたものであるが,その指定商品及び指定役務の内容からして,「げんこつ形状(大)」からなる商品(役務)は考え難いことから,自他商品識別力が認められたものと考えられ,本件商標の構成文字「ゲンコツ」の自他商品識別力の強弱の認定 定商品及び指定役務の内容からして,「げんこつ形状(大)」からなる商品(役務)は考え難いことから,自他商品識別力が認められたものと考えられ,本件商標の構成文字「ゲンコツ」の自他商品識別力の強弱の認定に影響を与えるものではない。 (ウ) 「ゲンコツ」又は「げんこつ」の文字を含む商標が,複数の権利者によって,同一又は類似する商品について,商標登録されている(甲50~54,乙4~11)のであって,「ゲンコツ」及び「げんこつ」の語は,自他商品識別力が既に希釈化しており,取引者,需要者に対して商品の出所標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められない。 ウ結合商標の類比判断において,その一部分が普通名称であったとしても,その事実は,1つの考慮要素にすぎず,常にそれ以外の部分が,商品の出所表示として需要者及び取引者に対して強い印象を与えるものとは限らない。普通名称との結合商標であっても,外観上一体的に観察される場合や,称呼が短い場合は,一体的に観察される場合がある。 仮に,本件商標の「メンチ」が「メンチカツ」の略称であるとしても,本件商標は,「メンチカツ」を指定商品とするものでないから,「メンチ」は,本件商標の指定商品の普通名称に当たるという関係性にはない。 (3) 本件商標は,「ゲンコツメンチ」の片仮名文字を,一連に間隔を空けることなく,標準文字で表記したものであり,片仮名7文字で音数も7音と短いものであることから,本件商標に接した需要者及び取引者は,全体で1つの語として認識,理解するとみるのが自然であり,審決の認定は,妥当である。 - 11 -(4) 本件商標は,その構成全体をもって特定の意味合いを有しない一体不可分の一種の造語を表したものと認識されるものとみるのが自然であるから,審決の認定は,妥当である。 (5) - 11 -(4) 本件商標は,その構成全体をもって特定の意味合いを有しない一体不可分の一種の造語を表したものと認識されるものとみるのが自然であるから,審決の認定は,妥当である。 (5) 甲19,20,41で示された商標は,「ゲンコツメンチ」の文字を,同じ書体の筆文字で,間隔を空けることなく横一連に表しており,本件商標と,称呼及び観念を同じくし,社会通念上同一の商標といえることから,甲38,39,44で証明された取引の実情を考慮し,本件商標について,一連一体の造語からなるものとして認識されるものとみるのが相当とした審決の認定は,妥当である。 2 取消事由2について本件商標と引用商標は,外観,称呼,観念,いずれの観点からしても,互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。 また,「ゲンコツメンチ」は,被告の商品の出所を示すものとして周知に至っており,当該取引の実情を考慮した場合,本件指定商品の出所が引用商標の商標権者である原告であると誤認混同を生ずるおそれはない。 したがって,本件商標と引用商標とは,類似しない。 (1) 本件商標本件商標は,「ゲンコツメンチ」の片仮名を標準文字で表してなり,その構成文字は,同じ大きさ,同じ間隔,同じ書体をもって,視覚上,まとまりよく一体的に表されており,外観上,「ゲンコツ」の文字部分だけが独立して見る者の注意を引くような構成とはなっていないこと,「ゲンコツメンチ」の称呼も無理なく一連に称呼することができること,本件商標の構成中「ゲンコツ」は,食品の分野においては,「げんこつのような形(又は大きさ)」を表すものとして使用されることが多いことから,「ゲンコツ」の文字部分のみが,取引者,需要者に対して商品の出所標識として強く支配的な印象を与えるものではなく,本 - 12 - (又は大きさ)」を表すものとして使用されることが多いことから,「ゲンコツ」の文字部分のみが,取引者,需要者に対して商品の出所標識として強く支配的な印象を与えるものではなく,本 - 12 -件商標は,本件商標に接する取引者,需要者をして,その構成文字の全体について,商品の出所を表示する識別標識であると理解,認識され,全体として一体不可分の商標と理解,認識される。 