昭和44(う)1203 船車覆没致死、電汽車顛覆、殺人、同未遂、傷害、爆発物取締罰則違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和45年8月11日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。          理    由  (控訴の趣意)  被告人、ならびに弁護人伊藤五郎、同伊藤泰蔵両名連名各提出の控訴趣意書記載 のとおりであるから、いずれも

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判決文本文2,460 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 理由 (控訴の趣意)被告人、ならびに弁護人伊藤五郎、同伊藤泰蔵両名連名各提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、いずれもこれを引用する。 (当裁判所の判断)弁護人の控訴趣意第一、法令の適用の誤りの主張、及び同第二、中法令の適用の誤りを主張する点について所論は、刑法一二六条一項に言う破壊とは、汽車、又は電車の車体の実質を壊ち、安全なる運行を不能ならしむべき程度のものでなければならないところ、本件電車の損害の程度は、電車の天井の鉄板、窓ガラスの一部、座席、網棚の一部を損傷(損害額約五万四、〇〇〇円)したに過ぎないから、同条にいわゆる破壊には該当しない、と主張する。 <要旨第一>按ずるに、刑法一二六条一項にいう破壊とは、人の現在する汽車、又は電車の実質を害して、その交通機関た</要旨第一>る機能の全部又は一部を失なわせる程度の損壊をいうものと解すべきところ、原判決が証拠により認定したところによると、被告人の仕掛けた爆体の爆破によつて、本件電車の屋根、天井に張られた鉄板、及び合金板四枚、座席七個、網棚、窓ガラス四枚、その他車体付属品八点を損壊したことが明らかであつて(なお、司法警察員作成の昭和四三年七月一六日付検証調書《前同六四八丁》に照らすと、天井、屋根、車体内張りの金属板等車体の実質や、金属製扉を損傷したほか、第二六、二八の腰掛の窓ガラス二段はガラスがほとんど完全に割れ落ち、網棚は垂れ下がり、座席も破損し、爆発物の破片等が床上一杯に散乱していることが認められる。)その損害額が五万四、一〇六円程度に止まつたにしても、進行中の電車に小石を投じて窓ガラスを割つたり、小刀を使つて座席を傷つけたりしたのとは異り、たとえ、電車自体の走行そのものは可能であつたとしても その損害額が五万四、一〇六円程度に止まつたにしても、進行中の電車に小石を投じて窓ガラスを割つたり、小刀を使つて座席を傷つけたりしたのとは異り、たとえ、電車自体の走行そのものは可能であつたとしても、交通機関として乗客を乗せ安全な運行を続けるに堪えないものと認められるから、刑法一二六条一項所定の破壊というに妨げない。したがつて、原判決が、刑法一二六条一項を適用処断したのは正当であつて、論旨は理由がない。 次に所論は、仮りに、被告人に乗客を殺傷する未必の故意があつたとしても、刑法一二六条三項は、汽車、電車の顛覆、又は破壊の結果、人を死に致した場合のみならず、最初から殺傷の犯意がある場合をも当然包含するものと解すべきであるから、本件につき刑法一九九条、二〇三条、二〇四条を適用処断した原判決には法令の適用を誤つた違法があると主張する。 <要旨第二>よつて按ずるに、刑法一二六条三項は、同条一項、二項の罪を犯しよつて人を死に致した行為を結果的加重</要旨第二>犯として重く処罰する規定であるから(大正七年一一月二五日大審院判決参照)、致死の結果につき予見のある場合には、同法一二六条三項のほか、同法一九九条の適用があり、両者は一所為数法の関係に立つものと解するのを相当とする。もし、そうでないとすると、殺人の故意を以て汽車、電車を破壊したが殺人が未遂に終わつた場合には、同法一二六条三項の罪には未遂の処罰規定がなく、その結果同条一項によつて罰せられるに過ぎないこととなり、明らかに不当である。しかるに前記のように解釈すると、この場合は同条一項と同法一九九条、二〇三条とに該当し、一所為数法の関係に立つこととなり、その結果が妥当である。また、傷害の犯意(暴行の犯意の場合も同じ)があるに過ぎないときは、もとより一二六条三項に包含されるいわれはなく、傷害の結果発 条とに該当し、一所為数法の関係に立つこととなり、その結果が妥当である。また、傷害の犯意(暴行の犯意の場合も同じ)があるに過ぎないときは、もとより一二六条三項に包含されるいわれはなく、傷害の結果発生の場合は同法一二六条一項と、同法二〇四条とに該当し、一所為数法の関係を生ずることまた当然であるから、原判決が未必の殺意を認め、被害者Aに対する関係で刑法一二六条三項一項、一九九条に該当するとし、被害者B外一一名(原判決添付一覧表(一))に対する関係で、同法一二六条一項、一九九条、二〇三条に該当するとし、C外一名(同表(二))に対する関係では未必の傷害の故意を認め、同法一二六条一項、二〇四条に該当するとし、右はそれぞれ一所為数法の関係にあるとして法律の適用をしたのは正当であり、論旨は理由がない。 <要旨第三>なお、本件は、被告人が電車内で時限爆破装置を爆発させ、その爆体の破片によつて乗客Aを死亡させ</要旨第三>たものであつて、爆発により電車が破壊し、その破壊それ自体の結果として、同人を死に致したものではないから、刑法一二六条三項に該当するか疑問がないわけではない。しかしながら、電車の破壊行為という一個の行為で同時に電車の破壊と、人の死亡の結果とを発生した本件のような場合には、同法条に該当するものと解するのが相当である。けだし、その被害法益の点から考えても、両者をとくに区別すべき実質的理由に乏しいばかりか、もし、両者を区別すると、同一の犯意を以て実行し、同一の結果を発生しながら、たまたま爆発自体によつて人の死亡の結果が発生した場合と、爆発により汽車、電車の破壊があり、さらにその破壊の結果として人の死亡が発生した場合とにより、一は死刑、または無期、もしくは三年以上の懲役、一は死刑、または無期懲役となつて、刑の均衡を著しく害する結果となり不当であ 車の破壊があり、さらにその破壊の結果として人の死亡が発生した場合とにより、一は死刑、または無期、もしくは三年以上の懲役、一は死刑、または無期懲役となつて、刑の均衡を著しく害する結果となり不当であるからである。 (その余の判決理由は省略する)(裁判長判事樋口勝判事目黒太郎判事伊東正七郎)

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