平成21(ワ)610 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年3月30日 大分地方裁判所
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判決文本文24,166 文字)

- 1 -平成23年3月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第610号損害賠償請求事件口頭弁論終結の日平成22年11月18日判決 主文 1 被告は,原告に対し,335万9710円及びこれに対する平成21年7月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1億1902万0153円及びこれに対する平成21年7月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,a 県立高等学校の生徒であった原告が,水泳実習における自由練習中に,スタート台からプールに飛び込んだところ,プールの底に頭部を衝突させ(以下「本件事故」という。),頚髄損傷の傷害を負い,第7頚椎節以下完全四肢麻痺等の後遺障害が生じたとし,担当教諭に指導上の注意義務違反があったと主張して,被告に対し,安全配慮義務違反(債務不履行)による損害賠償請求権に基づき,1億1902万0153円及びこれに対する平成21年7月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(証拠を掲記しない事実は争いがない。)⑴ 当事者ア原告(昭和57年2月17日生)は,本件事故当時17歳であり,a 県- 2 -立b 農業高等学校(現在はa 県立b 総合高等学校。以下「b 農高」という。)の農業土木科3年に在籍していた。 イ被告は,平成20年3月まで,b 農 件事故当時17歳であり,a 県- 2 -立b 農業高等学校(現在はa 県立b 総合高等学校。以下「b 農高」という。)の農業土木科3年に在籍していた。 イ被告は,平成20年3月まで,b 農高を設置していた地方公共団体である。 ⑵ b 農高のプールb 農高のプールは,縦の長さ約25メートル,横の長さ約16メートルで全7コースを有し,各コースには,満水時の水面から高さ約0.6~0. 65メートルのところにスタート台が設置されている。また,満水時の水面からの深さは,中央部が最も深く約1.4メートル,スタート台の直近が最も浅く約1.2メートルである。(乙4)⑶ 本件事故の経緯ア平成11年6月30日,農業土木科3年の第6時限目の授業として,原告を含む男子生徒30名が参加して,上記プールで水泳実習が行われた(以下「本件授業」という。)。 指導担当教諭は,A 教諭(以下「A 教諭」という。)のみであった。 イ本件授業中の自由練習の際に,原告は,第6ないし第7コースのスタート台に乗って,頭からプールに飛び込み,これによって,第6頚椎脱臼骨折,第7頚椎破裂骨折による頚髄損傷の傷害を負った。 3 争点及びこれについての当事者の主張⑴ 被告の安全配慮義務違反の有無(原告)ア安全配慮義務の根拠について在学契約という特別の社会的接触関係に入った当事者である被告は,原告に教育をする義務を負うとともに,その附随的義務として,学校教育において,他方当事者である原告の生命・身体等に危険が生じないように配慮すべき義務を負っている。 - 3 -イ具体的な安全配慮義務の内容とその違反について(ア) 危険性周知徹底及び飛び込み禁止指導義務について学校の水泳授業においては,学校の種別にかかわらず,飛び込み・スタートに - 3 -イ具体的な安全配慮義務の内容とその違反について(ア) 危険性周知徹底及び飛び込み禁止指導義務について学校の水泳授業においては,学校の種別にかかわらず,飛び込み・スタートによる死亡ないし重篤な障害が残る傷害に至る重大な事故が発生しているから,水泳の授業の担当教諭は,生徒に対し,事前に,飛び込みを行った場合,深く水に入ってプール底に頭部を衝突させ,場合によっては頚椎・頚髄損傷をきたす可能性があることを,危険性のある動作を具体的に説明するなどしながら周知徹底したうえで,未経験者や未習熟者に対して,一律に飛び込みを禁止する義務がある。 しかるに,A 教諭は,平成11年当時の各水泳授業の前に,原告を含む生徒らに対し,安全面に関する注意指導を特段行っておらず,また,自由練習時間の設定をした時点を含む本件授業のいずれの段階においても,これを行わなかったのであるから,上記注意義務に違反しているというべきである。 仮に,A 教諭が,安全に関する注意を行っていたとしても,その指示は抽象的なものにすぎなかったから,注意義務を怠ったことには変わりがない。 (イ) 監視ないし危険行為制止義務について水泳授業中の自由練習の時間においては,事故発生の危険性が高いので,担当教諭は,専任の監視係を置く等して,常時プールを監視するとともに,危険な行為を発見した場合にはこれを制止すべき高度の注意義務を負っている。したがって,監視係が,一時的にその場を離れなければならない場合には,事前に生徒全員にプールから出るように指示したり,あらためて飛び込み等の危険行為をしないように厳重注意するなど,事故の発生を防止し,生徒の安全を確保するための具体的で十分な措置を講じる義務がある。 - 4 -しかるに,A 教諭は,自ら設定した自由練習時間に, 等の危険行為をしないように厳重注意するなど,事故の発生を防止し,生徒の安全を確保するための具体的で十分な措置を講じる義務がある。 - 4 -しかるに,A 教諭は,自ら設定した自由練習時間に,更衣室に設置されたシャワー室でシャワーの点検をするなどし,生徒に対する監視を解いたうえ,代わりの監視係を置いたり,生徒全員をプールから上がらせ,又は飛び込み禁止などの注意をあらためて徹底するなどの監視に代替する容易な手段を講じることもなく,原告の飛び込みを見逃し,これを制止することができなかったのであるから,同教諭には上記注意義務に違反した過失があるというべきである。 仮に,被告が主張するように,プールサイドを離れた時間が約1分程度であったとしても,自由練習という事故の生じやすい状況や,飛び込み事故により生じる結果の重大性に鑑みれば,上記注意義務を免れることはできない。 (ウ) A 教諭の上記注意義務違反の結果,原告は,飛び込みによりプールの底に頭部を衝突させ頚髄損傷の傷害を負ったものである。 (被告)ア安全配慮義務の根拠について被告が,県立高校の在学生であった原告に対し,一定の安全配慮義務を負うことは認める。しかし,被告が負う安全配慮義務は在学契約に基づくものではなく,入学許可によるものである。 イ具体的な安全配慮義務の内容とその違反について(ア) 危険性周知徹底ないし飛び込み禁止指導義務についてb 農高では,平成11年4月初旬ころ,体育科主任のB 教諭(以下「B 教諭」という。)が,体育教員を対象として,安全指導に関するオリエンテーションを実施したほか,当該年度の最初の体育の授業及び最初の水泳授業において,生徒対象のオリエンテーションを実施した。 上記水泳授業のオリエンテーションにおける指導内容は,助走や回転を加 リエンテーションを実施したほか,当該年度の最初の体育の授業及び最初の水泳授業において,生徒対象のオリエンテーションを実施した。 上記水泳授業のオリエンテーションにおける指導内容は,助走や回転を加えて飛び込んだり,頭から飛び込んだりすると,プールの底で- 5 -頭部を強打し,頚椎や脳に大きな傷害を負うことがあるので,飛び込みは,各コースに整列して教諭の指示でスタートする一斉指導を行う場合に限り,スイミングスクール等の経験者や飛び込みの習得者に対し,教諭が許可したときにのみ認め,それ以外はすべて禁止とすることなどであった。 A 教諭も,これらの注意・指導事項を踏まえ,担当する水泳授業において,毎回,上記の場合を除き,飛び込みの禁止を徹底して注意していた。 したがって,A 教諭らが,危険性周知徹底ないし飛び込み禁止指導義務を負っていたとしても,これに違反したということはできない。 (イ) 監視ないし危険行為制止義務について一般に,高校3年生ともなれば,成人とほとんど同等の判断能力を有しているのであるから,高校3年生を対象とする授業においては,生徒各自の自律的判断を尊重すべきであり,それに伴って教諭に課される注意義務も軽減されるというべきである。したがって,水泳授業を担当する教諭は,生徒の行動等を逐一監視するまでの義務はない。 本件で,A 教諭がシャワーから出ている水を止めるためにプールサイドを離れたのは,長くても約1分間程度であることに加えて,本件授業が高校3年生を対象とするものであったことや,上記のとおり事前に十分な注意指導をしていたことからすれば,A 教諭において,そのわずかな時間に生徒が危険な飛び込みをすることなど予見することは不可能であった。 したがって,A 教諭に監視ないし危険行為制止義務に違反した過失があると いたことからすれば,A 教諭において,そのわずかな時間に生徒が危険な飛び込みをすることなど予見することは不可能であった。 したがって,A 教諭に監視ないし危険行為制止義務に違反した過失があるということはできない。 (ウ) 以上のとおり,被告は安全配慮義務を尽くしており,本件事故は,A 教諭らの再三の注意,指導にもかかわらず,原告がほんのわずかな時- 6 -間,同教諭がプールサイドを離れた隙を狙って禁止されていた飛び込みを行い,受傷したことによって発生したものであり,原告自身の過失に基づく自招事故というべきである。 なお,原告は飛び込みによりプールの底に頭部を衝突させたものではなく,高く飛びすぎ垂直に近い角度で入水してしまったため水面の水圧で首が引っかかって頚椎を支点として圧力がかかり頚椎を損傷したものである。 ウ過失相殺について仮に,被告に安全配慮義務違反が認められるとしても,上記のとおり,A 教諭らの指導を無視して飛び込みを行った原告の責任は大きく,大幅な過失相殺がなされるべきである。 ⑵ 原告の損害(原告)本件事故により,原告には以下の損害が生じた。 ア治療関係費(ア) 入院治療費原告は,本件事故当日の平成11年6月30日から平成12年1月9日まで(入院期間194日)及び同年2月22日から同年7月24日まで(入院期間154日)の間,c 県d 市にあるC センター(以下「C センター」という。)に入院していた。同センターにおける入院治療費は,別表1記載のとおりであり,その合計額は,178万3845円である。 (イ) 通院治療費① C センター関係原告は,平成12年1月9日に同センターを退院してから同年2月22日まで及び同年7月24日に同センタ 178万3845円である。 (イ) 通院治療費① C センター関係原告は,平成12年1月9日に同センターを退院してから同年2月22日まで及び同年7月24日に同センターを退院してから平成- 7 -13年2月16日までの間,同センターにおいて通院し治療を受けた。 そのために要した通院治療費は,別表2「C センター通院分」記載のとおりであり,その合計額は,6万1673円である。 ② その他の病院関係原告は,C センターを退院した後,e 市及びa 市内の病院において検査,治療及び投薬等を受けたほか,平成14年にD 株式会社(以下「D」という。)に入社した後は,f 市内の医療法人E クリニック(以下「E クリニック」という。)において検査及び治療等を受けた。 そのために要した通院治療費は,別表2「他病院通院分」記載のとおりであり,その合計額は,15万4610円である。 (ウ) 将来の治療費原告は,カテーテルによって排尿しているため,現在約3か月に1度E クリニックに通院し,尿道の消毒や腎臓の検査等を受けており,今後も継続して上記消毒及び検査等を受ける必要があるところ,平成18年度から平成20年度における平均通院治療費8049円を基礎とし,訴え提起当時27歳であった原告の推定余命期間を平成19年簡易生命表により52年として,ライプニッツ方式により中間利息を控除すると,将来の通院治療費は,14万8246円となる。 (計算式)2683点(検査,画像診断及び医学管理等の1年間の平均診療報酬点数)×10円(診療報酬点数1点当たりの金額)×0.3(自己負担率)=8049円8049円×18.418(ライプニッツ係数)=14万8246円(1円未満切 及び医学管理等の1年間の平均診療報酬点数)×10円(診療報酬点数1点当たりの金額)×0.3(自己負担率)=8049円8049円×18.418(ライプニッツ係数)=14万8246円(1円未満切捨て。以下同じ)(エ) なお,症状固定後の分については,症状の悪化を防止するとともに,- 8 -上記治療のために必要なものである。 イ付添看護費(ア) 入院付添費原告のC センターでの入院期間は合計348日であるところ,近親者である原告の両親の付添看護費を1日6000円として計算すると,その合計額は,208万8000円となる。 (イ) 通院付添費原告は,平成12年7月から平成13年2月までの間,合計25回Cセンターに通院していたところ,原告には移動手段がなかったので,原告の両親が毎回付き添っていた。そこで,通院付添費を1日3000円として計算すると,その合計額は7万5000円となる。 ウ入院雑費C センターへの入院期間は合計348日であるところ,入院雑費を1日1300円として計算すると,その合計額は45万2400円となる。 エ通院交通費(ア) 原告入院時における近親者の通院交通費原告の両親が,原告を看護するために要した交通費は,別表3「近親者の通院交通費」欄記載のとおり,合計18万8488円である。 (イ) 原告通院時における原告の通院交通費原告が,C センターに通院する際に要した交通費は,別表3「本人の通院交通費」欄記載のとおり,合計1万8488円である。 オ宿泊費(ア) 原告入院時における近親者の宿泊費原告の両親は,原告の入院期間中,付添看護のために, 費は,別表3「本人の通院交通費」欄記載のとおり,合計1万8488円である。 オ宿泊費(ア) 原告入院時における近親者の宿泊費原告の両親は,原告の入院期間中,付添看護のために,居住地であるa 県g 郡h 町(現在のa 県e 市h 町)からc 県d 市所在のC センターに通院していたが,長時間の通院が極めて負担となることから,別表- 9 -4「近親者宿泊分」欄記載のとおり,同センターの付属施設に宿泊していた。したがって,その宿泊費合計30万6600円は,本件事故に起因する損害というべきである。 (イ) 原告通院時における原告及び近親者の宿泊費原告は,C センターに通院する際,居住地であるa 県g 郡h 町から両親の運転する車で移動していたが,長時間の通院が極めて負担であったことから,別表4「本人及び近親者宿泊分」欄記載のとおり,両親とともに同センターの付属施設に宿泊していた。したがって,その宿泊費合計12万6525円も,本件事故に起因する損害というべきである。 カ器具購入費等(ア) 車椅子購入費原告は,平成12年2月3日,車椅子購入費15万2125円を支出した。 (イ) 自動車教習所教習料原告は,本件事故の後遺障害によって,生活及び就業に自動車運転免許が必要となり,下肢障害者用の教習車を用意していたF 自動車専門学校で教習を受けることになったのであるから,自動車教習所の教習料26万2650円は,本件事故に起因する損害というべきである。 (ウ) 自動車改造費原告は,上記(イ)のとおり,生活及び通勤のため自動車の運転が必要となり,そのためには,通常の自動車に手動運転装置を付け,身体障害者用の特別仕様に改造することを要したのであるから,3回の自動車改造費合計76万7000円(28万円,2 通勤のため自動車の運転が必要となり,そのためには,通常の自動車に手動運転装置を付け,身体障害者用の特別仕様に改造することを要したのであるから,3回の自動車改造費合計76万7000円(28万円,27万円,21万7000円)は,本件事故に起因する損害である。 (エ) 将来の自動車改造費- 10 -原告は,今後継続して自動車を使用しなければならず,自動車を買い換える度に改造を行う必要があるところ,上記(ウ)の自動車改造費1回当たりの平均額である25万5666円を基礎とし,買換え予定回数を8回(平均余命期間52年で,自動車を6年ごとに買い換えた場合)として,ライプニッツ方式により中間利息を控除すると,将来の自動車改造費は67万9472円となる。 (オ) 家屋改造費原告は,平成12年7月から平成13年4月まで両親の居宅で生活し,平成17年12月以降現在の自宅で生活しているところ,原告が両居宅内において安全に移動,排便・排尿及び入浴等を行えるように,家屋の改造を行なったのであるから,両親の居宅改造費183万5000円,現在の自宅改造費15万0205円は,いずれも本件事故に起因する損害というべきである。 (カ) 不妊治療費原告は,性機能障害及び精路通過障害による不妊症となり,現在不妊治療を行っているところ,子を持ちたいというのは自然な感情であり,また,上記各障害が本件事故によって生じたことは明らかであるから,1回分の不妊治療費33万5750円は,本件事故に起因する損害である。 キ逸失利益原告は,本件事故当時17歳の健康な高校生であったが,後遺障害により,18歳から67歳まで49年間を通じてその労働能力を喪失したものである。 原告の症状固定日は,平成11年9月7日であるから,平成11年度賃金センサス男子労働者全学歴全 であったが,後遺障害により,18歳から67歳まで49年間を通じてその労働能力を喪失したものである。 原告の症状固定日は,平成11年9月7日であるから,平成11年度賃金センサス男子労働者全学歴全年齢平均賃金である562万3900円を基礎とし,労働能力喪失率を100パーセント,原告が症状固定当- 11 -時17歳の未就労者であったことから労働能力喪失期間を49年間として,ライプニッツ方式(ライプニッツ係数18.2559-0.9523)により中間利息を控除すると,原告の逸失利益は,9731万3716円となる。 なお,原告は,現在,障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき認定された特例会社であるD において,平均年収256万3189円を得ているものの,これは原告のリハビリ等の不断の努力により獲得維持されているものであるし,今後同様の努力を続けられるか不確実であるうえ,仮に退職せざるを得ない状況になった場合,他の企業に再就職することは困難であること等からすれば,上記収入があることをもって,原告に逸失利益が存在しないとすることはできないし,また,将来の分を含め上記収入を控除すべきではない。 ク慰謝料(ア) 入通院慰謝料原告のC センターにおける入院期間(合計348日,約12か月)及び通院期間(207日,約7か月)からすれば,原告の入通院慰謝料としては,400万円が相当である。 (イ) 後遺症慰謝料原告は,身体障害者等級第1級の後遺障害を負い,その症状の改善は困難であること,17歳という若年時に上記後遺障害を負ったものであること,日常生活が極めて不便であること,今後も不妊治療を必要とすること等を考慮すれば,原告の後遺障害慰謝料は,3100万円とするのが相当である。 ケ損害の補以上からすると,本件事故により原告が ,日常生活が極めて不便であること,今後も不妊治療を必要とすること等を考慮すれば,原告の後遺障害慰謝料は,3100万円とするのが相当である。 ケ損害の補以上からすると,本件事故により原告が被った損害の合計は1億4190万0153円となるところ,原告は,本件事故後,当時のG センタ- 12 -ーから障害見舞金として3370万円の支払を受けている。 コ弁護士費用原告は,本件訴訟の追行を弁護士に依頼し,1082万円の支払を約束したところ,本件事案の内容,困難性からすれば,上記金額は,本件事故と相当因果関係のある損害というべきである。 (被告)ア治療関係費(ア) 入院治療費① 原告は,平成11年9月7日に症状固定していることから,症状固定後の治療は必要ない。 ② また,原告がC センターに再入院したのは,父親が交通事故で入院し,原告を介護する者がいなくなったことや,原告が自動車運転免許を取得するための訓練をすることなどを主な理由とするものであるから,再入院の治療費は,本件事故とは直接関係がない。 (イ) 通院治療費上記①と同じ。 (ウ) 将来の治療費上記①と同じ。 イ付添看護費C センターは完全看護体制の病院であるうえ,近親者の付添看護が必要であるとの医師の診断がなされていない。 ウ入院雑費当初の入院分については認めるが,再入院分については争う。 エ通院交通費ガソリン代のすべてがC センターへの通院に要したものとは認められない。 - 13 -オ宿泊費原告入院時における症状固定日までの近親者の宿泊分は認めるが,その余は争う。 カ器具購入費等(ア) 車椅子購入費認める。 (イ) 自動車教習所教習料原告は,本件事故に遭わなかったとしても,自動車運転免許を取得 までの近親者の宿泊分は認めるが,その余は争う。 カ器具購入費等(ア) 車椅子購入費認める。 (イ) 自動車教習所教習料原告は,本件事故に遭わなかったとしても,自動車運転免許を取得したものと推測され,自動車教習所教習料は,本件事故に起因する損害とはいえない。仮に損害に当たるとしても,特別の教習車を使用する教習料と通常の教習車を使用する教習料との差額に限られるべきである。 (ウ) 自動車改造費原告は,自動車改造費用として,3回にわたり合計76万7000円を支出しているが,2回目(改造費27万円)は車椅子テニス用の車椅子を積んだり,就職先の意向に沿うためであること,3回目(改造費21万7000円)は原告の妻の運転車両を買い換えるためであることなどからすれば,いずれも本件事故と直接関係がない。 (エ) 将来の自動車改造費争う。 自動車を6年ごとに買い換える必要性は認められない。 (オ) 家屋改造費認める。 (カ) 不妊治療費争う。 キ逸失利益- 14 -原告は,高校卒業後,就職を希望していたのであるから,男子高校卒計全年齢平均賃金を基礎とすべきであるし,賃金センサスは,口頭弁論終結時である平成22年のものを用いるべきである。 また,原告が,現在に至るまで平均年収256万3189円を得ていることからすれば,労働能力喪失率を100パーセントとするのは公平に反し,仮に100パーセントとするのであれば,原告が過去に得た収入と今後得られる収入の総額を控除すべきである。 ク慰謝料争う。 仮に,逸失利益について現実収入を考慮しないのであれば,慰謝料の算定にあたって減額すべきである。 ケ損害の填補原告は,自認するとおりG センターから障害見舞金3370万円の支払を受けたほか,同センターから災 ついて現実収入を考慮しないのであれば,慰謝料の算定にあたって減額すべきである。 ケ損害の填補原告は,自認するとおりG センターから障害見舞金3370万円の支払を受けたほか,同センターから災害共済給付金として118万3356円の支払を受けているので,合計3488万3356円を上記各損害の合計額から控除すべきである。 コ弁護士費用争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,証拠(甲1,8~10,31の1・2,42,乙5~7,証人A,原告)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ 本件事故当時の水泳事故の状況プールでの飛び込みによる事故は,脊髄損傷をきたすスポーツ事故のうち,主要な位置を占めており,性別及び学校種別でみると,男子中学生及び男子高校生の事例が多いことなどが,財団法人日本水泳連盟により「月- 15 -刊水泳」(平成4年11月号)で紹介されていた(甲31の1・2)。 また,A 教諭自身も,本件事故当時,教育委員会からの学校のプール事故に関する通達があったことなどから,学校のプールで頚椎損傷などのプール事故が発生していることを認識していた(証人A203~210項)。 ⑵ 平成11年度のオリエンテーションア b 農高においては,平成11年4月初めころ,同校の体育科主任であるB 教諭によって,体育教員対象の体育の安全指導に関するオリエンテーションが実施されたほか,当該年度の最初の体育授業と最初の水泳授業において,生徒を対象とするオリエンテーションが実施された。 上記体育教員対象のオリエンテーションにおいて,B 教諭は,A 教諭を含む体育教員らに対し,水泳授業での生徒の健康管理方法や監視態勢等に加えて,大事なことは繰り返し注意することなどを指導した。 また,上記水泳授業での生徒 ンテーションにおいて,B 教諭は,A 教諭を含む体育教員らに対し,水泳授業での生徒の健康管理方法や監視態勢等に加えて,大事なことは繰り返し注意することなどを指導した。 また,上記水泳授業での生徒対象のオリエンテーションにおいて,B 教諭は,助走や回転を加えて飛び込んだり,頭から飛び込んだりするとプールの底で頭部を強打し頚椎や脳に大きな傷害を負うことがあるため,プールへの飛び込みは原則として禁止とすることなどを説明した。このオリエンテーションには,担当教諭であるA 教諭も立ち会っていた。 (以上につき,証人A113~135,192~196項)イなお,A 教諭は,B 教諭から,「本校の生徒は繰り返し何度も注意をしないとなかなか指導に従わない生徒が多い。」と忠告を受けていた(証人A175,270項)。 ⑶ 本件事故の発生ア(ア) 本件授業開始後である平成11年6月30日(以下は,特記しない限り同日である。)午後2時過ぎころ,A 教諭は,生徒らをプールサイドに整列させ,出欠と健康状態の確認を行ったうえで,生徒らに対し,当日の授業内容として,①生徒ら全員で,クロール,平泳ぎ及び背泳- 16 -ぎ,バタフライ又は横泳ぎのうち1種目を選択して泳ぐ自由泳法により25メートルを1本ずつ泳ぐウォーミングアップを行った後,②クロール及び平泳ぎで泳げる距離を測定する泳力調査が未了の生徒2名についてこれを実施するとともに,その他の生徒については,自由泳法を習得するための個別練習を行うことを説明した。 (イ) A 教諭は,上記⑵を踏まえて,各水泳授業の冒頭で,生徒らに対し,許可なくプールに飛び込むことや,プールサイドを走り回ることがないように注意指導を行っており,本件授業においても,授業内容を説明する際に,同様の注意指導を行っていた(乙7のH 冒頭で,生徒らに対し,許可なくプールに飛び込むことや,プールサイドを走り回ることがないように注意指導を行っており,本件授業においても,授業内容を説明する際に,同様の注意指導を行っていた(乙7のH の回答部分,証人A92,175項)。 イ(ア) 準備体操の後,午後2時20分ころからウォーミングアップが開始され,午後2時25分ころ,第1コースで泳力調査が,第2ないし第7コースで個別練習が開始された。 (イ) 従前からA 教諭は,ウォーミングアップにおいては,スイミングスクール等の経験者や事前に申入れのあった生徒につき,適宜飛び込みによるスタートを許可していたが,個別練習及び自由練習においては,一律にこれを禁止していた(証人A97項)。 それにもかかわらず,個別練習中に,第7コース付近で,1人の生徒が,プールサイドから助走をつけて,プールに浮かべたビート板の上に足から飛び込んだ。泳力調査を担当していたA 教諭は,これを目撃し,反対側のプールサイドから大きな声で,同生徒に対し,危険な行為をやめるように注意した(証人A27~39,214~221項)。 (ウ) 午後2時30分ころ,泳力調査が終了したので,A 教諭は,大きな声で,生徒全員に対し自由練習を指示した。 自由練習の間,A 教諭は,プールサイドを巡回しながら,生徒らの様子を監視していたが,第2コースのスタート台付近まで来た時に,別- 17 -紙図面記載のプールの北側にある附属棟(以下「附属棟」という。)の男子更衣室に接するシャワー室の入り口を通して,シャワーの水が出しっぱなしになっていることに気づいた。そこで,シャワー室に入ってシャワーの水を止めた後,さらに同室の排水溝(乙5の写真16~18)に髪の毛やゴミが溜まって水が流れにくくなっていたことから,これを取り除く作業を っていることに気づいた。そこで,シャワー室に入ってシャワーの水を止めた後,さらに同室の排水溝(乙5の写真16~18)に髪の毛やゴミが溜まって水が流れにくくなっていたことから,これを取り除く作業を行った。 (プールと附属棟の位置関係及び同棟の状況につき乙5)(エ) 建物の構造上,附属棟からプールを監視することはできないが(乙5の写真19,20),A 教諭は,本件授業の自由練習中に,シャワーの水を止めるために附属棟に入る際,生徒らに対し,あらためて危険行為を禁止する等特段の措置を講じることはなかった(証人A226~232項)。 ウ原告を含む生徒数名は,A 教諭が附属棟に入っていったのを見て,同人による監視が解かれたものと考え,第6ないし第7コースのスタート台のあたりから,助走をつけてプールに飛び込むなどして遊び始めた。上記生徒らが,前転や後転をしながら数回飛び込みを繰り返した後,原告は,他の生徒に対し,「今度は高く飛ぶよ。」と言って,助走したうえで同スタート台の上から飛び込み,頭から水面に対し垂直に近い角度でプールに入水したところ,頭部が着水した際にかかる水圧の衝撃によって第6頚椎脱臼骨折,第7頚椎破裂骨折による頚髄損傷の傷害を負った(乙7,原告22~36,136,146~149項)。 (この点について,原告は,頭部をプールの底で打ち付けた旨主張するが,原告はそのような供述をするものではない。また,甲1(報告書)には,プールの底で頭部を強打した旨の記載があるが,推測にすぎないし,乙7(I の回答2)には,「ごん」という音がした旨の記載もあるが,その表現の正確性には疑問があるから,これらはいずれも上記認定を左- 18 -右しないというべきである。)⑷ 本件事故後の経緯ア原告がおぼれていることに気づいた生徒数名 の記載もあるが,その表現の正確性には疑問があるから,これらはいずれも上記認定を左- 18 -右しないというべきである。)⑷ 本件事故後の経緯ア原告がおぼれていることに気づいた生徒数名が,原告を第7コース東側のプールサイドに引き上げ,生徒らに呼ばれて附属棟からプールサイドに戻ってきたA 教諭は,プールサイドで仰向けに寝かされていた原告に対し,触診をするなどしたうえで,他の生徒に事務室へ行って救急車を呼んでもらうように指示した。 イ原告は,午後2時52分ころ,救急車でa 県立b 病院に,その後さらに防災ヘリコプターでC センターに搬送され,即日同センターに入院した。 原告は,その後,同センターにおいて,第6頚椎脱臼骨折,第7頚椎破裂骨折により身体障害者福祉法別表の1級に相当する第7頚髄節以下四肢機能全廃,神経因性膀胱直腸障害の後遺障害が生じ,平成11年9月7日に症状が固定したとの診断を受けた(甲3,8,9。なお,a 県発行の身体障害者手帳によれば,両下肢機能全廃1級・両手指機能全廃2級の併合1級とされている(甲10)。)。 2 争点⑴(被告の安全配慮義務違反の有無)について⑴ 安全配慮義務について学校の教師は,学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っており,危険を伴う技術を指導する場合には,事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務があるところ(最高裁昭和62年2月6日第二小法廷判決・集民150号75頁参照),水泳授業が,死亡や重篤な障害が残る傷害事故等を生じる危険性を有するものであることからすれば,本件授業を担当したA 教諭らにおいて,上記のような一般的な注意義務を負っていたことは明らかである。 そこで,以下では,A 教諭らに具体的な注意義務違反があるか 性を有するものであることからすれば,本件授業を担当したA 教諭らにおいて,上記のような一般的な注意義務を負っていたことは明らかである。 そこで,以下では,A 教諭らに具体的な注意義務違反があるか否かを検討する。 - 19 -⑵ 危険性周知徹底ないし飛び込み禁止指導義務について高等学校の水泳授業を担当する教諭は,前記のとおりの飛び込みの危険性等に照らせば,水泳授業の開始等に当たり,生徒に対し,飛び込みの危険性を説明したうえ,むやみに飛び込むことを禁止指導すべき注意義務があるというべきである。 