- 1 -主文1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由第1 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。 2 愛知県公安委員会が平成29年12月22日付けで控訴人に対してした犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律に基づく犯罪被害者等給付金を支給しない旨の裁定を取り消す。 第2 事案の概要1⑴ 控訴人(男性)と共同生活を継続していた男性(以下「本件被害者」という。)は、平成26年▲月▲日、控訴人と交際していた別の男性により殺害された。 本件は、控訴人が、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(以下「犯給法」という。)5条1項1号にいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当するなどと主張して、遺族給付金(犯給法4条1号)の支給の裁定を申請したところ(以下「本件申請」という。)、愛知県公安委員会から、犯給法5条1項1号所定の「犯罪被害者の配偶者」とは認められないとして、遺族給付金の支給をしない旨の裁定(以下「本件処分」という。)を受けたことから、その取消しを求める事案である(なお、以下において、同給付金を「犯罪被害者給付金」と、犯給法5条1項1号の定めを「本件規定」ということがある。)。 ⑵ 原判決は、同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者が「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当し得るか否かについて、犯給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当するために - 2 -は、同性間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されていることを要するというべきであるとし、同性間の共同生活関係に関する社会的状況について検討した上で、本件処分当時の我が国にお 間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されていることを要するというべきであるとし、同性間の共同生活関係に関する社会的状況について検討した上で、本件処分当時の我が国において同性間の共同生活関係を婚姻関係と同視し得るとの社会通念が形成されていたとはいえず、本件処分当時においては、同性の犯罪被害者と共同生活関係にある者が、個別具体的な事情にかかわらず、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」(犯給法5条1項1号)に当たると認めることはできないとして、控訴人の請求を棄却した。 控訴人は、原判決を不服として控訴し、当審において本件処分が憲法14条1項に違反し、憲法13条、25条2項の趣旨に違反する旨の主張を追加した。 2 犯給法の概要犯給法の概要は、原判決別紙「犯給法の定め」に記載したとおりである。 3 前提事実原判決「事実及び理由」第2の3に記載のとおりであるから、これを引用する。 4 本件の争点⑴ 同性の犯罪被害者(犯給法2条2項及び3項。犯罪行為により死亡し、又は重症病を負い若しくは障害が残った者をいう。以下同じ。)と共同生活関係(交際している者が共同生活を営む関係をいう。以下同じ。)にあった者が「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」(犯給法5条1項1号)に該当し得るか否か(争点1)⑵ 控訴人が本件被害者と「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」であるといえるか否か(争点2)⑶ 同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者は「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」(犯給法5条1項1号)に該当しないとして本件申請を認 - 3 -めなかった本件処分が、憲法14条1項に違反するか否か、憲法13条、25条2項の趣旨に違反するか否か(争点3)5 争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 争点1( として本件申請を認 - 3 -めなかった本件処分が、憲法14条1項に違反するか否か、憲法13条、25条2項の趣旨に違反するか否か(争点3)5 争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 争点1(同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者が「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」〔犯給法5条1項1号〕に該当し得るか否か)以下のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第2の5⑴に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア 原判決11頁1行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。 「カ 「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」〔犯給法5条1項1号〕に該当するか否かの判断に当たって社会通念を考慮することについて犯給法5条1項には「社会通念」との要件はないのであり、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」か否かは、その文言どおり、被害者と申請者の関係についての個別具体的な事情に基づいて認定すべき事柄である。「社会通念」によって、個別具体的な事情にかかわらず、同性であることの一点をもって定型的に「事実上婚姻関係と同様の事情」にないなどと判断することは許されない。 仮に、犯罪被害者給付金制度の保護範囲を画する上で「社会通念」という概念を用いるのであれば、同性事実婚の当事者が「社会通念上、犯罪被害者と親密なつながりを有するものとして犯罪被害者の死亡によって重大な経済的又は精神的被害を受けることが想定されるといえるか否か」という基準によって判断されるべきであり、また、仮に同性間と異性間の共同生活関係についての社会通念を問題とするとしても、「同性間の共同生活関係が異性間の共同生活関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されているか否かが問題とされるべきであり、同性パートナーの共同生活関係を異性間の婚姻関係と同視し得るとの社会通念が形 間の共同生活関係が異性間の共同生活関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されているか否かが問題とされるべきであり、同性パートナーの共同生活関係を異性間の婚姻関係と同視し得るとの社会通念が形成されているか否かという観点で判断すべきではない。」 - 4 -イ 原判決13頁16行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。 