令和5(ネ)283 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年4月18日 名古屋高等裁判所 名古屋地方裁判所
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判決文本文11,030 文字)

令和6年4月18日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ネ)第283号損害賠償請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所令和2年(ワ)第4123号)判決 主文 1 一審被告の控訴に基づき、原判決中、一審被告の敗訴部分を取り消す。 2 上記部分につき、一審原告らの請求をいずれも棄却する。 3 一審原告らの控訴をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、第1、2審を通じて一審原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告ら⑴ 原判決中、一審原告らの敗訴部分をいずれも取り消す。 ⑵ 一審被告は、一審原告Aに対し、1087万3549円及びこれに対する令和元年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑶ 一審被告は、一審原告Bに対し、1087万3549円及びこれに対する令和元年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 一審被告主文1項及び2項と同旨第2 事案の概要(以下、略語は、特に断りのない限り、原判決の例による。) 1 本件は、Cの相続人である一審原告らが、Cが入所していた一審被告が運営する本件施設において、Cの食事を全介助するか、少なくとも食事中には常時見守るべき注意義務等を負っていたのにこれを怠ったことにより、Cが食事を誤嚥して死亡したとして、一審被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として、合計3553万1332円(一審原告一人につき、1776万5666円)及びこれに対するCが死亡した日である令和元年12月12日 から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審が、一審原告らの請求のうち、各689万2117 2日 から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審が、一審原告らの請求のうち、各689万2117円及びこれに対する令和元年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容し、その余をいずれも棄却したところ、一審原告ら及び一審被告が、自身の敗訴部分につき、いずれも控訴した。 2 前提事実前提事実は、原判決の「事実及び理由」の第2の1に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 争点及びこれについての当事者の主張⑴ 争点及びこれについての当事者の主張は、次の⑵のとおり原判決を補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の2及び3に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑵ 原判決の補正ア原判決3頁9行目、10行目及び14行目の各「債務不履行(注意義務違反)」(3か所)を「注意義務違反」にそれぞれ改める。 イ原判決4頁4行目末尾に行を改めて次のとおり加え、5行目の「イ」を「ウ」に改める。 「イ一審被告は、本件入居契約により、Cの心身の状況に応じた適切な介助を提供する義務を負っていたところ、D医師からCに提供する食事形態について、全粥・刻み食とする旨の指示を受けたにもかかわらず、同医師に確認することなく、同医師の指示に反して、主食について、米飯から変更した全粥を再度米飯に変更して提供し、Cの心身の状況に応じた適切な介助を提供しなかった。」ウ原判決4頁8行目の「せき込んだりしていた。」の次に「しかも、一審被告は、D医師の指示に反した形態で食事を提供していたのであるから、嘔 吐による誤嚥の可能性が相対的に高い状況となっていることを認識し得た。」を加える。 