目次 当事者の表示 主文 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 第2 事案の概要 前提となる事実 (1) 当事者等 (2) 本件申請と本件原子炉施設の概要 ア 東京電力による本件原子炉の設置許可申請 イ 本件原子炉施設の概要 (3) 発電用原子炉の仕組みと原子炉施設の潜在的危険性等 ア 発電用原子炉の仕組み (ア) 原子炉の原理 (イ) 沸騰水型原子炉(BWR) イ 原子炉施設の潜在的危険性 (ア) 原子炉施設の潜在的危険性と安全性の確保 (イ) 放射線とその影響 ウ ICRP(国際放射線防護委員会)等について (4) 原子力委員会と原子炉安全専門審査会 (5) 安全審査会の審査等 (6) 本件安全審査の基本方針及び審査事項等 (7) 東京電力の技術的能力に係る本件安全審査の内容 (8) 平常運転時における被ばく低減対策に係る本件安全審査の審査内容 (9) 原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の審査内容 (10) 想定される飛来物に対する安全審査 (11) 原子炉施設の地質・地盤及び地震に係る本件安全審査の審査内容 (12) 原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の審査内容 (13) 原子力委員会の答申及び内閣総理大臣の本件処分等 (14) 異議申立て等 (15) 営業運転開始と原子炉設置変更許可処分 (16) 許容線量等を定める件等の改廃 争点 当事者の主張 (1) 司法審査のあり方について ア 規制法24条1項各号の違反のうち,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係」する違法は何か。 イ 原子炉設置許可に際しての安全審査 (1)司法審査のあり方について ア規制法24条1項各号の違反のうち,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係」する違法は何か。 イ原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項となるものは何か。 ウ原子炉設置変更許可処分と本件訴訟における審理・判断の対象について (ア)本件処分後の本件各変更許可処分の違法事由は本件訴訟における審理・判断の対象となるか否か。 (イ)上記(ア)が肯定される場合,どの範囲で,変更許可処分の違法事由が審理・判断の対象となるか。 (ウ)上記(ア)が肯定される場合,上記(イ)の違法事由の主張・立証責任はいずれの当事者が負担するか。 エ本件処分の専門技術性について,司法審査の方法はどうあるべきか。 - 3 - (2)本件処分の手続的違法はあるか否か。 ア本件安全審査手続における構造的瑕疵について (ア)安全審査の手続規定に不備あるいは不明確な瑕疵があるか否か。 (イ)安全審査に係る技術的基準等の不明確があるか否か。 (ウ)本件安全審査手続に不公正,不適正があるか否か。 (エ)立法の瑕疵があるか否か。 イ本件安全審査手続における個別的瑕疵について (ア)原子力委員会における審査手続に瑕疵があるか否か。 (イ)安全審査会における審査手続に瑕疵があるか否か。 (3)規制法24条1項1号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (4)規制法24条1項2号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (5)規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。また,同条1項3号のうち技術的能力に係る 所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (5)規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。また,同条1項3号のうち技術的能力に係る部分の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 ア規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分について イ規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分について (6)規制法24条1項4号所定の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 ア原子炉施設の安全性の意義とその安全審査のあり方をどのように考えるか。 - 4 -(ア)原子炉施設の安全性の意義としきい値の存否 (イ)安全審査のあり方 イ本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策に関する本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①本件安全審査が基準とした公衆の線量当量限度は不当に高いものであるか否か。 ②「線量目標値指針」の線量目標値に合理性があるか否か。 ③「線量目標値指針」及び「線量目標値評価指針」の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被爆線量の評価について」の報告書に不合理な点がないか否か。 (イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺 衆の被爆線量の評価について」の報告書に不合理な点がないか否か。 (イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①気体廃棄物の被ばく線量評価について a間欠放出による気体廃棄物の過小評価の有無について - 5 -b放射性ヨウ素の被ばく線量評価の合理性の有無について c粒子状放射性物質の被ばく線量評価の合理性の有無について ②液体廃棄物の被ばく評価について a液体廃棄物に関する被ばく評価と原子力発電所による環境汚染の有無について b洗濯廃液の評価の不合理性の存否について c機器ドレン廃液の環境流失に関する被ばく評価の不合理性の存否について d濃縮係数の不合理性の存否について e放出放射性物質の濃度の不合理性の存否について f核種組成の不合理性の存否について gトリチウムの審査の有無について ③ムラサキツユクサの研究について ④放射線管理設備についての審査の有無について ウ本件原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)炉心燃料部の健全性の有無につ 防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 主文 (ア)炉心燃料部の健全性の有無について ①燃料被覆管の応力腐食割れについて ②多発する燃料棒に関する異常事象と対策の遅れの有無について aピンホールやひび割れ事象について b浸水燃料の事象について c燃料棒スペーサのはずれの事象について ③冷却材喪失事故時における炉心燃料部の健全性の有無について a大破断冷却材喪失事故(LOCA)の危険性の有無について b中小破断冷却材喪失事故(LOCA)の危険性の有無について (イ)圧力バウンダリについて ①圧力容器の中性子による脆化に対する安全性の有無について a脆化予測式の合理性と不純物及びニッケル等が中性子の照射脆化に及ぼす影響の有無について b照射速度等の影響の有無について c本件安全審査が準拠した監視試験方法の妥当性の有無について ②応力腐食割れ(SCC)の有無について ③疲労破壊及び応力集中の有無について ④圧力バウンダリの使用前検査及び供用期間中検査の合理性について ⑤運転期間(想定寿命)限定の有無について 制御棒駆動系について (ウ)スクラム排出ヘッダー及びスクラム排出 ①制御棒駆動系の信頼性と容器の設計の合理性の有無について ②スクラム失敗等と暴走事故について ③タービン・トリップ発生時のスクラム遅れについて ④スクラム信号系について (エ)ECCS(非常用炉心冷却系)について ①非常用炉心冷 失敗等と暴走事故について ③タービン・トリップ発生時のスクラム遅れについて ④スクラム信号系について (エ)ECCS(非常用炉心冷却系)について ①非常用炉心冷却系の流量を定格流量とすることについて ②高圧炉心スプレイ系の故障について ③自動減圧系の不作動の可能性について ④低圧炉心注入系の注入量減少について ⑤非常用ディーゼル発電機の冷却水漏洩事象について (オ)ポンプ,弁の健全性について ①原子炉再循環ポンプメカニカルシールの不具合について ②タービン駆動原子炉給水ポンプ(A)出口逆止弁からの漏洩について ③本件原子力発電所における本件原子炉施設以外の故障について (カ)本件原子力発電所における異常事象と本件安全審査について (キ)TMI事故と本件安全審査について (ク)チェルノブイル事故と本件安全審査について (ケ)運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析の合理性の有無について ①シビアアクシデント(過酷事故)について ②火災事故における安全性について ③JCO事故について (コ)検査能力等の有無について (サ)想定される飛来物に対する設計上の考慮について (シ)燃料体に対する本件各変更許可処分の違法事由について ①現在の設計の9行×9列型燃料の破裂について ②現在の設計の9行×9列型燃料による暴走事故の危険性について (ス)本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA(冷却材喪失事故)解析の合理性の有無について ①臨界流モデルと対流熱伝達について ②下部プレナムフラッシングと炉心入 (ス)本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA(冷却材喪失事故)解析の合理性の有無について ①臨界流モデルと対流熱伝達について ②下部プレナムフラッシングと炉心入口オリフィス部CCFLについて ③シュラウドのひびについて ④熱伝達係数について (セ)プルサーマル計画について エ本件原子炉施設の地質・地盤及び地震に関係する安全対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生- 9 -するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①設計用地震加速度の合理性の有無について ②鉛直地震力の考慮の有無について ③活断層の評価期間の合理性の有無について ④直下地震の想定の有無について (イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①本件原子炉敷地の支持地盤について ②本件原子炉敷地周辺にみられる断層について a柏崎平野における安田層の形成時期について b伏在断層を含む断層 があるか否か。 ①本件原子炉敷地の支持地盤について ②本件原子炉敷地周辺にみられる断層について a柏崎平野における安田層の形成時期について b伏在断層を含む断層活動について c本件原子炉敷地周辺地域の活断層について d寺尾断層について e歴史地震の選定について f日本海東縁プレート境界について g長岡平野西縁断層について h中越地震について ③本件原子炉敷地周辺にみられる断層の評価について a気比ノ宮断層について b常楽寺断層について c真殿坂断層について d新しい松田式について e金井式-シード図について f鳥取県西部地震について ④本件原子炉施設の安全性とスマトラ沖大地震・津波等について オ本件原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)災害評価(立地評価)における全炉心溶融等の想定について (イ)フィルタの信頼性について 第3当裁判所の判断 司法審査のあり方について (1)規制法24条1項各号の違反のうち,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係」する違法は何か。 (2)原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項となるものは何か。 (3)変更許可処分と本件訴訟における審 のうち,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係」する違法は何か。 (2)原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項となるものは何か。 (3)変更許可処分と本件訴訟における審理・判断の対象について本件処分後の本件各変更許可処分の違法事由は本件訴訟における審理・判断の対象となるか否か。 (4)本件処分の専門技術性とその司法審査の方法について (5)控訴人らの主張する温排水の熱的影響,固体廃棄物の最終処分,使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分,廃炉,労働者被ばく並びに防災計画に関する違法事由は,司法審査の対象となるか否か。 ア温排水の熱的影響に関する主張について イ固体廃棄物の最終処分に関する主張について ウ使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分に関する主張について エ廃炉に関する主張について オ労働者被ばくに関する主張について カ防災計画に関する主張について 本件処分の手続的違法性の有無について (1)本件処分の手続について (2)本件安全審査手続における構造的瑕疵の有無について ア安全審査の手続規定に不備,不明確の瑕疵があるか否か。 イ安全審査に係る技術的基準等が不合理,不明確であるか否か。 ウ本件安全審査は,法律上の根拠に基づくものであるか否か。 エ本件安全審査は,いわゆる原子力三原則に違反するか否か。 オ本件安全審査における審査体制が不備であるか否か。 カ部会による安全審査は違法か否か。 キ合同審査による安全審査手続は違法か否か。 ク本件安全審査において審査範囲の限定をしたことは違法か否か。 ケ資料の収集等の審査 による安全審査は違法か否か。 キ合同審査による安全審査手続は違法か否か。 ク本件安全審査において審査範囲の限定をしたことは違法か否か。 ケ資料の収集等の審査方法に違法があるか否か。 コ本件安全審査手続に不公正,不適正があるか否か。 サ安全審査手続について立法の瑕疵があるか否か。 (3)本件安全審査手続における個別的瑕疵について ア原子力委員会委員長の不在の際にその職務代理者が選任されていたか否か。 イ原子力委員会の審査方法等に違法がないか否か。 ウ本件安全審査会における並行審査は違法か否か。 エ安全審査会の出席者は適法か否か。 オ調査委員中心の本件安全審査は違法か否か。 (4)小括 規制法24条1項1号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 規制法24条1項2号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。また,同条1項3号のうち技術的能力に係る部分の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 (1)規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分について (2)規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分について 規制法24条1項4号所定の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 (1)原子炉施設の安全性の意義とその安全審査のあり方をどのように考えるか。 ア規制法24条1項4号の要件適合性審査に対する司法審査のあり方 イ規制法24条1項4号が審査の対象とする原子炉施設の危険性 ウしきい値の存否 エ原 ア規制法24条1項4号の要件適合性審査に対する司法審査のあり方- 13 - イ規制法24条1項4号が審査の対象とする原子炉施設の危険性 ウしきい値の存否 エ原子炉施設の安全性の意義 オ安全審査のあり方 (2)本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策に関する本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ア審査基準に不合理な点があるか否か。 (ア)本件安全審査が基準とした公衆の線量当量限度は不当に高いものであるか否か。 (イ)「線量目標値指針」の線量目標値に合理性があるか否か。 (ウ)「線量目標値指針」及び「線量目標値評価指針」の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被爆線量評価について」の報告書に不合理な点がないか否か。 (エ)小括 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 - 14 - (ア)気体廃棄物の被ばく線量評価について ①間欠放出による気体廃棄物の過少評価の有無について ②放射性ヨウ素の被ばく線量評価の合理性の有無について 粒子状放射性物質の被ばく線量評価の合理性の有無 く線量評価について ①間欠放出による気体廃棄物の過少評価の有無について ②放射性ヨウ素の被ばく線量評価の合理性の有無について 粒子状放射性物質の被ばく線量評価の合理性の有無について③ (イ)液体廃棄物の被ばく評価について 液体廃棄物に関する被ばく評価と原子力発電所による環境汚染の①有無について 洗濯廃液の評価の合理性の有無について ②③機器ドレン廃液の環境流出に関する被ばく線量評価の合理性の有無について ④濃縮係数の合理性の有無について ⑤放出放射性物質の濃度の合理性の有無について ⑥核種組成の合理性の有無について ⑦トリチウムの審査の有無について (ウ)ムラサキツユクサの研究結果と被ばく線量評価の合理性の有無について (エ)放射線管理設備の審査の有無について 小括 (オ)(3)本件原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 - 15 - ア審査基準に不合理な点があるか否か。 (ア)事故防止対策に係る審査基準について ECCS安全評価指針の合理性について (イ)(ウ)小括 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による (イ)(ウ)小括 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)炉心燃料部の健全性の有無について 炉心燃料部材の適格性について ①平常運転時の炉心燃料部の健全性について ②③多発する燃料棒に関する異常事象と対策の遅れの有無について a敦賀原発及び福島第一原発等において発生した燃料棒及び燃料集合体に関する異常事象について b本件原子力発電所において発生したピンホール及びひび割れ等の事象について (a)ピンホール及びひび割れ事象について (b)浸水燃料の事象について (c)燃料棒スペーサのはずれの事象について ④冷却材喪失事故(LOCA)時における炉心燃料部の健全性の有無について a冷却材喪失事故の不可避性について b冷却材喪失事故の解析について - 16 -(a)冷却材喪失事故における燃料棒の異常な挙動について (b)大破断LOCAの危険性の有無について (c)中小破断LOCAの危険性の有無について (イ)圧力バウンダリについて ①圧力容器の中性子による脆化に対する安全性の有無について a中性子照射による圧力容器の脆化について b脆化予測式の合理性と不純物及びニッケル等が中性子の照射脆化に及ぼす影響の有無について c照射速度等の影響の有無について d本件安全審査が準拠した監視試験方法の妥当性の有無について 化予測式の合理性と不純物及びニッケル等が中性子の照射脆化に及ぼす影響の有無について 照射速度等の影響の有無について 本件安全審査が準拠した監視試験方法の妥当性の有無について 応力腐食割れ(SCC)の有無について 疲労破壊,応力集中の有無について 解析による設計の合理性の有無について 使用前検査及び供用期間中検査の合理性の有無について 運転期間(想定寿命)の延長の有無について (ウ)制御棒駆動系について スクラム排出ヘッダー及びスクラム排出制御棒駆動系の信頼性と容器の設計の合理性の有無について スクラム失敗等と暴走事故の有無について タービン・トリップによる暴走事故 制御棒挿入失敗による暴走事故 再循環流量制御系の誤動作による暴走事故 タービン・トリップ発生時のスクラム遅れについて スクラム信号系について (エ)ECCSについて ECCS安全評価指針の適合性の有無について ECCSの有効性の有無について ECCSの不作動,故障等の有無について 非常用炉心冷却系の流量を定格流量とする合理性の有無について 高圧炉心スプレイ系の故障の有無について 自動減圧系の不作動の可能性の有無について 低圧炉心注入系の注入量減少の有無について 非常用ディーゼル発電機の冷却水漏洩事象について (オ)計測制御システムの欠陥の有無について (カ)格納容器の健全性の有無について 事故解析について 隔離弁について 制御棒不挿入事故について オ)計測制御システムの欠陥の有無について (カ)格納容器の健全性の有無について ①事故解析について ②隔離弁について 制御棒不挿入事故について ③④格納容器の容積について (キ)ポンプ,弁等の健全性について ①ポンプ,弁等の健全性の欠如の有無について ②原子炉再循環ポンプメカニカルシールの不具合について ③タービン駆動原子炉給水ポンプ(A)出口逆止弁からの漏洩について ④本件原子力発電所における本件原子炉施設以外のポンプに関する故障について 本件原子力発電所における異常事象等と本件安全審査について(ク) 我が国における本件原発以外の原子力発電所の異常事象例等と本件(ケ)安全審査について ①敦賀原発1号機における事象例等 ②福島第二原発3号機における事象例 ③美浜原発2号機における事象例 (コ)TMI事故と本件安全審査について ①TMI事故の経過等について ②TMI事故の原因等について ③TMI事故と本件安全審査 (サ)チェルノブイル事故と本件安全審査について チェルノブイル事故の経過 ①②チェルノブイル事故と本件安全審査 (シ)運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析の合理性の有無について ①事象選定等について ②シビアアクシデント(過酷事故)について ③火災事故における安全性の有無について ④JCO事故と本件安全審査について (ス)検査能力等の有無について (セ)想定される飛来物に対する設計上の考慮の有無について (ソ)燃料体に対する本件各変更許可処分の違法 JCO事故と本件安全審査について (ス)検査能力等の有無について (セ)想定される飛来物に対する設計上の考慮の有無について (ソ)燃料体に対する本件各変更許可処分の違法事由の有無について - 19 -①現在の設計の9行×9列型燃料の破裂の有無について ②現在の設計の9行×9列型燃料による暴走事故の有無について (タ)本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA(冷却材喪失事故)解析の合理性の有無について ①臨界流モデルと対流熱伝達について ②下部プレナムフラッシングと炉心入口オリフィス部CCFLについて ③シュラウドのひびについて ④熱伝達係数について (チ)プルサーマル計画と本件安全審査について (ツ)小括 (4)本件原子炉施設の地質・地盤及び地震に関係する安全対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ア審査基準に不合理な点があるか否か。 (ア)地質・地盤及び地震に関係する安全対策に係る審査基準について (イ)設計用地震加速度の合理性の有無について - 20 -(ウ)鉛直地震力の考慮の有無について (エ)活断層の評価期間の合理性の有無について (オ)直下地震の想定の有無について (カ)小 性の有無について 鉛直地震力の考慮の有無について 活断層の評価期間の合理性の有無について 直下地震の想定の有無について 小括 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し、その基本設計において、本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が、同施設における大事故の誘因とならず、安全性を確保でき、原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるか否か。 本件原子炉敷地の支持地盤の安定性の有無について 活発な地殻変動の存在について 本件原子炉施設の支持地盤について 本件原子炉施設の敷地周辺に見られる断層の活動の有無について 柏崎平野における安田層の形成時期について 伏在断層を含む断層活動について 柏崎平野の安田層、番神砂層堆積後の断層活動について 複数断層の一斉活動について 本件原子炉敷地周辺地域の活断層について 試掘坑に見られる断層 α、β断層及び真殿坂断層の活動性について 滝谷の断層について 本件原子炉敷地内外の安田層や番神砂層を切る断層について 本件原子力発電所5号機直下の断層の活動性について 東側道路法面の断層の性質について 寺尾断層について 歴史地震の選定について 日本海東縁プレート境界について 長岡平野西縁断層について 長岡平野西縁断層の活動について 長岡平野西縁断層帯と日本海東縁プレート境界について ⑥日本海東縁プレート境界について ⑦長岡平野西縁断層について a長岡平野西縁断層の活動について b長岡平野西縁断層帯と日本海東縁プレート境界について ⑧中越地震について a本件原子炉施設の地震観測記録における地震規模と最大加速度について b中越地震の観測地が原子炉施設毎に異なることについて c本件原子力発電所7号機の原子炉自動停止について d本件原子力発電所の設計用地震動の最大加速度値について (ウ)本件原子炉施設の敷地周辺に存在すると推定される主な断層の評価の合理性の有無について ①リニアメントについて ②気比ノ宮断層の延長距離について ③常楽寺断層(中央丘陵西縁部断層)について ④真殿坂断層について ⑤椎谷断層について ⑥新しい松田式について ⑦金井式-シード図について ⑧鳥取県西部地震について (エ)本件原子炉施設の安全性の有無について ①本件原子炉施設の安全性について ②スマトラ沖大地震・津波と本件安全審査について (オ)小括 本件原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ア審査基準に不合理な点があるか否か。 (ア)公衆との離隔に係る審査基準について めやす線量について おける調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ア審査基準に不合理な点があるか否か。 (ア)公衆との離隔に係る審査基準について めやす線量について (イ)(ウ)小括 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 災害評価(立地評価)におけるECCS等の健全性について(ア) 災害評価(立地評価)における全炉心溶融等の想定について(イ) (ウ)フィルタの信頼性について (エ)小括 (6)その他の規制法24条1項4号所定の要件適合性について 第4 結論 主要略語表 別紙1 別紙2 別紙3 別紙4 別紙5 別紙6 別紙7 別紙8 別紙9 別紙10 別紙11 別紙12 別紙13 別紙14 別紙15 別紙16 主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 (以下,本判決においては,別紙主要略語表記載の略語を用いる。ただし,正式の用語を用いる場合もある)。 第1当事者の求める裁判 控訴の趣旨(1)原判決を取り消す。 (2)内閣総理大臣が昭和52年9月1日東京電力株式会社に対してなした柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉設置許可処分を取り消す。 (3)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 控訴の趣旨に対する答 内閣総理大臣が昭和52年9月1日東京電力株式会社に対してなした柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉設置許可処分を取り消す。 (3)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2事案の概要本件は,柏崎・刈羽原子力発電所(本件原子力発電所)の設置場所である新潟県柏崎市,同県刈羽郡ω1又はその周辺に居住する控訴人らが,内閣総理大臣から実用原子炉許可権限を承継した通商産業大臣に対し,内閣総理大臣が昭和52年9月1日付けで東京電力株式会社(東京電力)に対してなした本件原子力発電所の原子炉設置許可処分(本件処分)について,その安全審査に瑕疵があるために違法である等と主張して,本件処分の取消しを求め,これに対し,被控訴人が,本件処分に手続的違法はなく,実体的にも適法であるとして争う事案である。 原審は,控訴人らの本件請求をいずれも棄却したので,これを不服とする控訴人らが控訴した。 なお,昭和53年法律第86号により内閣総理大臣が行った本件処分は通商産業大臣が行ったものとみなされたが,平成11年法律第160号により通商産業大臣が行ったものとみなされた本件処分が,更に被控訴人(経済産業大臣)が行ったものとみなされることとなり,本件訴訟を被控訴人が承継した。 前提となる事実(末尾に証拠等を掲げた事実のほかは,当事者間に争いがない)。 (1)当事者等ア控訴人らは,柏崎・刈羽原子力発電所(本件原子力発電所)1号機(本- 26 -件原子炉)及びその附属施設(以下「本件原子炉施設」という)を設置。 する敷地(以下「本件原子炉敷地」という)周辺から約65㎞までの範。 囲内の新潟県柏崎市,同県刈羽郡ω1又はその周辺の市町村に居住する者である(弁論の全趣旨。 )イ東京電力は,昭和26年5月1日,電気事業・電気機械 原子炉敷地」という)周辺から約65㎞までの範。 囲内の新潟県柏崎市,同県刈羽郡ω1又はその周辺の市町村に居住する者である(弁論の全趣旨。 )イ東京電力は,昭和26年5月1日,電気事業・電気機械器具の製造及び販売等を目的として設立された株式会社であって,電気事業法(昭和39年法律第170号,昭和53年法律第27号による改正前のもの。電事法)所定の一般電気事業者である(乙1ないし3,弁論の全趣旨。 )(2)本件申請と本件原子炉施設の概要ア東京電力による本件原子炉の設置許可申請東京電力は,内閣総理大臣に対し,昭和50年3月20日,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号,同52年法律第80号による改正前のもの。規制法)23条2項に基づき,同日付け柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書(乙1)及び添付書類(乙2)により本件原子炉の設置許可を申請(本件申請)した。 なお,東京電力は,内閣総理大臣に対し,昭和52年7月12日,同日付け「柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書本文及び添付書類の一部補正について」と題する書面(乙3)を提出して本件申請書及び添付書類の一部を補正(以下「本件補正」という)した。 。 イ本件原子炉施設の概要本件補正に係る本件申請の本件原子炉施設の概要は,以下のとおりである(甲224の②ないし⑤,乙1ないし3。 )(ア)原子炉の型式等本件原子炉(基数1)の型式は,濃縮ウラン,軽水減速,軽水冷却型(沸騰水型)であり,熱出力約3300MW(電気出力約110万kW)である。 - 27 -(イ)設置事業所の名称,本件原子炉敷地の位置及び概況等①a設置事業所の名称柏崎・刈羽原子力発電所b同所在地新潟県柏崎市及び刈羽郡ω1②本件原子炉施設の位置,敷地の概況等 27 -(イ)設置事業所の名称,本件原子炉敷地の位置及び概況等①a設置事業所の名称柏崎・刈羽原子力発電所b同所在地新潟県柏崎市及び刈羽郡ω1②本件原子炉施設の位置,敷地の概況等a(a)本件原子炉敷地は,東京の北西方向約220㎞にあって,新潟県の日本海岸のほぼ中央に位置し,同県柏崎市及び刈羽郡ω1にまたがる日本海に面した頂高60m前後のなだらかな丘陵地の地域(面積約420万㎡)であり,本件原子炉敷地両端の凸地とそれらの間に挟まれる凹地からなり,周辺部の丘陵地は松林に覆われているが,中央部の凹地は砂丘不毛地である。その敷地形状は,海岸線方向約3.2㎞,奥行約1.4㎞の汀線を長軸とした半楕円形であって,そのほとんどは山林原野である。 そして,本件原子炉敷地の地質は,新第三紀鮮新世の硬質泥岩の地盤の上に軟質泥岩層及び砂層が分布したものである。 (b)この地方の気候区分は,裏日本気候の雪国に属し,降水量は年間2500㎜前後で,冬に多く夏に少なく,気温の年平均値は約13℃で,海洋に面しているため気温の日変化は比較的少ない。 なお,柏崎農業気象観測所における積雪深さの最大値は,194㎝(1927年(昭和2年)2月13日)である。 (c)本件原子炉敷地周辺の人口は,昭和50年10月当時において,建設地点を中心とする半径30㎞以内で約45万9000人,10㎞以内で約7万3000人,5㎞以内で約1万5000人である。 b本件原子炉施設は,本件原子炉敷地の丘陵を標高5mに造成して建設する計画であり,本件原子炉本体は,本件原子炉敷地中央部南- 28 -側寄りの海岸側に設置され,排気筒はその東側に設置する。復水器冷却用の取水口は,本件原子炉敷地前面に設ける南側防波堤の内側に,また,放水口は南側防波堤の外側に設置する。 なお,信 部南- 28 -側寄りの海岸側に設置され,排気筒はその東側に設置する。復水器冷却用の取水口は,本件原子炉敷地前面に設ける南側防波堤の内側に,また,放水口は南側防波堤の外側に設置する。 なお,信濃川から取水した発電所用水及びタービン建家西側に設けた海水淡水化装置により精製した発電所用水を貯えるための貯水設備は,本件原子炉複合建家東側に設ける。 (ウ)基本的設計方針①平常運転時,発電所周辺の一般公衆及び発電所従業員に対し,規制法等に定められている許容基準を超える放射線被ばくを与えないようにする。さらに,設計に当たっては,発電所周辺の一般公衆に対し,「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針について」(昭和50年5月13日原子力委員会決定。乙12。線量目標値指針)に定められている線量目標値を超える放射線被ばくを与えないように努める。 ②原子炉施設は,設計,製作,建設,試験,検査を通じて信頼性の高いものとし,運転員の誤操作などによる異常状態に対しては,警報により運転員が措置し得るようにするとともに,もしこれらの修正動作がとられない場合にも,原子炉の固有の安全性並びに安全保護系の動作により,重大な事故に発展しないように設計する。 ③燃料から放出される放射性核分裂生成物が発電所周辺に放散されるのを防ぐ防壁を何重にも設け,万一事故が起こった場合にも発電所周辺の一般公衆の安全を確保する。 ④原子炉施設は,地震,台風,降雪,高潮,津波等の自然的事象によっても損なわれることのない構造及び配置とする。 (エ)本件原子炉施設の構造及び設備等①本件原子炉施設は,原子炉,原子炉冷却系,タービン系及び各種の- 29 -安全防護設備等からなるが,原則として剛構造とし,また,原子炉複合建家及び海水機器建家のように重要な建物は,原則として ①本件原子炉施設は,原子炉,原子炉冷却系,タービン系及び各種の- 29 -安全防護設備等からなるが,原則として剛構造とし,また,原子炉複合建家及び海水機器建家のように重要な建物は,原則として直接岩盤で支持し,更に各設備は,原子炉複合建家,タービン建家,海水機器建家等に収納し,建物,構築物については,耐震設計を行い,耐震性を有する構造とする。 ②原子炉本体は,燃料体(燃料集合体,制御材(制御棒,減速材))及び反射材,炉心支持構造物,原子炉圧力容器(以下「圧力容器」ともいう,内部構造物等から構成され,圧力容器の外側には,放射。)線遮蔽体を設ける。 a炉心(a)i炉心の主要寸法は,炉心等価値径約4.8m,炉心有効高さ約3.7mとし,その構造は,多数の燃料集合体及び制御棒を正方格子に配列した円筒状であって,十字形の制御棒は,4本の角型の4体の燃料集合体によって囲まれた配置にする。各燃料集合体は,燃料支持金具により支持し,その荷重は,制御棒案内管を通し圧力容器に伝えられる。 ii燃料集合体周囲のチャンネル・ボックスが冷却材流路を形成し,冷却材は,これを炉心下方から上方向に流れる。そして,発生した蒸気は,気水分離器及び蒸気乾燥器を通って主蒸気管へ出て行く構造である。 iii燃料の取替は,炉心の反応度低下に応じて行い,通常,年1回約1/4ずつ行う。 (b)i燃料集合体の個数は764とし,初装荷炉心ウラン235)。 (約3.2t,取替炉心ウラン235(約2.6t)とするii最大過剰増倍率は,約0.14Δkとし,停止余裕として,最大価値を有する制御棒が1本未挿入の状態であっても,常に- 30 -炉心を臨界未満にできることとする。 また,全挿入の位置から引抜く場合の制御棒の価値は,それが落下しても原子炉冷却材圧力バウ ,最大価値を有する制御棒が1本未挿入の状態であっても,常に- 30 -炉心を臨界未満にできることとする。 また,全挿入の位置から引抜く場合の制御棒の価値は,それが落下しても原子炉冷却材圧力バウンダリに損傷を与えないようにし,このため引抜く制御棒の最大値は0.015Δk以下とする。 そして,ボイド反応度係数及びドップラー反応度係数は,負となるように設計する。 (c)通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時に,燃料被覆管の加熱及び過度の歪が生じないことを目的として,通常時の熱的制限値を次のとおり設定する。 i限界出力比第1サイクルより第3サイクル末期までの期間及び第4サイクル以降の各サイクルについて,サイクル初期から,サイクル末期よりさかのぼって炉心平均燃焼度で1000MWd/t手前までの期間においては1.19,それ以外の期間においては1.26とする。 ii燃料棒最大線出力密度44.0kW/mb燃料体(a)i燃料体の燃料材の種類は,二酸化ウラン焼結研磨ペレット(一部ガドリニアを含む)とし,初装荷燃料集合体平均濃縮。 度は約2.2wt%,取替燃料集合体平均濃縮度は約2.7wt%,ペレットの初期密度は理論密度の約95%とする。 ii被覆材の種類は,ジルカロイ2(ジルカロイ-2製)とする。 本件原子炉に使用される燃料被覆管は,外径が12.5㎜,燃料棒有効長が3.71m,燃料被覆管厚が0.86㎜,燃料ペレットとの間隔が0.23㎜であり,燃料ペレットの大きさ- 31 -は,直径が10.6㎜,高さが11㎜である。 (b)i燃料要素(燃料棒)の主要寸法は,外径約13㎜,有効長さ約3.7m,被覆材厚さ約0.9㎜とし,円筒形被覆管に二酸化ウラン・ペレット(一部ガドリニアを含む)を挿入し,両。 端を密封した構造とする。 ii燃料集 料棒)の主要寸法は,外径約13㎜,有効長さ約3.7m,被覆材厚さ約0.9㎜とし,円筒形被覆管に二酸化ウラン・ペレット(一部ガドリニアを含む)を挿入し,両。 端を密封した構造とする。 ii燃料集合体の主要仕様は,燃料集合体における燃料棒配列8行×8列型,燃料棒ピッチ約16㎜,燃料集合体当たりの燃料棒数63本,燃料集合体当たりのウォータロッド数1本であり,63本の燃料棒と1本のウォータロッドを8行8列の正方形に配列し,上端及び下端にタイ・プレートを取付ける。 そして,燃料集合体には,外側にチャンネル・ボックスを取付け,冷却材流路を構成し,各燃料棒の間隔は,ウォータロッドで上下方向を固定された7個のスペーサにより一定に保たれるような構造とする。 なお,ウォータロッドには,燃料ペレットは装荷されず,その上部及び下部の側面に穴が開けられ,内部を冷却材が通過することとし,また,チャンネル・ボックスは,燃料集合体の冷却材流路を定めるほか,制御棒作動のガイド及び制御棒駆動時に燃料との機械的干渉を防ぐ役割を果たすものである。 iii燃料集合体最高燃焼度約40,000MWd/tc減速材及び反射材の種類軽水d圧力容器(a)i圧力容器の主要寸法は,胴部内径約6.4m,全高(内のり)約22m,肉厚約160㎜とし,円筒形の胴部に半球形の底部を付した鋼製容器に,半球形の鋼製上部蓋をボルト締めす- 32 -る構造であり,給水入口ノズルなどを取付ける。 ii主要ノズル位置は,次のとおりである。 再循環水出口ノズル胴下部2箇所再循環水入口ノズル胴下部10箇所主蒸気出口ノズル胴上部4箇所給水入口ノズル胴中央部6箇所iii圧力容器の下部は,円筒スカート支持とし,その上部は,横振防止機構で原子炉遮蔽壁及びドライウェルを経てドライウ 部10箇所主蒸気出口ノズル胴上部4箇所給水入口ノズル胴中央部6箇所iii圧力容器の下部は,円筒スカート支持とし,その上部は,横振防止機構で原子炉遮蔽壁及びドライウェルを経てドライウェル外周の壁で支持する。 iv圧力容器の最低使用温度は,脆性遷移温度より33℃以上高くし,また,中性子照射による脆性遷移温度の変化を監視するため,圧力容器内に試験片を挿入する。 (b)圧力容器の最高使用圧力は87.9㎏/cm,最高使用温度 は302℃である。 e放射線遮蔽体の構造主要な放射線遮蔽体は,圧力容器周囲のコンクリート壁及び原子炉格納容器(以下「格納容器」ともいう)外周の壁であり,本件。 原子炉敷地周辺の一般公衆及び本件原子力発電所従業員が受けると予想される放射線被ばく線量が規制法等所定の許容線量を十分下回るよう遮蔽設計を行う。 ③原子炉冷却系統施設の構造等a一次冷却設備(a)冷却材の種類軽水(b)主要な機器等の構造原子炉冷却系は,圧力容器へ冷却材を補給する復水・給水系,- 33 -冷却材を循環させる冷却材再循環系,圧力容器内で発生した蒸気をタービンへ送る主蒸気系,蒸気タービン,復水器などからなる。 再循環ループは,再循環ポンプ及び圧力容器内に設けられたジェット・ポンプにより,冷却材を原子炉内に循環させて炉心の熱除去を行う。炉心で発生した蒸気は,圧力容器内の気水分離器及び蒸気乾燥器を経た後,主蒸気管でタービンに導く。そして,タービンを出た蒸気は,復水器で復水し,復水は,復水ポンプ,復水浄化系及び給水加熱器を通り,給水ポンプにより給水として原子炉に戻し,更に主蒸気管には,タービン・バイパス系を設け,蒸気を復水器へバイパスできるようにする。 なお,復水器冷却用海水及び補機冷却用海水の取水量は,約78m/s 給水ポンプにより給水として原子炉に戻し,更に主蒸気管には,タービン・バイパス系を設け,蒸気を復水器へバイパスできるようにする。 なお,復水器冷却用海水及び補機冷却用海水の取水量は,約78m/sであり,敷地前面に築造する防波堤内側から取水され, 復水器及び補機冷却水系統等を通過した冷却水は,放水管及び放水路蓋渠を経て防波堤外の放水口より放出される。 b二次冷却設備なしc非常用冷却設備(a)冷却材の種類軽水(b)主要な機器等の構造非常用冷却設備(非常用炉心冷却系)は,工学的安全施設の一設備であって,低圧炉心スプレイ系,低圧注水系,高圧炉心スプレイ系及び自動減圧系から構成する。これらの各系統は,外部電源喪失時にも非常用電源を電源として復水貯蔵タンク又はサプレッション・プールの水を炉内に注入し,又は原子炉蒸気をサプレッション・プールに逃がし,原子炉圧力をすみやかに低下させる- 34 -などにより,非常用冷却設備としての多重の機能を持つ構造とする。 dその他平常運転時の原子炉冷却材中のヨウ素131の濃度を0.5マイクロキュリー/cm以下に管理する。 ④計測制御系統施設の構造等a計装(a)核計装については,中性子束は次の三つの領域に分けて原子炉内で計測する。 i中性子源領域:可動形核分裂計数管方式モニター4チャンネルii中間領域:可動形核分裂電離箱方式モニター8チャンネルiii出力領域:小形核分裂電離箱方式モニター172チャンネル(b)その他原子炉施設のプロセス計測制御のため,原子炉水位,原子炉圧力,冷却材再循環流量,給水流量,主蒸気流量,制御棒駆動水圧などの計測装置を設ける。 b安全保護回路安全保護回路は,原子炉スクラム,制御棒引抜きインターロック,警報及びその他の保護動作(非常 圧力,冷却材再循環流量,給水流量,主蒸気流量,制御棒駆動水圧などの計測装置を設ける。 b安全保護回路安全保護回路は,原子炉スクラム,制御棒引抜きインターロック,警報及びその他の保護動作(非常用炉心冷却系起動などを含む)。 を行わせる機能を有している。 (a)原子炉停止回路の種類原子炉停止回路には,次の条件により原子炉をスクラムさせるため,2重(2チャンネル)の「1outof2」方式の- 35 -回路を設け,2チャンネル同時動作によってスクラムする。 原子炉圧力高原子炉水位高ドライウェル圧力高中性子束高(中間及び出力領域モニター)中性子計装動作不能(中間及び出力領域モニター)スクラム・ディスチャージ・ボリューム水位高主蒸気隔離弁閉タービン主蒸気止め弁閉タービン蒸気加減弁急速閉主蒸気管放射能高地震加速度大手動モード・スイッチ「停止」所内電源喪失(原子炉緊急停止系用MGセット電源喪失)電気油圧式制御装置(EHC)油圧低(b)その他安全補助回路,制御棒引抜阻止回路及び警報回路等を設ける。 c制御設備(a)制御材の個数及び構造原子炉の反応度制御は,制御棒の位置調整により行い,その後備として非常用制御設備であるホウ酸水注入設備を設ける。 原子炉の出力制御は,制御棒の位置調整及び再循環流量制御の2方式により行う。 i制御棒個数 ii中性子吸収材ホウ素(ボロン・カーバイド粉末)- 36 -iii制御棒の構造制御棒は,中性子吸収材を充填したステンレス鋼管(中性子吸収棒)をステンレス鋼製のU字形シースで十字形に組み合わせたもので,その下端に制御棒落下速度リミッタがある。落下速度リミッタは,制御棒が万一落下した場合でも,その落下速度を0.95m/s以下に制限するようにしている。各制御棒は,4 で十字形に組み合わせたもので,その下端に制御棒落下速度リミッタがある。落下速度リミッタは,制御棒が万一落下した場合でも,その落下速度を0.95m/s以下に制限するようにしている。各制御棒は,4体の燃料集合体の中央に,炉心全体にわたって一様に配置する。なお,中性子吸収材部分の長さは,約3.6mである。 (b)制御棒駆動設備の構造等制御棒駆動装置は,制御棒の位置を調整するために設ける。 i個数 ii構造及び駆動方式駆動方式(通常時及びスクラム時)は,ラッチ付き水圧ピストン・シリンダ方式である。 通常駆動時の駆動源は,制御棒駆動水ポンプにより加圧された駆動水であり,スクラム時の駆動源は,アキュームレータの高圧窒素により加圧された駆動水及び通常の原子炉運転圧力により加圧された原子炉冷却材であり,制御棒駆動水ポンプは各駆動機構に共用である。 iii取付箇所圧力容器底部iv挿入時間及び駆動時間スクラム時挿入時間(全炉心平均)全ストロークの90%挿入まで3.5秒以下v反応度制御能力反応度制御能力約0.18Δk制御棒が1本抜けている時の停止余裕は,実効増倍率として,- 37 -keff<1である。 d非常用制御設備(a)制御材の個数及び構造非常用制御設備として,ホウ酸水注入系を設ける。この系は,制御棒挿入による原子炉停止が不能になった場合,手動で中性子を吸収するホウ素(五ホウ酸ナトリウム溶液)を原子炉内に注入するものである。 系統数 中性子吸収材ホウ素(五ホウ酸ナトリウム溶液)(b)主要な機器の構造等ポンプ台数2台(内1台は予備)ポンプ容量約10m/h/台 ポンプ揚程約860m(c)反応度制御能力この系は,全制御棒が挿入不能の場合でも原子炉を冷態停止する能力を持っている。 停止時 プ台数2台(内1台は予備)ポンプ容量約10m/h/台 ポンプ揚程約860m(c)反応度制御能力この系は,全制御棒が挿入不能の場合でも原子炉を冷態停止する能力を持っている。 停止時実効倍率keff<0.95反応度添加速度0.001Δk/㎜/台以上(d)その他制御棒価値ミニマイザ,再循環流量制御,圧力制御装置等を設け,中央制御室の集中的監視と制御等を行う。 ⑤原子炉格納施設の構造等a構造原子炉格納施設は,格納容器と原子炉建家並びにそれらの補助系で構成する。 格納容器は,円錐台形のドライウェル及び円筒形のサプレッショ- 38 -ン・チェンバよりなる圧力抑制形であり,その基礎は直接岩盤で支持する。 形式圧力抑制形形状ドライウェル円錐台形サプレッション・チェンバ円筒形材料炭素鋼寸法円錐頂部直径約10mダイアフラム部直径約25m円筒部直径約26m全高約47m主要貫通部配管貫通部,電気配線貫通部,機器搬入用ハッチ,所員用エア・ロック等b設計圧力及び設計温度並びに漏洩率設計圧力2.85㎏/cm g設計温度ドライウェル171℃サプレッション・チェンバ104℃漏洩率格納容器内空間部容積の0.5%/d以下(常温,空気,設計圧力において)cその他格納容器内ガス濃度制御系,格納容器スプレイ冷却系,原子炉建家,原子炉建家内ガス処理系,原子炉建家常用換気系等を設ける。 ⑥その他の本件原子炉施設の設備等a非常用電源設備を設ける。 b本件原子炉施設の発電所用水を確保するため,信濃川からの取水のほか,約1000m/dの海水淡水化装置を設け,得られた淡 - 39 -水は貯水設備に貯える。 ⑦使用済燃料の処分方法使用済燃料は,動力炉・核燃料開発事業団又は我が国が原子 濃川からの取水のほか,約1000m/dの海水淡水化装置を設け,得られた淡 - 39 -水は貯水設備に貯える。 ⑦使用済燃料の処分方法使用済燃料は,動力炉・核燃料開発事業団又は我が国が原子力の平和利用に関する協力のための協定を締結している国の再処理業者において再処理を行うこととするが,国内における再処理施設の能力に余力がある場合には,国内の再処理業者に優先的に委託することとする。 海外において,再処理を行う場合には,これによって得られるプルトニウムは国内に持ち帰ることとし,また,再処理によって得られるプルトニウムを海外に移転しようとするときは,政府の承認を受けることとする。 (3)発電用原子炉の仕組みと原子炉施設の潜在的危険性等ア発電用原子炉の仕組み(ア)原子炉の原理原子炉で作られたエネルギーを直接に電力に変える直接発電などが将来の方式として提案されているが,現在の原子力発電の仕組みは,原理的には,火力発電におけるボイラーを原子炉に置き換えたものであって,燃料としてウランを用い,まずウラン235の起こす核分裂の際に放出されるエネルギーを熱に変え,その熱で高温の水蒸気を作り,その蒸気の力でタービンを回転させて電気を起こすという点では,火力発電と全く同じである。 発電用原子炉は,核分裂反応を制御しつつ継続的に起こさせることにより,タービンを回転させるのに必要な熱エネルギーを発生させるための装置である。その中心部,すなわち炉心は,核分裂反応を起こして熱を発生させる核燃料,核燃料物質によって新たに発生する高速の中性子を次の核分裂を起こしやすい状態にまで減速させるための減速材,発生した熱を取り出すための冷却材,核燃料の核分裂反応を制御するための- 40 -制御棒等から成り立っている。 発電用原子炉のうち,軽水型原子炉は,上 起こしやすい状態にまで減速させるための減速材,発生した熱を取り出すための冷却材,核燃料の核分裂反応を制御するための- 40 -制御棒等から成り立っている。 発電用原子炉のうち,軽水型原子炉は,上記減速材及び冷却材の両者の役割を果たすものとして,普通の水(軽水)を用いるものである。この軽水型原子炉には,原子炉内で直接蒸気を発生させ,これをタービンに送って発電する型(沸騰水型原子炉・BWR)と,高圧をかけることによって原子炉内では冷却材を沸騰させることなく,高温の水のまま蒸気発生器に導いて,そこで蒸気を発生させ,これをタービンに送って発電する型(加圧水型原子炉・PWR)とがある。 (甲1,2,310ないし313,乙9,16ないし19)(イ)沸騰水型原子炉(BWR)本件原子炉は,上記(2)イのとおり沸騰水型原子炉であるが,概略別紙1のとおりであり,本件申請に係る原子炉に用いる核燃料には,中性子が当たると核分裂反応を起こすウラン235を数パーセント含む二酸化ウランをペレット状に焼き固めたものが使用される。この燃料ペレットは,両端を密封されたジルコニウム合金であるジルカロイ-2製の被覆管の中に縦に積み重ねられて燃料棒を構成し,その燃料棒はまとめられて一つの燃料集合体を形成しており,この燃料集合体数百体(本件原子炉の本件処分時の燃料集合体の個数は764)で炉心を構成している。 また,制御材としては,その内部に中性子を吸収する中性子吸収材が詰められている棒状の制御棒が使用されており,この制御棒を出し入れすることによって炉内の中性子数を調整して核分裂反応を制御している。 燃料ペレット,燃料棒,燃料集合体,制御棒の構造は概略別紙2のとおりである。これら燃料集合体及び制御棒は,高温,高圧に耐え得る鋼鉄製の圧力容器に収められており,圧力容器の構造は概 応を制御している。 燃料ペレット,燃料棒,燃料集合体,制御棒の構造は概略別紙2のとおりである。これら燃料集合体及び制御棒は,高温,高圧に耐え得る鋼鉄製の圧力容器に収められており,圧力容器の構造は概略別紙3のとおりである。 そして,圧力容器には,冷却材と減速材を兼ねる水が入れられており,- 41 -この水は,核分裂反応によって生じた熱によって高温の蒸気となり,その蒸気は主蒸気管を通ってタービンに送られる。そして,この蒸気は,タービンにおいて,その熱エネルギーの一部が機械的回転エネルギーに変換され,タービンに結合された発電機により発電を行う。タービンを回転させた蒸気は,復水器で海水により冷却されて水となり,この水が給水管を通って圧力容器に戻され,そこで再び高温の蒸気となってタービンを回転させる。 また,圧力容器に冷却材再循環系設備を接続させ,炉心を循環する冷却水の一部を強制的に再循環させるとともにその循環流量を調整することにより,発生する蒸気量すなわち出力を制御している。このように,圧力容器内で発生した蒸気がタービン,復水器を経て水となり,再び圧力容器に戻ってくる冷却水の循環経路を構成する設備及び上記冷却材再循環系設備を原子炉冷却系統設備という。そして,圧力バウンダリは,圧力容器及び原子炉冷却系統設備の一部であって,平常運転時には冷却材を内包し,異常時には隔離弁によって他の部分と隔離し,圧力障壁を形成する範囲の施設をいう。 (甲1,乙1ないし3,14,16ないし19,原審における証人P1の証言,弁論の全趣旨)イ原子炉施設の潜在的危険性(ア)原子炉施設の潜在的危険性と安全性の確保本件原子炉施設は,ウランの核分裂反応を制御しつつ継続的に起こさせることにより,タービンを回転させるのに必要な熱エネルギーを発生させるための装置であって ア)原子炉施設の潜在的危険性と安全性の確保本件原子炉施設は,ウランの核分裂反応を制御しつつ継続的に起こさせることにより,タービンを回転させるのに必要な熱エネルギーを発生させるための装置であって,内蔵するエネルギーが莫大であるから,その安全性確保のためには,核分裂生成物を含む放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させないよう放射性物質を確実に管理することが基本方針となり,原子力の利用によって生ずる放射線・放射能等の影響,環- 42 -境汚染及び災害などに対する安全対策を立てることができるか否かにかかっている(甲1,2,9,31ないし33,37,38,105,116,乙1ないし4,7ないし20,78,91,94,95,111,129ないし131,136,140,141,原審における証人P2,同P3,同P4,同P1,同P5の各証言,弁論の全趣旨。 )(イ)放射線とその影響①すべての原子の原子核は,陽子と中性子の組み合わせでできており,原子核が変化するときに放射線を放射する現象を放射能といい,放射能を持った物質が放射性物質である。天然に存在する元素のうちで原子番号が84以上のものはすべて放射性物質である。 ②放射線には,アルファ線,ベータ線,中性子線等の粒子線と,ガンマ線,エックス線のような波長の非常に短い電磁波とがある。 そして,粒子線のうち,アルファ線は,物質との相互作用が大きいため,透過力が極めて小さく,空気中でも数センチメートル程度しか透過できず,薄い紙1枚でも遮蔽することができる。しかし,短い距離で停止するということは,この短い距離の間にある物質に全部のエネルギーを与えるということであるから,同じ距離の中で物質を電離するというような作用は,他の放射線に比べてはるかに大きい。また,ベータ線は,透過力はアルファ線よりもか い距離の間にある物質に全部のエネルギーを与えるということであるから,同じ距離の中で物質を電離するというような作用は,他の放射線に比べてはるかに大きい。また,ベータ線は,透過力はアルファ線よりもかなり大きいが,空気中で数十センチメートルないし数メートルしか透過できず,数ミリメートルないし1㎝程度の厚さのアルミニウムやプラスチックの板で遮蔽することができる。 さらに,中性子線は,低速度のものは透過力が小さく,高速度のものはかなり透過力が大きいが,これを水のような水素を大量に含む物質中に通し,質量のほぼ等しい水素の原子核と衝突させて減速させることなどにより,遮蔽することができる。 - 43 -放射線のうち,ガンマ線やエックス線のような電磁波は,物質との相互作用が極めて小さいため,透過力が非常に大きく,これを遮蔽するには一般には厚い鉛板やコンクリート壁が必要である。 放射性物質から放出される放射線の量は,時間の経過とともに減速するが,減速速度は放射性物質の種類(核種)により異なる。放射性物質は,天然にも存在するが,人工的にも生成され,原子炉内において種々の核種の放射性物質が生成される。 ③放射線は,人を含む生物の組織に対して励起ないし電離作用を及ぼすが,人はこれを五感により感ずることができない。放射線の被ばくには,人体の外部に存在する放射性物質により被ばくする外部被ばくと,何らかの経路で環境に放出された放射性物質を摂取し,人体内部から被ばくする内部被ばくとがある。外部被ばくの場合,アルファ線及びベータ線によっては体内器官はほとんど被ばくしないが,ガンマ線によっては身体内部も含め,全身がほぼ均等に被ばくする。これに対し,内部被ばくの場合,アルファ線及びベータ線によって体内器官に集中被ばくが起こる。 ④自然界には,宇宙線,地殻を構成して ,ガンマ線によっては身体内部も含め,全身がほぼ均等に被ばくする。これに対し,内部被ばくの場合,アルファ線及びベータ線によって体内器官に集中被ばくが起こる。 ④自然界には,宇宙線,地殻を構成している花崗岩,石灰岩,粘土に含まれる放射性物質及び人が摂取する飲食物に含まれる放射性物質等様々な起源に由来する放射線が存在し,人類はこれら自然界からの放射線を絶えず被ばくし続けている。 自然放射線による1人当たりの被ばく線量は,地域によってかなりの差異がある。人は,1人当たり平均して1年間で約2.4ミリシーベルトの自然放射線を受けている。その内訳は,宇宙線などの空間から飛来してくるもの0.39ミリシーベルト,土壌から放出されるもの0.48ミリシーベルト,日常摂取する食物を通じ体内から照射されるもの0.29ミリシーベルト,それに空気中のラドンなどの吸入- 44 -により1.26ミリシーベルトである(国際連合放射線影響科学委員会(UNSCEAR・UnitedNationsScientificCommitteeontheEffectsofAtomicRadiation)の2000年版レポート。また,)我が国では,最も少ない神奈川県では年間0.81ミリシーベルト(0.081レム,最も大きい岐阜県では年間1.19ミリシーベ)ルト(0.119レム)と年間約0.38ミリシーベルト(0.038レム)の差があり,更に九州と関東との間には年間0.2ミリシーベルト(0.02レム)程度の差がある。また,海外では,ブラジルのガラパリ地方では,年間約10ミリシーベルト(1レム)の自然放射線を受けているなど,地質等によりその場所ごとの自然放射線が異なっている。 ⑤人の放射線被ばくによる障害としては,放射線を被ばくした個人に現れる身体的障害と,その リシーベルト(1レム)の自然放射線を受けているなど,地質等によりその場所ごとの自然放射線が異なっている。 ⑤人の放射線被ばくによる障害としては,放射線を被ばくした個人に現れる身体的障害と,その個人の子孫に現れる遺伝的障害とに分けられ,身体的障害は,更に,被ばく後余り長くない時期,すなわち通常2,3週間以内に現れる急性障害と,かなり長い潜伏期間を経て現れる晩発性障害とがある。 急性障害は,短期間に高線量の放射線を被ばくした場合に初めて生じるものであって,被ばく線量や被ばく部位によっても異なるが,吐き気,倦怠感,下痢に始まり白血球減少,脱毛,発疹,水泡,急性潰瘍等の症状を引き起こし,極端な高線量被ばくの場合には死に至ることもある。すなわち,急激に高線量の放射線を全身に被ばくし,何らの医療措置を受けない場合には,1万ラド以上では,中枢神経の障害のためごく短期間のうちに死に至り,400ラド程度では,主として造血組織の障害のため,被ばくした人の半数が30日以内に死亡し,50ないし75ラド程度では,白血球の一時的な減少が起こるが,25ラド以下では,臨床症状はほとんど発生しないといわれている。 - 45 -晩発性障害は,短期間に高線量の放射線を被ばくしたときだけではなく,比較的低線量の放射線を長期間被ばくすることによっても発生することもあり得ると考えられており,その症状としては,白血病その他の癌,白内障等がある。 遺伝的障害は生殖細胞の中にある遺伝子や染色体が,物理的,科学的その他種々の要因により突然変異あるいは異常を起こし,それが子孫に伝えられて生じるものであり,生殖腺が放射線を被ばくした場合には,その放射線も上記突然変異あるいは異常を起こす要因の一つになる可能性があるとされている。 放射線被ばくによる障害は,一般に,ガンマ線,エックス線 生じるものであり,生殖腺が放射線を被ばくした場合には,その放射線も上記突然変異あるいは異常を起こす要因の一つになる可能性があるとされている。 放射線被ばくによる障害は,一般に,ガンマ線,エックス線等の放射線による被ばく線量の総量が同じであっても,その線量を被ばくした期間が長ければ長いほどその影響は小さい。 ウICRP(国際放射線防護委員会)等について(ア)ICRPは,1928年(昭和3年)に第2回国際放射線医学会議(ICR)において,国際X線・ラジウム防護委員会の名称で設立され,その後,1950年(昭和25年)に組織改正及び改称がなされ,現在に至っている。 ICRPについては,委員長及び12名の委員で構成され,その委員は,国際放射線医学会議への各国の代表団及びICRP自身によってICRPに提出された被指名者の中から,ICRPが選出するものとされている。そして,同委員は,国籍によってではなく,専門分野の適切な均衡を考え,放射線医学,放射線防護学,保健物理学,生物学,遺伝学,生物化学及び生物物理学の各領域における著明な業績に基づいて選出されている。また,ICRPは,専門委員会を置くことができ,更に,専門委員でない専門家にも臨時の作業グループとして協力を求めることができるものとされている。 - 46 -ICRPの活動としては,その姉妹委員会である国際放射線単位・測定委員会との密接な連携のもとに作業を行い,また,世界保健機関(WHO)及び国際原子力機関(IAEA)と公的な関係を有し,国際連合放射線影響科学委員会(UNSCEAR,国際連合環境プロ)グラム,欧州協同体委員会,経済協力開発機構原子力機関,国際標準化機構,国際電気標準会議,国際放射線防護学会等とも重要な関係を保っている。 ICRPの方針は,適切な放射線防護方策の基礎となる ロ)グラム,欧州協同体委員会,経済協力開発機構原子力機関,国際標準化機構,国際電気標準会議,国際放射線防護学会等とも重要な関係を保っている。 ICRPの方針は,適切な放射線防護方策の基礎となる基本原則を考えることにあり,その採択に係る勧告は,各国において放射線防護を実施に移す責任を持つ専門家に指針を与えようとするものであって,発足以来,放射線防護に関し数々の勧告を行ってきた。 (イ)我が国においては,原子力発電所における周辺監視区域(人の居住を禁止し,かつ,業務上立ち入る者以外の立ち入りを制限する区域。 原子炉規則1条7号,7条3号)外の許容被ばく線量,すなわち公衆の許容被ばく線量については,許容被曝線量等を定める件(昭和35年9月30日科学技術庁告示第21号,昭和53年12月28日同庁告示第12号による改正前のもの。許容線量等を定める件)2条により年間0.5レムと定められていたが,これは,ICRPの1958年(昭和33年)採択の被ばく線量限度に関する勧告を尊重し定められていたものである。 (ウ)放射線の量を表す方法としては,物質が吸収するエネルギーの量を基準にする場合には,吸収線量といい,単位としてはラド(rad)を用い,これに対し,人体に対する影響を基準にする場合は線量当量といい,単位としてレム(rem)を用い,レムの値は,吸収線量(ラド)の値に放射線の性質によるちがいを表す数値である線質係数を乗じたものであった。 - 47 -そして,ICRPは,1977年(昭和52年)採択の勧告(甲119の①,乙46の①ないし⑦)から,レムに替わる放射線防護・放射線管理のための単位として,シーベルト(Sv。1Sv=100rem)を,また,ラドに替わる新しい単位としてグレイ(Gy。Gy=100rad)を用いるようになった。さらに「許容 替わる放射線防護・放射線管理のための単位として,シーベルト(Sv。1Sv=100rem)を,また,ラドに替わる新しい単位としてグレイ(Gy。Gy=100rad)を用いるようになった。さらに「許容線量」は,,ICRPの1965年(昭和40年)採択の勧告以後において「容認できる線量」の用語として用いられていたが,上記1977年採択の勧告から,放射線が人体に及ぼす「非確率的影響を防止し,確率的影響の発生確率を容認できるレベルに制限する」という放射線防護の目標を達成するために,線量制限体系の要素として「線量当量限度」を用いるとともに,その単位としてシーベルトを使用するようになり,我が国も昭和63年より「許容被ばく線量」に替わり「線量当量限度」が使われている。 (甲1,118,119の①,157,167の①②,181,乙8,9,16,18,21,22,26,204,46の①ないし⑦,48,59の①ないし④,60の①ないし④,61の①ないし③,62の①ないし⑤,63の①ないし④,118,121,原審における証人P2,同P5及び同P3の各証言,弁論の全趣旨)(4)原子力委員会と原子炉安全専門審査会ア本件申請を受けた内閣総理大臣は,原子力委員会委員長に対し,昭和50年4月1日,規制法24条2項に基づき,同日付け「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置について(諮問」と題する書面)(甲57の②)により東京電力の本件申請につき同条1項各号所定の許可の基準の適用について原子力委員会の意見を求めた。なお,内閣総理大臣は,原子力委員会委員長に対し,昭和52年7月19日,同日付け「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置許可申請書の一部補- 48 -正について(通知」と題する書面(甲92の③)により本件補正を通知) 長に対し,昭和52年7月19日,同日付け「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置許可申請書の一部補- 48 -正について(通知」と題する書面(甲92の③)により本件補正を通知)した。 イ原子力委員会は,本件申請当時,委員長及び委員6人をもって組織され(原子力委員会設置法(昭和30年法律第188号,昭和53年法律第86号による改正前のもの。設置法)6条1項,委員長は科学技術庁長官)たる国務大臣をもって充てられ(同法7条1項,委員は両議院の同意を)得て,内閣総理大臣が任命するものであるが(同法8条1項,委員長が)招集して(設置法11条1項,会議を開き,議決をするには委員長及び)3人以上の委員の出席を必要とするものであり(同条2項,委員会の議)事は,出席者の過半数で決し,可否同数のときは,委員長の決するところによる(同条3項。また,原子力委員会の会議には,毎週1回開かれる)定例会議のほか,必要に応じて開かれる臨時会議がある(原子力委員会設置法施行令(昭和31年政令第4号,昭和53年9月28日政令第336号による改正前のもの。設置法施行令)1条1項,原子力委員会議事運営規則(昭和32年2月28日原子力委員会決定,昭和40年3月3日同委員会決定による改正後のもの)2条。 )(顕著な事実)ウ(ア)原子力委員会は,本件申請当時,その職務を的確に遂行していくため,同委員会に,原子炉に係る安全性に関する事項を調査審議するための原子炉安全専門審査会(設置法14条の2第1項,安全審査会)や原子力委員会から指示された事項を調査審議する専門部会(設置法施行令4条,原子力委員会専門部会運営規程(昭和32年7月4日原子力委員会決定,昭和51年4月27日同委員会決定による改正前のもの)1条。 なお,安全審査会に設置される後記( 審議する専門部会(設置法施行令4条,原子力委員会専門部会運営規程(昭和32年7月4日原子力委員会決定,昭和51年4月27日同委員会決定による改正前のもの)1条。 なお,安全審査会に設置される後記(ウ)の安全審査会部会とは別のものである)を必要の都度設け,内閣総理大臣の諮問に応じて個々の原子。 炉の安全性に関する事項について調査審議したり,原子炉の安全性につ- 49 -いての技術的基準を制定するなどした。 安全審査会は,原子炉に係る安全性に関係する事項を調査審議するために原子力委員会に置かれるものであり,審査委員30人以内で組織される(設置法14条の3第1項。そして,審査委員は,学識経験のあ)る者及び関係行政機関の職員のうちから,内閣総理大臣が任命するが(同条2項,非常勤とされている(同条3項。また,安全審査会の)))。 会長は,審査委員の互選によって定められる(同法14条の4第1項(イ)安全審査会は,会長が招集し(原子力安全専門審査会運営規程(昭和36年9月6日原子力委員会決定,昭和51年7月13日同委員会決定による改正後のもの。安全審査会運営規程)2条,議事を開くには)審査委員の2分の1以上の出席を必要とし(同規程3条1項,決議を)行う必要があるときは,出席した審査委員の過半数でこれを決し,可否同数のときは,会長の決するところによる(同条2項。 )安全審査会が原子力委員会委員長への調査審議結果の報告について議決をする必要があるときは,出席した審査委員の4分の3以上の賛成により,これを決するとされていた(同条3項。 )(ウ)安全審査会には,審査委員のほか,調査審議の能率の向上を図るため,審査委員を補助して原子炉に係る安全性に関する事項を調査するための調査委員が置かれた。 そして,安全審査会には,安全審査会運営規程8 安全審査会には,審査委員のほか,調査審議の能率の向上を図るため,審査委員を補助して原子炉に係る安全性に関する事項を調査するための調査委員が置かれた。 そして,安全審査会には,安全審査会運営規程8条,9条(本件許可申請時の昭和51年7月13日原子力委員会決定による改正前の同規程は7条,8条)の運用によって,通常,各原子炉設置許可申請毎に,安全審査会には安全審査会部会(以下「部会」という)が設置され,安。 全審査会の審査委員及び調査委員の一部がその構成員となった。部会における審査の方式については,安全審査会会長が安全審査会に諮って定めるが,実際の部会の運営は,部会全体で一種の合議的検討を行う場合- 50 -もあるし,詳細かつ効率的な審査を行うために,大別される専門分野に応じてグループ分けをした上で,そのグループ単位で会合が開かれることもあった。 なお,部会は,安全審査会から審査方針,審査事項等の指示を受けて,調査審議を行い,その過程において適宜,審査状況を安全審査会に報告し,安全審査会の審議に付するものであり,また,最終的な調査審議結果を部会報告にまとめて安全審査会に報告するものである。 (甲57の①,60の①及び③,61の①,62の①,63の①,64,65の①②,66の①②,67の①,68,69の①②,70の①②,71の①②,72の①②,73の①②,74の①②,75の①②,76の①②,77,78の①②,79の①②,80の①②,81の①②,82の①及び④,83の①②,84の①②,85の①②,86の①②,87の①②,88の①②,89の①②,90の①②,91,92の①,93,94の①ないし③,乙4,101ないし104,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨)(5)安全審査会の審査等ア上記(4)アのとおり内閣 0の①②,91,92の①,93,94の①ないし③,乙4,101ないし104,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨)(5)安全審査会の審査等ア上記(4)アのとおり内閣総理大臣から意見を求められた原子力委員会においては,原子力委員会委員長が,安全審査会に対し,昭和50年5月20日,設置法14条の2第2項に基づき,同日付け「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置に係る安全性について」と題する書面(甲60の②)により本件申請の原子炉に係る安全性に関する事項(規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る事項及び4号に係る事項)を調査審議するよう指示し,それ以外の事項については,原子力委員会において直接審議した。なお,原子力委員会委員長は,安全審査会に対し,昭和52年7月19日,同日付け「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置許可申請書の一部補正について(通知」と題する書面)- 51 -(甲92の②)により本件補正を通知した。 本件申請当時の安全審査会は,原子炉工学,核燃料工学,熱工学,放射線物理学等原子炉に関する専門的分野のほか,地震学や気象学等広範な分野から選ばれた,それぞれの分野における専門家である審査委員30名及び調査委員28名により構成された。 イ原子力委員会委員長から上記アのとおり調査審議するよう指示を受けた安全審査会は,本件申請に係る所要の調査審議を適切かつ効率的に行うため,昭和50年5月23日,第137回審査会において,部会である第120部会を設置した。 第120部会は,13名の審査委員と15名の調査委員とをもって構成された。これらの委員は,主として原子炉施設を担当するAグループ,主として周辺公衆の被ばく線量評価等環境面に係る事項を担当するBグループ並びに主として地 名の審査委員と15名の調査委員とをもって構成された。これらの委員は,主として原子炉施設を担当するAグループ,主として周辺公衆の被ばく線量評価等環境面に係る事項を担当するBグループ並びに主として地質・地盤及び地震を担当するCグループの3グループに分かれて,それぞれの分野における問題を各グループにおいて検討した。 また,各グループの合同会合や部会全体での会合を開いて,関連する問題の検討を行ったほか,12回にわたって現地調査を行うとともに,適宜審査状況を安全審査会に報告し,安全審査会における調査審議に付した。 第120部会における各会合は,昭和50年6月10日から昭和52年8月2日までの間に,全体会合が7回,Aグループ会合が39回,Bグループ会合が11回,Cグループ会合が20回,A・Bグループ会合が2回,それぞれ開催され,第120部会は,昭和52年8月12日,部会報告書をとりまとめて安全審査会に報告した。 ウ安全審査会は,昭和50年5月23日から昭和52年8月12日までの間計26回にわたり,本件補正に係る本件申請について原子力委員会から指示された事項につき調査審議した。そして,安全審査会は,第120部会の上記イの部会報告書を基に検討を行い,昭和52年8月12日,第1- 52 -62回審査会において「本原子炉の設置に係る安全性は,十分確保し得,るものと認める」との同日付け「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発。 電所の原子炉の設置に係る安全性について」と題する安全審査報告書を決定し,原子力委員会委員長に対して報告した。そこで,原子力委員会は,上記安全審査報告書を踏まえた上,本件補正に係る本件申請が規制法24条1項各号所定の許可基準に適合しているかどうかについて調査審議した(以下原子力委員会及び同委員会に置かれた安全審査会による本件原子炉 安全審査報告書を踏まえた上,本件補正に係る本件申請が規制法24条1項各号所定の許可基準に適合しているかどうかについて調査審議した(以下原子力委員会及び同委員会に置かれた安全審査会による本件原子炉施設の安全性に関する審査を「本件安全審査」という。 。)(甲57の①②,60の①ないし③,61の①ないし③,62の①ないし③,63の①②,64,65の①②,66の①②,67の①②,68,69の①②,70の①②,71の①②,72の①②,73の①②,74の①②,75の①②,76の①②,77,78の①②,79の①②,80の①②,81の①②,82の①ないし④,83の①②,84の①②,85の①②,86の①②,87の①②,88の①②,89の①②,90の①②,91,92の①ないし③,93,94の①ないし③,乙1ないし4,101ないし104,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨)(6)本件安全審査の基本方針及び審査事項等ア本件安全審査においては,本件原子炉施設が平常運転時はもとより,万一の事故を想定した場合にも,一般公衆及び従事者の安全が確保されるように,所要の安全設計等が講じられていることを確認するために,次の事項が審査の基本方針及び審査事項とされた。 (ア)原子炉施設が設置される場所の地盤,地震,気象,水理等の自然事象及び交通等の人為事象によって原子炉施設の安全性が損なわれないような安全設計が講じられること。 (イ)平常運転時に放出される放射性物質による一般公衆の被ばく線量が,原子炉の設置,運転等に関する規則等の規定に基づき,許容線量等を定- 53 -める件2条に規定する許容被ばく線量(年間0.5レム)以下に抑えられていることはもちろんのこと,更に,それをできるだけ少なくするような安全設計が講じられること。 (ウ) 容線量等を定- 53 -める件2条に規定する許容被ばく線量(年間0.5レム)以下に抑えられていることはもちろんのこと,更に,それをできるだけ少なくするような安全設計が講じられること。 (ウ)平常運転時において,従事者が許容被ばく線量を超える線量を受けないような放射線の防護及び管理が講じられること。 (エ)原子炉の運転に際し,異常の発生を早期に発見し,その拡大を未然に防止するような安全設計が講じられること。 (オ)原子炉の運転に際し,機器の故障,誤操作等が発生しても,燃料の健全性,冷却材圧力バウンダリの健全性等が損なわれないような安全設計が講じられること。 (カ)原子炉冷却材を包含している冷却材圧力バウンダリの健全性が損なわれ,冷却材が喪失するような事故,炉心の反応度を制御している制御系の健全性が損なわれ,反応度が異常に上昇するような事故等の発生を仮定しても,事故の拡大を防止し,放射性物質の放出を抑制できるような安全設計が講じられること。 (キ)重大事故及び仮想事故を仮定しても,その安全防護施設との関連において,一般公衆の安全が確保されるような立地条件を有していること。 (甲37,乙1ないし4,10ないし15,78,91,130,いずれも原審における証人P1及び同P5の各証言,弁論の全趣旨)イ本件安全審査の方法については,次の方針がとられた。 (ア)本件安全審査は,東京電力が提出した本件補正に係る本件申請書及びその添付資料に基づき行い,必要に応じて申請内容の補足資料及び参考文献の提出を求め審査を行う。 (イ)立地条件の評価に際し,敷地の地質・地盤等の自然的環境及び社会的環境については,書類による審査のほか,書類上の内容と照合するため,必要な事項について現地調査を実施する。 - 54 -(ウ)非常用炉心冷却系の性能評価に 敷地の地質・地盤等の自然的環境及び社会的環境については,書類による審査のほか,書類上の内容と照合するため,必要な事項について現地調査を実施する。 - 54 -(ウ)非常用炉心冷却系の性能評価については,東京電力が行った性能評価を審査するほか,日本原子力研究所安全解析部の協力により別途にチェック計算を行い確認する。 (エ)本件安全審査においては,原子力委員会が指示した,(a)「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて(昭和39」年5月27日原子力委員会決定。乙10。立地審査指針,(b)「軽水)型動力炉の非常用炉心冷却系の安全評価指針について(昭和50年5」月13日原子力委員会決定。乙11。ECCS安全評価指針,(c)線)量目標値指針(乙12,(d)「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目)標値に対する評価指針について(昭和51年9月28日原子力委員会」決定。乙13。線量目標値評価指針,(e)「発電用軽水型原子炉施設)に関する安全設計審査指針について(昭和52年6月14日原子力委」員会決定。乙14。安全設計審査指針,(f)「発電用原子炉施設の安)全解析に関する気象指針について(昭和52年6月14日原子力委員」会決定。乙15。気象指針)を用い,更に,安全審査会が原子炉施設の安全審査に当たり,解析条件,判断基準等を内規として運用するために作成した,(a)「沸騰水型原子炉に用いる8行8列型の燃料集合体について(昭和49年12月25日。乙78,(b)「被曝計算に用いる」)放射能エネルギー等について(昭和50年11月19日,(c)「沸」)騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法について」(昭和51年2月16日,(d)「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及)び熱的運転制限値決定手法の適用 11月19日,(c)「沸」)騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法について」(昭和51年2月16日,(d)「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及)び熱的運転制限値決定手法の適用について(昭和52年2月23日,」)(e)「発電用軽水型原子炉の反応度事故に対する評価方法について」(昭和52年5月20日。甲37,乙130,(f)「取替炉心検討会)報告書(昭和52年5月20日,(g)「発電用軽水型原子炉施設の」)安全審査における一般公衆の被曝線量評価について(昭和52年6月」- 55 -17日。乙91)の各報告書を活用して行う。 (オ)本件安全審査に際しては,先行炉の審査経過及び諸外国の審査基準を参考として行うとともに,昭和50年2月21日に新潟県知事から,また同年4月14日に柏崎市長から,それぞれ提出された本件原子炉敷地の地盤の審査に関する要望書の趣旨を尊重し,さらに,昭和51年7月5日から同年8月4日までの間に本件原子炉の設置に関して地元の意見が文書によって提出されているので,そのうち,原子炉に係る安全性に関する意見についてその趣旨を尊重して審査・判断する。 (甲37,乙1ないし4,10ないし15,78,91,130,いずれも原審における証人P1及び同P5の各証言,弁論の全趣旨)(7)東京電力の技術的能力に係る本件安全審査の内容ア本件安全審査において検討された事項本件補正に係る本件申請をした東京電力に,本件原子炉施設を設置するために必要な技術的能力及び運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があるか否かが判断された。 イ東京電力の技術的能力東京電力には,以下のとおり,技術的能力があるものと判断された。 (ア)東京電力は,昭和41年12月,東京電力福島第一原子力発電所。 ,(以下「福島第一原発」 断された。 イ東京電力の技術的能力東京電力には,以下のとおり,技術的能力があるものと判断された。 (ア)東京電力は,昭和41年12月,東京電力福島第一原子力発電所。 ,(以下「福島第一原発」という)1号機を着工以来,2号機,3号機4号機,5号機及び6号機の建設実績並びに同1号機,2号機,3号機については運転実績を既に有している。そして,更に東京電力福島第二原子力発電所(以下「福島第二原発」という)1号機についても現在。 建設中である。 (イ)本件原子炉施設の基本設計の実施,工事進捗の管理並びにこれらに付随する対外連絡等の業務に従事する約70名の要員が継続的に,又は一時的に関与する見込みであり,また,現地において全工程を通じ実際- 56 -の建設に従事する平均50名の要員の合計120名の技術者を確保するとしている。そして,各部門の管理者については,原子力・火力発電所の建設,運転等に10ないし20年の経験を有する者がそのほとんどを占め,原子力技術者に限ってみても平均約10年の経験を有している。 さらに,技術能力の養成訓練を行うことを計画している。 (ウ)本件原子炉施設の運転においては,発電所の運営管理,対外連絡等の業務を行う約10名のほか,実際に発電所の運転管理を行う現地要員約150名の技術者を運転開始時までに確保することとしている。 (エ)本件原子炉施設の運転に当たり,保健物理系,炉物理系,電気・機械系及び計測制御系等の知識を有し,原子力経験も5,6年以上のものが管理職となる人材を確保することが見込まれる。 (オ)法令上必要な主任技術者として,原子炉主任技術者有資格者14名及び放射線取扱主任者有資格者40名を有しており,十分確保されている。 (乙1ないし4,原審における証人P1の証言)(8)平常運転時における被ばく低減対 術者として,原子炉主任技術者有資格者14名及び放射線取扱主任者有資格者40名を有しており,十分確保されている。 (乙1ないし4,原審における証人P1の証言)(8)平常運転時における被ばく低減対策に係る本件安全審査の審査内容ア本件安全審査において検討された事項原子炉施設においては,放射性物質の有する危険性を顕在化させないために,放射性物質が冷却水中に現れることを抑制し,冷却水中から原子炉冷却系統設備外に現れる放射性物質を,その形態に応じて適切に処理し得る放射性廃棄物廃棄設備を設け,また,原子炉施設の平常運転に伴って環境に放出される放射性物質からの放射線による公衆の被ばく線量を適切に評価し,それが,線量目標値指針が定める線量目標値を下回ることはもちろんのこと,ICRPの1958年(昭和33年)採択の勧告によるALAP(aslowaspracticable。すべての被ばくを実行可能(達成可能)な限り低く保つべきこと)の指針に従って可及的にその被ばく線量値を低- 57 -減するような基本設計を行う必要があり,その上で,原子炉施設の平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の量と環境中における線量率等を的確に監視することのできる放射線管理設備を設ける必要があると判断された。 そして,本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策に関し,本件安全審査において検討された事項は,以下のとおりであり,その際,原子力委員会が指示した(ア)線量目標値指針(乙12,(イ)線量目標値)評価指針(乙13)の各指針が用いられ,また,安全審査会が作成した「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について(昭和52年6月17日)の報告書が活用された。 」第1に,本件原子炉施設は,その平常運転時に伴って環境に放出される放射性 「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について(昭和52年6月17日)の報告書が活用された。 」第1に,本件原子炉施設は,その平常運転時に伴って環境に放出される放射性物質の量を抑制できるものかどうか,すなわち,(ア)放射性物質が冷却水中に現れることを抑制できるかどうか,(イ)冷却水中から原子炉冷却系統設備外に現れる放射性物質を,その形態に応じて適切に処理し得る放射性廃棄物廃棄設備が設けられているかどうかを確認する。 第2に,平常運転時における被ばく低減対策の総合的な妥当性を評価する観点から,本件原子炉施設の平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の放射線による公衆の被ばく線量が適切に評価され,かつ,その評価値が許容被ばく線量である年間0.5レムを下回ることはもちろんのこと,線量目標値指針が定める線量目標値,すなわち,放射性希ガスからのガンマ線による全身被ばく線量及び液体廃棄物中の放射性物質に起因する全身被ばく線量の評価値の合計値については年間5ミリレム,放射性ヨウ素に起因する甲状腺被ばく線量の評価値については年間15ミリレムをそれぞれ下回ることとなっているかどうかを確認する。 第3に,原子炉施設の平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の量,環境中における線量率等をそれぞれ的確に監視することのできる放射- 58 -線管理設備が設けられているかどうかを確認する。 イ放射性物質の種類原子炉施設の平常運転時に排気筒から放出される放射性物質には,(ア)主として空気を構成している窒素,酸素,アルゴンが原子炉内及びその近傍で中性子に照射されて生ずる窒素13,同16,炭素14,アルゴン41等の放射化生成物と,原子炉内の燃料の核分裂によって発生したクリプトン85,キセノン133等の核分裂生成物からなる気体状放射性 近傍で中性子に照射されて生ずる窒素13,同16,炭素14,アルゴン41等の放射化生成物と,原子炉内の燃料の核分裂によって発生したクリプトン85,キセノン133等の核分裂生成物からなる気体状放射性物質,(イ)常温,常圧では液体状又は固体状であるが,高温では揮発して気体状の挙動を示し,燃料の核分裂によって生成する放射性ヨウ素(ヨウ素131,同133)等の揮発性放射性物質,(ウ)原子炉の冷却材中に含まれている微量の不純物が原子炉内の中性子に照射されて生ずる放射化生成物及び燃料から冷却材中に漏洩した微量の核分裂生成物から成り,塵埃等に付着して挙動するマンガン54,コバルト58,同60,セシウム137等の粒子状放射性物質がある。原子炉施設の平常運転時に放出される放射性物質の放射線源としては,上記気体廃棄物のほかに,液体廃棄物中に含まれている放射性物質と原子炉施設に直接起因する放射線とがあり,前者は,粒子状放射性物質と同様の発生機構によって生成するので,そこに含まれている放射性核種もほぼ同様のものであるが,一般に,原子炉施設は液体廃棄物処理施設を設けているので比較的管理しやすいとされており,後者は,原子炉内の燃料が核分裂する際に発生する放射線と原子炉施設内に内蔵されている放射性物質が放出する放射線であり,これによって通常原子炉施設周辺で問題となるガンマ線についても,一般に原子炉容器,原子炉格納施設,使用済燃料プール,固体廃棄物貯蔵倉庫等において十分遮蔽されるので原子炉施設周辺に及ぼす影響は小さいとされている。 ウ一般公衆の被ばく経路原子炉施設の平常運転時に放出される放射性物質によって,一般公衆が- 59 -被ばくする際の主要な被ばく経路としては,(ア)気体として放出された放射性物質が空気中に拡散している間にこれから放出される放射線による 常運転時に放出される放射性物質によって,一般公衆が- 59 -被ばくする際の主要な被ばく経路としては,(ア)気体として放出された放射性物質が空気中に拡散している間にこれから放出される放射線による外部被ばく,(イ)気体として放出された後,地表に沈着した放射性物質から放出される放射線による外部被ばく,(ウ)気体として放出された放射性物質を吸入したり,これらが付着した農作物等を摂取することによる内部被ばく,(エ)液体として放出された放射性物質から放出される放射線によって遊泳中や漁業活動中に受ける外部被ばく,(オ)液体として放出された放射性物質を取り込んだ海産物を摂取することによる内部被ばくがある。 これまでの軽水型原子炉の運転経験,放射線等に関する調査・研究によれば,軽水型原子炉の平常運転に伴って放出される放射性物質の中では,量的にはクリプトン85,キセノン133等の放射性希ガスが最も多く,放射性希ガスは,透過力の強いガンマ線を放出するため,これに被ばくすると,全身被ばくの可能性が生ずること,揮発性放射性物質のうち,放射性ヨウ素は生成量が多く,物理的半減期も長いところ,放射性ヨウ素は海藻等に濃縮したり,葉菜類に付着する等の性質があるとともに,人体内部に取り込まれた場合には甲状腺に集まる特性があること,鉄,マンガン,コバルト等は,気体廃棄物中にはほとんど含まれていないが,液体廃棄物中に占める割合が多く,また,海産物中で濃縮する性質を有するため,それらを取り込んだ海産物を摂取した場合には,人体に比較的大きな被ばくを与える可能性があること,人体が被ばくすることによって受ける影響については,各臓器が個別的に被ばくする場合よりも全身にわたって被ばくする場合の方が大きいことが知られており,このような事実から,一般的に,一般公衆に対する上記被ばく経 くすることによって受ける影響については,各臓器が個別的に被ばくする場合よりも全身にわたって被ばくする場合の方が大きいことが知られており,このような事実から,一般的に,一般公衆に対する上記被ばく経路のうち,(ア)の被ばく経路における希ガスから放出されるガンマ線による外部全身被ばくが最も主要なもので,次に,(ウ)の被ばく経路におけるヨウ素に起因する内部甲状腺被ばく及び(オ)の被ばく経路における放射性物質による内部全身被ばくが主要なもの- 60 -であり,他の被ばく経路によるものは無視し得る程度のものであると考えられている。 本件安全審査においては,上記のような主要な被ばく経路について,公衆の被ばく線量を定量的に評価し,その値が十分低いものであれば,公衆の被ばく線量は,上記以外の経路の被ばくの寄与分を考慮しても,なお低く抑えられるとの判断に基づいて,本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策に関する安全審査が行われた。 エ施設内での放射性物質の蓄積原子炉の平常運転に伴い原子炉施設内に蓄積される主な放射性物質としては,(ア)燃料の核分裂反応によって燃料被覆管内に生成される核分裂生成物と,(イ)冷却水が接する機器や配管の内面等の腐食によって生成された腐食生成物等が中性子により放射化されることによって生じる放射化生成物の2種類があるところ,(ア)の核分裂生成物については,後記のとおり,本件原子炉施設において使用される燃料被覆管の健全性が維持されるような設計となっていること,(イ)の放射化生成物については,冷却水の水質を腐食の生じ難い清浄な状態に保つために原子炉冷却材浄化系濾過脱塩装置,復水濾過・脱塩装置等の水質管理を行う設備が設けられていることから,本件安全審査においては,本件原子炉施設は,放射性物質が冷却水中に現れるのを抑制でき 態に保つために原子炉冷却材浄化系濾過脱塩装置,復水濾過・脱塩装置等の水質管理を行う設備が設けられていることから,本件安全審査においては,本件原子炉施設は,放射性物質が冷却水中に現れるのを抑制できるものと判断された。 オ放射性廃棄物の廃棄設備について原子炉施設においては,多数の燃料棒のうちのごく一部のものの燃料被覆管にピンホール等が生じる可能性があり,このピンホール等から核分裂生成物等が冷却水中に漏洩することがある。また,冷却水が接する機器や配管の内面等のすべてにわたって腐食を完全に防止することは困難であり,したがって,微量ではあるが冷却水中に放射性物質が現れることは避けられないところ,その大部分は,原子炉冷却系統設備内に閉じ込められるが,- 61 -一部は,冷却水の清浄度を保つために行う浄化処理の過程において原子炉冷却系統設備外に取り出され,また,復水器から抽出される空気あるいはポンプ,バルブ等から漏洩してくる水と共に原子炉冷却系統設備外に漏洩する。したがって,これら原子炉冷却系統設備外に現れる放射性物質については,放射性廃棄物廃棄設備により適切な処理を行い,環境への放出をできる限り低く抑える必要がある。 本件安全審査においては,本件原子炉施設には,以下のとおり,原子炉冷却系統設備外に現れる放射性物質について,気体,液体,固体の各形態に応じて適切に処理し得る放射性廃棄物廃棄設備(別紙4のとおり)が設けられることが確認された。 (ア)気体状の放射性物質の場合本件原子炉施設において発生する主な気体状の放射性物質としては,①平常運転時に,復水器内の真空を保つため復水器空気抽出器により復水器内から連続的に抽出される空気中に含まれる放射性物質,②タービンの停止後比較的短時間のうちにこれを再起動させる場合に,復水器内を真空にするために 復水器内の真空を保つため復水器空気抽出器により復水器内から連続的に抽出される空気中に含まれる放射性物質,②タービンの停止後比較的短時間のうちにこれを再起動させる場合に,復水器内を真空にするために用いられる真空ポンプの運転により復水器内から間欠的に放出される空気中に含まれる放射性物質,③ポンプ,バルブ等から漏洩する冷却水の蒸気等により原子炉建家内等の空気に含まれる放射性物質の3種類があり,これらの気体状の放射性物質には,クリプトン,キセノン等の希ガス,空気中に浮遊する粒子状の放射性物質等がある。 本件原子炉施設の基本設計においては,上記①は,空気抽出器を通った上,減衰管で約30分間減衰され,更に,粒子状放射性物質を捕捉するフィルタ(濾過器)で固形物が除去されたのち,希ガスを長時間貯留してその濃度を低減させる効用を有する活性炭式希ガスホールドアップ装置,希ガス等を拡散,希釈するための高さ約150mの排気筒を経て排気されることになっているほか,上記②は,そのような間欠放出の回- 62 -数は少なく,1回当たりの放射性物質の放出量も少ないことから,拡散,希釈するための上記排気筒を経て排気され,更に,上記③は,粒子状の放射性物質を捕捉するフィルタで固形物が除去されたのち,拡散,希釈するための排気筒を経て排気されることになっている。 (イ)液体状の放射性物質の場合本件原子炉施設において発生する主な液体状の放射性物質としては,①ポンプ,バルブ等からの漏洩水等のうち,放射能濃度が高く,不純物が少ない機器ドレン廃液及び放射能濃度が低く不純物が多い床ドレン廃液,②復水脱塩装置や放射性廃棄物廃棄設備で使用された樹脂を再生する際に発生する再生廃液等の放射能濃度が高く,不純物が多い化学廃液,③発電所の従業者が使用した衣類等の洗濯により発生する廃液で,放 廃液,②復水脱塩装置や放射性廃棄物廃棄設備で使用された樹脂を再生する際に発生する再生廃液等の放射能濃度が高く,不純物が多い化学廃液,③発電所の従業者が使用した衣類等の洗濯により発生する廃液で,放射能濃度が低い洗濯廃液の3種類がある。 本件原子炉施設の基本設計においては,上記①のうち機器ドレン廃液は,収集タンクに集められ,クラッド除去装置及び濾過装置を経て放射化生成物を含む固形分が取り除かれたのち,イオン状の不純物を取り除くための脱塩装置を経て,復水貯蔵タンクに送られ,処理水は原子炉の冷却水等として再使用され,上記①のうち床ドレン廃液及び上記②の化学廃液は,収集タンクに集められたのち,蒸留して不純物を分離するための蒸発濃縮装置,蒸留水中のイオン状の不純物を取り除くための脱塩装置等を経て,処理水は原子炉の冷却水等として再使用され,蒸留した際に残る濃縮廃液は,固体状の放射性物質として処理され,また,上記③の洗濯廃液は,収集タンクに集められたのち,固形分を除くための濾過装置等を経て,処理水は復水器冷却用の海水に混合,希釈し,環境へ放出されることになっている。 (ウ)固体状の放射性物質の場合本件原子炉施設において発生する主な固体状の放射性物質としては,- 63 -①上記(イ)の冷却水の浄化処理等のために使用される脱塩装置等から発生する使用済樹脂,②上記(イ)の床ドレン廃液及び化学廃液の蒸発濃縮処理の結果として残る濃縮廃液,③機器の点検や修理の際に冷却水に触れるなどして放射性物質が付着した布切れや紙くず,気体状の放射性物質を捕捉するために使用されたフィルタ等の雑固体廃棄物の3種類がある。 本件原子炉施設の基本設計においては,上記①のうち比較的放射能濃度が低いものは,固化材と混合してドラム缶詰めする装置によってドラム缶詰めされ,比較的放 れたフィルタ等の雑固体廃棄物の3種類がある。 本件原子炉施設の基本設計においては,上記①のうち比較的放射能濃度が低いものは,固化材と混合してドラム缶詰めする装置によってドラム缶詰めされ,比較的放射能濃度が高いもの及び上記②は,貯蔵タンクに貯蔵して放射能を減衰させた上,ドラム缶詰めされ,また,上記③は,圧縮減容する装置を経て,ドラム缶詰めされることになっており,更に,上記各ドラム缶は,固体廃棄物貯蔵庫に貯蔵,保管される。 カ公衆の被ばく線量の評価原子炉施設の平常運転に伴って環境に放出された気体状及び液体状の放射性物質は大気中や海水中において拡散,希釈するが,公衆は,この拡散,希釈した放射性物質から放出される放射線によって被ばくしたり,更には,この拡散,希釈した放射性物質を吸入したり,それを取り込んだ海産物等を摂取したりすること等によって被ばくすることがあり得るが,本件安全審査においては,本件原子炉施設の平常運転に伴って環境に放出される放射性物質について,以下のとおり,公衆の被ばく線量の評価の妥当性の審査を行い,その結果,上記評価は適切にされており,かつ,その評価値は許容被ばく線量である年間0.5レムを下回ることはもちろんのこと,線量目標値指針に定められた線量目標値をも下回るものであると判断された。 (ア)本件安全審査においては,本件原子炉施設の平常運転に伴う公衆の被ばく線量評価方法の妥当性について以下のとおり検討し,いずれも妥当なものと判断された。 - 64 -①本件原子炉施設から平常運転時(年間稼働率80%)に大気中に放出される気体状放射性物質のうち,a復水器から連続的に抽出される空気中に含まれる放射性希ガスの放出率は,毎秒1.1ミリキュリー(年間放出量約2万8000キュリー,b原子炉建家等の換気設備)から連続的に放出さ 状放射性物質のうち,a復水器から連続的に抽出される空気中に含まれる放射性希ガスの放出率は,毎秒1.1ミリキュリー(年間放出量約2万8000キュリー,b原子炉建家等の換気設備)から連続的に放出される空気中に含まれる放射性希ガスの放出率は,毎秒0.68ミリキュリー(年間放出量約1万7000キュリー,)c真空ポンプの運転により間欠放出される放射性希ガスの1回当たりの放出量は1000キュリー,年間の放出回数は5回,d真空ポンプの運転による間欠放出及び換気設備系から連続的に放出される放射性ヨウ素の放出量は年間約5.5キュリーとそれぞれ想定されているが,これらは,先行炉の実績を踏まえ,あるいは,先行炉の実績値(毎秒0.3キュリー)よりも高い全希ガス漏洩率(毎秒0.4キュリー)に基づいて計算されたものである。 また,本件原子炉施設から大気中に放出された気体廃棄物の拡散,希釈の状況については,気象条件は,季節毎の変化を考慮して本件原子炉施設敷地周辺における昭和46年3月から昭和47年2月までの気象観測で得られた実測値を用いて計算し(ただし,静穏時の場合は,風速を毎秒0.5mとし,風速毎秒0.5ないし2.0mのときの風向出現頻度に応じて各風向きに比例分配した,線量の計算は,排。)気筒を中心として16方位に分割した陸側10方位の周辺監視区域境界外について行い,希ガスのガンマ線による全身被ばく線量が最大となる地点での線量を求めた。 ②本件原子炉施設から平常運転時に海水中へ放出される液体廃棄物中の放射性物質(トリチウムを除く)の年間放出量は,洗濯廃液中の。 約0.55キュリー,濃縮処理による発生蒸気の凝縮水中の約0.03キュリー,トリチウムの環境放出量は年間100キュリー以下と,- 65 -いずれも我が国における先行炉の実績等から推定される の。 約0.55キュリー,濃縮処理による発生蒸気の凝縮水中の約0.03キュリー,トリチウムの環境放出量は年間100キュリー以下と,- 65 -いずれも我が国における先行炉の実績等から推定されることから,液体廃棄物等の放射性物質による全身被ばく線量及び甲状腺被ばく線量の評価を行う際には,液体廃棄物処理系統の運用の変動を考慮して,トリチウムを除く液体廃棄物の年間放出量を1キュリー,トリチウムの年間放出量を100キュリーと想定した。 また,本件原子炉施設から海水中に放出された液体廃棄物の拡散,希釈の状況については,復水器冷却水放水口に放出された液体廃棄物は,実際はその放出後,前面海域において拡散,希釈することによってその濃度は低くなるにもかかわらず,その効果を無視し,上記放水口における濃度がそのまま用いられた。 (イ)本件安全審査においては,上記のような各種の条件を設定して,本件原子炉の平常運転に伴う公衆の被ばく線量を計算した場合,希ガスから放出されるガンマ線による全身被ばく線量が最大となる地点は,排気筒南方約740mの周辺監視区域境界であり,その線量は年間約0.3ミリレムであること,液体廃棄物中の放射性物質に起因する全身被ばく線量が年間約0.2ミリレムであること,したがって,全身被ばく線量値は合計して年間約0.5ミリレムと評価されること,また,気体廃棄物中に含まれる放射性ヨウ素に起因する甲状腺被ばく線量が最大となる地点は,将来の集落の形成や葉菜又は牛乳摂取による被ばく経路の存在を考慮すると,排気筒の南約1.2㎞の敷地境界外であり,その地点における気体廃棄物中の放射性ヨウ素の呼吸,葉菜及び牛乳摂取による年間の甲状腺被ばく線量は,成人で約0.2ミリレム,幼児で約1.4ミリレム,乳児で約1.2ミリレムであること,液体廃棄物中に含まれる における気体廃棄物中の放射性ヨウ素の呼吸,葉菜及び牛乳摂取による年間の甲状腺被ばく線量は,成人で約0.2ミリレム,幼児で約1.4ミリレム,乳児で約1.2ミリレムであること,液体廃棄物中に含まれる放射性ヨウ素による甲状腺被ばく線量は,海藻類を摂取する場合,成人で年間約0.02ミリレム,幼児及び乳児で年間約0.05ミリレムとなり,海藻類を摂取しない場合,成人で年間約0.01ミリレム,幼児- 66 -で年間約0.04ミリレム,乳児で年間約0.03ミリレムとなること,気体廃棄物中及び液体廃棄物中に含まれる放射性ヨウ素を同時に摂取する場合の甲状腺被ばく線量の最大値は幼児の場合で年間約1.4ミリレムであることが確認された。そして,計算された被ばく線量の最大値は,全身被ばく線量について年間約0.5ミリレム,甲状腺被ばく線量について年間約1.4ミリレムであり,線量目標値指針に定める全身被ばく線量(年間5ミリレム,甲状腺被ばく線量(年間15ミリレム)の線)量目標値を下回っており,以上の評価にとり上げられていない原子炉施設からの直接線量及びスカイシャイン線量は,原子炉建家のコンクリート壁等によって十分遮蔽され,人の住居の可能性のある敷地境界において年間5ミリレム以下となることを目標に抑えられ,かつ,また,この線量は,線源が固定されているため,距離が離れるにしたがって急激に減衰するという性質を考慮すると,一般公衆の被ばく線量に寄与する地点は,敷地境界近傍に限られ,他の被ばく線量として,ベータ線による皮膚被ばく線量,海水浴中に受ける被ばく線量,大気中に放出された粒子状放射性物質に起因する被ばく線量等があるが,これらの被ばく線量については,一般に小さい寄与しか与えないことにかんがみ,これらによる線量等を考慮しても,周辺監視区域外における被ばく線量は された粒子状放射性物質に起因する被ばく線量等があるが,これらの被ばく線量については,一般に小さい寄与しか与えないことにかんがみ,これらによる線量等を考慮しても,周辺監視区域外における被ばく線量は,許容被曝線量等を定める件所定の許容被ばく線量年間0.5レム(年間500ミリレム)をはるかに下回るものと判断された。 キ放射性物質の放出量等の監視本件安全審査においては,本件原子炉施設には,以下のように,その平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の放出量,環境中における線量率等をそれぞれ的確に監視することのできる放射線管理設備が設けられていると判断された。 (ア)本件原子炉施設には,気体廃棄物について,活性炭式希ガスホール- 67 -ドアップ装置の前後にそれぞれ放射線量を連続的に監視する放射線モニター,排気筒からの放出量を連続的に監視するために排気筒に放射線モニターが設けられている。 (イ)本件原子炉施設には,液体廃棄物について,環境に放出する前に放射性物質の濃度が十分に低いことを確認するため,いったんサンプルタンクに貯留し,放射性物質の濃度をサンプリングして測定する設備,復水器の冷却水放水路につながる排水環境に放出量を連続的に監視する放射線モニターが設けられている。 (ウ)本件原子炉施設の周辺には,環境中の線量率等を監視するためのモニタリングポスト9基が設置され,外部放射線量率を連続監視するほか,気体廃棄物の放出管理及び発電所周辺の一般公衆の被ばく評価に資するために発電所敷地内に風速,日射量,放射収支量等を連続観測する設備が設けられている。 (甲1,乙1ないし4,12,13,16,18,19,45,91,92の①ないし④,いずれも原審における証人P1及び同P5の各証言,弁論の全趣旨)(9)原子炉施設の事故防止対策に係る本 ている。 (甲1,乙1ないし4,12,13,16,18,19,45,91,92の①ないし④,いずれも原審における証人P1及び同P5の各証言,弁論の全趣旨)(9)原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の審査内容ア本件安全審査において検討された事項原子炉施設においては,放射性物質の有する危険性を顕在化させないために,平常運転時に発生する放射性物質のうち,燃料被覆管内に存在する核分裂生成物等を燃料被覆管内に,冷却材中に存在する核分裂生成物及び腐食生成物等を圧力バウンダリ又はこれを含む原子炉冷却系統設備内にそれぞれ閉じ込め,異常時には,前者を燃料被覆管内に,後者を圧力バウンダリにそれぞれ閉じ込め,これらが環境へ放出されないように防止する必要があり,そのためには,燃料被覆管や圧力バウンダリ等の健全性が損なわれるおそれのある事態が発生しないような対策を講じる必要があり,具- 68 -体的には,まず,燃料被覆管や圧力バウンダリ自体における異常の発生を防止することが基本となり(異常発生防止対策,次に,上記異常が発生)した場合においては,それが拡大したり,更には放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態にまで発展拡大することを防止することが必要となり(異常拡大防止対策,また,仮に放射性物質を環境に異常に放)出するおそれのある事態が発生した場合においてもなお,放射性物質の環境への異常な放出という結果を防止する(放射性物質異常放出防止対策)といういわゆる多重防護の考え方に基づいた各種の事故防止対策が原子炉施設の安全性を確保するために講じられる必要があると判断された。 そして,本件原子炉施設の事故防止対策に関し,本件安全審査において検討された事項は,以下のとおりであり,その際,原子力委員会が指示した(ア)ECCS安全評価指針(乙11 れる必要があると判断された。 そして,本件原子炉施設の事故防止対策に関し,本件安全審査において検討された事項は,以下のとおりであり,その際,原子力委員会が指示した(ア)ECCS安全評価指針(乙11,(イ)安全設計審査指針(乙1)4)の各指針が用いられ,また,安全審査会が作成した(ア)「沸騰水型原子炉に用いる8行8列型の燃料集合体について(昭和49年12月25」日,(イ)「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手)法について(昭和51年2月16日,(ウ)「沸騰水型原子炉の炉心熱」)設計手法及び熱的運転制限値決定手法の適用について(昭和52年2月」23日,(エ)「発電用軽水型原子炉の反応度事故に対する評価方法につ)いて(昭和52年5月20日,(オ)「取替炉心検討会報告書(昭和5」)」2年5月20日)の各報告書が活用された。 (ア)異常発生防止対策本件原子炉施設は,燃料被覆管や圧力バウンダリ自体における異常の発生を防止することができるかどうか,これらの健全性に影響を与える他の機器等の異常の発生を防止することができるかどうか,具体的には,①燃料の核分裂反応を確実かつ安定的に制御することができるかどうか,②核分裂生成物等を閉じ込めるべき燃料被覆管は,熱的,機械的,化学- 69 -的影響によってその健全性が損なわれることのない余裕のあるものかどうか,③放射性物質を閉じ込めるべき圧力バウンダリは,機械的,化学的影響によってその健全性が損なわれることのない余裕のあるものかどうか,④燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備は,これらに起因する異常の発生を防止し得る信頼性が確保されるかどうかを確認する。 (イ)異常拡大防止対策本件原子炉施設は,異常が発生した場合においても,それが拡大 に影響を及ぼすおそれのある設備は,これらに起因する異常の発生を防止し得る信頼性が確保されるかどうかを確認する。 (イ)異常拡大防止対策本件原子炉施設は,異常が発生した場合においても,それが拡大したり,更には放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態にまで発展することを防止できるかどうか,具体的には,①燃料被覆管及び圧力バウンダリ並びにこれらの健全性に影響を及ぼすおそれのある設備に異常が発生した場合,所要の措置が採れるよう,その異常の発生を早期にかつ確実に検知し得るかどうか,②燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備に発生した異常が大きなものであり,それに対し,迅速な措置を講じなければ燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性が損なわれるおそれのある場合に備え,所要の安全保護設備が設置されるかどうか,③安全保護設備は,いずれも確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるかどうか,④安全保護設備等の設計の総合的な妥当性に関する解析評価(原子炉施設の寿命期間中にその発生が予測される代表的な起因事象をいくつか想定し,その評価結果が厳しくなるような前提条件を設定して行う解析評価,以下「運転時の異常な過渡変化解析」という)によっても,燃料被覆管及び圧力バウ。 ンダリの各健全性を確保できることとなっているかどうかを確認する。 (ウ)放射性物質異常放出防止対策本件原子炉施設は,放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態が発生した場合においても,放射性物質の環境への異常な放出とい- 70 -う結果を防止し,公共の安全を確保することができるかどうか,具体的には,①圧力バウンダリを構成する配管の破断等が発生する場合に備え,所要の安全防護設備が設置されるかどうか,②安全防護設備は,いずれも確実に所期の機能を発 安全を確保することができるかどうか,具体的には,①圧力バウンダリを構成する配管の破断等が発生する場合に備え,所要の安全防護設備が設置されるかどうか,②安全防護設備は,いずれも確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるかどうか,③安全防護設備等の設計の総合的な妥当性に関する解析評価(原子炉施設において現実に発生する可能性は極めて少ないが,あえて放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態をもたらす代表的な起因事象をいくつか想定し,その評価結果が厳しくなるような条件設定して行う解析評価。 以下「事故解析」という)によっても,放射性物質の環境への異常な。 放出が防止できるかどうかを確認する。 イ異常発生防止対策について本件安全審査においては,以下のとおり,本件原子炉施設は,その基本設計において,燃料被覆管や圧力バウンダリ自体における異常の発生を防止するとともに,これらの健全性に影響を与える他の機器等の異常の発生を防止するところの異常発生防止対策が講じられるものと判断された。 (ア)燃料の核分裂反応の確実かつ安定的制御燃料被覆管や圧力バウンダリの健全性を維持し,原子炉における異常の発生を防止するためには,まず,燃料の核分裂反応を確実に,かつ安定的に制御する必要があるところ,本件原子炉施設において使用される燃料の濃縮度(燃料中の全ウランに対するウラン235の占める重量の割合)は,平均で約2.2%と低濃縮度のものであり,また,本件原子炉は,軽水型原子炉であって,核分裂反応の割合が増大して燃料及び冷却材の各温度が上昇すれば,それに伴って核分裂反応が抑制されるという性質,すなわち,核分裂反応に対して固有の自己制御性を有することから,燃料の制御不能な核分裂反応が生ずることはない仕組みになっているほか,本件原子炉施設には,燃料の核分裂反応を 応が抑制されるという性質,すなわち,核分裂反応に対して固有の自己制御性を有することから,燃料の制御不能な核分裂反応が生ずることはない仕組みになっているほか,本件原子炉施設には,燃料の核分裂反応を安定的に制御する- 71 -反応度制御系(制御棒,再循環流量制御系等からなる原子炉出力制御)設備が設けられている。本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設は,燃料の核分裂反応を確実に,かつ安定的に制御することができるものと判断された。 (イ)燃料被覆管の健全性の維持本件原子炉に使用される燃料被覆管の上端には約30㎝の空間(プレナム)が設けられており,ここに,核分裂で生成されたガス状の生成物を溜めて,被覆管内の圧力が過度にならないようにしてある。本件原子炉稼働中は,燃料ペレットの中心部の温度は,約1830℃に達するが,燃料ペレットの熱伝導率が低いため,燃料ペレットの表面温度は約500℃,燃料被覆管最高温度は約380℃に止まる。 燃料ペレットを密封し,核分裂生成物等を閉じ込めている燃料被覆管は,損傷を防止し,その健全性を維持するために余裕をもった設計が行わなければならないが,燃料被覆管を損傷させる要因として,①核分裂反応によって発生する熱に比べて除去される熱が少ないために燃料被覆管の温度が上昇し,燃料被覆管が焼損すること,②燃料ペレットと燃料被覆管との相対的な熱膨張差によって生じるひずみにより燃料被覆管が機械的に損傷してしまうこと,③燃料ペレットから浸出した,主としてガス状の核分裂生成物等による内圧や冷却材による外圧等により燃料被覆管が機械的に損傷すること,④燃料被覆管が冷却材中の不純物等により化学的腐食を起こし損傷すること等が挙げられる。 本件原子炉施設においては,定格出力(電気出力約110万kW)で運転等に より燃料被覆管が機械的に損傷すること,④燃料被覆管が冷却材中の不純物等により化学的腐食を起こし損傷すること等が挙げられる。 本件原子炉施設においては,定格出力(電気出力約110万kW)で運転等における最小限界出力比が,燃料被覆管を焼損させないための限界値1.07を十分に上回る1.19以上に維持し得るように設計され,燃料被覆管の焼損防止策が施されている。また,燃料ペレットと燃料被覆管の熱膨張差は,平常運転時における燃料の単位長さ当たりの発熱量- 72 -(線出力密度)の大小に依存するところ,発熱量は,燃料被覆管が損傷を起こすおそれの生じる約83kW/mを十分に下回る約44kW/m以下に抑えられており,本件原子炉施設には,燃料ペレットとの熱膨張差による燃料被覆管の機械的損傷防止策が施されている。さらに,本件原子炉施設において使用される燃料被覆管が十分な強度をもって設計され,内圧や外圧等による燃料被覆管の機械的損傷防止策が施され,また,燃料被覆管には耐食性に優れた金属(ジルカロイ-2)が使用されることから,燃料被覆管の化学的腐食による損傷防止策も施されている。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設の燃料被覆管は,熱的,機械的,化学的影響によってその健全性が損なわれることのない,余裕のあるものが使用されると判断された。 (ウ)圧力バウンダリの健全性の維持燃料被覆管とともに放射性物質を閉じ込める重要な機能を担う圧力バウンダリも,その健全性を維持することのできる余裕をもった設計が行わなければならないが,圧力バウンダリを損傷させるに至る要因として,①圧力容器内の圧力等が過大となって圧力バウンダリが機械的に損傷すること,②圧力バウンダリ自体が核分裂反応による中性子照射を受け続けることにより脆性破壊を起こすこと,③ 損傷させるに至る要因として,①圧力容器内の圧力等が過大となって圧力バウンダリが機械的に損傷すること,②圧力バウンダリ自体が核分裂反応による中性子照射を受け続けることにより脆性破壊を起こすこと,③圧力バウンダリが冷却材中の不純物等により化学的腐食を起こして損傷すること等が挙げられる。 本件原子炉施設においては,圧力容器の設計圧力が約88㎏/cm に設定され,圧力容器内の圧力を圧力制御装置によって自動的に約71㎏/cmに保つように設計されており,圧力バウンダリの機械的損傷 の防止策が施され,また,①脆性破壊防止を十分考慮した延性の高い材料が使用され,②圧力容器内に脆性遷移温度の変化を知るための試験片が取り付けられ,③圧力容器の最低使用温度を脆性遷移温度より33℃以上高くすることができるように設計されており,圧力容器の脆性破壊- 73 -防止策も施されている。さらに,本件原子炉施設においては,①必要に応じて,耐食性に優れた材料であるステンレス鋼が使用され,②腐食の要因となる冷却材中の塩素濃度,pH値等が管理されているなど,冷却材について,適切な水質管理ができるように設計されており,圧力バウンダリの化学的腐食による損傷防止策が施され,また,圧力バウンダリを構成する機器及び配管は,運転開始後の検査によって,その健全性を確認できるように設計されている。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設の圧力バウンダリは,機械的,化学的影響によってその健全性が損なわれることのない,余裕のあるものであると判断された。 (エ)燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備の信頼性の確保燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備は,信頼性が確保され,原子炉が安定して運転し得る 被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備の信頼性の確保燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備は,信頼性が確保され,原子炉が安定して運転し得るだけの余裕のある設計がされなければならないが,燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備としては,燃料棒を支持する炉心支持構造物等の圧力容器内部の構造物,原子炉冷却系統設備,原子炉出力制御設備等があるが,これらの設備については,①性能や強度等に余裕をもった設計とし,また,②誤操作防止のため,運転員の操作に対する適切な配慮をするとともに,③必要な場合には自動制御装置を設置する必要がある。 本件原子炉施設の基本設計においては,上記各設備がいずれも性能や強度等に十分な余裕をもって設計され,①原子炉冷却系統設備や原子炉出力制御設備等に,各設備の状態を正確に把握することができるように,圧力,温度,流量等を測定する計測装置が設けられ,②原子炉出力制御設備には,運転員が誤って制御棒を引き抜こうとしても同時に2本以上- 74 -引き抜けなくする等のインターロックが掛かる装置が設けられており,誤操作の防止策が講じられている。さらに,本件原子炉施設の基本設計には,平常運転中タービン入口の蒸気加減弁を自動的に作動させることにより圧力容器内の圧力を一定に保持する圧力制御装置,並びに主蒸気流量,給水流量及び原子炉水位の3要素により圧力容器内の水位を自動的にあらかじめ設定された値に保持する水位制御装置が設けられるなど,原子炉の運転が正常な状態からずれた場合,これを自動的に修正する自動制御装置が設けられている。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設における燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすお ずれた場合,これを自動的に修正する自動制御装置が設けられている。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設における燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備は,信頼性が確保され,原子炉は安定して運転し得るものと判断された。 ウ異常拡大防止対策について本件安全審査においては,以上のとおり,本件原子炉施設について異常発生防止対策が講じられていると判断されたが,それにもかかわらず異常が発生した場合に備えて,以下のとおり,本件原子炉施設は,その基本設計において,異常が拡大したり,更には放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態にまで発展することを防止する対策が講じられているかどうかが検討され,その結果,上記対策が講じられていると判断された。 (ア)異常発生の早期かつ確実な検知燃料被覆管及び圧力バウンダリ並びにこれらの健全性に影響を及ぼすおそれのある設備に異常が発生した場合に所要の措置が採れるよう,異常の発生を早期に,かつ確実に検知する必要があるが,本件原子炉施設には,燃料被覆管の損傷を検知するために,冷却材中の放射能レベルを測定監視する計測装置,圧力バウンダリを構成する機器等からの冷却材の漏洩を検知する漏洩監視装置,原子炉の出力や原子炉冷却系統設備等- 75 -の圧力,温度,流量等を測定監視する計測装置等が設置され,異常の発生を検知した場合には,原子炉の停止等所要の措置が採れるように,直ちに警報を発する警報装置が設けられている設計である。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設は,異常の発生を早期にかつ確実に検知し得るものと判断された。 (イ)安全保護設備の設置燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備に発生した異常が大 して,本件原子炉施設は,異常の発生を早期にかつ確実に検知し得るものと判断された。 (イ)安全保護設備の設置燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備に発生した異常が大きなものであり,それに対し,迅速な措置を講じなければ燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性が損なわれるおそれのある場合に備え,所要の安全保護設備が設置される必要があるが,本件原子炉施設の基本設計においては,①原子炉冷却系統設備等に何らかの異常が発生し,圧力容器内の内圧の上昇や水位の低下等が生じた場合に,必要に応じて原子炉を緊急に停止させるために全制御棒が自動的に,かつ瞬間的に挿入される原子炉緊急停止装置が設けられ,②給水系による圧力容器への給水が停止した場合に,自動的に圧力容器へ給水することにより,圧力容器内の水位を維持するとともに原子炉停止後も残存する炉心の崩壊熱等を除去するための原子炉隔離時冷却系設備等が設けられ,更に,③圧力バウンダリ内の圧力が過度に上昇するような異常が生じた場合に,圧力バウンダリ内を減圧する逃し安全弁が設けられている。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設には,燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある異常に備え,所要の安全保護設備が設置されるものと判断された。 (ウ)安全保護設備の信頼性の確保本件原子炉施設においては,①安全保護設備がいずれも十分な性能,- 76 -強度等を有するように設計され,②安全保護設備のうち原子炉緊急停止装置については,上記装置用の電源が何らかの原因で喪失した場合においても自動的に制御棒が炉心内に挿入され,原子炉を停止させる能力を有するように設計されるとともに,上記装置を作動させる回路は多重性と独立性とを有するように設計されており, かの原因で喪失した場合においても自動的に制御棒が炉心内に挿入され,原子炉を停止させる能力を有するように設計されるとともに,上記装置を作動させる回路は多重性と独立性とを有するように設計されており,また,全制御棒のうちの最大反応度価値を有する制御棒1本が完全に引き抜かれている状態を仮定した場合においても,その他の制御棒を挿入することによって原子炉を停止する能力を有するように設計され,③原子炉隔離時冷却系設備等については,外部電力を用いず,圧力容器内で炉心の崩壊熱により発生する蒸気の一部を用いてタービン駆動のポンプを作動させることにより,原子炉停止後の崩壊熱等の除去及び圧力容器内の水位の維持を行う能力を有するように設計されている。さらに,④主蒸気系の安全弁については,構造が簡単で信頼性が高く,かつその開閉動作について電源等を一切必要としないバネ式のものが使用され,⑤安全保護設備は,その信頼性を常に保持するため,運転開始後もその性能が引き続き確保されていることを確認するための試験を行えるように設計されている。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設に設置される安全保護設備は,いずれも確実に所期の機能を発揮し得ると判断された。 (エ)安全保護設備等の設計の総合的な妥当性の解析評価本件原子炉施設の安全保護設備は,以上のとおり,いずれも信頼性が確保されるものと判断されたが,本件安全審査においては,更に,以下のとおり,運転時の異常な過渡変化解析が行われ,安全保護設備等の設計の総合的な妥当性が審査された。 すなわち,具体的には,上記異常な過渡変化として,本件原子炉施設の寿命期間中にその発生が予想される代表的な異常事象である①再循環- 77 -系の過渡変化(再循環ポンプ1台軸固着,再循環ポンプトリップ,再循環流量制御 ,上記異常な過渡変化として,本件原子炉施設の寿命期間中にその発生が予想される代表的な異常事象である①再循環- 77 -系の過渡変化(再循環ポンプ1台軸固着,再循環ポンプトリップ,再循環流量制御器誤作動,再循環ループ誤作動,②給水系の過渡変化(給)水制御器故障,給水加熱喪失,全給水流量喪失,③主蒸気系の過渡変)化(発電機負荷遮断,タービン・トリップ(タービン主蒸気止め弁閉鎖,主蒸気隔離弁閉鎖,圧力制御装置の故障,逃し安全弁の開放,))④制御棒系の過渡変化(起動時における制御棒引抜,出力運転中の制御棒引抜,⑤その他の過渡変化(高圧スプレイ系の誤起動,外部電源喪)失)を想定し,これらの事象について,安全保護設備のうち最もその評価結果が厳しくなるような機器の一つが単一の事象に起因して故障し(ただし,単一の事象に起因して必然的に起こる多重故障を含む,。)その機器の有する安全上の機能が発揮されないこと(以下「単一故障」という)を想定するなどの厳しい前提条件を設定して行われた解析結。 果が検討された。 その結果,最小限界出力比は,最も厳しい過渡現象である給水加熱喪失時及び発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不作動)時でも,限界値1.07を下回ることがないこと,燃料の線出力密度が最も厳しくなる出力運転中の制御棒引抜時においても,線出力密度は,約56kW/mであり,燃料被覆管の1%塑性歪に対応する線出力密度を下回っていること,急激な反応度増加を伴う過渡現象としてとり上げた起動時の制御棒引抜の場合の燃料ペレット最大エンタルピも許容設計限界値を下回っていることから,いかなる運転時の異常な過渡変化時においても,燃料被覆管の許容設計限界を超えることはないと判断され,また,早期炉心において原子炉圧力が最大となる発電負荷遮断(タービン・バイパ 下回っていることから,いかなる運転時の異常な過渡変化時においても,燃料被覆管の許容設計限界を超えることはないと判断され,また,早期炉心において原子炉圧力が最大となる発電負荷遮断(タービン・バイパス弁不作動)時の,最大圧力は,79.8㎏/cmであり,平衡炉心末 期のスクラム特性の劣化を考慮しても,最大圧力は,80.1㎏/cmに抑えられ,これらの数値は設計圧力の1.1倍の圧力(96.7㎏ - 78 -/cm)を下回っていることから,圧力バウンダリの健全性が保たれ ていると判断された。 本件安全審査においては,上記諸点が確認された結果,本件原子炉は,沸騰水型原子炉がもつ自己制御性と種々の安全保護機能の動作があいまって,運転中に起こる異常な過渡変化を安定的に制御し,燃料被覆管及び圧力バウンダリの健全性を保持できることが確認された。 (オ)タービン・トリップの解析評価タービン主蒸気止め弁が閉鎖すれば,主蒸気の遮断により原子炉圧力が上昇し,ボイド(気泡)が潰れることによる正の反応度投入によって中性子束は増加する。 しかし,タービン主蒸気止め弁閉スクラムによる負の反応度投入によって中性子束の増加が抑えられ,また,逃し安全弁の作動によって圧力上昇が抑制され,事象は収束する(乙3の10-36ないし39頁。 )この過渡変化の解析に当たっては,評価結果を厳しくするため,定格出力の約105%での運転を仮定し,また,タービン・バイパス弁が作動しないと仮定するなどの前提条件を設定した(乙3の10-37ないし39頁。 )その解析評価によれば,高出力運転中のタービン・トリップ時においても最小限界出力比が許容限界値を下回ることがないこと,また,表面熱流束の最大値は定格値の108%にとどまり,燃料の線出力密度は燃料被覆管の1%円周方向塑性歪に対応す 中のタービン・トリップ時においても最小限界出力比が許容限界値を下回ることがないこと,また,表面熱流束の最大値は定格値の108%にとどまり,燃料の線出力密度は燃料被覆管の1%円周方向塑性歪に対応する線出力密度を下回っていること,原子炉冷却材圧力バウンダリの最高圧力が,本件原子炉冷却材圧力バウンダリの最高使用圧力を超えることはないとされていることなどから,燃料被覆管及び原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性は保持されるとの評価結果は,妥当なものと判断された(乙3の10-37ないし39頁,乙4の39,40,42,44頁。 )- 79 -(カ)再循環流量制御系の誤動作再循環流量制御系の誤動作においては,炉心流量の増加に伴い,ボイドが減少し,中性子束が増加して出力が増加するが,中性子束の増大により,中性子束高スクラム信号が発生して,原子炉はスクラムし,事象は収束する(乙3の10-25ないし27頁。 )この過渡変化の解析に当たっては,評価結果を厳しくするため,原子炉は自動流量制御範囲の下限で運転中であり,主制御器の誤作動により最大となる毎秒11%の流量増加率の増加要求信号が発生した場合であると仮定するなどの前提条件を設定した(乙3の10-26頁。 )その解析評価によれば,再循環流量制御系の誤動作時においても,最小限界出力比は許容限界値を下回ることはないこと,表面熱流束は定格値の約80%にとどまること,また,原子炉圧力はわずかに上昇するにとどまり,原子炉冷却材圧力バウンダリに係る圧力は,最高使用圧力を大きく下回るとされていることから,燃料被覆管及び原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性を保持するとの評価結果は妥当なものと判断された(乙3の10-26・27頁,4の39ないし41,44頁。 )エ放射性物質異常放出防止対策について本件安全審 び原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性を保持するとの評価結果は妥当なものと判断された(乙3の10-26・27頁,4の39ないし41,44頁。 )エ放射性物質異常放出防止対策について本件安全審査においては,以上のとおり,本件原子炉施設について異常発生防止対策及び異常拡大防止対策がそれぞれ講じられているものと判断されたが,それにもかかわらず,放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態が発生した場合に備えて,以下のとおり,放射性物質の環境への異常放出という結果を防止する対策が講じられているかどうかが検討され,その結果,上記対策が講じられていると判断された。 (ア)安全防護設備の設置本件原子炉施設の基本設計には放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態の発生に備えて,①別紙5のとおり,燃料被覆管の重大- 80 -な損傷を防止するに十分な量の冷却材を炉心に注入するための高圧炉心スプレイ系一系統,自動減圧系一系統,低圧炉心スプレイ系一系統及び低圧注水系3系統からなるECCS,②圧力バウンダリから放出される放射性物質を閉じ込めるための高い気密性(漏洩率は,1日当たり0. 5%以下)を有する格納容器,③圧力バウンダリから高温の蒸気等が放出された場合に格納容器の健全性を確保するため,格納容器内の雰囲気(格納容器内部の空間の状態)を冷却,減圧し,更に,上記蒸気中に浮遊している放射性物質を洗い落とす格納容器スプレイ冷却系設備,④格納容器から原子炉建家内に漏洩した放射性物質を環境に異常に放出させないための放射性物質除去フィルタ(設計上のヨウ素除去率99%以上)等からなる非常用ガス処理系設備等が設けられている。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設には,圧力バウンダリを構成するいかなる配管の破断等の異常を想 去率99%以上)等からなる非常用ガス処理系設備等が設けられている。 本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設には,圧力バウンダリを構成するいかなる配管の破断等の異常を想定しても,放射性物質を環境に異常に放出することを防止し得る安全防護設備が設置されるものと判断された。 (イ)安全防護設備の信頼性①本件原子炉施設に設置される安全防護設備は,いずれも十分な性能,強度等を有するように設計されるとともに,定期的な試験,検査を実施できるように設計されていると認められた。 ②ECCSは,炉心への注水機能を有する高圧炉心スプレイ系一系統,低圧炉心スプレイ系一系統及び低圧注水系3系統,並びに原子炉の減圧機能を有する自動減圧系一系統から構成されているところ,これらの各系統は,外部電源が喪失した場合に備えて,非常用電源により作動させ得るように設計され,注水機能を有する系統については,低圧炉心スプレイ系一系統及び低圧注水系一系統(区分Ⅰ,低圧注水系)二系統(区分Ⅱ,高圧炉心スプレイ系一系統(区分Ⅲ)の独立した)- 81 -3区分に分離され,それぞれ一台のディーゼル発電機に,また,自動減圧系については蓄電池に接続されている。そして,中小口径破断時には,区分Ⅲが作動するが,仮にこの区分が作動しない場合でも自動減圧系が作動すると共に,これと連携して区分Ⅰ及び区分Ⅱの2区分が作動し,大口径破断時には,区分Ⅰ,区分Ⅱ及び区分Ⅲの3区分が作動し,いずれも1区分の不作動があっても対処できるなど,これらの系統は,圧力バウンダリを構成するいかなる配管の破断の際にも,上記3区分のうち1区分の系統の不作動があっても対処できる設計と認められた。 すなわち,a想定される配管破断等による原子炉冷却材喪失に対して,燃料及び燃料被覆管の重大な損 かなる配管の破断の際にも,上記3区分のうち1区分の系統の不作動があっても対処できる設計と認められた。 すなわち,a想定される配管破断等による原子炉冷却材喪失に対して,燃料及び燃料被覆管の重大な損傷を防止でき,かつ,燃料被覆管の金属と水との反応を十分小さな量に制限できる設計であること,b非常用所内電源系のみの運転下で単一故障を仮定しても,系統の安全機能が達成できるように,独立性を有する設計であること,c定期的に試験及び検査ができるとともに,その健全性及び多重性の維持を確認するため,独立に各系の試験及び検査ができる設計であることなどが確認された結果(乙3の8-100・101頁,本件原子炉施設)のECCSは,確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるものと判断された(乙4の32,33頁。 。)③格納容器は,脆性破壊を防止するため,最低使用温度より17℃以上低い脆性遷移温度を有する材料が使用され,更に,冷却材喪失事故時に格納容器の隔離機能を確保するため,格納容器を貫通する配管のうち閉鎖を要求されるものについて隔離弁が設けられていることが認められた。 ④格納容器スプレイ冷却系設備及び非常用ガス処理系設備は,いずれも十分な性能を有する互いに独立した二つの系統が設けられ,かつ,- 82 -外部電源が喪失した場合に備えていずれもディーゼル発電機等の非常用電源により作動させ得るように設計されていると判断された。 ⑤本件安全審査においては,上記諸点が確認されたとして,本件原子炉施設に設置される安全防護設備は,いずれも確実に所期の機能を発揮し得るものと判断された。 (ウ)安全防護設備等の設計の総合的な妥当性の解析評価本件原子炉施設の安全防護設備は,以上のとおり,いずれも信頼性が確保されるものと判断されたが,本件安全審査においては,更に るものと判断された。 (ウ)安全防護設備等の設計の総合的な妥当性の解析評価本件原子炉施設の安全防護設備は,以上のとおり,いずれも信頼性が確保されるものと判断されたが,本件安全審査においては,更に,以下のとおり,あえて放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態の発生を想定した場合の事故解析が行われ,安全防護設備等の設計の総合的な妥当性が審査された。 すなわち,具体的には,①反応度事故として,制御棒落下事故,②圧力バウンダリにある機器の破損,配管の破断によって引き起こされる事故として,冷却材喪失事故,③圧力バウンダリ外にある機器の破損,配管の破断等によって引き起こされる事故として,主蒸気管破断事故,④機器取扱事故として,燃料取扱事故,⑤放射性廃棄物廃棄施設における事故として,活性炭式希ガスホールドアップ装置破損事故を想定し,これらの事象について,単一事故を過程(仮定)した上で,評価結果が厳しくなるような前提条件を設定して行われた解析結果が検討された。 なお,冷却材喪失事故については,炉心の冷却にとって最も厳しい結果となる定格出力の約105%での運転中に,冷却材再循環系配管の1本が瞬時に完全に破断し,冷却材再循環系配管の破断と同時に外部電源が喪失し,かつ,事故時に作動が要求されているECCSに動的機器の単一故障(低圧炉心スプレイ系の非常用ディーゼル発電機の故障)が起こるなどと仮定し,解析結果を厳しくするための前提条件を設定したと),ころ(乙2の10-3-19頁,①燃料被覆管の延性が極度に失われ- 83 -炉心の冷却可能形状を保持し続けることができなくなるのは,燃料被覆管の最高温度が1200℃を超えた場合,又は燃料被覆管の延性を失わせる全酸化量が酸化前の燃料被覆管の厚さの15%を超えた場合であるが,燃料被覆管の最高温度は約8 けることができなくなるのは,燃料被覆管の最高温度が1200℃を超えた場合,又は燃料被覆管の延性を失わせる全酸化量が酸化前の燃料被覆管の厚さの15%を超えた場合であるが,燃料被覆管の最高温度は約886℃であるので,燃料被覆管の損傷はなく,燃料被覆管の破裂に至るような周方向応力も生じないこと,また,燃料被覆管における全酸化量は,酸化前の燃料被覆管の厚さに対して最大約0.3%と小さいことから燃料被覆管の延性は失わないことなどによって燃料棒は冷却可能な形状に維持され,燃料の冷却は確保されること,②破断した配管から放出される冷却水及び水-ジルコニウム反応により発生した水素により原子炉格納容器内の圧力は上昇するものの,本件原子炉格納容器の設計圧力を超えることはないことなどから,ECCS,原子炉格納容器等の設計は妥当なものと判断された(乙4の46ないし48頁。 )その結果,本件安全審査においては,事故事象の分類,代表事故の選定は,事故の発生原因,事故経過及び結果からみて妥当なものであり,本件原子炉施設は,万一,放射性物質を環境に異常に放出するおそれのある事態が発生しても,放射性物質の環境への異常な放出を防止できるものとなっていることが確認され,本件原子炉施設の安全防護設備等の設計は,総合的にみて妥当なものであると判断された(乙2の10-3-1ないし5,62ないし90頁,乙4の44ないし49頁。 )(甲30,33,35,37,38,41,45,48,49,乙1ないし4,9,11,14,16,19,20,30の①②,31ないし37,原審における証人P1の証言,弁論の全趣旨)(10)想定される飛来物に対する安全審査ア安全設計審査指針(乙14)においては「指針5飛来物等に対する,設計上の考慮」として「安全上重要な構築物,系統及び機器は,想 の証言,弁論の全趣旨)(10)想定される飛来物に対する安全審査ア安全設計審査指針(乙14)においては「指針5飛来物等に対する,設計上の考慮」として「安全上重要な構築物,系統及び機器は,想定さ,- 84 -れる飛来物,配管のむち打ち又は流出流体の影響等から生じるおそれのある動的影響,熱的影響又は溢水によって原子炉の安全を損なうことのない設計であること」とされ,原子力委員会が当該指針に付記した「解説」。 によれば「飛来物」には「航空機の墜落」が含まれることが明記されて,いる(乙14,弁論の全趣旨。 )イ東京電力は,本件補正(乙3)において「航空機落下については,当,発電所近くに飛行場がなく,発電所上空の航空機は巡航状態であり,巡航中の航空機落下は考慮する必要がない(乙3の8-47頁)とした。」(乙3。 )ウこれを受けて本件安全審査においては「航空関係については,敷地周,辺に飛行場はなく,最寄りの空港は,新潟空港で敷地から約75㎞離れている。敷地の東約5㎞及び西約20㎞離れた位置の上空にはそれぞれ新潟-名古屋間及び新潟-小松間を結ぶ国内線の航空路があり,敷地上空は前者の保護空域とされている。保護空域は,計器誤差,風による影響等により航空機が指定のコースからずれることを考慮して,航空機を保護するため設けられる空域であるので,原子炉施設上空を航空機が飛行することは極めて稀であると考えられる。さらに,保護空域となっている本敷地上空を飛行する民間機の航空便数,機種等についての調査結果を考慮すると航空機の墜落による原子炉施設への影響については確率的に見て考慮する必要はないと判断する」とした(乙4の26及び27頁。 。 )(11)原子炉施設の地質・地盤及び地震に係る本件安全審査の審査内容立地審査指針(乙10)は,安 への影響については確率的に見て考慮する必要はないと判断する」とした(乙4の26及び27頁。 。 )(11)原子炉施設の地質・地盤及び地震に係る本件安全審査の審査内容立地審査指針(乙10)は,安全審査会が,陸上に定置する原子炉の設置に先立って行う安全審査の際,万一の事故に関連して,その立地条件の適否を判断するために定められた指針であるところ,同指針は,原則的立地条件として「大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったこと,はもちろんであるが,将来においてもあると考えられないこと。また,災害- 85 -を拡大するような事象も少ないこと」が必要であると明記しており,これを受けて,安全審査会は,昭和53年8月23日「原子力発電所の地質,地,」,盤に関する安全審査の手引き(甲105。地質・地盤の手引き)を作成し「原子炉施設の設置される場所の地質・地盤は,原子炉施設の自己荷重のほか,想定される地震その他の荷重をきびしく評価しても,原子炉施設の安全性を十分に確保し得るものでなければならない」と規定した上で,地質・。 地盤に関する審査要領の中で「敷地周辺の地質構造において,顕著な断層,または褶曲構造の存在が認められるときは,その活動について十分安全側の評価がなされなければならない」と規定した。 。 そして,当時の原子力委員会は,昭和53年9月に「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を定め,そして,原子力安全委員会は,昭和56年7月20日,これを一部改訂して更に「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(乙111。耐震設計審査指針。ただし,一部改訂平成13年」3月29日同委員会)を決定し,その基本方針として「発電用原子炉施設,は想定されるいかなる地震力に対してもこれが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有し 針。ただし,一部改訂平成13年」3月29日同委員会)を決定し,その基本方針として「発電用原子炉施設,は想定されるいかなる地震力に対してもこれが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有していなければならない。また,建物・構築物は原則として剛構造にするとともに,重要な建物・構築物は岩盤に支持させなければならない」とし,施設の重要度に応じて基準地震動(敷地の解放基盤表。 面において考慮する地震動)を定め,圧力バウンダリを構成する機器・配管系等の最重要施設に対しては「地震学的見地に立脚し設計用最強地震を上,回る地震について,過去の地震の発生状況,敷地周辺の活断層の性質及び地震地体構造に基づき工学的見地からの検討を加え,最も影響の大きなものを想定」して選定された「設計用限界地震による地震力に対してその安全機能が保持できること」と規定された(甲105,乙1ないし4,10,11。 1,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨)ア本件安全審査において検討された事項- 86 -原子炉施設においては,敷地地盤が脆弱であり,工学的に対処不可能なほどの大規模な地すべり,山崩れ,山津波等が発生したり,敷地及び敷地周辺において活発な構造運動があり,地震が発生したりすると,原子炉施設の支持地盤の安定性,ひいては同施設の安全性を損なうおそれがあると判断された。 そして,本件原子炉施設の地質・地盤及び地震に係る安全性に関し,本件安全審査において検討された事項は,以下のとおりであり,その際,原子力委員会が指示した立地審査指針(乙10)及び安全設計審査指針(乙14)が用いられた。 (ア)本件原子炉施設の地質・地盤に係る安全性本件原子炉施設の敷地の地質・地盤に係る条件が,同施設における大きな事故の誘因とならないかどうか,具体的には 安全設計審査指針(乙14)が用いられた。 (ア)本件原子炉施設の地質・地盤に係る安全性本件原子炉施設の敷地の地質・地盤に係る条件が,同施設における大きな事故の誘因とならないかどうか,具体的には,本件原子炉施設の支持地盤は,同施設を支持するために必要な地耐力を有しているか,荷重による不等沈下を起こすおそれがないかどうか,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺における広範囲にわたる地質の分布及び構造からみて,同施設の支持地盤が,十分な安全性を有しているかどうか。本件原子炉施設の敷地の地質・地盤は,本件原子炉施設に損傷を与えるような大規模な地すべり,山崩れ,山津波等を発生させるおそれがないかどうか。 (イ)本件原子炉施設の地震に係る安全性地震及びこれに伴う事象が,本件原子炉施設における大きな事故の誘因とならないかどうか,具体的には,過去の地震歴や,断層の活動性等から,将来発生することがあり得るものと考えられるべき地震のうち本件原子炉施設に大きな影響を与えるであろうと考えられる地震,すなわち本件原子炉施設において耐震設計上考慮すべき地震が適切に選定されているかどうか。選定される地震が本件原子炉施設の敷地に及ぼすと考えられる影響を考慮した上で,本件原子炉施設の敷地地盤における設計- 87 -用地震動が余裕をもって設定されているかどうか。設定される設計用地震動に対して,工学的,技術的見地からみて,適切な耐震設計が本件原子炉施設につき講じられているかどうか。 (乙1ないし4,10,14,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨)イ本件原子炉施設の地質・地盤に係る安全性本件安全審査においては,以下のとおり,本件原子炉施設の支持地盤が,同施設を支持するために十分な地耐力を有し,かつ同施設の荷重による不等沈下を起こさないこと 本件原子炉施設の地質・地盤に係る安全性本件安全審査においては,以下のとおり,本件原子炉施設の支持地盤が,同施設を支持するために十分な地耐力を有し,かつ同施設の荷重による不等沈下を起こさないこと,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の地質・地盤には,褶曲構造が認められるが,褶曲運動等の程度から見て,本件原子炉施設の支持地盤の安全性を損なうものではないこと,本件原子炉施設の敷地全体の地質・地盤には,同施設に損傷を与えるような大規模な地すべり,山崩れ,山津波を発生させるおそれのある地形又は地質状況は認められないこと等が確認された結果,本件原子炉施設の地質・地盤に係る条件は,同施設における大きな事故の誘因にならないと判断された(乙1ないし4,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨。 )(ア)支持地盤に係る安全性本件原子炉施設は,地盤を数十メートル掘り下げて,強固かつ安定した岩盤を露出させ,これを支持地盤としてその上に直接建てられているが,上記支持地盤は,別紙6のとおり,新第三紀に形成された西山層(泥岩から成る地層である)であり,同地層は本件原子炉施設の敷地。 全域にわたって分布している。本件安全審査においては,以下のとおり,本件原子炉施設の支持地盤に係る安全性が確保されるものと判断された。 ①本件原子炉施設の支持地盤である西山層の支持力は,1cm当た り62ないし85㎏であるところ,本件原子炉施設の自重は,平常時- 88 -で1cm当たり7㎏,地震時で1cm当たり14㎏であった(試 掘坑内で実施された平板載荷試験の結果。そして,支持地盤が本件)原子炉施設を支持し得るとしても,上記施設の重量による支持地盤の変形は避けられないが,本件安全審査においては,試掘坑で実施した変形試験の結果から,荷重に対 載荷試験の結果。そして,支持地盤が本件)原子炉施設を支持し得るとしても,上記施設の重量による支持地盤の変形は避けられないが,本件安全審査においては,試掘坑で実施した変形試験の結果から,荷重に対する変形はごく小さく,工学的には無視でき,また,長期的にある荷重がかかり続けると沈下するクリープ現象も本件原子炉施設の設計上は支障とならず,本件原子炉施設の支持地盤は変形に対する抵抗力を十分に有すると判断された。さらに,本件原子炉施設の支持地盤のせん断抵抗力は,幅1m当たり1万0400トンであり,他方建築基準法施行令88条,建設省告示第1074号(地盤の種別及び構築物の種別による低減率)所定の最大水平震度の3倍の力が本件原子炉施設に加えられたときに生ずる水平方向の),力は,幅1m当たり3300トンであり(岩盤せん断試験等の結果3.2の安全率があることから,本件安全審査においては,本件原子炉施設の支持地盤は,十分な余裕を持ったせん断抵抗力を有するので,同地盤は十分な地耐力を有し,地震による地盤破壊のおそれはないと判断された(乙2の6-3-42ないし45頁,乙3の6-452,453,458,459頁,乙4の23,24頁,原審における証人P6の証言。 )②本件安全審査においては,本件原子炉施設の支持地盤について行われた岩石,岩盤試験の結果から,同支持地盤の強度的不均一性は極めて小さいため,本件原子炉施設の重量による不等沈下が生ずるおそれはないことから,同施設の支持地盤に係る安全性が確保されるものと判断された(乙3の6-381ないし387,458,459頁,乙4の23,24頁,原審における証人P6の証言。 )③本件安全審査においては,石油関係資料,海上保安庁水路部資料,- 89 -験潮記録及び水準測量記録等の文献調査,本件原子炉施設の 459頁,乙4の23,24頁,原審における証人P6の証言。 )③本件安全審査においては,石油関係資料,海上保安庁水路部資料,- 89 -験潮記録及び水準測量記録等の文献調査,本件原子炉施設の敷地を中心とする半径約30㎞の範囲における詳細な空中写真判読及び地表踏査,海上保安庁水路部で実施した海上音波審査資料の解析等の調査,敷地内で実施したボーリング調査の結果等から,a本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の地盤は,下から上へ(すなわち年代的に古いものから新しいものへ)向かって順に,新第三紀に堆積した寺泊層,椎谷層,西山層及び灰爪層,新第三紀又は第四紀に堆積した魚沼層群,第四紀に堆積した青海川層,安田層,番神砂層,雪成砂層,沖積層(新期砂層を含む)の各地層で構成され,寺尾層,椎谷層,西山層及び。 灰爪層並びに魚沼層群の一部に褶曲構造がある(乙2の6-3-4ないし12,53,57頁,乙4の20,21頁,b地層における褶)曲構造の存在は,過去において当該地層を褶曲させた構造運動があったことを示し,その褶曲運動の活動時期は,褶曲構造を示す地層の上位にある褶曲していない地層の形成時期から判断できるところ,本件原子炉施設の敷地の支持地盤である西山層は褶曲構造を呈しているが,その上位に分布する第四紀後期(珪藻化石から判断される堆積環境の変化及び花粉化石から判断される古気候と海水準変動との対応関係から12ないし14万年前と判断される(乙4の22,23頁)地層である安田層は,敷地全域にわたってほぼ水平に連続しており(原審における証人P6の証言,また,西山丘陵地域には空中写真判読によ)ってもリニアメントは認められず,地表踏査等によっても安田層堆積終了以降における断層活動を示唆する地形や断層露頭が認められないことから(乙4の20,21頁,原審にお 丘陵地域には空中写真判読によ)ってもリニアメントは認められず,地表踏査等によっても安田層堆積終了以降における断層活動を示唆する地形や断層露頭が認められないことから(乙4の20,21頁,原審における証人P6の証言,少)なくとも,安田層の堆積以降においては,褶曲運動が継続しているとは考えられない(乙2の6-3-30頁,c本件原子炉施設の敷地)は,羽越活褶曲帯に属するとされており,同褶曲帯では広域的には地- 90 -殻変動が認められるが,仮に本件原子炉施設の敷地の周辺の地質・地盤において,近年においても褶曲運動が継続しているとしても,それによる褶曲の変位の速度は最大に見積もっても年10以下のオーダ-6ーであるので,同褶曲運動の本件原子炉施設の敷地への影響は,工学的には無視できる,dしたがって,本件原子炉施設の支持地盤に係る安全性を損なうような大規模な構造運動は起こり得ず,地下深部から地表に至る地殻自体の変動,例えば褶曲運動等の構造運動が本件原子炉施設の支持地盤の安全性を損なうおそれはないと判断された。 (イ)敷地及び敷地周辺の地質・地盤の安定性地すべりや山津波等は,地盤の斜面部などで重力(地盤の自重)の不均衡によって発生する現象であるので,斜面の存在しないところにおいてはもとより,傾斜地であっても重力の不均衡の要因を取り去れば,発生することはない。したがって,大規模な地すべりや山津波等が発生するおそれがあるか,そして,地すべりや山津波等に対し,傾斜や重力不均衡の要因の除去という工学的な対処が可能であるか否かは,①地表に広範囲の急傾斜面があるかどうか,②地質・地盤中に断層や傾斜した地層その他の広範囲かつ急傾斜した不連続な面(この面に沿って地盤がす。 ,べる可能性がある)が存在するかどうか,③地盤を構成する物質(砂粘土, 傾斜面があるかどうか,②地質・地盤中に断層や傾斜した地層その他の広範囲かつ急傾斜した不連続な面(この面に沿って地盤がす。 ,べる可能性がある)が存在するかどうか,③地盤を構成する物質(砂粘土,泥等)のすべりに対する抵抗力が小さいかどうかにかかわることになる。本件安全審査においては,以下のとおり,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の地質・地盤において,同施設に被害を与えるような,工学的に対処不可能な大規模な地すべりや山津波等が発生するおそれはないと判断された。 ①本件原子炉施設の敷地は,柏崎市及び刈羽郡ω1にまたがり,西山丘陵の南端部に位置し,同敷地の形は,海岸線に平行に約3.2㎞,直角に内陸に向かって約1.4㎞の半楕円形をなし,同敷地前面の海- 91 -岸線から同敷地背面の境界部にある標高60m前後の稜線に向かってなだらかに高くなる丘陵地となっていることから,本件安全審査においては,本件原子炉施設に近接した位置の地表に,地すべりや山津波の原因となるような広範囲の急傾斜の斜面はないと判断された(乙1,乙2の6-1-1,3頁,乙4の22頁,原審における証人P6の証言。 )②本件安全審査においては,本件原子炉施設の敷地内において実施された地表踏査,ボーリング調査,試掘坑調査等の結果から,本件原子炉施設の敷地の支持地盤である西山層が,節理の発達が少なく,かつ大規模な断層や破砕帯も存在しない,強固かつ安定した岩盤であると判断された(原審における証人P6の証言。 )③本件原子炉施設の敷地の支持地盤である西山層(泥岩層)の上には,これを覆う形で,約12万年ないし14万年前に形成された安田層(硬質の粘土等を主体とする)が,ほぼ水平な層を成して存在し,。 また,安田層の上には約3万年ないし8万年前に形成された半固結状の番神砂層(砂質土 形で,約12万年ないし14万年前に形成された安田層(硬質の粘土等を主体とする)が,ほぼ水平な層を成して存在し,。 また,安田層の上には約3万年ないし8万年前に形成された半固結状の番神砂層(砂質土を主体とする,更に,最上位の地層として新。)期砂層(砂丘砂を主体とする)が存在するが,本件安全審査におい。 ては,これら異なる地層が接する不連続な面に傾斜がないわけではないが,いずれも地表部付近において局所的に存在しているのみで,本件原子炉施設に被害をを及ぼすような大規模な地すべりや山津波を引き起こすおそれはないと判断された(乙4の22頁,原審における証人P6の証言。 )ウ本件原子炉施設の地震に係る安全性本件安全審査においては,以下のとおり,本件原子炉施設において耐震設計上考慮すべき地震は,過去の地震歴や,断層の活動性等から,適切に選定されていること,選定された地震が本件原子炉施設の敷地に及ぼすと- 92 -考えられる影響を考慮した上で,本件原子炉施設の敷地地盤における設計用地震動が余裕をもって設定されていること,設計用地震動に対して,工学的,技術的見地からみて,適切な耐震設計が本件原子炉施設につき講じられていることが確認された結果,地震及びこれに伴う事象(機器や配管の振動等)は,本件原子炉施設における大事故の誘因とならないものと判断された(乙1ないし4,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨。 )(ア)耐震設計上考慮すべき地震原子炉施設の耐震設計に用いられる設計用地震動は,耐震設計上考慮すべき地震を基準として余裕をもって設定されるべきであるから,設計用地震動の設定やこれに基づく耐震設計が適切に行われるためには,基準になる地震の選定が適切に行われる必要があるところ,本件安全審査においては,以下の諸点が 余裕をもって設定されるべきであるから,設計用地震動の設定やこれに基づく耐震設計が適切に行われるためには,基準になる地震の選定が適切に行われる必要があるところ,本件安全審査においては,以下の諸点が確認され,本件原子炉施設の設計上,耐震設計上考慮すべき地震が適切に選定されていると判断された。 ①耐震設計上考慮すべき地震の選定に関する基本方針a地震は,ほぼ同様の規模で繰り返し発生するものであるとされているところから,将来においても,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺において,過去に発生した地震と同じ様な影響を及ぼす地震が同所で発生するおそれがあること,b有史時代より前に発生した地震は,地震歴の調査による方法では把握できないので,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の断層について,その活動性の有無を調査する必要があるところ,我が国においては,第四紀後期においては応力の掛かり方はほぼ一定方向であり,この力によって同一の断層が繰り返し活動し,地震を発生させたものと考えられていることから,工学的見地からは,第四紀後期における活動性が全くないか,又は低い断層についてまで,将来において活動すると考える必要はなく,本件原子炉施設- 93 -の耐震設計においては,過去の地震歴の調査によって,過去に発生し,本件原子炉施設の敷地の地盤に対して影響を与えたことが判明している地震,若しくは影響を与えたことが推定される地震,又は,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の地質・地盤に存在する第四紀後期以降の断層の調査によって,同断層の活動により同地盤において将来発生することがあり得るものと考えられる地震の中から,本件原子炉施設に最も大きい影響を与えるであろうと考えられるものが考慮された。 ②過去の地震歴本件原子炉施設の設置場所である柏崎付近が被害の中心となった地震は り得るものと考えられる地震の中から,本件原子炉施設に最も大きい影響を与えるであろうと考えられるものが考慮された。 ②過去の地震歴本件原子炉施設の設置場所である柏崎付近が被害の中心となった地震は有史以降ないが,本件原子炉施設の耐震設計上,a越後南西部の地震(発生時期1502年,マグニチュード(以下「M」という)。 6.9,震央距離42㎞,推定最大加速度95Gal,b越後高田)の地震(発生時期1614年,M7.7,震央距離54㎞,推定最大加速度160Gal,c越後三条の地震(発生時期1828年,M)6.9,震央距離33㎞,推定最大加速度130Gal,d六日町)の地震(発生時期1904年,M6.9,震央距離30㎞,推定最大),加速度150Gal,e新潟地震(発生時期1964年,M7.5震央距離115㎞,推定最大加速度30Gal)の各地震が考慮され,上記各地震のうち,同様の地震が将来再び発生した場合に,本件原子炉施設に最も大きな影響を及ぼすと判断されるものは,推定最大加速度が最も大きい越後高田の地震(M7.7,推定最大加速度160Gal)であると判断された。 ③敷地及び敷地周辺の地質・地盤に存在する断層本件原子炉施設の耐震設計においては,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の広い範囲を対象とする文献調査(石油関連資料等,空中)写真判読及び地表踏査による地形,地質調査が行われ,その結果,上- 94 -記範囲に存在する断層及び存在が推定される断層のうち,地すべり性の断層,構造性の断層でも本件原子炉施設から遠く,かつ小規模なものが除外され,耐震設計上考慮すべき断層と判断される可能性のあるものとして気比ノ宮断層,中央丘陵西縁部断層,真殿坂断層及び椎谷断層が選定され,更に,上記4断層について,第四紀後期における活動性が評価され,そ れ,耐震設計上考慮すべき断層と判断される可能性のあるものとして気比ノ宮断層,中央丘陵西縁部断層,真殿坂断層及び椎谷断層が選定され,更に,上記4断層について,第四紀後期における活動性が評価され,それに基づいて,断層活動に基づく地震によって本件原子炉施設に大きな影響を与えると考えられるものが,耐震設計上考慮すべき断層として選定されたが,第四紀後期の活動性の評価に当たっては,第四紀後期の活動が活発かつ大規模な断層は,その断層活動の痕跡として,連続したリニアメント,すなわち線状を呈する地形が地表に明瞭に判読されるかどうかとか,リニアメント線上及びその近傍の露頭に,第四紀後期にしばしば活動したことを示す断層や地下深部における第四紀後期の断層活動を反映していると考えられる撓曲構造等が認められるか否か等の地形上,地質構造上の特徴を伴うことが着目された。第四紀後期に活動した断層により形成されたリニアメントは,形成年代が新しいことから,浸食される期間が短いため,地形上の特徴として明瞭に判読され,かつ,断層露頭や撓曲構造近くでこれらと同一方向に向かって延びるものとして判読されるが,古い時代に活動した断層により形成されたリニアメントは,長い期間の浸食作用によって不明瞭になったり,断層露頭等と一致しないなど,上記地形,地質構造上の特徴は,第四紀後期における断層の活動性に関し,極めて有用な指標となるとされている。 そして,本件原子炉施設の耐震設計においては,以下のとおり,上記4断層について検討され,断層や撓曲構造,更に構造運動を反映した第四紀後期の地層の変形などがリニアメントと対応している場合には,最近の地質時代に繰り返し活動している断層であると判断され,- 95 -連続して認められるリニアメントに上記地質構造の特質も加えて,これにより断層の長さ(長 がリニアメントと対応している場合には,最近の地質時代に繰り返し活動している断層であると判断され,- 95 -連続して認められるリニアメントに上記地質構造の特質も加えて,これにより断層の長さ(長さにより,当該断層が引き起こし得る地震の規模が推定される)が判定され,第四紀後期における活動性が評価。 された結果,本件原子炉施設の耐震設計上考慮すべき断層として気比ノ宮断層が選定された(乙4の20,21,24頁,原審における。 証人P6の証言)a気比ノ宮断層気比ノ宮断層は,本件原子炉施設の敷地東方の中央丘陵東縁部信濃川左岸地区の長岡市ω2付近からω3付近に至る延長約17.5㎞の範囲で,地下深部に存在の可能性が推定される断層であり,本件原子炉施設の耐震設計においては,当該地域の段丘面や丘陵部には,かなり明瞭なリニアメントが認められていること,地盤の地層に過褶曲構造が認められ,この過褶曲を呈する構造の方向が上記リニアメントに概ね一致していること,この地区に上記過褶曲構造を覆って発達する段丘が平野側に著しく傾斜しているという地形上の特徴を有し,褶曲運動の影響を受けたと考えられていること,及び上記段丘の堆積物が第四紀後期に形成されたことから,第四紀後期においても褶曲運動は続いており,上記断層は第四紀後期の活動性がある程度大きいものと判断された(乙2の6-3-11頁,乙3の6-266ないし268頁,乙4の21頁,原審における証人P6の証言。 )b中央丘陵西縁部断層(常楽寺断層)中央丘陵西縁部断層は,中央丘陵西縁部のω4からω5に至る延長約12.5㎞の範囲で,地下深部に存在する可能性があると推定される断層であり,本件原子炉施設の耐震設計においては,上記地域の新第三紀ないし第四紀の灰爪層又は魚沼層群で構成された地層- 96 -部には, .5㎞の範囲で,地下深部に存在する可能性があると推定される断層であり,本件原子炉施設の耐震設計においては,上記地域の新第三紀ないし第四紀の灰爪層又は魚沼層群で構成された地層- 96 -部には,気比ノ宮断層で認められたリニアメントに比べて,やや不明瞭なリニアメントが認められたこと,リニアメントに沿って一部に撓曲構造が確認されること等から,地表付近においては大規模な断層は存在しないものの,地下深部においては,断層が存在する可能性は否定できないこと,しかし,リニアメントと,断層の存在を推定させる撓曲構造の位置とが一部において一致しないこと,撓曲構造に沿う多数の露頭で第四紀後期に活動したことを示す断層が存在しないことから,上記断層の第四紀後期における活動はなかったか,仮にあったとしても,その活動性はごく小さいものと判断された(乙3の6-275ないし278頁,乙4の21頁,原審における証人P6の証言。 )c真殿坂断層,椎谷断層真殿坂断層は,本件原子炉施設の敷地の北東方向にある西山丘陵のω6から北東方向に延びる延長約14㎞の範囲で,地下深部に存在する可能性があると推定される断層であり,椎谷断層は,西山丘陵の柏崎市ω7から北東方向にあるω8に至る延長約13㎞の範囲で,地下深部に存在する可能性があると推定される断層であり,両断層とも,文献(石油関係資料)において,地下深部に推定されている断層であると判断された。 本件原子炉施設の耐震設計においては,上記両断層が第四紀後期に活動したとすれば,地形上何らかの形跡が残されているものと考えられるが,空中写真判読によっても両断層共に全くリニアメントは認められず,地表踏査等によっても,第四紀後期において断層活動を示唆する地形(断層崖,ケルンコル等)や断層露頭が認められないことから,上記両断層の第四 写真判読によっても両断層共に全くリニアメントは認められず,地表踏査等によっても,第四紀後期において断層活動を示唆する地形(断層崖,ケルンコル等)や断層露頭が認められないことから,上記両断層の第四紀後期において活動性は無視できると判断された(乙2の6-3-9頁,乙3の6-269ないし。 - 97 -273頁,乙4の20,21頁,原審における証人P6の証言)以上の検討の結果,本件原子炉施設の耐震設計においては,a耐震設計上考慮すべき断層は気比ノ宮断層である,b過褶曲構造やその構造と一致するリニアメントの存在等から断層の長さは,約17.5㎞と推定される(乙4の21頁,原審における証人P6の証言,c将)来,断層活動により発生することがあり得るものと考えるべき地震の規模は,当該断層の長さから推定することができるところ,気比ノ宮断層の活動によって将来発生することがあり得るものと考えられる地震の規模を,一般に広く用いられている松田式(断層の長さから地震の規模を推定する式)により算出すると,M6.9となる,d同地震による推定最大加速度は,震央距離を20㎞として,220Galと算定され,これが耐震設計上考慮すべき地震であると考えられるなどと判断された(乙2の6-5-18,19頁,乙3の6-9,52。 ないし56頁,乙4の24頁,原審における証人P6の証言)(イ)設計用地震動地震が原子炉施設に及ぼす影響は,当該地震が原子炉施設の敷地地盤に対して,どのような地震動を与えるかによって異なり,地震が敷地地盤にどのような地震動を与えるかは,主に当該地震動の最大加速度及び周期特性によって左右されるから,設計用地震動の設定に当たっては,耐震設計上考慮すべき地震による地震動に対して余裕のある最大加速度と適切な周期特性を選んで採用することが必要であるとこ 最大加速度及び周期特性によって左右されるから,設計用地震動の設定に当たっては,耐震設計上考慮すべき地震による地震動に対して余裕のある最大加速度と適切な周期特性を選んで採用することが必要であるところ,本件安全審査においては,以下の諸点が確認され,本件原子炉施設の耐震設計においては,設計用地震動の設定に当たって,過去の地震歴や断層の活動から将来発生することがあり得るものと考えるべき地震のうち耐震設計上考慮すべき地震に対しても,十分余裕のある最大加速度を採用し,かつ,地震動と原子炉施設を構成する機器等との共振に配慮した適切な周- 98 -期特性等を採用していると判断された。 ①最大加速度本件原子炉施設において耐震設計上考慮すべき地震によって敷地地盤に与えられる地震動の推定最大加速度のうち最大のものは,上記(ア)のとおり,気比ノ宮断層の活動によって将来発生することのあり得る地震による220Galであるところ,本件原子炉施設の耐震設計においては,設計用地震動の最大加速度を300Galとした。 ②周期特性本件原子炉施設の耐震設計においては,本件原子炉施設(大部分が厚い壁,太い柱を有する鉄筋コンクリート造りの構築物)が,原則として剛構造である上,直接に岩盤(敷地地盤)上に設置されるため,同施設の固有周期はほぼ0.5秒以下の短周期振動系となることが考慮され,敷地地盤における設計用地震動の波形として,重要施設の耐震設計に広く用いられている過去の代表的な強震記録波形の中から,ほぼ0.5秒以下の周期範囲で,a比較的短周期側が優勢なゴールデンゲートパーク記録(米国,1957年,サンフランシスコ地震,M5.3,b比較的中周期が優勢なタフト記録(米国,1952年,)カーンカウンティ地震,M7.7,及びc比較的長周期側が優勢な)エルセントロ記録 ク記録(米国,1957年,サンフランシスコ地震,M5.3,b比較的中周期が優勢なタフト記録(米国,1952年,)カーンカウンティ地震,M7.7,及びc比較的長周期側が優勢な)エルセントロ記録(米国,1940年,インペリアルバレー地震,M7.1)の3波が選定された。 (乙2の6-5-18,19頁,8-1-50,51頁,乙3の6-9,52ないし54頁,132頁,乙4の24頁。 )(ウ)本件原子炉施設の耐震設計①剛構造及び岩盤設置本件原子炉施設は,地震時における原子炉格納施設や機器の変形の程度を小さくするため,原則として,同施設の主要な部分を剛構造と- 99 -した上,同施設全体を岩盤(西山層)上に直接設置する(乙1,乙2の8-1-47頁,乙3の7,8頁,乙4の27頁。 )②重要度分類に応じた耐震設計本件原子炉施設の耐震設計においては,同施設を構成する構築物等が安全上の重要度に応じてA,B,Cの3種類に分類され,それぞれの重要度に応じた耐震設計が講じられ(乙1,乙2の8-1-47,48ないし50,57頁,乙3の7,8,8-1ないし3,134頁,乙4の27頁,特に,原子炉施設のうち主要施設(Aクラス,す))なわち,その機能喪失が原子炉事故を引き起こすおそれのある施設や本件原子炉施設周辺の公衆に対して放射線障害を与えることを防止するために必要な施設に対しては,水平震度については,建築基準法に定められている水平震度の3倍の震度を,鉛直震度については,同法に定められている水平震度の1.5倍の震度を考慮した静的解析と,本件原子炉施設の支持地盤に与えられる設計用地震動を用いた動的解析がそれぞれ行われ,上記静的解析及び動的解析から求められたいずれの地震力に対しても余裕のある耐震設計が講じられたほか(乙1,乙2の8-1-48ない の支持地盤に与えられる設計用地震動を用いた動的解析がそれぞれ行われ,上記静的解析及び動的解析から求められたいずれの地震力に対しても余裕のある耐震設計が講じられたほか(乙1,乙2の8-1-48ないし50頁,乙3の7,8,8-2頁,乙4の27,28頁,上記各解析によって求められた地震力に,平常運転)に伴って作用する圧力や熱膨張等による力が加わった場合にも,それによって発生する応力の程度が,本件原子炉施設を構成する建設材料の耐え得る許容限度内にとどまり,上記主要施設には損傷が生じないよう設計され(乙2の8-1-50,51頁,乙3の8-2頁,更)に,安全対策上特に緊要な格納容器,原子炉緊急停止装置及びホウ酸水注入装置については,設計用地震動の1.5倍の地震動を用いた動的解析によって求められた地震力に,平常運転に伴って作用する圧力や熱膨張等による力が加わったとしても,同施設が損傷しないことは- 100 -もとより,さらに,同施設に課せられた機能が十分維持されるように設計された(乙1,乙2の8-1-48,51頁,乙3の8,8-2頁,乙4の28頁。 )(12)原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の審査内容ア立地審査指針(乙10)は,原則的立地条件として「原子炉は,その,安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること「原子。」,炉の敷地は,その周辺も含め,必要に応じ公衆に対して適切な措置を講じうる環境にあること」も必要であるとし,更に,万一の事故時にも,公。 衆の安全を確保し,かつ原子力開発の健全な発展を図ることを基本方針として「a敷地周辺の事象,原子炉の特性,安全防護施設等を考慮し,,技術的見地からみて,最悪の場合には起こるかもしれないと考えられる重大な事故(以下「重大事故」という)の発生を仮定しても,周 針として「a敷地周辺の事象,原子炉の特性,安全防護施設等を考慮し,,技術的見地からみて,最悪の場合には起こるかもしれないと考えられる重大な事故(以下「重大事故」という)の発生を仮定しても,周辺の公衆。 に放射線障害を与えないこと。b更に,重大事故を超えるような技術的見地からは起こるとは考えられない事故(以下「仮想事故」という)。 (例えば,重大事故を想定する際には効果を期待した安全防護施設のうちのいくつかが動作しないと仮想し,それに相当する放射性物質の放散を仮想するもの)の発生を仮想しても,周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと。cなお,仮想事故の場合には,国民遺伝線量に対する影響が十分に小さいこと」を,立地審査指針によって達成しようとする基本的。 目標とする旨を明記している(乙10,弁論の全趣旨。 )イ本件安全審査においては,災害評価に当たり,重大事故,仮想事故として,冷却材の喪失が最大となる冷却材再循環配管1本が瞬時に完全破断し,格納容器内に放射性物質が放出される事故としての冷却材喪失事故,冷却材の流出量が最大となる主蒸気管1本が瞬時に完全破断し,直接格納容器外に放射性物質が放出される事故としての主蒸気管破断事故が想定された(乙1ないし4,10,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証- 101 -言,弁論の全趣旨。 )ウ安全審査において検討された事項本件原子炉施設の公衆との離隔に係る安全対策に関し,本件安全審査において検討された事項は,以下のとおりであり,その際,原子力委員会が指示した立地審査指針(乙10)及び安全設計審査指針(乙14)が用いられた。 (ア)重大事故の発生と非居住区域の確保本件原子炉からある距離の範囲内は非居住区域とされているか。すなわち,敷地周辺の事象,原子炉の特性,安全防護設 及び安全設計審査指針(乙14)が用いられた。 (ア)重大事故の発生と非居住区域の確保本件原子炉からある距離の範囲内は非居住区域とされているか。すなわち,敷地周辺の事象,原子炉の特性,安全防護設備等を考慮し,技術的見地からみて,最悪の場合には起こるかもしれないと考えられる重大事故の発生を仮定しても,そこに人が居続けるならば,その人に放射線障害を与えるかもしれないと判断される距離までの範囲内が,公衆が原則として居住しない非居住区域となっているかどうか,ある距離の範囲を判断するためのめやす線量として,甲状腺(小児)被ばくについて150レム,全身被ばくについて25レムを用いて確認する。 (イ)仮想事故の発生と低人口地帯の確保本件原子炉からある距離の範囲であって,非居住区域の外側の地帯が,低人口地帯とされているか。すなわち,重大事故を超え,技術的見地からは起こるとは考えられない仮想事故(例えば,重大事故を想定する際には,効果を期待した安全防護設備のうちのいくつかが作動しないと仮想し,それに相当する放射性物質の放散を仮想するもの)の発生を仮定しても,何らの措置を講じなければ,その範囲内にいる公衆に著しい放射線災害を与えるかもしれないと判断される範囲内であって,上記非居住区域の外側の地帯が低人口地帯(著しい放射線災害を与えないために,。 ,適切な措置を講じ得る環境にある地帯をいう)となっているかどうかある距離の範囲を判断するためのめやす線量として,甲状腺(成人)被- 102 -ばくについて300レム,全身被ばくについて25レムを用いて確認する。 (ウ)仮想事故の発生と人口密集地帯からの離隔本件原子炉の敷地が,人口密集地帯からある距離だけ離れているか。 すなわち,仮想事故の発生を仮定しても,全身被ばく線量の積算値(集団中の1人,1人の 。 (ウ)仮想事故の発生と人口密集地帯からの離隔本件原子炉の敷地が,人口密集地帯からある距離だけ離れているか。 すなわち,仮想事故の発生を仮定しても,全身被ばく線量の積算値(集団中の1人,1人の全身被ばく線量の総和)が国民遺伝線量の見地から十分受け入れられる程度に小さな値になるような距離だけその敷地が人口密集地帯から離れているかどうか,ある距離の範囲を判断するためのめやす線量として,全身被ばく線量の積算値について200万レムを用いて確認する。 (乙1ないし4,10,14,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨)エ本件原子炉施設の公衆との離隔に係る安全性本件安全審査においては,以下のとおり,本件原子炉施設は,原子炉の公衆との離隔に係る立地条件の適否を検討する災害評価が合理的になされており,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔に係る立地条件において原子炉等による災害の防止上支障がないと判断された(乙10,14,弁論の全趣旨。 )(ア)本件原子炉施設の設置位置等本件安全審査においては,別紙9のとおり,本件原子炉施設は,新潟県柏崎市及び同県刈羽郡ω1にまたがり,日本海に面した敷地内に設置されること,本件原子炉敷地は,ほぼ半楕円形をなしており,その面積は約420万㎡であり,本件原子炉から敷地境界までの最短距離は,約790mであること,本件原子炉から半径5㎞以内の人口は約1万5000人,半径10㎞以内の人口は約7万3000人であること等が確認された。 - 103 -(イ)重大事故及び仮想事故想定の妥当性立地審査指針に基づき検討された本件原子炉の公衆との離隔に係る立地条件の適否についての評価においては,重大事故及び仮想事故として,格納容器内に放射性物質が放出さ )重大事故及び仮想事故想定の妥当性立地審査指針に基づき検討された本件原子炉の公衆との離隔に係る立地条件の適否についての評価においては,重大事故及び仮想事故として,格納容器内に放射性物質が放出される事故としての冷却材喪失事故と,直接格納容器外に放射性物質が放出される事故としての主蒸気管破断事故との2種類の事故が想定されているが,本件安全審査においては,これらの冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故は,放射性物質の環境への放出量が最大となる可能性のある事象で,放射性物質が格納容器内と格納容器外に放出される事象を代表して想定されたものであることから,上記各条件の想定は妥当なものであると判断された。 (ウ)主要な被ばく形態冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故による公衆の甲状腺(小児)被ばく及び全身被ばくに係る主要な被ばく形態としては,放出された放射性物質のうち,放射性ヨウ素を吸入することに起因する甲状腺の被ばくと,放射性希ガスから放出されるガンマ線による全身被ばくがある。 (エ)重大事故に係る災害評価条件設定の妥当性①冷却材喪失事故本件安全審査においては,a希ガス及びヨウ素の炉内蓄積量を原子炉が定格出力の105%で1000日間連続運転されているものとして算出すること(この場合,燃料内の核分裂生成物の蓄積量はほぼ平衡に達している,b燃料から圧力容器内中に放出される希ガス及。)びヨウ素は,全燃料中に内蔵されているもののうち,燃料棒内のギャップ及びプレナム中に蓄積されている希ガス及びヨウ素が全量放出されると仮定し,希ガスについては2%,ヨウ素については1%とすること,c燃料から放出された希ガス及び有機ヨウ素(有機ヨウ素の生成割合は,冷却材喪失事故条件下の実験結果によれば,多くても3. - 104 -2%とされているが,10%と仮定され ついては1%とすること,c燃料から放出された希ガス及び有機ヨウ素(有機ヨウ素の生成割合は,冷却材喪失事故条件下の実験結果によれば,多くても3. - 104 -2%とされているが,10%と仮定された)は,すべて格納容器に。 移行するものとし,無機ヨウ素については,圧力容器,配管及び格納容器の壁面等に付着,又は沈着する効果を考慮して,50%が格納容器からの漏洩に寄与するものとすること,d格納容器中のヨウ素は,液相及び気相中に存在するものとし,気相中のヨウ素は,格納容器スプレイ冷却水の効果により,液相中に移行する一方,液相中のヨウ素も気相中に移行するものとすること,e希ガスやヨウ素の格納容器からの漏洩率は,格納容器スプレイ冷却系設備の作動等により格納容器の圧力が事故後33日後には大気圧にまで低下するので,格納容器の圧力に依存し漸減するにもかかわらず,この間,格納容器の設計圧力における漏洩率である1日当たり0.5%で一定と仮定することにより,漏洩率を多く見積っていること,f格納容器から原子炉建家に漏洩した希ガス及びヨウ素は,非常用再循環ガス処理系で再循環され,その過程において一部が非常用ガス処理系から排気筒を通して大気中に放出されるものとし,非常用再循環ガス処理系と非常用ガス用処理系設備におけるフィルタのヨウ素除去率は,99%以上のものとなるように設計されるにもかかわらず,これよりも低い95%と仮定して,ヨウ素の環境への放出量を多く見積っていること,g大気中に放出された希ガスやヨウ素の拡散,希釈については,風向,風速等が変動することに伴う拡散,希釈の程度を厳しく見積るために,33日間で放出されると想定されるところを,24時間で放出されるものと仮定し,更に,まれにしか生じないと思われる濃度等,すなわち,1年間にわたる現地でのあらゆる気 ,希釈の程度を厳しく見積るために,33日間で放出されると想定されるところを,24時間で放出されるものと仮定し,更に,まれにしか生じないと思われる濃度等,すなわち,1年間にわたる現地でのあらゆる気象データに基づいて計算された濃度等のうち97%を包含する厳しいものを採用していること等が重大事故として想定された冷却材喪失事故による災害評価に当たっての評価条件とされていることが確認された結果,上記重大事故に係る評価条件の設定- 105 -は,妥当なものであると判断された。 ②主蒸気管破断事故本件安全審査においては,a主蒸気管破断事故が起こる前の原子炉は,冷却材の希ガス及びハロゲン(ヨウ素131の場合,1cm当 たり0.5マイクロキュリー)の濃度が原子炉の運転上許容される最大濃度で運転されているものとすること,b主蒸気管が破断した場合,破断口からの冷却材の流出を阻止するために設けられている主蒸気隔離弁が短時間(5秒)で閉鎖すること,c主蒸気隔離弁閉鎖後,主蒸気系からの蒸気の漏洩が停止するのは,事故後1日とすること,d主蒸気隔離弁閉鎖後に大気中に放出される希ガス及びハロゲンについては,運転中の冷却材中に含まれていた希ガス及びハロゲンのほかに,燃料から圧力容器中に追加放出されるものとし,ピンホールを有する燃料棒から冷却水中に放出されるヨウ素の量は,最大2万キュリーと想定されるにもかかわらず,余裕をみてその値の2倍である約4万キュリーと多く見積っていること,e事故時,破断箇所からの冷却水の流出を抑制するために自動的に閉鎖する8個の隔離弁は,原子炉施設運転開始後もその作動性を実証するための試験ができるようになっていること等から,十分な信頼性が確保されるにもかかわらず,隔離弁1個の閉鎖失敗を仮定していること,及び閉鎖した7個の隔離弁全体 炉施設運転開始後もその作動性を実証するための試験ができるようになっていること等から,十分な信頼性が確保されるにもかかわらず,隔離弁1個の閉鎖失敗を仮定していること,及び閉鎖した7個の隔離弁全体からの漏洩率は,1日当たり約30%(隔離弁1個,1日当たり10%の漏洩率に相当)以下に制限することができる設計であるにもかかわらず,十分に余裕をとって1日当たり120%(隔離弁1個,1日当たり40%の漏洩率に相当)と仮定し,その後は原子炉圧力内の圧力に依存するとしていること,f主蒸気隔離弁(第1弁及び第2弁)の後方には,主蒸気第3弁が設けられており,また,第1弁と第2弁及び第2弁と第3弁との間には,主蒸気隔離弁漏洩抑制系が設けられ- 106 -ているが,第2弁と第3弁の間で主蒸気管の破断が起き,最悪の機器の単一故障を仮定した場合には,この系の有効性が十分期待できないことになるので,この系の効果はないものとしたこと,g燃料から追加放出される希ガスとハロゲンのうち,希ガスと有機ヨウ素は,すべて気相に移行するものとし,無機ヨウ素については,液相と気相間に分配係数100で分配されるものとすること,h主蒸気隔離弁閉鎖後,残留熱除去系又は逃し安全弁を通して崩壊熱相当の蒸気がサプレッション・プールへ移行するが,この蒸気に含まれる核分裂生成物の寄与は無視すること,i大気中に放出された希ガスやヨウ素の拡散,希釈については,風向,風速等が変動することに伴う拡散,希釈の程度を厳しく見積るために,1日間で放出されると想定されるところを,全量がわずか1時間で放出されるものと仮定し,更に,放射性物質の大気拡散状態を推定するに必要な気象条件については,まれにしか生じないと思われる濃度等,すなわち,1年間にわたる現地でのあらゆる気象データに基づいて計算された濃度等の のと仮定し,更に,放射性物質の大気拡散状態を推定するに必要な気象条件については,まれにしか生じないと思われる濃度等,すなわち,1年間にわたる現地でのあらゆる気象データに基づいて計算された濃度等のうち97%を包含する厳しいものを採用していること等が重大事故として想定された主蒸気管破断事故による災害評価に当たっての評価条件とされていることが確認された結果,上記重大事故に係る評価条件の設定は,妥当なものであると判断された。 (オ)仮想事故に係る災害評価条件設定の妥当性①冷却材喪失事故本件安全審査においては,重大事故に係る災害評価に当たって設定されたのと同様の厳しい評価条件のほか,全燃料に内蔵されている核分裂生成物のうち,希ガス100%,ヨウ素50%が圧力容器内に放出されるものとすること,炉心に蓄積されている核分裂生成物の格納容器内への放出量については,炉心内の全燃料棒が溶融したと仮定し- 107 -た場合に放出される放射性物質の量に相当する量としていること,希ガス,ヨウ素の格納容器から原子炉建家内への漏洩は,格納容器内の圧力の低下に伴い,事故の33日後には停止するにもかかわらず,これを無視して一定の漏洩率(1日当たり0.5%)で無限時間継続するとしていること等が仮想事故として想定された冷却材喪失事故による災害評価に当たっての評価条件とされていることが確認された結果,上記仮想事故に係る評価の条件の設定は妥当なものであると判断された。 ②主蒸気管破断事故本件安全審査においては,重大事故に係る災害評価に当たって設定されたと同様の厳しい評価条件のほか,燃料棒から冷却水中に追加放出される放射性物質については,事故後の圧力容器内の圧力の低下に伴い徐々に放出されるものであるにもかかわらず,これを無視して1度に全量が放出されるものとして 価条件のほか,燃料棒から冷却水中に追加放出される放射性物質については,事故後の圧力容器内の圧力の低下に伴い徐々に放出されるものであるにもかかわらず,これを無視して1度に全量が放出されるものとしていること,閉鎖した7個の隔離弁全体からの漏洩は,圧力容器内の圧力の低下に伴い漸次,圧力容器内の圧力が大気圧にまで低下する1日後には停止するにもかかわらず,これを無視して一定の漏洩率(1日当たり120%)で,かつ無限時間継続するとしていること等が仮想事故として想定された主蒸気管破断事故による災害評価に当たっての評価条件とされていることが確認された結果,上記仮想事故に係る評価の条件の設定は妥当なものであると判断された。 (カ)本件原子炉施設に係る評価結果本件安全審査においては,災害評価における重大事故及び仮想事故のそれぞれの場合の本件原子炉敷地外における被ばく線量の最大値及び仮想事故の場合における全身被ばく線量の積算値について,以下の結果が得られることが確認された。 - 108 -①重大事故の評価結果a冷却材喪失事故本件原子炉敷地境界付近(周辺監視区域境界)における被ばく線量の最大値は,甲状腺(小児)被ばくについては約0.057レム,全身被ばくについては約0.0019レムと計算されることが確認された。 b主蒸気管破断事故本件原子炉敷地境界付近(周辺監視区域境界)における被ばく線量の最大値は,甲状腺(小児)被ばくについては約30レム,全身被ばくについては約0.025レムと計算されることが確認された。 ②仮想事故の評価結果a冷却材喪失事故本件原子炉敷地境界付近(周辺監視区域境界)における被ばく線量の最大値は,甲状腺(成人)被ばくについては約0.74レム,全身被ばくについては約0.098レムと計算され,また,全身被ばく線量の積 故本件原子炉敷地境界付近(周辺監視区域境界)における被ばく線量の最大値は,甲状腺(成人)被ばくについては約0.74レム,全身被ばくについては約0.098レムと計算され,また,全身被ばく線量の積算値は,昭和50年の人口に対しては約12万人レム,西暦2020年の推定人口に対しては約15万人レムと計算されることが確認された。 b主蒸気管破断事故本件原子炉敷地境界付近(周辺監視区域境界)における被ばく線量の最大値は,甲状腺(成人)被ばくについては約15レム,全身被ばくについては約0.037レムと計算され,また,全身被ばく線量の積算値は,昭和50年の人口に対しては約0.64万人レム,西暦2020年の推定人口に対しては約0.85万人レムと計算されることが確認された。 (キ)立地審査指針適合性- 109 -上記(カ)のとおり,本件安全審査では,二つの重大事故のいずれの場合においても,本件原子炉敷地境界付近(周辺監視区域境界)における被ばく線量の最大値は,めやす線量である甲状腺(小児)被ばく150レム及び全身被ばく25レムに比べてそれぞれ十分小さく,非居住区域であるべき範囲は上記敷地内に含まれること,また,二つの仮想事故のいずれの場合においても,本件原子炉敷地境界付近(周辺監視区域境界)における被ばく線量の最大値は,めやす線量である甲状腺(成人)被ばく300レム及び全身被ばく25レムに比べてそれぞれ十分小さく,低人口地帯であるべき範囲は上記敷地内に含まれ,更に,全身被ばく線量の積算値もめやす線量である200万人レムに比べて十分小さいものであることがいずれも確認され,本件原子炉施設は,立地審査指針に適合するものであり,したがって,本件原子炉施設は,公衆との離隔に係る安全性を十分確保し得るものであると判断された。 (乙1ないし4,10,1 ことがいずれも確認され,本件原子炉施設は,立地審査指針に適合するものであり,したがって,本件原子炉施設は,公衆との離隔に係る安全性を十分確保し得るものであると判断された。 (乙1ないし4,10,14,いずれも原審における証人P1及び同P4の各証言,弁論の全趣旨)(13)原子力委員会の答申及び内閣総理大臣の本件処分等ア原子力委員会は,本件安全審査に基づいて本件補正に係る本件申請が規制法24条1項各号に規定する許可基準に適合しているか否かについて検討した上,内閣総理大臣に対し,昭和52年8月23日,同日付け「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置について(答申」)と題する書面により本件補正に係る本件申請が上記基準に適合している旨を答申した(甲67の①②,乙1ないし4,いずれも原審における証人P1及び同P6の各証言,弁論の全趣旨。 )イ内閣総理大臣は,昭和52年9月1日,上記答申を尊重し,規制法24条1項各号所定の許可要件に適合していると判断し,かつ,規制法71条1項に基づき,当時の通商産業大臣から同日付け「東京電力株式会社柏崎- 110 -・刈羽原子力発電所の原子炉の設置について」と題する書面による同意を得た上,東京電力に対し,同日,規制法23条1項に基づき,同日付け「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置について」と題する書面(乙6)により本件処分をし,その旨通知した(なお,原子力委員会は,本件処分当時,核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること(設置法2条4号)のほかに,原子力利用に関する政策に関すること(同条1号)等,原子力の利用と開発を推進することに関しても所掌することとされていたものであるが,本件処分後の昭和53年7月5日,同年法律第86号により設置法が改正され,従前の原子力委員会の ること(同条1号)等,原子力の利用と開発を推進することに関しても所掌することとされていたものであるが,本件処分後の昭和53年7月5日,同年法律第86号により設置法が改正され,従前の原子力委員会の所掌事務のうち安全の確保及び障害の防止に関するものは原子力委員会とは独立した原子力安全委員会が所掌することとされた(同改正後の設置法2条,13条(甲67の①②,乙5,6,弁論の全趣旨。 )))(14)異議申立て等ア控訴人P7らは,昭和52年10月ころ,行政不服審査法48条,25条1項に基づき,内閣総理大臣に同月25日付け異議申立書を提出し,本件処分に対する異議申立てをした(甲271の①②,弁論の全趣旨。 )イその後,規制法の昭和53年法律第86号による改正によって同法律附則3条により,内閣総理大臣の行った本件処分は,通商産業大臣が行ったものとみなされることになった。 ウ通商産業大臣は,本件訴訟提起後の平成9年4月22日,本件処分には何ら規制法上の違法又は不当な点も存在しないとして,上記アの異議申立てを棄却する旨の決定をした(甲271の①②,弁論の全趣旨。 )エさらに,規制法の平成11年法律第160号による改正によって同法律1301条により,通商産業大臣が行ったものとみなされた本件処分は,同法律904条による改正後の規制法に基づき被控訴人(経済産業大臣)が行ったものとみなされ,実用原子炉の設置許可権限が被控訴人に承継さ- 111 -れるとともに本件訴訟を被控訴人が承継した。 (15)営業運転開始と原子炉設置変更許可処分ア本件原子炉施設の営業運転は,本件訴訟提起後の昭和60年9月18日に開始された。 イ本件原子炉施設については,本件処分後,以下のとおりの原子炉設置変更許可処分(以下「本件各変更許可処分」という)がなされて 炉施設の営業運転は,本件訴訟提起後の昭和60年9月18日に開始された。 イ本件原子炉施設については,本件処分後,以下のとおりの原子炉設置変更許可処分(以下「本件各変更許可処分」という)がなされている(甲。 112,183の①ないし③,227,228,283ないし287,347ないし355,乙74の①ないし③,76の①ないし③,138,139,弁論の全趣旨。なお,本件原子力発電所1号機(本件原子炉,))2号機,3号機,4号機,5号機,6号機及び7号機の配置関係は別紙16の配置図のとおりである。 (ア)昭和55年9月6日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉)施設の変更(フォロワ付制御棒の採用,廃棄物処理系の変更,換気空調系の変更,海水淡水化装置の変更)(イ)昭和56年5月8日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉)施設の変更(冷却材再循環流量制御方式の変更,気体廃棄物処理系の変更,排気筒の位置の変更,非常用再循環ガス処理系の廃止に伴う変更)(ウ)昭和57年5月12日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉)施設の変更(新型8行×8列型燃料の採用,プラスチック固化方式の採用,洗濯廃液系の変更)(エ)昭和61年12月25日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機及び5号機の各原子)炉施設の変更(新型8行×8列型ジルコニウムライナ燃料の採用,サプレッション・プール水サージタンクの設置に伴う変更)- 112 -(オ)昭和62年10月9日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機及び5号機の各原子)炉施設の変更(採用済樹脂の焼却処理の追加に伴う変更)(カ)昭和63年5月30日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機及び5号機の各原子)炉施設の変更 機及び5号機の各原子)炉施設の変更(採用済樹脂の焼却処理の追加に伴う変更)(カ)昭和63年5月30日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機及び5号機の各原子)炉施設の変更(新型制御棒の採用に伴う変更)(キ)平成2年7月10日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機,3号機,4号機及)び5号機の各原子炉施設の変更(高燃焼度8行×8列型燃料の採用,使用済燃料プールの貯蔵能力の増強に伴う変更)(ク)平成4年10月15日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機,3号機,4号機,)5号機,6号機及び7号機の各原子炉施設の変更(使用済燃料の処分の方法の変更)(ケ)平成6年9月12日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機,3号機,4号機,)5号機,6号機及び7号機の各原子炉施設の変更(洗濯廃液系の共用化,使用済燃料輸送容器保管建家の設置に伴う変更)(コ)平成8年12月25日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機,3号機,4号機,)5号機,6号機及び7号機の各原子炉施設の変更(同3号機,4号機,6号機及び7号機の各原子炉使用済燃料貯蔵設備等の同1号機,2号機及び5号機の各原子炉との共用化)(サ)平成10年12月21日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機,3号機,4号機,)5号機,6号機及び7号機の各原子炉施設の変更(9行×9列型燃料の- 113 -採用)(シ)平成12年3月15日設置変更許可本件原子力発電所1号機(本件原子炉,2号機,3号機,4号機,)5号機,6号機及び7号機の各原子炉施設の変更(同3号機の原子炉のMOX燃料の採用,再処理委託先確認方法の一部変更)(16)許容線量等を定める件等の改廃(ア 原子炉,2号機,3号機,4号機,)5号機,6号機及び7号機の各原子炉施設の変更(同3号機の原子炉のMOX燃料の採用,再処理委託先確認方法の一部変更)(16)許容線量等を定める件等の改廃(ア)本件処分後,許容線量等を定める件については,昭和53年12月28日科学技術庁告示第12号による改正があり「実用発電用原子炉の設,置,運転等に関する規則の規定に基づく許容被曝線量等を定める件(昭」和53年12月28日通商産業省告示第665号)が制定されたが,平成元年3月27日「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則の規定,に基づく線量当量限度等を定める告示(平成元年3月27日通商産業省」告示第131号)が制定され,公衆の線量当量限度を実効線量当量として,1年間につき0.5レム(5ミリシーベルト)から0.1レム(1ミリシーベルト)に変更された。 さらに,上記公衆の線量当量限度については,平成13年3月21日,「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示(平成13年3月21日経済産業省告示第187号。線」量限度等を定める告示)が定められて同年4月1日から施行され「実効,線量については,1年間(4月1日を始期とする1年間をいう。以下同じ)につき1ミリシーベルト(同告示3条1項1号「前項第1号の。 」),規定にかかわらず,経済産業大臣が認めた場合は,実効線量について1年間につき5ミリシーベルトとすることができる(同告示3条2項)と。」規定されている。 (甲118,119の①ないし④,乙46の①ないし⑦,弁論の全趣旨)(イ)また,原子力委員会若しくは原子力安全委員会においては,本件処分- 114 -後,立地審査指針につき平成元年3月27日,気象指針につき同日,平成6年4月21日及び平 いし⑦,弁論の全趣旨)(イ)また,原子力委員会若しくは原子力安全委員会においては,本件処分- 114 -後,立地審査指針につき平成元年3月27日,気象指針につき同日,平成6年4月21日及び平成13年3月29日,線量目標値指針及び線量目標値評価指針につき各平成元年3月27日及び平成13年3月29日にそれぞれ一部改訂がなされた。 (ウ)さらに,原子力委員会若しくは原子力安全委員会においては,本件処分後,次のとおり新たに定めている。 ①「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針(平成2年8月30日原子力安全委員会決定。一部改訂平成13年3月29日同委員会。 新安全設計審査指針)②「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針(昭和53」年9月29日原子力委員会策定(甲33,一部改訂平成元年3月27)日原子力安全委員会,平成2年8月30日同委員会決定(乙94。一)部改訂平成13年3月29日同委員会。安全評価審査指針)③「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針(平成2年8月30日原子力安全委員会決定。重要度分類指針)」④「軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の性能評価指針(昭和56年7」月20日原子力安全委員会決定。一部改訂昭和63年5月19日・平成2年8月30日・平成4年6月11日同委員会(乙141。ECCS)性能評価指針)⑤「発電用軽水型原子炉施設の反応度投入事象に関する評価指針(昭」和59年1月19日原子力安全委員会決定(甲38。一部改訂平成2)年8月30日同委員会(乙131。反応度投入事象評価指針))⑥「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて(平成4年5月28日原子力安」全委員会決定。一部改正平成9年10月20日 入事象評価指針))⑥「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて(平成4年5月28日原子力安」全委員会決定。一部改正平成9年10月20日(乙136))⑦「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の解釈の明確化につい「- 115 -て(昭和60年7月18日原子力安全委員会了承(甲45。一部改」)訂平成2年8月30日同委員会(乙129))⑧「我が国の安全確保対策に反映させるべき事項」について(審査,「設計及び運転管理に関する事項《基準関係の反映事項は除く(昭和》)」55年6月23日原子力安全委員会決定(甲31))⑨「我が国の安全確保対策に反映させるべき事項」について(昭和「」56年7月23日原子力安全委員会決定(甲32))⑩地質・地盤の手引き(昭和53年8月23日原子炉安全専門審査会作成(甲105))⑪耐震設計審査指針(昭和53年9月原子力委員会決定。一部改訂昭和56年7月20日(乙111・平成13年3月29日原子力安全委員)会)⑫「原子力発電所等周辺の防災対策について(昭和55年6月原子力」安全委員会作成。一部改訂平成元年3月(乙95・平成4年6月・平)成10年11月・平成11年9月・平成12年5月・平成13年3月・同年6月・平成14年4月・同年11月・平成15年7月同委員会。ただし,平成12年5月に表題を「原子力施設等の防災対策について」に改めた)。 ⑬「沸騰水型原子炉に用いられる9行9列型の燃料集合体について」(平成6年3月3日原子力安全委員会了承(乙140))⑭「原子力事業者の技術的能力に関する審査指針(平成16年5月2」7日原子力安全委員会決定)(甲31ないし33,38,45,105,乙94,95,111,1 原子力安全委員会了承(乙140))⑭「原子力事業者の技術的能力に関する審査指針(平成16年5月2」7日原子力安全委員会決定)(甲31ないし33,38,45,105,乙94,95,111,129,131,136,140,141,弁論の全趣旨) 争点 (1)司法審査のあり方について- 116 -ア規制法24条1項各号の違反のうち,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係」する違法は何か。 イ原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項となるものは何か。 ウ原子炉設置変更許可処分と本件訴訟における審理・判断の対象について(ア)本件処分後の本件各変更許可処分の違法事由は本件訴訟における審理・判断の対象となるか。 (イ)(ア)が肯定される場合,どの範囲で,変更許可処分の違法事由が審理・判断の対象となるか。 (ウ)(ア)が肯定される場合,(イ)の違法事由の主張・立証責任はいずれの当事者が負担するか。 エ本件処分の専門技術性について,司法審査の方法はどうあるべきか。 オ控訴人らの主張する温排水の熱的影響,固体廃棄物の最終処分,使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分,廃炉,労働者被ばく並びに防災計画に関する違法事由は,司法審査の対象となるか否か。 (2)本件処分の手続的違法があるか否か。 ア本件処分の手続についてイ本件安全審査手続における構造的瑕疵について(ア)安全審査の手続規定に不備,不明確の瑕疵があるか否か。 (イ)安全審査に係る技術的基準等が不合理,不明確であるか否か。 (ウ)本件安全審査は,法律上の根拠に基づくものであるか否か。 (エ)本件安全審査は,いわゆる原子力三原則に違反するか否か。 (オ)本件安全審査における審査体制が不備であるか否か。 (カ)部会による安全審査は違法か否か。 (キ)合同審査による あるか否か。 (エ)本件安全審査は,いわゆる原子力三原則に違反するか否か。 (オ)本件安全審査における審査体制が不備であるか否か。 (カ)部会による安全審査は違法か否か。 (キ)合同審査による安全審査手続は違法か否か。 (ク)本件安全審査において審査範囲の限定をしたことは違法か否か。 (ケ)資料の収集等の審査方法に違法があるか否か。 - 117 -(コ)本件安全審査手続に不公正,不適正があるか否か。 (サ)安全審査手続について立法の瑕疵があるか否か。 ウ本件安全審査手続における個別的瑕疵について(ア)原子力委員会委員長の不在の際にその職務代理者が選任されていたか否か。 (イ)原子力委員会の審査方法等に違法がないか否か。 (ウ)本件安全審査会における並行審査は違法か否か。 (エ)安全審査会の出席者は適法か否か。 (オ)調査委員中心の本件安全審査は違法か否か。 (3)規制法24条1項1号所定の要件適合性については,司法審査の対象となるか否か。 (4)規制法24条1項2号所定の要件適合性については,司法審査の対象となるか否か。 (5)規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件適合性については,司法審査の対象となるか否か。また,同条1項3号のうち技術的能力に係る部分の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 ア規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分についてイ規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分について(6)規制法24条1項4号所定の要件適合性に不合理な点はあるか否か。 ア原子炉施設の安全性の意義とその安全審査のあり方をどのように考えるか。 (ア)規制法24条1項4号の適合性審査に対する司法審査のあり方(イ)規制法24条1項4号が審査の対象とする原子炉施設の危険性(ウ)しきい値の存否 その安全審査のあり方をどのように考えるか。 (ア)規制法24条1項4号の適合性審査に対する司法審査のあり方(イ)規制法24条1項4号が審査の対象とする原子炉施設の危険性(ウ)しきい値の存否(エ)原子炉施設の安全性の意義(オ)安全審査のあり方- 118 -イ本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策に関する本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①本件安全審査が基準とした公衆の線量当量限度は不当に高いものであるか否か。 ②「線量目標値指針」の線量目標値に合理性があるか否か。 ③「線量目標値指針」及び「線量目標値評価指針」の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書に不合理な点がないか否か。 (イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①気体廃棄物の被ばく線量評価について②液体廃棄物の被ばく評価について③ムラサキツユクサの研究結果と被ばく線量評価の合理性の有無について④放射線管理設備の審査の有無についてウ本件原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はある 究結果と被ばく線量評価の合理性の有無について④放射線管理設備の審査の有無についてウ本件原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原- 119 -子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①事故防止対策に係る審査基準について②ECCS安全評価指針の合理性について(イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①炉心燃料部の健全性の有無について②圧力バウンダリについて③制御棒駆動系について④ECCSについて⑤計測システムの欠陥の有無について⑥格納容器の健全性の有無について⑦ポンプ,弁等の健全性について⑧本件原子力発電所における異常事象等と本件安全審査について⑨我が国における本件原発以外の原子力発電所の異常事象例等と本件安全審査について⑩TMI事故と本件安全審査について⑪チェルノブイル事故と本件安全審査について⑫運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析の合理性の有無について⑬検査能力等の有無について⑭想定される飛来物に対する設計上の考慮の有無について⑮燃料体に対する本件各変更許可処分の違法事由の有無について- 120 -⑯本 故解析の合理性の有無について⑬検査能力等の有無について⑭想定される飛来物に対する設計上の考慮の有無について⑮燃料体に対する本件各変更許可処分の違法事由の有無について- 120 -⑯本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA(冷却材喪失事故)解析の合理性の有無について⑰プルサーマル計画についてエ本件原子炉施設の地質・地盤及び地震に関する安全対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①地質・地盤及び地震に関する安全対策に係る審査基準について②設計用地震加速度の合理性の有無について③鉛直地震力の考慮の有無について④活断層の評価期間の合理性の有無について⑤直下地震の想定の有無について(イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①本件原子炉敷地の支持地盤の安定性の有無についてa活発な地殻変動の存在についてb本件原子炉施設の支持地盤について②本件原子炉敷地周辺に見られる断層の活動の有無についてa柏崎平野における安田層 原子炉敷地の支持地盤の安定性の有無についてa活発な地殻変動の存在についてb本件原子炉施設の支持地盤について②本件原子炉敷地周辺に見られる断層の活動の有無についてa柏崎平野における安田層の形成時期について- 121 -b伏在断層を含む断層活動についてc本件原子炉施設周辺地域の活断層についてd寺尾断層についてe歴史地震の選定についてf日本海東縁プレート境界についてg長岡平野西縁断層についてh中越地震について③本件原子炉敷地周辺に存在すると推定される主な断層の評価の合理性の有無についてaリニアメントについてb気比ノ宮断層の延長距離についてc常楽寺断層(中央丘陵西縁部断層)についてd真殿坂断層についてe椎谷断層についてf新しい松田式についてg金井式-シード図についてh鳥取県西部地震について④本件原子炉施設の安全性の有無についてa本件原子炉施設の安全性についてbスマトラ沖大地震・津波と本件安全審査についてオ本件原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 - 122 -(ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①公衆との離隔に係る審査基準について②めやす線量について(イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審 (イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①災害評価(立地評価)におけるECCS等の健全性について②災害評価(立地評価)における全炉心溶融等の想定について③フィルタの信頼性について 当事者の主張原審における当事者双方の主張は,原判決第2編(原判決第1分冊2頁から357頁まで,第2分冊358頁から728頁まで)に摘示されているとおりであるから,これを引用する。以下に,当審における当事者双方の追加・補足主張を摘示する。 (1)司法審査のあり方についてア規制法24条1項各号の違反のうち,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係」する違法は何か。 (控訴人らの主張)(ア)行訴法10条1項は「取消訴訟においては,自己の法律上の利益,に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない」と規。 定している。これは,およそ法律上の利益の保護という観点とは無関係に,専ら他の者の利益等を保護するという観点から当該処分の要件として定められているにすぎない事項については,そのような要件に違背しているとの理由では,当該処分の取消しを求めることはできないことにあるという趣旨である。 - 123 -したがって,同条項は,処分の取消しを求める側で主張し得る当該処分の違法理由がその処分の取消しを求めようとする者個々人の個別的利益を保護するという観点から定められた処分要件の違背のみに限定されるというものではなく,不特定多数者の一般的公益保護という観点から設けられた処分要件であっても,それが同時に当該処分の取消しを求める者の権利・利 という観点から定められた処分要件の違背のみに限定されるというものではなく,不特定多数者の一般的公益保護という観点から設けられた処分要件であっても,それが同時に当該処分の取消しを求める者の権利・利益の保護という観点とも関連する側面があるようなものについては,その処分要件の違背を当該処分の取消事由として主張することを妨げるものではない。 (イ)規制法24条1項1号及び2号の要件は,これが公益あるいは国益の保護という観点から設けられた要件ではあるものの,他方で,仮に,平和目的以外に利用されるおそれがあり,原子力の開発及び利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがあるような公益目的に合致しない原子炉の設置等が行われるといった事態があり得るものとすれば,そのような原子炉の設置等によって,その生命・身体等の安全等に危険が及ぶという事態を防止するという観点においては,これらの要件が控訴人ら住民の権利・利益の保護という観点とも関連する。 また,同項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件も,災害の防止上支障のないような原子炉の設置には一定の経理的基礎が要求されることなどから設けられたものであり,控訴人らの生命・身体等の安全の保護という観点と無関係なものではない。 さらに,同項3号のうち技術的能力に係る部分及び4号所定の要件に関する各審査に過誤,欠落があった場合には重大な原子炉事故が起こる可能性があり,事故が起こったときは,原子炉施設に近い住民ほど被害を受ける蓋然性が高く,その被害の程度はより直接的かつ重大なものとなるのであって,特に,原子炉施設の近くに居住する者はその生命・身体等に直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される。そして,同項- 124 -3号のうち技術的能力に係る部分及び4号所定の要件は,単に公衆の生命・身体等の安全,環境上の利益を一 者はその生命・身体等に直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される。そして,同項- 124 -3号のうち技術的能力に係る部分及び4号所定の要件は,単に公衆の生命・身体等の安全,環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず,原子炉施設周辺に居住し,上記事故がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命・身体等の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとしたものであり,これらの要件が,控訴人らの法律上の利益に関係を持つものであることは明らかである。 (ウ)また,規制法24条1項各号所定の安全審査については,原子力発電所の必要性が前提となっているから,これも裁判所の審理・判断の対象事項に含まれる。 すなわち,規制法24条1項各号所定の安全審査においては,東京電力が電力の安定供給を行うためには本件原子炉はもちろんのこと他の原子炉も欠かせない,つまり原子力発電所がなければ直ちに電力供給が不安定になり「電気のない生活」を考えなければならないという原発必要論が存在し,少なくともこれを所与の前提として審査している。そして,昭和45年以降,我が国のエネルギー需要は今後とも長期にわたり急速に拡大することが見込まれるとし,エネルギー源の中心を占める石油については近い将来枯渇するおそれがあるので,安価な原子力発電が必要であるとして,その経済性が強調されていた。しかし,現在では原子力発電が代替えできるのは石油を中心とする発電の一部分であり,しかも過剰なエネルギーがもたらす地球規模の環境破壊に歯止めをかけ,環境と調和した産業社会を再構築することが問われるに至っており,いわゆる核の危険・制御不能とあいまって脱原発の流れは世界的となり,その社会的経済的有用性は根拠の薄いものとなっているから,本件安全審 環境と調和した産業社会を再構築することが問われるに至っており,いわゆる核の危険・制御不能とあいまって脱原発の流れは世界的となり,その社会的経済的有用性は根拠の薄いものとなっているから,本件安全審査を見直す必要がある。 (エ)したがって,規制法24条1項各号の定める原子炉設置許可処分の- 125 -各要件の存否並びにその前提として原子力発電所の必要性の有無について,いずれも本件処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断の対象事項に含まれる。 (被控訴人の主張)(ア)本件訴訟は,規制法23条,24条に基づいて内閣総理大臣がした本件処分の取消訴訟であるから,その審理の対象は,本件処分の違法性の存否,すなわち本件申請が規制法24条1項所定の許可要件に適合するとした内閣総理大臣の判断における違法性の存否であるから,本件処分の違法事由として,裁判所の審理・判断の対象となる事項は,本件申請に対して内閣総理大臣が規制法24条1項所定の許可要件について審査した対象事項に限定されることになる。 そして,主観訴訟として位置づけられている取消訴訟は,取消判決によって違法な行政作用を排除し公益に資することを目的とするものではなく,被告行政庁の処分によって原告の被っている具体的権利,法的利益の侵害の救済を目的とするものである。 したがって,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係のない違法」とは,被告行政庁の処分に存する違法のうち,個人的権利・利益の保護を目的として行政権の行使に制約を課するために設けられたものとはいえない法規に違背したにすぎない違法をいうから,本件処分の要件に係る違法の主張であっても,控訴人ら自身の法律上の利益と関係のないものは,取消事由として主張することは許されない。 (イ)規制法24条1項1号及び2号の趣旨は,原子力の研究,開 ら,本件処分の要件に係る違法の主張であっても,控訴人ら自身の法律上の利益と関係のないものは,取消事由として主張することは許されない。 (イ)規制法24条1項1号及び2号の趣旨は,原子力の研究,開発及び利用を平和の目的に限り,かつ,原子力の開発及び利用を長期的視野に立って計画的に遂行するとの我が国の原子力に関係する基本政策に適合せしめ,もって広く国民全体の公益の増進に資することにあるのであって,原子炉施設の周辺住民等の個人的利益の保護を目的として内閣総理- 126 -大臣の許可権限の行使に制約を課したものではない。 また,同項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件は,原子炉の設置には多額の資金を要することから,原子炉の設置,運転等をするに足りる十分な資金的裏付けがあることを要するとしたことにあるのであって,これも原子炉施設の周辺住民等の個人的利益の保護を目的として内閣総理大臣の許可権限の行使に制約を課したものではない。 これに対し,同項3号のうち技術的能力に係る部分及び4号所定の要件は,原子炉施設周辺に居住し,事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の個々人の生命・身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解されるから,これらの規定に違反する違法は,控訴人ら自身の法律上の利益に関係する違法である。 なお,同項3号のうち技術的能力に係る部分及び4号所定の要件に関する違法事由であっても,控訴人らはその個別的な権利・利益に関係する違法事由に限って主張できるのであるから,その具体的内容が控訴人ら自身の法律上の利益に関係のない事項に係るものは,行訴法10条1項により主張することができない。 (ウ)したがって,本件処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断の対象事項は,規制法 内容が控訴人ら自身の法律上の利益に関係のない事項に係るものは,行訴法10条1項により主張することができない。 (ウ)したがって,本件処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断の対象事項は,規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分及び4号所定の要件のみである。 イ原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項となるものは何か。 (控訴人らの主張)(ア)電力会社等が設置する原子力発電所の安全審査に関する手続は,本件申請当時,実用発電用原子炉の設置に対する内閣総理大臣の設置許可(規制法23条,電気事業の用に供する電気工作物の設置又は変更の)工事計画に対する通商産業大臣の認可(電事法41条,電気工作物の)- 127 -工事に対する通商産業大臣の使用前検査(同法43条,電気事業の用)に供する発電用原子炉及びその附属設備に対する通商産業大臣の定期検査(同法47条)の4段階に分かれているが,規制法が原子力利用につき製錬事業(第2章,加工事業(第3章,原子炉の設置,運転等))(第4章,再処理の事業(第5章,核燃料物質等の使用等(第6))章,国際規制物質の使用(第6章の2)に分けて事業規制を行ってい)るから,原子炉の設置,運転から廃棄物処理までのすべてにわたる安全審査が必要である。 (イ)原子炉設置許可に際しての安全審査の対象を,後記の被控訴人の主張のとおり原子炉施設自体の安全性に直接関係する事項に限定し,かつ,原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に限定することでは現実に事故を全く防止することができない。また,原子力委員会等の専門家の関与なく行われる詳細設計以降の段階における規制法所定の規制(工事計画認可以降の手続)が現実には全く機能しておらず,不正が横行しているにもかかわらず,それが正規の手続では発見されていない実情 門家の関与なく行われる詳細設計以降の段階における規制法所定の規制(工事計画認可以降の手続)が現実には全く機能しておらず,不正が横行しているにもかかわらず,それが正規の手続では発見されていない実情を無視することはできない。 原子力発電は,火力発電や水力発電と異なる放射能災害をもたらす潜在的危険性を有するから,原子炉施設近くの住民の生命・身体等の安全を確保するため,原子炉施設の計画・設計段階から運転段階まで審査をすべきことは当然である。 (ウ)①株式会社ジェー・シー・オー(旧日本核燃料コンバージョン株式会社,以下「JCO」という)の東海事業所における昭和58年1。 1月22日付け核燃料物質加工事業変更許可申請書には「臨界事故,については当施設では「変更後における加工施設の安全設計に関す,る説明書」に示した様にいかなる場合でも安全であるよう十分な設計がなされているので臨界事故は起こり得ない(甲334の23枚。」- 128 -目)と記載されていた。これに対し,当時の科学技術庁の行政審査では,臨界防止等について適切な配慮がなされているので安全性は確保されている「充分な安全対策が講じられており,一般公衆に対して過度の放射線被ばくを及ぼす事故が起こるとは考えられない」とする。 昭和59年1月付けの安全審査書(甲334の46枚目)が作成され,また,原子力委員会の内閣総理大臣に対する同年4月26日付け「臨界管理は妥当なものと判断する「本変更に伴い従来の事故評価の結」果を変更する必要はないことを確認した」とする答申(甲336)を行っていた。これによりJCOは所定の核燃料物質加工事業変更許可を取得した。 しかし,JCOにおいては,平成11年9月30日午前10時35分ころ,茨城県ω9所在の核燃料再転換工場で臨界事故が発生し,従業員2名が れによりJCOは所定の核燃料物質加工事業変更許可を取得した。 しかし,JCOにおいては,平成11年9月30日午前10時35分ころ,茨城県ω9所在の核燃料再転換工場で臨界事故が発生し,従業員2名が急性死亡レベルの放射線を被ばくし,更に多数の従業員と周辺住民が放射線を被ばくする事故が発生した(以下「JCO事故」という。これは,上記核燃料物質加工事業変更許可を受けた手順。)である工程の溶解塔を飛ばしてバケツで作業を行う裏マニュアルが作成されており,所定の臨界管理を無視した運転が日常的に行われていたことに原因があった。このように,JCOが臨界管理を無視した取扱いをしたのは,核燃料サイクル開発機構がJCOにおいて違法操業をすることを予期しつつ,黙認したものであるから,臨界管理を軽視する風土は,少なくとも核燃料サイクル開発機構,JCOにおいて根付いていた。 これまでJCOだけではなく,我が国の原子力事業者において多数の杜撰な作業,違法な行為が発覚している。これらのほとんどが検査等で発覚したものではなく,内部告発か事故発生で初めて発覚したものであり,それがなければ永遠に発覚しなかったものであるが,この- 129 -ような杜撰な作業,違法行為は我が国の原子力事業者一般にあまねく行われているものと見るべきである。 ②原子力安全委員会は,JCO事故について,違法操業が可能な安全審査指針を認めたことや技術的能力の審査のあり方に反省を持ち,安全審査指針の見直しをしようとしている。事故調査委員会に至っては具体的な部分や運転管理に関する部分まで安全審査でチェックすべきではないかという同委員からの意見が少なからず出ている。 また,現在の法体系の中でも,専門家団体である原子力安全委員会が関与する手続が基本的な許可(原子炉設置許可)のみということからすれ ックすべきではないかという同委員からの意見が少なからず出ている。 また,現在の法体系の中でも,専門家団体である原子力安全委員会が関与する手続が基本的な許可(原子炉設置許可)のみということからすれば,同委員会が具体的設計,運転段階まで通した,あるいはそれを見通した安全審査をすべきであるというのが素直な読み方であり,国民の期待するところである。 ③原子炉設置許可時の安全審査では,故障,誤操作等の確率が低いこと,そして意図的な手順無視がないことを前提に,過渡変化等の解析に当たり単一の故障のみを想定する単一故障指針が用いられてきたが,JCOの事故から明らかになったように,確信犯的な手順無視の違法操業を現実に原子力事業者が長期にわたり行ってきたという事実を前提にすれば,従来のような事業者への信頼に基づく安全審査では足りず,安全装置の意図的なバイパスをも想定して多重故障を想定すべきである。 また,JCOの上記核燃料物質加工事業変更許可申請書では六フッ化ウランの漏洩事象を想定し,事故による周辺監視区域以外の一般公衆の最大被ばく量を9ナノシーベルトであるとしていた。しかし,JCO事故では敷地境界における被ばく量は,当時の科学技術庁の事故調査では160ミリシーベルトであったので,最大想定事故の1778万倍の規模のものであったことに照らすと,安全審査における最大- 130 -想定事故の想定があまりにも過小であり,非現実的であることが裏付けられている。 (エ)したがって,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象は,原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針のみならず,原子炉の具体的な詳細設計や運転管理並びに廃棄物処理までのすべてが含まれ,総合的に安全性の審査がなされるべきである。そして,我が国においては固体廃棄物の最終処理技術も確立していないにもか みならず,原子炉の具体的な詳細設計や運転管理並びに廃棄物処理までのすべてが含まれ,総合的に安全性の審査がなされるべきである。そして,我が国においては固体廃棄物の最終処理技術も確立していないにもかかわらず,原子力規制として核燃料物質の製錬から廃棄などの最終処理に至る過程の安全性について的確な審査と規制手続がないことは,憲法13条の国民の生命・身体への尊重義務に違反するものであり,憲法31条の法定手続の保障にも違反する。 (被控訴人の主張)(ア)規制法は,規制の対象を,製錬事業(第2章,加工事業(第3)章,原子炉の設置,運転等(第4章,再処理の事業(第5章,核燃)))料物質等の使用等(第6章,国際規制物質の使用(第6章の2)に分)け,それぞれにつき被告行政庁の指定,許可,認可等を受けるべきものとしているから,第4章所定の原子炉の設置,運転等に対する規制は,専ら原子炉設置の許可等の同章所定の事項をその対象とするものであって,他の章において規制することとされている事項までをその対象とするものではない。 そして,規制法の第4章所定に係る原子炉の設置,運転等に関する規制の内容をみると,原子炉の設置の許可,変更の許可(規制法23条な),いし26条の2)のほかに,設計及び工事方法の認可(規制法27条使用前検査(規制法28条,保安規定の認可(規制法28条,定期))検査(規制法29条,原子炉の解体の届出(規制法38条)等が段階)的に定められており,これらの規制が段階的に行われることとされてい- 131 -る。 (イ)JCO東海事業所は,規制法の加工事業(第3章)の規定により規制される施設であり,原子炉設置許可段階の安全審査である本件安全審査とは安全規制の分野が異なるものであって,同事業所において生じたJCO事故は,本件安全 は,規制法の加工事業(第3章)の規定により規制される施設であり,原子炉設置許可段階の安全審査である本件安全審査とは安全規制の分野が異なるものであって,同事業所において生じたJCO事故は,本件安全審査の対象とは何ら関係がない。 (ウ)上記の控訴人らの主張は,原子炉設置許可処分の後続の規制である工事計画の認可(電事法41条,使用前検査(同法43条,保安規))定の認可(規制法37条)などの各段階において審査,確認されるべき詳細設計,あるいは具体的な運転管理に係る事項等に関する事由を原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項とするものであるから失当である。 (エ)したがって,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項は,専ら当該原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針のみを規制の対象とするのであって,後続の工事計画の認可(規制法27条)の段階で規制の対象とされている当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法はもとより,後続の使用前検査,燃料体検査,溶接検査等の各種検査や,原子炉施設自体の安全性に直接関係しない他分野の規制対象事項(廃棄物の最終処分の方法,使用済燃料の再処理及び輸送の方法等)は審査の対象とならない。また,原子炉施設自体の安全性に関係する事項であっても,後続の安全規制の対象とされる当該施設の詳細設計及び工事の方法,各種検査,実際の運転管理等に関する事項は,原子炉設置許可の段階の安全審査の対象とはならない。 ウ原子炉設置変更許可処分(以下「変更許可処分」という)と本件訴訟。 における審理・判断の対象について(ア)本件処分後の本件各変更許可処分の違法事由は本件訴訟における審理・判断の対象となるか否か。 - 132 -(控訴人らの主張)本件各変更許可処分により変更された原子炉施設,設備に関する事項については,以下のと 本件各変更許可処分の違法事由は本件訴訟における審理・判断の対象となるか否か。 - 132 -(控訴人らの主張)本件各変更許可処分により変更された原子炉施設,設備に関する事項については,以下のとおり,上記変更許可処分の違法事由が本件訴訟における審理・判断の対象となる。 ①当初の原子炉設置許可処分に対する取消訴訟の係属中に変更許可処分があった場合は,当該施設に係る当初の原子炉設置許可処分の内容の変更を目的とする処分であるから,この変更許可処分に基づく当該施設の変更が現実に実施された以上,実体的には,両処分を一体的なものとして取り扱うべきである。 しかも,原子炉施設においてはその施設,設備の各部分が相互に補完しあって機能しているので,変更後の施設,設備を除いてその原子炉施設の安全性の有無を判断することはできないから,少なくとも原子炉施設の安全性の問題に関しては,後の変更許可処分によって変更を許可された後の内容が,そのまま当該施設に係る原子炉設置許可処分の処分内容となる,つまり変更許可処分によって内容を変更された原子炉設置許可処分が全体として存続し,原子炉の設置,運転の法的根拠は(変更許可処分によって内容を変更された)原子炉設置許可処分に一元化されているというべきである。 ②また,原子炉設置許可処分は,原子炉の設置,運転に関する許認可の中で冒頭に位置し,唯一専門家で構成される原子力委員会が安全審査を行う,最も重要な手続である。この手続で審査される原子炉施設の安全性は,その施設全体を総合的に評価して判断すべきものである。 そして,原子炉施設の安全性とは,最終的には大部分が燃料棒内に存在する放射性物質が平常時及び事故時に環境に放出されることを防止できるかということであるから,原子炉施設の安全確保上極めて重要な機器である緊急停止系(スクラ 全性とは,最終的には大部分が燃料棒内に存在する放射性物質が平常時及び事故時に環境に放出されることを防止できるかということであるから,原子炉施設の安全確保上極めて重要な機器である緊急停止系(スクラム系,ECCS(緊急炉心冷却)- 133 -系)等も含めて各種の機器が十分な機能を有しているといえるかどうかも少なくとも特定の炉心(燃料棒,燃料集合体)を前提としてでなければ評価できない。とりわけ,事故時の安全性で極めて重要な燃料棒が(発熱・冷却失敗により)損傷するか(溶けるか)否かという点の判断も燃料棒の発熱特性,形状,核的特性が決まらなければ評価ができないというべきである。 ところが,原子炉施設については,原子炉設置許可後も度々変更許可処分がなされ,安全性評価の主要な大前提である燃料集合体そのものの変更が多数回なされている。もしも原子炉設置許可処分についての取消訴訟係属中に変更許可処分がなされた場合に変更許可処分後の設計の主要な部分をなす新しい燃料集合体の設計が審査対象にならず,かつ,変更された従来の燃料集合体も審査対象とならないとすれば,その時点で当該原子炉についての安全性は具体的にはおよそ評価できなくなってしまうという性質を持っている。しかも,その変更許可処分を行うのは,訴訟の一方当事者である本件訴訟の被告行政庁なのである。 ③後記の被控訴人の主張に従えば,変更許可処分後の原子炉施設を設置,運転する法律上の根拠は設計が変更された部分については変更許可処分,変更されない部分については原子炉設置許可処分によることとなる。 しかし,規制法上は,変更許可処分後において事業者に重大な違法事由があって許可処分の取消しをする場合にも原子炉設置許可処分のみが取り消されるので(規制法33条2項,被控訴人の主張は規制)法の規定にそぐわないか 上は,変更許可処分後において事業者に重大な違法事由があって許可処分の取消しをする場合にも原子炉設置許可処分のみが取り消されるので(規制法33条2項,被控訴人の主張は規制)法の規定にそぐわないから,被控訴人の主張は理由がない。 ④したがって,変更許可処分後の原子炉施設の安全性の有無が,当初の原子炉設置許可処分に対する取消訴訟でも審理・判断の対象となる。 - 134 -(被控訴人の主張)本件処分後の本件各変更許可処分の違法事由は,以下のとおり,本件訴訟における審理・判断の対象とならない。 ①規制法26条は,同法23条2項に規定する申請書の記載事項のうち,同項2号ないし5号(同項4号に掲げる事項のうち工場又は事業所の名称のみを変更しようとする場合を除く)及び8号に掲げる事。 項を変更しようとする場合は,原子炉設置者は,あらかじめ主務大臣の許可を受けなければならないと規定し(同法26条1項,この許)可(原子炉設置変更許可)については,設置許可に関する同法24条の規定を準用するものとしている(同法26条4項。これらの事項)は,原子炉の使用の目的,型式,熱出力等,あるいは原子炉施設の位置,構造及び設備等というものであって,その性質上,同項が規定する許可基準への適合性を改めて審査する必要があるというのが,同法26条1項,4項の趣旨である。 このような規制法の趣旨にかんがみると,原子炉設置者のする設置変更許可の申請は,設置許可に係る工場又は事業所に設置された原子炉施設の一部を変更し,当該工場又は事業所において変更申請に係る原子炉施設を適法に設置することができる地位の付与を求めるものであり,これに対する変更許可処分は,原子炉設置者に対し「それま,での設置許可に係る工場又は事業所に設置された原子炉施設の一部を変更して,当該「一部,すなわ することができる地位の付与を求めるものであり,これに対する変更許可処分は,原子炉設置者に対し「それま,での設置許可に係る工場又は事業所に設置された原子炉施設の一部を変更して,当該「一部,すなわち変更申請に係る原子炉施設の部分」(変更申請に係る事項の部分)を適法に設置することができる地位」を付与するものである。 そして,変更許可処分の効果は,このような地位を原子炉設置者に付与するものにとどまり,かつ,変更許可処分に既存の原子炉設置許可処分の効力の消滅,変更の効果を結び付けたと解し得るような規定- 135 -は存しないから,変更許可処分は,当該原子炉施設につき設置許可処分によって既に発生している,当該原子炉施設が適法に存立するための法的根拠に直ちに影響を及ぼす性質のものではない。まして,既存の原子炉設置許可処分の効力を消滅させたり,既存の原子炉設置許可処分の効力を自らに取り込み,吸収して,自らが変更申請に係る事項の部分以外の部分を含めた原子炉施設全体の存立の法的根拠を提供したりするものとは解されない。 ②また,原子炉設置許可処分と変更許可処分とは,いずれも申請に対する行政処分であるところ,それぞれの判断の対象は,各申請に係る事項(前者については規制法23条2項各号所定の事項,後者については同法26条1項所定の事項のうち変更しようとするもの)であって,両者は,その基底にある工場又は事業所こそ同一であるが,判断権行使の対象は異にしている。したがって,後者における被告行政庁の認定判断は,法的にみれば,前者におけるそれを一部取り消し,又は修正するというようなものではあり得ない。このような関係にある以上,特別の立法による根拠がない限り,後者の判断内容が,前者のそれに取り込まれ,吸収されると解することもできない。 しかも,変更許可処分は 正するというようなものではあり得ない。このような関係にある以上,特別の立法による根拠がない限り,後者の判断内容が,前者のそれに取り込まれ,吸収されると解することもできない。 しかも,変更許可処分は,原子炉設置許可処分に係る工場又は事業所において,原子炉施設の変更申請に係る事項の部分を適法に設置し得る地位を付与するのみであり,原子炉設置者に何ら義務を課するものではない。その意味において,変更許可処分は,原子炉設置者に対し,原子炉設置許可処分に基づいて適法に設置されている原子炉施設の変更の実行を義務付ける効力を有するというような理解をするのは誤りである。 ③さらに,原子炉設置許可処分と変更許可処分はそれぞれ別個独立の行政処分であり,原子炉設置許可処分の判断内容が後にされた変更許- 136 -可処分のそれに取り込まれると解すべき実定法上,理論上の根拠はないから,変更許可処分の違法は,当該変更許可処分そのものの取消訴訟でのみ争われるべきである。 ④控訴人らの主張のように変更許可処分の違法事由も原子炉設置許可処分の取消訴訟で主張できるとすると,原子炉設置許可処分の取消訴訟とは別個に変更許可処分の取消訴訟が提起された場合には,審理が重複し,判断に矛盾抵触が生じるおそれがある。のみならず,変更許可処分がなされるたびに原子炉設置許可処分の取消訴訟の審理・判断の対象が変更拡張され,審理が長期化・漂流するおそれがある。さらに,変更許可処分について行訴法14条所定の出訴期間が経過した後も原子炉設置許可処分の取消訴訟において変更許可処分の違法事由を主張することができるとすれば,同条の趣旨が失われてしまうから,控訴人らの主張は失当である。 ⑤以上のとおり,変更許可処分は,原子炉設置者に対し,原子炉設置許可処分に係る工場又は事業所において,原子炉施設 ことができるとすれば,同条の趣旨が失われてしまうから,控訴人らの主張は失当である。 ⑤以上のとおり,変更許可処分は,原子炉設置者に対し,原子炉設置許可処分に係る工場又は事業所において,原子炉施設のうちの一部分(変更申請に係る事項の部分)を適法に設置する地位を付与するものであり,原子炉設置者は,この地位と,原子炉設置許可処分によって既に付与されている地位(厳密にいえば,当該地位のうち,変更申請に係る事項の部分を除いたその余の部分)とを併せて,上記工場又は事業所において変更後の全体としての原子炉施設を適法に設置することができることとなる。そして,原子炉設置許可処分と変更許可処分は,同一の原子炉施設に関するものであっても,それぞれ別個の申請に対する応答として,法律上別個の効力を有する別個の処分であって,その各効力の間に特別の法律上の関係はなく,互いに他の内容や効果に消長を来すものではないので,一方の処分の違法をもたらす事由は,当該処分に係るものに限られるから,変更許可処分の違法事由は,原- 137 -子炉設置許可処分に対する取消訴訟においては審理・判断の対象とはならない。 したがって,本件訴訟は,規制法23条,24条に基づき行われた本件原子炉の設置許可処分(本件処分)の取消訴訟であるから,本件訴訟における訴訟物は,本件処分の違法一般であり,かつ,これに限られるのであり,本件各変更許可処分は,本件原子力発電所1号機とその附属設備(本件原子炉施設)に関するものではあるが,本件処分とは別個の行政処分であり,それらの違法は,各変更許可処分の取消訴訟でのみ争われるべきものであり,これが本件訴訟の審理・判断の対象になるとは解し得ない。 (イ)上記(ア)が肯定される場合,どの範囲で,変更許可処分の違法事由が審理・判断の対象となるか。 (控訴人 訟でのみ争われるべきものであり,これが本件訴訟の審理・判断の対象になるとは解し得ない。 (イ)上記(ア)が肯定される場合,どの範囲で,変更許可処分の違法事由が審理・判断の対象となるか。 (控訴人らの主張)①規制法は,上記(ア)の控訴人らの主張のとおり,変更許可処分後においても変更許可処分によって内容を変更された原子炉設置許可処分が全体として存続し,原子炉の設置,運転の法的根拠は(変更許可処分によって内容を変更された)原子炉設置許可処分に一元化されていると解することを前提としている。 ②したがって,本件各変更許可処分に係る違法事由のすべてが本件訴訟の審理・判断の対象となる。 (被控訴人の主張)①規制法23条2項が,原子炉設置許可の申請書には「原子炉の,(中略)基数(3号「原子炉を設置する工場又は事業所の名称及」),び所在地(4号)を記載すべき旨を規定していることなどからする」と,規制法は,1個の設置許可申請に係る工場又は事業所に設置される原子炉(その附属設備を併せていえば原子炉施設)が数基に上る場- 138 -合があることを前提とし,このような場合であっても,単一の工場又は事業所に設置される原子炉施設については1個の設置許可をするとの立法政策を採っているものと解される。そして,規制法26条1項本文,23条2項3号により単一の工場又は事業所に設置される原子炉の基数を変更しようとする場合も設置変更許可の申請をすべきものとされることとを併せ考えると,まず,単一の工場又は事業所に1基の原子炉のみが設置されていた場合に,当該工場又は事業所において適法に原子炉の基数を増加させる(いわゆる増設をする)ためには,当該工場又は事業所を基礎として設置変更許可を受ける必要があり,かつ,それをもって足りると解され,新たな設置許可を受け は事業所において適法に原子炉の基数を増加させる(いわゆる増設をする)ためには,当該工場又は事業所を基礎として設置変更許可を受ける必要があり,かつ,それをもって足りると解され,新たな設置許可を受けるべきことにはならない。同様にして,数基の原子炉の設置された工場又は事業所につき,規制法26条1項により設置変更の許可を受けなければならない事項を変更しようとする場合には,当該変更が,当該工場又は事業所に設置された上記の数基の原子炉のうちの一部のもののみにかかわるときであっても,当該工場又は事業所を基礎として変更許可処分を受ける必要があると解される。 ②仮に,上記(ア)の控訴人らの主張を前提としても,これは「原子炉施設においてはその施設,設備の各部分が相互に補完しあって機能していることからして,その施設,設備がいったん変更された以上,その変更後の施設,設備を除いてその原子炉施設の安全性の有無を判断することはできない」という実質的考慮に基づくものと解されるから,その施設,設備の各部分が相互に補完し合って機能しており,これらが変更された場合にその変更後の施設,設備を除いて原子炉施設の安全性の有無を判断することはできないという関係は,特別の事情のない限り,1基の原子炉の施設,設備の各部分相互の間においてのみ生じ得ることが明らかである。 - 139 -そうであるとすれば,単一の工場又は事業所に数基の原子炉が設置されている場合には,そのうち原子炉設置許可処分に対する取消訴訟においてその安全性に関する違法が主張されている原子炉(数基の原子炉のうちの特定の原子炉)にかかわる事項の変更を内容に含む変更許可処分についてのみ,かつ,当該変更に関する事由のみが審理・判断の対象となる。これ以上に,当該工場又は事業所についてされたすべての変更許可処分の全内容 原子炉)にかかわる事項の変更を内容に含む変更許可処分についてのみ,かつ,当該変更に関する事由のみが審理・判断の対象となる。これ以上に,当該工場又は事業所についてされたすべての変更許可処分の全内容にわたって同取消訴訟の審理・判断は及ばない。 なお,変更許可処分がなされた場合,その判断内容と原子炉設置許可処分の判断内容とは峻別されるべきであり,原子炉設置許可処分に対する取消訴訟においてはその判断内容(もっとも,変更許可処分により変更が許可され,かつ現実に変更が実行された事項については,当該設置許可処分に対する取消訴訟のうち,当該設置許可処分中の上記事項に関する部分につき安全審査の違法を理由として当該部分の取消しを求める部分は,狭義の訴えの利益を失い,不適法となると解されるから,当該設置許可処分のうち実際に審理・判断の対象となるのは,変更が許可されていないか又は変更が実行されていないために残存している事項に限られる)のみについて,変更許可処分に対する。 取消訴訟においてはその判断内容のみについて,それぞれの安全性が審理・判断の対象となることとなる。そして,変更許可処分による変更後の施設,設備が全体として安全性を欠くというのは,変更許可処分がなされたという事後的な事情の発生によってそれ以後安全性を欠く状態が現出したということであるから,これが遡って設置許可処分の違法を構成することはあり得ない。 (ウ)上記(ア)が肯定される場合,上記(イ)の違法事由の主張・立証責任はいずれの当事者が負担するか。 - 140 -(控訴人らの主張)①原子炉設置許可処分に対する取消訴訟において,被告行政庁がした判断に不合理な点があるとの主張・立証責任については,本来,原告が負うべきものであるが,原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側にお 許可処分に対する取消訴訟において,被告行政庁がした判断に不合理な点があるとの主張・立証責任については,本来,原告が負うべきものであるが,原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側において所持していることなどを考慮すると,まず,被告行政庁において,その判断の依拠した具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等,被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠,資料に基づき主張・立証する必要があり,被告行政庁が上記主張・立証を尽くさない場合には,被告行政庁がした上記判断に不合理な点があることが事実上推認される(伊方原発最高裁判決。 )そこで,被告行政庁が,まず変更許可に際しての安全審査に関し,その依拠した具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等,その判断に看過し難い過誤,欠落のないことを相当の根拠,資料に基づき主張・立証する必要があり,被告行政庁がこの主張・立証を尽くさない場合には,上記判断に不合理な点があることが事実上推定されるべきである。 ②したがって,被告行政庁が変更許可処分の具体的審査基準や審査過程等につき看過し難い過誤,欠落のないことを相当の根拠,資料に基づき主張・立証すべきである。 (被控訴人の主張)①仮に,上記(ア)の控訴人らの主張を前提としても,変更許可処分の違法事由が原子炉設置許可処分の取消訴訟の審理・判断の対象となるのは,上記(イ)の被控訴人の主張のとおり「原子炉施設においてはその施設,設備の各部分が相互に補完しあって機能していることからして,その施設,設備がいったん変更された以上,その変更後の施設,設備を除いてその原子炉施設の安全性の有無を判断することはできな- 141 -い」という特別の事情に基づくものであるから,変更許可処分に関する違法事由は,このような特別の事情が明らかにされて初 ,設備を除いてその原子炉施設の安全性の有無を判断することはできな- 141 -い」という特別の事情に基づくものであるから,変更許可処分に関する違法事由は,このような特別の事情が明らかにされて初めて,例外的に,原子炉設置許可処分に対する取消訴訟の争点になる。しかし,控訴人らは本件各変更許可処分について,上記のような特別の事情を主張・立証していないから失当である。 ②更に仮に,上記のような特別の事情があるとしても,原子炉設置許可処分取消訴訟においては,変更許可処分につき現実にこれを争う原告による違法事由の主張を待って問題にするほかない。また,変更許可処分は,もともと多数回にわたって行われることが珍しくなく,安全審査の違法に限られるとしても,変更許可処分のすべてについて,被告行政庁がまず,その判断に看過し難い過誤,欠落のないことを相当の根拠,資料に基づき主張・立証すべきものとすると,原告による模索的な主張の展開を通じて争点のいたずらな拡大と不明確化が避けられず,審理の遅延渋滞に陥ることが必至であるとともに,模索的な主張の展開を通じて争点のいたずらな拡大と不明確化が避けられない。 ③したがって,仮に,変更許可処分の安全性に関する違法事由につき原子炉設置許可処分に対する取消訴訟の審理・判断の対象となるものがあるとしても,変更許可処分の違法事由の主張・立証責任は原告が負担すべきものであり,直ちにそれについて被告行政庁に主張・立証の必要があるものではない。 エ本件処分の専門技術性について,司法審査の方法はどうあるべきか。 (控訴人らの主張)(ア)原子炉施設の安全性が確保されないときは,人類未曾有の重大事故を引き起こし,世界的規模の回復し難い災禍をもたらす可能性をはらんでいるのみならず,原子炉施設の周辺住民らに対しては,生命・身体等に )原子炉施設の安全性が確保されないときは,人類未曾有の重大事故を引き起こし,世界的規模の回復し難い災禍をもたらす可能性をはらんでいるのみならず,原子炉施設の周辺住民らに対しては,生命・身体等に直接的に危害を及ぼし,その居住環境を放射能によって汚染・破壊し,- 142 -数世代に及ぶ災禍をもたらすなど,他の事故や天然自然の災害とは比較できない深刻な事態を引き起こすのである。このような地球的規模の災害及び原子炉施設の周辺住民らである控訴人らの災禍を防止するためには,その最終的かつ有効な規制は,司法審査以外にはない。 また,内閣総理大臣による原子炉設置許可処分は,一連の原子炉の設置運転にとってはほとんど決定的な契機であるが,原子炉施設の危険性に直接さらされる周辺住民らは,国民全体からすると圧倒的な少数派であり,その具体的な生命・身体等の危険性を有効適切に規制する手段は,司法的解決によらざるを得ない。 (イ)本件申請当時の規制法23条1項所定の原子炉設置許可が内閣総理大臣の権限とされたのは,原子炉施設の安全性の確保など,ことの重大性にかんがみ慎重に対処すべく,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門的知見に基づく意見を徴した上,特に内閣総理大臣の責任において,安全と確信した上で許可すべきものとされたからにほかならない。そして,内閣総理大臣は,原子炉設置許可に当たり,規制法適合性の判断が必要であるので,当該許可処分に何がしかの裁量を含むことは否定できないものの,それは安全性を前提とした上でのことであり,安全性判断そのものについてではなく,しかも法規適合性の判断が最終的にその裁量にゆだねられるものではなく,当該許可処分が規制法24条1項各号に適合した適法な処分か否かについては,別途,司法判断を受けることになる。それゆえ,内閣総理大臣 かも法規適合性の判断が最終的にその裁量にゆだねられるものではなく,当該許可処分が規制法24条1項各号に適合した適法な処分か否かについては,別途,司法判断を受けることになる。それゆえ,内閣総理大臣の原子炉設置許可の際の安全性の判断においては,原子力委員会などの調査審議及び判断の過程をつぶさに検討しそこに疑問をいれる余地がなければその意見を尊重して対処し(規制法24条2項,その安全とする意見にいささかでも疑問が)あれば,更に調査検討を指示するなどし暫定許可を見合わせたり,許可をしないなどの裁量の余地があるにとどまるというべきである。 - 143 -(ウ)原子炉施設の特質にかんがみると,絶対的な安全性が確保されるべきであるから,規制法24条1項各号の適合性の判断が極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づく総合判断であるからといって,比較衡量などによって左右される余地はなく,また,裁量によって判断すべき事柄ではない。そして,原子炉施設の安全性は,専門技術的な検討によって一義的に定まるというべきであり,ただ検討の仕方や資料などについて若干の専門技術的な裁量の余地があり得るのみである。しかも,人権尊重の憲法の原則に照らし,基本的人権と直接かかわる問題について,規制法がその準則を示すことを放棄し,被告行政庁にその処理,判断をまかせきってしまうことはあり得ない。 裁判所は,国民の生命,健康という最高度の人権を擁護すべき義務があり,規制法もこれを保護法益としている以上,規制法に照らし原子炉施設の周辺住民ら国民の権利の侵害のおそれがあるかないかについて吟味検討の責務を負っているから,本件訴訟における審理・判断についても科学的,専門技術的検討という困難を避けることはできない。規制法24条1項各号の適合性の問題は,技術的能力の存否あるいは災害 いて吟味検討の責務を負っているから,本件訴訟における審理・判断についても科学的,専門技術的検討という困難を避けることはできない。規制法24条1項各号の適合性の問題は,技術的能力の存否あるいは災害防止の確率性の有無に関するものであって,講学上の要件裁量の範疇に入るが,専門技術性ゆえに裁判所が司法審査になじまないとすれば,専門性を争点に含む係争については一切裁判をすることができず,国民の権利保護を否定することになる。 (エ)伊方原発最高裁判決は,原子炉施設の専門技術性のために被告行政庁の原子炉設置許可における審査の裁量権を認めながら,他方で,専門技術性の判断能力に欠けると自称する裁判所が,原子力委員会若しくは安全審査会が調査審議に用いた具体的審査基準に不合理な点があるか,また,その調査審議する過程に看過し難い過誤,欠落が存在しないかどうかを判断すべしと判示するのは全く矛盾であるから,不当である。そ- 144 -もそも,司法審査の対象は,原子力委員会若しくは安全審査会の審査基準や審査過程の「看過し難い過誤,欠落」があるか否かという消極的な姿勢ではなく,審査基準や審査過程の合理性であり,内閣総理大臣の原子炉設置許可処分の適法性そのものであるべきである。 規制法24条1項各号の趣旨は,上記地球的規模の災害及び原子炉施設の周辺住民らである控訴人らの災禍などが万が一にも起こらないよう科学的,専門技術的見地から十分な審査をし,もって原子炉施設の安全性を確保し,控訴人らの生命・身体等の基本的人権を擁護しようとすることにある。そして,同項各号の要件は優れて法的概念であり,その適合性の判断は,他の一般の法律適合性同様,裁判所の任務であるから,裁判所は,本件処分の規制法適合性,すなわち手続の具備と本件処分に係る本件原子炉施設の安全性との実体的判断を て法的概念であり,その適合性の判断は,他の一般の法律適合性同様,裁判所の任務であるから,裁判所は,本件処分の規制法適合性,すなわち手続の具備と本件処分に係る本件原子炉施設の安全性との実体的判断をなすべきである。 (オ)したがって,裁判所は,内閣総理大臣の原子炉設置許可処分に対する取消訴訟の審理・判断については,専門技術性があっても,絶対的安全性が確保されているか否かを覆審的に審査すべきであるので,規制法24条1項各号の適合性について改めて独自の審理を行い,その結果に基づく裁判所自らの判断と対比して直接その適否を決する実体的判断をすべきである。 (被控訴人の主張)(ア)控訴人らの主張する「絶対的安全」が,原子炉施設においてはいかなる故障や事故の発生も確率的に零でなければならないという趣旨であれば,全く非現実的,非建設的な発想である。現代社会において,人類が創造し,利用している各種の機器,産業施設で何らかの潜在的危険性を有しないものは存在せず,この点では原子炉施設も例外ではない。原子力の平和利用を推進することによって,エネルギー資源を確保し,産業の振興を図り,もって人類の福祉と国民生活の水準向上に寄与するこ- 145 -と等を目的とする基本法を基礎とする我が国における原子力利用に関する実定法制度の下において,同法の精神にのっとり,原子力の平和利用を具体的に実現するための必要な規制を行うことを目的とする規制法に照らすと,控訴人らの主張は原子炉施設の存在それ自体を否定するものであるから失当である。 原子力発電は,人類の英知を結集して形成された極めて高度の技術体系であり,その安全確保の面においても各般の技術的措置が講じられているが,その安全性確保は,放射性物質の有する危険性をいかに顕在化させないかの点に尽きる。すなわち,原子炉施設の た極めて高度の技術体系であり,その安全確保の面においても各般の技術的措置が講じられているが,その安全性確保は,放射性物質の有する危険性をいかに顕在化させないかの点に尽きる。すなわち,原子炉施設の安全性の問題は,それが放射性物質を内蔵することにより潜在的危険性を有しているということにあるのではなく,産業施設の本来的ともいえる潜在的危険性をいかに顕在化させないかの問題である。そして,控訴人らの主張のように,原子炉施設における単なる故障の発生の可能性の存在や各種事故防止対策のための設備等の存在にもかかわらず事故の発生の可能性が確率的には零でないことをもって,換言すれば,各種事故防止対策のための設備等の存在意義を全面的に否定し去ることによって,原子炉施設が有する潜在的危険性を顕在化されたものとして把握し,原子炉施設を安全でないというのであれば,そのような「絶対的安全」の要求は原子炉施設の存在それ自体を否定することにほかならず合理性がない。 したがって,原子炉設置許可処分に対する取消訴訟における司法審査については,高度な科学的,専門技術的知見に基づく総合的な判断を要することにかんがみると,原子力委員会若しくは安全審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてなされた被告行政庁の判断に不合理な点があるかという観点から行われるべきであって,調査審議に用いられた具体的な審査基準に不合理な点があり,あるいは,当該原子炉施設が上記具体的審査基準に適合するとした原子力委員会等の調査審議及び判- 146 -断の過程に看過し難い過誤,欠落があり,被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合に初めて,被告行政庁の判断に不合理な点があるものとして,違法とされるものである。 (イ)また,原子炉設置許可処分に対する取消訴訟における裁判所の審理・判断 がこれに依拠してされたと認められる場合に初めて,被告行政庁の判断に不合理な点があるものとして,違法とされるものである。 (イ)また,原子炉設置許可処分に対する取消訴訟における裁判所の審理・判断の対象事項は,上記アの被控訴人の主張のとおり規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分及び4号所定の要件であるから,同要件適合性を肯定し,原子炉設置許可処分をした被告行政庁の判断の合理性についての主張・立証責任は,これを不合理なものとして争う原告が負担すべきものである。 (2)本件処分の手続的違法はあるか否か。 ア本件安全審査手続における構造的瑕疵について(控訴人らの主張)(ア)安全審査の手続規定に不備あるいは不明確な瑕疵があるか否か。 (控訴人らの主張)①行政手続が刑事手続と性質上差異があるとしても,憲法31条の適正手続の要請は行政手続においても民主的統制の必要から広く適用されるべきである。行政手続法(平成5年法律第88号)に照らしても,行政手続に対する民主的統制の必要性は高い。そして,原子炉施設の周辺住民の同意手続はともかくとして,規制法等においては申請書やその添付書類の事前公開手続も定められておらず,公聴会の開催すら保障されていないので,このような安全審査手続によっては判断の公正さや正確さを保てることはできないから,刑事手続と性質上の差異があるとしても,可能にして相当な住民参加の手続が保障されるべきである。 ②したがって,規制法等の原子炉設置許可手続に関する手続規定は憲法31条に違反する。 - 147 -(被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 (イ)安全審査に係る技術的基準等の不明確があるか否か。 (控訴人らの主張)①設置許可基準や安全審査基準は,原子炉設置許可の安全審査そのものを左右しその決め手になる重要な事 訴人らの主張は争う。 (イ)安全審査に係る技術的基準等の不明確があるか否か。 (控訴人らの主張)①設置許可基準や安全審査基準は,原子炉設置許可の安全審査そのものを左右しその決め手になる重要な事項であり,可能な限り明確化され,法律で定めるべきであるから,法律の委任もなくこれが被告行政庁の裁量にゆだねられる根拠はない。 そして,規制法24条1項4号は,原子炉を設置する場合の安全性に関する許可基準を定めているものの,その規定の仕方は極めて抽象的であって,安全性に係る具体的な事項の審査基準をこれに求めることは困難であり,他にこれを補充すべき法的規定も整備されていない。 また,実際の安全審査に用いられている立地審査指針,ECCS安全評価指針,線量目標値指針,線量目標値評価指針,安全設計審査指針,気象指針等の安全審査の基準は,単なる行政内部の内規にすぎず,そのときどきの情勢によって容易に変えられ,しかもその内容や水準が明瞭にして高度であるとはいえないから,このような基準によりなされた安全審査の手続には重大な瑕疵がある。 ②もっとも,控訴人らは,原子炉施設の安全性に関する審査が多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づいてなされる必要のあること及び科学技術が不断に進歩,発展していることを否定するものではなく,安全性判断の基準となる技術的基準のすべてについて法律で具体的かつ詳細に規定すべきであると主張するものではない。つまり,控訴人らが法律,法律によって授権された政令・省令をもって規定すべきであると主張する対象は,原子炉の安全審査について必要不可欠な事項(審査対象,審査項目等)と,それぞれの審- 148 -査事項の審査や検討に用いる技術や資料等の範囲,及びそれらの水準ないし精度,専門家の見解や分析結果等が分かれているときの ついて必要不可欠な事項(審査対象,審査項目等)と,それぞれの審- 148 -査事項の審査や検討に用いる技術や資料等の範囲,及びそれらの水準ないし精度,専門家の見解や分析結果等が分かれているときの選択基準や取扱方法,基準を改定し,変更する場合の手続等であって,必要にして相当な範囲に限定している。しかし,現行法上においては,このような原子炉設置許可手続に関する手続規定は制定されていない。 ③したがって,規制法等の原子炉設置許可手続に関する手続規定は憲法31条,41条,73条,81条に違反する。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 (ウ)本件安全審査手続に不公正,不適正があるか否か。 (控訴人らの主張)①原子炉設置許可手続における安全審査手続は,他のいかなる行政手続にも増して,公正らしさと適正らしさが要求され,実際の安全審査においても厳格かつ公正な判断がなされるべきものであるところ,本件安全審査にあっては,他の先行炉の安全審査と同等若しくはそれ以下の杜撰な審査しか行われてきておらず,安全審査の名に値しない。 ②「民主「自主」及び「公開」のいわゆる原子力三原則で担保さ」,れているはずの関係資料の公開や提供がなされず,原子力委員会やその下部機関である安全審査会には,実質的な安全審査をやり遂げるだけの人材はなく,施設・設備,資料・データ及び予算もないのが実情で,具体的な審査のやり方は,本件原子炉の安全審査とは何の関係もない他の機関(原子力発電技術顧問会)が関与し,調査委員などと称する法的地位や資格の極めてあいまいな人が多数関与(それも中心的に関与している)し,また,専門技術的知見を有する各専門分野の学識経験者とは全く立場を異にする行政職員との代理者が数多く関与(それも中心的に関与している)し,しかも,法律上何らの根拠もな- 中心的に関与している)し,また,専門技術的知見を有する各専門分野の学識経験者とは全く立場を異にする行政職員との代理者が数多く関与(それも中心的に関与している)し,しかも,法律上何らの根拠もな- 149 -いのにその審査対象を原子炉の基本設計ないし基本的設計方針である旨不当に限定した上で,原子炉設置許可の申請者側から提出された資料やデータをごく限られた部会員が短時間,形式的に審査するというものであって,こうした審査の実態をみる限り,到底実質的な安全審査がなされたとはいえない。 ③したがって,安全審査は,憲法31条に違反して,不公正,不適正に行われている。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 (エ)立法の瑕疵があるか否か。 (控訴人らの主張)①上記(ア)の控訴人らの主張のとおり,原子炉設置の安全審査に関する手続規定が整備されておらず,かつ,住民参加の手続が保障されていないなどの点で極めて不備であって,憲法31条をはじめとする諸規定との関連で,憲法上極めて問題である。 ②上記(イ)の控訴人らの主張のとおり,原子力発電所の安全審査に用いられている安全審査指針等の技術基準が,内容的にみて一義的に明確ではなく,かつ,国際基準から時代遅れであったり,そのときどきの情勢によって容易に変更されるなどの点で問題であるほか,法定化が可能であるにもかかわらず,法定化することが意識的に避けられてきているなどの点で憲法上重大な疑義がある。 ③上記(ウ)の控訴人らの主張のとおり,現実の原子力委員会若しくは安全審査会の安全審査においては,原子力三原則を無視した手続がとられている。 ④そこで,原子炉設置の安全審査は形式的・儀式的なものではあってはならず,そのためには,実質的な安全審査を確保するに足りる相当- 150 -の予算と設備等が必要で 無視した手続がとられている。 ④そこで,原子炉設置の安全審査は形式的・儀式的なものではあってはならず,そのためには,実質的な安全審査を確保するに足りる相当- 150 -の予算と設備等が必要であり,実質審査が可能な審査体制の確立が要請される。したがって,原子炉設置許可手続における安全審査手続においては,憲法上要請されている手続規定が十分に整備されたり,立法化されたりしていないので,いずれも立法の瑕疵があり,憲法13条,31条,41条,73条,81条に違反するのみならず,憲法の基本原則である国民主権主義,基本的人権尊重主義,民主主義の諸原則と,憲法が基本的な原理として採用している法治主義の原理,行政の司法的統制の原理,人権の裁判的保障の原理にも違反する。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 イ本件安全審査手続における個別的瑕疵について(ア)原子力委員会における審査手続に瑕疵があるか否か。 (控訴人らの主張)①原子力委員会は,委員長及び3名以上の委員の出席がなければ,会議を開き,議決をすることができないところ(設置法11条2号,)本件原子炉の安全審査に関連する合計11回の原子力委員会のうち,昭和50年の第13回定例会議(同年4月1日)及び第17回定例会議(同年5月20日,昭和51年の第48回定例会議(同年12月)14日,昭和52年の第32回臨時会議(同年8月12日,第3))3回定例会議(同年8月16日)及び第34回定例会議(同年8月23日)の計6回の各委員会に委員長が出席しておらず,しかもその間委員長の職務代理者が選任されることはなかったから,本件安全審査は違法である。 すなわち,原子力委員会は,原子力の研究,開発,利用に関する行政事務を所掌する国の最も中核的機関であり,原子炉施設の安全審査に関しては,他のい されることはなかったから,本件安全審査は違法である。 すなわち,原子力委員会は,原子力の研究,開発,利用に関する行政事務を所掌する国の最も中核的機関であり,原子炉施設の安全審査に関しては,他のいずれの国家機関(行政機関)よりも上位に位置す- 151 -る機関であって,その権限と責任はいずれの機関よりも強くかつ重大であるために,委員長は国民に対し責任ある立場にある国務大臣(科学技術庁長官)が充てられ,また,委員長は会務を総理し,委員会を代表し,会議を招集するなどの絶大な権限を有しているのであるから,委員長の出席しない原子力委員会は法の予定するところではないが,病気や事故により執務できない場合もないわけではないため,あらかじめ常勤の委員の中から委員長に万一故障がある場合には,委員長を代理する者を定めておくこととされているにとどまる。そうとすれば,本件安全審査の中で最も重要な手続である上記第32回,第34回の各原子力委員会に委員長が出席していないことは,それ自体許されないことであり,基本的かつ重大な手続的瑕疵というべきである。 ②仮に,委員長に故障があり,あらかじめ選任されていた職務代理者がいたとすれば,当然その選任手続は辞令等の文書によって残されているはずであり,原子力委員会の議事録等にも誰が委員長の職務代理者であるか分かるように記録されているはずであるにもかかわらず,これを裏付ける資料はない。なお,委員長又はその職務代理者がいなければ,会議を開くことすら許されないから(設置法11条2項,)委員長以外の委員全員が出席しているとしても会議を開くことさえも許されない。 (被控訴人の主張)①原子力委員会においては委員長に故障がある場合に委員長を代理する者をあらかじめ常勤の委員のうちから定めておくことができるところ(設置法7条3項 を開くことさえも許されない。 (被控訴人の主張)①原子力委員会においては委員長に故障がある場合に委員長を代理する者をあらかじめ常勤の委員のうちから定めておくことができるところ(設置法7条3項,委員長として,昭和49年12月9日にP8)委員長,昭和51年9月15日にP9委員長,及び同年12月24日にP10委員長がそれぞれ任命されたが,昭和49年12月10日にP8委員長の代理者として,昭和51年9月21日にP9委員長の代- 152 -理者として,昭和52年1月7日にP10委員長の代理者としていずれもP11委員が指名されている。そして,控訴人らが指摘する委員長の欠席した計6回の原子力委員会については,いずれも上記P11委員長代理が出席し,委員長の職務を務めており,原子力委員会開催に必要な要件を満たしている。 ②したがって,委員長不在の際にはいずれの場合も適法に選任されたP11委員長代理によって原子力委員会が開かれ,本件安全審査に係る審議・議決が行われている。 (イ)安全審査会における審査手続に瑕疵があるか否か。 (控訴人らの主張)①本件安全審査を行う安全審査会の会合には,毎回のように審査委員の代理人が出席し,定足数に満たなかったにもかかわらず,安全審査会が開催され,正規の専門委員でない調査委員が安全審査会に出席して審査に当たったのは,いずれも本件安全審査手続の瑕疵であって,そのような瑕疵ある手続によりなされた本件安全審査は違法である。 なお,審査会運営規程には,審査委員の代理人について何ら規定されていないのであるから,代理人を認めるものとは考えられず,また,調査委員制度も法の許容する制度ではない。 ②安全審査会は,昭和52年4月19日開催の第158回安全審査会において,定数30名のところ3分の1の10名しか出席していない ものとは考えられず,また,調査委員制度も法の許容する制度ではない。 ②安全審査会は,昭和52年4月19日開催の第158回安全審査会において,定数30名のところ3分の1の10名しか出席していないから,安全審査会における本件安全審査手続は違法である。 (被控訴人の主張)①昭和36年9月22日の安全審査会においては,設置法16条,設置法施行令4条,安全審査会運営規程8条に基づき,関係行政機関の職員のうちから任命された審査委員については代理出席を認め,これらの代理人を定足数に加え,議決権を持つ旨決定している。これら委- 153 -員については,その者の有する専門的学識・経験とともに,当該行政機関自体が有する高度の専門的知見を安全審査に役立てるため,その者を所属関係行政機関を代表する者として選任する趣旨であるから,学識経験ある者のうちから任命された審査委員の場合とは異なって,適切な代理人である限り,代理出席を認めても何ら設置法の趣旨に反するものではない。そして,安全審査会に代理者を出席させた審査委員は,いずれも関係行政機関の職員から任命されたものであるから違法ではない。 また,調査委員制度は,安全審査会が昭和44年6月,設置法16条,設置法施行令4条,安全審査会運営規程8条に基づき,審査委員を補助して原子炉に係る安全性に関する事項を調査することによって調査審議の能率の向上を図るために設けられたものであり,法令上の根拠を有するから,調査委員が安全審査会に出席したことは適法である。 ②上記第158回の安全審査会では,当時の委員総数19名に対して,出席者数が10名であるから(甲89の①,定足数を満たしている)ので適法である。 (3)規制法24条1項1号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (控訴人らの主張)ア上記(1 ,出席者数が10名であるから(甲89の①,定足数を満たしている)ので適法である。 (3)規制法24条1項1号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (控訴人らの主張)ア上記(1)アの控訴人らの主張のとおり,規制法24条1項1号の要件に係る違法事由は,本件処分の取消訴訟の審理の対象となる。 イ(ア)ウラン燃料は,ウラン鉱石を精錬,転換,濃縮,再転換,加工して原子力発電所で燃焼されることになる。そして,日本の原子力平和利用の結果として生まれた原子力発電所で燃焼した使用済みのウラン燃料は,一定期間原子炉施設内の使用済燃料プールで冷却した後,再処理工場に- 154 -運ばれて再処理され,再処理で抽出したプルトニウムがイギリスやフランスの各再処理工場で原爆材料に転用され,原爆や水爆,中性子爆弾等の核爆弾が製造されている。なお,フランスから日本に対し,平成4年11月から平成5年1月にかけて,軽水炉原子力発電所の使用済燃料をフランスで再処理して抽出したプルトニウム1.5tが輸送船で運ばれた際,日本政府は,当該返還プルトニウムは日本発の分がそのまま帰ってくるのではなく,等量で返還されるものであることを認めているから,日本発の使用済みのウラン燃料が核兵器に転用されていることになる。 (イ)核燃料サイクルから生まれる濃縮ウランの残り滓である劣化ウランは,対戦車用等の弾薬に用いられたり,劣化ウラン弾に加工され,実際に戦争に使用されたりしている。劣化ウランの実戦使用は,平成3年の湾岸戦争,ユーゴスラビアの内戦のほか,平成7年のボスニア・ヘルツェゴミナ紛争,平成11年のコソボ・セルビア紛争であり,また,沖縄の射爆場で演習にこれが使用されたことがある。 (ウ)原子力の歴史を振り返ると,軍事費だけで原子力技術を維持できなくなったため「平 ェゴミナ紛争,平成11年のコソボ・セルビア紛争であり,また,沖縄の射爆場で演習にこれが使用されたことがある。 (ウ)原子力の歴史を振り返ると,軍事費だけで原子力技術を維持できなくなったため「平和利用」を口実にその技術維持の負担を民間に求め,てきたものであって,原子力利用は軍事と表裏一体で進められてきた。 日本の原子力政策は,戦争技術としてスタートした原子力を,あたかも平和利用と装って進めてきた。 エしたがって,本件処分は,規制法24条1項1号に違反する。 (被控訴人の主張)ア上記(1)アの被控訴人の主張のとおり,規制法24条1項1号の要件に係る違法事由は,本件処分の取消訴訟の審理の対象とはならないから,控訴人らの主張は失当である。 イ規制法24条1項1号は,我が国における原子力の研究,開発及び利用を平和の目的に限って行うという我が国の原子力に関する基本政策に適合- 155 -することの要件を定めるものである。そして,本件原子炉は,商業用発電炉であるから平和目的以外に利用されるおそれはない。また,核燃料物質は,低濃縮二酸化ウランであり,予定使用量は適正であり,更に使用済燃料の再処理によって取り出されるプルトニウムは規制法により厳しく規制されるので,平和目的以外に利用されるおそれはない。 (4)規制法24条1項2号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (控訴人らの主張)ア上記(1)アの控訴人らの主張のとおり,規制法24条1項2号の要件に係る違法事由は,本件処分の取消訴訟の審理の対象となる。 イ(ア)日本の電力会社は,地域を電力会社毎に分割した地域独占体制と総括原価で決められる価格システムを採用しているので,その電気料金は世界で最も高く,米国の2倍,ヨーロッパの1.5倍であり,その是正のために電力事業の規制緩和 域を電力会社毎に分割した地域独占体制と総括原価で決められる価格システムを採用しているので,その電気料金は世界で最も高く,米国の2倍,ヨーロッパの1.5倍であり,その是正のために電力事業の規制緩和と自由化政策が展開されている。そして,日本の電力会社は,10社合計の平成12年3月決算で売上15兆3000億円に対し負債29兆5000億円であって,膨大な負債を抱えている。 (イ)本件原子力発電所は,現在合計出力821.2万kWの世界最大の原子力発電所であるが,消費地東京から約250㎞離れて建設されており,送電ロスが大きい。そこで,現在注目されているのが小型分散電源であるマイクロガスタービンや燃料電池である。 マイクロガスタービンは,自動車用ターボチャージャーの技術を応用した数百kW以下の小容量ガスタービンで,小型ガスタービン,高速発電機,周波数変換器(インバータ)を組み合わせた,都市ガスやLPG,灯油などを燃料とするシンプルで低コストの発電機である。また,燃料電池は,水素と酸素から電気を取り出すクリーンな発電装置である。 - 156 -今では電力会社も新エネルギーとして研究開発を行っているものの,現在の大規模集中発電,長距離送電を前提にした電力会社が独占的に小型分散電源方式に対応できるとは考えられず,ガス会社やその他の新会社で対応することにならざるを得ない。 (ウ)こうした発電システムの革命的大変化が目前に迫っている段階においては,膨大な負債を抱える電力会社が将来とも計画的に原子力発電を遂行する義務を果たすことはできない。 ウ(ア)20世紀は,社会制度も技術も効率を求めて大規模集中化し,一方で,エネルギーの大量消費が地球温暖化をもたらし,便利さや効果を目的に使用した放射性物質や化学物質が放射能汚染や化学物質汚染をもたらしているから, ,社会制度も技術も効率を求めて大規模集中化し,一方で,エネルギーの大量消費が地球温暖化をもたらし,便利さや効果を目的に使用した放射性物質や化学物質が放射能汚染や化学物質汚染をもたらしているから,21世紀はこうした問題を解決しなければ人類はおろか地球の存在すら危ぶまれる事態になっている。 原子力利用で生み出された核のゴミは永久に管理しなければならず,将来世代に負の遺産として残される,高レベル放射性廃棄物のガラス固体は,40ないし50年間青森県ω10で冷却管理し,その後高レベル処分地に地下深く埋設され400年間管理しなければならない計画となっているが,その埋設処分は決まっておらず,試験地さえ未定である。 また,電力会社が将来数百年も存在すること自体が予想し難いことである。 (イ)今後の発電システムが急激に変化することが予想される中で,民間の電力会社が原子力発電所を維持管理することや,原子力発電所を運転していくことに伴い必然的に生み出される核のゴミを,想像を超える長期間安全に管理することは不可能である。そして,放射性廃棄物の最終処分の方法及び廃炉の処理方法とその安全性が確立しない限り「原子,力の利用及び開発の計画的遂行」は不可能である。 エしたがって,本件処分は,規制法24条1項2号に違反する。 - 157 -(被控訴人の主張)ア上記(1)アの被控訴人の主張のとおり,規制法24条1項2号の要件に係る違法事由は,本件処分の取消訴訟の審理の対象とはならないから,控訴人らの主張は失当である。 イ規制法24条1項2号は,我が国における原子力の開発及び利用を長期的視野に立って計画的に遂行するとの我が国の原子力に関する基本政策に適合することの要件を定めるものである。そして,本件原子炉の設置は,原子力開発利用長期計画に定められた我が国における 及び利用を長期的視野に立って計画的に遂行するとの我が国の原子力に関する基本政策に適合することの要件を定めるものである。そして,本件原子炉の設置は,原子力開発利用長期計画に定められた我が国における原子力開発・利用の方向に沿っており,原子力の開発及び利用の計画的遂行に支障を及ぼすおそれはない。 (5)規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。また,同条1項3号のうち技術的能力に係る部分の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 ア規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分について(控訴人らの主張)(ア)上記(1)アの控訴人らの主張のとおり,規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分に係る違法事由についても,本件処分の取消訴訟の審理の対象となる。 (イ)東京電力は,上記(4)の控訴人らの主張のとおり膨大な負債を抱えており,原子力発電所の事故によって生じる損失を補償し得る経理的基礎を有していない。 (ウ)したがって,本件処分は,規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分に違反する。 (被控訴人の主張)(ア)上記(1)アの被控訴人の主張のとおり,規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分に係る違法事由は,本件処分の取消訴訟の審理- 158 -の対象とはならないから,控訴人らの主張は失当である。 (イ)規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分は,原子炉の設置,運転等をするに足りる十分な資金的裏付けがあることの要件を定めるものである。そして,東京電力の資金調達能力及び原子炉設置のための資金計画に照らし,東京電力には原子炉を設置するために必要な経理的基礎がある。 イ規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分について(控訴人らの主張)(ア)①規制法24 原子炉設置のための資金計画に照らし,東京電力には原子炉を設置するために必要な経理的基礎がある。 イ規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分について(控訴人らの主張)(ア)①規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分の要件は,原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置,運転につき所定の技術的能力を欠くときは,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ,上記災害が万が一にも起こらないようにするため,原子炉設置許可の段階で,原子炉を設置しようとする者の技術的能力について,科学的,専門技術的見地から十分な審査を行わせるものである。 ②しかし,原子力委員会若しくは安全審査会の本件安全審査で用いられ,また,他の原子力発電所を含めて現在行われている技術的能力に関する安全審査の方法は破綻しており,実際の技術的能力を審査できていない。 すなわち,電気事業者の原子炉設置許可申請書に記載される技術者の経験年数が実態と異なることに加えて,国家資格である核燃料取扱主任者資格の取得者の存在・数が実際の安全性を確保するものではなく,とりわけ上記(1)イの控訴人らの主張に係るJCO事故では,事故の原因となった沈殿槽へのウラン溶液の複数バッチ投入につき核燃料取扱主任者資格取得者が深く関与し,素人でもわかるような危険を- 159 -看過して違法作業に積極的な承認を与えていたことから,国家資格取得者がいることは安全上プラスになっていない。むしろ,JCO事故からは,核燃料取扱主任者資格取得者が多数いても,それらの者は臨界規制を順守させることについて全く役に立たず,違法作業をしても大丈夫であるという形でその知識を悪用して違法作業を支援す ろ,JCO事故からは,核燃料取扱主任者資格取得者が多数いても,それらの者は臨界規制を順守させることについて全く役に立たず,違法作業をしても大丈夫であるという形でその知識を悪用して違法作業を支援する危険性があると判断せざるを得ず,また,核燃料取扱主任者資格を取得していても,臨界管理の初歩的な知識に欠ける,臨界管理能力の全くない者が存在すると判断せざるを得ないから,現状からは,核燃料取扱主任者資格を持つ者がいるということは臨界安全性を保証するものではなく,その存在がプラスになるのかどうかさえ怪しいというべきである。そして,原子力委員会若しくは安全審査会による安全審査に当たり,原子炉設置許可申請をした電気事業者からその技術者の経歴や経験年数,国家資格者の数を提出させるだけでは電気事業者の技術的能力を評価することはできないので,現在の技術的能力に関する安全審査の方法には欠陥がある。 ③このため,本件原子炉施設に対する科学的,専門技術的な本件安全審査においては,東京電力の技術能力に照らして「原子炉等による災害が万が一にも起こらないこと」が調査審議の過程において十分に確認されていない。 (イ)①経済産業省原子力安全・保安院は,平成14年8月29日,東京電力の福島県内の福島第一・第二原発と新潟県内の本件原子力発電所の合計原子力発電所13基において,昭和61年から平成13年にかけて東京電力の自主点検記録に29件の不正があったことを発表した。 炉心シュラウドのひび割れについてみると,東京電力の公式の発表では,福島第一原発2号機で平成6年6月に中間部リングで見つかったひび割れが最初とされていたが,平成3年に福島第一原発1号機と- 160 -4号機でひび割れが見つかっていたことが明らかになった。同2号機で見つかったひび割れも,当時公表されていた グで見つかったひび割れが最初とされていたが,平成3年に福島第一原発1号機と- 160 -4号機でひび割れが見つかっていたことが明らかになった。同2号機で見つかったひび割れも,当時公表されていたよりはるかに大規模で深刻なものであることが判明した。しかも,東京電力において,ひび割れが見つかっていないが「予防保全対策」として炉心シュラウドを交換すると説明していた福島第一原発のシュラウドには,すべてひび割れが起きていたことが明らかになった。そして,耐応力腐食割れ材料であるSUS316L材を使用した福島第二原発や本件原子力発電所の各シュラウドでも運転開始から10年程度でひび割れが見つかっていたが,隠蔽されたまま運転が続けられていた。こうした一連の事故隠し,損傷隠しは,保守点検を担当する東京電力の補修部が行っていたが,これを知った東京電力の幹部も放置していた。 原子炉の基本設計が理論的に未然防止をうたう設計であり,また,常日頃の運転における健全性を維持する設計であったとしても,実際の電気事業者が事故や損傷を隠し,これを経済産業省原子力安全・保安院等が発見することができずに16年もの間放置してしまえば,重大な事故につながる可能性が出てくるのは明らかである。 技術的な能力においても,社会的な信頼性という観点からみても,事故隠しや記録の改竄を行う東京電力には本件原子力発電所の運転をする資格はない。 ②総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力安全規制法制検討小委員会において,平成14年9月13日,同委員から世界初のシュラウド維持基準を盛り込んだ日本版維持基準の導入が提案された。 しかし,東京電力は,平成6年の福島第一原発2号機の炉心シュラウドひび割れ時には,ひび割れは進展しないと主張し,ブラケット工法(シュラウドの上部胴と中間部胴をそ 日本版維持基準の導入が提案された。 しかし,東京電力は,平成6年の福島第一原発2号機の炉心シュラウドひび割れ時には,ひび割れは進展しないと主張し,ブラケット工法(シュラウドの上部胴と中間部胴をその溶接部外側の円周上でステ- 161 -ンレス金具を介してボルトを用いて取り付ける工法)という簡単な修理を施しただけで運転を再開したが,後にシュラウド交換という大手術に踏み切った。このことは,福島第二原発3号機でとったタイロッド工法(シュラウド全体を固定するため,原子力圧力容器とシュラウドの間に長尺の支柱を90度感覚で4箇所に取り付けて補修する方法)のような最悪の事態を防ぐためだけの簡単な修理では全く不十分であったこと,すなわち自らの見通しが誤っていたことを自ら示したもので,まさに,その見通しの甘さを露呈したものにほかならない。 このような東京電力が,新しい上記シュラウド維持基準について,しかも米国ではいまだ導入もされていない炉心シュラウドの応力腐食割れに関する世界初の維持基準について,適切にこれを運用し得る技術的能力は有していない。 (ウ)したがって,本件処分は,規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分に違反する。 (被控訴人の主張)規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分は,主として原子炉施設による災害の防止を図るという観点から規定されたものである。そして,東京電力の擁する技術者の質及び数,技術者の養成計画等に照らすと,東京電力には本件原子炉の建設に必要な技術的能力及び本件原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力がある。 (6)規制法24条1項4号所定の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 ア原子炉施設の安全性の意義とその安全審査のあり方をどのように考えるか。 (ア)原子炉施設の安全性の意義としきい値の (6)規制法24条1項4号所定の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 ア原子炉施設の安全性の意義とその安全審査のあり方をどのように考えるか。 (ア)原子炉施設の安全性の意義としきい値の存否(控訴人らの主張)- 162 -①原子力発電所は,その平常運転時において内部に極めて毒性の高い核分裂生成物など放射性物質を大量に産出するばかりでなく,平常運転時においてもその幾分かを気体あるいは液体として必然的に周辺環境に排出し,発電所周辺を汚染する。このため,原子炉施設の周辺住民らは,その位置,運転稼働により何らかの放射線被ばくを避け得ない。 すなわち,平常運転時における放射線被ばくは長期かつ広範にわたり,永い被害をもたらすものである。この被ばくは,比較的低線量放射線によるものではあるが,原子炉の運転を継続している限り放射性物質を含む気体及び液体の排出は続き,これによる被ばくは恒常的かつ長期に継続する。しかも,気体及び液体中の放射性物質はそれ自身自然的条件によって拡散するばかりでなく,付着ないし濃縮された野菜や魚介類は自然的社会的な流通によって拡散し,また,遺伝的影響を受けた人の社会的交通によりその影響は広範囲に広がって行くのであって,その広がりは想像を超えるものがある。加えて,その影響は晩発性障害ないしは遺伝的障害に及び,個体の一生を超え数世代にわたることとなる。 また,原子力発電所による放射線被ばくは,公衆なかんずく本件原子炉敷地周辺の公衆にとっては,選択の余地はなく一方的かつ不可避にもたらされる。しかも,本件原子炉施設の周辺の控訴人らは,医療被ばくと異なり,選択の余地なく何の対価も利益もなしに「優先的に」望まない放射線被害を余儀なくされ,これによるリスクを負担する。 さらに,原子力発電所による放射線被ばくは,低線量のた 訴人らは,医療被ばくと異なり,選択の余地なく何の対価も利益もなしに「優先的に」望まない放射線被害を余儀なくされ,これによるリスクを負担する。 さらに,原子力発電所による放射線被ばくは,低線量のために,その被害,影響が不可視的であり,因果関係の証明はほとんど不可能であって,個体レベルでは晩発性障害として永い年月を経て発症し,ま- 163 -た多くは遺伝的影響障害にとどまるのである。しかも,被ばくを受けたすべてに障害が顕在化するわけでなく,その被害は確率的発生であって,発病はごく少数者にとどまる。したがって,被害が出ても立証は困難であり,これを法的社会的に問題とすることはほとんどできず,その被害を回復する方途がないので,本件原子炉施設の周辺の控訴人らは,被害が出てから争うことは不可能であり,まさにその設置,運転において被害発生の危険性において問題にするしかない。 ②原子炉施設の危険性は,いったん事故が発生した場合,その周辺住民のみならず国民的,場合によっては地球的規模で甚大な被害を及ぼし,数世代に及ぶ回復し難い被害を引き起こすものであって,他の各種の機械,装置等とはその規模において比較にならない。 また,平常運転時における放射線被ばくについても,放射線の危険性については,いまだ十分解明されておらず,低線量放射線被ばくの影響についての人類の知見は,短い間に何度も見直しを迫られており,更に核種毎の挙動,濃縮なども確定した知見はなく,その全容は解明されていない。 すなわち,放射線が発見されたのは1885年であり,その後1902年に初めて制限値(1日換算で10レム)が出されたが,これが1956年には職業人で1日換算で0.01レム(年間5レム)と600分の1に下げられている。さらに,T65D(Tentative 1965Doses・196 1日換算で10レム)が出されたが,これが1956年には職業人で1日換算で0.01レム(年間5レム)と600分の1に下げられている。さらに,T65D(Tentative 1965Doses・1965年暫定線量推定方式)もその後の新たな研究であるDS86(DosimetrySystem 1986・線量体系1986)により制限値が従前の3ないし10倍以上の厳格な数値に改訂されたのである。これは,放射線被ばくの知見がいまだ発展途上にあること,そして放射線被ばくのリスク評価に関する定見はいまだ確立していないことを示している。したがって,低線量被ばくの人体への影響は今日- 164 -なお不明な点があり,ICRPにおいてもこれ以下の線量では障害がないというしきい値はないとしている。 後記の被控訴人の主張においては,自然的放射線被ばくの地域差や変動差に言及するが,現在でも低線量の自然放射線被ばくによる影響を把握することは著しく困難である。低線量放射線被ばくの影響は,晩発的・遺伝的・確率的である上,個体毎に食物,飲料水,更には職業や移動,傷病歴及び医療機会など社会的個体的要因が全く異なっていることに加え,集団的にも前史ないしは歴史的な年月の間に同地での自然放射線の影響を受けにくい,ないしは放射線核種を取り込みにくい体質を獲得した可能性も否定することができない。今日では低線量放射線被ばくの影響について「しきい値」がないことは定説であって,低線量放射線被ばくの影響の把握も極めて困難であるから,九州において関東に比較して多くの人が晩発性障害や遺伝的障害を受けていることを裏付ける証拠や,自然放射線被ばくにおける地域差よりも小さい低線量放射線被ばくによる影響に関して有意な差を証明する証拠がないとしても,その証拠がないことがまさに影響のないことと同視さ ていることを裏付ける証拠や,自然放射線被ばくにおける地域差よりも小さい低線量放射線被ばくによる影響に関して有意な差を証明する証拠がないとしても,その証拠がないことがまさに影響のないことと同視されるならば「しきい値」がないとされた意義を没却することに,なる。 ③そこで,原子炉施設の危険性の程度と得られる利益の大きさを比較衡量してその存在が許容されるとしても,原子炉施設の危険性が他の機械,装置等とはその規模において比較にならない程甚大であるから,「危険の程度と利益の大きさの比較衡量」は厳格かつ具体的になされるべきである。 そして,原子炉施設の危険性が社会通念上容認される水準以下である場合にはその存在が許容されるとしても,社会通念上容認できる水準以下の危険性とは,原子力発電所の特質に対応しほぼ絶対的な安全- 165 -性に相当するものをいうと解すべきである。 しかし,平常運転時における放射線被ばくを日々直接受ける本件原子炉の周辺住民である控訴人らにとって,上記のように原子炉施設から得られる利益はなく,また,控訴人らが自らないし子孫の生命,健康を売り渡した事実はなく,これらの危険性をもって贖った利益もないから,上記比較衡量はそもそも成り立たない。本件原子炉による発電が東京方面における経済的その他の諸活動に有用でありさえすれば,その「利益」と「比較衡量」してその程度の本件原子炉の周辺住民の放射線被ばくによるリスク負担は「無視できる」あるいは「社会的に容認できる」ということはあり得ない。 このような観点からすれば「災害の防止上支障がない(規制法,」24条1項4号)とは,平常運転時における被ばく低減対策として「遺伝的,晩発性障害の発生確率がおよそ科学的にないと断定できる程度に低い線量限度」を採用すべきであるから,本件原子炉施設は, ,」24条1項4号)とは,平常運転時における被ばく低減対策として「遺伝的,晩発性障害の発生確率がおよそ科学的にないと断定できる程度に低い線量限度」を採用すべきであるから,本件原子炉施設は,その周辺住民である控訴人らにとって,絶対的な安全性を保障し得るものでなければならない。 (被控訴人の主張)①現代社会において現に存在が認容されている各種の機械,装置等は,その危険性が社会通念上容認できる水準以下である場合,その危険性の程度と得られる利益の大きさを比較衡量してその存在が許容されており,この点では原子炉施設も例外ではなく,他方,控訴人らの主張する絶対的な安全性の定義自体,具体性がなく不明確なものであり,基準となり得ない。 ②放射線被ばくによる人体への影響については,控訴人らの主張に係る調査,研究に限らず多数の調査,研究がされいる。 そして,しきい値に関しては,高線量放射線による急性障害のしき- 166 -い値が確認されている一方,低線量放射線による晩発性障害と遺伝的障害については,たとえ障害が起こり得るとしても,その頻度が極めて小さく,放射線を被ばくした場合としない場合を比較してみても,障害の発生率に意味のある差は認められず,被ばく線量とそれによって生ずる障害の関係を明確にする知見はいまだになく,現在においてもなおしきい値があるか否かについては,いずれとも断定することはできない。 このため,現在,放射線防護においては,いかに低い線量でも障害が生ずるかもしれないという仮定,いわゆる「しきい値がない」という仮定のもとに,遺伝的障害と晩発性障害の発生確率が無視できる程低い線量を社会的に容認できる線量限度としているものであるが,これは安全を重視する立場から,あえてしきい値が存在しないとしたにすぎず,現実にしきい値がないことが確認 発性障害の発生確率が無視できる程低い線量を社会的に容認できる線量限度としているものであるが,これは安全を重視する立場から,あえてしきい値が存在しないとしたにすぎず,現実にしきい値がないことが確認されたことによるのではない。 ③ICRPは,ALAPを放射線防護の基本原則としている(乙21の193ないし196頁,乙22の3,12頁。そして,現状にお)いて低線量放射線被ばくの人体に対する影響とその許容限度を理解するに際し参考になるのが,自然放射線被ばくにおける地域差である。 すなわち,宇宙,大地及び食物からの自然放射線による1人当たりの被ばく線量については,我が国では国内で最も大きい岐阜県では年間1.19ミリシーベルト(0.119レム,最も小さい神奈川県)では年間0.81ミリシーベルト(0.081レム)と年間約0.38ミリシーベルト(0.038レム)の差があり,海外ではブラジルのガラパリ地方では年間約10ミリシーベルト(1レム)もの自然放射線を受けている(乙118の26頁。また,自然放射線の地域差)による影響については,我が国の場合,例えば,九州と関東との間に- 167 -は年間0.2ミリシーベルト(0.02レム)程度の差異が認められるにもかかわらず,九州において関東に比較してより多くの人が晩発性障害や遺伝的障害を受けていることを裏付ける証拠は全く得られていない(乙18の95頁,乙63の①ないし④)。また,諸外国における自然放射線による1人当たりの被ばく線量が大きく異なる地域を相互に比較してみても,晩発性障害や遺伝的障害の発生率には,意味のある差があるという結果は全く認められていない(乙26の131頁。 )このように自然放射線被ばくにおける地域差よりも小さい低線量放射線被ばくによる影響に関しては,有意な差が現れていないこと 意味のある差があるという結果は全く認められていない(乙26の131頁。 )このように自然放射線被ばくにおける地域差よりも小さい低線量放射線被ばくによる影響に関しては,有意な差が現れていないことが明らかであり,仮に,有意な差が存在するとしても,それは自然放射線等の環境によって生ずる範囲を超えるものではない。 ④したがって,控訴人らの主張する絶対的な安全性は,現に存在する自然放射線被ばくを何ら顧慮していないという意味において極めて不当であり,かつ独自の見解である。 (イ)安全審査のあり方(控訴人らの主張)①規制法24条1項4号の適合性の判断においては,少なくとも原子力発電所の必要性を所与の前提として本件安全審査が行われているから,電力の安定供給という必要性の観点から厳しい審査がなされるべきである。 しかし,東京電力は,平成14年4月15日,福島第一原発6号機を点検のため停止した後,東京電力の全原子力発電所17基(1730.8万kW)が停止し,同年5月7日に本件原子力発電所6号機が運転再開し,以降同年6月18日に同発電所7号機,同年7月11日に福島第一原発6号機,同年7月22日に本件原子力発電所4号機,- 168 -同年8月13日に福島第一原発3号機,同月27日に福島第二原発1号機,同年9月9日に福島第一原発5号機が運転再開するなどしたが,原子力発電所のピーク時電力である夏の需要期においても,最大電力量をカバーし得たのであるから,本件原子炉施設がなくとも電力の安定供給が行われている。今後は,高効率の天然ガスコンバインド発電所などの建設が進んでいることから,原子力発電所の必要性は薄らいでおり,今こそ節電や省エネルギー社会の実現こそが求められている。 したがって,現在では地球的規模の災害をもたらしかねない程のリスクを抱えて原子 建設が進んでいることから,原子力発電所の必要性は薄らいでおり,今こそ節電や省エネルギー社会の実現こそが求められている。 したがって,現在では地球的規模の災害をもたらしかねない程のリスクを抱えて原子力発電所を運転する必要性はなくなっているから,本件安全審査には瑕疵がある。 ②aまた,原子炉設置許可処分は,原子炉の設置,運転に関する許認可の中で冒頭に位置し,唯一専門家で構成される当時の原子力委員会が安全審査を行う,最も重要な手続である。この手続においては,原子炉施設が極めて大きな潜在的危険性を有する施設であることから,平常時はもちろん,事故・故障時においても大量の放射性物質を環境に放出することがないように設計されていることが審査される。各種の事故防止対策(事故拡大防止対策を含む)が十分なも。 のかどうかの評価判断は,設計・施工・運転が完全になされるという前提での設計方針そのものの総合評価のみならず,具体的設計・施工・運転の段階でミスがあった場合でも大量の放射性物質放出に至らないようにできることの確認が不可欠である。安全審査指針において異常な過渡変化・事故の解析評価に当たって事故対策の各機能毎に最も厳しい単一の故障(ないし誤動作)を想定することを要求しているのはまさしく後者の考慮のためである。 bそこで,原子炉設置許可の際の安全審査においては,原子炉施設の固有の潜在的危険性を確認し,その上で安全審査がその後の手続- 169 -との関係で極めて重要な位置付けにあること,そして冒頭の審査としてその後の手続の各段階で後日の異常な過渡変化や事故を起こす要因が入り込んだとしても「災害の防止上支障がないものである,こと(規制法24条1項4号)の確認のために安全評価が欠かせ」ないこと,さらに,そのための安全評価指針がこのような前提で策定さ こす要因が入り込んだとしても「災害の防止上支障がないものである,こと(規制法24条1項4号)の確認のために安全評価が欠かせ」ないこと,さらに,そのための安全評価指針がこのような前提で策定されており,少なくとも調査審議の過程における安全評価に誤りがあれば事故防止対策の合理性を欠き,安全審査自体の誤りとなるというべきである。 ③aさらに,後記の被控訴人の主張に従えば,原子炉設置許可の際の安全審査においては安全設計そのものの総合評価のみで足りることになるが,これでは,詳細設計以降の手続や施工,運転の過程で何も問題がなければ放射性物質が放出されないことを確認しているにすぎず,原子炉特有の潜在的危険性が万が一にも発生しないことを審査するという安全審査固有の趣旨が没却され,原子炉設置許可は,一般の工場等の建設とほぼ同列のものになってしまうのである。 しかし,規制法は,原子力施設が普通の工場とは異なる極めて大きな潜在的危険性を有しているために,特別に原子力安全委員会が安全審査をする手続を設けている。また,原子炉施設の事故が現実には建設時の不良工事や建設後の老朽化や運転上のミスに起因することが多いことからみても,原子炉施設の安全性を評価するには,詳細設計以降の手続や施工,運転上の欠陥を想定した上で異常な過渡変化や事故を評価判断するしかないのである。さらに,後記の被控訴人の主張に係る「原子炉施設の位置,構造及び設備について,放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させない対策が適切に講じられている」か否かの判断も,異常な過渡変化及び事故の解析結果によって確認されるのであるから,これを抜きに判断できない性- 170 -格のものであるし,異常な過渡変化や事故の解析に誤りがあれば,対策が適切に講じられているという判断の根拠が失われるのであるか よって確認されるのであるから,これを抜きに判断できない性- 170 -格のものであるし,異常な過渡変化や事故の解析に誤りがあれば,対策が適切に講じられているという判断の根拠が失われるのであるから,安全審査の判断も不合理なものになる。 b原子力委員会若しくは安全審査会の審査対象の範囲を伊方原発最高裁判決のいう基本設計ないし基本的設計方針に限るとしても,本件安全審査においても,東京電力の技術的能力と本件原子炉の位置,構造及び設備の安全性の両面にわたり「原子炉等による災害が万が一にも起こらないこと」が調査審議の過程において十分に確認されるべきである。 後記の被控訴人の主張は,上記基本設計の範囲を抽象化しかつ限定的にし,安全審査指針に定めのある事故対策の方針的なものを基本的設計方針と主張するものである。このような被控訴人の主張からすれば,安全審査では安全維持に関する機器についてはその機能が十分に確保される設計方針であることが根幹とならざるを得ないが,これでは安全審査で審議検討すべき根幹まで対象外としようとするものであるから不当である。また,後記の被控訴人の主張では,事故防止対策にかかわる設計それ自体を直接の審査対象とするものはないから,仮にこの安全評価に誤りがあっても,それだけで直ちに当該事故防止対策が合理性を欠くとはいえないことになるが,安全評価に誤りがあれば,当該事故防止対策の合理性は白紙であり,少なくとも審査をしたとことにはならないので,専門技術的知見による総合判断の結果なされたはずの設置許可処分は,その調査審議の過程において重大な過誤(審査・判断していないという過誤)を犯したも同然であり,この点からすればそのような安全審査は誤りであり,それによる設置許可処分は違法である。 cまた,後記の被控訴人の主張に係る「原子炉の位置, 誤(審査・判断していないという過誤)を犯したも同然であり,この点からすればそのような安全審査は誤りであり,それによる設置許可処分は違法である。 cまた,後記の被控訴人の主張に係る「原子炉の位置,構造及び設- 171 -備について,放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させない対策が適切に講じられている」か否かという判断も,これらの異常な過渡変化や事故時の解析結果を通じて,想定して確認するものであるから,これを行わないですませることはできないし,さらに,その解析に誤りがあれば,潜在的危険性を顕在化させない対策が適切に講じられているという判断の根拠が失われてしまう結果となる。 そして,安全審査において,異常な過渡変化時や事故時における周辺地域への影響評価を行わなくてもよいとするならば,各規制の冒頭に位置する安全審査の意義を半減させることになる。 ④したがって,原子炉設置許可の際の安全審査においては,原子炉施設の必要性の有無とともに「災害の防止上支障がないものであるこ,」,と(規制法24条1項4号)の確認のため,事故時の影響をはじめ将来の予測にかかわる事項を含めて「原子炉等による災害が万が一にも起こらないこと」を多角的,総合的に審査すべきであって,これらを怠っている本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)①a本件処分の違法事由として裁判所の審理・判断の対象となる事項は,内閣総理大臣が規制法所定の許可要件ついて審査した対象事項に限定されるものである。 そして,規制法24条1項4号は,原子炉施設の位置,構造及び設備がその基本設計ないし基本的設計方針において,原子炉等による災害の防止上支障がないものであることの要件を定めるものであり,同号の文言を規制法の体系の中で位置づけながら解釈すれば,同号の要件適合性 備がその基本設計ないし基本的設計方針において,原子炉等による災害の防止上支障がないものであることの要件を定めるものであり,同号の文言を規制法の体系の中で位置づけながら解釈すれば,同号の要件適合性の審査(安全審査)の対象となるのは,原子炉施設の安全性に直接かかわる事項であって,かつ,原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針の安全性にかかわる事項に限られる。 - 172 -同号所定の適合性の審査は,原子炉施設の安全性に関する審査,すなわち安全審査であるが,この審査が求められるのは,原子炉が核燃料物質を燃料として使用し,その稼働により放射性物質を発生させるものであって,原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射性物質によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ,その災害が万が一にも起こらないようにするためであり,言い換えれば,放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させないことを確保するためである。したがって,安全審査においては,原子炉設置許可申請書に記載された「原子炉及びその附属施設(以下「原子炉施設」という)の位置,構造及び設備(規制法23条2項5号)について,。 」放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させない対策が適切に講じられているかどうかが審査されるのであり,逆にいえば安全審査においては,上記の対策が適切なものかどうかが調査審議され,また,審査すべき対象は,原子炉施設の位置,構造及び設備に尽きるのである。 bこのような観点から,原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針として安全審査において確認すべき事項を平常運転時と事故時に区分して整理すると,(a)本件原子炉の平常運転によって放射性物質の有する潜在的危 な観点から,原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針として安全審査において確認すべき事項を平常運転時と事故時に区分して整理すると,(a)本件原子炉の平常運転によって放射性物質の有する潜在的危険性が顕在化しないように,平常運転時における被ばく低減対策が適切に講じられていること,(b)本件原子炉施設に事故が発生することにより放射性物質の有する潜在的危険性が顕在化しないように,自然的立地条件との関係をも含めた事故防止対策が適切に講じられること,- 173 -の2点に尽きる。 そして,本来,上記(a)及び(b)の点が確認されれば,本件原子炉施設の位置,構造及び設備が,その基本設計ないし基本的設計方針において,原子炉等による災害の防止上支障がないものであり,本件原子炉施設が原子炉等規制法24条1項4号の要件に適合することが確認されることとなる。 cしかし,安全審査においては,上記(a)及び(b)の点についての対策を確認するだけにとどめず,申請者の実施した上記(a)の平常運転時における被ばく低減対策に係る被ばく線量評価及び(b)の事故防止対策に係る安全評価の妥当性をも合わせて確認している。 この申請者の実施する安全評価は,通常運転状態を超えるような異常な事態をあえて想定した上で解析評価を行い,そのような事態においても,当該原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針において事故防止対策のために考慮された機器系統などの設計が妥当であることを念のために確認するためのものである。 そして,このような安全評価が妥当であるかどうかの審査は,「原子炉施設の位置,構造及び設備」そのものを審査するのではなく「原子炉施設の位置,構造及び設備」について,放射性物質の,有する潜在的危険性を顕在化させない対策が適切に講じられていると判断したこと,すなわち, 位置,構造及び設備」そのものを審査するのではなく「原子炉施設の位置,構造及び設備」について,放射性物質の,有する潜在的危険性を顕在化させない対策が適切に講じられていると判断したこと,すなわち,事故防止対策に係る安全設計が適切であると判断したことが妥当であったか否かを念のため確認するために行われるものである。このように,安全審査において申請者が行った安全評価の妥当性について審査するのは,原子炉施設が放射性物質を有しているという点を考慮し,念には念を入れるという考え方に基づくものである。 また,このような観点から,原子炉規則1条の2第2項10号は,- 174 -申請者が行った安全評価を示すものとして「原子炉の操作上の過,失,機械又は装置の故障,地震,火災等があった場合に発生すると想定される原子炉の事故の種類,程度,影響等に関する説明書」を申請書に添付するよう要求しているのである。 dしたがって,申請者が実施した安全評価は,当該原子炉施設の事故防止対策に係る設計の妥当性を確認する一つの手法としてされるものであるが,事故防止対策に係る設計それ自体を直接の審査対象とするものではないから,仮にこの安全評価に誤りがあっても,それだけで直ちに当該事故防止対策が合理性を欠くとはいえない。また,事故防止対策に係る「原子炉施設の位置,構造及び設備(安」全設計)が規制法24条1項4号に適合するということは,安全評価によって確認し得るが,逆に安全評価が妥当でないからといって,そのことから直ちに同項4号要件への適合性が否定され,事故防止対策に係る安全設計が同項4号に適合しなくなるわけではない。 ②発電用原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針における安全審査の内容を横断的かつ体系的に分野別に整理すると,a原子炉施設の平常運転時における被ばく低減 が同項4号に適合しなくなるわけではない。 ②発電用原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針における安全審査の内容を横断的かつ体系的に分野別に整理すると,a原子炉施設の平常運転時における被ばく低減に係る安全確保対策,b原子炉施設の事故防止に係る安全確保対策,c原子炉施設の公衆との離隔に係る安全対策の三つとなり,その安全審査において確認すべき事項は,上記①bの(a)及び(b)の点であるが,これらの審査においては,安全性の確保に関する対策の審査そのものと,その申請者が行った安全評価の妥当性に対する確認とに分けて整理することができる。 ③以上の観点から,本件安全審査においては,安全設計審査指針などの審査基準に照らし,本件原子炉施設が,その基本設計ないし基本的設計方針において,a平常運転時の被ばく低減対策が適切に講じられていること,b自然的立地条件との関係を含めた事故防止対策が適切- 175 -に講じられていることを確認し,併せて,本件申請者が行った平常運転時の被ばく低減化対策に係る被ばく評価,事故防止対策に係る安全評価及び公衆との離隔が妥当であることを確認し,その結果,本件補正に係る本件申請が規制法24条1項4号所定の要件に適合すると判断されたもので,不合理な点はない。 イ本件原子炉の平常運転時における被ばく低減対策に関する本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。 また,本件原子炉が上記具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①本件安全審査が基準とした公衆の線 放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①本件安全審査が基準とした公衆の線量当量限度は不当に高いものであるか否か。 (控訴人らの主張)aICRPの被ばく線量限度に関する1958年(昭和33年)採択の勧告は,最大許容被ばく線量を職業人に対し年間5レム,公衆に対し年間0.5レムとしている。我が国の平常運転時の公衆の許容被ばく線量は,上記ICRPの勧告を基に許容線量等を定める件2条により年間0.5レムとされている。 b上記ICRPの勧告が職業人に対する許容被ばく線量を年間5レムとした経緯は,人間が子供を持つ平均年齢を30歳と想定し,集団にとって許容できる線量は30年間で6ないし10レムが上限であると考え,既に医療行為に伴って照射されている線量を4.5レム程度と推定し,もし,すべての人工放射線による線量の限度を6レムと定めるとすれば,既に医療行為によって照射された4.5レ- 176 -ムを差し引くと残りは1.5レムとなってしまい,これでは原子力開発などで使うことのできる線量がはなはだしく狭苦しくなってしまい,受け入れ困難な国があるので,医療上の被ばくは別に考えるとしている。このことは照射線防護を使命とするICRPの立場からすれば本末転倒なことである。そして,職業人に対する許容被ばく線量を年間5レム,公衆に対するそれを年0.5レムとした生物学的な根拠はなく,ICRPは上記勧告において「勧告されている最大許容被ばく線量は,最大の値であることが強調される」と申し訳している。ICRPは,上記勧告を契機に,以後興隆してきた原子力産業推進のための露払的立場を一層鮮明にしている。 cICRPは,被ばく線量限度に関する197 最大の値であることが強調される」と申し訳している。ICRPは,上記勧告を契機に,以後興隆してきた原子力産業推進のための露払的立場を一層鮮明にしている。 