「ウ 「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」〔犯給法5条1項1号〕に該当するか否かの判断に当たって社会通念を考慮することについて「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」〔犯給法5条1項1号〕に、同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者が含まれるという解釈論を採用できる余地はないから、同性間の共同生活関係が、男女間の関係のみを前提とする婚姻関係と同視し得るものであるとの社会通念の存否によって、その適用の可能性が左右されるものではない。」⑵ 争点2(控訴人が本件被害者と「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」であるといえるか否か)原判決「事実及び理由」第2の5⑵に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑶ 争点3(本件処分が、憲法14条1項に違反するか否か、憲法13条、25条2項の趣旨に違反するか否か)ア 本件処分が憲法14条1項に違反するか否か(控訴人の主張)(ア) 遺族給付金の不支給同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者は、犯給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当しないとすれば、性的指向が同性に向き、同性パートナーと性愛を伴う親密な人格的結合関係を築いた者は、個別具体的な事情にかかわらず、犯罪被害者給付金制度の遺族給付金の支給は一切認められないこととなる。他方、異性愛者は、自らの性的指向に従って、婚姻の届出の有無に関わらず、異性パートナーとの間で性愛を 別具体的な事情にかかわらず、犯罪被害者給付金制度の遺族給付金の支給は一切認められないこととなる。他方、異性愛者は、自らの性的指向に従って、婚姻の届出の有無に関わらず、異性パートナーとの間で性愛を伴う親密な人格的結合関係を築いた者は、遺族給付金の支給を受け得る。 このような差異は、遺族給付金の申請者の性的指向に基づいて、遺 - 5 -族給付金の支給に関する別異取扱いを行うものである(以下、この別異取扱いを「本件別異取扱い」という。)。 (イ) 本件別異取扱いによる同性愛者等の被侵害権利・利益本件別異取扱いにより、控訴人を含む同性愛者等は、最愛のパートナーを理不尽に奪われた者の精神的打撃及び経済的打撃を緩和するための遺族給付金の支給を受けることができず、こうした精神的打撃及び経済的打撃が緩和されないまま放置されることになる。パートナーが殺害された精神的打撃及び経済的打撃は、同性愛者と異性愛者との間で差があるはずがないのであって、同性愛者等のみが重大な不利益を受けることになる。 なお、遺族給付金の支給額は、本件のように被害者が無職であった場合であっても、その金額は420万円と見込まれ、高額である。平成30年の警察庁広報資料によれば、平均支給額は614万円、最高支給額は3708万5000円である(甲101)。 しかも、婚姻することができ、また、婚姻の届出をしなくとも、事実婚として社会保障の対象となる異性パートナーは、社会的承認を受け、パートナーとしての尊厳や安定した関係性を築くことができるという心理的・社会的利益を得ることができるところ、本件別異取扱いは、同性パートナーのこのような利益を得ることを認めず、パートナーとしての尊厳や安定した関係性を築くことを妨げるものである。 (ウ) 本件別異取扱いの憲法14条1項適合性について ろ、本件別異取扱いは、同性パートナーのこのような利益を得ることを認めず、パートナーとしての尊厳や安定した関係性を築くことを妨げるものである。 (ウ) 本件別異取扱いの憲法14条1項適合性については厳格に審査されるべきこと性的指向は自らの意思で自由に変えることができない事柄であり、同性愛・両性愛の性的指向は、長い間社会的に、異常性愛、変態性欲等の偏見・侮蔑・無理解の対象とされ、正常から逸脱した性愛のあり方という烙印がおされてきたのであり、そのような偏見は現在でも根 - 6 -強く残存しているものであって、憲法14条1項後段の「社会的身分」に該当する。 また、性的指向における同性愛者、性自認におけるトランスジェンダーも「性」に関するマイノリティであって、性的指向に基づく本件別異取扱いは、憲法14条1項後段の「性別」に基づく別異取扱いに該当する。 以上のとおり、性的指向に基づく本件別異取扱いは、憲法14条1項後段の「社会的身分」及び「性別」に基づく別異取扱いであり、性的指向は自らコントロールできない事由であって、その合理性は厳格に審査されなければならない。 被控訴人は、本件別異取扱いについては、国会の広範な立法裁量が認められる旨主張するが、当該権利利益の重大性や、当該区別の原因となっている事柄が、自らの意思や努力によって変更可能かどうかという事柄の性質に着目して、通常の合理性の基準よりも厳しい基準で立法裁量は統制されるものである。このことは、国籍取得に関する最高裁平成18年(行ツ)第135号同20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁、非嫡出子の相続分差別規定に関する最高裁平成24年(ク)第984号、985号同25年9月4日大法廷決定・民集67巻6号1320頁、再婚禁止期間規定に関する最高裁平成25年(オ)第1 6号1367頁、非嫡出子の相続分差別規定に関する最高裁平成24年(ク)第984号、985号同25年9月4日大法廷決定・民集67巻6号1320頁、再婚禁止期間規定に関する最高裁平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁等の最高裁判決が判示するとおりである。そして、同性パートナーを殺害された者が犯罪被害者遺族として取り扱われることの権利利益としての重大性と、性的指向という自らの意思や努力によって変更できない事柄による区別については、国会の立法裁量は厳しい基準により制限されるものである。 さらに、前記のとおり、本件別異取扱いが重要な権利・利益につい - 7 -ての差別である上、同性愛者は、長年にわたって差別意識や偏見にさらされてきたため、自らの権利を回復するために声を上げることが非常に困難であるのが実情であり、民主制の過程で本件別異取扱いが解消され同性愛者が救済を受けることは極めて困難であるから、本件別異取扱いの是正については、国会に委ねることは許されず、裁判所において、合理性の有無について厳格に判断することが求められている。 (エ) 本件別異取扱いが正当化されないこと長年生活を共にし、性愛に基づく親密な関係であった者(異性であれば事実婚と扱われるような関係にあった者)が、犯罪被害によって命を奪われた場合に、残されたパートナーが経済的又は精神的打撃を受けることは、その者が被害者と異性であろうと同性であろうと変わるわけがなく、犯罪被害者給付金制度の趣旨である社会連帯共助の精神に基づいてこれを緩和すべき要請が異なることもない。 本件別異取扱いで問題となるのは、「異性事実婚」と「同性事実婚」であるところ、異性事実婚と同性事実婚を区別する法制度はなく、文言上異なる取扱いをする法令も存在せず、 すべき要請が異なることもない。 本件別異取扱いで問題となるのは、「異性事実婚」と「同性事実婚」であるところ、異性事実婚と同性事実婚を区別する法制度はなく、文言上異なる取扱いをする法令も存在せず、事実婚については同性間であっても異性間であっても同等に認められてきたのであって、異性事実婚と同性事実婚とを区別する根拠がない。