したがって,本件商標は,その構成全体をもって,特定の意味合いを有しない一体不可分の造語を表したものと認識され,その構成文字に相応して,「ゲンコツメンチ」の一連の称呼のみを生じるものであり,特定の観念は生じない。 (2) 被告の商標「ゲンコツメンチ」の周知性被告は,フランチャイズチェーン展開するコンビニエンスストア「ローソン」において,平成25年6月15日から,本件商標を商品「メンチカツ」に使用しており,前記商品は,年間3000万個以上を販売するヒット商品となっている。 また,被告は,前記商品につき,平成25年6月及び平成26年4月に,日本全国でテレビCMを放映し,前記商品は,テレビや雑誌など各種メディアに取り上げられている。日経MJの2013年ヒット番付においても,「ゲンコツメンチ」が西の前頭に選ばれている。 以上のとおり,「ゲンコツメンチ」は,被告によって宣伝広告され,売上高も相当な金額に上ることから,本件商標の登録時において,被告の商標として,取引者,需要者の間で広く認知されていた。 本件指定商品は,被告のフランチャイズチェーン展開するコンビニエンスストア「ローソン」において販売されるものであり,当該指定商品と商品「ゲンコツメンチ」は,取引者,需要者が共通し,また,同じ店舗で販売されることから,本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標から,周 トア「ローソン」において販売されるものであり,当該指定商品と商品「ゲンコツメンチ」は,取引者,需要者が共通し,また,同じ店舗で販売されることから,本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標から,周知となっている被告の前記商品を使用した商品と理解し,被告の周知商標「ゲンコツメンチ」を想起するものと思料される。 (3) 引用商標引用商標は,「ゲンコツ」の片仮名を標準文字により表してなるところ,「ゲ - 13 -ンコツ」の称呼が生じ,「にぎりこぶし」の観念を生じる。 (4) 本件商標と引用商標の類否本件商標と引用商標は,構成文字の数,「メンチ」の文字部分の有無において明らかな差異を有するものであるから,外観上は,判然と区別することができる。 称呼についても,本件商標から生ずる「ゲンコツメンチ」の称呼と引用商標から生ずる「ゲンコツ」の称呼とは,「メンチ」の有無という顕著な差異を有し,構成音数を異にするものであるから,それぞれを一連に称呼するときは,明瞭に聴別し得るものである。 観念についても,本件商標は,特定の観念が生じないものであるのに対して,引用商標は,「にぎりこぶし」の観念が生ずるものであるから,観念において,相紛れるおそれもない。 (5) 分離観察について被告が発売している商品「ゲンコツメンチ」,「ゲンコツコロッケ」等の商品は,商品の形状が「げんこつのような形」をしていることに由来するものであって,「ゲンコツ」に格別なブランド価値を付与しているものではない。 甲26は,テレビCMの舞台セットの一部である暖簾に「ゲンコツ」の文字が一瞬写っている程度で,それ程目立つものではなく,また,CM中では「ゲンコツコロッケ」と商品名を述べていること,CM映像の最後には,商品名が大きく映し出されることから( る暖簾に「ゲンコツ」の文字が一瞬写っている程度で,それ程目立つものではなく,また,CM中では「ゲンコツコロッケ」と商品名を述べていること,CM映像の最後には,商品名が大きく映し出されることから(乙24),このテレビCMを見た取引者,需要者は,「ゲンコツコロッケ」の商品のCMであると理解,認識するものであり,暖簾の表記についても,「ゲンコツコロッケ」の商品を当然に念頭において看取するものである。 したがって,甲26のテレビCMといった宣伝広告において,「ゲンコツ」の表記が一部に用いられたことがあるとしても,それらの表記は,本件商標に関して,これに接する取引者,需要者が「ゲンコツ」の文字部分を独立して看取 - 14 -するほどの強い印象を与えるものではない。 第5 当裁判所の判断 1 類似性の判断基準商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成 別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民228号561頁参照。)