cICRPは,被ばく線量限度に関する1977年(昭和52年)採択の勧告において,死亡率が1万人に1人を超えない職業を高い安全水準の職業と位置付け,職業人に対する許容被ばく線量年間5レムの危険度を検討し,年間5レムであれば1万人に5人が死亡することとなり,他の安全な職業より危険になるおそれがあるが,年間5レムと定めてもその10分の1位の平均値に収まるものとの実際論を持ち出して安全性は保たれたとしている。仮に,年間0.5レム程度の被ばくで収まるのであれば,勧告は年間5レムの10分の1である0.5レムと勧告すべきであったはずである。にもかかわらず,1958年(昭和33年)採択の勧告の年間5レムにとどめ置いたのは不当である。 また,ICRPは,上記1977年採択の勧告では,公衆に対する線量当量限度について,一般公衆に対する死のリスクの容認できるレベルは,職業上のリスクより一桁低いと結論付けることができるとし,年間10のマイナス6乗ないし5乗の範囲のリスクは,公衆の構成員にとっても容認できるであろうとし,これに相当する生- 177 -涯線量当量は年10ミリレムないし100ミリレムとなるけれども,従来の勧告値である年間500ミリレムを引き続き用いても,ある条件の下では安全性は保たれるとして,公衆に対する線量当量限度の勧告を見送っている。 その後,ICRPは,1985年(昭和60年)のパリ会議声明において,公衆の個々の構成員に対する線量当量限度を従来の年間0.5レム(500ミリレム)を改め,年間0.1レム(100ミリレム)と勧告した。これは,1977年(昭和52年)採択の勧告において,一 において,公衆の個々の構成員に対する線量当量限度を従来の年間0.5レム(500ミリレム)を改め,年間0.1レム(100ミリレム)と勧告した。これは,1977年(昭和52年)採択の勧告において,一般公衆は年間10万人に1人ないし100万人に1人の死のリスクは容認されているとしていたので,少なくとも10万人に1人という上限値,すなわち,年間100ミリレムを基本に据えざるを得なくなっためである。 ICRPは,職業人に対する線量当量限度を年間5レムとすることは変更せず,他方,ようやく公衆の個々の構成員に対する線量当量限度を年間0.5レムからその5分の1の年間0.1レムに切り下げたもので,この間原子力産業の成育を待っていたことがうかがわれる。 dICRPは,1990年(平成2年)採択の勧告において,職業人に対する実効線量当量限度を年間50ミリシーベルト(5レム)を超えないとの条件付で,年間の平均値が年間20ミリシーベルト(2レム)とし,公衆の個々の構成員に対する実効線量限度を年間1ミリシーベルト(0.1レム。特殊の状況の下では5年間にわたる平均が年間1ミリシーベルトを超えなければ,単に1年ではもっと高い実効線量があり得る)とした。 。 これは,従来のT65Dを見直したDS86の新しい被ばく線量評価により決められたものであるが,P12は,T65DとDS8- 178 -6よれば,ICRPの上記職業人に対する線量当量限度年間5レム及び公衆に対する線量当量限度年間0.1レムの勧告値と比べ,白血病で2ないし4倍,それ以外の癌で5ないし10倍程度死亡のリスクが増加すると報告し,また,P13の研究によれば,ICRPのリスク評価より10ないし50倍の危険性があるとされ,P14の研究においても広島・長崎の被ばく集団よりも他の被ばく集団の方が,同じ被ば スクが増加すると報告し,また,P13の研究によれば,ICRPのリスク評価より10ないし50倍の危険性があるとされ,P14の研究においても広島・長崎の被ばく集団よりも他の被ばく集団の方が,同じ被ばく線量でも5ないし6倍高い癌死のリスクを負っているとの報告がなされていた。このような知見を考慮すると,ICRPの1990年(平成2年)採択の勧告による上記勧告値は,不必要に高すぎて危険であって,ICRPが安全性の側に立って放射線防護のための勧告をしたとはいい難い。 低・微量線量の人類に対する危険性は分からないのが実情であるところ,被控訴人は分からないことを奇貨として,不明を安全と言い替えているにすぎない。 eICRPは,1954年(昭和29年)採択の勧告では,勧告値が最大限であって「可能な最低のレベルに」被ばくを抑えるべきとしていたものを,1958年(昭和33年)採択の勧告では「実行可能な限り低く」とし,1965年(昭和40年)採択の勧告では「容易に達成できる限り低く」とし,更に1977年(昭和52年)採択の勧告では「合理的に達成し得る限り低く」としたが,これは放射線防護の基本精神を押しのけ,経済的理由を全面に出して勧告値の切下げを引き伸ばしてきたものであって,これまでのICRPの勧告の変遷が単に分かりやすくするために表現を改めただけであるということはできない。そして,放射線防護を使命とするICRPは,勧告の基本精神というべき立場を著しく後退させ,原子力産業推進のための露払的立場となっているから,ICRPの勧告- 179 -を守っていれば安全性は保たれるとの論理はもはや空論にすぎず,その生物学的根拠はないから,ICRPの勧告は今や完全に破綻している。 fしたがって,安全審査会が平常運転時の公衆の許容被ばく線量値として採用した許容線 性は保たれるとの論理はもはや空論にすぎず,その生物学的根拠はないから,ICRPの勧告は今や完全に破綻している。 fしたがって,安全審査会が平常運転時の公衆の許容被ばく線量値として採用した許容線量等を定める件2条所定の線量値である年間0.5レムという数値は不当に高く,極めて危険であるから,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)aICRPは,世界各国の放射線防護関連の専門家で構成され(乙119の78ないし81頁,政府や特定の企業の意向に左右され)ることなく,あくまでも客観的・中立的立場から放射線防護に関する勧告を行っている機関である。 bICRPは,1977年(昭和52年)採択の勧告において,公衆に対する許容被ばく線量を年間5ミリシーベルト(0.5レム),生涯を通して年平均1ミリシーベルト(0.1レム)とし,1985年(昭和60年)のパリ会議において,上記勧告で定められた生涯を通して受ける放射線の年平均線量当量が1ミリシーベルト(0. 1レム)であることをより確実に実行するためであるとして,公衆に対する許容被ばく線量を年間1ミリシーベルト(0.1レム)とし,生涯にわたる平均の年間線量が,これを超えない限り,実際の被ばく線量については,数年間は年間5ミリシーベルト(0.5レム)が許容されるとする声明を出した。これは,従来からの基本的考え方(公衆に対する許容被ばく線量年間5ミリシーベルト(0.5レム)の妥当性)を変更するものではなく,大きな混乱や不当な負担を伴うことなく実行できるのであれば一層の安全が指向されるべきであるという放射線防護の基本姿勢に基づくものである(乙64の- 180 -①ないし③,65の①②。 )我が国においても上記パリ会議の声明を取り入れた法令改正(平成元年3月27日通商産業省告示第131号)に 放射線防護の基本姿勢に基づくものである(乙64の- 180 -①ないし③,65の①②。 )我が国においても上記パリ会議の声明を取り入れた法令改正(平成元年3月27日通商産業省告示第131号)により,公衆の線量当量限度を実効線量当量として,1年間につき5ミリシーベルト(0.5レム)を1ミリシーベルト(0.1レム)に変更し,また,公衆に対する許容被ばく線量は,米国の基準である年間5ミリシーベルト(0.5レム)と同等以下で自然放射線の変動値以下であることからも,これらは合理的な値であると考えられる。 cICRPは,1958年(昭和33年,公衆に対する被ばく線)量の限度を勧告するに当たり,放射線被ばくについてこの線量を超えさえしなければよいというのではなく,被ばく線量をできるだけ少なくするという,いわゆるALAPの考え方をも併せて勧告している(乙21の219ないし226頁)。 我が国においても,このALAPの考え方を踏まえ,平常運転に伴う公衆の被ばく線量を,上記の許容被ばく線量よりも更に一層低く抑えるための努力が払われてきたが,その努力目標値を明らかにすることが望ましいとの観点から,昭和50年5月13日,線量目標値指針(乙12)が定められ,放射性希ガスからのガンマ線による全身被ばく線量及び液体廃棄物中の放射性物質に起因する全身被ばく線量の評価値の合計値については年間0.05ミリシーベルト(0.005レム,放射性ヨウ素に起因する甲状腺被ばく線量の)評価値については年間0.15ミリシーベルト(0.015レム)との努力目標値が明示され(乙12)ており,本件原子炉施設の安全審査においては上記数値が使用されているものである。 本件安全審査においては,本件原子炉施設による公衆に対する被ばく線量は,線量目標値指針の目標値を下回り,全身被ばく線 )ており,本件原子炉施設の安全審査においては上記数値が使用されているものである。 本件安全審査においては,本件原子炉施設による公衆に対する被ばく線量は,線量目標値指針の目標値を下回り,全身被ばく線量の- 181 -合計値については年間0.005ミリシーベルト(0.0005レム)で,甲状腺被ばく線量については年間0.014ミリシーベルト(0.0014レム)であり,法令等に定められた許容被ばく線量等をはるかに下回るものであることが確認されている(乙4の39頁。 )なお,控訴人らの主張する新しい線量評価DS86については,被ばく線量による人体の組織への影響を最新の知見に基づきT65Dから見直したものであり,ICRPは,この結果を考慮し,1990年勧告を発表したが,自然放射線の地域による違い等を含め,最終的に人体全体への影響を考慮した結果としての実効線量限度については従来の数値と同一となったものであり(乙120の54,55頁,控訴人らの主張は,人体組織への影響評価の一部を恣意)的に抽出したものに基づくもので,主張の前提を欠いている。 dさらに,本件訴訟においては,行訴法10条1項に基づき,職業人の被ばくに関する違法事由は審理の対象とはならず,公衆被ばくについてのみがその対象となる。 また,ICRPの勧告する線量限度は,行為による便益とそれによる被ばくの影響とを比較して数値を定めるものであり,人体が許容し得る限界値を示したものではない。このような考え方に基づき,ICRPの勧告は,自然放射線をその考慮の外とするとともに,行為で生ずる被ばくにより,何の便益も得られない公衆に対する被ばくと,便益が得られる職業被ばく又は医療被ばくとは,異なる扱いとしている(乙121の86ないし90頁)のであり,診断や治療などによる医療被ばくについては,通 り,何の便益も得られない公衆に対する被ばくと,便益が得られる職業被ばく又は医療被ばくとは,異なる扱いとしている(乙121の86ないし90頁)のであり,診断や治療などによる医療被ばくについては,通常個人に直接の便益をもたらすことを目的としたものであるから(言い換えれば,医療上の被ばくをする個人はその医療行為の直接の利益を受ける者であることか- 182 -ら,職業被ばく及び公衆被ばくによる線量限度とは自ずと扱いが)異なるものであるとして,医療被ばくには線量限度を適用すべきではないと勧告しているので,控訴人らの主張はICRPの勧告の内容を正解しないものである。 eしたがって,許容線量等を定める件2条所定の線量値である年間0.5レムという数値は不当に高いものではない。 ②「線量目標値指針」の線量目標値に合理性があるか否か。 (控訴人らの主張)a「線量目標値指針(乙12)では,原子力発電所周辺の公衆の」被ばく線量は,全身につき年間5ミリレム,甲状腺に対する放射性ヨウ素に起因する被ばくが年間15ミリレムと定められているが,この目標値が仮に達成されたとしても,原子力発電所周辺の公衆が30年間全身に被ばくする線量は,0.15レムとなり,これは1962年(昭和37年)に国際連合放射線影響科学委員会が報告した人類の突然変異の倍加線量である年間15レムの1%に相当するので,周辺住民が遺伝的に障害を被る危険性が極めて高くなり,原子力発電所周辺の集団に遺伝質の劣化をもたらすものである。 また,白血病その他の癌についても,癌の倍加線量は約10レム相当であるから,年間5ミリレムの被ばくは倍加線量の0.05%に相当し,癌に罹患する確率が1年間に0.05%ずつ,20年間で1%,50年間で2.5%増加する結果となる。また,甲状腺癌の倍加線量は,20ラド るから,年間5ミリレムの被ばくは倍加線量の0.05%に相当し,癌に罹患する確率が1年間に0.05%ずつ,20年間で1%,50年間で2.5%増加する結果となる。また,甲状腺癌の倍加線量は,20ラド(ほぼ20レムに等しい)であるから,。 甲状腺への年間15ミリレムの被ばくは0.075%となり,1年ごとに甲状腺癌に罹患する確率が0.075%増加し,20年間では1.5%,50年間では実に3.75%に増大すると予測される。 なお,低線量域における被ばく線量の人体への影響は十分解明さ- 183 -れていないから,低線量域の晩発性・遺伝的障害については一応比例関係があるものとして評価すべきであり,また,被控訴人の主張する影響を受けた人体の遺伝子や細胞の修復作用も十分な根拠はないので,上記のとおり比例的なリスクを負う可能性を否定することはできない。 b原子炉施設の周辺住民の晩発性・遺伝的障害の確率的発生も規制法24条1項4号所定の「災害」であり,その防止の観点からみると「線量目標値指針」による目標値は,晩発性障害防止の観点か,らみても,危険な数値である。 cしたがって,被控訴人の低線量被ばくに関する審査姿勢にはまことに危ういものがあり「線量目標値指針」の線量目標値には合理,性がない。 (被控訴人の主張)a控訴人らの主張する倍加線量については,低線量による被ばくによって人体の一部の遺伝子や細胞に影響が起きたとしても,修復される作用があることが医学的に知られており(乙61の1ないし27頁,原爆被ばく者の疫学調査においても低線量の被ばく者に発)癌や遺伝的障害の有意な増加は認められていない。 しかし,低線量における被ばく線量の人体への影響については十分解明されていないため,安全を重視し比例関係が成り立つと仮定しているのである。このことをも 癌や遺伝的障害の有意な増加は認められていない。 しかし,低線量における被ばく線量の人体への影響については十分解明されていないため,安全を重視し比例関係が成り立つと仮定しているのである。このことをもって,控訴人らが被ばく線量と遺伝的障害の発生を比例関係であると短絡し,これを前提に更に年毎にそれが累積されるかのような主張を行うことは,具体的な根拠に欠けており,低線量の人体への影響を正解しないものである。 そして,低線量における遺伝子への影響が明らかとなっていないにもかかわらず,低線量における人体への影響が比例関係にあるこ- 184 -とを前提とした控訴人らの主張は,その前提において根拠がない。 b1962年(昭和37年)の国際連合放射線影響科学委員会が報告した人類の突然変異の倍加線量である年間15レムは,動物実験に基づくものである(乙122の44,45頁。しかし,198)8年(昭和63年)の同委員会報告書においては,原爆等の被ばくデータに基づく分析結果として人に対する遺伝的影響については,有意な差は認められないとされており(乙123の422,423頁,この点についても控訴人らの主張は根拠がない。 )c低線量においての被ばく線量と人体への影響については解明されていないため,ICRPにおいて人体への影響が無視できる程度である年間の公衆への線量限度が示され,線量目標値が定められているのであって,この審査基準に不合理な点はない。 なお,控訴人らの主張する年間の各線量値は,あくまでも上限であり,通常原子炉施設においてはこれよりはるかに小さい数値であることが確認されているから,本件原子炉施設に関して,線量の上限値を仮定する控訴人らの主張は,その前提において誤りがある。 dしたがって,線量目標値指針の線量目標値には不合理な点はない。 ③「線 ることが確認されているから,本件原子炉施設に関して,線量の上限値を仮定する控訴人らの主張は,その前提において誤りがある。 dしたがって,線量目標値指針の線量目標値には不合理な点はない。 ③「線量目標値指針」及び「線量目標値評価指針」の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書に不合理な点がないか否か。 (控訴人らの主張)a裁判所は,具体的審査基準について,単に不合理な点があるか否かだけを審査すべきものではなく,安全性を審査するに足りる十分な合理性を有するか否かを審査すべきものである。 本件安全審査に用いられた「線量目標値指針(乙12)及び」「線量目標値評価指針(乙13)の基準並びに「発電用軽水型原」- 185 -子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書(乙91)は,限られた核種についてのみ評価することとしているものであり,また,いまだ確立されていない被ばく評価の方法なのであるから,基準として甚だしく不十分なものである。 b「線量目標値評価指針」は,原子力委員会において本件申請の審査途中の昭和51年9月28日に定められ,これに合わせて東京電力の本件補正がなされた。東京電力の本件申請は,廃棄物の推定発生量等はすべて先行炉の実績に基づき,過去の確立した方法による被ばく評価であるとされていたが,上記線量目標値評価指針もまた,先行炉の実績に基づき,確立した方法による合理的な被ばく評価であるとされている。 しかし,本件補正による本件申請書の本文及び添付資料の放射性廃棄物に関する推定発生量及び被ばく線量評価の一部の大幅な変更についての合理的な説明はない。これは,データの出所,正確性などに疑問があるのみならず,被ばく評価の方法もいまだ確立していないことを示唆 廃棄物に関する推定発生量及び被ばく線量評価の一部の大幅な変更についての合理的な説明はない。これは,データの出所,正確性などに疑問があるのみならず,被ばく評価の方法もいまだ確立していないことを示唆するものであって,上記「線量目標値指針」及び「線量目標値評価指針」の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書は,いずれも原子炉施設の安全性を審査する基準たり得ない。 (被控訴人の主張)a規制法24条2項は,内閣総理大臣が原子炉設置の許可をする場合においては,同条1項各号に定める許可の基準の適合性について,原子力委員会の専門技術的な判断に基づく意見を聴き,これを尊重してしなければならないとしている。これは,原子炉設置許可処分に係る安全審査が,原子力工学はもとより,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づく総合的判断が必要と- 186 -されることによるものであり,原子力委員会は,その調査審議において用いるべき審査基準である種々の審査指針がある。 原子炉施設の安全性に関する審査は,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づいてされるところ,科学技術は不断に進歩,発展しているのであるから,その審査基準を具体的かつ詳細に法律で定めることは困難である。そして,規制法に基づく審査基準の決定,審査基準への適合性の判断については,各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねられているから,本件安全審査の調査審議において用いられる具体的審査基準は原子力委員会及び被告行政庁の裁量にゆだねられているというべきである。 b東京電力の本件補正は「線量目標値評価指針」が定められた後,に ,本件安全審査の調査審議において用いられる具体的審査基準は原子力委員会及び被告行政庁の裁量にゆだねられているというべきである。 b東京電力の本件補正は「線量目標値評価指針」が定められた後,になされているが,被告行政庁による原子炉設置許可処分がなされるまでの間,その申請者が必要に応じて申請書記載内容の適正化又は合理化等のために補正を行うことは何ら妨げられるものではなく,新規に制定された線量目標値評価指針を踏まえ,放射性廃棄物の推定発生量及び被ばく線量評価の一部を見直すことには何ら不合理な点はない。 本件安全審査においては,審査基準に照らし,本件原子炉施設が,その基本設計ないし基本的設計方針において,①平常運転時の被ばく低減対策が適切に講じられていること,②自然的立地条件との関係を含めた事故防止対策が適切に講じられていることを確認し,併せて,本件申請者が行った平常運転時の被ばく低減化対策に係る被ばく評価,事故防止対策に係る安全評価及び公衆との離隔が妥当であることを確認し,その結果,本件申請が規制法24条1項4号の- 187 -要件に適合すると判断されたものである。 cしたがって,本件安全審査に用いられた「線量目標値指針」及び「線量目標値評価指針」の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書に不合理な点はない。 (イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①気体廃棄物の被ばく線量評価についてa間欠放出による気体廃棄物の過小評価の有無について(控訴人らの主張)(a) 件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①気体廃棄物の被ばく線量評価についてa間欠放出による気体廃棄物の過小評価の有無について(控訴人らの主張)(a)本件原子炉においては,運転起動の際短い時間に大量の排気を行うことが必要となるが,その際には希ガスホールドアップ装置を使用できないので大量の放射性物質をそのまま周辺に放出することになる。 しかし,この間欠放出の際の気体廃棄物について,本件安全審査は,先行炉実績を参考にして,間欠放出1回当たりの放射性物質の放出量を1000キュリー,年間放出回数5回(合計年間5000キュリー)としているが,その根拠はあいまいであり,先行炉の1回の放出量1000キュリーの実績自体あいまいであって,信頼することができない。 (b)本件原子炉と同型の福島第一原発3号機,中部電力浜岡原子力発電所(以下「浜岡原発」という)1号機,日本原子力発電。 敦賀発電所(以下「敦賀原発」という)の昭和51年度の間欠。 放出回数は,それぞれ9,10,7回であり,その後も異常事象- 188 -等による運転停止,再起動が相次いでいることに照らすと,年間放出回数を5回とするのは合理性を欠いている。 (被控訴人の主張)(a)被ばく線量の評価に際し,本件原子炉施設から環境に放出される気体廃棄物の量については,全体の年間の放出量に基づいて被ばく線量を評価した結果,十分低い数値となることが確認されている(乙4の37ないし39頁。 )すなわち,本件原子炉施設における気体廃棄物の放出量は,線量目標値評価指針に記載のとおり,海外等の原子力発電所の運転実績を参考にし,復水器内から連続的に抽出される空気中に含まれるものとして約2万8000キュリー,真空ポンプの運転により間欠的に放出される空気中に 評価指針に記載のとおり,海外等の原子力発電所の運転実績を参考にし,復水器内から連続的に抽出される空気中に含まれるものとして約2万8000キュリー,真空ポンプの運転により間欠的に放出される空気中に含まれるものとして5000キュリー,換気設備から連続的に放出される空気中に含まれるものとして約1万7000キュリー等(合計年間約5万キュリー)と想定されているところ,本件安全審査当時の昭和50年度における福島第一原発における気体廃棄物の放出実績は,3基の発電所(合計電気出力約203万kW)の放出実績を合計しても1万6000キュリー(乙45の7頁)であり,110万kWである本件原子炉施設の想定値よりも小さいことが確認できていることから,本件原子炉施設における実際の放出量はより小さなものである。 (b)本件原子炉も含めた最近の我が国における沸騰水型原子炉の気体廃棄物の放出実績は,ほとんど検出限界以下又は極めて低い値(乙92)にすぎないから,本件原子炉施設からの被ばく線量を評価する際に想定された放出量は,近年の原子力発電所からの気体廃棄物の放出実績に照らしても,十分に少なく被ばく線量の評価上も厳しい条件を設けているものであって,これに基づく被ば- 189 -く線量の評価は合理的なものである。 b放射性ヨウ素の被ばく線量評価の合理性の有無について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査において,平常運転時に本件原子炉施設から放出される放射性ヨウ素は,希ガスと違って人体や生物体などに付着し取り込まれ,濃縮されるから,公衆に対する被ばく線量は,付着,沈着に比して飛躍的に増大し,特に,ヨウ素131の場合,大気中の濃度に比べ,牧草では200万倍以上となるにもかかわらず,その濃縮を考慮した被ばく線量評価が欠落している。 (b)したがって,放射性ヨウ 着に比して飛躍的に増大し,特に,ヨウ素131の場合,大気中の濃度に比べ,牧草では200万倍以上となるにもかかわらず,その濃縮を考慮した被ばく線量評価が欠落している。 (b)したがって,放射性ヨウ素の濃縮された場合の被ばくは,付着,沈着に比して飛躍的に増大することとなるにもかかわらず,本件安全審査は単に放射性ヨウ素の沈着を考慮した評価を行っているにとどまり,濃縮を前提とした評価を行っていない。 (被控訴人の主張)(a)控訴人らの主張は,具体的根拠及び経路を示さず,放射性物質の濃縮をいうものであるが,これが人体や生物体の表面に付着した放射性ヨウ素が,そのままこれらの生体内に取り込まれるということをいうものであれば,これは根拠に欠け不当である。すなわち,生体の表面に付着した化学物質は,ずっと付着したままではなく,人体であれば日常活動により,生物体であれば,それが例えば付着の可能性が比較的に高いと考えられる屋外にあるものの場合には雨等により,それぞれ洗い流されることは自明であり,いったん付着した化学物質がそのまま生体内に取り込まれ濃縮されることは,生物学的常識からもあり得ない。他方,控訴人らの主張が,呼吸による吸入又は経口摂取をいうのであれば,放射性物質による内部被ばくは,呼吸による吸入と経口摂取を考慮- 190 -するものであり(乙124の40,41頁,控訴人らの主張は)根拠がない。 (b)本件安全審査においては,平常運転時に本件原子炉施設から放出される放射性ヨウ素について,一般的に気体廃棄物中の各ヨウ素が呼吸,葉菜及び牛乳を介して,成人,幼児及び乳児にそれぞれ摂取されるとした場合における甲状腺被ばく線量を評価しており,その際,空気中のヨウ素が葉菜又は牛乳に吸収される割合,呼吸等により人体に摂取されたヨウ素が甲状腺に吸収さ ,成人,幼児及び乳児にそれぞれ摂取されるとした場合における甲状腺被ばく線量を評価しており,その際,空気中のヨウ素が葉菜又は牛乳に吸収される割合,呼吸等により人体に摂取されたヨウ素が甲状腺に吸収される割合等も考慮して評価を行っている(乙3の9-78ないし88頁,乙4の39頁)。 なお,控訴人らの主張においてヨウ素131の場合には大気中の濃度と比べ牧草において200万倍以上濃縮されるとする根拠は明らかではなく,さらに,一般的にそもそも大気中の濃度は限りなく0に近いのであり,この主張の意味するところは不明確である。 (c)したがって,放射性ヨウ素の被ばく線量評価に不合理な点はない。 c粒子状放射性物質の被ばく線量評価の合理性の有無について(控訴人らの主張)本件安全審査においては,平常運転時に本件原子炉施設から放出されるコバルト60,マンガン54,ストロンチウム90,セシウム137等の半減期の長い粒子状放射性物質についての被ばく線量評価を行っておらず,安全審査における被ばく線量評価は部分的なものにすぎない。また,微粒子状放射性廃棄物がフィルタによって容易に除去されるというのは何ら根拠がない。 原子力発電所の平常運転により排出されるコバルト60,マン- 191 -ガン54,ストロンチウム90,セシウム137等の微粒子状放射性廃棄物は,半減期が長く,かつ,人体に取り込まれやすく,このため長期にわたって人体に蓄積され,そのアルファ線,ベータ線等の体内被ばくが続くことになるから,これらについても審査すべきであるにもかかわらず,これらの核種による体内被ばくについては,いまだその挙動や測定方法が確立されていないことから,本件安全審査においては,これら微粒子状放射性廃棄物についての被ばく線量評価を省略したものである。また,これら微粒子状放 体内被ばくについては,いまだその挙動や測定方法が確立されていないことから,本件安全審査においては,これら微粒子状放射性廃棄物についての被ばく線量評価を省略したものである。また,これら微粒子状放射性廃棄物がフィルタによって容易に除去されるというのは何ら根拠がないのであるから,このような放射線被ばくの評価方法は不十分である。 また,本件安全審査においては,立地評価(災害評価)において,重大事故でも仮想事故でも常にヨウ素についてはフィルタにより95%除去されるという前提で評価されている(乙2の10-4-10頁,10-4-34頁。 )しかし,旧動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃」という)。 の東海再処理工場アスファルト固化処理施設において,平成9年3月11日,火災・爆発事故が発生した(以下「動燃事故」という)が,これにより施設外にセシウム,プルトニウム,アメリ。 シウム等の放射性物質が大量に漏洩したが,火災発生後わずか7分で「高性能フィルタ」が目詰まりして機能喪失になり,最大想定事故の場合においてフィルタが健全であることを前提にするのは非現実的で不合理であり,本件安全審査は誤っている。 (被控訴人の主張)(a)本件原子炉施設から放出されるコバルト60等の粒子状放射性物質はいずれも固体状の物質であり,気体状の物質にはならな- 192 -いため気体中に混入するものはごく微量であり,更に気体中に混入したものは放射性廃棄物廃棄設備に設けられたフィルタによって容易に除去できることから,本件原子炉施設から環境に放出される気体廃棄物中に含まれるコバルト60等の粒子状放射性物質の量は極めて微量である。そして,これら気体廃棄物中の粒子状放射性物質による被ばく線量は極めて微量であることから無視できる上,厳しい条件を設定している公衆の被ばく線量の ルト60等の粒子状放射性物質の量は極めて微量である。そして,これら気体廃棄物中の粒子状放射性物質による被ばく線量は極めて微量であることから無視できる上,厳しい条件を設定している公衆の被ばく線量の評価上は,仮にこれらの粒子状放射性物質の半減期が長くとも,その影響が他の放射性物質に比べて無視できる程に小さいことから,特にこれを取り上げて具体的に計算,評価するまでもないと判断されたためであり,本件安全審査は合理的である。 (b)粒子状放射性物質の除去性能については,JISにおいても放射性エーロゾル用高性能エアフィルタの性能は99.97%以上と規定されていることからも(乙125の2頁,十分根拠が)ある。 (c)したがって,粒子状放射性物質の被ばく線量評価に不合理な点はない。 ②液体廃棄物の被ばく評価についてa液体廃棄物に関する被ばく評価と原子力発電所による環境汚染の有無について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査は,トリチウムの年間放出量を100キュリー,それ以外を1キュリーとし,放水口における濃度を用いて被ばく評価をし,その放射性物質に起因する全身被ばく線量が年間0. 3ミリレムとなるとしている。しかし,全希ガス漏洩率,すなわち炉心燃料被覆管の欠陥率については,破損事故が多発しており,- 193 -本件安全審査における推定値が原子力発電所稼働期間中維持されるとは到底考えられない。そして,破損率の増加は直ちに冷却材中の放射性物質濃度の増加につながるものである。 また,原子炉施設の汚染は進行しており,処理を要する液体状廃棄物は増加の一途をたどっており,環境汚染の大きな要因になっている。 しかも,除染係数についても,本件安全審査では設計上の数値をそのまま用いているが,機器設備に発生している故障例,事故からすると,その信頼性 の一途をたどっており,環境汚染の大きな要因になっている。 しかも,除染係数についても,本件安全審査では設計上の数値をそのまま用いているが,機器設備に発生している故障例,事故からすると,その信頼性は極めて低い。 さらに,本件安全審査に当たり,東京電力の本件申請を本件補正により核種組成を変更したが,この変更に当たって,魚介類,海藻類の生体濃縮係数については,格段の根拠もなく10分の1低い値を採用するなど,その評価の手法は極めて恣意的である。 このように,本件安全審査においては,要求される結論の公衆被ばく線量がまず措定され,この線量にとどめるべく,放射線量が導かれている疑いがある。 (b)本件安全審査の被ばく評価は,既存の原子力発電所周辺の汚染の実態と大きく齟齬し,明らかに過小である。 既存原子力発電所周辺の魚介類や海藻類などの汚染状況調査の結果は,液体状放射性物質の放出については過小な数値にとどまらない。 例えば,敦賀原発(BWR,出力35.7万kW,1970年(昭和45年)稼働)周辺で,1974(昭和49年)年9月及び11月,京都大学漁業災害研究グループが行った浦底湾のコバルト60汚染実態調査では,海草ホンダワラ科ヤツマタモクの放水口付近における生重量1㎏当たりのコバルトのガンマ線7.7- 194 -×10ピコキュリー,イシダイの内臓重量1㎏当たりは1.2-2×10ピコキュリーのコバルトが検出され,この汚染は湾全体-2に広がっていることが確認されている。 しかし,被控訴人は,原発から海に放出される放射性物質から11種の核種を選び,その量を推定し,これが海水の1年間の使用量に平均的に希釈されるものと評価し,その結果,人間の各器官に及ぼす全身被ばく線量は年間合計0.2ミリレムにすぎないとしている。そして,被控訴人の主張によれ その量を推定し,これが海水の1年間の使用量に平均的に希釈されるものと評価し,その結果,人間の各器官に及ぼす全身被ばく線量は年間合計0.2ミリレムにすぎないとしている。そして,被控訴人の主張によれば,放水口での濃度は1.6×10ピコキュリーで,海草の放射能は1.6×1-10 ピコキュリー以上にはならない計算である。ところが,敦賀-4原発における現実の例では,7×7×10ピコキュリーで,国-1の計算の4800倍となっている。これからすると,これを摂取する人間は年間1600ミリレム(1.6レム)以上の全身被ばく(内部被ばく)を受ける危険性がある。 この値は,線量目標値に関する指針の敷地周辺の一般公衆に及ぼす被ばく線量合計値年間5ミリレムを液体廃棄物だけで大幅に上回るだけでなく,ICRPの各勧告及び許容被曝線量を定める件2条所定の年間0.5レムの基準にも反する。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 b洗濯廃液の評価の不合理性の存否について(控訴人らの主張)(a)110万kW級の原子力発電所である本件原子炉施設の洗濯廃液の発生量が1日当たり10ないし15mというのは過小値 であり,特に停止時や定期点検時に多くの排出があるので信用できないのみならず,それに含まれる放射性物質の量(0.55キ- 195 -ュリー毎年)には根拠がない。 (b)また,廃水に含まれる主な放射性物質は11種あるが,ストロンチウムなどについては計測分析されていない。そして,これらを核種毎に測定すること自体,多くの時間と労力を要する(特に,ストロンチウムのガンマ線の分析は不可能である。この。)ため,日々の放出量と核種毎の実績を記録した具体的なデータは存在していない。 (c)したがって,本件安全審査は,具体的に上記評価をした形跡はなく チウムのガンマ線の分析は不可能である。この。)ため,日々の放出量と核種毎の実績を記録した具体的なデータは存在していない。 (c)したがって,本件安全審査は,具体的に上記評価をした形跡はなく,また,線量目標値評価指針自体洗濯液量も定式的な基準ないし計算モデルがあるものではないとされているので,具体的な根拠を欠く不合理なものである。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査においては,洗濯廃液の発生量を,先行炉である東京電力福島第一原発1号機の実績に基づき,1日当たり15mと想定し,本件申請書に基づく洗濯廃液の発生量は1日当た り15m(乙3の9-50頁)として審査されている。そして, 福島第一原発1号機の昭和47年度から昭和49年度までの実績では,1日当たり10m以下にすぎないのであるから(乙3の 9-98頁),この想定は十分安全側に立つものである。 (b)さらに,液体廃棄物は連続放出ではないため,実際には,被ばく線量評価上の主要核種であるコバルト60,マンガン54等の放射性物質の濃度を放出毎に測定することとしており,廃液中の放射性物質の放射能量を的確に把握して,液体廃棄物中の放射性物質の放出量を年間1キュリー以下(トリチウムは100キュリー以下)の精度で管理している(乙3の9-49頁。 )(c)したがって,控訴人らの主張はその前提において理由がない。 - 196 -c機器ドレン廃液の環境流失に関する被ばく評価の不合理性の存否について(控訴人らの主張)本件安全審査においては,機器ドレンが環境に放出されないという前提に立って評価されているが,機器ドレン廃液の流出は,今日の機械工学の技術からも防止できないものであり,流出経路は,原子炉建家・タービン室のみでなく,液体廃棄物貯蔵施設その他あらゆる配管・タンクが 提に立って評価されているが,機器ドレン廃液の流出は,今日の機械工学の技術からも防止できないものであり,流出経路は,原子炉建家・タービン室のみでなく,液体廃棄物貯蔵施設その他あらゆる配管・タンクが予想され,洗濯水のように冷却海水放出路には限らない。機器ドレンを1滴も漏らさないという前提は,今日の工業技術・管理を無視した机上の空論であり,著しく不合理である。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 d濃縮係数の不合理性の存否について(控訴人らの主張)(a)液体廃棄物の被ばく線量評価は,汚染水が復水器冷却水に年間を通じて平均的に希釈されるという前提に立っているが,液体廃棄物の放出は間欠的であり,特に定期検査時に放出される液体廃棄物における放射性物質の濃度(汚染度)は通常よりも高く,その放出時期によっては生体への影響に差が生ずるにもかかわらず,年間を通して復水器冷却水に平均的に希釈されるとして被ばく線量評価を行っているのは不当である。 (b)また,放出される核種の挙動については今日もほとんど知られておらず,具体的データにも乏しい。そして,我が国の食生活上,海産物が大きなウエイトを占め,魚種も多数で,食法も外国とは大きく異なることから,食生活の実態に即した調査,研究が不可欠であるのに,それが行われていない。 - 197 -濃縮は,核種によりまた海産物の種類により大きく異なる。さらに,放出核種は海水に平均して拡散されるものではなく,水あかに付着し比較的浅瀬の海底上に沈着する。したがって,海底地形や海流,植生などの要素によってもその実態は大きく異なるのであって,短期間の実験や調査で実態を把握するのは不可能である。 (c)全身内部被ばく線量評価(人体に摂取された核種の各器官への移行による被ばく評価)は,1959年(昭和34年)のI きく異なるのであって,短期間の実験や調査で実態を把握するのは不可能である。 (c)全身内部被ばく線量評価(人体に摂取された核種の各器官への移行による被ばく評価)は,1959年(昭和34年)のICRPの推測値によっているが,この推測値自体極めて古く,かつ原爆データの不完全な分析しかなく,また原子力発電所も存在しない時代のものであって信頼することができない。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査で使用した濃縮係数は,原子力安全委員会の定めた線量目標値評価指針(乙13)に従いP15らの濃縮係数総合報告書から引用した値を用いているところ(乙13の976,982頁),当該報告書は,過去の広い範囲から得られた多数の元素の想定値を総合してまとめあげられたもので,我が国のものを含む多数の研究成果が取り入れられており,上記報告書の濃縮係数は米国の規制においても採用されている(乙49の③)。 そして,本件安全審査で使用した濃縮係数は,上記報告書のうち,放射性核種の濃縮係数をとらずに,安定元素の濃縮係数を採用している(前者よりも後者の値が概して高めに出ていることから,より厳しい条件を用いていることになる。乙49の③)ことからみても,その値は十分合理的である。 (b)さらに,海産物の摂取量については,日本人は欧米人に比べ海草類の摂取量が多いことを考慮した評価を行っている。 - 198 -本件安全審査においては,公衆の被ばく線量が十分低く抑えられるようになっているかどうかを判断するにつき,公衆の年間の累積被ばく線量を評価するために,一様の連続放出を仮定することは,専門技術的観点からも十分合理的であるとされている(乙13の974頁)。 e放出放射性物質の濃度の不合理性の存否について(控訴人らの主張)本件安全審査は,液体廃棄物が一様に連続放出され ことは,専門技術的観点からも十分合理的であるとされている(乙13の974頁)。 e放出放射性物質の濃度の不合理性の存否について(控訴人らの主張)本件安全審査は,液体廃棄物が一様に連続放出されると仮定して評価しているが,汚染水の放出は間欠的に行われ,放出時期によって濃縮に大きな差が出ることになり,また季節により海水浴などによる被ばくも多くなるから,上記平均化した評価は,本件原子炉施設の周辺住民の安全側に配慮してなされた評価ではない。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 f核種組成の不合理性の存否について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査においては,バリウム140,ラタン140,ジルコニウム51,ニオブ95,セリウム141などの核種の被ばく線量評価を行っていないが,これらの核種の排出とこれによる敷地周辺の公衆の被ばくも無視することはできない上,これら核種の濃縮や挙動なども十分解明されていないので,これら核種の被ばく評価をしていないのは不当である。 (b)敦賀原発の液体廃棄物核種別実績(1975年(昭和50年)4月から1977年(昭和52年)3月)では,半減期が長く濃縮係数も高いコバルト60,マンガン54の各構成比がそれぞれ平均47,50%のところ,本件安全審査ではそれぞれ30,- 199 -40%として評価されているが,これは被ばく線量の評価結果が小さくなるように意図的に計算したもので,本件安全審査には合理性がない。 (被控訴人の主張)(a)被ばく線量評価は,各核種の量と濃縮係数に基づき行われるが,安全審査においては,主要核種の被ばく線量評価の際に,主要核種以外の核種の被ばく線量評価を包含するような条件を設定して計算される。具体的には,本件安全審査における液体廃棄物中の放射性物質の主要な核種組成は,先行炉 は,主要核種の被ばく線量評価の際に,主要核種以外の核種の被ばく線量評価を包含するような条件を設定して計算される。具体的には,本件安全審査における液体廃棄物中の放射性物質の主要な核種組成は,先行炉の運転実績に基づき,主要な各核種の濃縮係数と被ばく線量への換算とを考慮して,全体として被ばく線量の計算結果が厳しい条件で行われるよう定められたものであり,これは運転保守の形態,処理水の運用による変動,更には想定した核種以外にも放出される核種を包含するよう考慮された評価として妥当なものである(乙13の973頁)。 (b)敦賀原発の核種組成は,本件安全審査における核種組成と比較して,コバルト60及びマンガン54の割合は大きいが,反面,被ばく線量への寄与の大きい鉄59等の他の核種の割合は小さいため,仮に,上記実績に基づいて本件原子炉施設の被ばく線量を評価した場合には,全体としては本件安全審査で確認した被ばく線量値よりも小さい数値となる。 gトリチウムの審査の有無について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査において,トリチウムはすべて液体状で海水に希釈されて海に流されるものとし,海産物による濃縮はなく(係数1,したがって人体に対する影響はないとしているが,これ)は,トリチウムの危険性を過小評価し,かつトリチウムの挙動も- 200 -複雑で,また研究途上で明確なデータもないため,十分な評価ができなかったものである。 すなわち,トリチウムはガス状で水と反応してトリチウム水に移行しその逆の相互移行も容易であり,そしてトリチウムは水蒸気・水・雪(氷)の3態をとる。ガス化又は高温化したトリチウム蒸気ないし沸騰水部分が,トリチウム水蒸気となるが,トリチウム水蒸気は必ずしも大気に希釈されることはなく,かたまりとなって偏在し,雨や雪となって地上に降 の3態をとる。ガス化又は高温化したトリチウム蒸気ないし沸騰水部分が,トリチウム水蒸気となるが,トリチウム水蒸気は必ずしも大気に希釈されることはなく,かたまりとなって偏在し,雨や雪となって地上に降る。豪雪地新潟県においては,雪として長期に滞留して公衆に被ばくを与えることとなる。 雨として地上に降ったトリチウムは地下水となって飲料水を汚染し,河川やダム,湖にたまりやがて海に放出され,再びトリチウム水蒸気となって地上に降る。この循環によって,植物,動物及び人間に取り込まれることになる。 また,1991年(平成3年)2月,カナダのトロント市郊外にあるピッカリング原子力発電所周辺の草に含まれるトリチウムの量が3年間に20倍から80倍位に濃縮されていることが報告され,乳児死亡率との相関関係が問題となった(甲213ないし215。そして,食物として経口摂取されるトリチウム化合有)機物の種類によって体内分布が異なること,家畜に有機化合物の形で与えられた場合5.5ないし15倍もの蓄積が起こり食物連鎖による人体への蓄積もあるとの指摘がある。 (b)本件安全審査では,トリチウム3Hの放出量について,先行炉の実績に基づいて年間100キュリーとしている。しかし,この先行炉は一切不明であり,当時の原子力委員会報告においては,先行炉としてサンオレノフ等の実績が報告されているものの,サンオレノフ炉は加圧水型原子炉であり,本件原子炉より一般に放- 201 -射性核種の排出の小さい原子炉である。しかも,その先行炉のトリチウム年間放出量は2400から4570キュリー(同報告書1974年(昭和49年)10月50ないし53頁)であり,本件申請に係る100キュリーの平均35倍である。 (c)したがって,極めて毒性の高い放射線物質であるトリチウムにつき挙動が複雑で濃縮 告書1974年(昭和49年)10月50ないし53頁)であり,本件申請に係る100キュリーの平均35倍である。 (c)したがって,極めて毒性の高い放射線物質であるトリチウムにつき挙動が複雑で濃縮されるという報告があり,サンオレノフ炉では年間2400から4570キュリーのトリチウム放出が報告されているにもかかわらず,本件安全審査においては,トリチウムが濃縮されることはなく,また,年間100キュリーしか放出されないことを前提にしているものであり,看過できない過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査における公衆の被ばく線量評価においては,主要な被ばく経路についての定量的な評価(乙4の39頁)による線量値が十分低ければ,その他の影響が小さく被ばく線量評価の対象とならない経路の被ばくによる寄与分を考慮してもなお,全体として十分低く抑えられるものと判断できることを踏まえ,主要な被ばく経路について,公衆の被ばく線量評価を行ったものである。したがって,トリチウムを無視できるとした本件安全審査における公衆の被ばく線量評価は妥当なものである。 また,トリチウムについては,放出される気体廃棄物の中に含まれる量と被ばく経路を考えると,気体中の被ばく線量は十分小さいことから,気体として被ばく線量評価の対象とすることは相当ではない(乙126の17頁。 )さらに,液体廃棄物の被ばく線量評価に際し,トリチウムは海生生物での濃縮は起こらないとしているところであるが,国際連- 202 -合放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が地球規模のトリチウムの評価においても海生生物でのトリチウムの濃縮はないとのデータを用いており,トリチウムは生物によって濃縮されない(乙127)ということは,国際的に広く知られている事実である。 (b)沸騰水型原子 の評価においても海生生物でのトリチウムの濃縮はないとのデータを用いており,トリチウムは生物によって濃縮されない(乙127)ということは,国際的に広く知られている事実である。 (b)沸騰水型原子炉である本件原子炉施設におけるトリチウム放出量に関しては,先行炉である米国のオイスタークリーク等の沸騰水型原子炉の実績のほとんどが,年間数十キュリーであることから,評価上トリチウムによる被ばく線量値が大きくなるよう,年間100キュリーと評価している。 なお,乙128(18,52,53頁)においては「附録2,第6表からみて,我が国でもBWR発電所で1基当たり100Ci(キュリー)/年・・・中略・・・程度と考えられる」とさ()れている。また,同報告書においては,控訴人らが指摘するトリチウムの放出量を示すデータもあるが,これは加圧水型原子炉のデータであるところ,そもそも加圧水型原子炉は沸騰水型原子炉に比べてトリチウムの放出量が多いものである。控訴人らの主張は,同報告書の一部の加圧水型原子炉のデータのみを恣意的に抽出したものであるから,その前提において誤りがある。 ③ムラサキツユクサの研究について(控訴人らの主張)a埼玉大学理学部のP3教授(以下「P3教授」という)は,ム。 ラサキツユクサを用いて昭和45年から昭和51年にかけて,ガンマー圃場におけるKU7株とKU9株について,ガンマ線を照射して突然変異数を調べ,線量と突然変異数は直線比例関係にあることを確認し,最低線量は720ミリレントゲン(レム)であったと報- 203 -告している。また,P16の研究においても250ミリレムまで直線比例関係が確認され,更に中性子線については10ミリラドまで比例関係が確認されたとの報告がなされている。 bP3教授の原子力発電所周辺におけるムラサキ ,P16の研究においても250ミリレムまで直線比例関係が確認され,更に中性子線については10ミリラドまで比例関係が確認されたとの報告がなされている。 bP3教授の原子力発電所周辺におけるムラサキツユクサを用いた実験結果は,湿度,降雨,日照,自動車の排気ガス等の突然変異の諸要因を十分に検討した極めて正確なものであるので,原子力発電所の平常運転時における環境放射線量は,100ないし300ミリレムに相当する突然変異率を示しており,線量,目標値の年間5ミリレムをはるかに超える放射線が環境に放出されている疑いがある。 cしたがって,P3教授の実験結果を故意に排除した原子力安全研究会主催の検討会は誤っているから,本件安全審査における被ばくの評価は誤っている。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 ④放射線管理設備についての審査の有無について(控訴人らの主張)a本件申請書及びその添付書類には,(a)外部放射線量の監視のため,モニタリングポイント18か所(3か月毎に読み取り,モニ)タリングポスト9か所,モニタリングステーション3か所を設置すること,(b)周辺環境試料の放射線監視のため,陸水,海水,海底土,土壌,農畜産物,海洋生物について年2回分析を行うこと,(c)異常放出があった場合に,モニタリングカーにより本件原子炉敷地周辺の放射線測定を行うこと等の記載があるが,各周辺放射線監視設備の数及び設置場所,構造及び性能についての記載はない。 また,放射能が異常放出された場合に使用されるというモニタリングカーについての性能や積載機器の性能も明らかにされていない。 - 204 -bしたがって,放射線監視施設については,モニターの設置場所,構造,性能が明らかでない限り安全審査ができるはずがないにもかかわらず,これらが不明のままで本件申請を にされていない。 - 204 -bしたがって,放射線監視施設については,モニターの設置場所,構造,性能が明らかでない限り安全審査ができるはずがないにもかかわらず,これらが不明のままで本件申請を鵜呑みにして本件安全審査がなされているから,看過し難い重大な過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)aモニターの詳細な数及び設置場所,構造及び性能は詳細設計に関する事項であることは明らかであり,基本設計ないし基本的設計方針を審査する安全審査の対象外である。 そして,放射性希ガスによる実効線量当量については,指針に定められるとおり,主要核種であるガンマ線を評価すれば足りるものであり,十分に合理性がある(乙126の17頁。 )b原子炉施設の平常運転に伴って放射性物質を環境に放出するに当たっては,放射性廃棄物廃棄設備が正常に機能していること等を確認するために,その放出量及び放出後における線量率等を的確に監視することのできる設備を設けることが必要である。 本件安全審査においては,本件原子炉施設について,まず,(a)気体廃棄物に関しては,活性炭式希ガスホールドアップ装置の前後にそれぞれ放射線量を連続的に監視する放射線モニターが設けられること,及び排気筒から環境への放出量を連続的に監視するために排気筒に放射線モニターが設けられること,(b)液体廃棄物に関しては,環境に放出する前に放射性物質の濃度が十分低いことを確認するため,いったんサンプルタンクに貯留し,放射性物質の濃度をサンプリングして測定する設備が設けられること,及び復水器の冷却水放水路につながる排水管に放射性物質の放出量を連続的に監視する放射線モニターが設けられること等がそれぞれ確認された。 また,環境中の線量率等の監視については,本件原子炉施設の周- 205 -辺にモニタリングポスト等の 管に放射性物質の放出量を連続的に監視する放射線モニターが設けられること等がそれぞれ確認された。 また,環境中の線量率等の監視については,本件原子炉施設の周- 205 -辺にモニタリングポスト等の線量率等を測定する設備が設けられること等が確認された結果,本件原子炉施設には,その平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の放出量,環境中における線量率等をそれぞれ的確に監視することのできる放射線管理設備が設けられると判断された。 ウ本件原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)炉心燃料部の健全性の有無について①燃料被覆管の応力腐食割れについて(控訴人らの主張)a安全評価審査指針(甲33,乙94)において,運転時の異常な過渡変化の判断基準につき「燃料被覆管は機械的に破損しないこと(同指針4.1.1の(2))と規定されている。 」b本件原子炉施設において使用される燃料被覆管の材料であるジルカロイ-2には,核分裂生成物であるヨウ素によって応力腐食割れが発生する。ジルカロイの機械的な破損は一定の割合で避けられない以上,原子力安全委員会は「燃料被覆管は機械的に破損しな,「いこと」の解釈の明確化について(昭和60年7月18日原子力」). 安全委員会了承(甲45,乙129)により,上記審査指針の41.1の(2)の意味を「燃料被覆管に対する機械的な負荷によって貫通性損傷が系統的には生じないこ て(昭和60年7月18日原子力」). 安全委員会了承(甲45,乙129)により,上記審査指針の41.1の(2)の意味を「燃料被覆管に対する機械的な負荷によって貫通性損傷が系統的には生じないこと」と定め,その基準を狭めて解釈している。 - 206 -しかし,本件安全審査においては,ジルカロイ-2の耐食性,安全性については確認されておらず,燃料被覆管が冷却材や核分裂生成物によって腐食し,その進行・拡大によって腐食疲労,応力腐食割れなどの現象が起こる性質を看過している。 (被控訴人の主張)a「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の解釈の明確化につ「いて(昭和60年7月18日原子力安全委員会了承(乙129」)の1001頁)においては,応力腐食割れ現象について検討した結果「現行の炉型及び燃料については運転時の異常な過渡変化時に,この現象により燃料の系統的損傷が生ずる可能性は十分小さいと考えられることから,安全評価審査指針(甲33,乙94)において燃料の損傷の判断基準を現状では変更する必要はないと判断する」とされているのであって,応力腐食割れに関して指針の解釈。 が狭められたことはない。 b上記「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の解釈の明確化「について」においては「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」,の具体的な判断基準として,燃料被覆管の円周方向の平均塑性歪は1%以下であることについて,その1%の塑性歪を与える指標として熱的指標である燃料被覆管の表面の単位面積から単位時間当たりに原子炉冷却材に伝わる熱の量から換算して求めた線出力密度を用いる方法がとられていることにつき妥当であると判断している。本件安全審査においては「運転時の異常な過渡変化の解析」に当た,って熱的指標から求めた同様の判断基準を用い,それを満足す た線出力密度を用いる方法がとられていることにつき妥当であると判断している。本件安全審査においては「運転時の異常な過渡変化の解析」に当た,って熱的指標から求めた同様の判断基準を用い,それを満足することを確認している。 したがって,控訴人らの上記主張は,安全評価の妥当性を確認した本件安全審査の合理性を何ら否定するものではなく,失当である。 - 207 -cなお,後記②a(被控訴人の主張)のとおり,ジルカロイ-2は,燃料被覆管破損の確率が非常に低く,その使用実績から十分に安全であることが確認されている。 ②多発する燃料棒に関する異常事象と対策の遅れの有無についてaピンホールやひび割れ事象について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査では,通常運転時はもちろん,異常な過渡変化時にあっても「燃料が損傷しない」と審査されていた。 (b)しかし,本件原子炉施設では,平成10年1月16日,気体廃棄物処理系除湿冷却器出口排ガス放射線モニター指示値上昇に)。 伴う原子炉手動停止が行われる異常事象が発生した(甲351すなわち,本件原子炉の定格出力運転中の同年1月15日18時30分ころ,気体廃棄物処理系除湿冷却器出口排ガス放射線モニター指示値が通常値より上昇し,原子炉水の分析により炉水中のヨウ素濃度も上昇していることが確認された。モニターの指示値が通常値へ下降したため監視を強化し運転を継続したが,翌同月16日14時04分ころ,モニター指示値が通常値より上昇し,「OG系除湿冷却器出口排ガス放射能高」の警報が発生,除湿冷却器出口排ガス放射線モニター「高」及び同「高高」の表示灯が点灯していることを確認し,手動停止によって燃料集合体の漏洩調査を実施した。 その要因の調査の結果,燃料集合体一体(K1J30)に漏洩があることを確認し,燃料棒下部に長 高」及び同「高高」の表示灯が点灯していることを確認し,手動停止によって燃料集合体の漏洩調査を実施した。 その要因の調査の結果,燃料集合体一体(K1J30)に漏洩があることを確認し,燃料棒下部に長さ1㎝のすじ状の傷を確認した(以下「本件燃料棒の損傷」という。これは,海外で報。)告されている被覆管の水素化によって発生する二次的な割れの事例と類似するので,偶発的に発生した漏洩部分を通じて,燃料棒- 208 -内に浸入した水(水蒸気)による被覆管の水素化によって発生した二次的な割れと推定された(甲351。この対策として,東)京電力は,漏洩が確認された燃料集合体を健全な集合体に取り替えた。 本件安全審査においては,通常運転時はもちろん,異常な過渡変化時にあっても「燃料が損傷しない(乙4)ようになってい」たにもかかわらず,上記事象により燃料棒の機械的な破損という結果が発生している。 しかも,同様の事象は,本件原子力発電所6号機で平成8年8月24日に,次いで同7号機で平成11年3月31日に起こっていることからすると,対策を取り得ない欠陥が燃料棒にあり,更に事業者としての東京電力にこれを防止する能力がないことが実証されているといっても過言ではない。 なお,燃料集合体におけるピンホールの原因は,PCMI(燃料ペレット・燃料被覆管の相互作用)又は水素脆化とされ,その対策は十分にとられているとしていたが,このような対策がとられているにもかかわらず,現実に,被覆管の水素化によって発生する二次的な割れが原因となる本件燃料棒の損傷が生じていた。 (c)したがって,対策をとり得ない欠陥を見逃した本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査に係る燃料被覆管は,基本設計ないし基本的設計方針において熱的,機械的,化学的影響によ したがって,対策をとり得ない欠陥を見逃した本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査に係る燃料被覆管は,基本設計ないし基本的設計方針において熱的,機械的,化学的影響によって,その健全性が損なわれることのない,余裕のあるものであると判断された。 燃料被覆管材料としてのジルカロイ-2は,燃料被覆管破損の確率が非常に低く,その使用実績から十分に安全であることを確- 209 -認しており(乙3,31,炉心燃料部の基本設計ないし基本的)設計方針において適切な異常発生防止対策が講じられるものであると判断されている。 (b)本件安全審査においては,実際に原子炉に装荷されている多数の燃料棒が一切損傷しないことを想定したものではない。 すなわち,多数の燃料棒の一部の燃料においてごくまれに生ずる偶発的な燃料被覆管の損傷が生ずることは,工学的に避けられない。このため,本件安全審査においては,燃料被覆管の損傷を検知するために,冷却水中の放射能レベルを測定監視する計測装置等が設けられる。そして,一部の燃料の損傷によりある程度の放射性物質が燃料棒から漏洩することを前提として原子炉施設周辺の一般公衆の被ばく線量を評価し(乙4,安全が確保される)ことを確認しているのである。 ちなみに,原子炉の運転中に,仮に偶発的な燃料被覆管の損傷が生じたとしても,それを検知できる設計であることは前記のとおりであるし,その場合は原子炉を停止し損傷が生じた燃料を取り替える等の措置を採ることができる。 (c)控訴人らの主張は,偶発的な本件燃料棒の損傷が生じたことをもって,本件安全審査に瑕疵があることをいうものであり,失当である。 b浸水燃料の事象について(控訴人らの主張)(a)本件燃料棒の損傷によって,本件原子炉の炉心のなかに浸水燃料が存在 ことをもって,本件安全審査に瑕疵があることをいうものであり,失当である。 b浸水燃料の事象について(控訴人らの主張)(a)本件燃料棒の損傷によって,本件原子炉の炉心のなかに浸水燃料が存在していたことが判明している。これは,本件燃料棒の損傷により燃料被覆管内に侵入した炉水から発生する水素により二次的な割れが発生し,通常運転だけでも「水素化」という新た- 210 -なメカニズムで損傷が発生しつつあるのに,根本的な対策がとられていなかったことが明らかである。 しかも,浸水燃料については,本件原子力発電所6号機につき平成8年8月24日,同2号機につき平成9年1月27日,本件原子炉につき平成10年1月16日,同7号機につき平成11年3月31にそれぞれ発見され,毎年のように4件もあり防止できていないこと自体に問題がある。 (b)反応度事故時の浸水燃料の危険性は,反応度投入事象評価指針(昭和59年1月19日原子力安全委員会決定。甲38)において異常な過渡変化時の破裂する基準の値として「燃料エンタルピ65カロリー/g」が定められたことから明らかなように,「浸水燃料」が存在すれば,反応度事故時に容易に浸水燃料が破裂に至ることが現在の知見となっている。 しかし,本件安全審査では,異常な過渡変化時においても「浸水燃料(燃料被覆管の穴あき等により内部に冷却水が侵入した」燃料)が全く存在しない前提で評価されている(制御棒落下事故の解析でも170cal/gまでは燃料は破損しない前提で解析している。 。)(c)したがって,浸水燃料を考慮していない本件安全審査は,上記反応度投入事象評価指針に反し,著しく不合理である。 (被控訴人の主張)(a)浸水燃料に関する評価については「発電用軽水型原子炉の,反応度事故に対する評価方法について(昭和5 件安全審査は,上記反応度投入事象評価指針に反し,著しく不合理である。 (被控訴人の主張)(a)浸水燃料に関する評価については「発電用軽水型原子炉の,反応度事故に対する評価方法について(昭和52年5月20日原子炉安全専門審査会(乙130)において,検討除外とされ)」ていたものの,その後の燃料の変更申請により現在装荷されている燃料である高燃焼度8行×8列型燃料(燃料集合体最高燃焼度- 211 -50,000MWd/tとして設計された燃料で,8行8列に配列された60本の燃料棒と1本の太径ウォータロッド等から構成される燃料集合体をいう(平成2年7月10日設置変更許。)),可,9行×9列型燃料A・B型(燃料集合体の最高燃焼度55000MWd/tを目標として開発された燃料集合体であって,A型とB型の二つの異なる設計がされているが,両型とも,燃料被覆管及びペレット等の基本構成部材は現行の8行×8列型と同じ材料を用いた設計とされている(平成10年12月21日。)設置変更許可)については,反応度投入事象評価指針(昭和59年1月19日原子力安全委員会決定(甲38,一部改訂平成2)年8月30日同委員会(乙131)に基づき浸水燃料が破裂し)たとしても原子炉停止能力及び原子炉圧力容器の健全性を損なわないことが確認されている。 (b)同評価指針についてみると,反応度投入事象の判断基準のうち,浸水燃料に係るものとして,同評価指針3.(3)で「運転時の異常な過渡変化及び事故にあっては,浸水燃料の破裂による衝撃圧力等の発生によっても,原子炉停止能力及び原子炉圧力容器の健全性を損なわないこと」を判断基準としている。ただし,。 この判断基準については,同評価指針の添付2「浸水燃料の影響評価」の解析結果をもって代用できる場合は,除外でき 停止能力及び原子炉圧力容器の健全性を損なわないこと」を判断基準としている。ただし,。 この判断基準については,同評価指針の添付2「浸水燃料の影響評価」の解析結果をもって代用できる場合は,除外できると規定されている(乙131の274頁。この添付2「浸水燃料の影)響評価」は,反応度投入事象の判断基準のうち浸水燃料に係る基準の適用除外範囲を明らかにするため,安全余裕をとった前提条件で浸水燃料が破裂した場合について評価したもので,その評価結果に基づき,次のとおり除外基準を定めている(乙131。 )i本添付における評価対象プラントと同程度の炉心規模である- 212 -こと。 ii断熱計算によるピーク出力部の燃料エンタルピを最も厳しくするように選定された前提条件を用いた解析によっても,その結果が150カロリー毎グラム・UO以下であること。 iii原子炉停止余裕は,1.0%Δk以上であること。 iv落下制御棒価値は,1.5%Δk以下であること。 ここで,当時適用除外とされた,本件申請の8行×8列型燃料の反応度投入時の燃料エンタルピについて,上記除外条件と比較すると,ピーク出力部の断熱保有エンタルピは120カロリー毎グラム・UOであり,上記iiの基準を満足しており,その他の 各基準についてもいずれも満たしているため,当該基準が適用除外となる条件を十分満足していたものである。したがって,現在の科学的技術水準に照らしても本件処分は妥当なものと認められる。 (c)また,燃料被覆管の水素化については,ペレットや燃料棒の製造工程での湿分管理を行えば十分対策が採れることから,運転管理段階で対処可能なものである(乙132。本件安全審査に)おいても,燃料棒の製造工程では,燃料被覆管の水素化による損傷が生じないよう,燃料棒内の水分を十分低く えば十分対策が採れることから,運転管理段階で対処可能なものである(乙132。本件安全審査に)おいても,燃料棒の製造工程では,燃料被覆管の水素化による損傷が生じないよう,燃料棒内の水分を十分低く押さえるように管理し,更に万全を期して,プレナム部にゲッターと呼ぶ水分量を低減する物質を入れ,燃料被覆管の水素化を抑えるように努めることが確認されている。 (d)したがって,浸水燃料に関する本件安全審査に不合理な点はない。 c燃料棒スペーサのはずれの事象について(控訴人らの主張)- 213 -(a)本件原子炉施設において,平成10年1月30日,燃料集合体の不具合による原子炉手動停止の異常事象が発生した。 すなわち,同月16日の燃料集合体の漏洩検査のついでに,他の燃料集合体6体について外観検査を実施したところ,同月30日5時30分ころ,6体中2体の高燃焼度8行×8列型燃料集合体(K1GN1,K1GN2)のスペーサが正規の位置からはずれていることが確認された。K1GN1は,7個のスペーサのうち4個のスペーサが,K1GN2は2個のスペーサがそれぞれ上方向にずれていた。 その要因の調査の結果,チャンネルボックス取付時にスペーサの架橋板に過大な荷重がかかったものと思われ,一部が脱落,運転中の冷却材循環流によりスペーサが押し上げられたものと推定された。この対策として,スペーサの位置のずれが確認された燃料集合体を取り替え,今後チャンネルボックス取付作業にかかわる手順書に注意事項を明記し,作業者に対する教育を徹底し,取付作業自体もテレビカメラで確認することとした。 (b)燃料集合体の位置のずれは,それぞれの燃料棒の燃焼に影響を与え,更に冷却材である水の循環経路及びその流量に影響し,ひいては燃料棒の損傷事故につながりかねないものである。にもか こととした。 (b)燃料集合体の位置のずれは,それぞれの燃料棒の燃焼に影響を与え,更に冷却材である水の循環経路及びその流量に影響し,ひいては燃料棒の損傷事故につながりかねないものである。にもかかわらず,今になって作業者に対する教育を徹底し,取付作業自体もテレビカメラで確認するというのは安全審査の欠陥を糊塗するものである。 (c)したがって,本件原子炉では,燃料棒スペーサの位置がずれていたのであるから「燃料が損傷しない」と判断した本件安全,審査は欠陥がある。 (被控訴人の主張)- 214 -(a)控訴人らの主張するスペーサのはずれについては,要因分析をした上,現場及び照射後試験施設等において詳細な点検調査を行った結果,スペーサの位置がずれたのはチャンネルボックス取付時にスペーサの架橋板に過大な荷重がかかったためであることが判明しているから,これは基本設計ないし基本的設計方針に関する問題ではなく,施工管理に属する問題にすぎない。 (b)したがって,燃料棒スペーサの点は本件安全審査の合理性を左右するものではない。 ③冷却材喪失事故時における炉心燃料部の健全性の有無についてa大破断冷却材喪失事故(LOCA)の危険性の有無について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査では,再循環系配管1本の破断について外部電源喪失(したがって再循環ポンプ停止,原子炉は緊急停止)と非常用ディーゼル発電機1台の故障を想定し,破断口からの冷却材流出量はP17の臨界流モデルのみを用い(乙2の10-3-26頁,下部プレナム水フラッシングによる冷却を考慮し(乙2)の10-3-34頁,乙3の10-104頁,緊急炉心冷却系)については作動を想定するもの(高圧炉心スプレイ系及び低圧注水系2系統)はすべて定格流量を満たすという前提で解析が行われ,燃料 乙2)の10-3-34頁,乙3の10-104頁,緊急炉心冷却系)については作動を想定するもの(高圧炉心スプレイ系及び低圧注水系2系統)はすべて定格流量を満たすという前提で解析が行われ,燃料被覆管温度は約886℃以下としている(乙2の10-3-38頁,10-3-80頁。 )しかし,i冷却材喪失事故の場合,緊急停止信号は配管の破断と同時に出ることはなく,流出した冷却材が気化して格納容器内の圧力が上昇して初めて「ドライウェル圧力高」の緊急停止信号が出ること,iiP17の臨界流モデルは,少なくとも大破断LOCA直後の未飽和(沸騰していない)冷却材の準安定流を考慮し- 215 -ていないため,未飽和状態の冷却材については実際の半分以下の過小評価となるので,破断口からの流出量をP17の臨界流モデルによることはできないこと,iii下部プレナム水フラッシングの流量は,破断口からの流出の計算に用いるモデルの選択や圧力損失の計算に用いる式の選択により大幅に変化するが,実験によって裏付けられたものではなく机上の計算によるものであるから,実際にどれだけの流量があるのか不確実な下部プレナムフラッシングによる冷却を解析上全面的に期待するのは不合理であり,下部プレナムフラッシングによる冷却を全く考慮しない場合,燃料被覆管温度が数百度高くなる可能性があること,iv緊急炉心冷却系が定格流量どおりに注水することを想定するのは現実的ではなく,本件原子炉のメーカーである株式会社東芝(以下「東芝」という)の解析によると,緊急炉心冷却系の注水量が20%減少。 すると燃料被覆管温度は100℃以上上昇すると予想されること,v現在は,P17の臨界流モデルに替わり均質臨界流モデルが採用されており,後者によれば,事故経過が緩やかなものとされている。このように解析モデル 料被覆管温度は100℃以上上昇すると予想されること,v現在は,P17の臨界流モデルに替わり均質臨界流モデルが採用されており,後者によれば,事故経過が緩やかなものとされている。このように解析モデルにより事故経過が大きく異なることは,LOCA解析の信頼性の低さを示しているから,本件安全審査における冷却材喪失事故の解析は不合理である。 なお,本件原子炉のメーカーである東芝が,外部電源が健全な場合の高圧炉心スプレイ系のポンプ起動を事故後約3秒後としており,高圧炉心スプレイ系の起動信号が「ドライウェル圧力高」又は「原子炉水位低」であってLOCAのスクラム原因と同じであることにかんがみ,現実的にはスクラム発生時間は高圧炉心スプレイ系の起動時間である約3秒後時点とみるべきである。 (b)より激しいあるいはより現実的な条件を前提とする,燃料被- 216 -覆管温度は軽く1000℃以上となる。 すなわち,燃料被覆管温度が本件安全審査の結果である886℃よりも100℃弱上昇すると,水-ジルコニウム反応が活発化し,200℃程度上昇すると水-ジルコニウム反応が発熱反応であることから正のフィードバックを生じて燃料被覆管温度は更に急激に上昇して行くことになる。その意味で本件安全審査の燃料被覆管温度に200℃程度の過小評価誤差があった場合,炉心溶触に至る危険があるから,これを過小評価した本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)(a)何らかの原因により,原子炉圧力容器に接続されている各種配管中の1本が原子炉運転中に破損すると仮定した場合には,原子炉圧力容器から冷却材が漏出ないし喪失するので,本件原子炉施設においては,冷却材喪失事故の発生を防止するため,次のような設計及び運転管理上の事故防止対策が講じられている。 i配管等の設計に ,原子炉圧力容器から冷却材が漏出ないし喪失するので,本件原子炉施設においては,冷却材喪失事故の発生を防止するため,次のような設計及び運転管理上の事故防止対策が講じられている。 i配管等の設計に当たっては,原子炉の寿命中の各種の応力を十分に考慮した厳しい条件を適用する。 ii材料の選定,加工及び配管等の製作過程において十分な品質管理を行う。 iii原子炉供用期間中に主要な個所の検査を行い,その健全性を確認する。 iv脆性破壊を防止するような運転管理を行う。 vさらに,漏洩検出系による監視によって,破断に進展する前に破損を検知し,適切な処置を講じる。 上記のような事故防止対策にもかかわらず,万一冷却材喪失事故が生じても,燃料被覆管が炉心冷却を妨げる程破損することを防止- 217 -し,水-ジルコニウム反応を十分に低く抑え,炉心の崩壊熱を長期にわたって除去する目的でECCSを設けている。 (b)ECCSは,ECCS安全評価指針(乙11)に照らし,その基本設計ないし基本的設計方針において,次のような事故防止対策に係る安全性を確保している。 すなわち,小破断から大破断までのいかなる破断面積に対しても原理の異なる系統を多重に,独立して設けて炉心冷却を行うこととしており,いかなる動的機器の単一故障に対しても炉心冷却機能を失わないように設計するものである。 また,ECCSの電源としては,外部電源がない場合にも3台のディーゼル発電機によって給電するよう設計する。 次に,冷却材喪失事故に伴い圧力容器から放出された冷却材及び放射能を閉じこめるため格納施設を設ける。また,非常用ガス処理系を設け,排気筒を通して大気に放出される前にヨウ素の除去を高効率で行う。さらに,事故後原子炉格納容器内の水が放射線により分解されて水素と酸素が発生し,水-ジルコニ 設を設ける。また,非常用ガス処理系を設け,排気筒を通して大気に放出される前にヨウ素の除去を高効率で行う。さらに,事故後原子炉格納容器内の水が放射線により分解されて水素と酸素が発生し,水-ジルコニウム反応により生成した水素とともに,徐々に蓄積されて燃焼限界に達する可能性があるが,本件原子炉では格納容器内ガス濃度制御系を設け,燃焼限界に達するのを防止する。 (c)冷却材喪失事故は,本件安全審査においては事故解析の一つとして,想定され,解析された事象である。 すなわち,冷却材喪失事故の解析に当たっては,炉心の冷却にとって最も厳しい結果となる,定格出力の約105%での運転中に,冷却材再循環系配管の1本が瞬時に完全に破断し,冷却材再循環系配管の破断と同時に外部電源が喪失し,かつ,事故時に作動が要求されているECCSに動的機器の単一故障(低圧炉心ス- 218 -プレイ系の非常用ディーゼル発電機の故障)が起こるなどと仮定し,解析結果を厳しくするための前提条件を設定した(乙2の10-3-19。その解析評価は,次のとおりであって,ECC)S,原子炉格納容器等の設計は妥当なものと判断されている(乙4の46ないし48頁。 )i燃料被覆管の延性が極度に失われ,炉心の冷却可能形状を保持し続けることができなくなるのは,燃料被覆管の最高温度が1200℃を超えた場合,又は燃料被覆管の延性を失わせる全酸化量が酸化前の燃料被覆管の厚さの15%を超えた場合であるところ,燃料被覆管の最高温度が約886℃であり燃料被覆管の損傷はないこと,また,燃料被覆管における全酸化量は,酸化前の燃料被覆管の厚さに対して最大約0.3%と小さいことから燃料被覆管の延性は失わないことなどによって燃料棒は冷却可能な形状に維持され,燃料の冷却は確保される。 ii破断した配管から放 量は,酸化前の燃料被覆管の厚さに対して最大約0.3%と小さいことから燃料被覆管の延性は失わないことなどによって燃料棒は冷却可能な形状に維持され,燃料の冷却は確保される。 ii破断した配管から放出される冷却水及び水-ジルコニウム反応により発生した水素により原子炉格納容器内の圧力は上昇するものの,本件原子炉格納容器の設計圧力を超えることはない。 (d)高圧炉心スプレイ系の起動信号である「原子炉水位低(レベル2」は,スクラム信号である「原子炉水位低(レベル3」))よりも低い水位レベルに設定されているものであり,スクラム発生時間と高圧炉心スプレイ系の起動時間は異なるので,控訴人らの主張は失当である。 なお,実際には配管破断後に通常の水位から「原子炉水位低(レベル3」が発生する水位に達する時間よりも早く「ドラ)イウェル圧力高」が発生してスクラム及び高圧炉心スプレイ系が同時に起動するが,解析ではより厳しい解析条件を課してい- 219 -るため,この「ドライウェル圧力高」の発生をあえて考慮していない。 b中小破断冷却材喪失事故(LOCA)の危険性の有無について(控訴人らの主張)(a)中小破断LOCAは,大破断LOCAと比較してその発生率が高い。 そして,昭和62年2月17日に運転を開始していた敦賀原発2号機(加圧水型軽水炉,定格出力116万kW。以下「敦賀2号機」という)において,平成11年7月12日午前6時05。 分ころ,格納容器内サンプ水位上昇率高の警報が鳴り,同日午前6時48分に原子炉を手動停止したところ,格納容器内の化学体積制御系再生熱交換機の配管エルボ(曲管部)に軸方向に貫通亀裂が生じるなどし,再生熱交換機連絡配管の抽出側配管部から一次冷却材が漏洩するという中小配管破断冷却材喪失の異常事象が発生していることが判明 制御系再生熱交換機の配管エルボ(曲管部)に軸方向に貫通亀裂が生じるなどし,再生熱交換機連絡配管の抽出側配管部から一次冷却材が漏洩するという中小配管破断冷却材喪失の異常事象が発生していることが判明した(甲315の①②,316ないし321。この貫通亀裂の長さは,当初発表では約80㎜(甲31)7,その後44㎜(甲319,更に47㎜(甲320)と揺))れ動いた。この亀裂の内面部は長さ151㎜の亀裂があり(甲321,この配管が切断され内面の観察が始まると,亀裂は当初)発見された軸方向の貫通亀裂一つではなく,極めて多数の亀裂が同時並行して発生・成長していることが判明した(甲321。 )敦賀2号機の冷却材漏洩事象では,運転員が漏洩箇所を発見し,漏洩を止めるために当該配管に至る弁を閉止するまでに14時間を要し,しかも異常事象の収束後でさえ実際の漏洩量を把握できていなかったので,中小破断LOCAの際の運転員の介入について,かなりおぼつかないレベルにあることが明らかになった。 - 220 -また,解析によって,運転期間(通常40年)中健全性が維持できると「理論的に」判断されてきたにもかかわらず,敦賀2号機の運転開始から当該事象時点で12年5か月で貫通亀裂を生じているので,我が国における疲労解析の信用性もかなりおぼつかないものであることが明らかになった。 さらに,従来から生じることが想定され,検査等でも発見できるはずのものであった溶接部の周方向の割れについても,全周の3分の1に達し,何らかの衝撃が加われば,ギロチン破断(瞬時全周破断)に至る危険があるような段階になっても発見することができなかった。敦賀2号機の冷却材漏洩事象では,軸方向の亀裂の方が先に貫通したが,亀裂の成長の仕方によっては周方向の亀裂の方が先に貫通してギロチン破断に至る可能 るような段階になっても発見することができなかった。敦賀2号機の冷却材漏洩事象では,軸方向の亀裂の方が先に貫通したが,亀裂の成長の仕方によっては周方向の亀裂の方が先に貫通してギロチン破断に至る可能性もあった。 なお,電気技術規程では,溶接部以外の部分は非破壊検査の対象とされておらず,溶接部においても呼び径100㎜未満の配管については表面検査のみで体積検査,すなわち超音波探傷検査や放射線探傷検査は行われず,呼び径100㎜未満の配管については,外表面に傷があるかどうかの検査が10年に1回か40年に1回あるのみで内表面や内部の傷の有無は全く検査されないのであり,これらの配管については,10年に1回の系統の漏洩及び水圧試験で通常の1.1倍の圧力をかけたときに壊れて漏洩しないかがチェックされるだけであるから,その10年に1度の検査の際たまたま破断寸前まで来ていてわずか1割増の圧力で破壊する段階に来ていれば,発見されるにすぎないのであるから,供用期間中検査で中小破断LOCAを防止することは不可能である。 (b)本件安全審査では,中小破断LOCAにつき特定の破断箇所を想定せず,単純に破断面積のみで検討し,高圧炉心スプレイ系- 221 -の故障のみを想定して,燃料被覆管温度のみを基準として,破断面積約93cm(0.1平方フィート)の破断が最も厳しく, 燃料被覆管最高温度は782℃としている(乙2の10-3-17頁,30ないし31頁,乙4の134頁。そして,本件安全)審査の際,中小破断LOCAについては,高圧炉心スプレイ系の故障は想定しているが,それ以外の故障は全く想定せず,自動減圧系(ADS)及び低圧炉心スプレイ系,低圧注水系は完全に機能を果たすという前提で解析を行っている。 BWRメーカーの株式会社日立製作所(以下「日立」という)の それ以外の故障は全く想定せず,自動減圧系(ADS)及び低圧炉心スプレイ系,低圧注水系は完全に機能を果たすという前提で解析を行っている。 BWRメーカーの株式会社日立製作所(以下「日立」という)のLOCA解析コードの感度解析報告によれば,中小破断。 LOCAにおいて,本件安全審査で想定された破断面積0.1平方フィートの場合,この自動減圧系の流量が15%減少すれば(つまり7個ある逃がし弁の一つが機能しなければ,燃料被覆)管最高温度は120℃上昇し,900℃に達するところ,燃料被覆管温度が950℃に達すると,燃料被覆管の材料であるジルコニウムが冷却材である水との間で水-ジルコニウム反応を起こし,これが発熱反応であるため燃料被覆管温度が急速に上昇していくことになり,自動減圧系の流量が更に減少するか,他の要因が重なれば燃料被覆管最高温度は950℃に達することになる。 また,本件原子炉のメーカーである東芝の解析によれば,本件原子炉施設と同じ110万kW級のBWR5では破断面積0.1平方フィートの中小破断LOCAで燃料被覆管最高温度は967℃とされており,自動減圧系の流量が20%減少すると燃料被覆管最高温度が196℃程度上昇し,1163℃にも達する(甲326。 )さらに,自動減圧系が十分に機能しても,低圧系のECCSが- 222 -十分に機能しなければ,同様に燃料被覆管最高温度は更に上昇し,東芝の解析によれば,低圧注水系の流量が20%減少した場合,燃料被覆管最高温度は208℃上昇するとされている。 したがって,東芝の解析によると,自動減圧系の流量減少と低圧系のECCSの機能不全が生じた場合には,燃料被覆管最高温度が1200℃を超えることも十分にあり得るところであるから,燃料被覆管最高温度を1200℃以下にとどめることを基準としている軽 減少と低圧系のECCSの機能不全が生じた場合には,燃料被覆管最高温度が1200℃を超えることも十分にあり得るところであるから,燃料被覆管最高温度を1200℃以下にとどめることを基準としている軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の性能評価指針にも違反することになる。 (c)近時の異常事象・事故例にかんがみ,現実に起こり得ると考えられる故障を想定した上で,東芝,日立のLOCA解析を参考にして中小破断事故を解析すれば,本件安全審査の事故想定と解析は極めて甘い不合理なものであり,中小破断LOCAにおいても炉心溶融事故に至る危険がある。まして,運転員が事故の進展中に冷却材漏洩量等の重要データを正確に把握することなく,事故の収拾にあたれば,更に事態を悪化させる誤介入も起こり得るから,中小破断LOCAにおいてもかなりの危険があり,そのような事態まで考慮していない本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)(a)本件原子炉の炉型(BWR型)は,敦賀2号機の炉型(PWR型)とは異なるものであって,控訴人らが主張する敦賀2号機の事象が発生した機器(内筒付き再生熱交換器)は,本件原子炉施設には存在しない。上記敦賀2号機の事象は,再生熱交換器が内筒を有する構造であったため,機器内の水温変動による高サイクル熱疲労により配管に亀裂が生じ,更に進展したものであるが,これは機器の詳細設計ないし施工管理の段階にかかわる事象であ- 223 -って,基本設計ないし基本的設計方針の妥当性を判断する安全審査の対象外の事象である(乙107の48,49頁。 )また,控訴人らは敦賀2号機の事象を中小破断の冷却材喪失事故であるかのように主張するが,ECCS安全評価指針において,想定冷却材喪失事故(LOCA)とは,ECCSの機能及び性能を評価する見地から想定された原子炉 は敦賀2号機の事象を中小破断の冷却材喪失事故であるかのように主張するが,ECCS安全評価指針において,想定冷却材喪失事故(LOCA)とは,ECCSの機能及び性能を評価する見地から想定された原子炉冷却材喪失事故のことを指し,その流失量が通常運転時に使用される補給水系にて補給できる範囲についてはその対象から除外することになっているから,ECCSの作動が必要となる程の漏洩ではない敦賀2号機の事象については,事故解析で想定すべきLOCAには至っていない。 (b)控訴人らの主張は,中小破断冷却材喪失事故の可能性について言及するものであるが,想定された事象の発生に加え,適切とされる範囲を超える,事故解析の意義,目的に照らして独自の不適切な仮定をおくことによって,本件安全審査を不合理とするものであって,その主張自体が失当である。しかも,控訴人らの主張する異常事象・事故,故障例等は,原子炉設置許可に係る安全審査の対象となる基本設計ないし基本的設計方針にかかわるものではなく,詳細設計ないし施工管理にかかわるものであり,本件の審理判断の対象とは何らかかわりがないから,本件安全審査の合理性を左右するものではない。 (イ)圧力バウンダリについて①圧力容器の中性子による脆化に対する安全性の有無についてa脆化予測式の合理性と不純物及びニッケル等が中性子の照射脆化に及ぼす影響の有無について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査においては,寿命期間中の脆性遷移温度の上昇- 224 -の予測にはP18のワーストケースカーブが上限となることを用いている(甲367の①②,368。 )しかし,P18のワーストケースカーブは式の形態に何らの理論的基礎もなく(甲356の72ないし74頁,材料試験炉で)の加速(高速)照射によるデータに基づいていること,後記 67の①②,368。 )しかし,P18のワーストケースカーブは式の形態に何らの理論的基礎もなく(甲356の72ないし74頁,材料試験炉で)の加速(高速)照射によるデータに基づいていること,後記のドイツ連邦共和国(当時の西ドイツ)のグンドレミンゲン原子力発電所(BWR,GE社製,25万kW。以下「グンドレミンゲン原発」という)の圧力容器に関する実験研究や法政大学工学部。 教授(東京大学名誉教授)P19(以下「P19教授」という)らの実験研究等から今やその存在に疑いのない照射速度依。 存性(照射速度が遅いほど脆化が進行しやすい)を全く考慮していないのであるから,科学的合理性を有しない。 また,P18のワーストケースカーブの基礎になった材料試験炉での加速照射の場合,P19教授らの研究によれば,照射脆化に寄与する欠陥は格子間原子クラスターが支配的であり,他方,沸騰水型原発の圧力容器程度の照射速度での照射脆化に寄与する欠陥は銅クラスターが支配的であるから,両者は測定しているものが全く異なるものであり,沸騰水型原発の圧力容器の照射脆化を予測するのに材料試験炉での試験データの何倍かの余裕を見ればよいという性質のものではなく,材料試験炉でのデータに基づくP18の式は「試算ないし見通し」にさえならない。実際にも,沸騰水型原発の監視試験片の当時の通商産業省(以下「通産省」という)による評価結果にもワーストケースカーブよりも著し。 く脆化しているものがある(甲356の57ないし59頁,86ないし87頁。 )(b)現在の科学技術水準に照らせば,本件原子炉を含め圧力容器- 225 -鋼材に使用されるマンガン・モリブデン・ニッケル鋼板(ASTM・A-533)において,不純物でなく成分元素として大量に添加されているニッケルは,圧力容器の照射脆化に 炉を含め圧力容器- 225 -鋼材に使用されるマンガン・モリブデン・ニッケル鋼板(ASTM・A-533)において,不純物でなく成分元素として大量に添加されているニッケルは,圧力容器の照射脆化に強い悪影響を及ぼすことが指摘されている(甲258の15頁,甲259の14頁,乙81。 )さらに,現在も不純物が中性子照射脆化に与える影響はいまだ解明されておらず,ましてや本件安全審査当時に十分解明されていたとはいえない。そして,本件安全審査においては,当時不純物の影響を考慮して作成されたASTMやNRCのRegulatoryGuideへの該当性に関しては何ら検討されていないので,不純物の効果についての当時の知見すら何ら反映されていない。なお,敦賀原発1号機の監視試験片のシャルピー試験評価では,米国でも考えられないような量の不純物が混入している場合(upperlimit)の脆化以上に脆化が進んでいる(甲365。 )しかし,本件安全審査においては,中性子照射脆化に関する化学成分の影響としてリンと銅を挙げるにとどまり,不純物の含有量やマンガン・モリブデン・ニッケル鋼板の成分元素であるニッケルの影響が考慮されていない。 (c)したがって,本件安全審査で用いられたP18のワーストケースカーブは理論的にも合理性がなく,結果的に見ても,実際の沸騰水型原発での照射速度では中性子照射脆化を過小評価する危険が非常に高いといわざるを得ず,これを上限と考えることは明らかに不合理である。また,本件安全審査は,圧力容器の中性子照射脆化の検討に当たり,不純物及びニッケルの影響を看過したものであり,不合理である。 - 226 -(被控訴人の主張)(a)本件安全審査においては,圧力容器の脆性破壊防止については,i脆性破壊防止を十分考慮した延性の高い材料が使 ケルの影響を看過したものであり,不合理である。 - 226 -(被控訴人の主張)(a)本件安全審査においては,圧力容器の脆性破壊防止については,i脆性破壊防止を十分考慮した延性の高い材料が使用されること,ii圧力容器内に脆性遷移温度の変化を知るための試験片を取り付けることができるように設計されること,iii圧力容器の最低使用温度を脆性遷移温度より33℃以上高くすることができるように設計されることが確認された(乙1の8,9頁,乙2の8-4-3,11,12頁,乙3の1,8-14,8-221頁,乙4の31,32頁。その結果,本件原子炉施設の圧力バウン)ダリは,その基本設計ないし基本的設計方針において,脆性破壊に関し,その健全性の損なわれることのない余裕のあるものとして設置し得ると判断された。 (b)控訴人らの主張は,圧力容器の材料の脆性遷移温度の把握ないし予測に係る数値自体を安全審査の対象ととらえるようであるが,これは圧力容器材料の最低使用温度を,圧力容器材料の脆性遷移温度より33℃以上高くすることができるよう設計されること及びその実際の変化を知るために監視試験片を取り付けることができるように設計されることという各審査事項との間において関連を有するにすぎないことから,脆性遷移温度の当否そのものが原子炉の設置許可に係る安全審査において問題とされるものではない。 すなわち,安全審査においては,脆性破壊防止を十分考慮した延性の高い材料の脆性遷移温度を基に導かれた最低使用温度が十分低いものであり,中性子照射を受けた後も十分な余裕をもって運転管理をすることができることが確認されれば足りるのであり,中性子照射による脆性遷移温度の評価は,このような確認のため- 227 -に行われるものである。 また,上記について使用する脆性遷移温度の 転管理をすることができることが確認されれば足りるのであり,中性子照射による脆性遷移温度の評価は,このような確認のため- 227 -に行われるものである。 また,上記について使用する脆性遷移温度の予測式は,安全審査においてそれ自体が絶対的な正確性を有する値を与えるものとは扱われておらず,これによって得られた値は,一試算結果として参考に供されるにすぎない。そもそも安全審査においては,この数値そのものにより将来の脆性遷移温度の変化を絶対的に管理し得ることの確認は必要ではなく,実際,本件原子炉の圧力容器の材料の脆性遷移温度の把握ないし予測に係る数値の当否自体が,本件安全審査の対象事項とされたものではない。 したがって,控訴人らの主張は,脆性遷移温度の予測式及びこれらによって得られた値がそれ自体としてどの程度の正確性を有するかを問題とするのに帰着するから,本件安全審査の合理性を直ちに左右するものではなく,失当である。 (c)さらに,運転中の原子炉における脆化に関する安全確保については,原子炉施設の適切な運転等の管理の問題として対処されるべき問題である。 現在,圧力容器の脆化予測は,社団法人日本電気協会の作成に係る電気技術規程原子力編「原子炉構造材の監視試験方法(J」EAC4201-2000(乙133)に記載されている国内)脆化予測式及び計画的に取り出された監視試験片による評価により行っている。 そして,国内脆化予測式は,国内原子炉圧力容器の監視試験データ,米国プラントの監視試験データを用いた統計的な評価により,予測値が実測値を包絡するように定めており,実用上問題となるものではない(乙133。 )b照射速度等の影響の有無について- 228 -(控訴人らの主張)(a)照射脆化は,照射量のみならず照射温度の影響も受け,更に照射 定めており,実用上問題となるものではない(乙133。 )b照射速度等の影響の有無について- 228 -(控訴人らの主張)(a)照射脆化は,照射量のみならず照射温度の影響も受け,更に照射速度が遅い方が照射脆化が進行する。 そして,実際の原子炉での中性子の照射速度は材料試験炉より数桁低くBWRは更にPWRより1桁以上低い。 (b)グンドレミンゲン原発は,1977年(昭和52年)に使用済みとなったが,その圧力容器は,全く同じ材質と製造履歴を持つ保存材(アーカイブ)を材料試験炉で短期間に実際の圧力容器よりも大量の中性子照射したものよりもはるかに脆化が進んでいた(甲356の23ないし27頁,甲357の①の4ないし5頁,甲358の②。 )すなわち,実際のグンドレミンゲン原発の原子炉は,材料試験炉より照射量が低く照射速度(1秒当たりの中性子照射量)も3桁も低いにもかかわらず,実際の原子炉の方が照射脆化が進んでいた。 そして,グンドレミンゲン原発の圧力容器の照射脆化の進行は切り出し試験片の方向によって大きく異なっており,軸方向(割れの方向は円周方向)のものは著しく脆化し,円周方向(割れの方向は上下方向)のものはあまり脆化していなかったが(甲356の23,28ないし30頁,357の①,4ないし5頁,甲358の②,甲359の③,この原因は今なお解明されていない)(甲356の29ないし30頁。さらに,グンドレミンゲン原)発の圧力容器では試験片の切り出し位置によって脆化の程度が著しく違っていた(甲357の①の5頁,甲356の37ないし39頁,甲359。 )また,米国の研究炉HFIR(HighFluxIsotopeReactor・- 229 -高中性子束同位体生産炉)でもグンドレミンゲン原発と同様に材料試験炉の10分の1の照射 甲359。 )また,米国の研究炉HFIR(HighFluxIsotopeReactor・- 229 -高中性子束同位体生産炉)でもグンドレミンゲン原発と同様に材料試験炉の10分の1の照射量,4桁低い照射速度で材料試験炉と同様の照射脆化を生じた。 (c)P19教授らのモデル計算の結果,第1に不純物である銅の効果に関しては照射速度が遅いほど脆化が進行しやすいという照射速度依存性が理論的に導かれ,第2に照射脆化に寄与する欠陥は照射速度により異なり,沸騰水型原発の圧力容器程度の照射速度では銅クラスターの影響が支配的であるのに対し,材料試験炉クラスの照射速度では格子間原子クラスターの影響が支配的となる(甲356の54ないし59頁,甲357の①の5ないし7頁,甲361。 )P19教授らの実験の結果,照射速度が遅い方が大きな銅クラスターが形成されることがミクロ的に観察され,確認された(甲356の60ないし63頁,357の①の8頁,甲357の②の図6-1。また,P19教授らの実験で硬さ試験でも銅濃度が)0.15%程度の場合も含めて,照射速度が遅い方が脆化が進行することが確認された(甲356の63ないし65頁,甲357の①の8頁,甲362の②。 )P19教授らの実験結果では,P19教授らのモデル計算で予測した以上に大きなクラスターが観察されており,実際の原発の圧力容器ではP19教授らのモデル計算よりも更に早く脆化が進行する可能性がある(甲356の65ないし68頁。照射脆化)に関しては,現在なお解明されていない点が多く(甲357の①,10頁,信頼できる脆化予測式は存在しない(甲356の86)頁,95ないし96頁。 )(d)したがって,本件安全審査が基にした照射脆化についての知- 230 -見は現在の科学水準からは妥当性を 0頁,信頼できる脆化予測式は存在しない(甲356の86)頁,95ないし96頁。 )(d)したがって,本件安全審査が基にした照射脆化についての知- 230 -見は現在の科学水準からは妥当性を欠いているので,本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)上記aの被控訴人の主張のとおり,圧力容器の材料の脆性遷移温度の把握ないし予測に係る数値自体は,安全審査の対象となる事項ではないし,また,控訴人らが照射速度の影響として指摘しているグンドレミンゲン原発の調査研究についての主張は,本件原子炉施設とは別の原子炉に関するものであって,本件安全審査とは関係がなく,失当である。 c本件安全審査が準拠した監視試験方法の妥当性の有無について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査が準拠した原子炉構造材の監視試験方法である社団法人日本電気協会の作成に係る電気技術規程原子力編「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-1970(乙」)81)は,昭和61年に「原子炉構造材の監視試験方法(JE」AC4201-1986(甲259)により改訂されている。 )上記JEAC4201-1986においては,試験片に使う材料は炉心領域に使用したもののうちから照射前の関連温度RTNDTと化学成分(Cu,Ni等)の影響を考えて設計寿命末期のRTNDT調整値が最高となると予測されるものを選ぶとされ,また,試験片の数は,各回毎に引張試験片3個以上,衝撃試験片12個以上を原則とされている(甲259の1ないし3頁。 )しかし,上記JEAC4201-1970では,JEAC4201-1986と異なり,関連温度RTNDTや化学成分の考慮を欠いており,試験片の数も各回毎に引張試験片2個以上,衝撃試験片8個以上としており(乙81の2頁,少ないのであるか)- 231 01-1986と異なり,関連温度RTNDTや化学成分の考慮を欠いており,試験片の数も各回毎に引張試験片2個以上,衝撃試験片8個以上としており(乙81の2頁,少ないのであるか)- 231 -ら,現在の科学技術水準では,監視試験片が存在することを基礎にした本件安全審査は,合理性を失っている。 (b)監視試験片による監視は極めて重要であるが,発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和40年6月15日通商産業省令第62号)及び発電用原子力設備に関する構造等の技術基準告示(告示501号の105条)によれば,1回当たりの試験片の個数は引張試験片で3個以上,衝撃試験片で12個以上となっているにもかかわらず,本件原子炉では,それぞれ2個以上,8個以上という数しか存在しないのであるから,本件原子炉は,明らかに,現在の科学技術水準に照らし,安全審査で用いられた具体的審査基準に不合理な点がある。 また,上記「原子炉構造材の監視試験方法」JEAC4201-1986(甲259)によると,本件原子炉の設計寿命は,全出力運転年数(定格負荷相当年数,EFPY(effectivefullpoweryear )として32年が想定されている。そして,監視試)験片の取り出し時期に照らすと,本件原子炉の監視試験計画では運転開始後12年までのデータしかわからず,その設計寿命に有効に対応する監視計画がないという疑問があるので,廃炉に至るまで的確な監視試験片のデータが得られないまま手探りで運転を継続する危険性が高い。 (c)上記グンドレミンゲン原発の圧力容器において,試験片の切り出し位置によって脆化の程度が異なるのであるから,試験片の位置如何によって圧力容器の脆化を著しく過小評価することとなる。 このように試験片の切り出し方向あるいは照射の際の方 器において,試験片の切り出し位置によって脆化の程度が異なるのであるから,試験片の位置如何によって圧力容器の脆化を著しく過小評価することとなる。 このように試験片の切り出し方向あるいは照射の際の方向により脆化の程度が著しく異なるとすれば,試験片はそれらの事情を- 232 -考慮して切り出しの際ないし照射の際の方向を変えてそれぞれについてシャルピー試験が可能な数を配置する必要があるが,そのような配慮はされていない(甲356の83,97頁。 )さらに,本件原子炉施設では,試験片は原発の寿命期間中に4回取り出せる数しか取り付けられていないのであるから,現在の圧力容器の脆化の評価に有効性を持つためには,信頼できる脆化予測式が存在しなければならないが(甲356の86頁,95ないし96頁,現在なお,信頼できる脆化予測式は存在しないの)であるから,試験片の有効性は否定的に解さざるを得ない。 (d)したがって,本件安全審査は,監視試験方法が不十分であるから合理性がない。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査においては,脆化予測式に基づく脆性遷移温度の予測値と,その実際の変化を知るための監視試験片による実測値による補正とによって,実際の脆性遷移温度の変化を把握できることを確認することで足りるのであり,本件原子炉施設においては,当時の「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC420」1-1970(乙81)も踏まえ,運転期間中の脆性遷移温度)の把握が可能であると判断したものである。 すなわち,上記aの被控訴人の主張のとおり,本件安全審査においては,圧力容器に関する基本設計ないし基本的設計方針として,その材料の脆性遷移温度については,中性子照射を受けた後も最低使用温度を脆性遷移温度より33℃以上高くすることができるように設計されること,及びそ 力容器に関する基本設計ないし基本的設計方針として,その材料の脆性遷移温度については,中性子照射を受けた後も最低使用温度を脆性遷移温度より33℃以上高くすることができるように設計されること,及びその実際の変化を知るために監視試験片を取り付けることができるように設計されることが,本件申請の時の知見に照らして可能であることが確認されており,- 233 -実際新しい基準において試験片の数が多少増えたとしても,その安全審査の結果に変わりはない。 (b)実際の本件原子炉施設の運転期間中の脆性遷移温度の把握は,その適切な運転等の管理の中で対処すべき問題であり,本件安全審査において確認した基本設計ないし基本的設計方針の合理性を左右するものではない。 なお,控訴人らは,上記JEAC4201-1970(乙81)につきJEAC4201-1986(甲259)による昭和61年の改訂に基づく試験片の個数の変更に伴い,技術基準に定められた試験片の数が増加し,変更前の規格に基づく本件原子炉の試験片の数が相対的に少なくなったことを指摘するが,この試験片の数に関する変更が,変更前の試験片の数の妥当性を否定し,脆性遷移温度の把握が不可能であることを明確に示す具体的根拠は示していない。そして,変更前の基準に従った本件原子炉の試験片の数について,現在の科学技術水準に照らして不合理な点があるという具体的な根拠は何ら示されていない。 また,控訴人らは,EFPYで13年目以降のデータの取得が行われないことに関する危険性を指摘するが,運転期間中の脆性遷移温度の変化の把握方法は上記のとおりであり,EFPYで12年までの監視試験片による脆性遷移温度の実測値に基づき,脆化予測式による脆性遷移温度の計算結果の補正を行うことによって,これを確認できるのであり,控訴人らの主張は,本件 とおりであり,EFPYで12年までの監視試験片による脆性遷移温度の実測値に基づき,脆化予測式による脆性遷移温度の計算結果の補正を行うことによって,これを確認できるのであり,控訴人らの主張は,本件安全審査の内容を正解しないものである。 ②応力腐食割れ(SCC)の有無について(控訴人らの主張)a本件安全審査当時既に判明していた中国電力島根原子力発電所- 234 -(以下「島根原発」という)における応力腐食割れ(甲22)に。 ついては,放置すれば重大なLOCAを招いた可能性が否定できないものであり,その結果,制御棒駆動水戻りノズルの設計変更をもたらし,本件原子炉も,その影響を受け本件申請に係る設計変更がされている(乙2-8-3-88頁,乙3の3-8-198頁,乙34,35。 )すなわち,本件申請においても応力腐食割れの起きやすい設計そのものの変更を余儀なくされている。そこで,応力腐食割れについては,詳細設計等によって対処すれば足りるものではなく,使用される部材,施工方法や運転方法の不備,瑕疵からでも,応力腐食割れが起きれば,原子炉の生命線ともいうべき軽水の確保に支障を来たし,事故が発生するから,応力腐食割れの観点から本件原子炉の詳細設計やその部材,施工方法や運転方法の審査が不可欠である。 そして,応力腐食割れの対策は確立されているとはいえず,詳細設計等における対処によっても十分防止することはできず,また,BWRにおいて,応力腐食割れは,続出し,今なお解決されていないから,応力腐食割れ対策を審査すべきである。 なお,福島第二原発最高裁判決が「SCC(応力腐食割れ)の防止対策の細目等にかかわる事項は,原子炉設置許可の段階における安全審査の対象にはならない」と判示しているので,むしろ応力腐食割れ対策の基本的な部分は基本設計に属する 決が「SCC(応力腐食割れ)の防止対策の細目等にかかわる事項は,原子炉設置許可の段階における安全審査の対象にはならない」と判示しているので,むしろ応力腐食割れ対策の基本的な部分は基本設計に属すると判示していると解することができる。 b(a)原子炉においては圧力容器の内張,燃料棒の自立を支えるシュラウドには腐食されにくいステンレス素材が導入されているが,応力腐食割れと思われるひび割れの兆候(インディケーション)が見つかっている。 - 235 -東京電力は,平成13年7月6日,同年4月29日から定期検査中であった福島第二原発3号機において,応力腐食割れを防止するため炭素含有量を減らしたステンレス素材SUS316Lを用いたシュラウドのほぼ全周にわたりひび割れがあるのを発見した。当該シュラウドの寸法は,外径約5.6m,高さ約6.7m,肉厚は約50㎜であり,そのひびの深さは,最大で26㎜(11). 5度付近,平均で約16㎜であり,下部リング外表面から約03㎜の深さ(極表層部)の組織にはすべり線が認められ,この範囲は粒内割れであることが確認された。通常,原発の応力腐食割れで問題となるのは,結晶の粒界に沿ってひび割れが進展する粒界型応力腐食割れであるが,東京電力は,上記福島第二原発3号機のシュラウドの極表層部の腐食は粒内型応力腐食割れと推定している。 そして,低炭素ステンレス鋼は,耐粒界型応力腐食割れに対して優れていることが確認されているが,切欠きがある場合には粒界型応力腐食割れが進展することがわかっており,応力腐食割れ対策材料の効果は極めて限定されたものである。 (b)現実には,沸騰水型原発の約4割において,炉心シュラウドの応力腐食によるひび割れ又はその兆候が現れるという事態に至っており,しかも原子力発電所がおよそ30年の稼働期間 限定されたものである。 (b)現実には,沸騰水型原発の約4割において,炉心シュラウドの応力腐食によるひび割れ又はその兆候が現れるという事態に至っており,しかも原子力発電所がおよそ30年の稼働期間を想定して安全審査を受けながら,10年も経ない経過において応力腐食割れが発生している。実際に,応力腐食割れの発生,進展を防ぐことはできないし,このような応力腐食割れの亀裂の進行を評価する具体的な方法は存在しない。 定期点検におけるシュラウドの応力腐食割れの点検は,目視検査によって行われるが,毎回の検査で検査可能なすべての溶接部- 236 -分を点検するわけではない。1回の検査で全体の約10%程度の検査を行い,各点検箇所については10年毎に検査することになっているから,その10年間に応力腐食割れが発生し進展したものについては,発見されずに原発の運転が行われることになる。 また,シュラウドのひび割れの表面が微少であれば,内部でひび割れが進展している場合でも,目視検査では発見されない可能性は十分にある。 (c)NRCは,1994年(平成6年)の文書で,炉心シュラウドの360度のひび割れが貫通した際の安全評価を行い,炉心シュラウドにおける円周360度におけるシュラウドの分断という仮定における安全影響を評価した上「最も憂慮される事故のシ,ナリオは主蒸気管の破断,再循環系の破断,そして地震である」としているから,全周にわたるひび割れが,地震により,。 炉心シュラウドの分離に至る可能性がある。 また,NRCの上記文書によると,出力と流量のミスマッチは冷却能力の不全をもたらし,炉心シュラウドが持ち上がり,それが横方向にずれるような場合には,制御棒の挿入に支障をきたすおそれが生じ,最悪の場合には燃料棒や制御棒の著しい破損に端を発する放射能放出事故が 能力の不全をもたらし,炉心シュラウドが持ち上がり,それが横方向にずれるような場合には,制御棒の挿入に支障をきたすおそれが生じ,最悪の場合には燃料棒や制御棒の著しい破損に端を発する放射能放出事故が起こり得るとしている。 さらに,炉心シュラウドのひび割れによる冷却材喪失事故のおそれがある。 すなわち,炉心シュラウドを構成する金属板が定位置からずれ,炉心(1番少ない隙間で約5㎝である)方向にずれた時,核燃料に影響を及ぼす可能性があり,しかもいくつかの燃料集合体の間を通る水の流れが遮断され,1本又は複数の制御棒が挿入できなくなってしまう可能性がある。そして,炉心に影響がなかった場- 237 -合でも,事故後に炉心シュラウドが水を保持する性能が失われてしまうおそれがある。もしもひび割れのある炉心シュラウドにおいて,内側の水も外側の水と同じ速さで漏れ出てしまったら,緊急冷却装置が機能する前に,核燃料に損傷が起きる可能性が出てくる。 (d)しかし,本件安全審査においては,炉心シュラウドの応力腐食割れを起因とするシュラウド自体の分離やずれについて,設計基準事象として想定していない。 c(a)しかも,本件原発は,我が国の原発のなかでも最も多数の再循環系配管での応力腐食割れが生じており,平成16年の原子力安全・保安院の検討結果の整理(甲429の35頁)によると,本件原子炉施設において溶接継ぎ手数で26もの溶接継ぎ手でひび割れが発見され,その欠陥が明らかとなっている。 (b)しかし,現在でも,応力腐食割れのメカニズムは,いまだ解明されていない。 すなわち,1970年代後半に海外及び我が国の沸騰水型原発においてSUS304ステンレス鋼配管の熱影響部に応力腐食割れが多発した(甲429の5頁。この応力腐食割れはステンレ)スの耐食性を高めているクロ ち,1970年代後半に海外及び我が国の沸騰水型原発においてSUS304ステンレス鋼配管の熱影響部に応力腐食割れが多発した(甲429の5頁。この応力腐食割れはステンレ)スの耐食性を高めているクロムが溶接熱影響部では鋼の強度を保つために添加されている炭素と結合してクロム炭化物となり結晶粒界に集中し,結晶粒界近傍にクロム欠乏層が生じ,これが原因となって結晶粒界に沿って割れが進展したものである(甲427の①の2頁,441の1頁等。この1970年代に多発したS)US304ステンレス鋼配管の応力腐食割れはこのように発生のメカニズムが解明され,その原因がクロム炭化物の析出によりクロム欠乏層が生じることにあったので,鋼材中の炭素含有量を低- 238 -くしたSUS304L,SUS316L等のL材(LはLowcarbon=低炭素の意味。なお,SUS316はモリブデンを添加したステンレス)が開発され,これが応力腐食割れ対策の中心となった(甲427の①の2頁,429の5頁,441の1,2頁。 )その後の1990年代後半以降,低炭素ステンレス鋼においても応力腐食割れが多発した。この応力腐食割れにおいては,大部分でクロム欠乏層が観察されないこと,粒界割れではなく粒内割れが生じ途中から粒界割れになっているなど1970年代に多発した応力腐食割れと異なるものであった。その割れの発生場所は,表面加工による硬化層や溶接部近傍の塑性ひずみによる硬化領域,炉心シュラウドでは中性子照射による硬化領域(炉心シュラウドでは中性子照射誘起偏析によるクロム欠乏層も発見された)に集中していたことから,表面加工による硬化や溶接による塑性ひずみによる硬化等が影響していると判断された(甲427の①の4)。 ないし6頁,429の13ないし17頁,441の3,4頁等そして,こ に集中していたことから,表面加工による硬化や溶接による塑性ひずみによる硬化等が影響していると判断された(甲427の①の4)。 ないし6頁,429の13ないし17頁,441の3,4頁等そして,この低炭素ステンレス鋼における応力腐食割れの発生・進展のメカニズムは現在もなお解明されていない(甲427の①6,7頁,429の18頁,54頁,441の3頁等。 )このように,我が国の沸騰水型原発においては,後記の被控訴人の主張のとおり詳細設計段階で低炭素鋼を採用し,運転管理段階で水素注入を採用しているにもかかわらず,広範に応力腐食割れが発生しているが,低炭素鋼における応力腐食割れの発生とそのメカニズムは未解明であって,運転管理を含めて有効な防止対策はできないから,再循環系配管をはじめとする圧力バウンダリが破断しないように対策を講じることは,当然に基本設計ないし- 239 -基本設計方針に含まれると解すべきである。 dしたがって,本件安全審査は,応力腐食割れに関する対策についての審査を欠如しているので,看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)a圧力バウンダリにおける応力腐食割れ(SCC)については,原子炉施設の詳細設計や具体的な工事方法及び運転管理における安全規制によって対処されるべき事柄であって,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象となるものではないことは,福島第二原発最高裁判決に照らしても明らかである。 b本件安全審査においては,本件原子炉施設の圧力バウンダリはその基本設計ないし基本的設計方針において,化学的腐食による損傷防止対策がとられ,安全が確保され得ると判断されている。 すなわち,応力腐食割れ(SCC)については,材料,応力,環境の三つの要因が影響することにより生ずることが分かっているので,本件原子炉施設につき,応 策がとられ,安全が確保され得ると判断されている。 すなわち,応力腐食割れ(SCC)については,材料,応力,環境の三つの要因が影響することにより生ずることが分かっているので,本件原子炉施設につき,応力腐食割れを起こしにくい材料であるステンレス鋼が使用され,また,腐食が起こりにくいように適切な水質管理ができる設計とされること,しかも運転開始後であっても検査によって圧力バウンダリの健全性が確認できるように設計されることを審査し,その基本設計ないし基本的設計方針においてSCCについて安全が確保され得ると判断されている。 さらに,SCCを防止する具体的な対策は,この基本設計ないし基本的設計方針に基づき詳細設計や具体的な工事方法及び運転管理による安全規制によって実現されるものである。 c控訴人らは,低炭素ステンレス鋼においても応力腐食割れについては,1970年代に多発した応力腐食割れと異なるものであると主張するが,いずれも塑性変形や中性子照射の影響が考えられ,材- 240 -料,応力,環境の3要因が影響して発生するものであって,その割れの形状も特異のものではない。 ③疲労破壊及び応力集中の有無について(控訴人らの主張)a上記(ア)③bの控訴人らの主張のとおり,平成11年7月12日に発生した敦賀2号機の冷却材漏洩事象の亀裂箇所である再生熱交換器の配管は,もともと熱疲労が問題となる場所であり,熱疲労については慎重に解析が行われた上で設計されたはずの箇所であり,供用期間中の検査をしていたにもかかわらず,12年余りで疲労破断してしまったことに照らすと,解析,設計,検査が行われているからといって,圧力バウンダリの健全性が維持されるとはいえない。 そして,近時の異常事象・事故例にかんがみ,現実に起こり得ると考えられる故障を想定した上で,東芝,日立 ,解析,設計,検査が行われているからといって,圧力バウンダリの健全性が維持されるとはいえない。 そして,近時の異常事象・事故例にかんがみ,現実に起こり得ると考えられる故障を想定した上で,東芝,日立のLOCA解析を参考にして,中小破断LCOAの事故例を解析すれば,中小破断LOCAにおいても炉心溶融事故に至る危険性があるというべきであるから,疲労破壊及び応力集中に関する審査が不可欠である。 bまた,本件原子炉施設においては,営業運転開始前の原発試験運転中(出力100%運転開始日3日目)の昭和60年5月31日,循環水配管からの海水漏洩事象にともなう出力制限を行う異常事象(復水器の配管に大穴事象)が発生した(甲347。 )すなわち,本件原子炉施設の復水器の循環水配管において,円錐状の貫通孔(内面寸法最大直径78㎜。外面寸法最大横17㎜,縦21㎜)が発生し,7トンの海水が漏洩し,応急処置のために循環水ポンプBを停止,出力を低下させた。その原因は,当該部分の塗膜が剥離し,異種金属間(チタン・鉄)の腐食電流が生じ,電食による損傷進行の貫通孔と推定された。 - 241 -この対策として,当該貫通部を切断,撤去し,当該部に母材と同一仕様の鋼板をはめ込み突き合わせ溶接を行った。溶接部について,液体浸透探傷試験,放射線透過試験を実施した。さらに,補強材近傍の塗膜を再施工し,電気防食装置としてアルミニウム合金犠牲陽極板を取り付けた。取り付け個数は,入口管,出口管各8個である。 そして,復水器が19℃の海水でタービンから来た高温水を復水し,給水系で加熱し,最高46℃の軽水として送り込む一連の経路の重要な出発点を構成していること,復水器の冷却能力が喪失すれば,給水制御器の正常な稼働が必要であり,万が一にもここでの故障が重なった場合には大事故に連なるおそれ 6℃の軽水として送り込む一連の経路の重要な出発点を構成していること,復水器の冷却能力が喪失すれば,給水制御器の正常な稼働が必要であり,万が一にもここでの故障が重なった場合には大事故に連なるおそれがあること,一方,復水器の真空度が低下した場合には,タービン・トリップとなり,このときのタービン・バイパス弁,逃し安全弁の作動如何で重大な事故もあり得ることがあるにもかかわらず,本件安全審査では全く審査された形跡がない。 この循環配水管が肉厚13㎜もの配管であるにもかかわらず,通水後わずか3日という短時間でこのような大貫通孔が発生し,しかもこの漏洩自体貫通孔(破断)による海水漏洩という事態に至るまで検知されなかった(破断前検知が実現できなかった)ことは重大問題である。この破断によってギロチン破断はあり得ないとされる他の圧力バウンダリを構成する配管,とりわけ肉厚23㎜の再循環系配管でさえも破断の確率は意外に高い可能性が考えられる。 塗膜剥がれによる異種金属間の腐食電流による貫通孔の形成という推定が正しいならば,この知見に基づく配管の健全性は,安全審査の対象とはされていないのであるから,配管の厚さや,材質,組合せ,腐食電流の可能性,必要な防止装置等の各観点から,審査をやり直す必要がある。 - 242 -cしたがって,本件安全審査は,疲労破壊及び応力集中に関する対策についての審査を欠如しているので,看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)a控訴人らの主張に係る敦賀2号機の事象は,上記(ア)③bの被控訴人の主張のとおり,機器の詳細設計ないし施工管理の段階に係わる事象であって,基本設計ないし基本的設計方針の妥当性を判断する安全審査の対象外である。また,敦賀2号機は,PWRであり,漏洩事象を発生させた内筒付き再生熱交換器は本件原子炉には 工管理の段階に係わる事象であって,基本設計ないし基本的設計方針の妥当性を判断する安全審査の対象外である。また,敦賀2号機は,PWRであり,漏洩事象を発生させた内筒付き再生熱交換器は本件原子炉には存在しないから,控訴人らの主張は失当である。 b控訴人らの主張に係る本件原子炉施設の復水器の配管の大穴事象は,配管の据付け用補強材の除去作業後の補修塗装の施工不良により,塗膜の一部が剥離し,循環水配管の管壁の一部が海水に露出したため,復水器と循環水配管との異種金属間に腐食電流が発生し,異種金属間の電食により循環水配管に貫通孔が生じたものであるから,当該事象は,循環水配管の補修作業の施工管理に属する事項であり,本件原子炉施設の安全審査に係る事項ではなく,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではない。 また,控訴人らは,循環水配管漏洩事象が重大な事故につながるおそれがあると主張するが,これ自体仮定に仮定を重ねた主張であって,安全設計審査指針が定める単一故障を正解しないものである。 そして,再循環系配管が破断する恐れがあるとも主張するが,原子炉再循環系配管と復水器入口循環水配管について,その使用環境や材質が全く異なっていることを無視するものであって,全く合理的な根拠がない。 さらに,当該事象は,国際原子力事象評価尺度(甲355の36頁)上は,安全に関係しない事象である「評価対象外」に分類され- 243 -ているので,控訴人らの主張は失当である。 ④圧力バウンダリの使用前検査及び供用期間中検査の合理性について(控訴人らの主張)a使用前の圧力容器等の母材や溶接部の欠陥(亀裂,ブローホール,溶接中のスラグ巻き込み等)の発見については,表面については液体探傷試験(2種類の液体を塗り,欠陥部分があると色がつくことから「カラーチェック」ともいう の母材や溶接部の欠陥(亀裂,ブローホール,溶接中のスラグ巻き込み等)の発見については,表面については液体探傷試験(2種類の液体を塗り,欠陥部分があると色がつくことから「カラーチェック」ともいう,人が入れない部分の表面や。)内部については超音波探傷試験,放射線探傷試験が行われる。 しかし,放射線探傷は,ブローホールなどの欠陥は見つけやすいが,より危険な亀裂状の欠陥の検出能力が劣り,超音波探傷も亀裂状欠陥の方向により検出能力が左右されるため,検出能力は板厚の10%である(甲260の23頁。 )そして,本件原子炉の圧力容器の板厚は約160㎜であるから(乙2の8-4-12頁,欠陥の検出限界はその10%である1)6㎜となるので,検出能力自体比較的大きな欠陥を見逃す危険性がある。 b社団法人日本電気協会作成に係る電気技術規程原子力編「原子炉冷却材圧力バウンダリの供用期間中検査(JEAC4205-1」974(甲41)に従えば,圧力容器の溶接部をはじめとする圧)力バウンダリの最重要部分やECCS配管,制御棒駆動水圧計配管などの重要な配管もほとんど検査をする必要がなくなる。これでは,むしろいかに検査をせずにすませるか,重要な箇所を検査しないことを正当化する基準であり,これに依拠して検査を行うこと自体危険であり不合理である。 c実際の原子炉施設に対する検査は,当時の通産省の検査官や発電設備技術協会の検査担当官も立ち会わない施工業者任せの検査であ- 244 -って検査の信用性は欠如しているから,使用前検査や定期検査で圧力バウンダリの欠陥が破断前に発見できることはない。 そして,我が国の原子力関係行政庁も検査機関も専門家も安全性を厳しく追及する姿勢に欠けており,安全審査能力に欠けているため,原子炉施設の詳細設計段階以降では,現実には対策 前に発見できることはない。 そして,我が国の原子力関係行政庁も検査機関も専門家も安全性を厳しく追及する姿勢に欠けており,安全審査能力に欠けているため,原子炉施設の詳細設計段階以降では,現実には対策が十分に行われないから,運転検査に関する事項も基本設計段階で安全審査の対象とする必要がある。 dしたがって,検査により圧力バウンダリの破断を防止し得るとした本件安全審査は,不合理である。 (被控訴人の主張)原子炉設置許可後の運転検査に関する事項については,原子炉設置許可段階で審査すべき事項ではなく,後続の安全規制に係るものであるから,控訴人らの主張は失当である。 ⑤運転期間(想定寿命)限定の有無について(控訴人らの主張)a本件処分及び本件安全審査においては,本件原子炉の運転年数,つまり圧力容器や圧力バウンダリを構成する他の機器の想定寿命を40年又は全出力運転年数(定格負荷相当年数,EFPY)を32年としていたが,具体的な運転期間を明示して制限しなかった。 bしかし,当時の通産省及び資源エネルギー庁は,老朽化原発の寿命延長のため「より合理的,効率的な設備管理」と称して,米国を中心に進められてきた破壊力学(機器に存在する亀裂の振る舞いを予測する学問)を導入して,従来維持してきた発電用原子力設備に関する構造等の技術基準告示(告示501号)の基準をも切り下げようとして,平成11年2月付けで「電気事業者の原子力発電所高経年化対策の評価及び今後の高経年化に関する具体的取組につい- 245 -て(甲311)を発表した。そして,当時の通産省及び資源エネ」ルギー庁は,同年2月ころ,稼働開始から30年が経過する福島第一原発1号機,関西電力美浜原子力発電所(以下「美浜原発」という)1号機,敦賀原発1号機の各寿命を60年に倍増することを。 承認す 」ルギー庁は,同年2月ころ,稼働開始から30年が経過する福島第一原発1号機,関西電力美浜原子力発電所(以下「美浜原発」という)1号機,敦賀原発1号機の各寿命を60年に倍増することを。 承認する見解を示した。 c資源エネルギー庁が,平成8年4月付けで作成した「高経年化に関する基本的な考え方(甲310)においては,原発の老朽化の」指摘事項(ただし,その項目)は次のとおりであったので,本件原子炉の寿命が延長されるとすれば,控訴人らその周辺住民に対する影響は大きいものがある。 (a)原子炉圧力容器i起動・停止による材料の疲労(定期的評価必要)ii中性子照射による材質の脆化),iiiステンレス鋼等の応力腐食割れ(計画的な点検・検査必要ivステンレス鋼を内張りしていない部位の腐食(b)炉内構造物(炉心シュラウド等)i起動・停止による材料の疲労(疲労限を超えるプラントにつき定期的評価必要,)ii流体振動による材料の高サイクル疲労iii応力腐食割れ(計画的な点検・検査必要)ivステンレス鋼の中性子照射脆化(計画的な点検・検査必要)(c)一次冷却材配管i疲労(定期的評価必要)iiステンレス鋼の応力腐食割れ(計画的な点検・検査必要)iii炭素鋼の腐食(肉厚測定の実施・配管の取り替え)(d)原子炉再循環ポンプ- 246 -i高温での長期間使用に伴うステンレス鋳鋼の熱時効ii疲労(疲労限を超えるプラントにつき定期的評価必要)(e)ケーブル熱・放射線による絶縁劣化(試験・評価・取り替え)(f)原子炉格納容器鋼板の腐食・結露水等による局部腐食(塗装・目視検査・再塗装)(g)コンクリート構造物i強度低下(熱,中性子照射,中性化,塩分浸透,アルカリ骨材反応(定期的な目視点検))ii 格納容器鋼板の腐食・結露水等による局部腐食(塗装・目視検査・再塗装)(g)コンクリート構造物i強度低下(熱,中性子照射,中性化,塩分浸透,アルカリ骨材反応(定期的な目視点検))ii遮蔽能力低下(ガンマ線による発熱)(h)耐震性との関係i疲労ii中性子照射脆化iii腐食iv応力腐食割れv熱時効viコンクリートの強度低下dしたがって,当時の通産省及び資源エネルギー庁の対応は本件原子炉の寿命についても延長されることにつながり,ひいては控訴人らその周辺住民の健康や安全な生活を送る権利を侵害するものであるから,具体的な運転期間を明示して制限しなかった本件処分及び本件安全審査の瑕疵は重大かつ違法である。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張はすべて争う。 (ウ)制御棒駆動系について- 247 -①制御棒駆動系の信頼性とスクラム排出ヘッダー及びスクラム排出容器の設計の合理性の有無について(控訴人らの主張)a制御棒1本ないし数本の挿入失敗は,緊急停止信号が出た場合でも制御棒駆動系の故障により生じ得るものである。 すなわち,沸騰水型原子炉では,制御棒を重力に逆らって下から上に水圧で挿入するという極めてユニークなスクラム装置となっているが,その制御棒駆動系統のうち特にスクラム・ディスチャージ・ボリュームに水が入っていると多数の制御棒で同時にスクラム失敗を生じる。 bこのような事故は,米国ブラウンズ・フェリー原発3号機において,1980年(昭和55年)6月28日,スクラム排出容器に水がたまり制御棒全体の半分の挿入に失敗して発生し,スクラム達成までに14分02秒もの長時間を要している(甲9の28ないし30頁。 )そして,我が国において,上記米国ブラウンズ・フェリー原発3号機の教訓を踏まえて,スクラム排 入に失敗して発生し,スクラム達成までに14分02秒もの長時間を要している(甲9の28ないし30頁。 )そして,我が国において,上記米国ブラウンズ・フェリー原発3号機の教訓を踏まえて,スクラム排出ヘッダーに水がたまらないようにするため,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器が直接つながる一体化構造とされるようになったのは,1982年(昭和57年)から1983年(昭和58年)であり,それまでは,そのような知見もなく工事が実施されていなかった。 したがって,本件原子炉施設は,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器は分離した状態であって,これに関する本件申請に添付の図面(制御棒駆動水圧系系統図。乙3の8-202頁)に照らしても,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器を一体化しないことを前提とした施設であるから,その制御棒駆動系の信頼性は欠如- 248 -している。 なお,福島第一原発1号機で1979年(昭和54年)7月20日に,また,島根原発2号機で平成7年1月30日にそれぞれスクラム排出容器に水がたまった状態でもスクラム排出容器水位高のスクラム信号が出ない限り運転が継続されていたので,スクラム排出容器に水がたまった場合にスクラム機能に影響を与える事態が現実に存在している。 cしたがって,スクラム排出容器に水がたまった場合にスクラム機能に影響を与える点についての検討を欠くなどした本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)aスクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器との具体的な接続方法は,詳細設計に関することであり,基本設計ないし基本的設計方針を審査する安全審査の対象とはならないことは明らかである。 b制御棒及び制御棒駆動系についての安全審査においては,(a)制御棒は,予想される運転時の異常な過渡変化を含む通常運転時,及び 設計方針を審査する安全審査の対象とはならないことは明らかである。 b制御棒及び制御棒駆動系についての安全審査においては,(a)制御棒は,予想される運転時の異常な過渡変化を含む通常運転時,及び原子炉事故時に燃料被覆管破損限界を超えることなく炉心を臨界未満にすることができる。 (b)制御棒の停止余裕は,最大反応度価値を持つ制御棒1本を完全に炉心外に引き抜いた場合でも,冷温で炉心を臨界未満にすることができ,かつ臨界未満を維持できるようにすること。 (c)制御棒には落下速度リミッタを設け,自由落下速度を0.95m毎秒以下にする。 (d)地盤における最大加速度振幅が450Galの地震動に対しても制御棒は確実に挿入できるようにする。 (e)制御棒の最大連続引抜速度は,制御棒引抜手順及び制御棒価- 249 -値ミニマイザによる制御棒の最大反応度価値の抑制とあいまって,運転員が原子炉出力を容易に制御できるような値にする。 (f)スクラム挿入速度は,全ストロークの90%挿入で3.5秒以下にする。 という設計方針が妥当であることを確認している(乙2の8-3-25ないし33頁,乙3の8-9ないし10頁,乙4の30頁)ことで十分であり,本件安全審査の内容はこれに尽きるのであって,スクラムヘッダーとスクラム排出容器の具体的な接続方法は基本設計ないし基本的設計方針の審査対象とはならないことは明らかである。 c控訴人らは,本件申請につきスクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器とが一体化しないことを前提に安全審査が行われたと主張する。 しかし,原子炉設置許可に係る申請書の記載方法については事業者に任されているのであり,そもそも指摘のあった図面については制御棒駆動水圧系の系統図すぎないものであり,機器の詳細な形状や寸法,配置を示したものでない点につき に係る申請書の記載方法については事業者に任されているのであり,そもそも指摘のあった図面については制御棒駆動水圧系の系統図すぎないものであり,機器の詳細な形状や寸法,配置を示したものでない点につき,その主張の前提を誤っている。 また,スクラムの際に制御棒が挿入されることにより排出される水は,スクラム排出ヘッダーからスクラム排出容器を通じて排出されることになるが,スクラム排出ヘッダーに水がたまっていると,制御棒を押し上げる力が弱くなる。そして,米国ブラウンズ・フェリー原子力発電所3号機において,制御棒が円滑に挿入されない事態が生じたのは,スクラム排出ヘッダーとその下流にあるスクラム排出容器を細い管で連結する構造となっていたので,水の流れが悪くなり,スクラム排出ヘッダーに水が残っていたためであり,スクラム排出容器に水がたまったことが原因ではない。 - 250 -しかも,本件原子炉施設においては,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器が直接つながる構造となっており,米国ブラウンズ・フェリー原子力発電所3号機において発生した事象が発生することは全く考えられない。 dさらに,スクラム排出容器の水位高により発生するスクラムは,運転中に,スクラム時の排水を受け入れるスクラム排出ヘッダーに水がたまってスクラム排出水を受け入れる容量がなくなり,スクラムが不可能となる状態を防ぐため,スクラム排出ヘッダー下流のスクラム排出容器の水位が高くなると自動的に原子炉をスクラムさせる設計となっているものである。 福島第一原発1号機,島根原発2号機のスクラム排出容器水位高のスクラムは,スクラム排出容器の水位が高くなったため,設計どおりに原子炉がスクラムしたものであり,控訴人らの主張する米国ブラウンズ・フェリー原子力発電所3号機で発生したスクラム排出容器に水が 高のスクラムは,スクラム排出容器の水位が高くなったため,設計どおりに原子炉がスクラムしたものであり,控訴人らの主張する米国ブラウンズ・フェリー原子力発電所3号機で発生したスクラム排出容器に水がたまった事象とは異なるものである。これらの施設の運転時においてスクラム失敗を生ずるものではなく,控訴人らの主張には,その前提において誤りがある。 ②スクラム失敗等と暴走事故について(控訴人らの主張)aタービン・トリップによる暴走事故(a)本件原子炉施設の早期炉心における過渡変化解析のうち,タービン・トリップ(タービン・バイパス弁作動)時(105%出力)の解析(乙3の10-36ないし38頁,10-79頁)によれば,解析上(スクラム成功時)の最大出力時刻は事故後0. 79秒(乙3の10-38頁の本文では約0.8秒後)時点である。 - 251 -この解析では,タービン・トリップによりタービン主蒸気止め弁が閉鎖し,この10%閉鎖でスクラムする(乙3の10-36頁。本件原子炉施設のタービン・トリップ時は,事故後0.7)9秒後において,マイナス1.00ドルのスクラム反応度が補償されることを前提として,最大出力時刻となっているから,上記解析における正の反応度投入は1.00ドルを超える。このように大きな正の反応度投入(1ドル以上)がある場合,本件原子炉施設のタービン・トリップ時(105%出力)の事故後0.79秒後時点の全反応度はプラス1.00ドルである。 そして,この時点でスクラムに失敗していれば,全反応度はスクラムにより加えられるはずのマイナス1.00ドルがなくなるので,プラス2.00ドルになる。 このタービン・トリップ時(105%出力)の事故後0.79秒時点の逆炉周期は,中性子平均寿命が43マイクロ秒(乙2の8-3-36頁,乙3の8-16 0ドルがなくなるので,プラス2.00ドルになる。 このタービン・トリップ時(105%出力)の事故後0.79秒時点の逆炉周期は,中性子平均寿命が43マイクロ秒(乙2の8-3-36頁,乙3の8-169頁,遅発中性子割合を0. )006(標準的な数値)として,(2.00-1)÷(43×10÷0.006)=139.5-6となる。つまりこの時点の原子炉周期は139.5分の1秒,すなわち0.0072秒である。 さらに,この正の反応度投入はタービン主蒸気止め弁閉による原子炉圧力の上昇による炉心のボイド減少に起因するところ,原子力圧力は事故後0.79秒時点以後も上昇を続けており,特に1.25秒時点までは極めて急激な上昇を続けているのであるから,0.79秒時点以後も更に正の反応度が投入される危険がある。 したがって,本件原子炉施設においては,タービン・トリップ- 252 -時(105%出力)に事故後0.79秒時点でスクラムに失敗していれば,全反応度は暴走事故を引き起こすに十分な数値となる。 (b)上記0.79秒時点の全反応度2.00ドルは,タービン主蒸気止め弁閉による原子炉圧力上昇に伴う炉心のボイド減少による正の反応度投入と直ちに生じるドップラー効果による負の反応度補償の合計である。 そして,事故後0.79秒時点までに原子炉蒸気流量は定格の105%から52.0%に減少しており,かつその時刻付近では急激な変動はない。原子炉蒸気流量は,炉心で発生した蒸気泡の総和であるから,炉心の冷却材流量(速度)が変化しなければ,炉心のボイド率と比例すると考え,炉心のボイド率も定格の105%から52.0%に減少したものと想定すると,本件原子炉施設の定格運転時の炉心平均ボイド率は42.0%とされるので,炉心平均ボイド率は44.1%から21.8%に減少したこと のボイド率も定格の105%から52.0%に減少したものと想定すると,本件原子炉施設の定格運転時の炉心平均ボイド率は42.0%とされるので,炉心平均ボイド率は44.1%から21.8%に減少したことになる。炉心平均ボイド率は44.1%から21.8%に減少した場合に投入される正の反応度は,反応度ボイド係数の曲線(この場合ほぼ直線)を変化前から変化後まで積分すると,(14.16×10+10.92×10)×1/2×(44. -4-41-21.8)=279.6×10-4となる。このボイド率減少による正の反応度0.02796は,遅発中性子割合を0.006とすると4.66ドルに相当する。 このような正の反応度投入があった場合,最大出力時刻までの補償反応度は,スクラムがない以上,ドップラー効果だけであり,かつ断熱状態とみなし得るので,本件原子炉施設におけるタービン・トリップ時(105%出力)に1秒程度のスクラム遅れが生じた場合の最大出力時刻まではドップラー効果により上記ボイド- 253 -率減少による投入反応度マイナス1ドルの反応度が補償されることになる。したがって,この場合には最大出力時刻までにマイナス0.02196(3.66ドル)のドップラー効果による反応度補償が生じなければならない。そして,想定したドップラー反応度係数によりドップラー効果による補償反応度がマイナス0. 02196なる燃料棒平均温度は2195℃となる。 そして,二酸化ウランペレットの熱容量は,600℃から2200℃までは360J/㎏℃とされる(甲239。熱容量は比)熱×質量であるから,これを1g当たりの比熱にして熱量の単位をカロリー(1J=0.239カロリー)にすると,0.086cal/g℃となる。 したがって,燃料棒を0℃から2195℃に温度上昇させる発熱量は 量であるから,これを1g当たりの比熱にして熱量の単位をカロリー(1J=0.239カロリー)にすると,0.086cal/g℃となる。 したがって,燃料棒を0℃から2195℃に温度上昇させる発熱量は188.77cal/g(650℃からの上昇分は132. 87cal/g)である。 (c)最大出力時刻後の出力変動を最大出力時刻前と対称形とみなすと,本件原子炉施設におけるタービン・トリップ時(105%出力)に1秒程度スクラム遅れが生じた場合の燃料棒の総発熱量の平均値は321.64cal/gとなる。これは,十分に燃料棒破裂・水蒸気爆発を生じ得る値である。 さらに,本件原子炉施設では燃料集合体内の局所ピーキング係数で1.24が想定されているから(乙3の8-164頁,発)熱量のピーク箇所は平均値の2.43倍となり得る。そして,東京電力が提出した計算上もピーキング係数を無視して半径方向と軸方向だけを組み合わせたピーキング係数(グロスピーキング係数)は1.5を大幅に上回り,11000MWd/tでは平均値の1.79倍である(乙3の8-394頁。この場合の発熱量)- 254 -の最高値は平均値の1.79倍で575.74cal/gとなる。 なお,後記のチェルノブイル事故の最大燃料エンタルピ(総発熱量)は300ないし400cal/gであるから(乙51の33頁,本件原子炉施設でタービン・トリップ時(105%出)力)に1秒程度のスクラム遅れが生じた場合には,チェルノブイル事故以上の破局的な暴走事故に至る危険がある。 (d)ところで,タービン・トリップ時にタービン・バイパス弁も作動しないと事故は更に破局的なものとなる。 東京電力の本件申請に係る解析上スクラム成功時の最大出力時刻は事故後0.86秒,この時点のスクラム信号経過時間は0. 79秒,この時点のスク ・バイパス弁も作動しないと事故は更に破局的なものとなる。 東京電力の本件申請に係る解析上スクラム成功時の最大出力時刻は事故後0.86秒,この時点のスクラム信号経過時間は0. 79秒,この時点のスクラムによる投入反応度は1ドル強であり,1秒程度のスクラム遅れが生じた場合の事故後0.86秒時点での全反応度は2ドル強である。この場合ボイド率が44.1%から14.5%まで減少したとして,ボイド減少による投入反応度は0.03541(遅発中性子割合を0.006とすると5.9ドル)となる。そして,1秒程度のスクラム遅れがあるときの最大出力時刻までのドップラー効果による補償反応度は0.02941必要であり,それに相応する燃料棒平均温度は約2888℃であって,0℃からの発熱量は248.37cal/gである。 この場合の総発熱量の平均値は440.84cal/gとなり,十分に燃料棒破裂・水蒸気爆発に至る数字である。さらに,燃料発熱量の最高値は,上記平均値の1.79倍で789.10cal/gとなり,完全に燃料棒破裂・水蒸気爆発に達する。 このような数値からすると,本件原子炉施設でタービン・トリップ時にタービン・バイパス弁不作動の場合,1秒間全く制御棒が挿入されない場合のみならず,相当程度の数の制御棒が挿入さ- 255 -れた場合でも一部の制御棒の挿入失敗で暴走事故に至る危険がある。 (e)原子力発電所では,タービン系統などの異常からタービンを守るため,極めて多種の極軽微な異常でも瞬時にタービンを自動的に停止し(タービン・トリップ,主蒸気止め弁閉鎖が生じる)ように設計されている。 本件原子炉施設のタービン・トリップは,タービン過速度(スピードオーバー,復水器真空度低下,タービンスラスト軸受摩)耗,タービン軸振動大,電気事故(発電機トリップ等,タービ ように設計されている。 本件原子炉施設のタービン・トリップは,タービン過速度(スピードオーバー,復水器真空度低下,タービンスラスト軸受摩)耗,タービン軸振動大,電気事故(発電機トリップ等,タービ)ンに送られる蒸気中の水分上昇等のほか,タービン制御油圧低,主油ポンプ(タービン主軸ポンプ)吐出圧力低,湿分分離器水位高により発生する。 そして,タービン・トリップは,原子力発電所で想定される異常状態(過渡現象)の中でも比較的発生頻度の高いものである。 我が国のこれまでの事故例に照らすと,本件原子炉施設の運転時間が40年と想定されているので,その間に少なくとも4回のタービン・トリップ,8回程度のタービン・トリップないしそれと同視し得る事態が生じることが現実的に想定される。 b制御棒挿入失敗による暴走事故(a)本件原子炉施設において,再循環系配管1本の完全破断が生じた場合,破断の生じた再循環系から冷却材が急激に流出し,炉心での冷却材(減速材)流量も急激に減少し,事故後約8.7秒で炉心シュラウド外側(いわゆるダウンカマ部)の水位がジェット・ポンプ・ノズルの位置まで下がり,炉心での冷却材流量が急激に減少し,ほとんどゼロになる。さらに,炉心シュラウド外側の水位が下がって再循環ポンプ吸込口の位置まで下がると冷却材- 256 -の上にたまっていた蒸気が破断口から流出して原子炉圧力が急激に低下し,圧力容器の下部プレナム部で減圧沸騰が生じて,下部プレナムの冷却材が炉心部に押し上げられる(下部プレナム部のフラッシング。 )本件原子炉施設の場合,事故後約12秒後の時点で下部プレナム水のフラッシングが生じるとされており(乙2の10-3-32頁,0.2秒足らずの間に炉心流量がゼロから定格の60%)まで急上昇している。 (b)この再循環系配管の完全 2秒後の時点で下部プレナム水のフラッシングが生じるとされており(乙2の10-3-32頁,0.2秒足らずの間に炉心流量がゼロから定格の60%)まで急上昇している。 (b)この再循環系配管の完全破断の際の下部プレナム部のフラッシングの際には,炉心の減速材が急増するため,本件原子炉施設のような沸騰水型軽水炉(BWR)では大きな正の反応度が投入される。この時点で原子炉がスクラムしていない場合はもちろんのこと,制御棒2本程度の挿入失敗があっただけでも暴走事故に至る危険がある。 c再循環流量制御系の誤動作による暴走事故(a)本件申請に係る本件原子炉施設の再循環流量制御系の誤作動については,過渡変化前,定格出力の68%,定格流量の50%で比較的長時間安定して運転していた場合について解析されている。 (b)本件原子炉施設の現在の設計において,再循環流量制御系の誤作動時に過渡変化後2秒時点でスクラム反応度が加えられていない場合(1秒強のスクラム遅れに相当,流量増加率が毎秒1)1%の場合,燃料棒のピーク部の発熱量は約330.58cal/gとなって水蒸気爆発が生じ,また,流量増加率が毎秒18%の場合は,燃料棒のピーク部の発熱量は約536.37cal/gとなって破局的な水蒸気爆発が発生する。 - 257 -なお,上記aのとおりチェルノブイル事故の最大燃料エンタルピ(総発熱量)は300ないし400cal/gであるから,本件原子炉施設で再循環流量制御系の誤作動による過渡変化によりチェルノブイル事故と同等ないしそれを超える事態に至る危険がある。 dしたがって,スクラム失敗等を想定していない本件安全審査は,看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)a本件安全審査においては,本件原子炉の制御棒及び同駆動系については,各制御棒及び同駆動 したがって,スクラム失敗等を想定していない本件安全審査は,看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)a本件安全審査においては,本件原子炉の制御棒及び同駆動系については,各制御棒及び同駆動系ごとにアキュムレータが設けられること,原子炉のスクラム(緊急停止)時にすべての制御棒駆動系から排出される水を貯えるスクラム排出ヘッダー及びスクラム排出容器が設けられること等から,十分なスクラム信頼性を有している。 すなわち,本件原子炉施設におけるスクラム(緊急停止)装置は,多重性,独立性,試験可能性などの観点から,確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるものと判断されており,解析に当たり想定された事象の発生に加えて,本件原子炉が所期のスクラムに失敗するような事態までを考える合理性はない。 したがって,多重性,独立性,試験可能性などの観点から,確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるものと判断されたスクラム(緊急停止)装置が,機器等の故障によって正常に作動しないものとして,過度のスクラム遅れ(又はスクラム失敗)を仮定すべき必要性はなく,また,その合理性もないというべきであり,控訴人らの上記主張は失当である。 b控訴人らの主張するタービン・トリップは,本件安全審査においては「主蒸気系の過渡変化」の一つとして想定され解析された。 - 258 -この過渡変化においては,タービン主蒸気止め弁が閉鎖すれば,主蒸気の遮断により原子炉圧力が上昇し,ボイド(気泡)がつぶれることによる正の反応度投入によって中性子束は増加する。しかし,タービン主蒸気止め弁閉スクラムによる負の反応度投入によって中性子束の増加が抑えられ,また,逃がし安全弁の作動によって圧力上昇が抑制され,事象は収束する。この過渡変化の解析に当たっては,評価結果を厳しくするため,定格出 スクラムによる負の反応度投入によって中性子束の増加が抑えられ,また,逃がし安全弁の作動によって圧力上昇が抑制され,事象は収束する。この過渡変化の解析に当たっては,評価結果を厳しくするため,定格出力の約105%での運転を仮定し,また,タービン・バイパス弁が作動しないと仮定するなどの前提条件を設定した。 その解析評価によれば,高出力運転中のタービン・トリップ時においても最小限界出力比が許容限界値を下回ることはないこと,また,表面熱流束の最大値は定格値の108%にとどまり,燃料の線出力密度は燃料被覆管の1%円周方向塑性歪に対応する線出力密度を下回っていること,原子炉冷却材圧力バウンダリの最高圧力が,本件原子炉冷却材圧力バウンダリの最高使用圧力を超えることはないとされていることなどから,燃料被覆管及び原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性は保持されるとの評価結果は,妥当なものと判断された。 なお,タービン・トリップが生じた場合でも,炉心部分では熱供給が続いているから,ボイドは発生し続けており,ボイドの発生に応じて炉内の圧力が上昇して(発生した蒸気の行き場所がなくなっ),ているため,炉内のボイドが圧縮されるにすぎない。したがって発生した蒸気が行き場所がなくなると体積が大幅に減少するかのごとく説明する控訴人らの主張,及び原子炉蒸気流量の減少がボイドの減少と比例関係にあるとする控訴人らの主張は誤りである。 また,タービン・トリップが生じた場合,まず圧力の上昇による- 259 -ボイドの減少が生じ,次いで正の反応度投入により熱発生が増加し,この熱発生の増加によってボイドが増加して,このボイドの増加によって圧力が上昇し,再び圧力の上昇によるボイドの減少が生じるという過程を時々刻々と繰り返し進行するものであり,しかも,タービン・トリップ時にお 生の増加によってボイドが増加して,このボイドの増加によって圧力が上昇し,再び圧力の上昇によるボイドの減少が生じるという過程を時々刻々と繰り返し進行するものであり,しかも,タービン・トリップ時における原子炉圧力の解析図(乙3の10-79ないし80頁,10-94ないし95頁)から明らかなように,圧力がピークに達するまでには2秒程度の時間を要している。このように,進行する事象の一部始終を時々刻々と解析すれば,全反応度が1ドルを超えて超即発臨界に至ることはなく,暴走事故が発生することはない。 c控訴人らの主張する再循環流量制御系の誤動作は,本件安全審査においては「再循環流量制御器誤作動-流量増加要求」として,,想定されて解析された。 この過渡変化においては,炉心流量の増加に伴いボイドが減少し,中性子束が増加して出力も増加するが,中性子束の増大により,中性子束高スクラム信号が発生して,原子炉はスクラムし,事象は収束する。過渡変化の解析に当たっては,評価結果を厳しくするため,原子炉は自動流量制御範囲の下限で運転中であり,主制御器の誤作動により最大となる毎秒11%の流量増加率の増加要求信号が発生した場合であると仮定するなどの前提条件を設定した。 解析評価によれば,再循環流量制御系の誤動作時においても,最小限界出力比は許容限界値を下回ることはないこと,表面熱流束は定格値の約80%にとどまること,また,原子炉圧力はわずかに上昇するにとどまり,原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力は,最高使用圧力を大きく下回るとされていることから,燃料被覆管及び原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性を保持するとの評価結果- 260 -は妥当なものと判断された。 ③タービン・トリップ発生時のスクラム遅れについて(控訴人らの主張)a上記①aの控訴人らの主張の 冷却材圧力バウンダリ等の健全性を保持するとの評価結果- 260 -は妥当なものと判断された。 ③タービン・トリップ発生時のスクラム遅れについて(控訴人らの主張)a上記①aの控訴人らの主張のとおり,タービン・トリップ発生時のスクラム遅れは1秒程度を想定すべきである。 およそどれほど緻密に設計した機器においても,具体的な設計過程,施工,保守管理を見通してなおかつ,わずか1秒程度の作動遅れが絶対にあり得ないなどという想定は非現実的である。 bしかし,本件安全審査においては,タービン・トリップ発生時の1秒程度のスクラム遅れを全く想定していない上,これにより破局的な暴走事故に至ることを見逃している。 したがって,本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)aスクラム遅れ時間は,原子炉施設の安全保護系,原子炉停止系等の基本設計ないし基本的設計方針の安全審査に係る過渡解析の解析条件の一つである。したがって,それは,安全審査に係る過渡解析の意義及び目的に適するように仮定されなければならない。 過渡解析の目的は,安全保護系,原子炉停止系等の,主として異常影響緩和系に属する構築物,系統及び機器について,異常状態においても安全確保の観点から所定の機能を果たし得ることを確認することにある。スクラムが正常に作動することを前提としてこれを行わなければ,所定の機能の確保の確認はできないのである。 原子炉施設の安全保護系,原子炉停止系の安全審査に係る過渡解析において解析条件とすべきであるのは,設計上考慮される,検出器の応答に要する時間並びに動作装置入力端子までの論理回路及び信号伝達回路の応答に要する時間の合計となる。このような前提で- 261 -解析条件として考慮されるものをスクラム遅れ時間と称している。 b本件安全審査に係る過渡解 装置入力端子までの論理回路及び信号伝達回路の応答に要する時間の合計となる。このような前提で- 261 -解析条件として考慮されるものをスクラム遅れ時間と称している。 b本件安全審査に係る過渡解析は,本件原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に係る安全性の審査の一環として行われるものである。そして,スクラム遅れ時間の長さは,機器又は回路の応答においてその仕様上技術的に生じ得る所要時間を,基本設計ないし基本的設計方針の審査の評価条件として合理的に仮定する必要があり,かつ,そうすることで足りる。 そして,タービン・トリップ時の安全保護系を構成する回路は,電気信号等を伝達するものであるから,安全保護系の回路全体の伝達に要する時間は,一般的にいって長くとも100分の1秒程度の単位の,いわば瞬時である。 したがって,控訴人らの主張する時間は,検出器の応答に要する時間並びに動作装置入力端子までの論理回路及び信号伝達回路の応答に要する時間というスクラム遅れ時間の性質上,全く現実的,合理的でなく,このようなものを設計上見込む必要のないことは明白であって,控訴人らの主張は独自の見解に立つものであり,それ自体失当である。 ④スクラム信号系について(控訴人らの主張)a本件原子炉施設では,スクラム信号系の故障に対し,いわゆる1outof 2×2(ワン・アウトオブ・トゥ・トゥワィス)方式を採用し,1種類の信号につき4つの検知器及び検出回路を設け,それを二つのチャンネルに分け,双方のチャンネルで一つ以上の信号が同時に出たときにスクラム信号となる。したがって,同一のチャンネルに属する二つの検知器ないし検出回路が故障すれば,他の二つが健全であってもスクラム信号は出ない。 - 262 -そして,検知器の感度が鈍る方向の故障は通常状態のまま不作動となる ,同一のチャンネルに属する二つの検知器ないし検出回路が故障すれば,他の二つが健全であってもスクラム信号は出ない。 - 262 -そして,検知器の感度が鈍る方向の故障は通常状態のまま不作動となるから,故障してすぐ発見されるのではなく,その検知器の信号が出るべき異常が生ずるか,スクラム回路の検査が行われるまで発見されない。したがって,運転員が気付かない状態で故障が重畳することがあり得る。 また,スクラム信号系は回路の切断(非励磁状態化)により生じるからフェイル・セイフとされるが,実際にはトリップ・ブレーカーが積極的に作動してはじめてスクラム信号が出る仕組になっているため,トリップ・ブレーカーの固着により,検知器が異常を検知してもスクラム信号が出ない事態が生じ得る(甲9の30ないし31頁。この場合も,固着は通常状態のまま動かなくなるので,当)該トリップ・ブレーカーが作動すべき異常が生ずるかスクラム回路の検査が行われるまで発見されないこととなり,このような事故は米国で現に発生している。 b本件安全審査においては,冷却材喪失事故と同時に外部電源喪失を想定するため事故と同時に原子炉が緊急停止することを前提としているが,実際の冷却材喪失事故の場合,破断と同時に緊急停止信号が出ることはあり得ない。冷却材喪失事故に対応する緊急停止信号は「ドライウェル圧力高」と「原子炉水位低」であるところ,原子炉水位は事故後約30秒時点まで低下しないとされているので(乙2の10-3-32頁,10-3-76頁,下部プレナム水)フラッシングの時点では「原子炉水位低」の信号は出ない。したがって,この場合「ドライウェル圧力高」信号以外には緊急停止信号はない。 この「ドライウェル圧力高」信号の検知器4つのうち二つで不具合を生じれば(ワン・アウトオブ・トゥ・トゥワィ 信号は出ない。したがって,この場合「ドライウェル圧力高」信号以外には緊急停止信号はない。 この「ドライウェル圧力高」信号の検知器4つのうち二つで不具合を生じれば(ワン・アウトオブ・トゥ・トゥワィス方式なので,- 263 -一方のチャンネルに属する二つの検知器が故障すれば他の二つの検知器が健全でも緊急停止信号は出ない,緊急停止せずに下部プ。)レナム水フラッシングを迎え暴走事故に至る危険がある。そして,検知器が健全でもトリップ・ブレーカーが固着した場合には,緊急停止せず,下部プレナム水フラッシングを迎え暴走事故に至る可能性がある。 c本件安全審査においては,冷却材喪失事故を解析するに当たり,上記のとおり暴走事故に至る可能性を看過するとともに,再循環系配管完全破断時に「ドライウェル圧力高」の検知器ないしトリップ・ブレーカーの故障や制御棒駆動系の故障を想定した解析を行わなかった本件申請をそのまま容認した点で看過し難い過誤・欠落がある。とりわけ,何らのスクラム遅れも,最大制御棒価値の制御棒1本の不挿入も前提にしなかったことは,現在の安全評価審査指針(甲33,乙94)Ⅱ5.2(6)に反するものであり,現在の科学技術水準から見て明らかに不合理である。 (被控訴人の反論)a本件原子炉施設の検知器及び検出回路に関する安全保護系は,一つのチャンネル中に2組の検知器及び検出回路が設けられるという多重性と,これらのうちいずれかの機器が故障した際に他の機器には影響を与えないという独立性を備えた高い信頼性を有する設計が要求され,これが確認されているものであり,一つの機器の単一故障を超えて,工学的及び専門技術的に不合理な条件である同一チャンネル内の二つの検出器や検出回路の同時故障を考慮する必要がないことは,合理的判断に基づいて設定された安全設計 であり,一つの機器の単一故障を超えて,工学的及び専門技術的に不合理な条件である同一チャンネル内の二つの検出器や検出回路の同時故障を考慮する必要がないことは,合理的判断に基づいて設定された安全設計審査指針の安全保護系に対する単一故障の要求事項からも明らかであり,控訴人らの主張は,その前提において誤りがある。 - 264 -bチャンネル・トリップ,あるいは原子炉スクラムに関連する継電器の接点の焼損又は溶着など「フェイル・セイフ」に反する方向の故障については,本件原子炉施設においては各継電器の接点を流れる電流が当該継電器の許容する定格の50%以下になるように裕度を見込んで設計することによって,その発生を防止している。 また,論理回路の継電器接点はすべて直列につながれているので,複数の継電器のうち1個でも非励磁の状態(回路の切断状態)になれば,その継電器が属している論理回路の主トリップ継電器の電源は喪失することになる。主トリップ継電器の接点は,各ソレノイド・グループ回路毎に二つずつ直列につないでいることから,仮に継電器接点が一つ故障した場合でも,スクラム動作を妨げないようにしている。 そして,単一故障を考慮しても主トリップ継電器の固着によりスクラム信号の発信に不都合が生ずる事態は想定できない。 なお,控訴人らが米国で発生したと主張するトリップ・ブレーカーは,本件原子炉とは型式の異なる加圧水型軽水炉のトリップ・ブレーカーであって,本件原子炉施設の主トリップ継電器とは全く異なるものであり,控訴人らの主張には根拠がない。 c緊急停止(スクラム)系を作動させる安全保護系は,次の方針を満足させるよう設計されている。 (a)多重性と独立性とを有する設計とし,実際に起こると考えられるいかなる単一故障によっても,その安全保護機能が妨げられないよう 作動させる安全保護系は,次の方針を満足させるよう設計されている。 (a)多重性と独立性とを有する設計とし,実際に起こると考えられるいかなる単一故障によっても,その安全保護機能が妨げられないようにする。 (b)系の遮断,駆動源の喪失においても,安全上許容される状態になるようにする(フェイル・セイフ。 )(c)通常運転においても,定期的に機能試験を行うことができる- 265 -ようにする。 具体的には,原子炉緊急停止系は,二重チャンネル,継電器方式の構成で,論理回路及びスクラム・パイロット弁のソレノイドを制御する主トリップ継電器には,特に高信頼度の継電器を用いている。 