また、同性事実婚そのものを否定する立法の動きはなく、異性事実婚と同性事実婚とを区別していない法制度について否定的な世論調査等も見当たらない。 なお、異性事実婚と同性事実婚とを区別する理由として、①「法律上の婚姻関係と同視し得る関係」に生殖関係を含めて考えるか、②「法律上の婚姻関係と同視し得る関係」について、共同生活関係に加えて、社会通念上の祝福を受ける関係であることを付加するかのいずれかが考えられ得るが、①については、年齢や疾患等によって生殖が不可能であったとしても、パートナーを失った者の経済的又は精神的 - 8 -な打撃を緩和することの要請に変わりはないといえるし、②については、犯罪被害者給付金の趣旨からすれば「パートナーを犯罪被害によって失った者が、一般的に経済的又は精神的な打撃を受ける関係といえるか否か」が問題になるはずであって、これを超えて、社会通念上の祝福を受ける関係であることを付加することは、制度趣旨からして不要な要件を課すものであるし、また、このような解釈は、差別を温存することに繋がるものである。 さらに、同性パートナーを殺害された者に遺族給付金の支給が認められていないことは、同性愛者等が異性愛者に比べて異常かつ劣る存在であるという差別的観念が社会的に受容され続ける素地を作る要因となっており、そのことを通じて、今現在も、同性愛者等の尊厳を深刻に傷つけ続けているのであり、このような事態をもたらす て異常かつ劣る存在であるという差別的観念が社会的に受容され続ける素地を作る要因となっており、そのことを通じて、今現在も、同性愛者等の尊厳を深刻に傷つけ続けているのであり、このような事態をもたらす本件別異取扱いが正当化される余地はない。 なお、犯罪被害者給付金が租税を財源とするものであるとしても、問題とされるべきは本件別異取扱いに合理性があるか否かであって、その区別に合理性がない以上、財源論を理由に本件別異取扱いが正当化されるものではない。 したがって、本件別異取扱いを正当化するに足りる合理的な根拠は一切存在しない。 (オ) 以上のとおり、本件別異取扱いの合理性の有無については厳格に判断されなければならないことも踏まえた上で、犯罪被害者給付金制度の制度趣旨、内容からみたとき、本件別異取扱いが正当化される余地はないから、本件別異取扱いは、憲法14条1項が禁止する法的な差別的取扱いに該当する。 (被控訴人の主張)(ア) 立法行為又は立法不作為の憲法14条1項適合性に関し、当該取扱 - 9 -いにおける区別に「合理的な根拠」があるかどうかについては、立法府に合理的な範囲の裁量判断が認められることを前提にして、その広狭に応じ、立法目的の合理性、目的達成のための手段・方法の合理性を具体的に検討して判断すべきである。 (イ) 犯罪被害者給付金制度は、①犯罪被害による精神的・経済的打撃を救済するものという意味での「福祉政策」(なお、「社会福祉的な要素」、「福祉的効果」といわれることもある。)、②他の分野におけるものと同様に、不法行為制度の実効を確保するためのものという意味での「不法行為制度の補完」、及び③犯罪者の処遇の改善との関係上必要なものという意味での「刑事政策」という三つの要素が挙げられるところ、犯罪被害者給付金制度の性格 実効を確保するためのものという意味での「不法行為制度の補完」、及び③犯罪者の処遇の改善との関係上必要なものという意味での「刑事政策」という三つの要素が挙げられるところ、犯罪被害者給付金制度の性格は、これら三つの要素を総合・包含したものとして理解され、更に端的にいえば、同制度は、現在の法秩序の下で、犯罪被害者が人的被害を受けながら、他の原因による被害の場合と異なり法制度上全く考慮されていないのは不均衡であり、この是正を図る必要があることからすると、国の法制度全般に対する国民の不信感を除去し、かかる法制度に対する国民の信頼を確保することにその本質があると解される。 そして、犯罪被害者給付金は、故意の犯罪行為による被害を受けた者又はその遺族が、民法上は不法行為制度がありながら、事実上損害賠償を受けられない場合が多いという状況を前提として、いわば社会連帯共助の精神をもって、社会的に気の毒な立場にある犯罪被害者の被害の緩和を引き受けようとするものであるから、同給付金は、損害の補塡自体を主たる目的とするものではなく、国の法制度全般に対する国民の不信感を除去し、かかる法制度に対する国民の信頼を確保することを主たる目的とする一種の見舞金的な性格を有するものと解するのが相当である。 - 10 -(ウ) 上記のような犯罪被害者給付金制度の目的、給付金の性格を踏まえると、犯罪被害者給付金の受給権者の範囲や給付要件等については、国民感情を含めた社会状況等を十分に踏まえて判断する必要があり、そのためには、国民的議論が不可欠であるという意味で、民主的なプロセスに委ねることによって判断されるべき事柄にほかならない。しかも、国の一般財源によって行われる犯罪被害者給付金制度の実現は、国の財政事情に左右されるところが大きいこと等を併せ考慮すると、犯罪 ロセスに委ねることによって判断されるべき事柄にほかならない。しかも、国の一般財源によって行われる犯罪被害者給付金制度の実現は、国の財政事情に左右されるところが大きいこと等を併せ考慮すると、犯罪被害者給付金の受給権者の範囲、給付要件等の決定については、立法府に広範な裁量が認められると解するのが相当である。 (エ) 犯給法5条の定める遺族の範囲及び遺族給付金の支給を受けるべき遺族の順位については、犯罪被害者給付金制度の創設の趣旨及び性格に照らして、民法上に規定する親族関係の遠近の程度、通常における生活関係上の緊密さの程度等を勘案した上、定められたものであり、労働者災害補償保険法その他の法令による給付制度においても同様の要素を勘案した上で規定されている。 そして、犯給法5条は、犯罪被害者の配偶者を遺族給付金の支給を受けるべき第一順位の遺族とし、この配偶者に「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」を含むとしているところ(同条1項1号、3項)、これは、我が国の民法が法律婚主義を採用していることに鑑み(民法739条1項)、第一次的には死亡した犯罪被害者と法律上の婚姻関係にあった配偶者が遺族給付金の受給権者とされるべきであるものの、死亡した犯罪被害者との間において法律上の婚姻関係と同視し得る関係を有しながら婚姻の届出がない者(すなわち、社会の一般常識からすれば夫婦としての共同生活と認められる事実があったにもかかわらず、婚姻の届出をしていないために法律上は夫婦と認められない場合)をも保護しようとするものであ - 11 -る。このような本件規定の立法目的は、犯給法の目的が、前記のとおり、社会連帯共助の精神に基づいて、租税を財源として遺族等に一定の給付金を支給し、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することに る。このような本件規定の立法目的は、犯給法の目的が、前記のとおり、社会連帯共助の精神に基づいて、租税を財源として遺族等に一定の給付金を支給し、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することにあることに鑑みると、合理性を有することは明らかである。 また、本件処分当時の我が国において、同性間の共同生活関係が、法律上の婚姻関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されていたということはできないから、この点においても、本件規定が遺族給付金の受給権者の範囲を上記のとおり定めることには、合理性がある。 (オ) 以上によれば、本件規定が異性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者に対してのみ遺族給付金を支給する旨定めていること及び同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者に遺族給付金を支給する制度が設けられていないことが、本件規定の立法目的との関連において合理性を有することは明らかである。 イ 本件処分が憲法13条、25条2項の趣旨に違反するか否か(控訴人の主張)(ア) 犯罪被害者等基本法3条は「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」と定めるところ、これは、それぞれ異なる事情をもつ具体的な被害者の個別の事情に応じて当該被害者等の支援をするという姿勢を示しており、その根底には、憲法13条前段が定める個人の尊重と、同条後段が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定める幸福追求権がある。 (イ) 犯給法は、犯罪被害者等が犯罪被害により経済的にも多大な打撃を受けているにもかかわらず諸制度のはざまに置かれ、困窮した生活を - 12 -強いられていることから、これを是正するために制定され 犯給法は、犯罪被害者等が犯罪被害により経済的にも多大な打撃を受けているにもかかわらず諸制度のはざまに置かれ、困窮した生活を - 12 -強いられていることから、これを是正するために制定されたものであり、最後の国のセーフティーネットという性格を有している。 それゆえ、犯罪被害によりパートナーを殺害された者に対しては、犯給法以外に救済手段が存在しないことを前提に、憲法25条2項が「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めている趣旨にのっとり、補償が行き届くように解釈運用されなければならない。 (ウ) 以上のような憲法13条、25条2項の趣旨を踏まえると、同性パートナーを殺害された控訴人について、性的指向のみによって犯給法の適用対象から外した本件処分は、憲法13条、25条2項の趣旨に反するものである。 (被控訴人の主張)(ア) 憲法13条の規定は、同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者が国から遺族給付金の支給を受ける権利や法的地位を具体的に基礎づけるものではない。 (イ) 控訴人は、犯罪被害者給付金制度の遺族給付金の支給を受ける法的権利や遺族給付金の支給申請権をそもそも有しないから、本件別異取扱いが憲法25条2項に基づく保障を後退させるものである旨の控訴人の主張は前提を欠く。 (ウ) したがって、本件処分が憲法13条、25条2項の趣旨に反するとの控訴人の主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断1 争点1(同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者が犯給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当し得るか否か)について⑴ア 犯給法は、遺族給付金につき、犯罪行為により死亡した者の第一順位 - 13 -遺族に対して支給する(4条 項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当し得るか否か)について⑴ア 犯給法は、遺族給付金につき、犯罪行為により死亡した者の第一順位 - 13 -遺族に対して支給する(4条1号)と定める。 そして、遺族給付金の支給を受けることができる遺族につき、犯罪被害者の死亡の時において、犯罪被害者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)(5条1項1号)、犯罪被害者の収入によって生計を維持していた犯罪被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹(同項2号)、前号に該当しない犯罪被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹(同項3号)と定める。 また、遺族給付金の支給を受けるべき遺族の順位は、5条1項各号の順序とし、同項2号及び3号に掲げる者のうちにあっては、それぞれ当該各号に掲げる順序と定める(同条3項)。 イ これらの定めは、死亡した者との親族関係の遠近の程度と現実の生活における関係の緊密さを考慮して一定の順位を設け、その第一順位の者に給付する趣旨と解されるが(乙21・20頁)、その親族関係の遠近の程度については民法上の概念を用いて定められている。 そして、犯給法5条1項1号においても、「配偶者」、「婚姻の届出」、「婚姻関係」という民法上の婚姻に関する概念により定められていることからすると、民法上は法律婚主義が採用されていることから(739条1項)、同号は、一次的には死亡した犯罪被害者と法律上の婚姻関係にあった配偶者を遺族給付金の受給権者としつつ、死亡した犯罪被害者との間において法律上の婚姻関係と同視し得る関係を有しながら婚姻の届出がない者も受給権者とするものであると解される。 同号括弧書きの「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」との定めも、犯給 関係と同視し得る関係を有しながら婚姻の届出がない者も受給権者とするものであると解される。 同号括弧書きの「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」との定めも、犯給法に特段の定めがないから、婚姻の届出ができる関係であることが前提となっていると解するのが自然であり、民法上婚姻の届出をすること自体が想定されていない同性間の関係も含まれ得るとすることは、条文の解釈から逸脱するものと - 14 -いわざるを得ない。 なお、犯給法の施行令においても、生計維持関係遺族の定めに関する6条2項1号、2号において、「妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)」、「60歳以上の夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)」などと、異性間の関係であることを前提とした定めとなっている。 ウ 控訴人は、異性間の重婚的内縁関係や近親婚的内縁関係といった婚姻の届出をすることができない場合であっても、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当し得るとされている以上、法律上禁止されていない同性間の共同生活関係も、同様に該当し得ると解すべきである旨主張する。 ところで、重婚や近親婚は、これを認める弊害を考慮して、政策的に禁止されているが、このような内縁関係について、個別具体的な事情の下で、禁止する理由となっている弊害が顕在化することがないという特段の事情が認められる場合には、法律婚に準ずるものとして保護される余地があるといえる。これに対し、同性間の共同生活関係は、政策的に婚姻が禁止されているのではなく、婚姻制度の対象外になっているから、局面を異にしている。控訴人の上記主張は採用できない。 エ そして、現行の法体系に照らして、「婚姻」、「配偶者」の定めは異 政策的に婚姻が禁止されているのではなく、婚姻制度の対象外になっているから、局面を異にしている。控訴人の上記主張は採用できない。 