。 2 本件商標の外観,称呼及び観念(1) 外観,称呼本件商標は,「ゲンコツメンチ」と,標準文字である片仮名7文字を,一連に横書きし,各文字は,同じ書体,大きさ及び間隔で,一体的に表記された外観を有しており,「ゲンコツメンチ」の称呼を生じる。 (2) 観念「げんこつ」及び「メンチ」は,いずれも辞書に掲載された名詞であることから, - 15 -本件商標の左側4文字である「ゲンコツ」の文字部分は,「にぎりこぶし。げんこ。」との観念を生じ(甲8),右側3文字の「メンチ」の文字部分は,「ミンチ」(甲5),すなわち,「細かく刻んだ肉。挽肉。」(広辞苑第6版)との観念を生じ得る。 また,「げんこつ」や,その意味である「にぎりこぶし」,「拳(こぶし)」(広辞苑第6版)という語は,物の大きさや形状(平べったい形ではなく,丸みと厚みがある形)を表すために,用いられることがある(甲27~36,乙2)。 さらに,「メンチ」は,挽肉を意味する語であり,一般に,挽肉は,生のままではなく,加熱調理などの加工をして食されるのが通常であって,挽肉を用いた料理のうち,「メンチ」の語を含む名称を有するものとしては,「挽肉にみじん切りにした玉葱などを加えて小判型などにまとめ,パン粉の衣をつけて油で揚げた料理」である「メンチカツ」(「ミンチカツ」ともいう。),「挽肉を丸め,油で揚げ 含む名称を有するものとしては,「挽肉にみじん切りにした玉葱などを加えて小判型などにまとめ,パン粉の衣をつけて油で揚げた料理」である「メンチカツ」(「ミンチカツ」ともいう。),「挽肉を丸め,油で揚げたり,煮たりした料理」である「メンチボール」(「ミートボール」,「ミンチボール」,「肉だんご」ともいう。)が挙げられる(甲5,広辞苑第6版)。 したがって,「ゲンコツ」と「メンチ」が連続して記載されている本件商標の全体から,「にぎりこぶしのような大きさで,丸みと厚みがある形状の,挽肉を原材料とした加工食品」という観念が生じ得る。 そうすると,本件商標から特定の観念が生じない旨の審決の判断は,誤っている。 3 引用商標の外観,称呼及び観念引用商標は,「ゲンコツ」を標準文字で一連に横書きしたものであって,各文字は,同じ書体,大きさ及び間隔で,一体的に表記されており,「ゲンコツ」の称呼を生じ,「げんこつ」,「にぎりこぶし」,「拳(こぶし)」の観念を生じる。 4 取引の実情(1) 本件指定商品について - 16 -ア本件指定商品のうち,被告の無効主張の対象となっているのは,「メンチカツを材料として用いたパン,メンチカツ入りのサンドイッチ,メンチカツ入りのハンバーガー,メンチカツ入り弁当,メンチカツ入りの調理済み丼物」であり,これらは,いずれもメンチカツを含む点で共通する。 イそして,被告は,平成25年6月から,「ゲンコツメンチ」という商品(メンチカツ。以下「本件商品」という。)を発売し(甲15),年間約3000万個を販売している(甲38)。 被告は,本件商品の広告には,「ゲンコツメンチ」を筆書きで横書きにし,「メ」及び「チ」の文字が最も大きく,「ゲ」及び最後の「ン」の文字がそれより小さく,その他の文字が更に小さい ている(甲38)。 被告は,本件商品の広告には,「ゲンコツメンチ」を筆書きで横書きにし,「メ」及び「チ」の文字が最も大きく,「ゲ」及び最後の「ン」の文字がそれより小さく,その他の文字が更に小さい,背景からの白抜きの文字による標章を使用しており(甲19。以下「本件標章」という。),コンビニエンスストアローソンの店頭において,本件標章を,黒地の帯状の部分に表示し,本件標章の「チ」の部分に重なる位置から右側にかけて,「できました!」という標準文字の赤字の横書きの記載を赤い線で囲んだものを表示した標章を表示した陳列棚に,本件商品を,他の商品と共に陳列し,「ゲンコツ」,「メンチ」というゴシック体の黒い文字を二段に記載した値札を,本件商品を陳列した部分の前面に表示していた(甲41)。 被告は,平成25年6月,本件商品につき,「ゲンコツメンチ夕食のおかずに採用」というコマーシャル画像のテレビ放映を,日本全国において多数回行った(甲39)。 なお,「ゲンコツメンチ」は,「日経MJ2013ヒット商品番付」において,「西の前頭」として挙げられた(甲44)。 