しかし,前記認定事実⑵ア及び同⑶ア(イ),イ(イ)のとおり,B 教諭は,生徒対象のオリエンテーションにおいて,助走や回転を加えて飛び込んだり,頭から飛び込んだりするとプールの底で頭部を強打し頚椎や脳に大きな傷害を負うことがあるため,プールへの飛び込みは原則として禁止とすることなどを説明し,A 教諭は,これを受け,本件授業を含む各水泳授業の冒頭で,生徒らに対し,許可なくプールに飛び込むことがないように注意指導を行い,ウォーミングアップ等,生徒が一斉にスタートする練習において,スイミングスクール等の経験者や事前に申入れをした生徒につき,習熟度に応じて適宜飛び込みを許可するほかは,一律にこれを禁止していたのであるから,B 教諭及びA 教諭に,上記注意義務に違反する過失があるということはできない。 この点について,原告は,これらの教諭の指導は具体性に欠ける旨主張するが,上記に照らせば,採用し難い。 ⑶ 監視ないし危険行為制止義務についてア前記認定の本件事故当時の水泳事故の状況(前記認定事実1⑴),A 教諭が立ち会ったオリエンテーションの内容(同1(2)ア)等に加えて,A教諭は,かねてから,B 教諭より,指導に従わない ついてア前記認定の本件事故当時の水泳事故の状況(前記認定事実1⑴),A 教諭が立ち会ったオリエンテーションの内容(同1(2)ア)等に加えて,A教諭は,かねてから,B 教諭より,指導に従わない生徒が多い旨の忠告を受けていたうえ(同1(2)イ),飛び込みを禁止していたにもかかわらず,本件事故直前の個別練習中に,A 教諭の目を盗んでプールに浮かべられたビート板に向かって飛び込んだ生徒もいて同教諭はこれを目撃していたこと(同1(3)イ(イ))に照らせば,A 教諭は,自己がプールの監視を解け- 20 -ば,生徒が開放的になって事前の禁止事項を守らず,危険な態様でプールに飛び込むなどして,頚髄損傷等の重大な事故を起こす危険性があることを十分予見しえたというべきである。 したがって,A 教諭には,上記事故を防止するために,プールサイドで継続的に生徒らを監視するとともに,危険行為に及ぶ生徒を発見した場合には,これを制止すべき注意義務を負っていたと認められ,A 教諭においてプールサイドを離れなければならない事情がある場合には,それが短時間であったとしても,監視を解く前に,生徒らに対しあらためて飛び込み等の危険行為を厳重に禁止したり,あるいは臨時の監視係を置くなどして(甲34の57頁参照),事故を未然に防止するための措置を講じるべき注意義務があったというべきである。 イしかるに,A 教諭は,自由練習を指示した後,生徒らがもはや危険な行為に及ぶことはないと軽信し,前記認定事実⑶イ(エ)のとおり,特段の措置を講じることなく,シャワー室に行ってシャワーの水を止め,排水溝にたまったゴミを取り除く作業を開始したというのであり,その間,監視のない状況となったプールサイドにおいて,原告を含む生徒数名が危険な飛び込みをした結果,本件事故が生じたもの ワーの水を止め,排水溝にたまったゴミを取り除く作業を開始したというのであり,その間,監視のない状況となったプールサイドにおいて,原告を含む生徒数名が危険な飛び込みをした結果,本件事故が生じたものと認められるから,被告の履行補助者であるA 教諭には,上記注意義務に違反した過失があるといわざるを得ない。 なお,本件事故が本件授業中に発生している以上,原告が自ら招いた行為によるものであるとして,A 教諭の過失を全面的に否定するのは相当ではなく,このような事情は後記過失相殺の事情として斟酌することにする。 ウそして,A 教諭が生徒らに対する監視を解かず,あるいは上記のような措置を講じていれば,本件事故が生じていなかったことは前記認定の事実に照らせば,容易に推測できる。 - 21 -なお,本件事故の原因は,前記のとおり,頭部が着水した際にかかる水圧の衝撃によって生じたものであり,プールの底で頭を打ち付けた旨の原告の主張とは異なるものの,仮に,これが主要事実に当たるとしても,被告も主張している事実であるから,このような認定が弁論主義に反するものとは考えられないし,また,これによって上記A 教諭の注意義務違反の判断が左右されるものではない。 エそうすると,被告には,安全配慮義務違反があったというべきであり,被告は,原告が被った後記損害について賠償すべき義務を負うことになる。 (4) 過失相殺について上記のとおり,被告は安全配慮義務違反を免れないというべきであるが,他方,原告が成人に近い判断能力を有する高校3年生であり,前記認定事実⑵の生徒対象のオリエンテーションを受けながら,スタート台付近では深さ約1.2メートルしかないプールに助走をつけたうえで頭から水面に対し,垂直に近い形で飛び込んだ する高校3年生であり,前記認定事実⑵の生徒対象のオリエンテーションを受けながら,スタート台付近では深さ約1.2メートルしかないプールに助走をつけたうえで頭から水面に対し,垂直に近い形で飛び込んだ場合,プールの底に頭部を衝突させるなどして,頚髄損傷の傷害を負うことは容易に予見しえたこと,前記認定事実⑶ア(イ)及びウのとおり,原告は,A 教諭により許可のない飛び込みを禁止されていたにもかかわらず,A 教諭が附属棟に入り,同人の監視が届かなくなったことを見計らって,上記のような危険な態様での飛び込みを始めたこと等の事情に鑑みると,原告にも重大な過失があったことは明らかである。 