平成14(わ)1392 窃盗,暴行被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年9月12日 神戸地方裁判所
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判決文本文4,043 文字)

主文 被告人を懲役1年8月に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成14年11月12日午後3時50分ころ,神戸市a区b通c丁目c番d号所在の古美術「A」において,同店経営者B(当時55歳)所有に係る現金1万円及びキャッシュカード等11点在中の財布1個(物品時価合計2万5000円相当)を窃取した第2 前同日午後3時55分ころ,同店前付近において,前記Bに対し,その右側頭部を右手の甲で1回殴打する暴行を加えたものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,判示第2の事実につき,被告人は被害者に対して暴行を加えていないから無罪である旨主張し,被告人も当公判廷でこれに沿う供述をするところ,前掲関係各証拠によれば,判示第2の事実は優に認められるのであるが,以下,その理由について若干補足する。 2 被害者Bは,当公判廷において,①平成14年11月12日午後3時50分ころ,古美術「A」店前において,同店から出てきた被告人を発見し,窃盗犯人であると直感し,逃走を図った被告人を二度にわたり追跡した旨,②逃走を図った被告人を1回目は単独で店まで連れ戻し,同店内で被害者は店内の電話で110番通報しようとしたが,被告人に妨害されて電話できないでいるうち,被告人は再び逃走した旨③二度目に被告人が逃走を図った際には,通行人の男性(以下「本件通行人」という。)の助けを借りて被告人を同店前まで連れ戻した旨,④その際,同所において,被告人ともみ合いになり,被告人とほぼ正対した状態で被告人から右手でその右側頭部を1回殴打され 性(以下「本件通行人」という。)の助けを借りて被告人を同店前まで連れ戻した旨,④その際,同所において,被告人ともみ合いになり,被告人とほぼ正対した状態で被告人から右手でその右側頭部を1回殴打された(以下,④供述を「被害者供述核心部分」という。)旨各供述する(以下これら①ないし④を含むBの公判供述を「被害者供述」という。)ところ,被害者供述中①ないし④は一貫した供述であり,かつ,①ないし③については被告人も争うところではない。 弁護人は被害者供述,殊に被害者供述核心部分には信用性がない旨主張するところ,被害者供述核心部分は被告人から一回殴られたとする点では犯行直後から一貫した供述であると窺われるとはいうものの,同人の公判供述全体を検討すると,暴行を受けるに至った経過やその後の状況に関し,供述の変遷が随所に見られるだけでなく,暴行を受けた際の四囲の状況に関しても,第3回公判期日において,被害者は,被告人から暴行を受けた際,本件通行人が被告人を後ろから掴まえていてくれた,自分は被告人に手をかけていなかったと思う,被告人が放せと言ったのは本件通行人が掴まえていたからと思うなどと述べながら,第4回公判期日において,被告人から暴行を受けた際,本件通行人がそばにいたかどうかすらわからないと述べるなど,看過し難い供述の変遷が見られる。そうすると,被害者供述核心部分は,犯行直後から一貫した供述であること,被害者にことさら虚偽の供述をする理由は見出しがたいこと等を考慮すると,一方で,一定の証明力を有するというべきではあるけれども,他方で,その信用性は脆弱で,これのみで,判示第2の暴行事実を疑いの余地なく認めるような高度の証明力はないといわねばならない。 3 他方,被告人の捜査段階における供述調書中には,「二度目に逃走を図り,被害者らに前記店舗前ま で,これのみで,判示第2の暴行事実を疑いの余地なく認めるような高度の証明力はないといわねばならない。 3 他方,被告人の捜査段階における供述調書中には,「二度目に逃走を図り,被害者らに前記店舗前まで引き戻される途中,被害者から強く胸ぐらを掴まれ,もみ合いとなり,『おばちゃん,放して。』と頼んでも放さずさらに力を入れてきたため,カッとして,『わかったから,放してえなぁ。』などといいながら,被害者が掴んでいた両手を振り払うように右手に持っていた茶色のセカンドバックをいわゆる裏拳のような状態で振り回しながら被害者の右側頭部を一発殴った。頭のような何か堅いものを殴ったときに感じるガツッという鈍くて重たい衝撃を感じた。」旨(平成14年11月16日付け司法警察員調書。25),「暴行をふるった場所は店に引き戻される途中ではなく,店に引き戻された後の店の前である。」旨(同月19日付け司法警察員調書。26)の各供述部分があるほか,検察官調書2通(12,13)中にも前記各司法警察員調書とほぼ同旨の供述部分(以下これらの供述部分を含む被告人の捜査段階における供述を「捜査段階における被告人供述」という。)