ウ被告が,前記イのとおり,メンチカツに本件標章を使用して販売しているほかに,メンチカツ,若しくは,メンチカツを材料として用いたパン,メンチカツ入りのサンドイッチ,メンチカツ入りのハンバーガー,メンチカツ入り弁当,又は,メンチカツ入りの調理済み丼物が,「ゲンコツ」又は「げんこつ」,若しくは,「ゲンコツメンチ」又は「げんこつメンチ」という標章を使用して販売されたこと - 17 -を認めるに足りる証拠はない(後記のとおり,弁当の内容物として,「げんこつカツ」との説明がされた例はある。)。 エ被告は,平成26年6月3日から,「ゲンコツコロッケ」という商品を発売し(甲16),平 に足りる証拠はない(後記のとおり,弁当の内容物として,「げんこつカツ」との説明がされた例はある。)。 エ被告は,平成26年6月3日から,「ゲンコツコロッケ」という商品を発売し(甲16),平成27年1月頃から,「ゲンコツクリームコロッケ」という商品を数量限定で発売し(甲17),同年6月16日から,「ゲンコツチーズメンチ」という商品を発売した(甲18)ところ,本件商品に係る被告の広告の中には,本件標章と同様の筆書き,色,字体,大きさの「ゲンコツコロッケ」及び「ゲンコツ兄弟」との標章が表示されたもの(甲19),「ゲンコツ」,「シリーズ」をゴシック体の文字で二段に分けて表示するとともに,前記のような「ゲンコツコロッケ」の標章や,左側に「ゲン」,「コツ」を小さく二段に分けて表示し,その右側に,本件標章と同様の筆書き,色,字体,大きさの「クリームコロッケ」との標章が表示されたもの(甲20)があった。 また,被告のコマーシャル画像としては,「A・B 突然お店になる」もあり,これは,平成26年4月にテレビ放映されたが,この画像において,登場人物2名が,コロッケ又はメンチカツ様のものを食べている場面において,背景ののれんに,本件標章の「ゲンコツ」の部分が,白い生地に黒字で表示されており,その後,「北海道産きたあかり100%使用」,「ゲンコツコロッケ」,「135円(税込)」との記載が,白い皿に載せたコロッケと野菜様のものの画像に重ねて表示され,続いて,本件標章と「154円(税込)」との記載が,白い皿に載せたメンチカツと野菜様のものの画像に重ねて表示された(甲26,乙24)。 (2) 引用商標の指定商品についてア引用商標の指定商品は,「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう れた(甲26,乙24)。 (2) 引用商標の指定商品についてア引用商標の指定商品は,「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」である。 イそして,原告は,平成27年11月,「すわき後楽中華そば」として,「梅ゲンコツおにぎり」及び「わかめゲンコツおにぎり」という商品(おにぎり) - 18 -を,ラーメンや焼豚とセットで,又は,単品で,販売していた(甲55)。 また,原告の商品「梅ゲンコツおにぎり」は,岡山県食品産業協議会の平成24年1月1日から平成25年12月31日までの推奨基準審査に合格し,「旨良物」ブランドとして認定されており(甲57),平成28年版の同協議会の推奨品のリストには,「すわき後楽中華そば」,「ゲンコツおにぎり(梅・わかめ)」の標準文字が二段に分けて表示され,「すわき後楽中華そばで50年以上の人気商品です。」という紹介文が掲載されていた(甲56)。 ウ原告が,前記イのとおり,「梅ゲンコツおにぎり」及び「わかめゲンコツおにぎり」に引用商標を使用して販売しているほかに,おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,又は,ラビオリが,「ゲンコツ」又は「げんこつ」,若しくは,「ゲンコツメンチ」又は「げんこつメンチ」という標章を使用して販売されたことを認めるに足りる証拠はない。 エ(ア) 原告は,被告に対し,平成25年,引用商標につき,次の条件で通常使用権を許諾した(甲11)。 商品メンチカツ及びメンチカツを使用した弁当・サンドイッチなど地域日本全国期間平成25年6月15日から同年12月31日まで使用 標につき,次の条件で通常使用権を許諾した(甲11)。 商品メンチカツ及びメンチカツを使用した弁当・サンドイッチなど地域日本全国期間平成25年6月15日から同年12月31日まで使用態様商品,包装材,並びに販促物の製造及び販促において使用する。 対価 15万円(消費税別)(イ) 原告は,被告に対し,平成25年頃,引用商標につき,次の条件で通常使用権を許諾した(甲12)。 