そして,チャンネル・トリップ又は原子炉スクラムに関連する継電器は,運転中はすべて励磁状態にあり,一つ以上の継電器が非励磁状態になると,その継電器が属しているチャンネルはトリップとなる。 したがって,電源の喪失,コイルの断線及び短絡又は配線の断線等の継電器の故障の大部分は,継電器自体を非励磁状態に戻し,チャンネル・トリップになるように働くので,このような回路構成は,大部分の故障条件に対して「フェイル・セイフ」となる。 なお,緊急停止信号が発生する「原子炉水位低(レベル3」は)シュラウドより高い位置に設定されており,実際には配管破断後に水位が「原子炉水位低(レベル3」に達して,原子炉水位低によ)る緊急停止信号が発生し,その後シュラウド外の水位が再循環ポンプ吸込口レベルまで達した時点で下部プレナム水フラッシングが発生するので,控訴人らの主張は失当である。 (エ)ECCS(非常用炉心冷却系)について①非常用炉心冷却系の流量を定格流量とすることについて(控訴人らの主張)a本件安全審査においては,緊急炉心冷却系のうち故障を想定するもの以外はすべて定格流量の冷却水 非常用炉心冷却系)について①非常用炉心冷却系の流量を定格流量とすることについて(控訴人らの主張)a本件安全審査においては,緊急炉心冷却系のうち故障を想定するもの以外はすべて定格流量の冷却水を注入できるという前提で解析している。 しかし,実際の緊急炉心冷却系の作動例では,美浜原発2号機の平成3年2月9日の蒸気発生器伝熱管破断事象で高圧系の流入量が- 266 -想定以下であった指摘があるほか,福島第一原発2号機の平成4年9月29日の全給水流量喪失事象では高圧注水系が定期的にほとんど注入されない状態となるように,緊急炉心冷却系が定格流量どおりに注水することを想定するのは現実的ではない。 bしたがって,非常用炉心冷却系の流量を定格流量を前提にした本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)aECCSとは,配管等の破断による原子炉冷却材喪失時に,燃料被覆管の重大な損傷を防止するに十分な量の冷却水を炉心に注入し,その冷却可能な形状を維持しつつ,炉心を冷却し,もって放射性核分裂生成物の周辺への放出を抑制するよう設計された設備をいう。 本件安全審査においては,本件原子炉施設のECCSについて,その基本設計ないし基本的設計方針が,(a)想定される配管破断等による原子炉冷却材喪失に対して,燃料及び燃料被覆管の重大な損傷を防止でき,かつ,燃料被覆の金属と水との反応を十分小さな量に制限できる設計であること(b)非常用所内電源系のみの運転下で単一故障を仮定しても,系統の安全機能が達成できるように,独立性を有する設計であること(c)定期的に試験及び検査ができるとともに,その健全性及び多重性の維持を確認するため,独立に各系の試験及び検査ができる設計であることなどが確認された結果(乙3の8-100ないし101頁,本件原)子炉施設のE 験及び検査ができるとともに,その健全性及び多重性の維持を確認するため,独立に各系の試験及び検査ができる設計であることなどが確認された結果(乙3の8-100ないし101頁,本件原)子炉施設のECCSは,確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるものと判断された(乙4の32ないし33頁。 )b美浜原発2号機において平成3年2月9日に発生した蒸気発生器伝熱管損傷事象については,再現解析の結果によって,ECCSは- 267 -設計どおりに作動し,炉心の冠水は維持され,炉心の健全性に影響はなかったことが確認されており,さらに,同事象の発生後に念のため行われた燃料集合体シッピング検査の結果からも,燃料集合体に異常は認められていないのである。したがって,同事象においてはECCSが十分な流量確保の機能を発揮したことは明らかである。 また,福島第一原発2号機の平成4年9月29日の全給水流量喪失事象については,ECCSの高圧炉心注入系の作動に際して,流量に振れがみられるものの,定格流量が確保されており,ECCSは期待どおりに作動している。 ②高圧炉心スプレイ系の故障について(控訴人らの主張)a本件安全審査では,高圧炉心スプレイ系の故障の原因につき高圧炉心スプレイ系に電源を供給する非常用ディーゼル発電機の故障においている。 しかし,近時の異常事象・事故である高圧炉心スプレイ系の故障による中小破断LOCAを想定して本件安全審査をすべきであった。 すなわち,日本原子力発電東海第二原子力発電所において,平成11年5月,定期検査中に低圧炉心スプレイ系注入弁の弁棒の破断が発見された。このように弁棒が破断した場合,弁体は弁棒をいくら動かしても動かないから注入弁を開放することは,弁棒を取り替えない限りは不可能である。そして,ECCSの注入弁は通常時閉 弁の弁棒の破断が発見された。このように弁棒が破断した場合,弁体は弁棒をいくら動かしても動かないから注入弁を開放することは,弁棒を取り替えない限りは不可能である。そして,ECCSの注入弁は通常時閉鎖されていて動かさないのであるから,この故障が発生しても定期検査で弁の点検をするまで分からないので,他の故障と重畳する危険性が高い。しかも,このような故障が高圧炉心スプレイ系で起こった場合,高圧炉心スプレイ系は1系統しかなく,注入弁も一つだけであるから,注入弁が開放不能となれば,高圧炉心スプレイ系が- 268 -全く機能しないこととなる。 このような故障が現実に発生していることからすれば,高圧炉心スプレイ系が全く機能しないという事態は十分にあり得るものとして想定すべきであった。 bしたがって,現実的ではない高圧炉心スプレイ系の故障を前提にした本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)a本件安全審査において,高圧炉心スプレイ系に給電するディーゼル発電機の故障を想定しているのであって,この想定は高圧炉心スプレイ系が全く機能しない事態も必然的に包含するのであるから,控訴人らの主張は,前提において誤りがある。 b控訴人らの主張に係る日本原子力発電東海第二原子力発電所の事象は,定期検査時の弁点検作業時の施工不良が作業後の作動試験で発見されたものであり,控訴人らが主張するように次の定期点検までの期間故障状態が続くことは,合理的に想定できるものではない。 ③自動減圧系の不作動の可能性について(控訴人らの主張)a上記(ア)③bの控訴人らの主張に係る敦賀2号機の冷却材漏洩事象は,現在の原子力発電所の設計において行われている疲労解析のレベルがなお低いことが明らかとなっているので,少なくとも,再生熱交換器のような熱疲労が厳しい配管の疲労解析 係る敦賀2号機の冷却材漏洩事象は,現在の原子力発電所の設計において行われている疲労解析のレベルがなお低いことが明らかとなっているので,少なくとも,再生熱交換器のような熱疲労が厳しい配管の疲労解析が十分でないことを想定しなければならない。本件原子炉においては,冷却材浄化系と残留熱除去系の再生熱交換器は格納容器の外側にあるため,これらの配管から冷却材が漏洩した場合,冷却材は格納容器(ドライウェル)内には流出しないから,ドライウェル圧力は上昇せず,原子炉水位低とドライウェル圧力高の両方の信号が出て初めて起動す- 269 -る自動減圧系は永久に作動しない。 もちろん,冷却材浄化系,残留熱除去系の配管の格納容器貫通部には隔離弁が設けられており,理論的にはLOCA時には隔離弁が閉鎖されることによってこれらの系統からの漏洩自体が止まることになっている。しかし,冷却材浄化系と残留熱除去系の離隔弁は原子炉水位低信号ではなく「過流量状態を検出し」自動閉止することになっている。上記敦賀2号機の冷却材漏洩事象と同様に,破断口が小さく,漏洩速度が遅い場合,過流量と検知されずに離隔弁が閉鎖しないという事態が考えられ,この場合には漏洩場所の発見に時間がかかり,運転員による離隔弁の速やかな手動閉鎖が期待できない。とすれば,再生熱交換器の配管の貫通亀裂から小破断LOCAとなり,長期間にわたり漏洩が続き(結局冷却材が喪失し)その間自動減圧系が作動しないという事態があり得ることを想定すべきであった。 bしたがって,自動減圧系の不作動の可能性を前提にしなかった本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)a再生熱交換器の具体的詳細な構造は,機器の詳細設計ないし施工管理の段階に属する事項であって,基本設計ないし基本的設計方針の妥当性を判断する安全審査の対象外 査は不合理である。 (被控訴人の主張)a再生熱交換器の具体的詳細な構造は,機器の詳細設計ないし施工管理の段階に属する事項であって,基本設計ないし基本的設計方針の妥当性を判断する安全審査の対象外の事象である。 b控訴人らの主張に係る冷却材浄化系と残留熱除去系の隔離弁は,原子炉水位低信号又は過流量状態での検出のいずれかで自動閉止するので,万一にも冷却材補給機能が働かず,水位の低下が発生,継続した場合には,原子炉水位低信号により自動閉止する。この隔離弁が自動閉止する水位は自動減圧系が作動する水位より高いため,自動減圧系の作動が必要になる水位まで低下する前に自動閉止して- 270 -おり「長時間にわたり漏洩が続き,自動減圧系が作動しない」事,態は生じ得ない。 c敦賀2号機の事象が発生した内筒付き再生熱交換器は,本件原子炉施設には存在しないものである。当該事象は,敦賀2号機の再生熱交換器が内筒を有する構造であるため,機器内の水温変動による高サイクル熱疲労により配管に亀裂が生じ,更にそれが進展したものであるから,控訴人らの主張は根拠がない。 なお,上記(ア)③bの被控訴人の主張のとおり,控訴人らは敦賀2号機の冷却材漏洩事象を中小破断の冷却材喪失事故(LOCA)であるかのように主張するが,その流出量が通常運転時に使用される補給水系にて補給できる範囲であり,ECCSの作動が必要となるほどの漏洩ではなく,事故解析で想定すべき冷却材喪失事故には至らない。 ④低圧炉心注入系の注入量減少について(控訴人らの主張)a中小破断LOCAにおいて完全に作動することが期待されている低圧注水系は,残留熱除去系の一つのモードであり,低圧注水系として作動する場合にも残留熱除去系の配管を経由して,一部は残留熱除去系の熱交換器を経由して炉心に注水するのであ 動することが期待されている低圧注水系は,残留熱除去系の一つのモードであり,低圧注水系として作動する場合にも残留熱除去系の配管を経由して,一部は残留熱除去系の熱交換器を経由して炉心に注水するのであるから,残留熱除去系の再生熱交換器の配管の損傷が発生した場合,ECCSの一つである低圧注水系の冷却材注入量は減少することとなる。また,同様に,熱交換器部分に限らず残留熱除去系の配管の一部が応力腐食割れ等により破断した場合も同じである。 bしたがって,低圧炉心注入系の注入量減少を前提にしなかった本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)- 271 -控訴人らは,低圧注水系は中小破断LOCAにおいて完全に作動することが期待されていると主張するが,そもそも中小破断事故解析においては,単一故障として,炉心冷却の観点から最も影響の大きい高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機の故障を仮定すれば足りるのであって,より影響が少ない低圧注水系には故障を仮定する必要がない。 そして,控訴人らは,これを看過した上,ECCSのうち炉心冷却の観点から影響の小さい低圧注水系についても故障を仮定するべきであると主張しているものであり,これは中小破断LOCA解析の内容を正解しないものであって,その主張の前提において誤りがある。 ⑤非常用ディーゼル発電機の冷却水漏洩事象について(控訴人らの主張)a本件原子炉施設において,昭和62年8月17日,非常用ディーゼル発電機A号機ディーゼル機関からの冷却水の漏洩が発生した。 すなわち,定格出力運転中における非常用ディーゼル発電機A号機の定例試験において,№10気筒のシリンダーヘッド部の空気抜き金具付近から漏水が発見されたため,ディーゼル発電機B号機及び高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機を起動し,冷却水を漏洩していたA号機を 機の定例試験において,№10気筒のシリンダーヘッド部の空気抜き金具付近から漏水が発見されたため,ディーゼル発電機B号機及び高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機を起動し,冷却水を漏洩していたA号機を待機除外とした。 点検結果により,№11気筒のシリンダーヘッドに小さな穴(欠陥)が発生し,漏洩した冷却水が,№11気筒の排気管にたまり,起動時に圧力の関係でガスケット及びリングがはみ出して装着され,水漏れが発生したと推定された。 この対策として,異常が発生したシリンダーの部品を交換し,発錆が認められた排気管内面は手入れを実施し,他の気筒についても点検した。そして,欠陥発生の原因と思われる加工形状(キリ穴部の曲がり)を一部変更し,曲がりが発生しにくい加工形状とした。 - 272 -なお,非常用ディーゼル発電機は,非常用炉心冷却系の重要な機器の一部を構成し,冷却材喪失事故時には直ちに自動起動しなければならない機器であり,上記水漏れの発見が遅れた場合には,非常用炉心冷却系の必要な際にディーゼル発電機の不具合に発展し,最悪の場合には発電機の不作動の可能性も考えられた。 b現実に非常用ディーゼル発電機の不作動につながりかねない欠陥に関する設計は,本来安全審査で審査されるべきであったので,本件安全審査には欠落がある。 (被控訴人の主張)a控訴人らが指摘する事象は,ディーゼル機関製造時の空気抜き穴加工時に部品が曲がって加工されたことが原因である。これは施工管理に属する事項であって,本件原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に係る事項ではないから,本件安全審査の合理性に対し何ら影響を与えるものではない。 b本件安全審査においては,非常用ディーゼル発電機を含む非常用電源設備について,外部電源喪失と機器の単一故障を仮定しても,安全上重要かつ必須の設備 査の合理性に対し何ら影響を与えるものではない。 b本件安全審査においては,非常用ディーゼル発電機を含む非常用電源設備について,外部電源喪失と機器の単一故障を仮定しても,安全上重要かつ必須の設備が所定の機能を果たすための十分な電力)。 を供給できる能力を有することが確認されている(乙4の33頁(オ)ポンプ,弁の健全性について①原子炉再循環ポンプメカニカルシールの不具合について(控訴人らの主張)a本件原子炉施設において,平成4年12月18日,再循環ポンプ(B)メカニカルシールの不具合に伴う原子炉手動停止が行われた(再循環ポンプの不安定な作動事象。 )すなわち,定格出力運転中の同年7月7日,再循環ポンプ(B)の第二段シールキャビティ圧力に変動が生じ,監視を強化していた- 273 -ところ,同年9月2日,通常値より高い値で沈静化した。しかし,同年9月24日,再び圧力変動が発生し,ドライウェル低電導度廃液サンプ出口流量が短期に微増,同年10月下旬から当該圧力が低下傾向を示し,上記流量も微増したため,メカニカルシール取替のため手動停止し,出力降下中に「再循環ポンプBシール漏洩大」の警報が発生した。 その要因の調査の結果,回転リングに2本のひび割れがあり,その原因は微細な異物の進入によるものと推定された。当該対策として,メカニカルシールを取り替え,異物混入の可能性を低減するため,工具類と作業場所の清掃を行った後据え付けを実施し,更にメカニカルシールテスタ及び制御棒駆動系フィルタについても清掃を実施した。 b再循環ポンプが炉心の最重要機器であり,ここでの故障は循環している冷却材(軽水)の温度管理,ひいては原子炉内の核分裂そのものを左右しかねない。このような重要機器の一部における圧力数値が不安定な変動を見せていたにもかかわらず, 器であり,ここでの故障は循環している冷却材(軽水)の温度管理,ひいては原子炉内の核分裂そのものを左右しかねない。このような重要機器の一部における圧力数値が不安定な変動を見せていたにもかかわらず,事業者は約5か月にわたり,運転を継続したまま,十分な点検をせず,したがって,メカニカルシールを構成するリングの一部にひび割れが発生していることも発見できなかった。上記ひび割れ2箇所は,いずれも貫通寸前の状態にあり,メカニカルシール取り替えの決断が遅れれば,リング自体が真っ二つに割れていたことが十分考えられる事態であり,しかもこのリングの材質はチタンカーバイトであって「微細な異物」にさえ結果として耐えられない材質であり,現在もそうである。 cしたがって,微細な異物にさえ耐えられないチタンカーバイトを再循環ポンプの回転リングに用いることを見逃し,このような材質- 274 -で運転継続を前提にした再循環ポンプの審査を怠った本件安全審査は不合理である。 (被控訴人の主張)a控訴人らの主張の再循環ポンプの不安定な作動事象は,原子炉再循環ポンプのメカニカルシール部の圧力が変動したため,状況を監視しながら運転を継続し,その後シール機能低下の兆しがみられたため当該メカニカルシールを交換したものであり,その機能低下の原因は微細な異物がシール部に入り込んだものと推定された(甲349。これは,運転管理に起因する事項であり,本件原子炉施設)の基本設計ないし基本的設計方針に係る事項ではないから,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではない。 b当該事象は,原子力発電所の不具合等に関する国際原子力事象評価尺度に照らすと尺度以下に位置づけられる0レベルのなかでも特に安全に影響を与えない事象とされる0-(マイナス,以下同じ)レベルに分類されるから,控訴人 子力発電所の不具合等に関する国際原子力事象評価尺度に照らすと尺度以下に位置づけられる0レベルのなかでも特に安全に影響を与えない事象とされる0-(マイナス,以下同じ)レベルに分類されるから,控訴人らが主張する「原子炉内の。 核分裂を左右しかねないもの」などに当たらず,このことからも控訴人らの主張に根拠がない。 ②タービン駆動原子炉給水ポンプ(A)出口逆止弁からの漏洩について(控訴人らの主張)a本件原子炉施設において,平成9年8月19日,タービン駆動原子炉給水ポンプ(A)の出口逆止弁からの漏洩が発生し,出力制限が行われた(給水ポンプからの水漏れ事象。 )すなわち,定格出力にて調整運転中「床漏洩「給水ポンプA,」,室」の警報が発生し,現場でタービン駆動原子炉給水ポンプ(A)出口逆止弁から給水が漏洩していることを確認し,タービン給水ポ- 275 -ンプを隔離・停止し,出力を約半分に低下させた(甲350。 )その要因の調査の結果,逆止弁プラグ部からの漏洩を発見し,弁の分解点検時の組立の際,所定の位置まで押し込まれていなかったことにより,シール機能が熱影響及び圧力変動により維持できなくなったものと推定された。 この対策として,ガスケットリングを新品にし,再組立するとともに,セット位置についての記録管理を行うよう施工要領書を改訂した。 なお,給水ポンプからの漏洩も原発における冷却材である軽水管理の一環として,復水器同様にゆるがせにはできない。 bしたがって,本件安全審査は,給水ポンプの審査を見落としており,不合理である。 (被控訴人の主張)a控訴人らの主張に係る給水ポンプからの水漏れ事象は,弁の分解点検の際の施工不良に起因するものであり(甲350,本件原子)炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に係る事項ではないから,本 主張)a控訴人らの主張に係る給水ポンプからの水漏れ事象は,弁の分解点検の際の施工不良に起因するものであり(甲350,本件原子)炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に係る事項ではないから,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではない。 b当該事象は,国際原子力事象評価尺度に照らすと尺度以下の0レベルのなかの安全に影響を与えない事象0-レベルに分類されているので,控訴人らの主張には根拠がない。 ③本件原子力発電所における本件原子炉施設以外の故障について(控訴人らの主張)a本件原子力発電所における本件原子炉施設以外の原子炉施設で発生したポンプに関する不具合として,次の3件の異常事象が発生した。 (a)本件原子力発電所6号機において,平成8年2月23日,再- 276 -循環ポンプトリップによる手動停止が行われた。 (b)本件原子力発電所3号機において,平成10年4月5日,再循環ポンプトリップによる手動停止が行われた。 (c)本件原子力発電所7号機において,平成11年7月28日,再循環ポンプ1台停止による手動停止が行われた。 bしたがって,現実にポンプに関する不具合が発生しているので,本件安全審査には欠落がある。 (被控訴人の主張)a控訴人らの主張の各事象は本件訴訟の審理対象である本件原子炉施設にかかわるものでなく,また,いずれの事象も施工管理や部品の製造管理に起因するものであり(甲355,原子炉施設の基本)設計ないし基本的設計方針に係る事項ではなく,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではない。 bこれらの事象は,いずれも国際原子力事象評価尺度に照らすと尺度の範疇に入らない0レベルのなかの安全に影響を与えない事象0-レベルに分類されていることからも,控訴人らの主張には根拠がない。 (カ)本件原子力発電所にお れも国際原子力事象評価尺度に照らすと尺度の範疇に入らない0レベルのなかの安全に影響を与えない事象0-レベルに分類されていることからも,控訴人らの主張には根拠がない。 (カ)本件原子力発電所における異常事象と本件安全審査について(控訴人らの主張)本件原子力発電所においては,昭和60年5月31日の復水器の配管漏洩事象(上記ウ(イ)②の控訴人らの主張のcのとおり,昭和62年)8月17日の非常用ディーゼル発電機の冷却水漏洩事象(上記ウ(エ)⑤の控訴人らの主張のとおり,平成4年12月18日の再循環ポンプの)不安定な作動事象(上記ウ(オ)①の控訴人らの主張のとおり,平成9)年8月19日の給水ポンプからの水漏れ事象(上記ウ(オ)②の控訴人らの主張のとおり,平成10年1月16日の燃料棒の破損事象(上記ウ)- 277 -(ア)②a及びbの控訴人らの主張のとおり,同月30日の燃料棒スペ)ーサのはずれ事象(上記ウ(ア)②a及びbの控訴人らの主張のとおり)計6件の異常事象のほか,次のとおりの異常事象が発生しているので,本件安全審査には重大な欠陥がある。 ①本件原子炉施設の異常事象a定期検査中の廃液流出事象本件原子炉施設において,平成10年10月8日,原子炉格納容器内LCW(低電導度廃液)サンプからのオーバーフローによる圧力容器弁の全閉となる事象が発生した(甲353。 )すなわち,同月6日より開始した第10回定期検査中,同月8日9時10分ころから原子炉開放点検準備のため圧力容器の水張り作業を行っていたところ,同日11時25分「ドライウェルLCW,サンプ液位高」警報,同日11時30分「ドライウェルHCWサ,ンプ流量高」警報が発生した。 その要因の調査の結果,圧力容器ヘッドベントラインからの流入によるものと推定されたので,バルブの開 W,サンプ液位高」警報,同日11時30分「ドライウェルHCWサ,ンプ流量高」警報が発生した。 その要因の調査の結果,圧力容器ヘッドベントラインからの流入によるものと推定されたので,バルブの開閉状態を確認し,同圧力容器ベント第1弁,同第2弁,同頂部ガス抜き弁が全開となっていた。この対策としてマニュアル,手順書を変更した(甲353。 )b復水器の真空度低下事象本件原子炉施設において,平成11年9月2日,復水器真空度低下に伴う出力制限となる事象が発生した(甲354。 )すなわち,本件原子炉の定格出力運転中,同日,14時16分ころ,パワーセンター1Dー1がトリップし「受電遮断トリップ,,」「母線電圧低」等の警報が発生し,その後,復水器真空度の低下により発電出力が徐々に低下し,同日14時26分に主復水器A,B,Cの各「真空度低」の警報が発生し,同日14時27分より発電機- 278 -出力を降下させた。 その要因の調査の結果,受電遮断器過電流引き外し装置変流器の巻線の一部に傷があったり,過熱による断線があったため,過電流が発生したものと推定された。この対策として,異常発生機器を交換した(甲354。 )②本件原子力発電所における本件原子炉以外の原発の異常事象(甲355)a平成3年2月21日に本件原子力発電所2号機におけるタービンの自動停止と原子炉の自動停止b平成4年5月27日に同2号機における復水器真空度低下による手動停止c平成7年1月5日の同4号機におけるタービン発電機停止と原子炉自動停止d同年7月13日の同5号機におけるタービン制御油漏洩による手動停止e平成8年2月23日の同6号機における再循環ポンプトリップによる手動停止f同年8月24日の同6号機における燃料集合体からの漏洩による手動停止g平 おけるタービン制御油漏洩による手動停止e平成8年2月23日の同6号機における再循環ポンプトリップによる手動停止f同年8月24日の同6号機における燃料集合体からの漏洩による手動停止g平成10年4月5日の同3号機における再循環ポンプトリップによる手動停止h同年8月29日の同6号機における継電器動作による自動停止i平成11年3月31日の同7号機における燃料集合体からの漏洩による手動停止j同年5月25日の同6号機における発電機励磁装置故障による自動停止- 279 -k同年7月28日の同7号機における再循環ポンプ1台停止による手動停止(被控訴人の主張)①a控訴人らの主張に係る定期検査中の廃液流出事象は,定期検査中,原子炉開放点検の準備において,主蒸気配管及び原子炉圧力容器の水張り作業中に閉じるべき弁を閉じなかったために,当該弁を通って主蒸気配管内の水が,原子炉格納容器内LCW(低電導度廃液)サンプに流入し,同サンプから床にあふれ出たものである。当該事象は,操作員の作業の引継ぎが不適切であったことに起因し,運転管理に係る事項であるから,本件原子炉施設の安全審査に係る事項ではなく,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではない。 また,当該事象は,国際原子力事象評価尺度に照らすと尺度以下の0レベルのなかの安全に影響を与えない事象である0-レベルに分類されているので,控訴人らの主張は失当である。 b控訴人らの主張に係る復水器の真空度低下事象は,電源系の過電流を検知する変流器の一つに異常が発生したため,気体廃棄物処理系の弁操作を行う制御盤に給電している非常用電源盤の受電遮断機が作動し,これにより弁が閉じたことから,復水器内のガス抽出が行われなくなり,復水器の真空度が低下したものである。当該事象の原因は,変流器の巻 操作を行う制御盤に給電している非常用電源盤の受電遮断機が作動し,これにより弁が閉じたことから,復水器内のガス抽出が行われなくなり,復水器の真空度が低下したものである。当該事象の原因は,変流器の巻線に製造段階で傷が発生したことにあると推定されるから,品質管理にかかわるものであり,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではない。 また,当該事象は,国際原子力事象評価尺度に照らすと,尺度以下の0レベルのなかの安全に影響を与え得る事象0+(プラス)レベルに分類されているので,控訴人らの主張は失当である。 ②控訴人らの主張に係る本件原子力発電所における本件原子炉以外の- 280 -原発の異常事象は,本件訴訟の審理の対象となる本件原子炉施設にかかわるものでなく,いずれも原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に係る事項ではないから,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではない。 (キ)TMI事故と本件安全審査について(控訴人らの主張)①米国ペンシルベニア州スリーマイル島にあるTMI原発のうちTMI2号機(加圧水型原子炉)において,昭和54年3月28日4時ころ,主給水ポンプ2台の同時停止,3系統ある補助給水ポンプ出口弁の開け忘れ,加圧器逃し弁の開放固着,人的要因を含んだECCSの性能低下,蒸気発生器の漏洩,キャヴィテーションによる冷却材ポンプの使用不能等の故障が次々と加わった多重故障事故が発生した(TMI事故。 )TMI事故においては,TMI2号機のLOCAの冷却水喪失口となった加圧器逃がし弁は,重要な機器とは当時認識されていなかった上,加圧器水位計が最も肝心な時に原発運転員に全く逆の情報を与えることなどは夢想だにされていなかったので,原発運転員には過失はなかった。 すなわち,指示信号であっても,指示があればそのとおりに機器は作 加圧器水位計が最も肝心な時に原発運転員に全く逆の情報を与えることなどは夢想だにされていなかったので,原発運転員には過失はなかった。 すなわち,指示信号であっても,指示があればそのとおりに機器は作動していなければならず,指示どおりに機械が作用するとは限らないとなれば,いかなる操作も無駄であるから,原発運転員が,TMI事故当時に加圧器逃がし弁の開閉表示が「閉」であったので,現実には弁が開放固着していたとしても,弁が閉止したものと判断したことはやむを得ないというべきである。しかも,加圧器水位計の針は振り切れるが,圧力は低いという状況の冷却材喪失状態があることについては,通常想定されておらず,手順書には記載されていなかった。ウ- 281 -エスチングハウス社のPWRのECCSの起動信号は,それまでは圧力低と加圧器水位低の同時信号とされており,圧力低しかし加圧器水位高などという冷却材喪失状態があるなどとは,数十年間のPWRの安全研究過程で誰も思い至らなかったものであるから,原発運転員においては,このような事態を正しく掌握することは極めて困難であった。 なお,こうした極めて困難な状況下で,それでも原発運転員らは,事故後2時間20分にして,加圧器逃がし弁の開放固着状態を探り当て,これを閉じ冷却材の流出を止めたので,TMI原発2号機はメルト・スルーを免れた。 ②事故原因の多くは,事故が発生してはじめてその問題性が認識される。あらかじめ事故の原因,経過を想定し尽くしてこれに対する万全の対策を講ずることは不可能である。機器の構造,機能にはなお多くの隠された弱点,盲点があると考えなければならないし,原発運転員らの心理,行動形態の有り様を見極めることにも自ずと限界がある。 そして,大きな事故には複合的要因によるものが多く,共通の原因で複数設けられて れた弱点,盲点があると考えなければならないし,原発運転員らの心理,行動形態の有り様を見極めることにも自ずと限界がある。 そして,大きな事故には複合的要因によるものが多く,共通の原因で複数設けられていた機器の機能が同時に失われたり,機器の故障や人間の判断の誤りなどが複雑に作用しながら発展させていくもので,TMI事故はその典型的なパターンである。 原発の安全確保のため人間に重要な役割を期待せざるを得ないのであれば,人間は必ず誤ることがある,その自明のことを忘れることがあってはならない。多様にあり得る人的要因事象に対して,原発の安全が確保されているかどうかが慎重に確認されなければならない。かかる吟味を抜きにして原発の安全が確認できるものとは到底考えることができず,また,運転マニュアルのあり方とか原発運転員の日常的な心構えといった問題も,大事故の重要な人的因子として見過ごすこ- 282 -とはできない。 このように考えると,現実の事故の原因やその経過が,基本設計に属することなのか詳細設計以降あるいは運転管理に属することなのかは重要な問題ではない。実際の事故は,普通の運転管理状況において,そして十分なチェックがなされているはずの詳細設計,工事施工に起因して発生し,あるものは,一定水準以上の技術,能力を持った原発運転員の必死の努力にもかかわらず,大事故へと発展しているので,こうした現実を見た安全審査がなされるべきである。 しかし,我が国の原子炉設置許可における安全審査は,原子炉停止系や緊急冷却装置は,単一故障はあっても,最終的にはすべて有効に機能を発揮することとされている。TMI事故では,人為的因子が大きく左右して,ECCSが十分作用し得ずにメルト・スルーの瀬戸際に至ったのであるから,こうした事態を想定して事故分析を行うべきであるにもかかわ 揮することとされている。TMI事故では,人為的因子が大きく左右して,ECCSが十分作用し得ずにメルト・スルーの瀬戸際に至ったのであるから,こうした事態を想定して事故分析を行うべきであるにもかかわらず,本件安全審査においては,このような事故分析を行っていない。 ③したがって,本件安全審査には欠陥がある。 (被控訴人の主張)TMI事故は,具体的な運転管理に係る事項であって,原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に係る安全性の確認を目的とする安全審査の対象となる事項ではないから,控訴人らの主張は理由がない。 (ク)チェルノブイル事故と本件安全審査について(控訴人らの主張)①a旧ソ連ウクライナ共和国の首都キエフの北方約130㎞に位置するチェルノブイル原発の4号機(黒鉛を減速材,軽水を冷却材とする黒鉛軽水冷却沸騰水型原子炉)において,1986年(昭和61年)4月26日1時23分40秒,同炉を完全に停止させるための- 283 -制御棒挿入ボタンが押されたが,その直後の同日1時24分,原子炉内の出力の上昇を抑制することができず,原子炉が核暴走して2ないし3回爆発する事故が発生した(チェルノブイル事故。 )b1986年(昭和61年)8月の旧ソ連の「チェルノブイル原発事故に関する経過報告書(乙50)においては,被ばく線量(外」部被ばくのみ)は平均でプリピアチで0.03シーベルト(3レム,ほぼ同じ距離のチトゴロフカでは0.43シーベルト(43)レム,避難民13万5000人の集団被ばく線量は1万6000)人・シーベルト(160万レム)と報告されていた。また,同報告書では,事故処理は,放射能を石棺に閉じこめほぼ終了し,消防士と原発職員約300名が病院に収容されたが,31人が死亡し,避難民13万5000人の放射線障害は認められなかった されていた。また,同報告書では,事故処理は,放射能を石棺に閉じこめほぼ終了し,消防士と原発職員約300名が病院に収容されたが,31人が死亡し,避難民13万5000人の放射線障害は認められなかったとし,更にチェルノブイル事故の原因を,原発運転員の規則違反による人為ミスとしていた。そして,我が国の原子力安全委員会もこの報告を承認する形で,昭和62年5月28日付けの「ソ連原子力発電所事故調査報告書(乙51)において「設計における多重防護の適用」,における脆弱性を背景としつつ,運転員の多数のかつ重大な規則違反により,設計者が予想しなかったような危険な状態に原子炉を導いた結果発生した」としていた。 しかし,1991年(平成3年)1月に旧ソ連工業原子力安全監視国家委員会が旧ソ連最高会議に提出した「チェルノブイル事故の原因と事故状況に関する報告書」においては,チェルノブイル事故の原因を,従来発表されていた原発運転員の規則違反による人為ミスであったことを否定し,原子炉の構造的欠陥,とりわけその制御棒システムの欠陥にあったことを報告している。 そして,国連の当時のガリ事務総長が1995年(平成7年)9- 284 -月に国連総会へ提出した国連人道擁護局報告書では,ウクライナ,ベラルーシ,ロシアの3か国において事故により何らかの影響を受けた人は約900万人にのぼり,約37万5000人が避難民生活を続け,また,1km2当たり5キュリー以上の汚染地域に住む700万人の70%以上が精神的障害を抱え,しかも,汚染除去作業者は約80万人であって,各種癌の危険にされされ,かつ発癌の恐怖に苦しんでおり,事故処理に関係した作業員のうち,ロシアだけで約7000人が自殺を含め様々な原因で死亡していると報告されている。さらに,国連がベラルーシで行った統計調査では, れされ,かつ発癌の恐怖に苦しんでおり,事故処理に関係した作業員のうち,ロシアだけで約7000人が自殺を含め様々な原因で死亡していると報告されている。さらに,国連がベラルーシで行った統計調査では,子供の神経,知覚関連の異常発生が43%増え,同じく骨,筋肉の異常も62%増え,また,14歳以下の子どもの甲状腺癌は事故前の20年間で21件しか記録されなかったものが,事故から9年間で379件と急増していることが報告されている。 さらに,1996年(平成8年)4月,ウイーンで行われたチェルノブイル事故10周年国際会議において,経済協力開発機構(OECD)報告において,事故で放出された放射能放出量は事故当初の推計の3,4倍にのぼり,事故後多発している小児甲状腺癌の原因物質として有力視されているヨウ素131の放出量は当初推計の6.8倍になると報告された。そのほかの専門家グループも,汚染地域での659人に上る小児甲状腺癌の原因は事故の放射能であると報告し,今後の癌死亡者数はロシア,ベラルーシ,ウクライナの3か国で6660人とする予測も提出された。 また,今後も事故後の被害は収まりそうになく,晩発性障害や遺伝子への影響など人体汚染も深刻であって,長期低線量被ばくの問題が本格化するおそれがあり,終わりのない悲惨な状況にある。 cチェルノブイル事故の原因は,(a)異常な低出力での運転,(b)- 285 -反応度操作余裕の重要さの認識欠如,(c)制御棒そのものの構造的欠陥であることが判明している(原審における証人P4の証言。 )とりわけ,チェルノブイル原発の制御棒は,本体(6.2m)の下部に中性子を吸収する水を排除するために(中性子を有効に活用するために)中性子を減速させる黒鉛棒(4.55m)が位置しているので,制御棒が全部引き抜かれている状態から, 御棒は,本体(6.2m)の下部に中性子を吸収する水を排除するために(中性子を有効に活用するために)中性子を減速させる黒鉛棒(4.55m)が位置しているので,制御棒が全部引き抜かれている状態から,反応を止めるために制御棒を挿入していくと,炉心底部の1.25m部分の水が排除されて,黒鉛が入り,その部分で反応が上がるという事態が発生する。このポジティブ・スクラムによる正の反応度投入が出力上昇に寄与した。 ②本件原子炉施設においても,上記ウ(ア)③aの控訴人らの主張に係る大破断LOCAの危険性,同(ウ)①aの控訴人らの主張に係るタービン・トリップによる暴走事故及び同(ウ)①bの控訴人らの主張に係る制御棒挿入失敗による暴走事故等の可能性があるので,原子炉設置許可の安全審査の際には,チェルノブイル事故と同様の事故が想定されるべきである。 そして,安全審査における立地評価は,現実の事故事象と離れて,重大事故,仮想事故を公衆との離隔の目安のために想定し,念には念を入れて公衆の安全を守ろうという趣旨なのであるから,放射線災害のうち最大に生じる事故を目安とすべきであり,また,事故防止対策における事故想定とは切り離して,更に安全確保のために万が一の事故をも想定し,本件原子炉と構造が異なるチェルノブイル原発の事故の教訓を生かすべきである。 ③したがって,チェルノブイル事故は,現実の事故であるからこそ,本件安全審査に反映されなければならず「万が一の事故」に備えた,安全審査こそ,伊方原発最高裁判決がいう「現在の科学水準に照ら- 286 -し」た安全審査である。チェルノブイル事故の可能性とその災害評価を具体的に検討していない本件安全審査は,重大な過誤,違法がある。 (被控訴人の主張)①控訴人らの主張は,そもそもチェルノブイル原発の4号機と本件原子 る。チェルノブイル事故の可能性とその災害評価を具体的に検討していない本件安全審査は,重大な過誤,違法がある。 (被控訴人の主張)①控訴人らの主張は,そもそもチェルノブイル原発の4号機と本件原子炉との設計,構造等に関する基本的な相違をことさら無視するものであり,失当である。 すなわち,控訴人らの主張に係るチェルノブイル事故の原因であるポジティブ・スクラムは,そもそも本件原子炉施設のような沸騰水型原子炉では存在しない。そして,チェルノブイル事故の原因は,多重防護の適用が十分でない設計を背景としつつ,原発運転員が設計者の予想もしなかったような危険な状態に原子炉を導いたことに加え,低出力下では反応度出力係数が正となる設計,つまりすべての出力領域において固有の自己制御性を有さない設計であること,及びこのような炉特性に対応した原子炉緊急停止装置の設計が不十分であったことにある。 ②本件原子炉施設の安全審査においては,原子炉の基本設計ないし基本的設計方針として,原子炉に異常な反応度が投入され,核分裂反応が異常に急上昇する事象に対しては,すべての出力領域で反応度出力係数が負となること,また,本件原子炉施設の原子炉緊急停止装置は,制御棒の位置,炉心の燃焼状態等について最も厳しい条件とし,その上で更に制御棒一本の挿入失敗を仮定してもなお,原子炉の緊急停止に必要な負の反応度添加率が確保できることを確認しており,更に多重防護についても十分考慮されていることを確認している。 このように本件安全審査においては,何らかの理由で主蒸気系の弁が急速に閉鎖し,原子炉圧力が急上昇するような場合,具体的には,圧力上昇の観点から最も厳しい発電機負荷遮断等について解析評価を- 287 -行い,燃料被覆管及び圧力バウンダリの健全性が確保され,控訴人らが主張するような暴 が急上昇するような場合,具体的には,圧力上昇の観点から最も厳しい発電機負荷遮断等について解析評価を- 287 -行い,燃料被覆管及び圧力バウンダリの健全性が確保され,控訴人らが主張するような暴走事故には至らないことを確認している。 しかも,本件処分に際しての安全審査において,本件原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に関し,チェルノブイル事故の要因となった前提条件が存在しないものの,厳しい条件を仮定した反応度投入事象を想定して十分に安全性が確保されることを確認している。 ③したがって,チェルノブイル事故の発生は,本件安全審査の合理性に何ら影響を与えるものではなく,控訴人らの主張はその前提において失当である。 (ケ)運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析の合理性の有無について①シビアアクシデント(過酷事故)について(控訴人らの主張)a現実の事故が示すのは,二重三重の安全確保対策がとられているにもかかわらず,被告行政庁が想定した過渡変化,事故事象をはるかに上回る大事故に至るケースがあること,そして周到に準備された安全保護設備や防護設備さえ無効ならしめる場合があるという事実である。原発の技術,システム,その知見にはなお多くの未知の領域が存し,これを確立した技術はない。実際の事故では,安全装置の共倒れや将棋倒し的トラブルの伝播,事象の相互作用によって,事故は予想外の展開を示し,さらに,これに人間の判断,操作が加わることで,事態は一層複雑かつ困難なものとなる。TMI事故及びチェルノブイル事故は,シビアアクシデントという言葉を生み出した。 このシビアアクシデントは「設計基準を超えて炉心損傷を生じ,るような事故」であって「過酷事故」ともいわれ,欧米では,原発設備,とりわけ格納容器に対する設計改善を実施してきた。チェル- 288 。 このシビアアクシデントは「設計基準を超えて炉心損傷を生じ,るような事故」であって「過酷事故」ともいわれ,欧米では,原発設備,とりわけ格納容器に対する設計改善を実施してきた。チェル- 288 -ノブイル事故を契機に,スウェーデンでは,全原発12基に過酷事故の際に格納容器に大量の水を噴射して炉心を冷却する代用スプレイのシステムを取り付け,それでも圧力上昇が抑えられない場合に備えて,内部の高圧蒸気ガスをガス抜きするためのフィルタシステムを設置するなどしている。そして,この対策は,当時の西ドイツ,)。 フランスでも導入が始まり,米国も検討を始めている(甲196我が国においては,当初はチェルノブイル事故を契機にした改善策がとられておらず,原子力安全委員会も昭和62年5月28日付けの「ソ連原子力発電所事故調査報告書(乙51)において,シ」ビアアクシデント対策として何らの対策も改善も必要がないという態度に終始していた。しかし,原子力安全委員会原子炉安全基準専門部会は,平成4年に過酷事故(シビアアクシデント)に対して,),欧米同様の設備を格納容器改善策として提言したので(甲197我が国の原発においても,シビアアクシデントを想定した事故防止対策が必要となり,原子炉の設計変更を余儀なくされるに至った。 そこで,本件原子炉においては,(a)シビアアクシデントを想定した事故防止対策が必要であるのに,その対策がとられていないこと,(b)設置許可処分の段階も,その後の段階もシビアアクシデントの審査を欠いていることの二つの重大な瑕疵がある。 bシビアアクシデントの対策として,原子炉安全基準専門部会共通問題懇談会は,平成4年2月17日付け「シビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントに関する検討報告書-格納容器対策を中心として-(乙7 シデントの対策として,原子炉安全基準専門部会共通問題懇談会は,平成4年2月17日付け「シビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントに関する検討報告書-格納容器対策を中心として-(乙71)を発表し,アクシデントマネー」ジメントとして,(a)設計基準事象を超え,炉心が大きく損傷するおそれのある事態が万一発生したとしても,現在の設計に含まれる安全余裕や安全設計上想定した本来の機能以外にも期待し得る機能- 289 -又はそうした事態に備えて新規に設置した機器等を有効に活用することによって,それがシビアアクシデントに拡大するのを防止するための対策(フェーズⅠのアクシデントマネージメント又はシビアアクシデント拡大防止策,(b)万一,シビアアクシデントに拡大)した場合にもその影響を緩和するためにとられる措置(フェーズⅡのアクシデントマネージメント又はシビアアクシデント影響緩和策)を指摘している。 そして,原子力安全委員会は,上記「シビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントに関する検討報告書-格納容器対策を中心として-」を受けて,同年5月28日付けで「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて(乙70)を発表し,具体的方策と」して,(a)今後新しく設置される原子炉施設については,当該原子炉の設置許可等に係る安全審査(ダブルチェック)の際に,アクシデントマネージメントの実施方針(設備上の具体策,手順書の整備,要員の教育訓練等)について行政庁から報告を受け,検討すること,(b)運転中又は建設中の原子炉施設については,順次,当該原子炉施設のアクシデントマネージメントの実施方針について行政庁から報告を受け,検討すること,(c)(a)及び(b)の際には,当該原子炉施 (b)運転中又は建設中の原子炉施設については,順次,当該原子炉施設のアクシデントマネージメントの実施方針について行政庁から報告を受け,検討すること,(c)(a)及び(b)の際には,当該原子炉施設に関する確率論的安全評価について行政庁から報告を受け検討することを定めた。 そこで,東京電力は,平成6年3月に「柏崎刈羽原子力発電所1号機のアクシデントマネジメント検討報告書」を出し,(a)原子炉停止機能,(b)原子炉及び格納容器への注水機能,(c)格納容器からの除熱機能,(d)安全機能のサポート機能の観点からアクシデントマネジメント策を講じているが,いずれも対策が抽象的で実際に- 290 -は不十分である。 しかも,(a)確率論的安全評価に対しては,起こり得るあらゆる事故発生経路が実際に網羅されているという保証がない,(b)各構成要素の信頼性に関するデータの根拠が不完全である,(c)設計上の誤りによる結果をすべて網羅し適切に評価することができない,(d)共通原因による事故モードを完全に取り扱うことが困難である,(e)人間の誤操作は気まぐれな要素が避けられないが,危険度の分析においてその評価が不確実である,(f)サボタージュ(意図的な事故誘発行為)の危険の評価を行い得ないことの批判があるのであって,原発事故において確率論的安全評価は誤っている。確率の概念は何度も起こる現象についてはじめて適用できる概念であって,原発事故には妥当しないものであり,原発事故により無限大の損害を被る控訴人ら住民にとって全く役に立たない。 c米国では,1989年(平成元年)に確率論的安全評価で個別プラントを検査した。そして,次世代軽水炉の設計については,シビアアクシデント対策として,水素の生成,燃焼対策,炉心デブリの冷却性確保のための設計,高圧炉心溶融放出の 元年)に確率論的安全評価で個別プラントを検査した。そして,次世代軽水炉の設計については,シビアアクシデント対策として,水素の生成,燃焼対策,炉心デブリの冷却性確保のための設計,高圧炉心溶融放出の抑制緩和対策,格納容器の一定レベルの機能において具体的な基準を設け,対策を要求している。 ドイツは,1986年(昭和61年)から1987年(昭和62年)にかけて,フィルタ付き格納容器ベント設備の基本要件を決め,各電力会社に設置を勧告した,そして,1994年(平成6年)7月に成立した改正原子力法により,事実上原発の新規立地は困難になっている。 フランスは,1989年(平成元年)ころまでに,フィルタ付き格納容器ベント設備をすべての原発に配置した。そして,次世代型- 291 -原発のプラントの設計に当たり,シビアアクシデント対策として,設計段階で圧力容器の破砕を伴う炉心のメルトダウンを考慮すること,シビアアクシデントのシナリオに沿った緊急時対応計画を確立すること,環境への放射性物質放散の観点から,重要核種手段を検討することなどを産業界に勧告することにした。 イギリスは,1992年(平成4年)に「原子力発電所に対する安全評価原則」を改訂し,次世代型原発プラントの設計に対する要求条件を明確化し,評価に当たっては確率論的評価と決定論的評価を組み合わせている。 このように諸外国でも新規原発は,シビアアクシデント対策抜きには考えられず,設計段階からの規制が明らかとなっている。 dしたがって,シビアアクシデント発生の蓋然性は明白であって,その対策は不可欠であるから,シビアアクシデントの発生を想定しなかった本件安全審査は違法である。 (被控訴人の主張)aシビアアクシデントは,設計基準事象を大幅に超える事象であって,安全設計の評価上想定された手段では適切 ら,シビアアクシデントの発生を想定しなかった本件安全審査は違法である。 (被控訴人の主張)aシビアアクシデントは,設計基準事象を大幅に超える事象であって,安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却又は反応度制御ができない状態であり,その結果,炉心の重大な損傷に至る事象のことであるから,基本設計ないし基本的設計方針に係る安全確保対策を含めた安全規制上の措置が要求されているものではない。 b原子力安全委員会の平成4年5月28日付け「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」は,我が国の原子炉施設の安全性が現行の安全規制の下で十分確保されており,シビアアクシデントが工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性が十分低くなっ- 292 -ているものと判断されるということを前提としながらも,この低いリスクを一層低減するものとしてアクシデントマネージメント(設計基準事象を超え,炉心が大きく損傷するおそれのある事態が万一発生したとしても,現在の設計に含まれる安全余裕や安全設計上想定した本来の機能以外にも期待し得る機能又はそうした事態に備えて新規に設置した機器等を有効に活用することによって,それがシビアアクシデントに拡大するのを防止するため,若しくはシビアアクシデントに拡大した場合にもその影響を緩和するためにとられる措置)の整備を促進することは意義深いものであるとし,原子炉設置者及び行政庁に対してそのために一層の努力を要望したということにとどまるものである(乙70。 )当該対応方針は,原子力安全委員会の判断によって,原子炉設置許可の際の安全審査に関して何らかの新たな基準等が策定され,シビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントが審査の対象となるに至っ 該対応方針は,原子力安全委員会の判断によって,原子炉設置許可の際の安全審査に関して何らかの新たな基準等が策定され,シビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントが審査の対象となるに至ったというものではない。そして,アクシデントマネージメントは,安全審査の一環として行われるものではなく,原子力安全委員会が原子炉設置者に要望してその努力の結果を確認するものであるから,これらの審査が行われていないことをもって,本件安全審査が違法であるとする控訴人らの主張は失当である。 c上記「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」については,平成9年10月20日,その一部が「詳細設計段階以降速やかに,アクシデントマネージメントの実施方針について行政庁から報告を受け,検討することとする(乙136)と改訂されており,当該アク。」シデントマネージメントが本件処分時の安全審査事項でないことは明らかである。また,本件原子炉施設を含む既存軽水型原子力発電- 293 -所のアクシデントマネージメントの実施方針については,平成7年12月7日,原子力安全委員会により了承されているとおりであるから(乙137,控訴人らの主張は誤りである。 )②火災事故における安全性について(控訴人らの主張)a動燃の東海再処理工場アスファルト固化処理施設において,平成9年3月11日に動燃事故が発生したが,この1階で起こったと想定されている爆発で2階の別のセル(A235保守エアロック室)の壁が破壊され,3.8tもの鉄製の板(リムーバブルルーフ)が吹き飛ばされ,爆発で大きく変形したドアが施設外にまで吹き飛ばされた上,3階までの窓ガラスの大半が割れて吹き飛んで放射性物質の閉じこめ機能が完全に喪失し,施設内外で3 製の板(リムーバブルルーフ)が吹き飛ばされ,爆発で大きく変形したドアが施設外にまで吹き飛ばされた上,3階までの窓ガラスの大半が割れて吹き飛んで放射性物質の閉じこめ機能が完全に喪失し,施設内外で37名の作業員が被ばくし,施設外にセシウム,プルトニウム,アメリシウム等の放射性物質が大量に漏洩し,我が国の原子力史上最悪の事故となった。 この事故は,再処理工場の末端の,安全審査で爆発など全く想定されず,潜在的危険性も小さいと考えられてきた施設でもこのような大規模な爆発事故が発生し得ることを示しており,潜在的な危険が極めて大きい原発で事故が発生した場合,どれほどの悲惨な事故になるかを示唆している。 そして,安全審査において,火災・爆発事故の対応及び放射性物質の密封機能が机上の空論であり,これにつき実質的審査が行われていない。このため,動燃事故を契機に被告行政庁には安全審査能力が欠落していることが明らかとなっている。 b本件安全審査においては,抽象的に消火設備を設けることのみを確認したにとどまり,本件原子炉における火災事故については全く- 294 -事故解析を行っていない(乙3の10-100頁。 )しかし,本件原子炉に対する上記のような抽象的な防火対策では火災の拡大を防止することはできない。 すなわち,消火設備が存在するだけでは,火災から重大な事故に至ることを防ぐことはできず,その消化設備の種類の適切性,消火能力(容量等,自動消火・手動消火の選択,消火作業場所の安全)確保といったことに立ち入らなければ消火の実効性を何ら確保することはできない。 本件安全審査は,動燃事故の教訓から見直しをしなければならない。 cしたがって,火災事故の評価を一切しなかった本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)a動燃事故は,本 本件安全審査は,動燃事故の教訓から見直しをしなければならない。 cしたがって,火災事故の評価を一切しなかった本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)a動燃事故は,本件原子炉施設とは全く異なる分野の再処理施設で発生した火災であり,しかもその発生原因は,当該施設固有の特性に基づくものであるから,控訴人らの主張はその前提において誤りがある。 b本件原子炉施設においては,火災発生防止,早期火災検知並びに早期消火,必須の安全機能が火災により損なわれないことの三つの),原則を組み合わせて設計されている(乙3の8-35頁。そして安全上重要な構築物,系統及び機器は,可能な限り不燃性・難燃性材料で構成することとされ,特にケーブルについては,難燃性ケーブルを使用するとともに,必要に応じ,延焼防止塗料を併用するとされている上,安全保護系,原子炉停止系,残留熱除去系,工学的安全施設などの安全上重要な系統及びこれらのケーブル,配管は,独立性を持たせるため物理的分離を図り,適切な離隔距離をとり,- 295 -又は必要に応じて障壁を設けることとされている。これらの物理的配置の設計方針と,消火設備及び消火水配管の設計を総合的に組み合わせ,単一火災発生により,重複性,独立性を持つ両系統が同時のその機能が損なわれることのない設計とすることなど,火災に対)。 する対策が十分に講じられている(乙3の8-48ないし49頁このため,火災発生により本件原子炉施設の安全性が損なわれることはなく,火災が原子炉の安全評価で想定する事故の誘因になること,及び事故を拡大することは考えられない(乙3の10-100頁。 )c本件安全審査においては,本件原子炉施設に対する火災対策により,本件原子炉施設が火災により安全機能を損なうことがないことを と,及び事故を拡大することは考えられない(乙3の10-100頁。 )c本件安全審査においては,本件原子炉施設に対する火災対策により,本件原子炉施設が火災により安全機能を損なうことがないことを確認し(乙4の27頁,火災が原子炉の安全評価で想定する事)故の誘因になること,及び事故を拡大することは考えられないため,事故解析の対象事象として火災を考慮する必要はないことも明らかである。 ③JCO事故について(控訴人らの主張)a上記(1)イ(ウ)の控訴人らの主張のとおり,原子炉設置許可時の安全審査では,過渡変化等の解析に当たり単一の故障のみを想定する単一故障指針が用いられてきたが,JCOの事故の発生を考慮すると,従来のような事業者への信頼に基づく安全審査では足りず,安全装置の意図的なバイパスをも想定して多重故障を想定すべきである。 bJCO事故に照らすと,本件安全審査における最大想定事故の想定があまりにも過小であり,非現実的であることが裏付けられている。 - 296 -cしたがって,本件安全審査には看過し難い瑕疵がある。 (被控訴人の主張)JCO事故は,規制法第3章に規定される「加工の事業」を行う施設における事故であり,本件安全審査で審査の対象となる原子炉施設の安全性に係る基本設計ないし基本的設計方針とは何ら関係がない。 (コ)検査能力等の有無について(控訴人らの主張)①日立の子会社の株式会社日立エンジニアリングサービスの更に下請業者である株式会社伸光は,昭和57年ころから約15年間にわたり,溶接後に行う焼鈍という熱処理の際の温度記録をねつ造していたところ,平成9年9月16日,これが内部告発により発覚した。これまで同社において上記焼鈍を請け負ったのは,沸騰水型原発18基であって,主としてタービン系統の配管であった。こ 温度記録をねつ造していたところ,平成9年9月16日,これが内部告発により発覚した。これまで同社において上記焼鈍を請け負ったのは,沸騰水型原発18基であって,主としてタービン系統の配管であった。このように約15年間もの間,上記ねつ造を発見できなかったのは,指定検査機関と当時の資源エネルギー庁の責任であるから,これを統括する経済産業省には,当該検査を行う能力がないことが明らかである。 ②英国BNFL(イギリス原子燃料公社)において,日本政府に対し,平成11年11月8日,ペレット外径データのねつ造の疑いがあるMOX燃料が関西電力高浜原発(以下「高浜原発」という)4号機の。 燃料に使用されていることを明示する書簡を送付していたことが判明した。しかし,経済産業省は,このねつ造の事実について,不正を積極的に解明しようとせず,可能な限りそれを隠蔽して検査を通そうとしているので,その検査能力が欠如していることが明らかである。 ③美浜原発3号機の建設に際し,平成12年2月18日,建築業者がコンクリートに大量の水を加えたので,設計基準強度を下回る危険があることが判明した。しかし,経済産業省は,この加水について,検- 297 -査等では明らかにできなかった上,何らの発表もせず,その対策も講じていないから,規制法所定の安全審査においても,検査能力を欠いていることが明らかである。 ④したがって,被告行政庁は,規制法24条1項4号所定の検査能力を欠いている上,原子炉設置許可段階の安全審査において,その基本設計の安全性にかかわる事項のみを審査対象に限定することは不合理というべきであるから,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)原子炉設置許可の段階の安全審査においては,当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするのみならず 不合理というべきであるから,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)原子炉設置許可の段階の安全審査においては,当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするのみならず,被告行政庁の検査能力は,規制法24条1項4号の安全審査の要件とはなっていないから,控訴人らの主張は失当である。 (サ)想定される飛来物に対する設計上の考慮について(控訴人らの主張)①イスラム原理主義者により2001年(平成13年)9月11日に敢行された米国ニューヨークの世界貿易センター及び米国国防総省(ペンタゴン)対する乗っ取り旅客機による自爆テロは,現代建築の粋をこらした超高層ビルや国家の威信にかけて頑強に建築された建物ですら,旅客機の激突には耐えられないことが判明した。そして,近時のFBI(アメリカ連邦捜査局)の調査では,更にイスラム原理主義者はTMI原発を標的にしていた可能性があった。 我が国にもイスラム原理主義者が入国しており,また,当時タリバン幹部は日本も米国に協力するなら攻撃対象であると明言していた。 ②安全設計審査指針(乙14)は,その「指針5飛来物等に対する設計上の考慮」として「安全上重要な構築物,系統及び機器は,想定される飛来物,配管のむち打ち又は流出流体の影響等から生じるおそ- 298 -れのある動的影響,熱的影響又は溢水によって原子炉の安全を損なうことのない設計であること」とされ,原子力委員会が当該指針に付記した「解説」によれば「飛来物」には「航空機の墜落」が含まれる,ことが明記されている。 東京電力は,昭和52年7月12日付けの本件補正(乙3)において「航空機落下については,当発電所近くには飛行場がなく,発電,所上空の航空機は巡航状態であり,巡航中の航空機落下は考慮する必要がない(乙3の8-47頁 年7月12日付けの本件補正(乙3)において「航空機落下については,当発電所近くには飛行場がなく,発電,所上空の航空機は巡航状態であり,巡航中の航空機落下は考慮する必要がない(乙3の8-47頁)として航空機落下を全く考慮して。」いない当初の設計を変更しなかった。そして,本件安全審査においても「航空関係については,本件原子炉敷地周辺には飛行場はなく,,最寄りの空港は,新潟空港で本件原子炉敷地から約75㎞離れている。 本件原子炉敷地の東約5㎞及び西約20㎞離れた位置の上空にはそれぞれ新潟-名古屋間及び新潟-小松間を結ぶ国内線の航空路があり,本件原子炉敷地上空は前者の保護空域とされている。保護空域は,計器誤差,風による影響等により航空機が指定のコースからずれることを考慮して,航空機を保護するため設けられる空域であるので,原子炉施設上空を航空機が飛行することは極めて稀であると考えられる。 さらに,保護空域となっている本件原子炉敷地上空を飛行する民間機の航空便数,機種等についての調査結果を考慮すると航空機の墜落による原子炉施設への影響については確率的に見て考慮する必要はないと判断する(乙4の75頁)と審査された。 。」しかし,本件原子炉敷地からわずか5㎞地点の上空に定期航空路があるので,計器の誤差や風の影響で民間航空機が墜落し本件原発に対し影響を与えることを全く考慮しないことは不当である。 ③我が国の原子力施設の安全審査において,ω10の核燃料サイクル施設では,航空機墜落事故が評価されている。 - 299 -すなわち,航空機墜落による原子炉施設への影響は,航空機の全体重量による衝撃荷重で建物が大きく崩落する全体破壊と,航空機のうち剛性の高いエンジン部分が建物の壁を貫通する局部破壊に分けられる。そして,Degen式は,鉄筋コンクリー 施設への影響は,航空機の全体重量による衝撃荷重で建物が大きく崩落する全体破壊と,航空機のうち剛性の高いエンジン部分が建物の壁を貫通する局部破壊に分けられる。そして,Degen式は,鉄筋コンクリート壁に飛来物が衝突した場合の貫通限界厚さを飛来物直径,飛来物重量,衝突速度,飛来物(先端の)形状係数及び壁のコンクリート圧縮強度の関数とする経験式であるが,これを実験結果に合わせて修正した上,ω10の核燃料サイクル施設の安全審査において計算方法として用いられている。当該計算により,三沢基地配備の戦闘機のうちF1とF16のみについて検討されたところ(甲389,衝突速度は150m/秒,コンクリー)ト圧縮強度は設計強度が240㎏/cmを前提に模擬実験が行われ (甲390,柔飛来物低減係数を0.75とした場合貫通限界厚さ)は約80㎝と評価されている(甲389。そして,エンジンについ)ての飛来物形状係数は0.84が採用され,貫通限界厚さはF1で90.75㎝,F16で99.10㎝と考えられている。 本件原子力発電所の3号機の原子炉建家のコンクリート圧縮強度は330㎏/cmとされているので(甲392,本件原子炉も同じ) と考えられる。そして,Degen式に従い,飛来物形状係数を0.84とした場合で航空機B777-300では,貫通限界厚さは180㎝以上に及ぶものである。 本件原子力発電所の3号機の原子炉建家の外壁は地上部分で最も厚い部分でも厚さ75㎝であり,同屋内の原子炉棟の壁も地上部分では厚さ80㎝であって,中央制御室の天井の厚さは50㎝であり,これ)。 らと本件原子炉も大差がないと考えられる(甲393の①ないし④この程度の壁厚,天井厚であると,ハイジャックされた航空機による自爆テロが敢行された場合,原子炉建家の壁及び天井は全体破壊す これ)。 らと本件原子炉も大差がないと考えられる(甲393の①ないし④この程度の壁厚,天井厚であると,ハイジャックされた航空機による自爆テロが敢行された場合,原子炉建家の壁及び天井は全体破壊す- 300 -ると予測される。そして,少なくともエンジン部分の貫通を評価した場合,原子炉建家の壁,天井を貫通することは避けられず,放射性物質の漏洩を伴う深刻な事故に至ることになる。 ④したがって,安全設計審査指針(乙14)において航空機の墜落等を考慮すべきとされているにもかかわらず,漫然と航空機墜落の確率は無視し得るとして,航空機墜落に対する防護設計をしていない本件原発の設計を容認した本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)①a安全設計審査指針(乙14)は「指針5.飛来物等に対する設,計上の考慮」において「安全上重要な構築物,系統及び機器は,想定される飛来物(中略)の影響等から生じるおそれのある動的影,響,熱的影響又は溢水によって原子炉の安全を損なうことのない設計であること」とされているのであり,ここでいう「想定され。 る」とは,原子炉施設の設計の妥当性を評価する観点から,原子炉施設で生じ得る各種の事故事象を包絡し,代表する事象が安全評価上考慮すべき頻度で発生すると考えることをいう(乙14)ので」あって,本件原子炉施設の安全設計において,本件原子炉施設に航空機が墜落することを必ず考慮することを求めているわけではない。 b本件安全審査においては,当時の安全設計審査指針のうち「指針5.飛来物等に対する設計上の考慮(乙14の985頁)に基づ」き,そもそも航空機墜落が本件原子炉施設の安全設計の妥当性を評価する上において考慮すべき事象となり得るかの検討が行われた。 そして,本件原子炉施設の社会環境について,本件原 14の985頁)に基づ」き,そもそも航空機墜落が本件原子炉施設の安全設計の妥当性を評価する上において考慮すべき事象となり得るかの検討が行われた。 そして,本件原子炉施設の社会環境について,本件原子炉敷地周辺に飛行場はなく,最寄りの空港は,新潟空港で本件原子炉敷地から75㎞離れている。本件原子炉敷地の東約5㎞及び西約20㎞離れた位置の上空にそれぞれ新潟-名古屋間及び新潟-小松間を結ぶ- 301 -国内線の航空路があり,本件原子炉敷地上空は,前者の保護空域とされていることが確認された。 原子力施設付近の上空の飛行については,できる限りこれを避けるよう,運輸省(現国土交通省)及び防衛庁から運航者に指導等がなされているとともに,航空法(昭和27年法律231号)81条に規定する最低安全高度以下の飛行についての許可はされないこととなっている上に,航空法73条の2に基づき,機長は出発前に航空情報等を確認しなければならないことも確認された。 cさらに,本件原子炉施設の航空機墜落の安全性については,社会環境から考えて原子炉施設上空を航空機が飛行することは想定し難く,まして本件原子炉施設に航空機が墜落する可能性は極めてまれであると考えられ,また,保護空域となっている本件原子炉施設上空を飛行する民間機の航空便数,機種等について調査を行った結果を考慮しても,航空機の墜落による原子炉施設への影響については確率的にみて考慮する必要はないと判断された(乙4の26及び27頁。 )②a本件原子炉施設は,規制法等に基づき原子炉による災害の防止上支障がないよう十分な安全確保対策が施されると本件安全審査において確認されたのであり,放射性物質の閉じ込め等のために多重防護の考え方に基づいた設計上の考慮がされるとともに,地震等の通常想定すべき外的事象についても安全 安全確保対策が施されると本件安全審査において確認されたのであり,放射性物質の閉じ込め等のために多重防護の考え方に基づいた設計上の考慮がされるとともに,地震等の通常想定すべき外的事象についても安全性が損なわれることがないように設計されており,相当程度の堅固な構造を有する施設である。 b控訴人らの主張に係る自爆テロについては,それが起こることについての確たる根拠がない上,そもそもテロ行為に対する安全対応は,我が国全体の治安維持等にかかわる問題である。規制法は,平和利用のための原子炉において災害が引き起こされることがないよ- 302 -う求めるものであって,本件安全審査においては「想定される飛,来物」としてこのようなテロ行為による航空機を想定する必要はない。 ③したがって,本件原子炉施設へ航空機が墜落する確率は十分小さいことが確認され,航空機の墜落を「想定される飛来物」として,設計上考慮する必要はないと判断されているのであって,控訴人らの主張は,安全設計審査指針の趣旨を正解しないものであるから失当である。 (シ)燃料体に対する本件各変更許可処分の違法事由について①現在の設計の9行×9列型燃料の破裂について(控訴人らの主張)a本件原子炉において使用する燃料は,本件処分(当初設計)においては8行×8列型燃料であったが,その後,本件各変更許可処分により,新型8行×8列型燃料,新型8行×8列型ジルコニウムライナ燃料,高燃焼度8行×8列型燃料と変更され,現在の設計では9行×9列型燃料が採用されている。 この燃料の変更の主要な目的は,燃料の装荷から取替までの間の単位ウラン量当たりの累積発熱量(累積発電量)を増大させる「高燃焼度化」によるコスト削減にある。この設計上の燃料の燃焼度は,当初設計の8行×8列型燃料では平均約27500MWd 荷から取替までの間の単位ウラン量当たりの累積発熱量(累積発電量)を増大させる「高燃焼度化」によるコスト削減にある。この設計上の燃料の燃焼度は,当初設計の8行×8列型燃料では平均約27500MWd/t,最高約35000MWd/tとされていたが,新型8行×8列型燃料では平均約29500MWd/t,最高約40000MWd/t,新型8行×8列型ジルコニウムライナ燃料では平均約29500ないし33000MWd/t,最高約40000MWd/t,高燃焼度8行×8列型燃料では平均約39500MWd/t,最高約50000MWd/t,現在の設計の9行×9列型燃料では平均約45000MWd/t,最高約55000MWd/tとなっている。な- 303 -お,設置変更許可申請書上の9行×9列型燃料の炉内最大滞在期間は8年である。 核燃料の燃焼が進むと燃料被覆管が中性子の照射,酸化及び水素吸収により延性が低下し(つまり脆くなり,他方,被覆管内の燃)料ペレットはガス状の核分裂生成物の蓄積により膨れ,更に出力急上昇時に膨れ量が増加して燃料破損を生じやすくなる。 つまり,出力急上昇を招くような過渡変化(反応度の投入)があった場合に燃料破裂を生じやすくなり,燃料破裂による圧力波の発生,その圧力波の大きさが圧力容器の吸収限界を超えたときの圧力容器破裂という事態が生じやすくなる危険性がある。 b反応度事故(暴走事故)の際に燃料の発熱量がどのレベルに達したときに燃料破損を生じるかについては,日本原子力研究所のNSRR(NuclearSafetyResearchReactor・原子炉安全性研究炉)実験により,健全な燃料については285cal/gが燃料ペレットの溶融による破損の限界とされている(甲395の255頁。 )もっとも,この数値は単独の燃料棒による実験によ or・原子炉安全性研究炉)実験により,健全な燃料については285cal/gが燃料ペレットの溶融による破損の限界とされている(甲395の255頁。 )もっとも,この数値は単独の燃料棒による実験によって得られたものであり,NSRR実験では実際の燃料により近いバンドル体系(複数燃料棒の組み合わせ)の場合破損限界が15%低下する結果が得られているため(甲395の254頁,健全な燃料の破損限)界,圧力波発生限界は上記の数値から15%を落とした約240cal/gと評価されている(甲395の256頁。なお,燃料被)覆管の穴あき等により内部に冷却水が侵入したいわゆる浸水燃料については,単独燃料棒の場合で90cal/g,バンドル状態で6)。 5cal/gが破損限界と考えられている(甲395の257頁cこれに対し,燃焼の進んだ燃料においては,燃料破損限界となる燃料発熱量が著しく低下することが近年の研究により明らかになっ- 304 -た。 これまでBWR燃料について燃焼の進んだ燃料に反応度を加えて破損に至るか否かの実験は,アイダホ国立工学研究所のSPERT-CDC実験及びPBF実験,日本原子力研究所のNSRR(研究用原子炉の略称)実験が行われているのみである(甲396,397。 )このSPERT-CDC実験においては,31800MWd/tの燃焼度において燃料発熱の増加分(当初発熱量は差し引く)85cal/gで燃料が破損した(甲396の1025頁,1034頁。同じ実験で32700MWd/tの燃焼度で燃料発熱の増加)分143cal/gで破裂したものもある(甲396の1034頁。また,PBF実験では,燃焼度わずか5100MWd/tの)燃焼度においても燃料発熱140cal/g弱(増加分で120cal/g程度)で燃料破裂に至ったものがあった( もある(甲396の1034頁。また,PBF実験では,燃焼度わずか5100MWd/tの)燃焼度においても燃料発熱140cal/g弱(増加分で120cal/g程度)で燃料破裂に至ったものがあった(甲396の1025ないし1026頁,1035頁。更に,NSRR実験におい)ては,1997年(平成9年)までの実験では,BWR燃料については敦賀原発1号機で使用した燃料(7×7燃料,燃焼度26000MWd/t)で5回,福島第一原発3号機で使用した燃料(新型8行×8列型ジルコニウムライナ燃料,燃焼度約45000MWd/t)で2回の実験が行われたが,敦賀原発1号機の燃料では燃料発熱の増加分55ないし98cal/g,福島第一原発3号機の燃料では燃料発熱の増加分60又は120cal/gでは燃料破損は生じなかった。 その後,日本原子力研究所において引き続きNSRRによる実験が行われ,近時その結果が発表されているが(甲397,燃焼の)進んだ燃料については通常燃料よりも著しく低い燃料発熱で燃料破- 305 -損に至ることが明らかとなっている。 そして,燃焼の進んだ燃料における反応度事故模擬実験での破損がペレット-被覆管機械的相互作用(PCMI)による破損である(甲397)ことから,破損に影響を与える主要な要素は,燃料被覆管の肉厚(肉厚が大きいほど燃料被覆管が破損しにくい)及び燃料被覆管と燃料の間の空隙(ギャップ(ギャップが大きいほど燃)料ペレットが膨張しても被覆管に力が加わらないので破損しにくい)であると考えられる。 d9行×9列型燃料は,高燃焼度8行×8列型燃料と比較して,被覆管の肉厚は2割弱程度薄く(高燃焼度8行×8列型燃料は約0. 86㎜,9行×9列型燃料はA型が約0.71㎜,B型が約0.70㎜,ギャップは同じ(いずれも約0.20㎜)であ ×8列型燃料と比較して,被覆管の肉厚は2割弱程度薄く(高燃焼度8行×8列型燃料は約0. 86㎜,9行×9列型燃料はA型が約0.71㎜,B型が約0.70㎜,ギャップは同じ(いずれも約0.20㎜)である。したが)って,9行×9列型燃料の方が高燃焼度8行×8列型燃料よりも燃焼が進んだ場合のPCMI破損に強いとはいえない。 また,本件原子炉において9行×9列型燃料の平均燃焼度は約45000MWd/t,最高約55000MWd/tとされているが,ここでいう「最高」とは燃料集合体平均の最高であって,燃料ペレットとしての最高燃焼度はこの場合でも75000MWd/tに達するのである(甲396の1013頁。したがって,平均燃焼度)が約45000MWd/tとなる本件原子炉の現在の設計における燃料取替の時期には,燃焼度約61000MWd/tを超える燃料ペレットが相当量生じている。 eよって,現在の設計の9行×9列型燃料は破裂を生じやすいものであるので,当該燃料体に対する本件各変更許可処分は違法であるから,本件処分が違法となる。 (被控訴人の主張)- 306 -a本件処分と本件各変更許可処分とは別個の行政処分であり,それぞれの処分の要件適合性を認めた被告行政庁の認定判断の内容が異なるから,本件原子炉施設の設置変更許可処分は審理の対象とはならない。 b(a)燃料体に対する本件各変更許可処分に係る安全審査においては,9行×9列型燃料の燃料集合体に関し,各構成要素が,原子炉内における使用期間中を通じ,通常運転中及び運転時の異常な過渡変化においても,燃料棒の内外圧差,燃料及び他の材料の照射,負荷の変化により起こる圧力・温度の変化,化学的効果,静的・動的荷重,燃料ペレットの変形,燃料棒内封入ガスの組成の変化等を考慮しても十分な強度を有し,その機能が保持 外圧差,燃料及び他の材料の照射,負荷の変化により起こる圧力・温度の変化,化学的効果,静的・動的荷重,燃料ペレットの変形,燃料棒内封入ガスの組成の変化等を考慮しても十分な強度を有し,その機能が保持できる設計であることを確認している。また,その強度は,燃料被覆管の肉厚だけでなくその他の要因によっても決まるものであるが,9行×9列型燃料体については,燃料被覆管の肉厚は薄くなる一方で,燃料被覆管に加わる応力が小さくなっていることをもって,これが特に破損しやすいというものではない。 (b)9行×9列型燃料では,燃料被覆管肉厚の変更が行われているが,ペレットのスエリングを考慮しても,ペレット-被覆管機械的相互作用に影響を与えないことが実験により確認されている(乙140の849ないし850頁。 )(c)さらに,ペレットの変形等に基づく燃料被覆管の局所的な歪みによる損傷を減少させる対策としては,高燃焼度8行×8列型燃料と同様に,短尺チャンファ付きペレットの使用,延性の大きなジルコニウムを内張りした燃料被覆管の採用等が行われている(乙140の859頁。 )(d)したがって,9行×9列型燃料においても高燃焼度8行×8- 307 -列型燃料と同様にペレット-被覆管機械的相互作用が問題になることはない。 ②現在の設計の9行×9列型燃料による暴走事故の危険性について(控訴人らの主張)a(a)本件原発の現在の炉心設計(9行×9列型燃料)のうち9行×9列型燃料(A型)についての発電機負荷遮断・バイパス弁不作動(取替炉心)の過渡変化解析に基づき検討し,スクラム遅れ時間を0.5秒として考えると,過渡変化開始前の原子炉出口蒸気重量率は17.00%,炉心平均ボイド率は47.97%となり,定格よりも低い炉心流量で定格の105%の出力を確保するため, スクラム遅れ時間を0.5秒として考えると,過渡変化開始前の原子炉出口蒸気重量率は17.00%,炉心平均ボイド率は47.97%となり,定格よりも低い炉心流量で定格の105%の出力を確保するため,蒸気重量率及び炉心平均ボイド率は通常運転時より高くなっている(原子炉蒸気流量=炉心流量×原子炉出口蒸気重量率となるのであるから,少ない炉心流量で定格の105%の蒸気流量を確保するためには,当然,原子炉出口蒸気重量率が通常運転時より高くなる必要がある。 )(b)過渡変化0.5秒時点においては,発電機負荷遮断が発生すると,タービンを守るため,タービン蒸気加減弁が急速閉止し,その結果原子炉圧力が急上昇する。この場合に原子炉の蒸気を逃がすためのタービンバイパス弁が作動しなければ,原子炉圧力の上昇は更に厳しくなる。原子炉圧力が急上昇すると炉心のボイドが急速に消滅し,原子炉出力が急上昇する。本件安全審査に提出され,是認された過渡変化解析では,タービン加減弁は0.075秒で急速閉止するとされ,スクラム遅れ時間は0.08秒とされている。 そこで,発電機負荷遮断・バイパス弁不作動の際の0.5秒後の炉心平均ボイド率を計算すると27.21%となる。 - 308 -(c)本件原発の現在の炉心設計において,炉心平均ボイド率が48.0%から27.2%まで減少した場合のボイド減少による投入反応度は,サイクル末期では本件原発の現在の炉心のボイド反応度係数から{-9.45)+(-7.7}÷2×(48. ,()0-27.2)×10=0.0178となる。 -4(d)原子炉出力のピークまでにドップラー効果により補償されるべき反応度はここから1ドル,すなわち遅発中性子比率を差し引いた値となる。本件原発の現在の炉心設計では,サイクル末期の遅発中性子比率は約0.005 炉出力のピークまでにドップラー効果により補償されるべき反応度はここから1ドル,すなわち遅発中性子比率を差し引いた値となる。本件原発の現在の炉心設計では,サイクル末期の遅発中性子比率は約0.0053であるから,発電機負荷遮断・バイパス弁不作動・スクラム0.5秒遅れの際に原子炉出力のピークまでにドップラー効果により補償されるべき反応度は,0. 0178-0.0053=0.0125である。 そして,本件原発の現在の炉心設計での早期炉心のドップラー効果のグラフから,0.011の反応度を補償した場合の燃料温度は1170℃となる。加えて,二酸化ウラン(燃料棒。甲270)の比熱データによれば燃料温度を通常運転温度(520℃)から1170℃まで上昇させるのに必要な熱量は47.067cal/gとなり,更に反応度事故の際には温度上昇時と下降時の発熱はほぼ対称形であること,通常運転温度での燃料の熱量が約30.935cal/gであることから,この事故時の燃料の発熱量の平均値は,30.94+47.07×2=125.07cal/gとなる。 (e)燃料の平均発熱量が125.07cal/gに達したときの圧力容器への影響を考えると,燃焼が進んだ核燃料に関する近時の知見によれば,燃焼が進んだ核燃料は反応度投入があって発熱した場合には70cal/g前後,62cal/g程度で破裂す- 309 -ることが判明している。 そうすると,本件原子炉において,燃焼が進んだ段階で発電機負荷遮断,タービンバイパス弁不作動の過渡変化が発生し,その際に0.5秒程度のスクラム遅れがあった場合には,炉心平均でみて125.07cal/gもの発熱を生じるのであるから,燃料の大半は破裂することなになる。 そして,燃料破裂が生じる場合のエネルギーの変換係数及び圧力波(衝撃圧力)による機械的エネ は,炉心平均でみて125.07cal/gもの発熱を生じるのであるから,燃料の大半は破裂することなになる。 そして,燃料破裂が生じる場合のエネルギーの変換係数及び圧力波(衝撃圧力)による機械的エネルギーについて計算すると,破裂する燃料の発熱量を平均の125.07cal/gでみても(実際には発熱量の大きなものから順に破裂するのであるから実際に生じる機械的エネルギーがこれより大きくなることは明らかである,燃料の半分が破裂した場合の機械的エネルギーは圧。)力容器が吸収し得るエネルギーの26倍以上,燃料の1割が破裂した場合ですら圧力容器が吸収し得るエネルギーの5倍以上の機械的エネルギーが発生することになる。 このような場合,圧力容器が破壊されて破局的な大事故となることは明らかである。 b(a)発電機負荷遮断は発電機の比較的軽微なトラブルでも発生し,更に送電線の切断(落雷等により比較的簡単に発生する)によ。 っても発生するものであり,原子力発電所のトラブルとしてはかなり頻度の高いものである。そして,タービンバイパス弁の不作動は,当初の安全審査でもその後の安全審査でも一貫して想定されているものであり,安全審査の基準でも発電所の寿命期間中に十分起こり得るものである。控訴人らの想定はこれにわずか0. 5秒程度のスクラム遅れ(スクラム失敗)を追加したものに過ぎない。なお,控訴人らが主張する0.5秒程度のスクラム遅れ- 310 -(スクラム失敗)が技術的には起こり得ることは明らかである。 (b)控訴人らが主張する0.5秒程度のスクラム遅れを考慮することが決して非現実的でも解析上不要な要求でもないことは,本件安全審査において是認された過渡変化解析でも,原子炉圧力高スクラムについては0.55秒のスクラム遅れが考慮され,原子炉水位低スクラムについ とが決して非現実的でも解析上不要な要求でもないことは,本件安全審査において是認された過渡変化解析でも,原子炉圧力高スクラムについては0.55秒のスクラム遅れが考慮され,原子炉水位低スクラムについては1.05秒のスクラム遅れが考慮されていることからも明らかである。 (c)したがって,控訴人らが主張する発電機負荷喪失・バイパス弁不作動,スクラム0.5秒遅れという事態は原子炉の寿命期間中に起こる可能性が十分にある。 cよって,現在の設計の9行×9列型燃料による暴走事故の危険性があるので,当該燃料体に対する本件各変更許可処分は違法であるから,本件処分が違法となる。 (被控訴人の主張)a上記①の被控訴人の主張のaと同じ。 b(a)スクラム遅れ時間は,原子炉施設の安全保護系,原子炉停止系の安全審査に係る過渡解析における解析条件の一つであり,設計上考慮される,検出器の応答に要する時間並びに動作装置入力端子までの論理回路及び信号伝達回路の応答に要する時間の合計になる。 このため,各スクラムに要する時間はそれぞれ異なっており,原子炉水位低については水位計で,原子炉圧力高については圧力計で検出しているために圧力等の物理量を電気信号に変換する時間を要することから,これらの時間を適切に評価し,スクラム遅れ時間として考慮することになる。 他方,控訴人らが主張する負荷遮断・バイパス弁不作動時の安- 311 -全保護系を構成する回路は,タービン・トリップ事象と同様に,電気信号等を伝達するものであるから,安全保護系の回路全体の伝達に要する時間は,一般的にいって長くとも100分の1秒程度の単位の,いわば瞬時である。 (b)したがって,当該負荷遮断・バイパス弁不動作事象において,上記の検出器の性質を踏まえれば,控訴人らが電気信号による部分の少ない機器に 長くとも100分の1秒程度の単位の,いわば瞬時である。 (b)したがって,当該負荷遮断・バイパス弁不動作事象において,上記の検出器の性質を踏まえれば,控訴人らが電気信号による部分の少ない機器に必要なスクラム遅れ時間として主張する0.5秒という仮定は,これを設計上見込む必要がないから,控訴人らの主張は合理的根拠を欠いている。 (ス)本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA(冷却材喪失事故)解析の合理性の有無について①臨界流モデルと対流熱伝達について(控訴人らの主張)a本件原子炉においては,本件各変更許可処分に基づき,炉心の燃料は当初設計の8行×8列型から新型8行×8列型,新型8行×8列型ジルコニウムライナ,高燃焼度8行×8列型,9行×9列型(A型,B型)と変更されてきたが,東京電力は,本件原子炉に装荷する燃料をいつでも新型8行×8列型,新型8行×8列型ジルコニウムライナ,高燃焼度8行×8列型に戻すことができる体裁となっている。 そして,上記の各炉心燃料が併存している結果,事故解析もまたそれぞれの燃料を採用した際の解析が併存している。これをLOCA解析について通覧すると,解析の結果,特に水位についての解析が当初設計から高燃焼度8行×8列型の際の解析に移る際に全く異なる解析になっている。 b本件処分においては,当初の解析と現在の解析で,(a)破断口か- 312 -らの流出計算のモデルを変更したために流出量が少なくなり,事故の展開が全体として緩やかになっていること,(b)蒸気の吹き上げによる冷却材の注入・流出阻害現象(CounterCurrentFlowLimiting・CCFL)を,従前は炉心へのECCS水の注入を阻害する事象としてのみ扱っていたのに,現在は炉心からの冷却材の流出を阻害して炉心に冷却材を保つ現 ounterCurrentFlowLimiting・CCFL)を,従前は炉心へのECCS水の注入を阻害する事象としてのみ扱っていたのに,現在は炉心からの冷却材の流出を阻害して炉心に冷却材を保つ現象と扱って事故経過を極めて緩やかなものにしていることの2点が異なっている。 すなわち,当初の解析では破断口からの冷却材流出量計算にP17の臨界流モデルを用いて計算し,事故後8.7秒で炉心シュラウド外の水位がジェットポンプノズルに達して吸い込みがなくなって炉心流量が急速に減少し,12秒で炉心シュラウド外の水位が再循環ポンプの吸い込み口に達して原子炉圧力が急激に低下して減圧沸騰により下部プレナムフラッシングが生じるとしていた(乙2の10-3-32頁)が,新型8行×8列型燃料採用時の解析で破断口からの流出量の計算をすべて均質臨界流モデルに変更したために炉心シュラウド外水位がジェットポンプノズルに達するのは事故後10秒,再循環ポンプ吸い込み口に達するのは事故後15秒に変更され,その後現在に至るまでの解析はすべてそれで統一されている。 これは,P17の臨界流モデルから均質臨界流モデルに変更したためであるが,これをすべての冷却材について均質臨界流モデルを採用し,全体の流出量を少なくしたことには疑問があり,解析モデルの選択一つにより事故経過が大きく変化すること自体,LOCA解析の信頼性の低さを示している。 cまた,当初設計の際の解析及び新型8行×8列型燃料・新型8行×8列型ジルコニウムライナ燃料採用時の解析では,炉心シュラウ- 313 -ド内の冷却材は一体として解析され,事故後約30秒までは炉心(燃料棒)は露出しないとされ,他方,露出した燃料棒の熱伝達係数については,対流熱伝達は断熱(熱伝達係数0)として解析していた。 しかし,高燃焼度8行×8列 として解析され,事故後約30秒までは炉心(燃料棒)は露出しないとされ,他方,露出した燃料棒の熱伝達係数については,対流熱伝達は断熱(熱伝達係数0)として解析していた。 しかし,高燃焼度8行×8列型燃料採用時の解析から,炉心シュラウド内の冷却材の解析がより細かく行われ,従前炉心シュラウド内の水位が十分高いと解析されていた時点でもそれは燃料頂部でのCCFLによるものであり炉心の燃料棒は(その下で)露出していることが判明し,結果的により速い時点で燃料の露出が発生することになった。 そうすると,当然にLOCA解析はより厳しいものとなることになるが,本件各変更許可処分に際して出された解析では,燃料頂部でのCCFLの他に,炉心入口オリフィス部(燃料底部)でも炉心の下側にある圧力容器下部の空間である下部プレナムからの蒸気吹き上げによって燃料集合体から下側へ(つまり下部プレナムへ)の冷却材流出を阻害するCCFLが生じるとして,炉心の冷却材は燃料の下部では失われることがなくつながった燃料被覆管の下部で冷却されるために,これまで断熱(つまり0)としていた燃料露出中の対流熱伝達係数を一気に200kcal/㎡・h・℃前後にまで上昇させて,結果的に燃料被覆管最高温度を従来よりも下げる結果(866℃から505℃に361℃も下げた)を導いている。 。 現在の設計採用時の解析も全く同じ手法を用いて大破断LOCA時の燃料被覆管最高温度は,9行×9列型A型で588℃,9行×9列型B型で521℃とされているので,LOCA解析は誤っている。 dよって,本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA- 314 -解析は誤っているから,本件処分は違法である。 (被控訴人の主張)a上記(サ)①の被控訴人の主張のaと同じ。 b安全評価においては,その解析の結果が適 る現在の設計におけるLOCA- 314 -解析は誤っているから,本件処分は違法である。 (被控訴人の主張)a上記(サ)①の被控訴人の主張のaと同じ。 b安全評価においては,その解析の結果が適切か否かが問題となるのであって,解析結果がどの程度変わるのかを評価する必要はなく,控訴人らの主張は,安全評価の考え方の前提において誤りがある。 冷却材の流出において想定される二相流状態(乙141の231頁)では,P17の臨界流モデルが臨界流を過大評価することはECCS性能評価指針が指摘するとおりである(乙141の246ないし247頁)ものの,現行の解析においては,原子力安全委員会等による専門技術的判断に基づき,より現実的で同指針にて使用することが認められた平衡均質流(均質臨界流)モデルに変更しているのであるから(乙141の231頁,全体の流出量を少なくし)たことは,必要な検討を行った結果によるものである。 このように妥当性が確認され採用された解析モデルを使用することにより,結果として事故経過の解析結果に変化が生ずるのは自明である。こうした変化が生ずることをもってLOCA解析の信頼性が左右されるかのような控訴人らの主張は,具体的根拠に欠ける。 cまた,事故直後の一時的な炉心露出の現象については,炉心頂部CCFLの解析をより適切に行った結果,上方から落下する水が,炉心頂部のCCFL現象を発生させる蒸気流量により落下しないことで発生することが明らかになったものであり,この結果として,蒸気流による冷却効果により露出部でも熱的に厳しくはないことが明らかになったものである。 この炉心露出は,急速な減圧と燃料棒からの受熱により冷却材が蒸発して失われていく過程で発生するものであり蒸発した蒸気は露- 315 -出部を通過することから,この蒸気流量に見合 なったものである。 この炉心露出は,急速な減圧と燃料棒からの受熱により冷却材が蒸発して失われていく過程で発生するものであり蒸発した蒸気は露- 315 -出部を通過することから,この蒸気流量に見合った対流熱伝達が存在することは自明であり,露出時の対流熱伝達を断熱として評価したのは当初の解析においてむしろ過度に厳しい条件を設けていたためであって,控訴人らの主張は誤解に基づくものである(乙142の4ないし36頁。 )②下部プレナムフラッシングと炉心入口オリフィス部CCFLについて(控訴人らの主張)a(a)本件原発のLOCA解析は,下部プレナムフラッシングによる冷却と,炉心入口オリフィス部CCFLによる炉心冷却材流出の阻害・炉心冷却材の保持を前提としている。これらを前提にしなければ大破断LOCAでは燃料被覆管最高温度が1200℃を超えて指針の基準を満たさない(この点は後に計算で明示する)上,そのような温度に達すると激しく生じる水-ジルコニウム反応による発熱・燃料被覆管の酸化により炉心溶融が避けられないのである。 (b)しかし,下部プレナムフラッシングも炉心入口オリフィス部CCFLも実規模のBWRで現実に生じるか否か,そしてその程度についてはなお実証されていないというべきである。 これまでBWRにおける模擬実験としてはROSA-Ⅲ及びTBLがあるのみであり,ROSA-Ⅲは実燃料集合体の2分の1の長さの燃料集合体(参考までにいえば8行×8列型を模擬したもの。電気加熱)4体を実炉の424分の1の体積の圧力容器内に挿入したものであり,TBLは2体の実規模の燃料集合体(電気加熱)を実炉の382分の1の体積の圧力容器に挿入したものである。下部プレナムフラッシングは,ジェットポンプを介して- 316 -炉心シュラウド外の部分とつながっ は2体の実規模の燃料集合体(電気加熱)を実炉の382分の1の体積の圧力容器に挿入したものである。下部プレナムフラッシングは,ジェットポンプを介して- 316 -炉心シュラウド外の部分とつながっている下部プレナムにおいて,炉心シュラウド外の急速な減圧がジェットポンプ部に伝わり下部プレナムのジェットポンプに近い部分で減圧沸騰を生じてその急激な蒸気発生により下部プレナムの冷却材が炉心に押し上げられるというものである。下部プレナムの冷却材が炉心に押し上げられるか否か,その程度は,減圧沸騰の発生箇所と冷却材の分布,下部プレナムの形状に依存する。 (c)しかし,これらの実験では,考慮されたのは体積比のみであり下部プレナムの形状は全く模擬されておらず(実炉のように半球形でさえなく,ましてや制御棒案内管等の実炉には存在する構造物も全く模擬されていない,体積比で縮小して燃料棒長さは)実炉の半分か実炉長にしたため水平方向では実炉を模擬しているとはいえないため減圧沸騰の発生箇所と冷却材の分布・位置関係も実炉を模擬できていない。 炉心入口オリフィス部CCFLは,ブローダウン過程で炉心においても減圧沸騰が生じて,上部に向けて蒸気を押し上げて燃料頂部CCFLを生じて,燃料集合体内は冷却材のない空間となっているのにその上には冷却材があるという状態を作るとともに,炉心(燃料集合体)から冷却材が炉心入口オリフィスを通ってその下側の下部プレナムへと流出する圧力を(重力に加えて)生じるのに対して,下部プレナムでの減圧沸騰による蒸気が炉心入口オリフィスを通じて吹き上げてその冷却材流出を阻害するというものである。 (d)したがって,炉心入口オリフィス部CCFLの発生の有無,程度は,燃料集合体内での減圧沸騰の程度と下部プレナムでの減圧沸騰の程度及びその分布に依 てその冷却材流出を阻害するというものである。 (d)したがって,炉心入口オリフィス部CCFLの発生の有無,程度は,燃料集合体内での減圧沸騰の程度と下部プレナムでの減圧沸騰の程度及びその分布に依存し,燃料集合体内での減圧沸騰- 317 -の程度は燃料の出力に依存するとともに,それ以前に下部プレナムフラッシングを生じるとすればその程度にも依存することになる。そうすると,これらの諸要素には水平方向のばらつきが考えられ,やはりこの実験をもって実規模のBWR炉心の全域で炉心入口オリフィス部CCFLが生じることやその程度についての実証とは到底いえない。 また,解析上も,下部プレナムフラッシングについては,9行×9列型A型燃料の場合でも9行×9列型B型燃料の場合でも同じ解析となるはずであるのに,9行×9列型A型燃料の解析では1回であるが,9行×9列型B型燃料の解析では下部プレナムフラッシングが2回起こるとされているなど,理論的な解明もできていない。 b(a)熱伝達係数を中小破断LOCA解析で現実に用いている20kcal/㎡・h・℃にした上で,実規模のBWRの炉心全域で起こることやその程度が実証されていない下部プレナムフラッシングについても考慮しないこととした場合の燃料被覆管温度について近似計算をする。 (b)本件原子炉の現在設計である9行×9列型A型燃料の大破断LOCA解析では,事故後15秒まで高出力燃料集合体の部分の水位が急速に低下し,15秒時点から急に水位が上昇してしばらく全体が冠水した後に再度水位が下がるとされている。この15秒時点からの水位上昇が下部プレナムフラッシングの効果である。 これがないものと仮定すると,高出力燃料集合体においては15秒時点でも急速な水位の低下が止まらず遅くとも17秒時点には中心部が露出すると考えられ らの水位上昇が下部プレナムフラッシングの効果である。 これがないものと仮定すると,高出力燃料集合体においては15秒時点でも急速な水位の低下が止まらず遅くとも17秒時点には中心部が露出すると考えられる。 そこで,17秒時点から高出力燃料集合体の最高出力部分(中- 318 -心部)が露出し,設置変更許可申請書の解析通りに65秒時点で露出が終了するとした場合の燃料被覆管温度を計算すると,事故後17秒時点での崩壊熱は定格運転時の4.6%に相当する。そして,事故後17秒から65秒までの燃料被覆管温度の上昇を計算すると,炉心露出終了時点(65秒時点)での燃料被覆管温度は1701.04K(1428℃)となり,指針の基準である1200℃を軽く超えることになる。 (c)また,同様に9行×9列型B型燃料について同様の前提で燃料被覆管温度を計算すると露出終了時点(60.7秒時点)で1649.46K(1376.46℃)となり,指針の基準である1200℃を軽く超えることになる。 cよって,本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA解析は誤っているから,本件処分は違法である。 (被控訴人の主張)a上記(サ)①の被控訴人の主張のaと同じ。 b(a)下部プレナムフラッシングは,減圧により水が沸騰するという現象であり,実規模のBWRにおいても,配管破断後に下部プレナム冷却材の飽和圧以下に低下すればフラッシングが起こることは自明であるので,控訴人らの主張は誤りである。 また,フラッシングの程度は主に減圧速度により決まり,この速度は容器体積と,容器内に存在する冷却材の質量の出入りとエネルギーの出入りから求められる冷却材体積時間変化により定まるので,体積比を考慮すれば十分に実機のLOCA時減圧速度を模擬することが可能である。 (b)炉心入口オリフィス部 却材の質量の出入りとエネルギーの出入りから求められる冷却材体積時間変化により定まるので,体積比を考慮すれば十分に実機のLOCA時減圧速度を模擬することが可能である。 (b)炉心入口オリフィス部のCCFLについては,単に吹き上げ蒸気により落下水量が制限されるという局所的な現象であるため,- 319 -ROSA-ⅢやTBL実験ではなく他の小規模実験において現象発生の有無とその程度を実証されており(乙142の11ないし17頁,これらの実験により十分に検証され得るものであるか)ら,炉心入口オリフィス部CCFLについて発生の有無やその程度が実証されていないとする控訴人らの主張には根拠がない。 (c)下部プレナムフラッシングの解析においては,燃料のわずかな圧力挙動等の違い等により,下部プレナムフラッシングの発生回数にこの程度の差が生ずることは工学的及び専門技術的観点から明らかである。9行×9列型A型燃料と9行×9列型B型燃料のフラッシング挙動の差異については,下部プレナムフラッシングの理論的な根拠を否定するものではないから,控訴人らの主張は前提において失当である。 ③シュラウドのひびについて(控訴人らの主張)a下部プレナムフラッシングと炉心入口オリフィス部CCFLが実規模のBWRの炉心全域で生じるか否か,及びその程度は実証されていないが,仮に,これが起こるものとしても,それは炉心シュラウドが健全で炉心シュラウド外の早期に冷却材が流出する部分(ダウンカマ部)と炉心シュラウド内との接点がジェットポンプ(を介して下部プレナム)に限定されるということが大前提である。 炉心シュラウドに周方向のひび割れが進展して破断に至った場合,炉心シュラウドの破断口の方がジェットポンプ開口部よりはるかに大きくなり,減圧沸騰は下部プレナムでよりも炉心シュ いうことが大前提である。 炉心シュラウドに周方向のひび割れが進展して破断に至った場合,炉心シュラウドの破断口の方がジェットポンプ開口部よりはるかに大きくなり,減圧沸騰は下部プレナムでよりも炉心シュラウド内でより激しく生じることになる。 その結果,減圧沸騰による圧力は下部プレナムから炉心に向けて上向きに働くよりも炉心内から下部プレナムに向けて下向きに働く- 320 -方が強くなることもあり得,そうすると下部プレナムフラッシングも炉心入口オリフィス部CCFLもないという事態になり得る。 bよって,本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA解析は誤っているから,本件処分は違法である。 (被控訴人の主張)a上記(サ)①の被控訴人の主張のaと同じ。 b(a)控訴人らの主張に係る下部プレナムフラッシング及び炉心入口オリフィスに影響を及ぼす事態とは,冷却材喪失事故の発生と同時に,炉心シュラウドの全周破断が発生する事態であると解されるが,事業者の行う自主検査により,破断に至る前にひびの発生を確認し得ることから,これらの事態が同時発生することは考えにくく,全周破断が放置されたまま運転されているという状況は想定できないので,控訴人らの主張には根拠がない。 (b)また,シュラウドにひびがある状態については,本件原子炉のシュラウドのひびについて十分な構造強度を有しているとする事業者の評価結果が妥当であることが「総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会(第7回」でも確認されており(乙143,全周破))断に至ることはない。なお,米国においてもシュラウドにひびが存在する状態で運転するリスクについていくつかの評価がなされているが,このような状態に関するリスクは十分小さいとされている(乙144の )断に至ることはない。なお,米国においてもシュラウドにひびが存在する状態で運転するリスクについていくつかの評価がなされているが,このような状態に関するリスクは十分小さいとされている(乙144の2頁。 )④熱伝達係数について(控訴人らの主張)a仮に,炉心入口オリフィス部CCFLがあるとしても,その場合の対流熱伝達係数を10のオーダー(単位はキロカロリー/㎡・- 321 -h・℃)で期待することは相当でない。現在設計での解析において中小破断LOCAの解析では,炉心部の冷却材がなくなった後について対流熱伝達係数を10kcal/㎡・h・℃程度としているのみならず,それ以前の炉心の下部に冷却材が保持されていると評価されている時点でも対流熱伝達係数は101のオーダーとされている(9行×9列型A型燃料の解析では炉心の冷却材がなくなる373秒時点より20秒以上前から対流熱伝達係数は101のオーダー:20前後とされているし,9行×9列型B型燃料の解析では同様に炉心の冷却材がなくなる370秒時点より20秒以上前から対流熱伝達係数は101のオーダー:20前後とされている。 )中小破断LOCAの解析で用いている熱伝達係数を大破断LOCA解析では変えているのは,そうしないと安全審査を通る結論を導けないからである。 bよって,本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA解析は誤っているから,本件処分は違法である。 (被控訴人の主張)a上記(サ)①の被控訴人の主張のaと同じ。 b熱伝達係数は,昭和61年7月に原子力発電技術顧問会(基本設計)LOCA検討会が報告した「沸騰水型原子炉のLOCA/ECCS性能評価コード(SAFER)について」においてその妥当性が確認されている各種相関式によって導かれているのであり(乙132の54頁,中小 LOCA検討会が報告した「沸騰水型原子炉のLOCA/ECCS性能評価コード(SAFER)について」においてその妥当性が確認されている各種相関式によって導かれているのであり(乙132の54頁,中小破断LOCAと大破断LOCAで熱伝達係数)が異なっているのは,減圧率及び炉心露出の時間の違いがあり,大破断LOCAの方が吹き上げ蒸気流量が多く,この蒸気流による対流熱伝達の効果が大きいことによって燃料被覆管最高温度を与える位置での熱伝達係数が大きくなっているためである(乙132の1- 322 -8ないし33頁。 )したがって,各熱伝達係数の違いは,厳密な計算に基づき生じているものであるから,控訴人らの主張は失当である。 (セ)プルサーマル計画について(控訴人らの主張)①東京電力が,本件原子力発電所3号機において,使用済燃料の再処理によって回収されるプルトニウムとウランを混合したMOX燃料を軽水炉で使用するプルサーマル計画を実施することを予定している。 しかし,本件安全審査の段階では,MOX燃料の使用を前提とした安全審査を行っていない。 ②したがって,本件安全審査には重大な瑕疵がある。 (被控訴人の主張)①本件訴訟は,本件原子力発電所1号機の設置許可処分を対象とするものであり,本件原子力発電所3号機に係る処分を対象とするものでないから,控訴人らの指摘する点は本件安全審査とは何ら関係がない。 ②本件申請は,通常のウラン燃料の使用を前提としたものであり,MOX燃料の装荷を想定したものではない。 そして,本件原子炉施設においてMOX燃料を装荷する場合には,申請者によってあらためて設置変更許可申請がされることになるから,主務大臣はあらためてMOX燃料についての安全審査を行うことになる。 すなわち,規制法は,原子炉設置許可後に,原子炉の形 る場合には,申請者によってあらためて設置変更許可申請がされることになるから,主務大臣はあらためてMOX燃料についての安全審査を行うことになる。 すなわち,規制法は,原子炉設置許可後に,原子炉の形式,基数等,原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備等が変更される場合を想定し,これらの事項の変更を主務大臣の許可にかからしめている(規制法26条。 )なお,控訴人らが指摘する本件原子力発電所3号機については,東- 323 -京電力がMOX燃料を使用すること等を内容とする原子炉設置変更許可申請をしたのに対し,通商産業大臣が平成12年3月15日付けで,規制法26条の規定によりこれを許可している。 ③したがって,原子炉設置許可の安全審査の段階で,MOX燃料の使用を前提とした安全審査を行っていないことは,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではない。 エ本件原子炉施設の地質・地盤及び地震に関係する安全対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)審査基準に不合理な点があるか否か。 ①設計用地震加速度の合理性の有無について(控訴人らの主張)」,a本件処分後に定められた「耐震設計審査指針(乙111)では原発の設置の際の安全審査において,最大想定地震は解放基盤表面における速度振幅で計算することを原則とすると定めている。しかし,本件安全審査における設計用地震加速度の想定 設計審査指針(乙111)では原発の設置の際の安全審査において,最大想定地震は解放基盤表面における速度振幅で計算することを原則とすると定めている。しかし,本件安全審査における設計用地震加速度の想定は,現行の「耐震設計審査指針」に適合していないことから,本件安全審査は不合理である。 bしたがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)a本件処分当時,地質・地盤及び地震に係る安全審査に関しては,原子力委員会において,立地審査指針(乙10)及び安全設計審査- 324 -指針(乙14)が策定されていた。 その後,当時の原子力委員会は,本件処分後の昭和53年9月に,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を定め,そして,原子力安全委員会は,これを昭和56年7月20日に一部改訂して「耐震設計審査指針(乙111)を決定した。さらに,原子炉安」全専門審査会は,昭和53年8月23日,地質・地盤の手引き(甲105)を策定した。これらは,それまでの発電用原子炉施設の耐震設計に関する安全審査の蓄積を踏まえ,これを整理,成文化し,原子炉施設の地質・地盤及び地震に係る審査を客観化するために策定されたものであるが,地質・地盤及び地震に係る審査の基本的な考え方は,本件安全審査当時のものが維持されている。 b本件原子炉施設の耐震設計は,現行の「耐震設計審査指針」の策定以前に実施されたものであるが,資源エネルギー庁がとりまとめた「指針策定前の原子力発電所の耐震安全性(平成7年9月」)(乙116)において,本件原子炉施設の耐震設計が,現行の耐震設計審査指針に基づいて同指針に定められている設計用最強地震動及び設計用限界地震動の最大加速度の数値等を基に審査したとしても,その耐震安全性が確保されるものとなっていることが確認されている。 cしたが 査指針に基づいて同指針に定められている設計用最強地震動及び設計用限界地震動の最大加速度の数値等を基に審査したとしても,その耐震安全性が確保されるものとなっていることが確認されている。 cしたがって,本件安全審査は,現行の「耐震設計審査指針」の考え方に照らしても妥当なものであって,控訴人らの主張は理由がない。 ②鉛直地震力の考慮の有無について(控訴人らの主張)a兵庫県南部明石海峡において,平成7年1月17日午前5時46分,北緯34.641度,東経135.179度の深さ13.3㎞- 325 -を震源地としてM7.2の地震が発生し(甲240,241,243ないし246。以下「兵庫県南部地震」という,既に知られ。)ていた活断層が地震断層として再活動したり,これまで未知だった断層が地震断層として活動したのみならず,周囲の小断層が一斉に活動している(甲241,245。 )この兵庫県南部地震(M7.2)では,揺れが水平方向と垂直方向でほぼ1対1となっていた観測点が存在するにもかかわらず,原子力発電所を含めて従来の各種設計基準は,縦揺れを軽視して,横揺れの20ないし50%しか考慮しておらず,このような基準の非現実性とそれによる被害が明らかになっている。 bしたがって,鉛直地震力について考慮していない本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)a控訴人らの主張する被害は,位置,構造等が大きく異なる高速道路や新幹線の橋脚に関するものであり,原子炉施設に被害が生じたわけではない。 また,鉛直地震力の大きさが,施設の被害の大きさに直結するものではないから,異なる施設に関する被害をもって,他の施設に関する設計の不備を根拠付けることができないのは自明の理であり,更にこれら高速道路や鉄道橋梁の耐震設計基準と原子炉施設の耐震設計基準は ものではないから,異なる施設に関する被害をもって,他の施設に関する設計の不備を根拠付けることができないのは自明の理であり,更にこれら高速道路や鉄道橋梁の耐震設計基準と原子炉施設の耐震設計基準は,異なる点が多く,これらの被害をもって原子炉施設の耐震設計基準の妥当性を論じることは適切ではない。 b原子力施設の耐震設計は「耐震設計審査指針(乙111の6,」5頁)に基づき,基準地震動の最大加速度振幅の1/2の値を鉛直震度として求めた鉛直地震力を水平地震力と同時に不利な方向に組み合わせて作用させ,評価しているところ,兵庫県南部地震におい- 326 -ても水平方向の最大加速度が発生した時刻においての水平方向に対する上下方向の加速度振幅の比は,それを分析した結果,1/2を大きく下回るものであり「耐震設計審査指針」の鉛直地震力の評,価は(乙111の65頁,兵庫県南部地震に照らしても,その妥)当性が損なわれるものではないことが確認されている(乙113の)。 23頁。したがって,控訴人らの主張は理由がなく,失当である③活断層の評価期間の合理性の有無について(控訴人らの主張)a「耐震設計審査指針(乙111)が対象とする活断層は,基準」地震動S1に対しては過去1万年の間に活動したもの,基準地震動S2に対しては過去5万年の間に活動したものに限られているが,これは活動層のトレンチ掘削の研究成果を反映していないものであって,耐震設計上,考慮すべき活断層の評価期間は,不十分である。 bしたがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)a「耐震設計審査指針」で示されている耐震設計上考慮すべき活断層の評価期間については(乙111の72ないし73頁,原子力)安全委員会作成の平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子 a「耐震設計審査指針」で示されている耐震設計上考慮すべき活断層の評価期間については(乙111の72ないし73頁,原子力)安全委員会作成の平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書」においても,その妥当性が確認されている。 bしたがって,控訴人らの主張は失当である。 ④直下地震の想定の有無について(控訴人らの主張)a鳥取県西部において,平成12年10月6日午後1時30分,同県境港市及びω11で震度6強の地震が発生した(甲371,372。以下「鳥取県西部地震」という。この鳥取県西部地震は,。)- 327 -活断層のないところで起こった内陸直下型の地震(M7.3)であるから「耐震設計審査指針(乙111)においてM6.5の直,」下地震を想定するとしていることは合理性を欠いている。 また,原子力安全委員会は,鳥取県西部地震の発生を契機に直下地震の想定をM6.5では足りないと認め,現行指針を見直す方針を固めている。 bしたがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)a兵庫県南部地震の状況を把握し,詳細に検討を加えた結果,兵庫県南部地震を踏まえても我が国の原子力施設の耐震安全性を確保する上で基本となる「耐震設計審査指針」の妥当性は損なうものではないものと確認されている(乙113の24頁。 )b現行の「耐震設計審査指針」における直下地震の想定は(乙111の66ないし71頁,過去の地震歴,原子炉施設の敷地及び敷)地周辺の地質・地盤に係る調査等の結果,その近傍に直下地震が発生するという事態が考えられない場合においても,十分な耐震安全性を確保するという見地から,念のためあえてこれを設計用限界地震の一つとして無条件で想定すべきものとされているという性質のものである。しかし, という事態が考えられない場合においても,十分な耐震安全性を確保するという見地から,念のためあえてこれを設計用限界地震の一つとして無条件で想定すべきものとされているという性質のものである。しかし,控訴人らの主張は,これらの前提を無視し,単に鳥取県西部地震が活断層がないところで発生したM7クラスの内陸直下型地震であるとして本件安全審査の不合理をいうものであって,何ら正当な理由がない。 c原子力安全委員会は,あくまで現行の「安全審査に用いられる関連指針類に最新の知見等を反映し,より適切な指針類とするために必要な調査審議を行」うことを指示しており(乙117,鳥取県)西部地震が発生したことによって直下地震の想定に関する現行の- 328 -「耐震設計審査指針」の規定が直ちに不合理となったためそれを見直すよう指示したことはないから,控訴人らの主張の前提を欠いている。 (イ)本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ①本件原子炉敷地の支持地盤について(控訴人らの主張)a本件原子炉敷地の支持地盤となる地層は,泥岩層である西山層であり,本件原子炉敷地全域に分布する。その形成年代は,従前は200ないし800万年前に形成されていたとされていたが,最近は広域火山灰や浮遊性有孔虫による対比等の研究から約120ないし350万年前と考えられているので,西山層は上部は第三紀層ではなく第四紀層である。 すなわち,本件処分当時には,地質・石油地質学関連分野において,西山層は第三紀の地層と考え の研究から約120ないし350万年前と考えられているので,西山層は上部は第三紀層ではなく第四紀層である。 すなわち,本件処分当時には,地質・石油地質学関連分野において,西山層は第三紀の地層と考えられていた。しかし,これ以降の学術的研究の進展の中で,西山層は年代的にはその下底がおよそ350万年前,上限は西にいくほど若くなり,西山丘陵地域では120万年前後,更にその上位に重なる灰爪層は90万年前後に堆積したとされたとの見解が定説とされるに至っている。 もっとも,被控訴人は,西山丘陵において西山層の上位の灰爪層中に第三紀-第四紀境界付近に位置する出雲崎火山灰を挟むことを根拠に,いまだに西山層は第三紀の地層であるとするが,出雲崎火山灰を挟む地層が見つかったのは西山丘陵北部であるところ,西山- 329 -丘陵の北部と南部ではその各層の堆積過程とその形成年代が異なる。 北部では第三紀末に圧縮による隆起が起こり,削剥が生じた後,灰爪層の岩相を呈する地層が堆積したが,一方,南部敷地周辺では引き続き,半深海から陸棚の環境で西山層から灰爪層が堆積したものである。北部の層序関係を南部にあてはめて原発周辺の西山層を第三紀層と結論づけることはできない。敷地内の西山層の年代そのものを西山層に挟まれる火山灰層や微化石に基づいて議論するべきである。 なお,東京電力作成に係る昭和63年5月(平成2年1月一部補正)の本件原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(6,7号原子炉の増設)の添付書類六(甲425)においても,その敷地周辺地域における西山層が上部は第四紀(更新世)に属するとされている。 b本件原子炉施設は,海面下40mまで掘削し,安田層までの土砂を取り去り,基礎地盤である西山層泥岩の上に建設されることとなっている。この西山層は,土と岩石の中間の性質をもつ軟岩 するとされている。 b本件原子炉施設は,海面下40mまで掘削し,安田層までの土砂を取り去り,基礎地盤である西山層泥岩の上に建設されることとなっている。この西山層は,土と岩石の中間の性質をもつ軟岩と呼ばれるものである。軟岩は重力式ダムの基礎地盤としては不適当とされるが,原子力施設の危険性からいってダムに劣らぬ強度を必要とするというべきであり,これを基礎地盤とすることは不適当である。 また,西山層泥岩の物理的特性は,単位体積重量約1.7g/cm,含水比46%,一軸圧縮強度10ないし40㎏/cmとさ れており,したがって,地盤としては軽く,非常に多くの水を含み,軟弱であることを物語っている。原発敷地以外の西山層について地すべり対策や石油掘削のため実施された物理試験で,単位体積重量2.0g/cm以上,含水比20%以下の値が得られているの で,本件原子炉敷地の西山層泥岩は一般のそれより更に劣悪である。 さらに,弾性波速度(縦波)の試験では,敷地西山層は毎秒1. - 330 -7㎞と著しく低い値を示している。堅硬な地盤ほど弾性波速度は早く,第三紀堆積層では毎秒2ないし4㎞であり,中生代や古生代の堆積層では毎秒4ないし6㎞である。本件原発の地盤には不適とされ除去された安田層でさえ弾性波速度は毎秒1.6㎞であり,西山層は,それと大差なく軟弱さは明らかである。 こうした西山層の物理的特性は,堆積年代が上部は第四紀と新しく,また構造運動に伴う潜在割れ目や顕在化した断層や亀裂があり,含水比が高く,弾性波速度が小さくなったものと考えられる。そして,上記数値はいずれも大きなばらつきがあり,西山層の岩質は著しい不均質性がある。こうして本件原子炉支持地盤の西山層は,物性それ自体から見ても不適当である。 cしたがって,本件原子炉が建造されている本 上記数値はいずれも大きなばらつきがあり,西山層の岩質は著しい不均質性がある。こうして本件原子炉支持地盤の西山層は,物性それ自体から見ても不適当である。 cしたがって,本件原子炉が建造されている本件原子炉敷地内で,西山層の上部を構成するとされる厚さ約100mのN3層はその岩相記載からは灰爪層と判断すべきものであるから(控訴審における証人P20(以下「当審証人P20」という)の平成16年5月。 20日付け証言調書(以下「当審証人P20調書」という)5な。 いし7頁,本件原子炉の支持地盤は第三紀ではなく,脆弱な第四)紀の地層上に建造されていることになり,極めて劣悪であり重大であるので,本件安全審査には看過し難い過誤がある。 (被控訴人の主張)a本件原子炉敷地に分布する西山層の形成年代については,新第三紀及び第四紀前期の境界付近に分布する出雲崎火山灰層等を鍵層とした調査の結果,本件原子炉敷地の位置する西山丘陵では,出雲崎火山灰層が西山層の上位層である灰爪層中に存在し,西山層の上限が出雲崎火山灰層よりも下位にあることが確認されていること等から判断しても,西山層が新第三紀鮮新世の地層であることは明らか- 331 -である。 なお,乙153の54頁の第Ⅳ-4図(おもな火山灰層とその年代)に記載されているとおり,西山丘陵地域が,西側の西山油帯(本件原子炉施設が含まれる)と東側の中央油帯に区分されるこ。 とを前提に,火山灰層の研究に基づく評価によると,それぞれの地域における西山層の最上部の年代は,西側の西山油帯でおよそ220万年前,東側の中央油帯ではおよそ120万年前であり,本件原子炉施設の位置する西山油帯の西山層が,およそ180万年前より古い新第三紀鮮新世の地層であることが明らかである。 b本件原子炉施設の試堀坑内で実施された平板載荷 ではおよそ120万年前であり,本件原子炉施設の位置する西山油帯の西山層が,およそ180万年前より古い新第三紀鮮新世の地層であることが明らかである。 b本件原子炉施設の試堀坑内で実施された平板載荷試験の結果,本件原子炉施設の支持地盤(西山層)が有する支持力は,1cm当 たり62ないし85㎏であり,これに対して,本件原子炉施設の自重は1cm当たり7㎏であること,また,地震時において本件原 子炉施設に働く荷重に,上記自重を加えても,その合計は1cm 当たり14㎏にしかならないことが確認されている。したがって,本件原子炉施設の構造物が地盤を押さえる力に対して,地盤が構造物を支える力の方が上回ることから,本件原子炉施設の敷地地盤が本件原子炉施設の支持地盤として十分な余裕を持った支持力を有することは明らかである。 さらに,支持地盤については,変形に対する抵抗力及びせん断抵抗力についても,試掘坑内地盤で実施した現地試験の結果に基づき検討を行うなど,支持地盤としての安全性に問題がないことを確認している。 ②本件原子炉敷地周辺にみられる断層についてa柏崎平野における安田層の形成時期について(控訴人らの主張)- 332 -(a)本件原子炉敷地の地盤となる西山層の上部に安田層,番神砂層,新砂丘等が堆積しており,本件原子炉敷地内外で安田層,番神砂層,新砂丘に数多くの断層が確認されている。そして,安田層の形成年代は,最近の広域火山灰調査等による研究により,挟まれるOn-Pm1(御岳第1テフラ)の火山灰層の広域的な対比から関東の小原台層に相当し,酸素同位体比のステージ区分でいう5c(後期更新世,およそ10万年前)の地層であると考えられる。 (b)したがって,安田層の形成時期を約12ないし14万年前と判断した本件安全審査は,その前提 し,酸素同位体比のステージ区分でいう5c(後期更新世,およそ10万年前)の地層であると考えられる。 (b)したがって,安田層の形成時期を約12ないし14万年前と判断した本件安全審査は,その前提を誤っており,看過し難い過誤がある。 (被控訴人の主張)(a)安田層の地形面及び堆積物の状況,安田層中で発見された花粉及び珪藻の分析結果等の詳細な調査結果によれば,安田層の形成時期は,南関東地方の下末吉層の形成時期(12万年ないし14万年前)に相当する。したがって,安田層の形成時期は,別紙13のとおり,局所的な地殻変動によらずとも現在の高度に分布し得ることから,酸素同位体比のステージ区分でいう5eの時期,つまり下末吉期に相当するおよそ12万年前ないし14万年前であり(甲414,控訴人らの主張する小原台層の形成時期に相)当しないことが明らかである。 (b)また,本件安全審査に関する調査結果においては,柏崎平野周辺において,On-Pm1(御岳第1テフラ)の存在は確認されていない。 なお,控訴人らの主張に係るOn-Pm1(御岳第1テフラ)については「火山灰アトラス(乙146の82,83,12,」- 333 -0頁)にこれまでの海面変化史等に関する研究成果がまとめられ,別紙14のとおり,On-Pm1(御岳第1テフラ)は小原台層の最上部の位置に堆積しているとされているが,一般に段丘の形成は海進初期に始まり,海退開始に伴い終わるものであることから,地層の最上部にあるとされているOn-Pm1(御岳第1テフラ)は,小原台層を形成した海進が最も進んだ時期ないしその後の海退直前に噴出したと解される。これに対し,控訴人らの主張するOn-Pm1(御岳第1テフラ)の火山灰(甲394ではF1,乙145では藤橋10(F10)に相当)は,安田層の初期の 時期ないしその後の海退直前に噴出したと解される。これに対し,控訴人らの主張するOn-Pm1(御岳第1テフラ)の火山灰(甲394ではF1,乙145では藤橋10(F10)に相当)は,安田層の初期の堆積時期に当たる下部層で確認されていることから,この火山灰は海進の初期に噴出したこととなり,段丘堆積物中の分布位置からもOn-Pm1(御岳第1テフラ)に対比することはできない。 (c)したがって,控訴人らの主張は,その前提において誤りがある。 b伏在断層を含む断層活動について(a)柏崎平野の安田層,番神砂層堆積後の断層活動について(控訴人らの主張)i本件原子炉の炉心直下には,原子炉建家西側にα断層,中央部にβ断層があり,β断層は安田層を最大70㎝切っているが,本件安全審査では炉心直下の断層は再活動しないと判断している。 しかし,兵庫県南部地震の例のように,本件原子炉直下の断層であるα,β断層や砂丘を切る無数の断層及び寺尾の断層が近傍の地震断層に連動して再活動する可能性がある。 すなわち,本件処分後に定められた「発電用原子炉施設に関- 334 -する耐震設計審査指針(昭和56年7月20日原子力安全委」員会決定。乙111。耐震設計審査指針)の基本方針には「建物・構築物は原則として剛構造にするとともに,重要な建物・構築物は岩盤に支持させなければならない」と明記されてい。 る。そこで,本件原子炉直下の断層は再活動しないと断じた本件安全審査は,上記耐震設計審査指針を損なうものである。 iiまた,柏崎平野の沖積面は地形変化,平野の地盤の乱れが著しく,安田層,番神砂層下部水成層の標高変化が大きい。本件処分当時は,地層の堆積年代を決定する手法が確立されていなかったが,その後広域火山灰分析の手法や,花粉分析,珪藻化石等の分析手法が確立され しく,安田層,番神砂層下部水成層の標高変化が大きい。本件処分当時は,地層の堆積年代を決定する手法が確立されていなかったが,その後広域火山灰分析の手法や,花粉分析,珪藻化石等の分析手法が確立され,柏崎平野周辺においても,更に地層に含まれる火山灰及び珪藻化石の解析を通じて,その形成年代及び同時期に形成された地層の現在の標高差が判明し,それによって安田層堆積後の断層運動の存在が明瞭になっている。 このように柏崎平野は,地殻変動が継続中であって,本件原子炉敷地周辺で見られる断層は,炉心直下の安田層を切る断層を含めて新しい時代における構造性のもの,すなわち活断層と判断される。 本件安全審査においては,椎谷断層,真殿坂断層はリニアメントが見られないとして,また,常楽寺断層は気比ノ宮断層で検討すれば十分として,これらの断層を無視している。 しかし,兵庫県南部地震においては,上記のとおりこれまで未知だった断層が地震断層として活動しているので,椎谷断層,真殿坂断層,常楽寺断層はもとより,伏在する断層を考慮した安全審査を実施すべきである。 iiiしたがって,本件安全審査は,柏崎平野の断層活動を無視- 335 -しているので,看過し難い過誤がある。 (被控訴人の主張)i本件安全審査においては本件原子炉敷地及びその周辺の広い範囲を対象として,文献調査,空中写真判読を行った上,地表踏査による地形,地質調査を行って,この範囲に存在する断層及び存在が推定される断層を拾い出した。そして,構造性の断層であって,その規模及び本件原子炉敷地との距離などを考慮して,耐震設計上考慮すべき断層と判断される可能性のあるものを選定した結果,別紙11のとおりの気比ノ宮断層,中央丘陵西縁部断層,真殿坂断層及び椎谷断層が選定された。 ii次に,上記4断層について,第四紀後 震設計上考慮すべき断層と判断される可能性のあるものを選定した結果,別紙11のとおりの気比ノ宮断層,中央丘陵西縁部断層,真殿坂断層及び椎谷断層が選定された。 ii次に,上記4断層について,第四紀後期における活動性を評価し,それに基づいて,断層活動に基づく地震によって本件原子炉敷地に大きな影響を与えると考えられるものが,耐震設計上考慮すべき断層として選定された。また,上記4断層の第四紀後期の活動性の評価に当たっては,第四紀後期の活動が活発かつ大規模な断層は,その断層活動のこん跡として,(一)連続したリニアメントが地表に明瞭に判読される,(二)リニアメント線上及びその近傍の露頭に,第四紀後期にしばしば活動したことを示す断層や地下深部における第四紀後期の断層活動を反映していると考えられる過褶曲構造あるいは撓曲構造が認められる等の地形上,地質構造上の特徴を伴うことに着目した。その結果,本件原子炉施設に関して評価されたのは,気比ノ宮断層であり,同断層が耐震設計上考慮すべき断層と選定された。 すなわち,本件安全審査においては,(一)本件原子炉施設の敷地内で実施したボーリング調査等に基づき,12万年ないし14万年前に堆積した安田層(乙4の22ないし23頁)は敷- 336 -地全域にわたってほぼ水平に連続していること,(二)控訴人らが真殿坂断層等が存在すると主張する西山丘陵地域には空中写真判読によってもリニアメントは認められず,地表踏査等によっても安田層堆積終了以降における断層活動を示唆する地形や断層露頭が認められないこと(乙4の20ないし21頁,)(三)別紙12のとおり,柏崎平野周辺において第四紀後期に堆積した安田層のうち,堆積後の侵食を免れた部分が段丘面として存在しており,その安田層からなる段丘面が平坦で高度に不連続は認められないこ )(三)別紙12のとおり,柏崎平野周辺において第四紀後期に堆積した安田層のうち,堆積後の侵食を免れた部分が段丘面として存在しており,その安田層からなる段丘面が平坦で高度に不連続は認められないことなどが確認されている。 したがって,柏崎平野及び西山丘陵を含む柏崎平野周辺地域においては,少なくとも安田層堆積終了以降,すなわち約12万年前以降における構造運動に伴う褶曲及び断層活動はないことは明らかであり,同平野下に本件原子炉施設の耐震設計上考慮すべき大規模な断層は,伏在するものか否かを問わず存在する余地はない。そして,本件安全審査においては,本件申請に係る本件原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針について,上記指針等の知見などに照らして,総合的に検討した結果,α,β断層等の再活動のおそれはなく,地質・地盤及び地震に係る安全性を含めて,本件原子炉施設の自然的立地条件に係る事象は,いずれも本件原子炉施設において放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させるような大きな事故の誘因とはならないことが確認されている。 iiiこれに対し,控訴人らは一般的かつ抽象的に伏在する断層の可能性を指摘するのみであって,柏崎平野下に伏在する断層が存在することについて具体的な根拠を示していない。 また,控訴人らは,兵庫県南部地震を援用するが,そもそも- 337 -兵庫県南部と柏崎平野とは地質・地盤,地形等を異にするのは明らかであるから,兵庫県南部地震をもって柏崎平野に伏在断層が存在するという論旨は全く意味を有しない。 なお,原子力安全委員会は,兵庫県南部地震を踏まえて,耐震安全検討会を設け,平成7年9月に「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書(乙113)」をとりまとめているが,兵庫県南部地震によっても耐震安全性に関する審査手 えて,耐震安全検討会を設け,平成7年9月に「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書(乙113)」をとりまとめているが,兵庫県南部地震によっても耐震安全性に関する審査手法一般についての妥当性が損なわれるものではないと評価されており,本件安全審査の妥当性を示すものである。 (b)複数断層の一斉活動について(控訴人らの主張)i兵庫県南部地震では,震源断層の活動で,三つ子地震を起こし,地上で10本を超える地震断層が出現した。 そして,兵庫県南部地震において震源断層の活動に伴い多数の活断層が一斉に活動したことを,本件原子炉敷地周辺地域に置き換えると,信濃川左岸の「気比ノ宮断層=鳥越断層群」と「片貝断層群」が一緒に震源断層として活動したり,更に加えて中央丘陵西縁の「常楽寺断層」が一斉に活動する可能性を示すものである。 しかし,本件安全審査においては「気比ノ宮断層=鳥越断,層群」が単独で地震を起こすことのみを想定して判断している。 iiしたがって,本件安全審査は,単一活断層による地震評価にとどまっているので,看過し難い過誤がある。 (被控訴人の主張)i本件安全審査において,本件原子炉敷地周辺において実施し- 338 -た地形,地質及び地盤に関する文献調査,空中写真判読,地表踏査等に基づき,気比ノ宮断層,常楽寺断層及び片貝断層に関し,その活断層の長さ,連続性について評価を行った結果,互いに異なる背斜軸の翼部に位置するものであることが確認されている。 すなわち,気比ノ宮断層は与板背斜東翼部に,常楽寺断層は中央油帯背斜西翼部に,片貝断層は片貝・真人背斜東翼部にそれぞれ存在が推定されたものである(乙112の10頁の図2。そして,気比ノ宮断層,関原付近の断層(気比ノ宮断層)と片貝断層の間に推定される断層)及 背斜西翼部に,片貝断層は片貝・真人背斜東翼部にそれぞれ存在が推定されたものである(乙112の10頁の図2。そして,気比ノ宮断層,関原付近の断層(気比ノ宮断層)と片貝断層の間に推定される断層)及び片貝断層は,それぞれ「十分に離れている(比較的相互の距離の大きい)断層であって,その一つ一つが,独立の変位運動をする断層」である。また,常楽寺断層は,上記3断層の関係と比較して,気比ノ宮断層,片貝断層とは更に離れた断層といえるから,これについても一斉活動を考慮する必要はない。 なお,控訴人らの主張は,兵庫県南部地震の六甲-淡路断層帯(六甲山地南東麓から淡路島北部までの活断層群)と本件原子炉敷地周辺地域の地質構造等の違いを全く考慮せず,本件原子炉敷地周辺の断層が一斉に活動することを想定すべきとするものであって,根拠を欠いている。 iiしたがって,本件安全審査においては,控訴人らの主張に係る気比ノ宮断層,片貝断層及び常楽寺断層の一斉活動を考慮する必要はない。 c本件原子炉敷地周辺地域の活断層について(控訴人らの主張)(a)試掘坑に見られる断層- 339 -i本件原子力発電所の基礎地盤には地質調査のために試掘坑が掘削され,断層や節理が調査されている。 本件原子炉では標高130m地点で十字型に延長200mの試掘坑が掘削されている。本件原子力発電所の他の炉でも同様の試掘坑が掘削され,展開図として調査記述された総延長は1804mであり,粘土を挟む節理,断層の箇所数は389,面の癒着した断層91,粘土を挟まない節理407,合計887もの多数になっている。 西山層は,軟岩であることから,節理や面の癒着した断層は圧密や火山岩の冷却過程で生じたものではあり得ず,地殻構造運動の結果を反映したものである。なお,本件原子炉の調査とそれ以外の2号機 っている。 西山層は,軟岩であることから,節理や面の癒着した断層は圧密や火山岩の冷却過程で生じたものではあり得ず,地殻構造運動の結果を反映したものである。なお,本件原子炉の調査とそれ以外の2号機以降の調査との間では調査方法や記述内容に大きな差異が見られ,全体像判断の妥当性が疑われる。 ii試掘坑で確認された多数の断層のうちで第四紀層までの追跡調査を実施したのは,本件原子炉のα,β断層,本件原子力発電所5号機のF3,V2断層,同7号機のL1,L2断層とa・b断層の8本のみで,調査結果は断層変位は安田層内にとまっているとして,番神砂層堆積後の断層活動はないと判断している。 しかし,多数存在する断層のうちで試掘坑に表われる断層は一部であり,そのうちのごく一部の抽出で追跡調査し,ほかも同じと判断することは調査方法として問題である。 炉心部に掘削された試掘坑中に見られる節理や断層などは,個別に評価するより,いかなる応力条件により形成されたかを統一的に評価判断すべきである。そうした方法であるπダイヤグラムを上記試掘坑の調査結果について作成し検討すれば,北- 340 -西~南東方向の走向がきわめて明瞭に卓越しており,同一構造)。 運動で形成されたものであることが明白となった(甲222これは,本件原子炉直下のα,β断層も同様である。よって,α,β断層のみを抽出して評価・判断したものは誤りであり,これらの断層は構造性のものであると判断すべきものである。 (b)滝谷の断層iω12では,西山層と番神砂層が断層で接している露頭がある。この露頭は真殿坂断層の活動が番神砂層堆積後も続いている証拠である(甲100の10頁。 )東京電力は,本件申請後に反対運動の指摘を受けて追加調査を実施し,地すべりによるものと判断している(乙3の6-212頁以下。 層の活動が番神砂層堆積後も続いている証拠である(甲100の10頁。 )東京電力は,本件申請後に反対運動の指摘を受けて追加調査を実施し,地すべりによるものと判断している(乙3の6-212頁以下。しかし,東京電力の当該見解は,地下のボ-リ)ングやトレンチ調査に基づくものではなく,地表の露頭調査からの推定でしかなく,地すべりにこじつけているものである。 iiこれは,西山層から番神砂層までを切る断層であり,地すべりではなく,地殻変動による断層である。そして,鏡肌が認められるので,同断層は番神砂層をも切断しており5万年よりも新しい時期に活動したものと考えるべきであるから,滝谷の断層は構造性のものと判断すべきである。 (c)本件原子炉敷地内外の安田層や番神砂層を切る断層i本件原子炉敷地内外の第四紀層である安田層や番神砂層が見られる露頭では無数の断層を確認できる。 東京電力は,これら断層のうち敷地内で17か所,敷地外で19か所を抽出し露頭調査を実施した結果,断層の走向傾斜がまちまちである,地形に調和,地すべり判断理由に合致する等を理由にすべて地すべりによるものであり構造性のものではな- 341 -いと判断している。 東京電力が調査した断層は,本件原子炉敷地内外に存在する安田層や番神砂層を切る断層のうちのごく一部でしかない断層の抽出調査とそれに基づく応力解析は必ずしも全体を代表するものではなく,また大間隔のボ-リング調査で地盤の落差を確認できるものではない。 すなわち,本件原子炉敷地外で調査した断層はすべて露頭調査のみで,地盤の落差を確認していない。真実解明のためには,敷地内外の第四紀層である安田層や番神砂層の断層をトレンチ掘削するなどして第三紀層との関係を直接観察する必要が絶対条件となるが,全く実施していない。 ii本件原子炉敷 いない。真実解明のためには,敷地内外の第四紀層である安田層や番神砂層の断層をトレンチ掘削するなどして第三紀層との関係を直接観察する必要が絶対条件となるが,全く実施していない。 ii本件原子炉敷地内外の安田層や番神砂層等の新しい堆積層で見られる断層は,個別に評価するよりいかなる応力条件により形成されたかを統一的に評価判断すべきである。 東京電力の本件申請書に記載された敷地内の番神,安田の断層と寺尾の断層については,上記πダイヤグラムを作成して検討した結果,北西ないし南東方向の走向がきわめて明瞭に卓越しており,同一構造運動で形成されたものであることが明白となった。 これらを統一的に説明するものに,(一)西中通から寺尾まで原発を含む一帯が同一の地形条件から巨大な地すべりを起こしている,(二)褶曲に伴う構造運動の二つが考えられるが,基盤岩の地形から上記iの地すべり説はあり得ない。よって,構造運動が番神砂層堆積時までも続いているのである。 これらの運動は試掘坑の西山層の断層等とも同一の構造運動である。また地盤の椎谷層から番神砂層を同時に切る寺尾の断- 342 -層とも共通である。これは,原子炉直下で地殻構造運動に伴う断層の活動の危険性が極めて高いことを示すものである。 (d)したがって,本件原子炉敷地周辺地域の活断層の危険性を全く無視した本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある。 (被控訴人の主張)(a)控訴人らの主張に係る本件原子炉敷地周辺地域の活断層は,それ自体断層ですらないもの,又は,断層であっても地震の原因にならない地すべり性の断層にすぎないもの,あるいは,構造運動に起因した断層であってももはや活動するおそれのないものであること,敷地周辺の露頭に認められる断層も地すべり性のものと判断されるものである。 (b)したがって 層にすぎないもの,あるいは,構造運動に起因した断層であってももはや活動するおそれのないものであること,敷地周辺の露頭に認められる断層も地すべり性のものと判断されるものである。 (b)したがって,本件安全審査の合理性を左右するものではない。 d寺尾断層について(控訴人らの主張)(a)寺尾断層は,本件原子炉敷地から北東に600mの位置にあり,椎谷層,安田層,番神砂層の三つの地層を切る構造性の断層であって(甲221,地すべりによるものではなく,上記断層)を引き起こした西山丘陵地域の地殻構造運動は,第四紀後期以降も継続していた。 寺尾断層は,安田層の泥炭層での変位量は約120㎝であるのに対し,椎谷層の上限面及び同火山灰での変位量は約140㎝であり,下の地層ほど変位が大きくなっている。このことは断層変位の累積性,その断層活動が繰り返し生じていることを示しており,寺尾断層は新しい時期の活断層である。そして,寺尾断層は,5万年前以降の活断層であって,これを引き起こした構造運動は,この地域の地質構造の一大特徴である活褶曲に関係している(甲- 343 -104。 )すなわち,寺尾断層の変異量は,火山灰質砂岩層を基準として測定されているところ,i火山灰質砂岩は,断層面の両側(東西)において連続して存在しており,それが同じ時期に堆積したものであることが明らかであること,ii椎谷層の上限面及び安田層の黒褐色亜炭層を変位基準とした場合の変位量と調和すること,iii同地層の上下における層序・層厚が断層面の両側で一致していることから,火山灰層を鍵層として変位を測定すれば,安田層の泥炭層での変位量は約120㎝に対して,椎谷層の上限面及び火山灰での変位量は約140㎝で,変位は累積していることになる。さらに,約4万6千年前の堆積層である番神砂層を切 て変位を測定すれば,安田層の泥炭層での変位量は約120㎝に対して,椎谷層の上限面及び火山灰での変位量は約140㎝で,変位は累積していることになる。さらに,約4万6千年前の堆積層である番神砂層を切っているので,寺尾断層は,5万年前以降に活動した活断層と判断することが正しいのである。 (b)ところで,断層が構造性か地すべり性かについて,枝分かれが下からか上からかで判断できるとの被控訴人の主張は誤りである。実際に,構造性断層が上から枝分かれしている例は極めて多いから,地質学の世界でこうした判断基準などあり得ない。 寺尾断層は,地形的には尾根側が,地質構造的には背斜の軸側が落ちる高角正断層であることから,地すべりによるものではない。そして,寺尾断層は,背斜軸に並走する縦走断層であり,圧縮応力場で形成されていることから褶曲構造の成長,プレートの運動と関係があると判断することが自然である。 なお,椎谷層を切る断層は,安田層形成前に活動し,断層による急崖が存在して,安田層堆積後に発生した地すべり時に,この開口していた旧断層亀裂に落ち込んだとする論理はその断層の産状の検討からしてあり得ない。 - 344 -(c)本件原子炉敷地周辺地域を含む西山丘陵において,活発な褶曲運動が続いていることは地質学研究者の一致した見解である(甲104,223。そして,本件原子炉施設の設計に際して)掘削抗中に見られる断層や節理の走向が北西から南東方向に卓越していることが認められている。したがって,寺尾断層が構造性のものであり,地すべりによるものでないことは,上記変位の累積という事実及び同断層が地形的には尾根側が,地質構造的には背斜の軸側が落ちる高角正断層であることなどの特徴からも明らかである。そして,寺尾断層は,後谷・宮川背斜の成長を示すものであり,同一構 累積という事実及び同断層が地形的には尾根側が,地質構造的には背斜の軸側が落ちる高角正断層であることなどの特徴からも明らかである。そして,寺尾断層は,後谷・宮川背斜の成長を示すものであり,同一構造上に設置されている本件原発の支持地盤で断層が発生したり,既存の直下断層が再活動することで地盤が喪失する危険性を示すものである。 しかし,本件安全審査においては,西山丘陵の地殻構造運動は第四紀後期以降は存在しない,つまり安田層の堆積時には構造運動があったが,番神砂層堆積後の構造運動はなかったという前提で判断しているが,寺尾断層の発見によりその前提が崩れている。 (d)したがって,本件安全審査は,寺尾断層に対する審査を欠いているので,看過し難い過誤がある。 (被控訴人の主張)(a)一般に構造性の断層によって地層が切られる場合,古い地層ほど断層によって変位を受ける回数が多くなるため変位量は累積する。また,構造性の断層は地球内部から生じる応力によって地下深部で発生し地表に向かってのびるものであるから,断層が枝分かれする場合には,下方から上方に向かって枝分かれする特徴を有する。 (b)寺尾断層については,上記活断層の特徴である変位の累積性- 345 -は認められないこと,断層が上方から下方に向かって枝分かれしていることなどの構造性の断層と符合しない特徴を伴うものであるから,本断層は地すべり性の断層である。 (c)12万年ないし14万年前に堆積した安田層は敷地全域にわたって,ほぼ水平に連続していること,西山丘陵地域には空中写真判読によってもリニアメントは認められず,地表踏査等によっても安田層堆積終了以降における断層活動を示唆する地形や断層露頭が認められないこと等が,本件安全審査において確認されていることから,柏崎平野及び西山丘陵地域を含む ントは認められず,地表踏査等によっても安田層堆積終了以降における断層活動を示唆する地形や断層露頭が認められないこと等が,本件安全審査において確認されていることから,柏崎平野及び西山丘陵地域を含む柏崎平野周辺地域においては,少なくとも安田層堆積終了以降,すなわち12万年ないし14万年前以降における構造運動に伴う褶曲及び断層活動はないことは明らかである。 なお,寺尾断層についての判断は,原子力安全委員会にも報告され,妥当なものとして了承されている(乙114。 )e歴史地震の選定について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査に用いられた過去の地震は,1614年11月26日の越後高田の地震と1828年12月18日の越後三条の地震だけであるところ,越後高田の地震は日本海側の地震ではないし,また,越後三条の地震よりも本件原子炉敷地に大きな影響を与えた地震として,i1751年5月21日の越後・越中の地震(M7.0ないし7.4,ii1847年5月8日の善光寺地)震(M7.4,iii1847年5月13日の越後頸城郡の地震)(M6.5)の3地震を見落としている。 (b)本件安全審査においては,過去の地震として対象としたのは,最近400年足らずのものでしかなく,資料も不十分である。 - 346 -(c)したがって,本件安全審査は,歴史地震の考慮が不十分であり,看過し難い過誤がある。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査においては,過去の地震歴によって,耐震設計上考慮すべき地震を選定するには,原子炉施設の敷地及び敷地周辺の地盤において過去に発生した地震につき,そのMや震央距離等に基づいて,金井式(地震のMと震源距離から最大加速度を推定する式。以下「金井式」という)により,同施設の敷地地盤。 における地震動の推定最大加速度(以下「推定最 した地震につき,そのMや震央距離等に基づいて,金井式(地震のMと震源距離から最大加速度を推定する式。以下「金井式」という)により,同施設の敷地地盤。 における地震動の推定最大加速度(以下「推定最大加速度」という)を算出した。 その結果,同様の地震が将来再び発生した場合に,本件原子炉敷地に最も大きな影響を及ぼすと判断され,選定された地震は,推定最大加速度が最も大きい1614年の越後高田の地震(M7. 7,推定最大加速度160Gal)である。 すなわち,歴史地震の選定については,本件原子炉敷地に影響を与えたものを選定するものであるところ,越後高田の地震については,この地震が日本海側の地震でないとの説はいくつかの文献で見られるものの,高田における被害の記事があることから,本件原子炉施設の耐震設計上考慮する最大加速度振幅を安全側に評価する観点に基づき,あえて本件原子炉敷地に近い日本海側で発生し,敷地に影響を与えた地震と評価されたものである(乙2の6-5-3,4,18頁。たとえ,この地震が日本海側の地)震でなかったとしても,そのことが本件安全審査の妥当性を損なうものではない。 (b)また,本件安全審査においては,控訴人らが越後三条の地震(乙2の6-5-18,28頁)よりも本件原子炉敷地に大きい- 347 -影響を与えたとするi1751年5月21日の越後・越中の地震,ii1847年5月8日の善光寺地震,iii1847年5月13日の越後頸城郡の地震(M6.5)についても検討された結果(本件申請書添付書類六(乙2の6-5-20ないし23頁,各地)震は地震規模と震央距離からその敷地地盤における地震動が評価され,本件原子炉敷地に及ぼす影響は越後三条の地震を上回るものではないと判断されたものであり,これらを「見落とした」との控訴人の主張は全 震は地震規模と震央距離からその敷地地盤における地震動が評価され,本件原子炉敷地に及ぼす影響は越後三条の地震を上回るものではないと判断されたものであり,これらを「見落とした」との控訴人の主張は全くの誤りである。 なお,越後高田の地震,越後三条の地震等の評価と同様に上記iないしiiiの各地震について,その地震規模と震央距離に基づき((a)の地震については,仮に控訴人らの主張する地震規模M7.0ないし7.4を用いて)金井式とシードの図表により敷地地盤における最大加速度値を求めると,それぞれ100Gal,50Gal,80Galにすぎず,越後高田の地震,越後三条の地震の最大加速度値160Gal,130Galを上回るものとはならない(乙2の6-5-28頁。 )(c)本件申請書の添付書類六(乙2の6-5-20ないし23頁)には,863年以来の29地震に関する情報が記載されているので,歴史地震の選定に関する資料も十分である。 f日本海東縁プレート境界について(控訴人らの主張)(a)プレートテクトニクス理論は,地球の表層部分(リソスフェア)がいくつかの堅い板(プレート)に分かれており,それがほとんど変形することなしに相互に水平運動(球面上の回転)をしているという考えに基づく理論である。そして,プレート運動に起因する地震(プレート型地震)が発生することは確立された理- 348 -論である。当時の通商産業省資源エネルギー庁作成の「原子力発電所の耐震安全性」と題するパンフレット(甲296)にもプレート型地震のメカニズムが説明されている。 国土地理院が平成6年4月から110地点の測点でGPS(汎地球測位システム)による観測をした結果,日本列島の地殻水平変動が精密に観測され(甲300,別紙10のとおり,日本海)東縁プレート境界の南部の位置が が平成6年4月から110地点の測点でGPS(汎地球測位システム)による観測をした結果,日本列島の地殻水平変動が精密に観測され(甲300,別紙10のとおり,日本海)東縁プレート境界の南部の位置が佐渡島の東を通って新潟市付近から信濃川に沿って松本市に至り,同所から静岡に続くことが裏付けられた。 これによれば,北から,i1940年8月2日積丹半島沖地震(M7.5)(北緯44.3度,東経39.5度)ii1993年7月12日北海道南西沖地震(M7.8)(北緯42.8度,東経139.2度)iii1983年5月26日日本海中部地震(M7.7)(北緯40.4度,東経139.1度)iv1833年12月7日山形沖地震(M7.5)(北緯38.9度,東経139.25度)v1964年6月16日新潟地震(M7.5)(北緯38.4度,東経139.2度)vi1828年12月18日三条地震(M6.9)(北緯37.6度,東経138.9度)vii1847年5月8日善光寺地震(M7.4)(北緯36.7度,東経138.2度)の各地震が,日本海東縁プレート境界型の地震として理解することができる。 - 349 -これらの7回の地震の平均ではM7.45となるから,日本海東縁プレート境界での地震としては,M7.5程度の規模の地震実績が存在する。 なお,測地学審議会は,平成9年6月,日本海東縁プレート境界を構成するフォッサマグナ=糸魚川-静岡線でM8.0規模の地震が発生する可能性があることを指摘している(甲297。 )(b)本件安全審査の対象となった中央丘陵西縁部断層(常楽寺断層,信濃川西縁断層(気比ノ宮断層)及び信濃川東縁断層(悠)久山断層)は,日本海東縁プレート境界から派生した地表地震断層と推定され,これらの各活断層による地震は なった中央丘陵西縁部断層(常楽寺断層,信濃川西縁断層(気比ノ宮断層)及び信濃川東縁断層(悠)久山断層)は,日本海東縁プレート境界から派生した地表地震断層と推定され,これらの各活断層による地震は,プレート境界型の地震を想定しなければならず,その規模は上記7回の地震の平均値であるM7.5を想定すべきである。 なお,国土地理院から地震予知連絡会に対し,平成13年2月19日,日本海東縁部の地殻活動に関する報告があったが,プレート境界の存在が確認されている。 (c)したがって,本件安全審査は,プレート境界型の地震を想定していないので,看過し難い過誤がある。 (被控訴人の主張)(a)日本海東縁プレート境界の存在及び位置については諸説があり,定説となっているわけではなく,控訴人らの主張はその前提を欠いている。 すなわち,控訴人らは,いまだ確認されていないプレート境界をあえて仮定した上で,その位置の近辺で発生した地震を「プレート境界型の地震」として単に列挙したものにすぎない。 なお,控訴人らが指摘するパンフレット(甲296)3頁欄外注にも「ユーラシアプレートと北米プレートの境界は未確認」で- 350 -あるとされている。 (b)本件原子炉施設の安全性に影響を与えるような大地震は,その発生機構を問わず一般に同一地域で繰り返し起こると認められていることから,当該敷地あるいはその近傍に影響を与えた過去の地震の調査を十分に行うことが重要であり,地震の規模については,過去の地震や活断層により生じる地震からあくまで地域毎に判断すべきものである。 そして,活断層により生じる地震の地震規模の推定には活断層の長さから地震規模を推定することが妥当であり,本件安全審査において,敷地周辺における活断層調査を十分に行い,敷地に最も影響を与える活断層の長さを17 断層により生じる地震の地震規模の推定には活断層の長さから地震規模を推定することが妥当であり,本件安全審査において,敷地周辺における活断層調査を十分に行い,敷地に最も影響を与える活断層の長さを17.5㎞,その地震規模をM6. 9と推定していることに何ら問題はない。本件安全審査では,控訴人らの主張に係る「プレート境界型の地震」についても,1964年の新潟地震,1928年の三条地震,1847年の善光寺地震が考慮されているというべきである(乙2の6-5-20ないし23頁。 )なお,控訴人らは,日本海東縁プレート境界から派生した地表地震断層から生じる地震の規模をM7.5以上と想定しているが,一般に各断層から生じる地震の規模は各断層の長さに基づいて算定されるものであって,断層の成因を論じ,日本海東縁プレート境界から派生したものであるか否かによって,当該断層から生じる地震の規模の算定が左右されるという控訴人らの主張は合理性がない。 g長岡平野西縁断層について(a)長岡平野西縁断層の活動について(控訴人らの主張)- 351 -i地震調査研究推進本部は,平成16年10月13日,次の内容の「長岡平野西縁断層帯の長期評価について」と題する報告書(甲451。以下「本件断層帯報告書」という)を発表した。 。 (一)断層帯の位置及び形態長岡平野西縁断層帯は,新潟県新潟市の沖合から小千谷市にかけて,南北方向に延びている。長さは約83kmで,断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である。 (二)断層帯の過去の活動長岡平野西縁断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は,3m/千年程度の可能性があり,最新の活動は13世紀以後にあったと推定される。活動時には,断層の西側が東側に対して相対的に約2m以上隆起したと推定される。長岡平野西縁断層帯の 方向のずれの速度は,3m/千年程度の可能性があり,最新の活動は13世紀以後にあったと推定される。活動時には,断層の西側が東側に対して相対的に約2m以上隆起したと推定される。長岡平野西縁断層帯の平均活動間隔は約1千2百-3千7百年であった可能性がある。 (三)断層帯の将来の活動長岡平野西縁断層帯は,全体が一つの区間として活動した場合,M8.0程度の地震が発生する可能性がある。その時,断層の近傍の地表面では西側が東側に対して相対的に約6-7m高まる段差や撓みが生ずる可能性がある。 長岡平野西縁断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は今後100年以内の地震発生確率9%以下,同50年4%以下,同30年2%以下である。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが,その最大値をとると,今後30年の間に地震が発生する可能性が,我が国の活断層の中ではやや高いグループに属することになる。 (四)今後に向けて- 352 -長岡平野西縁断層帯は複数の断層からなる長大な断層帯であるが,鳥越断層以外は活動履歴に関する詳しい資料が得られていない。特に,大河津分水路以北では第四紀後期の活動履歴に関する資料が,また,海域では断層の位置に関する資料を含めて不足している。したがって,これらについての精度良いデータを集積させて,活動区間を明確にし,最近の活動履歴や平均活動間隔を正確に把握する必要がある。また,本断層帯周辺では測地学的研究を通して非地震性の地表変形の存在が指摘されてきている。これらの実態を調査し,本断層帯との関係を明らかにする必要がある。 ii気比ノ宮断層は,長岡平野西縁断層帯に含まれるが,本件安全審査では,長岡平野西縁断層の活動による地震は検討されていない。 地震調査研究推進本部の「M8.0程度の地震が 明らかにする必要がある。 ii気比ノ宮断層は,長岡平野西縁断層帯に含まれるが,本件安全審査では,長岡平野西縁断層の活動による地震は検討されていない。 地震調査研究推進本部の「M8.0程度の地震が発生する可能性がある」との指摘は,本件安全審査の想定地震が誤りであったことを示すものである。 すなわち,長岡平野西縁断層帯の活動により長岡市ω13の地点でM8の地震が発生した場合の本件原子炉の揺れを安全審査で用いたと同じ金井式で算定すると,震源深さ5ないし20kmについて,1154ないし704Galとなる。この値は,設計に用いた300Galや限界地震で想定した450Galを大きく超えるものである。本件原発は,長岡平野西縁断層帯のM8地震には耐えられないことが明らかとなったのであり,これを想定していない本件安全審査の誤りは明確である。 iiiしたがって,長岡平野西縁断層帯を考慮していない本件安全審査は,看過し難い過誤がある。 - 353 -(被控訴人の主張)i地震調査研究推進本部は,平成7年に発生した兵庫県南部地震を契機として制定された地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号)に基づき,総理府に設置(現在は文部科学省に設置)されたものである(甲451。 )本件断層帯報告書は,地震防災対策の強化,特に地震による被害の軽減に資する地震の調査研究の推進を目標に,全国の活断層が一定の基準に従い一律に評価されるものであり,長岡平野西縁断層帯の評価についても,約200万年前以降活動した可能性がある断層を一律に活断層帯とみなし,同断層帯全体が一つの区間として活動した場合を想定して評価している。そこでは,同断層帯全体が一斉活動する可能性について,必ずしも,過去の地震歴や同断層帯を構成する各断層に関する子細な調査を元に判断されているわけでは の区間として活動した場合を想定して評価している。そこでは,同断層帯全体が一斉活動する可能性について,必ずしも,過去の地震歴や同断層帯を構成する各断層に関する子細な調査を元に判断されているわけではなく,同報告書の「今後に向けて」においては「長岡平野西縁断層帯は複数の断層からなる,長大な断層帯であるが,鳥越断層以外は活動履歴に関する詳しい情報が得られていない。特に,大河津分水路以北では第四紀後期の活動履歴に関する資料が,また,海域では断層の位置に関する資料を含めて不足している」としており「2.2。 ,(5)活動区間」においては「本断層帯における活動区間に,関する直接的資料は得られていない「2.1(2)断層面。」,の位置・形状」においては「北方の海域内における断層の位,置に関しては,調査が不十分で,正確に把握されていない側面がある」としている。このことは,推進本部が長岡平野西縁。 