平成16(わ)295 強盗殺人等被告事件

裁判年月日・裁判所
平成17年1月21日 岐阜地方裁判所
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判決文本文3,701 文字)

- 1 -主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 押収してある包丁1丁(平成16年押第34号の1)を没収する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,昭和42年に結婚し,妻との間に二児をもうけ,昭和50年ころから個人で縫製業を営み,昭和52年ころ宗教団体であるA会に入信した。被告人は,縫製業の事業に失敗して,昭和60年9月に破産宣告を,昭和62年9月に免責決定を受け,その後,アパレル関連会社や水道設備工事会社などに勤務する一方,平成元年ころA会において発言者という上位の地位になり,そのころから平成13年ころまでの間,A会の信者に対し,健康食品や仏具等の販売の斡旋を行って手数料を得ており,同会の信者であるBに対しては,多数回にわたって純金製の仏像,18金製の御錀,貴金属など合計1000万円以上の物品の販売を斡旋し,合計200万円以上の手数料を得ていた。被告人は,この間も,生活費やパチンコ等の遊興費のために,消費者金融会社や,A会の信者らから借金を重ね,妻及び二女名義でも消費者金融会社等から借金を重ね,Bからは,平成10年ころに40万円を借りて仏具等の代金と相殺し,平成13年ころには20万円を借入れて返済していなかった。被告人は,平成14年10月に2回目の破産宣告を受け,同年12月に免責決定を受けたが,A会の信者からの借入金については,同人らとの関係を考慮して債権者名簿に記載せず,それらの債務については免責の効力を受けないこととし,また,妻及び二女の破産の申立てをしなかったため,A会の信者らからの借入金や妻及び二女名義での借入分については,支払義務がそのまま残ることとなった。このため,被告人は,2回目の破産宣告の後も, し,また,妻及び二女の破産の申立てをしなかったため,A会の信者らからの借入金や妻及び二女名義での借入分については,支払義務がそのまま残ることとなった。このため,被告人は,2回目の破産宣告の後も,残った借金の返済や,生活- 2 -費,パチンコ等の遊興費のために,再び,A会の信者,知人,いわゆる闇金融業者などから金員を借り入れ,妻及び二女名義で消費者金融会社等から借金を重ねるようになった。被告人は,平成15年12月下旬ころ,被告人に金を貸していた信者らが返済の催促等で自宅に来た際,妻に対して,その時点で発覚していた一部の借金以外に借金はない旨虚偽の説明をした。 しかし,その後も,同月末から翌平成16年1月にかけて,被告人に金を貸していた他の信者や知人などが,電話で厳しく借金の返済を迫ったことから,被告人は,もしこれらの者が妻に話せば,被告人が妻に嘘をついていたことが明らかになってしまうことになり,家から追い出され離婚されるのではないかとのおそれを抱き,速やかに返済資金を捻出する必要に迫られたものの,金員を借りることのできる当てはなかった。被告人は,Bが多額の預貯金を有しているだろうと考えていたが,同女から新たな借金は望めないと思い,同年1月25日ころまでの間に,一人暮らしで高齢の同女に包丁を突き付けて,キャッシュカードを奪い,その暗証番号を言わせた上で同女を殺害し,キャッシュカードや現金,仏具等を強取した後,同女方に放火して犯跡を焼失させて逃走するなどの具体的計画を立て,頻繁に,同女方近くまで車で行ったり,同女宅に電話をして同女の所在等を確認するなどして,犯行の機会を窺うようになった。被告人は,同年2月初旬時点で自己の借金総額が1400万円近くにのぼり,厳しく借金返済の催促を受けていたことなどから,前記のとおりBを殺害して金品を強取 認するなどして,犯行の機会を窺うようになった。被告人は,同年2月初旬時点で自己の借金総額が1400万円近くにのぼり,厳しく借金返済の催促を受けていたことなどから,前記のとおりBを殺害して金品を強取しようと決意するに至った。 (罪となるべき事実)被告人は,第1 B(当時80歳)を殺害して金品を強取しようと企て,平成16年2月7日午前10時ころ,岐阜県揖斐郡a町大字bc番地dの同女方に赴き,相談がある旨同女に述べて,同女方に上がり込み,同女に借- 3 -金を申し込んだが断られたことから,同女方において,いきなり右手で同女の口を押さえ,同女に「キャッシュカードどこにある。出せ。」などと申し向けたところ,同女が「キャッシュカードなんかない。