商品 (1)メンチカツやコロッケを使用した弁当(2)メンチカツやコロッケを使用したサンドイッチなど地域 (ア)と同じ期間平成26年1月1日から同年6月30日まで - 19 -使用態様 (ア)と同じ対価 30万円(消費税別)(ウ) 原告は,被告に対し,平成26年6月30日,引用商標につき,次の条件で通常使用権を許諾した(甲13)。 商品 (1)メンチカツやコロッケなどを使用した弁当(2)メンチカツやコロッケなどを使用したサンドイッチなど地域 (ア)と同じ期間平成26年7月1日から平成27年6月30日まで使用態様 (ア)と同じ対価 100万円(消費税別)(3) その他平成20年頃,株式会社もりもとは,「げんこつシュー」という商品(シュークリーム)を,北海道内の「もりもと」各店及びオンラインショップで販売しており(甲27),平成21年9月頃,山本屋有限会社(栃木県佐野市)は,「げんこつドーナツ」という商品(ドーナツ)を販売していた(乙2)。 平成26年5月20日頃,「菓子工房モンパリ」という北海道室蘭市の業者は,「げんこつパイ」という商品(クリームをパイ生地で包んだものであり,ミートパイではない。)をインターネット上で販売しており(甲30),平成26年11月26日頃,栃木県那須塩原市のベーカリー「パ は,「げんこつパイ」という商品(クリームをパイ生地で包んだものであり,ミートパイではない。)をインターネット上で販売しており(甲30),平成26年11月26日頃,栃木県那須塩原市のベーカリー「パン・アキモト」という業者は,「栃木げんこつパン」という商品(パン)を販売しており(甲32),平成28年9月,有限会社根岸屋(栃木県桐生市)は,「【和菓子】根岸屋のげんこつドーナツ」という商品(ドーナツ)をインターネット上で販売していた(乙3)。 平成21年10月23日,「お弁当のかわの」という業者は,同日の日替弁当の中身の一つとして,「豚バラ,モモ,すね肉を叩いて細かくし,たっぷりの玉ねぎと合わせ練り上げてフライにしました。」として,挽肉を原材料とする揚げ物である「げんこつカツ」が入っている旨の表示をインターネット上に掲載した(甲29)。 - 20 -「ライフコーポレーション」という業者は,平成27年10月7日頃,東京都品川区の品川御殿山店において,「げんこつから揚げ」という商品(唐揚げ)を販売していた(乙1)。 5 本件商標と引用商標の類比(1)ア本件商標と引用商標は,右側部分における「メンチ」の文字の有無という相違があり,外観において相違する。 イ本件商標は,「ゲンコツメンチ」の称呼を生じるのに対し,引用商標は,「ゲンコツ」の称呼を生じるから,称呼において相違する。 ウ本件商標は,「にぎりこぶしのような大きさで,丸みと厚みがある形状の,挽肉を原材料とした加工食品」という観念を生じ得るのに対し,引用商標は,「にぎりこぶし」という観念を生じるのであって,観念において相違する。 エメンチカツを単品で販売する場合において,被告が本件商品を販売し,「ゲンコツ」を含む標章を使用しているほかに,「ゲンコツ」又は「げんこ 」という観念を生じるのであって,観念において相違する。 エメンチカツを単品で販売する場合において,被告が本件商品を販売し,「ゲンコツ」を含む標章を使用しているほかに,「ゲンコツ」又は「げんこつ」という標章やこれらを含む標章が使用された例はない。 また,メンチカツを他の食品と組み合わせた「メンチカツを材料として用いたパン,メンチカツ入りのサンドイッチ,メンチカツ入りのハンバーガー,メンチカツ入り弁当,メンチカツ入りの調理済み丼物」としては,平成21年,弁当の内容物として,挽肉と玉葱を練り上げて揚げたメンチカツである「げんこつカツ」が入っている旨のインターネット上の表示がされたことがあるが,当該弁当そのものは,「日替弁当」であって,「メンチカツ入り弁当」そのものに「ゲンコツ」又は「げんこつ」という標章やこれらを含む標章が使用されたわけではなく,他に,これらの商品につき,「ゲンコツ」又は「げんこつ」やこれらを含む標章が使用された例は見当たらない。 「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」に - 21 -ついては,原告が,「梅ゲンコツおにぎり」及び「わかめゲンコツおにぎり」を販売し,「ゲンコツ」を含む標章を使用しているほかに,「ゲンコツ」又は「げんこつ」という標章やこれらを含む標章が使用された例はない。 