エ そして、現行の法体系に照らして、「婚姻」、「配偶者」の定めは異性間の関係のみを意味すると解するべきであり、同性間の関係を含むと解することは困難である。 すなわち、憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」、「夫婦が同等の権利を有することを基本として」などと定め、婚姻が異性間の関係であることを前提としており、婚姻関係を規定する民法も、異性間の関係を前提とした「夫婦」という表現が用いられている - 15 -から(民法750条)、民法において定められた「婚姻」は、異性間に限られる。 また、犯給法5条1項1号と同様に「事実上婚姻関係と同様の事情にある者(にあった者)」との定めを用いた他の法令が複数存するが(国家公務員災害補償法16条1項、厚生年金保険法3条2項、国民年金法5条7項等)、いずれも「夫」、「妻」との文言が使用されており、異性間の関係を前提とした定めであることが明らかであって、犯給法における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」についても異性間の関係を前提とする定めであると解するのが他の法令の解釈とも整合する。 さらに、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下「DV防止法」という。)においては、保護の対象となる「配偶者」について、「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を含むとの規定が設けられており(1条3項)、平成25年法律第72号による改正において、「生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)」をする関係にある相手からの暴力について、準用規定が設けられた(28条の2)。この準用 正において、「生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)」をする関係にある相手からの暴力について、準用規定が設けられた(28条の2)。この準用規定は、「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」との規定は、「婚姻意思」、「共同生活」、「届出」のうち「届出」がない事実婚について定めたものであるが、平成25年の法改正においては、「婚姻意思」も認められない「共同生活」のみを送っている場合を想定して、同性パートナー等にも保護の対象を拡大したものであることが認められる(乙17)。このように、DV防止法においても、保護の対象者について、民法上の「婚姻」をする意思(異性間の関係)を前提にした解釈をむやみに拡大することなく、保護の対象を拡大する際には、別途の立法措置を経ている。 なお、控訴人は、DV防止法の上記平成25年改正の前であっても、 - 16 -配偶者と同様の事情があるとして同性パートナーを保護命令の対象とした決定が存することを指摘するが(甲27)、現行の法体系に照らして法改正が必要であると判断されたという事実が重要なのであって、犯給法の法解釈の判断において、犯給法とは趣旨、目的を異にするDV防止法の個別の決定事例を重視することは相当ではない。 オ また、控訴人は、鳥取県職員の給与に関する条例では、扶養親族につき「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)」(8条2項1号。甲205)と定め、三重県職員の給与に関する条例では、扶養親族につき「配偶者(婚姻の届出をしないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)」(12条2項1号。甲207)と定めているところ、いずれの県も、同性パートナーを事実婚配偶者として扶養手当 き「配偶者(婚姻の届出をしないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)」(12条2項1号。甲207)と定めているところ、いずれの県も、同性パートナーを事実婚配偶者として扶養手当の支給対象とする取扱いをしている旨主張する。 しかし、制定主体を異にする地方公共団体の制定した条例の定め及びその運用をもって、犯給法の解釈の根拠とすることは相当でない(なお、鳥取県や三重県のような取扱いが、全国の地方公共団体において確立しているといった事情も認められない。)。 カ しかも、犯給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」につき同性間の共同生活関係を含むと解釈した場合には、遺族給付金の支給対象となる第一順位の遺族が変わることになるから、条文の文言を現行の法体系に整合的に解釈した場合の支給対象者が、遺族給付金の支給を受けられない場合が生じることになる。 したがって、犯給法5条1項1号の解釈においては、控訴人が指摘する地方公共団体の上記事例(扶養手当の支給の場面)とは異なり、より強く法的安定性を意識することが求められるというべきであって、同性間の共同生活関係に対する社会の意識が変化しているなどの事情を根拠 - 17 -として、立法措置を経ることなく解釈を変更することは、法的安定性を害する結果となるといわざるを得ない。 キ 以上の検討を踏まえると、犯給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」との定めについて、同性間の共同生活関係を含むものと解することについては慎重にならざるを得ず、犯給法自体の定めの中に、他の法体系とは異なって同性間の共同生活関係を含むと解釈すべき手掛かりも見当たらない以上、犯給法の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」の定めにつき、同性間の共同生活 自体の定めの中に、他の法体系とは異なって同性間の共同生活関係を含むと解釈すべき手掛かりも見当たらない以上、犯給法の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」の定めにつき、同性間の共同生活関係を含むと解釈することはできないといわざるを得ない。 ⑵ なお、控訴人は、同性間の共同生活関係に関する国内外の状況を根拠に、同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者について「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」(犯給法5条1項1号)に該当すると主張するので、以下検討する。 ア 同性間の共同生活関係に関する社会的状況に関する事実関係について以下のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第3の1⑵に記載のとおりであるから、これを引用する。 (ア) 原判決22頁12行目の「成立した。」の次に、「世田谷区議会では、令和2年6月11日、世田谷区が、新型コロナウイルスに対応した国民健康保険の特例措置に関し、被保険者が死亡した場合に遺族に支給される傷病手当金を同性パートナーにも支給する旨、一般質問で答弁した(甲114)。」を加える。 (イ) 原判決23頁7行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。 