エ原判決5頁1行 かも、一審被告は、D医師の指示に反した形態で食事を提供していたのであるから、嘔 吐による誤嚥の可能性が相対的に高い状況となっていることを認識し得た。」を加える。 エ原判決5頁1行目の「全過程について」の次に「介助して、」を加える。 オ原判決5頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加え、10行目の「イ」を「ウ」に改める。 「イ D医師は、本件施設の配置医師・かかりつけ医として入所者の健康に適切に関与すべき立場にあったものの、食事形態のアドバイスや指導はするものの、どのような食事形態にするかは家族と本件施設とが相談して決めることである。また、D医師が全粥への食事形態の変更を指示したのは、嘔吐の防止の観点からであり、窒息のリスクに対応するものでもなかった上、本件施設が提供した汁等でふやかした米飯であっても、D医師の指示や提案の趣旨を逸脱するものではなかった。そうであれば、本件施設が、Cに対して、主食について、全粥から汁等でふやかした米飯に再変更した食事を提供したことは、D医師の指示に反したものとはいえない。」カ原判決5頁17行目の「早食い」の次に「やかき込み食べ」を加える。 キ原判決5頁19行目末尾に次のとおり加える。 「さらに、主食について、全粥から汁等でふやかした米飯に再変更して提供することは、D医師の食事形態の変更の指示の趣旨に反するものではない上、窒息のリスクに大きな影響はないものであった。」ク原判決5頁25行目の「債務不履行(注意義務違反)」を「注意義務違反」に改める。 ケ原判決6頁21行目末尾に次のとおり加える。 「食事の際の口腔内の都度の観察は、本人が自力で食事摂取をする態様を前提とする以上、職員が都度食事を制止して口を開けるように指示して口腔内を確認するとの対応となるため、現実的には とおり加える。 「食事の際の口腔内の都度の観察は、本人が自力で食事摂取をする態様を前提とする以上、職員が都度食事を制止して口を開けるように指示して口腔内を確認するとの対応となるため、現実的には取り得ないものである。」 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、一審原告らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、次のとおりである。 2 認定事実⑴ 認定事実は、次の⑵のとおり原判決を補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の1に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑵ 原判決の補正ア原判決9頁18行目末尾に「入所時に本件施設が作成したCの利用者情報(フェースシート)(乙24)では、嚥下及び食事は自立しているとされていた(乙24)。」を加える。 イ原判決9頁20行目の「認定を受けた。その際の」を「認定を受け、認定調査項目のうち食事摂取については全介助とされた(甲1・6頁)。その際に提出された主治医意見書では、食事行為について、自力ないし何とか自分で食べられると評価されていた(甲1・11、12頁)。また、その際に開かれた介護認定審査会においては、食事は、施設では全介助とされているが、家族との外食時は見守り程度で、自分で食べられるが、全体的に全介助が必要で、複数で介助されることが多いとされていた(甲1・3頁)。 さらに、その際に行われた」に改める。 ウ原判決10頁1行目冒頭に「嚥下は良い。」を加える。 エ原判決12頁14行目末尾に「主食10割、副食5割摂取した。」を、21行目の「冷麺を食べ、」の次に「外出先にて」を、24行目の「本件施設に配置された」の次に「D」をそれぞれ加える。 オ原判決13頁2行目の「指示し」の次に「(以下「本件指示」という。)」を加える。 カ原判決13頁6行目の「 外出先にて」を、24行目の「本件施設に配置された」の次に「D」をそれぞれ加える。 オ原判決13頁2行目の「指示し」の次に「(以下「本件指示」という。)」を加える。 カ原判決13頁6行目の「強く希望した」の次に「(なお、一審原告らは、一審原告Aが、一審被告に対して精査を希望した事実を否認するが、紹介 状(甲8)には、嘔吐はかなり減った旨の本件施設の説明であるが、精査を希望する旨が記載されていること、診療録(乙10)には「KP希望により紹介」と記載され、KPは一審原告Aを指すものと解されること、一審原告Aも本件施設の施設長に嘔吐の原因を精査してほしいと言った旨供述していること(一審原告A18、19頁)に照らすと、上記のとおり認定するのが相当であり、一審原告らの主張は採用できない。)」