平成14年11月29日判決言渡東京地方裁判所平成7年行ウ第18号分所得税更正処分び過少申告加算税の賦課決定処分並びに各有価証券取引税納税告知処分取消請求事件 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が原告に対し,平成2年3月12日付けでした,原告の昭和61年分所得税に係る更正処分のうち総所得金額1億3116万0097円,納付すべき税額マイナス1118万3502円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに各有価証券取引税納税告知処分(麻資特第570号及び同第571号)をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,株式会社A1の株式70万株を,いったん自ら買い受けたうえ,多数の者に売却したとして,被告が,原告の昭和61年分の所得税についての更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに有価証券取引税納税告知処分をしたのに対し,原告が,原告自身は上記株式の売買の当事者ではなく,原告が上記株式を売却したことを前提とした上記各処分は違法であると主張して,これら各処分の取消しを求めたものである。 ちなみに,原告が,株式会社A1の株式70万株を,いったん自ら買い受けたうえ,多数の者に売却した場合には,実際の売却価格が購入価格と同一であったとしても,①雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は,当該有価証券を最初に取得した時から当該譲渡の時までの期間を基礎として,当該最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき所得税法施行令105条1項1号に規定する総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額により計算した金額とすることとなる(所得税法48条3項,同法施行令118条1項,)ため,既に単価90円で455万800 05条1項1号に規定する総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額により計算した金額とすることとなる(所得税法48条3項,同法施行令118条1項,)ため,既に単価90円で455万8000株のA1株を取得していた原告について上記の方法で計算すると,取得価額は,実際よりも相当低額な価額となる結果,上記A1株70万株の譲渡益として15億0977万4000円の雑所得があったものとして計算されることとなり,さらに,②株式売買の回数も非課税の限度を超えることとなる結果,上記A1株70万株以外の有価証券の譲渡による譲渡益19億1028万3850円が雑所得として課税の対象となるものである。 1 法令の定め(1) 所得税法の定めア所得税法(昭和40年法律第33号。ただし,昭和61年法律第66号及び同第93号による改正前のもの。以下同じ。)9条1項11号は,有価証券の譲渡による所得のうち,同号イないしトに規定する所得以外のものについては,所得税を課さない旨規定しているところ,同号イは,「継続して有価証券を売買することによる所得として政令で定めるもの」を,同号の規定する非課税所得から除外している。 そして,所得税法施行令(昭和40年政令第96号。ただし,昭和62年政令第54号による改正前のもの。以下同じ。)26条1項は,所得税法9条1項11号イに規定する政令で定める所得について,有価証券の売買を行う者の最近における有価証券の売買の回数,数量又は金額,その売買についての取引の種類及び資金の調達方法,その売買のための施設その他の状況に照らし,営利を目的とした継続的行為と認められる取引から生じた所得とする旨規定し,同法施行令26条2項は,同条1項の場合において,同項に規定する者のその年中における株式又は出資の売買が,①その売買の回数が50回以上 とした継続的行為と認められる取引から生じた所得とする旨規定し,同法施行令26条2項は,同条1項の場合において,同項に規定する者のその年中における株式又は出資の売買が,①その売買の回数が50回以上であること,②その売買をした株数又は口数の合計が20万以上であることの要件に該当するときは,その他の同項に規定する取引に関する状況がどうであるかを問わず,その者の有価証券の売買による所得は,同項の規定に該当する所得とするものと定めている。 イなお,所得税法48条3項は,居住者が2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券につき同法37条1項(必要経費)の規定によりその者の雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額又は同法38条1項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定によりその者の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は,政令で定めるところにより,それぞれの取得に要した金額を基礎として,同法48条1項の規定に準じて評価した金額,すなわち,その者が有価証券について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかった場合又は選定した評価の方法により評価しなかった場合には,評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額)とするものと定めている。 そして,所得税法施行令118条1項は,所得税法48条3項に規定する金額について,当該有価証券を最初に取得した時から当該譲渡の時までの期間を基礎として,当該最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき同法施行令105条1項1号に規定する総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額により計算した金額とするものと定めている。 (2) 有価証券取引税法の定め有価証券取引税法(昭和28年法律第102号。ただし,昭和62年法律第38号 に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額により計算した金額とするものと定めている。 (2) 有価証券取引税法の定め有価証券取引税法(昭和28年法律第102号。ただし,昭和62年法律第38号及び同第96号による改正前のもの。以下同じ。)10条は,証券会社を譲渡者とする売買による譲渡(第1種)以外の譲渡(第2種)のうち,同法2条1項4号から6号までに掲げる株券等の有価証券の譲渡における有価証券取引税につき,譲渡価格の万分の55の税率により課する旨規定している。 2 前提となる事実(各項末尾に証拠等を掲げた事実は,当該証拠等により認定した事実であり,証拠等を掲げていない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 原告及び関連会社についてア原告は,株式会社B1(以下「B1」という。)の設立者であり,昭和61年当時,B1の代表取締役社長及び株式会社A1(以下「A1」という。)の代表取締役会長を務めていた者である。 イ B1は,昭和35年に設立された,広告,各種情報誌の出版,回線リセール,コンピューターの時間貸し等の事業を営む株式会社であり,B1及び関連企業から構成される,いわゆるB1グループの中核企業である。 (B1の設立時期につき乙1,同45)ウ A1は,昭和44年6月に設立された,不動産の売買及び賃貸等の事業を営む株式会社である。 エ株式会社C1(以下「C1」という。)は,昭和59年3月に設立された,金銭貸付等の事業を営む株式会社である。 (2) 本件A1株の譲渡に至る経緯ア店頭登録手続の概要とその基準a 株式の店頭登録は,社団法人D1(以下「D1」という。)に店頭売買銘柄として登録することにより行われる,株式公開の方法の一つである。 D1は,店頭登録を承認するに当たり,公正慣習規則第2号「店頭売買銘柄の登録及び値段の発表に 1(以下「D1」という。)に店頭売買銘柄として登録することにより行われる,株式公開の方法の一つである。 D1は,店頭登録を承認するに当たり,公正慣習規則第2号「店頭売買銘柄の登録及び値段の発表に関する規則」(以下「公正慣習規則第2号」という。)により,当該株式の発行会社における発行済株式数,株主数並びに直前事業年度における1株当たりの利益額及び純資産の額などが一定額以上であること,株式の譲渡につき制限を行っていないこと,単位株制度を採用していること,株券がD1の定める様式に適合していること等の基準を満たすことを要求し,登録の適否につき厳格な基準を設けて審査を行っている。 (乙38)b 店頭登録手続は,D1の協会員である証券会社2社以上が,店頭登録を希望する株式の発行会社について,上記基準の適合性を審査したうえ,連名でD1に対して店頭登録銘柄登録申請書を提出して店頭登録を申請し,当該株式が登録基準に適合し,かつ上記申請書の記載内容をD1が適正と認めたとき,その銘柄を登録原簿に登録することとされている。 (乙38)cD1による審査は,D1に設置されている業務委員会で行われ,同委員会が審査の結果,申請に係る銘柄が店頭登録銘柄として適当であると認めると,理事会に付議し,その決議により登録が承認されるところ,D1業務委員会内規「登録申請前の第三者割当増資等の取扱いについて」(以下「本件内規」という。)によれば,発行会社の特別利害関係者等が,登録申請日の直前決算期日の1年前の日以降に,当該会社の株集め又はこれに類する行為を行ったと認められるときは,登録申請を受理しないこととされている。本件内規に規定する「特別利害関係者等」とは,①当該会社の役員,その配偶者及び2親等内の血族並びに主要株主,②関係会社及びその役員,③申請協会員及びその役員をい 録申請を受理しないこととされている。本件内規に規定する「特別利害関係者等」とは,①当該会社の役員,その配偶者及び2親等内の血族並びに主要株主,②関係会社及びその役員,③申請協会員及びその役員をいうものとされている。 (乙38)d 店頭登録銘柄は,登録前はほとんど流通していないことから,その流通を図るため,公正慣習規則第2号9条により,店頭登録時に一定の株式数以上の株式を公開することとされている。公開の方法としては,売出しのほか,昭和58年10月19日付け同規則付則3項により,分売による方法が認められている。 (乙38)e 分売による株式公開では,創業者等が所有している既発行株式を店頭登録日に分売価格で分譲して株式を公開することになる。この分売価格は,公開株式の初値となるものであるが,その金額は,証券会社を通じて行う売り委託に対して,証券会社が受けた買い注文の結果による一種の入札の形で決定され,D1の指導により,類似会社の株価に一定の算式により比準して算出された最低分売価格と,その30パーセント増の最高分売価格の範囲内で決定される。 イ A1株の店頭登録に至る経緯a 原告は,昭和59年ころから,東京証券取引所第2部への上場によるA1の株式(以下「A1株」という。)の株式公開を企図し,そのための準備を行った。 bA1は,昭和60年2月に,A1株804万株の第三者割当増資を1株2500円で行い,金融機関など26社がこれを引き受けた。 また,A1は,同年4月にもA1株701万7760株の第三者割当増資を1株2500円で行い,同社の取引先など37社1個人がこれを引き受けた。その際,E1株式会社(以下「E1」という。)が20万株,株式会社F1(以下「F1」という。)が20万株,株式会社H1(以下「H1」という。)が8万株,G1株式会社(以下「G 個人がこれを引き受けた。その際,E1株式会社(以下「E1」という。)が20万株,株式会社F1(以下「F1」という。)が20万株,株式会社H1(以下「H1」という。)が8万株,G1株式会社(以下「G1」という。)が12万株,I1株式会社(以下「I1」という。)が8万株をそれぞれ引き受けた。 その後,I1は,昭和61年3月に,他から譲り受けたA1株8万株を合わせたA1株16万株を,株式会社J1(以下「J1」という。)に譲渡した。 cA1は,昭和60年夏ころ,社内体制の整備の遅れや,同社の業績不振から,東京証券取引所第2部への上場による株式公開をとりあえず断念して,D1に店頭登録する方針とした。 そして,A1は,昭和61年2月の取締役会において,店頭登録の予定日を同年10月下旬とすることとし,同年5月の取締役会において,店頭登録の主幹事証券会社をK1株式会社(以下「K1」という。)とすることを決定した。そして,A1は,株式公開の方法として,原告が所有するA1株を分売すること,分売株式数を280万株とすることとしたうえで,同年8月初旬ころには,K1に対し,A1株の店頭登録申請を依頼した。 d その後,A1は,昭和61年10月13日の取締役会において,K1の担当者が改めて試算した結果に基づき,最低分売価格を4060円,最高分売価格を5270円と最終決定し,K1等の幹事証券会社は,同月14日,分売価格を上記各価格とすること,分売予定日を同月30日とすること等を内容とする株式分売申告書をD1に提出し,その承認を得た。 eA1株は,昭和61年10月30日に店頭登録されて分売が実施されたが,分売株式数280万株を大幅に上回る数の買付申込みが行われたため,分売株式のすべてについて最高分売価格の1株5270円で約定が成立した。その後,A1株は,この分売 に店頭登録されて分売が実施されたが,分売株式数280万株を大幅に上回る数の買付申込みが行われたため,分売株式のすべてについて最高分売価格の1株5270円で約定が成立した。その後,A1株は,この分売価格を上回る価格で推移していった。 ウ本件A1株の譲渡に関する状況aE1,F1,H1,G1及びJ1の5社(以下「放出5社」という。)は,昭和61年8月中旬ないし同年9月中旬ころ,それぞれ原告の依頼を受けて,前記イbの第三者割当により引き受けるなどして取得したA1株を,1株当たり3000円で売却することとし,E1及びF1が各20万株,H1が8万株,G1が6万株,J1が16万株,合計70万株のA1株を売却した(以下,放出5社が売却した上記A1株を「本件A1株」という。)。 b 他方,本件A1株は,原告又はその依頼を受けた者により選定された,A1の役員及び社外の者合計78名(以下,これらの譲受人を「本件譲受人」という。)が,1株当たり3000円で購入した。本件譲受人の氏名,購入株式数及び代金額は,別紙「本件A1株の譲渡の状況」のとおりである。 c 放出5社に対する本件A1株の代金は,C1が昭和61年9月25日に,本件譲受人のうちL1,M1及びN1の3名(以下「L1ら3名」という。)が購入した10万株の代金に相当する3億円をF1に送金し,O1がF1に5000株の代金に相当する1500万円を直接送金したほかは,C1が同月30日に放出5社に一括送金の方法により支払った。 (L1ら3名及びO1の送金につき甲39の1ないし4)d なお,本件A1株に関する上記取引については,F1とL1ら3名との間においては昭和61年9月25日付けで,また,放出5社とその他の本件譲受人75名との間においては同月30日付けで,それぞれ放出5社各社を譲渡人,本件譲受人を譲受人とし ついては,F1とL1ら3名との間においては昭和61年9月25日付けで,また,放出5社とその他の本件譲受人75名との間においては同月30日付けで,それぞれ放出5社各社を譲渡人,本件譲受人を譲受人として,本件A1株に関する株式売買約定書が作成されている(以下,これらの株式売買約定書を,単に「株式売買約定書」という。)。 (以下,本件A1株に関する上記aないしdの一連の取引を「本件取引」という。)エその他その後,A1は,平成元年9月28日付けで,有価証券届出書を大蔵大臣(当時)に提出した(以下「本件有価証券届出書」という。)。本件有価証券届出書には,原告が「記名式額面普通株式(券面額50円)」である本件A1株70万株について,昭和61年8月31日ないし同年9月30日の期間に,1株3000円で売出しを行った旨記載されている。 (3) 本件各処分に関する経緯ア原告は,昭和62年3月15日,昭和61年分の所得税について,所得金額を1億3116万0097円,申告納税額をマイナス1118万3502円とする確定申告を行い,その後同額の還付を受けた。 イこれに対し,被告は,平成2年3月12日,原告に対し,昭和61年分の所得税について,所得金額を32億1052万7402円,確定納税額を21億3983万4700円,差引納付すべき税額を21億5101万8200円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び2億1140万4000円の過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)を行い,同日,その旨を原告に通知した。 また,被告は,同日,原告に対し,①原告が,昭和61年9月25日,L1ら3名に対し,原告所有のA1株合計10万株を1株3000円,譲渡金額合計3億円にて譲渡したとして,有価証券取引税額を165万円とする有価証券取引税納税 告に対し,①原告が,昭和61年9月25日,L1ら3名に対し,原告所有のA1株合計10万株を1株3000円,譲渡金額合計3億円にて譲渡したとして,有価証券取引税額を165万円とする有価証券取引税納税告知処分(以下「本件第1納税告知処分」という。)を,②原告が,昭和61年9月30日,その他の本件譲受人合計75名に対し,原告所有のA1株合計60万株を1株3000円,譲渡金額合計18億円にて譲渡したとして,有価証券取引税額を990万円とする有価証券取引税納税告知処分(以下「本件第2納税告知処分」という。)を,それぞれ行い,平成2年3月12日,その旨原告に通知した。 (以下,本件更正処分,本件賦課決定処分並びに本件第1及び第2納税告知処分を併せて「本件各処分」という。)ウ原告は,平成2年4月16日,東京国税局長に対し,本件各処分につき異議申立てをしたが,原告の上記異議申立ての日の翌日から起算して3か月を経過してもこれに対する決定がなかったことから,原告は,平成4年10月26日,国税不服審判所長に対し,上記異議申立てに対する決定を経ないで,本件各処分に対する審査請求をした。 しかしながら,国税不服審判所長は,原告の上記審査請求の日の翌日から起算して3か月を経過してもこれに対する裁決をしないことから,原告は,平成7年1月18日,上記審査請求に対する裁決を経ずに,本件訴えを提起した。 なお,本件更正処分,本件賦課決定処分,本件第1及び第2納税告知処分並びにこれらに対する不服申立て等の経緯は,別表1の1ないし1の3記載のとおりである。 3 本件各処分の根拠(被告の主張)(1) 本件更正処分について原告の昭和61年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額は,次のとおりである。 ア総所得金額32億9395万6242 被告の主張)(1) 本件更正処分について原告の昭和61年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額は,次のとおりである。 ア総所得金額32億9395万6242円上記金額は,次のaないしeに掲げる不動産所得,利子所得,配当所得,給与所得及び雑所得の金額の合計額である。 a 不動産所得の金額(損失金額)マイナス1億4901万9049円上記金額は,原告が昭和62年3月16日に提出した原告の昭和61年分の所得税の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)に記載された不動産所得の金額(損失金額)である。 b 利子所得の金額121万9200円上記金額は,本件確定申告書に記載された利子所得の金額である。 c 配当所得の金額1億6400万1701円上記金額は,本件確定申告書に記載された配当所得に係る収入金額1億8705万4834円に,株式会社P1銀行(以下「P1銀行」という。)ほか16銘柄の配当所得に係る収入金額について申告漏れ等のあった金額の合計額128万2859円(別表2)を加算し,負債の利子の額(昭和62年法律第96号による改正前の所得税法24条2項)2433万5992円(別表5のE欄)を差し引いた金額である。 d 給与所得の金額9043万6210円上記金額は,本件確定申告書に記載された給与所得の金額である。 e 雑所得の金額31億8731万8180円上記金額は,本件確定申告書に記載された雑所得の金額134万6443円に,原告が雑所得として申告していなかった有価証券の譲渡による所得金額31億8597万1737円(別表3)を加算した金額である。 なお,原告の昭和61年中の株式売買の回数は の金額134万6443円に,原告が雑所得として申告していなかった有価証券の譲渡による所得金額31億8597万1737円(別表3)を加算した金額である。 なお,原告の昭和61年中の株式売買の回数は132回であり,その売買株数は合計5588万7500株である(別表3)であるから,原告の同年中の有価証券の譲渡による雑所得は,課税の対象となる(昭和63年法律第109号による改正前の所得税法9条1項11号イ,昭和63年政令第362号による改正前の同法施行令26条2項)。 原告が雑所得として申告していなかった有価証券の譲渡による金額は,①本件A1株70万株の譲渡による譲渡益(譲渡金額から譲渡原価を差し引いた金額)と,②本件A1株の譲渡以外の有価証券譲渡による譲渡益(譲渡金額から譲渡原価及び特別徴収された有価証券取引税額を差し引いた金額)の合計額から,③その他の必要経費の額を差し引いた金額であり,それぞれの内訳は次のとおりである。 ① 本件A1株の譲渡による譲渡益17億9452万7000円上記金額は,本件A1株の譲渡による譲渡金額から譲渡原価を差し引いた金額である(別表3の③,別表4)。 原告は,本件A1株70万株のうち,昭和61年9月25日に10万株を,同月30日に60万株をそれぞれ譲渡していることから,その譲渡益は,次の(a)及び(b)の合計額となる。 (a) 昭和61年9月25日のA1株譲渡による譲渡益2億8475万3000円上記金額は,原告が同日にA1株10万株をL1ら3名に対して譲渡したことによる譲渡益であり,次のiの譲渡金額からⅱの譲渡原価を差し引いた金額である。 i 譲渡金額3億円上記金額は,原告が昭和61年9月25日に譲渡したA1株の譲渡単価3000円に,譲渡株数10万株を乗じ ⅱの譲渡原価を差し引いた金額である。 i 譲渡金額3億円上記金額は,原告が昭和61年9月25日に譲渡したA1株の譲渡単価3000円に,譲渡株数10万株を乗じて算出した金額である。 ⅱ 譲渡原価1524万7000円上記金額は,原告が昭和61年9月25日に譲渡したA1株10万株について,所得税法48条3項及び同法施行令118条の規定を適用して,総平均法に準ずる方法により,原告が既に単価90円で取得していた455万8000株のA1株を含めて算定した1株当たりの譲渡原価152・47円に,譲渡株数10万株を乗じて算出した金額である。 (b) 昭和61年9月30日のA1株譲渡による譲渡益15億0977万4000円上記金額は,原告が同日にA1株60万株を本件譲受人のうちL1ら3名を除く75名に対して譲渡したことによる譲渡益であり,次のⅰの譲渡金額からⅱの譲渡原価を差し引いた金額である。 i 譲渡金額18億円上記金額は,原告が昭和61年9月30日に譲渡したA1株の譲渡単価3000円に,譲渡株数60万株を乗じて算出した金額である。 ⅱ 譲渡原価2億9022万6000円上記金額は,原告が昭和61年9月30日に譲渡したA1株について,所得税法48条3項及び同法施行令118条の規定を適用して,前記(a)ⅱと同様の方法により求めた1株当たりの譲渡原価483・71円に,譲渡株数60万株を乗じて算出した金額である。 ② 本件A1株の譲渡以外の有価証券の譲渡による譲渡益19億7028万3850円上記金額は,本件A1株の譲渡以外の有価証券の譲渡による譲渡金額から,譲渡原価及び特別徴収さ の有価証券の譲渡による譲渡益19億7028万3850円上記金額は,本件A1株の譲渡以外の有価証券の譲渡による譲渡金額から,譲渡原価及び特別徴収された有価証券取引税額を差し引いた金額である(別表3の①,②及び⑤)。 ③ その他の必要経費5億7883万9113円上記金額は,有価証券の譲渡による雑所得の金額の計算上,譲渡原価及び特別徴収された有価証券取引税以外の必要経費として差し引かれる金額である(別表3の⑦ないし⑬)。 イ納付すべき税額21億9820万8700円上記金額は,次のaの原告のあん分税額からbの源泉徴収税額を差し引いた金額(ただし,国税通則法119条1項の規定によって100円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。 a 原告のあん分税額22億8359万1469円上記金額は,前記アの総所得金額32億9395万6242円を基礎として,昭和63年法律第109号による改正前の所得税法96条ないし101条の規定(世帯員が資産所得を有する場合の税額の計算の特例)を適用して算出した金額である。原告の妻及び2名の子が,いずれも原告と生計を一にし,合算対象世帯員に該当するため,上記規定の適用を受けることになる。その計算過程は,別表6のとおりである。 b 源泉徴収税額8538万2710円上記金額は,本件確定申告書に記載された源泉徴収税額8512万6139円に,申告漏れ等のあったP1銀行ほか16銘柄についての配当所得に係る源泉徴収税額25万6571円(別表2)を加算した金額である。 以上のとおり,原告の昭和61年分の所得税に係る納付すべき税額は,21億9820万8700円であり,本件 6銘柄についての配当所得に係る源泉徴収税額25万6571円(別表2)を加算した金額である。 以上のとおり,原告の昭和61年分の所得税に係る納付すべき税額は,21億9820万8700円であり,本件更正処分に係る納付すべき税額21億3983万4700円を上回るから,本件更正処分は適法である。 (2) 本件賦課決定処分について本件更正処分は,上記のとおり,適法であるところ,昭和62年法律第96号による改正前の国税通則法65条1項に基づき,本件更正処分により新たに納付すべき21億5101万8200円(本件更正処分に係る納付すべき税額21億3983万4700円と本件確定申告書に記載された還付金額1118万3502円の合計額について,国税通則法119条1項により100円未満の端数を切り捨てた後の金額)のうち,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後の21億5101万円に,100分の5の割合を乗じて算出した1億0755万0500円と,同法65条2項に基づき,上記の新たに納付すべき税額のうち期限内申告税額に相当する金額7394万2637円(本件確定申告書に記載された源泉徴収税額8512万6139円から同記載の還付金額1118万3502円を差し引いた金額(同法65条3項2号))を超える部分に相当する金額20億7707万5565円のうち,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後の20億7707万円に100分の5の割合を乗じて算出した1億0385万3500円との合計額2億1140万4000円が,原告の昭和61年分の所得税に係る過少申告加算税額となるから,これと同額の過少申告加算税を課した本件賦課決定処分は適法である。 (3) 本件第1及び第2納税告知処分について原告は,昭和61年9月25日,L1ら3名に対してA1株合計 少申告加算税額となるから,これと同額の過少申告加算税を課した本件賦課決定処分は適法である。 (3) 本件第1及び第2納税告知処分について原告は,昭和61年9月25日,L1ら3名に対してA1株合計10万株を1株3000円で譲渡したところ,これに昭和62年法律第96号による改正前の有価証券取引税法10条第2種甲を適用して算出した有価証券取引税額は,別表7の1のAのとおり,165万円となるから,これと同額の有価証券取引税の納付の告知をした本件第1納付告知処分は,適法である。 また,原告は,同年9月30日,本件譲受人のうちL1ら3名を除く75名に対してA1株合計60万株を1株3000円で譲渡したところ,これに有価証券取引税法10条第2種甲を適用して算出した有価証券取引税額は,別表7の1及び2のBのとおり,990万円となるから,これと同額の有価証券取引税の納付の告知をした本件第2納付告知処分は,適法である。 4 当事者の主張(原告の主張)本件においては,原告が放出5社から本件A1株をいったん買い受けてこれを売却したか否か,すなわち,原告が本件A1株の売買の当事者であったか否かが争われているところ,原告が売買の当事者でなかったことは,以下のとおり明らかであるから,原告が売買の当事者であることを前提として行われた本件各処分は,いずれも違法である。 (1) 本件取引に関する事実関係ア本件取引以前の株式売買本件A1株70万株の売買以前にも,昭和59年12月,昭和60年5月ないし6月ころ及び昭和61年7月ないし8月ころの合計3回にわたり,原告の発想によって,A1株の売買が行われているところ,これら3回の株式売買は,いずれも譲渡人と譲受人との間の相対取引であって,原告がいったんA1株を買い受けてこれを転売したものではなかった。 a 昭和59年 よって,A1株の売買が行われているところ,これら3回の株式売買は,いずれも譲渡人と譲受人との間の相対取引であって,原告がいったんA1株を買い受けてこれを転売したものではなかった。 a 昭和59年12月のA1株売買B1は,昭和59年12月,A1株の公開に向けた安定株主の増加と,B1の決算対策を目的として,同社の保有するA1株12万5600株を76名に対して譲渡した。 原告は,自ら譲受人のうち多数を選定し,自ら又は部下に指示してA1株取得の勧誘を行ったうえで,当時A1の財務部長であったQ1に,譲受人との間の売買手続の取りまとめを指示し,Q1は,株式売買約定書の作成,株券の交付等の手続に中心的役割を果たした。上記約定書におけるA1株の売買当事者は,譲渡人であるB1及び各譲受人とされた。 また,C1は,上記譲渡に際し,融資を希望する譲受人40名に対し,売買代金の融資を行い,当該代金を譲受人から受領した振込指定書に基づいて直接B1に送金してこれを支払った。株券については,Q1がB1からその全部をいったん受領し,融資を利用した分は担保分としてC1に預け,自己資金を利用した者には現物を引き渡した。 このA1株譲渡は,原告の発想によるものであり,譲受人の選定,勧誘にも原告が関与し,譲渡人と譲受人とは直接接点を有しなかったものの,当事者や関係者も,原告が売買の当事者であると認識していなかったことは明らかであり,売買契約がB1と各譲受人の間に締結され,代金の決済も両当事者間で直接行われていること等の客観的事情からも,原告が売買の当事者でなかったことは明らかである。 b 昭和60年5月ないし6月ころのA1株売買B1グループ各社では,原告の提唱する社員皆経営者主義により,各社の社員になるべく自社株を保有させる方針としていたところ,昭和60年4月ころ かである。 b 昭和60年5月ないし6月ころのA1株売買B1グループ各社では,原告の提唱する社員皆経営者主義により,各社の社員になるべく自社株を保有させる方針としていたところ,昭和60年4月ころ,A1の業務拡大に伴い,B1からA1に転籍する社員が増加したことから,同年5月ないし6月ころ,これらの転籍者にA1株を取得させる目的で,A1株の譲渡が行われた。 原告は,当時A1の大株主として,多数のA1株を所有していたが,原告が所有するA1株を上記転籍者に譲渡した場合,発行会社の特別利害関係者等による株集めに該当し,本件内規により,A1株の店頭登録申請が受理されなくなることから,A1の経営と直接関係を持たないB1の役員から上記転籍者に対してA1株を譲渡させることとし,B1の役員からその旨の承諾を得た。なお,B1からの転籍者は,従前在籍していたB1の株式(以下「B1株」という。)を保有していたので,実際の譲渡は,転籍者の保有するB1株と,B1の役員の保有するA1株を交換する方法で行われた。 この交換に際しても,Q1が原告の指示で所要の手続を行い,交換契約書における契約当事者も,B1の役員と各転籍者とされた。 上記A1株の譲渡も,前記aの譲渡と同様,原告の発想によるものであり,B1の役員に対するA1株譲渡の依頼及び譲受人の選定にも原告が関与しているものの,譲渡の目的及び客観的事実関係に照らせば,上記A1株の譲渡の当事者が,B1の役員と各転籍者であり,原告が譲渡の当事者でなかったことは明らかである。 c 昭和61年7月ないし8月ころのA1株売買原告は,A1への転籍者が増加し続け,中途採用者も相当数に上ったことから,これらの転籍者等にも社員皆経営者主義の発想によりA1株を取得させるため,昭和61年7月ころ,B1の役員であるR1,S1ら7名に対し ,A1への転籍者が増加し続け,中途採用者も相当数に上ったことから,これらの転籍者等にも社員皆経営者主義の発想によりA1株を取得させるため,昭和61年7月ころ,B1の役員であるR1,S1ら7名に対し,その保有するA1株合計13万株を上記転籍者等に譲渡するよう依頼し,その了承を得た。そして,原告は,譲受人の選定,具体的な売買手続等について,Q1の事実上の後任で,当時A1の経理財務担当取締役であったM1に依頼し,1株1300円という価格も,原告がM1と相談して決定した。 A1においては,A1株を取得させる場合,C1の融資を受けさせることが慣行とされており,今回も多数の譲受人が同社の融資を受けることが見込まれた。そこで,M1は,同社の代表取締役社長であったQ1に,同社からの融資を依頼した。 その後,M1は,部下のT1とともに,A1株を取得させる転籍者等の選定,取得の勧誘,株式売買約定書の作成等の具体的な手続を行い,今回も売買当事者が直接顔を合わせないまま,R1らB1の役員7名と,A1への転籍者等35名の間に,A1株の売買契約が成立した。 上記売買契約の約定書においても,譲渡人はB1の各役員,譲受人は各転籍者等とされた。また,多数の譲受人が,C1から売買代金の融資を受け,その融資金を直接譲渡人に振り込むよう同社に依頼し,同社が各融資金を直接譲渡人に支払う一方,自己資金を用いた譲受人は,それぞれ譲渡人に直接代金を支払った。株券は,T1がいったんB1の各役員から受け取り,融資を利用しない譲受人の分については各譲受人に引き渡し,それ以外については,すべて担保分としてC1に預け入れられた。 上記のA1株譲渡についても,譲渡人であるB1の役員,譲受人である各転籍者等はもとより,手続に携わった者も,原告が売買の当事者であるとは考えておらず,上記の客観 保分としてC1に預け入れられた。 上記のA1株譲渡についても,譲渡人であるB1の役員,譲受人である各転籍者等はもとより,手続に携わった者も,原告が売買の当事者であるとは考えておらず,上記の客観的な事実関係に照らしても,原告が上記のA1株譲渡の当事者であると認めることは不可能である。 以上のとおり,昭和61年7月ないし8月ころのA1株譲渡についても,原告が当事者でなかったことは明らかなところ,本件A1株70万株の譲渡も,原告が転籍者等に対するA1株の譲渡の過程で発想し,その過程をそのまま引き継いで同じ態様で行ったものであり,契約のために使用した株式売買約定書等の書類にしても,全く同一の書式を使用しているのである。 したがって,本件取引の前に行われた3回のA1株譲渡において,原告が当事者でなかったという事実は,原告が本件A1株の譲渡においても当事者でなかったことを,強く推認させるものである。 イ本件取引についてaA1の部次長以上の役職員に対するA1株の譲渡(a) 原告は,前記アcのA1株譲渡手続の過程で,A1の部次長以上の役職員にもA1株を取得させようと考えたが,そのためには,B1の役員の保有するA1株を調達しただけでは足りないため,他の調達元を検討した。そして,昭和60年4月の第三者割当における引受先のE1及びF1であれば,オーナーが原告と個人的に親交を有し,株式公開経験もあることから,A1株を役職員に公開前に取得させることに理解を示し,承諾が得られるのではないかと考えた。 そこで,原告は,昭和61年8月中旬ころ,E1の実質上の経営者であるU1に対し,同社が上記第三者割当により引き受けたA1株20万株を,また,F1の代表取締役であるV1に対し,同社が同様に引き受けたA1株20万株中10万株を,それぞれA1の役職員に譲渡するよ であるU1に対し,同社が上記第三者割当により引き受けたA1株20万株を,また,F1の代表取締役であるV1に対し,同社が同様に引き受けたA1株20万株中10万株を,それぞれA1の役職員に譲渡するよう依頼したところ,両名はこれを了承した。 そして,その後の手続については,転籍者に対するA1株の譲渡手続と同様,M1が引き受けることとなった。他方,上記の本件A1株を取得するA1の役職員の選定は,A1の専務取締役W1及びM1が協議して行い,原告も本件譲受人の選定について,これらの者から報告を受けていた。 (b) M1は,昭和61年8月27日,Q1とともに,U1からA1株の譲渡手続を任されていたX1株式会社(以下「X1」という。)の経営管理室長であるY1を訪問し,以後,E1からの本件A1株の譲渡手続は,Y1との間で行われることとなった。なお,M1は,Y1を訪問する前に,Q1と相談して,E1に対する代金の支払時期を,昭和61年9月30日と決定していたので,Y1に対しては,遅くとも同日までに手続を終了する旨約束した。 その後,M1は,T1とともに,A1の役職員に対するA1株取得の勧誘と,譲受人から株式売買約定書,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼依頼書に署名押印を受ける手続を行った。これらの手続は,従前の転籍者等に対する手続と同じ方法で行われた。 M1は,本件A1株20万株中2万株について譲受人の決定が遅れていたため,まず,譲受人が既に確定し,その署名押印を受けた18万株分に関する株式売買約定書をY1に届け,残り2万株については,その後Z1及びA2が譲受人となることが決定したことから,株式売買約定書に両名の署名押印を受けてY1に届け,これにE1の記名押印を受け,全20万株の株式売買約定書が作成された。 この間,Y1は,譲受人の氏名を早く連絡するよ となることが決定したことから,株式売買約定書に両名の署名押印を受けてY1に届け,これにE1の記名押印を受け,全20万株の株式売買約定書が作成された。 この間,Y1は,譲受人の氏名を早く連絡するようM1に再三催促する一方,E1の保有する株券が10万株単位の株券であり,小口の譲渡のために株式分割が必要であることから,同年9月26日,A1を訪問し,10万株券を1000株券100枚に分割する手続を行った。このことは,株券裏面の「株券発行の年月日」欄の記載からも裏付けられる。 上記20万株のA1株の代金は,C1が,同年9月30日,E1に一括して振込送金する方法により,同社に支払われた。この送金は,上記譲受人14名のうち,C1から融資を受けたA1の部次長以上の役職員であったB2ら12名(以下「B2ら12名」という。)については,当該融資の実行として,また,自己資金を用いた2名については,立替金の支払として行われたものであり,上記2名は,後日立替金をC1に支払った。 上記20万株のA1株の株券は,上記代金振込後,M1がE1から一括して受領し,C1の融資を利用して購入した分については,担保として同社に預けられ,自己資金による購入分については,便宜上同社が預かったうえで,当該譲受人に引き渡された。 (c) F1の保有する本件A1株10万株の譲渡手続は,原告の指示を受けたM1が,上記(b)の手続と並行して,株式会社C2(以下「C2」という。)の取締役経理部長であるD2との間で行った。 上記A1株については,L1ら3名が合計10万株を譲り受けることとなり,その割振りはM1がW1と協議して行った。L1ら3名は,株式売買約定書に署名押印するとともに,C1が準備した金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書にも署名押印した。上記約定書は,A1の大阪支社次長で 割振りはM1がW1と協議して行った。L1ら3名は,株式売買約定書に署名押印するとともに,C1が準備した金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書にも署名押印した。上記約定書は,A1の大阪支社次長であるE2がD2の下に持参し,譲渡人欄にF1の記名押印を受けて完成し,E2を経由してL1ら3名に届けられた。そして,C1は,昭和61年9月25日,上記金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書に基づき,F1に代金を振り込んだ。 上記A1株10万株の株券は,M1がF1からいったん受領して,上記金銭消費貸借契約書2条に基づき,融資の担保としてC1に引き渡され,同社に預けられた。L1ら3名は,自らF1宛ての株券の受領書に署名押印し,これが同社に送付された。 同社は,本件A1株がL1ら3名に譲渡されたことを前提に,有価証券取引税を納付し,会計処理を行った。 このように,上記約定書の譲受人欄にL1ら3名が自ら署名押印したことや,売買代金がL1ら3名からF1に直接送金されたことは,L1ら3名が本件A1株をF1から直接購入したことを端的に示している。 (d) M1,T1ら譲渡手続の担当者は,上記各譲渡手続に際し,E1及びF1が本件A1株を役職員らに譲渡するものと認識しており,原告が本件A1株の売買の当事者であると認識した関係者はいなかった。 (e) このような事情に加え,前記のとおり,上記各譲渡が転籍社員等に対するA1株譲渡の過程で発想され,譲渡手続もM1らによって全く同一の形態で行われ,使用された契約書類も同一であったこと等に照らせば,E1及びF1の保有していた本件A1株が,直接A1役職員らに対して譲渡されたものであり,原告が譲渡の当事者であると解する余地がないことは明らかである。 b 社外の者に対するA1株の譲渡について(a) 原告は,U1及びV1が意外に簡 1株が,直接A1役職員らに対して譲渡されたものであり,原告が譲渡の当事者であると解する余地がないことは明らかである。 b 社外の者に対するA1株の譲渡について(a) 原告は,U1及びV1が意外に簡単に本件A1株の譲渡を了解したことから,他の者にも依頼すれば社外の者にもA1株を取得させることができると考え,昭和60年4月の第三者割当の引受先であるH1及びG1の代表取締役であり,原告と親交のあったF2,及び,上記第三者割当の引受先であるI1の代表取締役であり,原告と親交のあったG2に対し,各社が上記第三者割当により引き受けたA1株の譲渡を申し入れたところ,F2からはH1の8万株及びG1の12万株について,また,G2からはI1の8万株について,譲渡する旨了解を得た。その際,F2及びG2は,本件A1株がこれら放出5社に属する会社から直接社外の者に譲渡されることを当然に了解していた。 