断層帯を構成するとして評価した角田山東縁断層,鳥越断層,関原断層,片貝断層,逆谷断層及び親沢断層等の各断層のうち,- 354 -第四紀後期の活動履歴の詳細が明らかとなっている活断層は,鳥越断層(本件安全審査における気比ノ宮断層)に限られることを意味するものであって,これらの断層が第四紀後期に一つの区間として活動したことを述べているものではない。 ii本件安全審査においては,本件原子炉敷地及びその周辺の広い範囲を対象として,文献調査,空中写真判読を行った上,地表踏査による地形,地質調査を行って,この範囲に存在する断層及び存在の推定される断層が抽出されている。その上で,第四紀後期以降に活動し,今後も活動する可能性のある断層が耐震設計上考慮すべき活断層として選定されている。このような観点から,第四紀後期に明らかな活動がある断層であり,その規模 ている。その上で,第四紀後期以降に活動し,今後も活動する可能性のある断層が耐震設計上考慮すべき活断層として選定されている。このような観点から,第四紀後期に明らかな活動がある断層であり,その規模及び同敷地との距離などに基づき同敷地に最も影響があるものとして,気比ノ宮断層(鳥越断層)が耐震設計上考慮すべき活断層として選定されている。このような本件安全審査における気比ノ宮断層の評価は,別紙15のとおり,地震調査研究推進本部の上記評価内容に照らしても,覆るものではない。 そして,本件安全審査では,気比ノ宮断層の長さを17.5㎞と評価している。 すなわち,当初,その北限については,地体構造的に見た場合には,信濃川に沿ってさらに,北北東方向に同一の断層系に属する別の断層が雁行配列する可能性は否定できないとされた(乙4の21頁)が,現在の知見では,雁行配列する活断層は存在せず,気比ノ宮断層と同時に活動する可能性は否定できると判断されていることから,同断層の北部において第四紀後期以降における活動を考慮すべき活断層が延長するものでないことは明らかである。また,気比ノ宮断層の南限については,ω- 355 -2から南に明瞭なリニアメントが認められず,地層の過褶曲構造が認められないことから,ω2以南にはその地下に最近活動した断層を推定する必要はないと判断されている。 さらに,本件安全審査においては,本件原子炉施設の敷地周辺において実施した地形,地質及び地盤に関する文献調査,空中写真判読,地表踏査等に基づき,気比ノ宮断層及び片貝断層に関し,その活断層の長さ,連続性についての評価を行った結果,互いに異なる背斜軸の翼部に位置するものであることが確認された。これは,気比ノ宮断層は与板背斜東翼部に,片貝断層は片貝・真人背斜東翼部にそれぞれ存在が推定されたも 連続性についての評価を行った結果,互いに異なる背斜軸の翼部に位置するものであることが確認された。これは,気比ノ宮断層は与板背斜東翼部に,片貝断層は片貝・真人背斜東翼部にそれぞれ存在が推定されたものであって(乙112の10頁の図2,気比ノ宮断層,関原付近)の断層(気比ノ宮断層と片貝断層の間に推定される断層)及び片貝断層は,それぞれ「十分に離れている(比較的相互の距離の大きい)断層であって,その一つ一つが,独立の変位運動をする断層」であると判断されているものである。 iiiこのように本件安全審査における活断層評価は,推進本部の評価において「長岡平野西縁断層帯」としてひとまとまりにされている各々の活断層について,地表踏査等に基づく第四紀後期における活動性の詳細な検討を行っているものであり,より詳細なデータといえるのであるから,本件安全審査における活断層評価が推進本部による評価結果と異なるものであったとしても,工学的判断に基づく本件安全審査の合理性が左右されるものではない。したがって,本件断層帯報告書は,本件安全審査における活断層評価に影響を及ぼさないというべきである。 (b)長岡平野西縁断層帯と日本海東縁プレート境界について(控訴人らの主張)- 356 -i日本海は,今から約2000万年前以降に地殻が東西に引き延ばされることによって,大陸から切り離され,陥没して形成された。その際に,正断層として発生した古傷が,その後に,東西から押されることにより,逆断層に変化したものと考えられている。 1983年に日本海東縁にプレート境界が存在すると提唱した学説において,当初は,プレート境界位置は佐渡沖からフォッサマグナ西縁に至るとされていたが,GPS観測の結果を踏まえて,信濃川沿いに存在すると言われるようになっている。 ii国土地理 ると提唱した学説において,当初は,プレート境界位置は佐渡沖からフォッサマグナ西縁に至るとされていたが,GPS観測の結果を踏まえて,信濃川沿いに存在すると言われるようになっている。 ii国土地理院が,この構造帯が生じている原因を探るために実施したGPS観測の結果,新潟-神戸構造帯より西側の地殻は東へ,東側の地殻は西へと移動していることが判明した。その速度は,年間1-2㎝にも及び,新潟-神戸構造帯は,現在でも地殻が東西両側から押され続けており,逆断層を形成するような変形が日々進行しているのである。 長岡平野西縁断層帯を最初に問題視したのは,地形学関係者の最新段丘面の傾動から大きな変動が続いている括褶曲の報告であった。そして,ω14や長岡市ω13の沖積面の変動地形地点でのトレンチ掘削や群列ボーリング調査の結果からM8の地震が繰り返し起こっているとの研究につながり,こうした研究を無視できず,本件断層帯報告書が作成された。 iii地震予知連会長のP21教授は,後記の中越地震との関連,,で「日本海東縁プレート境界のうち中越地震が起きた場所は1847年の善光寺地震と1964年の新潟地震の間で『ギャップD』と呼ばれる空白域にあたる。ここでは,1828年に三条地震も起きたが,まだ,空白域はすべて埋まってはいない。 - 357 -三条地震と新潟地震の震源域の間に空白域のギャップD1が,中越地震と善光寺地震の間には,D2がある」とする。そし。 て,同教授は「それぞれの地域でM(マグニチュード)7程度の地震が,いずれ起きると見ている「数十年の間に集中す」『る傾向がある』と指摘している」と発言したと報じられてい。 る(甲455。 )iv長岡平野西縁断層帯は,その位置と前記研究の端緒等からしても,日本海東縁プレート境界の一部と考えるのが,当 」『る傾向がある』と指摘している」と発言したと報じられてい。 る(甲455。 )iv長岡平野西縁断層帯は,その位置と前記研究の端緒等からしても,日本海東縁プレート境界の一部と考えるのが,当然であり,これが,M8程度の地震の発生を予測している。 (被控訴人の主張)i日本海東縁プレート境界の存在が定説となっているわけではなく,本件断層帯報告書においても,同断層帯が日本海東縁プレート境界の一部に該当するという記載はない。 ii後記の中越地震は,長岡平野西縁断層帯が活動したことによるものではなく,控訴人らの主張には根拠がない。 h中越地震について(a)本件原子炉施設の地震観測記録における地震規模と最大加速度について(控訴人らの主張)i新潟県中越地方において,平成16年10月23日17時56分,北緯37.3度,東経138.9度の地点で深さ約13㎞を震源とするM6.8の地震が発生した(以下「中越地震」という。 。)本件原子力発電所での地表と基礎の観測値を比較すると,いずれも地表の値が基礎の値と比べて大きい値となるが,その比率を見ると,本件原子力発電所1号機ではNSは最小1.6- 358 -7倍,平均5.17倍,EWは最小2.20倍,平均3.88倍,UDは最小1.88倍,平均3.11倍,全平均4.05倍であった。 また,同5号機ではNSは最小1.09倍,平均2.56倍,EWは最小1.57倍,平均2.01倍,UDは最小0. 86倍,平均1.42倍,全平均1.99倍であった。 さらに,同6号機ではNSは最小1.21倍,平均2.45倍,EWは最小1.25倍,平均1.84倍,UDは最小0. 86倍,平均1.40倍,全平均1.90倍であった。 ii本件原子力発電所各号機の建家基礎で観測された水平と上下の最大加速度と震源距離 5倍,EWは最小1.25倍,平均1.84倍,UDは最小0. 86倍,平均1.40倍,全平均1.90倍であった。 ii本件原子力発電所各号機の建家基礎で観測された水平と上下の最大加速度と震源距離を比較すると奇妙なことが判る。 平成16年10月23日17時56分発生,M6.8の本震地震と,同7号機がタービン警報信号で停止した同年11月04日8時57分発生,M5.2の余震を比較すると,前者の本震地震はM6.8,震源距離は31kmであり,後者の余震はM5.2,震源距離は33kmである。 本来,計算式からは,近くて大きな地震の揺れは大きく,遠くて小さな地震の揺れは小さくなるはずなのに,遠くて小さな地震の後者の余震が大きな値を観測している。このことは,本件原発が想定した計算式に誤りがあることを示すものである。 また,同じ地震でありながら,本件原子力発電所各号機により観測値に大きな差があるので,その測定値,方法に重大な疑問がある。 iiiしたがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)i地震は,自然現象であるため,測定される加速度の数値にも- 359 -ある程度のばらつきがあるのは当然のことである。 中越地震の規模と揺れの大きさの関係も,そのばらつきにより生じたものと考えられるのであるから,これをもって,本件原子炉施設が想定した計算式に誤りがあるということはできない。 なお,上記余震による最大加速度というものは,安全のため地震の揺れ(加速度)を感知して原子炉を自動的に停止させるほどの大きさのものではなく,耐震設計上考慮している地震による最大加速度を上回るものでもなかった。 ii本件安全審査においては,原子炉施設の耐震設計に用いられる設計用地震動の最大加速度の設定に当たって,地震動の評価式が経験式であるというその成り立ちに由 よる最大加速度を上回るものでもなかった。 ii本件安全審査においては,原子炉施設の耐震設計に用いられる設計用地震動の最大加速度の設定に当たって,地震動の評価式が経験式であるというその成り立ちに由来する性質と地震が自然現象であるということを考慮し,放射性物質を内部に有する原子炉施設の潜在的危険性を顕在化させないための配慮から,十分に安全側に余裕を見込んで合理的に最大加速度を決定していることが確認されている。 また,このように設定された設計用地震動に対して,工学的,技術的見地からみて,本件原子炉施設に適切な耐震設計が講じられ得ることが確認されている。 iiiしたがって,中越地震の地震規模と地震動の観測記録の最大値との関係が,計算式から想定される大小関係と異なるということのみをもって,本件安全審査において地震動の想定に用いられた計算式の妥当性や本件原子炉施設の耐震設計に係る安全審査の合理性が左右されるものでない。 (b)中越地震の観測値が原子炉施設毎に異なることについて(控訴人らの主張)- 360 -i中越地震の揺れの観測値について,同じ地震でありながら近接して立地している本件原子力発電所各号機毎に大きな相違がある。しかも,水平加速度と鉛直加速度の比率も統一性がないことから,揺れの測定値,あるいは,その測定方法に重大な誤りがある。 iiしたがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)i本件発電所において,地震計が設置されている原子炉建家は,それぞれの原子炉施設ごとに建家の形状,埋め込みの深さ等が異なるものであるから,中越地震によって発生した揺れ方についてもそれぞれの原子炉建家によって異なって当然である。 iiしたがって,本件原子力発電所の原子炉施設毎のこのような相違を考慮しない控訴人らの主張は失当である。 中越地震によって発生した揺れ方についてもそれぞれの原子炉建家によって異なって当然である。 iiしたがって,本件原子力発電所の原子炉施設毎のこのような相違を考慮しない控訴人らの主張は失当である。 (c)本件原子力発電所7号機の原子炉自動停止について(控訴人らの主張)i本件原子力発電所7号機は,平成16年11月4日に発生した余震により停止した。これは,同号機の地震計によるものではなく,タービン軸の震動幅が制限値を超えたことが原因である。 iiしたがって,本件発電所の原子炉施設の地震スクラム設定値の基準は不合理であるから,本件安全審査には看過し難い過誤がある。 (被控訴人の主張)i本件原子力発電所7号機は,本件原子炉の本件安全審査の対象ではなかった。 また,原子炉の安全保護を目的として,ある程度以上の地震- 361 -による揺れで原子炉を自動停止させる,いわゆるスクラム用の地震感知器が作動する加速度の具体的な設定値については,原子炉の運転段階において決められるものであり,本件安全審査の対象となるものではない。 ii本件原子力発電所7号機が停止したのは,同号機のタービンスラスト軸受摩耗センサーが,規定値を超えるタービン軸の位置の変化(0.75㎜)を検知し,タービンを停止させたことによるものであり,その結果原子炉も停止したものである。この事象は,本件発電所の原子炉施設の原子炉以外の設備を機械的な面で保護する観点から設置されたセンサーが作動したことによりタービンが停止したものであり,原子炉の安全保護を目的とするスクラム用の地震感知器の作動による原子炉の自動停止ではない。スクラム用の地震感知器は,耐震設計上考慮している地震による加速度よりも小さい加速度で作動するように設定されているが,同余震による加速度はこれを下回るものであ の作動による原子炉の自動停止ではない。スクラム用の地震感知器は,耐震設計上考慮している地震による加速度よりも小さい加速度で作動するように設定されているが,同余震による加速度はこれを下回るものであった。したがって,原子炉の安全保護とは目的が異なるタービンのセンサーが作動したということは,原子炉の安全保護のみならず,さまざまな観点からその他の設備も保護されていること,すなわち,あらゆる観点から事故・故障を防止していることの現れであって,このような事実をもって,地震スクラム設定値の基準が不合理である旨の指摘は,その基準の趣旨・目的を前提から誤解しており全く意味のないものである。また,同7号機は,原子炉停止後の点検においても,安全上問題のなかったことが確認されている。 iiiしたがって,控訴人らの主張はその前提を誤っている。 (d)本件原子力発電所の設計用地震動の最大加速度値について- 362 -(控訴人らの主張)i中越地震発生時の気象庁及びK-NET(独立行政法人防災科学技術研究所の強震観測ネット)の各観測点で実際に観測された加速度値を本件原子力発電所の地表での記録とみなすと仮定し,かつ地下の地盤の加速度の値は地表における加速度の半分の値になるとすれば,それぞれの場所での地表における加速度の測定値から算出して,ω15では1257Gal,十日町市では875Gal,小千谷市が750Galとなる。 これらの値は,本件原子炉施設の設計用地震動の加速度の300Gal,あるいは限界地震の加速度の450Galをも大きく超える値である。このため,本件原子力発電所の近くで中越地震と類似の地震が発生したと仮定すると,本件発電所は破壊されることが明らかになった。 iiしたがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)i地震の揺れは 件原子力発電所の近くで中越地震と類似の地震が発生したと仮定すると,本件発電所は破壊されることが明らかになった。 iiしたがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)i地震の揺れは,その地盤の種類,性質によって大きく異なるものであるから,異なる地盤状況にある上記ω15等の各観測点の観測記録をそのまま流用して別の地点である本件原子炉施設における地震動を考慮することは地盤の種類,性質の違いを無視するものであり,正しいデータの用い方ではない。 ii控訴人らは中越地震による揺れについて,本件原子力発電所の地表における観測値と原子炉建家基礎の観測値の比率を用いて,本件原子炉施設の地下の地盤における加速度なるものを算出しているが,控訴人らは支持地盤上に設置された原子炉建家の基礎と設計用地震動を評価する地盤とを混同していることから,仮に比較するにしても比較すべき対象となる地震動を誤っ- 363 -ている。さらに,本件原子炉施設の近くで中越地震と類似の地震が発生するという仮定自体も全く根拠がない。 ③本件原子炉敷地周辺にみられる断層の評価についてa気比ノ宮断層について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査においては,気比ノ宮断層の長さをω3から長岡市ω2までの17.5㎞であると評価している。 しかし,気比ノ宮断層については,同断層の延長をω3から柏崎市ω16までの約36㎞と見るべきであるので,本件安全審査の同断層の評価は過小である。 (b)したがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査においては,気比ノ宮断層の北部について,地表では断層面が確認できないものの,地表踏査や空中写真判読の結果として活断層が推定される範囲を考え,更に石油関係資料を考慮した上で,地表に確認されるリニアメントの終 ,気比ノ宮断層の北部について,地表では断層面が確認できないものの,地表踏査や空中写真判読の結果として活断層が推定される範囲を考え,更に石油関係資料を考慮した上で,地表に確認されるリニアメントの終端から約7. 5km北部までを活断層であるとみなして評価している。 (b)また,本件安全審査においては,気比ノ宮断層は「長岡地,域の地質(乙156)に添付される地質平面図及び断面図に示」されるとおり,与板背斜の東翼に西側上がりの逆断層として想定されるものである。これに対し「柏崎地域の地質(乙15,」2)に添付される地質平面図及び断面図において,気比ノ宮断層が南方に連続する地域は,山屋背斜とその西側に位置する大積向斜及び渋海川向斜の間の部分に当たり,緩やかな西落ちの構造となっている。このように,気比ノ宮断層は与板背斜の東翼に想定される西側上がりの逆断層であり,気比ノ宮断層の南方に連続す- 364 -る断層は緩やかな西落ちの構造となっているから,落ちの方向が全く逆の構造である。したがって,これらを一連の活断層として活動することを想定することは非科学的である。 (c)ω2付近以南の気比ノ宮断層の延長線上には,明瞭なリニアメントや過褶曲構造が全く認められず(乙3の6-266ないし268,290ないし292頁,ω2付近以北と以南とでは,)地形上,地質構造上に明白な差異があることから,同町以南については,地下に気比ノ宮断層の延長と思われる断層の存在を推定することはできないと判断した。 (d)したがって,気比ノ宮断層の長さは,ω3から長岡市ω2までの17.5㎞である。 b常楽寺断層について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査においては,常楽寺断層の長さをω5からω4までの12.5㎞であると評価している。 しかし,中央丘陵西縁部にあ での17.5㎞である。 b常楽寺断層について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査においては,常楽寺断層の長さをω5からω4までの12.5㎞であると評価している。 しかし,中央丘陵西縁部にある常楽寺断層は,その北部区間について,現在も活動が続いていること,同断層の南部区間については,灰爪層の撓曲が連続して追跡できること,地形的に山地と平地とが直線状の境界線をなしていることから,同断層が,ω5から柏崎市ω17までの24㎞であるので,本件安全審査の同断層の評価は過小である。 (b)したがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)(a)「柏崎地域の地質(乙152)に添付される地質図によれ」ば,控訴人らが主張する活断層が想定されるとする位置には,所々に中位段丘である安田層が点在し,沖積層の谷が安田層に遮ら- 365 -れて長く連続しないことは明らかである。 (b)中央丘陵西縁部断層(常楽寺断層」の一部)の存在が推定「されているω4からω5にかけての地表部付近には,第四紀後期において活動した断層が認められる露頭が全く認められないから,同断層の第四紀後期における活動があったとしても,ごく小さいものと判断される。 また,中央丘陵西縁部断層の南方においては,地表踏査をしても連続して追跡できるような撓曲構造が認められず,山地と平地の境界にみられる比較的,直線的な地形については,過去の海岸線に起因する地形(現在より海水準が高い時代の海食崖)にすぎない。 さらに,柏崎平野周辺地域に分布する安田層について,高度不連続がなく,ほぼ水平に分布し,柏崎平野及び西山丘陵を含む柏崎平野周辺地域においては,少なくとも安田層堆積終了以降,すなわち約12万年前以降における構造運動に伴う褶曲及び断層活動がなく,仮に,断層が存在するとしても安 に分布し,柏崎平野及び西山丘陵を含む柏崎平野周辺地域においては,少なくとも安田層堆積終了以降,すなわち約12万年前以降における構造運動に伴う褶曲及び断層活動がなく,仮に,断層が存在するとしても安田層堆積終了以降の活動がないから,控訴人らの主張は根拠がない。 c真殿坂断層について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査においては,真殿坂断層はω6を南限とする14㎞であると評価している。 しかし,真殿坂断層については,ω12の真殿坂断層上の露頭で西山層から古砂丘までを切る断層があること等から,鯖石川河口からω8までの21㎞であるので,本件安全審査の同断層の評価は過小である。なお,一般に活動度の高いA級活動層に比べ,活動度の劣るB級,C級の活動層は,変位の基準となる地形面が- 366 -乏しいことや,断層による変位が山地の浸食速度と同等又は劣るため,空中写真で断層地形を発見することは困難である。それゆえ,リニアメントが見られないことを理由に活断層を否定することはできない。 (b)したがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張の真殿坂断層の存在が推定される地域では,空中写真判読においてリニアメントの存在が全く認められず,地表踏査の結果によっても第四紀後期における断層活動を示唆する断層崖やケルンコル等の地形や断層露頭が認められないことから,第四紀後期における活動性について無視できるものと判断した。 また,ω12の露頭に見られる断層について,地すべり運動によって番神砂層及び安田層が西山層中に落ち込んで生じた地表の断層であり,真殿坂断層とは関係がないから,控訴人らの主張は失当である。 d新しい松田式について(控訴人らの主張)(a)活断層の長さから想定すべき最大地震のM(マグニチュード)を算出する式とし 層であり,真殿坂断層とは関係がないから,控訴人らの主張は失当である。 d新しい松田式について(控訴人らの主張)(a)活断層の長さから想定すべき最大地震のM(マグニチュード)を算出する式として従前よりいわゆる「松田式」が用いられてきた。近時,松田式の考案者であるP22が最新の研究成果に基づき,新しい松田式(松田(1998。甲306)に修正し)ている。 本件原子炉施設近辺の活断層である気比ノ宮断層について,仮に断層の長さを17.5㎞として新しい松田式により最大地震のMを算出すると7.124488.となり,本件安全審査に.. おける算定値は誤りである。 - 367 -(b)したがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)(a)本件安全審査で用いられた松田式とは,P22が1975年に提案したもので,濃尾地震(1891年)以降の,日本の内陸で発生した活断層長さと地震規模が求められている地震のデータを基に,活断層長さL(㎞)と地震規模M(マグニチュード)の関係を示した式である。 logL=0.6M-2.9ここでいう活断層長さLとは,地震により地表に断層が表れた長さ,及び地表に断層が表れなかった地震でも地震学の知見など他の方法で断層長さが推定されている値である。 新しい松田式(1998)は,地表地震断層が明らかな地震のみについて,その地表地震断層の長さと地震規模Mとの関係を求めているものである。 そして,本件安全審査で用いられた松田式は,日本の内陸で発生した地震について,活断層の長さと地震規模の関係を示す経験式である。ここで用いる活断層の長さの値は,地震により地表に断層が現れた長さ及び地表に断層の一部が現れなかった地震でも地震学の知見など他の方法で断層の長さを推定した値である。 (b)控訴人らの主張する新しい松田 で用いる活断層の長さの値は,地震により地表に断層が現れた長さ及び地表に断層の一部が現れなかった地震でも地震学の知見など他の方法で断層の長さを推定した値である。 (b)控訴人らの主張する新しい松田式(1998)は,地表から確認できる地表地震断層の長さと地震規模の関係を求めたものである。 原子炉施設の設計に当たっては,敷地近傍の断層を詳細に調査しており,断層の長さについては地表に現れている長さに限らず,活断層の長さを保守的に推定している。 したがって,そのようにして推定された活断層の長さにより地- 368 -震の規模を適切に算出するためには,松田式を用いなければならないものであって,新しい松田式(1998)を用いるべきとする控訴人らの主張は,両式の意義を正解しないものであって失当である。 なお,第166回原子炉安全専門委員会(平成11年2月10日)においても「現段階においては,新しく提案された松田式(1998)を採用する必要はないと考える」と確認されてい。 る(乙115。 )e金井式-シード図について(控訴人らの主張)(a)本件安全審査においては,金井式がM(マグニチュード)と震源距離から「最大加速度」を求める式として用いられている。 本来は「最大速度振幅」を算出する式であるから,これを「最大加速度」の算出に用いることはそれ自体便宜的なものである。 そして,本件原子炉施設敷地での最大加速度の算定に用いた金井式-シード図の組合せは,実測値と比較すると過小評価をしている。 このため,原子力発電所の耐震設計・安全審査に用いる最大加速度の算定に用いることは合理性を欠いている。 (b)したがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)(a)本件原子炉施設の敷地地盤における最大加速度振幅を算定するために用いた金井式は,岩盤 定に用いることは合理性を欠いている。 (b)したがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)(a)本件原子炉施設の敷地地盤における最大加速度振幅を算定するために用いた金井式は,岩盤(地盤)における地震動の最大加速度振幅,震源距離及びMの関係を表す経験式であり,地震工学の分野において一般にその妥当性が広く認められている。したがって,敷地地盤における地震動の最大加速度振幅の算定式として- 369 -金井式を用いることは妥当であって合理性を欠くものではない。 (b)一般に地震動は,岩盤(地盤)から地表に到達するまでの間に大きく増幅される特性を有するため,当然のことながら,岩盤(地盤)における地震動を金井式によって算定した数値は増幅作用を受けた地表面等における観測値とは大きく異なるものである。 しかるに,控訴人らが主張する実測値と称するものは,表層に設置された地震計によって観測されたものであるから,かかる実測値と称するものに基づき金井式を用いて算出された敷地地盤の最大加速度振幅が過小評価であるとする控訴人らの主張は理由がない。 f鳥取県西部地震について(控訴人らの主張)(a)鳥取県西部地震においては,ω11の観測点では,地表において最大加速度1135Gal,計測震度6.6が記録され,また,地下100m地点でも東西方向で最大574.7Galが記録された(甲371,372。 )このω11の観測点で本件安全審査の方法で最大加速度を計算すると,地震発生以前は約195Galとなる。したがって,鳥取県西部地震発生前にω11地点において本件安全審査と同様の手法により原発の設置許可申請を行っていれば,設計用地震加速度が鳥取県西部地震でのω11地点における実測値と比べてかなりの過小評価となったはずであるから,設計用地震加速度の いて本件安全審査と同様の手法により原発の設置許可申請を行っていれば,設計用地震加速度が鳥取県西部地震でのω11地点における実測値と比べてかなりの過小評価となったはずであるから,設計用地震加速度の算定方法が全体として過小評価である。 (b)したがって,本件安全審査には瑕疵がある。 (被控訴人の主張)(a)鳥取県西部地震については,現在,多数の専門家が調査して- 370 -いるところであり,同地震の全体につき科学的に十分な考察を遂げた学術論文等は,いまだ公表されていない。このような段階において,同地震が,地震に関する従来の知見を否定し,新たな知見をもたらしたということはできない。 しかも,ω11地点及びその周辺においては,本件安全審査において実施されたような地質・地盤等に関する詳細な調査が実施されていない。控訴人らの主張は,詳細な調査を実施せずに判明していた資料を基にして設計用地震加速度を算定し,算定値が実測値よりも過小評価となったはずであると結論づけるものである。 (b)本件安全審査は,地震に係る安全性についても詳細な調査を行い,それによって判明した調査結果を考慮した上での設計用地震加速度の算定であるから,安全審査における設計用地震加速度の算定のための前提であるかかる態様の調査結果もないまま算定した値を基に本件安全審査の合理性を覆し得るものでない。 ④本件原子炉施設の安全性とスマトラ沖大地震・津波等について(控訴人らの主張)aインドネシアのスマトラ島沖において,平成16年12月26日午前9時58分ころ(日本時間,M9.0の地震が発生した(甲)477。以下「スマトラ沖大地震」という。この巨大地震のた。)め,巨大津波が発生し,その犠牲者は13カ国で18万人を超える最悪の結果となった。そして,波高25mに達した例もあり 発生した(甲)477。以下「スマトラ沖大地震」という。この巨大地震のた。)め,巨大津波が発生し,その犠牲者は13カ国で18万人を超える最悪の結果となった。そして,波高25mに達した例もあり,多数の鉄筋コンクリート建物が崩壊した(甲480,481。 )また,1983年(昭和58年)の日本海中部地震による津波の記録上,波高20m以上の津波が観測されたにもかかわらず,潮位計の記録ではせいぜい2mにとどまっている。 本件安全審査においては,科学的には意味のない潮位計の記録や- 371 -日本海が津波の静穏期であった時期の記録に基づいて行われ,防波堤が6.8mの高さで設計されており,過去の最大地震である新潟地震の最高潮位が満潮時に来ても,津波の高さが2.34m程で防波堤を越えることがないので,安全であるとしているが,日本海側の平坦な海岸線でも波高20mクラスの津波被害は発生すると考えるべきである。 bしたがって,本件安全審査における津波に対する審査は,現在の科学水準からは既に不合理である。 (被控訴人の主張)控訴人らの主張は争う。 オ本件原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)災害評価(立地評価)における全炉心溶融等の想定について(控訴人らの主張)本件安全審査の災害評価(立地評価)において想定している重大事故及び仮想事故は,現実に起きているチェルノブイル事故より小規模であり,また,実際の暴走事故や炉心溶融事 想定について(控訴人らの主張)本件安全審査の災害評価(立地評価)において想定している重大事故及び仮想事故は,現実に起きているチェルノブイル事故より小規模であり,また,実際の暴走事故や炉心溶融事故などの原発事故の被害は甚大であるから,災害評価(立地評価)が十分ではない。 したがって,本件安全審査には看過し難い欠落がある。 (被控訴人の主張)a原子炉設置許可に際しての安全審査における立地評価は,原子炉施設において,多重防護の考え方に基づく各種の事故防止対策が講じら- 372 -れ,その基本設計ないし基本的設計方針における事故防止対策に係る安全性が確認されることが前提条件としてあり,これに加えて原子炉施設における安全性の確保には念には念を入れるとの観点から,立地審査指針に基づいて,原子炉の公衆との離隔に係る立地条件の適否が検討されるものであり,立地評価において上記の事故防止対策が全く機能しないときに初めて生じ得る暴走事故や炉心溶融事故を仮定して審査する必要性はない。 また,立地審査指針において,原子炉の公衆との離隔に係る立地条件につき「その安全防護施設との関連において,一定の要求を満,」たすべきものとしているのも,このような安全審査の内容を踏まえてのものであることはいうまでもなく,この点については,安全評価審査指針(甲33,乙94)中の「解説」においても明確にされている。 b本件立地評価においては,重大事故及び仮想事故として,原子炉格納容器内に放射性物質が放出される事故としての冷却材喪失事故と,直接原子炉格納容器外に放射性物質が放出される事故としての主蒸気管破断事故との2種類の事故が想定されており(乙4の49頁),本件安全審査においては,これらの冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故は,放射性物質の環境への放出量が最大となる可能 れる事故としての主蒸気管破断事故との2種類の事故が想定されており(乙4の49頁),本件安全審査においては,これらの冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故は,放射性物質の環境への放出量が最大となる可能性をもつ事故事象で,放射性物質が原子炉格納容器内と原子炉格納容器外に放出される事故事象を代表して選定されたものであることから,各事故の想定は妥当なものであると判断された(乙4の52頁)ものである。 なお,想定された事故に対する安全審査が,立地審査指針に基づき,過誤,欠落なく適切に実施されている。 (イ)フィルタの信頼性について(控訴人らの主張)本件安全審査においては,災害評価(立地評価)において,重大事故- 373 -でも仮想事故でも,ヨウ素については常にフィルタにより95%除去されるということが前提とされているが,動燃東海再処理工場の火災・爆発事故では,火災発生後わずか7分で「高性能粒子フィルタ」が目詰まりして機能喪失しており,最大想定事故の場合においてフィルタが健全であることを前提にするのは非現実的で不合理である。 したがって,本件安全審査には看過し難い欠落がある。 (被控訴人の主張)a控訴人らの指摘する動燃東海事業所の再処理工場は,規制法第5章の規定により規制される「再処理の事業」を行う施設であって,本件原子炉施設とはその目的や安全確認の方法が異なるのであり,本件安全審査の対象となる原子炉施設の位置,構造及び設備の基本設計ないし基本設計方針に対する要求は,当然,再処理工場とは異なるものであるから,控訴人らの主張はその前提において失当である。 b本件安全審査においては,本件原子炉施設の原子炉建家内ガス処理系は高性能フィルタのみによって構成されるものではなく,事故時においても環境に放出される放射性物質を低減させる機能を有するもの る。 b本件安全審査においては,本件原子炉施設の原子炉建家内ガス処理系は高性能フィルタのみによって構成されるものではなく,事故時においても環境に放出される放射性物質を低減させる機能を有するものであると判断されている(乙4の33,34頁。 )第3当裁判所の判断 司法審査のあり方について(1)規制法24条1項各号の違反のうち,行訴法10条1項の「自己の法律上の利益に関係」する違法は何か。 ア行訴法10条1項は,取消訴訟においては,自己の法律上の利益に関係のない違法を理由としては,処分の取消しを求めることができないものと規定している。この規定の趣旨は,取消訴訟が違法な処分の是正を直接の目的とする客観訴訟ではなく,違法な処分によって侵害された原告の権利- 374 -・利益を救済するための主観訴訟であるから,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に該当するとして,当該処分の取消しを求めるについて行訴法9条にいう法律上の利益が認められる者であっても,取消訴訟において原告が具体的に主張し得る処分の違法事由は,自己の法律上の利益に関係のあるものに限られるとするものである。 そして,同条項所定の「自己の法律上の利益に関係のない違法」とは,一般的・抽象的には,被告行政庁の処分に存する違法のうち,原告の権利・利益を保護する趣旨で設けられたのではない法規に違反したにすぎない違法と解するのが相当であって,ここにいう「法律」とは当該処分の根拠規定である行政実体法規を意味するものというべきである。もっとも,このことは,原告が行政実体法規による処分の名宛人であることを要するものではなく,また,原告の権利・利益を保護する趣旨で設けられた規定であるかどうかは,当該行政実体法規の立法趣旨,同法規 もっとも,このことは,原告が行政実体法規による処分の名宛人であることを要するものではなく,また,原告の権利・利益を保護する趣旨で設けられた規定であるかどうかは,当該行政実体法規の立法趣旨,同法規と目的を共通する関連法規の関係規定との関係等を考慮して決定すべきものである。 そこで,本件処分は,内閣総理大臣が昭和52年9月1日付けで東京電力に対してなした原子炉設置許可処分であるから,第三者である控訴人らが本件処分の本来的効果によって直接その実体的な権利の侵害を受けたり,受忍義務を課されるものではないが,本件処分は規制法24条1項に基づくものであるから,同規定が上記のような意味で控訴人らの権利・利益を保護する趣旨を含むものであるか否かを,以下において検討する。 イ本件処分の要件を規定する規制法24条1項各号についてみてみると,まず,規制法24条1項各号所定の許可要件のうち,同項1号は「原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと」との要件を,同項2号は「その許可をすることによって原子力の開発及び利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと」との要件をそれぞれ定めているが,上記- 375 -各要件が定められた趣旨は,専ら,原子力の研究,開発及び利用を平和の目的に限り,かつ,原子力の開発及び利用を長期的視野に立って計画的に遂行するとの我が国の原子力に関係する基本政策に適合せしめ,もって,広く国民全体の公益の増進に資することにあると解され,それゆえ,原子炉施設の周辺住民等の個人的利益の保護を目的として内閣総理大臣の許可権限の行使を制限したものではないというべきである。 また,同項3号のうち,経理的基礎があることを要件とした趣旨は,原子炉の設置には多額の資金を要することにかんがみ,原子炉設置許可申請者の総合的経理能力及び原子炉設置の ものではないというべきである。 また,同項3号のうち,経理的基礎があることを要件とした趣旨は,原子炉の設置には多額の資金を要することにかんがみ,原子炉設置許可申請者の総合的経理能力及び原子炉設置のための資金計画を審査することにしたものであって,直接的には原子炉施設の周辺住民等の個人的権利・利益を具体的に保護する趣旨を含まないものである。 したがって,規制法24条1項1号,2号及び3号のうち経理的基礎に係る部分は,控訴人らの法律上の利益に関係しないものであるから,控訴人らは,これらの規定に違反することを理由に本件処分の取消しを求めることはできない。 ウこれに対し,規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分は,原子炉設置許可申請者が原子炉を設置するために必要な技術的能力及びその運転を的確に遂行するに足りる技術的能力を有するか否かにつき,また,同項4号は,当該申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質(使用済燃料を含む,核燃料物質によって汚染された物(原子核分。)裂生成物を含む)又は原子炉による災害の防止上支障がないものである。 か否かにつき,審査を行うべきものと定めている。 原子炉設置許可の基準として,同項3号のうち技術的能力に係る部分及び4号が設けられた趣旨は,原子炉が,原子核分裂の過程において高エネルギーを放出するウラン等の核燃料物質を燃料として使用する装置であり,その稼働により,内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるもの- 376 -であり,原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置,運転につき所定の技術的能力を欠くとき,又は原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれ 欠くとき,又は原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ,上記災害が万が一にも起こらないようにするため,原子炉設置許可の段階で,原子炉を設置しようとする者の上記技術的能力の有無及び申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備の安全性につき十分な審査をすることとし,原子炉を設置しようとする者において所定の技術的能力があり,かつ,原子炉施設の位置,構造及び設備が上記災害の防止上支障がないものであると認められる場合でない限り,主務大臣(本件処分当時は内閣総理大臣)は原子炉設置許可処分をしてはならないとするものと解される。 そして,同項3号所定の技術的能力の有無及び4号所定の安全性に関する各審査に過誤,欠落があった場合には重大な原子炉事故が起こる可能性があり,事故が起こったときは,原子炉施設に近い住民ほど被害を受ける蓋然性が高く,特に原子炉施設の近くに居住する者はその生命,身体等に直接的かつ重大な被害を受けるものと想定され,上記のような技術的能力及び安全性に関する各号の規定は,このような原子炉の事故等がもたらす災害による被害の性質を考慮した上で,設けられているものということができる。 そうすると,同項3号(技術的能力に係る部分に限る)及び4号の設。 けられた趣旨,上記各号が考慮している被害の性質等にかんがみると,上記各号は,単に公衆の生命,身体の安全,環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず,原子炉施設周辺に居住し,上記事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべき- 377 るにとどまらず,原子炉施設周辺に居住し,上記事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべき- 377 -ものとする趣旨を含むと解するのが相当である。 そして,第2の1の「前提となる事実(末尾に証拠等を掲げた事実のほかは,当事者間に争いがない(以下「上記前提となる事実」とい。)」う)によると,控訴人らは,本件原子炉敷地周辺から約65㎞までの範。 囲内の新潟県柏崎市及び刈羽郡ω1並びにその周辺市町村に居住する者であって,本件原子炉施設から環境へ放射性物質が放出されるとこれによる放射線被ばくに遭遇する危険があり,更に本件原子炉の事故が発生すると,その生命,身体及び財産等を侵害され得る立場にあるというべきであるから,このような控訴人らの個別的な権利・利益に関係する限りにおいて,規制法24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る)及び4号に係る。 違法事由を主張することができるというべきである。 エもっとも,控訴人らは,規制法24条1項各号所定の安全審査については,原子力発電所の必要性が前提となっているから,これも裁判所の審理・判断の対象事項に含まれる旨主張する(なお,以下において,当事者の主張として記載するものは,特に注記しない限り,本判決において当事者の主張として記載したもの及び原判決第二編に記載されている当事者の主張を合わせて記載するか,若しくは,本判決において当事者の主張として記載したものであり,原判決第二編にだけ記載されている当事者の主張を引用するときは,その旨注記する。 。)しかし,原子力発電所の社会的経済的有用性は,規制法24条1項の文言に照らしても,設置許可処分の要件ではなく,また,同条項各号所定の許可要件と関連性を有するとも するときは,その旨注記する。 。)しかし,原子力発電所の社会的経済的有用性は,規制法24条1項の文言に照らしても,設置許可処分の要件ではなく,また,同条項各号所定の許可要件と関連性を有するともいえないのであって,原子炉施設による発電の必要性はその安全審査の対象とはなっていないというべきである。そして,本件訴訟の審理の対象は,規制法24条1項各号所定の許可要件に適合することについての内閣総理大臣の判断における違法性の有無であり,しかも,控訴人らは,行訴法10条1項により,控訴人らの個別的な権利- 378 -・利益に関係する規制法24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る)及び4号に係る違法事由のみに限り主張することができるのである。 から,原子力発電所の必要性の有無そのものは本件訴訟の審理・判断の対象とはならないというべきである。 オところで,規制法24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る)及。 び4号の要件は極めて抽象的,一般的である上,後記(4)のとおり,原子炉施設の安全性に関する審査の適合性については,各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。そして,規制法23条,24条2項は,同法24条1項各号所定の許可要件に適合することについての内閣総理大臣の判断が適正になされることを担保するために厳格な手続を定めているというべきであるから,安全審査手続が適法であってはじめて上記判断の適正が保障されるということができる。 そうすると,手続上の違法が実体上の違法をもたらさないことが明白でない限り,控訴人らは,手続上の違法を主張する利益があるもの解するのが相当である。それゆえ,被控訴人は,規制法には原子炉施設の周辺住民 うすると,手続上の違法が実体上の違法をもたらさないことが明白でない限り,控訴人らは,手続上の違法を主張する利益があるもの解するのが相当である。それゆえ,被控訴人は,規制法には原子炉施設の周辺住民に対して原子炉設置許可手続への参加を保障する趣旨の規定がないことから,上記住民は安全審査手続自体に関する利益を個別的に保護されているとはいえず,安全審査手続の違法は,控訴人らの法律上の利益に関係がない旨主張するが,被控訴人の上記主張は採用することができない。 カしたがって,控訴人らが本件訴訟において主張することのできる本件処分の違法事由は,本件安全審査の手続上の瑕疵(実体上の違法をもたらさないことが明白であるものを除く)並びに規制法24条1項3号のうち。 技術的能力に係る部分及び4号各所定の要件適合性の審査・判断に係る瑕疵に限られるというべきである。 - 379 -(2)原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項となるものは何か。 ア規制法は,その規制の対象を,製錬事業(第2章,加工事業(第3)章,原子炉の設置,運転等(第4章,再処理事業(第5章,核燃料物)))質等の使用等(第6章,国際規制物質の使用(第6章の2)に分け,そ)れぞれにつき内閣総理大臣の指定,許可,認可等を受けるべきものとしているのであるから,第4章所定の原子炉の設置,運転等に対する規制は,専ら原子炉設置の許可等の同章所定の事項をその対象とするものであって,他の各章において規制することとされている事項までもその対象とするものではないことは明らかである。 また,規制法第4章の原子炉の設置,運転等に関する規制の内容をみると,原子炉の設置の許可,変更の許可(23条ないし26条の2)のほかに,設計及び工事方法の認可(27条,使用前検査(28条,保安規))定の認可(3 の原子炉の設置,運転等に関する規制の内容をみると,原子炉の設置の許可,変更の許可(23条ないし26条の2)のほかに,設計及び工事方法の認可(27条,使用前検査(28条,保安規))定の認可(37条,定期検査(29条,原子炉の解体の届出(38))条)等の各規制が定められており,これらの規制が段階的に行われることとされている(なお,本件原子炉のような発電用原子炉施設について,規制法73条は27条ないし29条の適用を除外するものとしているが,これは,電事法41条,43条及び47条により,その工事計画の認可,使用前検査及び定期検査を受けなければならないこととされているからである。 。)したがって,原子炉の設置の許可の段階においては,専ら当該原子炉の基本設計のみが規制の対象となるのであって,後続の設計及び工事方法の認可(27条)の段階では規制の対象とされる当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法は規制の対象とはならないものと解すべきである。 イ(ア)もっとも,控訴人らは,原子力発電が火力発電や水力発電と異なる放射能災害をもたらす潜在的危険性を有するから,原子炉施設近くの住民の生命・身体等の安全を確保するため,原子炉施設の計画・設計段階- 380 -から運転段階まで審査をすべきであるとし,更にJCO事故の教訓に照らすと,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象は,原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針のみならず,原子炉の具体的な詳細設計や運転管理並びに廃棄物処理までのすべてが含まれ,総合的に安全性の審査がなされるべきである旨主張する。 しかし,控訴人らの主張は,原子炉設置許可処分の後続の規制である工事計画の認可(電事法41条,使用前検査(同法43条,保安規))定の認可(規制法37条)などの各段階において審査,確認されるべき しかし,控訴人らの主張は,原子炉設置許可処分の後続の規制である工事計画の認可(電事法41条,使用前検査(同法43条,保安規))定の認可(規制法37条)などの各段階において審査,確認されるべき詳細設計,あるいは具体的な運転管理に係る事項等に関する事由を原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項とするものであって,これは,上記アにみたように原子炉の設置の許可は後続の詳細設計及び工事方法の認可等とは別個の処分とし,その要件を特定して定めている規制法の体系に反するものであり,そして,詳細設計や運転管理並びに廃棄物処理等は,上記のように原子炉設置許可処分である本件処分の要件ではないから,控訴人らの上記主張は採用することができない。 また,控訴人らの主張に係るJCO東海事業所は,規制法の第3章所定の加工事業施設であるから,原子炉設置許可段階の安全審査である本件安全審査とは安全規制の分野が異なるので,同事業所において生じたJCO事故は,本件安全審査の対象とは何ら関係がないから,控訴人らの上記主張は失当である。 (イ)さらに,控訴人らは,我が国においては固体廃棄物の最終処理技術も確立していないにもかかわらず,原子力規制として核燃料物質の製錬から廃棄などの最終処理に至る過程の安全性について的確な審査と規制手続がないことは,憲法13条の国民の生命・身体への尊重義務に違反するものであり,憲法31条の法定手続の保障にも違反する旨主張する。 しかしながら,原子炉設置許可申請書の提出に当たっては,規制法2- 381 -3条2項8号所定の使用燃料の処分の方法について「その売渡,貸付,返還等の相手方及びその方法又はその廃棄の方法」を記載し(原子炉規則1条の2第1項5「核燃料物質及び核燃料物質によって汚染され),た物による放射線の被曝管理並びに放射性廃棄 て「その売渡,貸付,返還等の相手方及びその方法又はその廃棄の方法」を記載し(原子炉規則1条の2第1項5「核燃料物質及び核燃料物質によって汚染され),た物による放射線の被曝管理並びに放射性廃棄物の廃棄に関する説明書」を添付すること(原子炉規則2条9号)等と規定されている上,内閣総理大臣の安全審査に際しては,規制法23条,24条により原子炉設置許可申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備の安全性に関する審査の適正を確保するため,各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門技術的知見に基づく意見を聴き,これを尊重するという,慎重な手続が法律で定められているから,その安全審査の合理性を十分首肯し得るものである。そして,上記アにみた規制法の構造に照らすと,原子炉設置の許可は,原子炉の設置,運転に関する一連の規制の最初に行われる重要な行政処分であり,原子炉設置許可の段階で当該原子炉の基本設計における安全性が確認されることは,後続の各規制の当然の前提となるものであるから,原子炉設置許可の段階における安全審査の対象の範囲を上記アのように解したからといって,上記安全審査の意義,重要性を何ら減ずるものではないというべきである(最高裁判所昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁(伊方原発最高裁判決,同平成2年)(行ツ)第147号平成4年10月29日第一小法廷判決・訟務月報39巻8号1563頁(福島第二原発最高裁判決)等参照。 )そうすると,控訴人らの上記主張はその前提を欠くものであり理由がない。 ウしたがって,原子炉設置の許可の段階の安全審査においては,当該原子炉施設の安全性にかかわる事項のすべてをその対象とするものではなく,その基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とする ない。 ウしたがって,原子炉設置の許可の段階の安全審査においては,当該原子炉施設の安全性にかかわる事項のすべてをその対象とするものではなく,その基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするものと解する- 382 -のが相当である。 (3)変更許可処分と本件訴訟における審理・判断の対象について本件処分後の本件各変更許可処分の違法事由は本件訴訟における審理・判断の対象となるか否か。 ア上記前提となる事実のとおり,本件原子炉施設については本件各変更許可処分がなされているところである。 イ規制法26条1項によれば,原子炉設置者は,同法23条2項2号から5号まで及び8号に掲げる事項を変更しようとするときは,主務大臣の許可を受けなければならないと定めており,同法26条4項によれば,変更許可処分に当たっては,許可処分への適合性を改めて審査するものとされている。そして,同法23条2項3号は,原子炉の型式,熱出力及び基数,同項4号は,原子炉を設置する工場又は事業所の名称及び所在地,同項5号は原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備,同項8号は使用済燃料の処分の方法を掲げている(ただし,変更許可処分においては,同項4号については,工場又は事業所の名称のみを変更しようとする場合を除く。このように,同一の原子炉施設の場合を含み,原子炉設置者が同。)法23条2項2号から5号まで及び8号に掲げる事項を変更しようとするときは,当初の原子炉設置許可処分そのもののを変更する処分ではなく,これとは別個の新たな変更許可処分を受けるべきものとされているから,当初の設置許可処分とその後の変更許可処分とはいずれも別個の行政処分であることは明らかである。そして,変更許可処分は,原子炉設置者に対し,変更許可された事項を設置することができる法的地位を付与するが 当初の設置許可処分とその後の変更許可処分とはいずれも別個の行政処分であることは明らかである。そして,変更許可処分は,原子炉設置者に対し,変更許可された事項を設置することができる法的地位を付与するが,これを超えて当初の設置許可処分自体の効力を一部取り消しあるいは変更する効力を有するものではなく,それゆえ,変更許可処分がなされても,当初の設置許可処分は,そのままの効力を維持するものと解される。 したがって,当初の設置許可処分である本件処分の取消訴訟の継続中に,- 383 -複数の変更許可処分がなされたとしても,これら処分は,それぞれ別個の処分であるから,変更許可処分の内容を設置許可処分の内容と実質的に同一視し得る等の特段の事情がない限り,たとえ後になされた変更許可処分に瑕疵があったとしても,これが遡って本件処分の違法事由になることはあり得ないのであり,それゆえ,変更許可処分の違法事由は,上記のような特段の事情がない限り,本件訴訟における審理・判断の対象にならないものである。 ウ(ア)もっとも,控訴人らは,原子炉施設の安全性については,その施設全体を総合的に評価して判断すべきものであるとし,原子炉設置許可後も度々変更許可処分がなされているので,変更された従来の燃料集合体も審査対象とならないとすれば,その時点で当該原子炉についての安全性は具体的にはおよそ評価できなくなってしまうから,原子炉設置許可処分の取消訴訟においても,変更許可処分の違法事由を審理・判断できる旨主張する。 しかしながら,本件訴訟は,本件原子炉の設置許可処分の取消訴訟であるから,審理・判断の対象になるのは,本件処分が法的に本件原子炉設置の許可要件を充たしているかどうかであり,安全審査の対象事項になるのも,本件原子炉の基本設計のみであって,後続の段階で規制の対象とされる ,審理・判断の対象になるのは,本件処分が法的に本件原子炉設置の許可要件を充たしているかどうかであり,安全審査の対象事項になるのも,本件原子炉の基本設計のみであって,後続の段階で規制の対象とされる本件原子炉の具体的な詳細設計や工事の方法等は対象とはならないものである。それゆえ,本件処分の取消訴訟は,本件原子炉が現実に建設され稼働する以前においても,提起することができるものであり,その訴訟においては,本件原子炉の基本設計が適法であるか否かが審理・判断の対象となるものである。したがって,本件訴訟の係属中に複数の変更許可処分がなされ,変更許可処分に基づいて設備等が変更された結果現実に稼働している原子炉としては,その型式,熱出力等に変更が生じたとしても,これによって本件訴訟の上記のような対象が変わ- 384 -るものではない。 そして,各変更許可処分は,それぞれ独立の行政処分であり,控訴人らは,これに対してそれぞれ独立の取消訴訟を提起することができたのであるから,本件訴訟において,各変更許可処分の違法事由を主張できないからといって,控訴人らの権利保護に欠けるところがあるとはいえない。 ちなみに,控訴人らが本件訴訟において変更許可処分の違法事由も主張し得るとすれば,行訴法上,変更許可処分があったときは,その都度変更許可処分に対する取消訴訟を提起することが可能であるから,原子炉設置許可処分の取消訴訟と別途提起される変更許可処分の取消訴訟の各審理が重複し,判断に矛盾抵触が生じるおそれがあるということができる。また,変更許可処分の取消訴訟を提起しなくとも,変更許可処分がなされるたびに,当初の原子炉設置許可処分の取消訴訟において,変更許可処分の違法事由を追加して主張することができるとすると,同取消訴訟の審理が長期化し,その審理が錯綜するおそれがあ ,変更許可処分がなされるたびに,当初の原子炉設置許可処分の取消訴訟において,変更許可処分の違法事由を追加して主張することができるとすると,同取消訴訟の審理が長期化し,その審理が錯綜するおそれがあるだけでなく,変更許可処分に対する取消訴訟の提起については行訴法14条が出訴期間を定めた趣旨を没却することになる。したがって,本件訴訟において控訴人らが変更許可処分の違法事由も主張し得るとする見解は,以上のような理由からも採用することができない。 (イ)また,控訴人らは,①当初の原子炉設置許可処分に対する取消訴訟の係属中に変更許可処分があった場合は,当該施設に係る当初の原子炉設置許可処分の内容の変更を目的とする処分であるから,この変更許可処分に基づく当該施設の変更が現実に実施された以上,実体的には,両処分を一体的なものとして取り扱うべきであること,②原子炉施設においてはその施設,設備の各部分が相互に補完しあって機能しているので,変更後の施設,設備を除いてその原子炉施設の安全性の有無を判断する- 385 -ことはできないこと,③少なくとも原子炉施設の安全性の問題に関しては,後の変更許可処分によって変更を許可された後の内容が,そのまま当該施設に係る原子炉設置許可処分の処分内容となる,つまり変更許可処分によって内容を変更された原子炉設置許可処分が全体として存続し,原子炉の設置,運転の法的根拠は(変更許可処分によって内容を変更された)原子炉設置許可処分に一元化されていることなどから,変更許可処分の違法事由も原子炉設置許可処分の取消訴訟で主張できると主張する。 しかしながら,上記のように,本件訴訟において審理・判断の対象になるのは,本件処分が法的に本件原子炉設置の許可要件を充たしているかどうかであり,安全審査の対象事項になるのも,本件原子炉の基 する。 しかしながら,上記のように,本件訴訟において審理・判断の対象になるのは,本件処分が法的に本件原子炉設置の許可要件を充たしているかどうかであり,安全審査の対象事項になるのも,本件原子炉の基本設計のみであって,その後の施設,設備の変更は審理・判断の対象とならないから,控訴人らの上記主張は採用することができない。ちなみに,規制法26条1項本文,23条2項3号によると,単一の工場又は事業所に設置される原子炉の基数を変更しようとするときも変更許可の申請をすべきものとされているので,単一の工場又は事業所において,既に1基の原子炉のみが設置されているときにその基数を増設する場合も,増設炉について新たに設置許可処分を受けるのではなく,変更許可処分を受けるべきであり,その際,同法26条4項により原子炉設置許可に関する同法24条の規定が準用されるので,原子炉の使用の目的,型式,熱出力等のほか,原子炉施設の位置,構造及び設備,工事計画,原子炉に燃料として使用する核燃料物質の種類及びその年間予定使用量,あるいは使用済燃料の処分の方法等について,改めてその許可基準への適合性が審査されるから,このような場合には,変更許可処分が新たな行政処分であることは一層明らかであるということができる。また,変更許可処分後において,仮に,当該原子炉施設が全体として安全性を欠くに- 386 -至っていると判断される場合は,変更許可処分後の事後的な事情の発生によってそれ以後安全性を欠く状態が現出したとみることができるから,変更許可処分に関する違法事由を構成するものであって,既存の原子炉設置許可処分に関する違法事由を構成することはないというべきである。 以上のように,変更許可処分の違法事由は,原子炉設置許可処分に対する取消訴訟においては審理・判断の対象とはならないとい 既存の原子炉設置許可処分に関する違法事由を構成することはないというべきである。 以上のように,変更許可処分の違法事由は,原子炉設置許可処分に対する取消訴訟においては審理・判断の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張は採用することができない。 (ウ)次に,控訴人らは,原子炉設置許可処分が原子炉の設置,運転に関する許認可の中で冒頭に位置し,唯一専門家で構成される当時の原子力委員会が安全審査を行う,最も重要な手続であって,この手続で審査される原子炉施設の安全性は,その施設全体を総合的に評価して判断すべきところ,とりわけ事故時の安全性において極めて重要な燃料棒が損傷するか否かという点の判断は燃料棒の発熱特性,形状,核的特性が決まらなければ評価ができないというべきであるが,変更許可処分により燃料集合体そのものの変更が多数回なされているので,変更された従来の燃料集合体が審査対象とならないとすれば,その時点で当該原子炉についての安全性は具体的にはおよそ評価できなくなってしまうから,原子炉設置許可処分の取消訴訟においても,変更許可処分の違法事由を審理・判断できる旨主張する。 しかし,上記イのとおり,変更許可処分によって原子炉設置許可処分の効力の消滅,変更等をもたらすものではないから,たとえ変更許可処分により燃料集合体の変更が多数回なされているとしても,変更された従来の燃料集合体に関する原子炉設置許可処分の効力に影響はないので,変更許可処分により変更された燃料集合体に関する違法事由は,本件処分の違法事由とならないものというべきである。 (エ)さらに,控訴人らは,規制法においては,変更許可処分後において- 387 -事業者に重大な違法事由があって許可処分の取消しをする場合にも原子炉設置許可処分のみが取り消されるので(規制法33条 エ)さらに,控訴人らは,規制法においては,変更許可処分後において- 387 -事業者に重大な違法事由があって許可処分の取消しをする場合にも原子炉設置許可処分のみが取り消されるので(規制法33条2項,変更許)可処分後の原子炉施設の安全性の有無については,当初の原子炉設置許可処分に対する取消訴訟でも審理・判断の対象となる旨主張する。 しかし,原子炉の設置許可の要件は,規制法24条に定められており,その許可処分がなされ,更に変更許可処分がなされた後に同変更許可処分を取り消す場合の要件は全く別であるから,後者に関する規定によって原子炉設置許可処分の取消訴訟における審理・判断の対象を定めることはできない。 エ以上のとおり,本件各変更許可処分は,本件処分とは別個の行政処分であり,そして,本件各変更許可処分の内容を設置許可処分である本件処分の内容と実質的に同一視し得る等の特段の事情があると認め得る証拠はないから,本件各変更許可処分の違法事由は,これら変更許可処分に対する取消訴訟において審理・判断の対象となるとしても,本件訴訟における審理・判断の対象とはならないものというべきである。 もっとも,後記(4)のとおり,原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟においては「現在の科学技術,水準」に照らし,裁判所の審理・判断がなされるべきであるから,変更許可処分に基づく一定の変更が現実に実施された特定の原子炉施設の安全性の問題については,当該原子炉施設の設備の各部分が相互に補完しあって機能しているので,その変更後の施設,設備を除いてその安全性の有無を判断することはできないなどの事情がある場合には,上記「現在の科学技術水準」及びその適合性に関する主張・立証のために,変更許可処分に係る安全審査の内容,科学的知見及びその を除いてその安全性の有無を判断することはできないなどの事情がある場合には,上記「現在の科学技術水準」及びその適合性に関する主張・立証のために,変更許可処分に係る安全審査の内容,科学的知見及びその資料等を用いることは許されるというべきである。 (4)本件処分の専門技術性とその司法審査の方法について- 388 -ア上記(1)のとおり,原子炉を設置しようとする者は,内閣総理大臣の許可を受けなければならないものとされており(規制法23条1項,内閣)総理大臣は,原子炉設置の許可申請が,同法24条1項各号に適合していると認めるときでなければ許可してはならず(同条1項,上記許可をす)る場合においては,上記各号に規定する基準の適用については,あらかじめ核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること等を所掌事務とする原子力委員会の意見を聴き,これを尊重してしなければならないものとされており(同条2項,原子力委員会には,学識経験者及び関係行政機関の)職員で組織される原子炉安全専門審査会が置かれ,原子炉の安全性に関する事項の調査審議に当たるものとされている(設置法14条の2,3。 )また,規制法24条1項3号は,原子炉を設置しようとする者が原子炉を設置するために必要な技術的能力及びその運転を適確に遂行するに足りる技術的能力を有するか否かにつき,同項4号は,当該申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質(使用済燃料を含む,核燃料。)物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含む)又は原子炉によ。 る災害の防止上支障がないものであるか否かにつき,審査を行うべきものと定めている。原子炉設置許可の基準として,上記のように定められた趣旨は,上記のように,原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用す につき,審査を行うべきものと定めている。原子炉設置許可の基準として,上記のように定められた趣旨は,上記のように,原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用する装置であり,その稼働により,内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって,原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置,運転につき所定の技術的能力を欠くとき,又は原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ,上記災害が万が一にも起こらないようにするため,原子炉設置許可の段階で,原子炉を設置しようとする者の上記技術的能力並び- 389 -に申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備の安全性につき,科学的,専門技術的見地から,十分な審査を行わせることにあるものと解される。 イ上記技術的能力を含めた原子炉施設の安全性に関する審査は,当該原子炉施設そのものの工学的安全性,平常運転時における従業員,周辺住民及び周辺環境への放射線の影響,事故時における周辺地域への影響等を,原子炉設置予定地の地形,地質,気象等の自然的条件,人口分布等の社会的条件及び当該原子炉設置者の上記技術的能力との関連において,多角的,総合的見地から検討するものであり,しかも,上記審査の対象には,将来の予測に係る事項も含まれているのであって,上記審査においては,原子力工学はもとより,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであることが明らかである。 そして,規制法24条2項が,内閣総理大臣は,原子炉設置の許可をする場合においては,同条1項3号(技術的能力に係る部分に限る 技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであることが明らかである。 そして,規制法24条2項が,内閣総理大臣は,原子炉設置の許可をする場合においては,同条1項3号(技術的能力に係る部分に限る)及び4。 号所定の基準の適用について,あらかじめ原子力委員会の意見を聴き,これを尊重してしなければならないと定めているのは,上記のような原子炉施設の安全性に関する審査の特質を考慮し,上記各号所定の基準の適合性については,各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。 そして,どのような事項が原子炉設置の許可の段階における安全審査の対象となるべき当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項に該当するのかという点も,上記各号所定の基準の適合性についての内閣総理大臣の合理的な判断を構成するものとして,同様に原子力安全委員会の意見を十分に尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねられていると解するのが相当である。 ウ以上の点を考慮すると,上記原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争- 390 -われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断は,原子力委員会若しくは安全審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって,現在の科学技術水準に照らし,上記調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該原子炉施設が上記具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは安全審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があり,被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,被告行政庁の上記判断に不合理な点 基準に適合するとした原子力委員会若しくは安全審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があり,被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,被告行政庁の上記判断に不合理な点があるものとして,上記判断に基づく原子炉設置許可処分は違法であると解される。 そして,原子炉設置許可処分についての上記取消訴訟においては,同許可処分が上記のような性質を有することにかんがみると,被告行政庁がした上記判断に不合理な点があることの主張・立証責任は,本来,原告が負うべきものと解されるが,当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると,被告行政庁の側において,まず,その依拠した上記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等,被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠,資料に基づき主張・立証する必要があり,被告行政庁が上記主張・立証を尽くさない場合には,被告行政庁がした上記判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。 エもっとも,控訴人らは,地球的規模の災害及び原子炉施設の周辺住民らである控訴人らの災禍を防止するためには,その最終的かつ有効な規制は,司法審査以外にはないから,内閣総理大臣の規制法適合性の判断は最終的にその裁量にゆだねられるものではなく,また,原子炉施設については絶対的な安全性が確保されるべきであって,その安全性は専門技術的な検討によって一義的に定まるというべきであるから,司法審査の対象は,原子力委員会若- 391 -しくは安全審査会の審査基準や審査過程の「看過し難い過誤,欠落」があるか否かという消極的な姿勢ではなく,審査基準や審査過程の合理性であり,内閣総理大臣の原子炉設置許可処分の適法性そのものであるとして,裁判所は,規制法24 準や審査過程の「看過し難い過誤,欠落」があるか否かという消極的な姿勢ではなく,審査基準や審査過程の合理性であり,内閣総理大臣の原子炉設置許可処分の適法性そのものであるとして,裁判所は,規制法24条1項各号の適合性について改めて独自の審理を行い,その結果に基づく裁判所自らの判断と対比して直接その適否を決する実体的判断をすべきである旨主張する。 確かに人の生命,身体の安全は,最大限の尊重を必要とするけれども,現代社会において,科学技術を利用した装置等は,絶対に安全というものはなく,常に何らかの危険性を有しているが,その危険性が社会通念上容認できる水準以下である場合,又はその危険性の相当程度が人間によって管理できると考えられる場合に,その危険性の程度と科学技術の利用により得られる利益の大きさとの比較考慮の上で,上記装置等を一応安全なものとして利用してきている。そして,原子炉施設についてもこのような相対的安全性の考え方を適用することが許されないものではなく,規制法24条の規定も,このような相対的安全性の考え方を採用していると解され,原子炉の安全性判断の手続・方法としては,上記のように原子炉の安全性については多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づく総合的判断が必要であることから,各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的判断にゆだねたものと解されるので,原子炉設置許可処分の取消訴訟においては,裁判所の審理・判断の対象は,このようにしてされた内閣総理大臣の判断に不合理な点があるか否かであるというべきである。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 (5)控訴人らの主張する温排水の熱的影響,固体廃棄物の最終処分,使用済燃料の再処理,輸送及 合理な点があるか否かであるというべきである。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 (5)控訴人らの主張する温排水の熱的影響,固体廃棄物の最終処分,使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分,廃炉,労働者被ばく並びに防災計画に関する違法事由は,司法審査の対象となるか否か。 - 392 -ア温排水の熱的影響に関する主張について控訴人らは,本件処分において,温排水について審査されなかったのは違法である旨主張するが(原判決第二編第一章第五節第三,温排水自体)は,火力発電所の発電設備など蒸気等を冷却するために水を使用する設備からは常に排出されるものであって,その熱的影響等の問題は,原子炉施設固有の問題ではなく,そもそも原子力の利用に係る固有の事項を規制の対象としている規制法においてはその対象とされないものであり,したがって,本件訴訟における審理,判断の対象とはならないから,控訴人らの上記主張は失当である。 イ固体廃棄物の最終処分に関する主張について控訴人らは,本件処分において,本件原子炉の運転に伴って発生する固体廃棄物の最終処分について審査されなかったのは,規制法24条1項2号及び4号要件に違反する旨主張するが(原判決第二編第一章第六節第二),款第一の三,同項2号の要件は,控訴人らの法律上の利益に関係がなくまた,固体廃棄物に係る安全性に関する事項については,原子炉設置許可に際しての安全審査において,固体廃棄物の当該原子炉施設の敷地内における廃棄設備の構造等が災害防止上支障がないものかどうか等,原子炉施設における基本設計の安全性に関係のある事項が,同項4号の許可要件に適合するかどうかの観点から上記審査の対象となるにとどまるものであって,固体廃棄物の最終処分に係る安全性の問題は上記審査の対象に含まれるものではないか 安全性に関係のある事項が,同項4号の許可要件に適合するかどうかの観点から上記審査の対象となるにとどまるものであって,固体廃棄物の最終処分に係る安全性の問題は上記審査の対象に含まれるものではないから,控訴人らの上記主張は理由がない。 ウ使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分に関する主張について控訴人らは,本件処分において,使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分について審査されなかったのは,規制法24条1項2号及び4号要件に),違反する旨主張するが(原判決第二編第一章第六節第二款第一の四,五同2号の要件は,控訴人らの法律上の利益に関係がないものであり,また,- 393 -使用済燃料に係る安全性に関する事項については,原子炉設置許可に際しての安全審査において,使用済燃料の当該原子炉施設の敷地内における貯蔵設備の構造等が災害防止上支障がないものかどうか等,原子炉施設における基本設計の安全性に関係のある事項が,同項4号の許可要件に適合するかどうかの観点から上記審査の対象となるにとどまり,使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分に係る安全性の問題は上記審査の対象に含まれるものではないから,控訴人らの上記主張は採用することができない。 エ廃炉に関する主張について控訴人らは,本件処分において,廃炉について審査されなかったのは,規制法24条1項2号及び4号要件に違反する旨主張するが(原判決第二編第一章第六節第二款第一の六,同項2号の要件は,控訴人らの法律上)の利益に関係がないものであり,また,廃炉に係る安全性に関する事項は,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象となる事項とされておらず,別途,規制法38条,65条,66条等によって規制されることとされているから,控訴人らの上記主張は理由がない。 オ労働者被ばくに関する主張について控訴人らは,本件 の対象となる事項とされておらず,別途,規制法38条,65条,66条等によって規制されることとされているから,控訴人らの上記主張は理由がない。 オ労働者被ばくに関する主張について控訴人らは,本件処分に際し,原発従事者の被ばくについて審査しなかったのは違法である旨主張するが(原判決第二編第一章第六節第二款第一の七,労働者被ばくに関する問題は,本件原子炉施設の周辺住民である)と主張するにとどまる控訴人ら自らの法律上の利益に関係のない事項であるから,控訴人らの上記主張は失当である。 カ防災計画に関する主張について控訴人らは,本件処分に際し,防災計画について審査しなかったのは違法である旨主張するが(原判決第二編第一章第六節第二款第五,防災対)策に関係する事項は,原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項ではないから,本件原子炉設置許可に際しての安全審査の対象ではないので,- 394 -控訴人らの上記主張は失当である。 本件処分の手続的違法性の有無について(1)本件処分の手続について上記前提となる事実によると,本件処分は,本件安全審査を含めて,設置法,規制法等の法定の手続にのっとり行われたものであると認められる。 (2)本件安全審査手続における構造的瑕疵の有無についてア安全審査の手続規定に不備,不明確の瑕疵があるか否か。 (ア)控訴人らは,行政手続が刑事手続と性質上差異があるとしても,憲法31条の適正手続の要請は行政手続においても民主的統制の必要から広く適用されるべきであって,行政手続法に照らすと,行政手続に対する民主的統制の必要性は高いというべきところ,原子炉施設の周辺住民の同意手続はともかくとして,規制法等においては原子炉設置許可申請書やその添付書類の事前公開手続は定められておらず,公聴会の開催すら保障されていないの 性は高いというべきところ,原子炉施設の周辺住民の同意手続はともかくとして,規制法等においては原子炉設置許可申請書やその添付書類の事前公開手続は定められておらず,公聴会の開催すら保障されていないので,このような安全審査手続によっては判断の公正さや正確さを保てることはできないから,規制法等の原子炉施設設置許可手続に関する規定は憲法31条に違反するものであり,また,住民の参加手続と資料や議事録の公開手続規定もなく,原子炉設置許可の公正を担保する厳格かつ適正な法律上の手続規定もないまま本件安全審査が行われているから,本件処分も憲法31条に違反する旨主張する。 しかし,行政手続につき憲法31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても,行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があり,また,行政目的に応じて多種多様であるから,常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではないと解するのが相当である。 そこで,本件処分に関して検討すると,上記1(4)のように,原子炉設置の安全性の審査に当たっては,多方面にわたる極めて高度な最新の- 395 -科学的,専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるところ,規制法及び設置法は,原子力発電所の設置規制手続について具体的に規定し,原子炉の安全性については多数の専門家をもって組織される安全審査会において,各審査委員の専門分野の専門技術的知見に基づくだけでなく,安全審査会の審議・決定を通じて総合的見地からの検討・判断が行われ,その結果報告に基づいて原子力委員会が意見を述べ,これを尊重して内閣総理大臣が最終的に判断することとしており,このように原子炉設置許可の段階で,原子炉を設置しようとする者の技術的能力並びに申請に係る原子炉施設の位 づいて原子力委員会が意見を述べ,これを尊重して内閣総理大臣が最終的に判断することとしており,このように原子炉設置許可の段階で,原子炉を設置しようとする者の技術的能力並びに申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備の安全性につき,科学的,専門技術的見地から,十分な審査が行われるように規定されている。すると,このような規制によって,原子炉設置許可処分をするに当たり判断の公正さが十分担保されるといえるから,安全審査の手続規定が不備,不明確であるということはできない。 (イ)以上にかんがみると,基本法及び規制法が,原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって,その一事をもって,上記各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず,また,本件処分に際し,周辺住民である控訴人らに安全審査の議事録及び資料が公開されず,適正手続の保障としての公聴会,告知・聴聞の手続が開催されなかったことが,同条の法意に反するものではないというべきであり(伊方原発最高裁判決参照,なお,これらが行政手続法の趣旨に反するともいえ)ないから,控訴人らの上記主張は理由がない。 イ安全審査に係る技術的基準等が不合理,不明確であるか否か。 (ア)控訴人らは,原子炉設置許可基準や安全審査基準は,安全審査そのものを左右しその決め手になる重要な事項であるので,可能な限り明確化され,法律で定めるべきであるから,原子炉の安全審査について必要- 396 -不可欠な事項(審査対象,審査項目等)と,それぞれの審査事項の審査や検討に用いる技術や資料等の範囲,及びそれらの水準ないし精度,専門家の見解や分析結果等が分かれているときの選択基準や取扱方法,基準を改定し,変更する場合の手続等は,法律の委任もなくこれが被告行 査や検討に用いる技術や資料等の範囲,及びそれらの水準ないし精度,専門家の見解や分析結果等が分かれているときの選択基準や取扱方法,基準を改定し,変更する場合の手続等は,法律の委任もなくこれが被告行政庁の裁量にゆだねられる根拠はないところ,規制法24条1項4号の規定の仕方は極めて抽象的であって,安全性に係る具体的な事項の審査基準をこれに求めることは困難であり,更に実際の安全審査に用いられている立地審査指針,ECCS安全評価指針,線量目標値指針,線量目標値評価指針,安全設計審査指針,気象指針等の安全審査の基準は,単なる行政内部の内規にすぎず,そのときどきの情勢によって容易に変えられ,しかもその内容や水準が明瞭にして高度であるとはいえず,このような不合理,不明確な基準によりなされた安全審査の手続には重大な瑕疵があるから,規制法等の原子炉設置許可手続に関する手続規定は憲法31条,41条,73条,81条に違反する旨主張する。 しかし,規制法24条1項4号は,原子炉設置許可の基準として,原子炉施設の位置,構造及び設置が核燃料物質(使用済核燃料を含む,。)核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含む)又は原。 子炉による災害の防止上支障がないものであることと規定しているが,それは,原子炉施設の安全性に関係する審査が,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づいてされる必要がある上,科学技術は不断に進歩,発展しているため,原子炉施設の安全性に関する基準を具体的かつ詳細に法律で定めることは困難であるのみならず,最新の科学技術水準への即応性の観点からみて適当ではないとの見解に基づくものと考えられ,上記見解は十分首肯し得るところである。 そして,上記1(4)ア及びイのとおり,規制法24条1項3号(技術的能力に係る部分に限 水準への即応性の観点からみて適当ではないとの見解に基づくものと考えられ,上記見解は十分首肯し得るところである。 そして,上記1(4)ア及びイのとおり,規制法24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る)及び4号の要件適合性の判断については,。 - 397 -内閣総理大臣の専門技術的判断にゆだねているから,具体的審査基準を定めてその適合性を判断する方法を採用するか,又はこのような基準を定めないで各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門技術的判断にゆだねる方法を採用するか,あるいはこのような基準を定めるとしても,どの程度具体的かつ詳細なものとするかなどの事項についても,内閣総理大臣ないし原子力委員会・安全審査会が自ら判断して決定すべき事柄であると解するのが相当である。 (イ)そうすると,実際の安全審査に用いられている立地審査指針,ECCS安全評価指針,線量目標値指針,線量目標値評価指針,安全設計審査指針,気象指針等の安全審査の基準が,行政内部の内規にすぎないとしても,これをもって,規制法等の原子炉設置許可手続に関する手続規定が直ちに憲法31条,41条,73条,81条に違反するものということはできない。なお,本件安全審査における具体的審査基準に不合理な点があるといえないことは後記6(2)ないし(6)のとおりである。 ,しかも,上記1(4)ア及びイのとおり,原子炉設置許可に当たってはその申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備の安全性に関する審査の適正を確保するため,各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門技術的知見に基づく意見を聴き,これを尊重するという,慎重な手続が定められていることを考慮すると,規制法等の原子炉設置許可手続に関する手続規定が不合理,不明確であるとの非難は当たらないというべきである 的知見に基づく意見を聴き,これを尊重するという,慎重な手続が定められていることを考慮すると,規制法等の原子炉設置許可手続に関する手続規定が不合理,不明確であるとの非難は当たらないというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 ウ本件安全審査は,法律上の根拠に基づくものであるか否か。 控訴人らは,本件処分は,法律又はその委任に基づいて定められたものではない原子炉施設の安全性に関する立地審査指針,ECCS安全評価指針,線量目標値指針,線量目標値評価指針,安全設計審査指針,気象指針等の安全審査の基準を用いた本件安全審査に依拠してされたものであるか- 398 -ら,権力分立の原則を定めた憲法41条,73条,81条に違反する旨主張する。 しかし,上記立地審査指針等は,あくまで内部的な指針であり,一般に行政庁がある行政処分に関し法的に何ら拘束力を有しない内部的な基準や指針を定めても,これが直ちに違法となるものではない。したがって,原子力委員会あるいは安全審査会が本件安全審査に当たりこれら指針を参考にしたとしても,本件処分が憲法41条,73条,81条に違反するとはいえない。 エ本件安全審査は,いわゆる原子力三原則に違反するか否か。 (ア)控訴人らは,本件安全審査について,第120部会の審査が秘密裡に行われ,その議事録も公開されないで公聴会もなく,殊に原子力委員会の委員及び安全審査会の審査委員は,政府が原子力発電所の建設に積極的に賛成する学者等を恣意的に選出しており,学術会議や学会からの推薦という形式を採っておらず,原発建設に慎重な,あるいは批判的な姿勢を持つ学者は1人も審査委員に任命されていないなど原子力委員会の委員及び安全審査会の審査委員の人選は不公正であって,原子力委員会はほぼ完全に政府の支配下にあるというべきであるので,本件安 判的な姿勢を持つ学者は1人も審査委員に任命されていないなど原子力委員会の委員及び安全審査会の審査委員の人選は不公正であって,原子力委員会はほぼ完全に政府の支配下にあるというべきであるので,本件安全審査を適切かつ公平に行う審査体制があったとはいえないから,基本法2条に定める「民主「自主「公開」の原子力三原則に違反する旨主」,」,張する。 そこで,基本法を検討すると,同法は,原子力の研究,開発及び利用を推進することによって,将来におけるエネルギー資源を確保し,学術の進歩と産業の振興とを図り,もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とし(同法1条,原子力の研究,開発及)び利用は平和の目的に限り,民主的な運営の下に,自主的にこれを行うものとし,その成果を公開し,進んで国際協力に資するものとすること- 399 -とし(同法2条,このようにその基本方針を明らかにしている。そし)て,基本法は「原子炉を建設しようとする者は,別に法律で定めると,ころにより政府の行う規制に従わなければならない(14条前段)。」と規定しているから,上記基本方針は,原子炉の設置にも妥当すべきものであるが,具体的な法的規制についてはすべて別に制定された規制法等及びその下位法令の定める手続にゆだねられているので,上記基本方針もこれらの法律等を通じて実現されるべきことが予定されているにとどまり,基本法が,これらの法律等をとおさずに,原子力の研究,開発及び利用に関して直接国民の権利義務に影響を及ぼしたり,国民と国家との間の具体的な法律関係を形成するものではないと解するのが相当である。 (イ)そこで,上記基本方針のうち民主の原則についてみるに,上記前提となる事実によると,基本法は,原子力委員会を置くことを定め(同法4条,原子力の研究 成するものではないと解するのが相当である。 (イ)そこで,上記基本方針のうち民主の原則についてみるに,上記前提となる事実によると,基本法は,原子力委員会を置くことを定め(同法4条,原子力の研究,開発及び利用に関する事項について企画し,審)議し,及び決定することを規定しているところ(同法5条,原子力委)員会の委員は,両議院の同意を得て,内閣総理大臣が任命するとされ(設置法8条1項,安全審査会の審査委員は,学識経験のある者及び)関係行政機関の職員のうちから,内閣総理大臣が任命するとされ(同法14条の3第2項,他方,内閣総理大臣は,原子炉設置許可処分をす)る場合においては,規制法24条1項各号に規定する基準の適用について原子力委員会の意見を聴き,これを尊重しなければならないことが同条2項に規定されているから,民主の原則は原子炉設置許可手続においては,このような形で実現されているというべきである。そして,原子力委員会の委員には身分保障(設置法10条2項)があり,内閣総理大臣は原子力委員会の決定を尊重しなければならないとされていることに照らすと,原子力委員会が政府の支配下にあったと断ずることはできず,- 400 -また,本件全証拠によっても,個々の原子力委員,審査委員が原子力発電所の建設を積極的に推進することだけを考え,その学問的あるいは専門的知識に基づいた真摯な安全審査を行わなかったと認めることはできない。 また,上記基本方針のうち自主の原則は,我が国が他国の支配や干渉を受けずに自主的に研究等を行うべきことを宣言したもので,原子炉設置許可処分においては,安全審査の手続や原子力委員会の構成等によりおのずから実現されるものと予定されているだけで,特段の具体的な手続規定が設けられていると解すべき根拠はない。 さらに,上記基本方針の 置許可処分においては,安全審査の手続や原子力委員会の構成等によりおのずから実現されるものと予定されているだけで,特段の具体的な手続規定が設けられていると解すべき根拠はない。 さらに,上記基本方針のうち公開の原則は,原子力の研究等の成果についてであって,原子炉の設置許可処分をするに当たりその審査手続まで公開することを含んでいないことは明らかであり,また,規制法等において安全審査の手続を逐一公開すべきことや公聴会を開催すべきことまでが規定されていると解すべき根拠はない。 (ウ)以上のとおり,上記原子力三原則は,原子力の平和利用を担保しようとするものであり,原子力の平和利用方法である発電用原子炉の設置許可手続を直接規制するものではないから,控訴人らの上記主張は理由がない。 オ本件安全審査における審査体制が不備であるか否か。 控訴人らは,我が国の原子力委員会やその下部機関である安全審査会,それらの事務局である科学技術庁原子力局規制課には,実質的な安全審査を実施できる人員も,施設・設備も,予算もないのが実態であり,また,審査委員は,いずれも大学教授等他に本職を持つ非常勤の委員で構成されており,安全審査に専念できる体制になっていないことなどから,本件安全審査における審査体制では,本件原子炉施設の安全性を実質的に審査することが極めて困難であった旨主張する。 - 401 -しかし,上記前提となる事実のとおり,本件安全審査は,原子炉工学,核燃料工学,熱工学,放射線物理学,地震学,気象学等のそれぞれの分野における専門家である審査委員30名及び調査委員28名により構成された本件安全審査会によって,昭和50年5月23日から同52年8月12日まで合計26回にわたり開催されていること,安全審査会は,第120部会を設置し,更にこれをAないしCの3つのグループ より構成された本件安全審査会によって,昭和50年5月23日から同52年8月12日まで合計26回にわたり開催されていること,安全審査会は,第120部会を設置し,更にこれをAないしCの3つのグループに分け,同50年6月10日から同52年8月2日までの間に,全体会合が7回,Aグループ会合が39回,Bグループ会合が11回,Cグループ会合が20回,A・Bグループ会合が2回,それぞれ開催されていることが認められる。 そうすると,我が国の原子力委員会やその下部機関である安全審査会,それらの事務局である科学技術庁原子力局規制課に実質的安全審査を実施できる相応の人員,施設・設備及び予算を有していたと推認することができ,これを左右するに足りる証拠はない。そして,審査委員が非常勤とされているのは,できるだけ広い分野にわたり高度な専門技術的知見を有する優秀な人材を審査委員に採用することを可能とするためとも考えられ,審査委員が非常勤であることが直ちに審査の不十分さを招くともいえず,これを認めるに足りる証拠もない。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 カ部会による安全審査は違法か否か。 控訴人らは,安全審査会において必要的機関でも常設的機関でもない第120部会が設置された上,本件原子炉に係る実質的な安全審査が,同部会や,更に同部会内にA,B及びCの3グループにおいて実施されたのは行政の責任転嫁であり,極めて危険な安全審査手続である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実によれば,安全審査会に,その所掌事務を分掌させるために部会を置くことができるとされており(昭和51年7月),13日原子力委員会決定による改正前の安全審査会運営規程7条,8条- 402 -部会は,安全審査会から審査方針,審査事項等の指示を受けて,調査審議を行い,その過程において適宜, 和51年7月),13日原子力委員会決定による改正前の安全審査会運営規程7条,8条- 402 -部会は,安全審査会から審査方針,審査事項等の指示を受けて,調査審議を行い,その過程において適宜,審査状況を安全審査会に報告し,安全審査会の審議に付するものであって,最終的な調査審議結果を部会報告にまとめて安全審査会に報告することになっていたのであるから,これは,調査審議を適切かつ効率的に行うための方策と考えられ,しかも同部会のみが実質的な審査をなし,本件安全審査会の安全審査が形骸化していたと認め得る証拠はないから,控訴人らの上記主張は理由がない。 キ合同審査による安全審査手続は違法か否か。 (ア)控訴人らは,第120部会が原発推進の急先鋒である通産省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行っているので,安全審査の技術基準のあいまいさも加わって,馴れ合い的な安全審査が行われてきた可能性を否定できず,また,科学技術庁原子力局の局長ら職員が毎回多数,安全審査会や部会に出席し,事実上審査をリードしたのであるから,このように他の機関の実質上の関与によってなされた報告書等は,信用性を欠如しており,本件安全審査は違法である旨主張する。 そして,証拠(甲68,乙4)及び弁論の全趣旨によれば,昭和50年5月23日に開催された第137回安全審査会において,第120部会が設置されると共に,審議は,通産省原子力発電技術顧問会と合同で行う旨決定されたことが認められる。 しかし,証拠(乙4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,①原子力発電技術顧問会は,昭和40年11月の通産省省議決定により,規制法71条に基づく内閣総理大臣への同意,通産大臣の電事法上の原子力発電に係る許認可等に際し,当該原子炉を含む電気工作物全体の安全性に関する技術的事項について 40年11月の通産省省議決定により,規制法71条に基づく内閣総理大臣への同意,通産大臣の電事法上の原子力発電に係る許認可等に際し,当該原子炉を含む電気工作物全体の安全性に関する技術的事項について諮問するため,通産大臣の諮問機関として設置されたこと,②このため同顧問会の審査と安全審査会(又はその部会)における審査は,両審査が密接な関連を有し,- 403 -審査の効率化に資するため,合同で審査を行うことが慣例であったこと,③本件安全審査の審査委員の多くが同顧問会の会員を兼ねていたことが認められる。 上記認定事実によると,第120部会と通産省原子力発電技術顧問会は,いずれも原子炉の安全性に係る専門技術的事項を審査するにすぎないから,本件安全審査における第120部会が通産省原子力発電技術顧問会と合同で本件原子炉の安全性に係る事項について審査を行ったとしても,本件安全審査会の判断が不当な影響を受けたとはいい難く,また,このような事実を認めるに足りる証拠もない。 (イ)次に,証拠(乙4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣によると,科学技術庁原子力局長は,本件安全審査会の審査委員に任命されていたことが認められる(なお,本件安全審査の途中で,昭和51年1月の科学技術庁設置法改正に伴い,同庁原子力局長が審査委員を退任し,同庁原子力安全局長が審査委員となった。しかし,設置法1。)5条によれば,原子力委員会の庶務は,科学技術庁原子力局において処理するものとされ,更に安全審査会運営規程4条2項により,安全審査会の議案に必要な資料は科学技術庁原子力局において準備するものとされていることを総合考慮すると,同局の職員が原子力委員会,本件安全審査会及び第120部会に出席することは当然であり,また,科学技術庁原子力局の局長ら職員が事実上安全審査を 局において準備するものとされていることを総合考慮すると,同局の職員が原子力委員会,本件安全審査会及び第120部会に出席することは当然であり,また,科学技術庁原子力局の局長ら職員が事実上安全審査をリードしたと認めるに足りる証拠もない。 (ウ)したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ク本件安全審査において審査範囲の限定をしたことは違法か否か。 控訴人らは,本件安全審査においては,温排水による海中生物への影響,固体廃棄物や廃炉などの最終処分,使用済燃料の再処理,輸送等の問題が審査対象外とされている上,安全審査対象事項を本件原子炉の基本設計な- 404 -いし基本設計方針に限定しているので,審査範囲・審査対象を不当に限定した点において本件安全審査は違法である旨主張する。 しかしながら,上記1(2)及び(5)のとおり,規制法24条により,原子炉設置許可における安全審査については,当該原子炉施設における基本設計の安全性にかかわる事項のみが審査の対象となるのであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 ケ資料の収集等の審査方法に違法があるか否か。 控訴人らは,原子力発電所の安全性を確保すべき第一次的責任は,原子炉施設の設置の許否を決することのできる行政庁にあるにもかかわらず,本件安全審査においては,原子炉設置者である申請者の提出する資料やデータに基づき,その基本設計及び基本的設計方針が適切であるか否かが確認されただけで,自ら必要な資料やデータを収集し,必要な計算や実験を行うという方法が採られなかったから,本件安全審査の審査方法は違法である旨主張する。 しかしながら,原子炉の安全性の確保は,直接原子炉を設置,運転する原子炉設置者が第一次的にその責を果たすべきであり,原子炉設置許可における安全審査においては,原子炉設置者の申請に係る内容が災 する。 しかしながら,原子炉の安全性の確保は,直接原子炉を設置,運転する原子炉設置者が第一次的にその責を果たすべきであり,原子炉設置許可における安全審査においては,原子炉設置者の申請に係る内容が災害の防止上支障のないものであるかどうかをその申請者の提出する資料に基づいて審査すれば足りると考えられるから(なお,資料に疑義があれば,原子力委員会は,申請者にその点の説明や追加資料の提出を促すことができると解される,控訴人らの上記主張は失当である。 。)コ本件安全審査手続に不公正,不適正があるか否か。 (ア)控訴人らは,原子炉設置許可手続における安全審査手続は,他のいかなる行政手続にも増して,公正らしさと適正らしさが要求され,実際の安全審査においても厳格かつ公正な判断がなされるべきものであるところ,①原子力委員会は,本件安全審査の当時,原子力開発を推進する- 405 -側とこれを規制する側との両方の役割を同時に兼ねていたため,安全審査体制自体に甚だしい不公正が生じていること,②原子力三原則で担保されているはずの関係資料の公開や提供がなされなかったこと,③原子力委員会やその下部機関である安全審査会には,実質的な安全審査をやり遂げるだけの人材はなく,施設・設備,資料・データ及び予算もないのが実情で,具体的な審査のやり方は,本件原子炉の安全審査とは何の関係もない他の機関(通産省原子力発電技術顧問会)が関与し,調査委員などと称する法的地位や資格の極めてあいまいな人が多数関与(それも中心的に関与している)したこと,④しかも,専門技術的知見を有。 する各専門分野の学識経験者とは全く立場を異にする行政機関の職員の代理者が数多く関与(それも中心的に関与している)したこと,⑤ご。 く限られた部会員が,原子炉設置許可の申請者側から提出された資料やデ る各専門分野の学識経験者とは全く立場を異にする行政機関の職員の代理者が数多く関与(それも中心的に関与している)したこと,⑤ご。 く限られた部会員が,原子炉設置許可の申請者側から提出された資料やデータを短時間,形式的に審査しただけであることから,本件安全審査は,憲法31条に違反して,不公正,不適正に行われている旨主張する。 上記前提となる事実によると,本件安全審査及び本件処分当時の原子力委員会は,核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること(設置法2条4号)のほかに,原子力利用に関する政策に関すること(同条1号)等,原子力の利用と開発を推進することに関しても所掌することとされていたが,本件処分後の昭和53年7月5日,同年法律第86号より設置法が改正され,従前の原子力委員会の所掌事務のうち安全の確保及び障害の防止に関するものは原子力委員会とは独立した原子力安全委員会が所掌することとされた。 しかし,原子力の研究,開発及び利用に関する行政の民主的かつ効率的な運営を図るために,原子力の利用,開発の推進とその安全の確保とを総合的見地から併せ所掌する1つの委員会を設置するのと,これらを各別に所掌する2つの委員会を設置するのと,いずれが優れた制度であ- 406 -るかは,にわかに断じ難く,立法政策に属する事柄であるということができる。 そして,安全審査会の審査委員の資格は法定され(設置法14条の3,原子力委員会の委員の任免及びその服務についても厳格な規制が)なされている(同法8ないし10条,13条,14条)など,原子炉設置許可に関する安全審査体制は慎重かつ厳正な審査を確保し得るよう整備されており,かつ,本件処分も上記体制に沿って行われたのであるから,控訴人ら主張のような体制が採られていたからといって,その一事をもって,本件処分が不公正,不適 重かつ厳正な審査を確保し得るよう整備されており,かつ,本件処分も上記体制に沿って行われたのであるから,控訴人ら主張のような体制が採られていたからといって,その一事をもって,本件処分が不公正,不適正に行われた違法なものであるということはできない。 (イ)さらに,設置法は原子力委員会の委員の資格について特に定めていないから(同法8条,同法は,原子炉に係る安全性に関する事項につ)いての専門技術的観点からする調査審議は,原子力委員会が直接に行うのではなく,安全審査会の専門技術的調査審議に基づく報告を踏まえて行うことを予定していると解され,原子力委員全員が,原子炉施設の安全性に関する専門技術的知識や経験を有する者である必要はなく,また,安全審査会と同じレベルでの専門技術的議論がなされなければならないというものではないというべきである。そして,本件安全審査手続に控訴人ら主張の不公正,不適正があったことを裏付ける具体的な事情を認めるに足りる証拠はない。 内閣総理大臣がした本件処分においては,上記前提となる事実のとおり,原子力委員会は規制法等所定のとおり審議・判断したものであって,上記アないしケ並びに後記(3)アないしオのとおり,控訴人ら主張の違法はないというべきである。 (ウ)したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 サ安全審査手続について立法の瑕疵があるか否か。 - 407 -控訴人らは,(ア)原子炉設置の安全審査に関する手続規定が整備されておらず,かつ,住民参加の手続が保障されていないなどの点で極めて不備であって,憲法31条をはじめとする諸規定との関連で,憲法上極めて問題であること,(イ)原子力発電所の安全審査に用いられている安全審査指針等の技術基準が,内容的にみて一義的に明確ではなく,かつ,国際基準から時代遅れであったり,その 諸規定との関連で,憲法上極めて問題であること,(イ)原子力発電所の安全審査に用いられている安全審査指針等の技術基準が,内容的にみて一義的に明確ではなく,かつ,国際基準から時代遅れであったり,そのときどきの情勢によって容易に変更されるなどの点で問題であるほか,法定化が可能であるにもかかわらず,法定化することが意識的に避けられてきているなどの点で憲法上重大な疑義があること,(ウ)現実の原子力委員会若しくは安全審査会の安全審査においては,原子力三原則を無視した手続が取られていることから,原子炉設置許可手続における安全審査手続においては,憲法上要請されている手続規定が十分に整備されたり,立法化されたりしていないので,いずれも立法の瑕疵があり,憲法13条,31条,41条,73条,81条に違反するのみならず,憲法の基本原則である国民主権主義,基本的人権尊重主義,民主主義の諸原則と,憲法が基本的な原理として採用している法治主義の原理,行政の司法的統制の原理,人権の裁判的保障の原理にも違反する旨主張する。 しかし,本件安全審査手続が憲法31条に違反するものではないことは,上記2(2)アのとおりであり,安全審査基準の内容が高度の専門性及び多様性を有することや,科学技術の進歩に対応する等のため,むしろ安全審査基準は法律により定めることに適さないことは,上記2(2)イのとおりであり,安全基準を法律によって定めるべきものと解すべき根拠はなく,また,安全審査が原子力三原則に反するものでないことは上記2(2)エのとおりである。そして,他に控訴人らの上記主張のような安全審査手続について憲法に違反する立法の瑕疵に該当する事実があると認め得る証拠はない。 - 408 -(3)本件安全審査手続における個別的瑕疵についてア原子力委員会委員長の不在の際にその職務 全審査手続について憲法に違反する立法の瑕疵に該当する事実があると認め得る証拠はない。 - 408 -(3)本件安全審査手続における個別的瑕疵についてア原子力委員会委員長の不在の際にその職務代理者が選任されていたか否か。 (ア)控訴人らは,原子力委員会が本件安全審査を行った際,委員長不在のまま審議をしたことがあるほか,最終答申という最も大切な委員会決定すら委員長不在のまま行われており,委員長の職務代理者も選任されていなかったから,本件安全審査は違法である旨主張する。 上記前提となる事実によると,原子力委員会は,委員長及び3人以上の委員の出席がなければ,会議を開き,議決をすることができないとさ),れている(設置法11条2項。そして,証拠(甲57の①,60の①64,65の①,66の①,67の①)及び弁論の全趣旨によれば,本件原子炉の安全審査に関連する合計11回の原子力委員会のうち,昭和50年の第13回定例会議(同年4月1日)及び第17回定例会議(同年5月20日,昭和51年の第48回定例会議(同年12月14日,))昭和52年の第32回臨時会議(同年8月12日,第33回定例会議)(同年8月16日)及び第34回定例会議(同年8月23日)の計6回の各委員会に委員長が出席していなかったことが認められる。 しかし,証拠(乙101ないし104)及び弁論の全趣旨によると,(ア)原子力委員会においては委員長に故障がある場合に委員長を代理する者をあらかじめ常勤の委員のうちから定めておくことができること(設置法7条3項,(イ)委員長として,昭和49年12月9日にP8)委員長,昭和51年9月15日にP9委員長,及び同年12月24日にP10委員長がそれぞれ任命されたが,昭和49年12月10日にP8委員長の代理者として,昭和51年9月21日にP 12月9日にP8)委員長,昭和51年9月15日にP9委員長,及び同年12月24日にP10委員長がそれぞれ任命されたが,昭和49年12月10日にP8委員長の代理者として,昭和51年9月21日にP9委員長の代理者として,昭和52年1月7日にP10委員長の代理者としていずれもP11委員が指名されたこと,(ウ)控訴人らが指摘する委員長の欠席した計- 409 -6回の原子力委員会については,いずれも上記P11委員長代理が出席し,委員長の職務を務め,原子力委員会開催に必要な要件を満たしていたことが認められる。 (イ)したがって,委員長不在の際にはいずれの場合も適法に選任されたP11委員長代理によって原子力委員会が開かれ,本件安全審査に係る審議・議決が行われているから,控訴人らの上記主張は理由がない。 イ原子力委員会の審査方法等に違法がないか否か。 控訴人らは,原子力委員会の本件安全審査について,自らあるいは事務局を使って必要な資料を分析,点検,検討して行うことをせず,専ら原子力委員会の下部機関である安全審査会及び第120部会に任せ,原子力委員会独自の審査は1時間ないし2時間の短時間内に多くの議題や報告(多いときは5件以上あった)を掛け持ちして行ったにすぎず,到底法の要。 求している科学的,専門技術的事項についての専門家の安全審査といえないから,本件安全審査は違法である旨主張する。 しかし,上記(2)コのとおり,設置法は,原子力委員会の委員の資格について特に定めていないから(同法8条,同法は,原子炉に係る安全性)に関する事項についての専門技術的観点からする調査審議は,原子力委員会が直接に行うのではなく,安全審査会の専門技術的調査審議に基づく報告を踏まえて行うことを予定しているところ,上記前提となる事実によって認められる本件処分に係る安全 点からする調査審議は,原子力委員会が直接に行うのではなく,安全審査会の専門技術的調査審議に基づく報告を踏まえて行うことを予定しているところ,上記前提となる事実によって認められる本件処分に係る安全審査会における審査の状況,原子力委員会の本件安全審査の手続経過,内容及び内閣総理大臣に対する答申等を総合考慮すると,本件安全審査には合理性があるから,科学的,専門技術的事項についての専門家の安全審査ではないと断ずることはできないので,控訴人らの上記主張は理由がない。 ウ本件安全審査会における並行審査は違法か否か。 控訴人らは,本件安全審査会における審査は,正味2,3時間のうちに- 410 -少ないときでも5,6件,多いときは10件以上の審査を同時並行的に行っており,本件安全審査は余りにも機械的,形式的であり,到底専門技術的審査とはいえないから,本件安全審査は違法である旨主張する。 しかし,証拠(原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によれば,本件安全審査会は,1期日に多数の案件を処理することもあるが,議事の内容に応じ,重要な案件については十分な時間を掛けて審査したこと,その程度の審議であっても,専門技術的知見を有する審査委員らが安全性の確保の判断として十分であるとしたことが認められるから,控訴人らの上記主張は失当である。 エ安全審査会の出席者は適法か否か。 (ア)控訴人らは,①本件安全審査を行う安全審査会の会合には,毎回のように審査委員の代理人が複数人出席し,定足数に満たなかったにもかかわらず,安全審査会が開催され,実質的な審議が行われたこと,②正規の審査委員のほかに法的な性格が全く不明な調査委員が多数参加していたこと,③昭和52年4月19日開催の第158回安全審査会において,定数30名のところ3分の1の10名しか出席していないこ と,②正規の審査委員のほかに法的な性格が全く不明な調査委員が多数参加していたこと,③昭和52年4月19日開催の第158回安全審査会において,定数30名のところ3分の1の10名しか出席していないことから,安全審査会における本件安全審査手続は違法である旨主張する。 しかし,審査委員は,学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから,内閣総理大臣が任命することとなっている(設置法14条の3第2項)が,上記委員のうち,関係行政機関の職員のうちから任命された審査委員については,その者の有する専門的学識・経験とともに,当該行政機関自体が有する高度の専門技術的知見を安全審査に役立てるため,その者が属する関係行政機関を代表する者として選任されるものと解されるから(個別的な学識経験が重視されて)学識経験のある者の,うちから任命された審査委員の場合とは異なって,適切な代理者である限り,代理出席を認めても何ら法の趣旨に反するものではないと解する- 411 -のが相当である。 証拠(乙105,106,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によれば,安全審査会は,昭和36年9月22日,設置法16条,設置法施行令4条,安全審査会運営規程8条に基づき,上記関係行政機関の職員のうちから任命された審査委員については代理出席を認め,その代理人を定足数に加え,議決権を持つ旨を決定したこと,本件安全審査会に代理者を出席させた審査委員は,いずれも関係行政機関の職員のうちから任命されたものであることが認められる。 (イ)また,証拠(乙4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によれば,調査委員制度は,昭和44年6月,設置法16条,設置法施行令4条,安全審査会運営規程8条に基づき,審査委員を補助して安全審査会の調査審議の能率向上を図るために設けられ,原子炉 弁論の全趣旨によれば,調査委員制度は,昭和44年6月,設置法16条,設置法施行令4条,安全審査会運営規程8条に基づき,審査委員を補助して安全審査会の調査審議の能率向上を図るために設けられ,原子炉の安全性に関する事項を調査することを職務内容とされたことが認められるので,調査委員制度は法令上の根拠を有するから,調査委員が安全審査会に出席したことは適法である。 (ウ)さらに,証拠(甲89の①,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人らの主張の第158回の安全審査会では,当時の委員総数19名に対して,出席者数が10名であるから,定足数を満たしていることが認められるから適法である。 (エ)したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 オ調査委員中心の本件安全審査は違法か否か。 (ア)控訴人らは,第120部会における部会員の出席率は悪く,審査委員の代理人も出席しており,また,実際に調査や審議を担当した者は何らの資格も権限もなかった調査委員であり,特に現地調査の大半は少数の調査委員によって行われたものにすぎず,このように調査委員中心で行われた同部会の審査方法は違法であり,その判断を受け継いだ原子力- 412 -委員の本件安全審査も違法である旨主張する。 しかし,証拠(甲94の③,乙4)及び弁論の全趣旨によれば,第120部会の会合に代理者は出席していなかったことが認められ,また,上記エのとおり,調査委員制度は,設置法16条,設置法施行令4条,安全審査会運営規程8条に基づき,審査委員を補助して安全審査会の調査審議の能率の向上を図るために設けられたものであり,調査委員は,原子炉の安全性に関する事項を調査することをその職務内容とするものであるから,第120部会における調査審議に関与し,現地調査を行ったことは適法であるというべ ために設けられたものであり,調査委員は,原子炉の安全性に関する事項を調査することをその職務内容とするものであるから,第120部会における調査審議に関与し,現地調査を行ったことは適法であるというべきである。 (イ)また,証拠(甲94の③,乙4,原審における証人P1の証言)によると,審査委員も第120部会の調査審議に関与し,多数回にわたり現地調査を行ったことが認められるから,現地調査の大半が少数の調査委員によって行われ審査委員がこれに関与していなかったということはできない。 (ウ)さらに,証拠(乙4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,第120部会においては,審査委員及び調査委員のそれぞれの専門分野に応じたAないしBの三つのグループ毎の調査審議が行われ,しかも,その中でも特定の専門分野に係る事項については,特定の審査委員,調査委員が分担して審査するという方式がとられていることが認められる。 そして,原子炉に係る安全性に関する事項のような高度に専門技術的事項を審査する場合には,上記のような方式は合理性があり,議題ごとに各グループ,更には第120部会の出席者が代わり,それぞれの会合に審査委員及び調査委員全員が参加しなかったとしても必ずしも調査審査に支障が生ずるわけではないと考えられ,第120部会が行った調査審議の方法が違法であったということはできない。 - 413 -(エ)したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 (4)小括以上によれば,本件処分の手続的違法に関する控訴人らの主張はいずれも失当であり,本件処分にはその手続において取消理由となるような違法はないというべきである。 規制法24条1項1号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (1)控訴人らは,ア本件処分においては,本件原子炉から生じる 手続において取消理由となるような違法はないというべきである。 規制法24条1項1号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (1)控訴人らは,ア本件処分においては,本件原子炉から生じる使用済核燃料の再処理によって取り出されるプルトニウムについての軍事転用の危険性を防止する十分な保障がされていないこと,イ日本の原子力平和利用の結果として生まれた原子力発電所で燃焼した使用済みのウラン燃料は,一定期間原子炉施設内の使用済燃料プールで冷却した後,再処理工場に運ばれて再処理され,再処理で抽出したプルトニウムがイギリスやフランスの各再処理工場で原爆材料に転用され,原爆や水爆,中性子爆弾等の核爆弾が製造されていること,ウ核燃料サイクルから生まれる濃縮ウランの残り滓である劣化ウランは,対戦車用等の弾薬に用いられたり,劣化ウラン弾に加工され,実際に戦争に使用されているところ,劣化ウランの実戦使用は,平成3年の湾岸戦争,ユーゴスラビアの内戦のほか,平成7年のボスニア・ヘルツェゴミナ紛争,平成11年のコソボ・セルビア紛争であり,また,沖縄の射爆場で演習にこれが使用されていること,エ原子力の歴史を振り返ると,軍事費だけで原子力技術を維持できなくなったため「平和利用」を口実にその技術維,持の負担を民間に求めてきた経緯があること等から,本件処分は規制法24条1項1号に違反する旨主張する。 しかし,上記1(1)のとおり,規制法24条1項1号は,専ら公益実現のための規定であって,控訴人らの法律上の利益に関係がないものであり,控訴人らの主張の上記要件に係る違法事由は本件訴訟の審理・判断の対象とはならないというべきである。 - 414 -(2)したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの上記主張は失当である。 規制法24条1項2号 事由は本件訴訟の審理・判断の対象とはならないというべきである。 - 414 -(2)したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの上記主張は失当である。 規制法24条1項2号所定の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。 (1)控訴人らは,ア本件処分においては,本件原子炉の運転に伴って発生する固体廃棄物の最終処分,使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分並びに廃炉等について審査が行われていないこと,イ日本の電力会社においては,地域を電力会社毎に分割した地域独占体制と総括原価で決められる価格システムを採用しているので,その電気料金は世界で最も高く,その是正のために電力事業の規制緩和と自由化政策が展開されているが,膨大な負債を抱えている上に,発電システムの革命的大変化が目前に迫っている現段階においては,将来とも計画的に原子力発電を遂行する義務を果たすことはできないこと,ウ原子力発電所を運転していくことに伴い必然的に生み出される核のゴミを,想像を超える長期間安全に管理することは不可能であること,エ放射性廃棄物の最終処分の方法及び廃炉の処理方法とその安全性が確立しない限り「原子力の利用及び開発の計画的遂行」は不可能であること等から,本,件処分は規制法24条1項2号に違反する旨主張する。 しかし,上記1(1)のとおり,規制法24条1項2号は,専ら公益実現のための規定であって,控訴人らの法律上の利益に関係がないものであり,控訴人らの主張の上記要件に係る違法事由は本件訴訟の審理・判断の対象とはならないというべきである。 (2)したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの上記主張は失当である。 規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。また,同条1項3号のうち って,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの上記主張は失当である。 規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分の要件適合性は,司法審査の対象となるか否か。また,同条1項3号のうち技術的能力に係る部分の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 (1)規制法24条1項3号のうち経理的基礎に係る部分について- 415 -ア控訴人らは,東京電力においては膨大な負債があって,原発災害時の生命,健康,財産の損失を補填する経理的基礎がないにもかかわらず,本件処分においてこれが認められたことは,規制法24条1項3号の経理的基礎に係る部分に違反する旨主張する。 しかし,上記1(1)のとおり,規制法24条1項3号の経理的基礎に係る部分は,専ら公益実現のための規定であって,控訴人らの法律上の利益に関係がないものであり,控訴人らの主張の上記要件に係る違法事由は本件訴訟の審理・判断の対象とはならないというべきである。 イしたがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの上記主張は失当である。 (2)規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分についてア(ア)規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分の要件適合性審査については,専門技術的判断に基づいて,原子炉設置許可申請者に原子炉の設置,すなわち原子炉施設の詳細設計,工事を進めるのに十分な技術者が確保されているか否か,また,運転が開始される時までに運転を適確に遂行するのに十分な技術者が確保されることになっているか否かという観点から行われるものである。そして,これに対する裁判所の審理・判断は,上記1(4)のとおり,原子力委員会若しくは安全審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきものである。 所の審理・判断は,上記1(4)のとおり,原子力委員会若しくは安全審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきものである。 上記技術的能力の要件適合性の審査として法令が予定している資料は,原子炉設置許可申請書に添付すべき「原子炉施設の設置及び運転に関する技術的能力に関する説明書(原子炉規則1条の2第2項5号)等で」ある。 (イ)上記前提となる事実によると,安全審査会は,規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分については,東京電力に当該技術的能力- 416 -があるものと認め,原子力委員会も,上記安全審査会の審査結果のとおり判断して,内閣総理大臣に対してその旨を答申し,内閣総理大臣がこの答申を尊重して本件処分をしたことが認められる。 イ上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によれば,(ア)東京電力は,昭和30年以来,原子力発電に関する諸調査,諸準備などを進めるとともに,特に技術者を国内及び国外の原子力関係諸施設へ多数派遣し,研究,調査,建設,運転等を通じ,技術的能力の涵養に努めてきていること,(イ)東京電力は,昭和41年12月に福島第一原発1号機(電気出力460MW)を着工し,昭和46年3月に営業運転を開始し,更に同2号機(電気出力784MW)が昭和49年7月に,同3号機(電気出力784MW)が昭和51年3月にそれぞれ営業運転を開始し,引き続き本件安全審査のころは同4・5号機(いずれも電気出力784MW)及び6号機(電気出力1100MW)並びに福島第二原発1号機(電気出力1100MW)を各建設中であったこと,(ウ)東京電力の昭和52年7月1日現在の在籍する原子力関係技術者数は900名を超えているが,本件 機(電気出力1100MW)並びに福島第二原発1号機(電気出力1100MW)を各建設中であったこと,(ウ)東京電力の昭和52年7月1日現在の在籍する原子力関係技術者数は900名を超えているが,本件原子炉施設の基本設計の実施,工事進捗の管理並びにこれらに付随する対外連絡等の業務に従事する約70名の要員が継続的に,又は一時的に関与し,更に現地において全工程を通じ実際の建設に従事する平均50名の要員の合計120名の技術者を確保する見込みであったこと,(エ)各部門の管理者については,原子力・火力発電所の建設,運転等に10ないし20年の経験を有する者が大半を占め,原子力技術者だけでも平均約10年の経験を有し,今後も技術能力の養成訓練を行うことを計画していたこと,(オ)本件原子炉施設の運転においては,発電所の運営管理,対外連絡等の業務を行う約10名のほか,実際に発電所の運転管理を行う現地要員約150名の技術者を運転開始時までに確保し,また,保健物理系,炉物理系,電気・機械系及び計測制御系等の知識- 417 -を有し,かつ原子力経験も5,6年以上のものから管理職となる人材を確保することが見込まれたこと,(カ)法令上必要な主任技術者として,原子炉主任技術者有資格者14名及び放射線取扱主任者有資格者40名を有していたことが認められる。 そうすると,東京電力は,これまで複数の所定の原子力発電所設置許可を受けて,その建設と運転の実績を有し,現実に運転管理を行っている上,原子炉施設の詳細設計,工事を担当する技術者を含め相当数の原子力関係技術者を保有し,かつ,本件原子炉施設の発電所要員に対する研修教育についての計画を有し,本件原子炉施設の運転開始までに必要な要員と法令上必要な主任技術者を確保しているので,本件安全審査における上記判断には合理的根拠があり, 原子炉施設の発電所要員に対する研修教育についての計画を有し,本件原子炉施設の運転開始までに必要な要員と法令上必要な主任技術者を確保しているので,本件安全審査における上記判断には合理的根拠があり,その判断に不合理な点はないというべきである。 ウもっとも,控訴人らは,平成11年9月30日に発生したJCO事故の教訓から核燃料取扱主任資格取得者が多数存在しても電気事業者の技術的能力を評価することはできず,また,東京電力には昭和61年から平成13年にかけてその保有する原子力発電所の自主点検記録に29件もの不正があって,多くの事故隠し及び損傷隠しが判明しており,更に炉心シュラウドの応力腐食割れに関する米国の新しい維持基準についても適切にこれを運用し得る技術的能力はないので,東京電力に規制法24条1項3号所定の技術的能力があると判断した本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,JCO事故は,規制法第3章に規定される「加工の事業」を行う施設における事故であり,本件安全審査で審査の対象となる原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項とは関連性がないものである。また,規制法24条1項3号の技術的能力に係る部分は,主として原子炉施設による災害の防止を図る観点から規定されたものであるから,控訴人らの主張に係る自主点検記録の不正や報告懈怠は技術的能力の判断とは関係がないというべきである。さらに,弁論の全趣旨によると,炉心シュラウドの- 418 -応力腐食割れに関する米国の新しい維持基準は,いまだ確立したものではないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 ちなみに,上記前提となる事実及び弁論の全趣旨によると,本件処分後において,JCO事故を契機として「原子力事業者の技術的能力に関す,る審査指針(平成16年5月27日原子力安全委員会 り失当である。 ちなみに,上記前提となる事実及び弁論の全趣旨によると,本件処分後において,JCO事故を契機として「原子力事業者の技術的能力に関す,る審査指針(平成16年5月27日原子力安全委員会決定)が定められ」ているが,これは,それまでの原子炉施設の知見の蓄積を踏まえて整理,成文化したものであり,本件安全審査の基礎とされた本件処分当時の知見がその後の新しい科学技術上の知見等からみて誤りであったとして全く新たな指針等を策定したものではないと解されるから,本件安全審査が前提とした知見及びその合理性に影響を与えるものではないというべきである。 また,本件安全審査当時には,上記「原子力事業者の技術的能力に関する審査指針」は策定されていなかったが,原子炉設置許可の際の安全審査は,明文化された各指針のみならず,それまでの安全審査によって積み重ねられてきた経験及び審査委員等が有する科学的,専門技術的知見に基づく総合的な審査であるから,本件処分当時に具体的に明文化された当該審査基準が策定されていなくとも上記認定・判断を左右するものではないというべきである。 エしたがって,本件処分において,規制法24条1項3号のうち技術的能力の要件適合性の判断に違法な点はないというべきである。 規制法24条1項4号所定の要件適合性の判断に不合理な点はあるか否か。 (1)原子炉施設の安全性の意義とその安全審査のあり方をどのように考えるか。 ア規制法24条1項4号の要件適合性審査に対する司法審査のあり方(ア)規制法24条1項4号の要件適合性審査については,専門技術的判断に基づいて,原子炉施設の位置,構造及び設置が原子炉等による災害の防止上支障がないものであるか否かの観点から行われるものである。 - 419 -そして,これに対する裁判所の審理・判断は,上記1 判断に基づいて,原子炉施設の位置,構造及び設置が原子炉等による災害の防止上支障がないものであるか否かの観点から行われるものである。 - 419 -そして,これに対する裁判所の審理・判断は,上記1(2)及び(4)のとおり,原子炉施設の安全性にかかわる事項のすべてをその対象とするものではなく,その基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とし,かつ,原子力委員会若しくは安全審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって,現在の科学技術水準に照らし,上記調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該原子炉施設が上記具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは安全審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があり,被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,被告行政庁の上記判断に不合理な点があるものとして,上記判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきものである。 規制法24条1項4号所定の要件適合性の審査として法令が予定している資料は,原子炉設置許可申請書に記載される「原子炉を設置する工場又は事業所の所在地(規制法23条2項4号「原子炉施設の位置,」),構造及び設備(同項5号)並びに同申請書添付書類のうち「原子炉」,施設を設置しようとする場所に関する気象,地盤,水理,地震,社会環境等の状況に関する説明書」など,原子炉規則1条の2第2項6号ないし10号等が定める書類等である。 (イ)上記前提となる事実によると,安全審査会は,規制法24条1項4号については,本件原子炉施設の設置に係る安全性は十分確保し得るものと認め,原子力委員会も,上記安全審査会の審査結果のとおり判断して,内閣総理大臣に る事実によると,安全審査会は,規制法24条1項4号については,本件原子炉施設の設置に係る安全性は十分確保し得るものと認め,原子力委員会も,上記安全審査会の審査結果のとおり判断して,内閣総理大臣に対してその旨を答申し,内閣総理大臣がこの答申を尊重して本件処分をしたことが認められる。 そこで,規制法24条1項4号の適合性審査・判断の違法性の有無を検討する前提として,同規定が審査の対象とする原子炉施設の危険性,- 420 -しきい値の存否,原子炉施設の安全性の意義,安全審査のあり方について,以下,順次検討する。 イ規制法24条1項4号が審査の対象とする原子炉施設の危険性上記前提となる事実によると,原子炉施設は,ウランの核分裂反応を制御しつつ継続的に起こさせ,必要な熱エネルギーを発生させるための装置であって,内蔵するエネルギーが莫大であるので,その安全性確保のためには,核分裂生成物を含む放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させないよう放射性物質を確実に管理することが基本方針となる。 そこで,規制法24条1項4号が審査の対象とする原子炉施設の安全性とは,その文言上も,原子力施設に特有の使用済燃料を含む核燃料物質,原子核分裂生成物を含む核燃料物質によって汚染された物又は原子炉によりもたらされるおそれのある災害を防止し得るものであることを意味することが明らかである。そして,基本法20条の規定を併せ考慮すると,そこで想定されている原子炉施設の潜在的危険性は,主として原子力施設に特有の放射線による生命,身体の損傷及び放射性物質による環境の汚染であると解するのが相当である。 ウしきい値の存否(ア)上記前提となる事実と証拠(甲1,118,119の①ないし④,120ないし122,152,154,156,157,161,163ないし166,167 するのが相当である。 ウしきい値の存否(ア)上記前提となる事実と証拠(甲1,118,119の①ないし④,120ないし122,152,154,156,157,161,163ないし166,167の①②,168ないし171,174の①ないし③,181,204,乙8,9,16,18,21,22,24,26,46の①ないし⑦,47の①ないし⑤,48,59の①ないし④,60の①ないし④,62の①ないし⑤,63の①ないし④,118ないし124,126,いずれも原審における証人P2及び同P3の各証言)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ①放射線が人体に与える影響は,放射線の種類や量によって異なるも- 421 -のであり,それ自身の持つ電離作用などの性質により,生体に影響を与えるものである。そして,放射線の生体への作用には,放射線が細胞のDNA(遺伝子を構成する高分子化合物)などに直接当たることによって生ずる「直接作用」と,放射線が細胞内の水や有機物質などを電離することにより酸化力の強い物質(フリーラジカル)を発生させ,このフリーラジカルがDNAなどを傷つける「間接作用」とがある。 放射線被ばくと身体的障害発生との関係におけるしきい値があるか否かの問題については,身体的障害のうちの高線量放射線による急性障害のしきい値に関してはこれを肯定する見解が一般的であるが,低線量放射線被ばくによる影響に関しては,線量が低くなるほど晩発性障害及び遺伝的障害の発生頻度は低くなるが,どのような低線量であってもその確率を零とすることはできないとして,しきい値はないとする見解,しきい値がないと断定できないが,これがないと推定すべきであるとする見解,放射線防護の観点からしきい値がないものと仮定すべきであるとする見解などがある。 ②ところで,19 きい値はないとする見解,しきい値がないと断定できないが,これがないと推定すべきであるとする見解,放射線防護の観点からしきい値がないものと仮定すべきであるとする見解などがある。 ②ところで,1940年(昭和15年)代に入り,動植物に十数レム相当の放射線を照射すると,染色体が切断されるという異常が現れ,その切断数と放射線量が比例関係にあるという報告がなされていたが,人体に対しては,第二次大戦直後ころまでは,100レムに相当する放射線を浴びてもいかなる障害も発生しないとされていた。 その後,イギリスのP23は,1955年(昭和30年,妊娠中)の女性が下腹部又は骨盤部に診療用エックス線を受けた場合に,生まれた子供に幼児性白血病が多発するとの研究発表を行い,米国のP24は,1961年(昭和36年,ショウジョウバエを用いた実験に)よりエックス線の線量を5レムまで下げても,線量と突然変異率が比- 422 -例関係にある旨報告し,さらに,米国のP25は,1962年(昭和37年,妊娠中に骨盤部にエックス線検診を受けた人と受けなかっ)た人,それらの者の子(合計70万組)を対象とした調査を行った結果,数レム程度の被ばくと子の幼児性白血病との間に明白な関係がある旨報告した。また,上記P23は,P26と共同で,被ばくが妊娠13週以内であれば3分の1ラドで,小児癌と白血病の発生率が自然発生率の2倍になる旨報告した。 ③また,P16は,1972年(昭和47年,エックス線の場合2)50ミリラド程度,中性子線の場合10ミリラド程度で,それぞれ放射線量と突然変異数とが比例関係にある旨,米国のP27夫妻は,1965年(昭和40年,自然放射線が高いことで有名なコロラド州)において,自然放射線によるムラサキツユクサの雄しべの毛及び花弁の突然変異率の上昇が 異数とが比例関係にある旨,米国のP27夫妻は,1965年(昭和40年,自然放射線が高いことで有名なコロラド州)において,自然放射線によるムラサキツユクサの雄しべの毛及び花弁の突然変異率の上昇が認められ,その線量は84ミリレムであった旨,インドのP28は,昭和45年,トリウム232を含むケララ州の土壌を利用したムラサキツユクサの栽培実験を行ったところ,内部被ばくによって取り込まれた放射性核種の量と突然変異率が高い相関関係を示した旨,P29は,サソリの精原細胞の染色体異常を調査したところ,自然放射線と染色体異常の発生との間に明確な関係が認められた旨,それぞれ報告した。 そして,P3教授は,昭和45年から昭和51年にかけて,ムラサキツユクサにおける突然変異の発生率と放射線量との関係についての研究を行い,ガンマ線及び散乱放射線の各線量と突然変異数とは,直線比例関係にあり,直線比例関係が確認された最低線量は,ガンマ線の場合2.1レントゲン,散乱放射線の場合0.72レントゲンである旨報告した。 しかし,ムラサキツユクサを用いた実験については,ムラサキツユ- 423 -クサの雄しべの毛の細胞が,放射線のみならず,温度,降雨,日照,農薬,自動車排気ガス等の諸要因に対しても高い感受性を示すため,ムラサキツユクサを用いた野外での実験によって,その雄しべの毛の細胞における突然変異の発生に対する放射線の寄与を正確に把握することは現実的にはほとんど不可能に近いし,仮に,可能であるとしても,そのためには,実験の方法や実験結果の解析の方法等を極めて慎重かつ緻密に行わなければならないところ,それが十分に行われていなかったとの批判もある。なお,これに対し,P3教授は,温度との関係等についても十分考慮して実験を行った旨反論している。 ④さらに,東北大学のP3 行わなければならないところ,それが十分に行われていなかったとの批判もある。なお,これに対し,P3教授は,温度との関係等についても十分考慮して実験を行った旨反論している。 ④さらに,東北大学のP30教授は,昭和53年,全国27道県402地点で22年間にわたり5万7000人以上の白血病死亡をとり上げて研究した結果,癌死亡率と線量率との間には正の相関関係があるが,相関係数は0.5までであまり大きくないこと,白血病死亡率と放射線との相関関係はこれより更に小さく,かつ負の相関をもつものが多いことが判明したとの論文を発表したが,上記論文に対し,その用いる線量率のデータが不十分であること,計算間違いが多いことなどからその内容の信用性に疑問があるとする批判もなされている。 また,京都大学のP31教授は,1986年(昭和61年,ロン)ドンで開催された「電離放射線の生物効果」に関する国際会議において,日本の各地における体外自然放射線の被ばく線量率とこれら地域での癌発生率との間の相関関係について講演し「ガンの発生率と自,然放射線との明らかな相関を,観察した6期間のいずれにおいても得ることができなかった。しかし,いくつかのガンでは,自然放射線との間に有意な関係があるように見える」などと報告した。 。 ⑤また,ICRPは,1958年(昭和33年)採択の勧告において,「生物学的な面では,低レベルの連続的被ばくから予想される放射線- 424 -の長期の影響の場合『回復』は初期に想像されていたほど重要な役,割をおそらく果たしていない「最もひかえめなやり方は,しきい」,値も回復もない,つまりその場合には,たとえ低い蓄積線量ですら,感受性の高い人々に白血病を誘発させることがあり,またその頻度は蓄積線量に比例するであろう,と仮定することである「人類は電 きい」,値も回復もない,つまりその場合には,たとえ低い蓄積線量ですら,感受性の高い人々に白血病を誘発させることがあり,またその頻度は蓄積線量に比例するであろう,と仮定することである「人類は電。」,離放射線を全く使用することなしにすませることはできないので,実際上の問題は放射線線量を,個人及び集団全般に許容不能ではないような危険を伴う程度にまで,制限することである。この量が『許容線量』と呼ばれるものである「勧告されている最大許容線量は最大。」,の値であることが強調される。委員会は,あらゆる線量をできるだけ低く保ち,不必要な被ばくはすべて避けるように勧告する」などと。 述べた上で,職業上の個人の被ばくについて「18歳以上のすべて,の年齢の人の生殖腺,造血臓器,および水晶体中に蓄積される最大許容総線量」を5×(年齢-18)レムとすること(最大週線量が0. 1レムであることを示す,管理区域の周辺に住む一般人の被ばく。)について,このような公衆には放射線感受性の高い子供(胎児を含む)が含まれていることなどを考慮し,年間0.5レムを許容線量。 とすること,更に,集団に対する遺伝線量(これをその集団の各人が受胎から子供を持つ平均年齢までに受けたと仮定した場合に,それらの個人が受けた実際の線量によって生ずるのと同じ遺伝的負担を全集団に生じるような線量)については,人の平均生殖年齢(30歳)に達するまでの30年間において,自然的バックグラウンド放射線及び医療行為以外の人工放射線源からの遺伝線量を5レム以下とすることなどを勧告した。 そして,ICRPは,1958年(昭和33年)採択の勧告以後1990年(平成2年)採択の勧告(甲204,乙121)に至るまで,- 425 -低線量放射線による晩発性障害及び遺伝的障害について「しきい値 ,ICRPは,1958年(昭和33年)採択の勧告以後1990年(平成2年)採択の勧告(甲204,乙121)に至るまで,- 425 -低線量放射線による晩発性障害及び遺伝的障害について「しきい値,がない」ことを確認するに足りる資料はないが,しきい値はないものと仮定する立場をとっている。 ⑥現在の自然放射線被ばくにおける地域差と晩発性障害及び遺伝的障害に関係については,人は,1人当たり平均して1年間で宇宙線などの空間から飛来してくるもの0.39ミリシーベルト,土壌から放出されるもの0.48ミリシーベルト,日常摂取する食物を通じ体内から照射されるもの0.29ミリシーベルト,それに空気中のラドンなどの吸入により1.26ミリシーベルトの計約2.4ミリシーベルトの自然放射線を受けており(UNSCEAR(国際連合放射線影響科学委員会)の2000年版レポート,また,我が国の九州と関東と)の間には年間0.2ミリシーベルト(0.02レム)程度の差異が認められるにもかかわらず,九州において関東に比較してより多くの人が晩発性障害や遺伝的障害を受けていることを裏付ける資料はない。 そして,諸外国における自然放射線による1人当たりの被ばく線量が大きく異なる地域を相互に比較してみても,晩発性障害や遺伝的障害の発生率には,意味のある差があるという結果はいまだ認められていない。 (イ)上記認定事実によると,自然放射線被ばくにおける地域差よりも小さい低線量放射線被ばくによる影響に関しては,有意な差が現れていないことが認められ,上掲証拠による限り,本件処分当時も現在も,低線量域の放射線被ばくと晩発性障害及び遺伝的障害との関係についてはすべて解明されているとはいえず,ICRPが採用しているしきい値がないと仮定する見解が支配的であると認めるのが相当である。 もっ ,低線量域の放射線被ばくと晩発性障害及び遺伝的障害との関係についてはすべて解明されているとはいえず,ICRPが採用しているしきい値がないと仮定する見解が支配的であると認めるのが相当である。 もっとも,控訴人らは,今日では低線量放射線被ばくの影響についてICRPにおいてもこれ以下の線量では障害がないという「しきい値」- 426 -はないとしており「しきい値」がないことは定説である旨主張する。 ,しかし,上記(ア)に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると,低線量放射線による晩発性障害及び遺伝的障害については,障害の頻度が極めて小さく,放射線を被ばくした場合としない場合とを比較した結果においても障害の発生率に特段の差が存しないので,被ばく線量とそれによって生ずる障害の関係を明確にする知見はいまだにないこと,このため,ICRPにおいても,いかに低い線量でも障害が生ずるかもしれないという仮定,いわゆる「しきい値がない」という仮定のもとに,遺伝的障害及び晩発性障害の発生確率が無視できる程低い線量を社会的に容認できる線量限度とし,安全を重視する立場から,あえてしきい値が存在しないとしているにすぎず,現実にしきい値がないことが確認されたことによるのではないことが認められるから,控訴人らの上記主張は失当である。 (ウ)安全審査において,しきい値の存否の問題は,原子炉施設の周辺住民又は環境が被ばくする放射線の量が許容限度内にあるか否かの判断をする前提として考慮の対象となるべきものであるところ,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)によると,本件安全審査においては,従前のICRPの勧告に基づいてしきい値はないものと仮定し,下限を設けないで実用可能な限り放射性物質の放出を低減することを目標とすべきことを方針としたことが認め )によると,本件安全審査においては,従前のICRPの勧告に基づいてしきい値はないものと仮定し,下限を設けないで実用可能な限り放射性物質の放出を低減することを目標とすべきことを方針としたことが認められる。そして,しきい値の存否は,極めて高度な最新の科学的,専門的知見に係る事項というべきであり,上記のようなしきい値に関する科学的,専門的見解の状況に照らすと,本件安全審査において,しきい値はないものと仮定し,下限を設けないで実用可能な限り放射性物質の放出を低減することを目標とすべきことを方針としたことが現在の科学技術水準に照らして不合理な点があるということはできない。加えるに,原子炉施設- 427 -が放射性物質を排出することが一定の範囲で許容されるか否かは,しきい値の不存在を肯定するかこれを仮定するかにより決まるのではなく,規制法24条1項4号の解釈及び低線量域における線量と影響・効果の具体的関係によるものというべきである。したがって,しきい値の存否の問題は本件安全審査の内容における違法性の判断に影響を及ぼすものではないというべきである。 エ原子炉施設の安全性の意義(ア)規制法24条1項4号の規定で想定されている原子炉施設の潜在的危険性は,上記イのとおり,主として放射線による生命,身体の損傷及び放射性物質による環境の汚染であるから,原子炉施設における安全性の確保は,このような放射性物質の有する危険性をいかに顕在化させないかにかかっているというべきである。 しかし,規制法24条1項4号の規定が,原子炉設置許可の安全審査についてはいかなる意味においても完全に放射線障害の発生等の災害を防止することを適合要件とする趣旨であるとすると,上記ウのとおり放射線障害の発生にはしきい値がないと仮定すべきであるから,原子炉施設は,放射線を環境に 意味においても完全に放射線障害の発生等の災害を防止することを適合要件とする趣旨であるとすると,上記ウのとおり放射線障害の発生にはしきい値がないと仮定すべきであるから,原子炉施設は,放射線を環境に全く放出しないものでなければならなくなる。 ところが,上記前提となる事実と弁論の全趣旨によると,原子炉施設は,その運転により不可避的に一定の放射性物質を環境に放出する施設であり,原子炉施設も人工の施設である限り,どのような安全上の対策を講じても,絶対的に事故を発生しないということがあり得ないことは,経験則上自明というべきである。そうすると,規制法24条1項4号の規定を上記のように放射線による障害の発生を完全に防止する趣旨の規定と解するときには,原子炉の設置は現実にはおよそ許容される余地がないことになる。 しかしながら,上記1(4)のとおり,現代社会においては,科学技術- 428 -を利用した装置等は,絶対に安全というものはなく,常に何らかの危険性を有しているものの,その危険性が社会通念上容認できる水準以下である場合,又はその危険性の相当程度が人間によって管理できると考えられる場合に,その危険性の程度と科学技術の利用により得られる利益の大きさとの比較考慮の上で,これを一応安全なものとして利用するという相対的安全性の考え方が採用されてきたのであり,原子炉施設についてもこのような相対的安全性の考え方は適用されるものということができる。そして,規制法も,基本法を基礎として,上記相対的安全性の考え方を採用し,原子力の平和利用を具体的に実現するための必要な規制を行っているものであるから,同項4号は,原子炉施設が放射性物質を環境に放出するものであることを前提として,これによる災害発生の危険性が社会通念上無視し得る程度に小さいことを要件とするものと解す 制を行っているものであるから,同項4号は,原子炉施設が放射性物質を環境に放出するものであることを前提として,これによる災害発生の危険性が社会通念上無視し得る程度に小さいことを要件とするものと解すべきである。 (イ)もっとも,控訴人らは「災害の防止上支障がない(規制法24,」条1項4号)とは,平常運転時における被ばく低減対策として「遺伝的,晩発性障害の発生確率がおよそ科学的にないと断定できる程度に低い線量限度」を採用すべきであるから,本件原子炉施設は,その周辺住民である控訴人らにとって,絶対的な安全性を保障し得るものでなければならない旨主張する。 しかし,上記ウのとおり,人は,自然放射線被ばくを受けているが,自然放射線被ばくにおける地域差よりも小さい低線量放射線被ばくによる影響に関しては,有意な差が現れていないことに加えて,上記(ア)の規制法の趣旨に照らすと,控訴人らの上記絶対的な安全性の主張はその前提を欠くものであって,採用することができない。 また,控訴人らは,自然放射性核種と人工放射性核種とは異なるものがあり,しかも,低線量放射線被ばくの影響については,晩発的・遺伝- 429 -的・確率的である上,個体毎に食物,飲料水,更には職業や移動,傷病歴及び医療機会など社会的個体的要因が全く異なっていることに加え,集団的にも前史ないし歴史的な年月の間に同地での自然放射線の影響を受けにくい,ないしは放射線核種を取り込みにくい体質を獲得した可能性も否定することができないから,自然的放射線被ばくにおける地域差よりも小さい低線量放射線被ばくによる影響に関して有意な差がないとしても,その証拠のないことがまさに影響のないことと同視することはできない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲1,118,119の①ないし④,120ないし122,152 影響に関して有意な差がないとしても,その証拠のないことがまさに影響のないことと同視することはできない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲1,118,119の①ないし④,120ないし122,152,154,156,157,161,163ないし166,167の①②,168ないし171,174の①ないし③,181,204,乙8,9,16,18,21,22,24,26,46の①ないし⑦,47の①ないし⑤,48,59の①ないし④,63の①ないし④,118ないし124,126,いずれも原審における証人P2,同P3及びP5の各証言)及び弁論の全趣旨によると,社会的個体的要因のほか,自然放射性核種と人工放射性核種とを分けて低線量放射線被ばくの影響を考慮すべきであるとしても,人体組織や生物体組織が放射性物質から受ける影響は,原則として,当該放射性核種から放出されるアルファ線,ベータ線及びガンマ線などのエネルギー及び放射線量等によって決まるものであること,そして,自然放射線及び人工放射線による被ばく線量は,最近の報告(乙8,9,59の①ないし④,118)によってもほぼ同様な結果が示されていることが認められるから,自然放射性核種による被ばく線量と人工放射性核種による被ばく線量とを比較して,線量当量限度を検討することは相当であるから,控訴人らの当該主張を採用することはできない。 (ウ)したがって,規制法24条1項4号が規定する原子炉施設の安全性- 430 -の確保は,原子炉施設の有する潜在的危険性を顕在化させないよう,放射性物質の環境への放出を可及的に少なくし,これによる災害発生の危険性を社会通念上容認できる水準以下に保つことにあるというべきである。 オ安全審査のあり方(ア)原子炉施設の安全性の確保の意義が上記エのとおりであるとすると,原子炉 し,これによる災害発生の危険性を社会通念上容認できる水準以下に保つことにあるというべきである。 オ安全審査のあり方(ア)原子炉施設の安全性の確保の意義が上記エのとおりであるとすると,原子炉設置許可に際しての規制法24条1項4号所定の要件適合性の安全審査は,原子炉施設の位置,構造及び設備について,その基本設計において,原子炉施設から排出する放射性物質を可及的に少なくし,これによる災害発生の可能性を社会通念上容認できる水準以下に保つような方策が講じられているかどうかについて行われるべきものと解される。 そして,我が国の原子力行政の責任者である内閣総理大臣において,規制法24条1項4号所定の要件適合性の安全審査につき,具体的にどのような審査方針を樹立し,どのような事項について審査を行うかについては,上記1(4)のとおり,その専門技術的知見を総合して決すべき事項であり,しかも,原子炉設置の許可の段階において,どのような事項が当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項に該当するのかという点も,原子力安全委員会の意見を十分に尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねられているというべきである。 (イ)もっとも,控訴人らは,規制法24条1項4号の要件適合性の判断においては,少なくとも原子力発電所の必要性を所与の前提として本件安全審査が行われているから,電力の安定供給という必要性の観点から厳しい審査がなされるべきであるところ,東京電力が平成14年4月15日に福島第一原発6号機を点検のため停止した後,東京電力の全原子力発電所17基(1730.8万kW)が停止し,全原子力発電所が運転再開する同年9月9日までの間,原子力発電所のピーク時電力である- 431 -夏の需要期においても最大電力量をカバーし得たのであるから,現在では地球的規模 8万kW)が停止し,全原子力発電所が運転再開する同年9月9日までの間,原子力発電所のピーク時電力である- 431 -夏の需要期においても最大電力量をカバーし得たのであるから,現在では地球的規模の災害をもたらしかねない程のリスクを抱えて原子力発電所を運転する必要性はなくなっているので,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかしながら,上記1(1)のとおり,原子力発電所の必要性の有無そのものは本件訴訟の審理・判断の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 また,控訴人らは,①少なくとも調査審議の過程における安全評価に誤りがあれば事故防止対策の合理性を欠き,安全審査自体の誤りとなること,②原子炉施設の安全性を評価するには,詳細設計以降の手続や施工,運転上の欠陥を想定した上で異常な過渡変化や事故を評価判断する必要があり,しかも「原子炉施設の位置,構造及び設備について,放,射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させない対策が適切に講じられている」か否かの判断も,異常な過渡変化及び事故の解析結果によって確認されるのであるから,これを抜きに判断できない性格のものであって,異常な過渡変化や事故の解析に誤りがあれば,対策が適切に講じられているという判断の根拠が失われること,③原子力委員会若しくは安全審査会の審査対象の範囲を基本設計ないし基本的設計方針に限るとしても,本件安全審査においても,東京電力の技術的能力と本件原子炉の位置,構造及び設備の安全性の両面にわたり「原子炉等による災害が万が一にも起こらないこと」が調査審議の過程において十分に確認されるべきであるので,安全評価に誤りがあれば,当該事故防止対策の合理性は白紙であり,少なくとも審査をしたことにはならないこと,④安全審査において,異常な いこと」が調査審議の過程において十分に確認されるべきであるので,安全評価に誤りがあれば,当該事故防止対策の合理性は白紙であり,少なくとも審査をしたことにはならないこと,④安全審査において,異常な過渡変化時や事故時における周辺地域への影響評価を行うことは不可欠であること等から,原子炉設置許可の際の安全審査においては「災害の防止上支障がないものであること(規制法24,」- 432 -条1項4号)の確認のため,事故時の影響をはじめ,将来の予測にかかわる事項を含めて「原子炉等による災害が万が一にも起こらないこと」を多角的,総合的に審査すべきである旨主張する。 しかしながら,上記エのとおり,規制法24条1項4号は,原子炉施設の安全性の確保のため,原子炉施設の有する潜在的危険性を顕在化させないよう,放射性物質の環境への放出を可及的に少なくし,これによる災害発生の危険性を社会通念上容認できる水準以下に保つべきことを規定していると解されるのであって,安全審査においては,原子炉設置許可申請書に記載された原子炉施設の位置,構造及び設備について,その基本設計において,放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させない対策が適切に講じられているかどうかが審査されるというべきである。 