キ原判決13頁12行目の「意向を受けて、」の次に「D医師の了承を得ずに、」を、13行目の「「軟飯に近い普通食」」の次に「(汁等でふやかした米飯)」をそれぞれ加え、13行目から14行目にかけての「乙27」を「乙2、9、27、E証人7頁」に改める。 ク原判決14頁3行目の「ことなどが」を「こと、個人情報として、嚥下について良好ないし良であることなどが」に改める。 ケ原判決14頁12行目の「令和元年12月12日」の次に「の午後に一審原告Aと面会し、差し入れられたおはぎを食べるなどした後、同日」を加える。 コ原判決15頁7行目の「Eは、」から9行目の「取り出した。」までを「Eは、Cの顔色の変化等により、食べ物が喉に詰まっていると判断し、周囲に声をかけて他の職員を集め、ハイムリック法等により食べ物が喉に詰まった状態を解除しようとするとともに、食べ物が喉に詰まっている旨を駆け寄った職員に伝え、同職員が、グローブをはめてCの口の中に手を に声をかけて他の職員を集め、ハイムリック法等により食べ物が喉に詰まった状態を解除しようとするとともに、食べ物が喉に詰まっている旨を駆け寄った職員に伝え、同職員が、グローブをはめてCの口の中に手を入れて食べかすを少量取り出した。もっとも、Eや他の職員は、Cの食べ物が喉に詰まった状態を解除することはできなかった。」に改める。 サ原判決15頁12行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 Cが搬送された病院の医師は、Cに対して気管挿管を試みたが、気管内に食べ物の残渣が大量に詰まっており、挿管することができなかった(甲56)。」 シ原判決15頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「⑻ 本件施設は、本件事故のあった夕食時においては、入居者定員29名に対して、職員5名を配置して対応していた(乙30・7頁)。」 3 争点⑴(一審被告の注意義務違反の有無)について一審被告は、介護保険法に基づく施設介護サービスを提供する地域密着型介護老人福祉施設の運営事業者として、Cとの間の本件入所契約に基づき、介護サービスの提供にあたって、入居者の生命、身体等に危害を及ばないよう事故防止に必要な措置を尽くすべき安全配慮義務(以下、単に「安全配慮義務」という。)を負っていたものと解される。 以下、一審被告が、上記安全配慮義務の違反として、一審原告らが主張する各注意義務に違反したか否かについて検討する。 ⑴ 食事に関して全介助すべき義務について一審原告らは、一審被告が、Cに対し、その食事に関して全介助すべき義務を負っていた旨主張する。 この点、確かに、Cは、令和元年5月の介護認定において、認定調査項目のうち食事摂取については全介助とされている(認定事実⑵)。しかし、全介助とされたのは、はしやスプーンを持っても遊んでしまうことにより の点、確かに、Cは、令和元年5月の介護認定において、認定調査項目のうち食事摂取については全介助とされている(認定事実⑵)。しかし、全介助とされたのは、はしやスプーンを持っても遊んでしまうことにより、全て介助で食べさせることが多いという本件施設の職員からの聞き取りに基づくものであると考えられる上、介護認定審査会において家族との外食時は見守り程度で、自分で食べられるとされ、主治医意見書でも、食事行為については自立ないし何とか自分で食べられるとされていたこと(認定事実⑵)に照らすと、介護認定の認定調査項目において全介助とされているからといって、直ちに、本件施設において、Cに対して、食事に関して全介助する必要があったとまではいえない。また、特別養護老人ホーム等の入所施設においては、施設サービス計画書を作成して家族の了解を得た上で介護サービスが開始されると考えられるところ(乙30・3頁)、Cにおける施設サービス計画書 (乙25の1、2)には、食事に関して、嘔吐しやすいので食後観察を怠らない旨の記載はあるものの(認定事実⑷)、全介助とするなどの介助についての記載がされておらず、食事の全介助について計画されて、本件入所契約の内容になっていたとはいえない。なお、アセスメント実施記録表(乙28)には、令和元年11月1日時点の飲水摂取及び食事摂取について全介助との記載があるが、その時点におけるCに対する評価が記載されているとはいえるものの、介護サービス計画を直ちに変更すべきであったことを示すものとまではいえず、上記判断を左右するものとはいえない。 