平成12(わ)993 傷害,傷害致死,暴力行為等処罰に関する法律違反

裁判年月日・裁判所
平成14年9月6日 神戸地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-7141.txt

判決文本文7,031 文字)

判決平成14年9月6日神戸地方裁判所平成12年(わ)第993号,同第1100号,平成13年(わ)第282号傷害,傷害致死,暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件 主文 被告人を懲役9年に処する。 未決勾留日数中600日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,指定暴力団5代目A組B組C会若中であるが,第1 実父であるXと共謀の上,かねてより同人との間で,同人の元愛人であったIをめぐる女性関係等でもめていたK(当時25歳)に暴行を加えようと企て,平成11年11月8日午後7時35分ころから同日午後7時55分ころまでの間,兵庫県明石市大久保町Da番地所在の病院3階302号室において,上記Kに対し,こもごもその顔面等を手拳で数回殴打した上,その左肩等を丸形パイプ椅子で数回殴打するなどの暴行を加え,よって,同人に約14日間の加療を必要とする顔面打撲・挫創,左肩・背部打撲及び右眼網膜震盪等の傷害を負わせた。 第2 5代目A組E組関係者のM(当時40歳)が,被告人の知人であるFが自動二輪車を盗んだとして同人を警察へ出頭させるよう要求したことに加え,Mが被告人の兄貴分に当たるGと口論したことを聞き知って腹を立て,上記Mを痛めつけようと企て,Y,Z及び氏名不詳の男1名と共謀の上,平成12年7月20日午前4時23分ころ,神戸市西区持子b丁目c番地のd先路上で,Mが乗車する普通乗用自動車を発見,停車させ,同車内及びその周辺の路上において,こもごも同人の頭部等を足蹴にするなどの暴行を加えるとともに,上記Yにおいて,所持していたナイフで上記Mの胸部を1回突き刺すなどし,よって,同人に約30日間の治療を必要 及びその周辺の路上において,こもごも同人の頭部等を足蹴にするなどの暴行を加えるとともに,上記Yにおいて,所持していたナイフで上記Mの胸部を1回突き刺すなどし,よって,同人に約30日間の治療を必要とする前胸部刺傷,右環指切創,頭部打撲及び右手前腕部切創等の傷害を負わせた。 第3 かねてより顔見知りであったH(当時33歳)が,同人の経営するホストクラブへの被告人の知人である前記Yらの入店を断ったことに腹を立て, 1 Wと共同して,同月27日午前3時30分ころ,神戸市中央区下山手通e丁目f番g号所在のホストクラブ前通路において,被告人において,上記Hに対し,「お前とこの店,C会が見とるんと違うんか。会長に恥をかかす気か。俺に下手打たす気か。」,「俺は人の一人や二人刺すんは怖いことないんじゃ。」などと語気鋭く申し向け,上記Wにおいて,ハンドバッグから凶器を取り出すかのような素振りをした上,逃げようとする上記Hの前に立ちふさがり,なおも被告人において,上記Hに対し,「L病院行って俺の嫁はん見てこい。俺にしばかれて肋骨折って入院しとるんじゃ。俺が切れたらどないなるか分かるやろ。」などと,また,被告人及び上記Wの両名において,「これで済むと思うな。覚えとけよ。」などとそれぞれ語気鋭く申し向け,さらに同日午前4時36分ころ及び同日午前4時42分ころの2回にわたり,兵庫県明石市内又は神戸市内から,上記ホストクラブに電話をかけ,上記Hに対し,「これで終わると思っとったらあかんぞ。俺をなめとったらあかん。俺が誰か分かっとるやろ。俺は誰に言われても行くときは行くんやぞ。お前,それなりの腹はくくっとけ。」,「今日,あったことはよう覚えとけよ。」などとそれぞれ語気鋭く申し向け,同人の生命,身体に対し害を加える旨を告知して脅迫し,もって,団体の威力を示し,かつ やぞ。お前,それなりの腹はくくっとけ。」,「今日,あったことはよう覚えとけよ。」などとそれぞれ語気鋭く申し向け,同人の生命,身体に対し害を加える旨を告知して脅迫し,もって,団体の威力を示し,かつ数人共同して脅迫した。 2 同日午後5時43分ころ,兵庫県明石市内又は神戸市内から,同市西区伊川谷町有瀬hのi番地の上記H方に電話をかけ,同人に対し,「マスター,今日から店閉めてまえ。