なお,G1は,上記12万株のうち6万株を既に他者に譲渡していたことから,6万株のみを譲渡することとなった。また,I1は,昭和61年3月,株式会社H2(以下「H2」という。)から譲り受けた8万株を含め,保有するA1株16万株すべてをやはりG2が代表取締役を務めるJ1に譲渡したため,結局,J1がA1株16万株を譲渡することとなった。さらに,F1が保有するA1株残り10万株についても,追加して譲渡されることとなり,これらの譲渡手続も並行して行われた。 (b) 原告は,F1,H1,G1及びJ1の4社(以下「H1等4社」という。)からA1株譲渡の了解を受けて,昭和61年8月末ないし9月初めころから,当初は自ら,その後はB1の社長室長であったI2,同次長であったJ2と相談して,社外の本件A1株の譲受人を選定したほか,I2,K2,W1及びA1の常務取締役であったL1に対しても, 月初めころから,当初は自ら,その後はB1の社長室長であったI2,同次長であったJ2と相談して,社外の本件A1株の譲受人を選定したほか,I2,K2,W1及びA1の常務取締役であったL1に対しても,譲受人の選定を依頼し,本件譲受人は,同月末ころまでには数名を残してほぼ決定した。 (c) 原告は,社外の者に対するA1株譲渡の手続を,E1及びF1の保有するA1株の譲渡と同様,M1に依頼し,M1は,従来と同様の手続で,H1等4社と本件譲受人との間の本件A1株の譲渡手続を行った。F2及びG2と面識のなかったM1は,両名と面識のあったQ1に,株式売買約定書の譲渡人欄にH1等の会社名の記名押印を受ける手続を依頼し,Q1は,これに基づき,H1及びG1についてはL2をF2の下に送り,F2自身から数十枚の上記約定書に両社の記名押印を受け,J1については自らG2を訪ね,数十枚の上記約定書に同社の記名押印を受けた。 (d) 社外の譲受人に対するA1株取得の勧誘は,原告が選定した者については原告又はJ2が,その他の者については原則として当該選定者が行った。そして,株式売買約定書への署名押印の受領等,本件譲受人との間の具体的な譲渡手続は,J2,I2,Q1,T1らが手分けして行い,M1が取りまとめを担当した。 このようにして,H1等の譲渡人と社外の譲受人の間で,本件A1株の売買契約が成立した。 (e) H1等4社に対する本件A1株の代金は,昭和61年9月30日,E1に対する代金と同様,C1から一括して各社に振り込まれた。C1の代表取締役であったQ1は,金銭消費貸借契約を締結した譲受人が支払う代金については,振込指定に基づき放出5社に融資金を送金し,その他の譲受人が支払う代金については,直接譲受人から放出5社に送金してもらう予定であったが,売買代金支払日である同日の直前 た譲受人が支払う代金については,振込指定に基づき放出5社に融資金を送金し,その他の譲受人が支払う代金については,直接譲受人から放出5社に送金してもらう予定であったが,売買代金支払日である同日の直前になっても,一部の譲受人について融資を利用するのか否か確認できないため,急遽M1と相談のうえ,放出5社に対して送金漏れにより迷惑をかけないよう,とりあえずC1が自己資金使用の譲受人の分も含めて全額送金し,自己資金使用の譲受人には後日立替金を返済してもらうこととした。C1は,その後,自己資金使用の譲受人に対して,売買代金を同社宛送金するよう連絡し,同年10月末ころまでには立替金の回収を完了した。 また,H1等4社から譲渡された本件A1株の株券の交付は,E1の場合と同様,便宜上いったんC1が受領し,融資利用分についてはそのまま担保として預かり,自己資金分については当該譲受人に引き渡すこととした。 (f) 上記の社外の譲受人に対する本件A1株の譲渡手続についても,従前と同様,放出5社と本件譲受人との間に直接株式売買約定書が交わされており,この約定書が真実でないものと認識したり,中間省略的なものと認識した者はなかった。 また,放出5社も,上記約定書に譲受人として署名押印した者に本件A1株を譲渡したと認識しており,本件譲受人の側においても,基本的には原告からではなく放出5社からA1株を譲り受けたと認識していた。しかも,本件譲受人の中には,原告自身が選定していないばかりか,原告と面識もない者も多数存在した。 さらに,C1は,前記一括送金の後,放出5社に対し,本件譲受人の氏名,株数及び金額を明示した書面を提出し,放出5社は,本件譲受人に対して本件A1株を譲渡したことを前提として,取締役会において当該譲渡の決議を行い,所轄税務署の問合せに回答し,有価証券取 譲受人の氏名,株数及び金額を明示した書面を提出し,放出5社は,本件譲受人に対して本件A1株を譲渡したことを前提として,取締役会において当該譲渡の決議を行い,所轄税務署の問合せに回答し,有価証券取引税を納付した。 なお,F1から5000株を譲り受けたO1は,同社を譲渡人として株式売買約定書を交わしたのみならず,代金を自ら直接同社に振込送金しており,同社も,O1に対してA1株を譲渡したことを前提に,有価証券取引税の納付及び会計処理を行っている。しかも,O1を譲受人に選定したのはL1であり,原告はO1と面識がなく,名前も知らなかった。 これらの事実からも,原告が本件A1株の売買における当事者でなかったことは,明らかといわざるを得ない。 c 小括以上のとおり,本件A1株70万株の譲渡は,譲渡の対象が転籍社員から部次長以上の役職員及び社外へと拡大したものの,一連の延長線上にある取引であり,途中で発想や手法が変化したことはなかったのであって,本件A1株の譲渡が放出5社と本件譲受人との直接売買であり,原告が売買当事者ではなかったことは明らかである。 (2) 原告が本件A1株の売買の当事者であり得ないことア本件における意思表示の合致a 株式売買約定書契約の成立には,相対立する意思表示の合致が必要であるから,本件A1株の売買契約の当事者を確定するためには,本件取引を巡る事実関係を踏まえて,意思表示の合致に関する当事者及び内容を判断する必要があるところ,本件においては,株式売買約定書により,放出5社と本件譲受人の間に売買の意思表示の合致が認められる。 本件のように,売買契約に係る契約書面が存在する場合,当事者の意思表示の内容を確定するための最も重要な証拠が当該書面であることは明らかであって,このことは,売主と買主とが相対で書面を取り交わす 。 本件のように,売買契約に係る契約書面が存在する場合,当事者の意思表示の内容を確定するための最も重要な証拠が当該書面であることは明らかであって,このことは,売主と買主とが相対で書面を取り交わすいわゆる相対取引の場合はもちろん,株式のように誰から取得しても差異がない取引対象を仲介者を介して売買するために,当事者間に面識のないことが通常であるような場合であっても同様である。 本件A1株の売買の場合,株式売買約定書は,すべて放出5社と本件譲受人との間に交わされており,その間に原告が契約当事者として介在した事実はない。本件譲受人は,基本的には譲渡人として放出5社の記名押印のある上記約定書に自ら署名押印しており,放出5社も,譲受人が多数に上ることを承知のうえで,譲受人の確定後,各譲受人が署名押印することを当然の前提として,多数にわたる上記約定書に自ら記名押印しているのであって,売買の意思表示は,上記約定書の完成によって合致したことが認められる。 他方,原告が買主として認識されていなかったことは,仮に放出5社が本件A1株を原告1人に譲渡するのであれば,株式売買約定書は放出5社用と原告用の各1通で十分であり,放出5社が数十枚もの株式売買約定書に記名押印をする必要がなかったことからも明らかである。 b 虚偽表示等の合意の不存在本件A1株の売買のように,意思表示の合致を明確に示す書面が取り交わされた場合,これに反する内容の意思表示の合致を認定することができるのは,これがあくまで虚偽表示ないし仮装文書であることについて,当事者間に明確な合意が存在するような,極めて例外的な場合に限定されると考えられる。 しかるに,本件では,原告,M1ら手続担当者,放出5社,本件譲受人等のいずれかの間で,真の譲受人が原告であるとか,株式売買約定書の体裁を実体と異な うな,極めて例外的な場合に限定されると考えられる。 しかるに,本件では,原告,M1ら手続担当者,放出5社,本件譲受人等のいずれかの間で,真の譲受人が原告であるとか,株式売買約定書の体裁を実体と異なるものとするといった合意が成立していないことはもちろん,そのような趣旨の会話や打合わせが行われた事実もなく,放出5社も本件譲受人も,本件A1株の株式売買約定書に署名又は記名押印するに際し,同約定書の記載内容どおりに契約を成立させる意思を有していたことが明らかである。 したがって,株式売買約定書に表示された意思表示の合致が虚偽表示であるとして,これと異なる意思表示の合致を認定することはできない。 c 被告の主張の誤り(a) 被告は,原告が株式売買約定書上に取引の当事者として名前を出すと,本件内規に違反し,A1株の店頭登録ができなくなる可能性があり,原告自身にも有価証券取引税の課税の問題が生じることから,原告の名前が出ないように形式を整える目的で,本件A1株の売買に係る株式売買約定書を作成した旨主張する。 (b) しかしながら,本件においては,原告が放出5社から本件譲受人への本件A1株の譲渡を仲介あっせんした場合,原告には何ら不利益が生じないのに対し,原告が放出5社から本件A1株をいったん買い受けて譲渡した場合,A1株の店頭登録ができなくなる可能性や,原告自身の課税問題が生じることに加え,証券取引法2条4項に規定する「売出し」に該当するとして,同法4条違反の罪に問われること,原告が50回の非課税枠を利用して他に49回の有価証券取引をしており,非課税枠を超える有価証券取引により税法上の著しい不利益を生じるおそれが大きいこと等,原告にとって重大かつ明白な不利益が存在した。 他方,本件取引においては,放出5社の譲渡価格及び本件譲受人らの譲受価格がいず える有価証券取引により税法上の著しい不利益を生じるおそれが大きいこと等,原告にとって重大かつ明白な不利益が存在した。 他方,本件取引においては,放出5社の譲渡価格及び本件譲受人らの譲受価格がいずれも1株3000円とされており,原告が売買の当事者となったとしても,譲渡益はなかったものである。 さらに,放出5社にとっては,本件A1株の譲渡先が原告の指定する相手なら誰でも構わなかったのであり,本件譲受人にしても,A1株の譲渡人が原告でなければならない事情は一切なく,原告が本件A1株をいったん自ら買い受けたうえで譲渡しなければならない理由は,およそ考えることができない。 なお,被告は,原告の本件取引における意図が本件譲受人にA1株の値上がり益を供与することにあったこと等を根拠として,原告には,重大なリスクを冒しても,A1株を自ら取得して本件譲受人に譲渡すべき動機及び必要性があった旨主張するが,本件取引の意図が上記のとおりであったとしても,原告は,本件A1株の売買を仲介する方法によっても譲受人に値上がり益を供与できたのであるから,原告の上記主張は失当である。 したがって,原告が本件取引において,自ら売買の当事者となるという重大な不利益を伴う方法を避け,仲介あっせんという何ら不利益のない方法を選択したことは当然であって,原告が自らいったん本件A1株を買い受けることは,本件取引の目的を達するための手段として不自然,不合理といわざるを得ない。 (c) さらに,被告の主張によれば,原告は,本件内規違反等による重大な不利益にもかかわらず,あえて原告を売買の当事者とする実体を残したうえで,株式売買約定書の形式だけ取り繕ったことになるが,当時原告において,そのような重大な不利益を伴う実体を残すべき理由はなく,内規違反等の重大な危険を冒してまで上記約定書の 者とする実体を残したうえで,株式売買約定書の形式だけ取り繕ったことになるが,当時原告において,そのような重大な不利益を伴う実体を残すべき理由はなく,内規違反等の重大な危険を冒してまで上記約定書の形式と実体を使い分けるべき事情もない。しかも,前記のとおり,本件取引の関係者間において,上記約定書における譲渡人と譲受人の記載が形式にすぎない旨の合意が成立した事実もないのであるから,被告の上記主張は失当である。 イ原告を売買の当事者と認定すべき経済的実体の不存在本件A1株の譲渡の目的は,原告らが選定した本件譲受人にA1株を取得させることにあり,原告自身が所有することを目的としたものではない。 また,原告が放出5社に売買代金を支払った事実はなく,C1からの融資金又は自己資金により売買代金を支払ったのは本件譲受人であり,実質的にも,原告の出捐を疑うべき事情は何ら存在しない。 さらに,原告は,本件取引において,本件A1株の株券を一切取得していない。 本件A1株の株券については,M1らが手続の便宜上いったん預かったり,C1が融資を利用した本件譲受人の分について担保として預ったりしたことはあるものの,いずれの場合も株券を取得したのは本件譲受人であって,原告ではない。A1の株主名簿上,原告に名義が変更された事実もないし,原告が本件A1株の売却益,配当金,無償交付株式を取得した事実もない。 そして,原告は,本件A1株の売買によって,何らの経済的効果も受けていない。 以上のとおり,売買の目的,代金の出捐者,経済的効果の帰属者等の,売買契約における当事者の確定に関して考慮されるべき経済的実体の有無という見地からも,原告を本件A1株の売買の当事者と認定すべき実体がないことは明らかである。 ウ原告が本件A1株売買を発想した経緯a 本件A1株の譲渡と従前の 関して考慮されるべき経済的実体の有無という見地からも,原告を本件A1株の売買の当事者と認定すべき実体がないことは明らかである。 ウ原告が本件A1株売買を発想した経緯a 本件A1株の譲渡と従前のA1株譲渡の発想の同一性原告が,社員皆経営者主義の発想から,A1への転籍者等に対し,B1の役員7名の所有するA1株を譲渡することとしたこと,その手続を進める中で,A1の部次長以上の役職の者にもこれを取得させようと考えて,放出5社にA1株の譲渡を依頼したことは,前記のとおりである。 そして,上記転籍者等に対するA1株譲渡が,B1役員と上記転籍者らとの間の相対取引であったところ,本件A1株の譲渡も,その延長線上で,同一の発想により行われたものであり,譲渡手続も同一の方法により行われ,契約書等の必要書類も同一の書式が使用されている。さらに,これに先立ち,昭和59年12月及び昭和60年5,6月ころに行われたA1株の売買も,上記転籍者等に対する本件A1株の譲渡と同一の発想,手続によるものであり,いずれもA1株の譲渡人と譲受人との間の相対取引であることからも,本件A1株の譲渡が,上記転籍者等に対するA1株の譲渡及びそれ以前のA1株の譲渡と同様に,放出5社と本件譲受人の間の相対取引であったことは明らかである。 b 被告の主張の誤りこれに対し,被告は,本件A1株の譲渡の契機がA1転籍者等へのA1株譲渡にあり,この譲渡がB1役員と上記転籍者らの間の相対取引であることを認めながら,本件A1株の譲渡が相対取引であったことを否定している。 しかし,原告がA1株譲渡についての発想を変更したことを示す事実関係はなく,その必要もなかったこと,実際の譲渡手続及び使用された契約書類が同一であったこと等に照らせば,本件A1株の譲渡の当事者について,それ以前の譲渡の場合と いての発想を変更したことを示す事実関係はなく,その必要もなかったこと,実際の譲渡手続及び使用された契約書類が同一であったこと等に照らせば,本件A1株の譲渡の当事者について,それ以前の譲渡の場合と異なる解釈をすべきではないから,被告の上記主張は失当である。 エ小括以上によれば,原告が本件A1株の売買の当事者であり得ないことについては,疑いの余地がないというべきである。 (3) 原告の主張を裏付ける多数の客観証拠が存在すること本件A1株の売買が放出5社と本件譲受人の間の売買であったことについては,株式売買約定書以外にも,次のとおり多数の客観証拠が存在する。これに対し,原告が本件A1株の売買の当事者であったことを裏付ける客観証拠は,何ら存在しない。 ア C1と本件譲受人の間の金銭消費貸借契約書,本件譲受人の同社宛て振込指定書兼領収書及び同社の仮払金元帳(甲2の1ないし55,同3の1ないし55,乙35添付資料3)上記各証拠によれば,放出5社に対する売買代金の支払は,O1による支払を除き,C1から,本件譲受人の振込指定に基づく融資の実行又は本件譲受人に代わる立替払として行われたこと,同社が立替払分を各譲受人に対する一時仮払金の扱いとし,後に本件譲受人からすべて返済を受けたことが認められるから,原告ではなく本件譲受人が放出5社に対する代金を支払ったことは明らかである。 イ E1の有価証券取引税納付書,領収証書及び同添付の有価証券取引書(甲36の1ないし28)上記各証拠は,E1が本件取引当時作成したものであって,当時の同社の認識を示すものであるところ,これらによれば,同社は,昭和61年9月27日,原告側から指示された14名を株式の譲受人として,有価証券取引税を納付したことが認められる。 これに対し,被告は,E1が売買代金受領前に有価証 ところ,これらによれば,同社は,昭和61年9月27日,原告側から指示された14名を株式の譲受人として,有価証券取引税を納付したことが認められる。 これに対し,被告は,E1が売買代金受領前に有価証券取引税を納付している以上,同社は譲受人から代金が確実に支払われる旨信頼しており,その信頼は原告に対するものとしか説明できないとして,本件A1株の譲受人が原告である旨主張するが,E1としては,信頼する原告からの依頼であることから,原告側で誰を譲受人に選定するかにかかわらず,代金支払に不安を感じなかったのであって,被告の上記主張は失当である。 ウ A1作成のX1宛て株券お預り証(乙9添付資料26)上記証拠によれば,E1が所持していたA1株の株券が10万株券4枚であり,このままでは多数の譲受人との間で売買手続ができないことから,これを1000株券400枚に分割したことが認められる。そして,E1がこのような株券分割を行ったことは,同社が本件A1株を多数人に譲渡するものと認識しており,原告を譲受人として認識していなかったことを示すものである。 エ F1の有価証券取引税納付書,領収証書並びに同添付の有価証券取引書及び振替伝票(甲37の1ないし24,同38の1ないし3,同39の1ないし5)上記各証拠は,F1が本件取引当時作成したものであって,当時の同社の認識を示すものであるところ,これらによれば,同社が昭和61年9月26日及び同年11月5日に,原告側から指示された本件譲受人24名を株式譲受人として有価証券取引税を納付し,同社の会計処理上も,上記24名を株式譲受人として処理していることが認められる。 また,甲39の4の振替伝票によれば,F1から5000株を譲り受けたO1が,売買代金を直接F1に振込送金したことが認められ,放出5社が本件A1株を本件譲受人 人として処理していることが認められる。 また,甲39の4の振替伝票によれば,F1から5000株を譲り受けたO1が,売買代金を直接F1に振込送金したことが認められ,放出5社が本件A1株を本件譲受人に直接譲渡したことが裏付けられる。 これに対し,被告は,上記各証拠によれば,C1からF1に対し同年9月30日に代金が振り込まれたにもかかわらず,有価証券取引税が一部を除いて同年11月5日に納付されており,代金支払時に最終譲受人が特定されていないことから,むしろ原告が譲受人であることが裏付けられる旨主張する。しかし,C1は,近日中に譲受人が確定することを前提として,あくまで本件譲受人に対する融資又は立替払として送金処理をしたにすぎないこと,仮に本件A1株の譲渡先が原告であれば,F1は,代金の支払を受けた同年9月30日以降,直ちに原告を譲受人として有価証券取引税を納付できたはずであることに照らせば,被告の上記主張は理由がない。 オ L1ら3名作成のF1宛て株券受領書(甲40の1ないし3)本件譲受人であるL1ら3名は,昭和61年9月25日,F1宛てに株券受領書を作成,交付しているところ,これらは,売買契約の当事者が誰であるかに関する本件譲受人の当時の認識を直接に示すものである。 これに対し,被告は,これらが売買代金の振込手続が終了したことから手続上作成されたにすぎないと主張するが,上記主張には何ら合理的な根拠はない。 カ H1の昭和61年8月25日開催取締役会議事録(甲34)上記証拠によれば,本件取引当時,H1の取締役会が,本件譲受人を買受人として本件A1株の譲渡を決議したことが認められ,H1がA1株を本件譲受人に譲渡したものと認識していたことが明らかである。 これに対し,被告は,上記議事録が事後に日付をさかのぼらせたものであることを根拠に, A1株の譲渡を決議したことが認められ,H1がA1株を本件譲受人に譲渡したものと認識していたことが明らかである。 これに対し,被告は,上記議事録が事後に日付をさかのぼらせたものであることを根拠に,上記決議の存在をもって本件譲受人を買受人と認定することはできない旨主張する。しかし,上記議事録が日付をさかのぼらせたものであったとしても,そのことから直ちにその内容が事実に反するということはできず,少なくとも,本件A1株の売買の当事者に関するH1の取締役会の認識を反映しているものということができる。 キ G1作成の有価証券の譲渡内容についてのお尋ねに対する回答書(甲35の1ないし3)G1は,「有価証券の確認内容についてのお尋ね」と題するG4税務署長の昭和62年5月14日付け書面に対し,上記回答書を提出しているが,その中で,本件A1株の売却先は原告ではなく,原告から指示された本件譲受人13名である旨明確に記載しており,G1が,当時本件A1株の売買の当事者を本件譲受人と認識していたことは明らかである。 これに対し,被告は,上記回答書が株式売買約定書の記載内容に沿うように,形式上本件譲受人を買主としたにすぎない旨主張するが,原告の上記主張の根拠であるF2らの検察官面前調書は,検察官の誘導により作成されたものであって,被告の上記主張は認められない。 ク C1から放出5社に交付された振込金の譲受人ごとの明細表(甲41,同63の1ないし5)上記各証拠によれば,C1は,放出5社に対する振込みの後,振込金の譲受人ごとの明細表を放出5社各社に交付したことが認められる。仮に,本件A1株の譲渡先が原告であれば,同社が放出5社にこのような明細表を交付する必要がないことはいうまでもないから,このような明細表が放出5社に交付されたこと自体が,本件A1株の買主が本 れる。仮に,本件A1株の譲渡先が原告であれば,同社が放出5社にこのような明細表を交付する必要がないことはいうまでもないから,このような明細表が放出5社に交付されたこと自体が,本件A1株の買主が本件譲受人であることを直接に示すものである。 (4) 原告を当事者とする売買の意思表示の合致が存在しないことア放出5社と原告との間の売買の意思表示の合致が存在しないことa 原告の放出5社の経営者に対する依頼内容及び双方の認識(a) 原告の依頼内容及び原告の認識原告は,放出5社の経営者であるU1,V1,F2及びG2(以下,上記4名を「U1ら」という。)に対し,本件A1株の譲渡を依頼したが,その内容は,原告が放出5社に対し,A1株を原告に売却して欲しい旨申し出たものではなかったことは,原告及びU1らの,本件A1株を巡る贈収賄等に関するいわゆるB1事件に関する当裁判所平成元年特わ第259号事件,平成元年わ第753号事件等の各刑事事件(以下,これらの刑事事件を「別件刑事事件」ということがある。)及び本件の証人尋問等における供述から明らかである。 また,原告にとって,本件A1株の譲渡は,A1への転籍者等に対するA1株譲渡の延長線上において,A1株の所有者に依頼して,A1株を取得させたい者にこれを譲渡してもらうという,従前同様の発想により行われたものである。 さらに,原告は,本件内規により自己の所有するA1株を譲渡することができないことから,B1の役員や放出5社にA1株の譲渡を依頼したのであるから,原告がわざわざいったんA1株を買い取って売却するといった,無意味かつ重大なリスクを冒すはずはない。 このような事情に照らしても,原告が自ら放出5社から本件A1株を譲り受ける認識を有していなかったことは明らかである。 (b) 放出5社の経営者の認識他方, 味かつ重大なリスクを冒すはずはない。 このような事情に照らしても,原告が自ら放出5社から本件A1株を譲り受ける認識を有していなかったことは明らかである。 (b) 放出5社の経営者の認識他方,原告による本件A1株の譲渡の依頼を了解した放出5社の経営者であるU1らも,本件A1株の買主が原告ではなく,A1の役職員や,原告側が指定する多数の第三者であると認識していたことは,U1らによる以下の各供述から明らかである。これらの供述は,原告の依頼内容について,相互に共通するのみならず,原告の供述,その後の手続経過及び客観証拠とも符合しており,その信用性は高いというべきである。 iF1のV1は,別件刑事事件の証人尋問及び供述録取書において,原告が店頭登録に際し,いろいろな人にA1株を持ってもらいたいものの,そのための株式がなくなってしまったので,V1にその放出を依頼したものと思い,V1としても,当然この人たちに対して,株式を譲渡するものと考えていた旨供述している。 また,V1から株式の譲渡手続を指示されたD2も,供述録取書において,V1から,原告がいろいろな人にA1株を持ってもらいたいので,F1が引き受けた20万株をその人たちに譲るよう依頼しているから,これに応じて手続を行うよう指示された旨供述しており,V1の上記供述は,このD2の供述と符合していることからも,信用性が高いというべきである。 ⅱ H1及びG1のF2は,陳述録取書及び本件の証人尋問において,自分としては,原告から,「A1の新しい役員や幹部クラスの人や,その他の人に株を持って貰うので,おまえの所にいっている株式を譲ってやってくれないか。俺の株は譲れないから,お前の所のを譲ってやってくれないか」と言われたので,当然H1やG1の持株を,A1の役員や幹部社員等に譲渡するつもりであったと供 えの所にいっている株式を譲ってやってくれないか。俺の株は譲れないから,お前の所のを譲ってやってくれないか」と言われたので,当然H1やG1の持株を,A1の役員や幹部社員等に譲渡するつもりであったと供述する。そして,原告がA1株を多数持っており,自分で買う必要は全くないこと,そもそも原告としては,A1株の店頭登録を控え,同人の所有するA1株を譲渡できないからこそ,私にA1株の譲渡を依頼したことからしても,H1及びG1が本件A1株を原告に譲渡したということはあり得ない旨供述する。 また,F2から株式の売却依頼を受けたG1の常務取締役であったM2が作成した当時の事実経緯に関するメモ(乙51号証添付資料)において,「61年夏頃,売却に当ってF2氏よりB1のN2氏からB1及びB1関係者に渡したいので返却したい旨要請が役員にあった。」,「譲渡先についてはB1関係と納得していました。」等の記載があることからも,F2の上記供述は信用性が高いということができる。 ⅲ J1のG2は,陳述録取書及び本件の証人尋問において,原告から本件A1株の譲渡の依頼を受ける前に,既にF2から,原告がF2にA1株の譲渡を依頼した旨聞いており,原告から依頼を受けた際,特に譲渡の理由を聞いてはいないものの,G2としては,当然原告以外の第三者に譲渡するのだろうと思い,原告が自分の物にしようとしているとは全く考えず,またいったん原告に譲渡して原告から第三者に再譲渡するという認識を持ったこともない旨供述する。 (c) 小括以上のとおり,原告が放出5社の経営者であるU1らに本件A1株の譲渡を依頼した際,原告が買主となる趣旨の会話が出たことは一切なく,原告もU1らも,放出5社から本件A1株を買い受けるのは,A1の役職員や,原告側が指定する多数の第三者であるという共通認識を有していたこと 頼した際,原告が買主となる趣旨の会話が出たことは一切なく,原告もU1らも,放出5社から本件A1株を買い受けるのは,A1の役職員や,原告側が指定する多数の第三者であるという共通認識を有していたことが明らかであることに照らせば,原告とU1らとの間で,原告を買主としてA1株を譲渡する旨の合意が成立したことはあり得ないというべきである。 b 手続経過から見た放出5社の認識原告がU1らにA1株の譲渡を依頼した後に行われた,株式売買約定書の作成,代金決済等の譲渡手続の経過に照らしても,放出5社が,A1株の買主について,原告ではなく,原告側が指定する多数の者であると認識していたことは明らかである。 すなわち,放出5社と原告側の手続担当者の間で,本件A1株の売買に関する手続が進められた際,原告側が指定する多数の者が本件A1株の譲受人になることが当然の前提とされており,放出5社は,原告側が指定する多数の者との間に株式売買約定書を交わし,これらの者宛てに株券受領書を作成,交付し,これらの者からA1株の代金を受け入れ,C1から株式譲受人の氏名,株数,金額を明示した明細表を受け取り,本件譲受人を譲渡先とする株式譲渡を取締役会で決議し,本件譲受人に対する譲渡である旨明示して有価証券取引税を申告し,所轄税務署の問合せに回答している。 これに対し,放出5社と原告側の手続担当者との間で,本件A1株の買主が原告であることを窺わせたり,そのことを前提とした言動,手続が行われたことは一切ない。また,仮に原告が売買の当事者であったとすれば,放出5社各社は株式売買約定書を1組作成すれば済むはずであったにもかかわらず,例えば,F1側の手続担当者であったD2は,複数の株式売買約定書に何の疑問もなく社印を押印している。 このような手続経過に照らしても,放出5社が,本件A1株 作成すれば済むはずであったにもかかわらず,例えば,F1側の手続担当者であったD2は,複数の株式売買約定書に何の疑問もなく社印を押印している。 このような手続経過に照らしても,放出5社が,本件A1株の買主を原告側が指定する多数の者であると認識していたことは明らかである。 cE1について(a) 以上の点につき,E1の実質上の経営者であったU1は,別件刑事事件の証人尋問において,「(A1株は)N2さんの会社で功労のあった方たち,もしくは外部でN2さんの会社が成長するのにお力のあった人,こういったところへ行くんだなということを私は想像いたしました。」と供述しつつ,本件A1株を譲渡した先について,「N2もしくはN2の主宰する会社」と認識していた旨供述している。 しかし,U1の上記供述は,上記の手続経過及び客観証拠に反しており,また,上記供述も,厳密な意味で原告を買主と認識していたという趣旨のものではなく,当時U1には,上記のとおり供述せざるを得ない特殊な事情があったことからすれば,これを文字通りに解することはできない。 すなわち,いわゆるB1事件が報道された当初,放出5社は,マスコミ等から「環流5社」と呼ばれ,政治家などの譲受人の選定に関与したのではないかとして大々的に取り上げられており,U1もマスコミから激しい取材攻勢を受けた。U1は,そのような状況下で,疑念を晴らし,取材攻勢を免れるため,同人が本件譲受人の選定に全く関与していないことを説明するために,上記のような供述をしたにすぎないのであって,法的に厳密な意味で,原告に本件A1株を売却したと述べたわけではない。U1は,A1株譲渡の依頼を了解した後の交渉や具体的な譲渡手続をすべてY1に任せ,自らは関与しなかったため,A1の役職員らを買主とする売買契約が締結されたことを十分知らないまま,又 たわけではない。U1は,A1株譲渡の依頼を了解した後の交渉や具体的な譲渡手続をすべてY1に任せ,自らは関与しなかったため,A1の役職員らを買主とする売買契約が締結されたことを十分知らないまま,又はあえてそれを無視して,当初原告が依頼したという事実のみに基づいて,上記のような供述をしたにすぎない。加えて,U1は,別件刑事事件の証人尋問においては,当時A1の役職員らが譲受人になることも当然に想像していた旨明確に証言しており,その供述が一貫しているとはいい難い。 また,Y1は,検察官面前調書において,「私どもは,N2さん側にこの20万株を売り戻したと思っていました。」と供述しているが,この供述も,同人がM1らから譲受人が十数名になると聞き,その後M1との間でE1とA1の役職員らとの売買手続を行なったと事実と矛盾し,論理的にも誤っていることが明らかである。 上記供述は,検察官が自己の意図を押しつけたものと推測され,Y1が真実を述べたものとは評価できない。 (b) さらに,E1の保有していた本件A1株の買受人が原告でないことは,次の手続経過からも明らかである。 原告から指示を受けたM1は,昭和61年8月27日,Q1とともにY1の所へ出向き,本件A1株の譲渡手続を行いたい旨申し入れた際,「譲受人は複数の予定ですがまだ未定です」と説明したところ,このことは,既に原告からU1にも伝えられ,Y1も了解していたのであって,Y1から,買主が原告であったはずであるといったクレームは一切なかった。 その後,M1は,同年9月中旬ころ,Y1から譲受人を早く教えるよう再三要請されたものの,E1から放出される20万株中,2万株分の譲渡先が未定であったことから,M1は,既に決定したB2ら12名の譲受人については,同人らから株式売買約定書に署名押印を受けてY1に届け, 要請されたものの,E1から放出される20万株中,2万株分の譲渡先が未定であったことから,M1は,既に決定したB2ら12名の譲受人については,同人らから株式売買約定書に署名押印を受けてY1に届け,「20万株の内,18万株をこういう人達12名に売ることになりました。しかし,残り2万株についてはその譲受人の名義が確定していません。」などと説明し,上記約定書にE1の記名押印を受け,残り2万株分の譲受人を早急に決めることを約束し,その後,Z1及びA2が譲受人となることが決定したことから,株式売買約定書に同人らの署名押印を受け,これをY1に届けた。 また,Y1は,E1が保有する本件A1株が多数の者に譲渡されることを認識したうえで,同社の保有するA1株の株券が10万株券であり,このままでは多数の者に譲渡できないことから,同月26日,A1を訪ね,これを1000株券に分割する手続を行った。 さらに,B2ら12名のうち11名は,株式売買約定書と同時に,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書に署名押印して,これらをC1に差し入れており,これらの書類に基づいて,B2ら12名からE1に代金が振り込まれる一方,株券については,上記金銭消費貸借契約書2条に基づき,融資の担保としてC1に預け入れられている。他方,E1は,B2ら12名,Z1及びA2の合計14名に本件A1株を譲渡した旨明示して,有価証券取引税を納付している。 以上の客観的状況やY1の対応に照らせば,原告がいったんE1から本件A1株式を買い受けて,これを本件譲受人に売り渡したものでないことは明らかである。 イ原告と本件譲受人の間に売買の意思表示の合致が存在しないことa 原告の認識原告において,本件A1株の売主であるという認識がなかったことはいうまでもないから,原告やJ2が,本件譲受人に対し,原 イ原告と本件譲受人の間に売買の意思表示の合致が存在しないことa 原告の認識原告において,本件A1株の売主であるという認識がなかったことはいうまでもないから,原告やJ2が,本件譲受人に対し,原告が売主であるとか,原告の所有株であると述べるはずもなく,原告と本件譲受人との間に,表示された効果意思の合致が存在することはあり得ない。 また,本件譲受人の中には,その者が選定されたことを原告が認識していない者も多数存在しており,これらの者と原告との間に,意思表示の合致が認められることはあり得ない。 なお,被告は,原告が本人尋問において,原告とは一面識もない譲受人について,原告が仲介あっせんしたものではなく,またA1の会長として,同社が最終的に譲受人を選んでいいという指示をしたつもりである旨供述したことを捉えて,原告が,自己の意思に基づき譲受人を選定し,原告自らがA1株を処分する権利を有することを認めたものに他ならないと主張する。 しかし,原告が上記供述において言おうとしたことは,放出5社に本件A1株の売却を依頼したのは原告であるが,譲受人の決定は全部原告が行ったわけではないから,原告の関与していない譲受人への売買については,仲介者は原告でなくむしろA1の幹部等というべきであるということであって,原告が同社に譲受人の選定を一任したのは,譲受人の選定について一任された仲介者として第三者にそれを委ねたにすぎないのであるから,原告の上記供述から,原告自身が売買の当事者であることが導かれるわけではない。 b 本件譲受人の認識(a) 原告が選定した譲受人(部次長以上のA1役職員を除く)についてこれらの譲受人については,原告又はJ2からA1株の取得を勧誘され,その多数が原告の発案による勧誘と理解して,これに応じたものと推測される。 しかし,原告及 部次長以上のA1役職員を除く)についてこれらの譲受人については,原告又はJ2からA1株の取得を勧誘され,その多数が原告の発案による勧誘と理解して,これに応じたものと推測される。 しかし,原告及びJ2は,勧誘の際,譲渡人や,譲渡するA1株の所有者が誰かについて,特に説明をしなかった。そのため,これらの譲受人においても,譲り受ける株式の性格や所有者についての理解は様々であった。これらの譲受人には,譲渡人が誰か関心を持たず考えもしなかった者が多かったが,未公開株の公開前の譲渡について知識を有する者は,公開前に経営者個人が自分の持株を譲渡することは常識的に考え難いことから,親引け株,証券会社の支配下の株,公開株か公募株などと推測したほか,譲渡人についても,B1,A1,B1グループ全体,社員持株会などと推測する者もいた。 そして,原告又は手続担当者とこれらの譲受人の間には,株式売買約定書への署名押印に至るまでに,本件A1株の真の売主が原告であることを窺わせる言動や,そのようなことを前提とした言動は一切なく,これらの譲受人が上記約定書どおりに契約を成立させる意図であったことには疑う余地もない。 さらに,これらの譲受人については,放出5社に対して代金の支払をしていることからも,譲渡人欄に記名押印をした放出5社との間で売買をする効果意思を表示したものであることは明らかであり,実際にも,多くの譲受人が,上記売買約定書の署名の時点で,譲渡人欄に先に記名押印している放出5社が,A1株の売主と認識した旨供述している。 仮に,原告又はJ2が本件A1株の取得を勧誘した際,一部の譲受人が原告を譲渡人と推測しながらこれに応じたことを捉え,あえてその時点で原告と当該譲受人との意思表示の合致を擬制したとしても,結局,そのような譲受人も,その後放出5社との間で株式 した際,一部の譲受人が原告を譲渡人と推測しながらこれに応じたことを捉え,あえてその時点で原告と当該譲受人との意思表示の合致を擬制したとしても,結局,そのような譲受人も,その後放出5社との間で株式売買約定書を交わしていることに照らせば,少なくともその時点において,本件A1株の売買を原告との間の売買とすることを撤回して,放出5社と直接売買をする旨の効果意思を表示したものと認めざるを得ない。 (b) 原告以外の者が選定した譲受人及び部次長以上のA1役職員について本件譲受人中,部次長以上のA1の役職員17名は,M1又はT1から本件A1株の取得の勧誘を受けており,役職員に自社株を持たせるのはA1の従前からの方針であると理解していたこともあって,原告が売主であると誤解する余地は存在しなかった。 また,K2らのA1幹部及びI2が選定した譲受人については,原告が勧誘や譲渡手続に登場したことは一切なく,本件A1株の譲渡に原告が関係していることすら知り得なかった。加えて,これらの譲受人の中には,それまで原告と面識のなかった者も多数存在している。 このようなことからすれば,これらの譲受人については,そもそも原告を売主と誤解する可能性すらなく,原告とこれらの譲受人との間で売買の意思表示が合致したことはあり得ない。 c 小括以上のとおり,本件の事実関係の下で,原告と本件譲受人の間で本件A1株の売買につき意思表示の合致が成立したと評価することはできず,これに反する被告の主張は,事実関係に基づかないものであって,失当である。 ウ契約の成立(意思表示の合致)に関する被告の主張の誤り本件取引において,放出5社と本件譲受人の間における本件A1株の売買の意思表示は,株式売買約定書の作成により合致しており,その過程で,上記の意思表示が虚偽表示であることなどが相互 被告の主張の誤り本件取引において,放出5社と本件譲受人の間における本件A1株の売買の意思表示は,株式売買約定書の作成により合致しており,その過程で,上記の意思表示が虚偽表示であることなどが相互に了解されたことはなく,放出5社も本件譲受人も,上記約定書の内容どおりに売買契約を成立させる意図であったことは,前記のとおりである。したがって,上記約定書に明確に表示された当事者間の意思表示の合致を無視して,これに反する意思表示の合致を認定できないことは当然である。 しかるに,被告は,上記約定書を始めとする客観証拠を無視したうえで,刑事事件の捜査段階における供述調書等の供述証拠のみを根拠として,当事者の内心の意思の合致による売買契約の成立を主張している。 本件取引においては,被告が主張するような契約の成立に関する認定方法を前提としたとしても,原告が本件A1株の売買契約の当事者と認められないことは前記のとおりであるが,そもそも,意思表示の合致の確定については,あくまで表示された効果意思からどのような意思表示が合致しているかを認定すべきであって,当事者の内心の意思の合致を立証することにより売買契約の成立を認定しようとする被告の上記主張は,それ自体が基本的に誤っている。 また,そのように表示された効果意思を無視して,当事者の内心の意思によって売買契約の成立を認定するとすれば,特に,株式のように誰から取得しても差異のない取引対象を仲介者を介して売買する場合には,売買契約の当事者間においてほとんど認識が一致しないという,非常識な結果を来すことが明らかである。実際に,本件においても,前記のとおり,原告,J2,I2,M1らから,誰が売主かについて特に説明を受けないまま,本件A1株の購入を勧誘された本件譲受人の内心は,勧誘を受けた時点において様々であったの 際に,本件においても,前記のとおり,原告,J2,I2,M1らから,誰が売主かについて特に説明を受けないまま,本件A1株の購入を勧誘された本件譲受人の内心は,勧誘を受けた時点において様々であったのであり,このことからしても,実際に交わされた株式売買約定書を無視して,当事者の一時の内心によって売買契約の成立を認定しようとする被告の主張に無理があることは明らかである。 さらに,売買契約の当事者の確定は,当該契約により誰と誰との間に債権債務関係の発生を認めるかを確定することを目的とするものであるところ,被告の主張に従えば,万一放出5社から株券の引渡しを受けられない場合,本件譲渡人が誰に対して引渡請求権を行使できるのか,放出5社は上記約定書にもかかわらずこの引渡請求を拒むことができるのか,あるいは,万一本件譲受人が売買代金を支払わない場合,原告が本件譲受人に売買代金の支払が請求できるのか,本件譲受人は上記約定書にもかかわらず原告の支払請求を拒否できないのかといった問題について,非常識かつ不都合な結論を採用せざるを得ないこととなることからも,そのような結論を導き出す被告の主張が採用できないことは明らかである。 (5) 被告の主張に対する反論ア C1から放出5社への一括送金について被告は,放出5社に対する本件A1株の代金が,C1から一括送金の方法で支払われていることを捉え,本件A1株の買主が特定されていない段階で,C1が代金を支払うことは通常あり得ないことであって,放出5社からの譲受人を原告と解さなければ合理的な説明ができないと主張する。 しかし,下記aないしeの各事情に照らせば,C1による一括送金の事実から,原告が本件A1株の譲受人であるという結論を導くことはできない。 aC1は,原告とは法人格を異にするものであり,しかも,社員20ないし3 記aないしeの各事情に照らせば,C1による一括送金の事実から,原告が本件A1株の譲受人であるという結論を導くことはできない。 aC1は,原告とは法人格を異にするものであり,しかも,社員20ないし30名,融資残高700ないし800億円の規模を有し,近い将来の株式公開を検討するほどの株式会社であって,原告は,当時同社の役員でもなかったのであるから,同社の法人格を無視して原告と同視したり,同社の送金行為の法律効果を原告に帰属させることはできない。 b また,C1は,当初から放出5社に代金を一括送金する予定だったわけではなく,譲渡手続が遅延し,放出5社への送金予定日である昭和61年9月30日の直前になっても,C1の融資利用者が完全に確定できなかったことから,同月29日ころ,同社の代表取締役のQ1がM1と協議のうえ,緊急的な措置としてやむなく一括送金を行うこととしたのであって,このことは,同月末ころ,T1がO1に対して代金の振込先としてF1の口座を指示していること,C1がL1ら3名の代金について,同月25日に融資を行い,これをF1に送金していることからも裏付けられる。このようなことからすれば,C1が代金を一括送金した事実と,本件A1株の譲渡当事者の確定の問題とは,何の関係もないというべきである。 c 本件取引において,C1が譲受人が完全には確定できていないにもかかわらず,放出5社に対して一括送金をしたのは,送金直後に譲受人が確定することが確実であり,暫定的に一括送金をしてもその回収に問題がないと判断される状況にあったからであり,実際にも,本件譲受人がB1グループと深い関係にあり信頼できる者に限られていたこと,本件A1株に十分な担保価値が認められたこと等から,C1が上記のような判断をしたことは不自然ではないのであって,上記の事実をもって,原告が本 グループと深い関係にあり信頼できる者に限られていたこと,本件A1株に十分な担保価値が認められたこと等から,C1が上記のような判断をしたことは不自然ではないのであって,上記の事実をもって,原告が本件A1株の譲受人とすることはできない。 d 他方,原告は,C1が上記の経過により行った一括送金に一切関与していないのみならず,このような手続的事項について報告も受けておらず,当時上記のような措置がとられたことを認識していなかったのであるから,C1が原告の関知しないところでどのような判断をしたとしても,原告が本件取引の当事者であることとは関係がないというべきである。 eC1は,未確定の譲受人分も含め,あくまで本件譲受人に対する融資又は立替払として,放出5社への送金処理を行っており,原告に対する融資又は立替払という発想を有していなかった。実際にも,C1は,一括送金後,未確定の譲受人分について,確定した譲受人との間で融資手続を行ったり,立替払した株代金の支払を受けたりしているのに対し,原告が信用を供与したり,原告から回収を行った事実は存在しない。 イ本件有価証券届出書についてa 本件有価証券届出書に,原告が本件A1株70万株を売り出したかのような記載があることは,前記2(2)エのとおりであり,被告は,このことが,原告が放出5社から本件A1株を買い受けて本件譲受人に売り渡した根拠の一つであると主張する。 b しかしながら,本件有価証券届出書は,実際の取引から約3年も経過した後に,株式の発行会社であるA1が作成したにすぎず,その作成には,本件取引の当事者及び原告が関与していないことから,本件取引の関係者の意思が反映されているとはいえない。のみならず,本件有価証券届出書の作成に当たっては,売買契約の当事者の確定に関する検討や事実調査も行われていない。こ 原告が関与していないことから,本件取引の関係者の意思が反映されているとはいえない。のみならず,本件有価証券届出書の作成に当たっては,売買契約の当事者の確定に関する検討や事実調査も行われていない。このようなことからすれば,本件有価証券届出書は,原告が当事者であることを自認するものでないことはもちろん,売買契約の当事者の確定の観点からは意味のない書類であることが明らかである。 c また,本件有価証券届出書の作成に直接携わったA1経理部の部長であったO2は,平成元年5月ころ以降,東京地方検察庁が行った捜査の結果を受けて,大蔵省証券局(当時)の担当官から,本件A1株の譲渡が原告による株式の売出しに該当し,証券取引法4条の規定する届出義務違反になることから,A1としてもそのような内容の有価証券届出書を提出するよう強く要請された。O2の上司であったM1も,同条違反の容疑で逮捕された後,不起訴処分とされたが,同年8月ころ以降,大蔵省証券局から呼出しを受け,担当課長から,検察庁が株式の売出しに該当すると認定している以上,事後的にでも届出があったという形式を整える必要があるから,原告が売り出した形で有価証券届出書を出して欲しい旨要請されたうえ,これに応じない場合,A1株の店頭登録を再審査することや,東京証券取引所第2部への上場が認められなくなることを示唆された。 O2及びM1は,大蔵省証券局の担当官に対し,本件A1株の譲渡は相対取引であるから,要請された形式による届出をする必要はないと訴えたが,担当官からは,「これはA1がやったかB1がやったかC1がやったか,それは非常に問題だが,それをまとめていたのが取締役兼財務部長であったM1と前会長のN2であったことは大変な問題である。また,N2ではなく,A1が売出し行為の主体ということになると,さらに大変な ,それは非常に問題だが,それをまとめていたのが取締役兼財務部長であったM1と前会長のN2であったことは大変な問題である。また,N2ではなく,A1が売出し行為の主体ということになると,さらに大変なことになる。全役員に辞めてもらわなければならなくなる。」,「放出5社分の取引だけでいいから,形式を整えるために,原告を売出人として届出書を出してもらいたい。そうでなければ,今後に支障を来す。」,「資金調達も困難になる。」などと告げられた。A1としては,B1事件に関する刑事事件の第1回公判を控えた状況下にあって,会社を守ることが最優先であったことや,売出し行為の主体が同社自体と認定されることは絶対に避けなければならなかったことから,事実に反する内容と認識しながらも,やむなく本件有価証券届出書を提出したのである。 このように,本件有価証券届出書は,作成者自身,その内容が事実に反することを認識したうえで,大蔵省証券局の強い要請に従って提出したものであることからも,その内容を真実と認めることはできない。 d 以上によれば,本件有価証券届出書の内容は,真実であるとはいえないから,その記載をもって,原告が本件A1株を売り出したことの根拠とする被告の主張は,理由がないといわざるを得ない。 ウ原告の検察官面前調書の信用性について原告の平成元年5月20日付け検察官面前調書(乙4)には,「私は昭和61年9月ごろ,A1株をH1,G1など放出5社から買い戻し,80人ぐらいに譲渡した。仲介やあっせんではなく,株式の売買である。」,「株数,価格,人選も私が決めたもので,放出5社の意向は全く入っていない。国会や捜査の初期の段階で,仲介・あっせんと申し上げたのは,証取法4条(有価証券無届け売出しの禁止)違反と言われるのを恐れたもので真実ではない」との記載がある。 しか 5社の意向は全く入っていない。国会や捜査の初期の段階で,仲介・あっせんと申し上げたのは,証取法4条(有価証券無届け売出しの禁止)違反と言われるのを恐れたもので真実ではない」との記載がある。 しかし,上記の記載は,いわゆるB1事件の捜査を担当した東京地検特捜部が,多数の関係者の身柄を一斉に拘束するために,本件取引が証券取引法2条の「売出し」に当たるとし,同法4条の届出義務違反という別件により逮捕勾留を行うために,いったん原告がA1株を取得し,その株を70名以上の本件譲受人に売り渡したという構成を取らざるを得ず,この構成に沿わない供述を一切認めない態度を貫いたことによるものであって,原告の真意によるものではなく,事実にも反するものである。 すなわち,原告は,昭和63年6月以降,B1事件によってマスコミから非難,中傷を受け続け,同年7月6日にはB1の会長を辞任し,同年11月及び12月には国会の証人喚問を受けたが,その間,抑うつ状態,全身衰弱に陥り,同年7月26日から入院治療を受けていた。しかし,原告は,同年12月以降,在宅のまま数回取調を受けた後,平成元年2月13日,日本電信電話株式会社法違反(贈賄)の嫌疑で逮捕され,それ以降,同年5月22日にQ2代議士らに対する贈賄の罪で起訴されるまでの間,実に99日間にわたり,検察官から連日想像を絶する厳しい取調べを受け,前記調書が作成されたころには,既に精神的,肉体的に疲労しきっていた。しかも,取調べにあたった検察官は,原告が黙秘や否認の態度をとると,大声で怒鳴り付けたり,机を蹴り上げたり,机をたたいたりしたほか,長時間起立させたり,土下座を強要するなど,暴力的な取調べを何度も繰り返し,自らが作り出したストーリーに反する弁解を聞かず,虚偽の調書に署名をさせようとした。 さらに,原告は,取調べに当 したほか,長時間起立させたり,土下座を強要するなど,暴力的な取調べを何度も繰り返し,自らが作り出したストーリーに反する弁解を聞かず,虚偽の調書に署名をさせようとした。 さらに,原告は,取調べに当たった検察官から,原告自身が黙秘ないし否認の態度を取り続けたり,調書に署名押印しない場合には,B1の社長であるR2,A1の社長であるK2らも逮捕すると脅された。当時,既に原告の逮捕と並行して,I2,M1,Q1,J2らB1の中堅幹部が相次いで逮捕されており,原告は,さらにR2,K2らの幹部も逮捕された場合には,金融機関による資金の引揚げなどにより,B1グループの存亡や,原告自身の死活にかかわる問題となることから,このような事態を避けるため,極度の危機意識の下で,虚偽の供述調書に署名をせざるを得ない心理状態に追いつめられた。 そして,原告は,耐え難い苦痛を伴う長期の身柄拘束から早期に釈放されて,危機に瀕したB1グループの再建のために陣頭指揮に当たりたいと強く望んでいたところ,そのような原告の心情を見透かした検察官は,「調書に署名しなければ判決が出るまで勾留する。そうなると社会へ出ても浦島太郎になってしまっているぞ。 それよりも,ここでは検事のいうとおりの調書に署名し,早期保釈を受けて,裁判所で君のいい分を主張すればいいではないか。」などと言って,保釈と自白を取引し,虚偽調書への署名を強要してきたのである。 このような,原告にとってはまさしく監禁下での拷問である検察官の取調べによって,本件で提出された検察官面前調書をはじめ,虚偽の供述調書が次々と作成されたのである。 原告は,国会証言においても,明確に「仲介斡旋」をした旨述べており,上記調書が作成されるまでの間,検察官の取調べに対しても,このことを何度も説明しており,事実そのような内容の調書も存在 のである。 原告は,国会証言においても,明確に「仲介斡旋」をした旨述べており,上記調書が作成されるまでの間,検察官の取調べに対しても,このことを何度も説明しており,事実そのような内容の調書も存在する。原告が国会証言において,自由な意思に基づいて述べたことが真実であり,これに反する前記調書は,真実を述べたものではなく,信用性は認められない。 エその他の検察官面前調書の信用性についてa 放出5社関係者の検察官面前調書について被告は,放出5社の関係者であるF2,V1,G2らの検察官面前調書における記載を根拠として,放出5社の株式がいったん原告に売却された旨主張しているが,これらの記載が客観的事実に反することは,前記のとおりである。上記各調書は,B1事件の騒然とした雰囲気の中で,検察官が描いた構図に沿って作成され,検察官が供述者に対して署名押印を強要したものであるから,上記の記載には信用性が認められない。 なお,F2からG1の保有するA1株の売却依頼を受けたM2が作成した,当時の事実経過に関するメモには,「61年夏頃,売却によってF2氏よりB1のN2氏からB1及びB1関係者に渡したいので返却したい旨要請が役員にあった。」,「譲渡先についてはB1関係と納得していました。」,「61年11月決算で売却益と借入返済がおきている事は承知していましたが,B1関係へ売却という事だけでした。」と記載されており,F2の検察官面前調書に信用性がないことを明確に裏付けている。加えて,F2の検察官面前調書には,同人が海外出張で不在の間に株式売買約定書の締結手続が行われた旨,客観的事実に反する記載があることからも,信用性がないことが窺われる。 そして,F2及びG2の本件における証言の内容は,自然であって一貫しており,上記のメモ,M1らの証言,客観証拠及び客観 れた旨,客観的事実に反する記載があることからも,信用性がないことが窺われる。 そして,F2及びG2の本件における証言の内容は,自然であって一貫しており,上記のメモ,M1らの証言,客観証拠及び客観的事実等に符合していることからも,信用性が高いことは明らかである。 b 手続担当者の検察官面前調書について被告は,本件取引の手続に関わったM1,Q1らの検察官面前調書中に,原告が本件A1株の売買の当事者であるかのような記載があることをもって,その主張を根拠付けようとする。 しかし,上記各記載は,客観証拠及び客観的事実に明らかに反するのみならず,長期にわたる身柄拘束や,起訴猶予,保釈等を材料とした検察官の強要の結果作成されたものであることは前記のとおりであって,信用性を認めることはできない。 なお,C1の総務部長S2が,Q1の任意取調べの段階において検察官の事情聴取ごとにその直後に作成した供述結果聴取書(甲64)によれば,検察官が一方的に原告がA1株を買い戻した旨調書に記載し,Q1が一貫してその訂正を求めていたことが明らかであり,このように,検察官によるこの点についての取調べは,一貫して,原告が本件A1株を買い戻したことを不動の前提として行われたものである。 これに対し,M1,Q1らの本件における供述は,自然であって一貫しており,原告の本人尋問における供述,G2及びF2の証言,客観証拠及び客観的事実に符合しており,その信用性が高いことは明らかである。 c 本件譲受人の検察官面前調書及び聴取書被告は,本件譲受人の一部の検察官面前調書や聴取書に,「売主はN2と思った」,「N2かもしくはB1本社からの譲渡と思った」,「N2側からの譲渡と思った」といった供述の記載があることを,その主張の根拠としている。 しかしながら,そもそも本件譲受人の内心に 主はN2と思った」,「N2かもしくはB1本社からの譲渡と思った」,「N2側からの譲渡と思った」といった供述の記載があることを,その主張の根拠としている。 しかしながら,そもそも本件譲受人の内心についての供述が,証拠として意味を持たないことは,前記のとおりである。 また,被告が提出する上記各聴取書においても,各供述者は,原告が売主であると明言しているわけではなく,原告を売主と認定するだけの証明力が乏しいといわざるを得ない。 さらに,上記各検察官面前調書についても,各供述者は,譲渡人が誰であったかについては特に関心がない上に,取引から2年以上も経過しており,記憶も不十分であったことから,一定の結論を前提とする立場で取調べに臨んでいた検察官の誘導により,このような調書が作成されたものというべきである。実際にも,検察官面前調書に記載された供述が誤っているとして,これを撤回した者もある。 そして,原告が売主であるかのような供述をしている譲受人も,実際には放出5社を譲渡人とした株式売買約定書に署名押印しており,それ以外の者が譲渡人であると誤解することは考え難いというべきである。 むしろ,検察官も被告も,基本的には本件譲受人78名全員に対して,事情聴取をしたものと推測されるにもかかわらず,原告又は原告側が譲渡人であると認識した旨供述した譲受人が僅か数名しかいないこと自体が,被告の主張に理由がないことを裏付けるものである。 (6) 被告の予備的主張に対する反論被告は,仮に,原告と放出5社の経営者であるU1らとの間で,本件A1株の買主が誰であるかについて明確な合意がなく,また,原告に本件A1株を自ら譲り受けなければならない合理的な理由がなかったとしても,本件取引全体に対する法的評価という観点からすれば,放出5社から本件A1株を買い受けたのは,原 て明確な合意がなく,また,原告に本件A1株を自ら譲り受けなければならない合理的な理由がなかったとしても,本件取引全体に対する法的評価という観点からすれば,放出5社から本件A1株を買い受けたのは,原告であると主張する。 しかし,原告のU1らに対する依頼の内容,その際の原告及びU1らの認識については,前記のとおりであり,本件A1株の処分について,U1らと原告との間で,原告が自ら取得することを含め,原告の自由に任せる旨の合意が成立した事実はない。 また,被告が上記予備的主張の根拠とする,C1から放出5社への代金支払が譲受人がすべて確定する前に一括して行われたこと,本件A1株の株券がいったんC1に集められたこと,原告が本件取引に終始一貫して関与し,すべての事柄にその意思を及ぼし,中核的な役割を担っていたこと等についても,これらの事情をもって,原告が放出5社から本件A1株を買い受けたものと認めることができないことは,前記のとおりである。 (7) 原告が本件取引の当事者でないことに関する予備的主張仮に,本件取引において,放出5社が本件A1株を本件譲受人に直接売り渡したものでないとしても,①原告は,本件取引を実行した当時,B1及びA1の代表取締役であったこと,②原告が本件取引を実行した動機の中心は,社員皆経営者主義に基づくA1としての労務政策的配慮や,A1を中心とするB1グループ各社の営業政策的配慮にあったこと,③本件取引を発想したのは,原告であったものの,一連の仲介行為のすべてを原告が行ったわけではなく,A1やC1の代表者及び役員等も深く関与していること,④放出5社は,昭和60年4月に,A1が新たに発行したA1株を第三者割当により引き受けたものであって,決して原告からこれを譲り受けたわけではなく,仮に被告の主張するように,「買戻し」が行われ ること,④放出5社は,昭和60年4月に,A1が新たに発行したA1株を第三者割当により引き受けたものであって,決して原告からこれを譲り受けたわけではなく,仮に被告の主張するように,「買戻し」が行われたとしても,その主体は原告ではあり得ず,あえていえばA1自体となるとも考えられること等の事情を勘案すれば,本件A1株をいったん買い受けたのは,B1,A1,C1等,B1グループに属する会社と認定されるべきであって,原告が買い受けたものということはできない。 (8) 結論以上のとおり,原告が本件A1株の売買の当事者でなかったことは明白であり,これを前提として被告が行った本件各処分はいずれも違法であることが明らかであるから,本件更正処分のうち確定申告を超える部分,本件賦課決定処分並びに本件第1及び第2納税告知処分は,いずれも取り消されるべきである。 (被告の主張)昭和61年に行われた本件A1株に関する一連の取引である本件取引は,原告が放出5社から本件A1株をいったん買い受けたうえで,これらを本件譲受人に売り渡したものであることは,以下のとおり明らかであるから,これを前提とした本件各処分は,前記3のとおり,いずれも適法である。 (1) 本件A1株の取引に関する経緯ア原告とB1グループ各社の関係原告は,B1の創業者兼大株主であり,本件取引当時,同社の代表取締役社長でもあった。 また,原告は,A1の設立以来,同社の代表取締役社長の職にあり,昭和60年7月30日,K2に代表取締役社長の職を譲った後は,同社の代表取締役会長の職にあった。原告は,昭和61年4月30日時点における同社の発行済株式総数の13・04パーセントを所有しており,同社の経営全般に極めて強い影響力を有していた。 さらに,原告は,A1が販売する不動産の購入者に資金の融資業務を行う目 4月30日時点における同社の発行済株式総数の13・04パーセントを所有しており,同社の経営全般に極めて強い影響力を有していた。 さらに,原告は,A1が販売する不動産の購入者に資金の融資業務を行う目的でC1が設立されて以来,昭和60年6月まで同社の代表取締役社長を務め,同年7月に代表取締役社長の職をQ1に譲った後も,代表取締役会長を務め,昭和61年4月に上記会長職を辞した後も,同社の株式の100パーセントを保有していたB1の創業者兼大株主で代表取締役社長であったことから,C1に極めて強い影響力を有していた。 そして,原告は,上記各社をはじめ多数の会社から構成されるB1グループの総帥として,その業務全般を統括していた。 イ A1株の店頭登録の経緯a 店頭登録による株式公開の実情株式の店頭登録手続は,前記2(2)アのとおりであり,店頭登録銘柄については,店頭登録時に一定の株式数以上の株式を公開することとされているところ,分売の方法により公開した場合における証券会社への株式の売り委託の際,投資家に対して公開される株式の価格は,D1の指導により,類似会社比準方式で算定されることとされている。 類似会社比準方式とは,株式公開の対象となる会社と業種,業態が同一又は類似し,既に株式が公開されている会社を数社選び,これらの会社の株式公開日にできるだけ近い1か月間の平均株価を基に,当該公開会社と類似会社の1株当たりの配当金,純利益,純資産を比較して,当該公開会社の株価を算定する方式である。類似会社を最終的に選定するのは,公開時に売り出す株を持っている者であるが,当該発行会社にとっては,経営上重要な事項であることから,申請証券会社と協議し,取締役会等の承認等の手続をとることになる。 このような方式により,最低分売価格が算出され,その30パーセント増 るが,当該発行会社にとっては,経営上重要な事項であることから,申請証券会社と協議し,取締役会等の承認等の手続をとることになる。 このような方式により,最低分売価格が算出され,その30パーセント増の価格が,最高分売価格とされ,分売の際には,最低分売価格と最高分売価格の範囲内で,売買開始日における初値が決定される。 そして,A1株が店頭登録された昭和61年10月30日の直近3年間に店頭登録された株式38銘柄のうち,分売により株式公開の行われた6銘柄は,いずれもその初値が最高分売価格とされ,店頭登録後の株価は相当の期間初値を上回っている。 このように,分売に係る株式を分売価格で入手すれば,多額の利益が確実に得られることから,分売によって当該株式を入手することは一般に困難であり,特に,A1株の場合は,店頭登録後相当の値上がりが確実視されていたうえ,株式公開の約2か月前まで株式譲渡の制限により株主が僅少であったこと等から,原告又は同人の側近と特別な関係にない限り,店頭登録前にこれを入手することは極めて困難な状況にあった。 bA1株の店頭登録の経緯(a) B1グループの営業全般を統括する原告は,資本市場からの低利かつ安定的な資金調達の途を開き,企業イメージの向上を図るべく,昭和59年ころから,東京証券取引所第2部への上場によりA1の株式を公開することを企図した。そして,同族会社であった同社について,公正慣習規則第2号の店頭登録基準を満たすべく,株式数の増加を図るために,昭和60年2月及び同年4月,前記2(2)イbのとおり,A1株の第三者割当増資を行うなど,株式公開に向けて準備を行った。 同年4月の第三者割当増資における引受会社には,E1,F1,H1,G1及びI1が含まれていたが,E1の実質上の経営者であるU1,F1の代表取締役V1,H1及 うなど,株式公開に向けて準備を行った。 同年4月の第三者割当増資における引受会社には,E1,F1,H1,G1及びI1が含まれていたが,E1の実質上の経営者であるU1,F1の代表取締役V1,H1及びG1の代表取締役F2及びI1の代表取締役G2は,いずれも原告と個人的に親交があった。また,I1は,昭和61年3月,同じくG2が代表取締役を務めるJ1に対し,H2から譲り受けたA1株8万株と合わせて,A1株16万株を譲渡した。 A1は,昭和60年夏ころ,東京証券取引所第2部への上場を断念し,店頭登録の方法により株式を公開する方針の下に,社内体制の整備を進めた。そして,昭和61年に入り,株式公開に向けた社内体制の整備等の進捗や業績の好転等により店頭登録実現の見通しが立ったことから,同年2月24日開催の取締役会において,店頭登録予定日を同年10月下旬とし,店頭登録申請日を同年8月1日とすること,原告がその所有する株式を分売する方法により株式公開すること等を決定し,同年5月19日開催の取締役会において,主幹事証券会社をK1にすること等を決定した。 その後,A1は,同年8月1日ころ,K1に店頭登録申請のための有価証券報告書を交付し,K1は,同月20日ころ,D1へ登録申請を行い,同年10月15日,同協会理事会の決定により,売買開始日である同月30日をもって店頭登録が承認された。 (b) A1株の公開価格は,当初A1が類似会社比準方式により検討した際は,1株2500円程度とされたが,昭和61年6月ころには,K1の担当者T2が,原告ほかB1及びA1の役員に対し,A1の業績の急上昇などから,1株5000円程度にはなる旨述べていた。 また,A1の監査室長であったU2も,原告から店頭登録後の株価について説明を求められた際,1株5400円を目標に頑張っている旨説明 の業績の急上昇などから,1株5000円程度にはなる旨述べていた。 また,A1の監査室長であったU2も,原告から店頭登録後の株価について説明を求められた際,1株5400円を目標に頑張っている旨説明しており,店頭登録後のA1株の価格が少なくとも1株5000円以上と予想されることは,当時のB1及びA1の役員及び幹部の常識となっていた。 さらに,同年9月16日,B1本社において,A1株の店頭登録時の分売価格が協議された際,原告及びA1の意向により,類似会社比準方式に用いる類似会社をV2株式会社(以下「V2」という。)及びW2株式会社の2社とすることが決定されたが,K1が上記2社を類似会社として試算したA1株の分売価格は,1株4162円であった。そして,K1は,その後の上記2社の株価の動きを加味して改めて試算し,A1株1株の最低分売価格を4060円,最高分売価格を5270円とする「株価算定書」を作成し,A1の了解を得た後,同年10月13日,D1に提出した。 このように,原告をはじめ,同年9月16日の上記協議に出席したB1及びA1の役員らは,遅くとも同日以降,最低分売価格が1株4000円程度になることを十分認識していた。 そして,同年10月30日,A1株が店頭登録されて分売が実施された際,分売株式数を大幅に上回る数の買付申込みがあり,1株5270円の初値で約定が成立し,同月31日に開始された公開取引における株価は,原告らの予想どおり,上記の初値を超えて推移した。 ウ本件A1株買戻しの経緯原告は,かねてから労務政策的配慮として社員皆経営者主義を唱え,従業員に対し,所属するB1グループ各社の自社株の所有を勧めていた。 A1は,昭和61年4月期の決算結果が良好であったことを受けて,店頭登録のための社内整備や同社の急激な業務拡大に対応するため, ,従業員に対し,所属するB1グループ各社の自社株の所有を勧めていた。 A1は,昭和61年4月期の決算結果が良好であったことを受けて,店頭登録のための社内整備や同社の急激な業務拡大に対応するため,従業員を増員する必要が生じた。このため,同年7月1日付けで,B1本社等からA1に対し,30ないし40名が転籍したほか,A1における他社からの中途採用者も増加する状況にあった。そこで,原告は,A1が同年10月下旬に株式の店頭登録を予定していたことから,社員皆経営者主義の方針に基づき,上記転籍者等にA1株を取得させようと考え,同年7月下旬ころ,B1本社にM1を呼び,上記転籍者等のうちA1株を所有していない者にこれを取得させるための手続を行うよう指示するとともに,上記転籍者等に取得させるA1株については,原告のA1株が公開時の分売を予定しているため譲渡できないことから,原告以外のB1の役員から一部ずつ放出させた株を割り当てることとし,そのためのリストと,A1の部次長以上の役職の者の持株残高リストを作成すること等を指示した。 また,原告は,上記のいわば慣例に従った株式の譲渡とは別に,同年8月中旬ころ,M1に対し,A1の部次長以上の役職の者に,さらにA1株を取得させるため,現時点で部次長以上の役職の者が所有している持株を調べ,株主名簿のコピーを持参するよう指示した。 原告は,上記の持株リスト及び株主名簿のコピーを受け取った1,2日後,M1に対し,A1の部次長以上の役職の者に取得させるA1株について,原告のA1株が店頭登録の関係で譲渡できないから,E1,F1等から買い戻し,これを取得させる意向を示したうえで,M1に割当て作業を指示した。 その際,原告からA1株の買戻しの際の価格を試算するよう指示を受けたM1は,B1の役員から転籍者等に対する株式の分 等から買い戻し,これを取得させる意向を示したうえで,M1に割当て作業を指示した。 その際,原告からA1株の買戻しの際の価格を試算するよう指示を受けたM1は,B1の役員から転籍者等に対する株式の分配については,個人対個人の株取引であって,原則として非課税であるが,原告が第三者割当先から買い戻すA1株については,法人対個人の株売買ということになり,時価方式で行わないと税務上否認されて,法人,個人とも課税されるおそれがあると考えていた。M1は,V2とX2株式会社(以下「X2」という。)を類似会社として類似会社比準方式により株価を試算したところ,1株3000円余という結果となった。M1は,V2とX2を類似会社として試算することは,A1の実態に合わないと思ったが,上記2社を類似会社に選定すれば,株価が低く算出され,原告の希望にも沿う上に,1株3000円なら税務署から文句も出ないと考えて,原告に対し,1株3000円で買い戻すことを進言した。そして,原告は,E1,F1等から買い戻すA1株の価格を1株3000円として折衝することにした。 原告は,A1株の店頭登録後の株価が1株5000円以上になると認識していたことから,A1の役職員のみならず,原告と仕事の関係等でつながりのある社外の者や,原告が個人的に世話になった者,さらには信頼し尊敬している者にも,値上がりが確実に見込まれるA1株を取得させて喜んでもらいたいという気持ちを持つようになったが,その際,譲り渡すA1株をどのようにして調達するかが問題であった。 そこで,原告は,昭和61年8月14日又は15日ころ,個人的に親交のあるU1に対し,同人が実質上経営するE1が昭和60年4月に第三者割当を受けて保有していたA1株20万株を譲渡するよう依頼したところ,U1が意外にも簡単に了承したことから,上記のよ ,個人的に親交のあるU1に対し,同人が実質上経営するE1が昭和60年4月に第三者割当を受けて保有していたA1株20万株を譲渡するよう依頼したところ,U1が意外にも簡単に了承したことから,上記のような社外の者にも,値上がりが確実に見込まれる本件A1株を所有させることとした。 そして,原告は,このような目的を達するために,ある程度まとまった数量のA1株が必要になると考え,昭和61年9月上旬から中旬にかけて,原告自ら,F1の代表取締役のV1,H1及びG1の代表取締役のF2並びにJ1の代表取締役のG2に,それぞれ電話し又は直接赴くなどして依頼し,上記各社との間で本件A1株を買い戻す合意をした。原告が本件A1株の買戻先として放出5社を選んだのは,放出5社がいずれもいわば個人会社であって,A1株を譲渡する場合に,取締役会の開催,議決等の手続や,経理手続面での煩雑さを回避できると考えられたことと,原告が特にF2,G2と個人的な親交があり,融通が利くことによるものであった。 エ放出5社からの買戻しの交渉経緯aE1との買戻し合意の成立とU1の認識等(a) E1との買戻し合意の成立U1は,A1が昭和60年4月に第三者割当増資をした際,X1がA1株40万株を,U1の個人会社ともいうべきE1がA1株20万株を,それぞれ引き受けた。 その後,原告は,昭和61年8月14日又は15日ころ,U1に対し,原告にあちこちからA1株を配ってくれという依頼があるとして,E1が保有するA1株20万株を1株3000円で買い戻したい旨申し出た。 U1は,Y1から,A1株が同年10月末に公開されることや,その最低価額が1株4000円程度と思われることを聞いており,原告を「何と厚かましい業腹な奴だ。」などと思ったものの,原告の上記申出を拒否することはプライドが許さず,また, 0月末に公開されることや,その最低価額が1株4000円程度と思われることを聞いており,原告を「何と厚かましい業腹な奴だ。」などと思ったものの,原告の上記申出を拒否することはプライドが許さず,また,これに応じておけば原告に恩を着せることができると考え,この申出を承諾し,原告の同席している場でY1に対し,E1の保有するA1株を1株3000円で原告に売り戻す事務手続を進めるよう指示した。 こうして,原告とE1の間において,同年8月14日又は15日ころ,本件A1株20万株を1株3000円で売買する合意が成立したが,その際原告は,U1に対し,具体的な売却先等は告げなかった。 (b) U1の認識U1は,上記の経緯からも明らかなとおり,本件A1株を原告に売るものと認識しており,いわゆるB1事件が報道された後に,本件A1株の株式売買約定書に本件譲受人が譲受人として記載されていることや,C1が代金を送金したことを知ったが,上記約定書は原告の都合で形式的に作成されたにすぎないと認識していたものである。 また,U1は,上記報道が行われていた昭和63年10月中旬ころ,記者会見を開く前日に,礼儀として原告に電話をしたところ,原告がU1に対し,あたかもU1自身が本件譲受人14名との間で直接A1株の売買をしたかのような話をしたため,事実をすり替えてごまかそうとする原告に立腹して怒鳴り付け,原告がU1に謝ったことがあり,このことからも,U1が本件A1株の売買の相手方を原告であると認識し,原告も同様の認識であったことが明らかである。 さらに,U1としては,まさに原告が売却の相手方であると認識していたからこそ,店頭登録前の本件A1株を1株3000円という不利な条件で売却したのであって,U1にとって,買主が原告であることは,重要な要素として認識されていたものといわ 却の相手方であると認識していたからこそ,店頭登録前の本件A1株を1株3000円という不利な条件で売却したのであって,U1にとって,買主が原告であることは,重要な要素として認識されていたものといわざるを得ない。そして,他の放出5社が同様の不利な条件で本件A1株を売却したことに照らせば,他の放出5社の経営者においても,本件A1株の買主について,同様の認識を有していたものというべきである。 (c) U1の供述の信用性U1は,検察官面前供述調書において,前記(a)及び(b)のとおり,原告が本件A1株の譲受人である旨供述するところ,別件刑事事件においても,原告が譲受人である旨一貫して証言しており,U1の上記各供述は,十分信用することができる。 bF1との買戻し合意の成立とV1の認識等(a) F1との買戻し合意の成立V1は,昭和60年3月末ないし4月初めころ,A1株60万株を1株2500円で引き受けて欲しい旨の原告の申出を受けて,C2で40万株,F1で20万株のA1株をそれぞれ引き受けた。 その後,原告は,V1に対し,A1株20万株を1株3000円で買い戻したい旨申し出た。これに対し,V1は,A1株が約1か月後に公開されると聞いており,その場合1株当たり1000円は儲かるから,内心返したくないと思ったが,上記A1株が元来原告の好意により取得したものであったことから,原告の上記申出に応じることにした。 こうして,原告とF1との間において,昭和61年9月上旬ないし中旬ころ,本件A1株20万株を1株3000円で売買する合意が成立した。 (b) V1の認識V1は,別件刑事事件の捜査段階において,本件A1株の売却の相手方が原告であると認識していた旨供述している。また,V1から本件A1株の売却手続を行うよう命じられたD2も,その際のV1の話しぶり 識V1は,別件刑事事件の捜査段階において,本件A1株の売却の相手方が原告であると認識していた旨供述している。また,V1から本件A1株の売却手続を行うよう命じられたD2も,その際のV1の話しぶりから,その売却先が原告又はA1若しくはB1と思っていた旨供述している。V1及びD2の上記各供述は,相互に合致するのみならず,他の関係者の供述とも符合しており,その信用性は高いというべきである。 (c) V1の別件刑事事件の証人尋問における供述の信用性V1は,別件刑事事件における証人尋問において,捜査段階における上記の供述に反し,原告から「A1の人と,あと,どうしても回してやりたい人があるので,あなたのほうから売ってあげてやという話であったと思」うと供述している。 しかし,V1は,本件A1株の買主が原告か本件譲受人かが争点となっていた別件刑事事件において,検察官面前調書の録取後,訂正等の申立てをせずに署名押印を行なっている。 また,原告の依頼を受け,A1の安定株主となるために60万株ものA1株を引き受けたV1が,突然原告からA1株を第三者に売却するよう要請されたのであれば,当然,原告に譲渡先を尋ねるはずであるにもかかわらず,このようなこともせずに売却に応じたばかりか,譲渡先についても興味を示していないことは,V1が,本件A1株の譲渡先が原告又は原告が経営するB1であると考えていたことを裏付けるものである。 さらに,V1は,別件刑事事件において前記証言を行なう前に,原告の友人であるF2から尋問事項等について情報収集をしており,V1とF2の間で,原告に不利な証言をしないよう話合いが持たれた結果,V1が上記証言をしたことは想像に難くない。 したがって,以上によれば,本件A1株の売却先に関するV1の認識については,V1の別件刑事事件の証人尋問に 不利な証言をしないよう話合いが持たれた結果,V1が上記証言をしたことは想像に難くない。 したがって,以上によれば,本件A1株の売却先に関するV1の認識については,V1の別件刑事事件の証人尋問における前記供述を信用することはできず,捜査段階における前記供述の方が,自然かつ合理的であって,信用することができるというべきである。 cH1及びG1との買戻し合意の成立とF2の認識等(a) H1及びG1との買戻し合意の成立原告とは大学時代以来の親しい間柄にあったF2は,昭和60年4月のA1株の第三者割当増資に際し,H1において8万株を,G1において12万株をそれぞれ引き受けた。 原告は,昭和61年9月上旬ないし中旬ころ,F2に対し,どうしてもA1株を配りたい人がいるとして,A1株を1株3000円で買い戻したい旨申し出た。 F2は,A1株が年内にも公開され,その際多額の利益が得られることを期待していたため,原告がこのような時期に唐突に本件A1株の買戻しを要求した真意を測りかね,不満も抱いたが,この時の原告の態度から,親友であることに免じて何とか戻して欲しいという感じを受けたこと,元来A1株は原告との親交関係がなければ取得できなかったことから,結局,原告の要望を受け入れることにした。G1の保有するA1株の買戻しについては,F2が同社のオーナー会長Y2に事情を話し,その了承を得た。さらに,F2は,H1及びG1が引き受けた上記A1株を売り戻す事務手続をZ2に任せることとし,その旨を原告に伝えた。 こうして,昭和61年9月上旬ないし中旬ころ,原告とH1との間において本件A1株8万株を,原告とG1との間において本件A1株6万株を,いずれも1株3000円で売買する旨の合意が成立した。 (b) F2の認識F2は,本件A1株の売却の相手方が原告である の間において本件A1株8万株を,原告とG1との間において本件A1株6万株を,いずれも1株3000円で売買する旨の合意が成立した。 (b) F2の認識F2は,本件A1株の売却の相手方が原告であると認識しており,株式売買約定書上は直接本件譲受人に売却する形式とされていることは知っていたものの,これはあくまで形式的な書類上の扱いにすぎず,原告が本件譲受人に本件A1株を売却したものと考えていた。 (c) F2の別件刑事事件等における供述の信用性F2は,捜査段階において,検察官に対し,前記(a)及び(b)に沿った内容の供述をしていたが,別件刑事事件の証人尋問においてこれを覆し,原告からの申出について「A1の若い役員と新しい幹部の人達に上場というか店頭公開前に株を分けてやりたいのでN2の持ってる株を分けてやるわけにいかないので,私共の会社の株を譲ってくれないかという」趣旨であった旨供述しているほか,陳述録取書及び本件の証人尋問においても,同様の趣旨の供述をしている。 しかし,F2は,原告と大学の同級生で,卒業後も親しい交際を続けており,原告の依頼によりA1の監査役に就任し,役員報酬を得ていたことに照らしても,中立的な証人とはいい難い。 また,F2は,本件A1株の買主が原告か本件譲受人かが争点となった別件刑事事件において,検察官面前調書の録取後,訂正等の申立てをせずに署名押印をしている。 さらに,原告が売買の当事者でないことの根拠としてF2が挙げる,上記陳述録取書添付の取締役会議事録は,日付を遡らせたものであること,取締役会に参加していない者の押印があること,取引された株式名や取引日も違うこと等に照らし,国税当局から取締役会議事録の提示を求められ,原告が不利にならないように急遽作成されたものであって,内容が虚偽である可能性が極めて高い。 印があること,取引された株式名や取引日も違うこと等に照らし,国税当局から取締役会議事録の提示を求められ,原告が不利にならないように急遽作成されたものであって,内容が虚偽である可能性が極めて高い。 加えて,F2の後任としてG1の代表取締役になったM2は,昭和63年12月ころ,本件A1の売却について同人らに詳細な説明がなかったことを抗議したところ,F2が「H1の方もN2さんに返したが,返したことについては,B1関係役員,社員に持たせたいということなので返した。」と謝罪した旨述べている。 以上によれば,本件A1株の売却先に関するF2の認識については,F2の別件刑事事件の証人尋問,上記陳述録取書及び本件の証人尋問における各供述は,いずれも信用できないのに対し,捜査段階における検察官に対する供述は,買戻しに応じた経緯等につき詳細かつ具体的に供述しており,信用性が高いことが明らかである。 dJ1との買戻し合意の成立とG2の認識等(a) J1との買戻し合意の成立G2は,昭和60年4月のA1株の第三者割当増資の際,いわゆる「利喰い」目的で,A1株8万株をI1で引き受け,さらに同年6月,H2からA1株8万株を同様の目的で購入したが,原告からA1株が公開されることを聞き,その売却益でJ1の累積欠損を消すことができると考えて,A1株合計16万株を,G2が同じく代表者を務めるJ1に売却した。 その後,原告は,昭和61年9月中旬ころ,G2に対し,A1株16万株を1株3000円で買い戻したい旨申し出た。G2としては,本件A1株を公開時に売却すればもう少し儲かるとは思ったものの,原告との交誼や原告の面子も考えて,原告の申出を承諾した。 