以上からすれば、Cが本件施設に入所後に食事中にせき込んで嘔吐することがあったことなど、一審原告らが主張する事情を考慮しても、一審被告が、本件事故当時、Cに対して、安全配慮義務として、その食事に関 以上からすれば、Cが本件施設に入所後に食事中にせき込んで嘔吐することがあったことなど、一審原告らが主張する事情を考慮しても、一審被告が、本件事故当時、Cに対して、安全配慮義務として、その食事に関して全介助すべき義務を負っていたとは認められない。 ⑵ D医師の指示に従った食事を提供すべき義務についてア一審原告らは、一審被告が、Cに対して、Cの心身の状況に応じた適切な介助を提供すべき義務を負っていたのに、D医師の本件指示に反して、主食について全粥から再度米飯に変更して提供し、Cの心身の状況に応じた適切な介助を提供しなかった旨主張するところ、一審被告は、令和元年8月10日以降、D医師の了承を得ずに、Cの食事形態のうち主食を全粥から汁等でふやかした米飯に変更したと認められる(認定事実⑶イ)。 イこの点、D医師作成の意見書兼陳述書(乙60)及び当審におけるD医師の証言によれば、本件指示は、食事形態を全粥と刻み食へ変更することにより、食事をよく噛まずに飲み込むことで胃内停滞時間が長くなることや口の中にたくさん入れることを防ぐことで嘔吐を防ぐことを目的としたものであると認められる(D医師25、26頁)ところ、D医師は、全粥を汁等でふやかした米飯に変更することは本件指示の趣旨に反しないものであるとしている(D医師12、27頁)上、汁等でふやかした米飯を再 現した際の動画(乙58)の内容やD医師の証言(D医師12、26頁)を踏まえると、汁等でふやかした米飯は、相応に水分を含む状態となり(なお、一審原告らは、汁等でふやかした米飯には再現性がない旨主張するが、上記動画等の一審被告が提出する証拠の内容を踏まえると、多少の差異はあり得るものの、再現性がないものとはいえず、一審原告らの主張は採用できない。)、消化に良いものを提供すること がない旨主張するが、上記動画等の一審被告が提出する証拠の内容を踏まえると、多少の差異はあり得るものの、再現性がないものとはいえず、一審原告らの主張は採用できない。)、消化に良いものを提供することによって、胃内停滞時間を短くするなどして嘔吐を防ぐという点では主食を全粥から汁等でふやかした米飯に変更したとしても大きな差があったとは認められない。そうであれば、D医師の了解を得ることなく、主食を全粥から汁等でふやかした米飯に変更したことが、本件指示の趣旨に反するものとまではいえない。 ウこれに対して、一審原告らは、D医師が、当時の事柄を詳細に記憶していたとは考えられない上、一審被告と利害関係を有し、誘導に大きく影響されていることから、D医師の証言は信用性に疑義がある旨主張する。この点、D医師が一審被告の代表者の父に頼まれて同人が代表者であった病院に勤務することになり、一審被告が運営する本件施設の設置医師としてCの診察等にあたっていたと認められる(乙60、D医師1、14頁)。しかし、Cが死亡する前に本件施設の設置医師を辞めており(D医師9頁)、本件事故の責任の所在に直接関与する立場にはない上、現時点において、一審被告と何らかの関係があるとは認められず(乙60)、偽証の制裁を超えて、一審被告に有利な虚偽の証言をする動機があるとはいえないこと、Cの診察等をしていた頃に多数の施設利用者を診察していたとは認められる(D医師14、15頁)ものの、診療録等の書証により記憶が喚起することも考えられ、当時の状況について証言することも可能であるといえる上、記憶にないことは記憶にないと証言しており、供述態度は真摯であるといえること、本件指示の趣旨や全粥を汁等でふやかした米飯に変更したことに対する評価に関する証言は、医師としての経験や専門的知見に基づ ないことは記憶にないと証言しており、供述態度は真摯であるといえること、本件指示の趣旨や全粥を汁等でふやかした米飯に変更したことに対する評価に関する証言は、医師としての経験や専門的知見に基づ いてされたものといえることに照らすと、一審原告らが主張する事情を踏まえても、D医師が、一審被告のために、記憶に反して虚偽の証言をしたり、記憶にない事実を証言したり、あるいは、医師としての意見を歪めて証言したりしたとは認められない。したがって、同医師の証言は信用することができ、一審原告らの主張は採用できない。 