【DRY-RUN】主 文 原判決中、上告人に対し被上告人らへの金銭の支払を命じた部分のうち、 被上告人らへ各金一万円とこれに対する昭和四七年六月八日から支払ずみに至るま で年五分の割合による金員の支払を
主 文 原判決中、上告人に対し被上告人らへの金銭の支払を命じた部分のうち、 被上告人らへ各金一万円とこれに対する昭和四七年六月八日から支払ずみに至るま で年五分の割合による金員の支払を命じた部分を除くその余の部分を破棄し、右部 分につき本件を名古屋高等裁判所金沢支部に差し戻す。 上告人のその余の部分に対する上告を棄却する。 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人荒谷昇の上告理由について 一 境界確定請求部分について 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当と して是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原 審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用する ことができない。 二 損害賠償請求部分について 1 原審の確定した事実関係によれば、上告人が被上告人らの共有する金沢市a 町bc番d山林二七六〇平方メートル(以下「本件土地」という。)内に竹杭を打 つてビニール線を張り、立入禁止の掲示をした行為には、少なくとも過失があるこ とが明らかであるから、故意若しくは過失を肯認した原審の判断は、結局正当とし て是認することができる。この点に関する論旨は、採用することができない。 2 原審は、(1) 被上告人らは、昭和四七年三月二二日、金沢市との間に本件 土地及び隣接の被上告人ら共有地七筆を代金三五〇〇万円で売渡す旨の契約(以下 「本件売買契約」という。)を締結し、同月二七日所有権移転登記手続をした、( 2) しかるに、上告人が本件土地内に竹杭を打つてビニール線を張り、立入禁止 - 1 - の掲示をして妨害したので、本件売買契約は金沢市から解除され、前記登記も抹消 された、(3) 本件土地等は依然被上告人らの かるに、上告人が本件土地内に竹杭を打つてビニール線を張り、立入禁止 - 1 - の掲示をして妨害したので、本件売買契約は金沢市から解除され、前記登記も抹消 された、(3) 本件土地等は依然被上告人らの共有のまま今日に至つている、との 各事実を確定したうえ、被上告人らは、上告人の右行為により、(イ) 金沢市と の本件売買契約により取得しうべかりし三五〇〇万円の代金額と本件土地等を同額 で他へ売却した場合に取得しうべき代金額からこれに賦課されるべき税額(被上告 人ら各自につき二五六万五八四〇円)を控除した額(以下「税額控除後の代金額」 という。)との差額を得べかりし利益の喪失分として、被上告人ら各自につき二五 六万五八四〇円の、また、(ロ) 金沢市と本件売買契約及びその解約に伴つて支 出した移転登記及び抹消登記の費用として、少なくとも被上告人ら各自につき一万 円の各損害を被つた、と判示している。 右の事実関係によれば、被上告人らが支出した(ロ)の登記費用は、結局上 告人の前記行為によつて被つた損害であることが明らかであるから、原審が右登記 費用について被上告人ら各自につき一万円の損害を肯認したことは、正当として是 認することができ、この点に関する論旨は、採用できない。 しかしながら、(イ)の得べかりし利益の喪失による損害についての原審の 判断は、是認することができない。すなわち、前記事実関係によれば、上告人の前 記行為により本件売買契約は解除され、被上告人らは本件売買代金三五〇〇万円を 取得することができなかつたものであるが、本件売買契約の目的物である本件土地 等はなお被上告人らにおいてこれを共有しているというのであるから、被上告人ら は、本件土地等を自由に使用収益、処分しうる状況にあることが明らかである。し かも、原審は、「右代金額は時価に比しやや低額であつたが、 被上告人らにおいてこれを共有しているというのであるから、被上告人ら は、本件土地等を自由に使用収益、処分しうる状況にあることが明らかである。し かも、原審は、「右代金額は時価に比しやや低額であつたが、被上告人らがその買 収に応じないときは収用されるおそれがあつた。」旨を認定しているのである。こ のような事実関係のもとにおいては、被上告人らは、右代金を取得することができ なかつたとしても、その反面、少なくとも右代金額相当の価値を有する本件土地等 - 2 - を現に保有しているのであるから、他に特段の事情のない限り、前記代金額と本件 土地等を同額で他へ売却した場合に取得しうべき税額控除後の代金額との差額をも つて直ちに損害と認めることはできないものというべきであるところ、原審は、こ の点に思いを致すことなく、直ちに右差額を被上告人らの得べかりし利益の喪失に よる損害であるとして、上告人に対し、その賠償を命じているのである。そうだと すれば、原審は、不法行為における損害に関する法令の解釈、適用を誤り、ひいて は審理不尽の違法を犯したものといわなければならない。そして、右違法は、判決 に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点に関する論旨は、結局理由がある。 してみれば、原判決中、上告人に対し被上告人らへの金銭の支払を命じた部 分のうち、被上告人らへ各金一万円及びこれに対する遅延損害金の支払を命じた部 分を除くその余の部分は、その余の論旨について判断するまでもなく、破棄を免れ ず、右部分については更に審理を尽くす必要があるから、これを原審に差し戻すの が相当である。 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁 判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 木 下 忠 民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁 判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 木 下 忠 良 裁判官 大 塚 喜 一 郎 裁判官 栗 本 一 夫 裁判官 塚 本 重 頼 裁判官 鹽 野 宜 慶 - 3 -
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