「(オ) 鳥取県では、鳥取県職員の給与に関する条例(甲205)において、扶養手当の支給対象となる扶養親族について、「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)」を扶養親族としているところ、かかる扶養手当について、性 - 18 -的マイノリティも対象とされていることが、県議会の答弁で明らかにされた(甲206:令和2年2月定例会第9号議事録)。 三重県においても、令和3年9月から、性的少数者のパートナーがいる県職員を婚姻関係とみなして扶養手当を付与する扱いとした(甲208)。」(ウ) 原判決26頁11行目 2月定例会第9号議事録)。 三重県においても、令和3年9月から、性的少数者のパートナーがいる県職員を婚姻関係とみなして扶養手当を付与する扱いとした(甲208)。」(ウ) 原判決26頁11行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。 「 また、自由権規約2条1項は、この規約の各締約国は、「性」を含む他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束することを定め、26条は、法律の前に平等であること、法律は「性」を含む他の地位等によるいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障することを定めているところ、自由権規約委員会は、1994年3月、同性愛行為を犯罪としていた法律の規約違反が争われたトゥーネン対オーストラリア事件において、自由権規約2条1項及び26条の「性」には「性的指向を含む」との見解を示した(甲120の1、2)。」(エ) 原判決27頁24行目の「このような状況」から28頁6行目の「評価せざるを得ない。」までを、以下のとおり改める。 「このような状況を諸外国における同性婚の導入の経過等からみると、同性間の共同生活関係に関する社会制度の形成は、㋐婚姻とは別の生活パートナーとしての登録あるいは共同生活のための契約の登録を認め、婚姻に近似した法律関係を保障する、㋑事実婚としての法的保障を及ぼす(婚姻外のパートナーを事実婚として法的に保護する判例や社会保障法制を有する国において可能)、㋒同性婚そのものを法制化するといった3つの類型が存するところ(諸外国において、㋐の方法に先んじて㋑の方法で同性間の共同生活関係に対応した国はないとさ - 19 -れる〔甲50〕。)、前記のような我が国の状況は、上記の3つのいずれの類型にも該当しない段階といえる。」 、㋐の方法に先んじて㋑の方法で同性間の共同生活関係に対応した国はないとさ - 19 -れる〔甲50〕。)、前記のような我が国の状況は、上記の3つのいずれの類型にも該当しない段階といえる。」(オ) 原判決29頁5行目の「議論の途上にあり」から13行目末尾までを、以下のとおり改める。 「議論の途上にあり、本件処分当時の我が国において、犯罪被害者給付金制度を含む法体系全般において、同性間の共同生活関係を、異性間の共同生活関係ないし婚姻関係と同視することが要請されるとの社会的な意識が醸成されていたとは認め難い。」(カ) 原判決30頁4行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。 「 性同一性障害特例法の適用により、従前は戸籍上異性パートナーであったのが、同性パートナーとなる場合もあり得るが(身体的性が男性で自認する性が女性の者(Ⓐ)と身体的性と自認する性がいずれも女性である者(Ⓑ)において、Ⓐが性同一性障害特例法による性別の変更をした場合)、本件ではこうしたケースにおける犯罪被害者給付金の支給の可否が問題とされているのではなく、こうした事案を捉えて、同性パートナーに対して犯給法の保護を及ぼすか否かの合理性、不合理性を論ずることは相当とはいえない。」(キ) 原判決30頁20行目の「照らすと」の次に、「(前記(原判決引用部分)のとおり、国民の意識に関するアンケート調査の結果においては、同性婚を認める趣旨の回答(賛成、やや賛成を含む。)が50%を上回っているが、一方で反対する趣旨の回答も相当割合を占めている。)」を加える。 (ク) 原判決31頁21行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。 「 また、自由権規約委員会が、自由権規約2条1項及び26条の「性」には「性的指向」を含むとの見解を示した事実があるとしても、同性愛行 原判決31頁21行目末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。 「 また、自由権規約委員会が、自由権規約2条1項及び26条の「性」には「性的指向」を含むとの見解を示した事実があるとしても、同性愛行為を犯罪としていた法律が自由権規約に違反するか否かという場 - 20 -面においてであるから、犯給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に同性パートナーを含むか否かの解釈に影響を与えるものとはいえない。」(ケ) 原判決31頁26行目から32頁6行目までを、以下のとおり改める。 「 在留特別許可が付与された外国人男性と日本人の同性パートナーの生活状況や在留特別許可が付与された経過(甲121、122)を踏まえると、在留特別許可を付与した判断においては、同性パートナーの存在が考慮要素とされたものと推測できる。しかしながら、在留特別許可を付与するか否かの判断は、様々な事情を考慮した法務大臣の広範な裁量に委ねられていると解されるのであり(最高裁昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁参照)、法務大臣による在留特別許可を付与するか否かの広範な裁量判断の際に同性パートナーの存在が考慮された事例があるとしても、そうした判断事例は、他の法分野を含む法体系において同性間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るか否かの判断根拠となるような事情とは認め難い。」イ 小括既に述べたとおり、本件規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む」に同性間の共同生活関係を含むと解釈することはできないというべきである。 なお、控訴人は、本件規定の解釈において、「社会通念」によって、個別具体的な事情にかかわらず、同性であることの一点をもって定型的に「事実上婚姻関係と同様の事情」にないなどと判断するこ べきである。 なお、控訴人は、本件規定の解釈において、「社会通念」によって、個別具体的な事情にかかわらず、同性であることの一点をもって定型的に「事実上婚姻関係と同様の事情」にないなどと判断することは許されないとも主張するが、現行の法体系や犯給法の解釈上、本件規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に同性間の共同生活関係を含む - 21 -と解釈することはできないとの結論は「社会通念」から導かれたものではない。そして、控訴人が指摘する社会的状況に関する種々の事情を考慮しても、上記の解釈を変更することが求められるまでの事情は見出すことができない。 