また、一審原告らは、一審被告が提供していた汁等でふやかした米飯は、D医師が証言するに際して想定しているものとは異なったものであるから、全粥と汁等でふやかした米飯に対する評価に関するD医師の証言を採用するのは相当でない旨主張する。この点、D医師は、お茶漬けの様なものを想定して証言していると窺える(D医師24頁)ものの、汁等でふやかした米飯を再現して実施した実験に関する証拠(乙50、51の1、51の2、58)を確認した上で証言しており(乙60)、一審被告の主張する汁等でふやかした米飯の状況を把握していたといえること、汁等でふやかした米飯を再現した様子を撮影した動画(乙58)において、一定程度米飯が汁に浸かり、米飯が10分程度でかけられた汁を概ね吸収していることから、D医師の想定している状態と大きく異なるものであるとはいえないことを踏まえると、一審原告らが主張する事情は、全粥と汁等でふやかした米飯に対する評価に関するD医師の証言の信用性を減殺する事情とはいえず、一審原告らの主張は採用できない。 エ以上からすれば、一審被告の食事提供が、D医師の本件指示に反したものとまではいえず、一審被告に、一審原告らが主張する注意義務違反があった する事情とはいえず、一審原告らの主張は採用できない。 エ以上からすれば、一審被告の食事提供が、D医師の本件指示に反したものとまではいえず、一審被告に、一審原告らが主張する注意義務違反があったとは認められない。 ⑶ Cの食事を常時見守る職員を配置すべき義務についてア一審原告らは、①重度のアルツハイマー型認知症の症状により認知能力が著しく低下し、介護認定において、要介護5とされ、食事については全介助とされたこと、②本件事故の前日までかき込み食べることなどによっ て、多数回にわたりむせて嘔吐したり、せき込んだりしていたこと、③D医師の判断を仰ぐことなく食事形態の再変更を行ったことに照らすと、食事に起因する誤嚥事故等を起こす可能性を具体的に予見することができたのであるから、誤嚥事故を回避するために、常時見守りのための職員を配置すべき義務を負っていた旨主張する。 イこの点、①Cが重度のアルツハイマー型認知症に罹患し、介護保険において要介護5と認定され、認定調査項目のうち食事摂取については全介助とされ(認定事実⑵)、②本件事故前日までに嘔吐することがあったこと(認定事実⑶)、③一審被告が、本件指示により、主食を全粥とした後、D医師の了承を得ることなく(判断を仰ぐことなく)主食を全粥から汁等でふやかした米飯に再変更したこと(認定事実⑶イ)が認められる。 しかし、①Cは、平成31年4月の要介護状態区分の変更の認定申請の際の認定調査並びに同月1日付け及び令和元年10月1日付けの施設サービス計画書において、いずれも嚥下は良いとされていた(認定事実⑵及び⑷)上、入所時の利用者情報では、嚥下及び食事は自立しているとされ(認定事実⑴)、主治医意見書においても、摂食について特になしとされて、問題点が指摘されていないこと(甲1・12 いた(認定事実⑵及び⑷)上、入所時の利用者情報では、嚥下及び食事は自立しているとされ(認定事実⑴)、主治医意見書においても、摂食について特になしとされて、問題点が指摘されていないこと(甲1・12頁)、一審原告Aは、外出時に寿司や焼肉等を食べさせたり、おはぎ等を差し入れして食べさせたりし、特に誤嚥したことはなかったこと(一審原告A8、9頁)からすれば、本件事故当時、Cに嚥下機能の低下(嚥下障害)があったとは認められない。 そうであれば、一審原告らが提出するアルツハイマー型認知症に関する文献(甲51、52)の記載内容を踏まえても、Cが重度のアルツハイマー型認知症に罹患し、要介護5と認定され、食事摂取について全介助とされたことをもって、本件事故発生までに、他の入所者と比較して、Cが食事に起因する誤嚥事故等を起こす可能性が高いとはいえず、一審被告が、同誤嚥事故等を起こす可能性を具体的に予見できたとはいえない。 また、②Cは、本件指示以前には、月1、2回程度の頻度で食事中ないしは食事後に嘔吐していたものの、本件指示以後には、令和元年7月15日に外出先で焼き肉を食べた後に嘔吐したこと、同年8月16日に食物残渣物を3回嘔吐したこと、同年12月2日に味噌汁を飲んだ後せき込み大量に嘔吐したこと及び本件事故前日に嘔吐したこと(咳が出たときにその勢いで嘔吐してしまった様子とされている。)