なお,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,安全審査においては,原子炉設置許可申請者の実施した平常運転時における被ばく低減対策に係る被ばく線量評価及び事故防止対策に係る安全評価の妥当性をも合わせて確認していることが認められるが,これは,通常運転状態を超えるような異常な事態をあえて想定した上で解析評価を行い,そのような事態においても,当該原子炉施設の基本設計において事故防止対策のために考慮された機器系統などの設計が妥当で これは,通常運転状態を超えるような異常な事態をあえて想定した上で解析評価を行い,そのような事態においても,当該原子炉施設の基本設計において事故防止対策のために考慮された機器系統などの設計が妥当であることを念のために確認するためのものであり,したがって,事故防止対策に係る安全設計が適切であると判断したことが妥当であったか否かを念のため確認するために行われるものと解するのが相当である。すなわち,原子炉設置許可申請者の実施した平常運転時における被ばく低減対策に係る被ばく線量評価及び事故防止対策に係る安全評価は,当該原子炉施設の事故防止対策に係る設計の妥当性を確認する一つの手法としてされるものであって,これにより原子炉施設の位置,構造及び設備が規制法24条1項4号に適合する- 433 -ことを確認することができるが,事故防止対策に係る設計それ自体を直接の審査対象とするものではないから,たとえ同申請者の実施した上記被ばく線量評価及び安全評価が誤っているとしても,これによって直ちに同条1項4号に適合しなくなるものではないというべきである。 したがって,控訴人らの当該主張は,理由がなく採用することができない。 (ウ)そして,上記前提となる事実によると,本件安全審査においては,その基本方針及び審査事項として,①原子炉施設が設置される場所の地盤,地震,気象,水理等の自然事象及び交通等の人為事象によって原子炉施設の安全性が損なわれないような安全設計が講じられること,②平常運転時に放出される放射性物質による一般公衆の被ばく線量が,原子炉の設置,運転等に関する規則等の規定に基づき,許容線量等を定める件2条に規定する許容被ばく線量(年間0.5レム)以下に抑えられていることはもちろんのこと,更に,それをできるだけ少なくするような安全設計が講じられること る規則等の規定に基づき,許容線量等を定める件2条に規定する許容被ばく線量(年間0.5レム)以下に抑えられていることはもちろんのこと,更に,それをできるだけ少なくするような安全設計が講じられること,③平常運転時において,従事者が許容被ばく線量を超える線量を受けないような放射線の防護及び管理が講じられること,④原子炉の運転に際し,異常の発生を早期に発見し,その拡大を未然に防止するような安全設計が講じられること,⑤原子炉の運転に際し,機器の故障,誤操作等が発生しても,燃料の健全性,冷却材圧力バウンダリの健全性等が損なわれないような安全設計が講じられること,⑥原子炉冷却材を包含している冷却材圧力バウンダリの健全性が損なわれ,冷却材が喪失するような事故,炉心の反応度を制御している制御系の健全性が損なわれ,反応度が異常に上昇するような事故等の発生を仮定しても,事故の拡大を防止し,放射性物質の放出を抑制できるような安全設計が講じられること,⑦重大事故及び仮想事故を仮定しても,その安全防護施設との関連において,一般公衆の安全が確保されるような- 434 -立地条件を有していることなどを定め,本件原子炉施設が平常運転時はもとより,万一の事故を想定した場合にも,一般公衆及び従事者の安全が確保されるように,所要の安全設計等が講じられていることを確認することとしたことが認められる。 さらに,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1,同P5及び同P6の各証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,原子炉施設の有する潜在的危険性を顕在化させないよう,いわゆる多重防護の考え方に基づいた各種の安全対策が講じられる必要があると判断されていること,その安全審査の内容を安全確保対策の観点から整理すると,①原子炉施設の平常運転時におけ 在化させないよう,いわゆる多重防護の考え方に基づいた各種の安全対策が講じられる必要があると判断されていること,その安全審査の内容を安全確保対策の観点から整理すると,①原子炉施設の平常運転時における被ばく低減に係る安全確保対策,②原子炉施設の自然的立地条件等に係る安全性を含む原子炉施設の事故防止に係る安全確保対策,③原子炉施設の公衆との離隔に係る安全確保対策の三つに分類することができるが,上記②の原子炉施設の自然的立地条件等に係る安全性については,気象,水理などの自然事象,交通等の人為事象,社会環境等に係る安全性の確保が対象となり,そのうち特に原子炉施設の地質・地盤及び地震に係る安全確保対策が重要であるとの観点から,これに重点を置いて本件安全審査がなされていることが認められる。 上記認定の審査方針及び審査事項は,その内容にかんがみると合理性があり,審査方針の樹立及び審査事項の選定自体には不合理な点はないというべきである。 なお,上記1(5)及び4のとおり,上記審査方針及び審査事項に,本件原子炉についての温排水の熱的影響,固体廃棄物の最終処分,使用済燃料の再処理,輸送及び最終処分,廃炉,労働者被ばく並びに防災計画等が含まれていないとしても,これらは原子炉設置許可に際しての安全審査の対象となるものではないこと等から,いずれも本件訴訟の審理・- 435 -判断の対象となるものではない。 (エ)そこで,更に以下においては,争点である本件安全審査における,①本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策,②本件原子炉施設の事故防止対策,③本件原子炉施設の地質・地盤及び地震の安全対策,並びに④本件原子炉施設の公衆との離隔の安全対策などの各判断について不合理な点があるか否かについて検討する。 (2)本件原子炉施設の平常運転時における被ばく 子炉施設の地質・地盤及び地震の安全対策,並びに④本件原子炉施設の公衆との離隔の安全対策などの各判断について不合理な点があるか否かについて検討する。 (2)本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策に関する本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ア審査基準に不合理な点があるか否か。 (ア)本件安全審査が基準とした公衆の線量当量限度は不当に高いものであるか否か。 ①控訴人らは,安全審査会が平常運転時の公衆の許容被ばく線量値として採用した許容線量等を定める件2条所定の線量値である年間0. 5レムという数値は不当に高く,極めて危険であるので,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 ,上記前提となる事実及び上記6(1)ウ(ア)の認定事実と証拠(甲1118,119の①ないし④,120ないし122,152,154,156,157,161,178の①ないし⑥,181,204ないし207,乙12,13,21,22,46の①ないし⑦,47の①ないし⑤,48,62の①ないし⑤,64の①ないし③,65の①②,67の①ないし④,68の①ないし④,119ないし124,126,いずれも原審における証人P2及び同P5の各証言)及び弁論の全趣- 436 -旨によると,以下の事実が認められる。 aICRPは,1954年(昭和29年)採択の勧告により,線量制限について「可能な最低レベルまで引き下げる(tothelowe,」stpossiblelevel) の事実が認められる。 aICRPは,1954年(昭和29年)採択の勧告により,線量制限について「可能な最低レベルまで引き下げる(tothelowe,」stpossiblelevel)の考え方がとられ,電離放射線に対する被ばくを可能な最低レベルまで引き下げる努力を払うべきであると説明していた。 b次に,ICRPの上記6(1)ウ(ア)⑤の1958年(昭和33年)採択の勧告においては,線量制限について「すべての被ば,くを実行可能(達成可能)な限り低く保つべきこと(aslowas」practicable。ALAP)の考え方がとられ,最大許容量は最大の値で,あらゆる被ばく総量を実行可能な限り低く保ち,不必要な被ばくはすべて避けるようにすると説明されていた。 cまた,ICRPの1965年(昭和40年)採択の勧告においては「放射線防護の目的は,放射線の急性効果を防止し,かつ,晩,発性効果の危険を認容できるレベルまで制限することである,。」「放射線による白血病およびその他の型の悪性腫瘍の誘発機構はわかっていない「しきい線量の存在は不明であるため,どんな小。」,さい線量でもそれに比例して小さい悪性腫瘍誘発の危険を伴うと仮定されてきた。また,人における悪性腫瘍誘発の線量-効果関係の本性に関する知識-特に放射線防護で問題とされる線量レベルでの知識-が不足しているため,線量-効果関係が直線的であるという仮定,および,線量は積算的に作用するという仮定に代わる実際的な代案を持っていない「電離放射線への被ばくが含まれる活動。」,をしないですまそうと望むのでない限り,ある程度の危険性が存在することを認識しなければならず,かつ,考えられる危険が,このような活動から得られる利益からみて,その人および社会にとり容- 437 - をしないですまそうと望むのでない限り,ある程度の危険性が存在することを認識しなければならず,かつ,考えられる危険が,このような活動から得られる利益からみて,その人および社会にとり容- 437 -認できると思われるレベルにまで放射線量を制限しなければならない「どんな被ばくでもある程度の危険を伴うことがあるので,。」,委員会は,いかなる不必要な被ばくも避けるべきであること,および,経済的および社会的な考慮を計算にいれた上,すべての線量を容易に達成できるかぎり低く保つべきである」などと表明した上。 で,職業上の個人の全身被ばくについて,最大許容線量を年間5レムとすること,公衆の構成員の被ばくについて「放射線作業者に,対し容認できると考えられる線量と同程度の大きさの線量を公衆の構成員が受けることは望ましくない。公衆の構成員中には子供,すなわち成人より大きい危険にさらされるかも知れず,また全生涯を通じて被ばくするかもしれない者を含んでいる。公衆の構成員は(放射線作業者と異なり)被ばくするかしないかに関して選択の自由がなく,かつ,その被ばくから直接的利益を何も受けないであろう。これらの人々は放射線作業に必要とされる人選,監督及びモニタリングを受けないし,また自身の職業の危険にさらされている」とした上で,その全身被ばくの線量限度を年間0.5レム。 (ただし,公衆の構成員の線量限度を放射線作業者の値の10分の1とすることについて,現在,放射線生物学上の知見が十分ではないので,この係数の大きさにはあまり生物学的な意義をもたせるべきではないとも指摘している)とすることを勧告した。 。 そして,線量制限について「容易に達成できる限り低く(as,」lowasreadilyachievable。ALARA)との考え方がとられ,経済的及 摘している)とすることを勧告した。 。 そして,線量制限について「容易に達成できる限り低く(as,」lowasreadilyachievable。ALARA)との考え方がとられ,経済的及び社会的な考慮を計算に入れた上で,すべての被ばく線量を容易に達成できる限り低く保つべきであると説明されていた。 dさらに,ICRPの1977年(昭和52年)採択の勧告においては,放射線の影響を確率的影響と非確率的影響に区分した上で,- 438 -「放射線防護の目的は,非確率的な有害な影響を防止し,また,確率的影響を否認できると思われるレベルにまで制限することにおくべきである「(a)いかなる行為も,その導入が正味でプラスの。」,利益を生むのでなければ,採用してはならない,(b)すべての被ばくは,経済的および社会的な要因を考慮に入れながら,合理的に達成できるかぎり低く保たれなければならない,(c)個人に対する線量当量は,委員会がそれぞれの現状に応じて勧告する限度を超えてはならない」ことをICRPの勧告する線量制限体系とする,全。 身均等照射による放射線誘発癌に関する死亡のリスク係数は,男女及びすべての年齢の平均値として,1レム当たり約1万人分の1であるとICRPは結論するなどと表明した上,放射線作業者に関する線量等量限度について,高い安全水準の職業とは,職業上の危険による平均年死亡率が1万人に1人を超えない職業と位置付け,放射線作業者が年間5レム被ばくすると死亡率は1万人に5人となり,他の安全な職業より危険になるおそれがあるが,実際には,年間0. 5レム程度の被ばくにとどまるので安全性は確保されるとして,その全身均等照射による被ばくの線量限度を年間5レムとすること,公衆の個々の構成員に対する線量当量限度については,一般公衆に対する死の . 5レム程度の被ばくにとどまるので安全性は確保されるとして,その全身均等照射による被ばくの線量限度を年間5レムとすること,公衆の個々の構成員に対する線量当量限度については,一般公衆に対する死のリスクの容認できるレベルは,職業上のレベルより1桁低いと結論付けられ,年間10万ないし100万分の1の範囲の死亡リスクは,公衆の個々の構成員にとっても容認できるから,公衆の個々の生涯線量当量を,一生涯を通して年間0.1レムの全身被ばくに相当する値に制限することを意味するが「公衆の個々の構,成員に対して5ミリシーベルトという年線量当量限度を適用するとき,公衆の被ばくをもたらすような行為は少ししかなく,決定グループ外の人々の被ばくがほとんどないならば,平均線量当量は1年- 439 -につき0.5ミリシーベルトより低くなると思われる」などとし。 て,結局,従来どおり,年間0.5レム(5ミリシーベルト)とし,生涯を通して年平均0.1レム(1ミリシーベルト)という全身線量当量限度を用いることなどを勧告した。 そして,線量制限について「合理的に達成し得る限り低く(a,」slowasreasonablyachievable。ALARA)との考え方がとられ,被ばく線量は,経済的及び社会的な考慮を計算に入れた上で,合理的に達成し得る限り低く保つことと説明されていた。 eところで,ICRPは,1985年(昭和60年)のパリ会議において,上記1977年(昭和52年)採択の勧告で定められた生涯を通しての年平均線量当量0.1レム(1ミリシーベルト)をより確実に実行するためとして,公衆の構成員に対する実効線量当量限度を年間0.1レム(1ミリシーベルト)とするが,生涯にわたる平均の年実効線量当量が上記限度を超えることのない限り,1年につき0.5レム( 実に実行するためとして,公衆の構成員に対する実効線量当量限度を年間0.1レム(1ミリシーベルト)とするが,生涯にわたる平均の年実効線量当量が上記限度を超えることのない限り,1年につき0.5レム(5ミリシーベルト)という補助的線量限度を数年にわたって用いることができるとする旨の声明を出した。 fそして,ICRPは,これまでの多角的な研究成果を踏まえ,1990年(平成2年)採択の勧告において,ICRPが,それまでに明らかになった日本の原爆被ばく者の研究,新しい線量算定体系であるDS86,UNSCEAR(国際連合放射線影響科学委員会,BEIR(CommitteeontheBiologicalEffectsofIoniz)ingRadiation・米国電離放射線生物影響委員会)等の機関による研究等を評価し,致死癌の確率を推定した旨表明した上,職業人に対する実効線量限度を,年間50ミリシーベルト(5レム)を超えないとの条件付きで,5年間の平均値が年間20ミリシーベルト(2レム)とすること,公衆の個々の構成員に対する実効線量限度- 440 -を,年間1ミリシーベルト(0.1レム)とし,特殊の状況下では5年間にわたる平均が年当たり1ミリシーベルトを超えなければ,単一年ではもっと高い実効線量が許されることもあり得ること,妊娠していない女性に関する職業被ばくの管理の基礎は男性の職業被ばくの場合と同じであること,事故時等の緊急時の職業人に対する線量限度を50レムとすることなどを勧告した。 なお,線量制限については,上記1977年(昭和52年)採択の勧告のとおり,ALARAの考え方が維持された。 gこれまでICRPの勧告は,米国をはじめとして各国で尊重され,その線量当量限度については,各国の法令にとり入れられている。 我が国では,I )採択の勧告のとおり,ALARAの考え方が維持された。 gこれまでICRPの勧告は,米国をはじめとして各国で尊重され,その線量当量限度については,各国の法令にとり入れられている。 我が国では,ICRPの1958年(昭和33年)採択の勧告を尊重し,昭和35年9月30日,科学技術庁告示第21号をもって定められた許容線量等を定める件2条により公衆の許容被ばく線量を年間0.5レムと定めた。そして,平常運転に伴う公衆の被ばく線量を,上記許容被ばく線量より一層低く抑えるための努力が払われてきたが,その努力目標値を明らかにすることが望ましいとの観点から,昭和50年5月13日「線量目標値指針(乙12)が,」定められ,放射性希ガスからのガンマ線による全身被ばく線量及び液体廃棄物中の放射性物質に起因する全身被ばく線量の評価値の合計値については,年間5ミリレム(0.005レム,放射性ヨウ)素に起因する甲状腺被ばく線量の評価値については年間15ミリレム(0.015レム)との努力目標値が明示され,この線量目標値への適合性を判断する際の指針として,昭和51年9月28日に「線量目標値評価指針(乙13)が定められた。 」h本件処分後,許容線量等を定める件については,昭和53年12月28日科学技術庁告示第12号による改正があり「実用発電用,- 441 -原子炉の設置,運転等に関する規則の規定に基づく許容被曝線量等を定める件(昭和53年12月28日通商産業省告示第665」号)が制定された。 しかし,更に上記ICRPにおける1985年(昭和60年)パリ会議における公衆に対する線量当量限度を年間0.1レム(1ミリシーベルト)とし,生涯にわたる平均の年間線量がこれを超えない限り,年間0.5レム(5ミリシーベルト)という補助的線量限度を数年にわたって用い おける公衆に対する線量当量限度を年間0.1レム(1ミリシーベルト)とし,生涯にわたる平均の年間線量がこれを超えない限り,年間0.5レム(5ミリシーベルト)という補助的線量限度を数年にわたって用いることができる旨の声明を受けて「実用,発電用原子炉の設置,運転等に関する規則の規定に基づく線量当量限度等を定める告示(平成元年3月27日通商産業省告示第13」1号)が制定され,公衆の線量当量限度を実効線量当量として,1年間につき0.5レム(5ミリシーベルト)から0.1レム(1ミリシーベルト)に変更され,昭和53年12月28日通商産業省告示第665号は平成元年3月21日限り廃止された。 iその後,更に平成13年3月21日,線量限度等を定める告示が制定されて,平成13年4月1日から施行され「実効線量につい,ては,1年間(4月1日を始期とする1年間をいう。以下同じ)。 につき1ミリシーベルト(同告示3条1項1号「前項第1号の」),規定にかかわらず,経済産業大臣が認めた場合は,実効線量について1年間につき5ミリシーベルトとすることができる(同告示。」3条2項)と規定され,上記平成元年3月27日通商産業省告示第131号は平成13年3月31日限り廃止されている。 ②上記認定事実によると,本件処分当時の許容線量等を定める件2条の許容被ばく線量値(年間0.5レム)は,ICRPの1958年(昭和33年)採択の勧告を尊重し,昭和35年9月30日,科学技術庁告示第21号をもって定められたものであるが,現在では許容線- 442 -量等を定める件は廃止され,上記許容被ばく線量値は採用されていないことが認められる。そして,ICRPが,上記1990年(平成2年)採択の勧告のとおり,公衆の個々の構成員に対する実効線量限度を,年間1ミリシーベルト(0 され,上記許容被ばく線量値は採用されていないことが認められる。そして,ICRPが,上記1990年(平成2年)採択の勧告のとおり,公衆の個々の構成員に対する実効線量限度を,年間1ミリシーベルト(0.1レム,特殊の状況下では5年間にわたる平均が年当たり1ミリシーベルトを超えなければ,単一年ではもっと高い実効線量が許されることもあり得る)とする考え方を採。 用し,また,我が国においても,線量限度等を定める告示が制定されて,同告示3条1項1号において,実効線量については,1年間(4月1日を始期とする1年間をいう)につき1ミリシーベルトと規定。 されていることにかんがみると,許容線量等を定める件2条の許容被ばく線量値(年間0.5レム)は,現時点においては公衆の線量当量限度としての合理性は乏しいというべきである。 しかし,上記前提となる事実によると,本件安全審査においては,平常運転時に放出される放射性物質による一般公衆の被ばく線量が,許容線量等を定める件2条に規定する許容被ばく線量(年間0.5レム)以下であるのみならず,更に,それをできるだけ少なくするような安全設計が講じられることを基本方針としていることが認められる。 そして,証拠(乙4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によれば,線量目標値指針(乙12)所定の線量値(放射性希ガスからのガンマ線による全身被ばく線量及び液体廃棄物中の放射性物質に起因する全身被ばく線量の評価値の合計値については年間5ミリレム,放射性ヨウ素に起因する甲状腺被ばく線量の評価値については年間15ミリレム)を基準として設定し,実際には,これを公衆の線量限度とした上,ALAPの精神に従って,可能な限り被ばく線量を低下させるための対策が講じられているか否かを審査し,本件原子炉施設による公衆に対する被ばく線量は, て設定し,実際には,これを公衆の線量限度とした上,ALAPの精神に従って,可能な限り被ばく線量を低下させるための対策が講じられているか否かを審査し,本件原子炉施設による公衆に対する被ばく線量は,線量目標値指針の目標値を下回- 443 -り,全身被ばく線量の最大合計値は年間約0.005ミリシーベルト(0.0005レム,0.5ミリレム)で,甲状腺最大被ばく線量については年間約0.014ミリシーベルト(0.0014レム,1. 4ミリレム)であることを確認し,上記線量当量限度をはるかに下回るものである旨判断されていることが認められる。 そうすると,本件安全審査においては,許容線量等を定める件2条の許容被ばく線量値(年間0.5レム)よりも更に厳しい基準を設定して行われているので,ICRPの上記1990年(平成2年)採択の勧告が定めている年間1ミリシーベルト(0.1レム)及び同様に我が国の線量限度等を定める告示が規定する公衆の線量当量限度(年間1ミリシーベルト)との対比においても十分低い値になっているものというべきであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 したがって,現時点では許容線量等を定める件2条の許容被ばく線量値(年間0.5レム)の合理性が乏しく,また,ICRPの勧告に定める線量限度の数値が改定され,しかも,我が国においても線量限度等を定める告示が新たに制定されているものの,本件安全審査が実際に基準とした公衆の線量当量限度はこれらが定める値よりはるかに厳しいものであるから,本件安全審査が違法となるものではないというべきである。 ③もっとも,控訴人らは,aICRPの1958年(昭和33年)採択の勧告が職業人に対する許容被ばく線量を年間5レムとした経緯は,人間が子供を持つ平均年齢を30歳と想定し,集団にとって許容できる線量は30年間 ,控訴人らは,aICRPの1958年(昭和33年)採択の勧告が職業人に対する許容被ばく線量を年間5レムとした経緯は,人間が子供を持つ平均年齢を30歳と想定し,集団にとって許容できる線量は30年間で6ないし10レムが上限であると考え,既に医療行為に伴って照射されている線量を4.5レム程度と推定し,もし,すべての人工放射線による線量の限度を6レムと定めるとすれば,既に医療行為によって照射された4.5レムを差し引くと残りは1.5- 444 -レムとなってしまい,これでは原子力開発などで使うことのできる線量がはなはだしく狭苦しくなってしまい,受け入れ困難な国があるので,医療上の被ばくは別に考えるとしたこと,bこのことは放射線防護を使命とするICRPの立場からすれば本末転倒なことであること,c職業人に対する許容被ばく線量を年間5レム,公衆に対し年0.5レムとした生物学的な根拠はなく,ICRPは上記勧告において「勧告されている最大許容被ばく線量は,最大の値であることが強調される」と申し訳していることから,ICRPが上記勧告を契機に,以後興隆してきた原子力産業推進のための露払的立場を一層鮮明にしている旨主張する。 しかし,ICRPが原子力産業推進のための露払的立場となっていることを具体的に裏付けるに足りる証拠はない。 のみならず,上記前提となる事実と証拠(甲1,118,119の①ないし④,120ないし122,152,154,156,157,161,178の①ないし⑥,181,204ないし207,乙12,13,21,22,46の①ないし⑦,47の①ないし⑤,48,62の①ないし⑤,64の①ないし③,65の①②,67の①ないし④,68の①ないし④,119ないし124,126,いずれも原審における証人P2及び同P5の各証言)及び弁論の全趣旨による し⑤,48,62の①ないし⑤,64の①ないし③,65の①②,67の①ないし④,68の①ないし④,119ないし124,126,いずれも原審における証人P2及び同P5の各証言)及び弁論の全趣旨によると,aICRPは,中立かつ独立した国際機関であって,その委員は,国籍によってではなく,専門分野の適切な均衡を考え,放射線医学,放射線防護学,保健物理学,生物学,遺伝学,生物化学及び生物物理学などの放射線防護の分野における専門家をもって構成し,その姉妹委員会である国際放射線単位・測定委員会との密接な連携のもとに作業を行い,また,世界保健機関(WHO)及び国際原子力機関(IAEA)と公的な関係を有し,国際連合放射線影響科学委員会(UNSCEA- 445 -R,国際連合環境プログラム,欧州協同体委員会,経済協力開発機)構原子力機関,国際標準化機構,国際電気標準会議,国際放射線防護学会等とも重要な関係を保っていること,bICRPは,線量当量限度を勧告するに当たっては,しきい値がないものと仮定し,公衆の中に放射線感受性の強い胎児や子供を含めた上,最新の科学的知見に照らして,社会的に容認できる線量限度を勧告していること,cICRPの勧告する線量限度は「放射線被ばくを伴うどんな行為も,その,行為によって,被ばくする個人又は社会に対して,それが引き起こす放射線障害を相殺するのに十分な便益を生むものでなければ,採用すべきでない(行為の正当化)ことを前提にし,行為による便益とそ」れによる被ばくの影響とを比較して数値を定めるものであり,人体が許容し得る限界値を示したものではないこと,dICRPの勧告は,自然放射線をその考慮外とした上,行為で生ずる被ばくにより,何の便益も得られない公衆に対する被ばくと,便益が得られる職業被ばく又は医療被ばくとは,異な を示したものではないこと,dICRPの勧告は,自然放射線をその考慮外とした上,行為で生ずる被ばくにより,何の便益も得られない公衆に対する被ばくと,便益が得られる職業被ばく又は医療被ばくとは,異なる扱いをし,診断や治療などによる医療被ばくについては,通常個人に直接の便益をもたらすことを目的とするため,職業被ばく及び公衆被ばくによる線量限度とは扱いが相違するとして,医療被ばくには線量限度を適用すべきではないと勧告していることが認められるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており理由がない。 また,控訴人らは,ICRPにおいては,上記1954年(昭和29年)採択の勧告では勧告値が最大限であって「可能な最低のレベ,ルに」被ばくを抑えるべきとしていたものを,1958年(昭和33年)勧告では「実行可能な限り低く」とし,1965年(昭和40年)採択の勧告では「容易に達成できる限り低く」と,更に1977年(昭和52年)採択の勧告では「合理的に達成し得る限り低く」と,- 446 -放射線防護の基本精神を押しのけ,経済的理由を全面に出して勧告値の切下げを引き伸ばして,放射線防護を使命とする勧告の基本精神を著しく後退させているから,ICRPの勧告を守っていれば安全性は保たれるとの論理はもはや空論にすぎず,ICRPの勧告は今や完全に破綻しているから,上記ICRPの1990年(平成2年)採択の勧告による勧告値も,不必要に高すぎて危険であって,ICRPが安全性の側に立って放射線防護のための勧告をしたとはいい難い旨主張する。 しかしながら,証拠(乙21,62の①ないし⑤)及び弁論の全趣旨によると,ALAPの表現が控訴人らの主張のとおり変化しているものの,これは,表現をより具体的にしてより分かり易くし,その内容をより明確にしようとするものであると認め の①ないし⑤)及び弁論の全趣旨によると,ALAPの表現が控訴人らの主張のとおり変化しているものの,これは,表現をより具体的にしてより分かり易くし,その内容をより明確にしようとするものであると認めることができ,そして,上記のとおり,ICRPの委員は,放射線防護の分野における専門家によって構成され,ICRPは,最新の科学的知見に照らして社会的に容認できる線量限度を勧告しているものであり,本件安全審査においても,上記②のとおり,ALAPの精神に従って,可能な限り被ばく線量を低下させるための対策が講じられているか否かを審査していることが明らかである。そして,上記6(1)ウ(ア)及び(2)ア(ア)①の各認定事実に照らすと,ICRPの上記1990年(平成2年)採択の勧告に係る実効線量限度をALAPの精神とともに用いる限りにおいては,自然放射線の変動値以下であることからも,放射線被ばくによる危険を社会通念上容認できる水準以下に保つための基準として合理的なものと解するのが相当であるから,控訴人らの当該主張を採用することはできない。 ④したがって,本件安全審査が基準とした公衆の線量当量限度は不当に高いものではないというべきである。 - 447 -(イ)「線量目標値指針」の線量目標値に合理性があるか否か。 ①控訴人らは,線量目標値指針(乙12)所定の線量値(放射性希ガスからのガンマ線による全身被ばく線量及び液体廃棄物中の放射性物質に起因する全身被ばく線量の評価値の合計値について年間5ミリレム,放射性ヨウ素に起因する甲状腺被ばく線量の評価値については年間15ミリレム)についても,合理性のない危険なものである旨主張する。 しかし,上記(ア)①の認定事実によると,ICRPの1990年(平成2年)採択の勧告が,公衆の個々の構成員に対する実効線量限度 間15ミリレム)についても,合理性のない危険なものである旨主張する。 しかし,上記(ア)①の認定事実によると,ICRPの1990年(平成2年)採択の勧告が,公衆の個々の構成員に対する実効線量限度を,年間1ミリシーベルト(0.1レム)としている上,本件安全審査においては,ALAPの精神に従って,可能な限り被ばく線量を低下させるための対策が講じられているか否かが審査されていることが認められるので,現在の科学水準に照らしても,本件安全審査において用いられた線量目標値が不合理なものではないというべきであるから,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 ②また,控訴人らは,線量目標値指針によると,a原子力発電所周辺の公衆の被ばく線量は,全身につき年間5ミリレム,甲状腺に対する放射性ヨウ素に起因する被ばくが年間15ミリレムと定められているが,この目標値が仮に達成されたとしても,原子力発電所周辺の公衆が30年間全身に被ばくする量は,0.15レムとなり,これは1962年(昭和37年)に国際連合放射線影響科学委員会が報告した人類の突然変異の倍加線量である年間15レムの1%に相当するので,周辺住民が遺伝的に障害を被る危険性が極めて高くなり,原子力発電所周辺の集団に遺伝質の劣化をもたらすものであること,b白血病その他の癌についても,癌の倍加線量は約10レム相当であるから,年間5ミリレムの被ばくは倍加線量の0.05%に相当し,癌に罹患す- 448 -る確率が1年間に0.05%ずつ,20年間で1%,50年間で2. 5%増加する結果となり,更に甲状腺癌の倍加線量は,20ラド(ほぼ20レムに等しい)であるから,甲状腺への年間15ミリレムの。 被ばくは0.075%となり,1年ごとに甲状腺癌に罹患する確率が0.075%増加し,20年間では1.5%,50年間 量は,20ラド(ほぼ20レムに等しい)であるから,甲状腺への年間15ミリレムの。 被ばくは0.075%となり,1年ごとに甲状腺癌に罹患する確率が0.075%増加し,20年間では1.5%,50年間では実に3. 75%に増大すると予測されることから「線量目標値指針」による,目標値は,晩発性障害防止の観点からみても危険な数値であるので合理性がない旨主張する。 しかし,上記6(1)ウ(ア)及び(2)ア(ア)①の各認定事実並びに弁論の全趣旨によると,ICRPにおいては,低線量における被ばく線量と人体への影響については解明されていないため,人体への影響が無視できる程度である年間の公衆への線量限度が示され,線量目標値が定められているとともに,安全を重視して比例関係が成り立つと仮定していることが認められるから,控訴人らの主張のように被ばく線量と遺伝的障害の発生が比例関係にあって,更に年毎にそれが累積されるという合理的な根拠はないというべきである。のみならず,証拠(乙61の①ないし③,122,123)及び弁論の全趣旨によると,倍加線量については,低線量による被ばくによって人体の一部の遺伝子や細胞に影響が起きたとしても,修復される作用があること,本件原子炉施設においては,線量目標値指針が定める公衆の被ばく線量よりはるかに小さい数値の低線量であること,そして,1962年(昭和37年)の国際連合放射線影響科学委員会が報告した人類の突然変異の倍加線量である年間15ラドは,動物実験に基づくものであるが,1988年(昭和63年)の同委員会報告書においては,原爆等の被ばくデータに基づく分析結果として人に対する遺伝的影響については,有意な差は認められないと報告されていることが認められるので,控- 449 -訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 ばくデータに基づく分析結果として人に対する遺伝的影響については,有意な差は認められないと報告されていることが認められるので,控- 449 -訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 (ウ)「線量目標値指針」及び「線量目標値評価指針」の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書に不合理な点がないか否か。 ①控訴人らは,a裁判所においては,具体的審査基準につき,単に不合理な点があるか否かだけを審査すべきものではなく,安全性を審査するに足りる十分な合理性を有するか否かを審査すべきであること,b本件安全審査に用いられた線量目標値指針(乙12)及び線量目標値評価指針(乙13)の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書(乙91)は,限られた核種についてのみ評価することとしているものであり,また,いまだ確立されていない被ばく評価の方法であって,評価方法によって,平常運転時の被ばく評価に関する数値はいくらでも変わり得るものであるから,基準として甚だしく不十分であることから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記1(4)及び6(1)のとおり,規制法に基づく審査基準の決定,審査基準への適合性の判断については,各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的,専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねられているところ,具体的にどのような審査方針を樹立し,どのような事項について審査を行うかについては,その専門技術的知見を総合して決すべき事項であり,しかも,具体的にどの程度の安全性のレベルをもって原子炉設置を相当とする基準とすべきかの点についても,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専 は,その専門技術的知見を総合して決すべき事項であり,しかも,具体的にどの程度の安全性のレベルをもって原子炉設置を相当とする基準とすべきかの点についても,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見を踏まえた総合的な判断が必要であるから,本件安全審査の調査審議において用いられる具体的審査基準の策定は,内閣総理大臣及び原子力委員会の合理的な判断にゆ- 450 -だねられているものというべきである。そして,線量目標値指針及び線量目標値評価指針の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書の各内容を具体的に不合理とすべき特段の事情はないというべきであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 ②もっとも,控訴人らは,線量目標値評価指針は,原子力委員会において本件申請の審査途中の昭和51年9月28日に定められ,これに合わせて東京電力の本件補正がなされたものであるところ,本件補正における本件申請書の本文及び添付資料の放射性廃棄物に関する推定発生量及び被ばく線量評価の一部の大幅な変更についての合理的な説明はないので,データの出所,正確性などに疑問があるのみならず,被ばく評価の方法もいまだ確立していないことを示唆するものであるから,線量目標値指針及び線量目標値評価指針の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書は,いずれも原子炉施設の安全性を審査する基準とはならない旨主張する。 しかし,控訴人らの上記主張内容はそれ自体一般的かつ抽象的であり,具体的な裏付けを欠くものであるのみならず,放射性廃棄物の推定発生量等に関する知見は,科学技術の発展とともに不断に進歩,発展し,新しい知見が発見されていることにかんがみると,上記推定発生量に関する数 体的な裏付けを欠くものであるのみならず,放射性廃棄物の推定発生量等に関する知見は,科学技術の発展とともに不断に進歩,発展し,新しい知見が発見されていることにかんがみると,上記推定発生量に関する数値に変動があるからといって,直ちに,恣意的な変更であるということはできない。むしろ,線量目標値指針等の設定,改正の経緯は上記(ア)のとおりであって,それぞれ科学的根拠を有するものである。そして,内閣総理大臣の本件申請に対する原子炉設置許可処分がなされるまでの間,東京電力が必要に応じて本件申請書記載内容の補正を行うことは適法というべきであって,線量目標値評価指- 451 -針を踏まえ,放射性廃棄物の推定発生量及び被ばく線量評価の一部を見直すことは合理性があるから,控訴人らの当該主張は失当である。 ③そして,上記前提となる事実によると,本件安全審査においては,線量目標値指針及び線量目標値評価指針の基準並びに「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被曝線量評価について」の報告書を活用した上,本件原子炉施設が,その基本設計において,平常運転時の被ばく低減対策が適切に講じられていることを判断しているものであって,その調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はないというべきである。 さらに,上記前提となる事実によると,線量目標値指針及び線量目標値評価指針については,それぞれ各平成元年3月27日及び平成13年3月29日にそれぞれ一部改訂がなされていることが認められる。 しかし,弁論の全趣旨によると,同改訂後の「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」では「発電用軽水炉施設の通,常運転時における環境への放射性物質の放出に伴う周辺公衆の受ける線量を低く保つための努力目標として,施設周辺の公衆の受ける線量についての目標 の線量目標値に関する指針」では「発電用軽水炉施設の通,常運転時における環境への放射性物質の放出に伴う周辺公衆の受ける線量を低く保つための努力目標として,施設周辺の公衆の受ける線量についての目標値(以下「線量目標値」という)を実効線量で年間。 50マイクロシーベルトとする「ここで設定した線量目標値は,。」,周辺監視区域外の線量限度及び周辺監視区域外における放射性物質の濃度限度の規制値に代わるものではなく,いわゆる「aslowasreadilyachievable」の考え方に立って周辺公衆の受ける線量を低く保つための努力目標値であるこの線量目標値が達成できないことをもって,運転停止,出力制限等の措置を必要とするような安全上の支障があると解すべきものではない」としているので,上記一部改訂によって。 上記認定判断が左右されるものではないというべきである。 (エ)小括- 452 -以上のとおり,上記前提となる事実により認められる本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策に関する本件安全審査の審査内容にかんがみると,上記調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はないというべきである。 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)気体廃棄物の被ばく線量評価について①間欠放出による気体廃棄物の過少評価の有無について控訴人らは,a本件原子炉の運転起動の際,短い時間に大量の排気を行うことが必要となるが,希ガスホールドアップ装置を使用できないので大量の放射性物質をそのまま周辺に放出することになること, について控訴人らは,a本件原子炉の運転起動の際,短い時間に大量の排気を行うことが必要となるが,希ガスホールドアップ装置を使用できないので大量の放射性物質をそのまま周辺に放出することになること,bこの間欠放出の際の気体廃棄物について,本件安全審査においては,先行炉実績を参考にして,間欠放出1回当たりの放射性物質の放出量を1000キュリー,年間放出回数5回(合計年間5000キュリー)としているが,その根拠はあいまいであり,先行炉の1回の放出量1000キュリーの実績自体あいまいであって,信頼することができないこと,c本件原子炉と同型の福島第一原発3号機,浜岡原発1号機,敦賀原発の昭和51年度の間欠放出回数は,それぞれ9,10,7回であり,その後も事故による運転停止,再起動が相次いでいることに照らすと,その年間放出回数を5回とするのは合理性を欠いていることから,間欠放出による気体廃棄物が過少評価されている旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙3,4,13,45,92の①ないし④)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉施設におけ- 453 -る気体廃棄物の放出量は,線量目標値評価指針のとおり,海外等の原子力発電所の運転実績を参考にし,復水器内から連続的に抽出される空気中に含まれるものとして約2万8000キュリー,真空ポンプの運転により間欠的に放出される空気中に含まれるものとして5000キュリー,換気設備から連続的に放出される空気中に含まれるものとして約1万7000キュリー等(合計年間約5万キュリー)と想定され,全希ガス漏洩率が毎秒1キュリーのときの真空ポンプ運転1回当たりの放出量を2500キュリー,運転回数を5回として,年間放出量を1万2500キュリーとし,これに全希ガス漏洩率である毎秒0.4キュリーを乗じて算出されたも 1キュリーのときの真空ポンプ運転1回当たりの放出量を2500キュリー,運転回数を5回として,年間放出量を1万2500キュリーとし,これに全希ガス漏洩率である毎秒0.4キュリーを乗じて算出されたものであること(乙3,4,13,b)本件安全審査当時の昭和50年度における福島第一原発における気体廃棄物の放出実績は,同原発1号機から3号機までの3基(合計電気出力約203万kW)の放出実績を合計しても1万6000キュリーにすぎないこと(乙45,c平成3年度の本件原子炉も含めた我が)国における沸騰水型原子炉の気体廃棄物の放出実績は,ほとんど検出限界以下,又は極めて低い値となっていること(乙92の①ないし④)が認められる。 そうすると,本件安全審査においては,被ばく線量の評価に際し,本件原子炉施設に係る気体廃棄物の推定発生量を,間欠放出による気体廃棄物(年間合計5000キュリー)を含めて年間約5万キュリーと高めに想定し,本件原子炉施設から環境に放出される気体廃棄物の量につき,全体の年間の放出量に基づいて被ばく線量を評価して十分低い数値となることが確認されており,被ばく線量の評価は合理的なものであるというべきであるから,間欠放出の放出量及び放出回数に関する本件安全審査の上記判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることができない。 - 454 -したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 ②放射性ヨウ素の被ばく線量評価の合理性の有無について控訴人らは,本件安全審査において,平常運転時に本件原子炉施設から放出される放射性ヨウ素について,希ガスと違って人体や生物体などに付着し取り込まれ,濃縮されるから,公衆に対する被ばく線量は,付着,沈着に比して飛躍的に増大し,特に,ヨウ素131の場合,大気中の濃度に比べ,牧草では200万倍以上とな スと違って人体や生物体などに付着し取り込まれ,濃縮されるから,公衆に対する被ばく線量は,付着,沈着に比して飛躍的に増大し,特に,ヨウ素131の場合,大気中の濃度に比べ,牧草では200万倍以上となるにもかかわらず,その濃縮を考慮した被ばく線量評価が欠落している旨主張する。 しかし,控訴人らの上記主張は,具体的根拠及び経路を示さないで放射性物質の濃縮を主張するものであるのみならず,ヨウ素131の場合には大気中の濃度と比べ牧草において200万倍以上濃縮されるとする根拠も明らかではない。 しかも,上記前提となる事実と証拠(乙3,4,13,124,原審における証人P5の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,平常運転時に本件原子炉施設から放出される放射性ヨウ素について,気体廃棄物及び液体廃棄物中の各ヨウ素が呼吸,葉菜,牛乳及び海産物を介して,成人,幼児及び乳児にそれぞれ摂取されるとした場合における甲状腺被ばく線量を評価しており,その際,空気中又は海水中のヨウ素濃度,空気中のヨウ素が葉菜あるいは牛乳に移行する割合,海産物の濃縮係数,呼吸等により人体に摂取されたヨウ素が甲状腺に移行する割合等も考慮した評価を行っていることが認められるから,本件安全審査における上記判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ③粒子状放射性物質の被ばく線量評価の合理性の有無について控訴人らは,本件安全審査においては,a平常運転時に本件原子炉- 455 -施設から放出される気体廃棄物中に含まれるコバルト60,マンガン54,ストロンチウム90,セシウム137等の半減期の長い粒子状放射性物質についての被ばく線量評価が行われておらず,安全審査における被ばく線量評価は部分的なものにすぎない れるコバルト60,マンガン54,ストロンチウム90,セシウム137等の半減期の長い粒子状放射性物質についての被ばく線量評価が行われておらず,安全審査における被ばく線量評価は部分的なものにすぎないこと,b微粒子状放射性廃棄物がフィルタによってこれらの物質が容易に除去されるというのは何ら根拠がないこと,c動燃の東海再処理工場アスファルト固化処理施設において,平成9年3月11日に発生した動燃事故により施設外にセシウム,プルトニウム,アメリシウム等の放射性物質が大量に漏洩したが,火災発生後わずか7分で「高性能フィルタ」が目詰まりして機能喪失になり,最大想定事故の場合においてフィルタが健全であることを前提に安全審査をするのは非現実的で不合理であることから,本件安全審査は誤っている旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙4,13,91,125)及び弁論の全趣旨によれば,a本件原子炉施設から放出されるコバルト60等の粒子状放射性物質はいずれも固体状の物質であり,気体状の物質にはならないため気体中に混入するものはごく微量であり,また,気体中に移行したものについても放射性廃棄物廃棄設備に設けられたフィルタによって容易に除去できるため,本件原子炉施設から環境に放出される気体廃棄物中に含まれる粒子状放射性物質の量は極めて微量であること,b本件安全審査において,本件原子炉施設から放出される気体廃棄物中に含まれる粒子状放射性物質について具体的な線量評価を行わなかったのは,これらの放射性物質の食物中ないし人体内における濃縮を考慮してもなお,その被ばく線量は無視できる程度にすぎず,厳しい条件を設定した公衆の被ばく線量評価上は,特にこれを取り上げて具体的に計算,評価するまでもないと判断されたためであること,c粒子状放射性物質の除去性能については,J は無視できる程度にすぎず,厳しい条件を設定した公衆の被ばく線量評価上は,特にこれを取り上げて具体的に計算,評価するまでもないと判断されたためであること,c粒子状放射性物質の除去性能については,JISに- 456 -おいても放射性エーロゾル用高性能エアフィルタの捕集効率が99. 97%以上と規定されているので(乙125,これを考慮して安全)審査がなされていることが認められ,このような安全審査は合理的であるというべきであるから,本件安全審査における上記判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることができない。 なお,動燃は,平成10年10月1日,核燃料サイクル開発機構となった(平成10年法律第62号附則2条。 )したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 (イ)液体廃棄物の被ばく評価について①液体廃棄物に関する被ばく評価と原子力発電所による環境汚染の有無についてa控訴人らは,(a)本件安全審査においては,トリチュウムの年間放出量を100キュリー,それ以外を1キュリーとし,放水口における濃度を用いて被ばく評価をし,その放射性物質に起因する全身被ばく線量が年間0.3ミリレムとなるとしているが,全希ガス漏洩率,すなわち炉心燃料被覆管の欠陥率については,破損事故が多発しており,本件安全審査における推定値が原発稼働期間中に維持されるとは到底考えられず,破損率の増加は直ちに冷却材中の放射性物質濃度の増加につながること,(b)原子炉施設の汚染は進行しており,処理を要する液体状廃棄物は増加の一途をたどっており,環境汚染の大きな要因になっていること,(c)除染係数についても,本件安全審査では設計上の数値をそのまま用いているが,機器設備に発生している故障例,事故からすると,その信頼性は極めて低いことから,本件安全審査には瑕疵がある旨 いること,(c)除染係数についても,本件安全審査では設計上の数値をそのまま用いているが,機器設備に発生している故障例,事故からすると,その信頼性は極めて低いことから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,控訴人らの上記主張は,本件原子炉施設の稼働後の将来の破損事故や故障例などを仮定した上で,本件安全審査の前提とな- 457 -っている数値を批判するにすぎないものであるから失当である。のみならず,上記6(1)のとおり,原子炉設置許可に際しての規制法24条1項4号所定の要件適合性の安全審査は,原子炉施設の位置,構造及び設備(規制法23条2項5号)について,その基本設計において,原子炉施設から排出する放射性物質を可及的に少なくし,これによる災害発生の可能性を社会通念上容認できる水準以下に保つような方策が講じられているかどうかについて行われるべきものであるから,控訴人らの当該主張はその前提を欠いているというべきである。 bまた,控訴人らは,本件安全審査に当たり,東京電力の本件申請を本件補正により核種組成を変更したが,この変更に当たって,魚介類,海藻類の生体濃縮係数については,格段の根拠もなく10分の1低い値を採用するなど,その評価の手法は極めて恣意的であるので,本件安全審査においては,要求される結論としての公衆の被ばく線量がまず措定され,この線量にとどめるべく,放射線量が導かれている疑いがある旨主張する。 しかし,被ばく線量に関する知見は,科学技術の発展とともに不断に進歩,発展し,新しい知見が発見されていることにかんがみると,魚介類,海藻類の生体濃縮係数につき変動があるからといって,直ちに,恣意的な変更であるということはできないから,控訴人らの上記主張は理由がない。 cさらに,控訴人らは,本件安全審査の被ばく評価は,既存 類,海藻類の生体濃縮係数につき変動があるからといって,直ちに,恣意的な変更であるということはできないから,控訴人らの上記主張は理由がない。 cさらに,控訴人らは,本件安全審査の被ばく評価は,既存の原子力発電所周辺の汚染の実態と大きく齟齬し,明らかに過小であって,既存原子力発電所周辺の魚介類や海藻類などの汚染状況調査の結果は,液体状放射性物質の放出については過小な数値にとどまらないから,ICRPの各勧告及び許容被曝線量を定める件2条の年間0. - 458 -5レムの基準にも反する旨主張する。 しかしながら,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,12,13,原審における証人P5の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,人体に対する主要な被ばく経路として,(a)気体として放出された放射性物質が空気中に拡散している間にこれから放出される放射線による外部被ばく,(b)気体として放出された後,地表に沈着した放射性物質から放出される放射線による外部被ばく,(c)気体として放出された放射性物質を吸入したり,これらが付着した農作物等を摂取することによる内部被ばく,(d)液体として放出された放射性物質から放出される放射線によって遊泳中や漁業活動中に受ける外部被ばく,(e)液体として放出された放射性物質を取り込んだ海産物を摂取することによる内部被ばくを検討し,これらのうち,放射性希ガスから放射されるガンマ線による外部全身被ばく,ヨウ素に起因する内部甲状腺被ばく,液体として放出された放射性物質に起因する内部全身被ばくを対象として公衆の被ばく線量評価を行っていること,このような審査の方法がとられたのは,上記放射性希ガスから放射されるガンマ線による外部全身被ばく,ヨウ素に起因する内部甲状腺被ばく,液体として放出された放射性物質に起因す 線量評価を行っていること,このような審査の方法がとられたのは,上記放射性希ガスから放射されるガンマ線による外部全身被ばく,ヨウ素に起因する内部甲状腺被ばく,液体として放出された放射性物質に起因する内部全身被ばくが主要なものであり,このような主要な被ばく経路についての定量的な評価による線量値が十分低ければ,その他の影響が小さく,被ばく線量評価の対象としなかった経路の被ばく線量による寄与分を考慮してもなお,全体として十分低く抑えられるものとの判断に基づいて,被ばく低減対策に関する安全審査が行われたためであること,そして,本件安全審査の被ばく評価においては,許容被曝線量を定める件2条所定の線量当量限度はもとより,線量目標値指針に定められた線量目標値- 459 -も下回るものと判断されたことが認められる。そこで,このような安全審査に不合理な点はないというべきであるから,本件安全審査における上記判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることができない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することはできない。 ②洗濯廃液の評価の合理性の有無について控訴人らは,a110万kW級の原子力発電所である本件原子炉施設の洗濯廃液の発生量1日当たり10ないし15mは過小値で あり,特に停止時や定期点検時に多くの排出があるので信用できないこと,bそれに含まれる放射性物質の量(0.55キュリー毎年)には根拠がないこと,c廃水に含まれる主な放射性物質は11種あるが,ストロンチウムなどについては計測分析されていないことから,本件安全審査は,具体的に上記評価をした形跡はなく,また,線量目標値評価指針自体洗濯液量も定式的な基準ないし計算モデルがあるものではないとされているので,具体的な根拠を欠く不合理なものである旨主張する。 しかし,上記前提とな 評価をした形跡はなく,また,線量目標値評価指針自体洗濯液量も定式的な基準ないし計算モデルがあるものではないとされているので,具体的な根拠を欠く不合理なものである旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙3,4,13,91,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉の洗濯廃液の発生量については,先行炉である福島第一原発1号機の実績に基づき,1日当たり15mと想定されたこと,b同 発電所1号機の昭和47年度から昭和49年度までの実績では,1日当たり10m以下にすぎないこと,c洗濯廃液中の放射性物質 の量は,先行炉の実績等から判断すると非常に少なく,1cm当 たり約0・0001マイクロキュリーとされ,本件安全審査においては,これに洗濯廃液の年間の発生量を乗じて,洗濯廃液に起因する放射性物質の量を年間0.55キュリーと想定されたこと,d液- 460 -体廃棄物は連続放出ではないため,実際には,被ばく線量評価上の主要核種であるコバルト60,マンガン54等の放射性物質の濃度を放出毎に測定することとしており,廃液中の放射性物質の放射能量を的確に把握して,液体廃棄物中の放射性物質の放出量を年間1キュリー以下(トリチウムは100キュリー以下)の精度で管理していることが認められる。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているので失当であり,本件安全審査における上記判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることはできない。 ③機器ドレン廃液の環境流出に関する被ばく線量評価の合理性の有無について控訴人らは,本件安全審査において,原子炉施設の配管のバルブ,ポンプ等から漏れ出る機器ドレン廃液が1滴も環境に放出されないという前提で被ばく評価が行われているが,機器ドレン廃液の流出については,今 控訴人らは,本件安全審査において,原子炉施設の配管のバルブ,ポンプ等から漏れ出る機器ドレン廃液が1滴も環境に放出されないという前提で被ばく評価が行われているが,機器ドレン廃液の流出については,今日の機械工学の技術からも防止できないものであり,流出経路が原子炉建家・タービン室のみでなく,液体廃棄物貯蔵施設その他あらゆる配管・タンクが予想され,洗濯廃液のように冷却海水放出路には限らないから,今日の工業技術・管理を無視した本件安全審査は著しく不合理である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実によると,本件原子炉施設の基本設計においては,機器ドレン廃液は,収集タンクに集められ,クラッド除去装置及び濾過装置を経て放射化生成物を含む固形分が取り除かれ,更に,イオン状の不純物を取り除くための脱塩装置を経て,復水貯蔵タンクに送られ,処理水は,原子炉の冷却材等として再使用されることになっていることが認められるから,機器ドレンが環境に放出されないという前提で被ばく評価が行われた本件安全審査に不合理な点は- 461 -なく,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 ④濃縮係数の合理性の有無について控訴人らは,a液体廃棄物の被ばく線量評価は,汚染水が復水器冷却水に年間を通じて平均的に希釈されるという前提に立っているが,液体廃棄物の放出は間欠的であり,特に定期検査時に放出される液体廃棄物における放射性物質の濃度(汚染度)は通常よりも高く,その放出時期によっては生体への影響に差が生ずるにもかかわらず,年間を通して復水器冷却水に平均的に希釈されるとして被ばく線量評価を行っているのは不当であること,b濃縮は,核種によりまた海産物の種類により大きく異なるが,放出される核種の挙動につい もかかわらず,年間を通して復水器冷却水に平均的に希釈されるとして被ばく線量評価を行っているのは不当であること,b濃縮は,核種によりまた海産物の種類により大きく異なるが,放出される核種の挙動については今日もほとんど知られておらず,具体的データにも乏しいのみならず,放出核種は海水に平均して拡散されるものではなく,水あかに付着し比較的浅瀬の海底上に沈着するので,海底地形や海流,植生などの要素によってもその実態は大きく異なり,短期間の実験や調査で実態を把握するのは不可能であること,c全身内部被ばく線量評価(人体に摂取された核種の各器官への移行による被ばく評価)は,1959年(昭和34年)のICRPの推測値によっているが,この推測値自体極めて古く,かつ原爆データの不完全な分析しかなく,また原子力発電所も存在しない時代のものであって信頼することができないことから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙13,49の①ないし④)及び弁論の全趣旨によれば,a本件安全審査においては,公衆の被ばく線量が十分低く抑えられるようになっているかどうかを判断するにつき,公衆の年間の累積被ばく線量を評価するために,一様の連続放- 462 -出を仮定することは,専門技術的観点からも十分合理的であるとされていること,b本件安全審査において使用された濃縮係数は,線量目標値評価指針(乙13)に従い,P15らの濃縮係数総合報告書から引用した値が用いられていること,c同報告書は,過去の広い範囲から得られた多数の元素の測定値を総合してまとめあげたもので,我が国の研究者による成果も多数取り入れられていること,d同報告書にとりまとめられた濃縮係数は,広い範囲から得られた多数の測定値からその平均レベルを求めたものであること,e本件安全審査 げたもので,我が国の研究者による成果も多数取り入れられていること,d同報告書にとりまとめられた濃縮係数は,広い範囲から得られた多数の測定値からその平均レベルを求めたものであること,e本件安全審査で使用された濃縮係数には,上記報告書のうち,放射性核種の濃縮係数をとらず,一般にそれよりも濃縮係数が高くなる安定元素の濃縮係数を採用し,また,海産物の摂取量については,日本人は欧米人に比べ海草類の摂取量が多いことを考慮した評価を行っていることが認められる。 したがって,本件安全審査において用いられた濃縮係数が不合理であるということはできず,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ⑤放出放射性物質の濃度の合理性の有無について控訴人らは,本件安全審査においては,液体廃棄物が一様に連続放出されると仮定して評価しているが,液体廃棄物の放出は間欠的であり,特に定期検査時に放出される液体廃棄物における放射性物質の濃度は通常よりも高くなり,季節により海水浴などによる被ばくも多くなるにもかかわらず,年間を通して復水器冷却水に平均的に希釈されるとして被ばく線量評価を行っているので,本件原子炉施設の周辺住民の安全側に配慮してなされた評価ではない旨主張する。 しかし,上記6(2)ア(ア)のとおり,ICRPにおいても,実効線量限度を年平均線量をもって勧告する等しているのであって,液体廃- 463 -棄物の一様な連続放出を仮定した本件安全審査の判断が科学的に不合理であるとはいえず,また,本件原子炉において,液体廃棄物における放射線物質の濃度がこのような仮定を不当とする程高くなり得ると認められるような証拠もないから,液体廃棄物の一様な連続放出を仮定した本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落 ,液体廃棄物における放射線物質の濃度がこのような仮定を不当とする程高くなり得ると認められるような証拠もないから,液体廃棄物の一様な連続放出を仮定した本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 ⑥核種組成の合理性の有無について控訴人らは,本件安全審査においては,バリウム140,ラタン140,ジルコニウム51,ニオブ95,セリウム141などの核種の被ばく線量評価を行っていないが,これらの核種の排出とこれによる敷地周辺の公衆の被ばくも無視することはできない上,これら核種の濃縮や挙動なども十分解明されていないので,これら核種の被ばく評価をしていないのは不当である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙3,4,13,91)及び弁論の全趣旨によると,安全審査においては,被ばく線量評価は,各核種の量と濃縮係数に基づき行われるが,主要核種の被ばく線量評価の際に,主要核種以外の核種の被ばく線量評価を包含するような条件を設定して計算されるものであること,本件安全審査における液体廃棄物中の放射性物質の主要な核種組成については,運転保守の形態,処理水の運用による変動,想定した核種以外にも放出される核種を包含するよう配慮した上,先行炉の運転実績に基づき,主要な各核種の濃縮係数と被ばく線量への換算とを考慮して,全体として被ばく線量の計算結果が厳しい条件で行われるよう定められたものであること,本件安全審査においては,液体廃棄物に含まれる核種のうち量が最も重く,かつ全身被ばくに支配的なものとして11核種をとり上げて定- 464 -量的な被ばく評価をすれば,本件原子炉施設の安全性を確認するのに十分であると判断され,液体廃棄物中に含まれる放射性物質による全身 全身被ばくに支配的なものとして11核種をとり上げて定- 464 -量的な被ばく評価をすれば,本件原子炉施設の安全性を確認するのに十分であると判断され,液体廃棄物中に含まれる放射性物質による全身被ばく線量が年間約0.2ミリレムであると評価されたことが認められるから,上記主要11核種以外の核種について定量的評価をしなかった本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 もっとも,控訴人らは,先行炉である敦賀原発の液体廃棄物核種別実績(1975年(昭和50年)4月から1977年(昭和52年)3月)では,半減期が長く濃縮係数も高いコバルト60,マンガン54の各構成比がそれぞれ平均47,50%であるが,本件安全審査ではそれぞれ30,40%として評価されているので,これは被ばく線量の評価結果が小さくなるように意図的に計算したものであることから,本件安全審査には合理性がない旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙3,4,13,91,93の①ないし③)及び弁論の全趣旨によると,敦賀原発の核種組成は,本件安全審査における核種組成と比較して,コバルト60及びマンガン54の割合は大きいが,反面,被ばく線量への寄与の大きい鉄59等の他の核種の割合は小さいため,仮に,上記実績に基づいて本件原子炉施設の被ばく線量を評価した場合には,全体としては本件安全審査で確認した被ばく線量値よりも小さい数値となること,そこで本件安全審査においては,各核種の濃縮係数と線量への換算係数を考慮し,被ばく線量の計算結果が安全側になるように核種組成を定めたことが認められ,上記核種組成比につき意図的に計算したと認めるに足りる証拠もないから,液体廃棄物中の放射性物質の核種組成に関する本件安全審査が不合理であるということはできない。 したがって を定めたことが認められ,上記核種組成比につき意図的に計算したと認めるに足りる証拠もないから,液体廃棄物中の放射性物質の核種組成に関する本件安全審査が不合理であるということはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 - 465 -⑦トリチウムの審査の有無について控訴人らは,a本件安全審査において,トリチウムはすべて液体状で海水に希釈されて海に流されるものとし,海産物による濃縮はなく(係数1,したがって人体に対する影響はないとしているので,ト)リチウムの危険性を過小評価している上,トリチウムの挙動が複雑で,また研究途上で明確なデータもないため,十分な評価をしていないこと,b本件安全審査では,トリチウム3Hの放出量について,先行炉の実績に基づいて年間100キュリーとしているが,この先行炉は一切不明であり,当時の原子力委員会報告においては,先行炉としてサンオレノフ等の実績が報告されているものの,サンオレノフ炉は加圧型原子炉であり,本件原子炉より一般に放射性核種の排出の小さい原子炉であるにもかかわらず,その先行炉のトリチウム年間放出量は2400から4570キュリーであって,本件申請に係る100キュリーの平均35倍であることから,本件安全審査には看過できない過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,126,127,原審における証人P5の証言)及び弁論の全趣旨によると,aトリチウムは,放出される気体廃棄物の中に含まれる量と被ばく経路を考えると,気体中の被ばく線量は十分小さいので,気体として被ばく線量評価の対象とすることは相当ではないこと(乙126,bトリ)チウムについては,生物によって濃縮されないことは,国際的に広く知られていること(乙127,c本件安全審査においては,沸騰水)型 線量評価の対象とすることは相当ではないこと(乙126,bトリ)チウムについては,生物によって濃縮されないことは,国際的に広く知られていること(乙127,c本件安全審査においては,沸騰水)型原子炉である本件原子炉施設におけるトリチウム放出量に関しては,先行炉である米国のオイスタークリーク等の沸騰水型原子炉の実績に照らすと,年間数十キュリーであることから,評価上トリチウムによる被ばく線量値が大きくなるよう,年間100キュリーと評価してい- 466 -ること,d本件安全審査における公衆の被ばく線量評価においては,主要な被ばく経路についての定量的な評価による線量値が十分低ければ,その他の影響が小さく被ばく線量評価の対象とならない経路の被ばくによる寄与分を考慮してもなお,全体として十分低く抑えられるものと判断できることを踏まえて公衆の被ばく線量評価を行ったものであることが認められる。 そうすると,トリチウムの評価に関する本件安全審査の判断は合理的であって,その過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできず,トリチウムに関する審査が不十分であったとはいえないから,控訴人らの上記主張は失当である。 (ウ)ムラサキツユクサの研究結果と被ばく線量評価の合理性の有無について控訴人らは,aP3教授が,ムラサキツユクサを用いて昭和45年から昭和51年にかけて,ガンマー圃場におけるKU7株とKU9株について,ガンマ線を照射して突然変異数を調べ,線量と突然変異数は直線比例関係にあることを確認し,最低線量は720ミリレントゲン(レム)であったと報告し,P16の研究においても,250ミリレムまで直線比例関係が確認され,更に中性子線については10ミリラドまで比例関係が確認されたとの報告がなされていること,bP3教授の実験結果は,湿度,降雨,日照 ,P16の研究においても,250ミリレムまで直線比例関係が確認され,更に中性子線については10ミリラドまで比例関係が確認されたとの報告がなされていること,bP3教授の実験結果は,湿度,降雨,日照,自動車の排気ガス等の突然変異の諸要因を十分に検討した極めて正確なものであるので,原子力発電所の平常運転時における環境放射線量は,100ないし300ミリレムに相当する突然変異率を示しており,線量,目標値の年間5ミリレムをはるかに超える放射線が環境に放出されている疑いがあることから,本件安全審査の際における平常運転時の被ばく線量評価は不合理である旨主張する。 しかし,証拠(甲161,163,168,170ないし173,乙- 467 -21,26,原審におけるP3の証言)及び弁論の全趣旨によると,aムラサキツユクサの雄しべの毛は青色を呈しているが,特別な系統を用いれば突然変異が起こった場合ピンクに変わるので,これをとらえることができる可能性があること,bしかし,この雄しべの毛の細胞は,放射線のみならず,温度,降雨,日照,農薬,自動車排気ガス等の諸要因にも極めて敏感で,高い感受性を示すため,ムラサキツユクサを用いた野外での実験によって,その雄しべの毛の細胞における突然変異の発生に対する放射線の寄与を正確に把握することは,現実的にはほとんど不可能に近く,仮に,可能であるとしても,そのためには,実験の方法や実験結果の解析の方法等を極めて慎重かつ緻密に行わなければならないこと,cP3教授は,ムラサキツユクサを用いた野外での実験において,突然変異率の上昇の原因を原子炉施設から放射されるヨウ素であると推論するものの,その推論を裏付けるための空気中の放射能濃度の測定やムラサキツユクサ中の放射能測定を行って突然変異率との関係を分析するということは行われてお を原子炉施設から放射されるヨウ素であると推論するものの,その推論を裏付けるための空気中の放射能濃度の測定やムラサキツユクサ中の放射能測定を行って突然変異率との関係を分析するということは行われておらず,ヨウ素の定量的評価はできていないことが認められるから,P3教授の実験結果をもって,直ちに本件安全審査における被ばく評価に誤りがあると断定することはできない。 したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 (エ)放射線管理設備の審査の有無について控訴人らは,a本件原子炉施設における放射線管理施設は何ら機能していないし,同施設に対する本件安全審査も不十分であること,b本件申請書及びその添付書類には,(a)外部放射線量の監視のため,モニタリングポイント18か所(3か月毎に読み取り,モニタリングポスト)9か所,モニタリングステーション3か所を設置すること,(b)周辺環境試料の放射線監視のため,陸水,海水,海底土,土壌,農畜産物,海洋生物について年2回分析を行うこと,(c)異常放出があった場合に,- 468 -モニタリングカーにより本件原子炉敷地周辺の放射線測定を行うこと等の記載があるが,各周辺放射線監視設備の数及び設置場所,構造及び性能についての記載はなく,また,放射能が異常放出された場合に使用されるというモニタリングカーについての性能や積載機器の性能も明らかにされていないことから,放射線管理システム機能の欠如を看過した本件安全審査の判断の過程には看過し難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,上記1(2)のとおり,モニターの詳細な数及び設置場所,構造及び性能は詳細設計に関する事項であるというべきであって,基本設計の安全性にかかわる事項ではないから,安全審査の対象外である。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,126 び設置場所,構造及び性能は詳細設計に関する事項であるというべきであって,基本設計の安全性にかかわる事項ではないから,安全審査の対象外である。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,126,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件安全審査においては,本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策に関し,第1に,本件原子炉施設は,その平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の量を抑制できる対策がとられていること,第2に,本件原子炉施設の平常運転に伴って環境に放出される放射性物質からの放射線による公衆の被ばく線量が適切に評価され,かつ,その評価値は許容被ばく線量である年間0.5レムを下回ることはもちろんのこと,線量目標値指針が定める線量目標値を下回ることとなっていることがいずれも確認された上,原子炉施設の平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の量,環境中における線量率等をそれぞれ的確に監視することのできる放射線管理設備が設けられているかどうかが確認されたこと,b本件原子炉施設については,(a)気体廃棄物に関しては,活性炭式希ガスホールドアップ装置の前後にそれぞれ放射線量を連続的に監視する放射線モニターが設けられること,及び排気筒から環境への放出量を連続的に監視するために排気筒に放射線モニターが設けられること,(b)液体廃棄物に関しては,環境に放出する前に放射性物質の濃度が十分低いこと- 469 -を確認するため,いったんサンプルタンクに貯留し,放射性物質の濃度をサンプリングして測定する設備が設けられること,及び復水器の冷却水放水路につながる排水管に放射性物質の放出量を連続的に監視する放射線モニターが設けられること等がそれぞれ確認されたこと,(c)環境中の線量率等の監視については,本件原子炉施設の ,及び復水器の冷却水放水路につながる排水管に放射性物質の放出量を連続的に監視する放射線モニターが設けられること等がそれぞれ確認されたこと,(c)環境中の線量率等の監視については,本件原子炉施設の周辺にモニタリングポスト等の線量率等を測定する設備が設けられること等が確認された結果,本件原子炉施設には,その平常運転に伴って環境に放出される放射性物質の放出量,環境中における線量率等をそれぞれ的確に監視することのできる放射線管理設備が設けられると判断されたこと,(d)放射性希ガスによる実効線量当量については,主要核種であるガンマ線を評価すれば足りるものであって,本件原子炉施設の平常運転時における被ばく低減対策として,すべての放射性物質による放射線を完全に監視することのできる放射線管理設備が設けられる必要まではないものと考えられること,(e)本件安全審査においては,本件原子炉施設に気体廃棄物を監視する放射線モニター,液体廃棄物を監視する放射線モニター等が設置され,本件原子炉施設の周辺には,環境中の線量率等を監視するためのモニタリングポスト9基等が設置されていることが確認され,これによって主要な放射線を監視することが可能であると考えられることが認められる。 したがって,放射線管理設備に関する本件安全審査の判断には不合理な点はなく,その過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 (オ)小括以上のとおり,上記前提となる事実にかんがみると,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,平常運転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の- 470 -防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程には看過し難い過誤,欠落があると 転時における放射性廃棄物について,本件原子炉敷地周辺の公衆に対する放射線障害の- 470 -防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程には看過し難い過誤,欠落があるとは認められない。 (3)本件原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ア審査基準に不合理な点があるか否か。 (ア)事故防止対策に係る審査基準について①上記前提となる事実によると,本件原子炉施設の事故防止対策に係る本件安全審査の調査審議においては,原子力委員会が指示したaECCS安全評価指針(乙11,b安全設計審査指針(乙14)の各)指針が用いられ,また,安全審査会が作成したa「沸騰水型原子炉に用いる8行8列型の燃料集合体について(乙78,b「沸騰水型」)原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法について,c」「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法の適用について,d「発電用軽水型原子炉の反応度事故に対する評価方」法について(甲37,乙130,e「取替炉心検討会報告書」の」)各報告書が活用されたことが認められる。 ②ところで,上記前提となる事実と証拠(甲31ないし33,38,45,乙94,95,129,131,136,140,141)及び弁論の全趣旨によると,本件処分後において,原子炉施設の事故防止対策に関係するものとして,(a)新安全設計審査指針(平成2年8月 ,45,乙94,95,129,131,136,140,141)及び弁論の全趣旨によると,本件処分後において,原子炉施設の事故防止対策に関係するものとして,(a)新安全設計審査指針(平成2年8月30日原子力安全委員会決定。一部改訂平成13年3月29日同委員会,(b)安全評価審査指針(昭和53年9月29日原子力委員会)- 471 -策定(甲33,一部改訂平成元年3月27日原子力安全委員会,平)成2年8月30日同委員会決定(乙94。一部改訂平成13年3月)29日同委員会,(c)重要度分類指針(平成2年8月30日原子力)安全委員会決定,(d)ECCS性能評価指針(昭和56年7月20)日原子力安全委員会決定。一部改訂昭和63年5月19日・平成2年8月30日・平成4年6月11日同委員会(乙141,(e)反応))度投入事象評価指針(昭和59年1月19日原子力安全委員会決定(甲38。一部改訂平成2年8月30日同委員会(乙131,)))(f)「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて(平成4年5月28日原」子力安全委員会決定。一部改正平成9年10月20日(乙136,))(g)「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の解釈の明確化につ「いて(昭和60年7月18日原子力安全委員会了承(甲45。一」)部改訂平成2年8月30日同委員会(乙129,(h)「我が国の))「安全確保対策に反映させるべき事項」について(審査,設計及び運転管理に関する事項《基準関係の反映事項は除く(昭和55年6月》)」23日原子力安全委員会決定(甲31,(i)「我が国の安全確保))「対策に反映させるべき事項」について(昭和56年7月23日原子」力安全委員会決定(甲32,(j) (昭和55年6月》)」23日原子力安全委員会決定(甲31,(i)「我が国の安全確保))「対策に反映させるべき事項」について(昭和56年7月23日原子」力安全委員会決定(甲32,(j)「原子力発電所等周辺の防災対))策について(昭和55年6月原子力安全委員会作成。一部改訂平成」元年3月(乙95・平成4年6月・平成10年11月・平成11年)9月・平成12年5月・平成13年3月・同年6月・平成14年4月・同年11月・平成15年7月同委員会。ただし,平成12年5月に表題を「原子力施設等の防災対策について」に改めた,(k)「沸。)騰水型原子炉に用いられる9行9列型の燃料集合体について(平成」6年3月3日原子力安全委員会了承(乙140)などが定められて)- 472 -いること,しかし,これらは,いずれもそれまでの原子炉施設の知見の蓄積を踏まえて,それらを整理,成文化されたものであり,本件安全審査の基礎とされた本件処分当時の知見にその後の新しい科学技術上の知見等からみて誤りであったものとして,全く新たな指針等を策定したものではないことが認められる。 (イ)ECCS安全評価指針の合理性について控訴人らは,ECCS安全評価指針(乙11)においては,冷却材喪失事故時にECCS(非常用炉心冷却装置)が炉心の冷却可能な形状を維持しつつこれを冷却し,もって放射性物質の環境への放出を十分抑制することができるかを評価するに際しての具体的な判断基準として,「(1)燃料被覆管温度の計算値の最高値は,1200℃以下でなければならない(以下「基準(1)」という。(2)燃料被覆管の全酸化量の計。)算値は,酸化前の燃料被覆管の厚さの15%以下でなければならない(以下「基準(2)」という。(3)炉心で,燃料被覆管が水と反応して。)発 準(1)」という。(2)燃料被覆管の全酸化量の計。)算値は,酸化前の燃料被覆管の厚さの15%以下でなければならない(以下「基準(2)」という。(3)炉心で,燃料被覆管が水と反応して。)発生する水素の量は,格納容器の健全性を確保するために十分低くなければならない(以下「基準(3)」という。(4)炉心形状の変化をも考。)慮して,長半減期核種の崩壊熱の除去が長期間にわたって行われることが可能でなければならない(以下「基準(4)」という」の4項目が。)。 示されているが,これらについては,(a)冷却材喪失事故時に燃料被覆管に作用する応力の大きさに係る基準がないこと,(b)燃料被覆管の脆化に係る基準がないこと,(c)水素の発生量に係る基準が抽象的であることなどから,燃料被覆管破損防止の基準としては不十分である旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の五4(一) )。 しかし,証拠(乙1ないし4,11,14,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によれば,(a)安全設計審査指針(乙14)は「指針40.非常用炉心冷却系1.非常用炉心冷却系は,想定される- 473 -配管破断による冷却材喪失事故に対して,燃料及び燃料被覆の重大な損傷を防止でき,かつ,燃料被覆の金属と水との反応を十分小さな量に制限できる設計であること」と定めていること,そして,(b)まず,冷。 却材喪失事故時に燃料被覆管に作用する応力であるECCSによる冷却材注入時に発生する熱応力等については,燃料被覆管の最高温度及び酸化量がそれぞれ基準(1)及び(2)において定める1200℃及び燃料被覆管の厚さの15%を下回っていれば,燃料被覆管の脆化は十分に抑えられるので,燃料被覆管は,この応力に対しても十分に冷却可能な形状として維持されることが,実験により確認 て定める1200℃及び燃料被覆管の厚さの15%を下回っていれば,燃料被覆管の脆化は十分に抑えられるので,燃料被覆管は,この応力に対しても十分に冷却可能な形状として維持されることが,実験により確認されていること(乙11の950頁,次に,(c)冷却材喪失事故時に燃料被覆管に作用する応力であ)る燃料被覆管の内外圧力差によって発生する応力については,この応力によって生ずる燃料被覆管の膨れ及び破裂による変形を考慮して基準(1)及び(2)への適合性を評価すれば足りると解されること,また,(d)燃料被覆管の脆化については,その脆化の程度は酸化量に依存し,その酸化量は過度の温度上昇により急激に増加するので,酸化量及び温度が上記各制限値を下回れば,燃料被覆管の脆化は十分に抑えられるから,酸化量及び温度に係る基準は,脆化に対する基準と評価できるとされているので,別途燃料被覆管の脆化に係る基準を設ける必要はないこと,(e)格納容器内の水素の濃度(水素は,一般に,その濃度が4vol%以上で,かつ,酸素の濃度が5vol%以上の状態で燃焼を生じる可能性があるので,格納容器の健全性の確保の観点からは,格納容器内の水素濃度を4vol%未満に抑えるか,又は酸素濃度を5vol%未満に抑える必要がある(乙3の8-109頁)は,燃料被覆管の水とジルコニウム。)反応によって発生する水素の量以外にも,格納容器の大きさ,可燃性ガス濃度制御系の性能等ECCS以外の設備設計等に依存するものであるから,水素の濃度を抑えるためには,水素の発生量を主たる基準として- 474 -設ける合理性はなく,基準(3)で十分であることが認められる。 そうすると,ECCS安全評価指針は,燃料被覆管破損防止の基準としても合理性があるというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 (ウ 合理性はなく,基準(3)で十分であることが認められる。 そうすると,ECCS安全評価指針は,燃料被覆管破損防止の基準としても合理性があるというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 (ウ)小括以上のとおり,上記前提となる事実により認められる本件原子炉施設の事故防止対策に関する本件安全審査の審査内容にかんがみると,上記調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はないというべきである。 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)炉心燃料部の健全性の有無について①炉心燃料部材の適格性についてa控訴人らは,核燃料や燃料被覆管をとり巻く環境条件が,一般工業材料に比して量的にも質的にも厳しいところ,(a)炉心燃料部材であるジルカロイ-2,ジルカロイ-4,ステンレス鋼,インコネル-X等は不適格な材料であること,(b)燃料被覆材として用いられているジルカロイ-2は,放射線照射による機械的,化学的変化や,高温,高圧に対する機械的性質の変化,冷却材等による化学反応の変化などの点で必ずしも優れた特性を有しているものではなく,しかも,他の工業分野での使用実績もないので,いまだ試用段階,実験段階にあるので,炉心材料として不適格であることから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二2(一)(二) 。 )- 475 -しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,(a)本件原子炉施 二款第二の二2(一)(二) 。 )- 475 -しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,(a)本件原子炉施設において使用される核燃料の濃縮度は平均で約2.2%の低濃縮のものであること(乙1の6,7頁,乙2の8ー1-2頁,8-3-77頁,乙4の9頁,(b)本件原子)炉は,軽水型原子炉(BWR)であって,核分裂反応の割合が増大して燃料及び冷却水の各温度が上昇すれば,それに伴って核分裂反応が抑制されるという性質があるから,燃料の健全性に影響を及ぼす出力の振動は生じないこと,(c)燃料ペレットとの熱膨張差による燃料被覆管の機械的損傷防止策として,平常運転時における燃料の単位長さ当たりの発熱量(線出力密度)が,燃料被覆管が損傷を起こすおそれの生じる83kW/mを十分に下回る44kW/m以下に抑えられていること(乙3の8-172ないし175頁,乙4の28,29頁,(d)燃料被覆管の焼損防止については,定格出)力(電気出力約110万kW)で運転中における最小限界出力比が,燃料被覆管を焼損させないための限界値1.07を十分に上回る1. 19以上に設計されていること(乙3の8-172ないし175頁,乙4の28,29頁,(e)内圧や外圧等による燃料被覆管の機械)的損傷防止については,使用される燃料被覆管が十分な強度をもって設計されていること(乙2の8-3-4ないし14頁,乙3の8-6ないし8頁,8-59ないし60頁,乙4の29頁,(f)燃)料被覆管材料としてのジルカロイ-2については,燃料被覆管破損の確率が非常に低く,耐食性に優れた金属であって,その使用実績により十分に安全であることが確認されたこと(乙1の7頁,乙2の8-3-4頁,乙3の8-146ない ルカロイ-2については,燃料被覆管破損の確率が非常に低く,耐食性に優れた金属であって,その使用実績により十分に安全であることが確認されたこと(乙1の7頁,乙2の8-3-4頁,乙3の8-146ないし149頁,乙31の30頁)から,本件原子炉施設で使用される燃料被覆管は,その基本設- 476 -計において,熱的,機械的,化学的影響によってその健全性が損なわれることがない,余裕のあるものであると判断されていることが認められる。 bそして,証拠(乙1ないし4,16,19,30の①②,31,32,78,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)現在では軽水炉(BWR,PWR)の燃料は,ジルカロイ(Zr合金)で被覆された低濃縮の二酸化ウラン(UO)であ ることが基本となっているが,このジルカロイについては,1950年代後半に商業用軽水炉が出現して以来,中性子の吸収が少ないこと,強度や延性が大きいこと,中性子照射による性能劣化が小さいこと,冷却材に対する耐食性に優れていることなどが総合的に判断された結果,燃料被覆管の材料として最適のものとされて一貫して使用され,加速的に増える使用実績によって今や,他に代え難い材料となっていること,(b)沸騰水型原子炉(BWR)に使用されたジルカロイ-2被覆管燃料棒は,1974年(昭和49年)9月までに81万本使用されているが,被覆管に損傷を生じた燃料棒は,0.76%程度であり,その間にも各種材料について種々の開発,研究が行われ,1973年(昭和48年)に改良型7行7列配列の燃料集合体,1974年(昭和49年)に本件原子炉と同様の8行8列配列の燃料集合体が採用されて以降,損傷率は非常に少なくなっており,また,実用8行8列配列の燃料集合体は,本件申請当時には既に米国,スペイン及びスウェ 4年(昭和49年)に本件原子炉と同様の8行8列配列の燃料集合体が採用されて以降,損傷率は非常に少なくなっており,また,実用8行8列配列の燃料集合体は,本件申請当時には既に米国,スペイン及びスウェーデンで使用されていたこと,(c)ジルカロイ-2,ジルカロイ-4,ステンレス鋼,インコネル-Xなどの炉心燃料部材も,過去の経験から沸騰水型原子炉の条件に十分適合でき,原子炉の運転中にその設計目的を十分満足できる旨報告されていたことが認められる。 - 477 -cしたがって,炉心燃料部材の適格性に関する本件安全審査の判断に不合理な点はなく,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており理由がない。 ②平常運転時の炉心燃料部の健全性についてa控訴人らは,本件申請に係る燃料ペレットについて,焼結温度1450℃から1700℃において製造されるため,運転中の燃料ペレットの中心温度が焼結温度以上の高温になると,焼結が一層進み,燃料ペレットの密度が高くなって体積が縮むという焼きしまり現象が生じることが予想され,その結果,燃料ペレットと燃料被覆管,燃料ペレットと燃料ペレットとの熱伝達を低下させ,燃料ペレットに発生した熱が冷却材に伝わることを妨げ,燃料ペレットの中心温度を上昇させて燃料溶融の危険性が生ずる旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(1)ア。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,30の①②,31,32,78)及び弁論の全趣旨によると,(a)燃料ペレットの内部は,高温度となり,また急な温度勾配があるところ,1970年(昭和45年)の初め,加圧水型原子炉(PWR)の一部で,燃料棒の部分がつぶれているものが発見されたが,これは,照射下で生じる燃料ペレットの密度の上昇現象である焼きしまり現象と分かったこと,(b)そ 昭和45年)の初め,加圧水型原子炉(PWR)の一部で,燃料棒の部分がつぶれているものが発見されたが,これは,照射下で生じる燃料ペレットの密度の上昇現象である焼きしまり現象と分かったこと,(b)その後,焼きしまり現象に対する研究が進められ,加圧水型原子炉の燃料の場合,燃料ペレットの密度,焼結温度を上昇させるなどの防止策を講じたこと,(c)燃焼ペレットの焼きしまり現象に対する安定性の研究の結果,初期密度が高く,結晶粒が大きく,ボイドも小数の大きいものとすれば焼きしまりにくいことが見い出され,焼結温度を高めるなどの製造上の配慮がなされていること,(d)本件原子炉のような沸騰水型原子炉(BWR)の燃料の- 478 -場合は,もともと焼きしまり現象を生じ難い燃料ペレットが使用されているなどの理由から,燃料棒のつぶれにまでは至っていないこと,(e)本件原子炉においても,燃料ペレットの密度を約95%の高密度に焼結するとともに,照射中の焼きしまりを小さくするよう製造方法を配慮していることが認められる。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 b次に,控訴人らは,(a)燃料ペレットについては,1000℃を超える急激な温度勾配があるので,砂時計状に変形するなどし,燃料被覆管が竹筒状に変形して破損するおそれがあること,(b)核分裂による気体状及び固体状の核分裂生成物が燃料ペレット内に蓄積し,燃料ペレットの体積が増大するという照射スエリング現象によって,燃料被覆管が影響を受け,破損するおそれがあることから,炉心燃料部の健全性が欠如している旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(1)イウ。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,30の①②,31,32,78,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣 主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(1)イウ。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,30の①②,31,32,78,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)平常運転時における燃料の単位長さ当たりの発熱量(線出力密度)については,上記①認定のとおり,燃料被覆管が損傷を起こすおそれの生じる約83kW/mを十分に下回る約44kW/m以下に抑えられ,本件原子炉施設には,燃料ペレットとの熱膨張差による燃料被覆管の機械的損傷防止策が施されていること,(b)本件原子炉においては,燃料ペレットの変形のおそれを前提にした上,燃料ペレットの変形に基づく燃料被覆管の局所的な歪みによる損傷を減少させる対策として,短尺チャンファ付ペレットを使用し,強度及び延性の点で優れたジルカロイ-2を燃料被覆管材としていること,(c)燃料ペレットと燃料被覆管との間に0.23㎜- 479 -の間隔が設けられているので,熱膨張と照射スエリングによって燃料被覆管に過大な歪みが生じないように配慮され,燃料ペレットの),膨張等に備えていること(乙2の8-3-7頁,乙3の8-7頁(d)更に燃料被覆管の歪みの限界を,燃料ペレットと燃料被覆管の間隔と照射された試料についての試験結果から安全と判断された1%としていることが認められる。 そうすると,控訴人らの上記主張は理由がないというべきである。 cまた,控訴人らは,燃料被覆管について,中性子等の照射によって,耐力,張力等の強度が増加する反面,延性が著しく減少するため,燃料被覆管の脆性破壊(塑性変形を伴わない破壊)の原因となる旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(2)ア。 )しかし,燃料被覆管については,上記①のとおり,燃料被覆管の部材として最適とされ 破壊(塑性変形を伴わない破壊)の原因となる旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(2)ア。 )しかし,燃料被覆管については,上記①のとおり,燃料被覆管の部材として最適とされ,安全面においても実績のあるジルカロイ-2が使用されているから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 dそして,控訴人らは,燃料の燃焼の進行とともに冷却材圧力を受け,徐々に燃料被覆管の外径が減少するクリープ現象によって,燃料被覆管が細く変形し,ついには延性破壊(塑性変形後の破壊)の原因となる旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(2)イ。 )しかし,証拠(乙1ないし4,30の①②,31,32,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)沸騰水型原子炉における燃料被覆管は,クリープ現象を考慮しても,外圧によって挫屈を起こすことがないよう燃料被覆管の肉厚対半径比を十分大きくするとともに,製造時に燃料被覆管の偏平率を小さく抑え- 480 -ており,過去の実績でもクリープ圧潰を起こしたことがないこと,(b)本件申請に係る8行8列配列の燃料の場合,従来の7行7列配列の燃料より肉厚対半径比を大きくし,クリープ圧潰に対する余裕が大きくなっていること(乙2の8-3-14頁,乙3の8-8頁)が認められる。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がなく失当である。 e加えて,控訴人らは,長尺の細い管である燃料被覆管の一部に楕円状のものが混じることは避けられず,こうした楕円状の燃料被覆管は,管内外の圧力差等の力学的作用によって楕円度を進行させ,ひいては燃料棒の座屈損傷の原因となる旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(2)ウ。 )しかし,ジルカロイ-2は,上記①のとおり,これまで燃料 的作用によって楕円度を進行させ,ひいては燃料棒の座屈損傷の原因となる旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(2)ウ。 )しかし,ジルカロイ-2は,上記①のとおり,これまで燃料被覆管の材料として最適のものとされて一貫して使用され,加速的に増える使用実績によって,今や他に代え難い材料となっていることに照らすと,控訴人らの上記主張は採用することができない。 fまた,控訴人らは,燃料被覆管が,冷却材や核分裂生成物等によって腐食し,その進行,拡大によって,腐食疲労,応力腐食割れ等の現象を引き起こし,燃料被覆管を破断させる原因となる旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(2)エ。 )しかし,上記①のとおり,燃料被覆管については,その部材として耐食性に優れ,安全面においても実績のあるジルカロイ-2が使用され,しかも,各種材料について種々の開発,研究が行われた結果,ジルカロイ-2被覆管燃料棒の損傷率は非常に少なくなっているので,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 もっとも,控訴人らは,(a)安全評価審査指針(甲33,乙94)において,運転時の異常な過渡変化の判断基準につき「燃料被- 481 -覆管は機械的に破損しないこと(同指針4.1.1の(2))と規」定されていること,(b)本件原子炉施設において使用される燃料被覆管の材料であるジルカロイ-2には,核分裂生成物であるヨウ素によって応力腐食割れが発生するので,ジルカロイ-2の機械的な破損は一定の割合で避けられないこと,(c)「燃料被覆管は機械「的に破損しないこと」の解釈の明確化について(昭和60年7月」18日原子力安全委員会了承(甲45)においても,上記(a)の)指針4.1.1の(2)の意味を「燃料被覆管に対する機械的な負荷 「的に破損しないこと」の解釈の明確化について(昭和60年7月」18日原子力安全委員会了承(甲45)においても,上記(a)の)指針4.1.1の(2)の意味を「燃料被覆管に対する機械的な負荷によって貫通性損傷が系統的には生じないこと」と定め,その基準を狭めて解釈していることに照らすと,本件安全審査においては,ジルカロイ-2の耐食性,安全性については確認されていないから,燃料被覆管が冷却材や核分裂生成物によって腐食し,その,進行・拡大によって腐食疲労,応力腐食割れなどの現象が起こる性質を看過している旨主張する。 しかしながら,証拠(甲33,45,乙94,129)及び弁論の全趣旨によると「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の,「解釈の明確化について(昭和60年7月18日原子力安全委員会」了承(甲45)においても,ジルコニウム合金の応力腐食割れ現)象については「これまでに行われた出力急昇試験データをもとに,検討した結果,現行の炉型及び燃料については運転時の異常な過渡変化時にこの現象により燃料の系統的損傷が生ずる可能性は十分小さいと考えられることから,評価指針において燃料の損傷の判断基準を現状では変更する必要はないと判断する」と明記され,その。 後の「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の解釈の明確化に「ついて(一部改訂平成2年8月30日原子力安全委員会(乙12」9)においても同内容が維持されていることが認められるから,)- 482 -応力腐食割れに関して安全評価審査指針の解釈が狭められたことはないというべきである。 しかも,上記「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の解釈「の明確化について(甲45,乙129)においては「燃料被覆」,管は機械的に破損しないこと」の具体的な判断基準として,燃料被覆管の円周方向 も,上記「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の解釈「の明確化について(甲45,乙129)においては「燃料被覆」,管は機械的に破損しないこと」の具体的な判断基準として,燃料被覆管の円周方向の平均塑性歪は1%以下であることについて,その1%の塑性歪を与える指標として熱的指標である燃料被覆管の表面の単位面積から単位時間当たりに原子炉冷却材に伝わる熱の量から換算して求めた線出力密度を用いる方法がとられていることにつき妥当であると判断していることが明らかである。そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,運転時の異常な過渡変化の解析について熱的指標から求めた同様の判断基準を用いて換算して求めた線出力密度を検討し,その基準を満たしていることが確認されていること(乙4の28,29頁)が認められるから,この点に関する本件安全審査は合理性があり,控訴人らの上記主張は失当である。 gさらに,控訴人らは,(a)燃料棒とスペーサが接触し,擦れあって生ずるフレッティング腐食によって燃料被覆管が損傷するおそれがあること,(b)燃料棒の膨張がスペーサにより拘束されることによって燃料被覆管が屈曲したりするおそれがあること,(c)炉心燃料部における圧力損失や不安定圧力により燃料棒が過熱して破損するおそれのあることを主張し,炉心燃料部の健全性が欠如している旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(一)(2)オ。 )しかし,証拠(乙1ないし4,78,原審における証人P1の証- 483 -言)及び弁論の全趣旨によると,(a)沸騰水型原子炉に用いられているスペーサは,過度なフレッティング腐食を起こさないことが実験及び照射実験で確認されていること,(b)本件原子炉 の証- 483 -言)及び弁論の全趣旨によると,(a)沸騰水型原子炉に用いられているスペーサは,過度なフレッティング腐食を起こさないことが実験及び照射実験で確認されていること,(b)本件原子炉の燃料棒は,上部タイプレート,下部タイプレート及びスペーサにより,水平方向の変位が抑えられているが,熱膨張若しくは照射成長による軸方向の伸びは,上部タイプレートを通して自由に逃げられるようになっているところ,スペーサを支持するウォータロッドについては,他の燃料棒と同じ材料を用い,軸方向の伸びは他の燃料棒と同じく上部タイプレートを通じて自由に逃げられるようになっており,更にスペーサについては,上記軸方向の伸びを拘束し,曲がりを発生させることのないようにその接触圧を考慮していること(乙2の8-3-13,14頁,乙3の8-8頁,(c)燃料棒については,)上記①のとおり,燃料被覆管の部材として最適とされ,かつ安全面においても実績があって他に代え難い材料であるジルカロイ-2が使用され,また,本件原子炉と同様の8行8列配列の燃料集合体が採用されて以降,各種材料について種々の開発,研究が行われ,その損傷率は非常に少なくなっていること等が認められる。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がなく失当である。 ③多発する燃料棒に関する異常事象と対策の遅れの有無についてa敦賀原発及び福島第一原発等において発生した燃料棒及び燃料集合体に関する異常事象について(a)控訴人らは,我が国の敦賀原発及び福島第一原発等や諸外国の原発において,燃料棒及び燃料集合体について,これまで多くのピンホール(目に見えないほど微少な孔)やひび割れ事象,つぶれ事象,曲がり事象並びに破損事象が発生しているが,これらの異常事象の大部分はいまだにその原因がはっきりしないので,適- これまで多くのピンホール(目に見えないほど微少な孔)やひび割れ事象,つぶれ事象,曲がり事象並びに破損事象が発生しているが,これらの異常事象の大部分はいまだにその原因がはっきりしないので,適- 484 -切な対策はほとんど講じられていないから,本件安全審査においても,本件原子炉の炉心燃料部の健全性が確認されていない旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二3(二) 。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,30の①②,31,32,78)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らの主張に係る敦賀原発及び福島第一原発において発生した燃料被覆管のピンホール及びひび割れは,燃料ペレットと燃料被覆管との,相互作用(PCMI)によるものであることが判明していることそして,本件安全審査当時も,ピンホール及びひび割れについては,既に上記PCMIや,燃料被覆管内に残留する湿分から発生する水素によって燃料被覆管が脆化するいわゆる水素脆化に起因するものであることは,既に判明していたので(乙78,これ)を踏まえて安全審査が行われていること,このため,本件申請に係る8行8列配列の燃料については,燃料ペレットの形状を工夫し,燃料の被覆管の延性の向上を図る熱処理の方法がとられ,更に燃料棒の製造工程で,燃料被覆管の水素化による損傷が生じな,いように,燃料棒内の水分を十分低く抑えるように管理された上,プレナム部にゲッターと呼ばれる水分と反応しやすい物質を入れ燃料被覆管の水素化を抑える工夫がなされていること(乙2の8-3-13,14頁,乙31の34頁,乙32の19頁,そし)て,燃料ペレットと燃料被覆管との相互作用については,上記②bのようにペレットの変形等に基づく被覆管の局所的な歪による損傷を減少させる対策として,短尺チャンファ付きペレ 頁,乙32の19頁,そし)て,燃料ペレットと燃料被覆管との相互作用については,上記②bのようにペレットの変形等に基づく被覆管の局所的な歪による損傷を減少させる対策として,短尺チャンファ付きペレットの使用,延性の大きい再結晶焼きなまし被覆管材の使用等の考慮がなされていること(乙2の8-3-14頁)が認められる。 したがって,本件原子炉においては,上記PCMI及び水素脆- 485 -化による燃料被覆管のピンホール等への対策がなされているというべきである。 (b)そして,証拠(乙1ないし4,9,30の①②,31,32,,78,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らが主張する敦賀原発及び福島第一原発以外の事象である美浜原発及び関西電力株式会社大飯原子力発電所のほか,スイス及び米国等の各原発の各事象については,いずれも本件原子炉とは異なる加圧水型原子炉(PWR)にかかわるものであって,沸騰水型原子炉(BWR)である本件原子炉の炉心燃料部の健全性の問題には直接関係しないものであり,しかも,これらの事象についても,その原因が究明された上,既に防止対策がとられていることが認められる。 (c)したがって,控訴人らの主張する我が国や諸外国の燃料棒及び燃料集合体に関するピンホールやひび割れ事象,つぶれ事象,曲がり事象並びに破損事象の存在については,本件原子炉の炉心燃料部の健全性に影響を与えるものではないというべきである。 b本件原子力発電所において発生したピンホール及びひび割れ等の事象について(a)ピンホール及びひび割れ事象について控訴人らは,i本件安全審査においては,異常な過渡変化時に,あっても「燃料が損傷しない」と審査されていたにもかかわらず本件原子炉施設では,平成10年1月16日,気体廃棄物処理系除 れ事象について控訴人らは,i本件安全審査においては,異常な過渡変化時に,あっても「燃料が損傷しない」と審査されていたにもかかわらず本件原子炉施設では,平成10年1月16日,気体廃棄物処理系除湿冷却器出口排ガス放射線モニター指示値上昇に伴う原子炉手動停止が行われる事象が発生したこと,iiこの事象の原因の調査の結果,燃料集合体一体(K1J30)に漏洩があることが確認され,本件燃料棒の損傷が判明したが,これは,海外で報告され- 486 -ている被覆管の水素化によって発生する二次的な割れの事例と類似するので,偶発的に発生した漏洩部分を通じて,燃料棒内に浸入した水(水蒸気)による被覆管の水素化によって発生した二次的な割れと推定されたこと,iiiこの対策として,東京電力は,漏洩が確認された燃料集合体を健全な集合体に取り替えたこと,ivこの事象は,本件原子力発電所6号機で平成8年8月24日に,次いで同7号機で平成11年3月31日に起こっており,この燃料棒事象の原因と対策が十分ではなく,その対策のとり得ない欠陥が燃料棒にあり,更に事業者としての東京電力にこれを防止する能力がないことが実証されていること,v燃料集合体におけるピンホールの原因は,PCMI(燃料ペレットと燃料被覆管の相互作用)又は水素脆化とされ,その対策は十分にとられているとしていたにもかかわらず,現実に,被覆管の水素化によって発生する二次的な割れが原因となる本件燃料棒の損傷が生じていたことから,このような対策をとり得ない欠陥を見逃した本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,上記①のとおり,本件安全審査においては,燃料被覆管材料としてのジルカロイ-2は,燃料被覆管破損の確率が非常,に低く,その使用実績から十分に安全であることが確認された上本件原子炉施設で使用される 上記①のとおり,本件安全審査においては,燃料被覆管材料としてのジルカロイ-2は,燃料被覆管破損の確率が非常,に低く,その使用実績から十分に安全であることが確認された上本件原子炉施設で使用される燃料被覆管は,その基本設計において,熱的,機械的,化学的影響によってその健全性が損なわれることがない,余裕のあるものであると判断されている。控訴人らの上記主張内容は,原子炉施設の運転中の偶発的な本件燃料棒の損傷をもって本件安全審査が不合理であると主張するものであるから失当である。 また,証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及- 487 -び弁論の全趣旨によると,装荷されている多数の燃料棒の一部の燃料において,ごくまれに生ずる偶発的な燃料被覆管の損傷が生ずることは否定できないこと,このため,本件安全審査においては,燃料被覆管の損傷を検知する目的で冷却水中の放射能レベルを測定監視する計測装置等が設けられるとともに,一部の燃料の損傷により放射性物質が燃料棒から漏洩する場合における原子炉施設周辺の一般公衆の被ばく線量を評価し(乙4の37頁,安)全が確保されることを確認していることが認められる。 したがって,控訴人らの主張に係る上記本件原子炉施設等の各事象は,本件安全審査における想定内のものであるから,控訴人らの主張は理由がない。 (b)浸水燃料の事象について控訴人らは,i上記(a)の本件燃料棒の損傷によって,本件原子炉の炉心のなかに「浸水燃料(燃料被覆管の穴あき等により」内部に冷却水が侵入した燃料)が存在していたことが判明していること,iiこれは,本件燃料棒の損傷により燃料被覆管内に侵入した炉水から発生する水素により二次的な割れが発生し,通常運転時だけでも「水素化」という新たなメカニズムで損傷が発生しつつあるのに,根本的な と,iiこれは,本件燃料棒の損傷により燃料被覆管内に侵入した炉水から発生する水素により二次的な割れが発生し,通常運転時だけでも「水素化」という新たなメカニズムで損傷が発生しつつあるのに,根本的な対策がとられていなかったこと,iii浸水燃料については,本件原子力発電所2号機,6号機及び7号機につきそれぞれ発見され,毎年のようにこれが発生しているものの防止できていないこと,iv反応度事故時の浸水燃料の危険性は,反応度投入事象評価指針(昭和59年1月19日原子力安全委員会決定。甲38)において異常な過渡変化時の破裂する基準の値,として「燃料エンタルピ65cal/g」が定められているので「浸水燃料」が存在すれば,反応度事故時に容易に浸水燃料が破- 488 -裂に至ることが,現在の知見となっていること,v本件安全審査では,異常な過渡変化時においても浸水燃料が全く存在しない前提で評価されていることから,浸水燃料を考慮していない本件安全審査は,上記反応度投入事象評価指針に反し,著しく不合理である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(甲37,38,乙78,130,131,138ないし140)及び弁論の全趣旨による,と,i本件安全審査において,浸水燃料に関する評価については「発電用軽水型原子炉の反応度事故に対する評価方法について(昭和52年5月20日原子炉安全専門審査会(甲37及び乙)」130の各582頁)において「検討範囲からは除外」とされ,ていたこと,iiその後,反応度投入事象評価指針(昭和59年1月19日原子力安全委員会決定。甲38)において,浸水燃料については,燃料エンタルピがピーク出力部の熱断計算で65cal/g・UOを超える燃料棒の被覆は破裂したものとし,発生す る機械的エネルギーの影響を評価しなければなら 。甲38)において,浸水燃料については,燃料エンタルピがピーク出力部の熱断計算で65cal/g・UOを超える燃料棒の被覆は破裂したものとし,発生す る機械的エネルギーの影響を評価しなければならないとされたこと,iiiさらに,反応度投入事象評価指針(一部改訂平成2年8月30日原子力安全委員会(乙131)においては,反応度投入)事象の判断基準のうち,浸水燃料に係るものとして,同評価指針3.(3)で「運転時の異常な過渡変化及び事故にあっては,浸水燃料の破裂による衝撃圧力等の発生によっても,原子炉停止能力及び原子炉圧力容器の健全性を損なわないこと」としているが,。 この判断基準については,同評価指針の添付2「浸水燃料の影響評価」の解析結果をもって代用できる場合は,除外できると規定されており(乙131の274頁,その評価においては,安全)余裕をとった前提条件を設定しており,そして,除外基準として- 489 -(乙131の314ないし322頁,)(一)添付2「浸水燃料の影響評価」における評価対象プラントと同程度の炉心規模であること(二)断熱計算によるピーク出力部の燃料エンタルピを最も厳しくするように選定された前提条件を用いた解析によっても,その結果が「150cal/g・UO」以下であること (三)原子炉停止余裕は「1.0%Δk」以上であること,(四)落下制御棒価値は「1.5%Δk」以下であること,を定めていることが認められる。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,i本件原子炉は,電気出力約1100MW(熱出力3293MW)であって,上記(一)の要件である「浸水燃料の影響評価」における評価対象プラントと同程度の炉心規模であること(乙2の2-1頁,ii本件申請に係る当時の8行× 出力約1100MW(熱出力3293MW)であって,上記(一)の要件である「浸水燃料の影響評価」における評価対象プラントと同程度の炉心規模であること(乙2の2-1頁,ii本件申請に係る当時の8行×8列配列燃料)の反応度投入時の燃料エンタルピについては,ピーク出力部の断熱保有エンタルピが「120cal/g・UO」であるので,上記(二)の 要件である「150cal/g・UO」以下であること(乙3の10- 149頁,iii本件原子炉停止余裕は,上記(三)の要件である)「1.0%Δk」以上であること(乙2の8-3-40ないし42,8-3-106頁,iv本件原子炉施設の落下制御棒価値は,上記)(三)の要件である「1.5%Δk」以下であること(乙1の22頁,乙2の8-3-25ないし28頁,乙3の8-9,10頁)が認められるので,当該除外基準により上記反応度投入事象評価指針が適用除外になるというべきである。そうすると,本件安全審査の内容は,結果において同指針にも反していないことが明らかである。 さらに,証拠(乙1ないし4,132)及び弁論の全趣旨による- 490 -と,燃料被覆管の局部水素化については,燃料棒制作時に燃料棒内にペレット表面などに吸着して混入する微量水分が被覆管内面の局部と反応して水素化合物を形成し,損傷に至ること等から,ペレットや燃料棒の製作工程中で乾燥工程を取り入れるなどの湿分管理を行うことでその対策ができるので,本件原子炉の運転管理段階で対処が可能であること,このために本件安全審査においても,燃料棒の製造工程では,燃料被覆管の水素化による損傷が生じないよう,燃料棒内の水分を十分低く押さえるように管理し,更に万全を期して,プレナム部にゲッターと呼ぶ水分量を低減する物質を入れ,燃料被覆管の水素化を抑えるように努める 覆管の水素化による損傷が生じないよう,燃料棒内の水分を十分低く押さえるように管理し,更に万全を期して,プレナム部にゲッターと呼ぶ水分量を低減する物質を入れ,燃料被覆管の水素化を抑えるように努めること(乙2の8-3-13頁)が確認されていることが認められる。 なお,証拠(甲38,乙131,138ないし140)及び弁論の全趣旨によると,その後,本件原子炉施設においては,東京電力からの燃料の変更申請により,現在,本件原子炉に装荷されている燃料である高燃焼度8行×8列配列燃料(平成2年7月10日設置変更許可)及び9行×9列配列燃料A・B型(平成10年12月21日設置変更許可)については,反応度投入事象評価指針(昭和59年1月19日原子力安全委員会決定(甲38,一部改訂平成2)年8月30日同委員会(乙131)に基づく安全審査において,)浸水燃料が破裂したとしても,原子炉停止能力及び原子炉圧力容器の健全性を損なわないことがそれぞれ確認されていることが認められる。 したがって,現在の科学技術水準に照らしても,浸水燃料に関する本件安全審査に不合理な点はないというべきであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 (c)燃料棒スペーサのはずれの事象について- 491 -控訴人らは,i本件原子炉施設において,平成10年1月30日,燃料集合体の不具合による原子炉手動停止の事象が発生したこと,iiこれは,同月16日の燃料集合体の漏洩検査のついでに,他の燃料集合体6体について外観検査を実施したところ,同月30日5時30分ころ,6体中2体の高燃焼度8行×8列型燃料集合体(K1GN1,K1GN2)のスペーサが正規の位置からはずれていることが確認されたものであること,iiiK1GN1は,7個のスペーサのうち4個のスペーサが,K1GN2は2個のスペーサが 型燃料集合体(K1GN1,K1GN2)のスペーサが正規の位置からはずれていることが確認されたものであること,iiiK1GN1は,7個のスペーサのうち4個のスペーサが,K1GN2は2個のスペーサがそれぞれ上方向にずれていたこと,ivその原因の調査の結果,チャンネルボックス取付時にスペーサの架橋板に過大な荷重がかかったもので,一部が脱落,運転中の冷却材循環流によりスペーサが押し上げられたものと推定されたこと,vこの対策として,スペーサの位置のずれが確認された燃料集合体を取り替え,今後チャンネルボックス取付作業にかかわる手順書に注意事項を明記し,作業者に対する教育を徹底し,取付作業自体もテレビカメラで確認することとしたことから「燃料が損傷しない」と判断した本件安全審査には欠陥があ,った旨主張する。 しかし,証拠(甲351,352,355,乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らの主張するスペーサの位置がずれたのは,チャンネルボックス取付時にスペーサの架橋板に過大な荷重がかかったことが原因であることが認められるが,これについては,原子炉設置許可の際の安全審査の対象である基本設計の安全性にかかわる事項ではなく,施工管理に属する事項であるので,控訴人らの上記主張は本件安全審査の合理性を左右するものではない。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)にかんがみると,燃料棒スペーサに関する本件- 492 -安全審査には不合理な点はないというべきであるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており採用することができない。 ④冷却材喪失事故(LOCA)時における炉心燃料部の健全性の有無についてa冷却材喪失事故の不可避性について控訴人らは,圧力バウンダリを構成する機器の破損,配管の破断等によって とができない。 ④冷却材喪失事故(LOCA)時における炉心燃料部の健全性の有無についてa冷却材喪失事故の不可避性について控訴人らは,圧力バウンダリを構成する機器の破損,配管の破断等によって引き起こされる冷却材喪失事故が容易に推測でき,原子炉作業従事者の手落等を含めて考えると,冷却材喪失事故は避けられない旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の二4。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)によると,本件安全審査においては,本件原子炉施設について,(a)異常発生防止対策として,i燃料の核分裂反応を確実かつ安定的に制御することができるかどうか,ii核分裂生成物等を閉じ込めるべき燃料被覆管は,熱的,機械的,化学的影響によってその健全性が損なわれることのない余裕のあるものかどうか,iii放射性物質を閉じ込めるべき圧力バウンダリは,機械的,化学的影響によってその健全性が損なわれることのない余裕のあるものかどうか,iv燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備は,これらに起因する異常の発生を防止し得る信頼性が確保されるかどうかが,それぞれ確認されていること,(b)異常拡大防止対策として,i燃料被覆管及び圧力バウンダリ並びにこれらの健全性に影響を及ぼすおそれのある設備に異常が発生した場合,所要の措置が採れるよう,その異常の発生を早期にかつ確実に検知し得るかどうか,ii燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある設備に発生した異常が大きなものであり,それに対し,迅速な措置を講じなければ燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性が損なわ- 493 -れるおそれのある場合に備え,所要の安全保護設備が設置されるかどうか,iii安全保護設備は,いずれも確実 対し,迅速な措置を講じなければ燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性が損なわ- 493 -れるおそれのある場合に備え,所要の安全保護設備が設置されるかどうか,iii安全保護設備は,いずれも確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるかどうか,iv運転時の異常な過渡変化解析によっても,燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性を確保できることとなっているかどうかが,それぞれ確認されていること,(c)放射性物質異常放出防止対策として,i圧力バウンダリを構成する配管の破断等が発生する場合に備え,所要の安全防護設備が設置されるかどうか,ii安全防護設備は,いずれも確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるかどうか,iii事故解析によっても,放射性物質の環境への異常な放出が防止できるかどうかが,それぞれ確認されたことから,その安全性が確認されて災害の防止上支障がないものと判断されているので,その判断の過程に不合理な点はないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張はそれ自体失当であるというべきである。 b冷却材喪失事故の解析について(a)冷却材喪失事故における燃料棒の異常な挙動について控訴人らは,冷却材喪失事故が発生した場合,本件原子炉の燃料被覆管が破裂し,炉心崩壊の危険性があるから,冷却材喪失事故の発生を想定した場合の事故解析が不合理である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,冷却材喪失事故の解析評価に当たり,i圧力容器に接続されている配管のうち,冷却材の喪失量が最大となり,炉心の冷却にとって最も厳しい結果となる冷却材再循環系配管の1本が瞬時に完全に破断するものと仮定したこと,ii平常運転時には定格出力を超えて運転すること いる配管のうち,冷却材の喪失量が最大となり,炉心の冷却にとって最も厳しい結果となる冷却材再循環系配管の1本が瞬時に完全に破断するものと仮定したこと,ii平常運転時には定格出力を超えて運転することはないが,定格出力の約105%(3440MW- 494 -t)で運転するものと仮定したこと,iii冷却材再循環系配管の破断と同時に外部電源が喪失し,かつ,事故時に作動が要求されているECCSに動的機器の単一故障(低圧スプレイ系の非常用ディーゼル発電機の故障)が起こることを仮定したことを前提条件として,非常用炉心冷却系の性能解析を行っていること(乙2の10-3-19頁,10-3-31頁,乙3の10-2頁,乙4の46頁,47頁)から,事故解析における起因事象の想定が妥当であり,解析評価に際し,評価結果が厳しくなるような前提条件が適切に設定されていることが確認されていることが認められる。 さらに,上記前提となる事実と上掲証拠及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,上記冷却材喪失事故の解析評価について,i燃料被覆管の最高温度が1200℃を超えた場合,又は燃料被覆管の全酸化量が酸化前の燃料被覆管の厚さの15%を超えた場合には,燃料被覆管の延性が極度に失われ,炉心の冷却可能形状を保持し続けることができなくなるものであるところ,燃料被覆管の最高温度は約886℃を超えることはなく,燃料被覆管の損傷は発生しないし,また,燃料被覆管における全酸化量は,酸化前の燃料被覆管の厚さに対して最大約0.3%と極めて小さいことから,燃料被覆管の延性は失われず,燃料棒は,冷却可能な形状に維持され,破裂の発生する燃料棒はなく,燃料の冷却は確保されること(乙2の10-3-39頁,乙3の10-4頁,乙4の47頁,)ii破断した配管から放出される冷却材及び水とジル は,冷却可能な形状に維持され,破裂の発生する燃料棒はなく,燃料の冷却は確保されること(乙2の10-3-39頁,乙3の10-4頁,乙4の47頁,)ii破断した配管から放出される冷却材及び水とジルコニウム反応により発生した水素により格納容器内の圧力は上昇するものの,最高圧力は約2.6㎏/cmgにとどまり,格納容器の設計圧力であ る2.85㎏/cmgより低いこと(乙2の10-3-44頁, 乙3の10-5頁,iii水とジルコニウム反応による水素の発生)- 495 -に加え,更に評価結果が厳しくなるような条件下での水の放射線分解による水素及び酸素の発生を仮定した場合でも,可燃性ガス濃度制御系を使用して,水素と酸素を結合させることにより,格納容器内の水素及び酸素の各濃度は燃焼限界(水素濃度4vol%又は酸素濃度5vol%)以下に抑えられることから,原子炉格納容器の健全性は損なわれないとの評価結果が妥当なものであること(乙2の10-3-46ないし48頁,乙3の8-109頁,10-5頁,乙4の47頁)が確認され,圧力バウンダリの損傷という事態が万一発生しても,放射性物質の環境への異常な放出が防止できるものと判断され,本件原子炉施設の安全防護設備等の基本設計については妥当なものであると審査されたことが認められる(乙4の46ないし48頁。 )したがって,冷却材喪失事故に関する本件安全審査の判断に不合理な点はなく,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 (b)大破断LOCAの危険性の有無について控訴人らは,本件安全審査において,i冷却材喪失事故の解析評価については,破断口からの冷却材流出量はP17の臨界流モデルのみを用い,下部プレナム水フラッシングによる冷却を考慮し, 険性の有無について控訴人らは,本件安全審査において,i冷却材喪失事故の解析評価については,破断口からの冷却材流出量はP17の臨界流モデルのみを用い,下部プレナム水フラッシングによる冷却を考慮し,緊急炉心冷却系については作動を想定するものとしているが,緊急停止信号は配管の破断と同時に出ることはなく,流出した冷却材が気化して格納容器内の圧力が上昇して初めて「ドライウェル圧力高」の緊急停止信号が出ること,しかも,iiP17の臨海流モデルは,少なくとも大破断LOCA直後の未飽和(沸騰していない)冷却材の準安定流を考慮していないため,未飽和状態の冷却材については実際の半分以下の過小評価となるので,破断口からの流出量をP1- 496 -7の臨界流モデルによることはできないこと,また,iii破断口からの流出の計算に用いるモデルの選択や圧力損失の計算に用いる式の選択により大幅に変化するが,下部プレナム水フラッシングの流量は実験によって裏付けられたものではなく机上の計算によるものであり,実際にどれだけの流量があるのか不確実な下部プレナムフラッシングによる冷却を解析上全面的に期待するのは不合理であり,下部プレナムフラッシングによる冷却を全く考慮しない場合,燃料被覆管温度が数百度高くなる可能性があること,そして,iv緊急炉心冷却系が定格流量どおりに注水することを想定するのは現実的ではなく,東芝の解析によると,緊急炉心冷却系の注水量が20%減少すると,燃料被覆管温度は100℃以上上昇すると予想されること,加えて,v東芝が,外部電源が健全な場合の高圧炉心スプレイ系のポンプ起動を事故後約3秒後としているので,現実的にはスクラム発生時間は高圧炉心スプレイ系の起動時間である約3秒後時点とみるべきであること,さらに,vi燃料被覆管温度が本件安全審査の結果 レイ系のポンプ起動を事故後約3秒後としているので,現実的にはスクラム発生時間は高圧炉心スプレイ系の起動時間である約3秒後時点とみるべきであること,さらに,vi燃料被覆管温度が本件安全審査の結果である886℃よりも100℃弱上昇すると,水-ジルコニウム反応が活発化し,200℃程度上昇すると水-ジルコニウム反応が発熱反応であることから正のフィードバックを生じて燃料被覆管温度は更に急激に上昇して行くことになるので,本件安全審査の燃料被覆管温度に200℃程度の過小評価誤差があった場合,炉心溶触に至る危険があることから,本件安全審査における冷却材喪失事故の解析は不合理である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると非常用炉心冷却系(ECCS)については,小破断から大破断までのいかなる破断面積に対しても原理の異なる系統を多重に,独立して設けて炉心冷却- 497 -を行うこととし,いかなる動的機器の単一故障に対しても炉心冷却機能を失わないように設計するものとされているところ(乙3の8-100,101頁,乙4の32,33頁,冷却材喪失事故の解)析に当たっては,上記(a)の認定事実のとおり,炉心の冷却にとって最も厳しい結果となる,定格出力の約105%(3440MWt)での運転中に,冷却材再循環系配管の1本が瞬時に完全に破断し,冷却材再循環系配管の破断と同時に外部電源が喪失し,かつ,事故時に作動が要求されているECCSに動的機器の単一故障(低圧炉心スプレイ系の非常用ディーゼル発電機の故障)が起こるなどと仮定し,解析結果を厳しくするための前提条件を設定したこと,そして,その解析評価は,燃料被覆管の延性が極度に失われ,炉心の冷却可能形状を保持し続けることができなくなるのは, 機の故障)が起こるなどと仮定し,解析結果を厳しくするための前提条件を設定したこと,そして,その解析評価は,燃料被覆管の延性が極度に失われ,炉心の冷却可能形状を保持し続けることができなくなるのは,燃料被覆管の最高温度が1200℃を超えた場合,又は燃料被覆管の延性を失わせる全酸化量が酸化前の燃料被覆管の厚さの15%を超えた場合であるところ,燃料被覆管の最高温度が約886℃であり燃料被覆管の損傷はないこと,また,燃料被覆管における全酸化量は,酸化前の燃料被覆管の厚さに対して最大約0.3%と小さいことから,燃料被覆管の延性は失わないことなどから燃料棒は冷却可能な形状に維持され,破裂の発生する燃料棒はなく,燃料の冷却は確保されること,更に破断した配管から放出される冷却水及び水-ジルコニウム反応により発生した水素により原子炉格納容器内の圧力は上昇するものの,本件原子炉格納容器の設計圧力を超えることはないこと,加えて,高圧炉心スプレイ系の起動信号である「原子炉水位低(レベル2」は,スクラム信号である「原子炉水位低(レベル)3」よりも低い水位レベルに設定され,スクラム発生時間と高圧)炉心スプレイ系の起動時間は異なること(乙2の8-8-33頁,- 498 -46頁,そして,実際には配管破断後に通常の水位から「原子炉)水位低(レベル3」が発生する水位に達する時間よりも早く「ド)ライウェル圧力高」が発生してスクラム及び高圧炉心スプレイ系が同時に起動するが,解析ではより厳しい解析条件を課しているため,この「ドライウェル圧力高」の発生をあえて考慮していないことが認められる。 そうすると,冷却材喪失事故に関する本件安全審査の判断には不合理な点はないから,控訴人らの上記主張は理由がなく採用することができない。 (c)中小破断LOCAの危険性の いないことが認められる。 そうすると,冷却材喪失事故に関する本件安全審査の判断には不合理な点はないから,控訴人らの上記主張は理由がなく採用することができない。 (c)中小破断LOCAの危険性の有無について控訴人らは,i中小破断LOCAについては,大破断LOCAと比較してその発生率が高いところ,現実に敦賀2号機において,平成11年7月12日午前6時05分ころ,格納容器内サンプ水位上昇率高の警報が鳴り,同日午前6時48分に原子炉を手動停止する事故が発生し,格納容器内の化学体積制御系再生熱交換機の配管エルボ(曲管部)に軸方向に貫通亀裂が生じて,再生熱交換機連絡配管の抽出側配管部から一次冷却材が漏洩するという中小配管破断冷却材喪失事象に至ったこと,そして,iiこの事象の貫通亀裂は,当初発見された軸方向の貫通亀裂一つではなく,極めて多数の亀裂が同時並行して発生・成長しており,供用期間中検査では中小破断LOCAを防止することは不可能であること,しかし,iii本件安全審査では,中小破断LOCAにつき特定の破断箇所を想定せず,単純に破断面積のみで検討し,高圧炉心スプレイ系の故障のみを想定した上,燃料被覆管温度のみを基準として,破断面積約93cm (0.1平方フィート)の破断が最も厳しく,燃料被覆管最高温度は782℃とし,高圧炉心スプレイ系の故障以外の故障は全く想定- 499 -せず,自動減圧系(ADS)及び低圧炉心スプレイ系,低圧注水系は完全に機能を果たすという前提で解析を行っていること,しかも,iv東芝の解析によると,自動減圧系の流量減少と低圧系のECCSの機能不全が生じた場合には,燃料被覆管最高温度が1200℃を超えることも十分にあり得るから,燃料被覆管最高温度を1200℃以下にとどめることを基準としている軽水型動力炉の非常用炉心 圧系のECCSの機能不全が生じた場合には,燃料被覆管最高温度が1200℃を超えることも十分にあり得るから,燃料被覆管最高温度を1200℃以下にとどめることを基準としている軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の性能評価指針にも違反すること,さらに,v東芝,日立のLOCA解析を参考にして中小破断事故を解析すれば,本件安全審査の事故想定と解析は極めて甘い不合理なものであり,中小破断LOCAにおいても炉心溶融事故に至る危険がある上,運転員が事故の進展中に冷却材漏洩量等の重要データを正確に把握することなく,事故の収拾に当たれば,更に事態を悪化させる誤介入も起こり得ることから,近時の異常事象・事故例にかんがみ,現実に起こり得ると考えられる故障を想定していない本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,証拠(乙1ないし4,107)及び弁論の全趣旨によると,敦賀2号機は,加圧式軽水炉(PWR)であって,本件原子炉(BWR)とは異なり,控訴人らが主張する敦賀2号機の事象が発生した機器(内筒付き再生熱交換器)は,本件原子炉施設には存在しないことが認められるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠くものである。 のみならず,上記(a)のとおり,冷却材喪失事故に関する本件安全審査の判断には合理性があるというべきところ,上記前提となる事実と証拠(乙4,11,107,141)に照らすと,控訴人らが主張する敦賀2号機の事象及び本件原子炉に関する故障の想定内容等は,機器の詳細設計ないし施工管理の段階にかかわる事象であ- 500 -って,原子炉設置許可の際の安全審査の対象である基本設計の安全性にかかわる事項ではなく,しかも,控訴人らの上記主張内容は独自の仮定を前提にして本件安全審査の不当性を主張するものであるからそれ自体失当というべきである。 したがって,控訴 象である基本設計の安全性にかかわる事項ではなく,しかも,控訴人らの上記主張内容は独自の仮定を前提にして本件安全審査の不当性を主張するものであるからそれ自体失当というべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は,本件安全審査の合理性を左右するものではなく失当である。 (イ)圧力バウンダリについて①圧力容器の中性子による脆化に対する安全性の有無についてa中性子照射による圧力容器の脆化について控訴人らは,圧力容器が平常運転時核分裂反応によって放射される中性子の照射を絶えず受け続けるため硬くなり,次第にその靱性が低下するが,この圧力容器の中性子照射脆化については,いまだそのメカニズムすら分かっていないので,圧力容器の安全性が確保されていないから,本件原子炉の設計の根本において災害防止上重大な欠陥を有する旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の三1。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,19,79の①ないし④,80の①ないし④,82の①ないし⑤,83の①ないし⑤,133,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)金属材料は,使用温度がある温度(脆性遷移温度)より下がると,急激に強さが減少し,もろくなる脆性遷移現象が生じること,(b)脆性遷移温度は通常かなり低く,実用上の使用温度範囲には入らないが,金属材料が中性子照射を受けると,金属材料中に原子レベルの空孔等が生じ,この脆性遷移温度が上昇する中性子照射脆化が起こること,(c)中性子照射脆化に起因する脆性遷移温度の上昇は,中性子照射量や金属材料中の不純物,特にリンや銅- 501 -等の含有量が多いと大きくなる特性を有していること,(d)このような中性子照射脆化のメカニズムは,本件安全審査当時,既に解明されていたこと,(e)そして,本件安 不純物,特にリンや銅- 501 -等の含有量が多いと大きくなる特性を有していること,(d)このような中性子照射脆化のメカニズムは,本件安全審査当時,既に解明されていたこと,(e)そして,本件安全審査においては,本件原子炉の圧力容器の材料に,焼入れ,焼戻しの熱処理を施し,不純物の含有量を非常に少なくして照射脆化特性を改良した「原子力発電用マンガン・モリブデン・ニッケル鋼板2種相当品(JIS・G・3120・SQV2A・ASTM・A-533鋼相当」が母材とし)て使用され,中性子照射による脆性遷移温度の上昇をも十分考慮した余裕のある設計となっていること(乙2の8-4-12頁,乙4の31頁,乙19の56ないし58頁)から,使用期間中に中性子照射による脆化が問題となることはないと判断されたことが認められる。 したがって,本件安全審査における上記判断には合理性があるというべきである。 もっとも,控訴人らは,米国オークリッジ国立研究所が,炉壁に含まれる銅やリンなどの不純物で中性子照射による脆化の進行を速める等の報告をした旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の三1。 )しかしながら,上掲証拠及び弁論の全趣旨によると,米国オークリッジ国立研究所の当該報告は,圧力容器に使用される鋼材に含まれる銅等の含有率が高かった米国の初期の加圧水型原子炉について解析をした場合,圧力容器の脆性破壊が問題となり得る旨指摘したものであり,本件原子炉のような沸騰水型原子炉の場合には,加圧水型原子炉の場合と比較して,炉心に最も近い圧力容器壁の受ける中性子照射量が少なく,また,その構造上ECCSの作動による注入水が上記圧力容器内壁に直接当たることはなく,本件原子炉の圧- 502 -力容器に直接当てはまるものではないことが認められるから,控訴人らの当該主張 なく,また,その構造上ECCSの作動による注入水が上記圧力容器内壁に直接当たることはなく,本件原子炉の圧- 502 -力容器に直接当てはまるものではないことが認められるから,控訴人らの当該主張はその前提を欠いており失当である。 したがって,中性子照射による圧力容器の脆化に関する本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 b脆化予測式の合理性と不純物及びニッケル等が中性子の照射脆化に及ぼす影響の有無について控訴人らは,(a)本件安全審査では,寿命期間中の脆性遷移温度の上昇の予測にはP18のワーストケースカーブが上限となることを用いているが,P18のワーストケースカーブは式の形態に何らの理論的基礎もなく,材料試験炉での加速(高速)照射によるデータに基づいていること,(b)当該式は,グンドレミンゲン原発の圧力容器に関する実験研究やP19教授らの実験研究等から,今やその存在に疑いのない照射速度依存性(照射速度が遅いほど脆化が進行しやすい)を全く考慮していないのであるから,科学的合理性を有しないこと,(c)現在の科学技術水準に照らせば,本件原子炉を含め圧力容器鋼材に使用されるマンガン・モリブデン・ニッケル鋼板において,不純物でなく成分元素として大量に添加されているニッケルは,圧力容器の照射脆化に強い悪影響を及ぼすこと,(d)本件安全審査においては,中性子照射脆化に関する化学成分の影響としてリンと銅を挙げるにとどまり,不純物の含有量やマンガン・モリブデン・ニッケル鋼板の成分元素であるニッケルの影響が考慮されていないことから,本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実及び弁論の全趣旨にかんがみると,本件安全審査においては,圧力容器の材料の脆性遷移温度の把握ないし予測式によって得ら いないことから,本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実及び弁論の全趣旨にかんがみると,本件安全審査においては,圧力容器の材料の脆性遷移温度の把握ないし予測式によって得られた数値は,一試算結果として検討された- 503 -ものであって,その数値の当否自体が安全審査の対象とはされていないのみならず,控訴人らの主張に係る運転中の原子炉の圧力容器の脆化に関する安全確保については,原子炉施設の運転管理にかかわる事項であって,原子炉設置許可の際の安全審査の対象ではないから,その主張自体失当である。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,19,79の①ないし④,80の①ないし④,82の①ないし⑤,83の①ないし⑤,133,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,(a)圧力容器の脆性破壊防止については,上記aのとおり,脆性破壊防止を十分考慮した延性の高い「原子力発電用マンガン・モリブデン・ニッケル鋼板2種相当品(JIS・G・3120・SQV2A・ASTM・A-533鋼相当」が使用されているので,中性子照射を受けた後も十分な余)裕をもって運転管理をすることができること,(b)圧力容器の最低使用温度を,脆性遷移温度より33℃以上高くすることができるように設計されること,(c)圧力容器内に脆性遷移温度の変化を知るための監視試験片を取り付けることができるように設計されることが確認されたこと(乙1の8,9頁,乙2の8-4-3,11,12頁,乙3の8-14,8-221頁,乙4の31,32頁)から,本件原子炉施設の圧力バウンダリは,その基本設計において,その健全性が判断されたことが認められる。なお,証拠(甲258)によれば,ニッケルが中性子照射脆化傾向を増加させるということから 頁)から,本件原子炉施設の圧力バウンダリは,その基本設計において,その健全性が判断されたことが認められる。なお,証拠(甲258)によれば,ニッケルが中性子照射脆化傾向を増加させるということから,原子力発電用マンガン・モリブデン・ニッケル鋼板を圧力容器に使用することが否定されているものではないと認められる。 したがって,圧力容器の健全性に関する本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 - 504 -c照射速度等の影響の有無について控訴人らは,(a)照射脆化については,照射量のみならず照射温度の影響も受け,更に照射速度が遅い方が照射脆化が進行すること,(b)実際のグンドレミンゲン原発の原子炉は,材料試験炉より照射量が低く照射速度(1秒当たりの中性子照射量)も3桁も低いにもかかわらず,実際の原子炉の方が照射脆化が進んでいたこと,(c)米国の研究炉HFIRでもグンドレミンゲン原発と同様に材料試験炉の10分の1の照射量,4桁低い照射速度で材料試験炉と同様の照射脆化を生じたこと,(d)P19教授らのモデル計算の結果,第1に不純物である銅の効果に関しては照射速度が遅いほど脆化が進行しやすいという照射速度依存性が理論的に導かれ,第2に照射脆化に寄与する欠陥は照射速度により異なり,沸騰水型原発の圧力容器程度の照射速度では銅クラスターの影響が支配的であるのに対し,材料試験炉クラスの照射速度では格子間原子クラスターの影響が支配的となること,(e)P19教授らの実験の結果,照射速度が遅い方が大きな銅クラスターが形成されることがミクロ的に観察され,確認されたが,照射脆化に関しては,現在なお解明されていない点が多く,信頼できる脆化予測式は存在しないことから,本件安全審査が基にした照射脆化についての知見は,現在の科学 ことがミクロ的に観察され,確認されたが,照射脆化に関しては,現在なお解明されていない点が多く,信頼できる脆化予測式は存在しないことから,本件安全審査が基にした照射脆化についての知見は,現在の科学水準からは妥当性を欠いているので,本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,上記bのとおり,圧力容器の材料の脆性遷移温度の把握ないし予測に係る数値自体は,安全審査の対象となる事項ではないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているというべきである。 そして,本件安全審査においては,上記a及びbのとおり,圧力容器の健全性に関する本件安全審査の判断に不合理な点があると認- 505 -めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 d本件安全審査が準拠した監視試験方法の妥当性の有無について(a)控訴人らは,わずかな監視試験片の変化を監視しただけでは,分厚い圧力容器材の脆化を評価することはできず,このような不確かな検査方法では圧力容器の健全性の維持確保はなし得ないので,本件原子炉による災害防止上重大な欠陥を有する旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,81)及び弁論の全趣旨によると,本件処分当時における本件原子炉の圧力容器構造材の監視は,社団法人日本電気協会の作成に係る電気技術規程原子力編「原子炉構造材の監視試験方法(J」EAC4201-1970。乙81)に従い,実際の圧力容器と同じ照射特性が得られるよう,圧力容器と同一の鋼材から取り出した監視試験片を圧力容器の内側に取り付け,圧力容器と同様な条件で照射し定期的に取り出して試験を行うこととされていたこと,そこで,本件安全審査においては,上記原子炉構造材の監視試験方法を踏まえた上,圧力容器に関する基本設計として,その材料の脆性遷移温度については,中性 期的に取り出して試験を行うこととされていたこと,そこで,本件安全審査においては,上記原子炉構造材の監視試験方法を踏まえた上,圧力容器に関する基本設計として,その材料の脆性遷移温度については,中性子照射を受けた後も最低使用温度を脆性遷移温度より33℃以上高くすることができるように設計され,その実際の変化を知るために監視試験片を取り付けることができるように設計されることを確認して審査を行っていることが認められる。 したがって,圧力容器の健全性に関する本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 (b)もっとも,控訴人らは,i本件安全審査が準拠した上記「原- 506 -子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-1970)」は,昭和61年に「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC」),4201-1986(甲259)により改訂されていることiiこの改訂によるJEAC4201-1986においては,試験片に使う材料は炉心領域に使用したもののうちから,照射前の関連温度RTNDTと化学成分(Cu,Ni等)の影響を考えて設計寿命末期のRTNDT調整値が最高となると予測されるものを選ぶとされ,また,試験片の数は,各回毎に引張試験片3個以上,衝撃試験片12個以上を原則とされていること,iii上記JEAC4201-1970では,JEAC4201-1986と異なり,関連温度RTNDTや化学成分の考慮を欠いており,試験片の数も各回毎に引張試験片2個以上,衝撃試験片8個以上としており,少ないことに照らすと,現在の科学技術水準では,従前の監視試験片による監視方法が存在することを基礎にした本件安全審査は,合理性を失っている旨主張する。 しかし,そもそも本件原子炉施設の運転期間中の脆 ないことに照らすと,現在の科学技術水準では,従前の監視試験片による監視方法が存在することを基礎にした本件安全審査は,合理性を失っている旨主張する。 しかし,そもそも本件原子炉施設の運転期間中の脆性遷移温度の把握は,その運転管理の中で対処すべき問題であって,原子炉設置許可の際の安全審査の対象である基本設計の安全性にかかわる事項ではないというべきである。 のみならず,上記(a)の認定事実と証拠(甲259,乙1ないし4,81)及び弁論の全趣旨によると,本件処分当時における本件原子炉の圧力容器構造材の監視については,上記「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-1970)」の定める原子炉の圧力容器構造材の監視方法によって可能であって,その監視試験片による手法には合理性があり,脆性遷移- 507 -温度の把握もできていたこと,その後の控訴人らの指摘する改訂による試験片の数等に関する変更については,それまでのデータや知見の蓄積を踏まえて成文化されたものであって,本件安全審査の基礎とされた本件処分当時の知見にその後の新しい科学技術上の知見等からみて誤りであったとして,新たな内容を策定したものではないことが認められるから,控訴人らの上記主張は理由がないというべきである。 さらに,控訴人らは,i発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和40年6月15日通商産業省令第62号)及び発電用原子力設備に関する構造等の技術基準告示(告示501号の105条)によれば,1回当たりの試験片の個数は引張試験片で3個以上,衝撃試験片で12個以上となっているにもかかわらず,本件原子炉では,それぞれ2個以上,8個以上という数しか存在しないこと,ii上記「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-1986)によると,本件原子」炉の設計寿命は, るにもかかわらず,本件原子炉では,それぞれ2個以上,8個以上という数しか存在しないこと,ii上記「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-1986)によると,本件原子」炉の設計寿命は,全出力運転年数(定格負荷相当年数,EFPY)として32年が想定されているが,監視試験片の取り出し時期に照らすと,本件原子炉の監視試験計画では運転開始後12年までのデータしかわからないこと,iiiこのため,その設計寿命に有効に対応する監視計画がないという疑問があるので,廃炉に至るまで的確な監視試験片のデータが得られないまま手探りで運転を継続する危険性が高いこと,ivグンドレミンゲン原発の圧力容器において,試験片の切り出し位置によって脆化の程度が異なるのであるから,試験片の位置如何によって圧力容器の脆化を著しく過小評価することとなること,v試験片の切り出し方向あるいは照射の際の方向により脆化の程度が著し- 508 -く異なるとすれば,試験片はそれらの事情を考慮して切り出しの際ないし照射の際の方向を変えてそれぞれについてシャルピー試験が可能な数を配置する必要があるが,このような配慮はなされていないこと,vi本件原子炉施設では,試験片は原発の寿命期間中に4回取り出せる数しか取り付けられていないのであるから,現在の圧力容器の脆化の評価に有効性を持つためには,信頼できる脆化予測式が存在しなければならないが,現在なお,信頼できる脆化予測式は存在しないことから,監視試験方法の審査が不十分な本件安全審査には合理性がない旨主張する。 しかし,上記(a)の認定事実と証拠(甲259,乙1ないし4,81)及び弁論の全趣旨によると,上記のとおり従前の「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-197」0)の定める原子炉の圧力容器構造材の監視方法によって 実と証拠(甲259,乙1ないし4,81)及び弁論の全趣旨によると,上記のとおり従前の「原子炉構造材の監視試験方法(JEAC4201-197」0)の定める原子炉の圧力容器構造材の監視方法によっても脆性遷移温度の把握ができていたこと,これまでの運転期間中の脆性遷移温度の変化の把握については,EFPY(全出力運転年数)で12年までの監視試験片による脆性遷移温度の実測値に基づき,脆化予測式による脆性遷移温度の計算結果の補正を行うことによって,これを確認できること,従前の監視試験片による方法では,脆性遷移温度の把握が不可能であったことを示すような合理的な根拠はなく,しかも,同方法が,現在の科学技術水準に照らして不合理な点があるとする具体的事情もないことが認められるから,控訴人らの当該主張はその前提を欠いており失当である。 ②応力腐食割れ(SCC)の有無についてa控訴人らは,本件原子炉の圧力容器の内張,再循環系配管等には,- 509 -比較的耐食性の優良な材料であるオーステナイト系ステンレス鋼,高ニッケル合金等が使用されているが,従来各地の原子力発電所及び本件原子炉においていわゆる応力腐食割れが多発しており,しかも,1990年代後半以降の低炭素ステンレス鋼の応力腐食割れについては,1970年代に多発した応力腐食割れと異なるものであって,これらの応力腐食割れ(SCC)については,5年ないし10年経過して発生することが多いものの,その原因究明や対応策が全く解決されていないことから,本件安全審査は,応力腐食割れの審査を欠如しているので,看過し難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,証拠(甲428ないし430,432ないし435,437,438,441,443ないし445,450,乙19,33ないし35,157,158,原審における証 難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,証拠(甲428ないし430,432ないし435,437,438,441,443ないし445,450,乙19,33ないし35,157,158,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,1970年代に多く発生した応力腐食割れは,(a)金属材料に耐食性をもたらしているクロムが,溶接時の加熱によってその金属材料中の炭素と結合し,クロム炭化物として析出することにより,その付近に部分的なクロム欠乏部が生じ,金属材料の耐食性が低下すること,(b)原子炉施設の運転に伴い発生する内圧や熱荷重等による引張応力に,溶接による残留応力が加わって,材料に過度の引張応力が存在していること,及び(c)冷却材等の溶存酸素濃度が高いなど冷却材が腐食環境にあることの三つの要因(材料,応力,環境)がからみあって発生すること,このために,(a)材料として,炭素含有量の低い低炭素ステンレス鋼等を用いること,(b)溶接時の入熱量を減らす等適切な溶接方法ないしは溶接管理を行うことによって,金属材料の鋭敏化や残留応力の低減を図ること,及び(c)原子炉の停止時には冷却材中の溶存酸素濃度が高くなるので,その起動時に冷却材中の溶存酸素濃度を低減する- 510 -ような運転を行うことなどの対策を講じることによって,上記応力腐食割れは,その発生を防止できること,更に1990年代後半以降の低炭素ステンレス鋼の応力腐食割れ及び1970年代に多発した応力腐食割れは,いずれも塑性変形や中性子照射の影響が考えられ,材料,応力,環境の3要因が影響して発生するものであることに大きな差はなく,その割れの形状も特異の差はないことから,その低減策としては,いずれも個々の要因をいかに排除又は最小化し得るかにかかっていると認められる。 もっとも,甲35 発生するものであることに大きな差はなく,その割れの形状も特異の差はないことから,その低減策としては,いずれも個々の要因をいかに排除又は最小化し得るかにかかっていると認められる。 もっとも,甲356,357の①ないし④,427の①②には,低炭素ステンレス鋼における応力腐食割れについては,ひび割れの機序が解明されておらず,その割れの発生及び進展のメカニズムが明らかになっていないので,応力腐食割れの抜本的対策を立てることはできない旨の記載部分があり,同趣旨の当審における証人P19の供述部分が存する。 しかしながら,証拠(甲428,429,乙19,33ないし35,157,158,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,応力腐食割れは,上記認定のとおり材料,環境,応力の3要因が重畳して発生する(甲428の3頁,乙33の13頁)ものであって,適切な間隔で検査及び補修を行うことで炉心シュラウド等の健全性を十分確保できることが認められるから,上記甲356,357の①ないし④,427の①②の各記載部分並びに上記証人P19の供述部分を直ちに採用することはできない。 そして,上記前提となる事実と証拠(甲428ないし430,432ないし435,437,438,441,443ないし445,乙1ないし4,19,33ないし35,157,158,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,応力腐食割れに- 511 -ついては,材料,応力,環境の三つの要因が影響することにより生ずるので,本件安全審査においては,本件原子炉施設につき,応力腐食割れを起こしにくい材料であるステンレス鋼が使用され,更に腐食が起こりにくいように適切な水質管理ができる設計とされること,及び運転開始後においても検査によって圧力バウンダリの健全性が確認できるように設 を起こしにくい材料であるステンレス鋼が使用され,更に腐食が起こりにくいように適切な水質管理ができる設計とされること,及び運転開始後においても検査によって圧力バウンダリの健全性が確認できるように設計されることを審査し,その基本設計において安全性が確保され得るものと判断されていることが認められるから,その判断の過程に不合理な点はないというべきである。 