主文 1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。 2 東京地方裁判所八王子支部平成10年(ケ)第1309号不動産競売事件において,同裁判所が平成12年5月22日に作成した配当表中,上告人の債権に対する「配当実施額等(円)」の欄に「2340万5040円」とあるのを「2542万4144円」に,被上告人の債権に対する同欄に「357万8754円」とあるのを「155万9650円」に変更する。 3 訴訟の総費用は,被上告人の負担とする。 理由 上告代理人佐藤米生,同高畑満,同神戸和子,同岡野和弘,同赤坂裕志の上告受理申立て理由について 1 原審が適法に確定した事実関係は,次のとおりである。 (1) 上告人は,訴外D商事株式会社に対する債権を担保するため,訴外E所有の第1審判決別紙物件目録1及び3記載の不動産(以下,同目録1記載の不動産を「甲」,同目録3記載の不動産を「丙」という。)並びに訴外F所有の同目録2記載の不動産(以下「乙」という。)の上に極度額1億3000万円の共同根抵当権を有していた。 (2) 被上告人は,訴外G株式会社に対する債権を担保するため,乙及び訴外H所有の上記目録4記載の不動産の上に極度額2900万円の共同根抵当権を有していた。 (3) 乙上の上告人と被上告人との根抵当権は,順位変更により同順位とされ,平成8年7月18日,その旨の登記が経由された。 - 1 -(4) 甲,乙,丙について(1)記載の上告人の根抵当権の実行として競売が開始され(東京地方裁判所八王子支部平成10年(ケ)第1309号不動産競売事件),平成12年5月22日,配当期日が指定された。 なお,上告人の提出した競売申立書には,請求債権として,残元金5795万9070円及びこの金額に対する平成9年 0年(ケ)第1309号不動産競売事件),平成12年5月22日,配当期日が指定された。 なお,上告人の提出した競売申立書には,請求債権として,残元金5795万9070円及びこの金額に対する平成9年1月28日から支払済みまでの年14%の割合による損害金との記載に加え,同年2月17日の内入弁済金113万2739円に対する同年1月28日から同年2月17日まで21日間の年14%の割合による損害金(以下「確定損害金1」という。)として9123円とすべきところを912円,同年11月18日の内入弁済金8191円に対する同年1月28日から同年11月18日まで295日間の年14%の割合による損害金(以下「確定損害金2」という。)として926円とすべきところを92円との記載がされていたが,上告人の提出した債権計算書には,それぞれ正しい計算結果が記載されていた。 (5) 上記配当期日において,執行裁判所は,確定損害金1及び同2の金額を上告人が提出した競売申立書に記載された金額であるとして,上告人の被担保債権額を8488万1665円とし,その上で,代金額及び手続費用の額を甲,乙,丙の各最低売却価額に応じて割り付け,それぞれ割り付けられた代金額から手続費用の額を控除した金額(以下「不動産価額」という。甲については490万7199円,乙については816万7064円,丙については1390万9531円)に準じて上告人の上記被担保債権額の負担を甲,乙,丙に分け,上告人と被上告人との根抵当権が同順位である乙については,その不動産価額を上告人の被担保債権のうち乙の負担額と被上告人の被担保債権額との割合に従って案分し,上告人に対しては,甲及び丙の各不動産価額と乙の不動産価額のうち上告人への案分額458万8310円との合計2340万5040円を配当し,被上告人に対しては乙の不 の被担保債権額との割合に従って案分し,上告人に対しては,甲及び丙の各不動産価額と乙の不動産価額のうち上告人への案分額458万8310円との合計2340万5040円を配当し,被上告人に対しては乙の不動産価額のうち被上告人への案分額357万8754円を配当する旨の配当表を作成した。 - 2 -(6) 上告人は,上記配当期日において,被上告人への配当額のうち201万9104円について配当異議の申出をした。 2 本件は,上告人が被上告人への配当額のうち異議に係る上記金額を上告人の配当に加えるべきであるとする配当異議の訴えである。 上告人は,競売申立書の明白な誤記はその後に提出された債権計算書において訂正されているとし,また,本件においては,まず,乙の不動産価額を上告人と被上告人の各被担保債権額により案分すべきものであり,その上で,甲及び丙の各不動産価額及び乙の上記案分額に準じて上告人の被担保債権額の負担を甲,乙,丙に分けるべきであると主張した。 この点につき,原審は,確定損害金1及び同2の誤記は,執行裁判所が計算違いをしたために生じたものではなく,上告人の計算違いにより,結果的に一部請求となったものであって,執行裁判所が明白な誤りを看過したものということはできないから,配当表の更正をすることは許されないとし,さらに,乙の不動産価額を上告人と被上告人に案分するに当たり執行裁判所が採用した計算方法については,執行裁判所が採用した見解は民法392条1項の文理に沿い,上告人の主張する見解にも欠点があり,両説の合理性を比較した結果によって一方の説である執行裁判所の見解を採用したことが違法となるものとまで認めることはできないとして,上告人の請求を棄却した第1審判決の結論を支持して,上告人の控訴を棄却した。 