がある。 弁護人は,捜査段階における被告人供述は捜査官から強制された虚偽自白であり,一部の調書は読み聞けもされていないなどとして証拠能力がない旨主張し,被告人も当公判廷においてこれにそう供述をするが,調書作成経過に関する被告人の公判供述は,「逮捕後暴行事実を否認し,3日目には否認調書が作成され,その後否認を続けたため,1週間ほどは調書を作成してもらえなかった,その後,暴行の事実を認める警察官調書の作成に応じたが,検察官の取調べにおいては暴行の事実を再び否認したのに,検察官は調書中,暴行事実を認める部分の読み聞けをせずに調書を作成した」などとするものであっ 後,暴行の事実を認める警察官調書の作成に応じたが,検察官の取調べにおいては暴行の事実を再び否認したのに,検察官は調書中,暴行事実を認める部分の読み聞けをせずに調書を作成した」などとするものであって,その後提出された警察官調書から認められる調書作成経過とは明らかに齟齬し,また,検察官調書の読み聞けの点については,署名部分の真上部分に暴行事実を認める供述記載があって,その供述部分が署名指印の際見えたはずである旨指摘されても,被告人において何らの説明もできないなど,明らかに信用できないから,その主張は理由がない。 そこで,その信用性について検討すると,被告人は捜査段階の初期の時点,少なくとも逮捕後3日目から,被害者に暴行を加えた事実を認め,その後一貫してこの事実を認める旨の調書の作成に応じているところ,捜査段階における被告人供述は,前認定のとおり,その動機,暴行の具体的態様,その際の手に受けた衝撃等,具体的かつ詳細な供述であり,加えて,「問・ボクシングでいうストレートパンチで殴ったのではないか。答・ちがいます。利き手の右裏拳のゲンコツ部分で殴りました。」「顔面を狙ったが被害者が避けたので右側頭部に当たった。」「被害者は一瞬痛そうな顔をしていた」旨(平成14年11月27日付け司法警察員調書。27)等,その供述内容は,被告人が主張するような被害者供述を押し付けられ,そのままこれを承認した内容には止まらない,体験したものでなければなしえない迫真性のある供述というべきであって,「右手の甲で被害者の右側頭部を一発殴った。」旨の捜査段階における被告人供述には高度の信用性が認められる。 4 そうすると,前記のとおり,前記2の被害者供述のみでは判示第2の事実を認めるには十分ではないが,これに前記3の捜査段階における被告人供述その他前掲関係各証拠を総 述には高度の信用性が認められる。 4 そうすると,前記のとおり,前記2の被害者供述のみでは判示第2の事実を認めるには十分ではないが,これに前記3の捜査段階における被告人供述その他前掲関係各証拠を総合すると,被告人の判示第2の事実を認めるに十分である。 5 弁護人及び被告人の主張は理由はない。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法235条に,判示第2の所為は同法208条にそれぞれ該当するところ,判示第2の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役1年8月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,窃盗及び暴行の事案であるが,その犯行態様は,店主の不在を見計らって被害店店舗内で判示の財布を盗み,店外に出たところを戻ってきた店主に見咎められるや,二度にわたり逃走を図り,被害者が被告人の胸ぐらを掴んではなさないためカッとして被害者の手を振り払おうと手を振り回して同女を殴打したもので悪質であること,被告人には窃盗等の懲役前科が4犯あり(うち3犯はその窃盗の手口が本件とほぼ同様のものと窺われる。),平成9年3月16日最終執行刑の執行を受け終わったものでありながら,格別の理由なく,本件各犯行に及んだこと,その各犯行の動機に格別酌量すべき事情は認められないこと等に徴すると,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ないが,窃盗の被害品は現場で返還されたこと,判示第2の犯行については衝動的な犯行で,暴行の程度は軽度であること,被告人は窃盗の事実は認め,被告人なりに反省して 告人の刑事責任は重いといわざるを得ないが,窃盗の被害品は現場で返還されたこと,判示第2の犯行については衝動的な犯行で,暴行の程度は軽度であること,被告人は窃盗の事実は認め,被告人なりに反省していること等被告人のために酌むべき事情も認められるので,これらの事情を十分に考慮した上,主文のとおり量定した。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年9月12日神戸地方裁判所第11刑事係甲裁判官杉森研二

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