平成24(行ウ)70 被保険者資格確認請求却下処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年9月25日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文10,500 文字)

- 1 -平成25年9月25日判決言渡平成24年(行ウ)第70号被保険者資格確認請求却下処分取消請求事件 主文 1 被告が平成23年3月28日付けで原告に対してした,原告の厚生年金保険及び健康保険被保険者資格確認請求を却下する旨の処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,原告が,昭和19年9月30日から昭和20年8月15日までの間(以下「本件請求期間」という。),厚生年金保険及び健康保険の適用事業所に勤務していたにもかかわらず,原告の被保険者記録にその記録がないため,本件請求期間について厚生年金保険法31条及び健康保険法51条1項による被保険者資格の確認請求(以下「本件確認請求」という。)を行ったところ,被告は,上記勤務の事実がないことを理由として本件確認請求を却下する旨の平成23年3月28日付け処分(以下「本件却下処分」という。)を行ったものであり,本件却下処分には事実誤認の違法があるなどと主張して,本件却下処分の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め等厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「厚年法」という。)及び昭和19年法律第21号による改正後の厚生年金保険法(昭和16年法律第60号。乙1,9,10。以下「旧厚年法」という。なお,上記改正前の法律の題名は労働者年金保険法。)並びに健康保険法は,厚生年金保険及び健康保 - 2 -険の被保険者の資格及び保険給付について,要旨,以下のとおり定める。 (1) 被保険者の資格について平成14年法律第102号による改正前の健康保険法(以下「改正前健康保険法」という。)13条が規定する事業所に使用される者を健康保険の被 以下のとおり定める。 (1) 被保険者の資格について平成14年法律第102号による改正前の健康保険法(以下「改正前健康保険法」という。)13条が規定する事業所に使用される者を健康保険の被保険者とし(同条),また,船員保険の被保険者等,旧厚年法16条各号所定の者を除き,改正前健康保険法13条が規定する事業所に使用される者を厚生年金保険の被保険者とする(旧厚年法16条)。被保険者は,上記事業所に使用されるに至った日等に被保険者たる資格を取得し(旧厚年法19条,改正前健康保険法17条),被保険者が同事業所に使用されなくなった日等にその資格を喪失する(旧厚年法20条,改正前健康保険法18条)。 被保険者の資格の取得及び喪失は,厚生労働大臣の確認によって,その効力を生じ(厚年法18条1項本文,健康保険法39条1項本文),被保険者又は被保険者であった者は,いつでも上記確認を請求することができる(厚年法31条1項,健康保険法51条1項。以下「確認請求」という。)。厚生労働大臣は,確認請求があった場合において,その請求に係る事実がないと認めるときは,その請求を却下しなければならない(厚年法31条2項,健康保険法51条2項)。厚生労働大臣は,厚生年金保険につき,被保険者に関する原簿を備え,これに被保険者の氏名,資格の取得及び喪失の年月日等を記録しなければならない(厚年法28条)。 (2) 厚生年金保険に係る保険給付について厚生年金保険の被保険者及び被保険者を使用する事業主は,それぞれ保険料の半額を負担する(厚年法82条1項,旧厚年法59条)。事業主は,被保険者の負担すべき保険料を納付する義務を負い,被保険者の負担すべき保険料を,被保険者に対して支払う報酬等から控除することができる(厚年法82条2項,84条,旧厚年法60条,61条)。 事業主は,被保険者の負担すべき保険料を納付する義務を負い,被保険者の負担すべき保険料を,被保険者に対して支払う報酬等から控除することができる(厚年法82条2項,84条,旧厚年法60条,61条)。 