こうして,原告とJ1との間において,昭和61年9月中旬ころ,本件A1株16万株を1株3000円で売買する旨の合意が成立し は思ったものの,原告との交誼や原告の面子も考えて,原告の申出を承諾した。 こうして,原告とJ1との間において,昭和61年9月中旬ころ,本件A1株16万株を1株3000円で売買する旨の合意が成立した。 (b) G2の認識G2は,本件A1株の売却の相手方は原告であると認識しており,株式売買約定書に記載された本件譲受人に直接売却したとは考えていなかった。 (c) G2の陳述録取書等における供述の信用性G2は,捜査段階において,検察官に対し,前記(a)及び(b)に沿う内容の供述をしていたが,陳述録取書(甲14)及び本件の証人尋問において,これを否定し,原告に売るという意識はなく,原告のあっせんにより第三者に譲渡されるだろうと考えた旨供述している。 しかしながら,G2は,大学卒業後間もなくF2の紹介で原告と知り合った後,原告と親しく交際していた者であって,中立的な証人でない。 また,G2は,別件刑事事件においても,検察官面前調書の録取後,一部訂正を申し立ててその訂正が行われた後に署名押印をしており,上記供述調書の内容は,G2の当時の供述をありのままに録取したものと認められる。 さらに,G2は,上記陳述録取書では,原告から買戻しを依頼された際の正確な言葉は覚えていない旨供述しているにもかかわらず,本件の証人尋問においては,この点につき,原告に有利になるように具体的に証言するなど,供述内容に不自然な変遷が認められる。 以上のとおり,G2の上記陳述録取書及び本件の証人尋問における各供述は,いずれも信用できないのに対し,前記検察官面前調書における供述内容は,G2自身の内心の動き等を含む具体的かつ自然なものであって,その信用性が高いことが明らかである。 オ A1株買戻しの手続a 原告の指示内容原告は,放出5社との間において,本件A1株合計7 容は,G2自身の内心の動き等を含む具体的かつ自然なものであって,その信用性が高いことが明らかである。 オ A1株買戻しの手続a 原告の指示内容原告は,放出5社との間において,本件A1株合計70万株を1株3000円で買い戻す旨の合意をそれぞれ成立させた直後ころ,M1を全般的な責任者とし,C1のQ1及びE2とともに,放出5社との間において,上記売買の手続を行うよう指示した。 M1は,最初に原告から「E1から20万株,F1から10万株買い戻す話がついたから手続をしてくれ」と指示され,昭和61年8月27日,Q1とともにE1に赴き,同社との間の買戻しの手続を行なった。また,F1との間の買戻しの手続は,E2が行なった。 その後,M1は,放出5社からA1株を買い戻してA1の部次長以上の役職の者に譲渡する手続を進めている最中に,それとは別に,今度は原告の知人,世話になった社外の者等に公開前のA1株を譲渡する手続を行うよう,原告から指示を受けた。 これらの手続に当たり,A1株の譲渡先は,原告の方で決定したうえ,B1本社社長室次長のJ2を通じてM1に連絡し,M1が買戻先からA1株を購入する手続をしたうえ,譲渡先に株を譲渡する手続の取りまとめを行った。 また,原告は,A1株の購入資金を用意することができない社外の者に対する資金の貸付けについて,社内の者に株を持たせる際にC1から資金を貸し付けていたのと同様の扱いとするよう指示したことから,社外の者に対する資金の貸付けについても,同様の処理が行われた。 なお,原告は,昭和61年10月にA1株が公開される際の価格が1株3500円ないし4000円程度と見込まれており,同月以降の譲渡については,税務署から低廉譲渡という指摘を受けかねないこと等から,M1,Q1,I2,J2らに対し,A1株を取得させる一連の 価格が1株3500円ないし4000円程度と見込まれており,同月以降の譲渡については,税務署から低廉譲渡という指摘を受けかねないこと等から,M1,Q1,I2,J2らに対し,A1株を取得させる一連の手続を,同年9月末までに終了させるよう指示した。しかし,手続が次第に遅れ始めたことから,M1は,同月中旬ころ,Q1及びJ2と相談し,同月30日に一括して決済することにし,その旨原告に報告して了解を得た。このため,放出5社に対し,譲渡先から金銭消費貸借契約書等の必要書類を回収したか否かにかかわらず,同日にC1から一括して代金を支払うこととした。 そして,実際に同日までに必要書類が回収されたのは,わずか20件程度にすぎず,本件A1株の転売先も把握できていなかったが,本件A1株の売買代金は,上記取決めに従い,同日,C1から一括して放出5社に支払われた。 b 株式売買約定書の譲受名義人についてM1は,原告が放出5社からA1株を買い戻したものと理解しており,原告が放出5社と本件譲受人との間の売買を仲介したとは認識していなかった。M1がこのように認識したのは,原告が本件A1株を放出5社からまとめて買い戻し,その譲渡先,譲渡株式数等を原告の判断により決定して譲渡した以上,放出5社は原告に売却する認識しかなく,本件譲受人も原告から譲渡を受けるという認識しかなかったと推測されることによるものであった。 そして,M1は,本件取引に関する株式売買約定書が,放出5社と本件譲受人との間において直接売買を行う形式とされたのは,A1株の店頭登録を間近に控えた当時,原告が株集めをして分売すれば,本件内規に違反することとなり,店頭登録できなくなることから,分売主である原告の名前を出せない事情によるものと考えていた。このように,株式売買約定書上,放出5社と本件譲受人との間にお して分売すれば,本件内規に違反することとなり,店頭登録できなくなることから,分売主である原告の名前を出せない事情によるものと考えていた。このように,株式売買約定書上,放出5社と本件譲受人との間において,本件A1株の売買を直接行う形式とされたことは,原告もQ1から報告を受けて了解していた。 M1らは,株式売買約定書の作成について,原告が選んだ譲受人から既にその押印等を受けていた場合には,買戻先の押印等を受けてこれを完成させたが,譲受人が決まっていない場合や,譲受人との間で株式売買約定書の作成等の手続が終了していない場合には,放出5社との事務手続を先行させ,放出5社各社に対し,譲受人,売買株数,約定金額等の各欄が白紙の株式売買約定書を持参して,これに押印等を受けていた。M1らは,原告から譲渡の指示を受けた株数を基に,譲受人1人当たり5000株程度を譲渡するものと見込んで,放出5社に白紙の株式売買約定書への押印等を求めたため,放出5社の押印等を受けたにもかかわらず譲受人が決まらずに不必要となった株式売買約定書の用紙もあったが,これらはシュレッダーにかけられて廃棄された。 cE1との事務手続原告から指示を受けたM1及びQ1は,昭和61年8月27日,X1のY1を訪ね,E1との間における本件A1株の売買の事務手続を開始した。その際,M1は,Y1に対し,E1の保有するA1株20万株を同年9月10日をめどに決済したい旨述べ,A1株が同年10月30日に公開される予定であること,その際の株価が1株5000円程度になる見込みであることを説明した。 M1は,同年9月24日,Y1を訪ね,株式売買約定書各2枚が1組になったもの14通と有価証券取引書14通を示した。これらのうちの12通には譲受人の住所及び氏名等が記入されていたが,残り2通は譲受人の署名欄等 同年9月24日,Y1を訪ね,株式売買約定書各2枚が1組になったもの14通と有価証券取引書14通を示した。これらのうちの12通には譲受人の住所及び氏名等が記入されていたが,残り2通は譲受人の署名欄等が空欄であり,「20万株のうち18万株をこういう人達12名に売ることになりました。しかし,残り2万株についてはその譲受人の名義が確定していません。2名に各1万株ずつ回すつもりです。」と説明した。本来は譲渡人であるE1が作成すべき上記有価証券取引書は,M1が既に作成して準備していた。Y1は,上記株式売買約定書及び有価証券取引書の当事者欄(譲渡人欄)にE1の社名入りゴム判と代表者印を押捺し,譲受人が確定したB2ら12名に係る株式売買約定書の一対のうちの各1枚と有価証券取引書をその場で受領し,譲受人が未定の2名分の株式売買約定書及び有価証券取引書をM1に返し,M1に本件A1株20万株の株券を渡した。M1は,帰り際に,Y1に対し,「約定書に書いてあるとおり,9月30日に決済します。名前が決まっていない2名については後日お届けします。」と説明したところ,同年10月上旬に,譲受人のうち未定であった2名に係る株式売買約定書等がY1に届けられた。 本件A1株20万株の売買代金については,C1が,同年9月30日,全額6億円を一括して株式会社A3銀行(当時の商号。以下「A3銀行」という。)B3支店のE1名義普通預金口座に振り込んだ。 dF1との事務手続F1との間における本件A1株の売買の事務手続は,原告の指示を受けたM1がE2に依頼し,E2がF1のD2との間で行った。 昭和61年9月25日,A1株10万株分について,L1名義で1億6500万円,M1名義で7500万円,N1名義で6000万円が,株式会社C3銀行(当時の商号。以下「C3銀行」という。)D3支 た。 昭和61年9月25日,A1株10万株分について,L1名義で1億6500万円,M1名義で7500万円,N1名義で6000万円が,株式会社C3銀行(当時の商号。以下「C3銀行」という。)D3支店のF1名義当座預金口座に,それぞれ振込入金されているが,これらは,C1がL1ら3名に対する融資を実行したことに伴い,同社が上記各金員の振込手続を行ったものである。 E2は,上記振込と相前後して,A1本社から送付された20数組の株式売買約定書等を持参してD2を訪ね,事務手続を行ったが,上記株式売買約定書等のうち,譲受人欄に署名押印されていたのは,L1ら3名に係る10万株分のみであり,その他の10万株分については空欄であった。D2は,譲受人欄に署名押印のある上記3名分の株式売買約定書等については,譲渡人欄に社名判や社印を押捺し,その場で1枚をD2が,もう1枚をE2が受領したが,譲受人欄等が空欄であるその他の分については,F1に交付すべき分も含め,E2が預かった。その際,D2は,原告が売買を申し入れており,E2はその窓口にすぎないと認識していたので,F1としてはあくまで原告又はB1グループにA1株を売却しているのであって,E2が未定であると言っていた「売り先」は,その転売先と理解していた。 D2は,同月26日,既に代金が振り込まれた10万株分の株券をA1経理部長宛に郵送し,残り10万株分の株券を,株式の代金が振り込まれた後の同年10月1日に,A1経理部長宛に郵送した。また,残り10万株分の代金については,同年9月30日,C1名義で2億8500万円,O1名義で1500万円が,C3銀行D3支店のF1名義当座預金口座に振込送金された。 D2は,本件A1株20万株の売買につき,残り10万株分の株券を送付し,売買代金を受領したことにより,取引が完結した 名義で1500万円が,C3銀行D3支店のF1名義当座預金口座に振込送金された。 D2は,本件A1株20万株の売買につき,残り10万株分の株券を送付し,売買代金を受領したことにより,取引が完結したと考えていた。しかし,F1としては,株式売買約定書を受領していないことから,上記各入金を仮受金として処理せざるを得なかったことに加え,本件A1株の転売先ないし配分先を明らかにする正式の取引書を受けていないため,有価証券取引税を納付することができず,同年10月末のA1株の店頭登録後には取引相場が明らかになり,1株3000円による売買を税務署から指摘されれば,低廉譲渡としてF1が課税されることから,D2は,株式売買約定書等を持参するようE2に催促し続けた。その結果,E2は,同年11月4日,上記A1株10万株の配分先リスト,株式売買約定書等を持参した。このようなことから,F1は,同年9月25日に入金された本件A1株10万株に係る有価証券取引税を,同月26日に納付したものの,残る10万株に係る有価証券取引税は,同年11月5日に納付された。D2は,このような交渉の経緯や株券の送付先に照らしても,本件A1株の買主が原告又はB1グループであると思っていた。 eH1及びG1との事務手続H1及びG1との間における本件A1株の売買の事務手続は,原告の指示に基づき,F2と面識のあるQ1が,F2から事務手続を依頼されたZ2との間で行った。 Q1は,昭和61年9月下旬ころ,株式売買約定書を持参してH1の事務所にZ2を訪ね,上記約定書にH1及びG1の記名押印を行うよう依頼した。上記約定書の譲受人欄,株数欄等は,いずれも空白であったが,Z2は,F2から,Q1の言うとおり手続をしておくよう指示されていたことから,上記約定書に記名押印した。そして,同月30日,C1名義 した。上記約定書の譲受人欄,株数欄等は,いずれも空白であったが,Z2は,F2から,Q1の言うとおり手続をしておくよう指示されていたことから,上記約定書に記名押印した。そして,同月30日,C1名義で,H1の保有していたA1株8万株の譲渡代金2億4000万円がH1の預金口座に,また,G1の保有していたA1株6万株の譲渡代金1億8000万円がG1の預金口座に,それぞれ一括送金された。 同年10月10日に海外出張から帰国したF2は,Z2の報告により,C1による上記売買代金の一括支払の事実を知り,Q1に対し,自分は原告にA1株を売ったのに,なぜC1名義で代金が振り込まれたのか問い合わせたところ,Q1は,「こちらから手続上とりあえず振り込ませていただいただけで,N2がいろいろな方に売っておりますので,その約定書は後でお持ちします。」と回答した。 F2は,その1週間ないし10日後,Q1の使者から,H1分9通,G1分13通の株式売買約定書を受け取り,原告が本件A1株を上記約定書記載の者に譲渡したことを知った。 Z2は,本件A1株の譲渡代金が振り込まれたことから,有価証券取引税を納付しなければならないと思っていたが,同人が押印した株式売買約定書は,譲受人欄が空欄であった上に,譲渡代金もC1から一括して振り込まれたにすぎないことから,有価証券取引税の納付に当たり提出すべき有価証券取引書を作成することができず,とりあえず同月1日に有価証券取引税を納付する手続のみを行った。 なお,H1及びG1が売り渡した本件A1株20万株は,B1から受けた融資の担保として,従前よりB1側に預けられていた。 fJ1との事務手続J1との間における本件A1株の売買の事務手続は,原告の指示を受けたQ1が,G2との間で行った。 Q1は,昭和61年9月下旬ないし10月初旬ころ よりB1側に預けられていた。 fJ1との事務手続J1との間における本件A1株の売買の事務手続は,原告の指示を受けたQ1が,G2との間で行った。 Q1は,昭和61年9月下旬ないし10月初旬ころ,I1の事務所においてG2と面談し,株式売買約定書50数枚を差し出して,譲渡人欄に社判を押捺するよう依頼した。そこで,G2は,部下の経理部長をその場に呼び寄せ,上記約定書の譲渡人欄に,J1の代表者記名印と社判を押捺させた。 G2は,Q1が同年9月30日に本件A1株の譲渡代金を送金する旨述べたことから,A3銀行E3支店のJ1名義の当座預金口座番号をQ1に伝えたところ,同日,本件A1株の売買代金4億8000万円がC1から上記口座に一括して振り込まれた。 そこで,G2は,同日,本件A1株8万株の株券をQ1の使者に交付するとともに,本件A1株を購入した際のC1から借入した金員の弁済として,2億円の小切手を交付した。 なお,J1が売り渡した本件A1株の株券のうち,その余の8万株分の株券は,従前よりC1に担保として預けられていた。 カ本件譲受人に対する本件A1株の譲渡の状況a 本件譲受人を選定した状況と譲渡手続に対する原告の指示(a) 原告は,当初,A1への転籍者に,いわば慣例に従ってA1株を取得させるためにその買戻しを進めていたが,本件A1株の買戻しをU1に依頼したところ,容易に買い戻すことができたことから,他の第三者割当先からも容易に買い戻せるのではないかと考え,A1株の買戻先を順次広げることとした。 原告は,上記買戻しに当たって,買戻しの事実が公になると,店頭登録に先立って特別利害関係人が株集めをすることを禁止した本件内規に違反し,店頭登録ができなくなることから,本件A1株の買戻先として,昭和60年4月における第三者割当増資の引受先のうち, ると,店頭登録に先立って特別利害関係人が株集めをすることを禁止した本件内規に違反し,店頭登録ができなくなることから,本件A1株の買戻先として,昭和60年4月における第三者割当増資の引受先のうち,原告と個人的に親交のある者が経営しており,かつ,A1株の譲渡に取締役会の開催,決議等の手続を要しない個人会社である放出5社を選び,これらの会社から本件A1株合計70万株を買い戻した。 また,原告は,上記買戻し及び本件譲受人への譲渡に係る事務手続を,比較的口が堅く,信用できる人物と考えられたI2,J2及びQ1らに指示して,できるだけ隠密に実行させた。 そして,原告は,放出5社からの買戻しの作業と並行して,本件A1株70万株を,A1社内の役職員,社外の知人等に割り当てる作業を行った。 (b) 原告による譲受人のリストアップ作業とその後の事務手続に対する指示原告は,昭和61年8月下旬ないし9月上旬ころ,B1の社長室長であるI2及び同室次長であるJ2を,B1本社の社長室に呼び寄せ,社外の知人等のリストアップ作業を行った。上記作業は,原告が,A1株を譲渡すべき相手方及び譲渡株数を考えながら,I2及びJ2にその場で告げ,これをJ2が事務用箋に記載する方法で行われた。人選の基本的な方針としては,本件A1株総数70万株を念頭に,B1グループの社業の展開及び業績の拡大に直接又は間接に貢献することが期待される者に譲渡し,できるだけ多人数の歓心を買うために,原則として1人当たり5000ないし1万株を取得させることとした。 また,原告は,譲渡先をリストアップするにとどまらず,譲渡先の多くに自ら直接電話をかけるなどして,A1株を公開前に取得するよう依頼した。 原告は,I2,J2らの担当者に対し,リストアップした相手先にA1株取得のお願いに上がるよう指示し,原告から ず,譲渡先の多くに自ら直接電話をかけるなどして,A1株を公開前に取得するよう依頼した。 原告は,I2,J2らの担当者に対し,リストアップした相手先にA1株取得のお願いに上がるよう指示し,原告から手続を指示された担当者は,原告から逐一報告を求められたわけではないものの,次の譲渡対象者への手続等を指示された際などに,「この前の手続はやっておきましたから」などと説明しており,原告は,「ああそうか,判った。それでいい。」などと述べて了解していた。 (c) 本件A1株の譲渡に係る事務手続の隠密性原告は,自ら電話等によりA1株の取得を要請したものの,売買に係る事務作業を効率的かつ隠密に行うために,原告が信用できる人間と考えたI2,J2及びQ1に対し,原告がリストアップした譲渡先を示し,これらの者と折衝するよう指示した。しかも,原告は,上記3名に対し,原告が選定した譲渡先約40名全員の氏名を教えずに,上記3名の各自に担当させようとする譲渡先の氏名,手続を行うに当たっての接触方法等を,個々具体的に指示した。 他方,原告は,上記折衝に必要となる,株券及び代金の授受に伴う書類作成作業等の全体のまとめ役を,M1に行わせた。 (d) 原告が指示した者が選定した譲受人原告は,前記(b)のリストアップ作業により,本件譲受人の大半を自ら選定したものの,放出5社から買い戻したA1株の株数に余裕があったことから,A1においても選定できるよう,M1を経由して,K2ほか同社の幹部に人選の機会を与えるとともに,I2にも人選を指示した。 なお,原告は,K2,I2らに選定させた譲渡先に対する譲渡株数の決定については,M1に任せていた。 b 本件譲受人の認識本件譲受人の多くは,本件A1株を,原告又は原告の経営するB1等の会社から譲り受けたものと認識していた。 (a) F 渡先に対する譲渡株数の決定については,M1に任せていた。 b 本件譲受人の認識本件譲受人の多くは,本件A1株を,原告又は原告の経営するB1等の会社から譲り受けたものと認識していた。 (a) F3の場合F3は,昭和61年9月25日,B1ビルの会議室で開催された講義の終了後,原告から,A1株を1株3000円で1万株購入するよう勧誘された。F3は,原告と仕事上特に深い利害関係はなく,原告の家庭内の問題等について色々世話をしていたことから,原告がそのお礼の意味で便宜を図ったものであり,本件A1株は,原告の持株から譲り受けるものと思い,その場で購入を承諾した。 F3の本件A1株の購入時における上記の認識は,F3自身が,株はあまり好きではなく,知らない人から株を譲り受ける気はないし,原告から勧められても知らない人の持株であればその場で購入を決めたりしないと述べていることからも明らかである。 (b) G3の場合G3は,昭和61年9月中旬ころ,原告から,本件A1株を1万株購入するよう勧められ,自己名義で購入できなければ息子名義でも構わない旨説明を受けたことから,息子名義でこれを購入することとした。原告は,G3に購入を勧めた際,原告の持株を譲渡するという表現をしており,他人の株の売却をあっせんするといった表現はしなかった。 その後,G3が海外出張のため不在の間,同人の指示を受けた秘書が,原告の指示を受けたQ1との間で書類の作成手続を行ったが,G3は,株式売買約定書の譲渡人欄に記載されているJ1という名前の会社を知らなかった。 (c) H3の場合H3は,昭和61年9月中旬ころ,原告からA1株を1万株取得して欲しいという電話を受け,「その話は秘書のI3にしてほしい。」と答え,その後の事務手続を,H3の秘書であるI3に行わせた。 上記電話の1 3は,昭和61年9月中旬ころ,原告からA1株を1万株取得して欲しいという電話を受け,「その話は秘書のI3にしてほしい。」と答え,その後の事務手続を,H3の秘書であるI3に行わせた。 上記電話の1,2日後,原告の指示を受けたJ2は,I3と会い,H3に本件A1株を1万株引き受けて欲しい旨要請し,購入代金,その融資方法等について説明した。その2,3日後,Q1が具体的な事務手続を行うためにI3と会い,株式売買約定書等への署名押印を求めた。I3は,上記約定書の譲渡人欄に記載されていたJ1という名前の会社を知らず,本件A1株は原告から購入したものと認識していた。 (d) J3の場合J3は,昭和61年9月中旬ころ,原告からA1株を取得して欲しいという要請を受けた。その2,3日後,B1のR1は,J3を訪問し,J3に譲渡するA1株は3万株で,1株3000円であり,購入資金もB1の側で用意する旨説明した。さらにその1,2日後,Q1が株式売買約定書等を持参してJ3を訪問した。 J3は,上記約定書等に署名押印したが,上記約定書等の譲受人及び債務者欄以外はすべて記入済みであり,譲渡人欄にはH1と記載されていた。しかし,J3としては,自分がB1,A1及びC1の顧問であったことから,原告を含めたB1グループ全体から本件A1株を購入したものと認識していた。 (e) K3の場合K3は,昭和61年10月初旬,J2からの電話により,A1株5000株を1株3000円で取得するよう勧められ,C1が株式の取得資金を融資すること,原告からの勧誘をJ2が伝えたものであったこと等から,A1株の取得を承諾することとした。 その2,3日後,K3は,同人の勤務する大学を訪問したB1又はC1の社員から,株式売買約定書等に署名押印するよう求められたが,K3としては,上記約定書の譲渡人欄 A1株の取得を承諾することとした。 その2,3日後,K3は,同人の勤務する大学を訪問したB1又はC1の社員から,株式売買約定書等に署名押印するよう求められたが,K3としては,上記約定書の譲渡人欄が空欄になっていたこともあり,原告から本件A1株を取得したものと認識していた。 (f) L3の場合L3は,昭和61年9月26日,原告から,購入資金を手当てするから,本件A1株を1株3000円で1万株取得して欲しい旨要請を受けた。 その後,L3は,原告の指示を受けたQ1から株式売買約定書等に署名押印するよう求められた。その際,L3は,上記約定書の譲渡人欄に記載されていたF1という名前の会社を知らず,本件A1株は原告から譲り受けたものと認識していた。 (g) M3の場合M3は,昭和61年ころ,K2から,本件A1株を1株3000円で引き受けるよう要請され,2000株を引き受けることとし,購入資金の融資のあっせんも受けた。 その後,M3は,A1本社において,M1らの立会いの下に,株式売買約定書等に署名押印をした。M3としては,K2から本件A1株の購入を要請されたものの,原告がB1グループの総帥であったこと,K2がA1株を自由にできないと思われたことから,本件A1株を原告から購入したものと思っていた。 (h) 原告の申請に係る証人らの供述の信用性本件譲受人の一人であるN3は,同人が取締役をしていた会社がA1及びB1を取引先としており,原告とも古くから面識を有していたことなどから,本件A1株を勧められて購入したものであるところ,証人尋問において,本件A1株の真の売主は,契約書上の売主であるF1であり,原告が売主であると推測したことは全くない旨供述している。 しかしながら,N3がF1を売主とする根拠は,株式売買約定書上の記載だけであるのに対し,N3 真の売主は,契約書上の売主であるF1であり,原告が売主であると推測したことは全くない旨供述している。 しかしながら,N3がF1を売主とする根拠は,株式売買約定書上の記載だけであるのに対し,N3は,あたかも,本件A1株の売主が自分と親しい原告ないしA1であると認識していたことを窺わせるかのような供述もしており,証人尋問においても,譲渡人が誰かという意識は一切なかったとも供述していることからすれば,本件取引当時,原告が売主でないと明確に認識していたということはできない。 また,本件譲受人の一人であるO3は,証人尋問において,原告が本件A1株の売主ではないと供述する。 しかし,O3は,大学卒業後間もなく,大学の同級生であったF2の紹介で原告と知り合い,以後,原告と交友関係を有しているほか,原告の依頼によりA1の監査役に就任した者である。加えて,O3は,本件A1株の購入を勧誘した人物の特定もできず,その際の会話の内容に関する記憶も曖昧であり,譲渡人が誰であるかは関心がなかったとも供述していることに照らしても,O3の供述から,本件取引当時,同人が,原告が売主でないと明確に認識していたということはできない。 さらに,本件譲受人の一人であるP3は,陳述書(甲28)において,別件刑事事件の検察官面前調書に「N2さんの持ち株」と書いてあるとすればそれは誤りであり,本件A1株は公開株か公募株だと思っていた旨陳述するが,上記陳述書は,原告からの依頼内容が述べられていない概括的なものであるうえ,昭和61年10月21日当時,株式会社Q3の代表取締役であったP3が,マンション販売業界の同業者であるA1の店頭登録を知らないとは考え難いにもかかわらず,このような重要な点について合理的な理由を示さずに供述を翻していることからすれば,その記載内容を信用することは ,マンション販売業界の同業者であるA1の店頭登録を知らないとは考え難いにもかかわらず,このような重要な点について合理的な理由を示さずに供述を翻していることからすれば,その記載内容を信用することはできない。 このほか,R3,S3,T3,U3及びV3の各陳述書(甲29ないし同33)には,いずれも,譲り受けたA1株が原告の所有する株式とは考えていなかった旨の概括的な記載があるものの,本件A1株の購入を勧められた経緯や,原告を売主と考えなかった理由について,具体的に記載されていないことに照らして,その信用性は低いといわざるを得ない。 c 本件A1株の譲渡手続を行った者の認識(a) M1の認識M1は,原告から本件取引について指示を受け,原告が値上がりの確実なA1株を社外の知人や今後世話になる人に譲渡する意図であることを認識する一方,K1の担当者から,A1株の店頭登録が間近な時期における上記のような行為が本件内規に違反することを注意されており,原告の名義を出せない事情があることも認識していた。 M1は,本件取引が本件内規に違反することについて,原告に注意を促したものの,原告が応じなかったことから,株式売買約定書等の手続上,原告の名前を出さないこととした。また,M1は,本件A1株の購入代金が本件譲受人から放出5社に直接振り込まれれば,代金の流れとしても中間省略となると考えて,当初は本件譲受人にそのような代金支払を依頼したこともあったが,本件譲受人が多数にのぼり,代金の支払状況を十分把握できない上に,放出5社側としても,原告に譲渡したと思っているのに,個々の最終譲受人から個別に代金が振り込まれれば,迷惑を被ることから,C1から代金を一括して支払うこととした。 なお,M1は,別件刑事事件に関する検察官面前調書において,上記のとおり供述していた ,個々の最終譲受人から個別に代金が振り込まれれば,迷惑を被ることから,C1から代金を一括して支払うこととした。 なお,M1は,別件刑事事件に関する検察官面前調書において,上記のとおり供述していたにもかかわらず,陳述書(甲65)及び本件の証人尋問において,これを覆し,原告が本件A1株の売買の当事者ではなく,仲介者にすぎないと認識していた旨供述している。しかし,M1はA1の取締役財務部長を経て,同社の関連会社の代表取締役となった者であって,原告の指揮命令下において,本件A1株の譲渡手続に関与していたことに照らせば,上記陳述書及び証人尋問における供述の信用性は低いといわざるを得ない。 (b) Q1の認識Q1は,別件刑事事件に関する検察官面前調書(乙29ないし同34,同49)において,前記オに沿った供述をしており,その内容は,U1ほか放出5社の経営者の供述と一致していることから,信用性が高いというべきである。 しかるに,Q1は,陳述書(甲65)及び本件の証人尋問において,原告が本件A1株の売買の当事者ではなく,仲介者にすぎないと認識していた旨供述している。 しかし,Q1は,B1の経理部次長,A1の経理部長,財務部長を経て,C1の代表取締役となった者であり,原告の指揮命令下において本件取引に関与していた者であることからすれば,Q1の上記陳述書及び証人尋問における供述の信用性は低いといわざるを得ない。しかも,Q1は,本件A1株の譲渡手続におけるF2とのやりとりについて,別件刑事事件の証人尋問においては明確に供述できなかったにもかかわらず,その後行われた本件の証人尋問においては,突如具体的な供述をするなど,その供述内容には,不自然,不合理な変遷が認められる。加えて,Q1が本件の証人尋問において,本件A1株の譲渡手続に関する原告からの指示内容に た本件の証人尋問においては,突如具体的な供述をするなど,その供述内容には,不自然,不合理な変遷が認められる。加えて,Q1が本件の証人尋問において,本件A1株の譲渡手続に関する原告からの指示内容について,極めて曖昧な供述をしていることに照らしても,原告が本件A1株の売買の当事者でない旨のQ1の供述は,信用することができない。 d 本件有価証券届出書の記載内容本件有価証券届出書に,原告が本件A1株70万株を1株3000円で売り出した旨記載されていることは,前記2(2)エのとおりである。 これに対し,原告は,本件有価証券届出書が,大蔵省の強硬な要請の下において,事実に反することを認識しながら作成,提出されたものであって,本件取引の実際の当事者が作成に一切関与していないから,本件有価証券届出書には,証拠としての価値が認められない旨主張するが,有価証券届出制度においては,発行会社等に刑罰及び損害賠償責任を課すことにより,有価証券届出書の記載の真実性が担保されているのであって,原告の上記主張に係る事実が存在したことは容易に想定できないし,原告の上記主張を十分に裏付ける証拠もないから,原告の上記主張は,理由がないというべきである。 キ原告の意図及び認識a 原告の別件刑事事件の捜査段階における供述について原告は,別件刑事事件に関する検察官面前調書において,原告が放出5社から本件A1株を自ら買い戻して本件譲受人に譲渡したのであって,その行為は,株式の売買の仲介あっせんではなく,株式の売買である旨供述し,その根拠として,原告が株式の譲渡先,譲渡株数,株式の価格を自ら決定して譲渡しており,本来,仲介あっせんであれば入るべき放出5社の意向が全く入っていないことを挙げており,さらに,原告は,本件A1株を本件譲受人に譲渡したのは,店頭登録後,確実に予想 式の価格を自ら決定して譲渡しており,本来,仲介あっせんであれば入るべき放出5社の意向が全く入っていないことを挙げており,さらに,原告は,本件A1株を本件譲受人に譲渡したのは,店頭登録後,確実に予想された値上がり益を本件譲受人に与えることが目的であった旨供述しているところ,原告の上記各供述内容は,本件取引の経緯及びその関係者らの認識とも一致しており,その信用性は高いというべきである。 b 原告の本人尋問における供述についてこれに対し,原告は,本件訴えにおいて,原告は放出5社と本件譲受人との間の本件A1株の売買を仲介あっせんしたものであって,原告自身が売買を行ったものではない旨主張し,本人尋問において,前記検察官面前調書について,早期に保釈を受けたい気持ちや,証券取引法違反では起訴しないという検察官の言葉を信用したことから,不本意ながら署名指印に応じたものである旨供述している。 しかしながら,原告は,上記調書の作成当時,身柄を拘束されていたものの,身柄を拘束されていた間,原告の陳述によっても,弁護人と週2回は接見し,記憶と違う内容の調書に署名してはいけない旨のアドバイスを受けており,原告が本件A1株売買の当事者でなかったとすれば,早期に保釈を受けたいという気持ちから不本意な供述調書に署名指印したとは考え難いことや,原告が一方において,捜査段階で検察官から暴言・暴行を受け,検察官を信用できると思ったことはない旨供述しながら,他方において,証券取引法違反で起訴しないという検察官の言葉を信用したとすることは矛盾していること等に照らせば,原告の本人尋問における上記供述は,にわかに信用し難いといわざるを得ない。 しかも,原告は,本人尋問において,原告とは一面識もないA1の取引先を本件A1株の譲受人とした取引について,原告が仲介あっせんしたもので における上記供述は,にわかに信用し難いといわざるを得ない。 しかも,原告は,本人尋問において,原告とは一面識もないA1の取引先を本件A1株の譲受人とした取引について,原告が仲介あっせんしたものではないことを自認したうえで,その譲受人をA1に選定してよいと指示したのが同社の会長としての原告であることを認めており,このことは,少なくともA1の取引先に譲渡したA1株については,原告ないしA1が放出5社から譲り受け,原告の意思に基づき譲受人を選定し,A1株を処分する権利を原告自らが有することを認めるものに他ならず,さらに,本件取引の経緯からすると,特にA1の取引先に譲渡したA1株についてのみ,いったん原告ないしA1が譲り受けたと認めるべき事情はないから,結局,原告は,上記供述によって,原告が本件取引において仲介あっせんをしたにすぎないとする自らの主張を否定したものというべきである。 (2) 本件取引が原告による売買であったことア原告と放出5社との間における本件A1株の売買の合意以上に認定したとおり,放出5社の経営者であるU1,V1,F2及びG2は,いずれも本件A1株の売却に際し,本件A1株の譲渡先が原告(ないしは原告が経営するB1)であると認識し,このような認識に基づいて,原告からの本件A1株の買戻しの要請に応じたものであり,他方,原告も,本件A1株を放出5社からいったん買い受けたと認識していたのであるから,昭和61年8月中旬ないし同年9月中旬ころ,原告と放出5社との間において,それぞれ本件A1株を売買する旨の合意が成立したことは明らかである。そして,上記各合意に基づき,原告の指示を受けたC1が,放出5社に本件A1株の売買代金を支払い,放出5社も本件A1株の株券をC1にいったん引き渡したのであるから,原告と放出5社との間において,本件 。そして,上記各合意に基づき,原告の指示を受けたC1が,放出5社に本件A1株の売買代金を支払い,放出5社も本件A1株の株券をC1にいったん引き渡したのであるから,原告と放出5社との間において,本件A1株の売買が行われたことは明らかである。 したがって,本件譲受人に対する本件A1株の譲渡も,原告が売主となって行ったものといわざるを得ないのであって,このことは,本件譲受人のうち多数の者が,原告(ないしは原告が経営するB1)から本件A1株を譲り受けた旨認識していることと合致するものである。 イ本件取引全体に対する法的評価について(予備的主張)仮に,原告と放出5社の経営者であるU1らとの間で,本件A1株の買主が誰かについて明確な合意がなく,また,原告に本件A1株を自ら譲り受けなければならない合理的な理由がなかったとしても,本件取引全体に対する法的評価という観点からすれば,放出5社から本件A1株を買い受けたのは,原告であるというべきである。 a 放出5社と原告との合意内容原告は,U1らに対し,放出5社が保有する本件A1株合計70万株を1株3000円で売り渡すように要請し,U1らは,本件A1株が店頭登録により値上がりすることが確実であったにもかかわらず,原告の上記要請を承諾したことは,前記(1)エのとおりであるところ,U1らが原告の要請を承諾したのは,原告に恩を着せたり,原告に恩義を感じたり,原告との交誼を大事にしようと考えたからであって,そのため,U1らは,本件A1株の譲渡価格について,原告の要請した価格をそのまま承諾し,本件A1株の処分についても,詳細な説明を受けなかったにもかかわらず,あえて詮索しなかった。 したがって,仮に,U1らが,本件A1株の譲渡を承諾した際,買主が誰であるかを明確に認識せず,かつ,原告も,自らが本件A1株 いても,詳細な説明を受けなかったにもかかわらず,あえて詮索しなかった。 したがって,仮に,U1らが,本件A1株の譲渡を承諾した際,買主が誰であるかを明確に認識せず,かつ,原告も,自らが本件A1株をいったん買い受けるものと明確に認識しなかったとしても,放出5社は,原告に対し,本件A1株について,原告がこれを取得,保有することを含め,自由に処分することを承諾したことは否定できない。 そして,原告は,その後,上記承諾に基づいて,本件譲受人を選定し,個々の譲受人に譲渡する本件A1株の株数及び代金額を決め,その譲渡手続を行ったが,放出5社は,譲渡手続を一切原告に委ね,これらの作業に全く関与しなかった。 b 本件A1株の代金支払状況本件A1株の売買手続は,昭和61年9月中旬すぎころには完了する予定であったが,売買手続が遅延したことにより,同月中に本件譲受人への売却手続を完了させることが不可能となったことから,売買手続を行っていたM1らは,遅くとも同月中旬ころまでに,放出5社に対する売買代金の支払をC1が一括して行うことを決め,原告もこれを了解した。このため,L1ら3名の名義の本件A1株合計10万株分の代金は,同月25日にF1の預金口座に振込送金されたが,残り60万株分の代金については,C1が同月30日までに20件程度しか金銭消費貸借契約書等を回収できなかったにもかかわらず,Q1が,同日,同社名義で放出5社に一括してこれを支払った。その後,個々の譲受人ごとに融資の手続書類を整える作業が行われ,これらの書類が完全に調ったのは,同年10月7日ころであった。 このように,放出5社に対する本件A1株の代金の支払は,原告の指示により,C1が一括して行っており,しかも,C1による代金の一括支払が完了した時点で回収された本件譲受人の金銭消費貸借契約書が全 。 このように,放出5社に対する本件A1株の代金の支払は,原告の指示により,C1が一括して行っており,しかも,C1による代金の一括支払が完了した時点で回収された本件譲受人の金銭消費貸借契約書が全体のごく一部にすぎず,その余の融資利用者である本件譲受人が未特定であったにもかかわらず,本件A1株の代金が放出5社に支払われたものである。 したがって,仮に,本件譲受人が放出5社から本件A1株を直接譲り受けたとすれば,C1は,代金を振り込んだ時点で未特定の買主,すなわち,いわば架空の本件譲受人らに代わって売買代金を立替払したことになるが,当時,C1が証券担保ローンを行う場合,借受人側の対人的な信用を重視し,証券の時価を考慮してそれを下回る限度で融資を行っていたことにかんがみれば,C1がこのような立替払を行ったものとは考え難く,C1が振り込んだ金員は,その時点において原告に処分権が委ねられていた本件A1株の代金と認めることが相当である。 c 本件A1株の株券の交付本件A1株70万株の株券は,いったん放出5社から原告側に引き渡されている。 すなわち,本件A1株の株券のうち,E1の保有する20万株分は,昭和61年9月24日,Y1がM1に手交して,C1に届けられ,F1の保有する20万株分は,同月26日及び同年10月1日の2回に分けて,D2がA1経理部長宛に郵送し,その後,C1に届けられ,H1及びG1の保有する合計20万株分は,本件取引以前から,原告側からの融資の担保として原告側(C1)に預けられており,J1の保有する16万株のうち8万株分は,本件取引以前から,C1からの融資の担保として既に同社に預けられており,残り8万株分は,同年9月30日,G2がQ1の使者に交付してC1に届けられている。 このようにしてC1に集められた本件A1株70万株の株券は ら,C1からの融資の担保として既に同社に預けられており,残り8万株分は,同年9月30日,G2がQ1の使者に交付してC1に届けられている。 このようにしてC1に集められた本件A1株70万株の株券は,Q1の指示により,個々の譲受人ごとに分けて封筒に入れられ,C1の融資分は,同社が担保として貸付書類と共に保管し,金銭消費貸借契約書の写し等を融資利用者である本件譲受人に郵送した。 以上のとおり,放出5社と原告は,本件A1株の処分を原告に委ねる旨合意し,原告の指示を受けたC1は,本件譲受人が決まらないうちに一括して本件A1株の代金を支払い,放出5社は,これと引換えに,本件A1株をC1に引き渡したものである。そして,C1が,原告の影響力の極めて強い,原告の財布同様の会社であって,C1による代金の支払及び株券の受領が原告の指示により行われたことに照らせば,原告個人がC1から融資を受けて,放出5社に本件A1株の代金を支払い,株券を受領したものと理解せざるを得ない。 d 原告の果たした役割原告は,本件取引において,A1株が店頭登録により値上がりする前に,A1株をA1の役職員,社外の知人等に取得させることを発案したうえ,A1株の調達先として放出5社を選定し,その経営者であるU1らと自ら交渉して,本件A1株70万株を1株3000円で売り渡す旨承諾させた。また,原告は,自ら直接又はK2,I2らに指示して本件譲受人を選定し,これらの者と交渉して本件A1株の取得を承諾させたほか,取得させる株数,1株当たりの代金額,C1による融資を利用した代金支払方法等を決定した。さらに,放出5社からの株券の受領等の買受手続や,本件譲受人に対する融資及び株券交付等の売渡手続についても,原告の指示を受けた各担当者が,原告の指示どおりに行ったものである。 このように,原告は, さらに,放出5社からの株券の受領等の買受手続や,本件譲受人に対する融資及び株券交付等の売渡手続についても,原告の指示を受けた各担当者が,原告の指示どおりに行ったものである。 