2 争点3(本件処分が、憲法14条1項に違反するか否か、憲法13条、25条2項の趣旨に違反するか否か)について⑴ 憲法14条1項違反の主張についてア 犯給法の目的(ア) 犯給法は、犯罪行為により死亡した者の遺族又は重傷病を負い若しくは障害が残った者(遺族等)の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、これらの者が再び平穏な生活を営むことができるよう支援するため、犯罪被害等を受けた者に犯罪被害者等給付金を支給するものであり(1条、3条)、重大な経済的又は精神的な被害を受けた遺族等が発生した場合には当該遺族等を救済すべきとする社会一般の意識が生じ、他方で実際上不法行為制度の下での損害賠償等により救済を受けられない場合が多い中で、その状況を放置した場合には法秩序に対する国民の不信感が生ずることから、社会連帯共助の精神に基づき、租税を財源として遺族等に一定の給付金を支給し、遺族等の経済的又は精神的な被害を緩和するとともに、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することを主たる目的とするものと解される。(甲40、乙6、7)(イ) 犯罪行為による被害は、加害者による故意の不法行為 は精神的な被害を緩和するとともに、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することを主たる目的とするものと解される。(甲40、乙6、7)(イ) 犯罪行為による被害は、加害者による故意の不法行為を原因とするものであるから、本来は民法上の不法行為制度により被害回復が図られるべきものであるが、上記のとおり実際上不法行為制度による損害賠償による救済を受けられない場合が多く、①殺人、傷害などの故意の犯罪行為について、加害者側に責任保険などによる損害賠償能力を - 22 -つけさせることは不可能であり、②犯罪被害者となり得る者から一定の掛金を徴収してこれを財源とする保険的な社会保障としての制度の創設も現実的でないことから、国民の全体が応分に負担している税金を財源とした制度が適当であると考えられたものである。 (ウ) このように、犯罪被害者給付金は、損害の補填自体を主たる目的とするものではなく、税金を財源として、社会連帯共助の精神に基づき、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することを主たる目的とする一種の見舞金的な性格を有するものと解するのが相当である。犯罪被害者又はその遺族が、発生した損害額にかかわらず、その一部でも損害の補填を受けた場合には、その価額の限度において、犯罪被害者等給付金を支給しないこととされているが(犯給法8条1項参照)、この趣旨は、一部でも損害の補填を受ければ、損害額全体の補填を受けていなくても、その限度において見舞金的な性格を有する給付金を支給する必要性がなくなるためであると解される。 (エ) これに対し、控訴人は、犯罪被害者給付金制度が一種の見舞金的性格を有していたのは制度開始当初のことであり、その後の複数回にわたる法改正により、当該給付金の制度は、犯罪被害者等の権利利益を擁護する制度と位置づけられるべ 、犯罪被害者給付金制度が一種の見舞金的性格を有していたのは制度開始当初のことであり、その後の複数回にわたる法改正により、当該給付金の制度は、犯罪被害者等の権利利益を擁護する制度と位置づけられるべきであると主張する。 この点について、平成20年法律第15号による改正で、犯給法の目的の1つとして、犯罪被害等を受けた者の権利利益の保護が図られる社会の実現が明記された(犯給法1条)。また、平成17年4月から犯罪被害者等基本法が施行され、同法は、国に対して、犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を定め(同法4条)、犯罪被害者等が受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、犯罪被害者等に対する給付金の支給に係る制度の充実等必要な施策を講ずるものとすると定めているし(同法13条)、また、内閣府に設 - 23 -置された犯罪被害者等施策推進会議の作成した案に基づいて、第一次犯罪被害者等基本計画(平成17年12月閣議決定)が策定され、その計画の中で犯罪被害者等の経済的困難を打開するための経済的支援の重要性が指摘され(甲169)、第一次基本計画の期間中である平成20年に、犯罪被害者等給付金について、重度後遺障害者に対する障害者給付金及び生計維持関係のある遺族に対する遺族給付金について、自賠責保険制度を踏まえた給付額の引上げがされた(甲209、乙28、29)。 このように、犯給法の目的として犯罪被害等を受けた者の権利利益の保護が図られる社会の実現が明記され、自賠責保険制度を踏まえた給付金の引上げがされたことからすれば、犯罪被害者給付金制度において、不法行為制度による損害賠償の補完としての側面がより充実されたといえるし、その意味で犯罪被害者等の権利利益をより擁護する方向への改正がされたといえる。しかしながら、こうした改正経 付金制度において、不法行為制度による損害賠償の補完としての側面がより充実されたといえるし、その意味で犯罪被害者等の権利利益をより擁護する方向への改正がされたといえる。しかしながら、こうした改正経過を踏まえても、犯罪被害者給付金は、犯罪被害者等が受けた損害の完全な補填を目的とするものではないから、社会連帯共助の精神に基づき、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することを主たる目的とする一種の見舞金的な性格を有するものという制度開始当初からの給付金制度の趣旨自体が変更されたと捉えることはできない。 イ 犯罪被害者給付金制度につき、憲法14条1項適合性の判断の在り方について(ア) 以上のとおり、犯罪被害者給付金制度は、損害の補填自体を主たる目的とするものではなく、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することを主たる目的とする一種の見舞金的な性格を有するものであるから、犯罪被害者給付金の受給権者の範囲や給付要件等については、その制度趣旨から直ちに導かれるものではなく、国民感情を含めた社 - 24 -会状況等、国の財政事情等を踏まえて、立法府に合理的な範囲の裁量判断が認められると解される。 (イ) そして、犯罪被害者給付金の受給権者の範囲等に関する本件規定が、憲法14条1項に違反するか否かについては、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものであるかどうかの観点から検討し、立法目的の合理性、目的達成のための手段・方法の合理性等を具体的に検討したうえ、立法府に与えられた裁量権を考慮しても、同性間の共同生活関係にある者と異性間の共同生活関係にある者とで遺族給付金の支給につき別異の取扱いがされていることについて、本件規定の立法目的に合理的な根拠がなく、または、その手段・方法の具体的内容が立法目的との関連において不合理なものとい 活関係にある者とで遺族給付金の支給につき別異の取扱いがされていることについて、本件規定の立法目的に合理的な根拠がなく、または、その手段・方法の具体的内容が立法目的との関連において不合理なものといわざるを得ないような場合には、憲法14条1項に違反すると解されることになる。 ウ 本件規定が憲法14条1項に違反するか否か(ア) 遺族給付金は、犯罪被害が死亡である場合、第一順位遺族に対して支給されるものであり(犯給法4条1号)、犯給法は、遺族給付金の支給を受けることができる遺族の範囲を定め(同法5条1項、2項)、その範囲内の遺族の誰が第一順位遺族となるかを定めている(同条3項、4項)。 