保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは,当該保険料に係る - 3 -被保険者であった期間に基づく保険給付は,行わない(厚年法75条本文)。 ただし,当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について確認請求等がされた後に保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは,この限りでない(厚年法75条ただし書)。なお,昭和29年4月以前の月に係る保険料を徴収する権利は,1年を経過した時は,時効によって消滅する(厚生年金保険法附則26条,旧厚年法5条)。 (3) 被告への権限の委任等について厚生労働大臣の権限に係る,被保険者資格の取得及び喪失の確認(厚年法18条1項本文,健康保険法39条1項本文)並びに確認請求の受理及び却下(厚年法31条1項,2項,健康保険法51条1項,2項)の事務は,被告に行わせるものとする(厚年法100条の4第1項3号,9号,健康保険法204条1項4号,10号)。また,上記の事務に係る申請,届出その他の行為は,被告の定める年金事務所に対してするものとする(厚年法100条の4第7項,厚生年金保険法施行規則97条,健康保険法204条4項)。 3 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠等により容易に認められる事実等)(1) 当事者ア原告(昭和▲年▲月▲日生)は,昭和19年3月15日から株式会社A(以下「A」という。)に勤務しており,同社は,当時(本件請求期間も含む。),改正前健康保険法13条に規定する事業所に該当していた。(甲1,乙2)イ被告は,厚生労働大臣の監督の下に 式会社A(以下「A」という。)に勤務しており,同社は,当時(本件請求期間も含む。),改正前健康保険法13条に規定する事業所に該当していた。(甲1,乙2)イ被告は,厚生労働大臣の監督の下に,政府が管掌する厚生年金保険事業に関する業務等を行う法人である(日本年金機構法1条)。 (2) 原告に係る被保険者記録等ア Aに係る健康保険労働者年金保険被保険者名簿(以下「被保険者名簿」という。)には,原告が昭和19年3月15日に健康保険及び厚生年金保 - 4 -険の被保険者の資格を取得し,同年7月1日に資格を喪失した旨が記載されている。(乙3)また,B株式会社(以下「B」という。)に係る被保険者名簿には,原告が同年6月2日に被保険者の資格を取得し,同年9月29日に資格を喪失した旨が記載されており,合資会社C(以下「C」という。)に係る被保険者名簿には,原告が昭和20年11月1日に被保険者の資格を取得し,昭和21年3月1日に資格を喪失した旨が記載されている。(乙5,6)イ被告の奈良年金事務所は,平成22年2月26日頃,同日現在の原告の厚生年金保険の加入記録であるとして,上記アの被保険者名簿の記載に沿う内容が記載された被保険者記録照会回答票を,原告に対して送付したが,上記回答表には,原告が本件請求期間中にAに勤務していたことを前提とする記載はなかった。(甲1)(3) 本件却下処分に至る経緯ア原告は,平成23年3月5日付けで,奈良年金事務所に対し,昭和19年9月30日から昭和20年8月15日まで(本件請求期間)Aに勤務し,厚生年金保険及び健康保険の被保険者であった旨主張して,それらの被保険者資格の確認請求(本件確認請求)を行った。(甲3)イ被告は,本件確認請求について,請求に係る事実がないことを理由 勤務し,厚生年金保険及び健康保険の被保険者であった旨主張して,それらの被保険者資格の確認請求(本件確認請求)を行った。(甲3)イ被告は,本件確認請求について,請求に係る事実がないことを理由として,本件却下処分をし,平成23年3月28日付けで,原告に対し,本件却下処分を通知した。(甲4)(4) 審査請求及び再審査請求ア原告は,平成23年4月26日付けで,本件却下処分について審査請求をしたところ,近畿厚生局社会保険審査官は,同年7月5日付けで,原告の審査請求を棄却する旨の決定をした。(甲5,6)イ原告が,平成23年7月29日付けで,再審査請求をしたところ,社会保険審査会は,同年11月30日付けで,原告には本件却下処分の - 5 -取消しを求める利益がないことを理由として,原告の再審査請求を却下する旨の裁決をした。