このように,原告は,本件取引全体に終始一貫して関与したうえ,その意思を及ぼして,中核的な役割を担っており,売買契約の要素である売買当事者,売買目的物,代金,売買目的物の引渡手続及び代金の支払手続のすべてを実質的に決定したといっても過言ではないのであって,その果たした役割は,単なる仲介あっせんの域を超えているといわざるを得ない。 e 本件取引全体に関する法的評価のまとめ以上のとおり,仮に原告と放出5社との間で,本件A1株の買主が誰かについて必ずしも明確な合意がなく,原告が本件A1株をいったん自分個人で譲り受けなければならない合理的な理由がなかったとしても,前記aないしdの事情に照らせば,原告は,放出5社から本件A1株をいったん買い受けたうえで,株式売買約定書上は放出5社と本件譲受人との間の直接の取引として処分したものというべきであるところ,このような取引形態は,不動産取引でしばしば見受けられる中間省略登記と類似しており,単なる仲介あっせんでないことは明らかである。 したがって,本件譲受人に対する本件A1株の売主も,原告であるといわざるを得ない。 (3) 原告の主張に対する反論ア原告の動機について原告は,本件A1株をいったん自らが買い受けて譲渡すれば,本件内規に違反し,証券取引法4条違反の罪に問われ,有価証券取引の非課税枠を超えることに伴う税金上の著しい不利益を生じるおそれがあるなど,重大な不利益を受ける反面,何らのメリットもないことから,原告がそのような無意味かつ重大なリスクを冒すはずがない旨主張する。 しかしながら,原告は,本件取引において,原告と仕事 るおそれがあるなど,重大な不利益を受ける反面,何らのメリットもないことから,原告がそのような無意味かつ重大なリスクを冒すはずがない旨主張する。 しかしながら,原告は,本件取引において,原告と仕事上又は個人的に特別な関係にある本件譲受人に対し,A1株の値上がり益を供与することを意図する一方,低廉譲渡や本件内規違反の指摘を回避するために,A1株の店頭登録前に取引を完了せざるを得ない状況にあったことから,自ら売買の当事者となって本件A1株をいったん買い戻してこれを本件譲受人に譲渡しつつ,株式売買約定書等においては,放出5社が本件譲受人に直接譲渡したかのような体裁を整えたことは,極めて合理的な行動であったというべきである。 また,そもそも本件においては,原告が主観的にどのように考えて本件取引を行ったかということよりも,原告が現実に行った本件取引が原告自身の売買又はそのように評価し得るものか否かが問題であり,仮に原告自身が本件A1株をいったん譲り受けなければならない合理的な理由がなかったとしても,本件取引における原告の役割を総合的にみれば,原告自らが放出5社から本件A1株を買い受けたというほかないのであって,それが原告にとって無意味かつ重大なリスクを伴うものであったか否かによって,上記認定が覆るものではない。 さらに,本件においては,原告が本件A1株をいったん自ら買い受けて譲渡する場合と,仲介あっせんする場合とを比較して行動したことを窺わせる証拠もないから,原告自らが売買の当事者となった方が,証券取引法上及び課税上不利になるとしても,原告が当時この点を明確に認識・区別して行動していたと認められない以上,このことをもって,原告自らが売買の当事者ではなかったものということはできない。 イ株式売買約定書について原告は,本件A1株の株式売買約 点を明確に認識・区別して行動していたと認められない以上,このことをもって,原告自らが売買の当事者ではなかったものということはできない。 イ株式売買約定書について原告は,本件A1株の株式売買約定書において,譲渡人として放出5社が,譲受人として本件譲受人らが,それぞれ署名又は記名の上押印しており,その間に原告が法的効果の帰属する当事者として介在した事実は一切ない旨主張する。そして,株式のように,誰から取得しても差異がない取引対象について,仲介者を介して売買する場合には,取引の相手方を相互に直接知らないことが通常であるが,そのような売買であっても,契約書を取り交わす場合には,当該契約書が当事者の意思表示の内容を確定するための最も重視されるべきであって,本件取引においては,上記約定書により,放出5社と本件譲受人らとの間の売買の意思表示の合致が認められる旨主張する。 しかし,本件では,株式売買約定書の記載内容,特に当事者欄の記載が実体を反映するものか否かが問題となっているのであるところ,被告は,上記約定書の記載が事後的に直接売買の形式を整えたものにすぎないのであって,上記約定書によって本件取引が成立したわけではないと主張しているのであるから,原告の上記主張は,その前提を欠き,失当である。 ウ本件A1株の売買における経済的実体について原告は,本件A1株の売買の目的,売買代金の出捐者,売買の経済的効果の帰属者等,売買契約において当事者の確定に考慮されるべき経済的実体の観点からも,原告が本件取引において売買の当事者としての実体を有していないことが明らかである旨主張する。 しかしながら,原告が放出5社から取得した株式を一時期自由に処分する権利を有していたことは前記のとおりであり,本件譲受人に対する譲渡も,このような権利の行使にほかならない らかである旨主張する。 しかしながら,原告が放出5社から取得した株式を一時期自由に処分する権利を有していたことは前記のとおりであり,本件譲受人に対する譲渡も,このような権利の行使にほかならないのであって,放出5社に対する売買代金の支払時期及び一括支払の状況に照らしても,原告が本件A1株の売買における当事者としての経済的実体を有していないとはいえないから,原告の上記主張は失当である。 エ原告が本件取引を発想した経緯原告は,本件A1株の譲渡が,それに先立つB1役員からA1への転籍者等に対するA1株の譲渡と同一の発想で行われたものであるから,これらの譲渡と同様に,放出5社と本件譲受人らとの間の相対取引であり,本件取引における原告の役割は,売買のあっせんにすぎない旨主張する。 しかし,B1役員からA1への転籍者等に対するA1株の譲渡の場合には,譲渡人に対する株式代金の支払が,C1からの融資により支払われた場合も含め,すべて個々の譲受人が決まった後に行われており,本件A1株の代金支払状況とは異なること,A1株の譲渡人及び譲受人に,原告と取引を行っていると認識していた者が存在したという証拠がないことに照らせば,本件取引とは事実関係が異なるというべきであって,原告の上記主張は理由がない。 オ原告の提出に係る書証の評価について原告は,放出5社と本件譲受人が本件A1株を直接売買した証拠として,①株式売買約定書,②E1の有価証券取引税納付書・領収証書及びこれに添付された有価証券取引書,③F1の有価証券取引税納付書,領収証書及びこれに添付された有価証券取引書,④F1の振替伝票,⑤L1ら3名作成のF1宛の株券受領書,⑥H1の昭和61年8月25日開催に係る取締役会議事録,⑦G1作成の有価証券の譲渡内容についてのお尋ねに対する回答書を挙げ,原告が仲介 取引書,④F1の振替伝票,⑤L1ら3名作成のF1宛の株券受領書,⑥H1の昭和61年8月25日開催に係る取締役会議事録,⑦G1作成の有価証券の譲渡内容についてのお尋ねに対する回答書を挙げ,原告が仲介あっせんをしたにすぎないと主張する。 しかしながら,①については,その当事者欄の記載が実際の売買の当事者を示すものでないことは,前記のとおりである。 また,②によれば,E1が同年9月27日に有価証券取引税を納付した事実が認められるものの,その時点では譲受人2名が未特定であって,代金も全額未払だったのであり,むしろ,原告が本件A1株の買主であって,代金の支払を信頼したことから,この時点で納税したものと解される。 ③及び④について,原告は,それぞれ最終譲受人の氏名が記載されていることから,原告が仲介を行ったことの根拠とするが,いずれの記載も,①の株式売買約定書の記載内容に沿うように書かれたものであるから,その記載を重視することは相当でない。 ⑤については,同月25日の段階で株式売買代金の振込手続が終了したことから手続上作成されたにすぎず,その他の本件譲受人の多くはこの時点で未特定であったにもかからわず,売買代金がF1に一括支払されたことにかんがみれば,これをもって,本件A1株の売買の当事者が原告でないということはできない。 ⑥には,本件譲受人の氏名,株数等が記載された別紙が添付されているが,議事録の日付をさかのぼらせていることなどの作成経緯に照らせば,これをもって,H1が本件譲受人との間で直接売買をしたと認めることはできない。 ⑦についても,①の株式売買約定書の記載内容に合致するように,本件譲受人を買主として書かれたものであるから,これをもって,G1が本件譲受人との間で直接売買した事実を認めることはできない。 したがって,以上によれば,原 式売買約定書の記載内容に合致するように,本件譲受人を買主として書かれたものであるから,これをもって,G1が本件譲受人との間で直接売買した事実を認めることはできない。 したがって,以上によれば,原告が挙げる上記各書証は,いずれも原告の主張を裏付けるものということができない。 カ本件譲受人の一部に対する売買の経過に関する主張についてaL1ら3名への売買について原告は,本件譲受人のうち,L1ら3名について,株式売買約定書,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書に署名押印が行われていること,上記契約書等に基づいて代金が振り込まれていること,その後F1から株券が送付されたため,株券の受領書を作成して同社に送付していること,上記契約書2条に基づき,株券が融資の担保としてC1に預け入れられたこと,F1がL1ら3名を譲受人として有価証券取引税を納付し,会計処理をしていること等から,直接F1との間で本件A1株の売買が行われたと主張する。 しかし,V1の指示に基づいて売却手続を行ったD2は,L1ら3名が「いずれもA1の人」であるということから,原告の配慮で役員にしておくためにA1株を持たせるものと認識しており,昭和61年9月25日の段階で譲受人が未定であった残りのA1株10万株についても,F1としてはあくまで原告又はA1に売却したのであって,本件譲受人はその転売先と理解していたことから,D2は,L1ら3名とは売買に関する交渉を行わなかったほか,上記約定書上の譲受人がL1ら3名であるにもかかわらず,株券をA1の財務部長であるM1に送付した。 そして,C2の経理部長としてC2グループ全体の財務,経理を任されていたD2が,株式売買約定書のうち,L1ら3名が譲受人として記入された分だけでなく,譲受人の記載のない分にもF1の社印等を押捺したのも,売戻し 2の経理部長としてC2グループ全体の財務,経理を任されていたD2が,株式売買約定書のうち,L1ら3名が譲受人として記入された分だけでなく,譲受人の記載のない分にもF1の社印等を押捺したのも,売戻しの申入れをしたのが原告であると聞いていたことに加え,原告側の窓口がL1ら3名でなく,A1のE2であったからにほかならない。 したがって,これらの事情を考慮すれば,原告の上記主張をもって,原告が本件A1株の売買のあっせんをしたことが裏付けられるとはいえない。 bO1との売買について原告は,O1についても,株式売買約定書が同人とF1の間に交わされたこと,O1が自らF1に代金を振り込んだこと,同社がO1への譲渡であることを明記して有価証券取引税を納付し,会計処理をしたこと等から,O1が直接F1との間で本件A1株を売買したと主張する。 しかし,V1が原告を売買の相手方と認識していたことは前記のとおりであり,D2による売買の相手方に関する認識も上記aのとおりである。 他方,D2にとって,O1は知人ではなく,D2はO1を本件A1株の売買の相手方と認識していなかったことから,振替伝票も「借受金」として処理し,株券もM1に送付し,O1への譲渡に係る有価証券取引税も,昭和61年11月5日まで未納のまま放置していたものである。 そして,O1が代金をF1の預金口座に直接振り込んだのは,C1に振り込むようにという原告側からの連絡が行き届かなかったためにすぎない。 したがって,O1が直接本件A1株を買い受けたとする原告の上記主張は,理由がないというべきである。 cB2ら12名との売買について原告は,B2ら12名についても,前記aと同様の事情から,直接E1との間で本件A1株の売買が行われたと主張する。 しかし,Y1は,U1から,原告同席の下で,本件A1株2 2ら12名との売買について原告は,B2ら12名についても,前記aと同様の事情から,直接E1との間で本件A1株の売買が行われたと主張する。 しかし,Y1は,U1から,原告同席の下で,本件A1株20万株を原告に戻すこととした旨の説明を受けており,株式売買約定書上の譲受人の記載が形式的なものであると判断していたことから,譲受人,株数等の記載のない2枚の株式売買約定書にも,E1の社印を押捺したものであることに照らせば,E1名義の口座への代金の振込みが,C1との間の金銭消費貸借契約書等に基づいて行われたものと認めることはできない。 また,本件A1株に係る融資については,通常の証券担保ローンと異なり,売買価額と同額の貸付けが行われたこと,融資した日から返済までの期間の利息を徴していないこと,株券が徴求されたのが融資の後であること,融資の返済前に,Q1の指示で株券を出庫していること等,通常の取引と異なる点が多く,B2ら12名が,株券を担保として預け入れたうえで融資を受けたと認めることはできない。 他方,Y1は,昭和61年9月27日付けで,B2ら12名を譲受人として有価証券取引税を納付しているが,B2ら12名は,形式上譲受人とされたにすぎず,納付の日も,単に売買約定後4日目に精算するものと理解していたため,代金決済日から逆算してそのように記載したにすぎない。 したがって,B2ら12名が直接本件A1株を買い受けた旨の原告の上記主張は理由がない。 なお,原告は,Y1が昭和61年9月26日にA1を訪ね,E1の所有していた本件A1株の株券分割手続を行った旨主張するが,Y1が同日分割手続を依頼した株式は,本件A1株ではない。E1の所有していた本件A1株20万株は,既に同月中旬以降,M1が上記A1株をY1の下へ取りに行った際,M1に引き渡されたものであ 張するが,Y1が同日分割手続を依頼した株式は,本件A1株ではない。E1の所有していた本件A1株20万株は,既に同月中旬以降,M1が上記A1株をY1の下へ取りに行った際,M1に引き渡されたものであり,Y1が同月26日に株券の分割を要請したA1株は,X1が所有していた40万株及びU1個人が所有し,同人の子供たちに譲渡した2万株であるから,原告の上記主張は誤りである。 (4) 原告の予備的主張についてア原告が代表権限を有する会社が買主ではないことについて原告は,予備的主張として,仮に,本件A1株が直接本件譲受人に売却されたことが認められないとしても,本件A1株は,B1を含むB1グループに属する会社が,放出5社から買い受けて,本件譲受人に売却したのであって,原告が買い受けたものではない旨主張する。 しかしながら,原告は,当時B1及びA1の代表取締役として両社の代表権限を有していたところ,原告の意思表示による効果が当該各社に生じるためには,商行為の代理であることから顕名が不要であるとしても(商法504条),原告が当該各社のためにする代表意思を有していたことが必要である。 にもかかわらず,原告は,放出5社の経営者であるU1らに対して本件A1株の買戻しを依頼した際,B1又はA1その他B1グループに属する会社のために当該買戻しを依頼する旨の顕名をあえてしていないのであって,逆に,原告が検察官に対して本件A1株を原告自らがいったん放出5社から買い受けた旨供述していることに照らせば,原告には,本件A1株の買戻しをした際,自らが代表権限を有していたB1又はA1その他B1グループに属する会社のためにする代表意思がなかったことは明らかである。 他方,放出5社の経営者であるU1らは,本件取引において,原告が単なる仲介あっせんを行っているとは考えていなか A1その他B1グループに属する会社のためにする代表意思がなかったことは明らかである。 他方,放出5社の経営者であるU1らは,本件取引において,原告が単なる仲介あっせんを行っているとは考えていなかったものの,取引の相手方が必ずしも原告個人であると明確に認識していたわけではなく,中には,原告ないし原告の経営するB1あるいはB1グループであると漠然と認識していた者もいたが,それは,原告がB1の創業者兼大株主であり,同社の代表取締役社長であって,B1及びB1グループのA1,C1等の各社にオーナーとして君臨していたことから,U1らにおいて,B1を含むB1グループに属する会社すなわち原告という認識を有していたからにほかならない。そうであるとすれば,U1らとしては,契約の相手方が原告個人であってもよいという認識で,原告の申込みを承諾したことは明らかである。 そして,B1を含むB1グループに属する会社が本件A1株を放出5社から買い受けて本件譲受人に売り渡した事実については,重要な業務執行に該当するにもかかわらず,B1グループに属する各社の取締役会においてこのようなことが議題に上ったことを窺わせる証拠はなく,各社の会計帳簿等にもそのような記載がない。 さらに,本件譲受人の中には,B1等の各社の営業とは関係のない,原告の個人的な交際相手も含まれていたのであり,少なくともF3,K3及びA2の3名は,当時B1グループに属する会社の取引先という関係もなく,その後も関係することが予想されるとは認められない者であった。 以上の事実を総合すれば,本件A1株の買戻しに係る売買契約における買主は,原告個人にほかならないのであって,B1又はA1その他原告が代表権限を有するB1グループに属する会社が買主となることはあり得ない。 イ原告の予備的主張に対する反論原告は, 買契約における買主は,原告個人にほかならないのであって,B1又はA1その他原告が代表権限を有するB1グループに属する会社が買主となることはあり得ない。 イ原告の予備的主張に対する反論原告は,B1又はA1その他原告が代表権限を有するB1グループに属する会社が本件A1株を買い受けたとする根拠として,原告がB1等の代表取締役であったこと,本件取引の動機がA1の労務政策的配慮やB1グループの営業政策的配慮にあったこと,本件取引にA1等の役員等も関与していること,「買戻し」の主体が原告個人であり得ないこと等を挙げている。 しかし,原告が本件A1株の売買に関し,原告が代表取締役を務める会社のためにする意思を有していなかったことは前記のとおりである。 また,原告がB1グループの総帥であり,いわばオーナー経営者として同グループの業務全般を統括していたことからすれば,原告個人が労務政策的,営業政策的配慮に基づいて本件A1株を買い受けたとしても,何ら不自然ではない。 さらに,本件取引に関与したA1の役員等は,原告が信用できると考えたごく少数の者に限られており,いずれも原告の指示の下に事務的な手続を行ったにすぎない。 そして,「買戻し」という表現も,原告側から入手した株式を原告側に譲渡するという意味で使われたことは明らかであって,本件A1株の買主がA1であるという意味で使われたとは認められない。 このように,原告が主張する予備的主張の根拠は,いずれもその根拠となり得ないというべきである。 (5) 結語以上のとおり,原告は,本件A1株を放出5社からいったん買い受けたうえで,本件譲受人に譲渡したことが明らかであるから,上記事実に基づいて行われた本件各処分は,いずれも適法である。 5 争点以上によれば,本件の争点は,本件A1株の売買が,原告が本件 ん買い受けたうえで,本件譲受人に譲渡したことが明らかであるから,上記事実に基づいて行われた本件各処分は,いずれも適法である。 5 争点以上によれば,本件の争点は,本件A1株の売買が,原告が本件A1株を放出5社からいったん買い受けたうえで本件譲受人に売り渡したものであって,原告による有価証券の売買に該当するか,それとも,本件A1株が放出5社と本件譲受人との間で直接売買されたものであり,又は,原告が代表権限を有する会社がこれを放出5社からいったん買い受けたうえで本件譲受人に売り渡したものであって,原告による有価証券の売買に当たらないか,という点にある。 第3 争点に対する判断 1 本件取引に関する事実前記「前提となる事実」,各項末尾に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件取引に関して,次の事実を認めることができる。 (1) B1グループ各社における原告の地位原告は,B1の創業者であり,昭和61年当時,同社の代表取締役社長を務めていた。 また,原告は,A1の設立以来,昭和60年7月30日まで,同社の代表取締役社長を務め,同日,K2が代表取締役社長に就任した後は,同社の代表取締役会長を務めており,昭和61年4月30日の時点において,同社の発行済株式総数3494万7760株の13・04パーセントに当たる455万8000株を所有する大株主でもあった。 さらに,原告は,B1が全株式を保有する子会社で,A1の販売する不動産の購入者に融資を行う目的で設立されたC1において,同社の設立以来昭和60年6月まで代表取締役社長を務め,同年7月,Q1が同社の代表取締役社長に就任した後は,昭和61年4月まで,同社の代表取締役会長を務め,同社に対して,極めて強い影響力を及ぼし得る地位にあった。 このほか,原告は,同月1日の時点において,株式会社W3の代 代表取締役社長に就任した後は,昭和61年4月まで,同社の代表取締役会長を務め,同社に対して,極めて強い影響力を及ぼし得る地位にあった。 このほか,原告は,同月1日の時点において,株式会社W3の代表取締役,株式会社X3の代表取締役会長,株式会社Y3の代表取締役会長等,B1を中核とした企業グループであるB1グループを構成する各社の役員を兼務していた。 (乙1,同45)(2) A1の店頭登録による株式公開ア店頭登録に至る経緯aA1(昭和60年3月1日にZ3株式会社から商号を変更)は,昭和59年ころから,資本市場から広範かつ低利な資金調達を行うとともに,同社の知名度やイメージの向上を図るために,東京証券取引所第2部上場又は店頭登録の方法により,同社の株式を公開することを企図し,社内に事務局を発足させ,同年11月12日には株式公開に関する事務幹事証券会社としてK1に依頼を行うなど,株式公開のための準備を開始した。 そして,A1は,株式公開の準備の一環として,同年12月29日,株式分割により,A1株1株の額面を500円から50円としたほか,昭和60年2月15日,A1株804万株の第三者割当増資を行い,金融機関等26社が1株2500円でこれを引き受け,さらに,同年4月25日にも,A1株701万7760株の第三者割当増資を行い,同社の取引先等37社1個人が1株2500円でこれを引き受けた。この結果,A1の発行済株式数は3494万7760株,資本金は200億円となった。 なお,同日の第三者割当増資に際しては,E1及びF1が各20万株,G1が12万株,H1及びI1が各8万株を引き受けた。 (乙24,同43,同44)bA1は,昭和60年夏ころ,社内の管理体制の整備の遅れや,業績の不振から,東京証券取引所第2部に上場する方法による株式公開を断念し H1及びI1が各8万株を引き受けた。 (乙24,同43,同44)bA1は,昭和60年夏ころ,社内の管理体制の整備の遅れや,業績の不振から,東京証券取引所第2部に上場する方法による株式公開を断念し,店頭登録の方法により株式を公開する方針とし,株式取扱規則を制定するなど,株式公開に向けた社内体制の整備を進めた。 A1は,その後も業績が好転せず,同年12月には,同社による宅地建物取引業法違反の問題が生じたことから,一時は店頭登録も危ぶまれた。しかし,昭和61年に入り,不動産価格の急騰により同社の業績が好転したこと,宅地建物取引業法違反の問題が解決したこと,株式公開に向けた社内の管理体制の整備が進捗したこと等から店頭登録が実現する見通しが立った。このようなことから,A1は,同年2月24日に開催された取締役会において,店頭登録予定日を同年10月下旬とし,そのために,同年8月1日にK1に対して店頭登録の申請を正式に依頼すること等の方針を定め,さらに,同年5月19日に開催された取締役会において,店頭登録の際の主幹事証券会社をK1にすること等を決定した。また,店頭登録における株式公開の方法としては,原告の所有するA1株280万株を分売することとされた。 その後,A1は,同年7月下旬の定時株主総会を経て,同年8月1日ころ,K1に店頭登録申請のための有価証券報告書を交付して,店頭登録申請を正式に依頼し,K1は,同月20日ころ,D1に対して店頭登録申請を行った。そして,D1理事会は,同年10月15日,売買開始日である同月30日をもって,A1株の店頭登録を承認する旨の決定を行った。 (乙43,同44)イ A1株の公開価格a 株式の店頭登録においては,店頭登録時に一定の株式数以上の株式を公開することとされているところ,公開される際の株式の価格は,D1の する旨の決定を行った。 (乙43,同44)イ A1株の公開価格a 株式の店頭登録においては,店頭登録時に一定の株式数以上の株式を公開することとされているところ,公開される際の株式の価格は,D1の指導により,類似会社比準方式により算定されることとされている。 類似会社比準方式とは,既に株式が公開されている会社の中から,株式公開の対象となる会社と業種,業態が同一又は類似する会社を数社選び,これらの類似会社における株式公開日にできるだけ近い1か月間の平均株価に基づき,当該公開会社と類似会社の1株当たりの配当金,純利益,純資産を比較して,当該公開会社の株価を算定する方式である。類似会社比準方式により株価を算定する場合,類似会社の選定により公開会社の株価が決まるところ,類似会社を最終的に選定するのは,公開時に売り出す株式を所有している者であるが,通常は,申請証券会社が適当な会社を選び出したうえで,当該公開会社と協議し,D1にも相談して選定を行っている。昭和61年当時,分売により株式が公開される場合の株価については,上記の方式により算出された最低分売価格と,その30パーセント増の価格である最高分売価格の範囲内において,売買開始日における初値を決定するものとされていた。 そして,昭和58年11月以降,A1株が店頭登録された昭和61年10月30日までに店頭登録された株式38銘柄のうち,分売により株式公開の行われた6銘柄は,いずれもその最高分売価格が初値とされ,店頭登録から3か月後くらいまでの株価は,初値よりも高い価格で推移していた。 (乙38)bA1株の公開価格は,A1が昭和60年初めころに試算した際には,1株3000円程度とされ,昭和61年2月22日に試算した際には,1株2330円ないし3020円とされていた。 しかし,その後,A1の業績 株の公開価格は,A1が昭和60年初めころに試算した際には,1株3000円程度とされ,昭和61年2月22日に試算した際には,1株2330円ないし3020円とされていた。 しかし,その後,A1の業績が急上昇したことから,同年6月ころには,K1においてB1グループを担当していたT2が,原告ほかB1及びA1の役員に対し,A1株の公開価格が1株5000円程度になる旨の所見を述べ,同社の監査室長を務めていたU2も,A1株の公開価格に関心を持っていた原告から店頭登録後の株価について報告を求められた際,同社の財務部長のM1,専務取締役のW1とともに,1株5400円くらいを目標に頑張っており,この状況ならうまくいくと思う旨報告した。 さらに,K2,W1らが,A1の部次長会議の席において,順調にいけば公開価格が1株5400円くらいになるとして,業績を上げるよう激励し,その後も同社の業績が順調であったことから,同年9月ころには,部課長以上の職員の間に,公開価格が1株5400円に達するのではないかという期待が生じていた。 そして,同月16日,B1本社において,K1の常務取締役N4及び同社のT2が,原告をはじめB1及びA1の幹部職員とA1株の店頭公開時における分売価格について協議した際,A1側の意向により,株価の算定に用いる類似会社をV2及びW2株式会社の2社とすることが決定され,K1が上記2社を類似会社としてA1株の最低分売価格を試算したところ,1株4162・29円となった。その後,K1は,同年10月9日までの1か月間における上記2社の平均株価に基づき,A1株1株の最低分売価格を4060円,最高分売価格を5270円とする「株価算定書」を作成し,同月13日に開催されたA1の取締役会において,上記各価格が了承され,幹事証券会社は,同月14日,D1に対し,A1株 最低分売価格を4060円,最高分売価格を5270円とする「株価算定書」を作成し,同月13日に開催されたA1の取締役会において,上記各価格が了承され,幹事証券会社は,同月14日,D1に対し,A1株の分売価格を上記各価格とする旨記載された株式分売申告書を提出し,同協会の承認を得た。 A1株の店頭登録による分売は,同月30日に実施されたが,分売株式数を大幅に上回る数の買付申込みがあり,1株5270円の初値で約定が成立した。そして,同月31日に開始されたA1株の公開取引における株価は,上記の初値を上回る価格で推移した。 (乙15,同38,同42,同43)(3) 本件取引に至る経緯ア昭和59年12月のA1株の譲渡B1は,昭和59年12月,A1株の公開に向けて安定株主を増加させることや,売却益により決算対策を行うことを目的として,同社の保有するA1株12万5600株を,大手総合建設業者の幹部,金融機関の関係者等76名に譲渡した。 譲受人の選定は,原告が中心となって,他のA1の幹部らとともに行い,譲受人に対するA1株の取得の勧誘も,原告及びA1の幹部が,自ら又は部下に指示して行った。B1と譲受人の間の売買手続については,当時A1の財務部長を務めていたQ1が,原告の指示を受け,株式売買約定書の作成,取りまとめ等の手続に中心的役割を果たした。上記約定書においては,譲渡人はB1,譲受人は原告らの選定した上記76名の各人とされた。 また,上記のA1株の譲渡に際し,株式購入資金の融資を希望した譲受人40名に対しては,C1が融資を行い,各譲受人から受領した振込指定書に基づいて,売買代金を直接B1に送金する方法によりこれを支払った。他方,自己資金により売買代金を支払った譲受人は,当該代金を直接B1に支払った。Q1は,当時,C1の事実上の責任者でもあ 振込指定書に基づいて,売買代金を直接B1に送金する方法によりこれを支払った。他方,自己資金により売買代金を支払った譲受人は,当該代金を直接B1に支払った。Q1は,当時,C1の事実上の責任者でもあったことから,上記の融資手続についても,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書の取りまとめを行うなど,中心的な役割を果たした。 さらに,上記譲渡に係るA1株の株券については,Q1がB1からその全部をいったん受領し,C1の融資を利用した譲受人の株券は,同社に担保として預け,自己資金により売買代金を支払った譲受人には株券を引き渡した。 (甲55,同57の1ないし3,同70,証人Q1,原告本人)イ昭和60年4月ないし6月ころのA1株の譲渡原告は,従来より,B1グループ各社において,社員に会社への忠誠心や責任感を持たせるためになるべく自社株を保有させる,社員皆経営者主義ともいうべき考えを提唱しており,B1グループ各社では,原告のこのような考えに基づいて,社員になるべく自社株を保有させる方針としていた。 そして,昭和60年4月ころ,A1の業務拡大に伴い,B1からA1に転籍する社員が増加したことから,同年4月ないし6月ころ,これらの転籍者にA1株を取得させることを目的として,A1株の譲渡が行われた。 原告は,当時,多数のA1株を所有していたが,A1の店頭登録準備を担当していたK1が,原告の所有するA1株を上記転籍者に譲渡した場合,A1株の店頭登録が認められなくなると注意していたことから,B1の役員及びQ1の保有するA1株を上記転籍者に対して譲渡させることとし,上記譲渡人の了解を得た。なお,B1からの転籍者は,従前在籍していたB1の株式を保有しており,実際の譲渡は,転籍者の保有するB1株と,B1の役員等の保有するA1株を交換する方法により行われたこ し,上記譲渡人の了解を得た。なお,B1からの転籍者は,従前在籍していたB1の株式を保有しており,実際の譲渡は,転籍者の保有するB1株と,B1の役員等の保有するA1株を交換する方法により行われたことから,C1による株式購入資金の融資はほとんど行われなかった。 上記のA1株の譲渡も,原告の発想に基づいて行われたものであり,原告がB1の役員であるR1と相談して譲渡人の選定を行い,原告,R1,Q1及びA1の幹部が相談して譲受人の選定を行ったほか,Q1が原告の指示を受けて譲渡手続の取りまとめを行った。上記のA1株の譲渡に当たって作成された株式交換契約書においては,B1の役員等と各転籍者が交換契約の当事者として記載されている。 (甲55,同58の1ないし3,同62,同70,証人Q1,原告本人)ウ昭和61年7月ないし8月ころのA1株の譲渡A1は,その後も業績が伸び続けたことなどから,さらに従業員の増員が必要となり,昭和61年7月1日付けで,B1本社等からA1に対し,30ないし40名が転籍したほか,A1における中途採用者も増加した。 そこで,原告は,これらの転籍者等にも社員皆経営者主義の発想に基づいてA1株を取得させることとしたが,原告の所有するA1株が店頭登録の際に分売を予定していることや,当時原告の所有するA1株を譲渡すれば本件内規に違反して店頭登録が申請できなくなることから,原告の所有するA1株を譲渡することができなかった。そこで,原告は,同月ころ,B1の役員であったR1,S1ら7名に対し,その保有するA1株合計13万株を上記転籍者等に譲渡するよう要請し,その了解を得た。原告は,K2,W1らA1の幹部と相談のうえ,A1株の譲受人を選定し,具体的な売買手続等を,同社の取締役であり,Q1の後任の財務部長及び経理部長を兼務していたM1に任せ, う要請し,その了解を得た。原告は,K2,W1らA1の幹部と相談のうえ,A1株の譲受人を選定し,具体的な売買手続等を,同社の取締役であり,Q1の後任の財務部長及び経理部長を兼務していたM1に任せ,1株1300円という上記価格も,純資産方式による試算に基づいて,原告がM1と相談して決定した。 その後,M1は,A1の財務部次長を務めていたT1とともに,各譲受人への株式の割当て,A1株の取得の勧誘を行い,株式売買約定書の作成等の具体的な売買手続は,T1がM1の指示の下に行った。上記約定書においても,譲渡人はB1の各役員とされ,譲受人はM1らが選定した各転籍者等とされた。 他方,A1においては,従前より,A1株を取得させる場合にC1が購入資金の融資を行っていたことから,M1は,同月に同社の代表取締役社長に就任したQ1に,上記のA1株の売買に際し,購入資金を融資するよう依頼した。そして,上記のA1株の売買においては,多数の譲受人が,C1から購入資金の融資を受け,その融資金は,A1株の購入代金として,C1が直接譲渡人に振り込む方法により支払われた。他方,自己資金によりA1株を購入した譲受人は,それぞれ譲渡人に購入代金を直接支払った。 上記のA1株の売買においても,譲渡人であるB1の役員,譲受人である各転籍者等,売買手続に関与した者は,いずれも譲渡人と譲受人が直接A1株の売買を行ったものと認識しており,原告がA1株をいったん買い受けてこれを売却したとは考えていなかった。 なお,上記のA1株の売買において使用された株式売買約定書と,C1による上記の融資において使用された金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書の書式は,いずれも本件取引において用いられた株式売買約定書,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書の書式と同一であった。 (甲5の2,同 において使用された金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書の書式は,いずれも本件取引において用いられた株式売買約定書,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書の書式と同一であった。 (甲5の2,同19,同24ないし同26,同43,同47,同48,同55,同60の1ないし4,同61の1ないし4,同65ないし同68,乙26,証人Q1,同M1,同S1,同O3,原告本人)エ本件A1株の譲渡の端緒a 原告は,上記ウのA1株の譲渡手続と並行して,A1への転籍者等に対する慣例的なA1株の譲渡とは別に,同社の部次長以上の役職員に対しても,株式公開前のA1株を特別に取得させようと考え,昭和61年8月中旬ころ,M1に対し,現時点で同社の部次長以上の役職の者が保有しているA1株の持株数を調べ,株主名簿のコピーも持参するよう指示した。 そして,原告は,原告の所有するA1株が店頭登録において分売を予定されていることや,特別利害関係人である原告が株式公開前1年の間にA1株の取引を行った場合,本件内規により店頭登録申請を認められなくなることから,A1の部次長以上の役職の者に取得させるA1株を原告の所有するA1株から拠出することができないところ,A1株の第三者割当増資の際にこれを引き受けた会社のうち,E1,F1等,原告が交際を有する者が経営する会社であれば,A1株の譲渡に関する社内の手続も容易であると考えられたことから,このような会社からA1株を調達することとした。 そして,原告は,M1から上記の持株リスト及び株主名簿のコピーを受領した翌日又は翌々日に,M1に対し,第三者割当増資の引受先からA1株を調達して,A1の部次長以上の役職員に取得させる考えを示したうえで,M1にA1株の割当作業を行うよう指示した。 (甲16,乙27,原告本人)bM1は,原告から,上 三者割当増資の引受先からA1株を調達して,A1の部次長以上の役職員に取得させる考えを示したうえで,M1にA1株の割当作業を行うよう指示した。 (甲16,乙27,原告本人)bM1は,原告から,上記指示とともに,A1株の調達価格について試算するよう指示を受けた。M1は,前記ウのB1の役員から転籍者等に対するA1株の譲渡の場合は個人対個人の株取引と考えられ,原則として非課税であることから,売買価格を純資産方式に基づいて1株1300円としたが,今回の場合は,法人対個人の株取引ということになり,時価方式で価格を算定しないと税務上否認されて課税されるおそれがあること,第三者割当増資の際にA1株が1株2500円で引き受けられており,それより低額となる純資産方式を用いることができないことから,類似会社比準方式により試算することとし,V2とX2を類似会社としてA1株の価格を試算したところ,1株3000円余となった。 M1は,上記2社を類似会社に選定することは,当時のA1の実態に合わないと思ったが,上記2社を類似会社に選定すれば,株価が低く算出されて,原告の希望に沿うこと,1株3000円であれば税務署から否認されないと思われること,上記2社は第三者割当増資の価格決定の際の類似会社であり,税務署に対して説明しやすいこと等から,原告に対し,1株3000円で売却するよう申し入れる旨進言し,原告はこれを了承して,この価格をもって第三者割当増資の引受先と折衝することにした。 (乙2,同27)c 原告は,前記aのとおり,A1の部次長以上の役職員に対し,株式公開前のA1株を特別に取得させようと考え,昭和61年8月14日又は15日ころ,原告と交際のあるU1に対し,同人の個人会社であるE1が昭和60年4月に第三者割当増資を引き受けて保有していたA1株20万株を譲渡する を特別に取得させようと考え,昭和61年8月14日又は15日ころ,原告と交際のあるU1に対し,同人の個人会社であるE1が昭和60年4月に第三者割当増資を引き受けて保有していたA1株20万株を譲渡するよう依頼したところ,U1は,意外にも簡単にこれを了承した。 原告は,以前から,社外の者で,原告と仕事の関係でつながりのある者や,原告が世話になった者,さらには原告が信頼し,尊敬しているような者にも,店頭登録後に値上がりが確実に見込まれる公開前のA1株を取得してもらうことにより,これらの者の歓心を得たいとの思いを抱いていたが,E1からのA1株の調達が予想外に容易であったことから,他の第三者割当増資の引受先からもA1株を調達して,上記のような社外の者にも取得してもらうことが可能であると考えるに至った。 そこで,原告は,A1の役職員に加え,社外の者にもA1株を取得させるためには,ある程度まとまった数量のA1株が必要になるという考えの下に,昭和61年9月上旬ないし中旬ころ,F1の代表取締役を務めるV1のほか,H1及びG1の代表取締役を務め,原告の学生時代からの親友でもあるF2と,I1及びJ1の代表取締役を務め,原告と個人的な親交があるG2に対し,それぞれA1株を譲渡するよう依頼し,その旨承諾を得た。 (乙2,同9,原告本人)(4) 原告と放出5社の間の本件A1株の譲渡に関する交渉の経緯ア E1による本件A1株の譲渡の承諾aU1は,昭和50年ころから原告と経済界において交際関係にあったところ,A1が昭和60年4月に第三者割当増資を行った際,原告からA1株60万株を1株2500円で引き受けて欲しい旨依頼されたことから,U1が代表取締役会長を務めるX1において40万株,形式上U1の妻を代表取締役とし,実質的にはU1の個人会社であるE1において20 株60万株を1株2500円で引き受けて欲しい旨依頼されたことから,U1が代表取締役会長を務めるX1において40万株,形式上U1の妻を代表取締役とし,実質的にはU1の個人会社であるE1において20万株のA1株をそれぞれ引き受けた。 (甲11,乙8,同9)b その後,原告は,昭和61年8月14日又は15日ころ,X1の会長室にU1を訪ね,同人に対し,A1株を公開する予定になっているが,いろいろな人からA1株の譲受けの依頼を受けて,株式が足りなくて困っているとして,E1が保有するA1株20万株について,1株3000円で買い戻したい旨申し出た(上記認定に反する原告本人尋問の結果は,U1の供述が一貫しており,信用性が高いことに照らして,採用することができない。)。 U1は,この時点までに,X1の経営監理室長を務めていたY1から,A1株が同年10月末に分売の方法で公開され,その最低価格は1株4000円余りと思われるという話を耳にしていたことから,原告の申出に対し,「何と厚かましい業腹な奴だ。」,「随分調子のいい話だな。」などと思ったものの,「売り戻すのは嫌だ。」,あるいは,「売り戻すにしても1株3000円では安すぎる。」などと言って上記申出を断ることは,U1自身のプライドが許さず,また,上記申出に応じておけば,原告に恩を着せることができると考え,内心不愉快に思いながらも上記申出を承諾した。U1は,その場でY1を呼び,E1の保有するA1株を1株3000円で売却する事務手続を進めるよう指示した。原告は,その際,U1に対し,A1株の具体的な譲渡先は告げなかった。 (甲11,乙8,同9)イ F1による本件A1株の譲渡の承諾aC2及びその関連会社であるF1の代表取締役社長を務めていたV1は,昭和53年ころ,原告と知り合い,個人的な親交を有していたところ 。 (甲11,乙8,同9)イ F1による本件A1株の譲渡の承諾aC2及びその関連会社であるF1の代表取締役社長を務めていたV1は,昭和53年ころ,原告と知り合い,個人的な親交を有していたところ,昭和60年3月末ないし4月初めころ,原告から,A1の第三者割当増資に当たり,A1株60万株を1株2500円で引き受けて欲しい旨依頼され,未公開のA1株が上場されて高値が付けば,大きな含み益になると考え,A1の安定株主として長期間保有することを念頭に置いて,C2において40万株,F1において20万株のA1株をそれぞれ引き受けた。 (甲12の1,乙10,同11)b その後,原告は,昭和61年9月上旬ないし中旬ころ,V1に対し,F1が第三者割当増資の際に引き受けたA1株20万株を1株3000円で売却するよう依頼した。 これに対し,V1は,既に原告から,A1株の店頭登録による公開が約1か月後に予定されている旨聞いており,A1株が公開されれば1株当たり1000円は儲かることから,内心では,上記申出に応じたくないと思ったが,他方において,上記A1株が原告の好意により取得できたものであり,しかも第三者割当増資の際,C2と併せて60万株ものA1株が割り当てられたことにより,他の取引先や友人に回すA1株が足りなくなったのではないかと考えたことから,原告の上記申出に応じることとし,C2の取締役兼経理部長を務めていたD2に対し,その後の手続を進めるように指示した。 (甲12の1,乙10,同11)ウ H1及びG1による本件A1株の譲渡の承諾aH1及びG1の代表取締役を務めていたF2は,原告とは大学時代以来の友人であったところ,昭和60年4月にA1が第三者割当増資を行った際,原告からA1株20万株を1株2500円で引き受けて欲しい旨の依頼を受け,原告がA1株を近 務めていたF2は,原告とは大学時代以来の友人であったところ,昭和60年4月にA1が第三者割当増資を行った際,原告からA1株20万株を1株2500円で引き受けて欲しい旨の依頼を受け,原告がA1株を近年中に公開する予定であると言っており,値上がりが期待できることなどから,H1において8万株,G1において12万株のA1株をそれぞれ引き受けた。なお,G1は,昭和61年7月,上記12万株のうち6万株を,1株3000円でA4に譲渡した。 (乙5,甲10の1,証人F2)b その後,原告は,昭和61年9月上旬ないし中旬ころ,F2に対し,原告がどうしてもA1株を配りたい人がいるので,H1及びG1が第三者割当増資の際に引き受けたA1株を1株3000円で返却して欲しい旨申し出た。 F2は,A1株が年内にも店頭登録により公開され,その最低分売価格が1株3500円ないし4000円程度になると聞いており,A1株の公開による多額の利益を期待していたため,原告が今頃唐突にA1株の譲渡を依頼した真意を測りかねた。しかし,原告の依頼から,親友であることに免じて詮索せずに何とか応じて欲しいという感じを受けたこと,そもそも原告との親交関係がなければA1株を取得できなかったこと,1株3000円で売却しても利益が出ること等を勘案して,不満を残しつつも原告の申出に応じることにした。また,G1の保有するA1株の売却については,同社のオーナー会長であるY2の了承を得る必要があったところ,F2は,原告の上記申出の直後に上京したY2に事情を話し,その了承を得た。 さらに,F2は,同人が同年10月10日ころまで海外に出張する予定であったことから,同年9月20日ころ,H1の保有するA1株8万株及びG1の保有するA1株6万株の売却に関する事務手続を,G1の総務部次長を務めるZ2に依頼し,その旨 10日ころまで海外に出張する予定であったことから,同年9月20日ころ,H1の保有するA1株8万株及びG1の保有するA1株6万株の売却に関する事務手続を,G1の総務部次長を務めるZ2に依頼し,その旨を原告にも連絡した。 (甲10の1(上記認定に反する部分を除く。),乙5,同7,同27,同51,証人F2)c なお,F2は,原告から本件A1株の譲渡を依頼された際における依頼の趣旨について,本件の証人尋問,別件刑事事件の証人尋問(甲10の1)及び陳述録取書(甲10の2)において,上記認定に係る検察官面前調書(乙5)の供述と異なり,A1の若い役員と新しい幹部の人達に店頭公開前のA1株を分けてやりたいが,原告のA1株を分けてやることはできないので,F2の会社の株を譲ってくれないかという趣旨であった旨供述している。 しかし,前記bの認定に沿うF2の上記調書における供述は,原告が本件A1株の譲渡を依頼した理由を明らかにせず,F2もこれをあえて詮索しなかった経緯について,自然かつ具体的な説明をしており,同人が上記調書の録取後,訂正等の申立てをせずに署名押印をしていることに照らしても,信用性が高いということができるから,これと異なるF2の本件の証人尋問等における各供述は,採用できないというべきである。 エ J1による本件A1株の譲渡の承諾aI1及びJ1の代表取締役を務めていたG2は,大学卒業後間もなく,F2を通じて原告と知り合い,仕事を離れた友人関係にあったところ,昭和60年4月にA1が第三者割当増資を行った際,原告からA1株を引き受けるよう要請され,未公開株式を引き受けて損はないと思い,公開時点で売却して差益を得る,いわゆる「利喰い」を目的として,I1において,資金の用意が可能な8万株の限度でA1株を引き受けることとした。 また,G2は,H2のオ 株式を引き受けて損はないと思い,公開時点で売却して差益を得る,いわゆる「利喰い」を目的として,I1において,資金の用意が可能な8万株の限度でA1株を引き受けることとした。 また,G2は,H2のオーナー社長であり,G2と親交のあったO4から,同社が引き受けたA1株20万株の一部を購入して欲しい旨の要請を受け,同人に対する義理や,公開時点で売却すれば損をすることはないという考えから,同年6月28日,H2からA1株8万株を購入した。その際,I1は,原告の紹介で,C1から購入資金2億円を借り入れ,H2から購入したA1株の株券は,C1に担保として預けられた。 さらに,G2は,昭和61年3月ころ,原告らからA1株が同年11月前後ころに店頭登録により公開されることを聞き,A1株が公開されれば,当時のV2の株価(3000円前後)に照らして,3500円ないし4000円程度の値が付くものと予想され,その売却益によって,J1が抱えていた9000万円近い累積欠損を消すことができると考えて,I1からJ1に対し,A1株合計16万株を売却した。 (甲14,乙12,証人G2)b(a) その後,原告は,昭和61年9月中旬ころ,G2に対し,I1が第三者割当増資の際に引き受けたA1株8万株を放出して欲しい旨の申出を行い,G2が,H2から購入したA1株8万株も保有していることに言及すると,そのA1株も併せて戻して欲しい旨依頼した。 G2は,A1株を戻す際の価格を尋ねたところ,原告が1株3000円であると回答したことから,本件A1株を公開時に売却すればもう少し儲かるという気持ちはあったものの,原告が頭を下げて頼んだ以上断ることができず,原告との友誼や,1株3000円であれば取得原価と比べて損にならないことも勘案して,原告の申出を承諾した。 (甲14(上記認定に反する部分を ったものの,原告が頭を下げて頼んだ以上断ることができず,原告との友誼や,1株3000円であれば取得原価と比べて損にならないことも勘案して,原告の申出を承諾した。 (甲14(上記認定に反する部分を除く。),乙12,証人G2)(b) これに対し,G2は,本件における証人尋問及び陳述録取書(甲14)において,原告はG2の会社の保有するA1株を提供して欲しいという趣旨の申出をしたのであって,買い戻す旨の申出はしていない旨供述する。 しかしながら,G2は,平成2年に作成された上記陳述録取書においては,「(原告から本件A1株の譲渡を依頼された際の)正確な言葉は憶えていませんが,私の会社が持っているA1の株式を提供してほしいという趣旨の話でした。」と供述しているにもかかわらず,平成11年に実施された証人尋問においては,原告が上記依頼をした際,「突然だが,自分の株はもう既に登録済みで第三者に分けるわけにはいかなく,株数が足りなくなったと,誠にもうしわけないけれども,私の持っているI1の名義株を放出してほしい」という趣旨の発言をした旨具体的に供述しており,また,G2は,上記陳述録取書においては,原告が上記依頼をした際,「(A1株の)金額はその時には聞いていないのではないか,と思います。」と供述しているのに対し,証人尋問においては,この点につき,原告が「払込金額は2500円に金利と有取税を足したものを考えておる」と発言した旨供述しているなど,その供述には不自然な変遷が認められ,G2が原告と長年親交を有していることをも考慮すれば,G2の上記各供述の信用性については,疑問があるといわざるを得ない。 また,G2は,前記(a)の認定に係る検察官面前調書(乙12)における供述が,上記陳述録取書及び本件の証人尋問における供述と異なる理由について,G2がいったん ては,疑問があるといわざるを得ない。 また,G2は,前記(a)の認定に係る検察官面前調書(乙12)における供述が,上記陳述録取書及び本件の証人尋問における供述と異なる理由について,G2がいったん飲酒をしてから,検察官による上記調書の読み聞けが行われたこと,G2が本件A1株の売却先について,調書の記載が事実と違う旨指摘したにもかかわらず,検察官から一蹴されたこと,当時マスコミの攻勢が厳しく,早くB1事件から足を洗いたい気持ちであったこと等の諸事情を挙げるが(証人G2),これらの諸事情をもっても,G2の上記調書における供述の信用性を疑わせるものということはできず,かえってG2が,上記調書の録取後,一部訂正を申し立て,その訂正が行われた後に署名押印をしていること(乙12)に照らせば,その内容は,G2の当時の供述をそのまま録取したものであって,信用性が高いというべきであるから,これと異なるG2の上記陳述録取書及び証人尋問における供述を採用することはできない。 (5) 本件A1株の譲渡に関する事務手続ア本件A1株の譲渡事務全体の経緯についてa 原告による当初の指示原告は,昭和61年8月下旬ころ,M1に対し,E1の保有する本件A1株の譲渡に関し,事務的な手続を行うよう指示し,次いでF1に関しても同様の指示を行った。そこで,M1は,同月27日,Q1とともにE1を訪ね,X1のY1との間で,本件A1株の譲渡手続について説明を行った。 他方,F1からの本件A1株の譲渡手続は,同社の本社が神戸市に所在したことから,当時A1の大阪支社次長兼営業部長を務めていたE2が担当することとされた。 (甲55,乙2,同3,同27,証人M1,原告本人)b 原告によるその後の指示原告は,その後,A1の部次長以上の役職員に対するA1株の譲渡手続が進行していた最 いたE2が担当することとされた。 (甲55,乙2,同3,同27,証人M1,原告本人)b 原告によるその後の指示原告は,その後,A1の部次長以上の役職員に対するA1株の譲渡手続が進行していた最中に,M1に対し,今度は社外における原告の知人や世話になった人等に公開前のA1株を譲渡するので,その譲渡手続を行うよう指示した。 さらに,原告は,M1に対し,昭和61年9月中旬ころまでに,H1,G1及びJ1から放出された本件A1株についても,それぞれ譲渡手続を行うよう指示した。 原告は,本件A1株の譲渡に関するその後の実務作業について,M1を全般的な責任者とし,E2にF1との間の手続を,Q1に同社以外の放出5社との間の手続を担当させた。そして,E1との間の具体的な事務手続は,M1が行い,H1,G1及びJ1との間の具体的な事務手続は,F2及びG2と面識のあるQ1が行った。 また,原告は,M1及びQ1に対し,A1株の譲渡先のうち,A1株の購入資金を用意することができない社外の者に対しても,社内の者に株を取得させる際と同様に,C1から購入資金を融資するようそれぞれ指示したことから,同社は,社外の譲受人のA1株の購入資金についても,従前のA1株の取得者の場合と同様の方法により貸付けを行った。さらに,その際の融資の利率も,Q1が原告の承諾の下に決定した。 (甲65,乙2,同3,同9,同27,同49,証人Q1,同M1)c 本件A1株の具体的な譲渡手続の流れ本件A1株に関する譲渡手続は,原告らが選定した本件譲受人の氏名等について,B1の本社社長室次長兼秘書課長を務めるJ2を通じてM1に連絡し,M1らが,A1株の売却について原告と合意した放出5社各社からA1株を購入する手続を行ったうえ,本件譲受人にA1株を譲渡する手続を取りまとめる方法により行われた。 務めるJ2を通じてM1に連絡し,M1らが,A1株の売却について原告と合意した放出5社各社からA1株を購入する手続を行ったうえ,本件譲受人にA1株を譲渡する手続を取りまとめる方法により行われた。 本件A1株の譲渡に関する具体的な事務手続は,当初は,M1及びQ1が用意した株式売買約定書,有価証券取引書,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書をワンセットにしてJ2らに交付し,原告から本件譲受人との間の事務手続を行うよう指示されたJ2,Q1らが,本件譲受人から上記各書類に署名等を受け,これらがM1に返却された後,一括してC1のQ1に交付し,購入資金につき融資の利用を希望する譲受人については,C1による融資手続を行う一方,放出5社各社から株式売買約定書に記名押印を受けて,これをM1に再度交付し,M1から本件譲受人にこれを手交又は郵送する方法により行われた。 株式売買約定書の用紙は,A1の財務部において従来から使用,保管されていたものをコピーして用意したものであり,C1による融資のための金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書の用紙も,同社が従前A1株の購入代金を融資した際に使用した用紙と同様の書式の用紙を用意して,M1に交付したものであった。 しかしながら,上記の方法によった場合,本件譲受人との間の手続を2回行わなければならないなど,手間がかかることから,Q1の発案により,途中から,放出5社との事務手続を先行させることとし,放出5社各社から,譲受人,売買株数,約定金額等の各欄が白紙の株式売買約定書に一括して記名押印を受け,その後,本件譲受人の下に1度だけ赴き,上記約定書に署名押印を受け,2枚組の上記約定書のうち1枚を本件譲受人に交付し,他の1枚を持ち帰ることとした。M1らは,原告から譲渡の指示を受けた株式数に基づき,譲受人1人当たり500 1度だけ赴き,上記約定書に署名押印を受け,2枚組の上記約定書のうち1枚を本件譲受人に交付し,他の1枚を持ち帰ることとした。M1らは,原告から譲渡の指示を受けた株式数に基づき,譲受人1人当たり5000株程度を譲渡するという見込みの下に,株式売買約定書を用意したうえで,放出5社各社に対し,これらの約定書に包括的に押印するよう求めた。このため,放出5社の押印等を受けながら,譲受人が決まらずに不必要となった株式売買約定書の用紙も出たが,これらはシュレッダーにかけられて廃棄された。 (甲1の1ないし83,同2の1ないし55,同3の1ないし55,同55,同60の1ないし4,同61の1ないし4,乙27,同28,同31,同32,同49)dC1による本件A1株の残代金の一括送金(a) 原告は,昭和61年10月にA1株が公開される際,公開直後の株価が4000円程度にはなるものと見込まれたため,同月以降にA1株を譲渡した場合,税務署から低廉譲渡という指摘を受けた場合に反論しにくくなるほか,公開価格自体も決定してしまうことから,本件A1株の譲渡手続の担当者に対し,本件A1株の譲渡に関する一連の手続を,同年9月末までに終了させるよう指示した。 他方,原告側における譲渡手続の担当者は,放出5社に対し,同月30日に本件A1株の購入代金を決済するとともに,株券の引渡しを受けて,本件A1株の譲渡に関する取引を完了させることを約束していた。 しかしながら,原告から本件譲受人の選定に関する指示が届くのが遅れたことや,本件譲受人からの書類の回収がなかなか進まなかったことから,手続全体が次第に遅れ始め,同日までに本件A1株の譲渡に関する一連の事務手続を完了することが困難となった。 当初,M1,Q1ら譲渡手続の担当者は,売買代金の支払について,本件譲受人を確定させたうえ 続全体が次第に遅れ始め,同日までに本件A1株の譲渡に関する一連の事務手続を完了することが困難となった。 当初,M1,Q1ら譲渡手続の担当者は,売買代金の支払について,本件譲受人を確定させたうえで,本件譲受人の名義でC1から直接放出5社各社に送金して行うこととしており,同月25日には,L1ら3名の売買代金の支払について,それぞれ個別の譲受人の名義においてF1への送金が行われたが,本件取引に関する手続が遅延した結果,その他の本件譲受人による売買代金の支払については,個々の譲渡先を確認したり,C1の融資を利用するか否かを確認していては,同月30日までに手続が完了できないことが明らかとなった。そこで,M1,Q1らは,協議のうえ,同月29日,本件譲受人から金銭消費貸借契約書等の融資に必要な書類を回収したか否かにかかわらず,同月30日に,C1から放出5社各社に対し,一括して本件A1株の残代金を支払うこととした。 そして,C1は,同日,上記の決定に従い,本件A1株の売買代金のうち,同月25日にF1に送金済みのL1ら3名の売買代金合計3億円と,自己資金によりA1株を購入したO1がF1に直接送金した1500万円を除いた合計17億8500万円について,E1に対して6億円,F1に対して2億8500万円,H1に対して2億4000万円,G1に対して1億8000万円,J1に対して4億8000万円を,それぞれC1名義で一括して振込送金した。しかしながら,同月30日までに,本件譲受人から融資に必要な書類を回収することができた融資件数は,わずか20件程度にすぎず,原告側の譲渡担当者も本件A1株の譲渡先の全てを把握できていない状況にあり,本件譲受人のうち少なくとも4ないし5名は,この時点で確定すらしていなかった。 (甲15の3,同17の1,同55,同63の1ないし5 譲渡担当者も本件A1株の譲渡先の全てを把握できていない状況にあり,本件譲受人のうち少なくとも4ないし5名は,この時点で確定すらしていなかった。 (甲15の3,同17の1,同55,同63の1ないし5,同65,乙2,同28(上記認定に反する部分を除く。),同31(上記認定に反する部分を除く。),同35,同49,証人Q1,同M1)(b) これに対し,被告は,昭和61年9月30日に本件A1株の購入代金をC1から放出5社に一括して送金する旨決定されたのは,同月中旬ころであると主張し,M1は,検察官面前調書(乙28)において,これに沿う供述をするほか,Q1も,検察官面前調書(乙31)において,同月下旬ころに決定した旨供述する。 しかし,上記の決定が行われたことが同月29日であることについては,多数の関係者の供述が合致しているところ,これらの供述は,上記の決定に至る経緯について合理的な説明をしており,記憶も明確であることから,信用性が高いというべきである。このような関係者の供述に加え,C1がL1ら3名の売買代金について,同月25日に融資を行い,これをF1に送金しており,少なくともその時点では同月30日に一括して送金する方針が決定したとは考え難いこと,同日,一括送金について連絡の行き届かなかったO1が,売買代金を直接F1に振込送金していることにも照らせば,上記の決定が行われたのは,同月29日というべきであって,これに反する被告の主張は,いずれも採用することができない。 e その後の手続M1ら譲渡手続の担当者は,C1から放出5社に対する一括送金の後も,本件譲受人ごとに株式売買約定書や融資手続に関する書類を整える作業等を継続したが,M1からC1のQ1に対してこれらの書類が全て届けられたのは,早くとも同年10月7日ころ以降であり,C1が融資を利用した本 受人ごとに株式売買約定書や融資手続に関する書類を整える作業等を継続したが,M1からC1のQ1に対してこれらの書類が全て届けられたのは,早くとも同年10月7日ころ以降であり,C1が融資を利用した本件譲受人に金銭消費貸借契約書の写し等を郵送するなどして,本件取引に関する一連の手続が整ったのは,同月下旬ころであった。 また,C1では,金銭消費貸借契約書等が整わない状況で融資を行うことは異例であったことから,同社の業務課長B4は,同社の経理部次長C4に対し,融資先の明細書を添付しない概算による貸付額を借方にし,貸方に出金の当座預金勘定科目を記載した仮伝票処理を依頼し,最終的に融資の明細が判明した段階で,明細書を添付した正伝票を作成してもらい,上記仮伝票と差し替えることとした。このように,正伝票を作成して最終的に金銭消費貸借契約書等を徴して貸付処理を行った本件A1株の譲渡件数が57件であったのに対し,同年9月30日以降,間もなく購入代金相当額を返済したことから,貸付け扱いにして金銭消費貸借契約書等を徴することなく仮払金処理をした件数が23件,いったんC1に振り込まれた金額についてその理由が不明であったため預り金処理を行い,その後本件A1株の購入代金であることが判明したため,預り金取崩しの処理をした件数が1件であった(なお,本件譲受人のうちには一人で2件の株式売買を行った者が存在するため,これらの件数の合計は本件譲受人の人数と一致しない。)。 (乙31,同35,同49)f 株券の交付(a) 放出5社が譲渡した本件A1株のうち,E1が保有していた20万株の株券は,昭和61年9月24日,X1を訪ねたM1がY1から受領し,同月26日,10万株券から1000株券に分割された。 また,F1が保有していた本件A1株20万株の株券は,D2がE2の要請に 万株の株券は,昭和61年9月24日,X1を訪ねたM1がY1から受領し,同月26日,10万株券から1000株券に分割された。 また,F1が保有していた本件A1株20万株の株券は,D2がE2の要請に従って,同月26日及び同年10月1日に,各10万株分ずつA1経理部長宛に郵送し,その後,C1に届けられた。 さらに,H1及びG1が保有していた本件A1株合計20万株の株券は,上記2社がA1の第三者割当増資においてA1株を引き受けた際,B1から購入資金を借り入れたことから,この借入金の担保として,本件取引以前からB1側に預けられ,その後C1に届けられた。 そして,J1が保有していた本件A1株16万株のうち,第三者割当増資の際にI1が引き受けた8万株の株券は,同年9月30日,G2からQ1の使者に交付され,C1に届けられた。また,J1が保有していた本件A1株のうち,H2から購入した8万株の株券が本件取引以前からC1からの融資の担保として同社に預けられていたことは,前記(4)エaのとおりである。 このようにして,C1に集められた本件A1株70万株の株券は,Q1の指示により,譲受人ごとに分けて封筒に入れられ,C1の融資を利用した本件譲受人の分は,同社が担保として貸付書類と共に保管し,金銭消費貸借契約書の写し及び「有価証券お預り証」を,当該譲受人に送付した。他方,本件A1株の株券のうち,C1の融資を利用しなかった譲受人の分は,当該譲受人と直接折衝した者を通じて,当該譲受人に交付された。 (甲6の3,同65,同76の1ないし5,乙4,同5,同9,同11,同12,同31,同49,証人Q1,同M1)(b) これに対し,原告は,E1からC1に本件A1株20万株に係る株券が交付された経緯について,E1が本件譲受人に譲渡するための便宜を考慮して,昭和61年9月 同31,同49,証人Q1,同M1)(b) これに対し,原告は,E1からC1に本件A1株20万株に係る株券が交付された経緯について,E1が本件譲受人に譲渡するための便宜を考慮して,昭和61年9月26日にY1がA1を訪問した際に,E1の所有していた本件A1株を,10万株券から1000株券に分割し,これをいったんY1が持ち帰り,同年10月上旬ころ,Y1がこれをM1に送付して交付した旨主張する。 しかしながら,乙9号証添付資料9には,Y1が同年9月26日に株券分割のためA1を訪ね,分割手続を行った旨の記載があるものの,乙9号証添付資料26に照らせば,Y1が同日A1に分割手続のため提供した株券は,X1ほか2名の保有するA1株合計42万株であって,本件A1株に係る株券でなかった可能性も否定できず,他にY1が,同日,本件A1株に係る株券をA1に持参し,分割後これを持ち帰り,同年10月にM1に交付した事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって,E1からC1に本件A1株20万株の株券が交付された経緯に関する原告の上記主張を採用することはできない。 イ放出5社各社との個別的な譲渡手続についてaE1との事務手続(a) M1は,原告から,本件A1株の譲渡に関する事務手続を行うよう指示を受け,昭和61年8月27日,Q1とともに,U1からE1の保有する本件A1株の譲渡手続を任されたX1のY1を訪ね,E1との間における本件A1株の譲渡に関する事務手続を開始した。その際,M1は,Y1に対し,E1の保有する本件A1株20万株の購入代金を同年9月10日を目処に決済したいこと,本件A1株の譲受人は複数の予定であるが今のところ未定であること等を述べたほか,A1株が同年10月30日に店頭登録により公開される予定であること,その際の株価が1株5000円程度になる見込 いこと,本件A1株の譲受人は複数の予定であるが今のところ未定であること等を述べたほか,A1株が同年10月30日に店頭登録により公開される予定であること,その際の株価が1株5000円程度になる見込みであることを説明した。 (乙9,同30)(b) その後,Y1は,M1から本件A1株の譲渡に関する事務について1か月近く連絡がないことから不安になったが,U1の指示で,Y1の方から連絡を取ることはしなかった。一方,M1は,上記A1株20万株のうち2万株分について譲受人の決定が遅れていたことから,まず,先に譲受人となることが確定していたB2ら12名の署名押印を受けた18万株分について,先に所要の手続を行うこととした。 そして,M1は,昭和61年9月24日,Y1を訪ね,2枚1組の株式売買約定書と有価証券取引書各14通を示した。これらの書類のうち,12通には譲受人の住所が記載され,氏名等の欄にも署名等が行われていたのに対し,残り2通はこれらが空欄であったが,M1は,「20万株のうち,18万株をこういう人達12名に売ることになりました。しかし,残り2万株についてはその譲受人の名義が確定していません。2名に各1万株ずつ回すつもりです。」と説明した。上記有価証券取引書は,本来は譲渡人であるE1が作成すべき書類であったが,M1が既に作成して用意していたものであった。 Y1は,上記株式売買約定書及び有価証券取引書の譲渡人欄に,E1の代表者記名印等を押捺し,B2ら12名が譲受人となることが確定していた12名分の株式売買約定書各一対のうちの1枚及び有価証券取引書をその場で受領し,譲受人が未定の2名分の株式売買約定書及び有価証券取引書をM1に返却した。 M1は,帰り際に,Y1に対し,「約定書等に書いてあるとおり,9月30日に決済いたします。名前が決まっていない2 で受領し,譲受人が未定の2名分の株式売買約定書及び有価証券取引書をM1に返却した。 M1は,帰り際に,Y1に対し,「約定書等に書いてあるとおり,9月30日に決済いたします。名前が決まっていない2名分については後日お届けします。」と説明したことから,Y1は,M1に対し,本件A1株20万株分に係る株券を交付した。そして,C1に預けられた上記株券は,同社の融資を利用して購入した本件譲受人の分については,担保として同社に預けられ,自己資金により購入した本件譲受人の分については,その後当該譲受人に引き渡された。 (甲65,乙9,同28,証人M1,同O3)(c) E1に対する本件A1株20万株の売買代金は,C1が,昭和61年9月30日,全額6億円を一括してA3銀行B3支店のE1名義普通預金口座に振込送金する方法により支払った。 (甲63の3,乙9)(d) その後,譲受人が未定であった2名分の株式売買約定書及び有価証券取引書は,昭和61年10月上旬ころ,譲受人欄にそれぞれZ1及びA2の署名等を受けたうえで,Y1の下に郵送された。 (乙9)bF1との事務手続(a) F1の保有する本件A1株の譲渡に関する事務手続は,M1から当該事務手続を指示されたA1大阪支社次長兼営業部長のE2が,V1から事務手続を行うよう指示を受けたD2との間で行った。 昭和61年9月下旬ころ,A1の本社からE2に対し,20数組の株式売買約定書等が送付されたが,同社の役員であるL1ら3名に係る3組10万株分については,上記約定書に株数,金額が記載され,譲受人欄に署名押印がされていたものの,その他の上記約定書には株数,金額の記載はなく,譲受人欄も空欄のままであった。E2は,Q1から,L1ら3名以外の譲受人については現在A1株の譲渡に関する話を進めているので,とりあえず上記約定 のの,その他の上記約定書には株数,金額の記載はなく,譲受人欄も空欄のままであった。E2は,Q1から,L1ら3名以外の譲受人については現在A1株の譲渡に関する話を進めているので,とりあえず上記約定書等にF1から押印を受けて欲しい旨,指示を受けた。 そこで,E2は,F1の本社に上記書類を持参してD2を訪ね,Q1から指示された事務手続を行った。D2は,株式売買約定書等の譲渡人欄に同社の代表者記名印及び社印を押捺し,譲受人欄に署名押印のあるL1ら3名分の上記約定書については,その場で1枚をD2が,もう1枚をE2が受領し,譲受人欄等が空欄であるその他の上記約定書については,2枚ともE2が預かった。 (甲13,同23,乙10,同11,同28)(b) その後,M1は,昭和61年9月25日ころ,Q1に対し,F1の保有する本件A1株を,M1自身に2万5000株,L1に5万5000株,N1に2万株譲渡することについて,購入資金の融資及び振込手続を依頼し,C1は,同日,上記各A1株の購入代金として,M1名義で7500万円,L1名義で1億6500万円,N1名義で6000万円を,それぞれC3銀行D3支店のF1名義当座預金口座に振込送金した。また,F1の保有するA1株のうち,残り10万株の購入代金については,C1が同社名義で2億8500万円をC3銀行D3支店のF1名義当座預金口座に振込送金したほか,C1から一括送金の連絡が届かなかったO1が,同人名義で1500万円を上記口座に直接振込送金して支払った。 (甲39の1ないし4,同55,乙11,同49)(c) これに対し,D2は,昭和61年9月26日,既に購入代金が振り込まれた本件A1株10万株に係る株券を,E2の指示に従って,A1経理部長宛に郵送し,残り10万株に係る株券についても,同年10月1日に,A1経理部長 D2は,昭和61年9月26日,既に購入代金が振り込まれた本件A1株10万株に係る株券を,E2の指示に従って,A1経理部長宛に郵送し,残り10万株に係る株券についても,同年10月1日に,A1経理部長宛に郵送した。これらの株券は,C1に引き渡され,同社に預けられたが,L1ら3名は,譲渡を受けた株券につき,同年9月25日付けのF1宛て株券受領書に署名押印し,これを同社に交付した。 (甲40の1ないし3,乙11)cH1及びG1との事務手続(a)ⅰ H1及びG1の保有する本件A1株の譲渡に関する事務手続は,原告から当該作業を担当するよう指示されたQ1が,M1から具体的な作業に関する指示を受けて,F2から事務手続を依頼されたG1の総務部次長であるZ2との間で行った。 Q1は,昭和61年9月下旬ころ,株式売買約定書の用紙を持参して,G1及びH1が共用するG1本社の事務所にZ2を訪ね,上記約定書の譲渡人欄にH1及びG1の記名押印を行うよう依頼した。上記約定書の譲受人欄,株数欄等は,いずれも空欄であったが,Z2は,あらかじめF2から,Q1の言うとおり手続を行うよう指示されていたことから,上記約定書の譲渡人欄にH1及びG1の代表者記名印及び社印を押捺した。 (乙2,同5,同7,同28,同49,同51)ⅱ これに対し,原告は,H1及びG1との間における本件A1株の譲渡手続について,Q1がL2をF2の下に送り,同人から数十枚の株式売買約定書に両社の記名押印を受けた旨主張する。そして,Q1は,陳述書(甲55)及び本件の証人尋問において,当時C1の手伝いに来ていたL2に対し,H1の事務所に赴いて株式売買約定書に押印を受けるよう指示し,L2から,F2の立会の下に担当者から上記約定書に押印を受けた旨聞いており,Q1自身はH1の事務所に赴いたことはない旨供述し L2に対し,H1の事務所に赴いて株式売買約定書に押印を受けるよう指示し,L2から,F2の立会の下に担当者から上記約定書に押印を受けた旨聞いており,Q1自身はH1の事務所に赴いたことはない旨供述し,F2も,別件刑事事件における証人尋問(甲10の1)及び本件の証人尋問において,海外出張前の昭和61年8月20日から同年9月10日の間ころ,Z2が,F2の立会の下において,Q1の使者が持参した株式売買約定書に押印した旨供述している。 しかしながら,Q1の上記各供述は,同人がF2との間で譲渡手続を行い,同人から株式売買約定書に押印を受けたとするQ1自身の陳述書(甲15の4)における供述と相反している点で疑問があり,F2の上記各供述も,海外出張のため事務手続をZ2に委ねたとするF2の検察官面前調書(乙5)における供述と相違するのみならず,株式売買約定書への押印手続を行った時期を同月10日以前としている点において,原告がその譲渡手続をM1に指示した時期などに照らし,疑問の余地があるというべきである。 これに対し,Q1との間で株式売買約定書への押印手続を行ったとするZ2の検察官面前調書(乙7)における供述は,上記手続を自ら中心的に行った者による供述であり,F2から上記手続を依頼された経緯,手続の内容,手続における疑問点と対処方法,手続の時期等について合理的な説明をしているのみならず,当時G1の常務取締役を務めていたM2の供述(乙51)にも合致しており,これを信用することができるから,Z2の上記供述に反するQ1及びF2の上記各供述は,いずれも採用することができない。 そして,他に,株式売買約定書への押印手続に関して,Z2の上記供述に係る前記ⅰの認定を覆し,原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 ⅲ また,Q1は,陳述書(甲55)において,H1及び きない。 そして,他に,株式売買約定書への押印手続に関して,Z2の上記供述に係る前記ⅰの認定を覆し,原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 ⅲ また,Q1は,陳述書(甲55)において,H1及びG1から株式売買約定書に押印を受けた際,既にD4,E4及びJ3からは,上記約定書の譲受人欄に署名押印を受けていた旨供述しており,F2は,別件刑事事件における証人尋問(甲10の1)において,帰国後Q1に対し,C1が代金を送金した理由について尋ねたことはない旨供述する。 しかし,Q1及びF2の上記各供述は,いずれもZ2の検察官面前調書(乙7)における供述と異なっているところ,同人の供述が信用できることは前記ⅱのとおりであるから,これに反するQ1及びF2の上記各供述を採用することはできない。 (b) その後,C1は,昭和61年9月30日,同社名義で,H1の保有していたA1株8万株の譲渡代金2億4000万円を株式会社F4銀行(当時の商号。以下「F4銀行」という。)G4支店のH1名義普通預金口座に,また,G1の保有していたA1株6万株の譲渡代金1億8000万円をF4銀行G4支店のG1名義当座預金口座に,それぞれ一括して振込送金する方法により支払った。 (乙7)(c) 昭和61年10月10日に海外出張から帰国したF2は,Z2から,C1が上記のとおり本件A1株の売買代金を一括送金して支払った事実について報告を受けて疑問を抱き,Q1に対し,F2としてはA1株の売却先と考えていないC1の名義により売買代金が振り込まれた理由を問い合わせた。これに対し,Q1は,手続上同社からとりあえず代金を一括して振り込んだ旨説明したうえ,原告が本件A1株をあちこちに売却しているので,その株式売買約定書は後日持参する旨回答した。 F2は,その1週間ないし10日後,Q1の使者から, からとりあえず代金を一括して振り込んだ旨説明したうえ,原告が本件A1株をあちこちに売却しているので,その株式売買約定書は後日持参する旨回答した。 F2は,その1週間ないし10日後,Q1の使者から,H1を譲渡人とする株式売買約定書9通,G1を譲渡人とする株式売買約定書13通を受領し,本件A1株が上記約定書譲受人欄記載の者に譲渡されたことを知った。 なお,H1及びG1が売り渡した本件A1株20万株に係る株券は,B1から受けた融資の担保として,従前からB1側に預けられていた。 (甲10の1,乙5,同7,同49)dJ1との事務手続(a) J1の保有する本件A1株の譲渡に関する事務手続は,原告の指示を受けたQ1が,G2との間で行った。 Q1は,昭和61年9月下旬ころ,I1の事務所にG2を訪ね,2枚1組の株式売買約定書23組を差し出して,譲渡人欄に記名押印するよう依頼した。そこで,G2は,部下の経理部長をその場に呼び寄せ,上記約定書の譲渡人欄に,J1の代表者記名印と社印を押捺させた。G2は,Q1が同月30日に本件A1株の譲渡代金を送金する旨述べたことから,A3銀行E3支店のJ1名義当座預金口座の番号をQ1に伝えた。 (甲55,乙2,同12,同28,同49,証人Q1,同G2)(b) その後,C1は,昭和61年9月30日,同社名義で,J1の保有していた本件A1株の譲渡代金4億8000万円を,上記口座に一括して振込送金する方法により支払った。 そこで,G2は,同日,Q1の使者に対し,本件A1株8万株に係る株券を交付するとともに,本件A1株を購入した際にC1から借り入れた金員の弁済として,2億円の小切手を交付した。一方,J1が売り渡した本件A1株のその余の8万株に係る株券は,従前からC1に担保として預けられていた。 (乙9,同12)(6) 本件譲 1から借り入れた金員の弁済として,2億円の小切手を交付した。一方,J1が売り渡した本件A1株のその余の8万株に係る株券は,従前からC1に担保として預けられていた。 (乙9,同12)(6) 本件譲受人の選定ア原告による本件譲受人のリストアップ作業原告は,放出5社に対する本件A1株の譲渡の依頼や,M1らに対する譲渡手続に関する指示と並行して,本件A1株70万株を,A1社内の役職員,社外の知人等に割り当てる作業を行った。 本件A1株を取得させるA1の部次長以上の役職員については,原告がW1,M1とともに選定し,K2もこれを了解していた。また本件A1株の取得の依頼は,A1の社員が行った。 他方において,原告は,昭和61年8月下旬ないし9月上旬ころから,本件A1株を取得させる候補者の検討作業を開始する一方,B1の社長室長を務めていたI2に対しても,本件A1株を取得させることが望ましい社外の者を推薦するよう伝えた。 その数日後,原告は,I2及びB1の社長室次長を務めていたJ2をB1本社の社長室に呼び,本件A1株を取得させる社外の者をリストアップする作業を行った。上記作業は,原告が,A1株を譲渡すべき相手方及び譲渡株数を考えながら,I2及びJ2にその場で挙げて,これをJ2が事務用箋に記載する方法により,3回くらいに分けて連日行われた。 原告は,人選の基本的な考え方として,B1グループを構成する会社の社業の展開や業績の拡大に直接又は間接に貢献してもらえる者に譲渡することとし,これらの会社の取引に関係する者,原告がこのような取引を離れた人間関係を有する者,その社会的地位から原告が尊敬していた者を選定することとし,本件A1株の全体の株式数を念頭に置いて,できるだけ多人数の歓心を買うために,1人当たりの株数を5000ないし1万株と考えて,約3 する者,その社会的地位から原告が尊敬していた者を選定することとし,本件A1株の全体の株式数を念頭に置いて,できるだけ多人数の歓心を買うために,1人当たりの株数を5000ないし1万株と考えて,約30名の者をリストアップした。リストアップ作業の最後の段階で,I2は,B1の仕事で世話になった4名の者に本件A1株を取得させるよう推薦し,各自に対して譲渡する株数を示したところ,原告から特にクレームがなかったことから,これら4名も譲受人のリストに加わった。さらに,原告は,リストアップ作業が終了した後も,本件A1株の譲受人となるべき社外の者を追加した。このような作業の結果,原告が選定した本件A1株の社外の譲受人は,約40名程度にのぼったが,その中には,B1グループを構成する会社と取引上の関係を有する者だけでなく,F3,K3,A2など,これらの会社の取引とは関係がなく,原告との個人的な関係のみでつながる者も含まれていた。 (甲70,乙3,同37,同48,原告本人)イ本件譲受人に対する本件A1株取得の依頼作業等原告は,本件A1株の譲受人に関するリストアップ作業が終了した後,I2及びJ2に対し,リストアップした譲渡先に対し,本件A1株を1株3000円で取得するよう依頼することを指示し,A1株が昭和61年10月末に店頭公開されるため,同年9月中に取得するよう依頼すべきことを伝えた。また,原告は,Q1に対しても,社外の譲受人との間で,本件A1株の取得に関する協議を詰めるよう指示した。 原告が上記作業をI2,J2及びQ1の3名に指示したのは,I2が当時,B1の広報関係を担当しており,政界関係者に通じていたこと,J2がB1の秘書課長として,原告の特命事項に専従する者であったこと,Q1が本件取引の全体に関与しており,指示が容易であった上に,本件A1株の譲受 広報関係を担当しており,政界関係者に通じていたこと,J2がB1の秘書課長として,原告の特命事項に専従する者であったこと,Q1が本件取引の全体に関与しており,指示が容易であった上に,本件A1株の譲受人にC1から購入代金を融資させる予定であったことから,事務作業の面でも譲受人との折衝に適任と考えられたことによるものであった。加えて,原告は,本件A1株の譲渡を多くの人に知られたくないため,できるだけ隠密に実行することが望ましいと考えていたことから,いずれも比較的口が堅く,信用できる人物と考えられたI2,J2,Q1の3名に,本件譲受人に対する本件A1株の取得の依頼作業を指示したものであった。原告は,上記3名に対し,原告が人選を行った譲受人全員の氏名を伝えたわけではなく,上記3名各自に担当させようとする譲受人の氏名のみを伝え,手続を行うに当たって接触すべき相手方等を具体的に指示した。 原告から本件A1株の取得を依頼する手続を指示された者は,原告から逐一報告を求められたわけではなかったが,他の譲渡対象者に対する手続等を指示された際などに,原告に対し,「この前の手続はやっておきましたから」などと報告しており,これに対し,原告は,「ああそうか,判った。それでいい。」などと述べて了解していた。 他方,原告自身も,自ら人選を行った譲渡対象者に対し,直接電話をかけるなどして,A1株を取得するよう依頼した。 (乙3,同32,同37,同48,原告本人)ウ原告以外の者による本件譲受人の選定原告は,前記アのリストアップ作業により,社外の本件譲受人の多数を自ら選定したが,昭和61年9月中旬ころから,A1の幹部やI2においても,自分なりに原告の考えや立場とは別に本件A1株を取得させたい者がいると思われたことや,放出5社が譲渡を約束したA1株の株式数に余裕があ したが,昭和61年9月中旬ころから,A1の幹部やI2においても,自分なりに原告の考えや立場とは別に本件A1株を取得させたい者がいると思われたことや,放出5社が譲渡を約束したA1株の株式数に余裕があったことから,同社の社長のK2,専務取締役のW1,常務取締役のL1らにも,本件A1株の譲受人を選定させるとともに,B1の社長室長のI2,常務取締役のR1らにも,本件A1株の譲受人を選定するよう指示した。 