平成28年7月25日宣告728号殺人被告事件判決 主文 被告人を懲役9年に処する。 未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,同居していた義母(夫の母)のAから,家事などをめぐり長年厳しい要求を受けるなどしていたものであるが,平成27年8月7日朝,関係が芳しくなかった長男の帰省を前に緊張の度を強めていた中,夫との些細なけんかなどを深刻に受け止め,絶望した気持ちになってとっさに自殺を思い立ち,その後,Aのせいで家庭が崩壊したとの思いから憎しみを爆発させ,自身が自殺する前に同人を道連れに殺害しようと決意し,同日午前8時10分頃,(以下略)被告人方において,A(当時87歳)に対し,殺意をもって,手に持った出刃包丁(刃体の長さ約15. 7センチメートル)で腹部等を数回突き刺すなどし,よって,同日午前9時59分頃,同市(以下略)B病院において,同人を出血性ショックにより死亡させて殺害したものである。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法199条に該当するところ,所定刑中有期懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役9年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中250日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)被告人は,前記のような方法で,肝臓に達する深い致命傷1か所を含む多数の傷を負わせて被害者を殺害したものである。突発的に殺害行為に及んでおり,計画性はなかったと認められるものの,強固な殺意に基づく犯行である。 被告人は,被害者を残して自分が自殺すると,夫に負担がかかると考えたことも動機の一つであったと述べているが んでおり,計画性はなかったと認められるものの,強固な殺意に基づく犯行である。 被告人は,被害者を残して自分が自殺すると,夫に負担がかかると考えたことも動機の一つであったと述べているが,「みんなあんたのせいよ」などと言いながら犯行に及んだことからすると,主たる動機は,被害者に対する憎しみであったと認められる。その背景には,被害者が,約40年もの間家事などについて,近年は自身の世話などについて被告人にかなり厳しい要求をし,被告人が懸命に励んでもその努力を無下にするような言動を日常的に繰り返していたもので,被告人は,それによって子育てに時間を割くことができなかったと述べるなど,強い抑圧を受けていたとの事情があったと認められる。被害者に対する憎しみは理不尽なものではなかったといえるが,一方で,被害者の殺害を決意する理由に直ちに結びつくような事情と評価できるものではない。被告人が当時の状況に適切に対処できず衝動的に重大な犯行に及んだことには,側頭葉てんかんによるパーソナリティ変化の影響が認められるが,鑑定に当たった精神科医の証言等による限り,その程度は大きなものではなかったと認められる。こうしてみると,大きくは同情できないものの,被告人が犯行を決意した理由などにはある程度酌むべき事情もあると評価できるところである(検察官が主張するように,動機が極めて理不尽で身勝手であるとまではいえない。)。 以上のような犯情についての評価を前提に,本件に現れた主要な量刑事情に係るいくつかの類型の量刑傾向を参考として刑期を検討すると,検察官の科刑意見(懲役13年)はやや重過ぎるというべきである。また,弁護人は,本件は介護疲れを背景とした擬似心中事案であるとして,刑の執行猶予を付すべきである旨主張するが,本件をもって,いわゆる介護疲れや心中を特徴と 3年)はやや重過ぎるというべきである。また,弁護人は,本件は介護疲れを背景とした擬似心中事案であるとして,刑の執行猶予を付すべきである旨主張するが,本件をもって,いわゆる介護疲れや心中を特徴とする事案とみるのは困難であるし,刑の執行猶予を付すことが相当な事案ではない。 以上のほかに弁護人が一般情状として指摘する事情にも特にみるべきものはなく,被告人に対しては,主文の刑に処するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役13年)平成28年7月29日 札幌地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官金子大作 裁判官坂田正史 裁判官坂本桃
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