(甲7,8)(5) 本件訴訟の提起原告は,平成24年4月6日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実) 4 主たる争点及び当事者の主張本件の主たる争点は,本案前の争点として,本件訴訟について訴えの利益があるか(争点①),本案の争点として,本件請求期間において原告が被保険者資格を有していたか(争点②)である。なお,原告は,被告及び後出の奈良第三者委員会が,本件請求期間中の保険料納付の事実を認定しなかったことが本件却下処分の違法事由となる旨主張するが,保険料の納付は被保険者資格取得の要件ではないから,本訴請求との関係では主張自体失当であり,原告が本件請求期間において保険料を納付したかという点は,本件の主たる争点として取り上げない。 上記各主たる争点についての当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 争点①(訴えの利益)について(被告の主張)本件訴訟は被保険者資格確認請求却下処分の取消訴訟で 点として取り上げない。 上記各主たる争点についての当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 争点①(訴えの利益)について(被告の主張)本件訴訟は被保険者資格確認請求却下処分の取消訴訟であるが,仮に本件訴訟において請求が認容され,原告に本件請求期間中の被保険者資格が認められても,その期間における厚生年金保険の保険料を徴収する権利は,既に時効消滅している。したがって,厚年法75条により,当該期間に係る保険給付も行われないから,原告には回復すべき権利又は法律上の利益は存在せず,本件訴訟には訴えの利益がない。 (原告の主張)上記(被告の主張)は争う。 (2) 争点②(本件請求期間における被保険者資格)について(原告の主張) - 6 -原告は,昭和19年3月,D工学校機械科を卒業後,同月15日,Aに就職した。しかし,工場内の騒音がひどかったため,原告が退職を申し出たものの,Aが原告の退職を認めなかったので,原告は,同社への勤務を止め,同年6月2日から,Bに勤務するようになった。なお,原告は,Aから同年6月分の給与の支払を受けた。 同年9月下旬,Bで働いていた原告に対し,勤労動員署から徴用令書が届いた。原告がAから事情を聞いたところ,長期間無断欠勤となっているので役所に連絡した,翌日からまじめに出勤すれば徴用令を撤回させることができる旨の説明を受けた。そこで,原告は,Bを退職し,同年9月30日からAにおいて再度勤務するようになり,昭和20年8月15日時点でもAにおいて勤務し,給与を得ていた。 以上のとおり,原告は,本件請求期間中,Aに勤務し,同社に使用されていたものであり,本件確認請求に係る事実がないことを理由としてされた本件処分には,事実誤認の違法がある。 (被告の主張)上記(原告 ,原告は,本件請求期間中,Aに勤務し,同社に使用されていたものであり,本件確認請求に係る事実がないことを理由としてされた本件処分には,事実誤認の違法がある。 (被告の主張)上記(原告の主張)の事実は知らず,法的主張は争う。 原告の被保険者記録上,原告が本件請求期間において被保険者資格を有していたことを確認することはできない。また,本件確認請求を受けて,被告は,Aの実態調査を行ったものの,事業所側の資料を確認することができなかった。さらに,被告は,原告に対し,Aにおいて勤務していたことを確認することができる雇用契約書等の直接的な証拠書類の提出を求めたものの,原告は証拠書類を保管していないとのことであり,本件確認請求に係る事実を認めることができなかったものである。このように,原告の被保険者記録上や,事業所の調査等においても,本件確認請求に係る事実を確認することができなかったために本件却下処分がされたのであって,本件却下処分に違法はない。 - 7 -第3 当裁判所の判断 1 争点①(訴えの利益)について(1) 厚生年金保険の被保険者の資格の取得は,厚生労働大臣の確認によってその効力を生じるとされており(厚年法18条1項),厚年法上,被保険者資格の確認を受ける法的利益が保護されていると解すべきところ,被保険者資格の確認請求を却下する処分を受けた者は,当該処分の取消しにより,上記法的利益を回復することができるのであるから,当該処分の取消しを求める法律上の利益を有すると解するのが相当である。 (2) これに対し,被告は,保険料の徴収権が時効消滅したことを前提として,厚年法75条により本件請求期間に基づく保険給付が行われないから,原告には本件訴訟についての訴えの利益がないと主張する。 しかし,厚年法上,保険給付を受 険料の徴収権が時効消滅したことを前提として,厚年法75条により本件請求期間に基づく保険給付が行われないから,原告には本件訴訟についての訴えの利益がないと主張する。 しかし,厚年法上,保険給付を受ける権利についての裁定(同法33条)とは別個に,被保険者資格の確認の制度が存在すること(被保険者又は被保険者であった者は,いつでも厚年法18条1項の確認請求をすることができる〔厚年法31条1項〕。),被保険者資格の取得要件は,適用事業所に使用されることであること(同法9条)に照らせば,保険給付が行われるか否かは,被保険者資格の確認を受ける法的利益を左右しないものと解すべきである。 これらのことからすると,保険料の徴収権の時効消滅を理由として,当該期間についての被保険者資格の確認請求を却下する処分を争う利益を否定することはできないと解すべきである(なお,実務上も,厚生労働大臣は,保険料の徴収権が既に時効消滅している期間についての確認請求であっても,これを適法なものとして受理した上,請求期間に係る事実について確認を行い,その結果に基づいた処分をしているところ〔弁論の全趣旨〕,このような実務の運用も,上記のような考え方を前提としているものと解される。)。 - 8 -したがって,被告の上記主張は採用することができず,本件において,訴えの利益は否定されない。 (3) なお,健康保険法には厚年法75条に相当する規定がなく(健康保険法116条~122条参照),保険料の徴収権が時効消滅した(同法193条1項)としても,当該期間に係る保険給付が行われないという効果は生じない。したがって,仮に,前記第2の4(1)記載の(被告の主張)が,健康保険についても被保険者資格の確認請求却下処分の取消訴訟に係る訴えの利益がないとの主張を含む趣旨であるとしても という効果は生じない。したがって,仮に,前記第2の4(1)記載の(被告の主張)が,健康保険についても被保険者資格の確認請求却下処分の取消訴訟に係る訴えの利益がないとの主張を含む趣旨であるとしても,同主張は失当である。 2 争点②(本件請求期間における被保険者資格)について(1) 認定事実前記前提事実も併せ,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実等が認められる。 ア Aに関する事情Aは,大阪府中河内郡α(当時。現在は大阪市β)に所在し,昭和19年頃当時は軍需工場であり,飛行機のプロペラ等を製作していた。 (甲3,4,10)Aは,戦後,「E株式会社」,「F株式会社」へと順次名称を変更した。(乙2)イ原告の昭和19年,20年頃の就業状況原告は,D工学校機械科を卒業後,昭和19年3月15日,Aに就職し,その後,同年6月2日,Bに就職した。Aに係る被保険者名簿には,原告が同年7月1日に被保険者の資格を喪失した旨記載されている。 (甲10,乙5,弁論の全趣旨)原告は,同年9月29日,Bを退社した。(乙5)その後,原告は,昭和20年11月1日,Cに就職した。(甲10, - 9 -乙6)ウ原告による年金記録に係る確認申立て及びその後の関係機関による調査等(ア) 年金記録に遺漏があると考える者は,年金記録に係る確認申立て(以下「確認申立て」という。)を行うことができ,確認申立てが行われた場合,総務省に設置された年金記録確認第三者委員会において調査審議を行い,年金記録の訂正に関する判断及びあっせん案の作成が行われる(乙7,弁論の全趣旨)。 総務大臣は,年金記録確認第三者委員会から,年金記録を訂正する必要があるとのあっせん案の報告を受けた場合には,厚生労働大臣に対し,その旨をあっせん ん案の作成が行われる(乙7,弁論の全趣旨)。 