が認められる(認定事実⑶アないしウ)だけで、それ以外に嘔吐したと認めるに足りる証拠がないことからすれば、本件指示により嘔吐の回数は減少しており、多数回嘔吐していたとはいえない上、Cのかき込み食べをする癖に対しては、食事を小皿に取り分けて提供することにより対応していたことに照らすと、本件事故前日に嘔吐したことなどの本件事故までのCの嘔吐の状況を踏まえても、 たとはいえない上、Cのかき込み食べをする癖に対しては、食事を小皿に取り分けて提供することにより対応していたことに照らすと、本件事故前日に嘔吐したことなどの本件事故までのCの嘔吐の状況を踏まえても、一審被告が、本件事故当時、Cについて、嘔吐等による誤嚥事故の発生を具体的に予見すべき状況にあったとまではいえない。 さらに、③本件指示は、前記⑵のとおり、嘔吐に対するものであり、誤嚥そのものに対するものではない上、全粥を汁等でふやかした米飯に変更したことが、本件指示の趣旨に反するものであるとは認められない。また、令和元年8月10日に食事形態の再変更がされた後、同月16日に食物残渣物を少量ずつ3回嘔吐したことがあった以外は、同年12月2日及び同月11日に嘔吐しただけで、それ以外には嘔吐したと認めるに足りる証拠がない上、同12月の各嘔吐は、味噌汁を飲んだ際や咳が出たときに起こったものであり、全粥を汁等でふやかした米飯に変更したことに起因するものとは認められない。そうであれば、食事形態の再変更後に、有意に嘔吐の機会が増えたとはいえず、誤嚥してむせ込んだという事情も認められないことから、主食を全粥から汁等でふやかした米飯に変更したことによって、嘔吐の可能性が相対的に高い状況となったとはいえず、嘔吐等によって誤嚥事故が起こる可能性が高まっていたとは認められない。そうする と、一審被告は、主食を全粥から汁等でふやかした米飯に変更したことによって、直ちに、Cが誤嚥事故等を起こす可能性を具体的に予見できたとはいえない。 ウ以上からすれば、一審原告らが主張する①ないし③の各事情を考慮しても、本件事故時、一審被告において、Cが食事に起因する誤嚥事故等を起こす可能性を具体的に予見することができたとは認められない。 エそして、上記のとおり、 告らが主張する①ないし③の各事情を考慮しても、本件事故時、一審被告において、Cが食事に起因する誤嚥事故等を起こす可能性を具体的に予見することができたとは認められない。 エそして、上記のとおり、Cが食事に起因する誤嚥事故等を起こす可能性を具体的に予見することができたと認められないところ、本件事故時における本件施設の入所者の数と職員の配置状況(補正後の認定事実⑻。なお、証拠(乙30・7,8頁)によれば、同配置状況が不相当であったとは認められない。)に照らすと、一審被告は、本件事故時に、安全配慮義務として、Cが食事に起因する誤嚥事故を回避するために、常時見守りのための職員を配置すべき義務を負っていたとは認められない。 ⑷ 一審被告の職員は、令和元年12月12日午後5時11分頃、Cの顔を覗き込んで異常がないことを確認した上、食事を小皿に取り分けてCに提供し、その場を離れたところ、その約7秒後に、Eは、Cの食事が進まず手が止まっているように見えたことから、声掛けをするために小走りでCに近づき、Cに対し、食べ物を口から出すように声をかけるなどの対応を始めたと認められる(認定事実⑹)。これらの事実に照らすと、一審被告の職員が、Cの様子を確認しつつ、かき込んで食べる癖に対しては小皿に取り分けて提供することによって対応し、同職員がその場を離れた後、10秒にも満たない短時間で、Cの様子に応じてEが必要な対応しているといえるのであり、前記⑴ないし⑶に説示したところも踏まえると、一審被告が、Cに対する安全配慮義務に違反したとは認められない。 ⑸ したがって、一審原告らの主張を考慮しても、一審被告に、一審原告らが主張する各注意義務違反があったとは認められない。 4 以上からすれば、一審原告らが主張する一審被告の注意義務違反は認められな 一審原告らの主張を考慮しても、一審被告に、一審原告らが主張する各注意義務違反があったとは認められない。 4 以上からすれば、一審原告らが主張する一審被告の注意義務違反は認められないことから、その余の点を判断するまでもなく、一審原告らの請求はいずれも理由がない。 第4 結論よって、一審被告の控訴に基づき、上記判断と異なる原判決中、一審被告敗訴部分を取り消して、同部分について、一審原告らの請求をいずれも棄却するとともに、一審原告らの本件控訴はそれぞれ理由がないから、これらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部 裁判長裁判官片田信宏 裁判官山本万起子 裁判官三橋泰友

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