そうすると,上記1(2)のとおり,応力腐食割れ事象に対する具体的対策は,原子炉施設の詳細設計や具体的な工事方法及び運転管理における安全規制によって対処すべき事項であるので,原子炉設置許可の段階の安全審査の対象とはならないというべきであるから,)。 控訴人らの上記主張は失当である(福島第二原発最高裁判決参照bところで,控訴人らは,(a)本件安全審査当時既に判明していた島根原発における応力腐食割れ(甲22)のために制御棒駆動水戻りノズルの設計変更をもたらし,本件原子炉も,その影響を受け本件申請に係る設計変更がなされていること,(b)応力腐食割れについては,詳細設計等によって対処すれば足りるものではなく,使用される部材,施工方法や運転方法の不備,瑕疵からでも,応力腐食割れが起きれば,原子炉の生命線ともいうべき軽水の確保に支障を来たし,事故が発生するから,応力腐食割れの観点から本件原子炉の詳細設計やその部材,施工方法や運転方法の審査が不可欠であること,(c)応力腐食割れの対策は確立されているとはいえず,詳細設計等における対処によっても十分防止することはできず,また,沸騰水型原子炉においては今なお解決されていない問題であることから,原子炉設置許可の段階の安全審査においても,応力腐食割れ- 512 -対策を審査すべきである旨を主張し,これに沿う甲356,357の①ないし④,427の①②の各記 されていない問題であることから,原子炉設置許可の段階の安全審査においても,応力腐食割れ- 512 -対策を審査すべきである旨を主張し,これに沿う甲356,357の①ないし④,427の①②の各記載部分並びに当審における証人P19の供述部分がある。 しかし,上記1(2)及び上記aのとおり,原子炉の設置許可の段階においては,専ら当該原子炉の基本設計の安全性にかかわる事項のみが規制の対象となるのであって,後続の当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法並びに運転管理等は規制の対象とはならないものと解すべきであるから,その余の点について検討するまでもなく,控訴人らの上記主張は理由がない。 cまた,控訴人らは,(a)原子炉において圧力容器の内張,燃料棒の自立を支えるシュラウドには腐食されにくいステンレス鋼素材が導入されているが,現在,応力腐食割れと思われるひび割れの兆候(インディケーション)が見つかっていること,(b)東京電力は,平成13年7月6日,同年4月29日から定期検査中であった福島第二原発3号機において,応力腐食割れを防止するため炭素含有量を減らしたステンレス鋼素材SUS316Lを用いたシュラウドのほぼ全周にわたりひび割れがあるのを発見したこと,(c)当該シュラウドの寸法は,外径約5.6m,高さ約6.7m,肉厚は約50㎜であり,そのひびの深さは,最大で26㎜(115度付近,平)均で約16㎜であり,下部リング外表面から約0.3㎜の深さ(極表層部)の組織にはすべり線が認められ,この範囲は粒内割れであることが確認されたが,東京電力は,上記福島第二原発3号機のシュラウドの極表層部の腐食は粒内型応力腐食割れと推定していること,(d)低炭素ステンレス鋼は,耐粒界型応力腐食割れに対して優れていることが確認されているが,切欠きがある場合には 島第二原発3号機のシュラウドの極表層部の腐食は粒内型応力腐食割れと推定していること,(d)低炭素ステンレス鋼は,耐粒界型応力腐食割れに対して優れていることが確認されているが,切欠きがある場合には粒界型応力腐食割れが進展することがわかっており,応力腐食割れ対策材料- 513 -の効果は極めて限定されたものであることが判明していることから,この点の審査を看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかしながら,上記aのとおり,本件安全審査の判断の過程に不合理な点はないから,その後に控訴人ら指摘のひび割れ事象が発生したとしても,これにより直ちに原子炉設置許可の際の安全審査が不当となるわけではないので,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 dさらに,控訴人らは,(a)現時点では沸騰水型原発の約4割において,炉心シュラウドの応力腐食によるひび割れ又はその兆候が現れるという事態に至っており,しかも,原子力発電所がおよそ30年の稼働期間を想定して安全審査を受けながら,10年も経ない期間において応力腐食割れが発生していること,(b)実際に,応力腐食割れの発生,進展を防ぐことはできないし,このような応力腐食割れの亀裂の進行を評価する具体的な方法は存在しないこと,(c)定期点検におけるシュラウドの応力腐食割れの点検は,目視検査によって行われるが,毎回の検査で検査可能なすべての溶接部分を点検するわけではなく,また,シュラウドのひび割れの表面が微少であれば,内部でひび割れが進展している場合でも,目視検査では発見されない可能性は十分にあるので,原子炉の設置許可の段階で応力腐食割れの観点から,本件原子炉の詳細設計やその部材,施工方法や運転方法の審査が不可欠であることから,本件安全審査においては,応力腐食割れの審査を看過している旨主張する。 子炉の設置許可の段階で応力腐食割れの観点から,本件原子炉の詳細設計やその部材,施工方法や運転方法の審査が不可欠であることから,本件安全審査においては,応力腐食割れの審査を看過している旨主張する。 しかし,応力腐食割れについては,上記1(2)及び上記aのとおり,原子炉施設の詳細設計や具体的な工事方法及び運転管理における安全規制によって対処されるべき事柄であって,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象となるものではないから,控訴人らの上- 514 -記主張は失当である。 eそして,控訴人らは,(a)NRCが1994年(平成6年)の文書において,炉心シュラウドの360度のひび割れが貫通した際の安全評価を行い,炉心シュラウドにおける円周360度におけるシュラウドの分断という仮定における安全影響を評価した上「最も,憂慮される事故のシナリオは主蒸気管の破断,再循環系の破断,そして地震である」としているから,全周にわたるひび割れが,地。 震により,炉心シュラウドの分離に至る可能性があること,(b)NRCの上記文書によると,出力と流量のミスマッチは冷却能力の不全をもたらし,炉心シュラウドが持ち上がり,それが横方向にずれるような場合には,制御棒の挿入に支障をきたすおそれが生じ,最悪の場合には燃料棒や制御棒の著しい破損に端を発する放射能放出事故が起こり得るとしていること,(c)炉心シュラウドのひび割れによる冷却材喪失事故のおそれがあり,もしもひび割れのある炉心シュラウドにおいて,内側の水も外側の水と同じ速さで漏れ出てしまったときは,緊急冷却装置が機能する前に,核燃料に損傷が起きる可能性が出てくることから,本件安全審査においては,炉心シュラウドの応力腐食割れを起因とするシュラウド自体の分離やずれについて,設計基準事象として想定していないので不 する前に,核燃料に損傷が起きる可能性が出てくることから,本件安全審査においては,炉心シュラウドの応力腐食割れを起因とするシュラウド自体の分離やずれについて,設計基準事象として想定していないので不当であること,(d)平成16年の原子力安全・保安院の検討結果の整理(甲429の35頁)において,本件原子炉施設の溶接継ぎ手数で26もの溶接継ぎ手でひび割れが発見され,その欠陥が明らかとなっていることから,再循環系配管をはじめとする圧力バウンダリが破断しないように対策を講じることは,当然に基本設計ないし基本設計方針に含まれると解すべきである旨主張する。 しかし,応力腐食割れを防止する具体的対策については,上記1- 515 -(2)及び上記aのとおり,本件安全審査の対象である基本設計の安全性にかかわる事項ではなく,それ以後の段階にある詳細設計や具体的な工事方法及び運転管理における安全規制によって実現されるべきものである。 fしたがって,控訴人らの上記主張は理由がなく採用することができない。 ③疲労破壊,応力集中の有無についてa控訴人らは,疲労破壊,応力集中によって圧力バウンダリが破壊されるおそれがあるので,この点の審査を看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(甲41,乙1ないし4,19,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)本件原子炉の圧力バウンダリ等は,平常運転時,運転時の異常な過渡変化時,補修時,試験時及び事故時に発生する応力に対して,脆性的挙動及び急速な伝播型破断の防止の観点から,応力解析,疲労解析等を行うとともに,使用材料の管理,使用圧力・温度の制限及び供用期間中の監視を考慮した設計がなされていること,(b)原子炉の運転開始後,圧力バウンダリの健全性を確認するた 点から,応力解析,疲労解析等を行うとともに,使用材料の管理,使用圧力・温度の制限及び供用期間中の監視を考慮した設計がなされていること,(b)原子炉の運転開始後,圧力バウンダリの健全性を確認するため,定期的に供用期間中検査が行えるよう,機器,配管等の設計にあたっては,検査箇所へ検査機器等が接近できるように機器,配管等の配置が考慮されていること,(c)本件原子炉の圧力バウンダリ等の試験,検査として,使用前に電事法等で定められた使用前検査,供用中に社団法人日本電気協会作成に係る電気技術規程原子力編「原子炉冷却材圧力バウンダリの供用期間中検査(JEAC4205-19」74)に基づく検査,逃がし安全弁の設定点の確認等を実施し,その健全性が確認されること,(d)本件安全審査においては,本件原- 516 -子炉施設の圧力バウンダリの健全性が維持されると判断されたことが認められる。 そうすると,疲労破壊,応力集中に関する圧力バウンダリの健全性に係る本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 bもっとも,控訴人らは,(a)平成11年7月12日に発生した敦賀2号機の冷却材漏洩事象の亀裂箇所である再生熱交換器の配管は,もともと熱疲労が問題となる場所であり,熱疲労については慎重に解析が行われた上で設計されたはずの箇所であるにもかかわらず,疲労破断しているので,解析,設計,検査が行われているからといって,圧力バウンダリの健全性が維持されるとはいえないこと,(b)中小破断LOCAにおいても,炉心溶融事故に至る危険性があるので,疲労破壊,応力集中に関する審査は不可欠であることから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記(ア)④b(c)のとおり,敦賀2号機は,加圧式軽水炉(PWR)であって,本件原子炉(B で,疲労破壊,応力集中に関する審査は不可欠であることから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記(ア)④b(c)のとおり,敦賀2号機は,加圧式軽水炉(PWR)であって,本件原子炉(BWR)とは異なり,控訴人らが主張する敦賀2号機の事象が発生した機器は,本件原子炉施設には存在しないものである。のみならず,上記敦賀2号機の事象は,機器の詳細設計ないし施工管理の段階にかかわる事象であって,本件安全審査の対象である基本設計の安全性にかかわる事項ではないから,控訴人らの上記主張は失当である。 cさらに,控訴人らは,(a)本件原子炉施設においては,営業運転開始前の原発試験運転中(出力100%運転開始日3日目)の昭和60年5月31日,循環水配管からの海水漏洩事象にともなう出力制限を行う事象(復水器の配管に大穴事象)が発生したこと,(b)この対策として,当該貫通部を切断,撤去し,当該部に母材と同一- 517 -仕様の鋼板をはめ込み突き合わせ溶接を行ったものの,この循環配水管が肉厚13㎜もの配管であるにもかかわらず,通水後わずか3日という短時間でこのような大貫通孔が発生し,しかも,この漏洩自体貫通孔(破断)による海水漏洩という事態に至るまで検知されなかった(破断前検知が実現できなかった)こと,(c)この破断によってギロチン破断はあり得ないとされる他の圧力バウンダリを構成する配管,とりわけ肉厚23㎜の再循環系配管でさえも破断の確率は意外に高い可能性が考えられること,(d)これについて,塗膜剥がれによる異種金属間の腐食電流による貫通孔の形成という推定が正しいならば,この知見に基づく配管の健全性は,安全審査の対象とはされていないことから,本件安全審査については,配管の厚さや,材質,組合せ,腐食電流の可能性,必要な防止装置等の各観点に いう推定が正しいならば,この知見に基づく配管の健全性は,安全審査の対象とはされていないことから,本件安全審査については,配管の厚さや,材質,組合せ,腐食電流の可能性,必要な防止装置等の各観点によって,その審査をやり直す必要がある旨主張する。 しかしながら,証拠(甲347,355,乙19,90)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らの主張する本件原子炉施設に係る海水漏洩事象(復水器の配管の大穴事象)は,循環水系配管内面に腐食防止の目的で塗られていたタールエポキシ樹脂の塗膜の一部が,当該配管に仮設されていた鋼製補強材を配管据付け後に撤去する際,作業に伴う熱の影響を受けたため,本来であれば,熱の影響を受けた塗膜を完全に除去した上で,新たにタールエポキシ樹脂を塗るべきところ,その除去が不完全なままで重ね塗りがなされた結果,塗膜の一部が剥離し,配管内面が直接海水にさらされたので,腐食して穴があいたために発生したものであり,すなわち,配管の据付け用補強材の除去作業後の補修塗装の施工不良によって塗膜の一部が剥離し,循環水配管の管壁の一部が海水に露出したことにより,復水器と循環水配管との異種金属間に腐食電流が発生し,異種金属間- 518 -の電食により循環水配管に貫通孔が生じたものであり,この事象は,国際原子力事象評価尺度上は,安全に関係しない事象である「評価対象外」に分類されていることが認められる。 そうすると,本件原子炉施設における上記海水漏洩事象は,塗装方法の不備という本件原子炉施設の施工管理に起因するものであって,重大な事故につながるおそれはないというべきである。しかも,控訴人らの主張に係る配管の健全性については,原子炉設置許可処分の段階における安全審査の対象ではなく,その後続の安全規制の対象とされる当該施設の詳細設計及び工事の方法や配 というべきである。しかも,控訴人らの主張に係る配管の健全性については,原子炉設置許可処分の段階における安全審査の対象ではなく,その後続の安全規制の対象とされる当該施設の詳細設計及び工事の方法や配管の補修作業の具体的な施工管理に属する事項であるから,本件原子炉施設がその基本設計において災害の防止上支障のないものとした本件安全審査の判断を左右するものではないというべきである。 dしたがって,控訴人らの上記主張は失当である。 ④解析による設計の合理性の有無について控訴人らは,本件原子炉施設の圧力容器の設計は,詳細応力解析による設計に従ってなされているところ,温度変化の計算,温度差による応力の発生とその解析,疲労の検討等の基準は,すべて設計者にゆだねられており,特に炉心スプレイノズル2本,給水ノズルは,熱伝達理論が十分把握されていないので,圧力容器は安全性が確保されているとはいえないから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張し(原判決第二編第一章第六節第二款第二の三4,これに沿う甲182の記)載部分及び原審における証人P32の証言部分がある。 しかし,控訴人らの上記主張内容は一般的かつ抽象的な危険性を主張するにとどまるものであり,そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)によると,本件安全審査においては,本件補正に係る本件申請に基づいて,本件原子炉施- 519 -設の圧力バウンダリが,その基本設計において,機械的,化学的影響によってその健全性が損なわれることのない,余裕のあるものであると具体的に判断されたことが認められていることに照らすと,上記甲182の記載部分及び上記証人P32の証言部分をいずれも直ちに採用することはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ⑤使用前検査及び供用期間 が認められていることに照らすと,上記甲182の記載部分及び上記証人P32の証言部分をいずれも直ちに採用することはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ⑤使用前検査及び供用期間中検査の合理性の有無についてa控訴人らは,圧力バウンダリ,冷却系配管及び炉内構造物等におけるひび割れを微少なうちに発見することは困難であって,本件安全審査において確認された検査方法には限界があり,信頼に値しないから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の三5。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(甲41,乙1ないし4,原審における証人P1の証言)によると,(a)本件補正に係る本件申請においては,機器,配管等の設計に当たり,本件原子炉の運転開始後,圧力バウンダリの健全性を確認するため,定期的に供用期間中検査を実施でき,検査箇所へ検査機器等が接近できるように,機器,配管等の配置が考慮されていること,(b)本件安全審査においては,本件原子炉の圧力バウンダリ等については,使用前に電事法等で定められた使用前検査が実施され,また,供用中には社団法人日本電気協会作成に係る電気技術規程原子力編「原子炉冷却材圧力バウンダリの供用期間中検査(JEAC4205-1974)に」基づく検査並びに逃がし安全弁の設定点の確認等が実施されるので,その健全性が維持されると判断されたことが認められる。 そうすると,事前検知等に関する本件安全審査に不合理な点はないというべきであるから,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落- 520 -があると認めることはできない。 bもっとも,控訴人らは,(a)使用前の圧力容器等の母材や溶接部の欠陥(亀裂,ブローホール,溶接中のスラグ巻き込み等)の発見に関しては,表面については液体探傷試験(カラー と認めることはできない。 bもっとも,控訴人らは,(a)使用前の圧力容器等の母材や溶接部の欠陥(亀裂,ブローホール,溶接中のスラグ巻き込み等)の発見に関しては,表面については液体探傷試験(カラーチェック,人)が入れない部分の表面や内部については超音波探傷試験,放射線探傷試験が行われるが,放射線探傷は,ブローホールなどの欠陥は見つけやすいものの,より危険な亀裂状の欠陥の検出能力が劣り,また,超音波探傷も亀裂状欠陥の方向により検出能力が左右され,検出能力自体に照らしても比較的大きな欠陥を見逃す危険性があること,(b)社団法人日本電気協会作成に係る電気技術規程原子力編「原子炉冷却材圧力バウンダリの供用期間中検査(JEAC42」05-1974)に従えば,圧力容器の溶接部をはじめとする圧力バウンダリの最重要部分やECCS配管,制御棒駆動水圧計配管などの重要な配管もほとんど検査をする必要がなくなるので,これに依拠して検査を行うこと自体危険であり不合理であること,(c)実際の原子炉施設に対する検査は,当時の通産省の検査官や発電設備技術協会の検査担当官も立ち会わない施工業者任せの検査であって,検査の信用性は欠如しているので,使用前検査や定期検査で圧力バウンダリの欠陥が破断前に発見できることはないこと,(d)我が国の原子力関係行政庁は,検査機関も専門家も安全性を厳しく追及する姿勢や安全審査能力に欠けているため,原子炉施設の詳細設計段階以降では,現実には対策が十分に行われないので,基本設計段階で安全審査の対象とすべきであることから,事前検知等に関する十分な審査を看過した本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかしながら,上記1(2)のとおり,原子炉の設置許可の段階においては,専ら当該原子炉の基本設計の安全性にかかわる事項のみ- 521 - 十分な審査を看過した本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかしながら,上記1(2)のとおり,原子炉の設置許可の段階においては,専ら当該原子炉の基本設計の安全性にかかわる事項のみ- 521 -が規制の対象となるのであって,原子炉設置許可後の使用前検査や定期検査並びに運転検査及び圧力バウンダリの破断の防止対策に関する事項については,本件安全審査の対象ではなく,それ以後の段階にある詳細設計や具体的な工事方法及び運転管理における安全規制によって実現されるべきものである。 cしたがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 ⑥運転期間(想定寿命)の延長の有無について控訴人らは,a本件処分及び本件安全審査においては,圧力容器や圧力バウンダリを構成する他の機器の想定寿命を40年又は全出力運転年数(定格負荷相当年数,EFPY)を32年としていたが,具体的な運転期間を明示して制限しなかったこと,b当時の通産省及び資源エネルギー庁は,平成11年2月付けで「電気事業者の原子力発電所高経年化対策の評価及び今後の高経年化に関する具体的取組について(甲311)を発表し,老朽化原発の寿命延長のため「より合理」的,効率的な設備管理」と称して,稼働開始から30年が経過する福島第一原発1号機,美浜原発1号機,敦賀原発1号機の各寿命を60年に倍増することを承認する見解を示したこと等から,本件原子炉の寿命についても延長されることになるので,具体的な運転期間を明示して制限しなかった本件安全審査の瑕疵は重大かつ違法である旨主張する。 しかし,証拠(甲309ないし314)によると,資源エネルギー庁は,平成8年4月付けで「高経年化に関する基本的な考え方(甲」310)を作成し,同報告書において,今後の我が国の原子力発電所の高経年化に対応するため技術的検討を 314)によると,資源エネルギー庁は,平成8年4月付けで「高経年化に関する基本的な考え方(甲」310)を作成し,同報告書において,今後の我が国の原子力発電所の高経年化に対応するため技術的検討を行い,その際評価条件として60年間の運転年数を仮定していること,また,当時の通産省及び資源エネルギー庁は,上記報告書を勘案し,原子力発電所の高経年化に- 522 -関する取組,特に福島第一原発1号機等が稼働開始から30年を経過した場合の設備管理方策等を検討し,平成11年2月付けで「電気事業者の原子力発電所高経年化対策の評価及び今後の高経年化に関する具体的取組について(甲311)を作成したこと,もっとも,原子」力安全委員会は,同年2月8日の第7回原子力安全委員会定例会議において,福島第一原発1号機,美浜原発1号機及び敦賀原発1号機の高経年化に関する具体的取り組みについて検討したが,本件原子炉については,その運転期間を延長することについては何ら触れておらず,本件原子炉の寿命の延長につき具体的に論議されてはいないことが認められる。 のみならず,上記1(2)及び(5)エのとおり,原子炉の設置許可の段階においては,専ら当該原子炉の基本設計の安全性にかかわる事項のみが規制の対象となるのであって,控訴人らの主張に係る運転期間(想定寿命)については,原子炉施設の具体的な設計工事・運転管理及び廃炉にかかわる事項であるので,その後続の詳細設計や具体的な工事方法及び運転管理などにおける安全規制によって実現されるべきものであるから,控訴人らの上記主張は失当というべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 (ウ)制御棒駆動系について①制御棒駆動系の信頼性とスクラム排出ヘッダー及びスクラム排出容器の設計の合理性の有無についてa である。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 (ウ)制御棒駆動系について①制御棒駆動系の信頼性とスクラム排出ヘッダー及びスクラム排出容器の設計の合理性の有無についてa控訴人らは,(a)米国ブラウンズ・フェリー原発3号機において,1980年(昭和55年)6月28日,原子炉停止作業(スクラム)の際に,スクラム排出容器に水がたまり制御棒全体の半分の挿入に失敗する事象が発生し,スクラム達成までに14分02秒もの長時間を要していること,(b)NRCは,ジェネラル・エレクトリ- 523 -ック社製造の沸騰水型原子炉の制御棒駆動機構に重大な欠陥があると指摘する報告をしていること,(c)我が国の原発においても,制御棒駆動機構,駆動水配管のひび割れ事象,駆動水圧ポンプ軸の損傷事象,制御棒逆さ取付ミスが多数発生しているので,本件原子炉における制御棒・駆動系についてもその信頼性が欠けるから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(甲9,乙1ないし4,84の①ないし④,88の①ないし④,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)米国ブラウンズ・フェリー原発3号機において制御棒が円滑に挿入されない事態が生じたのは,スクラム排出ヘッダーとその下流側にあるスクラム排出容器とを結ぶ長い小口径の連絡管に水詰まりが生じ,その結果,制御棒を原子炉内に挿入しようとした際に,水が十分排出されなかったことによるものであるが,本件原子炉施設においては,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器が直接つながる構造となっており,上記ブラウンズ・フェリー原子力発電所3号機において発生した事象が発生することは考えられないこと,(b)控訴人らが指摘するNRCの報告は,当時の中間報告であり,その後の1981 る構造となっており,上記ブラウンズ・フェリー原子力発電所3号機において発生した事象が発生することは考えられないこと,(b)控訴人らが指摘するNRCの報告は,当時の中間報告であり,その後の1981年(昭和56年)8月,沸騰水型原子炉の制御棒駆動水圧系スクラム排出系配管が破断する可能性は極めて低いので,原子力発電所を引き続き運転することは妥当と判断する旨の報告を行ったこと(乙88の①ないし④)が明らかである。 さらに,上掲証拠及び弁論の全趣旨によると,(a)本件安全審査においては,本件補正に係る本件申請について,i制御棒が,予想される運転上の異常な過渡変化を含む通常運転時,及び原子炉事故時に燃料破損限界を超えることなく炉心を臨界未満にできるように- 524 -すること,ii制御棒の停止余裕が,最大反応度価値を持つ制御棒1本を完全に炉心外に引き抜いた場合でも,冷温で炉心を臨界未満にすることができ,かつ臨界未満を維持できるようにすること,iii制御棒には落下速度リミッタを設け,制御棒価値ミニマイザで許容する最大反応度価値(0.015Δk)の制御棒が自重によって落下しても,反応度の急速な付加による燃料二酸化ウランの最大エンタルピが280cal/gを超えることがないように自由落下速度を0.95m/s以下にすること,iv地盤における最大加速度振幅が450Galの地震動に対しても制御棒は確実に挿入できるようにすること,v制御棒の最大連続引抜速度は,制御棒引抜手順及び制御棒価値ミニマイザによる制御棒の最大反応度価値の抑制とあいまって,運転員が原子炉出力を容易に制御できるような値にすること,viスクラム挿入時間は,全ストロークの90%挿入で3.5秒以下にすること,及びvii個々の制御棒は,すべて別々に取付け,取外しが可能なようにすることを内容 力を容易に制御できるような値にすること,viスクラム挿入時間は,全ストロークの90%挿入で3.5秒以下にすること,及びvii個々の制御棒は,すべて別々に取付け,取外しが可能なようにすることを内容とする設計方針が妥当であることを確認していること(乙2の8-3-25ないし33頁,乙3の8-9ないし10頁,乙4の30頁,そして,(b)更に本件安)全審査においては,本件原子炉の主要設備として制御棒駆動系について,各制御棒及び同駆動系ごとにアキュムレータ(高圧窒素及び駆動水を蓄える蓄圧装置)が設けられるとともに,原子炉の緊急停止時にすべての制御棒駆動系から排出される水を貯えるスクラム排出ヘッダー及びスクラム排出容器が設けられること(乙2の8-3-31ないし33頁,及び本件原子炉施設における制御棒駆動系)の水圧制御ユニットについては,安全保護設備として,設計上十分信頼性を有し,また,厳重な品質管理の下に製造されているので,ユニット内の配管に亀裂が生じることは考え難いこと(乙3の8-- 525 -34,36ないし38頁)に照らして,本件原子炉の制御棒駆動系に十分な信頼性があると判断されたことが認められる。 そうすると,制御棒駆動系に関する本件安全審査は合理性があるというべきであって,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 bもっとも,控訴人らは,(a)制御棒1本ないし数本の挿入失敗は,緊急停止信号が出た場合でも制御棒駆動系の故障により生じ得るものであって,沸騰水型原子炉では,その制御棒駆動系統のうち特にスクラム・ディスチャージ・ボリュームに水が入っていると多数の制御棒で同時にスクラム失敗を生じること,(b)我が国において,上記米国ブラウンズ・フェリー原発3号機の教訓を踏まえて,スクラム排出ヘッダーに水がた ィスチャージ・ボリュームに水が入っていると多数の制御棒で同時にスクラム失敗を生じること,(b)我が国において,上記米国ブラウンズ・フェリー原発3号機の教訓を踏まえて,スクラム排出ヘッダーに水がたまらないようにするため,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器が直接つながる一体化構造とされるようになったのは,1982年(昭和57年)から1983年(昭和58年)であり,それまでは,そのような知見もなく工事が実施されていなかったこと,(c)本件原子炉施設は,本件申請書に添付の図面(制御棒駆動水圧系系統図。乙3の8-202頁)に照らしても,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器を一体化しないことを前提とした施設であること,(d)福島第一原発1号機で1979年(昭和54年)7月20日に,また,島根原発2号機で平成7年1月30日にそれぞれスクラム排出容器に水がたまった状態でもスクラム排出容器水位高のスクラム信号が出ない限り運転が継続されていたので,スクラム排出容器に水がたまった場合にスクラム機能に影響を与える事態が現実に存在していることから,本件原子炉施設の制御棒駆動系の信頼性は欠如している旨主張する。 しかし,上記1(2)のとおり,原子炉の設置許可の段階において- 526 -は,専ら当該原子炉の基本設計の安全性にかかわる事項のみが規制の対象となるのであって,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器との具体的な接続方法は,詳細設計及び工事の方法に関することであり,基本設計の安全性にかかわる事項を審査する安全審査の対象とはならないから,控訴人らの上記主張は理由がないというべきである。 のみならず,上記のように米国ブラウンズ・フェリー原子力発電所3号機において,制御棒が円滑に挿入されない事態が生じた原因は,スクラム排出ヘッダーとその下流にあるス 張は理由がないというべきである。 のみならず,上記のように米国ブラウンズ・フェリー原子力発電所3号機において,制御棒が円滑に挿入されない事態が生じた原因は,スクラム排出ヘッダーとその下流にあるスクラム排出容器を細い管で連結する構造となっていたため,水の流れが悪くなり,スクラム排出ヘッダーに水が残っていたことにあり,そして,上記前提となる事実と証拠(甲257,乙1ないし4,84の①ないし④,88の①ないし④,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)控訴人らが指摘する本件申請に添付の図面は,制御棒駆動水圧系の系統図すぎないものであり,機器の詳細な形状や寸法,配置を示したものでなく,また,本件原子炉施設においては,スクラム排出ヘッダーとスクラム排出容器が直接つながる構造となっており(上記証人P1の証言,上記米国ブラウンズ・フェリー)原子力発電所3号機で発生した事象が判明する以前から,同事象がそもそも生じない構造になっていたこと,(b)福島第一原発1号機,島根原発2号機のスクラム排出容器水位高のスクラムは,スクラム排出容器の水位が高くなったため,設計どおりに原子炉がスクラムしたものであり(乙134,上記米国ブラウンズ・フェリー原子)力発電所3号機で発生した事象とは全く異なることが認められる。 cしたがって,控訴人らの主張はその前提を欠いており失当である。 ②スクラム失敗等と暴走事故の有無について- 527 -aタービン・トリップによる暴走事故控訴人らは,(a)本件原子炉施設の早期炉心の過渡変化解析のうち,タービン・トリップ時(105%出力)の解析において,スクラム成功時の最大出力時刻は事故後0.79秒時点であるとしているが,このタービン・トリップ時に事故後0.79秒時点でスクラムに失敗していれば,全反応 ・トリップ時(105%出力)の解析において,スクラム成功時の最大出力時刻は事故後0.79秒時点であるとしているが,このタービン・トリップ時に事故後0.79秒時点でスクラムに失敗していれば,全反応度は暴走事故を引き起こすに十分な数値となること,(b)上記0.79秒時点の全反応度2.00ドルは,タービン主蒸気止め弁閉による原子炉圧力上昇に伴う炉心のボイド減少による正の反応度投入と直ちに生じるドップラー効果による負の反応度補償の合計であり,燃料棒を0℃から2195℃に温度上昇させる発熱量は188.77cal/g(650℃からの上昇分は132.87cal/g)であること,(c)最大出力時刻後の出力変動を最大出力時刻前と対称形とみなすと,本件原子炉施設におけるタービン・トリップ時(105%出力)に1秒程度スクラム遅れが生じた場合の燃料棒の総発熱量の平均値は321.64cal/gとなるが,これは,十分に燃料棒破裂・水蒸気爆発を生じ得る値であって,チェルノブイル事故以上の破局的な暴走事故に至る危険があること,(d)東京電力の本件申請に係る解析上スクラム成功時の最大出力時刻は事故後0.86秒,この時点のスクラム信号経過時間は0.79秒,この時点のスクラムによる投入反応度は1ドル強であり,1秒程度のスクラム遅れが生じた場合の事故後0.86秒時点での全反応度は2ドル強であるが,更に本件原子炉施設でタービン・トリップ時にタービン・バイパス弁不作動の場合,1秒間全く制御棒が挿入されない場合のみならず,相当程度の数の制御棒が挿入された場合でも一部の制御棒の挿入失敗で暴走事故に至る危険があること,(e)タービン・トリップは,原子力発電所で想定- 528 -される異常状態(過渡現象)の中でも比較的発生頻度の高いものであり,我が国のこれまでの異常事象例に 失敗で暴走事故に至る危険があること,(e)タービン・トリップは,原子力発電所で想定- 528 -される異常状態(過渡現象)の中でも比較的発生頻度の高いものであり,我が国のこれまでの異常事象例に照らすと,本件原子炉施設の運転時間が40年と想定されているので,その間に少なくとも4回のタービン・トリップ,8回程度のタービン・トリップないしそれと同視し得る事態が生じることが現実的に想定されることから,タービン・トリップ時のスクラム失敗を想定しない本件安全審査は不合理であって,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,上記6(1)オのとおり,安全審査においては,原子炉設置許可申請者の実施した平常運転時における被ばく低減対策に係る被ばく線量評価及び事故防止対策に係る安全評価の妥当性をも合わせて確認しているが,これは,通常運転状態を超えるような異常な事態をあえて想定した上で解析評価を行い,そのような事態においても,当該原子炉施設の基本設計において事故防止対策のために考慮された機器系統などの設計が妥当であることを念のために確認するためのものであり,したがって,事故防止対策に係る安全設計が適切であると判断したことが妥当であったか否かを念のため確認するために行われるものである。そして,上記前提となる事実と証拠(乙4,11,14,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件原子炉設置許可に際しての本件安全審査においても,所要の安全保護設備が設置されていること及びその信頼性が確保されているか否かなどを確認するために,念のために更に運転時の異常な過渡変化解析に基づいて安全保護設備等の設計の総合的な妥当性を判断することとしていたことが認められる。 そうすると,原子炉設置許可段階における安全審査の過渡変化,事故解析の ために更に運転時の異常な過渡変化解析に基づいて安全保護設備等の設計の総合的な妥当性を判断することとしていたことが認められる。 そうすると,原子炉設置許可段階における安全審査の過渡変化,事故解析の趣旨に照らすと,控訴人らの上記主張内容は,本件安全- 529 -審査において想定された事象を超える独自の不適切な暴走事故を想定し,過度のスクラム失敗を仮定することによって本件安全審査の不合理をいうものであるから,その主張自体失当というべきである。 のみならず,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)控訴人らの主張するタービン・トリップは,本件安全審査においては「主蒸気系の過渡変化」の一つとして想定され解析されていること,そして,(b)この過渡変化の解析に当たっては,評価結果を厳しくするため,定格出力の約105%での運転を仮定し,また,タービン・バイパス弁が作動しないと仮定するなどの前提条件を設定したこと,更に,(c)この過渡変化においては,タービン主蒸気止め弁が閉鎖すれば,主蒸気の遮断により原子炉圧力が上昇し,ボイド(気泡)がつぶれることによる正の反応度投入によって中性子束は増加するが,タービン主蒸気止め弁閉スクラムによる負の反応度投入によって中性子束の増加が抑えられ,また,逃がし安全弁の作動によって圧力上昇が抑制され,事象は収束することが確認されていること(乙3の10-36ないし39頁,そして,(d)更に本件安全審)査におけるその解析評価では,高出力運転中のタービン・トリップ時においても最小限界出力比が許容限界値を下回ることはなく,また,表面熱流束の最大値は定格値の108%にとどまり,燃料の線出力密度は燃料被覆管の1%円周方向塑性歪に対応する線出力密度を下回っており,更に いても最小限界出力比が許容限界値を下回ることはなく,また,表面熱流束の最大値は定格値の108%にとどまり,燃料の線出力密度は燃料被覆管の1%円周方向塑性歪に対応する線出力密度を下回っており,更に原子炉冷却材圧力バウンダリの最高圧力が,本件原子炉冷却材圧力バウンダリの最高使用圧力を超えることはないとされていることなどから,燃料被覆管及び原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性は保持されるとの評価結果は,妥当なものと判断されたこと(乙3の10-37ないし39頁,乙4の39,40,- 530 -42,44頁)が認められる。 そうすると,タービン・トリップに関する本件安全審査の判断に不合理な点はなく,その過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 b制御棒挿入失敗による暴走事故控訴人らは,(a)本件原子炉施設において,再循環系配管1本の完全破断が生じた場合,破断の生じた再循環系から冷却材が急激に流出し,炉心での冷却材(減速材)流量も急激に減少し,事故後約8.7秒で炉心シュラウド外側(いわゆるダウンカマ部)の水位がジェット・ポンプ・ノズルの位置まで下がり,炉心での冷却材流量が急激に減少し,ほとんどゼロになること,(b)炉心シュラウド外側の水位が下がって再循環ポンプ吸込口の位置まで下がると冷却材の上にたまっていた蒸気が破断口から流出して原子炉圧力が急激に低下し,圧力容器の下部プレナム部で減圧沸騰が生じて,下部プレナムの冷却材が炉心部に押し上げられること(下部プレナム部のフラッシング,(c)本件原子炉施設の場合,事故後約12秒後の時)点で下部プレナム水のフラッシングが生じるとされており,0.2秒足らずの間に炉心流量がゼロから定格の60%まで急上昇していること,(d)この再循環系配管の完全破断の際の下部プレナム部のフラッシン 点で下部プレナム水のフラッシングが生じるとされており,0.2秒足らずの間に炉心流量がゼロから定格の60%まで急上昇していること,(d)この再循環系配管の完全破断の際の下部プレナム部のフラッシングの際には,炉心の減速材が急増するため,本件原子炉施設のような沸騰水型軽水炉(BWR)では大きな正の反応度が投入されるので,この時点で原子炉がスクラムしていない場合はもちろんのこと,制御棒2本程度の挿入失敗があっただけでも暴走事故に至る危険があることから,制御棒挿入失敗による暴走事故を想定しない本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記aのとおり,控訴人らの上記主張内容は,過度のス- 531 -クラム失敗を仮定することによって本件安全審査の不合理をいうものであるから,その主張自体失当というべきである。 しかも,本件安全審査においては,上記①aの認定事実のとおり,本件原子炉の制御棒及び同駆動系については,各制御棒及び同駆動系ごとにアキュムレータが設けられるとともに,原子炉の緊急停止時にすべての制御棒駆動系から排出される水を貯えるスクラム排出ヘッダー及びスクラム排出容器が設けられること,及び本件原子炉施設における制御棒駆動系の水圧制御ユニットについては,安全保護設備として,設計上十分信頼性を有し,また,厳重な品質管理の下に製造されているので,ユニット内の配管に亀裂が生じることは考え難いことから,本件原子炉の制御棒駆動系に十分な信頼性があると判断されたことが認められるので,十分なスクラム信頼性を有しているというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 c再循環流量制御系の誤動作による暴走事故控訴人らは,(a)本件申請に係る本件原子炉施設の再循環流量制御系の誤作動については,過渡変化前,定格出力の68%,定格流量の らの上記主張は失当である。 c再循環流量制御系の誤動作による暴走事故控訴人らは,(a)本件申請に係る本件原子炉施設の再循環流量制御系の誤作動については,過渡変化前,定格出力の68%,定格流量の50%で比較的長時間安定して運転していた場合について解析されていること,(b)本件原子炉施設の現在の設計において,再循環流量制御系の誤作動時に過渡変化後2秒時点でスクラム反応度が加えられていない場合(1秒強のスクラム遅れに相当,流量増加)率が毎秒11%の場合,燃料棒のピーク部の発熱量は約330.58cal/gとなって水蒸気爆発が生じ,また,流量増加率が毎秒18%の場合は,燃料棒のピーク部の発熱量は約536.37cal/gとなって破局的な水蒸気爆発が発生すること,(c)チェルノブイル事故の最大燃料エンタルピ(総発熱量)は300ないし40- 532 -0cal/gであるから,本件原子炉施設で再循環流量制御系の誤作動による過渡変化により,チェルノブイル事故と同等ないしそれを超える事態に至る危険があることから,再循環流量制御系の誤動作による暴走事故を想定していない本件安全審査には,看過し難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,上記aのとおり,控訴人らの上記主張内容は,本件安全審査において想定された事象を超える独自の不適切な暴走事故を想定することによって本件安全審査の不合理をいうものであるから,その主張自体失当というべきである。 のみならず,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らの主張に係る再循環流量制御系の誤動作は,本件安全審査においては,「再循環流量制御器誤作動-流量増加要求」として想定されて解析されていること,(b)過渡変化の解析に当たっては,評価結果を厳しくするため,原 係る再循環流量制御系の誤動作は,本件安全審査においては,「再循環流量制御器誤作動-流量増加要求」として想定されて解析されていること,(b)過渡変化の解析に当たっては,評価結果を厳しくするため,原子炉は自動流量制御範囲の下限で運転中であり,主制御器の誤作動により最大となる毎秒11%の流量増加率の増加要求信号が発生した場合であると仮定するなどの前提条件を設定したこと(乙3の10-26頁,(c)この過渡変化においては,炉)心流量の増加に伴いボイドが減少し,中性子束が増加して出力も増加するが,中性子束の増大により,中性子束高スクラム信号が発生して,原子炉はスクラムし,事象は収束すること(乙3の10-25ないし27頁,(d)本件安全審査における解析評価では,再循)環流量制御系の誤動作時においても,最小限界出力比は許容限界値を下回ることはなく,表面熱流束は定格値の約80%にとどまる上,原子炉圧力はわずかに上昇するにとどまり,原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力は,最高使用圧力を大きく下回るとされている- 533 -ことから,燃料被覆管及び原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性を保持するとの評価結果は妥当なものと判断されたこと(乙3の10-26及び27頁,乙4の39ないし41,44頁)が認められる。 そうすると,再循環流量制御系に関する本件安全審査の判断に不合理な点はなく,その過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ③タービン・トリップ発生時のスクラム遅れについて控訴人らは,aおよそどれほど緻密に設計した機器においても,具体的な設計過程,施工,保守管理を見通してなおかつ,わずか1秒程度の作動遅れが絶対にあり得ないなどという想定は非現実的であるので,タービン・トリップ発生時のスクラ ど緻密に設計した機器においても,具体的な設計過程,施工,保守管理を見通してなおかつ,わずか1秒程度の作動遅れが絶対にあり得ないなどという想定は非現実的であるので,タービン・トリップ発生時のスクラム遅れは1秒程度を想定すべきであること,b本件安全審査においては,タービン・トリップ発生時の1秒程度のスクラム遅れを全く想定していない上,これにより破局的な暴走事故に至ることを見逃していることから,本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,上記②aのとおり,本件安全審査においては,所要の安全保護設備が設置されていること及びその信頼性が確保されているか否かなどを確認するために,念のために更に運転時の異常な過渡変化解析に基づいて安全保護設備等の設計の総合的な妥当性が判断されるものである。そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,14,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査における過渡解析の目的は,安全保護系,原子炉停止系等の,主として異常影響緩和系に属する構築物,系統及び機器について,異常状態においても安全確保の観点から所定の機能を果たし得ることを確認することにあるので,スクラムが正常に作動することを前提と- 534 -してこれを行う必要があること,そして,スクラム遅れ時間の長さは,機器又は回路の応答においてその仕様上技術的に生じ得る所要時間を,基本設計の安全性にかかわる事項の審査の評価条件として合理的に仮定する必要があるが,タービン・トリップ時の安全保護系を構成する回路は,電気信号等を伝達するものであるから,安全保護系の回路全体の伝達に要する時間は,長くとも100分の1秒程度の単位の時間であることが認められる。 そうすると,控訴人らの主張する時間は,スクラム遅れ時間の性質に照 伝達するものであるから,安全保護系の回路全体の伝達に要する時間は,長くとも100分の1秒程度の単位の時間であることが認められる。 そうすると,控訴人らの主張する時間は,スクラム遅れ時間の性質に照らすと現実的ではなく,これを設計上見込む必要性はないというべきであるから,この点に関する本件安全審査の判断に不合理な点はなく,その過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 ④スクラム信号系について控訴人らは,a本件原子炉施設では,スクラム信号系の故障に対し,いわゆる1outof 2×2(ワン・アウトオブ・トゥ・トゥワィス)方式を採用しているので,同一のチャンネルに属する二つの検知器ないし検出回路が故障すれば,他の二つが健全であってもスクラム信号は出ないこと,また,トリップ・ブレーカーの固着により検知器が異常を検知してもスクラム信号がでない事態が生じ得ること,b本件安全審査においては,冷却材喪失事故と同時に外部電源喪失を想定するため事故と同時に原子炉が緊急停止することを前提としているが,実際の冷却材喪失事故の場合,破断と同時に緊急停止信号が出ることはなく,冷却材喪失事故に対応する緊急停止信号は「ドライウェル圧力高」と「原子炉水位低」であるところ,原子炉水位は事故後約30秒時点まで低下しないとされているので,下部プレナム水フラッシングの時点では「原子炉水位低」の信号は出ないから,この場合「ドライ- 535 -ウェル圧力高」信号以外には緊急停止信号はないこと,cこの「ドライウェル圧力高」信号の検知器4つのうち二つで不具合を生じれば,緊急停止せずに下部プレナム水フラッシングを迎え暴走事故に至る危険があり,また,検知器が健全でもトリップ・ブレーカーが固着した場合には,緊急停止せず,下部プレナム水フラッシングを迎え暴走事故に ,緊急停止せずに下部プレナム水フラッシングを迎え暴走事故に至る危険があり,また,検知器が健全でもトリップ・ブレーカーが固着した場合には,緊急停止せず,下部プレナム水フラッシングを迎え暴走事故に至る可能性があること,d本件補正に係る本件申請においては,冷却材喪失事故を解析するに当たり,再循環系配管完全破断時に「ドライウェル圧力高」の検知器ないしトリップ・ブレーカーの故障や制御棒駆動系の故障を想定した解析を行っていないこと等から,本件申請をそのまま容認した本件安全審査は,暴走事故に至る可能性を看過するとともに,現在の安全評価審査指針(甲33,乙94)のⅡ5. 2(6)にも反しているので不合理である旨主張する。 しかし,証拠(甲33,乙1ないし4,14,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件安全審査においては,本件原子炉施設の検知器及び検出回路に関する安全保護系は,一つのチャンネル中に2組の検知器及び検出回路が設けられるという多重性と,これらのうちいずれかの機器が故障した際に他の機器には影響を与えないという独立性を備えた高い信頼性を有する設計が要求され,これが確認されていること,b安全設計審査指針(乙14)においては,一つの機器の単一故障を超えて,工学的及び専門技術的に不合理な条件である同一チャンネル内の二つの検出器や検出回路の同時故障を考慮する必要はないとされていること(乙14の984ないし985頁)が認められるので,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 のみならず,上記前提となる事実と上掲証拠及び弁論の全趣旨によると,aチャンネル・トリップ,原子炉スクラムに関連する継電器の- 536 -接点の焼損又は溶着など「フェイル・セイフ」に反する方向の故障については,本件原子炉施設においては各継 弁論の全趣旨によると,aチャンネル・トリップ,原子炉スクラムに関連する継電器の- 536 -接点の焼損又は溶着など「フェイル・セイフ」に反する方向の故障については,本件原子炉施設においては各継電器の接点を流れる電流が当該継電器の許容する定格の50%以下になるように裕度を見込んで設計することによって,その発生を防止していること(乙2の8-8-16頁,b論理回路の継電器接点は,すべて直列につながれてい)るので,複数の継電器のうち1個でも非励磁の状態(回路の切断状態)になれば,その継電器が属している論理回路の主トリップ継電器の電源は喪失することになり,主トリップ継電器の接点は,各ソレノイド・グループ回路毎に二つずつ直列につないでいることから,仮に継電器接点が一つ故障した場合でも,スクラム動作を妨げないようにしていること(乙2の8-8-16頁,c単一故障を考慮しても,)主トリップ継電器の固着によりスクラム信号の発信に不都合が生ずる事態は想定できないこと,d電源の喪失,コイルの断線及び短絡又は配線の断線等の継電器の故障の大部分は,継電器自体を非励磁状態に戻し,チャンネル・トリップになるように働くので,このような回路構成は,大部分の故障条件に対して「フェイル・セイフ」となること(乙2の8-8-15ないし16頁,乙3の8-84ないし88,90,91頁,e緊急停止信号が発生する「原子炉水位低(レベル)3」はシュラウドより高い位置に設定されており,実際には配管破)断後に水位が「原子炉水位低(レベル3」に達して,原子炉水位低)による緊急停止信号が発生し,その後シュラウド外の水位が再循環ポンプ吸込口レベルまで達した時点で下部プレナム水フラッシングが発生すること(乙3の8-510頁)が認められる。 そうすると,スクラム信号系に関する本件安 号が発生し,その後シュラウド外の水位が再循環ポンプ吸込口レベルまで達した時点で下部プレナム水フラッシングが発生すること(乙3の8-510頁)が認められる。 そうすると,スクラム信号系に関する本件安全審査の判断に不合理な点はなく,その過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 - 537 -(エ)ECCSについて①ECCS安全評価指針の適合性の有無についてa控訴人らは,本件安全審査においては,燃料被覆管が中性子照射,酸化,応力腐食等によって劣化しているにもかかわらず,劣化を想定しない健全な燃料棒に基づいて無意味な事故解析を行っているので,ECCS安全評価指針(乙11)に適合しない旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の五4(二) 。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,11,14,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,ECCSとは,配管等の破断による原子炉冷却材喪失時に,燃料被覆管の重大な損傷を防止するに十分な量の冷却水を炉心に注入し,その冷却可能な形状を維持しつつ,炉心を冷却し,もって放射性核分裂生成物の周辺への放出を抑制するよう設計された設備をいうと認められるところ,上記(3)イ(ア)④b(a)のとおり,本件安全審査においては,燃料被覆管温度が最も高くなるのは再循環配管の完全破断の場合であり,燃料被覆管最高温度は約886℃であって,燃料被覆管の酸化層の厚みの最大値は約0.3%と微小であるので,冷却中に燃料被覆管の延性が失われることはなく,また,破裂の発生する燃料棒はなく,水とジルコニウム反応割合は,全燃料被覆管のジルコニウムの約0.04%であり,格納容器の健全性は確保され,中性子照射後の燃料被覆管に関する破裂実験の結果によってもなお十分に余裕があることが確認 く,水とジルコニウム反応割合は,全燃料被覆管のジルコニウムの約0.04%であり,格納容器の健全性は確保され,中性子照射後の燃料被覆管に関する破裂実験の結果によってもなお十分に余裕があることが確認されているので,燃料被覆管が中性子照射等によって劣化することを想定して解析する必要はないというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 bまた,控訴人らは,本件原子炉施設について,冷却材喪失事故時に温度上昇の結果生ずる燃料被覆管の膨れによる流路閉鎖及び破裂- 538 -について何ら実証的な検討が行われていないので,ECCS安全評価指針に適合しない旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の五4(二) 。 )しかし,証拠(乙1ないし4,11,14,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,燃料被覆管が膨れたり,破裂したりすることがないことが解析等により確認されていること(乙2の10-3-38,39,81頁,乙3の10-4頁,乙4の47頁)が認められるから,本件安全審査における燃料棒の健全性に関する判断の過程に看過し難い過誤,欠落があることは認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 cさらに,控訴人らは,日本原子力研究所が燃料被覆管の内面酸化は外面酸化より4倍多く進行するとの報告をしているので,本件安全審査においては,燃料被覆管の最高温度及び水とジルコニウムの反応量にいずれも重大な影響を与える燃料被覆管の内面酸化を過少評価している点において,本件原子炉のECCSはECCS安全評価指針に適合しない旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の五4(二) 。 )しかし,本件全証拠によっても,日本原子力研究所の報告において,内面酸化と外面酸化との酸化量の比較を示す結 全評価指針に適合しない旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の五4(二) 。 )しかし,本件全証拠によっても,日本原子力研究所の報告において,内面酸化と外面酸化との酸化量の比較を示す結果が得られていることを認定することはできない。 むしろ,上記(3)イ(ア)④b(a)(b)のとおり,燃料被覆管は,LOCA時においても破裂することなく,仮に燃料被覆管に破裂が生じた場合でも,燃料被覆管の全酸化量の計算値は,ECCS安全評価指針の基準(2)(酸化前の燃料被覆管の厚さの15%以下でなければならない)を充足するものであり,そして,証拠(乙8。 - 539 -6)によれば,日本原子力研究所が,昭和58年に実施した実験の結果,燃料被覆管の内面酸化と外面酸化を合わせた全酸化量の計算値が酸化前の燃料被覆管の厚さの15%以下でなければならないとするECCS安全評価指針の基準値が安全側に設定されたものであると確認されたことが認められる。 そうすると,本件原子炉施設のECCSは,ECCS安全評価指針に適合しているというべきであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 ②ECCSの有効性の有無について控訴人らは,a米国アイダホ州の国立原子炉試験所において,1971年(昭和46年)に加圧水型原子炉におけるECCSのセミスケール実験により,ECCSが設計どおりに機能を発揮しないことが判明していること,b我が国においても,昭和49年からECCSに関する実験が開始されているものの,その設計どおりの性能が実証されていないことから,この点を看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の五2。 )しかし,証拠(乙19,56の①ないし③,85の①②,89の①②)及び弁論の全趣旨によると,a米国アイダホ州の国立原子炉試験 には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の五2。 )しかし,証拠(乙19,56の①ないし③,85の①②,89の①②)及び弁論の全趣旨によると,a米国アイダホ州の国立原子炉試験所で行われた加圧水型原子炉におけるECCSのセミスケール実験は,いわゆるロフト計画の一連の実験の初期において,本件原子炉のような実用発電用原子炉とは規模,内容を異にする簡単な模型実験装置における実験であるので,その実験結果を実用発電用原子炉である本件原子炉にあてはめることはできないこと(乙19の134頁,138頁,b実用発電用原子炉により近い小型原子炉を用いたロフト計画)の実験においては,ECCSにより有効に原子炉内に注水が行われ,燃料被覆管の最高温度が計算による予測値よりも低い温度にとどまる- 540 -との実験結果が得られていること(乙89の①②,c沸騰水型原子)炉においても,実用発電用原子炉に近い形に模擬した総合システム実験において,ECCSによって有効に原子炉内に注水がなされ,燃料被覆管の最高温度が計算による予測値よりも低い温度にとどまるとの実験結果が得られていること(乙85の①②,d美浜原発2号機に)おいて平成3年2月9日に発生した蒸気発生器伝熱管損傷事象については,後記(ケ)③のとおり,ECCSが設計どおりに作動し,炉心の冠水は維持され炉心の健全性に影響はなかったこと(乙56の①ないし③)が認められる。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,19,56の①ないし③,85の①②,89の①②,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉のECCSの性能を評価するに当たっては,解析モデルを用いて設備等の性能評価を行う方法がとられたこと,b原子炉施設については,実際に異常を発生させて実験する )及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉のECCSの性能を評価するに当たっては,解析モデルを用いて設備等の性能評価を行う方法がとられたこと,b原子炉施設については,実際に異常を発生させて実験することができないことから,このような方法が有効,かつ合理的なものとされていること,cECCSの性能評価解析に用いられたモデルは,実験によって十分な確証が得られている部分については,その結果を踏まえ,また,いまだ実験によって十分な確証が得られていない部分については,十分厳しい条件を設定し,全体としては,安全上厳しい結果となるように作成されたものであること,d実際のECCSの性能評価においては,更に厳しい条件を設定した安全側の評価が行われたこと,e本件安全審査においては,本件原子炉のECCSが確実に所期の機能を発揮し得るものと判断されたことが認められるから,ECCSの有効性に関する本件安全審査に不合理な点はないというべきであるので,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 - 541 -③ECCSの不作動,故障等の有無について控訴人らは,ECCSは,弁,ポンプの故障,配管のひび割れ,非常用電源としてのディーゼル発電機の不作動,計測制御系の故障等によって作動しない可能性があり,しかも,過去には必要なときにECCSが正しく機能しなかった実例があるので,この点を看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の五3。 )しかし,控訴人らの主張するECCSの弁,ポンプの故障等による不作動,故障等については,原子炉設置許可の際の安全審査の対象ではなく,その後続の詳細設計及び運転管理にかかわる事項であるから,控訴人らの上記主張は失当である。 のみならず,上記②のとおり,ECCSの有効性について ついては,原子炉設置許可の際の安全審査の対象ではなく,その後続の詳細設計及び運転管理にかかわる事項であるから,控訴人らの上記主張は失当である。 のみならず,上記②のとおり,ECCSの有効性については実証されていることが認められる。そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,aECCSは,弁,ポンプ,配管,非常用のディーゼル発電機,計測制御装置等によって構成され,ECCS起動信号が発せられると,ポンプが自動的に起動して水源であるサプレッション・プール等の水を炉心に注水するという構造・動作上単純な設備であること,bこのために,製造時には厳重な品質管理の下に製造されること,cECCSは,種々の故障を想定し,多重性を有するように設計されるとともに,定期的な試験,検査を実施できるように設計されていること,d本件安全審査においては,上記①のとおり,本件原子炉施設のECCSについては,ECCS安全評価指針に適合し,これが確実に所期の機能を発揮し得るものと判断されたことが認められる。 したがって,ECCSに関する本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記- 542 -主張は失当である。 ④非常用炉心冷却系の流量を定格流量とする合理性の有無について控訴人らは,本件安全審査においては,緊急炉心冷却系のうち故障を想定するもの以外はすべて定格流量の冷却水を注入できるという前提で解析しているが,実際の緊急炉心冷却系の作動例では,美浜原発2号機の平成3年2月9日の蒸気発生器伝熱管損傷事象で高圧系の流入量が想定以下であった指摘があるほか,福島第一原発2号機の平成4年9月29日の全給水流量喪失事故では高圧注水系が定期的にほとんど注入されない状態とな 2月9日の蒸気発生器伝熱管損傷事象で高圧系の流入量が想定以下であった指摘があるほか,福島第一原発2号機の平成4年9月29日の全給水流量喪失事故では高圧注水系が定期的にほとんど注入されない状態となるように,緊急炉心冷却系が定格流量どおりに注水することを想定するのは現実的ではないことから,非常用炉心冷却系の流量を定格流量を前提にした本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,11,14,56の①ないし③,94,135,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件安全審査においては,(a)想定される配管破断等による原子炉冷却材喪失に対して,燃料及び燃料被覆管の重大な損傷を防止でき,かつ,燃料被覆管の金属と水との反応を十分小さな量に制限できる設計であること,(b)非常用所内電源系のみの運転下で単一故障を仮定しても,系統の安全機能が達成できるように,独立性を有する設計であること,及び(c)定期的に試験及び検査ができるとともに,その健全性及び多重性の維持を確認するため,独立に各系の試験及び検査ができる設計であることが確認された結果,本件原子炉施設のECCSは,確実に所期の機能を発揮し,信頼性が確保されるものと判断されていること(乙3の8-100ないし101頁,乙4の32ないし33頁,b美浜原発2号機の事象について)は,後記(ケ)③のとおり,再現解析の結果によって,ECCSは設計- 543 -どおりに作動し,炉心の冠水は維持され,炉心の健全性に影響はなかったことが確認され,また,燃料集合体シッピング検査の結果からも,燃料集合体に異常は認められていないことから,同事象においてはECCSが十分な流量確保の機能を発揮したこと(乙56の①ないし③,c上記福島第一原発2号機の事象について 体シッピング検査の結果からも,燃料集合体に異常は認められていないことから,同事象においてはECCSが十分な流量確保の機能を発揮したこと(乙56の①ないし③,c上記福島第一原発2号機の事象については,ECCSの高圧)炉心注入系の作動に際して,定格流量が確保されてECCSが期待どおりに作動していること(乙135)が認められる。 したがって,非常用炉心冷却系の流量を定格流量を前提にした本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ⑤高圧炉心スプレイ系の故障の有無について控訴人らは,a本件安全審査においては,高圧炉心スプレイ系の故障につき高圧炉心スプレイ系に電源を供給する非常用ディーゼル発電機の故障においているにとどまること,b日本原子力発電東海第二原子力発電所において平成11年5月に定期検査中に低圧炉心スプレイ系注入弁の弁棒の破断が発見されたが,注入弁の故障は定期検査まで分からず,このような故障が高圧炉心スプレイ系で起こった場合,高圧炉心スプレイ系は1系統しかなく,注入弁も一つだけであるから,注入弁が開放不能となれば,高圧炉心スプレイ系が全く機能しないおそれがあったこと,cこのため,高圧炉心スプレイ系の故障による中小破断LOCAを想定して安全審査をすべきであることから,現実的ではない高圧炉心スプレイ系の故障を前提にした本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,高圧炉心スプレイ系に給電するディーゼル発電機の故障を想定し- 544 -ているが,この想定については,高圧炉心スプレイ系が全く機能しない事態も含めて性能解析が行われていること(乙2の1 いては,高圧炉心スプレイ系に給電するディーゼル発電機の故障を想定し- 544 -ているが,この想定については,高圧炉心スプレイ系が全く機能しない事態も含めて性能解析が行われていること(乙2の10-3-19頁)が認められるから,控訴人らの主張はその前提を欠くものであり失当である。 ⑥自動減圧系の不作動の可能性の有無について控訴人らは,a敦賀2号機において平成11年7月12日に発生した冷却材漏洩事象については,現在の原子力発電所の設計において行われている疲労解析のレベルがなお低いことが明らかとなっているので,少なくとも,再生熱交換器のような熱疲労が厳しい配管の疲労解析が十分でないことを想定しなければならないこと,b本件原子炉においては,冷却材浄化系と残留熱除去系の再生熱交換器は格納容器の外側にあるため,これらの配管から冷却材が漏洩した場合,冷却材は格納容器(ドライウェル)内には流出しないから,ドライウェル圧力は上昇せず,原子炉水位低とドライウェル圧力高の両方の信号が出て初めて起動する自動減圧系は永久に作動しないこと,cそこで,再生熱交換器の配管の貫通亀裂から小破断LOCAとなり,長期間にわたり漏洩が続き(結局冷却材が喪失し)その間自動減圧系が作動しないという事態があり得ることを想定すべきであることから,自動減圧系の不作動の可能性を前提にしなかった本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,控訴人らの主張に係る再生熱交換器の具体的詳細な構造は,機器の詳細設計ないし施工管理の段階に属する事項であるところ,上,記1(2)のとおり,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項は専ら当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項のみを規制の対象とするのであって,後続の工事計画の認可の段階で規制の対象とされている当該原子炉の具体的な 炉設置許可に際しての安全審査の対象事項は専ら当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項のみを規制の対象とするのであって,後続の工事計画の認可の段階で規制の対象とされている当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法は安全審査- 545 -の対象外の事象であるから,控訴人らの上記主張は失当である。 のみならず,証拠(乙1ないし4,11,14,107)及び弁論の全趣旨によると,上記敦賀2号機の冷却材漏洩事象は,その流出量が通常運転時に使用される補給水系で補給できる範囲であり,ECCSの作動が必要となるほどの漏洩ではないので,中小破断LOCA(冷却材喪失事故)ではなく,事故解析で想定すべき冷却材喪失事故には当たらないこと,敦賀2号機は,加圧式軽水炉(PWR)であり,敦賀2号機の同事象は内筒付き再生熱交換器の連絡配管において発生したところ,沸騰水型原子炉(BWR)である本件原子炉施設にはこのような設備は存在しないことが認められる。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠くので失当である。 ⑦低圧炉心注入系の注入量減少の有無について控訴人らは,a中小破断LOCAにおいて完全に作動することが期待されている低圧注水系は,残留熱除去系の一つのモードであり,低圧注水系として作動する場合にも残留熱除去系の配管を経由して,一部は残留熱除去系の熱交換器を経由して炉心に注水するのであるから,残留熱除去系の再生熱交換器の配管の損傷が発生した場合,ECCSの一つである低圧注水系の冷却材注入量は減少すること,b同様に,熱交換器部分に限らず残留熱除去系の配管の一部が応力腐食割れ等により破断した場合も同じであることから,低圧炉心注入系の注入量減少を前提にしなかった本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,証拠(乙1ないし4,11,14)及び弁論の全趣 部が応力腐食割れ等により破断した場合も同じであることから,低圧炉心注入系の注入量減少を前提にしなかった本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,証拠(乙1ないし4,11,14)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査において,控訴人ら主張に係る中小破断事故解析においては,単一故障として,炉心冷却の観点から最も影響の大きい高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機の故障を仮定すれば足りるのであって,より影響が少ない低圧注水系には故障を仮定する必要がない- 546 -こと(乙2の10-3-19頁)が認められる。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ⑧非常用ディーゼル発電機の冷却水漏洩事象について控訴人らは,本件原子炉施設において昭和62年8月17日に非常用ディーゼル発電機A号機ディーゼル機関からの冷却水の漏洩が発生したが,現実に非常用ディーゼル発電機の不作動につながりかねない欠陥に関する設計は,本来安全審査で審査されるべきであったので,本件安全審査には欠落がある旨主張する。 しかし,証拠(甲348,乙1ないし4,11,14)及び弁論の全趣旨によると,a本件安全審査においては,非常用ディーゼル発電機を含む非常用電源設備について,外部電源喪失と機器の単一故障を仮定しても,安全上重要かつ必須の設備が所定の機能を果たすための十分な電力を供給できる能力を有することが確認されていること(乙4の33頁,b本件原子炉施設における上記冷却水の漏洩事象は,)ディーゼル機関のシリンダーヘッド製造時のキリ穴加工における作業ミスにより,排気弁ポート肉厚が一部非常に薄くなっており,これが冷却水による腐食及びディーゼル機関起動時の水圧によりクラックに進展し,冷却水の漏洩に至ったものと推定されたこと(甲348)が認められる。 そうすると,本件原子炉施設に 非常に薄くなっており,これが冷却水による腐食及びディーゼル機関起動時の水圧によりクラックに進展し,冷却水の漏洩に至ったものと推定されたこと(甲348)が認められる。 そうすると,本件原子炉施設における上記冷却水の漏洩事象は,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項ではなく,後続の工事計画の認可の段階で規制の対象とされている施工管理に属する事項であるから,本件安全審査の合理性を左右するものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 (オ)計測制御システムの欠陥の有無について- 547 -控訴人らは,米国及び我が国において計測制御システムの故障例が発生しているので,原子炉における各種制御システムは未完成の技術分野であり,信頼性も欠如しているから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の六。 )しかし,上記前提となる事実及び証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,①燃料被覆管及び圧力バウンダリの各健全性に影響を及ぼすおそれのある原子炉出力制御設備,安全保護設備等の制御装置については,十分な性能,強度等を有するように設計されたこと,及び②異常の発生を早期,かつ確実に検知するため,本件原子炉施設については,燃料被覆管の損傷を検知するために冷却材中の放射能レベルを測定監視する計測装置,圧力バウンダリを構成する機器等からの冷却材の漏洩を検知する漏洩監視装置,原子炉の出力や原子炉冷却系統設備等の圧力,温度,流量等を測定監視する計測装置が設けられ,異常の発生を検知した場合には,原子炉の停止等の所要の措置がとれるよう,直ちに警報を発する警報装置等が設けられていること等が確認された結果,これらの計測制御システムに十分な信頼 計測装置が設けられ,異常の発生を検知した場合には,原子炉の停止等の所要の措置がとれるよう,直ちに警報を発する警報装置等が設けられていること等が確認された結果,これらの計測制御システムに十分な信頼性があり,本件原子炉は安定して運転し得るものと判断されたことが認められる。 そうすると,計測制御システムに関する本件安全審査は合理性があるというべきであるから,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 (カ)格納容器の健全性の有無について①事故解析について控訴人らは,ECCSが不作動に陥る可能性が十分考えられるにもかかわらず,ECCS等の安全防護設備が絶対的に機能し,炉心溶融はあり得ないという前提で行われた本件安全審査の事故解析は不合理- 548 -であり,このような事故解析を前提として行われた格納容器の健全性についての判断も不合理である旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の七1。 )しかし,上記(エ)③のとおり,控訴人らの主張するECCSの不作動については,原子炉設置許可の際の安全審査の対象ではなく,その後続の詳細設計及び運転管理にかかわる事項であるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているというべきである。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,11,14,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,a安全設計審査指針(乙14)においては,格納容器バウンダリの用語の定義として「冷却材喪失事故時に圧力障壁となり,かつ,放射性物質の,放散に対する障壁を形成するように設計された範囲の施設をいう」。 と定め,その機能として,想定される配管破断による冷却材喪失事故に際して,事故後に想定される最大エネルギー放出によって生じる圧力と温度に耐え,かつ,出入口及び貫通部を含めて所定の の施設をいう」。 と定め,その機能として,想定される配管破断による冷却材喪失事故に際して,事故後に想定される最大エネルギー放出によって生じる圧力と温度に耐え,かつ,出入口及び貫通部を含めて所定の漏洩率を超えることがないように働くものとされ,また,平常運転時,運転時の異常な過渡変化時,保修時,試験時及び事故時において,脆化的挙動を示さず,かつ,急速な伝播型破断を生じない設計であることを要求していること,そして,b本件安全審査においては,安全設計審査指針等にのっとり,本件原子炉に設置される安全防護設備がいずれも確実に所期の機能を発揮し得るものと判断したことが認められるから,事故解析に関する本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 ②隔離弁について控訴人らは,格納容器の隔離弁がしばしば故障しているほか,事故時にECCS等を使用した場合にはそれらの配管類が閉ざされないの- 549 -で,格納容器における隔離機能は十分ではないから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の七2。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,11,14,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,a格納容器を貫通する配管には,格納容器の内外若しくは外側に隔離弁が設けられ,これらの隔離弁は十分な余裕をもった設計とされていること,bこれらの隔離弁は,いずれも隔離信号により自動的に閉鎖するばかりでなく,中央制御室からの遠隔手動操作によっても閉鎖することができるようになっていること,cそのうち,配管に2個の隔離弁を設けている場合には,その2個の隔離弁はそれぞれ独立した電源によりこれを駆動することができること,d本件原子炉の運転開始後においても,定期 きるようになっていること,cそのうち,配管に2個の隔離弁を設けている場合には,その2個の隔離弁はそれぞれ独立した電源によりこれを駆動することができること,d本件原子炉の運転開始後においても,定期的に隔離弁の機能を確認するための試験が実施できる構造となっていること(乙2の8-5-7,15頁,乙3の8-112ないし114,225,469ないし471頁,乙4の11,33頁)から,格納容器の隔離弁が十分な信頼性を有すると判断されたことが認められる。 そうすると,隔離弁に関する本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認められないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ③制御棒不挿入事故について控訴人らは,主蒸気の隔離時には多量の蒸気がサプレッション・チェンバに流入するが,この際の衝撃が格納容器に大きな力を加え,圧力容器を動かす可能性があり,そうなれば制御棒不挿入事故も起こる可能性があるので,格納容器が安全とはいえないから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の- 550 -七3。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,11,14,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,圧力容器は,圧力容器ペデスタル(基礎台)によってその全重量が支持されていること,このため,圧力容器は,格納容器の変位を直接受けるような構造となっていないこと(乙2の8-4-4頁)が認められる。 したがって,蒸気がサプレッション・チェンバに流入する際の衝撃が制御棒の挿入性に影響を与えることはないというべきであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 ④格納容器の容積について控訴人らは,沸騰水型原子炉の格納容器は加圧水型原子炉の格納容器と比べ,容積が小さいので,水素爆発等に対して極めて弱いから きであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 ④格納容器の容積について控訴人らは,沸騰水型原子炉の格納容器は加圧水型原子炉の格納容器と比べ,容積が小さいので,水素爆発等に対して極めて弱いから,沸騰水型原子炉である本件原子炉に係る本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の七4。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,a沸騰水型原子炉の場合には,加圧水型原子炉の場合と異なり,格納容器内に放出された蒸気を,格納容器の下部にあるサプレッション・プールの水によって凝縮復水させることによって,格納容器内の圧力の上昇を抑制できること,b本件原子炉施設には,通常運転中,格納容器内の酸素濃度を低く保つため,格納容器内の空気をあらかじめ窒素ガスで置換する不活性ガス系及び可燃性ガス濃度制御系がそれぞれ設置され,冷却材喪失事故時の水素及び酸素の発生を考慮しても,,格納容器内の水素及び酸素濃度は,十分燃焼限界(水素濃度4vol%又は酸素濃度5vol%)以下に抑えることができること(乙2の8-5-9頁,乙3の8-109頁,乙4の34頁)が確認され,本件原- 551 -子炉の格納容器の健全性が維持されると判断されたことが認められる。 したがって,格納容器に関する本件安全審査は合理性があるというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 (キ)ポンプ,弁等の健全性について①ポンプ,弁等の健全性の欠如の有無について控訴人らは,我が国においては,昭和46年1月から昭和56年3月までの間に,多数のポンプ,弁の故障例があるので,本件原子炉において使用されているポンプ,弁の健全性が欠如しているから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張 においては,昭和46年1月から昭和56年3月までの間に,多数のポンプ,弁の故障例があるので,本件原子炉において使用されているポンプ,弁の健全性が欠如しているから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の八。 )しかし,上記(エ)③のとおり,控訴人らの主張するECCSの弁,ポンプの故障等による不作動,故障等については,原子炉設置許可の際の安全審査の対象ではないというべきである。そして,上記1(2)のとおり,控訴人らの主張するポンプ,弁に関する故障例の防止対策に関する事項については,原子炉設置許可後の段階にある詳細設計や具体的な工事方法及び運転管理における安全規制によって実現されるべきものであるから,控訴人らの上記主張は失当というべきである。 のみならず,上記(エ)③のとおり,ポンプ,弁を重要な要素とする本件原子炉のECCSが所期の機能を発揮し得るものとした本件安全審査の判断は合理性があるというべきである。さらに,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,11,14,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,a主蒸気系の安全弁については,構造が簡単で信頼が高く,開閉動作について電源を一切必要としないバネ式のものが使用されていること,b復水ポンプは,低圧復水ポンプ,高圧復水ポンプがそれぞれ3台設置され,各1台が予備ポンプとされていること,c原子炉給水ポンプは,- 552 -常用の2台のポンプのほかに2台の予備ポンプが設けられていること,d原子炉冷却材浄化系,残留熱除去系及び原子炉隔離時冷却材を構成するポンプは,定期的に検査されて健全性が確認されることから,本件原子炉において使用されるポンプ,弁の健全性が維持されると判断されたことが認められる。 そうすると,ポンプ, 原子炉隔離時冷却材を構成するポンプは,定期的に検査されて健全性が確認されることから,本件原子炉において使用されるポンプ,弁の健全性が維持されると判断されたことが認められる。 そうすると,ポンプ,弁等の健全性に関係する本件安全審査の判断には不合理な点はないというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 ②原子炉再循環ポンプメカニカルシールの不具合について控訴人らは,a本件原子炉施設において,平成4年12月18日,再循環ポンプ(B)メカニカルシールの不具合に伴う原子炉手動停止が行われ,再循環ポンプの不安定な作動事象が発生したこと,bこの再循環ポンプは,炉心の最重要機器であり,ここでの故障は循環している冷却材(軽水)の温度管理,ひいては原子炉内の核分裂そのものを左右しかねないこと,c上記メカニカルシールを構成するリングの一部にひび割れが発生していたが,このリングの材質はチタンカーバイトであって「微細な異物」にさえ結果として耐えられない材質であったことから,このような材質で運転継続を前提にした再循環ポンプの審査を怠った本件安全審査は不合理である旨主張する。 しかし,証拠(甲349,355,乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉施設の上記再循環ポンプの不安定な作動事象は,原子炉再循環ポンプのメカニカルシール部の圧力が変動したため,状況を監視しながら運転を継続し,その後シール機能低下の兆しがみられたため当該メカニカルシールを交換したこと,bその機能低下の原因は,微細な異物がシール部に入り込んだものと推定されたこと,c当該事象は,国際原子力事象評価尺度では,0レベルのなかで- 553 -も特に安全に影響を与えない事象0-(マイナス)レベルに分類されること(甲355の36頁)が認められる。 したがって,本件原子炉施設の は,国際原子力事象評価尺度では,0レベルのなかで- 553 -も特に安全に影響を与えない事象0-(マイナス)レベルに分類されること(甲355の36頁)が認められる。 したがって,本件原子炉施設の上記再循環ポンプの不安定な作動事象は,運転管理に起因する事項であって,本件原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項ではないから,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではないというべきである。 ③タービン駆動原子炉給水ポンプ(A)出口逆止弁からの漏洩について控訴人らは,a本件原子炉施設において,平成9年8月19日,タービン駆動原子炉給水ポンプ(A)の出口逆止弁からの漏洩が発生し,給水ポンプからの水漏れが生じて出力制限が行われたこと,bこの対策として,ガスケットリングを新品にし,再組立するとともに,セット位置についての記録管理を行うよう施工要領書を改訂したことから,本件安全審査は,給水ポンプの審査を見落としているので,不合理である旨主張する。 しかし,証拠(甲350,355,乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉施設の上記給水ポンプからの水漏れ事象は,弁の分解点検の際における組立作業の不良に起因するものであること,b当該事象は,国際原子力事象評価尺度では,0レベルのなかの安全に影響を与えない事象0-(マイナス)レベルに分類されること(甲355の41頁)が認められる。 したがって,本件原子炉施設の上記給水ポンプからの水漏れ事象は,運転管理に起因する事項であって,本件原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項ではないから,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではないというべきである。 ④本件原子力発電所における本件原子炉施設以外のポンプに関する故- 554 -障について控訴人らは,本件原子力発電所における本件原子炉施設 の合理性を何ら左右するものではないというべきである。 ④本件原子力発電所における本件原子炉施設以外のポンプに関する故- 554 -障について控訴人らは,本件原子力発電所における本件原子炉施設以外の原子炉施設で発生したポンプに関する不具合として,a本件原子力発電所6号機において,平成8年2月23日,再循環ポンプトリップによる手動停止が行われたこと,b同3号機において,平成10年4月5日,再循環ポンプトリップによる手動停止が行われたこと,c同7号機において,平成11年7月28日,再循環ポンプ1台停止による手動停止が行われたことがあるので,ポンプに関する本件安全審査には欠落がある旨主張する。 しかし,証拠(甲355,乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らの主張に係る上記ポンプに関する不具合の各事象は,いずれも施工管理や部品の製造管理に起因するものであるのみならず,本件原子力発電所3号機,6号機及び7号機に関するものであって,本件原子炉に関係しないものであることが認められるから,これらについては,本件訴訟の審理対象である本件原子炉施設の基本設計の安全性にかかわるものでないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 (ク)本件原子力発電所における異常事象等と本件安全審査について①控訴人らが主張する昭和60年5月31日の復水器の配管漏洩事象については,上記(イ)③cのとおりである。 ②同昭和62年8月17日の非常用ディーゼル発電機の冷却水漏洩事象については,上記(エ)⑧のとおりである。 ③同平成4年12月18日の再循環ポンプの不安定な作動事象については,上記(キ)②のとおりである。 ④同平成9年8月19日の給水ポンプからの水漏れ事象については,- 555 -上記(キ)③のとお 同平成4年12月18日の再循環ポンプの不安定な作動事象については,上記(キ)②のとおりである。 ④同平成9年8月19日の給水ポンプからの水漏れ事象については,- 555 -上記(キ)③のとおりである。 ⑤同平成10年1月16日の燃料棒の破損事象については,上記(ア)③b(a)のとおりである。 ⑥同月30日の燃料棒スペーサのはずれ事象については,上記(ア)③b(c)のとおりである。 ⑦ところで,控訴人らは,本件原子炉施設において,平成10年10月8日,原子炉格納容器内LCW(低電導度廃液)サンプからのオーバーフローによる圧力容器弁の全閉となる事象が発生したので,本件安全審査には重大な欠陥がある旨主張する。 しかし,証拠(甲353,355,乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉施設の上記事象は,定期検査中,原子炉開放点検の準備において,主蒸気配管及び原子炉圧力容器の水張り作業中に閉じるべき弁を閉じなかったために,当該弁を通って主蒸気配管内の水が,原子炉格納容器内LCW(低電導度廃液)サンプに流入し,同サンプから床にあふれ出たものであること,b当該事象の原因は,操作員の作業の引き継ぎが不適切であったことにあること,c当該事象は,国際原子力事象評価尺度では,0レベルのなかの安全に影響を与えない事象0-(マイナス)レベルに分類されること(甲355の44頁)が認められる。 したがって,本件原子炉施設の上記事象は,運転管理にかかわる事項であって,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項ではないから,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではないというべきである。 ⑧また,控訴人らは,本件原子炉施設において,平成11年9月2日,復水器真空度低下に伴う出力制限となる事象が発生したので,本件安全審査には重大な欠陥がある旨主 するものではないというべきである。 ⑧また,控訴人らは,本件原子炉施設において,平成11年9月2日,復水器真空度低下に伴う出力制限となる事象が発生したので,本件安全審査には重大な欠陥がある旨主張する。 - 556 -しかし,証拠(甲354,355,乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉施設の上記事象は,電源系の過電流を検知する変流器の一つに異常が発生したため,気体廃棄物処理系の弁操作を行う制御盤に給電している非常用電源盤の受電遮断機が作動し,これにより弁が閉じたことから,復水器内のガス抽出が行われなくなり,復水器の真空度が低下したものであること,b当該事象の原因は,変流器の巻線に製造段階で傷が発生したことにあると推定されること,c当該事象は,国際原子力事象評価尺度では,0レベルのなかの安全に影響を与え得る事象0+(プラス)に分類されること(甲355の45頁)が認められる。 したがって,本件原子炉施設の上記事象は,原子炉設置許可処分後の工事計画の認可の段階で規制の対象とされている施工管理及び部品の製造管理に属する事項であって,原子炉設置許可の際の安全審査の対象ではないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ⑨さらに,控訴人らは,a平成3年2月21日に本件原子力発電所2号機におけるタービンの自動停止と原子炉の自動停止,b平成4年5月27日に同2号機における復水器真空度低下による手動停止,c平成7年1月5日の同4号機におけるタービン発電機停止と原子炉自動停止,d同年7月13日の同5号機におけるタービン制御油漏洩による手動停止,e平成8年2月23日の同6号機における再循環ポンプトリップによる手動停止,f同年8月24日の同6号機における燃料集合体からの漏洩による手動停止,g平成10年4月5日の同3号機における再循環ポン ,e平成8年2月23日の同6号機における再循環ポンプトリップによる手動停止,f同年8月24日の同6号機における燃料集合体からの漏洩による手動停止,g平成10年4月5日の同3号機における再循環ポンプトリップによる手動停止,h同年8月29日の同6号機における継電器動作による自動停止,i平成11年3月31日の同7号機における燃料集合体からの漏洩による手動停止,j同年5月25日の同6号機における発電機励磁装置故障による自動停止,- 557 -k同年7月28日の同7号機における再循環ポンプ1台停止による手動停止が発生しているとして,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかしながら,控訴人らの主張に係る本件原子力発電所における本件原子炉以外の上記各事象は,いずれも本件原子炉施設に関係するものではないので,本件訴訟の審理の対象となる原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項ではないというべきであるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 (ケ)我が国における本件原発以外の原子力発電所の異常事象例等と本件安全審査について①敦賀原発1号機における事象例等a給水加熱器からの冷却材漏出事象控訴人らは,敦賀原発1号機における給水加熱器からの冷却材漏出事象に照らすと,設計で採用されている機器や設備が技術的に信頼性を有するか否か,あるいは現実にその機器や設備が設計どおりに機能するかどうかについても確認する必要があるから,これを看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の九1(一)(1) 。 )そして,敦賀原発1号機(沸騰水型原子炉)において,昭和56年1月10日,その冷却材系B系列第4給水加熱器胴体部分の溶接部分に生じたひび割れから放射性物質が漏洩したこと,このため,同月14日,漏洩 そして,敦賀原発1号機(沸騰水型原子炉)において,昭和56年1月10日,その冷却材系B系列第4給水加熱器胴体部分の溶接部分に生じたひび割れから放射性物質が漏洩したこと,このため,同月14日,漏洩箇所のひび割れ部分に当て板を溶接して補修し,次いで同月24日,再度,上記漏洩箇所から放射性物質の漏洩があったので,補修をしたことは,いずれも当事者間に争いがない。 しかし,上記争いのない事実と証拠(乙39ないし42)及び弁論の全趣旨によると,(a)敦賀原発1号機において,昭和56年1- 558 -月10日午後7時30分から同日午後8時30分ころの運転員の巡視の際,B系統第4給水加熱器の胴体部分下部からドレン水(給水を加熱した蒸気が凝縮する等により胴体内下部にたまった温水で,復水器に戻されるもの)が数秒間に1滴程度漏洩しているのが発。 見されたこと,(b)この小漏洩の原因は,胴体部分の最終溶接線近傍に発生したひび割れによるものであることが確認され,同月14日18時から翌15日1時30分ころにかけ,応急の補修作業として,漏洩箇所に当て板を溶接する作業が実施されたこと,(c)更に同月24日午後3時から同日午後4時ころの運転員の巡視の際に,上記漏洩箇所付近から同程度の漏洩が発見されたこと,(d)同漏洩の原因は,当て板溶接部の近傍に発生した新たなひび割れによるものであることが確認され,同月28日15時から17時ころにかけて,応急の補修作業としてコーキング(平たがねと金槌によりひび割れ周辺部を叩き,ひび割れを圧縮することにより漏れ止めを行うこと)が実施されたこと,(e)その後,上記漏洩の原因は,給水加熱器胴体部分溶接部が2度にわたり溶接されたことから,2度目の溶接に際し,その溶接部に1度目の溶接部との関係において胴体内面に応力集中を生じやすい切欠 たこと,(e)その後,上記漏洩の原因は,給水加熱器胴体部分溶接部が2度にわたり溶接されたことから,2度目の溶接に際し,その溶接部に1度目の溶接部との関係において胴体内面に応力集中を生じやすい切欠き状の溝等が生じ,その結果,ひび割れが発生したことが認められる。 そうすると,敦賀原発1号機の上記ドレン水漏洩事象は,給水加熱器製造時における溶接施工上の問題に起因する事象であって,原子炉施設の詳細設計段階以降における安全規制の対象である施工管理及び運転管理に属する事項であり,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項ではないから,本件安全審査の合理性を何ら左右するものではないというべきである。 b濃縮廃液貯蔵タンクからの濃縮廃液漏出事象- 559 -控訴人らは,敦賀原発1号機における濃縮廃液貯蔵タンクからの濃縮廃液漏出事象については,塩害の影響が原因であるにもかかわらず,安全審査では機器の材質に及ぼす塩害の影響については全く考慮されていないから,これを看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の九1(一)(2) 。 )しかしながら,敦賀原発1号機において,昭和56年1月19日,その放射性廃棄物処理建家内濃縮廃液貯蔵タンク2基の配管つけ根部分に穴があき,同箇所から放射性廃液が漏洩する事象があったことは,当事者間に争いがなく,すると,敦賀原発1号機の上記濃縮廃液貯蔵タンクから濃縮廃液が漏出した事象の原因は,そのタンク2基の配管つけ根部分に穴があいていたことにあるから,同事象は原子炉施設の施工管理及び運転管理に起因するものであると認められる。 したがって,敦賀原発1号機の上記濃縮廃液貯蔵タンクからの濃縮廃液漏出事象の防止対策については,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項ではなく,原子炉施設 理に起因するものであると認められる。 したがって,敦賀原発1号機の上記濃縮廃液貯蔵タンクからの濃縮廃液漏出事象の防止対策については,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項ではなく,原子炉施設の詳細設計段階以降における安全規制の対象である施工管理及び運転管理に属する事項であるから,この点に関する本件安全審査に不合理な点はないというべきである。 cフィルタスラッジ貯蔵タンクからの放射性廃液漏出事象控訴人らは,敦賀原発1号機におけるフィルタスラッジ貯蔵タンクからの放射性廃液漏出事象については,廃棄物処理施設の真下に一般配水施設があるという構造的欠陥があることを見落としていたことが原因であって,現実にその機器や設備が設計どおりに機能し安全であるかどうかについても確認する必要があるから,これを看- 560 -過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の九1(一)(3) 。 )そして,敦賀原発1号機において,昭和56年3月7日ころ,放射性廃棄物処理旧建家内のフィルタスラッジ貯蔵タンクから放射性廃液がオーヴァーフローし,同建家内に流出したこと,廃液の一部が洗濯廃液濾過装置室床下にある一般排水路に漏出したことは,当事者間に争いがない。 しかし,上記争いのない事実と証拠(乙39ないし42)及び弁論の全趣旨によると,(a)敦賀原発1号機においては,昭和56年3月7日午後8時20分ころから,フィルタスラッジをサージタンクから貯蔵タンクに移送する作業が行われ,上記移送作業の終了後の同日午後9時35分ころ,移送配管の洗浄作業が開始されたこと,(b)上記洗浄作業を担当していた運転員らは,洗浄作業中であることを忘却し,洗浄系弁の操作スイッチがある廃棄物処理旧建家内の制御盤及び洗浄系弁設置場所から引継のために中央 洗浄作業が開始されたこと,(b)上記洗浄作業を担当していた運転員らは,洗浄作業中であることを忘却し,洗浄系弁の操作スイッチがある廃棄物処理旧建家内の制御盤及び洗浄系弁設置場所から引継のために中央制御室に帰室してしまったこと,(c)その際,旧建家内の制御盤にある洗浄系弁の開閉状態を示す表示灯は,故障したまま放置されていたため,上記洗浄作業に際し,洗浄系弁が開かれたにもかかわらず,洗浄系弁が閉じていることを示す緑色の表示になっていたこと,(d)その結果,洗浄水は,貯蔵タンクへ流入し続け,上記貯蔵タンク,ドレンタンクがいずれもオーヴァーフローし,オーヴァーフローした廃液は,配管を通してサンプに流入し,更にこのサンプから建家の床面に溢れ出たこと,(e)この間,廃棄物処理建家内の制御盤における上記貯蔵タンクの水位計の異常に気付いた者はなく,また,廃棄物処理新建家内の制御盤に示される貯蔵タンク室のサンプにたまった廃液を回収するサンプポンプの作動状況,サンプの水位が異常に高くな- 561 -ったことを示す警報に気付いた者もいなかったこと,(f)貯蔵タンク室においてサンプから床に溢れ出た廃液のほとんどは,更に,建家内の通路を経由して床ドレンファンネルに至り,階下の廃液中和タンクに回収されたが,一部は,隣室の洗濯廃液濾過装置室に流れ込み,同室の内側の壁面に沿って設置された4本の電線管の床埋込み部周辺に生じていた細孔及び同室の壁面に沿って存在する側溝の一部に生じていた微細なひび割れを通して,床下に埋設されていた一般排水路へ漏洩したこと,(g)同月8日11時における運転員による巡視によって,漸く廃液の漏洩が発見され,洗浄系弁が閉じられ,廃液漏洩の拡大を防止する措置が講じられたこと,(h)上記廃液の廃棄物処理旧建家床面のオーヴァーフロー量は14. 1時における運転員による巡視によって,漸く廃液の漏洩が発見され,洗浄系弁が閉じられ,廃液漏洩の拡大を防止する措置が講じられたこと,(h)上記廃液の廃棄物処理旧建家床面のオーヴァーフロー量は14.5ないし15m,そのうち回収量は約14m,一般排水路への漏洩は約 1mと推定され,上記一般排水路への漏洩廃棄物に含まれていた 放射性物質の量は,十数ミリキュリーから数十ミリキュリーと推定されていることが認められる。 そうすると,敦賀原発1号機における上記放射性廃液漏洩事象の主要な原因は,(a)運転員が洗浄系弁を閉め忘れたこと,(b)運転員が貯蔵タンクの水位の異常を看過したこと,(c)運転員がサンプポンプの作動を示す表示やサンプの水位の異常を示す警報を看過したこと,(d)洗濯廃液濾過装置室の床にひび割れ等があったことであるから,いずれも,原子炉の運転管理に起因するものであり,原子炉設置許可段階における原子炉施設の基本設計の安全性にかかわるものではないから,本件原子炉施設の基本設計において災害の防止上支障のないものとした本件安全審査の判断を左右するものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 - 562 -②福島第二原発3号機における事象例控訴人らは,福島第二原発3号機において,昭和64年1月1日,再循環ポンプに異常振動が発生する事象が発生し,杜撰な運転管理が行われていたが,この共振現象などの発生を看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の九1(三) 。 )まず,福島第二原発3号機(沸騰水型原子炉)において,昭和64年1月1日に再循環ポンプに異常振動が発生する事象が発生したことは,当事者間に争いがない。 しかし,上記争いのない事実と証拠(甲151の①な ず,福島第二原発3号機(沸騰水型原子炉)において,昭和64年1月1日に再循環ポンプに異常振動が発生する事象が発生したことは,当事者間に争いがない。 しかし,上記争いのない事実と証拠(甲151の①ないし⑪,179の⑧,182,189の①ないし⑨,乙55の①②並びに③の(1)及び(2),57の①ない③,原審における証人P32及び同P4の各証言)及び弁論の全趣旨によると,a福島第二原発3号機において,昭和64年1月1日午後7時ころ,その再循環ポンプに異常振動が発生し,ポンプ回転軸の振動計が振り切れ,警報が鳴ったこと,b運転員は,出力を下げて運転を継続したが,その後も振動は続き,同月6日,再び,振動計の警報装置が作動したので,更に出力を下げたが,回復せず,同日午後,翌日に予定した定期検査のため,原子炉を停止したこと,c上記異常振動の原因が調査された結果,再循環ポンプ内部の回転軸を支える直径1m,重さ100㎏の水中軸受リングが割れて脱落し,一部が下にあった羽根車に当たり,羽根車も長さ44㎝,幅8㎝にわたって破壊され,更に,水中軸受リングを支えていたボルトや座金も破損し,金属片が燃料棒や圧力容器内各部に金属粉となって付着していることが判明したこと,d上記再循環ポンプ損傷は,水中軸受リングの共振と水中軸受リングの溶接が不十分であったことが原因であり,水中軸受リングの溶接部の強度が共振によって生ずる応- 563 -力を下回らないように施工すれば,上記損傷を防止することができたことが認められる。 そうすると,上記再循環ポンプ損傷事象については,溶接方法の不備に起因するものというべきであるので,原子炉施設の詳細設計段階以降における安全規制の対象である施工管理及び運転管理に属する事項であるから,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項ではないと 不備に起因するものというべきであるので,原子炉施設の詳細設計段階以降における安全規制の対象である施工管理及び運転管理に属する事項であるから,原子炉設置許可に際しての安全審査の対象事項ではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 ③美浜原発2号機における事象例a控訴人らは,美浜原発2号機において,平成3年2月9日,蒸気発生器伝熱管損傷事象が発生したところ,その原因は同伝熱管の疲労劣化及びこれを無視した供用の連続にあり,そして,加圧器逃し弁が故障していたため,ECCSが十分に機能しなかったことにより,燃料棒の冷却が妨げられ,水とジルコニウムの反応による燃料棒破損という危機的な状況も発生するおそれがあったので,設計で採用されている機器や設備が技術的に信頼性を有するか否か,あるいは現実にその機器や設備が設計どおりに機能するかどうかについても確認する必要があるから,これを看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の九1(四)。 まず,美浜原発2号機(加圧水型原子炉)において,平成3年2月9日,その蒸気発生器伝熱管が損傷したことは,当事者間に争いがない。 しかし,上記争いのない事実と証拠(甲198,乙56の①ないし③,原審における証人P32の証言)及び弁論の全趣旨によると,- 564 -a美浜原発2号機において,平成3年2月9日午後0時16分,その蒸気発生器ブローダウン水モニターの指示値が「注意信号」を発し,同日午後1時40分ころから原子炉圧力が急降下し,放射線高のアラームが鳴ったこと,b運転員らは,原子炉停止作業に掛かろうとしたところ,原子炉圧力が160気圧から100気圧まで1気に下がり,原子炉はスクラム状態となって,ECCS高圧注入系が作動 放射線高のアラームが鳴ったこと,b運転員らは,原子炉停止作業に掛かろうとしたところ,原子炉圧力が160気圧から100気圧まで1気に下がり,原子炉はスクラム状態となって,ECCS高圧注入系が作動したこと,c運転員らは,蒸気発生器伝熱管の破断に気付き,破断した蒸気発生器の隔離を行うなどの措置を講じたが,同日午後2時48分,二次冷却系側への水抜けが止まるまでに一次系から二次系に約55トンの冷却材が流出したことが認められる。 bもっとも,甲190ないし193には美浜原発2号機のECCSは,設計どおりには完全に作動しなかった旨の各記載部分があり,原審における証人P4の証言中にも同様な供述部分が存する。 しかし,証拠(乙56の①ないし③)及び弁論の全趣旨によると,美浜原発2号機における上記蒸気発生器伝熱管損傷事象に対する再現解析の結果によって,当該事象においてはECCSは設計どおりに作動し,炉心の冠水は維持され,炉心の健全性に影響はなかったことが確認されている上,燃料集合体シッピング検査の結果からも燃料集合体に異常は認められなかったことが確認されていることが認められる。 上記認定事実に照らすと,上記甲190ないし193の各記載部分並びに原審における証人P4の供述部分は,いずれも不自然であって,乙56の①ないし③に照らすと採用することができない。 cそうすると,上記美浜原発2号機における事象例においてECCSが十分に機能しなかったことを前提とする控訴人らの上記主張はその前提を欠いているというべきである。のみならず,敦賀2号機- 565 -は,加圧式軽水炉(PWR)であって,本件原子炉(BWR)とは異なるから,美浜原発2号機における上記蒸気発生器伝熱管損傷事象の発生が,本件原子炉施設の基本設計において災害の防止上支障のないものとした本件安 式軽水炉(PWR)であって,本件原子炉(BWR)とは異なるから,美浜原発2号機における上記蒸気発生器伝熱管損傷事象の発生が,本件原子炉施設の基本設計において災害の防止上支障のないものとした本件安全審査の判断を左右するものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 (コ)TMI事故と本件安全審査について控訴人らは,原子炉設置許可段階の安全審査においては,TMI事故を教訓として我が国の安全確保対策に反映した厳格な審査をすべきであるから,TMI事故を検討していない本件安全審査には欠陥がある旨主張するので,以下,検討する。 ①TMI事故の経過等について(この点に関する当事者の主張は,原判決第二編第一章第六節第二款第二の九2及び第二編第二章第六節第二の二3(八))a(a)スリーマイルアイランド(TMI)原発は,米国ペンシルヴェニア州スリーマイル島にある原発であって,同原発には,バブコック・アンド・ウィルコックス社設計の加圧水型原子炉(PWR)が2基設置されており,TMI事故は,TMI2号機(電気出力95万9000kW,昭和53年12月営業開始)で発生したこと,(b)昭和54年3月28日午前4時(米国東部時間)ころ,運転中の2号機において,復水器を通過して水に戻った二次冷却水を蒸気発生器へ給水するために二次冷却系に設けられている主給水ポンプ2台が突然いずれも停止し,これにより蒸気発生器への給水が停止したこと,(c)このために,上記主給水喪失時に,直ちに蒸気発生器に給水し,一次冷却系の除熱を確保するために設けられていた補助給水系の補助給水ポンプがすべて自動的に起動したが,本来開け- 566 -られているべき補助給水ポンプの出口側の弁が閉じられたままの状態で運転されていたため,蒸気発生器における一次冷却系 いた補助給水系の補助給水ポンプがすべて自動的に起動したが,本来開け- 566 -られているべき補助給水ポンプの出口側の弁が閉じられたままの状態で運転されていたため,蒸気発生器における一次冷却系の除熱能力が失われたこと,(d)一方,一次冷却系においては,温度,圧力が急速に上昇し,主給ポンプ停止の3秒後(以下,経過時間は主給ポンプ停止後の時間をいう)には,一次冷却系の圧力が上昇する。 ことを抑制することを目的として加圧器に設けられている加圧器逃し弁が開き,蒸気と熱水が格納容器ドレンタンクに流入したこと,そして,(e)その8秒後には,原子炉緊急停止装置が作動して,原子炉が自動停止したこと,(f)上記加圧器逃し弁の開放及び原子炉停止によって,一次冷却系の圧力は急速に低下し,加圧器逃し弁が閉止すべき圧力以下に低下したこと,しかし,(g)加圧器逃し弁は,開放状態のまま固着して閉止せず,遂には,ドレンタンクのラプチャーディスクを破壊させ,冷却材は,格納容器内の格納容器サンプへと流出し続けたこと,(h)その2分2秒後,炉内圧力低下により,ECCSの一つである高圧注入系が自動起動し,原子炉内に注水を開始したこと,(i)そこで,運転員は,圧力調整が不能となることを恐れ,手動でポンプを停止したり,流量を絞ったりしたが,原子炉の炉心が損傷したこと,(j)その2時間20分後,運転員は,加圧器逃し弁の開放固着に気付き,加圧器逃し弁の元弁を手動で閉じたこと,(k)希ガスの環境への放出量は,約250万キュリーと報告され,また,ヨウ素131の環境への放出量は,約15キュリーと報告されていることは,いずれも当事者間に争いがない。 b上記争いのない事実と証拠(甲2,5,27ないし29,乙9,43,44の①②,いずれも原審における証人P1,同P4の各証言)及び キュリーと報告されていることは,いずれも当事者間に争いがない。 b上記争いのない事実と証拠(甲2,5,27ないし29,乙9,43,44の①②,いずれも原審における証人P1,同P4の各証言)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (a)TMI2号機は,電気出力95万9000kWの加圧水型原- 567 -子炉(PWR)であり,昭和53年12月に営業運転を開始し,昭和54年3月28日にTMI事故を起こした。 (b)TMI2号機においては,TMI事故前から,次のような運転がなされていた。 i加圧器逃し弁又は安全弁から毎時約1.4mもの一次冷却 材が漏洩し,そのため,上記各弁の出口配管温度が82℃以上を示していたにもかかわらず,何らの措置もとられず,長期間運転が継続されていた。 ii主給水喪失時に直ちに蒸気発生器に給水し,一次冷却系の除熱をするために設けられていた補助給水系の補助給水ポンプの出口側の弁2個が,いずれも閉じられたままの状態で運転された。 ,iiiECCSの不必要な起動がTMI事故前までに4回もありそれによる様々なトラブルが生じていたこともあって,運転員は,ECCSの起動信号が発信した時は直ちにこの起動信号を切り,すぐに手動操作に移れるように指示されていた。 (c)事故の直前,TMI2号機は,定格の約97%の出力で運転されていたところ,事故の約11時間前から,二次冷却系の脱塩塔からイオン交換樹脂を再生するための移送作業が行われていたが,この移送配管に樹脂が詰まったため,移送作業が難航していた。 そして,昭和54年3月28日午前4時37秒,主給水ポンプ2台が突然いずれも停止し,ほとんど同時にタービンが停止した。 上記主給水ポンプの停止の原因は,樹脂移送用の水が弁等を制御する計装用空気系に混入し,脱 和54年3月28日午前4時37秒,主給水ポンプ2台が突然いずれも停止し,ほとんど同時にタービンが停止した。 上記主給水ポンプの停止の原因は,樹脂移送用の水が弁等を制御する計装用空気系に混入し,脱塩塔出入口の弁が閉じたためであると推定されている。 (d)蒸気発生器への給水が停止したため,直ちに補助給水系の補- 568 -助給水ポンプがすべて自動的に起動したが,本来開けられているべき補助給水ポンプの出口側の弁が閉じられたままの状態で運転されていたため,蒸気発生器における一次冷却系の除熱能力が失われ,一次冷却系においては,温度,圧力が急速に上昇し,主給ポンプ停止後3秒(以下,経過時間は主給ポンプ停止後の時間をいう)には,加圧器逃し弁が開き,蒸気と熱水が。 格納容器ドレンタンクに流入した。 そして,8秒後には,原子炉緊急停止装置が作動して,原子炉が自動停止した。 (e)上記加圧器逃し弁の開放及び原子炉停止によって,一次冷却系の圧力は急速に低下し,加圧器逃し弁が閉止すべき圧力以下に低下したが,加圧器逃し弁は,開放状態のまま固着して閉止しなかった。 しかし,中央制御室における上記弁の開閉表示は,上記弁の開閉状態を直接検出してこれを表示するものではなく,弁の開閉を指示する電気信号の状態を間接的に表示する方式のものであったため,現実には,弁が開放固着していたにもかかわらず,「閉」の状態を表示した結果,運転員は,上記表示を見て,設計どおり上記弁が閉止したものと判断した。 ところが,現実には加圧器逃し弁は,閉止しなかったため,一次冷却材が上記弁から流出し,小破断冷却材喪失事故の状態となった。 (f)一方,二次冷却系では,上記主給水ポンプ停止により,補助給水ポンプ3台がすべて設計どおり自動起動したが,上記(d)のとおり,本来開かれているべき 出し,小破断冷却材喪失事故の状態となった。 (f)一方,二次冷却系では,上記主給水ポンプ停止により,補助給水ポンプ3台がすべて設計どおり自動起動したが,上記(d)のとおり,本来開かれているべき補助給水ポンプの出口側の弁2個が閉じられていたので,蒸気発生器に二次冷却材を注入す- 569 -ることができなかった。このため,約2分後には,蒸気発生器の二次側の水はほとんど蒸発してしまい,蒸気発生器による除熱能力は急速に低下した。 しかし,8分後に,運転員が上記弁が閉じられていることに気付き,これを開いたため,蒸気発生器の除熱能力は回復した。 (g)その間,一次冷却系においては,一次冷却材の流出が続いたため,圧力が低下し,2分2秒後には,ECCSの一つである高圧注水系のポンプ2台が設計どおり自動起動し,原子炉内に注水を開始した。 ところが,上記(f)のとおり,蒸気発生器の除熱能力が低下していたため,一次冷却材が局所的に沸騰し,発生した蒸気泡が冷却材を押し上げ,加圧器の水位を上昇させた。そのため,加圧器水位計の表示上,一見,一次冷却材の量が増加したかの如き現象を呈した。これを見た運転員は,常々加圧器を満水にして圧力制御不能になる状態を回避するように教育されていたため,4分30秒後に,高圧注水ポンプ1台を停止し,残りの1台の流量を最低限にまで絞り,加圧器水位の上昇を抑えるために,抽出量を最大にし,一次冷却材量が減少しているのに,これを補給せず,かえって減少させる操作を行った(これらの措置がとられずに,高圧注水系を作動させておけば,事故はこれ以上発展せず終息していた。 。)しかし,加圧器水位計上は,水位の上昇を示し,5分51分後には振り切れ,6分後には加圧器が満水状態を示していた。 (h)加圧器逃し弁から流出した一次冷却材は,一次冷 上発展せず終息していた。 。)しかし,加圧器水位計上は,水位の上昇を示し,5分51分後には振り切れ,6分後には加圧器が満水状態を示していた。 (h)加圧器逃し弁から流出した一次冷却材は,一次冷却材ドレンタンクに流入したため,同タンクの圧力が上昇を続け,15分27秒には,同タンクのラプチャーディスクが破壊され,一次- 570 -冷却材は格納容器サンプへと流出した。 ところが,格納容器の隔離がなされなかったため,この水は,更に,サンプポンプにより補助建家の放射性廃棄物貯蔵タンクに移送された。 (i)一次冷却材の喪失が更に進行した結果,蒸気泡が増加し,このため,冷却材ポンプの振動が激しくなり,運転員は,上記ポンプの破損を防止するため,やむを得ず,4台の上記ポンプを,1時間13分後から1時間41分後にかけて,順次停止させた。 このため,冷却材の流れが止まり,これによる冷却機能が失われるとともに,水と蒸気が分離し,その直後から炉心上部が蒸気中に露出し始めた。 (j)運転員は,2時間20分後になって,初めて加圧器逃し弁の開放固着に気付き,同弁の元弁を閉じたが,依然として高圧注水ポンプを全開にして冷却材を注入することをしなかった。このころには既に,炉心は上部約3分の2が露出したと推定され,露出した燃料棒は温度が上昇し,重大な損傷が生じて大量の放射性物質が一次冷却系に放出された。また,燃料被覆管と蒸気が反応して大量の水素が発生した。 (k)3時間20分後には,短時間ではあったが,高圧注水ポンプが起動され,炉心は再び冠水したが,注水時の急冷により,炉心のかなりの部分の形状が変形,崩壊した。 (l)この間,事故発生直後から警報が次々と出され,その数は100を超えたが,警報の内容を打ち出すプリンターの速度が情報に追いつかず,遅れ出し,情報 ,炉心のかなりの部分の形状が変形,崩壊した。 (l)この間,事故発生直後から警報が次々と出され,その数は100を超えたが,警報の内容を打ち出すプリンターの速度が情報に追いつかず,遅れ出し,情報の遅れは,2時間39分後には約1時間半にも達したため,運転員は,1時間13分後以降の情報を捨て,2時間47分後からプリンターの使用をした。 - 571 -しかし,その後も情報の遅れが生じ,5時間17分後には再度約1時間半もの遅れに達した。 (m)炉心内で発生した水素は,運転員が7時間30分後に減圧のため加圧器逃し弁の元弁を開いたため,格納容器に漏洩し,9時間50分後に水素爆発が生じたが,格納容器の破壊は生じなかった。 以上認定の事故の経過によれば,主給水ポンプ停止及びタービン停止を炉心損傷にまで拡大させた原因は,第1に,加圧器逃し弁が約2時間20分にもわたり開放したままの状態に置かれていたこと,第2に,高圧注水ポンプの流量が約3時間16分にもわたり最小限に絞られていたことの2点にあるということができ,これらの点が短時間で解決されていれば,炉心損傷にまでは至らなかったことが認められる。 ②TMI事故の原因等についてa加圧器逃し弁開放固着状態の放置について控訴人らは,(a)TMI事故が一つ一つの原因を見るとそれ自体さほど重要とはいえない故障,やむを得ない判断の誤りが複雑に作用し,それが発展,拡大して惹起された事故であり,運転員らに過失はなかったこと,そして,(b)TMI2号機のLOCAの冷却水喪失口となった加圧器逃がし弁は,重要な機器とは当時認識されていなかった上,加圧器水位計が最も肝心な時に原発運転員に全く逆の情報を与えることなどは夢想だにされていなかったので,原発運転員には過失はなかったこと,さらに,(c)指示信号であっても, 認識されていなかった上,加圧器水位計が最も肝心な時に原発運転員に全く逆の情報を与えることなどは夢想だにされていなかったので,原発運転員には過失はなかったこと,さらに,(c)指示信号であっても,指示があればそのとおりに機器は作動していなければならず,指示どおりに機械が作用するとは限らないとなれば,いかなる操作も無駄であるから,原発運転員が,TMI事故当時に加圧器逃がし弁の- 572 -開閉表示が「閉」であったので,現実には弁が開放固着していたとしても,弁が閉止したものと判断したことはやむを得ないというべきであり,しかも,加圧器水位計の針は振り切れるが,圧力は低いという状況の冷却材喪失状態があることについては,通常想定されておらず,手順書には記載されていなかったこと,加えて,(d)ウエスチングハウス社のPWRのECCSの起動信号は,それまでは圧力低と加圧器水位低の同時信号とされており,圧力低しかし加圧器水位高などという冷却材喪失状態があるなどとは,数十年間のPWRの安全研究過程で誰も思い至らなかったものであるから,原発運転員においては,このような事態を正しく掌握することは極めて困難であったことから,運転員らにTMI事故の原因や責任はなかった旨主張する。 そこで,控訴人らの上記主張について検討すると,上記①の認定事実によると,加圧器逃し弁開放固着状態が長時間にわたり継続した要因は,上記弁の開放固着状態を長時間にわたり運転員が発見し得なかったことが決定的な要因というべきである。もっとも,中央制御室における上記弁の開閉表示は,上記弁の開閉状態を直接検出してこれを表示するものではなく,弁の開閉を指示する電気信号の状態を間接的に表示する方式のものであったため,現実には,弁が開放固着していたにもかかわらず「閉」の状態を表示した結果,, を直接検出してこれを表示するものではなく,弁の開閉を指示する電気信号の状態を間接的に表示する方式のものであったため,現実には,弁が開放固着していたにもかかわらず「閉」の状態を表示した結果,,運転員は,上記表示を見て,設計どおり上記弁が閉止したものと判断したものであるから,開閉状態の表示に係る構造上の欠陥と,運転員に対する開閉表示に係る指示の不徹底という運転管理上の問題が,上記開放状態の放置の一因となっているというべきである。 さらに,上記のような誤表示があったにもかかわらず,その表示を信じて,運転員が弁の開放固着に気付かなかったことが過誤とい- 573 -えるか否かについて検討するに,上記①の認定事実に,証拠(甲5,27,28,乙9,43,44の①②,いずれも原審における証人P1及び同P4の各証言)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (a)加圧器逃し弁が開き,一次冷却材が流出すると,同弁の出口配管の温度が上昇するところ,同弁の出口配管には温度計が取り付けられ,中央制御室に上記温度計の温度が表示されるようになっているので,上記温度上昇の表示により,一次冷却材が流出し続けていることが認識できた。 そこで,運転員は,上記弁の出口温度が30秒後には115℃であったものが,24分58秒後には140.8℃にも達し,これを確認したにもかかわらず,元弁は閉じられず,上記温度から弁の開放固着に気付く者はいなかった。しかも,運転員が加圧器逃し弁の出口配管の温度が高いのを見ても異常を察知しなかった原因の一つとして,加圧器逃し弁又は安全弁から毎時約1.4mもの一次冷却材が漏洩し,そのため,上記各弁の 出口配管温度が82℃以上を示していたにもかかわらず,何らの措置もとらず,長期間運転が継続されていたという,TMI2号機の緊急 から毎時約1.4mもの一次冷却材が漏洩し,そのため,上記各弁の 出口配管温度が82℃以上を示していたにもかかわらず,何らの措置もとらず,長期間運転が継続されていたという,TMI2号機の緊急手順書,技術仕様書に違反した平常運転時の運転管理上の過誤があった。 (b)加圧器逃し弁から流出する一次冷却材を一時的に収容するために,原子炉格納容器内に設けられている一次冷却材ドレンタンクに一次冷却材が流入すると,同ドレンタンクの水位及び温度が上昇するところ,この水位,温度が中央制御室に表示されるようになっているので,上記水位上昇の表示及び温度上昇の表示により,更に同ドレンタンクのラプチャーディスクの破裂- 574 -により,一次冷却材が流出し続けていることを認識することができた。 (c)原子炉格納容器内への漏水等の場合に備えて格納容器底部に設けられているサンプの水位についても,中央制御室に表示されるようになっており,上記水位上昇の表示により,一次冷却材が流出し続けていることを認識できた。 (d)TMI2号機は,もともと他の原子炉用に設計されたものを,現場の運転員の経験,要望,運転体制等についての固有の事情をほとんど反映しないまま,必要最小限の設計変更のみを行って流用したものであり,かつ,制御盤,計器,操作器などの大きさ,配置も適切とは言い難く,また,事故発生後短時間に100を超える警報が出るなどして,運転員の判断を困難にした。 (e)TMI2号機では,多数の機器の故障や不具合が放置されたままになっており,このため,制御室内に点灯していた警報が常時52個を下回ったことがなかった。 (f)TMI2号機には,他の原子炉と同様,NRCが認可した技術仕様書があり,これに基づいて運転手順書,緊急手順書及び保守点検手順書(運転規則等)が作 警報が常時52個を下回ったことがなかった。 (f)TMI2号機には,他の原子炉と同様,NRCが認可した技術仕様書があり,これに基づいて運転手順書,緊急手順書及び保守点検手順書(運転規則等)が作成されていたが,これらの整備は十分でなく,かつ,定期的な見直しをされていなかった。 緊急手順書の「小破断LOCAの徴候」の項は,明らかに矛盾を含んでおり,運転員は,事故中,上記項目を参照しなかった。 (g)TMI2号機の運転員に対しては,特に緊急時の訓練が十分でなく,運転員のチームを組んでの訓練もないなど,教育訓練の内容に問題があった。 以上認定の事実によれば,加圧器逃し弁の開放固着が冷却材喪失事故にまで発展したのは,運転員の過誤による誤判断のみならず,- 575 -表示装置の構造上の欠陥を含む設計上の不備並びに設置者による機器の保守及び運転員に対する教育訓練の不備等の運転管理の不備等が重畳して,上記誤判断を招来したと認定するのが相当である。 b高圧注水ポンプの流量制限について控訴人らは,(a)事故原因の多くは,事故が発生してはじめてその問題性が認識されるものであって,あらかじめ事故の原因,経過を想定し尽くしてこれに対する万全の対策を講ずることは不可能であること,(b)機器の構造,機能にはなお多くの隠された弱点,盲点があると考えなければならないし,運転員らの心理,行動形態の有り様を見極めることにも自ずと限界があること,(c)大きな事故には複合的要因によるものが多く,共通の原因で複数設けられていた機器の機能が同時に失われたり,機器の故障や人間の判断の誤りなどが複雑に作用しながら発展させていくもので,TMI事故はその典型的なパターンであると主張する。 しかし,上記①の認定事実のとおり,運転員が高圧注水ポンプを絞ること等により,冷却材喪失を 断の誤りなどが複雑に作用しながら発展させていくもので,TMI事故はその典型的なパターンであると主張する。 しかし,上記①の認定事実のとおり,運転員が高圧注水ポンプを絞ること等により,冷却材喪失を促進させてしまったのは,加圧器水位計が一見,一次冷却材の量が増えたかのように高い水位を表示したため,冷却材喪失はないものと判断したことに起因したものである。 そして,乙44の①によれば,TMI2号機の緊急手順書では,「高圧注水ポンプを停止するか否かは,加圧器水位が維持され,かつ,一次冷却系の圧力が起動設定値以上であること」にかかっていることと明記されていたものの,運転員が高圧注水ポンプを停止した際には,圧力が上記起動設定値を下回っていたことが認められ,運転員の操作に明らかな過誤があったことが認められる。 また,上記①の認定事実のとおり,ECCSの不必要な起動がT- 576 -MI事故前までに4回もあり,それによる様々なトラブルが生じていたこともあって,運転員は,ECCSの起動信号が発信した時は直ちにこの起動信号を切り,すぐに手動操作に移れるように指示されていた上,常々加圧器を満水にして圧力制御不能になる状態を回避するように教育されていたことなど,安全上の設計の考慮を無視した不適切な指示を受けていたこと,更に上記②認定の(d)ないし(g)の各事実も,上記運転員の過誤の要因となっていたことが認められる。 以上によれば,高圧ポンプの流量制限が冷却材喪失事故にまで発展したのは,運転員の過誤による誤判断のみならず,原子炉設置者による機器の保守及び運転員に対する教育訓練の不十分等の運転管理の不備等が複合して,上記誤判断の惹起を助長したことに原因があったということができる。 そうすると,TMI事故において,主給水ポンプ停止を炉心損傷にまで発展させた 対する教育訓練の不十分等の運転管理の不備等が複合して,上記誤判断の惹起を助長したことに原因があったということができる。 そうすると,TMI事故において,主給水ポンプ停止を炉心損傷にまで発展させた要因は,運転員の誤判断,誤操作並びにその惹起を助長した設計,設置者による機器の保守及び運転員に対する教育訓練の不十分等の運転管理の不備の重畳であったものと認めるのが相当である。 ③TMI事故と本件安全審査a上記②のとおり,TMI事故において,主給水ポンプ停止を炉心損傷にまで発展させた要因は,運転員の誤判断,誤操作並びにその惹起を助長した設計,設置者による機器の保守及び運転員に対する教育訓練の不十分等の運転管理の不備の重畳であったものというのが相当であり,設計上の問題というべき加圧器逃し弁の開閉表示装置の検知方式,中央制御盤の具体的配列等は,いずれも詳細設計に属する事項というべきである。 - 577 -のみならず,TMI2号機は加圧水型原子炉であり,沸騰水型原子炉である本件原子炉において,TMI事故と同一の経過による事故が生ずることはないことにかんがみると,TMI事故の発生は,本件原子炉施設がその基本設計において災害の防止上支障のないものとした本件安全審査の判断を左右するものではないというべきである。 bもっとも,控訴人らは,TMI事故が多重故障事故であるにもかかわらず,本件安全審査においては単一故障の事故解析をしているので,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記②のとおり,TMI事故において,主給水ポンプ停止を炉心損傷にまで発展させた要因は,運転員の誤判断,誤操作並びにその惹起を助長した設計,設置者による機器の保守及び運転員に対する教育訓練の不十分等の運転管理の不備の重畳であったというべきであり,安全保護設備及び安 発展させた要因は,運転員の誤判断,誤操作並びにその惹起を助長した設計,設置者による機器の保守及び運転員に対する教育訓練の不十分等の運転管理の不備の重畳であったというべきであり,安全保護設備及び安全防護設備の故障が重複し,故障が連鎖的に拡大したという事故ではないから,TMI事故の発生によって,単一故障の事故解析を非難する控訴人らの上記主張は失当である。 cまた,控訴人らは,TMI事故においては,機器の故障に人為的要因が重畳することによって重大な事故が発生したところ,本件安全審査においては,人的要因を考慮した審査を行っていないから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,原子炉施設のみならず,工学的施設,機器は,一般に,運転者の一定水準以上の技術,能力,それを確保する運転者の教育,訓練等の運転管理が適切に行われることなくして,事故の発生を回避することができないことは,経験則上明らかであるから,上記一定水準以上の技術,能力があり,それを確保する運転者の教育,訓- 578 -練等の運転管理がなされることを前提とした原子炉施設の基本設計が不合理とはいえないというべきである。 そして,証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析を通じて,本件原子炉施設の安全保護設備及び安全防護設備の設計の総合的な妥当性の解析評価の検討が行われているが,解析評価の対象となった過渡変化及び事故には当然,人為的過誤に起因するものも含まれていることが認められるから,控訴人らの上記主張は失当である。 dさらに,控訴人らは,原発の安全確保のため人間に重要な役割を期待せざるを得ないのであれば,人間は必ず誤ることがあることを忘れることがあってはならないこと,そして,現 人らの上記主張は失当である。 dさらに,控訴人らは,原発の安全確保のため人間に重要な役割を期待せざるを得ないのであれば,人間は必ず誤ることがあることを忘れることがあってはならないこと,そして,現実の事故の原因やその経過が,基本設計に属することなのか詳細設計以降あるいは運転管理に属することなのかは重要な問題ではないので,こうした現実を見た安全審査がなされるべきであること,このため,TMI事故のような人為的因子が大きく左右して,ECCSが十分作用し得ずにメルト・スルーの瀬戸際に至る事態を想定して事故分析を行うべきであることから,このような事故分析を行っていない本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記1(2)のとおり,原子炉設置許可の段階の安全審査においては,当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわるもののみをその対象とするものであるのみならず,上記cのとおり,本件原子炉施設の事故解析には人為的過誤に起因するものも含まれ,かつ運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析には不合理な点はないというべきであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 - 579 -(サ)チェルノブイル事故と本件安全審査について控訴人らは,原発事故は大惨事をもたらすので,現実の事故であるチェルノブイル事故の教訓を原子炉設置許可の際の安全審査にも具体的に反映させるべきであるから,チェルノブイル事故を検討していない本件安全審査には過誤がある旨主張するので,以下,検討する。 ①チェルノブイル事故の経過a(a)チェルノブイル原発は,旧ソ連ウクライナ共和国の首都キエフの北方約130㎞に位置する原発であり,旧ソ連が独自に開発した黒鉛を減速材,軽水を冷却材とする黒鉛軽水冷却沸騰水型原子炉(RBMK1000型炉,定格 ブイル原発は,旧ソ連ウクライナ共和国の首都キエフの北方約130㎞に位置する原発であり,旧ソ連が独自に開発した黒鉛を減速材,軽水を冷却材とする黒鉛軽水冷却沸騰水型原子炉(RBMK1000型炉,定格熱出力320万kW,定格電力出力100万kW)が4基稼働していたところ,チェルノブイル事故は,1983年(昭和58年)12月に運転を開始した4号機で発生したこと,(b)1986年(昭和61年)4月25日,保守点検のためにチェルノブイル原発4号機の運転を停止する機会があり,それを利用して,発電所外部の電源が喪失してタービンへの蒸気供給が停止した場合に,惰性で回転しているタービン発電機のエネルギーを,発電所内で必要な電源としてどこまで利用できるかという実験が実施されたこと,(c)運転員は,同日午前1時(モスクワ時間)ころから,実験計画に従って,定格熱出力320万kWで運転中の4号機の出力を低下させ,同日午後1時5分,原子炉出力を160万kWまで下げた時に,2台あるタービンのうち,1台のタービンを送電系統から切り離し,更に同日午後2時,実験中の水位低下に備え,緊急注水を防ぐためにECCSの信号回路を解除したこと,(d)実験計画によれば,出力の低下を更に続ける予定であったが,給電担当者からの要請により,その後,約9時間にわたって原子炉の熱出力が160万kWの状態で運転が続けられたこと,(e)運転- 580 -員は,同日午後11時10分,出力降下の操作を再開したところ,熱出力が3万kW以下に低下してしまうアクシデントが発生したため,熱出力の回復に努め,翌26日午前1時ころ,原子炉の熱出力を20万kWにまで回復させたが,キセノンの毒作用の進行等の理由により,これ以上の出力上昇は困難と判断したこと,(f)その際,運転員は,原子炉の熱出力が実験計画 翌26日午前1時ころ,原子炉の熱出力を20万kWにまで回復させたが,キセノンの毒作用の進行等の理由により,これ以上の出力上昇は困難と判断したこと,(f)その際,運転員は,原子炉の熱出力が実験計画の70ないし100万kWより下回っていたが,実験は可能と判断したこと,(g)運転員が,同日午前1時3分及び7分,それまで作動していた6台の主循環ポンプに加えて,2台の主循環ポンプを起動させた結果,炉心を通過する冷却材流量が増大し,炉内の冷却材の状態は予測のつかない不安定なものとなり,炉心内の冷却材に占める蒸気泡(ボイド)の体積割合(ボイド率)が減少し,気水分離器の水位と圧力が低下したこと,(h)このために,運転員は,原子炉が自動停止してしまうことを懸念し,気水分離器内の蒸気圧と水位に関する安全保護信号の回路を切り,同日午前1時19分,気水分離器の水位の低下を防ぐため,気水分離器への給水を増加させたところ,低温の冷却材が気水分離器を介して原子炉内に流入したため,炉心におけるボイド率が減少し,負の反応度が加えられたこと,(i)そこで,運転員は,正の反応度を加え,原子炉の出力を維持するため,自動制御棒及び手動制御棒を相次いで引き抜いたこと,(j)次いで運転員は,同日午前1時22分ころ,気水分離器の水位が上昇してきたため,給水量を急激に低下させ,その結果,炉心に流入する水の温度が上昇し,ボイド率が上昇し,更に同日午前1時22分30秒ころ,操作可能な制御棒が6ないし8本程度しかなく,通常であれば原子炉の緊急停止を要する値となるまで反応度操作余裕が少なくなっていることを認知したが,実験実行を優先して原子炉の運転を継続させたこと,- 581 -(k)更に運転員は,実験の前提であるタービン停止によって原子炉自体が自動停止するという自動停止回路を切り っていることを認知したが,実験実行を優先して原子炉の運転を継続させたこと,- 581 -(k)更に運転員は,実験の前提であるタービン停止によって原子炉自体が自動停止するという自動停止回路を切り,同日午前1時23分4秒,タービン発電機の蒸気停止加減弁を閉じて実験を開始し,タービンの蒸気停止加減弁を閉じたことによって,タービンの回転数が低下し始め,それに伴い,タービン発電機を電源としていた給水ポンプ及び主循環ポンプの機能が低下したこと,(l)気水分離器内の蒸気圧及び循環水の温度が上昇するとともに,冷却材循環流量が低下し,炉心内におけるボイド率が上昇した結果,正の反応度が加えられ出力が上昇し始め,反応度出力係数が正のため出力の上昇は加速されたこと,以上の事実はいずれも当事者間に争いがない(原判決第二編第一章第六節第二款第二の九3(二)及び第二編第二章第六節第二の二3(九) 。 )b上記争いのない事実と証拠(甲184,195,201,263,265の①ないし⑤,266の①②,346,乙50,51,109,いずれも原審における証人P1及び同P4の各証言)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (a)チェルノブイル原発4号機の主要な設計上の特徴は,i燃料及び冷却材を収納する縦型の燃料チャンネルを有する炉であること,iiジルコニウム被覆管に収納した二酸化ウラン製の燃料棒を円筒状に束ねた燃料集合体を使用していること,iii燃料チャンネル間には,減速材としての黒鉛ブロックが存在していること,ivタービンに蒸気を直接供給するいわゆる再循環方式の沸騰水型原子炉であるが,この原子炉は,定格出力の約20%を下回る状態では,反応度出力係数が正となること,v炉心の出力分布を安定させるために複雑な制御システムを必要としていることが問題点 環方式の沸騰水型原子炉であるが,この原子炉は,定格出力の約20%を下回る状態では,反応度出力係数が正となること,v炉心の出力分布を安定させるために複雑な制御システムを必要としていることが問題点とされている。 - 582 -(b)チェルノブイル原発4号機においては,発電所外部の電源が喪失してタービンへの蒸気供給が停止した後,タービン発電機の回転惰性エネルギーがどの程度発電所内の電源需要に応じることができるかという実験を実施することになった。 そこで,運転員は,1986年(昭和61年)4月25日午前1時,定格熱出力320万kWで運転中のチェルノブイル原発4号機の出力を実験計画に従い70ないし100万kWまで低下させる操作にかかった。同日午後1時5分,原子炉出力が定格熱出力の2分の1である160万kWとなった状態で,2台あるタービンのうちの1台を送電系統から切り離した。 そして,運転員は,同日午後2時,実験中の水位低下に備え,緊急注水を防ぐためにECCSの信号回路を解除した。実験計画によれば,出力の低下を更に続ける予定であったが,給電担当者からの要請により,その後,約9時間にわたって原子炉の熱出力が160万kWの状態で運転が続けられた。 (c)運転員は,同日午後11時10分,出力降下の操作を再開したところ,運転員が出力制御系の操作手順を誤ったため,原子炉の熱出力を3万kW以下に低下させてしまった。 このため,運転員は,熱出力の回復に努め,翌26日午前1時ころ,原子炉の熱出力を20万kWにまで回復させたが,キセノンの毒作用の進行等の理由により,これ以上の出力上昇は困難であり,原子炉の熱出力は,実験計画の70ないし100万kWより下回っていたものの,実験の実施は可能であると判断した。 (d)同日午前1時3分及び7分,運転員は,それ り,これ以上の出力上昇は困難であり,原子炉の熱出力は,実験計画の70ないし100万kWより下回っていたものの,実験の実施は可能であると判断した。 (d)同日午前1時3分及び7分,運転員は,それまで作動していた6台の主循環ポンプに加えて,2台の主循環ポンプを起動さ- 583 -せた結果,炉心を通過する冷却材流量が増大し,これによって上記炉心内の冷却材に占める蒸気泡の体積割合(ボイド率)が減少するとともに,気水分離器の水位と圧力が低下した。 そして,運転員は,原子炉が自動停止してしまうことを懸念し,気水分離器内の蒸気圧と水位に関する安全保護信号をバイパスさせ,同日午前1時19分,気水分離器の水位の低下を防ぐため,気水分離器への給水を増加させたところ,低温の冷却材が気水分離器を介して原子炉内に流入したため,炉心におけるボイド率が減少し,負の反応度が加えられた。 そこで,運転員は,正の反応度を加え,原子炉の出力を維持するため,自動制御棒及び手動制御棒を相次いで引き抜き,反応度操作余裕を少なくした。このときの反応度操作余裕は,運転規則で定められている最小値30本相当を大幅に下回る6ないし8本相当の制御棒にまでなっていた。 (e)同日午前1時22分ころ,運転員は,気水分離器の水位が上昇してきたため,給水量を急激に低下させ,その結果,炉心に流入する水の温度が上昇し,ボイド率が上昇した。 (f)運転員は,同日午前1時22分30秒ころ,反応度操作余裕を計算する高速計算プログラムの出力データ中に,反応度操作余裕が原子炉の緊急停止を要する値になっていることを発見したが,原子炉を停止しなかった。 (g)運転員は,2台のタービンが停止した場合に出る原子炉緊急停止信号をバイパスさせた上,同日午前1時23分4秒,タービン発電機の蒸気停止加減弁を閉じ ことを発見したが,原子炉を停止しなかった。 (g)運転員は,2台のタービンが停止した場合に出る原子炉緊急停止信号をバイパスさせた上,同日午前1時23分4秒,タービン発電機の蒸気停止加減弁を閉じて実験を開始し,更に,タービンの蒸気停止加減弁を閉じた。それによって,タービンの回転数が低下し始め,タービン発電機を電源としていた給水ポ- 584 -ンプ及び主循環ポンプの機能が低下した。 そして,気水分離器内の蒸気圧及び循環水の温度が上昇するとともに,冷却材循環流量が低下し,炉心内におけるボイド率が上昇した。この結果,正の反応度が加えられ出力が上昇し始め,反応度出力係数が正のため出力の上昇は加速された。 (h)このため,運転員は,同日午前1時23分40秒,原子炉緊急停止ボタンを押したが,原子炉内の出力の上昇を抑制することができず,その結果,多量の蒸気発生,燃料過熱,燃料損傷,破損した燃料粒子による急激な冷却材沸騰,燃料チャンネルの破壊,そして,最終的には,同日午前1時24分ころ爆発が2回発生し,すべての圧力管及び原子炉上部の構造物が破壊されるとともに,燃料及び黒鉛ブロックの一部が飛散した。また,原子炉建家の屋根も破壊され,炉心の高温物質は吹き上げられて原子炉諸施設,機械室等の屋根に落ち,火災が発生し,それに伴い多量の放射性物質が環境に放出された。 チェルノブイル原発4号機の制御棒は,制御棒本体の下部に黒鉛棒が付けられており,制御棒が炉心に挿入されると,炉心の底部では,中性子を吸収していた水柱がほとんど中性子を吸収しない黒鉛棒と置き変わるため,運転員が原子炉緊急停止ボタンを押し,制御棒が一斉に挿入された結果,最初にプラスの反応度が加わりポジティブスクラムが発生し,原子炉の出力上昇に寄与したと推定される。 (i)運転員の上記一連の行 ,運転員が原子炉緊急停止ボタンを押し,制御棒が一斉に挿入された結果,最初にプラスの反応度が加わりポジティブスクラムが発生し,原子炉の出力上昇に寄与したと推定される。 (i)運転員の上記一連の行為のうち,i反応度操作余裕を著しく少ない状態にさせ,原子炉の緊急停止機能を低下させたこと,ii実験計画で指定された出力より更に低い出力まで低下させて,実験を実施し,原子炉を不安定な状態においたこと,iii待機- 585 -中の循環ポンプを導入して,過剰な冷却材を送り込んだことにより,原子炉を極めて不安定な状態にしたこと,iv2基のタービン発電機の停止信号に基づいた原子炉の保護信号をバイパスさせ,原子炉の自動停止の可能性を失わせたこと,v気水分離器内の水位レベルと蒸気圧に関する保護信号をバイパスさせ,熱パラメータによる原子炉の停止機能を失わせたこと,viECCSを切り離し,これによって事故の規模を小さくする可能性を失わせたことは,いずれも運転規則違反の行為である。 (j)チェルノブイル事故の火災を消すために,運転員,消防隊,ヘリコプター部隊,正規軍らが消火活動を行い,上空から約5000トンの砂や2000トンの鉛,ドロマイト,ホウ素が投下されたが,その原子炉の火災がおさまったのは,事故から10日後の同年5月6日であった。この事故により,原子炉内の1661本の圧力管すべてが破壊され,1000トン近いコンクリートの蓋を持ち上げて,垂直に落とし,黒鉛の一部が外へ放出され,炉内に残って燃焼した黒鉛の量は約250トンと推定され,ウラン燃料190トンのうちの3ないし4%が放出され,核分裂生成物であるヨウ素,セシウム等が放出された。 同年8月の旧ソ連の「チェルノブイル原発事故に関する経過報告書(1986年(昭和61年)報告。乙50)において」は, の3ないし4%が放出され,核分裂生成物であるヨウ素,セシウム等が放出された。 同年8月の旧ソ連の「チェルノブイル原発事故に関する経過報告書(1986年(昭和61年)報告。乙50)において」は,被ばく線量(外部被ばくのみ)は平均でプリピアチで0. 03シーベルト(3レム,避難民13万5000人の集団被)ばく線量は1万6000人・シーベルト(160万レム)と報告されていた。また,同報告書では,事故処理は,放射能を石棺に閉じこめほぼ終了し,消防士と原発職員約300名が病院に収容されたが,31人が死亡し,避難民13万5000人に- 586 -急性放射線障害は認められなかったとし,更にチェルノブイル事故の原因を,原発運転員の規則違反による人為ミスとしていた(乙50,51。 )(k)1991年(平成3年)1月に旧ソ連工業原子力安全監視国家委員会が旧ソ連最高会議に提出した「チェルノブイル事故の原因と事故状況に関する報告書」においては,上記(j)の1986年報告とは異なり「事故の原因は,運転員の規則違反で,はなく,設計の欠陥と責任当局の怠慢にあり,チェルノブイルのような事故はいずれ避けられないものであった」と述べている(甲195。 )また,国連の当時のガリ事務総長が1995年(平成7年)9月に国連総会へ提出した国連人道擁護局報告書では,ウクライナ,ベラルーシ,ロシアの3か国において事故により何らかの影響を受けた人は約900万人であり,しかも,約37万5000人が避難民生活を続けている。そして,この事故による放射能汚染地域については,ベラルーシでは国土の30%,ウクライナでは国土の7%,ロシアでは国土の1.7%であり,総面積では日本の4割に当たる16万kmであって,ウクラ イナとロシアでは各300万人,ベラルーシでは180万人 ーシでは国土の30%,ウクライナでは国土の7%,ロシアでは国土の1.7%であり,総面積では日本の4割に当たる16万kmであって,ウクラ イナとロシアでは各300万人,ベラルーシでは180万人が)。 汚染地域で今も生活しているとされている(甲265の①②さらに,1996年(平成8年)4月,ウイーンで行われたチェルノブイル事故10周年国際会議において,経済協力開発機構(OECD)報告において,事故で放出された放射能放出量は事故当初の推計の3,4倍にのぼり,事故後多発している小児甲状腺癌の原因物質として有力視されているヨウ素131の放出量は当初推計の6.8倍になると報告された(甲265- 587 -の③④。 )c以上認定の事実に加えて,証拠(甲184,195,201,263,265の①ないし⑤,266の①②,267の①ないし⑧,乙50,51,109,いずれも原審における証人P1及び同P4の各証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)チェルノブイル事故は,運転員の度重なる運転規則違反あるいは原子炉の安全性に影響を及ぼす行為と,チェルノブイル原発4号機の制御棒の設計上の問題に起因すること,(b)運転員の行為は,単なる錯誤というよりも意識的なもので,運転員は,数々の規則違反あるいは原子炉の安全性に影響を及ぼす行為を繰り返しながら,原子炉がどれほど危険な状態になっているかについての認識がなかったか,あるいは極めて不十分であったが,これは,運転員のみならず,試験計画者,発電所の管理体制全般に,安全を優先するという意識が欠けていたこと,(c)チェルノブイル事故の原因は,チェルノブイル原発4号機が低出力では反応度出力係数が正のフィードバック特性を示し,固有の自己制御性を失う性質があるのに,それに対応し得るだけの制御系・緊急停止系が確保さ ェルノブイル事故の原因は,チェルノブイル原発4号機が低出力では反応度出力係数が正のフィードバック特性を示し,固有の自己制御性を失う性質があるのに,それに対応し得るだけの制御系・緊急停止系が確保されていないなどの設計上の問題があったことが認められる。 そうすると,チェルノブイル事故については,安全思想が希薄な管理体制のもとで,運転員が意識的に多数かつ重大な運転規則違反あるいは原子炉の安全性に影響を及ぼす行為を重ねた上,制御棒の挿入でポジティブスクラムが発生するという制御棒の設計上の問題が重畳した結果生じた原子炉の反応度事故であると認めるのが相当である。 ②チェルノブイル事故と本件安全審査a控訴人らは,(a)本件原子炉施設においても,大破断LOCAの- 588 -危険性,タービン・トリップによる暴走事故及び制御棒挿入失敗による暴走事故等の可能性があるので,原子炉設置許可の安全審査の際には,チェルノブイル事故と同様の事故が想定されるべきであること,(b)原子炉設置許可段階の安全審査においては,事故防止対策における事故想定とは切り離して,更に安全確保のために万が一の事故をも想定し,本件原子炉と構造が異なるチェルノブイル原発の事故の教訓を生かすべきであることから,暴走事故を見落とした本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,チェルノブイル原発4号機は,旧ソ連が独自に開発した黒鉛減速軽水冷却沸騰水型であり,本件原子炉とは制御棒の構造を含め,著しく設計,構造を異にし,そもそもチェルノブイル事故の原因であるポジティブ・スクラムは本件原子炉施設では存在しないこと,そして,チェルノブイル事故の原因は,多重防護の適用が十分でない設計を背景としつつ,運転員が設計者の予想もしなかったような危険な状態に原子炉を導いたことに加え,低出力下では反 設では存在しないこと,そして,チェルノブイル事故の原因は,多重防護の適用が十分でない設計を背景としつつ,運転員が設計者の予想もしなかったような危険な状態に原子炉を導いたことに加え,低出力下では反応度出力係数が正となる設計であって,すべての出力領域において固有の自己制御性を有しない設計であること,更にこのような炉特性に対応した原子炉緊急停止装置の設計が不十分であったことにあるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているというべきである。 のみならず,大破断LOCAの危険性については上記(ア)④b(b)のとおり,また,タービン・トリップによる暴走事故については上記(ウ)②aのとおり,さらに,制御棒挿入失敗による暴走事故については上記(ウ)②bのとおりであって,本件安全審査においては暴走事故には至らないことを確認しているものというべきである。 - 589 -すなわち,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,(a)原子炉に異常な反応度が投入され,核分裂反応が異常に急上昇する事象に対しては,すべての出力領域で反応度出力係数が負となり,自己制御性を有していること(乙2の8-1-2頁,8-3-37ないし38頁,乙3の8-160ないし163頁,乙4の28頁,(b)本件原子炉施設の原子炉緊急停止装置は,制御)棒の位置,炉心の燃焼状態等について最も厳しい条件とし,更に制御棒1本の挿入失敗を仮定してもなお,原子炉の緊急停止に必要な負の反応度添加率が確保されるように設計されていること(乙2の8-3-32,37,41頁,乙3の8-10,156頁,乙4の28,30頁,及び(c)何らかの理由で主蒸気系の弁が急速に閉)鎖し,原子炉圧力が急上昇するような場合,圧力上昇の観点 いること(乙2の8-3-32,37,41頁,乙3の8-10,156頁,乙4の28,30頁,及び(c)何らかの理由で主蒸気系の弁が急速に閉)鎖し,原子炉圧力が急上昇するような場合,圧力上昇の観点から最も厳しい発電機負荷遮断等について解析評価を行い,燃料被覆管及び圧力バウンダリの健全性が確保され,暴走事故には至らないこと(乙3の10-34ないし36頁,乙4の42頁)がそれぞれ確認され,かつまた,多重防護についても十分考慮されていることが確認されていることが認められる。 したがって,チェルノブイル事故の発生は,本件安全審査の判断の合理性に何ら影響を与えるものではなく,控訴人らの主張はその前提において失当である。 bまた,控訴人らは,反応度出力係数が負である本件原子炉施設においても,原子炉内の圧力上昇によって蒸気泡がつぶれた場合には正の反応度が投入されるし,その他種々の状況が重なれば,チェルノブイル事故のような大事故に至る可能性があるから,このような大事故を想定していない本件安全審査には過誤がある旨主張する- 590 -(原判決第二編第一章第六節第二款第二の九3(七) 。 )しかし,上記①の認定事実にかんがみると,正の反応度が投入されるだけで,チェルノブイル事故のような大事故が発生するとは認められないというべきである。そして,上記aのとおり,本件安全審査においては,本件原子炉施設に十分な事故防止対策が講じられていることが確認されているので,本件安全審査の判断には合理性があるというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているので失当である。 (シ)運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析の合理性の有無について①事象選定等について控訴人らは,起こり得る全事象をあらかじめ予想することは不可能であるから,運転時 ているので失当である。 (シ)運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析の合理性の有無について①事象選定等について控訴人らは,起こり得る全事象をあらかじめ予想することは不可能であるから,運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析の対象となる事象の選定は困難であるところ,本件安全審査においては,事象選定が恣意的であり,しかも,単一故障を前提にして運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析をしているので誤っている上,故障等の重畳,安全系機器の共倒れを想定していないので,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第二の一〇。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(甲33,乙14,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,安全設計審査指針(乙14)では「単一故障とは,単一の事象に起因して一つの,機器が所定の安全上の機能を失うことをいい,単一の事象に起因して必然的に起こる多重故障を含む「多重性とは,同一の機能を有す。」,る系が二つ以上あることをいう「独立性とは,多重に設けた機器。」,又は系統が設計上考慮する環境条件及び運転状態に対して共通要因又は従属要因によって同時に故障状態にならないことをいう」とそれ。 - 591 -ぞれ定められていること(乙14の984頁,そして,この「単一)故障」は,運転時の異常な過渡変化解析及び事故解析において想定された起因事象に対処するために必要な機器の一つが所定の安全機能を失うことをいい,従属する要因に基づく多重故障を含むものであるから,ある着目した機器のみの故障を念頭におくのみである「単一の故障」とは異なる概念であることが認められる。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査において 頭におくのみである「単一の故障」とは異なる概念であることが認められる。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,a本件原子炉施設について,多重防護の考え方に基づいた各種の事故防止対策が講じられており,かつ,事故防止対策に係る設備のうち,安全保護設備及び安全防護設備の各信頼性については,(a)強度等において十分な余裕をもった設計となっていること,(b)原則として多重性及び独立性を有する設計となっていること,及び(c)原子炉の運転開始後においても定期的にその性能確認のための試験,検査が実施できる構造となっていること等が要求されていることが確認されていること,そして,b解析評価においては,その対象となる起因事象の中から,安全上の観点から厳しいものを仮定した上,上記起因事象の発生に伴い作動が要求される安全保護設備及び安全防護設備,それらの設備を構成する機器について,要求される機能ごとに結果が最も厳しくなるような単一故障の発生を想定していることが確認された結果,本件原子炉施設の安全保護設備及び安全防護設備に,同時に故障が発生するとは考えられず,上記各設備の設計は総合的にみて妥当なものと判断されたことが認められ,本件安全審査の上記判断は合理性があるというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 - 592 -②シビアアクシデント(過酷事故)について控訴人らは,a本件原子炉においては,(a)シビアアクシデントを想定した事故防止対策が必要であるのに,その対策がとられていないこと,及び(b)原子炉設置許可の段階も,その後の段階もシビアアクシデントの審査を欠いていることの二つの重大な瑕疵があること,b東京電力は,原子力安 止対策が必要であるのに,その対策がとられていないこと,及び(b)原子炉設置許可の段階も,その後の段階もシビアアクシデントの審査を欠いていることの二つの重大な瑕疵があること,b東京電力は,原子力安全委員会が発表した平成4年5月28日付けの「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」を受けて,平成6年3月に「柏崎刈羽原子力発電所1号機のアクシデントマネジメント検討報告書」を出し,(a)原子炉停止機能,(b)原子炉及び格納容器への注水機能,(c)格納容器からの除熱機能,(d)安全機能のサポート機能の観点からアクシデントマネジメント策を講じているが,いずれも対策が抽象的で実際には不十分であること,c諸外国でも,TMI事故及びチェルノブイル事故を契機としてシビアアクシデントの対策がとられ,新規原発についてはシビアアクシデント対策抜きには考えられず,設計段階からの規制が明らかとなっていることから,シビアアクシデントの発生を想定しなかった本件安全審査は違法である旨主張する。 