原告は,K2,I2らに選定させた譲受人に対して譲渡する本件A1株の株式数については,全体の株数の管理,割当の調整を行っていたM1にその調整を任せ,原告は特に指示をしなかった。 他方,原告以外の者が人選を行った譲渡対象者に対して本件A1株の取得を依頼する作業は,それぞれ当該人選をした者が行った。原告以外の者が選定した本件譲受人の中には,原告が選定について報告を受けなかった者も多く存在し,原告もこれを特段確認したわけはなかった。そして,原告以外の者が選定した本件譲受人の中には,原告と面識のない者も含まれていた。 このような過程を経て,本件譲受人が選定されたが,同月末の時点で,少なくとも4ないし5名の譲受人が未確定であった。その後,最終的に確定した本件譲受人の氏名と購入した本件A1株の株式数は,別紙「本件A1株の譲渡の状況」記載のとおりである。 (甲65,同70,乙3,同30,同44,証人M1,原告本人)(7) その後の手続ア C1による本件明細書の送付と放出5社による有価証券取引税の納付等C1は,昭和61年9月30日に本件A1株の売買代金を放出5社各社に一括送金した後,放出5社各社に対し,上記一括送金の金額の明細として,各社が放出した本件A1株を譲り受けた本件譲受人の氏名,株数及び金額を明らかにした書面(以下「本件明細書」という。)を送付 各社に一括送金した後,放出5社各社に対し,上記一括送金の金額の明細として,各社が放出した本件A1株を譲り受けた本件譲受人の氏名,株数及び金額を明らかにした書面(以下「本件明細書」という。)を送付した。 また,E1は同月27日,F1は,L1ら3名を譲受人とする本件A1株の譲渡については同月26日,それ以外の者を譲受人とする譲渡については同年11月5日,H1及びG1はいずれも同年10月1日,J1は同月4日,それぞれ有価証券取引税を納付した。 さらに,F1においては,本件A1株が直接本件譲受人に譲渡されたものとして,会計処理が行われた。 (甲13,同36の1ないし28,同37の1ないし24,同38の1ないし3,同39の1ないし5,同41,同63の1ないし5,乙7,同12,証人Q1)イ放出5社における有価証券取引税の納付に関する経緯aE1の場合E1の保有する本件A1株の譲渡手続を担当したX1のY1は,株式の取引における約定後4日目精算という手順を本件A1株の譲渡にも当てはめ,昭和61年9月30日に決済されることから逆算して,同月27日,本件A1株の譲渡に係る有価証券取引税をH4税務署に納付した。 (乙9)bF1の場合F1の保有する本件A1株の譲渡手続を担当したD2は,本件A1株20万株に係る株券を送付し,C1から売買代金を受領したことにより,取引が完結したと考えていた。 しかし,F1としては,昭和61年9月30日の一括入金に係る本件A1株の譲渡につき,株式売買約定書を受領していないため,これらの入金を仮受金として処理せざるを得なかった。 また,F1は,同月25日に入金された本件A1株10万株に係る有価証券取引税を同月26日に納付したものの,その余の10万株に係る有価証券取引税については,本件A1株の譲渡先を明らかにした書 った。 また,F1は,同月25日に入金された本件A1株10万株に係る有価証券取引税を同月26日に納付したものの,その余の10万株に係る有価証券取引税については,本件A1株の譲渡先を明らかにした書面を受領していなかったため,これを納付することができなかった。しかしながら,同年10月30日にA1株が店頭登録された後に有価証券取引税を納付すれば,1株3000円による本件A1株の売買が税務署から低廉譲渡と指摘されるおそれがあったことから,D2は,A1において上記A1株の譲渡手続を担当したE2に対し,株式売買約定書及び譲渡先の明細を示した書面を交付するよう催促し続けたところ,E2は,同年11月4日,上記A1株10万株の譲渡代金に係る明細書と,本件譲受人の署名押印を受けた株式売買約定書等を,D2の下に持参した。そこで,F1は,同年9月30日にC1及びO1から送金された本件A1株の残代金に係る有価証券取引税を,同年11月5日に納付した。 (乙11)cH1及びG1の場合H1及びG1の保有する本件A1株の譲渡手続を担当したZ2は,昭和61年9月30日に本件A1株の売却代金が入金されたことから,有価証券取引税を翌日までに納付しなければならないと思ったが,同人が記名押印した株式売買約定書は,譲受人欄が空欄であったうえ,譲渡代金もC1からH1及びG1にそれぞれ一括して振り込まれており,有価証券取引税の納付に当たり提出すべき有価証券取引書を作成できなかったことから,同年10月1日,とりあえず,本件A1株の譲渡に係る有価証券取引税を納付する手続のみを行った。 その後,G4税務署長がG1に対し,昭和62年5月14日付け「「有価証券の譲渡内容についてのお尋ね」の提出方のお願い」と題する書面により,上記有価証券取引税に関する明細を明らかにするよう要請したこと その後,G4税務署長がG1に対し,昭和62年5月14日付け「「有価証券の譲渡内容についてのお尋ね」の提出方のお願い」と題する書面により,上記有価証券取引税に関する明細を明らかにするよう要請したことから,G1は,同月22日付け「有価証券の譲渡内容についてのお尋ね」と題する書面に,本件A1株を本件譲受人13名に直接譲渡したことを前提に,譲渡に関する明細を記載して,G4税務署長に提出した。また,H1に関しても,G4税務署長より同様の要請を受けたことから,同様の書面を提出した。 (甲35の1ないし3,乙7)ウ H1の取締役会決議に関する議事録昭和61年8月25日に開催されたH1の取締役会に関する議事録には,上記取締役会において,同社の保有する本件A1株8万株を,本件譲受人のうち9名に対し,合計2億4000万円で譲渡することが,取締役の全員一致により可決された旨の記載が存在する。 (甲34)エ本件有価証券届出書の提出A1は,平成元年9月28日付けで,本件有価証券届出書を大蔵大臣に提出したところ,本件有価証券届出書の「第1売出要項」には,原告が「記名式額面普通株式(券面額50円)」である本件A1株70万株について,昭和61年8月31日ないし同年9月30日の期間に,1株3000円で売出しを行った旨記載されている。 本件有価証券届出書は,平成元年当時,A1の経理部長として大蔵省との対応を担当していたO2が携わって作成されたものである。 (乙45,甲52) 2 本件取引関係者における本件A1株の売買当事者についての認識次に,以上認定した本件取引の経緯を踏まえ,本件取引の当事者,手続担当者等,本件取引の関係者における,本件A1株の売買当事者に関する認識について検討する。 (1) 放出5社の経営者等の認識ア U1の認識aE1の実質的な経営 緯を踏まえ,本件取引の当事者,手続担当者等,本件取引の関係者における,本件A1株の売買当事者に関する認識について検討する。 (1) 放出5社の経営者等の認識ア U1の認識aE1の実質的な経営者であるU1は,検察官面前調書(乙8)及び別件刑事事件の証人尋問(甲11)において,同社の保有していた本件A1株の売却先について,次のとおり供述している。 (a) U1は,同社の保有する本件A1株を原告ないしは原告の主宰する会社に売り戻すものと認識して,その譲渡を承諾したものであり,原告が本件A1株の売買の仲介ないしあっせんをしたという認識を有していなかった。 (b) その後,U1は,いわゆるB1事件が報道されていた昭和63年10月中旬ころ,記者会見の前日に,事実を発表する前に原告にあらかじめその旨伝えようと考え,原告に電話をしたが,原告がU1に対し,「E1の(本件A1株)20万(株)は,うちがあっせんし,U1さんの方で(本件譲受人)14名の方に直接売られたんですよね。」と述べたため,U1は,原告が事実をすり替えてごまかそうとしていると思い,立腹して「ふざけるんじゃない。」と怒鳴り付けたところ,原告は直ちにU1に謝った。 (c) U1は,B1事件が報道された後に,本件A1株の株式売買約定書に上記14名が譲受人として記載されていること,C1から代金が入金されたことを知ったが,上記約定書の記載は原告の都合による形式的なものにすぎないと認識していた。 b そこで,本件A1株の売却先に関するU1の上記各供述の信用性について検討すると,U1の上記各供述には,特段の不自然,不合理な点は認められず,また,U1の指示を受けて本件A1株の譲渡手続を行ったY1が,検察官面前調書(乙9)において,E1が原告側に本件A1株を譲渡するものと認識していた旨供述しており,U1 自然,不合理な点は認められず,また,U1の指示を受けて本件A1株の譲渡手続を行ったY1が,検察官面前調書(乙9)において,E1が原告側に本件A1株を譲渡するものと認識していた旨供述しており,U1の上記各供述に合致していることからも,U1の上記各供述の信用性は高いというべきである。 c これに対し,原告は,U1の前記各供述が,本件取引に関する手続経過及び客観証拠に反していると主張する。 しかし,U1の前記各供述は,前記1において認定した本件取引の手続経過に反するとはいえないし,本件譲受人を直接の譲受人とする株式売買約定書等の客観証拠についても,U1がこれらを形式的なものにすぎないと認識していた旨供述していること(乙8)に照らせば,同人の上記各供述は,同人の当時の認識を率直に述べたものと認めることができる。 また,原告は,U1には,当時,マスコミからの取材攻勢を免れ,本件譲受人の選定に関与していないことを明らかにするために,前記のとおり供述せざるを得なかった事情があり,同人の供述を文字通りに解することはできない旨主張し,原告も本人尋問においてこれに沿う供述をしている。 しかし,仮に原告が上記に主張するように,U1に対するマスコミの取材攻勢等の事情が存したとしても,そのために,U1が上記のとおり供述せざるを得なかったものとして,その任意性に疑問の余地が存在すると認めることは困難である。 したがって,原告の上記各主張は,いずれも理由がないといわざるを得ない。 d さらに,原告は,U1の前記各供述及びこれに沿うY1の前記bの供述は,U1の別件刑事事件の証人尋問における,A1の役職員らが譲受人になることを当然に想像していた旨の供述(甲11)や,Y1がM1らから譲受人が十数名になると聞いており,その後M1との間でE1とA1の役職員らとの間の売買手 の証人尋問における,A1の役職員らが譲受人になることを当然に想像していた旨の供述(甲11)や,Y1がM1らから譲受人が十数名になると聞いており,その後M1との間でE1とA1の役職員らとの間の売買手続を行なった事実と矛盾すると主張する。 しかし,U1及びY1が,本件A1株がA1の役職員らが取得するものと認識し,あるいはその取得に関する手続を行ったとしても,これらは原告又は原告の主宰する会社による再譲渡に関するものと認識していたと解され,原告が主張するような矛盾は認められないから,原告の上記主張も理由がないというべきである。 e 以上によれば,本件A1株の売却先に関するU1の前記aの各供述は,信用性が高いということができる。 また,U1が,原告ないしは原告の主宰する会社が本件A1株を買い戻すものと認識していたからこそ,公開後に値上がり確実な本件A1株を1株3000円という不利な条件で売却したと考えられること,U1がE1の保有していた本件A1株を取得した本件譲受人14名と面識を有していなかったことに照らしても,U1は,本件A1株の売却先について,上記各供述のとおり認識していたものというべきである。 したがって,以上によれば,U1は,E1が保有していた本件A1株を,原告ないしは原告の主宰する会社に売却するものと認識して,その売却を承諾したものと認めることが相当である。 f なお,原告は,E1が所持していた本件A1株の株券が10万株券であり,E1としては,このままでは多数の者に本件A1株を譲渡できないことから,これを1000株券に分割しているところ,このことは,E1が本件A1株を多数の者に譲渡することを認識しており,原告を譲受人として認識していなかったことを示すものである旨主張する。 しかし,E1が保有していた本件A1株の株券が,Y1からM1 のことは,E1が本件A1株を多数の者に譲渡することを認識しており,原告を譲受人として認識していなかったことを示すものである旨主張する。 しかし,E1が保有していた本件A1株の株券が,Y1からM1に交付された後に分割されたことは,前記1(5)アf(a)のとおりであるから,原告の上記主張は,その前提を欠くものといわざるを得ず,また,仮にE1が,本件A1株の株券が分割されて多数の者がこれを取得するものと認識していたとしても,このことは,原告ないしは原告の主宰する会社がいったん取得した後の再譲渡に関する認識であった可能性を排斥することができないから,原告の上記主張は理由がないというべきである。 イ V1の認識aF1の代表取締役を務めるV1は,検察官面前調書(乙10)において,同社の保有する本件A1株を原告に売り渡すという感覚であった旨供述している。また,V1の指示を受けて本件A1株の譲渡手続を行ったD2も,検察官面前調書(乙11)において,本件A1株の売却先が原告か,A1又はB1であると思っており,E2が譲渡手続の過程で「まだ売り先が決まっていない」と言った際も,本件A1株の転売先に関することであると理解していたのであって,株式売買約定書は,有価証券取引税の納付に必要な事務処理にすぎず,本件A1株を本件譲受人に売却したとは認識していなかった旨供述している。 b しかしながら,V1は,別件刑事事件の証人尋問(甲12の1)及び供述録取書(甲12の2)においては,上記供述と異なり,原告から,いろいろな人達にA1株を取得してもらいたいから,これらの人達に対してA1株式を譲渡して欲しいと要請されたことから,これらの人達に本件A1株を売却するものと認識していたのであって,原告個人に売却するという認識を持ったことはない旨供述しており,D2も,供述録取 対してA1株式を譲渡して欲しいと要請されたことから,これらの人達に本件A1株を売却するものと認識していたのであって,原告個人に売却するという認識を持ったことはない旨供述しており,D2も,供述録取書(甲13)において,V1から,原告がいろいろな人にA1株を持ってもらいたいので,F1が引き受けた本件A1株をこれらの人達に譲るよう依頼しているから,これに応じて手続を行うように指示された旨供述している。 c そこで,本件A1株の売却先に関するV1の認識について,V1及びD2による以上の各供述を踏まえて検討する。 前記1で認定した事実によれば,V1は,昭和60年4月の第三者割当増資の際,公開後の含み益を期待し,A1の安定株主となることを念頭に置いて,C2及びF1において合計60万株ものA1株を引き受けたが,A1株の公開直前に,原告から不利な条件での本件A1株の売却を要請されたにもかかわらず,直ちにこれに応じており,しかも,その最終的な取得者を尋ねたり,その後の取得者に関心を示した事実は認められない。また,V1は,いわゆるB1事件の報道後,F1の保有していた本件A1株が本件譲受人24名に売却されたことを初めて知ったのであり,しかも,上記24名は,いずれもC2及びV1個人と特に関係のない者であった(乙10)。これらの事実に照らせば,V1としては,本件A1株を原告に売却するものと認識して,その売却を承諾したものと解することが合理的であると考えられる。 さらに,V1の前記aの供述は,原告から同様の依頼を受けたU1の認識とも共通していること,V1が前記検察官面前調書の録取後,訂正等の申立てをせずに署名押印をしていることに照らして,信用性が高いというべきである。 また,D2の前記aの供述は,本件A1株の譲渡に関する交渉の経緯や株券の送付先に基づく認識を 前調書の録取後,訂正等の申立てをせずに署名押印をしていることに照らして,信用性が高いというべきである。 また,D2の前記aの供述は,本件A1株の譲渡に関する交渉の経緯や株券の送付先に基づく認識を述べたものであるところ,前記1で認定したF1による本件A1株の譲渡手続の経緯に照らせば,D2の上記認識には合理性が認められ,D2の上記供述は,V1の前記aの供述と符合することからも,信用性が高いということができる。 これに対し,V1及びD2の前記bの各供述は,F1が本件A1株の売却に応じた経緯や,V1と本件譲受人との関係に照らしても,また,V1及びD2の前記aの供述と相違していることに照らしても,にわかに信用することができないから,採用できないというべきである。 d したがって,以上によれば,V1は,F1が保有していた本件A1株を,原告に売却するものと認識して,その売却を承諾したものと認めることが相当である。 ウ F2の認識aH1及びG1の代表取締役を務めるF2は,検察官面前調書(乙5,同6)において,上記各社の保有する本件A1株を原告に売り渡したと認識しており,株式売買約定書上は,原告側の名義が省略され,本件譲受人に直接売却することとされていることは知っていたが,これはあくまで書類上の形式的な扱いにすぎず,本件A1株の譲渡の実態は,いったん原告が買い戻した本件A1株を本件譲受人に売却したものである旨供述している。 b しかしながら,F2は,別件刑事事件の証人尋問(甲10の1),陳述録取書(甲10の2)及び本件の証人尋問においては,上記供述と異なり,原告から,A1の若い役員と新しい幹部の人達に店頭公開前のA1株を分けてやりたいが,原告のA1株を分けてやることはできないので,F2の会社の株を譲ってくれないかという依頼を受けて,本件A1株を売却 原告から,A1の若い役員と新しい幹部の人達に店頭公開前のA1株を分けてやりたいが,原告のA1株を分けてやることはできないので,F2の会社の株を譲ってくれないかという依頼を受けて,本件A1株を売却したのであるから,その相手方は,これらの役員等であって,原告は売買の仲介あっせんをしたにすぎないと認識している旨供述する。 そして,原告は,昭和61年当時G1の常務取締役を務めていたM2が作成した当時の事実経緯に関するメモ(乙51添付資料)の記載に照らしても,F2の上記各供述の信用性が高いと主張するほか,H1の取締役会において,同社が本件A1株を本件譲受人9名に譲渡する旨の決議がされていること,G1がG4税務署長に対して提出した,昭和62年5月22日付け「有価証券の譲渡内容についてのお尋ね」と題する書面において,本件A1株の売却先が本件譲受人13名である旨記載されていることに照らしても,H1及びG1が,本件A1株を本件譲受人に譲渡した旨認識していたことは明らかであると主張する。 c そこで,本件A1株の売却先に関するF2の認識について,同人の上記各供述を踏まえて検討する。 (a) F2は,前記aの各検察官面前調書の録取後,訂正等の申立てをせずに署名押印をしている(甲10の1)にもかかわらず,上記bのとおり供述を変遷させているところ,その理由について,本件の証人尋問において,この点について検察官との間で議論となったものの,夜遅くなったことからサインして帰った旨述べている。しかし,F2の上記弁明は,同人の供述の変遷についての合理的な説明とはいい難く,原告による本件A1株譲渡の依頼の趣旨が,前記1(4)ウbのとおり,A1株を返却して欲しいというものであり,F2の上記bの供述と異なること,F2が原告と学生時代から親交を有し,原告の依頼によりA1の監査役 よる本件A1株譲渡の依頼の趣旨が,前記1(4)ウbのとおり,A1株を返却して欲しいというものであり,F2の上記bの供述と異なること,F2が原告と学生時代から親交を有し,原告の依頼によりA1の監査役に就任するなど,中立的な立場の者とは認め難いこと(甲10の1,証人F2)に照らしても,F2の上記bの各供述の信用性には,疑問があるというべきである。 また,M2の前記メモには,「F2氏よりB1のN2氏から(本件A1株を)すべてB1及びB1関係者に渡したいので返却したい旨要請が役員にあった。」と記載されており,本件A1株を原告に戻すこととされている点で,必ずしもF2の上記bの各供述と符合せず,かえってM2が,税務職員作成の聴取書(乙51)において,昭和63年12月ころ,本件A1の売却について詳細な説明がなかったことをF2に抗議したところ,F2が「H1の方もN2さんに返したが,返したことについては,B1関係役員,社員に持たしたいということなので返した。」と謝罪した旨述べていることからも,F2の上記bの各供述の信用性には,疑問があるといわざるを得ない。 さらに,H1の取締役会に関する議事録に,原告の上記主張に沿う記載が存在することは,前記1(7)ウのとおりであるが,証拠(甲34,証人F2)によれば,上記議事録については,日付を遡らせたものであること,取締役会に参加していない者の押印があること,取引された株式名や取引日も違うこと等の事実が認められるから,その記載内容は信用できないというべきであり,他に原告の主張に係る取締役会決議の存在を認めるに足りる証拠はない。 このほか,G1がG4税務署に提出した書面についても,その提出時期等に照らし,株式売買約定書,有価証券取引書等の内容に合致するように記載されたにすぎない可能性があることは否定できない。 はない。 このほか,G1がG4税務署に提出した書面についても,その提出時期等に照らし,株式売買約定書,有価証券取引書等の内容に合致するように記載されたにすぎない可能性があることは否定できない。 このようなことからすれば,本件A1株の売却先に関するF2の上記bの各供述は,いずれも採用することができない。 (b) これに対し,F2の前記aの供述は,同人が買戻しに応じた経緯について,詳細かつ具体的に説明しており,原告から同様の依頼を受けたU1及びV1の認識に概ね合致することからも,信用性が高いということができる。 また,F2が,親交を有する原告の依頼を受けて,本件A1株を原告の処分に委ねたからこそ,公開直前の本件A1株を不利な条件で売却したものと考えられること,F2が本件A1株の取得者について詮索したり,関心を示した事実が認められないこと,G1が保有していた本件A1株を取得した本件譲受人13名のうち,F2が面識を有していたのは1名のみであったこと(乙6)に照らしても,F2が本件A1株を原告の方に売却する旨認識していたものと解するのが相当である。 d したがって,以上によれば,F2は,H1及びG1が保有していた本件A1株を,直接本件譲受人に売却するのではなく,いったん原告に売却するものと認識して,その売却を承諾したものと認めるのが相当である。 エ G2の認識aJ1の代表取締役を務めるG2は,検察官面前調書(乙12)において,原告から同社の保有する本件A1株の買戻しを申し込まれたので,原告に売り渡したものであり,株式売買約定書において本件譲受人が譲受人とされているのは,原告の事情によるものである旨供述している。 b これに対し,G2は,陳述録取書(甲14)及び本件の証人尋問においては,上記供述と異なり,本件A1株を原告に売るという意識はなく, 人とされているのは,原告の事情によるものである旨供述している。 b これに対し,G2は,陳述録取書(甲14)及び本件の証人尋問においては,上記供述と異なり,本件A1株を原告に売るという意識はなく,原告のあっせんにより第三者に譲渡されるものと考えた旨供述している。 しかしながら,原告に本件A1株の譲渡を承諾した際の状況等に関するG2の陳述録取書及び証人尋問における供述の信用性に疑問があることや,G2の上記検察官面前調書における供述の信用性が高いことは,前記1(4)エb(b)のとおりである。 そして,G2が,親交を有する原告が本件A1株を買い戻すと認識していたことからこそ,公開直前の本件A1株を不利な条件で売却したものと考えられること,J1が保有していた本件A1株を取得した本件譲受人22名のうち,F2が面識を有していたのはF31名のみであったこと(乙12)に照らしても,G2は,J1の保有していた本件A1株を原告に売却する旨認識して,その売却を承諾したものということが相当である。 オ放出5社の認識に関する原告の主張についてところで,原告は,仮に原告が売買の当事者であったとすれば,放出5社各社としては,株式売買約定書を原告との間で1組作成すれば済むはずであったにもかかわらず,実際には複数の株式売買約定書に何の疑問もなく社印等を押捺していることに照らして,放出5社は,本件A1株を複数の者に直接譲渡する認識を有していた旨主張する。 しかし,放出5社において,最終的に複数の者が本件A1株を取得することを想定していたのは前記のとおりであって,放出5社の認識に関する前記認定にかんがみれば,放出5社においては,原告又はその主宰する会社がこれをいったん取得して再度譲渡するものと認識しつつ,原告側の都合により最終的な取得者との間で直接売買契約を締結 の認識に関する前記認定にかんがみれば,放出5社においては,原告又はその主宰する会社がこれをいったん取得して再度譲渡するものと認識しつつ,原告側の都合により最終的な取得者との間で直接売買契約を締結する形式とする旨認識していたものと解することが相当であるから,原告の指摘する上記主張をもっても,放出5社が本件A1株を本件譲受人に直接譲渡するものと認識していたということはできない。 (2) 本件譲受人の認識ア本件A1株の譲渡人についての認識に関する本件譲受人の供述a 原告を譲渡人とするものF3は,昭和61年9月25日,原告から本件A1株取得の勧誘を受け,F3が原告の家庭内の問題等について世話をしていたことへのお礼の意味で,原告の持株から譲り受けるものと思い,その場で購入を承諾した旨供述している(乙13)。 また,G3は,同月中旬ころ,原告からA1株取得の勧誘を受け,息子名義でこれを購入したが,その際,原告は,自分の持株を分けるという言い方で話していた旨供述し,他方,株式売買約定書上の譲渡人であるJ1という会社については,G3の知らない会社であり,原告側の何らかの都合で形式上そのような名義になったものと思っていた旨供述している(乙14)。 さらに,H3及びL3は,いずれも原告の勧誘を受けてA1株を購入したが,株式売買約定書の譲渡人欄に記載されていたJ1(H3の場合)及びF1(L3の場合)という会社を知らなかったことなどから,原告から本件A1株を譲り受けたものと認識していた旨供述している(乙16,同22)。 このほか,M3は,K2から本件A1株の譲渡先としてリストアップされ,同人から購入を勧誘されたものであるが(乙44),原告がB1グループの総帥であったこと,K2はA1株を自由にできないと思われたことから,本件A1株を原告から購入したも 譲渡先としてリストアップされ,同人から購入を勧誘されたものであるが(乙44),原告がB1グループの総帥であったこと,K2はA1株を自由にできないと思われたことから,本件A1株を原告から購入したものと思っていた旨供述している(乙23)。 なお,D4は,別件刑事事件の証人尋問の主尋問において,本件A1株の譲渡について,原告から話があったので原告が譲渡人と認識していた旨述べつつ(甲18の2),反対尋問においては,当時,誰の所有する株式なのかといったことは考えたことがないとも述べており(甲18の1),その認識が明確であるとはいえない。 b 放出5社各社を譲渡人とするもの(a) 本件A1株を取得したA1の部次長以上の役職員は,いずれも放出5社各社を譲渡人と認識していた旨供述する。 すなわち,A1の企画開発部長を務めていたV3は,社員皆経営者主義の理念から幹部社員としてA1株を持つのは当然と考え,本件A1株の取得に応じたところ,株式売買約定書の譲渡人欄の記載から,G2の会社が引き受けたA1株を譲り受けるものと思ったが,本件A1株の譲渡人が誰であるかはどうでもよいことであり,特に認識を持たず,原告が譲渡人であるという認識もなかった旨供述し(甲33,同50),A1の賃貸事業部長を務めていたU2も,本件A1株の所有者が誰かは気に留めなかったものの,株式売買約定書の記載から,譲渡人がJ1であると理解し,原告が譲渡人であるとは理解しなかった旨供述している(甲4の1,2)。さらに,A1の財務部次長を務めていたT1も,株式売買約定書に基づいて,本件A1株の売主がE1であったことが認識できたとし,原告が売主という認識はなかった旨供述している(甲19)。 もっとも,A1の監査役を務めていたO3は,本件A1株をE1から購入したと思っており,原告が譲渡人であると であったことが認識できたとし,原告が売主という認識はなかった旨供述している(甲19)。 もっとも,A1の監査役を務めていたO3は,本件A1株をE1から購入したと思っており,原告が譲渡人であるという考えを持ったことはない旨供述しているが(甲42,証人O3),O3が株式売買約定書に署名押印した時点では譲渡人欄が空白であり,譲渡人について説明がなく,譲受人が誰であるかについて関心がなかったとも供述しており(甲42,証人O3),O3が大学卒業後間もないころから原告と交友関係を有し,原告の依頼によりA1の監査役に就任した者であること(甲42,証人O3)をも考慮すれば,本件A1株の売主に関するO3の認識が明確であったとはいえず,原告が売主でないと明確に認識していたかについても疑問の余地があるというべきである。 (b) 他方,社外の本件譲受人のうち,株式会社P4の専務取締役を務めていたN3は,W1から勧誘を受けて本件A1株を購入したが,同社がA1等と取引関係にあり,その仕事ぶりが評価されたことから,本件A1株の取得を勧められたものと理解しており,その売主は,株式売買約定書上の譲渡人であるF1であって,原告が売主であると推測したことはない旨供述している(甲51,証人N3)。しかし,N3がF1を売主とする根拠は,株式売買約定書等の記載のみであり,また,N3は,譲渡人が誰かということは特に意識しなかったとも供述しており(甲51,証人N3),本件A1株の売買について合意した時点における,本件A1株の売主に関するN3の認識が明確なものであったとはいえない。 また,Q4は,J2の勧誘を受けて本件A1株を購入したところ,その購入手続を行ったS3は,株式売買約定書の譲渡人欄の記載を見て,放出5社各社が譲渡人であると思った旨供述しており(甲30),U3も,譲渡人 ,Q4は,J2の勧誘を受けて本件A1株を購入したところ,その購入手続を行ったS3は,株式売買約定書の譲渡人欄の記載を見て,放出5社各社が譲渡人であると思った旨供述しており(甲30),U3も,譲渡人が誰かは重要ではなく,特に注意は払わなかったものの,株式売買約定書等からJ1が譲渡人であることは明らかであり,原告が譲渡人と考えたことはない旨供述している(甲33,同53)。 c その他の者を譲渡人とするものJ3は,原告の要請を受けて本件A1株を取得したが,自分がB1,A1及びC1の顧問であったことから,原告を含めたB1グループ全体から本件A1株を購入したものと認識していた旨供述している(乙19)。 また,I4は,J2の勧誘により本件A1株を購入したが,その購入手続を行ったR3は,親引け株のようなものという認識であった旨供述している(甲29)。 さらに,本件A1株の譲渡人について,A2はB1と思っていた旨供述し(乙50),R4は,A1と認識していた旨供述し(甲20),J4は,社員持株会ではないかと思った旨供述している(甲21の1。これに反する同人の陳述書(甲54)における供述は,本件訴え提起後の平成10年におけるものであり,供述の変遷について理由が示されていないことからも,供述の信用性に疑問の余地があり,採用することができない。)。 なお,原告の勧誘を受けて本件A1株を購入したP3は,陳述書(甲28)において,検察官面前調書に「N2さんの持ち株」と書いてあるとすればそれは誤りであり,本件A1株を公開株か公募株だと思っていた旨陳述するが,上記陳述書は極めて概括的なものにすぎない上に,上記陳述書によれば,上記調書に誤りがあるにもかかわらず,そのような記載がされた理由が示されていないことに照らせば,上記陳述をにわかに信用することはできず,これを 極めて概括的なものにすぎない上に,上記陳述書によれば,上記調書に誤りがあるにもかかわらず,そのような記載がされた理由が示されていないことに照らせば,上記陳述をにわかに信用することはできず,これを採用することはできない。 d 後に放出5社各社が譲渡人であると認識を改めたものK3は,税務職員作成の聴取書(乙20)において,原告から頼まれたとするJ2から勧誘を受けて,本件A1株を購入することとし,株式売買約定書に署名押印した際,譲渡人欄が空欄であったことから,原告又はB1が譲渡人であると認識していたが,その後,東京地方検察庁において,完成した上記約定書上の譲渡人欄の記載を見て,はじめて譲渡人がG1であることが分かった旨供述し,陳述書(甲27)において,上記約定書の記載に照らし,譲渡人を同社と理解している旨供述している。 また,K4も,本件A1株の勧誘を受けた際,A1の保有株式を譲り受けるものと思ったが,株式売買約定書に署名押印する際,譲渡人欄にF1が記載されていたことから,同社を譲渡人と理解した旨供述している(甲49)。 さらに,L4は,原告の勧誘を受けて本件A1株を取得したが,株式公開に当たっての株式の割当は,幹事証券会社がその支配下の株式を回すのが通常であることから,証券会社の支配下にあって原告の自由になる株式を譲り受けるものと思い,常識的にはオーナーの株は売らないから,原告は譲渡人ではないと思ったが,その後,株式売買約定書等を作成した際,J1が譲渡人であることが分かった旨供述している(甲18の1,2)。 e その他M4のために本件A1株の譲渡手続を行ったT3は,特に誰が売主であるか,聞いたことも考えたこともない旨供述している(甲31)。 イ本件A1株の売主に関する本件譲受人の認識に関する検討以上を前提に,本件A1株の売主に 株の譲渡手続を行ったT3は,特に誰が売主であるか,聞いたことも考えたこともない旨供述している(甲31)。 イ本件A1株の売主に関する本件譲受人の認識に関する検討以上を前提に,本件A1株の売主に関する本件譲受人の認識について検討すると,上記アの各供述に照らせば,本件譲受人は,それぞれ,本件A1株の売主について,原告,放出5社各社,B1,A1等,様々な認識を有していたことが認められる。 このうち,原告が売主と認識していた本件譲受人の中には,原告から本件A1株の購入を勧誘されたことを踏まえつつ,原告のB1グループにおける立場や,株式売買約定書の譲渡人欄に知らない会社の名前が記載されていたこと等から,実質的に原告が売主であると認識していた者が複数存在する。また,原告及び放出5社以外の者を売主と認識していた本件譲受人には,本件A1株の売主について,株式公開を巡る取引の実情等を考慮しつつ,実質的に判断した者が多く存在するということができる。 これに対し,放出5社各社が売主であると認識し,又は途中からそのように認識するに至った本件譲受人は,いずれも株式売買約定書の譲渡人欄の記載を理由としており,また,そのうちの多くの者が,譲渡人が誰であるかについて関心を有していなかった旨供述している。さらに,これらの本件譲受人は,本件A1株の譲渡手続の経緯等に照らせば,本件A1株の購入を承諾した時点においては,放出5社が売主であるとは認識していなかったものと考えられる。 いずれにせよ,本件A1株の譲渡手続関係者が本件譲受人に対し,本件A1株の売主ないしは所有者が誰であるかについて,株式売買約定書の譲渡人欄の記載以外に,積極的に明示したり,説明をしたりした事実が認められないことや,本件譲受人の多くが,本件A1株の譲渡人が誰であるかについて特段の関心を示してい であるかについて,株式売買約定書の譲渡人欄の記載以外に,積極的に明示したり,説明をしたりした事実が認められないことや,本件譲受人の多くが,本件A1株の譲渡人が誰であるかについて特段の関心を示していないことに照らしても,本件譲受人は,本件A1株の購入を承諾した時点で,その売主について,確たる根拠の下に明確な認識を有していたわけではないというべきである。また,株式の売買において,売主が誰であるかについて買主が関心を有しないことに照らせば,これに反する特段の事情が認められない本件譲受人の場合においても,特定の売主から購入することを前提として,本件A1株の購入を承諾したわけではなかったというべきである。 なお,原告は,K2,I2らが選定した本件譲受人については,原告が勧誘及び譲渡手続に登場したことが一切ないことから,原告が売主と解する可能性がない旨主張するが,前記アaのとおり,少なくともK2から譲渡先として選定されたM3が,実質的に判断して原告を売主と認識しており,K2,I2らが選定したからといって,原告が売主と解する可能性がないということはできない。 (3) 本件A1株の譲渡手続を行った者の認識ア M1の認識a 証拠(乙27,同28)によれば,M1は,原告が放出5社からA1株を買い戻したものと理解しており,原告が放出5社と本件譲受人との間の売買を仲介したとは認識していなかったこと,M1がこのように認識したのは,原告が本件A1株を放出5社からまとめて買い戻し,その譲渡先,譲渡株式数等を原告の判断により決定して譲渡した以上,放出5社は原告に売却する認識しかなく,本件譲受人も原告から譲渡を受けるという認識しかなかったと推測されることによるものであって,本件A1株の株式売買約定書が,放出5社と本件譲受人との間において直接売買を行う形式とされた 認識しかなく,本件譲受人も原告から譲渡を受けるという認識しかなかったと推測されることによるものであって,本件A1株の株式売買約定書が,放出5社と本件譲受人との間において直接売買を行う形式とされたのは,原告の名前を出せば,本件内規に違反し,店頭登録できなくなるからであると考えていたことが認められる。 そして,M1の以上のような認識は,M1が本件取引について,原告が値上がり確実な本件A1株を社外の知人等に譲渡する意図で行うものであり,A1株の店頭登録の直前におけるこのような行為が本件内規に違反することを認識したうえで,原告に注意を促していたこと(乙27,同28)からも裏付けられるものということができる。 b これに対し,M1は,陳述書(甲46,同65)及び本件の証人尋問において,原告が本件A1株を売買したことはなく,その仲介をしたにすぎないと認識していた旨供述しており,上記認定に沿う検察官面前調書(乙27,同28)における供述は,M1の意思に反するにもかかわらず,検察官がその見解を強引に押し付けたものである旨供述する。 しかし,M1は,証人尋問において,意思に反した検察官面前調書を作成されたことについて,買戻しという言葉が入っている調書に捺印しないと帰してくれない状況下において,どのような意味で買戻しという言葉を使っているか理解できなかったことから指印をした旨述べているが,上記各調書においては,単に買戻しという文言が用いられるにとどまらず,上記aで認定したとおり,本件A1株を取得することの意味,性格についてのM1の認識と,それに基づく行動が記載されており,これら全体がM1の意思に反して録取されたものと理解することは困難であるから,M1の上記各陳述書及び証人尋問における各供述は,にわかに採用することができない。 イ Q1の認識aQ1 されており,これら全体がM1の意思に反して録取されたものと理解することは困難であるから,M1の上記各陳述書及び証人尋問における各供述は,にわかに採用することができない。 イ Q1の認識aQ1は,検察官面前調書(乙30,同31,同33)において,原告が放出5社から本件A1株を買い戻し,A1の幹部社員や原告が世話になった社外の者等に取得させようとしていたとの認識の下に,その譲渡手続及び購入代金調達のための融資手続を行ったことを前提とした供述をしており,その内容は,U1ら及びM1の各供述と合致していることから,信用性が高いということができる。 b これに対し,Q1は,陳述書(甲55)及び本件の証人尋問において,原告が本件A1株の売買の当事者ではなく,仲介者にすぎないと認識していた旨供述し,上記各調書において,原告が本件A1株を買い戻した旨記載されている点については,訂正の申入れが容れられたものと理解して署名したにもかかわらず,実際には訂正されていなかった旨供述している。 しかし,Q1の上記各調書においては,いずれも同人に録取内容を読み聞かせた後誤りのない旨申し立て署名指印した旨記載されており,そのうち乙30及び同31の各調書においては,署名指印する前に2回閲読させた旨記載されていること,乙30及び同31の各調書においては,Q1が録取内容を読み聞かせた後,誤りを指摘したうえ,その他の箇所は記載のとおりである旨供述していることに照らせば,前記aの各調書の記載に関するQ1の上記供述の信用性には疑問があり,Q1がB1の経理部次長,A1の経理部長等を経てC1の代表取締役に就任し,原告の指示の下に本件取引の手続を担当した者であること(甲55,証人Q1)にも照らせば,原告が本件A1株を買い戻したことを否定するQ1の上記供述は,採用することができない C1の代表取締役に就任し,原告の指示の下に本件取引の手続を担当した者であること(甲55,証人Q1)にも照らせば,原告が本件A1株を買い戻したことを否定するQ1の上記供述は,採用することができないというべきである。 ウその他このほか,J2,E2は,いずれも原告が放出5社から株式を譲り受けたものとは考えていなかった旨供述しているが(甲17の1,2,同23),両名は,本件取引の事務手続を中心的に取りまとめたM1及びQ1と共に本件A1株の譲渡手続や本件譲受人の選定に関与していた者であって,M1及びQ1の認識と大きく異なることは考えにくい立場のものであるところ,M1及びQ1の前記認定に係る認識の内容に照らして,採用できないというべきである。 (4) 原告の認識ア原告は,別件刑事事件に関する検察官面前調書(乙4)において,原告が,A1株の店頭登録後における値上がり益を本件譲受人に与えることを目的として,放出5社から本件A1株を自ら買い戻したうえで,本件譲受人に譲渡したのであって,その行為は,売買の仲介あっせんではなく,売買である旨供述し,その根拠として,原告が本件A1株の譲渡先,譲渡株式数,株式の価格を自ら決定して譲渡しており,本来,仲介あっせんであれば入るべき放出5社の意向が全く入っていないことを挙げている。 イこれに対し,原告は,国会における証言(甲16の5,6),陳述書(甲70)において,原告は放出5社から本件譲受人に対する本件A1株の譲渡を仲介したにすぎず,いったん買い戻してこれを売却したものではない旨供述し,上記アの検察官面前調書は,拷問ともいうべき暴力的な取調べや脅迫を受け,精神的にも身体的にも疲弊しきっていた状況下において,早期に保釈を受けたい気持ちや,証券取引法違反では起訴しないという検察官の言葉を信用したことから,不本 拷問ともいうべき暴力的な取調べや脅迫を受け,精神的にも身体的にも疲弊しきっていた状況下において,早期に保釈を受けたい気持ちや,証券取引法違反では起訴しないという検察官の言葉を信用したことから,不本意ながら署名指印に応じたものであり,その内容は,原告の意思に反する旨供述している。 ウそして,原告は,本人尋問において,上記イと同様の供述をしながらも,原告が具体的な選定に関与していない本件譲受人に対するA1株の譲渡については,原告が仲介したわけではなく,A1の会長としての原告の指示の下に,A1が本件譲受人の選定を行った旨の供述もしている。 