分かっとんな。俺らは行くときは行くんや。店の看板,電気つけたら俺の回りの奴が皆動くで。マスターの顔の知らん奴もようけおるからな。」などと語気鋭く申し向け,同人の生命,身体及び財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,もって,団体の威力を示して脅迫した。 第4 妻のN(昭和55年8月6日生)が浮気しているのではないかと疑い,その浮気相手の氏名,住所等を問いただすため同女に暴行を加えようと企て,同年8月5日午前9時30分ころから同日午後11時15分ころまでの間,兵庫県明石市松の内j丁目k番地所在のホテル客室内において,同女の頭部,顔面等を手拳及び平手で多数回殴るなどの暴行を加え,よって,同女に頭部・顔面打撲等の傷害を負わせ,翌同月6日午前5時ころ,搬送先である病院において,同女を上記傷害に基づく外傷性脳くも膜下出血を伴う急性硬膜下血腫により死亡させた。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,判示第2のMに対する傷害の事実(以下「本件」という。)について,被告人は,YらとMを痛めつけようと共謀したことはない旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするので,以下検討する。 2 まず,関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告人とY,Zとの関係被告人は,A組系暴力団であるC会の構成員であり,Yは,被告人の数年来の知人,Zは暴力団O する。 2 まず,関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告人とY,Zとの関係被告人は,A組系暴力団であるC会の構成員であり,Yは,被告人の数年来の知人,Zは暴力団O会組長の子で,Yの数年来の知人である。 (2) 本件犯行に至る経緯被告人は,知人のFから,Fが単車を盗んだ件で,Mから何度か呼び出されるなどしているから,仲介してくれるように依頼され,平成12年7月19日の昼過ぎ,兵庫県明石市内の居酒屋で,F,Y,Wの3人とともに,M,同人の兄弟分2名を相手に20分から30分間程度話し合った。その際東は,Mらに対し,単車を盗んでいないと言い張ったものの,MはFが単車を盗んだと強硬に主張したため,最終的にFが当時単車が保管されていた兵庫県須磨警察署に出頭することとなった。 被告人は,同月20日午前零時過ぎころ,電話でYと話し合って,前日の昼間に決まったFが警察に出頭するとの話をMに撤回させること,及びYの先輩にも当たる前記GがMと口論になったことについてMと再度話をつけることとし,神戸市垂水区内のファミリーレストランでYらと合流して,更にYらと話し合い,結局,被告人及びYと同店で合流したZ及び氏名不詳の男1人を加えた4人でMを捜しに行くことになった。 なお,被告人とともに上記ファミリーレストランに行き,先に帰ったPは,この話合いの際,被告人に対し,「話合いで収まらへんの。」と聞いたが,被告人は,「わしらは,この世界でなめられたらあかんのや。」などと答えた。 そして,被告人らは,被告人の運転する自動車とZ運転の自動車の2台に分乗してMを捜し,本件現場付近にさしかかったころ,前方にMの普通乗用自動車(軽四)を発見したので,同車に対してクラクションを鳴らして停車させ,被 らは,被告人の運転する自動車とZ運転の自動車の2台に分乗してMを捜し,本件現場付近にさしかかったころ,前方にMの普通乗用自動車(軽四)を発見したので,同車に対してクラクションを鳴らして停車させ,被告人が運転する自動車はMの自動車の後方に,Z運転の自動車はMの自動車の前方に斜めに割り込むような状況で,それぞれ停車した。 (3) 本件犯行状況本件犯行状況は,前記(犯罪事実)の第2のとおりであるほか,後記4で説明するとおり,被告人は,本件犯行現場において,Mが乗っていた自動車内に乗り込み,Mに対して鎌で切り付ける暴行を加えている。 (4) 本件犯行後の被告人の言動被告人は,本件犯行当日である平成12年7月20日午前4時半ころ,Fに電話をかけて,Mをいわしたと伝え,さらに,同日午前6時ころ,前記Pに対し,「やったぞ。今日のことは忘れてくれな。」