そして、犯給法5条は、遺族給付金の支給を受けるべき遺族の順位について、犯罪被害者の配偶者を第一順位とし、この配偶者に「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」を含むとしているところ、この定めは、既に述べたとおり、憲法24条を含む現行の法体系が、異性間の関係を前提とした法律婚主義を採用していることに鑑み、第一次的には死亡した犯罪被害者と法律上の婚姻関係にあった配偶者を遺族給付金の受給権者としつつ、死亡した犯罪被害者との間において法律上の婚姻関係と同視し得る関係を有しな - 25 -がら婚姻の届出がない者も受給権者とするものであり、このような定めは、社会連帯共助の精神に基づいて、遺族等に一定の給付金を支給し、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保するという犯給法の立法目的に照らして合理性を有するものである。 (イ) ところで、犯罪被害者給付金の趣旨が、損害の補填自体を主たる目的とするものではなく、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することを主たる目的とする一種の見舞金的な性格を有するものであることに鑑みると、犯罪被害 被害者給付金の趣旨が、損害の補填自体を主たる目的とするものではなく、国の法制度全般に対する国民の信頼を確保することを主たる目的とする一種の見舞金的な性格を有するものであることに鑑みると、犯罪被害者遺族として取り扱われることの権利利益の重大性が強いとまではいえない。そうすると、どのような共同生活関係にある者に給付金を支給するかという定め方については、立法府にある程度広い裁量が認められるというべきである。 そして、憲法24条は、婚姻が異性間の関係であることを前提としているので、同性パートナーについて、異性パートナー(内縁)と異なる扱いをすることも、立法目的によって許容されるといえる。 (ウ) もっとも、憲法24条は、憲法制定当時に同性婚が想定されていなかったため、このような定めとなっており、同性婚を禁止した趣旨とは解されない。また、性的指向(性愛を抱く相手が異性か同性か)、性自認(自分の性別についてのアイデンティティ)は、生物学的基盤によるものであると解されており、自らの意思や努力によって変えることのできない属性であるというべきである。また、同居している相手方が殺害された場合の精神的苦痛について、少なくとも、同性パートナーであるか異性パートナーであるかという事柄が精神的苦痛の大小を左右する要素となるとは認められない。このように自らの意思や努力によって変えることのできない生物学的基盤による属性の違いによって、結果的に別異の取扱いが生ずることについては、慎重であるべきといえる。 - 26 -したがって、同性パートナーについて、婚姻自体は認めなくても、法的に様々な保護をする立法がされ、同性パートナーについて、異性パートナーないし異性婚姻関係と同視することが要請されるとの社会的な意識が醸成されていた場合には、犯罪被害者給付金の給 は認めなくても、法的に様々な保護をする立法がされ、同性パートナーについて、異性パートナーないし異性婚姻関係と同視することが要請されるとの社会的な意識が醸成されていた場合には、犯罪被害者給付金の給付において、同性パートナーについて異なる扱いをすることが、立法府の合理的な範囲の裁量権を逸脱したと評価される可能性がある。 しかしながら、前記1判断のとおり(原判決引用部分を含む。)、同性パートナーの認証制度や何らかの平等取扱制度を設ける地方自治体が増加し、民間企業において扶養手当等において同性パートナーを配偶者と同様に扱う例が増加しており、国民の意識調査でも同性婚を許容する人の方が、これを否定する人より多数となっている実情等が認められるものの、国の立法によって同性パートナーについて何らかの法的な保護制度が制定されたわけではなく、同性パートナーについて、異性パートナーないし異性婚姻関係と同視することが要請されるとの社会的な意識が醸成されていたとは認め難い状況にある。なお、同性パートナーの地位が、不法行為上の法律上保護される利益に該当するとしても、本件規定の合憲性の判断に影響するものではない。 (エ) これに対し、控訴人は、犯罪被害者遺族として取り扱われることの権利利益の重大性と性的指向という事柄の性質上、立法府の裁量は厳しく統制されるものであって、犯罪被害者給付金について、同性間の共同生活関係を、異性間の共同生活関係と異なる取り扱いをすることに合理性は認められないと主張する。 しかし、犯罪被害者給付金の趣旨が、犯罪被害者の権利保護を主たる目的としているとはいえないことは、既に判断したとおりである。 また、控訴人は、立法府の裁量の範囲が厳しく限定されるべき根拠として、国籍取得の要件、非嫡出子の相続分差別規定及び再婚禁止期間 - 27 としているとはいえないことは、既に判断したとおりである。 また、控訴人は、立法府の裁量の範囲が厳しく限定されるべき根拠として、国籍取得の要件、非嫡出子の相続分差別規定及び再婚禁止期間 - 27 -規定に関する最高裁大法廷判決も指摘している。しかし、控訴人が指摘する判例の事案は、日本国籍を取得できるかどうか、民法上の相続分及び再婚禁止期間に関するもので、いずれも重要な権利又は婚姻に対する直接的な制約を課すものであって、犯罪被害者給付金を受給できるかどうかの問題とは、事柄の性質を異にするものである。 (オ) そうすると、本件規定により、同性間の関係であるか異性間の関係であるかによって、犯罪被害者給付金の支給につき、結果的に別異の取扱いが生じていることについて、それをもって、本件規定の立法目的に合理的な根拠がなく、または、その手段・方法の具体的内容が立法目的との関連において不合理なものと認めることはできず、憲法14条1項に違反すると認めることはできない。 ⑵ 憲法13条、25条2項の趣旨違反の主張について控訴人は、本件処分が憲法13条及び25条2項に違反する旨主張する。 しかしながら、個人の尊重と生命、自由、幸福追求権の尊重に係る憲法13条は、自己決定権を定めたものとして、性的指向に基づく同性パートナーについて尊重されるべきと解する余地はあるものの、同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者が、遺族給付金の支給を受ける権利や法的地位を具体的に基礎付けるものではない。 また、犯給法の遺族給付金が社会福祉的な要素を有すること自体は否定できないとしても、既に述べたとおり、犯罪被害者給付金の趣旨は、一種の見舞金的な性格を有するものであって、憲法25条から導かれる社会権に含まれるものとは認められないのであり、犯給法の遺族給付金を支給する いとしても、既に述べたとおり、犯罪被害者給付金の趣旨は、一種の見舞金的な性格を有するものであって、憲法25条から導かれる社会権に含まれるものとは認められないのであり、犯給法の遺族給付金を支給するか否かによって憲法25条2項に基づく保障が後退すると評価することはできない。 3 まとめ以上によれば、争点2について判断するまでもなく、同性の犯罪被害者と - 28 -共同生活関係にあった者につき「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」(犯給法5条1項1号)には該当しないとして本件申請を認めなかった本件処分に違法はなく、本件処分が憲法14条1項に違反するとか、憲法13条、25条2項の趣旨に違反するとも認められないから、本件処分の取消しを求める控訴人の請求は理由がないというべきである。 第4 結論よって、控訴人の当審における主張を検討しても、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官 永野圧彦 裁判官 前田郁勝 裁判官 真田尚美 - 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