しかし,証拠(甲31,32,253,254,乙10ないし15,70,71,94,95,111,131,136,137,141)及び弁論の全趣旨によると,aシビアアクシデント(過酷事故)は,設計基準事象を大幅に超える事象であって,安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却又は反応度制御ができない状態であり,炉心の重大な損傷に至る事象のことであるから,原子炉設置許可の段階における安全審査の対象である基本設計の安全性にかかわる事項との関係では,その安全確保対策を含めた安全規制上の措置が要求されているものではないこと,b原子力安全委員会の平成4年5月- 593 -28日付け「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシ 事項との関係では,その安全確保対策を含めた安全規制上の措置が要求されているものではないこと,b原子力安全委員会の平成4年5月- 593 -28日付け「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて(乙70)は,我」が国の原子炉施設の安全性が多重防護の思想に基づき厳格な安全確保対策が行われているので,シビアアクシデントが工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性が十分低くなっているものの,更にこのリスクを一層低減するものとしてアクシデントマネージメントの整備を実施し,原子炉設置者及び行政庁に対してそのために一層の努力を要望したものであること,c上記「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」は,平成9年10月20日,その一部が「今後新しく設置される原子炉施設については,当該原子炉施設の詳細設計の段階以降速やかに,アクシデントマネージメントの実施方針(設備上の具体策,手順書の整備,要員の教育訓練等)について,行政庁から報告を受け,検討することとする(乙136)と改訂されているので,。」シビアアクシデントは,詳細設計段階以降の安全規制の対象であること,d本件原子炉施設を含む既存軽水型原子力発電所のアクシデントマネージメントの整備については,平成7年12月7日,原子力安全委員会により了承されていること(乙137)が認められる。 そうすると,控訴人らの主張に係るシビアアクシデントは,原子炉設置許可の段階における安全審査の対象ではないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 ③火災事故における安全性の有無について控訴人らは,a動燃の東海再処理工場アスファルト固化処理施設において,平成9年3月11日に はないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 ③火災事故における安全性の有無について控訴人らは,a動燃の東海再処理工場アスファルト固化処理施設において,平成9年3月11日に発生した動燃事故は,我が国の原子力史上最悪の事故であるが,安全審査では爆発など全く想定されず,潜在的危険性も小さいと考えられてきた施設でもこのような大規模な爆- 594 -発事故が発生し得ることを示しているので,潜在的な危険が極めて大きい原発で事故が発生した場合,どれほどの悲惨な事故になるかを示唆していること,b安全審査において,火災・爆発事故の対応及び放射性物質の密封機能が机上の空論であり,これにつき実質的審査が行われていないので,動燃事故を契機に被告行政庁には安全審査能力が欠落していることが明らかとなっていること,c本件安全審査においては,抽象的に消火設備を設けることのみを確認したにとどまり,本件原子炉における火災事故については全く事故解析を行っていないが,本件原子炉に対する防火対策では火災の拡大を防止することはできないことから,火災事故の評価を一切しなかった本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,証拠(甲272,273)及び弁論の全趣旨によると,動燃事故については,規制法第5章の規定により規制される「再処理の事業」を行う施設である再処理施設において発生した火災・爆発事故であって,その発生原因についても,東海再処理工場アスファルト固化処理施設固有の特性に基づくものであることが認められるから,控訴人らの上記主張に係る火災事故の内容は,本件安全審査で審査の対象となる原子炉施設の安全性にかかわる事項ではないというべきである。 のみならず,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論 災事故の内容は,本件安全審査で審査の対象となる原子炉施設の安全性にかかわる事項ではないというべきである。 のみならず,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,本件原子炉施設について,ai火災発生防止,ii早期火災検知及び早期消火,iii必須の安全機能が火災により損なわれないことの三つの原則を組み合わせ,いわゆる「火災についての深層防護(多重防護」の設計思想で火災対策設計がなされていること(乙3の8)-35頁,b安全上重要な構築物,系統及び機器については,可能)- 595 -な限り不燃性・難燃性材料で構成することとされ,特にケーブルについては,難燃性ケーブルを使用するとともに,必要に応じ,延焼防止塗料を併用するとされている上,安全保護系,原子炉停止系,残留熱除去系,工学的安全施設などの安全上重要な系統及びこれらのケーブル,配管は,独立性を持たせるため物理的分離を図り,適切な離隔距離をとり,又は必要に応じて障壁を設けることとされていること,cこれらの物理的配置の設計方針と,消火設備及び消火水配管の設計を総合的に組み合わせ,単一火災発生により,重複性,独立性を持つ両系統が同時にその機能が損なわれることのない設計とするなど,火災に対する対策がとられていること(乙3の8-48ないし49頁)から,火災発生により本件原子炉施設の安全性が損なわれることはなく,火災が原子炉の安全評価で想定する事故の誘因になること及び事故を拡大することは考えられないこと(乙3の10-100頁)が確認されていることが認められる。 そうすると,火災に対する本件安全審査には合理性があるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 ④JCO事故と本件安全審査について控訴人らは,aJCOの事故 頁)が確認されていることが認められる。 そうすると,火災に対する本件安全審査には合理性があるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 ④JCO事故と本件安全審査について控訴人らは,aJCOの事故の教訓から,従来のような事業者への信頼に基づく安全審査では足りず,安全装置の意図的なバイパスをも想定して多重故障を想定すべきであること,bJCO事故に照らすと,本件安全審査における最大想定事故の想定があまりにも過小であり,非現実的であることが裏付けられることから,本件安全審査には看過し難い瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記1(2)及び5(2)のとおり,原子炉の設置の許可の段階においては,専ら当該原子炉の基本設計のみが規制の対象となるところ,JCO事故は,規制法第3章に規定される「加工の事業」を行う- 596 -施設における事故であり,本件安全審査で審査の対象となる原子炉設置許可の段階の安全性にかかわる事項ではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は,その前提を欠いているから失当である。 (ス)検査能力等の有無について①控訴人らは,a日立の子会社の株式会社日立エンジニアリングサービスの更に下請業者である株式会社伸光において,昭和57年ころから約15年間にわたり,溶接後に行う焼鈍という熱処理の際の温度記録をねつ造していたことが平成9年9月に発覚したことにより,それまで当該検査をしていた指定検査機関と当時の資源エネルギー庁にはその検査を行う能力がなく,これを統括する経済産業省には規制法所定の安全審査を行う検査能力のないことが判明したので,原子炉設置許可段階の安全審査において,その基本設計の安全性にかかわる事項のみを審査対象に限定することは不合理というべきであるから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲 たので,原子炉設置許可段階の安全審査において,その基本設計の安全性にかかわる事項のみを審査対象に限定することは不合理というべきであるから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲279の①ないし③,280ないし288,289の①ないし④)及び弁論の全趣旨によると,配管溶接工事は,溶接検査(電事法46条)により規制されることが認められる。 そして,上記1(2)のとおり,原子炉の設置の許可の段階においては,専ら当該原子炉の基本設計のみが規制の対象となるのであって,後続の設計及び工事方法の認可(規制法27条)の段階では規制の対象とされる当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法は規制の対象とはならないものと解すべきところ,上記認定の溶接検査は,規制法所定の安全規制である基本設計段階,詳細設計段階を経た後の工事段階における施工時検査に区分されるものであるから,原子炉設置許可の安全審査とは関係がないというべきである。 - 597 -のみならず,主務大臣(本件処分時は内閣総理大臣)の原子炉設置許可に係る審査権限は,規制法によって認められたものであって,個々の審査において主務大臣に検査能力があること自体が安全審査の要件となるものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は,その前提を欠いているから失当である。 ②また,控訴人らは,当時の経済産業省においては,英国BNFL(イギリス原子燃料公社)が日本政府に対し,平成11年11月8日,ペレット外径データのねつ造の疑いがあるMOX燃料が高浜原発4号機の燃料に使用されていることを明示する書簡を送付していたことが判明したにもかかわらず,不正を積極的に解明しようとせず,可能な限りそれを隠蔽して検査を通そうとするなど,その検査能力を欠いていることが判明したので,原子炉設置 とを明示する書簡を送付していたことが判明したにもかかわらず,不正を積極的に解明しようとせず,可能な限りそれを隠蔽して検査を通そうとするなど,その検査能力を欠いていることが判明したので,原子炉設置許可段階の安全審査において,その基本設計の安全性にかかわる事項のみを審査対象に限定することは不合理というべきであるから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲337,338,339の①ないし⑦,340,341,342の①②,343)及び弁論の全趣旨によると,燃料ペレットの外径データは,燃料体検査(電事法45条)により規制されることが認められる。 そして,上記1(2)のとおり,原子炉設置許可の段階の安全審査においては,当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするから,上記認定の燃料ペレットの外径データの検査は,規制法所定の安全規制においては施工時検査に区分されるので,原子炉設置許可の安全審査とは関係がないというべきである。 のみならず,上記①のとおり,主務大臣の原子炉設置許可に係る- 598 -審査権限は,規制法によって認められたものであって,個々の審査において主務大臣に検査能力があること自体が安全審査の要件となるものではないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 ③さらに,控訴人らは,当時の経済産業省の検査等においては,美浜原発3号機の建設に際し設計基準強度を下回る危険がある程の加水が行われていたことをチェックすることができず,しかも,経済産業省は,これにつき何らの発表もせず,その対策も講じていないので,検査能力を欠いていることが明らかであるから,原子炉設置許可段階の安全審査において,その基本設計の安全性にかかわる事項のみを審 経済産業省は,これにつき何らの発表もせず,その対策も講じていないので,検査能力を欠いていることが明らかであるから,原子炉設置許可段階の安全審査において,その基本設計の安全性にかかわる事項のみを審査対象に限定することは不合理であり,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲344の①ないし③)及び弁論の全趣旨によると,コンクリート工事は工事計画認可及び使用前検査(電事法41条,43条)により規制されるものであることが認められる。 そして,上記1(2)のとおり,原子炉設置許可の段階の安全審査においては,当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするから,上記認定のコンクリート工事の検査は,規制法所定の安全規制においては施工時検査に区分されるので,原子炉設置許可の安全審査とは関係がないというべきである。 のみならず,上記①及び②のとおり,主務大臣の原子炉設置許可に係る審査権限は,規制法によって認められたものであって,個々の審査において主務大臣に検査能力があること自体が安全審査の要件となるものではないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているというべきである。 - 599 -したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 (セ)想定される飛来物に対する設計上の考慮の有無について控訴人らは,①イスラム原理主義者により2001年(平成13年)9月11日に敢行された米国ニューヨークの世界貿易センター及び米国国防総省(ペンタゴン)対する乗っ取り旅客機による自爆テロは,TMI原発を標的にしていた可能性があったこと,②本件原子炉敷地からわずか東5㎞地点の上空に定期航空路があるので,計器の誤差や風の影響で民間航空機が墜落し本件原発に対し影響を与えることがあり得るにもかかわらず,これを全く考慮しないことは,安全設計 件原子炉敷地からわずか東5㎞地点の上空に定期航空路があるので,計器の誤差や風の影響で民間航空機が墜落し本件原発に対し影響を与えることがあり得るにもかかわらず,これを全く考慮しないことは,安全設計審査指針(乙14)の指針5に反すること,③我が国の原子力施設の安全審査において,ω10の核燃料サイクル施設では,航空機墜落事故が評価されていることから,航空機墜落に対する防護設計をしていない本件原子炉の設計を容認した本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,安全設計審査指針(乙14)は「指針5.飛来物等に対す,る設計上の考慮」において「安全上重要な構築物,系統及び機器は,想定される飛来物(中略)の影響等から生じるおそれのある動的影響,,熱的影響又は溢水によって原子炉の安全を損なうことのない設計であること」と定めているところ,ここでいう「想定される」とは,原子。 「炉施設の設計の妥当性を評価する観点から,原子炉施設で生じ得る各種の事故事象を包絡し,代表する事象が安全評価上考慮すべき頻度で発生すると考えることをいう(乙14)のであって,本件原子炉施設の安」全設計において,原子炉施設に航空機が墜落することを必ず考慮することを求めているわけではないというべきである。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,14,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,当時の安全設計審査指針(乙14)のうち「指針5.飛来物等に- 600 -対する設計上の考慮(乙14の985頁)に基づき,本件原子炉施設」の社会環境について検討されたものであるところ,a本件原子炉敷地周辺に飛行場はなく,最寄りの空港は,新潟空港で本件原子炉敷地から75㎞離れているが,本件原子炉敷地の東約5㎞及び西約20㎞離れ 設」の社会環境について検討されたものであるところ,a本件原子炉敷地周辺に飛行場はなく,最寄りの空港は,新潟空港で本件原子炉敷地から75㎞離れているが,本件原子炉敷地の東約5㎞及び西約20㎞離れた位置の上空にそれぞれ新潟-名古屋間及び新潟-小松間を結ぶ国内線の航空路があり,本件原子炉敷地上空は,前者の保護空域とされていることが確認されたこと,そして,b原子力施設付近の上空の飛行については,できる限りこれを避けるよう,当時の運輸省及び防衛庁から運航者に指導等がなされ,また,航空法(昭和27年法律231号)81条に規定する最低安全高度以下の飛行についての許可はされず,更に航空法73条の2に基づき,機長は出発前に航空情報等を確認しなければならないことが確認されたこと,さらに,c本件原子炉施設の航空機墜落の安全性については,社会環境から考えて原子炉施設上空を航空機が飛行することは想定し難く,本件原子炉施設に航空機が墜落する可能性は極めてまれであって,保護空域となっている本件原子炉施設上空を飛行する民間機の航空便数,機種等について調査を行った結果を考慮しても,航空機の墜落による原子炉施設への影響については確率的にみて考慮する必要はないと判断されたこと(乙4の26及び27頁)が認められる。 ところで,控訴人らが主張する航空機による自爆テロは,原子炉施設自体に由来する安全性に関する事象ではなく,外部的な,しかも人為的な出来事であるから,原子炉施設の安全審査において,このような出来事については,希有なあらゆる事象を想定することまでは必要でなく,したがって,上記安全設計審査方針における「想定される飛来物」についての指針及び用語の定義は合理的であるということができる。そして,控訴人らが主張するような航空機による自爆テロは,近時の世界的な政治情勢や て,上記安全設計審査方針における「想定される飛来物」についての指針及び用語の定義は合理的であるということができる。そして,控訴人らが主張するような航空機による自爆テロは,近時の世界的な政治情勢やテロの方法・手段の凶悪化に伴って生じたものであるところ,- 601 -本件原子炉施設において,このような自爆テロが安全評価上評価すべき頻度で発生すると認めるに足りる証拠はないから,想定される飛来物に対する本件安全審査の判断には合理性があるというべきであって,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 (ソ)燃料体に対する本件各変更許可処分の違法事由の有無について①現在の設計の9行×9列型燃料の破裂の有無について控訴人らは,本件原子炉の燃料体について,本件各変更許可処分により,現在の設計では9行×9列型燃料が採用されているが,これは破裂を生じやすいものであるので,当該燃料体に対する本件各変更許可処分は違法であるから,本件処分が違法となる旨主張する。 しかし,上記1(3)のとおり,本件処分と本件各変更許可処分とは別個の行政処分であり,本件原子炉施設の設置変更許可処分は本件訴訟の審理の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 なお,付言するに,証拠(乙138ないし140)及び弁論の全趣旨によると,a燃料体に対する本件各変更許可処分に係る安全審査においては,9行×9列型燃料の燃料集合体に関し,各構成要素が,原子炉内における使用期間中を通じ,通常運転中及び運転時の異常な過渡変化においても,燃料棒の内外圧差,燃料及び他の材料の照射,負荷の変化により起こる圧力・温度の変化,化学的効果,静的・動的荷重,燃料ペレットの変形,燃料棒内封入ガスの組成の変化等を 転時の異常な過渡変化においても,燃料棒の内外圧差,燃料及び他の材料の照射,負荷の変化により起こる圧力・温度の変化,化学的効果,静的・動的荷重,燃料ペレットの変形,燃料棒内封入ガスの組成の変化等を考慮しても十分な強度を有し,その機能が保持できる設計であることを確認していること(乙140の844頁,b9行×9列型燃料体の強度につ)いては,燃料被覆管の肉厚が薄くなり,燃料被覆管に加わる応力が小さくなっていることをもって,これが特に破損しやすいというもので- 602 -はないこと,c9行×9列型燃料では,燃料被覆管肉厚の変更が行われているが,ペレットのスエリングを考慮しても,ペレット-被覆管の機械的相互作用に影響を与えないことが実験により確認されていること(乙140の849ないし850頁,dペレットの変形等に基)づく燃料被覆管の局所的な歪みによる損傷を減少させる対策としては,高燃焼度8行×8列型燃料と同様に,短尺チャンファ付きペレットの使用とともに,延性の大きなジルコニウムを内張りした燃料被覆管の採用等が行われていること(乙140の850頁,859頁)が認められるから,9行×9列型燃料においても,ペレット-被覆管の機械的相互作用が問題になることはないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ②現在の設計の9行×9列型燃料による暴走事故の有無について控訴人らは,現在の設計の9行×9列型燃料による暴走事故の危険性があるので,当該燃料体に対する本件各変更許可処分は違法であるから,本件処分が違法となる旨主張する。 しかし,上記①のとおり,本件各変更許可処分は,本件処分とは別個の行政処分であるので,本件訴訟の審理の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 なお,付言するに,上記①のとおり 上記①のとおり,本件各変更許可処分は,本件処分とは別個の行政処分であるので,本件訴訟の審理の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 なお,付言するに,上記①のとおり,9行×9列型燃料の健全性は維持されおり,控訴人らの主張は合理的根拠を欠いているというべきである。そして,本件全証拠によっても,控訴人らの主張に係る暴走事故を想定することはできないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 (タ)本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA(冷却材喪失事故)解析の合理性の有無について①臨界流モデルと対流熱伝達について- 603 -控訴人らは,a本件原子炉においては,本件各変更許可処分に基づき,炉心の燃料は当初設計の8行×8列型から新型8行×8列型,新型8行×8列型ジルコニウムライナ,高燃焼度8行×8列型,9行×9列型(A型,B型)と変更されてきたが,東京電力は,本件原子炉に装荷する燃料をいつでも新型8行×8列型,新型8行×8列型ジルコニウムライナ,高燃焼度8行×8列型に戻すことができる体裁となっていること,b上記の各炉心燃料が併存している結果,事故解析もまたそれぞれの燃料を採用した際の解析が併存しているが,本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA解析は誤っていることから,本件処分は違法である旨主張する。 しかし,上記(ソ)①②のとおり,本件各変更許可処分は,本件処分とは別個の行政処分であるので,本件訴訟の審理の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているのでそれ自体失当である。 なお,付言するに,安全評価においては,その解析の結果が適切か否かが問題となるものの,解析結果がどの程度変わるのかを評価する必要はないというべきであるから,控 を欠いているのでそれ自体失当である。 なお,付言するに,安全評価においては,その解析の結果が適切か否かが問題となるものの,解析結果がどの程度変わるのかを評価する必要はないというべきであるから,控訴人らの上記主張は合理的根拠を欠いているというべきである。そして,本件全証拠によっても,控訴人らの主張に係るLOCA解析の誤りを認定することはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ②下部プレナムフラッシングと炉心入口オリフィス部CCFLについて控訴人らは,a本件原発のLOCA解析は,下部プレナムフラッシングによる冷却と,炉心入口オリフィス部CCFLによる炉心冷却材流出の阻害・炉心冷却材の保持を前提としていること,そして,bこれらを前提にしなければ大破断LOCAでは燃料被覆管最高温度が1- 604 -200℃を超えて指針の基準を満たさない上,そのような温度に達すると激しく生じる水-ジルコニウム反応による発熱・燃料被覆管の酸化により炉心溶融が避けられないこと,しかし,c下部プレナムフラッシングも炉心入口オリフィス部CCFLも実規模のBWRで現実に生じるか否か,そしてその程度についてはなお実証されていないというべきであること,つまり,dこれまでの実験では,考慮されたのは体積比のみであり下部プレナムの形状は全く模擬されておらず,体積比で縮小して燃料棒長さは実炉の半分か実炉長にしたため水平方向では実炉を模擬しているとはいえないため減圧沸騰の発生箇所と冷却材の分布・位置関係も実炉を模擬できていないこと,さらに,e本件原子炉の現在設計である9行×9列型A型燃料の大破断LOCA解析では,事故後15秒まで高出力燃料集合体の部分の水位が急速に低下し,15秒時点から急に水位が上昇してしばらく全体が冠水した後に再度水位が下がるとされていること, ×9列型A型燃料の大破断LOCA解析では,事故後15秒まで高出力燃料集合体の部分の水位が急速に低下し,15秒時点から急に水位が上昇してしばらく全体が冠水した後に再度水位が下がるとされていること,そして,fこの15秒時点からの水位上昇が下部プレナムフラッシングの効果であるが,これがないものと仮定すると,高出力燃料集合体においては15秒時点でも急速な水位の低下が止まらず,遅くとも17秒時点には中心部が露出すると考えられること,このため,g17秒時点から高出力燃料集合体の最高出力部分(中心部)が露出し,設置変更許可申請書の解析通りに65秒時点で露出が終了するとした場合の燃料被覆管温度を計算すると,事故後17秒時点での崩壊熱は定格運転時の4.6%に相当すること,また,h事故後17秒から65秒までの燃料被覆管温度の上昇を計算すると,炉心露出終了時点(65秒時点)での燃料被覆管温度は1701.04K(1428℃)となり,指針の基準である1200℃を軽く超えることになること,そして,i同様に9行×9列型B型燃料について同様の前提で燃料被覆管温度を計算すると,露出終了時点- 605 -(60.7秒時点)で1649.46K(1376.46℃)となり,指針の基準である1200℃を軽く超えることになること等から,本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA解析は誤っているので,本件処分は違法である旨主張する。 しかし,上記①のとおり,本件各変更許可処分は,本件処分とは別個の行政処分であるので,本件訴訟の審理の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いておりそれ自体失当である。 なお,付言するに,証拠(乙3,19,138ないし140,142)及び弁論の全趣旨によると,a下部プレナムフラッシングは,配管の破断により 人らの上記主張はその前提を欠いておりそれ自体失当である。 なお,付言するに,証拠(乙3,19,138ないし140,142)及び弁論の全趣旨によると,a下部プレナムフラッシングは,配管の破断によりシュラウドの外側の水位が下がることにより冷却材上部の水蒸気が破断口から流出して原子炉圧力が急激に低下し,このような減圧により水が沸騰するという現象であるが,沸騰水型原子炉(BWR)においても,配管破断後に下部プレナム冷却材の飽和圧以下に低下すればフラッシングが起こること,bフラッシングの程度は主に減圧速度により決まり,この速度は容器体積と,容器内に存在する冷却材の質量の出入りとエネルギーの出入りから求められる冷却材体積時間変化により定まるので,体積比を考慮すれば十分に実機のLOCA時減圧速度を模擬することが可能であること,c炉心入口オリフィス部のCCFLについては,単に吹き上げ蒸気により落下水量が制限されるという局所的な現象であるため,ROSA-ⅢやTBL実験ではなく他の小規模実験において現象発生の有無とその程度が実証されていること(乙142の11ないし17頁,d下部プレナムフ)ラッシングの解析においては,燃料のわずかな圧力挙動等の違い等により,下部プレナムフラッシングの発生回数にこの程度の差が生ずることは工学的及び専門技術的観点から明らかであること,e9行×9- 606 -列型A型燃料と9行×9列型B型燃料のフラッシング挙動の差異については,下部プレナムフラッシングの理論的な根拠を否定するものではないことが認められるから,控訴人らの主張はその前提において失当というべきである。 ③シュラウドのひびについて控訴人らは,a下部プレナムフラッシングと炉心入口オリフィス部CCFLが実規模のBWRの炉心全域で生じるか否か及びその程度は実証 の前提において失当というべきである。 ③シュラウドのひびについて控訴人らは,a下部プレナムフラッシングと炉心入口オリフィス部CCFLが実規模のBWRの炉心全域で生じるか否か及びその程度は実証されていないが,仮に,これが起こるものとしても,それは炉心シュラウドが健全で炉心シュラウド外の早期に冷却材が流出する部分(ダウンカマ部)と炉心シュラウド内との接点がジェットポンプ(を介して下部プレナム)に限定されるということが大前提であること,b炉心シュラウドに周方向のひび割れが進展して破断に至った場合,炉心シュラウドの破断口の方がジェットポンプ開口部よりはるかに大きくなり,減圧沸騰は下部プレナムでよりも炉心シュラウド内でより激しく生じることになること,cその結果,減圧沸騰による圧力は下部プレナムから炉心に向けて上向きに働くよりも炉心内から下部プレナムに向けて下向きに働く方が強くなることもあり得うるので,そうすると下部プレナムフラッシングも炉心入口オリフィス部CCFLもないという事態になり得ることから,本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA解析は誤っているので,本件処分は違法である旨主張する。 しかし,上記①及び②のとおり,本件各変更許可処分は,本件処分とは別個の行政処分であるので,本件訴訟の審理の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 なお,付言するに,証拠(乙143,144)及び弁論の全趣旨によるとa控訴人らの主張に係る下部プレナムフラッシング及び炉心入- 607 -口オリフィスに影響を及ぼす事態とは,冷却材喪失事故の発生と同時に,炉心シュラウドの全周破断が発生する事態であると解されるが,事業者の行う自主検査により,破断に至る前にひびの発生を確認し得ることから,これらの事態が同時発生するこ は,冷却材喪失事故の発生と同時に,炉心シュラウドの全周破断が発生する事態であると解されるが,事業者の行う自主検査により,破断に至る前にひびの発生を確認し得ることから,これらの事態が同時発生することは考えにくく,全周破断が放置されたまま運転されているという状況は想定できないこと,b「総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会(第7回」において,本件原子炉)のシュラウドのひびについて十分な構造強度を有しているとする事業者の評価結果が妥当であることが確認されているので(乙143,)全周破断することは考えられないこと,c米国においても,シュラウドにひびが存在する状態で運転するリスクについていくつかの評価がなされているが,このような状態に関するリスクは十分小さいとされていること(乙144の2頁)が認められるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 ④熱伝達係数について控訴人らは,a炉心入口オリフィス部CCFLがあるとしても,その場合の対流熱伝達係数を10のオーダー(単位はkcal/㎡・h・℃)で期待することは相当でないこと,b現在設計での解析において中小破断LOCAの解析では,炉心部の冷却材がなくなった後について対流熱伝達係数を10kcal/㎡・h・℃程度としているのみならず,それ以前の炉心の下部に冷却材が保持されていると評価されている時点でも対流熱伝達係数は101のオーダーとされている(9行×9列型A型燃料の解析では炉心の冷却材がなくなる373秒時点より20秒以上前から対流熱伝達係数は101のオーダー:20前後とされているし,9行×9列型B型燃料の解析では同様に炉心の冷却材がなくなる370秒時点より20秒以上前から対流熱伝達係数- 608 -は101のオーダー:20前後とされてい のオーダー:20前後とされているし,9行×9列型B型燃料の解析では同様に炉心の冷却材がなくなる370秒時点より20秒以上前から対流熱伝達係数- 608 -は101のオーダー:20前後とされている)こと,c中小破断LOCAの解析で用いている熱伝達係数を大破断LOCA解析では変えているのは,そうしないと安全審査を通る結論を導けないからであることから,本件各変更許可処分に係る現在の設計におけるLOCA解析は誤っているので,本件処分は違法である旨主張する。 しかし,上記①,②及び③のとおり,本件各変更許可処分は,本件処分とは別個の行政処分であるので,本件訴訟の審理の対象とはならないというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 なお,付言するに,証拠(乙138ないし140,142)及び弁論の全趣旨によると,a熱伝達係数は,昭和61年7月に原子力発電技術顧問会(基本設計)LOCA検討会が報告した「沸騰水型原子炉のLOCA/ECCS性能評価コード(SAFER)について」においてその妥当性が確認されている各種相関式によって導かれていること(乙142の18ないし29頁,b中小破断LOCAと大破断L)OCAで熱伝達係数が異なっているのは,減圧率及び炉心露出の時間の違いがあり,大破断LOCAの方が吹き上げ蒸気流量が多く,この蒸気流による対流熱伝達の効果が大きいことによって燃料被覆管最高温度を与える位置での熱伝達係数が大きくなっているためであること(乙142の18ないし33頁)が認められる。そうすると,控訴人ら主張に係る各熱伝達係数の違いは,大破断LOCAと中小破断LOCAの現象・内容の差異に基づいて生じているものであるから,控訴人らの主張は失当である。 (チ)プルサーマル計画と本件安全審査について控訴人らは,東京電力が,本件原子力発電 LOCAと中小破断LOCAの現象・内容の差異に基づいて生じているものであるから,控訴人らの主張は失当である。 (チ)プルサーマル計画と本件安全審査について控訴人らは,東京電力が,本件原子力発電所3号機において,使用済燃料の再処理によって回収されるプルトニウムとウランを混合したMOX燃料を軽水炉で使用するプルサーマル計画を実施することを予定して- 609 -いるにもかかわらず,本件安全審査の段階では,MOX燃料の使用を前提とした安全審査を行っていないので,本件安全審査には重大な瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実によると,MOX燃料を使用するのは本件原子力発電所3号機であることが認められるから,プルサーマル計画については,同発電所1号機(本件原子炉)の基本設計の安全性にかかわる事項ではないのみならず,本件訴訟は,本件原子炉の設置許可処分を対象とするものであって,同発電所3号機に係る処分を対象とするものでないから,控訴人らはこれを理由に本件処分の取消しを求めることはできないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 (ツ)小括以上のとおり,上記前提となる事実にかんがみると,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,事故防止対策に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,事故防止対策との関連において,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認められない。 (4)本件原子炉施設の地質・地盤及び地震に関係する安全対策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺に 策に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ア審査基準に不合理な点があるか否か。 - 610 -(ア)地質・地盤及び地震に関係する安全対策に係る審査基準について①上記前提となる事実によると,本件原子炉施設の地質・地盤及び地震に関係する安全対策に係る本件安全審査の調査審議においては,原子力委員会が指示した立地審査指針(乙10)及び安全設計審査指針(乙14)が用いられたことが認められる。 ②ところで,上記前提となる事実及び上記(3)ア(ア)の認定事実と証拠(甲33,105,乙10,14,94,111)及び弁論の全趣旨によると,本件処分後において,立地審査指針が平成元年3月27日に一部改訂された上,地質・地盤及び地震に係る安全対策に関係するものとして,a新安全設計審査指針(平成2年8月30日原子力安全委員会決定。一部改訂平成13年3月29日同委員会,b安全評)価審査指針(昭和53年9月29日原子力委員会策定(甲33,一)部改訂平成元年3月27日原子力安全委員会,平成2年8月30日同委員会決定(乙94。一部改訂平成13年3月29日同委員会,))c地質・地盤の手引き(昭和53年8月23日原子炉安全専門審査会作成(甲105,及びd耐震設計審査指針(昭和53年9月原子))力委員会決定。一部改訂昭和56年7月20日(乙111・平成1)3年3月29日原子力安全委員会) 年8月23日原子炉安全専門審査会作成(甲105,及びd耐震設計審査指針(昭和53年9月原子))力委員会決定。一部改訂昭和56年7月20日(乙111・平成1)3年3月29日原子力安全委員会)などが定められていること,しかし,これらは,いずれもそれまでの原子炉施設の知見の蓄積を踏まえて,原子炉施設の地質・地盤及び地震に係る審査を客観化するために策定されたものであって,地質・地盤及び地震に係る審査の基本的な考え方は,本件安全審査当時のものが維持されており,本件安全審査の基礎とされた本件処分当時の知見にその後の新しい科学技術上の知見等からみて誤りであったものとして,新たな指針等を策定したものではないことが認められる。 (イ)設計用地震加速度の合理性の有無について- 611 -控訴人らは,本件安全審査における設計用地震加速度の想定は,本件処分後に定められた耐震設計審査指針(乙111)に適合していないので,本件安全審査は不合理であるから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲33,105,乙10,14,94,111,116)及び弁論の全趣旨によると,資源エネルギー庁作成に係る「指針策定前の原子力発電所の耐震安全性(平成7年9月(乙116)は,)」原子力発電所が想定されるいかなる地震力に対してもこれが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有していることを要するとして定められたものであるが,本件原子炉施設の耐震設計については,耐震設計審査指針(昭和53年9月原子力委員会決定。一部改訂昭和56年7月20日原子力安全委員会(乙111)に適合し,同指針に定められ)ている設計用最強地震動及び設計用限界地震動の最大加速度の数値等を基に審査したとしても,その耐震安全性が確保されるものとなっていることが確認されている 員会(乙111)に適合し,同指針に定められ)ている設計用最強地震動及び設計用限界地震動の最大加速度の数値等を基に審査したとしても,その耐震安全性が確保されるものとなっていることが確認されていること,その後,同指針については,静的地震力の算定法等について新たな知見により見直しがなされ,平成13年3月29日に原子力安全委員会により一部改訂されているが,本件原子炉施設の耐震設計においては,同改訂後の耐震設計審査指針に基づく耐震安全性が確保されていることが認められる。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 (ウ)鉛直地震力の考慮の有無について控訴人らは,平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震(M7. 2)においては,鉛直地震力の影響によって被害が出ているが,原子力発電所を含めて従来の各種設計基準が,縦揺れを軽視しているから,鉛直地震力の考慮をしていない本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲33,105,240,241,243ないし24- 612 -6,乙10,14,94,111,113)及び弁論の全趣旨によると,控訴人らの主張する被害は,位置,構造等が大きく異なる高速道路や新幹線の橋脚に関するものであるが,高速道路や鉄道橋梁の耐震設計基準と原子炉施設の耐震設計基準は相違しているのみならず,原子炉施設に被害が生じたわけではなく,一般に地震時の構造の設計を支配するのは水平地震力であり,鉛直地震力の影響は少ないものと考えられており,兵庫県南部地震における構造物の被害についても,上下動の影響はあったとしても主たる原因は大きな水平動であったとの報告があること,そして,原子力安全委員会作成の平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書(乙113)におい」て,原子力施設の耐震設計は な水平動であったとの報告があること,そして,原子力安全委員会作成の平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書(乙113)におい」て,原子力施設の耐震設計は「耐震設計審査指針(乙111の65,」頁)に基づき,基準地震動の最大加速度振幅の1/2の値を鉛直震度として求めた鉛直地震力を水平地震力と同時に不利な方向に組み合わせて作用させ,評価しているところ,兵庫県南部地震においても水平方向の最大加速度が発生した時刻においての水平方向に対する上下方向の加速度振幅の比は,それを分析した結果,1/2を大きく下回るものであり,「耐震設計審査指針」の上記鉛直地震力の評価は,兵庫県南部地震に照らしても,その妥当性が損なわれるものではないことが確認されていること(乙113の23頁,その後,同指針については,平成13年3)月29日に原子力安全委員会により一部改訂されているが,本件原子炉施設の耐震設計においては,基本的には同改訂後の耐震設計審査指針に基づく耐震安全性が確保されていることが認められる。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 (エ)活断層の評価期間の合理性の有無について控訴人らは,耐震設計審査指針(乙111)における耐震設計については,兵庫県南部地震等の現実の地震発生状況などに照らすと,活断層- 613 -の評価期間(乙111の72ないし73頁)が不十分であって,その合理性はないから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(乙111,113)及び弁論の全趣旨によると,上記耐震設計審査指針で示されている耐震設計上考慮すべき活断層の評価期間については,原子力安全委員会作成の平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書(乙113」の23ないし2 針で示されている耐震設計上考慮すべき活断層の評価期間については,原子力安全委員会作成の平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書(乙113」の23ないし24頁)においても,その妥当性が確認されていること,その後,同指針については,平成13年3月29日に原子力安全委員会により一部改訂されているが,本件原子炉施設の耐震設計においては,基本的には同改訂後の耐震設計審査指針に基づく耐震安全性が確保されていることが認められる。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 (オ)直下地震の想定の有無について控訴人らは,①活断層のないところで平成12年10月6日に鳥取県西部地震(M7.3の内陸直下型の地震)が発生しているので,耐震設計審査指針(乙111)においてM6.5の直下地震を想定するとしていることは合理性を欠いていること,②原子力安全委員会は,鳥取県西部地震の発生を契機に直下地震の想定をM6.5では足りないと認め,現行の耐震設計審査指針を見直す方針を固めていることから,直下地震の想定をしていない本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(乙111,113,117)及び弁論の全趣旨によると,①「耐震設計審査指針(乙111の66ないし71頁)における」直下地震の想定は,過去の地震歴,原子炉施設の敷地及び敷地周辺の地質・地盤に係る調査等の結果,その近傍に直下地震が発生するという事態が考えられない場合においても,十分な耐震安全性を確保するという見地から,念のためこれを設計用限界地震の一つとして無条件で想定す- 614 -べきものとされているにすぎないこと,②上記耐震設計審査指針については,原子力安全委員会作成の平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書 想定す- 614 -べきものとされているにすぎないこと,②上記耐震設計審査指針については,原子力安全委員会作成の平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書」において,兵庫県南部地震の状況を把握し,これを踏まえて,摘出した「耐震設計審査指針」の考え方のなかで検討すべき事項について詳細に検討を加えた結果,兵庫県南部地震を踏まえても我が国の原子力施設の耐震安全性を確保する上で基本となる耐震設計審査指針の妥当性が損なわれるものではないとの結論を得た旨確認されていること(乙113の24頁,③原子力)安全委員会は,平成13年6月25日付けで現行の「安全審査に用いられる関連指針類に最新の知見等を反映し,より適切な指針類とするために必要な調査審議を行」うことを指示しているが(乙117,鳥取県)西部地震が発生したことによって直下地震の想定に関する現行の「耐震設計審査指針」の規定が直ちに不合理となったとしてこれを見直すよう指示したことはないことが認められる。 そうすると,控訴人らの主張は,単に鳥取県西部地震が活断層がないところで発生した内陸直下型地震であることのみを理由として本件安全審査の不合理をいうものであって,上記のような「耐震設計審査指針」が科学的に不適当であることを具体的に指摘するものではないから失当というべきである。 (カ)小括以上のとおり,上記前提となる事実により認められる本件原子炉施設の地質・地盤及び地震に関係する安全対策に係る本件安全審査の審査内容にかんがみると,上記調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はないというべきである。 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震- 615 体的審査基準に不合理な点はないというべきである。 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震- 615 -が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)本件原子炉敷地の支持地盤の安定性の有無について①活発な地殻変動の存在について控訴人らは,本件原子炉施設が海面下40mまで掘削され,沖積層,番神砂層,安田層の土砂を取り去り,直接西山層泥岩を基礎地盤として建設されているが,a本件原子炉施設の敷地が羽越活褶曲帯に属し,地形測量の結果活発な地震活動が存在すること,b柏崎平野の沖積層の地形変化が著しいこと,c柏崎平野の地盤の乱れが著しいこと,d遺跡の埋没状況,安田層及び番神砂層下部水成層の標高変化が大きいこと,e荒浜砂丘の標高が高いこと,f試掘坑や本件原子炉施設の敷地周辺に見られる安田層や番神砂層を切る断層の走向が一致していることなどに照らすと,本件原子炉施設の敷地周辺は,現在も褶曲運動が継続しており,危険であるから,その支持地盤の安定性に関する本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第三の二及び三1。 )そして,証拠(甲96の②ないし④,104及び218)及び弁論の全趣旨によると,a地質調査の調査・研究報告においては,(a)東山背斜,中央油田背斜等の褶曲の背斜部は,現在も隆起し,向斜部は沈下しており,向斜部の水準点を基準にして,背斜軸部に設置された水準点の相対的な成長速度を求めると,東山背斜が年間0.54㎜,中央油田背斜が年間2.8㎜となり,これを100万年間の累積変位 向斜部は沈下しており,向斜部の水準点を基準にして,背斜軸部に設置された水準点の相対的な成長速度を求めると,東山背斜が年間0.54㎜,中央油田背斜が年間2.8㎜となり,これを100万年間の累積変位量にすると,それぞれ540m,2800mとなり極めて大きく,これらの褶曲は現在も活発に活動していること,(b)昭和2年10月27日に発生した関原地震(M5.3,昭和37年2月2日に発生し)- 616 -た長岡地震,昭和54年7月から昭和57年1月まで続いた小千谷群発地震,平成2年12月7日に発生した高柳地震(M5.4,5. 3)等はいずれも,羽越活褶曲帯における褶曲運動が原因であること,及び(c)番神砂層上・下部境界面の高度差から,陥没が番神砂層堆積後も継続していることなどの報告がなされていること,b本件原子炉施設の設計に際して掘削された試掘坑中に見られる断層や節理の走向が北西から南東方向に卓越していることが認められる。 しかし,上記前提となる事実と証拠(甲222,乙1ないし4,112,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,a本件原子炉施設の敷地で実施した地表踏査,約600孔に及ぶボーリング調査,試掘坑調査等の結果から,本件原子炉敷地の敷地全域にわたって新第三紀に形成された西山層(泥岩層)が分布し,この西山層が本件原子炉施設の支持地盤であること,b西山層は,褶曲構造を呈しているが,節理の発達が少なく,かつ大規模な断層や破砕帯も存在しないので,強固かつ安定した岩盤であること,c西山層の上には,これを覆う形で硬質の粘土等を主体とする安田層がほぼ水平に連続していることが確認されたことから,少なくとも本件原子炉施設の敷地周辺では,安田層の堆積以降,褶曲運動が継続しているとは考えられないこと,d約80年間 硬質の粘土等を主体とする安田層がほぼ水平に連続していることが確認されたことから,少なくとも本件原子炉施設の敷地周辺では,安田層の堆積以降,褶曲運動が継続しているとは考えられないこと,d約80年間にわたる柏崎周辺の水準測量結果の解析から,平野部と丘陵部との相対的な変位には,沖積層の圧密沈下も含まれており,丘陵部の隆起速度も年間1㎜を超えず,たとえ近年も褶曲運動が継続しているとしても,それによる地盤傾動速度は極めて小さく,同褶曲運動の本件原子炉施設の敷地への影響は,工学的には無視できること,e柏崎平野にある下谷地遺跡は,弥生時代中期のものとされているが,上記遺跡は,埋没深さ等遺跡の埋没状況が日本各地で発掘された同時代の遺跡と大きく異なるわけで- 617 -はないこと,f砂丘は,風により運搬された砂が堆積して形成されるものであり,砂丘の標高は,砂の供給量,旧地形等の砂丘形成時の堆積環境により決まるものであるから,上記砂丘の標高が高いことをもって,構造運動の根拠とすることはできないこと,g本件原子炉施設の敷地内外の安田層及び同層の上に形成された番神砂層を切る断層の走向には必ずしも明確な一定の方向性があるとはいえないことが確認され,褶曲運動等の構造運動が本件原子炉施設の支持地盤の安定性を損なうおそれがなく,同施設における大きな事故の原因にはならないと判断されたことが認められる。 そうすると,支持地盤の安定性に関する本件安全審査の判断は合理性があるというべきであるから,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 ②本件原子炉施設の支持地盤についてa控訴人らは,(a)本件原子炉施設の敷地の支持地盤である西山層の形成年代は,従前は200ないし800万年前に形成されていたとされていたが,最近は広域火山灰や浮遊性有孔 子炉施設の支持地盤についてa控訴人らは,(a)本件原子炉施設の敷地の支持地盤である西山層の形成年代は,従前は200ないし800万年前に形成されていたとされていたが,最近は広域火山灰や浮遊性有孔虫による対比等の研究から約120ないし350万年前と考えられているので,西山層の上部は第三紀層ではなく第四紀層であること,(b)本件処分当時には,西山層は第三紀の地層と考えられていたが,これ以降の学術的研究の進展の中で,西山層は年代的にはその下底がおよそ350万年前,上限は西にいくほど若くなり,西山丘陵地域では120万年前後,更にその上位に重なる灰爪層は90万年前後に堆積したとされたとの見解が定説とされるに至っているので,西山層は原子炉施設の支持地盤としては不適当であることから,支持地盤の劣悪性に関する本件安全審査には瑕疵がある旨主張し,これに沿う甲413の記載部分及び当審証人P20の証言部分がある。 - 618 -しかし,当審証人P20は,当審において,他方で,西山丘陵地域が,本件原子炉施設を含む西側の西山油帯と東側の中央油帯に区分されることを前提にした上,火山灰層の研究に基づく評価においては,それぞれの地域の西山層の最上部の年代は,西側の西山油帯でおよそ220万年前,東側の中央油帯でおよそ120万年前であり,西山油帯の西山層がおよそ180万年前より古い新第三紀鮮新世の地層であることを認める旨証言しているので(平成16年7月15日付け当審証人P20調書5ないし6頁,上記甲413の記)載部分及び当審証人P20の上記証言部分は,いずれも直ちに採用することはできない。 そして,上記前提となる事実と証拠(甲222,乙1ないし4,75の①②,112,145,146,152,153,154の①②,155,156,原審における証人P6の証言)及 用することはできない。 そして,上記前提となる事実と証拠(甲222,乙1ないし4,75の①②,112,145,146,152,153,154の①②,155,156,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件原子炉敷地に分布する西山層の形成年代は,新第三紀及び第四紀前期の境界付近に分布する出雲崎火山灰層等を鍵層とした調査の結果,本件原子炉敷地の位置する西山丘陵では,出雲崎火山灰層が西山層の上位層である灰爪層中に存在し,西山層の上限が出雲崎火山灰層よりも下位にあることが確認されていることから,西山層が新第三紀鮮新世の地層であることが認められる。 もっとも,控訴人らは,東京電力作成に係る昭和63年5月(平成2年1月一部補正)の本件原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(6,7号原子炉の増設)の添付書類六(甲425)においても,その敷地周辺地域における西山層が上部は第四紀(更新世)に属するとされている旨主張する。 しかし,甲425及び弁論の全趣旨によると,本件原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(6,7号原子炉の増設)の添付書類六- 619 -には,敷地内の西山層は「鮮新世」と記載されていることが認められるから,その敷地周辺地域における西山層の上部が第四紀(更新世)に属するとされているものではないことが明らかであるので,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 bまた,控訴人らは,(a)西山層については,土と岩石の中間の性質をもつ軟岩と呼ばれるものであって,軟岩は重力式ダムの基礎地盤としては不適当とされているので,原子力施設の危険性からいってこれを基礎地盤とすることは不適当であること,(b)西山層泥岩の物理特性として,単位体積重量約1.7g/cm,含水比46 %,一軸圧縮強度10ないし40㎏/cmとさ 子力施設の危険性からいってこれを基礎地盤とすることは不適当であること,(b)西山層泥岩の物理特性として,単位体積重量約1.7g/cm,含水比46 %,一軸圧縮強度10ないし40㎏/cmとされ,地盤としては 軽く,非常に多くの水を含み,軟弱であることを物語っていること,(c)原発敷地以外の西山層について地すべり対策や石油掘削のため実施された物理試験で,単位体積重量2.0g/cm以上,含 水比20%以下の値が得られているので,本件原子炉敷地の西山層泥岩は一般のそれより更に劣悪であること,(d)弾性波速度(縦波)の試験では,敷地西山層は毎秒1.7㎞と著しく低い値を示し,また,堅硬な地盤ほど弾性波速度は早く,第三紀堆積層では毎秒2ないし4㎞であり,中生代や古生代の堆積層では毎秒4ないし6㎞であるが,本件原発の地盤には不適とされ除去された安田層でさえ弾性波速度は毎秒1.6㎞であり,西山層は,それと大差なく軟弱さは明らかであることから,支持地盤の劣悪性に関する本件安全審査には瑕疵がある旨主張し,これに沿う甲413の記載部分及び当審証人P20の供述部分がある。 しかしながら,上記前提となる事実及び証拠(乙1ないし4,152,153,154の①②,156,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,(a)本- 620 -件原子炉施設の試掘坑内で実施された平板載荷試験の結果,本件原子炉施設の支持地盤(西山層)が有する支持力は,1cm当たり 62ないし85㎏であり,これに対して,本件原子炉施設の自重は,平常時で1cm当たり7㎏であること,(b)地震時において本件 原子炉施設に働く荷重に,上記自重を加えても,その合計は1cm 当たり14㎏にしかならないこと(乙3の6-452,453,4 平常時で1cm当たり7㎏であること,(b)地震時において本件 原子炉施設に働く荷重に,上記自重を加えても,その合計は1cm 当たり14㎏にしかならないこと(乙3の6-452,453,458,459頁,乙4の24頁,(c)地盤の変形試験の結果等に)よると,沈下する現象(クリープ現象)は,設計上支障がないこと(乙3の6-452,453頁,乙4の24頁,(d)せん断抵抗)力については,岩盤せん断試験の結果から,本件原子炉施設の支持地盤のせん断抵抗力は,幅1m当たり1万400トンであり,これに対して建築基準法施行令88条,建設省告示第1074号(地盤の種別及び構築物の種別による低減率)に定められた最大水平震度の3倍の力が本件原子炉施設に加えられたときに生ずる水平方向の力は,幅1m当たり3300トンであるので,十分な余裕をもったせん断抵抗力を有すること(乙3の6-458,459頁,乙4の24頁)が確認され,本件原子炉施設の構造物が地盤を押さえる力に対して,地盤が構造物を支える力の方が上回ることから,本件原子炉施設の敷地地盤が本件原子炉施設の支持地盤として十分な余裕を持った支持力を有すると判断されていることが認められる。 そうすると,本件安全審査の上記判断には合理性があり,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることはできないというべきである。 したがって,上記甲413の記載部分及び当審証人P20の証言部分はいずれも不自然であって採用することはできず,控訴人らの上記主張は失当である。 - 621 -(イ)本件原子炉施設の敷地周辺に見られる断層の活動の有無について①柏崎平野における安田層の形成時期について控訴人らは,本件原子炉敷地の地盤となる西山層の上部に安田層,番神砂層,新砂丘等が堆積しているが,安田層の形成年代 周辺に見られる断層の活動の有無について①柏崎平野における安田層の形成時期について控訴人らは,本件原子炉敷地の地盤となる西山層の上部に安田層,番神砂層,新砂丘等が堆積しているが,安田層の形成年代は,最近の広域火山灰調査等による研究により,挟まれるOn-Pm1(御岳第1テフラ)の火山灰層の広域的な対比から関東の小原台層に相当し,酸素同位体比のステージ区分でいう5c(後期更新世,およそ10万年前)の地層であると考えられるので,安田層の形成時期を約12ないし14万年前と判断した本件安全審査は,その前提を誤っており,看過し難い過誤がある旨主張し,これに沿う甲394の記載部分及び当審証人P20の供述部分がある。 しかし,証拠(乙1ないし4,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査に関する調査結果においては,柏崎平野周辺において,On-Pm1(御岳第1テフラ)の存在は確認されていないことが認められる。のみならず,当審証人P20の証言によると,同証人は,安田層中でOn-Pm1(御岳第1テフラ)を確認したとする位置について,安田層下部層の下半部,すなわち甲394の33頁第4図のF1の位置であると証言するが(平成16年7月15日付け当審証人P20調書12頁,他方で,安田層との関)係では海進のピークの位置は安田層下部層の最上部,すなわち甲394の32頁第3図の6m少し上の安田層上部と下部の境界であり,ところが小原台層ではOn-Pm1(御岳第1テフラ)はその最上部にあると証言する(同調書14及び15頁。すると,安田層下部層の)下半部で確認される火山灰は海進の初期に噴出したが,小原台層の最上部にある火山灰は海進が最も進んだ時期ころに噴出したと考えられるから,On-Pm1(御岳第1テフラ)が小原台層の最上部にある- 下半部で確認される火山灰は海進の初期に噴出したが,小原台層の最上部にある火山灰は海進が最も進んだ時期ころに噴出したと考えられるから,On-Pm1(御岳第1テフラ)が小原台層の最上部にある- 622 -とともに安田層下部層の下半部にもあるというのは,海進の時期との関係では疑問が生ずることになるが,同証人のこの点についての説明は,必ずしも具体的かつ合理的ではない(同調書15頁)ので,安田層の形成時期が小原台層期に相当するとする旨の上記甲394の記載部分及び当審証人P20の証言部分はいずれも採用することはできない。 そして,証拠(乙1ないし4,112,145,146,152,153,154の①②,155,156,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件安全審査においては,安田層の地形面及び堆積物の状況,安田層中で発見された花粉及び珪藻の分析結果等の詳細な調査結果により,安田層の形成時期については,南関東地方の下末吉層の形成時期(12万年ないし14万年前)に相当すると判断したこと(乙3の6-185ないし199頁,乙4の22ないし23頁,b安田層の形成時期は,別紙13のとおり,局所的)な地殻変動によらずとも現在の高度に分布し得ることから,酸素同位体比のステージ区分でいう5eの時期,つまり下末吉期に相当するおよそ12万年前ないし14万年前であると理解できること(甲414,乙154の①の102,103頁)が認められる。 したがって,控訴人らの主張は理由がない。 ②伏在断層を含む断層活動についてa柏崎平野の安田層,番神砂層堆積後の断層活動について控訴人らは,(a)本件安全審査においては,本件原子炉の炉心直下に約12万年前に堆積したといわれる安田層を切る断層が存在するものの,炉心直下の断層は再活動しないと判断しているが 後の断層活動について控訴人らは,(a)本件安全審査においては,本件原子炉の炉心直下に約12万年前に堆積したといわれる安田層を切る断層が存在するものの,炉心直下の断層は再活動しないと判断しているが,兵庫県南部地震の例のように,本件原子炉直下の断層であるα,β断層や砂丘を切る無数の断層及び寺尾の断層が近傍の地震断層に連動し- 623 -て再活動する可能性があること,(b)本件処分後の広域火山灰分析の手法や,花粉分析,珪藻化石等の分析手法が確立され,更に地層に含まれる火山灰及び珪藻化石の解析を通じて,その形成年代及び同時期に形成された地層の現在の標高差が判明し,それによって安田層堆積後の断層運動の存在が明瞭になり,柏崎平野は地殻変動が継続中であって,本件原子炉敷地周辺で見られる断層は,炉心直下の安田層を切る断層を含めて新しい時代における構造性のもの,すなわち活断層と判断されること,(c)本件安全審査においては,椎谷断層,真殿坂断層はリニアメントが見られないとして,また,常楽寺断層は気比ノ宮断層で検討すれば十分として,これらの断層を無視しているが,兵庫県南部地震のように未知だった断層が地震断層として活動することがあり得るので,椎谷断層,真殿坂断層,常楽寺断層はもとより,伏在する断層を考慮した安全審査を実施すべきであることから,柏崎平野の断層活動を無視した本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 しかし,控訴人らの上記主張内容は,兵庫県南部地震を援用し,一般的かつ抽象的に伏在する断層の可能性を主張するのみであって,具体的な根拠を示して柏崎平野下に伏在する断層の存在を指摘するものではないからそれ自体失当というべきである。のみならず,証拠(乙1ないし4,113)及び弁論の全趣旨によると,上記ア(ウ)のとおり,原子力安全委員会は, 柏崎平野下に伏在する断層の存在を指摘するものではないからそれ自体失当というべきである。のみならず,証拠(乙1ないし4,113)及び弁論の全趣旨によると,上記ア(ウ)のとおり,原子力安全委員会は,兵庫県南部地震を踏まえて,耐震安全検討会を設け,平成7年9月付け「平成7年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書(乙113)をと」りまとめているが,兵庫県南部地震によっても耐震安全性に関する審査指針及び審査手法一般についての妥当性が損なわれるものではないと評価されていることが認められるから,控訴人らの上記主張- 624 -はそれ自体根拠のないものである。 そして,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,112,145,146,152,153,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,(a)本件原子炉敷地及びその周辺の広い範囲を対象として,文献調査,空中写真判読を行うとともに,地表踏査による地形,地質調査を行って,この範囲に存在する断層及び存在が推定される断層を拾い出した上,構造性の断層であって,その規模及び本件原子炉敷地との距離などを考慮して,耐震設計上考慮すべき断層と判断される可能性のあるものを選定した結果,別紙11のとおりの気比ノ宮断層,中央丘陵西縁部断層,真殿坂断層及び椎谷断層が選定されたこと(乙4の2),0頁,(b)上記4断層の第四紀後期の活動性の評価を行った結果気比ノ宮断層が耐震設計上考慮すべき断層と選定されたこと,及び(c)地表踏査等によっても安田層堆積終了以降における断層活動を),示唆する地形や断層露頭が認められず(乙4の20ないし21頁また,柏崎平野周辺において第四紀後期に堆積した安田層のうち,堆積後の侵食を免れた部分が段丘面として存在しており,その安田層か 動を),示唆する地形や断層露頭が認められず(乙4の20ないし21頁また,柏崎平野周辺において第四紀後期に堆積した安田層のうち,堆積後の侵食を免れた部分が段丘面として存在しており,その安田層からなる段丘面が平坦で高度に不連続は認められないことなどが確認されたことから,α,β断層等の再活動のおそれはなく,地質・地盤及び地震に係る安全性を含めて,本件原子炉施設の自然的立地条件に係る事象は,いずれも本件原子炉施設において放射性物質の有する潜在的危険性を顕在化させるような大きな事故の誘因とはならないと判断されたことが認められる。 そうすると,本件安全審査の上記判断には合理性があり,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることはできない。 b複数断層の一斉活動について- 625 -控訴人らは,(a)兵庫県南部地震では,震源断層の活動で,三つ子地震を起こし,地上で10本を超える地震断層が出現したこと,(b)兵庫県南部地震において震源断層の活動に伴い多数の活断層が一斉に活動したことを,本件原子炉敷地周辺地域に置き換えると,信濃川左岸の「気比ノ宮断層=鳥越断層群」と「片貝断層群」が一緒に震源断層として活動したり,更に加えて中央丘陵西縁の「常楽寺断層」が一斉に活動する可能性を示すものであること,(c)本件安全審査においては「気比ノ宮断層=鳥越断層群」が単独で地震,を起こすことのみを想定して判断していることから,単一活断層による地震評価にとどまっている本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,112,145,146,152,153,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)気比ノ宮断層は与板背斜東翼部に,常楽寺断層は中央油帯背斜西翼部に,片貝断層は片貝・真 ないし4,112,145,146,152,153,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)気比ノ宮断層は与板背斜東翼部に,常楽寺断層は中央油帯背斜西翼部に,片貝断層は片貝・真人背斜東翼部にそれぞれ存在が推定されたものであること(乙112の10頁の図2,(b)気比ノ宮断層,関原付近の断層(気比ノ宮断層と)片貝断層の間に推定される断層)及び片貝断層は,それぞれ十分に離れている(比較的相互の距離の大きい)断層であって,その一つ一つが,独立の変位運動をする断層といいうること,(c)常楽寺断層は,上記3断層の関係と比較して,気比ノ宮断層,片貝断層とは更に離れた断層といえるので,これについても一斉活動を考慮する必要はないことが認められるから,本件安全審査において,控訴人らの主張に係る気比ノ宮断層,片貝断層及び常楽寺断層の一斉活動を考慮する必要はないとした判断は合理性があるというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 - 626 -③本件原子炉敷地周辺地域の活断層についてa試掘坑に見られる断層控訴人らは,(a)本件原子力発電所の基礎地盤には地質調査のために試掘坑が掘削され,断層や節理が調査されているが,試掘坑で確認された多数の断層のうちで第四紀層までの追跡調査を実施したのは,本件原子炉のα,β断層,本件原子力発電所5号機のF3,V2断層,同7号機のL1,L2断層とa・b断層の8本のみで,調査結果は断層変位は安田層内にとまっているとして,番神砂層堆積後の断層活動はないとしていること,しかし,b多数存在する断層のうちで試掘坑に表われる断層は一部であり,そのうちのごく一部の抽出で追跡調査し,ほかも同じと判断することは調査方法として問題であること,そして,c炉心部に掘削された試掘坑中に見られる節理や 断層のうちで試掘坑に表われる断層は一部であり,そのうちのごく一部の抽出で追跡調査し,ほかも同じと判断することは調査方法として問題であること,そして,c炉心部に掘削された試掘坑中に見られる節理や断層などは,個別に評価するより,いかなる応力条件により形成されたかを統一的に評価判断すべきであるから,本件原子炉直下のα,β断層のみを抽出して評価・判断したのは誤りであり,これらの断層は構造性のものであると判断すべきであることから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,112,145,146,152,153,154の①②,155,156,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,上記①,②a及びbのとおり,本件安全審査においては,控訴人らの主張に係る本件原子炉敷地周辺地域の活断層は,それ自体断層ですらないもの,又は,断層であっても地震の原因にならない地すべり性の断層にすぎないもの,あるいは,構造運動に起因した断層であってももはや活動するおそれのないものであって,敷地周辺の露頭に認められる断層も地すべり性のものと判断されたことが認められ,この- 627 -点に関する本件安全審査には不合理な点はないというべきである。 もっとも,控訴人らは,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の番神砂層や安田層に認められる多数の断層を,一部の断層について,大間隔のボーリング調査や地表面から数メートル掘った程度のトレンチカット調査を行うだけでは,地すべりに起因すると判断することはできない旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と上掲証拠及び弁論の全趣旨によると,(a)地すべりは,地形(斜面)などの要因によって重力のバランスが崩れ,地盤の表面だけに発生する変形であるから,地すべりによって生じる断層は,一般 前提となる事実と上掲証拠及び弁論の全趣旨によると,(a)地すべりは,地形(斜面)などの要因によって重力のバランスが崩れ,地盤の表面だけに発生する変形であるから,地すべりによって生じる断層は,一般に,i斜面に沿って存在し,ii断層を引き起こした力(重力)の方向もその斜面の傾斜方向に沿っており,iii断層は,地下深部に達しておらず,断層の傾斜は下方に行くに従って地層の抵抗力が増すため緩やかなものとなり,そのため,断層面は,全体として湾曲している等の特徴を示すこと,(b)構造運動に起因して地震を発生させるような断層は,一般に,i斜面とは無関係に存在し,ii断層面は,水平方向に直線状に連なっていて,iii断層は,構造運動に伴う地殻変動の結果として,地下深部まで達しており,かつ断層面はほぼ一様の傾斜で地下深部に向かって連続していること,したがって,(c)当該断層が地すべり性の断層であるか否かは,露頭調査,トレンチ調査,ボーリング調査等,地質調査において判断できること,(d)本件原子炉施設の設計に当たって,本件原子炉施設の敷地内の番神砂層や安田層等に認められる断層について,まず,断層露頭について詳細な調査が行われた上,更に,これらの断層のうち規模が比較的大きいと思われるものについては,トレンチ調査等によって,断層の性状,水平方向の連続性等が把握され,かつ,数メートルから数十メートル間隔のボーリング- 628 -調査によって,断層の性状,鉛直方向の連続性等が把握されたこと,(e)その結果,i断層露頭の調査から上記断層は,番神砂層や安田層等の各旧斜面に沿ってそれぞれ存在すること,iiそれらの断層を形成した力の方向も番神砂層や安田層等の各旧斜面の傾斜方向に沿ったものであること,iiiトレンチ調査等から,それら断層の傾斜は下方に行くに従って緩 面に沿ってそれぞれ存在すること,iiそれらの断層を形成した力の方向も番神砂層や安田層等の各旧斜面の傾斜方向に沿ったものであること,iiiトレンチ調査等から,それら断層の傾斜は下方に行くに従って緩やかなものとなり,断層面は全体として湾曲していること等,地すべり性の断層に見られる一般的特徴を有するものであることが判明し,その結果,上記断層はいずれも,番神砂層や安田層等がかつて地表に表れていた時代において,浸食作用で形成されたかつての谷の斜面に沿って小規模かつ局所的に生じた地すべり性により形成された断層であり,本件原子炉施設に特段の影響を及ぼすものでないと判断されたこと,(f)本件原子炉施設の敷地周辺の番神砂層や安田層の露頭の調査結果から,同露頭に認められる断層は,同施設の敷地内に認められる地すべり性の断層と同様の性状,形態を示すことが判明し,本件原子炉施設の耐震設計においては,これら露頭の断層も,地表部のみに形成された地すべり性の断層と判断されたことが認められる。そして,本件安全審査においては,上記(a)ないし(f)を踏まえた上,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の番神砂層や安田層に認められる多数の断層が地すべりに起因するものと判断されているから合理性があり,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 bα,β断層及び真殿坂断層の活動性について控訴人らは,本件原子炉施設の支持地盤に認められたα断層及びβ断層は,地震の発生源となる活断層ではないとしても,周辺地域で地震が発生した場合,再びずれを生じるおそれがあるので,本件- 629 -安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第三の四6。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,7 した場合,再びずれを生じるおそれがあるので,本件- 629 -安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第三の四6。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,74の①ないし③,112,145,146,152,153,154の①②,155,156,原審における証人P6の証言,原審における昭和55年5月16日付け検証の結果)及び弁論の全趣旨によると,(a)本件原子炉施設の地盤面上に北東から南西方向に走行する2本の高角度正断層(α,β断層)があり,α断層の落差は0ないし約1.1m,断層面に伴う粘土の厚さは0ないし約3㎝あり,β断層の落差は0ないし約0.7m,断層面に伴う粘土の厚さは0ないし約2.5㎝あること,(b)本件原子力発電所2号機及び5号機増設の本件各変更処分に係る安全審査においては,α,β断層は,破砕幅及び落差が小さく,これらを覆う第4系の安田層上部に変位を与えておらず,約12万年前以降は活動していないと推定されることから,両断層の再活動のおそれはなく,安全上支障となるものではないと確認されたこと,(c)本件安全審査においては,真殿坂断層は,地質構造的にみて,ω18付近の褶曲構造の向斜軸部に位置する西山層以深の地層が急傾斜をなしていることにより,地下深部にその存在が推定されているものであるところ,本件原子炉施設の敷地において実施された多数のボーリング調査の結果,同敷地内の西山層の傾斜は,極めて緩やかに連続しており,断層に伴う変位は認められないので,本件原子炉施設の敷地内には,真殿坂断層や,それに関連する断層は存在しないと確認され上,α,β断層を含む試掘坑内の小断層が将来地震力により変位を生ずるおそれはないと判断されたことが認められる。 そうすると,α,β断層によっても,本件原子炉施設の地盤 連する断層は存在しないと確認され上,α,β断層を含む試掘坑内の小断層が将来地震力により変位を生ずるおそれはないと判断されたことが認められる。 そうすると,α,β断層によっても,本件原子炉施設の地盤に係- 630 -る条件が同施設における大きな事故の誘因にならないとした本件安全審査の判断には合理性があるから,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることはできないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 c滝谷の断層について控訴人らは,(a)ω12では,西山層と番神砂層が断層で接している露頭があり,この露頭は真殿坂断層の活動が番神砂層堆積後も続いていること,(b)これについては,東京電力が本件申請後に追加調査を実施し,地すべりによるものと判断しているが,西山層から番神砂層までを切る断層であり,地すべりではなく,地殻変動による構造性の断層であることから,滝谷の断層を看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,控訴人ら主張に係る滝谷の断層については,その主張を客観的に裏付ける証拠はなく,上記aのとおり地すべりによるもの(乙3の6-212から214頁)と認めるのが相当である。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 d本件原子炉敷地内外の安田層や番神砂層を切る断層について控訴人らは,(a)本件原子炉敷地内外の第四紀層である安田層や番神砂層が見られる露頭では無数の断層を確認できること,(b)東京電力は,これら断層のうち敷地内で17か所,敷地外で19か所を抽出し露頭調査を実施した結果,構造性のものではないとしているが,本件原子炉敷地外で調査した断層はすべて露頭調査のみで,地盤の落差を確認していないので,真実解明のためには,敷地内外の第四紀層である安田層や番神砂層の断層をトレンチ掘削するな ではないとしているが,本件原子炉敷地外で調査した断層はすべて露頭調査のみで,地盤の落差を確認していないので,真実解明のためには,敷地内外の第四紀層である安田層や番神砂層の断層をトレンチ掘削するなどして第三紀層との関係を直接観察する必要が絶対条件となるにもかかわらず,全く実施していないこと,(c)本件原子炉敷地内外の安- 631 -田層や番神砂層等の新しい堆積層で見られる断層は,個別に評価するよりいかなる応力条件により形成されたかを統一的に評価判断すべきであるが,東京電力の本件申請書に記載された敷地内の番神,安田の断層と寺尾の断層については,同一構造運動で形成されたものであって,構造運動が番神砂層堆積時までも続いていること,(d)これらの運動は,試掘坑の西山層の断層等とも同一の構造運動であり,また地盤の椎谷層から番神砂層を同時に切る寺尾の断層とも共通であって,これは,原子炉直下で地殻構造運動に伴う断層の活動の危険性が極めて高いことを示すものであることから,本件原子炉敷地周辺地域の活断層の危険性を全く無視した本件安全審査には看過し難い過誤,欠落がある旨主張する。 しかし,上記aのとおり,本件原子炉敷地周辺の露頭に認められる断層も地すべり性のものと確認し,本件原子炉施設の地盤に係る条件が同施設における大きな事故の誘因にならないとした本件安全審査の判断には合理性があるというべきであるから,控訴人らの上記主張は採用することができない。 e本件原子力発電所5号機直下の断層の活動性について控訴人らは,(a)本件原子炉から北東へ約1㎞離れた地点に設置が計画されている本件原子力発電所5号機の敷地地盤に見られる断層が西山層及び安田層を切っていること,(b)上記5号機設置計画地点付近の県道露頭に見られる断層が安田層及び番神砂層を切っていること 置が計画されている本件原子力発電所5号機の敷地地盤に見られる断層が西山層及び安田層を切っていること,(b)上記5号機設置計画地点付近の県道露頭に見られる断層が安田層及び番神砂層を切っていることから,上記5号機の敷地地盤に見られる断層は,番神砂層をも切る極めて新しいものである可能性が高いので,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第三の四2。 )しかし,証拠(乙74の①ないし③,原審における証人P6の証- 632 -言)及び弁論の全趣旨によると,(a)本件原子力発電所2号機及び5号機の増設のための本件各変更許可処分に係る安全審査においては,本件原子力発電所5号機基礎底面付近に高角度断層であるV系断層と低角度断層であるF系断層が認められるが,これらは,ボーリング調査,試掘抗調査等の結果,破砕幅及び落差が小さく,これらを覆う第4系の安田層上部に変位を与えておらず,約12万年前以降は活動していないと推定されることから安全上支障となるものではないと確認されたこと,(b)同5号機建設予定地の北東約200m付近の番神砂層中などに断層が認められるものの,詳細な露頭観察及びボーリング調査により,安田層下部及び西山層中には断層による落差を示唆するものはないことから,これらの断層は地すべり等によって生じたものであり,地下深部に達する構造性の断層ではなく,原子炉施設の安全上支障となるものではないと判断されたことが認められる。 そうすると,控訴人らの主張に係る本件原子力発電所5号機直下の断層は安全上支障がないものであるから,本件原子炉施設の地盤に係る条件が同施設における大きな事故の誘因にならないとした本件安全審査の判断に影響を与えるものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 f東側道 件原子炉施設の地盤に係る条件が同施設における大きな事故の誘因にならないとした本件安全審査の判断に影響を与えるものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 f東側道路法面の断層の性質について控訴人らは,(a)本件処分後,本件原子炉の炉心から北東へ約300mの地点において,本件原子力発電所東側道路の掘削工事中,同道路法面に発見された断層は,新砂丘,番神砂層及び安田層を切っており,さらに西山層をも切っている可能性があること,(b)上記断層の変位に累積性が認められることから,上記断層は,極めて新しく,かつ活発な活動を繰り返している断層であることから,東- 633 -側道路法面の断層の存在を看過した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第三の四3。 )しかし,証拠(甲228,乙74の①ないし③,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によれば,(a)本件原子力発電所東側道路法面に断層が認められたこと,(b)本件原子力発電所2号機ないし5号機増設の本件各変更許可処分に係る安全審査において,露頭調査,トレンチ調査,ボーリング調査等が行われた結果,上記断層は,番神砂層及び安田層上部には変位を与えているものの,下位の地層である安田層下部及び西山層には全く変位を与えておらず,番神砂層や安田層の旧斜面に沿って存在し,更に,主断層の傾斜は下方に行くに従って緩やかなものとなり,断層面は全体として湾曲していることから,地すべり性の断層であると判断されたことが認められる。 そうすると,控訴人らの主張に係る東側道路法面の断層は本件原子炉施設の安全上支障がないものであるから,本件原子炉施設の地盤に係る条件が同施設における大きな事故の誘因にならないとした本件安全審査の判断に影響を与えるものでは 張に係る東側道路法面の断層は本件原子炉施設の安全上支障がないものであるから,本件原子炉施設の地盤に係る条件が同施設における大きな事故の誘因にならないとした本件安全審査の判断に影響を与えるものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 ④寺尾断層についてa控訴人らは,(a)寺尾断層は本件原子炉敷地から北東に600mの位置にあり,椎谷層,安田層,番神砂層の三つの地層を切る構造性の断層であって,地すべりによるものではなく,上記断層を引き起こした西山丘陵地域の地殻構造運動は,第四紀後期以降も継続し,5万年前以降に活動した活断層であること,(b)寺尾断層は,地形的には尾根側が,地質構造的には背斜の軸側が落ちる高角正断層であるので,地すべりによるものではなく,背斜軸に並走する縦走断- 634 -層であり,圧縮応力場で形成されていることから,褶曲構造の成長,プレートの運動と関係があること,(c)寺尾断層は,構造性のものであり,後谷・宮川背斜の成長を示すものであり,同一構造上に設置されている本件原発の支持地盤で断層が発生したり,既存の直下断層が再活動することで地盤が喪失する危険性を示すものであることから,寺尾断層に対する審査を欠いている本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 b証拠(甲219,221ないし223,225の①②,乙99の①②,100の①②,112,114,145,146,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (a)寺尾断層のトレンチ南側壁面の概略は,別紙7及びその拡大図面である別紙8のとおりである。 (b)P33ら荒浜砂丘団体研究グループは,平成4年8月,本件原子炉施設の敷地境界から北東約600m離れたω19地区の西側にある土砂採 概略は,別紙7及びその拡大図面である別紙8のとおりである。 (b)P33ら荒浜砂丘団体研究グループは,平成4年8月,本件原子炉施設の敷地境界から北東約600m離れたω19地区の西側にある土砂採取場において,椎谷層から番神砂層下部までを通して切る断層を発見した旨の研究報告を行った。上記研究報告によれば,i椎谷層は,暗灰色粗粒砂岩層で,泥岩の薄層を挟み,190㎝以上であり,安田層は,炭質物を含む青灰色塊状のシルトを主体とし,層相変化が著しく,下位の第3系に由来する泥岩及び砂岩の角礫を大量に含む角礫層,粗粒・中粒砂層,亜炭層を伴い,下位の椎谷層を不整合で覆い,番神砂層は中粒・粗粒の砂層で,安田層に整合に重なっていること,ii寺尾断層は,正断層で,地盤の椎谷層とともに安田層を切っており,地形的には尾根側が落ち,地質構造的には背斜の軸側に向かって落ちており,これによる垂直隔離は,番神砂層下部及- 635 -び安田層に対して110ないし120㎝,椎谷層に対して130ないし140㎝あり,両者の垂直隔離の差が約20㎝認められ,このことは,安田層堆積前に既に椎谷層がこの断層によって変位していたことを示しており,更に,安田層及び番神砂層下部も変位していることから,番神砂層下部形成後においても断層の活動があったことを示し,寺尾断層は,椎谷層から番神砂層下部までの一連の地層を切り,かつ複数回の変位が累積さ,れていることを示しており,iii地層の年代測定結果によれば番神砂層下部では4万6000年前と報告されているので,寺尾断層は,4ないし5万年前以降も活動が続いていると推定される,iv寺尾断層は,地形的には,尾根側が,地質構造的には,背斜の軸側が落ちる高角正断層であり,地すべりによって形成された可能性は少なく,断層が後谷背斜の軸方向と並走する 活動が続いていると推定される,iv寺尾断層は,地形的には,尾根側が,地質構造的には,背斜の軸側が落ちる高角正断層であり,地すべりによって形成された可能性は少なく,断層が後谷背斜の軸方向と並走する縦走断層であること,及び断層面の形状から圧縮応力場で形成されたと考えられることから,褶曲構造の成長と断層形成との間には何らかの因果関係があるものと推定されるなどとされている。 (c)東京電力は,同年11月,寺尾断層を調査し,その結果,i寺尾断層は,トレンチ内では,より下方に向かうほぼ鉛直な断層と上部の走向・傾斜を有したまま西傾斜する断層の2条に分岐していること,ii下方に分岐した鉛直な断層は,東側の椎谷層と西側の安田層とを境し,椎谷層上限に鉛直1.0ないし1. 2mの高度差を与えているように見えるが,同断層は,椎谷層内では面なし断層となっており,この面なし断層による椎谷層の泥岩の変位は約0.5m西落ちであり,断層上部の安田層内での変位量と調和していないこと,iii上部の走向・傾斜を有- 636 -したまま西傾斜する断層についても,椎谷層上限面に5ないし30㎝の高度差が見られるものの,椎谷層内では面なし断層となるか,あるいは連続が不明瞭となること,iv寺尾断層は,下方で変位量が小さくなるから地すべり性の断層と判断でき,上部で発生した地すべり性の断層が下方の椎谷層上限面の急崖・風化により,面なし断層が開口した亀裂を利用して椎谷層に達したと考えられると報告した。 (d)東京電力は,更に平成5年4月5日,寺尾断層のトレンチ南側壁に見られる断層の性状について,i安田層中には,同層中の腐植質シルト層の約1.2mの鉛直変位を与える断層が分布していること,ii同断層は,より下方に向かうほぼ鉛直な断層と,西傾斜する断層の2条に分岐していること,i 状について,i安田層中には,同層中の腐植質シルト層の約1.2mの鉛直変位を与える断層が分布していること,ii同断層は,より下方に向かうほぼ鉛直な断層と,西傾斜する断層の2条に分岐していること,iii下方に向かうほぼ鉛直な断層は,椎谷層と安田層の境界部に沿って分布しているが,一部は緩く西側に向かって枝分かれしており,一方,西傾斜する断層は,椎谷層上限面に達しており,同上限面に高さ約30㎝の落差が認められること,iv両断層下方延長部の椎谷層中には,断層は認められないものの,筋状になっていること,v椎谷層と安田層の境界面に沿う断層の下方では,椎谷層中の泥岩の挟み層に約0.5ないし0.8mの鉛直変位が見られ,安田層中に見られる断層の変位量より小さくなっていること,vi椎谷層に見られる断層は,ほぼ鉛直であるのに対し,安田層中の断層は斜めの性状となっていること,vii当該地域には空中写真判読でリニアメントは認められないことから,寺尾断層は,一般にいわれている活断層の特徴を有しておらず,下部の椎谷層の変位量より上位の安田層の変位量の方が大きく,正断層であるなどから,地すべり性の断層であることの補足説- 637 -明を行った。 (e)新潟大学理学部講師P34らは,平成5年6月15日,i寺尾断層のうち,トレンチ内の下方に向かうほぼ鉛直な断層は,安田層中の腐食泥炭層を巻き込むとともに,その上部及び下部においても,断層角礫を含む破砕帯を伴った開離型の断層であり,この断層の主たる動きは,安田層堆積後であること,ii砕屑物中の相当層を認定する際,地質学的同一時間面をより正確に表す火山灰層ないし火山灰質層を用いるのは調査の基本であるところ,寺尾断層のトレンチ内南側壁面に見られる火山灰質層の落差は約140㎝になること,iii寺尾断層が地すべりによ 同一時間面をより正確に表す火山灰層ないし火山灰質層を用いるのは調査の基本であるところ,寺尾断層のトレンチ内南側壁面に見られる火山灰質層の落差は約140㎝になること,iii寺尾断層が地すべりによるものであるとすれば,滑動する底の部分が面として存在しなければならないが,寺尾断層ではこれがないこと,iv1万年前以降の新砂丘が厚く発達する地域においてリニアメントが認められないからといって,数万年前の構造運動を否定することはできないことなどを述べて,東京電力の上記(c)及び(d)の見解を批判した上,(b)と同様に,寺尾断層は,現在もなお成長しつつある後谷背斜の隆起に伴う引張応力場で形成され,番神砂層下部堆積後,すなわち,5万年前よりも新しい時期に背斜頂部に向かって活動した正断層というべきである旨報告した。 (f)当時の通商産業省は,原子力安全委員会に対し,寺尾断層が地すべり性の断層と判断されたことが妥当であることを記載した,資源エネルギー庁原子力発電安全企画審査課作成名義の平成6年1月27日付け「東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所付近の西山丘陵地域の断層について」と題する報告書(乙112)を提出したところ,原子力安全委員会において,同年1月27日,これを了承した(乙114。 )- 638 -c上記認定事実によれば,寺尾断層については,これを地すべり性の断層と評価する見解と,構造性の活断層と評価する見解が対立しているが,原子力安全委員会においては,寺尾断層が地すべり性の断層と判断されたことを了承していることが認められる。 そこで,上記③aの事実と証拠(乙112,152,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)構造運動に起因して地震を発生させる構造性の断層は,地下深部(地球内部)から来る応力によって生じるものであ 事実と証拠(乙112,152,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)構造運動に起因して地震を発生させる構造性の断層は,地下深部(地球内部)から来る応力によって生じるものであるため,i斜面とは無関係に存在し,ii断層面は水平方向に直線状に連なって,iii断層は地下深部まで達し,iv断層面はほぼ一様な傾斜角度で,地下深部に向かって連続しているとの特徴を示し,また,v断層活動の繰り返しにより地層の変位が累積する結果,より古い地層(より多くの断層活動を経ている)である下位の地層における変位量が,より新しい地。 層である上位の地層における変位量より大きく,更に,vi構造性の断層は地下深部で発生し,地表に向かって延びるものであるから,断層が枝分かれする場合には下方から上方に向かう等の特徴があること,(b)これに対し,地すべりは,地形(地表のものに限らない)などの要因によって重力のバランスが崩れた結果,地盤の表。 面付近(地表ではない)にのみ発生する変形であることから,一。 般に,i斜面に沿って存在し,ii断層を引き起こした力(重力)の方向も,その斜面の傾斜方向に沿っており,iii地下深部に達しておらず,iv斜面下方へ進むに従って徐々に地層の抵抗が増すため,断層の傾斜は下方へ行くに従って緩やかなものとなり,vそのため,断層面は全体として湾曲しているとの特徴を示し,また,vi地下の地すべり性断層に沿って,地上にリニアメントが生ずることはなく,,vii斜面上方に当たる上位の地層における地すべりによる変位量が- 639 -斜面下方に当たる下位の地層における地すべりによる変位量より大きいため,地すべりによる地層の鉛直変位量は,上位の地層の方が下位の地層よりも大きい等の特徴があるとされていることが認められる。 そして,上記 方に当たる下位の地層における地すべりによる変位量より大きいため,地すべりによる地層の鉛直変位量は,上位の地層の方が下位の地層よりも大きい等の特徴があるとされていることが認められる。 そして,上記事実によれば,上記bの(b)及び(e)の見解は,椎谷層における変位量が安田層におけるそれよりも大きいと認めて,寺尾断層を構造性のものと判断し,これに対し,東京電力の上記bの(c)及び(d)の見解は,逆にこれが小さいとして,地すべり性のものと判断していると解されるところ,証拠(甲221,223)及び弁論の全趣旨によると,椎谷層における鍵層として,前者は別紙7のX及びX’の層を選び(上記b(e)の見解は,この層を火山灰質砂層としている,変位量を別紙7のとおり約140㎝と認。)定しているのに対し,後者は泥岩層(別紙8の泥岩層①)を選び,変位量を別紙7のとおり約90㎝と認定しており,これが上記のように見解が分かれる理由であると解される。 ところで,控訴人らは,断層の変位量を測定するには,断層面の両側にある連続して同一時期に堆積した地層を正しく対比して,そのずれを測定する必要があるから,堆積時期が同一と判断できる火山灰層が鍵層として最適であり,別紙7のX及びX’の層を鍵層と認めるべきである旨主張し,甲222にはこれに沿う記載部分がある。 しかし,乙100の①②によると,別紙7のX及びX’の層は石灰質砂岩であること,別紙7のX及びX’の層を対比すると,Xの層の上下が粗粒砂岩であるのに対し,X’の層の上下は粗粒ないし中粒砂岩であること,X’の層の上位にある泥岩層が,Xの層の上位にないことが認められ,すると,必ずしも層序が一致するとはい- 640 -えないから,椎谷層の変位量が約140㎝あったと認めるにはなお不十分であるので,上記甲222の記載部 泥岩層が,Xの層の上位にないことが認められ,すると,必ずしも層序が一致するとはい- 640 -えないから,椎谷層の変位量が約140㎝あったと認めるにはなお不十分であるので,上記甲222の記載部分を採用することはできない。 また,当審証人P20は,当審において,ω19で見られた断層については,地すべり性の断層ではなく,活断層である旨供述し,その判断根拠として,(a)寺尾断層の露頭において,寺尾断層が4万6千年前程度に形成された番神砂層を切り,安田層及び椎谷層中の鍵層に変位の累積性が認められることから,寺尾断層は活断層であり(平成16年5月20日付け当審証人P20調書19ないし23頁,(b)断層による落差を判定する場合には,その基準となる)べき「鍵層」は,火山灰層とすべきであり,寺尾断層において控訴人らが「鍵層」とした地層については,自らが顕微鏡で観察することによって確認し,火山灰であることを認定しているから,火山灰層を用いるべきであり,泥岩層を用いることは誤りである(同証人調書19ないし21頁)と証言している。 しかしながら,証拠(乙112,114)及び弁論の全趣旨によると,寺尾断層については,活断層の特徴である変位の累積性は認められず,断層が上方から下方に向かって枝分かれしていること(乙112の4,16,17頁)などの構造性の断層と符合しない特徴を伴うものであることが認められる。のみならず,他方で,当審証人P20の証言によると,安田層及び椎谷層中の鍵層に変位の累積性が認められるとすると,寺尾断層は,10万年前より古い時期に20ないし30㎝動いた後,番神砂層が堆積した4万6千年前以後に120㎝動いたことになり(平成16年7月15日付け当審),証人P20調書24頁,すると,活動間隔がおよそ5万年を超え活動時の変位量に相当 し30㎝動いた後,番神砂層が堆積した4万6千年前以後に120㎝動いたことになり(平成16年7月15日付け当審),証人P20調書24頁,すると,活動間隔がおよそ5万年を超え活動時の変位量に相当な違いのある活断層ということになること,- 641 -そして,当審証人P20は,このような活断層の例をほかに知っているかとの質問に対し「活断層について,一つ一つの地域におけ,る現象について,十分にフォローをしておりませんので,そのことについて,確たる証言はできないと思います(同調書24頁)。」と述べていることが認められるから,変位の累積性をもって寺尾断層が活断層であると断定することは困難であるというべきである。 また,当審証人P20が指摘する「鍵層」については,同証人においてデータを検証するために必要となる情報を全く提示していないので,同証人のいう「鍵層」が火山灰層であることは的確に立証されていないから,同証人の証言によっては,被控訴人らが泥岩層及び石灰質砂岩層を鍵層として用いたことが誤りであると認めることはできない。 もっとも,甲413には,寺尾断層は断層面の傾斜から判断すると,その滑った方向が現在の地形からして高い方に滑っており,被控訴人の主張は,重力の法則に反するという矛盾に関する説明が不十分である旨の記載部分がある。しかし,証拠(乙112,114)及び弁論の全趣旨によると「現地形は新期砂層が堆積した結,果として表れているのであって,地すべり性の断層は,地すべりが発生した当時の旧地形や地盤の上限面との関連によっては,現在の地形と調和的に分布しない場合もあり得る(乙112の5頁)。」ことが認められるから,寺尾断層が地すべり性の断層であるとの判断に矛盾があるとはいえないので,上記甲413の記載部分を直ちに採用することはで 和的に分布しない場合もあり得る(乙112の5頁)。」ことが認められるから,寺尾断層が地すべり性の断層であるとの判断に矛盾があるとはいえないので,上記甲413の記載部分を直ちに採用することはできない。 そして,上記前提となる事実のとおり,本件安全審査においては,12万年ないし14万年前に堆積した安田層は,敷地全域にわたって,ほぼ水平に連続していること,また,西山丘陵地域には空中写- 642 -真判読によってもリニアメントは認められず,地表踏査等によっても安田層堆積終了以降における断層活動を示唆する地形や断層露頭が認められないこと等が確認され,柏崎平野及び西山丘陵地域を含む柏崎平野周辺地域においては,少なくとも安田層堆積終了以降,すなわち12万年ないし14万年前以降における構造運動に伴う褶曲及び断層活動はないことから,本件原子炉施設の支持地盤に係る安全性を損なうような大規模な構造運動は起こり得ず,地下深部から地表に至る地殻自体の変動,例えば褶曲運動等の構造運動が本件原子炉施設の支持地盤の安全性を損なうおそれはないと判断されたことにかんがみると,寺尾断層によっても,本件原子炉施設の地盤に係る条件が同施設における大きな事故の誘因にならないとした本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認めることはできないというべきである。 dしたがって,控訴人らの寺尾断層に関する主張は理由がない。 ⑤歴史地震の選定について控訴人らは,a本件安全審査に用いられた過去の地震は,1614年11月26日の越後高田の地震と1828年12月18日の越後三条の地震だけであるところ,越後高田の地震は日本海側の地震ではないこと,b越後三条の地震よりも本件原子炉敷地に大きな影響を与えた地震として,(a)1751年5月21日の越後・越中の地震(M7. 後三条の地震だけであるところ,越後高田の地震は日本海側の地震ではないこと,b越後三条の地震よりも本件原子炉敷地に大きな影響を与えた地震として,(a)1751年5月21日の越後・越中の地震(M7. 0ないし7.4,(b)1847年5月8日の善光寺地震(M7. )4,(c)1847年5月13日の越後頸城郡の地震(M6.5)の)3地震を見落としていること,c本件安全審査においては,過去の地震として対象としたのは,最近400年足らずのものでしかなく,資料も不十分であることから,歴史地震の考慮が不十分な本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 - 643 -しかし,証拠(乙1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,a本件申請書の添付書類六(乙2の6-5-20ないし23頁)には,863年以来の29地震に関する情報が記載されていること,b歴史地震の選定については,本件原子炉敷地に影響を与えたものを選定するものであるところ,越後高田の地震については,この地震が日本海側の地震でないとの説はいくつかの文献で見られるものの,高田における被害の記事があることから,本件原子炉施設の耐震設計上考慮する最大加速度振幅を安全側に評価する観点に基づき,あえて本件原子炉敷地に近い日本海側で発生し,敷地に影響を与えた地震と評価されたものであること(乙2の6-5-3,4,18頁,c本件安全審査に)おいては,(a)1751年5月21日の越後・越中の地震,(b)1847年5月8日の善光寺地震,(c)1847年5月13日の越後頸城郡の地震(M6.5)についても検討された結果(乙2の6-5-20ないし23頁,各地震は地震規模と震央距離からその敷地地盤に)おける地震動が評価され,本件原子炉敷地に及ぼす影響は越後三条の地震を上回るものではないと判断されたことが認められ (乙2の6-5-20ないし23頁,各地震は地震規模と震央距離からその敷地地盤に)おける地震動が評価され,本件原子炉敷地に及ぼす影響は越後三条の地震を上回るものではないと判断されたことが認められる。 そうすると,本件安全審査においては,歴史地震の選定につき十分な資料をもってなされているというべきであって,その判断についても不合理な点はないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ⑥日本海東縁プレート境界について控訴人らは,a日本海東縁プレート境界の南部の位置は,別紙10のとおり,佐渡島の東を通って新潟市付近から信濃川に沿って松本市に至り,同所から静岡に続くこと,b本件安全審査の対象となった中央丘陵西縁部断層(常楽寺断層,信濃川西縁断層(気比ノ宮断層))及び信濃川東縁断層(悠久山断層)は,日本海東縁プレート境界から派生した地表地震断層と推定され,これらの各活断層による地震は,- 644 -プレート境界型の地震を想定しなければならず,その規模はこれまでの地震の平均値であるM7.5を想定すべきであることから,プレート境界型の地震を想定していない本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 しかし,証拠(甲296)によると,パンフレット「原子力発電所の耐震安全性(通商産業省資源エネルギー庁編集)においては,」「ユーラシアプレートと北米プレートの境界は未確認」と記載されており,本件全証拠によっても,控訴人ら主張の日本海東縁プレート境界の存在及び位置を確定することはできないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 ⑦長岡平野西縁断層についてa長岡平野西縁断層の活動について控訴人らは,地震調査研究推進本部の本件断層帯報告書においては,気比ノ宮断層が長岡平野西縁 たがって,控訴人らの上記主張は失当である。 ⑦長岡平野西縁断層についてa長岡平野西縁断層の活動について控訴人らは,地震調査研究推進本部の本件断層帯報告書においては,気比ノ宮断層が長岡平野西縁断層帯に含まれ「M8.0程度,の地震が発生する可能性がある」との指摘があるので,長岡平野西縁断層帯を考慮していない本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(甲451,乙1ないし4,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,(a)本件断層帯報告書は,地震防災対策の強化,特に地震による被害の軽減に資する地震の調査研究の推進を目標に,全国の活断層が一定の基準に従い一律に評価されるものであり,長岡平野西縁断層帯の評価についても,約200万年前以降活動した可能性がある断層を一律に活断層帯とみなし,同断層帯全体が一つの区間として活動した場合を想定して評価していること,そして,(b)同断層帯全体が一- 645 -斉活動する可能性について,必ずしも,過去の地震歴や同断層帯を構成する各断層に関する子細な調査を元に判断されているわけではなく,同報告書の「今後に向けて」においては「長岡平野西縁断,層帯は複数の断層からなる長大な断層帯であるが,鳥越断層以外は活動履歴に関する詳しい資料が得られていない。特に,大河津分水路以北では第四紀後期の活動履歴に関する資料が,また,海域では。 ,断層の位置に関する資料を含めて不足している」としていることさらに,(c)本件安全審査においては,本件原子炉敷地及びその周辺の広い範囲を対象として,文献調査,空中写真判読を行った上,地表踏査による地形,地質調査を行って,この範囲に存在する断層及び存在の推定される断層が抽出された上で,第四紀後期以降に活動し,今後も活動する可 範囲を対象として,文献調査,空中写真判読を行った上,地表踏査による地形,地質調査を行って,この範囲に存在する断層及び存在の推定される断層が抽出された上で,第四紀後期以降に活動し,今後も活動する可能性のある断層が耐震設計上考慮すべき活断層であるとして,気比ノ宮断層(鳥越断層)が耐震設計上考慮すべき活断層として選定されていること,そして,(d)本件安全審査では,気比ノ宮断層の長さを17.5㎞と評価しているので,このような本件安全審査における気比ノ宮断層の評価は,別紙15のとおり,地震調査研究推進本部の上記評価内容に照らしても矛盾しないことが認められる。 そうすると,本件安全審査における活断層評価は,推進本部の評価において「長岡平野西縁断層帯」としてひとまとまりにされている各々の活断層について,地表踏査等に基づく第四紀後期における活動性の詳細な検討を行っているものであり,より詳細なデータといえるから,本件安全審査における活断層評価が推進本部による評価結果と異なるものであったとしても,工学的判断に基づく本件安全審査の合理性が左右されるものではないというべきである。 b長岡平野西縁断層帯と日本海東縁プレート境界について- 646 -控訴人らは,(a)日本海は,今から約2000万年前以降に地殻が東西に引き延ばされることによって,大陸から切り離され,陥没して形成されたが,その際に,正断層として発生した古傷が,その後に,東西から押されることにより,逆断層に変化したものと考えられていること,(b)長岡平野西縁断層帯は,日本海東縁プレート境界の一部と考えるのが,当然であり,これが,M8程度の地震の発生を予測していることから,長岡平野西縁断層帯を考慮していない本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 しかし,上記⑥のとおり,日本海東縁プレ えるのが,当然であり,これが,M8程度の地震の発生を予測していることから,長岡平野西縁断層帯を考慮していない本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 しかし,上記⑥のとおり,日本海東縁プレート境界の存在が確定していないので,控訴人らの主張はその前提を欠いており失当である。 ⑧中越地震についてa本件原子炉施設の地震観測記録における地震規模と最大加速度について控訴人らは,(a)平成16年10月23日に発生した中越地震において,本件原子力発電所での地表と基礎の観測値を比較すると,いずれも地表の値が基礎の値と比べて大きい値となること,(b)本件原子力発電所各号機の建家基礎で観測された水平と上下の最大加速度と震源距離を比較すると,本件原発が想定した計算式に誤りがあり,また,同じ地震でありながら,本件原子力発電所各号機により観測値に大きな差があるので,その測定値,方法に重大な疑問があることから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲456,465,467の①ないし⑥,469の①ないし⑥,470の①ないし⑤,471,473,乙159)及び弁論の全趣旨によると,地震は,自然現象であるため,測定される加速度の数値にもある程度のばらつきがあり,中越地震の規模- 647 -と揺れの大きさの関係も,そのばらつきにより生じたものと考えられるのであるから,これをもって,本件原子炉施設が想定した計算式に誤りがあるということはできないことが認められるから,中越地震の地震規模と地震動の観測記録の最大値との関係が,計算式から想定される大小関係と異なるということのみをもって,本件安全審査において地震動の想定に用いられた計算式の妥当性や本件原子炉施設の耐震設計に係る安全審査の合理性が左右されるものではないというべきである。 したがっ 関係と異なるということのみをもって,本件安全審査において地震動の想定に用いられた計算式の妥当性や本件原子炉施設の耐震設計に係る安全審査の合理性が左右されるものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 b中越地震の観測値が原子炉施設毎に異なることについて控訴人らは,中越地震の揺れの観測値について,同じ地震でありながら近接して立地している本件原子力発電所各号機毎に大きな相違があり,しかも,水平加速度と鉛直加速度の比率も統一性がないことから,揺れの測定値,あるいは,その測定方法に重大な誤りがあることから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件発電所において,地震計が設置されている原子炉建家は,それぞれの原子炉施設ごとに建家の形状,埋め込みの深さ等が異なるので,中越地震によって発生した揺れ方についてもそれぞれの原子炉建家によって異なってことが認められるから,控訴人らの主張はその前提を欠いているので失当である。 c本件原子力発電所7号機の原子炉自動停止について控訴人らは,本件原子力発電所7号機は,平成16年11月4日に発生した余震により停止したが,これは,同号機の地震計によるものではなく,タービン軸の震動幅が制限値を超えたことが原因で- 648 -あるので,本件発電所の原子炉施設の地震スクラム設定値の基準は不合理であるから,本件安全審査には看過し難い過誤がある旨主張する。 しかし,本件原子力発電所7号機は,本件原子炉の本件安全審査の対象ではないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 d本件原子力発電所の設計用地震動の最大加速度値について控訴人らは,(a)中越地震発生時の気象 ,本件原子炉の本件安全審査の対象ではないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 d本件原子力発電所の設計用地震動の最大加速度値について控訴人らは,(a)中越地震発生時の気象庁及びK-NET(独立行政法人防災科学技術研究所の強震観測ネット)の各観測点で実際に観測された加速度値を本件原子力発電所の地表での記録とみなすと仮定し,かつ地下の地盤の加速度の値は地表における加速度の半分の値になるとすれば,それぞれの場所での地表における加速度の測定値から算出して,ω15では1257Gal,十日町市では875Gal,小千谷市が750Galとなること,(b)これらの値は,本件原子炉施設の設計用地震動の加速度の300Gal,あるいは限界地震の加速度の450Galをも大きく超える値であることから,本件原子力発電所の近くで中越地震と類似の地震が発生したと仮定すると,本件原子力発電所は破壊されることが明らかになったので,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲456,465,467の①ないし⑥,469の①ないし⑥,470の①ないし⑤,471,473,乙159)及び弁論の全趣旨によると,地震の揺れは,その地盤の種類,性質によって大きく異なるものであって,異なる地盤状況にある上記ω15等の各観測点の観測記録をそのまま流用して別の地点である本件原子炉施設における地震動を考慮することは地盤の種類,性質の違いを無視するものであると認められる。そして,上記前提となる- 649 -事実及び上記(ア),(イ)①ないし⑦,⑧aないしcのとおり,本件原子炉施設の耐震性設計上考慮すべき断層は気比ノ宮断層であり,そのリニアメントの存在等から推定される同断層の長さからすると,同断層活動により発生し得る地震の規模はM6.9となり,震央距離 り,本件原子炉施設の耐震性設計上考慮すべき断層は気比ノ宮断層であり,そのリニアメントの存在等から推定される同断層の長さからすると,同断層活動により発生し得る地震の規模はM6.9となり,震央距離を20㎞として,本件原子炉施設における推定最大加速度は220Galとなるものである。 以上のとおり,上記事例は震源地や地質構造が本件原子炉施設の安全審査において検討されところとは異なるのであるから,上記事例から本件安全審査における最大加速値が不合理であるとはいえない。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているので失当である。 (ウ)本件原子炉施設の敷地周辺に存在すると推定される主な断層の評価の合理性の有無について①リニアメントについて控訴人らは,本件安全審査においては,断層の認定について,地形的にリニアメントが見られるか否かが判断基準とされているが,リニアメントの確認できないC級活断層は,地震が起こって初めて存在が確認できるものであり,これを無視した本件安全審査の判断は不合理である旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第三の五1。 )しかしながら,上記前提となる事実及び証拠(乙1ないし4,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉施設の耐震設計においては,過去の地震歴の調査によって,過去に発生し,本件原子炉施設の敷地の地盤に対して影響を与えたことが判明している地震,若しくは影響を与えたことが推定される地震,又は,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の地盤に存在する第四紀後期以降- 650 -の断層の調査によって,同断層の活動により同地盤において将来発生することがあり得るものと考えられる地震の中から,本件原子炉施設に最も大きい影響を与えるであろうと考えられるものが考慮されたこと,b本件原子炉施設 によって,同断層の活動により同地盤において将来発生することがあり得るものと考えられる地震の中から,本件原子炉施設に最も大きい影響を与えるであろうと考えられるものが考慮されたこと,b本件原子炉施設の耐震設計に考慮すべき断層を選定するに当たっては,空中写真判読によるリニアメントの調査だけでなく,本件原子炉施設の敷地及び敷地周辺の広い範囲を対象する文献調査(石油関連資料等)及び地表踏査による地形,地質調査が行われ,その結果,上記範囲に存在する断層及び存在が推定される断層のうち,地すべり性の断層や,構造性の断層でも本件原子炉施設から遠く,かつ小規模なものが除外されたことが認められる。 そうすると,本件原子炉施設において耐震設計上考慮すべき地震は,過去の地震歴や,断層の活動性等から適切に選定されているとした本件安全審査の判断には合理性があるというべきであるから,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 ②気比ノ宮断層の延長距離について控訴人らは,気比ノ宮断層の長さについては,ω3から柏崎市ω16までの約36㎞とみるべきであるから,これを17.5㎞と過小評価した本件安全審査には過誤がある旨主張する。 しかしながら,証拠(乙2,3,4,77の③,152,156,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によれば,a本件原子炉施設の耐震設計においては,気比ノ宮断層について,文献調査,空中写真判読,地表踏査等に基づいて,第四紀後期の断層活動を示唆する地形上の特徴や地質構造上の特徴が検討されたこと,bω2付近以北与板町付近までの西山層,灰爪層及び魚沼層における背斜構造の東翼部には,地下深部において断層を伴うことが多いとされる過褶曲構造が認められ,かつ,この過褶曲構造の東縁に沿って,地表にかな- 651 -り明瞭なリニ 西山層,灰爪層及び魚沼層における背斜構造の東翼部には,地下深部において断層を伴うことが多いとされる過褶曲構造が認められ,かつ,この過褶曲構造の東縁に沿って,地表にかな- 651 -り明瞭なリニアメントが認められるのに対し,ω2付近以南の気比ノ宮断層の延長線上には,明瞭なリニアメントや過褶曲構造が全く認められないことから,ω2付近以北と以南とでは,地形上,地質構造上に明白な差異があり,気比ノ宮断層の南限は,長岡市ω2付近と推定されたこと,cω2付近以南の気比ノ宮断層の延長線上には,明瞭なリニアメントや過褶曲構造が全く認められず(乙3の6-266ないし268,290ないし292頁,ω2付近以北と以南とでは,地)形上,地質構造上に明白な差異があることから,同町以南については,地下に気比ノ宮断層の延長と思われる断層の存在を推定することはできないこと,d活断層研究会が編集した「日本の活断層」と題する文献中には,ω2付近以南柏崎市ω16までの区間には,リニアメントが示されているが,同時に,本件安全審査において気比ノ宮断層を推定したリニアメントの一部に相当するリニアメント(鳥越断層群に係るもの)が上記リニアメントとは別のものとして示されており,この二つのリニアメントについて活断層の存在の確かさを表す確実度の評価も前者を確かさが最も低いⅢとし,後者を確かさが最も高いⅠとしているのであるから「日本の活断層」の編者らも,二つのリニアメ,ントを必ずしも一体のものと考えていないこと,e甲103中には,長岡平野西に長さ30㎞以上,活動度Bとする逆断層が存在する旨の記載があるが,この記載は,気比ノ宮断層を含むその周辺の雁行している断層を一括して表したものであること,f本件安全審査においては,気比ノ宮断層は「長岡地域の地質(乙156)に添付される, する旨の記載があるが,この記載は,気比ノ宮断層を含むその周辺の雁行している断層を一括して表したものであること,f本件安全審査においては,気比ノ宮断層は「長岡地域の地質(乙156)に添付される,」地質平面図及び断面図に示されるとおり,与板背斜の東翼に西側上がりの逆断層として想定されたが,これに対し「柏崎地域の地質」,(乙152)に添付される地質平面図及び断面図において,気比ノ宮断層が南方に連続する地域は,山屋背斜とその西側に位置する大積向- 652 -斜及び渋海川向斜の間の部分に当たり,緩やかな西落ちの構造となっているので,気比ノ宮断層は与板背斜の東翼に想定される西側上がりの逆断層であり,気比ノ宮断層の南方に連続する断層は緩やかな西落ちの構造となっているから,落ちの方向が全く逆の構造であって,これらを一連の活断層として活動することを想定することはできないこと,g本件安全審査においては,気比ノ宮断層の北部について,地表では断層面が確認できないものの,地表踏査や空中写真判読の結果として活断層が推定される範囲を考え,更に石油関係資料を考慮した上で,地表に確認されるリニアメントの終端から約7.5km北部までを活断層であるとみなして評価し,気比ノ宮断層の長さは,ω3から長岡市ω2までの17.5㎞であるとしていることが認められる。 そうすると,気比ノ宮断層の南限を長岡市ω2付近までとした本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ③常楽寺断層(中央丘陵西縁部断層)について控訴人らは,a中央丘陵西縁部にある常楽寺断層は,その北部区間について,現在も活動が続いていること,b同断層の南部区間については,灰爪層の撓曲が連続して追跡できること,c地形的に山地と平地とが直線 控訴人らは,a中央丘陵西縁部にある常楽寺断層は,その北部区間について,現在も活動が続いていること,b同断層の南部区間については,灰爪層の撓曲が連続して追跡できること,c地形的に山地と平地とが直線状の境界線をなしていることから,同断層が,ω5から柏崎市ω17までの24㎞であるので,同断層を過小評価した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,152,156,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉施設の耐震設計においては,中央丘陵西縁部断層(控訴人らの主張する「常楽寺断層」の一部がこれに当たる)の存在が推定さ。 れているω4からω5にかけての地表部付近には,第四紀後期におい- 653 -て活動した断層が認められる露頭は認められないこと,b上記区間に認められるリニアメントも,中央丘陵西縁部断層が地下深部に存在すると推定する根拠となった撓曲構造の位置と一部で一致していないが,これは撓曲構造に係る構造運動によって形成されたリニアメントが,長い期間の侵食作用を受けて東側に後退した結果撓曲構造とずれた結果であると判断されたこと,cω20周辺の露頭において複数の断層が認められるが,その位置や断層面の方向は,中央丘陵西縁部断層を推定する根拠となった上記リニアメント及び撓曲構造の位置や方向と一致していない上,上記各断層は,地すべり性の断層の特徴を示していること,d中央丘陵西縁部断層の南方においては,地表踏査をしても連続して追跡できるような撓曲構造が認められず,山地と平地の境界にみられる比較的,直線的な地形については,過去の海岸線に起因する地形(現在より海水準が高い時代の海食崖)にすぎないこと(以上,乙3の6-275ないし278,293,294頁,乙4の21頁,上記証人P6 れる比較的,直線的な地形については,過去の海岸線に起因する地形(現在より海水準が高い時代の海食崖)にすぎないこと(以上,乙3の6-275ないし278,293,294頁,乙4の21頁,上記証人P6の証言,e「柏崎地域の地質(乙152)に添)」付される地質図によれば,控訴人らが主張する活断層が想定されるとする位置には,所々に中位段丘である安田層が点在し,沖積層の谷が安田層に遮られて長く連続しないことが認められる。 そうすると,中央丘陵西縁部断層の第四紀後期の活動性は無視できるとした本件安全審査の判断には合理性があるというべきであるから,控訴人らの上記主張は失当である。 ④真殿坂断層について控訴人らは,真殿坂断層の長さについては,ω8から鯖石川河口までの21㎞に及ぶ活断層であるので,同断層を過小評価した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,152,15- 654 -6,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,a本件原子炉施設の耐震設計においては,真殿坂断層の存在が推定される地域の空中写真判読によっては,リニアメントの存在は全く認められず,また,これに加えて実施された地表踏査の結果によっても,第四紀後期における構造運動に起因した断層活動を示唆する断層崖やケルンコル等の地形的特徴及び露頭は認められなかったことから,上記断層の第四紀後期における活動は無視できると判断されたこと(乙2の6-3-9頁,乙3の6-269ないし273頁,乙4の20ないし21頁,上記証人P6の証言,bω12の露頭に見られる断層につ)いて,地すべり運動によって番神砂層及び安田層が西山層中に落ち込んで生じた地表の断層であり,真殿坂断層とは関係がないこと(乙3の6-212ないし218頁,乙4の22頁, の露頭に見られる断層につ)いて,地すべり運動によって番神砂層及び安田層が西山層中に落ち込んで生じた地表の断層であり,真殿坂断層とは関係がないこと(乙3の6-212ないし218頁,乙4の22頁,c真殿坂断層は,背)斜軸と背斜軸との間にある向斜軸が急傾斜になっている地域に推定される断層であるところ,ω6より南側には認められないこと(乙3の6-269ないし273頁,上記証人P6の証言)などから,上記ω6が真殿坂断層の南限と判断されたことが認められる。 そうすると,真殿坂断層の長さをω8からω6までの約14㎞とし,真殿坂断層の第四紀後期以降の活動性は無視できるとした本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ⑤椎谷断層について控訴人らは,椎谷断層について,石油関係資料で魚沼層群を切っているとの記載があるので,空中写真によりリニアメントが認められず,かつ断層露頭がないことを理由にして同断層の活動を無視した本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第三の五5。 )- 655 -石油関係資料には,椎谷断層が魚沼層群を切っているとの記載があることは,当事者間に争いがない。 しかし,証拠(乙1ないし4,152,156,原審における証人P6の証言)によれば,本件安全審査においては,a本件原子炉施設の耐震設計においては,椎谷断層が存在すると推定される地域の地表踏査の結果,断層露頭が確認されず,椎谷断層線に沿った稲川付近では,逆転した灰爪層の上に,安田層より古い水平な半固結層があるが,断層で切られている形跡がないことが確認されたこと,b空中写真の判読結果によっても変位地形が全く認められなかったことから,椎谷断層の活動は少なくとも安田層堆積前にほとん 古い水平な半固結層があるが,断層で切られている形跡がないことが確認されたこと,b空中写真の判読結果によっても変位地形が全く認められなかったことから,椎谷断層の活動は少なくとも安田層堆積前にほとんど終了し,それ以降の活動は全くなかったか,あってもごく小さいものと判断されたことが認められる。 そうすると,椎谷断層の第四紀後期以降の活動性は無視できるとした本件安全審査の判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできないから,控訴人らの上記主張は失当である。 ⑥新しい松田式について控訴人らは,活断層の長さから想定すべき最大地震のM(マグニチュード)を算出する式として従前よりいわゆる「松田式」が用いられてきたが,近時においてその考案者であるP22が最新の研究成果に基づき,新しい松田式(松田(1998。甲306)に修正してい)るから,本件安全審査における算定値は誤りである旨主張する。 しかし,証拠(甲306,乙115)及び弁論の全趣旨によると,a新しい松田式(1998)は,地表地震断層が明らかな地震のみについて,その地表地震断層の長さと地震規模Mとの関係を求めているものであるが,本件安全審査で用いられた松田式は,日本の内陸で発生した地震について,活断層の長さと地震規模の関係を示す経験式で- 656 -あること,b原子炉施設の設計に当たっては,敷地近傍の断層を詳細に調査しており,断層の長さについては地表に現れている長さに限らず,活断層の長さを保守的に推定しているので,そのようにして推定された活断層の長さにより地震の規模を適切に算出するためには,松田式を用いなければならないこと,c第166回原子炉安全専門委員会(平成11年2月10日)においても「現段階においては,新しく提案された松田式(1998)を採用する必要はないと考える」と めには,松田式を用いなければならないこと,c第166回原子炉安全専門委員会(平成11年2月10日)においても「現段階においては,新しく提案された松田式(1998)を採用する必要はないと考える」と。 確認されている(乙115)ことが認められる。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているから失当である。 ⑦金井式-シード図について控訴人らは,本件安全審査においては,金井式がM(マグニチュード)と震源距離から「最大加速度」を求める式として用いられているが,本来は「最大速度振幅」を算出する式であるから,これを「最大加速度」の算出に用いることはそれ自体便宜的なものであること,そして,本件原子炉施設敷地での最大加速度の算定に用いた金井式-シード図の組合せは,実測値と比較すると過小評価をしていることから,原子力発電所の耐震設計・安全審査に用いる最大加速度の算定に用いることは合理性を欠いているので,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(乙1ないし4,147,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によれば,本件原子炉施設の敷地地盤における最大加速度振幅を算定するために用いた金井式は,岩盤(地盤)における地震動の最大加速度振幅,震源距離及びMの関係を表す経験式であり,地震工学の分野において一般にその妥当性が是認されていることが認められるから,敷地地盤における地震動の最大加速度振幅の算- 657 -定式として金井式を用いることは不合理ではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ⑧鳥取県西部地震について控訴人らは,a平成12年10月6日に発生した鳥取県西部地震においては,ω11の観測点では,地表において最大加速度1135Gal,計測震度6.6が記録され,また,地下100m地点でも東西 震について控訴人らは,a平成12年10月6日に発生した鳥取県西部地震においては,ω11の観測点では,地表において最大加速度1135Gal,計測震度6.6が記録され,また,地下100m地点でも東西方向で最大574.7Galが記録されたこと,bこのω11の観測点で本件安全審査の方法で最大加速度を計算すると,地震発生以前は約195Galとなり,鳥取県西部地震発生前にω11地点において本件安全審査と同様の手法により原発の設置許可申請を行っていれば,設計用地震加速度が鳥取県西部地震でのω11地点における実測値と比べてかなりの過小評価となったことから,設計用地震加速度の算定方法が全体として過小評価であるので,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲371,372)及び弁論の全趣旨によると,ω11地点及びその周辺においては,本件安全審査において実施されたような地質・地盤等に関する詳細な調査が実施されていないことが認められるから,控訴人らの主張は,詳細な調査を実施せずに判明していた資料を基にして設計用地震加速度を算定し,算定値が実測値よりも過小評価となったはずであると推測するものであるから,その合理的根拠を欠いており,本件安全審査の合理性を左右するものではないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 (エ)本件原子炉施設の安全性の有無について①本件原子炉施設の安全性について控訴人らは,気比ノ宮断層等によって,最大加速度500Gal以- 658 -上の地震が襲う可能性が十分あり,その場合には,本件原子炉施設の格納容器,ECCS,計測制御系システム等は機能を喪失し,大きな原発事故に至るおそれがあるので,この原発事故を想定した耐震設計の審査を欠如している本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二 格納容器,ECCS,計測制御系システム等は機能を喪失し,大きな原発事故に至るおそれがあるので,この原発事故を想定した耐震設計の審査を欠如している本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第三の五6。 )しかしながら,上記前提となる事実と証拠(乙1ないし4,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,a本件原子炉施設における耐震設計上においては,敷地地盤に与えられる地震動の推定最大加速度のうち最大のものは,気比ノ宮断層の活動によって将来発生することのあり得る地震による220Galとされたこと,b安全対策上特に緊要な格納容器,原子炉緊急停止装置及びホウ酸水注入装置については,設計用地震動(最大加速度300Gal)の1.5倍の地震動を用いた動的解析によって求められた地震力に,平常運転に伴って作用する圧力や熱膨張等による力が加わったとしても,主要施設が損傷せず,十分に機能が維持されるように設計されたことが確認された上,その基本設計において,本件原子炉施設の地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とはならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものと判断されたことが認められる。 そうすると,本件安全審査における上記判断には合理性があるというべきであるから,その判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認めることはできない。 ②スマトラ沖大地震・津波と本件安全審査について控訴人らは,a平成16年12月26日に発生したスマトラ沖大地震のため,巨大津波が発生し,波高25mに達した例もあり,多数の- 659 -鉄筋コンクリート建物が崩壊してその犠牲者は13カ国で18万人を超える最悪の結果となったこと,b本件安全審査においては 震のため,巨大津波が発生し,波高25mに達した例もあり,多数の- 659 -鉄筋コンクリート建物が崩壊してその犠牲者は13カ国で18万人を超える最悪の結果となったこと,b本件安全審査においては,科学的には意味のない潮位計の記録や日本海が津波の静穏期であった時期の記録に基づいて行われ,防波堤が6.8mの高さで設計されており,過去の最大地震である新潟地震の最高潮位が満潮時に来ても,津波の高さが2.34m程で防波堤を越えることがないので,安全であるとし,スマトラ沖大地震・津波などの大地震・巨大津波を想定していないことから,現在の科学水準に照らすと,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する。 しかし,証拠(甲477ないし481,乙1ないし4,原審における証人P6の証言)及び弁論の全趣旨によると,aスマトラ沖大地震の震源は,スンダ海溝に位置し,インド・オーストラリアプレートがユーラシアプレートに沈み込んでいる地域であり,b本件原子炉敷地が面する日本海においては,スマトラ沖大地震と同様な地震をもたらすプレートの沈み込みはなく,過去にもスマトラ沖大地震のような大地震・巨大津波が発生したことはないこと,c昭和58年の日本海中部地震による津波で波高が20mを超える観測がされているが,これは局地的な現象であり,当該観測場所における地形(海岸線の形状や水深)の影響であって,本件原子炉施設が設置されている敷地前面の海域の地形はそのような津波が発生するものとはいえないこと,d本件安全審査においては,本件原子炉敷地付近で,過去における津波・高潮による被害の記録がなく,これまでの最高潮位は新潟地震(昭和39年6月16日)による津波で,土木学会作成の「新潟地震震害調査報告(昭和39年」により,柏崎港内物揚場において,最高潮位)T.P+1.8mであり,塑望平 く,これまでの最高潮位は新潟地震(昭和39年6月16日)による津波で,土木学会作成の「新潟地震震害調査報告(昭和39年」により,柏崎港内物揚場において,最高潮位)T.P+1.8mであり,塑望平均満潮時T.P+0.54mであったことを確認し,これに対して主要構造物の敷地標高を5m以上とす- 660 -る(乙2の6-4-3及び4頁,乙4の26頁)ので,異常潮位による被害を受けるおそれはないと判断されたことが認められるから,津波等に対する本件安全審査の判断に不合理な点はないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張はその前提を欠いているから失当である。 (オ)小括以上のとおり,上記前提となる事実にかんがみると,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,本件原子炉施設の地質・地盤及び同施設周辺において発生するおそれのある地震が,同施設における大事故の誘因とならず,安全性を確保でき,原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認められない。 (5)本件原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はあるか否か。また,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 ア審査基準に不合理な点があるか否か。 (ア)公衆との離隔に係る審査基準についてa上記前提となる事実によると,本件原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の調査審議においては,原子力委員会が指示した立地審査指針(乙10)及び安全設 ア)公衆との離隔に係る審査基準についてa上記前提となる事実によると,本件原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の調査審議においては,原子力委員会が指示した立地審査指針(乙10)及び安全設計審査指針(乙14)が用いられたことが認められる。 bところで,上記前提となる事実,上記(3)ア(ア)及び(4)ア(ア)の各- 661 -認定事実並びに弁論の全趣旨によると,本件処分後において,立地審査指針が平成元年3月27日に一部改訂された上,これに関連するものとして新たに,(a)新安全設計審査指針,(b)安全評価審査指針,(c)重要度分類指針,(d)ECCS性能評価指針,(e)反応度投入事象評価指針,(f)「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて,(g)」「燃料被覆管は機械的に破損しないこと」の解釈の明確化につい「て,(h)「我が国の安全確保対策に反映させるべき事項」につい」「て(審査,設計及び運転管理に関する事項《基準関係の反映事項は除く,(i)「我が国の安全確保対策に反映させるべき事項」につ》)」「いて,(j)地質・地盤の手引き,(k)耐震設計審査指針,(l)「原」子力発電所等周辺の防災対策について,(m)「沸騰水型原子炉に用」いられる9行9列型の燃料集合体について」が定められていること,しかし,これらは,上記(3)ア(ア)及び(4)ア(ア)のとおり,いずれもそれまでの原子炉施設の知見の蓄積を踏まえて,それらを整理,成分化されたものであり,審査の基本的な考え方は,本件安全審査当時のものが維持されており,本件安全審査の基礎とされた本件処分当時の知見にその後の新しい科学技術上の知見等からみて誤りであったものとして,新たな指針等を策定したものではないことが認め 本件安全審査当時のものが維持されており,本件安全審査の基礎とされた本件処分当時の知見にその後の新しい科学技術上の知見等からみて誤りであったものとして,新たな指針等を策定したものではないことが認められる。 (イ)めやす線量について控訴人らは,立地審査指針が定めているめやす線量は,何ら根拠がなく,このような過大な線量値を定めている同指針に依拠した本件安全審査も不合理である旨主張し,原審における証人P4の証言中には,これに沿う供述部分がある(原判決第二編第一章第六節第二款第四の四。 )しかし,証拠(甲33,乙10,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,立地審査指針(乙10)は,原子炉設- 662 -置許可に際しての安全審査において,申請に係る原子炉施設につき,その基本設計に関して,平常運転時における被ばく低減対策及び事故防止対策に係る安全性がそれぞれ確保されるものであることを確認した上,当該原子炉施設が,その安全防護設備との関係において十分に公衆から離れているとの立地条件を満たすものであるかどうかを審査することを定めていること,そして,災害評価(立地評価)は,事故防止対策等に係る安全確保対策を講じた原子炉施設が,更に適切な社会的立地条件を具備しているか否かを評価するものであって,めやす線量については,当該原子炉施設の公衆との離隔に係る立地条件の適否の判断基準となるものであるが,上記指針が定めるめやす線量は,その基本設計からみて現実には発生する蓋然性のない事故を想定した場合においても,当該原子炉施設はその安全防護設備との関連において十分に公衆から離れているかどうかを判断する目安としての線量にとどまるものであって,公衆がその線量を現実に被ばくする蓋然性があることを前提としたものではないことが認められる。 しかも の関連において十分に公衆から離れているかどうかを判断する目安としての線量にとどまるものであって,公衆がその線量を現実に被ばくする蓋然性があることを前提としたものではないことが認められる。 しかも,上記前提となる事実と証拠(甲33,乙1ないし4,10,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,災害評価(立地評価)における重大事故及び仮想事故として,核分裂生成物の大気中への放出量が最大になる可能性をもつ事故事象として,冷却材喪失事故と主蒸気管破断事故の2種類の事故が想定されているが,本件原子炉敷地境界付近における重大事故及び仮想事故の評価結果は,上記めやす線量に比べて十分小さいものと確認さ,れ,立地審査指針に適合していると判断されていること(乙4の49頁52頁)が認められ,めやす線量に関する本件安全審査には合理性があるというべきである。 そうすると,上記証人P4の供述部分を採用することはできず,控訴- 663 -人らの上記主張は失当というべきである。 (ウ)小括以上のとおり,上記前提となる事実により認められる本件原子炉施設の公衆との離隔に係る本件安全審査の審査内容にかんがみると,上記調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点はないというべきである。 イ本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔による災害の防止上支障のないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるか否か。 (ア)災害評価(立地評価)におけるECCS等の健全性について控訴人らは,本件安全審査における災害評価は,冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故を想定しているが,ECCS,圧力容器及び格納容器等 。 (ア)災害評価(立地評価)におけるECCS等の健全性について控訴人らは,本件安全審査における災害評価は,冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故を想定しているが,ECCS,圧力容器及び格納容器等の健全性が絶対的な前提となっているので,その設定条件が恣意的である上,本件原子炉施設の安全防護等の技術的因子の有効性を考慮して災害評価をするのは不合理であるから,本件安全審査には瑕疵がある旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第四の二1。 )しかし,上記前提となる事実と証拠(甲33,乙1ないし4,10,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,立地評価は,いわゆる多重防護の考え方に基づいて事故防止対策が講じられ,かつその基本設計において安全性が確認された原子炉施設について,安全性の確保の観点から念のために立地審査指針により公衆との離隔に係る立地条件の適否を評価するために評価条件を仮定して行うものであって,炉心内の全燃料の溶融などを仮定しているものではないこと,すなわち,立地審査指針への適合性の評価は,基本設計において災害防止上支障がないものであるかどうかを判断する一環として行われるものであ- 664 -ると認められ,基本設計において採用された安全対策の技術的有効性をすべて否定するような想定は合理性を欠くものというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。 (イ)災害評価(立地評価)における全炉心溶融等の想定についてa控訴人らは,本件安全審査の災害評価において想定している重大事故及び仮想事故が,現実に起きているチェルノブイル事故より小規模であって,暴走事故や炉心溶融事故とそれによって炉心内に貯蔵されている放射性物質の相当部分が環境内に放出される事態を想定していないなど恣意的であり,災害評価が十分では るチェルノブイル事故より小規模であって,暴走事故や炉心溶融事故とそれによって炉心内に貯蔵されている放射性物質の相当部分が環境内に放出される事態を想定していないなど恣意的であり,災害評価が十分ではないから,本件安全審査には看過し難い欠落がある旨主張する。 しかし,証拠(甲33,乙1ないし4,10,14,94,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,安全評価審査指針(甲33,乙94)の解説「Ⅲ.立地評価」の「評価すべき範囲と評価すべき事象の選定について」において「重大事故」及び「仮,「想事故」を想定する目的は,対象となる原子炉と,周辺の公衆との離隔が適正に確保されていることを確認することである。最小限度必要とされる離隔距離は,当該原子炉の基本的構造,出力その他の特性,安全防護施設(工学的安全施設)を含む安全上の対策等によって変化するものである。したがって「重大事故「仮想事故」の選定に当,」,たっては,この趣旨が適切に考慮される必要がある。例えば「仮想,事故」の選定に当たって,炉心の核分裂生成物の多重防壁のすべてが,無条件に機能しないと仮定すると,離隔距離は事実上原子炉出力のみで定まってしまうことになり,その他の重要な因子は無視されることになる。このような仮定は,最小限度必要とされる離隔距離を判断するという見地からは,適切とはいい難く,したがって「原子炉立地,審査指針」が必須な仮定として求めているものではない」と明記さ。 - 665 -れていること,そして,原子炉設置許可に際しての安全審査は,原子炉施設の位置,構造及び設備の妥当性を評価するものであるから,安全防護設備等の存在を無視して初めて発生するような事故を立地評価(災害評価)において評価する必要はないことが認められるので,控訴人らの上記主張は失当であ 及び設備の妥当性を評価するものであるから,安全防護設備等の存在を無視して初めて発生するような事故を立地評価(災害評価)において評価する必要はないことが認められるので,控訴人らの上記主張は失当である。 bまた,控訴人らは,我が国の昭和34年の原子力産業会議の報告のほか,昭和32年の米国ブルックヘブン国立研究所のブルックヘブン報告書,昭和50年の米国原子力委員会のラスムッセン報告書,チェルノブイル事故の教訓などに照らすと,原発事故による最悪の事態における被害の甚大性などの災害評価を行うべきであるから,シビアアクシデントを想定しない本件安全審査は不合理である旨主張する(原判決第二編第一章第六節第二款第四の三1ないし5。 )しかし,控訴人らの主張に係るシビアアクシデントは,上記6(3)イ(シ)②のとおり,原子炉設置許可の段階における安全審査の対象ではないから,控訴人らの上記主張はその前提を欠いており失当である。 (ウ)フィルタの信頼性について控訴人らは,本件安全審査においては,災害評価において,重大事故と仮想事故の双方で常にフィルタによりヨウ素が95%除去されるということが前提とされているが,動燃東海再処理工場の火災・爆発事故では,火災発生後わずか7分で「高性能粒子フィルタ」が目詰まりして機能喪失しており,最大想定事故の場合においてフィルタが健全であることを前提にするのは非現実的で不合理であるから,本件安全審査には看過し難い欠落がある旨主張する。 しかし,動燃事故については,上記6(3)イ(シ)③のとおり,規制法第5章の規定により規制される「再処理の事業」を行う施設である再処理施設において発生した火災・爆発事故であって,本件安全審査の対象- 666 -となる原子炉施設の位置,構造及び設備の基本設計の安全性にかかわる事項ではないとい 再処理の事業」を行う施設である再処理施設において発生した火災・爆発事故であって,本件安全審査の対象- 666 -となる原子炉施設の位置,構造及び設備の基本設計の安全性にかかわる事項ではないというべきであるから,控訴人らの主張はその前提を欠いており失当である。 のみならず,証拠(乙1ないし4,原審における証人P1の証言)及び弁論の全趣旨によると,本件安全審査においては,本件原子炉施設の原子炉建家内ガス処理系は,非常用再循環ガス処理系と非常用ガス処理系から成り,高性能フィルタのみによって構成されるものではなく,しかも,原子炉建家内ガス処理系は,事故時においても環境に放出される放射性物質を低減させる機能を有するものであると判断されていること(乙4の33,34頁)が認められる。 したがって,控訴人らの上記主張は失当である。 (エ)小括以上のとおり,上記前提となる事実にかんがみると,本件原子炉が具体的審査基準に適合し,その基本設計において,公衆との離隔に係る安全性を確保し得るもの,すなわち,公衆との離隔に係る立地条件において原子炉等による災害の防止上支障がないものとした本件安全審査における調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認められない。 (6)その他の規制法24条1項4号所定の要件適合性についてその他,上記前提となる事実と証拠(乙1なしい4,原審における証人P1,同P5及び同P6の各証言)にかんがみると,本件安全審査においては,原子炉施設の自然的立地条件である気象,水理などの自然事象のほか,交通等の人為事象,社会環境等に係る安全対策を含む規制法24条1項4号所定の要件適合性の判断に不合理な点はないというべきである。 第4 結論 以上の次第で,本件処分には,手続的違法はなく,また,現在の科学水準に- 667 -照ら る安全対策を含む規制法24条1項4号所定の要件適合性の判断に不合理な点はないというべきである。 第4 結論 以上の次第で,本件処分には,手続的違法はなく,また,現在の科学水準に- 667 -照らし,本件安全審査の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとはいえず,規制法24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る)及び。 4号の要件適合性についての内閣総理大臣の判断に不合理な点があると認めることはできないから,実体的違法もないというべきである。 よって,控訴人らの本件請求はいずれも理由がないから棄却すべきであって,これと結論において同旨の原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,控訴費用の負担について行訴法7条,民訴法67条,61条,65条1項を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第24民事部裁判長裁判官大喜多啓光裁判官河野清孝裁判官水谷正俊は,転補のため,署名・押印することができない。 裁判長裁判官大喜多啓光(主要略語表)・民訴法民事訴訟法(平成8年法律第109号)・行訴法行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号,平成16- 668 -年法律第84号による改正前のもの)・電事法電気事業法(昭和39年法律第170号,昭和58年法律第83号による改正前のもの)・基本法原子力基本法(昭和30年法律第186号,昭和53年法律第86号による改正前のもの)・設置法原子力委員会設置法(昭和30年法律第188号,昭和53年法律86号による改正前のもの)・設置法施行令原子力委員会設置法施行令(昭和31年政令第4号,昭和53年9月28日政令第336号による改正前のもの)・規制法核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 のもの)・設置法施行令原子力委員会設置法施行令(昭和31年政令第4号,昭和53年9月28日政令第336号による改正前のもの)・規制法核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号,昭和52年法律第80号による改正前のもの)・規制法施行令核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和32年政令第324号,昭和52年政令第315号による改正前のもの)・原子炉規則原子炉の設置,運転等に関する規則(昭和32年総理府令第83号,昭和52年総理府令第42号による改正前のもの)・安全審査会運営規程原子炉安全専門審査会運営規程(昭和36年9月6日原子力委員会決定,昭和51年7月13日同委員会決定による改正前のもの)・許容線量等を定める件原子炉の設置,運転等に関する規則等の規定に基づき,許容被曝線量等を定める件(昭和35年9月30日科学技術庁告示第21号,昭和53年12月28日同庁告示- 669 -第12号による改正前のもの)・立地審査指針原子炉立地審査指針及びその運用に関する判断のめやすについて(昭和39年5月27日原子力委員会決定)・気象指針発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針について(昭和52年6月14日原子力委員会決定)・安全設計審査指針発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針について(昭和52年6月14日原子力委員会決定)・線量目標値指針発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針について(昭和50年5月13日原子力委員会決定)・線量目標値評価指針発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針について(昭和51年9月28日原子力委員会決定)・ECCS安全評価指針軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の安全評価 ・線量目標値評価指針発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針について(昭和51年9月28日原子力委員会決定)・ECCS安全評価指針軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の安全評価指針について(昭和50年5月13日原子力委員会決定)・新安全設計審査指針発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針(平成2年8月30日原子力安全委員会決定。一部改訂平成13年3月29日同委員会)・安全評価審査指針発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針(昭和53年9月29日原子力委員会策定。一部改訂平成元年3月27日原子力安全委員会。平成2年8月30日同委員会決定。一部改訂平成13年3月29日同委員会)・重要度分類指針発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針(平成2年8月30日原子力安全委員会決定)- 670 -・ECCS性能評価指針軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の性能評価指針(昭和56年7月20日原子力安全委員会決定。一部改訂・昭和63年5月19日・平成2年8月30日・平成4年6月11日同委員会)・反応度投入事象評価指針発電用軽水型原子炉施設の反応度投入事象に関する評価指針(昭和59年1月19日原子力安全委員会決定。一部改訂平成2年8月30日同委員会)・耐震設計審査指針発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和53年9月原子力委員会。一部改訂昭和56年7月20日・平成13年3月29日原子力安全委員会)・地質・地盤の手引き原子力発電所の地質,地盤に関する安全審査の手引き(昭和53年8月23日原子炉安全専門審査会作成)・線量限度等を定める告示実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示(平成13年3月21日経済産業省告示第1 (昭和53年8月23日原子炉安全専門審査会作成)・線量限度等を定める告示実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示(平成13年3月21日経済産業省告示第187号)─────────────────────────────────────・安全審査会原子炉安全専門審査会・東京電力東京電力株式会社・本件原子力発電所柏崎・刈羽原子力発電所・本件原発柏崎・刈羽原子力発電所・本件原子炉本件原子力発電所1号機・本件申請東京電力が,内閣総理大臣に対し,昭和50年3月20日付けでなした本件原子炉設置許可申請。ただし,東京- 671 -電力は,内閣総理大臣に対し,昭和52年7月12日,同日付け「柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書本文及び添付書類の一部補正について」と題する書面を提出して本件申請書及び添付書類の一部を補正。 ・本件処分内閣総理大臣が,東京電力に対し,本件申請について,昭和52年9月1日付けでなした本件原子炉設置許可処分・伊方原発最高裁判決伊方原子力発電所原子炉設置許可処分取消訴訟についての最高裁判所昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁・福島第二原発最高裁判決福島第二原子力発電所原子炉設置許可処分取消訴訟についての最高裁判所平成2年(行ツ)第147号平成4年10月29日第一小法廷判決・訟務月報39巻8号1563頁・判例時報1441号50頁・判例タイムズ804号65頁─────────────────────────────────────・ASTM米国材料試験協会(AmericanSocietyofTestingMaterials)・ECCS非常用炉心冷却設備(emerg ─────────────────────・ASTM米国材料試験協会(AmericanSocietyofTestingMaterials)・ECCS非常用炉心冷却設備(emergencycorecoolingsystem)・ICRP国際放射線防護委員会(InternationalCommissiononRadiologicalProtection)・NRC米国原子力規制委員会(NuclearRegulatoryCommission)・SCC応力腐食割れ(stress-corrosion-cracking)- 672 -・TMI発電所米国ペンシルヴェニア州スリーマイルアイランド原子力発電所(ThreeMileIslandNuclearPowerPlant)・TMI事故昭和54年3月28日,TMI発電所において発生した事故
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