シュークリーム,ドーナツ,クリームパイ,パン及び唐揚げに,「げんこつ」を含む標章が使用された例はあるが,いずれも単品としての販売に使用されたものであって,本件指定商品にも,引用商標の指定商品にも該当するとは認められない。 前記認定事実によれば,メンチカツ,おにぎり,シュークリーム,ドーナツ,クリームパイ,パン及び唐揚げに に使用されたものであって,本件指定商品にも,引用商標の指定商品にも該当するとは認められない。 前記認定事実によれば,メンチカツ,おにぎり,シュークリーム,ドーナツ,クリームパイ,パン及び唐揚げに,「ゲンコツ」又は「げんこつ」を含む標章が使用された例はあるが,いずれも,商品名としては,「ゲンコツ」又は「げんこつ」だけではなく,商品名(「おにぎり」,「ドーナツ」など)又はその一部(シュークリームの「シュー」,メンチカツ又はメンチボールの「メンチ」)も表示されていたことが認められる。 (2) 本件商標は,「ゲンコツ」の文字部分と「メンチ」の文字部分がいずれも辞書に掲載されている語であることから,その組合せであると解されるものではあるが,文字のみの商標であって,図形などとの組合せではなく,しかも,全ての文字が,標準文字で,一連に横書きされており,各文字は,同じ字体,大きさ及び間隔で,一体的に表記されている。 また,本件商標の全体の文字数は,7文字で,多くはないところ,その称呼は,「ゲ」と「メ」の母音がいずれも「エ」,その次に続く音がいずれも「ン」であり,韻を踏んだ状態になっており,リズム感があることから,全体として,7文字であるにしては,簡潔で歯切れのいい印象を与える。 そして,食品,特に単品で販売されることのある加工食品で,一定程度の大きさと,丸みと厚みのある形状であり得るものについては,その大きさや形状を表すために「げんこつ」,「にじりこぶし」,「こぶし」という語を使用し,これを加工食品の名称と組み合わせて,商品の名称とされることがあると解されるのであって,前記のような加工食品の取引の場面においては,「げんこつ」又は「ゲンコツ」と - 22 -いう語が,商品の大きさや形状を象徴的に表す語として解されることもあるといえる。 れるのであって,前記のような加工食品の取引の場面においては,「げんこつ」又は「ゲンコツ」と - 22 -いう語が,商品の大きさや形状を象徴的に表す語として解されることもあるといえる。 さらに,「挽肉にみじん切りにした玉葱などを加えて小判型などにまとめ,パン粉の衣をつけて油で揚げた料理」を,「メンチカツ」ではなく,「ミンチカツ」という地域もあり(甲6,7),インターネット上においては,平成27年9月19日の時点で,「メンチカツ」を「メンチ」と略する旨の記載もある(甲7)が,その他に「メンチカツ」を「メンチ」と略することを裏付ける証拠はなく,平成25年12月頃のコンビニエンスストアのホットスナックの商品名として,「あらびき牛肉メンチカツ」(セブン-イレブン),「ビーフメンチカツ」(ファミリーマート)と,「メンチカツ」を略さずに全体を取り込んだものがある一方,「メンチ」のみを取り込んだ商品名は,被告の「ゲンコツメンチ」しか見当たらず,これらを紹介する雑誌の記事においては,これらの商品を包括する表現として「メンチカツ」と記載されていた(甲42)。 そうすると,メンチカツ同様に挽肉を使った料理である「ハンバーグ・ステーキ」(挽肉に刻んだ玉葱,パン粉,卵などを加え,平たい円形にまとめて焼いた料理)(広辞苑第6版)が「ハンバーグ」と表現されているのに対し,「メンチ」の語は,挽肉にみじん切りにした玉葱などを加えて小判型などにまとめ,パン粉の衣をつけて油で揚げた料理である「メンチカツ」を表す名詞として,全国の取引者,需用者に,それほど普及しているとはいえない。 以上によれば,本件商標において,「ゲンコツ」の文字部分だけが,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえないし,「メンチ」の文字部 とはいえない。 以上によれば,本件商標において,「ゲンコツ」の文字部分だけが,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえないし,「メンチ」の文字部分からは,出所識別標識としての称呼,観念が生じないともいえない。 (3) したがって,本件商標は,その外観,称呼及び観念のいずれの点においても,引用商標と相違し,取引の実情を考慮しても,引用商標とは類似しておらず,商標法4条1項11号に該当する商標ではない。 - 23 - 6 原告の主張について(1) 原告は,本件商標は,「ゲンコツ」の文字部分のみに自他商品識別標識として機能が認められるとして,取消事由1及び2を挙げ,本件商標と引用商標の類似性を主張する。 しかしながら,語意に留意せずに,本件商標を見た場合,外観上「ゲンコツ」と「メンチ」の間に区別があると認めることはできない。 原告が挙げる前記最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決は,図形と文字「宝塚」に「リラタカラヅカ」,「LYRATAKARAZUKA」の文字が添記され,「宝塚」は当該商標のほぼ中央部に普通の活字で極めて読み取りやすく表示され,独立して見る者の注意を引くように構成されている旨の事実認定を前提に,「かかる事実関係の下において,原判決が右リラの図名を「宝塚」なる文字とはそれらを分離して観察することが取引上自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではないから,本願商標よりはリラ宝塚印の称呼,観念のほかに,単なる宝塚印なる称呼,観念も生ずることが少なくないと認めて,ひとしくその指定商品を第四類石けんとする引用商標たる「宝塚」と称呼,観念において類似すると判断したことは,正当であ」る旨判断したものであって,本件商標のように,全ての文字が,標準文字で と認めて,ひとしくその指定商品を第四類石けんとする引用商標たる「宝塚」と称呼,観念において類似すると判断したことは,正当であ」る旨判断したものであって,本件商標のように,全ての文字が,標準文字で,一連に横書きされており,各文字は,同じ字体,大きさ及び間隔で,一体的に表記されている場合に,その一部のみを分離して観察することを認めたものではない。 したがって,原告の前記主張は採用できない。 なお,原告は,被告が,実際に本件商標を使用している状況は,甲19,20,41のとおりであり,「ゲンコツ」の文字部分が独立してみる者の注意を引くように構成されているとも主張するが,原告が挙げる被告の広告における標章は,本件商標ではないから,これを根拠に前記認定を覆すことはできない。 (2) 原告は,特許庁は,「ゲンコツ」に自他商品識別力が認められるから,引 - 24 -用商標のほか,6件(甲23,24,50~54)の商標登録,出願を認めており,「ゲンコツ」に自他商品識別力を認めないのは矛盾である旨も主張する,しかしながら,審決は,「本件商標は,『ゲンコツ』の文字部分が,独立して自他商品の識別標識として機能するというよりも,一体的なまとまりのあるものとして看取,把握されると見るのが自然である。」と認定しているのであって,「ゲンコツ」の文字部分が他の部分と相まって自他商品の識別標識としての機能を果たすことまで否定しているわけではない。 「ゲンコツ」の語がそれだけで十分な自他商品識別力を有することと,「ゲンコツ」の語が「メンチ」の語と一体のものとして認識,理解されるかとは別個に考慮すべき事項である。 したがって,原告の前記主張は,採用できない。 第6 結論以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似しているとはいえないから,本件商標が商 識,理解されるかとは別個に考慮すべき事項である。したがって,原告の前記主張は,採用できない。 第6 結論 以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似しているとはいえないから,本件商標が商標法4条1項11号に該当するとの原告の主張は,採用できない。他に,前記認定を覆すに足りる主張・立証はない。そうすると,審決は,本件商標の観念の認定において誤っているものの,類似性を否定した点において誤りは認められず,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水節 裁判官中村恭 裁判官森岡礼子

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