助けて。誰か。」などと騒ぎ始めたため,同女を仰向けに倒し,同女に馬乗りになり,殺意をもって,両手の平で同女の鼻と口を押さえて塞ぎ,右手拳で同女のみぞおち辺りを数回殴打し,両手指で同女の頸部を絞め付け,さらに所携の荷造り用ロープを同女の頸部に巻き付けて両端を引っ張って絞め付け,所携の包丁(刃体の長さ約15センチメートル,平成16年押第34号の1)で同女の頸部右側を1回突き刺し,よって,そのころ,同所において,同女を頸部刺創により失血死させて殺害した上,同女所有の現金4000円及び御錀1個ほか5点(同女の購入価格〔消費税抜き〕合計約493万円相当)を強取し,第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時ころ,前記B方において,前記包丁1丁を携帯し,第3 前記B方において,失火に見せかけて前記第1の犯跡を隠蔽するために,Bの死体及び同女所有の前記同女方木造瓦葺2階建家屋(床面積合計217.51平方メートル)を焼損しようと企て,同日午前10時30分ころ,同家屋1階三畳間において, て前記第1の犯跡を隠蔽するために,Bの死体及び同女所有の前記同女方木造瓦葺2階建家屋(床面積合計217.51平方メートル)を焼損しようと企て,同日午前10時30分ころ,同家屋1階三畳間において,同部屋にあったファンヒーター及び同女の死体の足下辺りに新聞紙を数枚丸めて置き,同女方にあったライターでこれらに点火して火を放ち,同女の着衣等,さらに同家屋の柱等に順次燃え移らせ,よって,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人のいない同家屋を全焼させてこれを焼損するとともに,同女の死体を焼損して同死体を損壊したものである。 (法令の適用)- 4 -記載省略(量刑の理由)被告人は,生活費やパチンコ等の遊興費のために自己が入信していた宗教団体の信者等から借金を重ね,さらに,家族名義でも消費者金融会社から借金を重ねるようになり,返済資金に窮したことから,信者で知人であり,かつて高額な仏具等の販売を斡旋したことがあった被害者であれば,多額の預金や高価な物品を有していると考え,同女を殺害して同女所有のキャッシュカードや金品を強取した上,同女方居宅に放火して犯跡を隠蔽し,強取したキャッシュカードで引き出した金員や,物品を換金して得た金員を借金の返済資金や遊興費に充てようと考え本件各犯行に及んだもので,その犯行動機は,極めて自己中心的かつ身勝手なものであって酌量の余地は全くない。被告人は,被害者を殺害するための包丁やロープを用意し,犯跡を残さないよう,犯行に必要な物以外は持たずに被害者方に赴くなど,本件は計画的犯行である。被告人は,本件殺人の犯行において,被害者に馬乗りになってその頸部を両手で絞め,ロープを巻いて思い切り引っ張ってその頸部を絞めた上,包丁でその頸部を突き刺して失血死させるという,一貫して強固な殺意に基づいて犯行に及んでお において,被害者に馬乗りになってその頸部を両手で絞め,ロープを巻いて思い切り引っ張ってその頸部を絞めた上,包丁でその頸部を突き刺して失血死させるという,一貫して強固な殺意に基づいて犯行に及んでおり,その犯行態様は極めて残忍で悪質である。被害者は,80歳と高齢であったが毎日のように畑仕事に出かけるなど元気で,孫の成長を楽しみに日々を送っていたものであり,突然,被告人の凶行により生命を断たれることになった無念さは計り知れない。遺族の悲痛や憤りは大きく,処罰感情は非常に厳しいが,みるべき慰謝の措置は取られていない。被害者が殺害されたのみならず,財産的損害の点についても,強取にかかる仏具等は合計約500万円,放火にかかる損害は1000万円以上と甚大でその回復の見込みもなく,生じた結果は重大である。また,平和な住宅地において1人暮らしの高齢者が自宅で殺害され,その自宅が放火されたという本件各犯行が地域社会- 5 -に与えた影響も看過できない。以上によれば被告人の刑事責任は極めて重い。 そうすると,被告人が,当初から本件各犯行を認め,公判廷で謝罪の言葉を述べていることや前科がないことなど,被告人のために斟酌すべき事情を考慮しても,被告人に対しては,主文のとおり,無期懲役刑を科すのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑無期懲役,没収)平成17年1月21日岐阜地方裁判所刑事部 裁判長裁判官土屋哲夫 裁判官古閑美津惠 裁判官渡邉康年 美津惠 裁判官渡邉康年

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