というMを襲撃したことを認める内容の電話をかけた。 3 上記で認定した(1)被告人とY,Zとの関係,(2)本件犯行に至る経緯,(3)本件犯行状況,(4)本件犯行後の被告人の言動等を総合すると,本件犯行が,被告人とY,Zらとの共謀の上なされたものであることは,これを優に認めることができる。 4 なお,弁護人は,前記2(3)について,被告人は,Mを鎌で切り付けたことはなく,被告人はバットでMの自動車の後部のガラスを割っていた旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするので,この点について,若干,説明を補足する。 (1) Mは,公判廷及び被告人Yに対する殺人未遂等被告事件の公判廷において,本件の被害状況について証言する中で,後部座席で,ナイフを持ったYに胸を刺され,その刃を左手で掴んでいると,運転席に座っていたQに代わって運転席に入ってきた被告人に,鎌で1回切り付けられ,その鎌を 本件の被害状況について証言する中で,後部座席で,ナイフを持ったYに胸を刺され,その刃を左手で掴んでいると,運転席に座っていたQに代わって運転席に入ってきた被告人に,鎌で1回切り付けられ,その鎌を避けようとして右腕を上げて防いだところ,右腕前腕部に切り傷を負った旨述べているところ,このM証言は,具体的かつ詳細で,そこに格別不自然な点がない上,証拠から認められる同人の客観的な負傷状況によって裏付けられていることから,十分信用することができる。 弁護人は,弁論において,この鎌で切り付けた人物が本件犯行現場に被告人らといた氏名不詳者である可能性を主張するが,Mは,本件の前日,Fの単車窃盗の件で,直接被告人と相対して話し合い,被告人の人相,風体を十分に認識していた上,7月中旬から下旬にかけての明け方で薄明るく,人の顔も十分に認識できる状況において,約50センチメートルの至近距離から鎌で切り付けた人物を見ていることからすると,その識別に誤りがあるとは到底考えられない。 (2) 他方,Yは,公判廷において,Mの自動車のガラスを割ったのは間違いなく被告人であった旨証言するが,Yは,当初,車のガラスを割ったのが誰か分からない旨供述していた(同人の検察官に対する供述調書・179,同人の公判における被告人としての供述・195)が,その後,本件犯行から1年半以上も経過した後に上記の証言を始めたものであって,かかる供述の変遷には合理的説明がなされておらず,被告人がYの法廷で供述した後に供述が変遷していることからすると,Yは,被告人の供述に合わせてその内容を変えたものと疑われる。 また,被告人は,Mの自動車の中に入ったことを否定し,Zも,Mの自動車の中に入っていったのは,Yともう一人の者であったと供述しているが,Z,Y及び被告人が,本件 を変えたものと疑われる。 また,被告人は,Mの自動車の中に入ったことを否定し,Zも,Mの自動車の中に入っていったのは,Yともう一人の者であったと供述しているが,Z,Y及び被告人が,本件犯行現場にいたもう一人の名前を秘匿していることや,本件犯行後,Mの所属するE組と被告人の所属していたC会との上部組織間でいわゆる「手打ち」がなされており,暴力団の組織内で本件は解決済みであることなどに照らすと,被告人らは,共犯者への処罰の拡大を避けるとともに,その者が鎌で切り付けた者であるとすることによって,被告人の刑の軽減を図っているものと考えられる。 そうすると,上記被告人の供述並びに共犯者の証言及び供述は,いずれも信用できるM証言と対比して,信用することができず,M証言にその他の関係各証拠を総合すると,被告人がMを鎌で切り付けた事実は,優に認定することができる。 (法令の適用)被告人の判示第1及び第2の各所為はいずれも刑法60条,204条に,判示第3の1の所為は包括して暴力行為等処罰に関する法律1条(刑法222条1項)に,判示第3の2の所為は暴力行為等処罰に関する法律1条(刑法222条1項)に,判示第4の所為は同法205条にそれぞれ該当するところ,判示第1,第2並びに第3の1及び2の各罪について各所定刑中それぞれ懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第4の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役9年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中600日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 