3 しかし,原審の上記判断は是認することが 裁判所の見解を採用したことが違法となるものとまで認めることはできないとして,上告人の請求を棄却した第1審判決の結論を支持して,上告人の控訴を棄却した。 3 しかし,原審の上記判断は是認することができない。 (1) 競売申立書に明白な誤記,計算違いがある場合には,その後の手続においてこれを是正することが許されるものと解すべきであり,これを一部請求の趣旨と解することは相当でない。本件では債権計算書においてその是正がされているところ,配当異議の訴えは実体法上の権利に基づき配当表の変更,取消しを求めるもので- 3 -あり(民事執行法90条4項),配当表を是正するためには,配当表の誤記が執行裁判所の責めに帰すべき事由により生じたことを要するものではない。そして,前記事実関係によれば,上告人の提出した競売申立書に記載された確定損害金1及び同2の金額には明白な計算違いがあり,正しい計算結果は上告人が提出した債権計算書に記載されたものであるから,上告人の被担保債権額は8489万0710円となる。 (2) 共同抵当とは債権者が同一の債権の担保として数個の不動産の上に抵当権を有する場合をいい(民法392条1項),各不動産上の抵当権はそれぞれ債権の全額を担保するものであるから,共同抵当権者は一部の不動産上の同順位抵当権者に対しても,その被担保債権全額を主張することができる。もっとも,債権者が任意の不動産の価額から被担保債権の全部又は一部の回収を図ることを許し,何らの調整を施さないときは,共同抵当の関係にある各抵当不動産上の後順位債権者等に不公平な結果をもたらすことになる。そこで,民法392条1項は,共同抵当の目的である複数の不動産の代価を同時に配当する場合には,共同抵当権者が優先弁済請求権を主張することのできる各不動産の価額(当該共同抵当権者が把 たらすことになる。そこで,民法392条1項は,共同抵当の目的である複数の不動産の代価を同時に配当する場合には,共同抵当権者が優先弁済請求権を主張することのできる各不動産の価額(当該共同抵当権者が把握した担保価値)に準じて被担保債権の負担を分けることとしたものであり,この負担を分ける前提となる不動産の価額中には他の債権者が共同抵当権者に対し優先弁済請求権を主張することのできる不動産の価額(他の債権者が把握した担保価値)を含むものではない。 そうすると,【要旨】共同抵当の目的となった数個の不動産の代価を同時に配当すべき場合に,1個の不動産上にその共同抵当に係る抵当権と同順位の他の抵当権が存するときは,まず,当該1個の不動産の不動産価額を同順位の各抵当権の被担保債権額の割合に従って案分し,各抵当権により優先弁済請求権を主張することの- 4 -できる不動産の価額(各抵当権者が把握した担保価値)を算定し,次に,民法392条1項に従い,共同抵当権者への案分額及びその余の不動産の価額に準じて共同抵当の被担保債権の負担を分けるべきものである。これと異なる原審の計算方法は,共同抵当の目的となる不動産上の同順位者に対して,共同抵当に係る被担保債権全額を主張することを認めず,共同抵当に係る数個の不動産の代価の同時配当における負担分割の基礎となる不動産の価額中に同順位者が優先弁済請求権を主張することができる金額(同順位者が把握した担保価値)を含ませる結果となるものであって,採用することができない。 4 以上によれば,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は破棄を免れず,同旨の第1審判決は取り消すべきである。 そして,上記説示したところによれば,上告人の被担保債権額を8489万0710円とし,まず乙の不動産価額816万7064 の違反があり,原判決は破棄を免れず,同旨の第1審判決は取り消すべきである。 そして,上記説示したところによれば,上告人の被担保債権額を8489万0710円とし,まず乙の不動産価額816万7064円を上告人の上記被担保債権額と被上告人の被担保債権額2003万8071円とで案分し,本件事実関係の下においては,乙の不動産価額のうち上告人への案分額660万7414円,甲の不動産価額490万7199円及び丙の不動産価額1390万9531円に準じて上告人の被担保債権額の負担を分けるべきところ,上記各金額の合計額2542万4144円は上告人の被担保債権額に及ばないから,上記合計額を上告人に配当し,被上告人には乙の不動産価額のうち被上告人への案分額155万9650円を配当すべきことになる。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官上田豊三裁判官金谷利廣裁判官奥田昌道裁判官濱田邦夫)- 5 -
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