エ以上の各供述を前提として,本件A1株の売買当事者に関する原告の認識について検討する。 a 原告は,前記アの検察官面前調書における各供述が,原告の意思に反する内容である旨供述しており,その理由について,前記イのとおり述べている。 しかしながら,証拠(原告本人)によれば,原告は,前記アの検察官面前調書が作成された当時,身柄を拘束されていたものの,その間,起訴前の逮捕勾留期間中においては週2回,起訴後の勾留期間中においてはほぼ連日接見し,記憶と違う内容の調書に署名してはいけない旨のアドバイスを受けていることが認められ,原告が早期に保釈を受けたいという気持ち等から,意思に反した検察官面前調書に署名したとする原告の上記各供述は,にわかに信用することができない。 また,原告は,本人尋問において,捜査段階において取調べを行った検察官について,信用できると思ったことはない旨供述していることに照らし,証券取引法違反では起訴しないという検察官の言葉を信用したことにより意思に反した供述をした旨の原告の上記各供述も,にわかに信用することができない。 このようなことからすれば,原告の検察官面前調書における前記アの各供述が,原 いという検察官の言葉を信用したことにより意思に反した供述をした旨の原告の上記各供述も,にわかに信用することができない。 このようなことからすれば,原告の検察官面前調書における前記アの各供述が,原告の意思に反したものであって,信用性が乏しいものということは相当でない。 b そして,原告は,本件A1株の店頭登録を控え,自己の所有するA1株を売却することができないことを認識していたことからすれば,少なくとも形式的には,自らが本件A1株の譲渡の当事者となることは避けなければならないことを承知しており,原告が本件A1株の所有権を取得する意図を積極的に有していたということはできないが,他方において,原告が本件A1株の売買価格を決定したうえで,本件譲受人の大半を自ら選定したうえでその譲渡株式数を決定し,あるいは本件譲受人を選定するよう,B1又はA1の役員に指示したことは前記のとおりであり,そこに放出5社の意向が全く入っていないことについても,原告は十分認識していたものといわざるを得ない。 そうであるとすれば,原告としては,実質的には,原告が本件A1株をいったん放出5社から買い戻したうえで,これを本件譲受人に売却したものと評価されるような行為を行っていたものと認識していたと解するのが相当である。 3 本件A1株の売買当事者に関する判断(1) 総合的検討の必要性本件の争点である,本件A1株の売買当事者について判断するには,本件A1株の売買に係る株式売買約定書における譲渡人及び譲受人の表示のみならず,金銭消費貸借契約書,振込指定書兼領収書等,本件取引に関して作成された書面における契約当事者の記載,本件取引に至る経緯,本件取引における当事者の意図及び目的,本件A1株の売買の要素が決定された経緯,本件取引に関する事務手続の態様,代金の決済方法,本件取引に 成された書面における契約当事者の記載,本件取引に至る経緯,本件取引における当事者の意図及び目的,本件A1株の売買の要素が決定された経緯,本件取引に関する事務手続の態様,代金の決済方法,本件取引による利益の帰属,本件取引の関係者における本件A1株の売買当事者に関する認識等,本件取引を巡る諸般の事情を総合的に考慮して検討することが必要というべきである。 そこで,このような観点から,本件取引に関して前記1及び2において認定した事実を踏まえて,本件A1株の売買当事者について検討する。 (2) 本件A1株の売買当事者に関する諸事情の検討ア株式売買約定書その他本件取引に関連する文書における売買当事者本件A1株の譲渡については,放出5社各社を譲渡人,本件譲受人78名(ただし,一部の譲受人については別名義が用いられている。)をそれぞれ譲受人とする株式売買約定書が,L1ら3名については昭和61年9月25日付けで,その余の本件譲受人については同月30日付けで作成されており,これらによれば,放出5社が直接本件譲受人に対し,本件A1株を1株当たり3000円で売り渡したものとされている。 また,本件A1株の購入代金につきC1から融資を受けた本件譲受人については,同社との間に金銭消費貸借契約書が作成されるとともに,本件譲受人から同社宛てに振込指定書兼領収書が作成されているところ,これらの書面には,本件譲受人がC1から融資を受け,その担保として同社が本件A1株を預かるとともに,同社が融資に係る金員を放出5社に振込送金するよう指示されたことが記載されており,株式売買約定書と併せれば,本件譲受人が,放出5社から本件A1株を購入し,その代金につきC1から融資を受け,その金員を同社から放出5社に振込送金して支払うことをもって,本件A1株の購入代金の支払に充てたことが 定書と併せれば,本件譲受人が,放出5社から本件A1株を購入し,その代金につきC1から融資を受け,その金員を同社から放出5社に振込送金して支払うことをもって,本件A1株の購入代金の支払に充てたことが窺われる。 さらに,C1が放出5社に送付した本件明細書は,放出5社が本件A1株を本件譲受人に譲渡したことを前提として作成されているほか,本件A1株に係る有価証券取引書には,いずれも放出5社が本件A1株を本件譲受人に直接譲渡した旨記載されており,放出5社の有価証券取引税納付書・領収証書も,放出5社から本件譲受人に対して本件A1株が直接譲渡されたことを前提として,個々の譲受人への譲渡ごとに作成されている。加えて,G1は,「有価証券の譲渡内容についてのお尋ね」と題する書面に,本件A1株を本件譲受人に直接譲渡した旨記載して,G4税務署長に提出している。 このほか,本件譲受人であるL1ら3名は,昭和61年9月25日,F1宛てに株券受領書を作成,交付しており,また,同年8月25日,H1の取締役会において,同社から本件譲受人に対する本件A1株の譲渡を承認する旨の決議が行われたとする議事録も存在する。 以上のとおり,本件A1株の譲渡について作成された株式売買約定書をはじめ,本件取引について作成された金銭消費貸借契約書,代金の送金方法を指示する旨の振込指定書兼領収書,有価証券取引税の納付に関連して作成された各文書等,本件取引に関連して作成された各文書(本件有価証券届出書を除く。)においては,すべて放出5社が本件A1株を本件譲受人に直接売却したものとされており,原告が本件A1株をいったん買い受けてこれを売り渡したことを窺わせる記載は存在しない。 イ本件A1株の譲渡の発想及び目的しかしながら,本件譲受人に対する本件A1株の譲渡は,原告が,A1株の店頭登録 本件A1株をいったん買い受けてこれを売り渡したことを窺わせる記載は存在しない。 イ本件A1株の譲渡の発想及び目的しかしながら,本件譲受人に対する本件A1株の譲渡は,原告が,A1株の店頭登録による株式公開を間近に控え,公開後に値上がりすることが確実に予想されていたA1株を,A1への転籍者等に対する慣例的なA1株の譲渡とは別に,既に同社に在籍していた同社の部次長以上の役職員に対しても取得させることにより,A1株の値上がり益を得させようと考え,さらには,社外の者で,原告と仕事の関係でつながりのある者,原告が世話になった者,原告が信頼,尊敬する者等に対しても,その歓心を得るため,A1株を取得させ,その値上がり益を得させようと考えたことに基づいて行われたものである。 原告は,昭和61年8月ないし9月当時,A1の大株主として,多数のA1株を所有していたものの,A1株の店頭登録を同年10月30日に控え,原告の所有するA1株280万株が分売の対象とされていたことに加え,A1の特別利害関係者に該当する原告が,登録申請日の直前決算期日の1年前の日以降に,A1株の取引を行った場合,本件内規に違反し,店頭登録申請が受理されなくなるおそれがあることから,原告自身の所有するA1株を,上記の目的を達するために拠出することができなかった。そこで,原告は,昭和60年4月に行われたA1株の第三者割当増資における引受先のうち,原告が交際を有する者が経営する個人会社であり,A1株の譲渡に関する社内の手続も容易であると考えられる放出5社から,A1株を調達することとしたものである。 このように,本件A1株の譲渡は,原告の発想に基づき,原告が意図した目的を達成するために,原告の所有するA1株を譲渡することができないことから,放出5社からこれを調達して行われたものであると る。 このように,本件A1株の譲渡は,原告の発想に基づき,原告が意図した目的を達成するために,原告の所有するA1株を譲渡することができないことから,放出5社からこれを調達して行われたものであるということができる。 ウ本件A1株の売買に関する主要な事項についての決定者本件A1株の売買における代金額は,1株3000円とされているが,この価格は,原告がM1に対し,A1株の譲渡価格の試算を指示し,M1がこれに基づき,昭和60年4月の第三者割当増資の際の価格を上回り,税務署から否認されないよう類似会社比準方式により試算した結果を踏まえ,1株3000円という金額を原告に提案したところ,原告がこれを了承して採用し,放出5社に対する本件A1株の譲渡の依頼及び本件譲受人に対する本件A1株取得の依頼においても,その金額が,原告又は原告の指示を受けた者の方から示され,相手方の了承を得たものである。 また,本件A1株を譲渡した放出5社は,原告が自己と交際のある者が経営する会社の中から選定したものであり,放出5社の経営者であるU1らに対して本件A1株の譲渡を要請したのも,要請に係る株式数を決定したのも原告である。 さらに,本件譲受人のうち,A1の部次長以上の役職員の選定には,原告自身が加わっており,社外の譲受人についても,原告がその多くを自らリストアップし,各譲受人に取得させる株式数を割り当てたうえで,原告自身又はその指示を受けた者が,本件A1株を取得するよう依頼ないし勧誘をしている。 その他の社外の譲受人についても,A1のK2,W1,B1のI2,R1らが,原告の指示を受けたうえで,人選を行い,本件A1株の取得を依頼ないし勧誘したものであるから,人選した相手方の具体的な氏名等について原告が逐一報告を受けていたわけではなく,中には原告と面識のない者が存在す の指示を受けたうえで,人選を行い,本件A1株の取得を依頼ないし勧誘したものであるから,人選した相手方の具体的な氏名等について原告が逐一報告を受けていたわけではなく,中には原告と面識のない者が存在するとしても,これらの者が,原告の指示と無関係に選定されたということは相当でない。 加えて,原告は,本件譲受人のうち,本件A1株の購入代金につき融資を希望する者について,A1の社内の者であるか否かを問わず,C1による融資を行うことを指示しており,また,同社の代表取締役会長の地位を退いていたにもかかわらず,融資における利率の決定にも関与している。 他方,放出5社及び本件譲受人が,本件A1株の売買代金や譲渡又は取得するA1株の株式数について,原告又はB1グループ各社の社員と交渉したりした事実は認められず,放出5社から本件A1株の売却を希望し,あるいは本件譲受人が自ら本件A1株の購入を希望して,原告又はB1グループ各社にその旨申し入れを行った事実を認めることもできない。 そして,放出5社の経営者が,A1株が近日中に店頭登録により公開され,本件A1株の値上がりによる利益を得られることが確実である旨十分認識していたにもかかわらず,1株3000円という不利な条件でこれを売却して欲しいという依頼に応じたのは,有力な企業経営者であり,かつ,個人的な交際もある原告からの申出であったからにほかならない。 以上のとおり,原告は,本件A1株の売買に関する要素を,いずれも実質的に決定しており,放出5社及び本件譲受人は,本件A1株の売買において,原告からの依頼を受けて,そのままこれを承諾したにすぎず,前記のとおり,本件A1株の譲渡が,原告の発想に基づいて行われたものであると認めることができる。 エ本件A1株の売買に関する事務手続及び代金の支払a 本件A1株の売買に関 まこれを承諾したにすぎず,前記のとおり,本件A1株の譲渡が,原告の発想に基づいて行われたものであると認めることができる。 エ本件A1株の売買に関する事務手続及び代金の支払a 本件A1株の売買に関する具体的な事務手続については,原告の指示の下に,A1の取締役を務めていたM1が全般的な責任者として取りまとめを行うとともに,放出5社の一部との事務手続を担当し,C1の代表取締役を務めていたQ1が,放出5社の一部との事務手続及びC1による融資に関する事務手続を行っているほか,A1大阪支社次長兼営業部長のE2が,F1との間の事務手続を担当している。 他方,本件譲受人との間における本件A1株の譲渡については,原告が,できるだけ隠密に作業を進めるために,原告が特に信用できる者と考えたI2,J2及びQ1に対し,原告のリストアップした譲渡対象者に対する本件A1株の取得の依頼等を個別的に指示しており,原告以外の者が人選した譲渡対象者については,人選を行った者が,本件A1株の取得を依頼している。 そして,原告は,昭和61年10月以降に本件A1株を譲渡した場合,税務署から低廉譲渡という指摘を受けるおそれがあること等の問題が生じることから,譲渡手続の担当者らに対し,本件A1株の譲渡に関する一連の手続を,同年9月末までに終了させるよう指示している。 このように,本件A1株の売買に関する事務手続は,原告の指示を受けてこれを担当したA1,B1,C1の役員数名が中心となって行ったものである。 b また,本件A1株の譲渡に関する事務手続の担当者は,放出5社に対し,本件譲受人が選定されていない段階において,昭和61年9月30日までに本件A1株の購入代金を支払うとともに,本件A1株の株券の引渡しを受けて取引を完了させることを約束している。 このように,本件A1株の譲渡手 選定されていない段階において,昭和61年9月30日までに本件A1株の購入代金を支払うとともに,本件A1株の株券の引渡しを受けて取引を完了させることを約束している。 このように,本件A1株の譲渡手続の担当者が,本件譲受人が選定されていない時点で,本件A1株の売買の決済に関する約束を行っているところ,このような行為は,当事者の依頼を受けて売買契約の締結を仲介する者に与えられた権限の範囲を超えるものである。 c(a) さらに,M1,Q1らは,本件A1株の譲渡に関する事務手続が遅滞し,原告の指示どおり昭和61年9月30日までに一連の事務手続を完了することが困難となり,放出5社に対する上記bの約束の遵守も難しくなったことから,同月29日,本件譲受人から融資に必要な書類を回収したか否かにかかわらず,本件A1株70万株の代金のうち,同月25日に決済したL1ら3名分の代金を除いた全額を,C1から放出5社に一括送金して支払うこととして,同月30日,直接送金されたO1の分の代金を除いた残代金全額の一括送金を実行しており,本件A1株の株券も,同年10月1日までに,C1に集められている。 そして,本件譲受人78名に対する本件A1株の譲渡のうち,C1からの貸付処理が行われた件数が57件であったのに対し,同月30日の時点において,本件譲受人から融資に必要な書類を回収することができた融資件数は,わずか20件程度にすぎず,また,同日の時点においては,M1,Q1ら譲渡手続の担当者も本件A1株の譲渡先を全て把握しておらず,本件譲受人のうち少なくとも4ないし5名は確定していなかったものである。 このように,A1株の譲受人における購入代金の借入意思の有無はおろか,そもそも誰が譲受人となるかすら確定していない時点において,C1から放出5社に対し,本件A1株の残代金が一括し ったものである。 このように,A1株の譲受人における購入代金の借入意思の有無はおろか,そもそも誰が譲受人となるかすら確定していない時点において,C1から放出5社に対し,本件A1株の残代金が一括して送金されたことにより,本件A1株の売買代金が決済され,本件A1株の株券もC1に集めた行為を,仲介者としての行為であると解することは困難である。 (b) これに対し,原告は,C1が,本件譲受人が完全に確定されていないにもかかわらず,放出5社に対して一括送金をしたのは,譲渡手続が遅延し,放出5社との間で決済を約束した昭和61年9月30日の直前になっても,C1の融資を利用する本件譲受人が完全に確定できなかったことから,緊急的な措置としてやむなく行ったものであるとし,当時,送金直後に本件譲受人が確定することが確実であり,同社としては暫定的に一括送金をしてもその回収に問題がないと判断される状況にあったこと,本件譲受人がB1グループと深い関係にあり信頼できる者に限られていたこと,本件A1株に十分な担保価値が認められたこと等から,C1が上記のような判断をしたことは不自然ではないのであって,上記一括送金を行うことについて,原告に対して事前の報告がなかったことに照らしても,上記一括送金の事実をもって,原告が本件A1株を買い受けたものとはいえない旨主張する。 この点,上記一括送金が,本来想定していた手続と異なり,譲渡手続の遅延により,やむを得ず行われた措置であることは,それ以前に行われたL1ら3名の本件A1株の代金に関する決済方法に照らしても,首肯できないわけではない。 しかしながら,やむを得ない措置であるとはいえ,仮に本件譲受人全員が近日中に確定する見込みであり,かつ,本件譲受人に選定された者の資力が十分であることが予想されていたとしても,C1が本件譲受人 。 しかしながら,やむを得ない措置であるとはいえ,仮に本件譲受人全員が近日中に確定する見込みであり,かつ,本件譲受人に選定された者の資力が十分であることが予想されていたとしても,C1が本件譲受人に代わって売買代金の立替払を行うことは,原告の立場が仲介者としてのものであるとすれば,極めて不自然な行為であり,むしろ,本件譲受人が確定する前に売買代金の決済を行うことが可能であった事実は,本件A1株が,実質的には,放出5社と,本件譲受人以外のC1の関係者との間で売買されたことを推認させるものであるというべきである。 そして,C1がB1グループを構成する会社の一つであって,昭和61年9月当時,同社の前代表取締役会長であり,親会社であるA1の大株主でもある原告の強い影響下にあったものと認められること,C1の代表取締役社長であるQ1が,原告の指示を受けて本件A1株の譲渡手続やこれに関する融資手続を行っていたことを併せて考慮すれば,上記一括送金の事実は,放出5社と原告との間で本件A1株の譲渡が行われたことを窺わせる事実であるというべきである。 また,仮に原告に対して上記一括送金に関する事前の報告がなかったとしても,このような措置は,原告が指示した事務手続の期限及び放出5社との決済期限を遵守するために不可欠であり,原告の意向に沿うものと考えられ,原告が売買当事者であった場合,このような措置が原告に対して事前に報告することなく行われたものとしても不合理とはいえないから,このことをもって,原告が本件A1株の売買当事者である可能性を否定することはできない。 d さらに,本件A1株の具体的な譲渡手続についても,当初は,本件譲受人から株式売買約定書,有価証券取引書,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書に署名等を受け,その後放出5社から株式売買約定書等に署名 らに,本件A1株の具体的な譲渡手続についても,当初は,本件譲受人から株式売買約定書,有価証券取引書,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書に署名等を受け,その後放出5社から株式売買約定書等に署名等を受ける手順で行われていたが,途中から,放出5社との事務手続を先行させることとなり,まず放出5社から,譲受人,金額等の欄が白紙の株式売買約定書に包括的に記名押印を受ける方法が採られている。 また,本件A1株の残代金がC1から放出5社に一括送金された昭和61年9月30日の時点において,本件譲受人から融資に必要な書類を回収することができた融資件数は,わずか20件程度にすぎず,その後も株式売買約定書や融資手続に関する書類を整える作業が続けられ,本件譲受人から署名等を受けたこれらの書類がC1に届けられたのは,同年10月7日以降であったことが認められる。 このような本件A1株の譲渡手続に関する経緯に照らせば,本件A1株の売買に関する株式売買約定書等の書類は,放出5社における本件A1株の売買の決済とは別途に整備されたものと評価すべきであるから,放出5社による本件A1株の売買の意思表示が,株式売買約定書によって確定的に行われたものということはできず,C1から放出5社に対する前記一括送金が,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書に基づいて行われたということはできない。 オ本件A1株の譲渡における利益の帰属本件取引において,放出5社による本件A1株の売却価格及び本件譲受人による本件A1株の購入価格は,いずれも1株3000円であり,原告が本件A1株の譲渡によって,直接の金銭上の利得を得たものということはできない。 しかしながら,前記のとおり,原告は,本件A1株について,その取得先を自ら選定し,又は自ら指示した者に選定させており,このことについて,放出5 て,直接の金銭上の利得を得たものということはできない。 しかしながら,前記のとおり,原告は,本件A1株について,その取得先を自ら選定し,又は自ら指示した者に選定させており,このことについて,放出5社が関与した事実は認められないことから明らかなとおり,原告は,放出5社が1株3000円で譲渡する本件A1株について,当時株式公開によって現実に見込まれた値上がり益を第三者に享受させ得る権限を自ら行使することができる立場にあったものである。 そして,現に,原告が,原告自身又は原告が創業したB1及びその関連会社の将来的な利益に合致するか否かという基準によって,本件譲受人を自ら選定し又はB1グループを構成する会社の取締役に選定させ,本件譲受人に本件A1株を取得させて,原告自身ないしはB1グループに対する好印象の獲得や将来的な見返りを期待し得たのは,原告自身の判断において,本件A1株の値上がり益をこれらの者に享受させることができたからにほかならず,本件A1株の譲渡によって,原告に何らの経済的利益も帰属していないとは到底いえない。 カ当事者の認識についてa 本件A1株の売買について,放出5社の経営者のうち,V1,F2及びG2においては,原告に本件A1株を売却するものと認識し,U1においては,原告ないしはその主宰する会社に本件A1株を売却するものと認識していたことは,前記のとおりであるから,放出5社においては,原告又はB1グループを構成する会社に対して本件A1株を売却する旨認識していたものということができる。 b また,本件譲受人における本件A1株の売主に関する認識は一様でなく,いずれも必ずしも明確とはいえないものの,取引の実体に照らして,原告ないしはB1グループを構成する会社が実質的な売主と認識した者が複数存在したことが認められる。 他方,放出5 る認識は一様でなく,いずれも必ずしも明確とはいえないものの,取引の実体に照らして,原告ないしはB1グループを構成する会社が実質的な売主と認識した者が複数存在したことが認められる。 他方,放出5社が売主であると認識する者,あるいは途中からそのように認識するに至った者は,いずれも株式売買約定書の譲渡人欄の記載を理由としているが,株式売買約定書の作成経緯に照らして,本件A1株の売買の意思表示がこれによって確定したものと解するのが相当でないことは前記のとおりであって,これらの者において,原告が売主であると明確に認識していなかったとしても,原告が売主である可能性を明確に排除するものではないと解される。そして,このことは,原告以外の者が選定した本件譲受人についても,同様に妥当するものと考えられる。 c そして,原告自身も,実質的には,原告が本件A1株を放出5社から買い戻したうえで,これを本件譲受人に売却したと評価され得る行為を行っていたと認識していたものであり,このような認識は,本件A1株の譲渡手続を担当したM1,Q1らの認識からも裏付けられるということができる。 d このようなことからすれば,本件A1株の譲渡に関しては,放出5社と原告,原告と本件譲受人の間に,売買の意思表示の合致が存在するものと評価するに妨げとなる事由は認められないというべきである。 キその他本件A1株の譲渡に関し,平成元年9月28日付けで大蔵大臣に提出された本件有価証券届出書には,原告が本件A1株70万株について1株3000円で売出しを行った旨記載されている。 これに対し,原告は,本件有価証券届出書が,A1において,大蔵省の強硬な要請の下に,事実に反することを認識しながら作成,提出されたものであって,本件取引の担当者等が作成に一切関与せず,事実調査も実施されていないから は,本件有価証券届出書が,A1において,大蔵省の強硬な要請の下に,事実に反することを認識しながら作成,提出されたものであって,本件取引の担当者等が作成に一切関与せず,事実調査も実施されていないから,本件有価証券届出書には,証拠としての価値が認められない旨主張し,原告,M1,T1及び本件有価証券届出書の作成に携わったO2は,これに沿う供述をしている(甲19,同52,同65,同70,証人M1,原告本人)。 しかし,これまでに検討した本件A1株譲渡の目的,経緯,取引の実体,譲渡手続,売買関係者の認識等に照らせば,本件有価証券届出書における上記記載が直ちに真実に反するものであるということはできず,本件有価証券届出書が,大蔵省からの要請の下に,本件取引の担当者等が作成に関与することなく,事実調査も実施されないまま作成されたことを理由として,その証拠価値を否定することは,相当でないというべきである。 (3) 本件A1株の売買当事者についての総合的判断そこで,上記(2)において摘示した各事実を踏まえて,本件A1株の売買当事者について判断する。 ア本件A1株の売買に関する株式売買約定書においては,本件A1株が放出5社から本件譲受人の間に対して直接売買された旨記載されており,C1と本件譲受人との間の金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書や,有価証券取引書,本件明細書,有価証券取引税納付書・領収証書等,本件取引に関連する各文書においても,本件A1株が放出5社と本件譲受人の間において直接売買されたことを前提とした記載がされている。 イしかしながら,本件A1株の売買は,(2)イに摘示のとおり,公開後の値上がりが確実に予想されていたA1株をA1の部次長以上の役職員や原告とつながりのある者らに取得させたいという原告の発想に基づいて行われたものであり,その 株の売買は,(2)イに摘示のとおり,公開後の値上がりが確実に予想されていたA1株をA1の部次長以上の役職員や原告とつながりのある者らに取得させたいという原告の発想に基づいて行われたものであり,その目的を達するために,原告の所有するA1株が店頭登録のため譲渡できないことから,放出5社の保有する本件A1株を対象として行われたものである。そして,放出5社の選定,売買代金の決定,譲渡を要請する株式数の決定,譲渡の承諾を得るための交渉は,いずれも原告が行ったほか,本件譲受人の選定,譲渡する株式数の割当等も,原告又はその指示を受けた者が行ったものである。このような前記(2)イ及びウに摘示のとおりの本件A1株の売買において原告がとった行動は,他人間の売買取引を仲介あっせんするものとしては理解し難いものであり,原告自身が,取引の当事者として,本件A1株をいったん放出5社から買い受けて,これを本件譲受人に売却したものと解するのが相当である。 このことは,前記(2)エに摘示した本件A1株の譲渡手続の態様,代金の決済に関する関係者の合意,決済の方法等からも裏付けられるというべきであり,また,本件有価証券届出書の記載にも合致するのみならず,本件A1株の譲渡による利益の帰属という観点からみても首肯できるものである。 そして,当事者の認識についてみても,放出5社,原告その他本件取引の関係者は,本件A1株の売買について,実質的には原告又はその主宰する会社が当事者であったという認識を有しており,本件譲受人について,本件A1株の売主についての認識が明確ではなかったとしても,原告から本件A1株を購入するものであることを妨げる事由とは解されない。 以上によれば,本件A1株は,実質的には原告が放出5社からいったん買い受けて,これを本件譲受人に売却したものと解することが ,原告から本件A1株を購入するものであることを妨げる事由とは解されない。 以上によれば,本件A1株は,実質的には原告が放出5社からいったん買い受けて,これを本件譲受人に売却したものと解することが相当である。 ウところで,本件A1株の譲渡については,原告がいったんA1株を買い戻してこれを売り渡したものと評価された場合,A1の特別利害関係者である原告が株集めに該当する行為をしたものとして,本件内規違反によりA1株の店頭登録申請が受理されなくなるほか,証券取引法4条の売出しに該当するものとされ,刑事罰の対象となるものである。 そこで,原告としては,A1株が放出5社と本件譲受人との間において直接売買されたことを明確にしておく必要があったものであり,このような事情を踏まえて,譲渡手続の担当者は,株式売買約定書をはじめ,本件取引に関連する文書において,A1株が放出5社から本件譲受人に直接売却されたことを前提とした記載を行ったものということができる。 このことは,株式売買約定書等の書類が,売買代金の決済や株券の引渡しとは別途に整備されたものであり,放出5社による本件A1株の売買の意思表示が,株式売買約定書によって確定的に行われたものとはいえないこと,C1から放出5社に対する前記一括送金が,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書に基づくものでないこと,本来は放出5社が作成すべきと考えられる有価証券取引書を譲渡手続の担当者が作成していたこと等の事実からも,裏付けられるということができる。 また,有価証券取引税の納付に関連して放出5社が作成した書類における本件A1株の売買当事者に関する記載や,C1における帳簿上の処理,H1の取締役会の議事録等における記載も,本件A1株の売買に関する株式売買約定書等の文書の記載内容等に合致するように作成されたものと 本件A1株の売買当事者に関する記載や,C1における帳簿上の処理,H1の取締役会の議事録等における記載も,本件A1株の売買に関する株式売買約定書等の文書の記載内容等に合致するように作成されたものと考えられる。 したがって,株式売買約定書をはじめとする前記アの各文書の記載があるからといって,本件A1株が放出5社から本件譲受人に直接売却された事実を認めることはできず,これらの記載の存在をもっても,原告が本件A1株を放出5社から買い受けてこれを本件譲受人に売り渡した事実を覆すことはできないというべきである。 エ以上のとおり,上記(2)において摘示した各事実を総合的に判断すれば,原告は,自ら本件A1株を放出5社から買い受けて,これを本件譲受人に売り渡したものと認めることが相当である。 (4) 原告の主張に対する検討ア本件A1株の売買における原告の動機について原告は,本件A1株をいったん自らが買い受けて譲渡した場合,本件内規に違反すること等により重大な不利益を受ける反面,何らのメリットもないことから,原告において,本件A1株を買い受けるべき動機がないと主張する。 しかし,原告は,上記のような不利益を回避するために,本件A1株を放出5社から本件譲受人に直接売却する形としたと思われるものの,本件A1株の売買は,その発想,目的,売買の要素の決定,手続の経緯,関係者の認識等に照らして,実質的には原告がいったん買い受けてこれを売却したものというべきであり,本件A1株の売買が,放出5社から本件譲受人に直接売買されたという形式に従って評価されることにより,本件内規に違反すること等の問題を回避することができれば,原告としては,取引先等の歓心を買うなどの利益を得ることが可能であったことは前記のとおりである。 したがって,原告において,実質的に本件A1株を 内規に違反すること等の問題を回避することができれば,原告としては,取引先等の歓心を買うなどの利益を得ることが可能であったことは前記のとおりである。 したがって,原告において,実質的に本件A1株を買い受けるべき動機がなかったということはできないから,原告の上記主張は採用できない。 イ従前のA1株の譲渡との関係について原告は,本件A1株の譲渡以前に行われた,昭和59年12月,昭和60年4月ないし5月及び昭和61年7月ないし8月のA1株の譲渡について,本件A1株の譲渡と発想,態様,手続,契約のために使用した書式等が同一であり,また,本件A1株の譲渡は,昭和61年7月ないし8月におけるA1株の譲渡の過程で発想し,その態様をそのまま引き継いだものであることから,従前のA1株の譲渡において,原告が当事者とされていなかった以上,本件A1株の譲渡においても,原告が当事者でないことが強く推認される旨主張する。 しかしながら,従前のA1株の譲渡において,原告が当事者でなかったか否かについての判断は措くとしても,本件A1株の譲渡においては,従前におけるA1株の場合と異なり,B1グループを構成する各社やその役員の保有するA1株ではなく,B1グループとは特段関係のない放出5社が保有するA1株を譲渡させたものであること,本件A1株の譲渡が社員皆経営者主義と同様の発想から出発したものの,結局はA1の社内外に広く割り当てたものであることが認められ,従前のA1株の譲渡において,本件A1株の譲渡のように,最終的な取得者が確定する前に代金の決済及び株券の引渡しが完了した事実が認められないことも併せて考慮すれば,従前のA1株の譲渡における当事者が原告でないとしても,このことから,原告が本件A1株の譲渡における当事者でないことが推認できるとはいえないから,原告の上記主 が認められないことも併せて考慮すれば,従前のA1株の譲渡における当事者が原告でないとしても,このことから,原告が本件A1株の譲渡における当事者でないことが推認できるとはいえないから,原告の上記主張は理由がないといわざるを得ない。 ウ個々の本件譲受人の売買に関する主張についてa 原告は,本件譲受人のうちL1ら3名について,株式売買約定書,金銭消費貸借契約書及び振込指定書兼領収書に署名押印が行われ,昭和61年9月25日,これらに基づいてC1からF1に対して各譲受人の名義で個別に代金が振り込まれていること,その後同社から本件A1株の株券が送付されたため,L1ら3名の名義で株券の受領書が作成され,F1に送付されていること,同社が,同月26日,L1ら3名を譲受人として,有価証券取引税を納付していること等を理由として,同社がL1ら3名との間で,本件A1株合計10万株に係る売買を直接行った旨主張する。 しかし,原告及びF1において,本件A1株がF1と本件譲受人との間で直接売買される旨認識していなかったことは前記のとおりであり,L1ら3名に関する売買についても,当事者の認識が同様であったことは,D2がE2の指示に従って,本件A1株の株券をL1ら3名ではなく,A1の経理部長に送付したことからも明らかである。 また,本件A1株の売買における発想,目的,要素の決定等における原告の役割等にかんがみ,実質的に原告が売買当事者であることについては,L1ら3名に関する売買においても,その他の本件譲受人に関する売買と同様であって,L1ら3名に関する譲渡手続において,当初M1,Q1ら譲渡担当者が予定していたとおり,個別の譲受人に関する株式売買約定書,金銭消費貸借契約書を徴したうえで,C1から各譲受人ごとに代金を送金する形式が取られていたとしても,このような書類が 初M1,Q1ら譲渡担当者が予定していたとおり,個別の譲受人に関する株式売買約定書,金銭消費貸借契約書を徴したうえで,C1から各譲受人ごとに代金を送金する形式が取られていたとしても,このような書類が原告側の事情により形式的に整えられたものと解されることに照らせば,売買代金の支払以前にこのような形式が整ったL1ら3名に関する売買についてのみ,売買当事者を別異に解することは相当でないというべきである。 したがって,原告の上記主張は,理由がないといわざるを得ない。 b また,原告は,O1が本件A1株の購入代金を自ら直接F1に送金したことを捉えて,同人が直接F1との間で本件A1株を売買した旨主張する。 しかし,O1を譲受人とする本件A1株の売買の場合も,売買当事者に関する原告及びF1の認識,売買における発想,目的,要素の決定における原告の役割等については,他の本件A1株の売買と何ら異らないのであって,O1への譲渡に係る有価証券取引税の納付が昭和61年11月5日まで行われていないことや,O1によるF1への送金が,C1による代金の一括送金についての連絡が行き届かなかったため行われたにすぎないこと等の事情に照らしても,F1とO1の間で,本件A1株が直接売買されたものと認めることはできないから,原告の上記主張も理由がない。 c さらに,原告は,B2ら12名についても,株式売買約定書等に基づいて送金が行われたこと等を捉えて,直接E1との間で本件A1株を売買した旨主張するが,B2ら12名に関する本件A1株の売買についても,L1ら3名及びO1の場合と同様の理由により,原告が本件A1株をいったん買い受けてこれを売却したものと解されることは,他の本件譲受人と異ならないというべきであるから,原告の主張は理由がない。 (5) 原告の予備的主張についてア原告は,仮に 原告が本件A1株をいったん買い受けてこれを売却したものと解されることは,他の本件譲受人と異ならないというべきであるから,原告の主張は理由がない。 (5) 原告の予備的主張についてア原告は,仮に本件A1株が放出5社から直接本件譲受人に対して売却されたことが認められないとしても,本件A1株を買い受けたのは,B1,A1等,原告が代表権限を有するB1グループに属する会社であって,原告ではない旨主張する。 イしかしながら,本件A1株の売買は,原告がA1の部次長以上の役職員に対し,株式公開前のA1株を特別に持たせようと考えたことに端を発し,その後はB1グループの各社との取引に関係する者,専ら原告との個人的な関係を有する者,さらにはその社会的地位から原告が尊敬していた者にまで譲渡先が拡大していったものであり,このような経緯にかんがみれば,原告が放出5社から本件A1株を買い受ける際,原告がB1グループ各社の代表者としてこれを買い受けたものと理解することは困難というべきであって,ことに,本件譲受人の中に,F3,K3,A2など,B1グループを構成する会社との取引上の関係はなく,専ら原告との個人的な交際関係等に基づいて本件A1株を譲り受けた者が含まれていることは,これを裏付けるものというべきである。 また,本件A1株の売買は,そもそも,A1株の店頭登録を間近に控え,原告が自己の所有するA1株を譲渡することが,本件内規に違反すること等の事情によりできないことから,その代わりに放出5社からA1株を調達して,放出5社から直接売買された形式をとる方法により本件譲受人に譲渡することとしたものである。 もっとも,本件A1株の売買については,本件譲受人の選定作業に原告の指示を受けたB1及びA1の役員が関与し,具体的な譲渡手続も原告の指示を受けたA1及びC1の役員 に譲渡することとしたものである。 もっとも,本件A1株の売買については,本件譲受人の選定作業に原告の指示を受けたB1及びA1の役員が関与し,具体的な譲渡手続も原告の指示を受けたA1及びC1の役員が担当して行うなど,B1グループを構成する会社の役員らが関与していることが認められる。しかし,原告が,B1,A1等の代表権限を有する会社のために行うことを明らかにしたうえで本件A1株の売買に関与した事実は窺えないし,B1グループ各社において,本件A1株の売買に関する取締役会の決議が形式的にも実質的にも存在したことは認められない。また,これらの役員らの所属する会社は,同一の会社ではなく,それぞれの活動も,原告からの個別的な指示に基づいて行われたものであって,特に本件譲受人の選定や,本件譲受人にA1株の取得を依頼する作業については,できるだけ隠密に進めるために,原告が特に信用できると考えた者のみを充てていることが認められる。そして,本件A1株の価格,A1株の調達先等,売買契約の要素については,原告が実質的にこれを決定しており,K2,I2ら,原告以外に本件譲受人を選定した者についても,原告からの指示がない限り,本件譲受人の選定を行うことはあり得なかったものであって,原告以外のB1グループを構成する各社の役員の関与は,あくまで原告の企図した本件A1株の売買を実施するための作業に従事したものにとどまるというべきである。 これらの各事情に照らせば,本件A1株の売買の効果は原告個人に帰属するものと評価することが相当であって,原告がB1グループを構成するいずれかの会社の代表者として放出5社から本件A1株を購入したものということは,困難というべきである。 ウなお,本件譲受人の多くは,A1の部次長以上の役職員や,B1グループを構成する会社の取引に関係する者で 社の代表者として放出5社から本件A1株を購入したものということは,困難というべきである。 ウなお,本件譲受人の多くは,A1の部次長以上の役職員や,B1グループを構成する会社の取引に関係する者であり,これらの者に本件A1株の値上がり益を得させることにより,勤務関係や取引関係の円滑化などの効果を享受するのは,B1グループを構成する会社であって,本件A1株の売買による利益がこれらの会社に帰属することにかんがみ,実質的な観点から,これらの会社を売買の当事者と解することも考えられないではない。しかしながら,原告がこれらの会社を個別的に代表する意思の下に,放出5社から本件A1株を購入したものと解することができないことは前記のとおりであり,B1の創業者であり,B1グループを構成する各社の役員を兼務していた原告にとって,これらの会社の社業が向上することが,原告個人の利益にもつながるものと評価し得ることにかんがみれば,本件取引による利益の帰属という実質的な観点からも,原告個人を本件A1株の売買当事者と解することが相当でないとはいえない。 また,原告は,放出5社の経営者に対し,本件A1株の譲渡を依頼した際,「買戻し」といった表現を用いているが,このような表現は,いわば原告の側に本件A1株を戻す程度の認識で用いられたものと解するのが相当であり,法的に厳密な意味において,第三者割当増資を行ったA1自体に売買の法的効果を帰属させる意思で用いられたものというべきではないから,このような表現が用いられたことをもって,原告がA1の代表者として本件A1株を購入する意思表示を行ったものということはできない。 そして,この他に,原告が代表権限を有する会社が本件A1株の売買当事者であるとする原告の予備的主張を認めるに足りる主張,立証はない。 第4 結論以上によれ 示を行ったものということはできない。 そして,この他に,原告が代表権限を有する会社が本件A1株の売買当事者であるとする原告の予備的主張を認めるに足りる主張,立証はない。 第4 結論以上によれば,被告が,原告がいったん買い受けた本件A1株70万株を本件譲受人に売却したことを前提として本件各処分を行ったことは相当であり,本件各処分は,いずれも適法であることが認められる。 よって,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官市村陽典裁判官森英明裁判官馬渡香津子
▼ クリックして全文を表示