事案の概要本件は,被告人が,父親らとともに,父親の愛人関係を 日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 事案の概要本件は,被告人が,父親らとともに,父親の愛人関係をめぐってもめていたKに対し,その入院先に押し掛けて同人を負傷させた傷害(判示第1)の事実,Y,Zらとともに,Mを襲撃し負傷させた傷害(判示第2)の事実,Wとともに又は単独で,Yの入店を拒否したホストクラブの店長Hに対し,団体の威力を示し,かつ数人共同して脅迫するなどした暴力行為等処罰に関する法律違反(判示第3の1及び2)の事実,並びに自らの妻を殴る蹴るして死に至らしめた傷害致死(判示第4)の事実からなる事案である。 2 量刑上考慮した事情(1) 被告人は,判示第4の傷害致死の事案では,Wから妻に浮気されたと聞いて,妻Nに対しても同様の疑念を抱き,その事実を確認するため,同女に対し執拗な暴行を加えたもので,そのような動機に酌量の余地は全く存しない。 被告人は,本件犯行以前にも同女に対して断続的に激しい暴行を加え,本件の1週間前には同女に肋骨骨折,血気胸等の重篤な傷害を負わせて入院させ,平成12年8月1日に退院させたばかりであるのに,そのわずか4日後に,同女に対して,約14時間もの長時間にわたって,半ば拷問のように殴る蹴るの暴行を加えて同女を死亡させたもので,同女の遺体は,顔面を含めほぼ全身に内出血,表皮剥脱が認められる凄惨な状況であったことからも,被告人の暴行は,極めて執拗かつ強度であったと認められ,その犯行態様はまことに悪質である。 そして,本件犯行によって,同女は,何の落ち度もないのに,20歳の誕生日に,生後6か月にも満たない女児を残して,その人生を終えることとなったもので,本件の結果は極めて重大であり,同女が強く そして,本件犯行によって,同女は,何の落ち度もないのに,20歳の誕生日に,生後6か月にも満たない女児を残して,その人生を終えることとなったもので,本件の結果は極めて重大であり,同女が強く信頼していた被告人から暴行を受け,死に至るまでに抱いたであろう無念さは大きかったと推測される。その上,被告人は,同女の両親らに対して全く慰謝の措置を講じておらず,遺族感情は極めて厳しい。 (2) また,判示第2のMに対する傷害事件は,暴力団構成員特有の論理に基づくものであって,動機に酌むべきものはなく,その態様も,YにおいてMの胸をナイフで刺し,被告人において鎌で切り付けるなど,非常に危険で悪質であり,Mに相当の重傷を負わせた結果も重大である。さらに,被告人は,捜査段階から公判段階に至るまで共犯者を秘匿するばかりか,不合理な弁解に終始するなど,反省の情にも乏しい。 加えて,判示第1及び第3の各犯行も,その犯行態様は粗暴で,犯情は芳しくなく,判示第2ないし第4の各犯行を,わずか2週間余りの間に連続して敢行していることに照らすと,被告人の粗暴な性癖は顕著であるというべきである。 (3) このような諸事情を考慮すると,被告人の刑事責任はまことに重大であるといわざるを得ない。 (4) しかしながら,他方,被告人は,判示第2のMに対する傷害事件を除いて,すべての事実を一貫して認め,一応反省の情を示していること,Mに対する傷害事件については,被告人とMの所属する暴力団組織間でいわゆる「手打ち」がなされ,その際,被告人と共犯者がそれぞれ100万円を出捐していること,被告人の伯母が被告人の更生に協力する旨公判廷で証言していること,被告人には,禁錮刑以上に処せられた前科がないことなど,被告人にとって有利な事情も認められる。 3 そこで,以上 円を出捐していること,被告人の伯母が被告人の更生に協力する旨公判廷で証言していること,被告人には,禁錮刑以上に処せられた前科がないことなど,被告人にとって有利な事情も認められる。 3 そこで,以上の事情を総合して考慮し,被告人に対し,主文の刑を量定した次第である。 (求刑・懲役12年)平成14年9月6日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る