総務大臣は,年金記録確認第三者委員会から,年金記録を訂正する必要があるとのあっせん案の報告を受けた場合には,厚生労働大臣に対し,その旨をあっせんし,厚生労働大臣は,その意見を尊重して,遅滞なく,被保険者の資格の取得及び喪失の確認等を行うとともに,年金記録の訂正を行うものとされている(厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律1条1項,2項)。 (イ) 原告は,前記前提事実(2)イの被保険者記録照会回答票の送付を受けたが,昭和19年9月30日以降のAへの勤務が記録されていないことに不信を抱き,同日頃から昭和20年9月1日までAにおいて勤務していたと主張して,同期間についての記録の訂正を求めて確認申立て(以下「本件確認申立て」という。)を行った。(甲2)(ウ)a 本件確認申立てに係る調査を実施した奈良行政評価事務所の担当者は,平成22年5月から同年6月にかけて,昭和19年頃にAにおいて勤務していた者らから,原告が本件請求期間にAにおいて勤務していたかどうかについて,電話による照会を行ったが,上記の者らは,知らない,思い出せない,昔の話なので覚えていないなどと回答した。 また,奈良行政評価事務所の担当者は,F株式会社に対し,戦前の人事記録等が現存しているかどうかについて照会を行ったが,同社か - 10 -ら,戦前の人事記録は残っていない旨の回答を得た。 さらに,調査の結果,昭和19年から昭和20年頃にAにおいて勤務していた者の中には,中途退社することなく継続して勤務していたにもかかわらず,厚生年金保険の被保険者記録が勤務していた期間の途中で喪失している者が複数存在することが判明した。 (甲9,10)b 上記調査の過程で,原告は,奈良行政評価事務所の担当 していたにもかかわらず,厚生年金保険の被保険者記録が勤務していた期間の途中で喪失している者が複数存在することが判明した。 (甲9,10)b 上記調査の過程で,原告は,奈良行政評価事務所の担当者に対し,Aを無断欠勤してBに就職した旨,徴用令書が届いたことをきっかけにAに再入社させてほしいと頭を下げに行った旨,昭和19年10月1日から,毎日出勤することを誓約してAに再入社した旨,昭和20年春の昇給では,原告は,一時退職したことも原因となってか,同期の同僚の3分の1程度の昇給にとどまった旨,同年8月15日,Aの工場内で玉音放送を聞いた旨述べた。(甲10)c 以上の調査等を踏まえ,奈良行政評価事務所の担当者は,平成23年2月22日,原告に対し,①年金記録確認第三者委員会は勤務実態及び保険料控除を推認することができた場合に年金記録訂正のあっせんを行う旨,②本件確認申立てについては,調査の結果,申立期間における勤務実態は推認することができるものの,厚生年金保険料が控除されていたことを推認することはできなかった旨,③同僚の証言や原告の主張等から判断して,昭和20年8月頃まではAにおいて勤務していたと考えられるが,申立期間の期首については,勤務していたとする資料及び証言を得ることはできなかった旨を告げた。(甲9)(エ) 年金記録確認奈良地方第三者委員会(以下「奈良第三者委員会」という。)は,上記(ウ)の調査を踏まえ,本件確認申立てについて審議を行った結果,原告が申立期間中Aに勤務していたことは推認できるものの,原告が厚生年金保険被保険者として厚生年金保険料を事業主により - 11 -給与から控除されていたことを認めることはできないとして,年金記録の訂正が必要であるとまではいえないものと判断した。総務大臣は,奈良第三者委員会の上 て厚生年金保険料を事業主により - 11 -給与から控除されていたことを認めることはできないとして,年金記録の訂正が必要であるとまではいえないものと判断した。総務大臣は,奈良第三者委員会の上記判断に基づき,年金記録の訂正のあっせんは行わないとの判断を行い,奈良行政評価事務所長が,平成22年8月4日付けで,原告に対し,総務大臣の上記判断を通知した。(甲2)エその後の経緯原告は,本件確認申立てに係る総務大臣の判断に納得できず,平成23年3月5日付けで,本件確認請求をしたが,これに対し,被告は,本件却下処分をした。 (2) 検討原告は,本件請求期間にAにおいて勤務するに至った経緯等について,前記第2の4(2)の(原告の主張)のとおり主張し,調査手続においての事情聴取(上記(1)ウ(ウ)b)において,上記主張に沿う供述をし,本件確認申立ての際に作成提出された「申立の概要」と題する書面(甲11)中にも同旨の記載があるので,以下検討する。 ア確かに,本件確認申立ての際の調査では,原告の上記供述等を裏付ける当時の同僚の供述は得られなかったものの,本件請求期間当時,Aには,150名程度と多数の従業員や学徒動員された学生が働いており(甲10),同僚が原告と面識がなかったとしても格別不合理ではないし,60年以上も前の事情について,記憶を失っていることも十分考えられるところであり,本件請求期間中の原告のAへの勤務について同僚の供述が得られなかったことをもって,上記勤務の事実が直ちに否定されるものではない。 原告は,前記のとおり,本件確認申立ての際やその調査手続において,本件請求期間のAにおける勤務状況について,同僚との間で昇給額に差があったこと等のエピソードを交えるなど,具体的かつ詳細な供述等をし, - 12 - り,本件確認申立ての際やその調査手続において,本件請求期間のAにおける勤務状況について,同僚との間で昇給額に差があったこと等のエピソードを交えるなど,具体的かつ詳細な供述等をし, - 12 -その供述等の内容にも格別不合理な点はなく,むしろ,戦争中という状況の下,学校を卒業して就労を開始した少年が,徴用等の事情もないのに約1年もの間就労しないということは通常考え難く,その供述等の内容は,むしろ自然であるということができる。原告が本件請求期間にAに勤務していなかったことを積極的に裏付ける証拠もない本件においては,本件請求期間中,Aにおいて勤務し,給与を得ていた旨の原告の上記供述等は信用することができるというべきである。 したがって,上記供述等によれば,原告は,本件請求期間において,Aに使用されていた事実が認められる(なお,本件確認申立ての調査を実施した奈良行政評価事務所の担当者や奈良第三者委員会も,申立期間〔本件請求期間を包摂する。〕中に原告がAに勤務していた事実を推認している。)。 イこの点に関し,被告は,原告のAにおける本件請求期間に係る厚生年金保険の被保険者記録を確認することができなかった旨主張する。 しかし,前記(1)ウ(ウ)aのとおり,昭和19年から昭和20年頃にAにおいて勤務していた者の中には,中途退社することなく継続して勤務していたにもかかわらず,厚生年金保険の被保険者記録が勤務していた期間の途中で喪失している者が複数存在している。このような事実に照らせば,Aにおける本件請求期間に係る厚生年金保険の被保険者記録が勤務実態を正確に反映したものであるかにも疑問が生ずるところであり,被告の上記主張は,前記原告が昭和20年8月頃にAに使用されていたとの認定を左右しないというべきである。 また 者記録が勤務実態を正確に反映したものであるかにも疑問が生ずるところであり,被告の上記主張は,前記原告が昭和20年8月頃にAに使用されていたとの認定を左右しないというべきである。 また,被告は,原告がAにおいて勤務していたことを確認することができる直接的な証拠書類が存在しなかったため,原告がAにおいて勤務していた事実は認められないなどと主張するが,適用事業所に使用されていた事実を確認するための証拠資料が直接的な証拠書類に限 - 13 -られると解すべき理由はないから,被告の上記主張は採用することができない。 ウしたがって,原告は,本件請求期間において,Aに使用されていたと認められるから,上記期間において,厚生年金保険の被保険者資格を有していたというべきである(なお,被告は,原告の旧厚年法16条各号〔被保険者資格の適用除外規定〕該当性について,何ら主張,立証をせず,本件において,原告が旧厚年法16条各号に該当することをうかがわせる証拠はない。)。 よって,本件確認請求に係る事実がないことを理由とする本件却下処分は,事実を誤認してされた違法なものであり,取消しを免れない。 3 結論以上のとおり,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官西田隆裕 裁判官斗谷匡志 - 14 - 裁判官栢分宏和 分宏和

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