そして,以上の事情に加え,本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,原告の過失割合を7割と認めるのが相当である。 3 争点⑵(原告の損害)について⑴ 治療関係費ア入院治療費 153万0765円- 22 -証拠(甲4,5の1~4,11の1~25,39~41,原告)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 原告は,本件事故当日の平成11年6月30日,C センターに入院し,頚椎及び胸椎固定術等の手術を受けたほか,完全介護体制の下,画像診断や各種検査を受けながら,リハビリテーションを行うなどしたうえで,平成12年1月9日に退院した(以下「第1入院」という。)。 (イ) その後,原告の父親が交通事故で入院したため,居住地で原告が十分な介護を受けることができなくなったこと及び自動車運転免許を取得することを主な理由として,原告は,同年2月22日同センターに再度入院し,完全介護体制の下,排便訓練を含むリハビリテーションを行い,同年7月24日に退院した(以下「第2入院」という。)。 (ウ) 原告は,上 主な理由として,原告は,同年2月22日同センターに再度入院し,完全介護体制の下,排便訓練を含むリハビリテーションを行い,同年7月24日に退院した(以下「第2入院」という。)。 (ウ) 原告は,上記第1,第2入院に係る治療費(診断書代を含む。)として,別表1記載の金額から食事負担金25万3080円を除いた合計153万0765円を支出した。 以上のとおり,原告の入院治療は,そのほとんどが症状固定日(平成11年9月7日)以後のものであること,第2入院に至る経緯を考慮しても,原告の後遺障害の部位・程度,及び上記治療内容等に鑑みれば,上記治療費はすべて本件事故と相当因果関係のある損害であると認めるのが相当である。 イ通院治療費(ア) C センター関係 6万1673円証拠(甲12の1~の32)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成12年2月8日から同月18日まで及び同年8月10日から平成13年2月16日まで,別表2「C センター通院分」の「年月日」及び「金額」欄記載とおり,原告の父母による付添の下,同センターに通- 23 -院し,診察を受けたり,リハビリテーション等を行ったうえ,治療費として6万1673円を支出したことが認められるところ,この支出は,上記同様,本件事故と相当因果関係のある損害であると認められる。 (イ) その他の病院関係 15万4610円証拠(甲13の1~8,14の1~15)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,別表2「他病院通院分」の「年月日」,「金額」及び「備考」欄記載のとおり,a 県立b 病院,J 病院,K 病院,L 病院及びE クリニックにそれぞれ通院し(在宅医療分を含む。),診察や後記ウの尿道の消毒等を受けるなどし,その治療費として合計15万461 記載のとおり,a 県立b 病院,J 病院,K 病院,L 病院及びE クリニックにそれぞれ通院し(在宅医療分を含む。),診察や後記ウの尿道の消毒等を受けるなどし,その治療費として合計15万4610円を支出したことが認められるところ,原告の後遺障害の部位・程度及び上記治療行為の内容等に照らせば,上記治療費は,症状悪化を防ぐために必要な治療に要した費用であると認められるから,本件事故と相当因果関係のある損害というべきである。 ウ将来の治療費 9万1010円証拠(甲14の1~15)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件事故の後遺障害によって,カテーテルで排尿をすることになったため,約3か月に1度,尿道を消毒するとともに,腎臓の画像撮影等の検査を行うことが必要となり,平成18年から平成20年まで,E クリニックにおいて上記消毒等の費用として,合計7万1820円(1年当たり平均支出額2万3940円)を支出したことが認められるところ,原告主張の検査,画像診断,医学管理等の診療報酬点数に基づく治療費の原告負担分は,年平均8062円となるが,原告が主張する8049円の限度で認めることとする。 上記治療は今後も継続する必要があることから,上記1年当たりの平均支出額8049円を基礎とし,訴え提起時(平成21年6月8日)2- 24 -7歳であった原告の推定余命期間を平成19年簡易生命表により52年間(52.89)としたうえで,ライプニッツ方式により中間利息を控除すると,上記治療費の訴え提起時の現価は14万8247円となり,これをさらに同方式により症状固定日(平成11年9月7日)の現価に引き直して計算すると,本件事故と相当因果関係のある損害としての将来の治療費は9万1010円となる。 (計算式)8049円× ,これをさらに同方式により症状固定日(平成11年9月7日)の現価に引き直して計算すると,本件事故と相当因果関係のある損害としての将来の治療費は9万1010円となる。 (計算式)8049円×18.4181(ライプニッツ係数)=14万8247円14万8247円×0.61391325(ライプニッツ係数)=9万1010円(同係数については10年分として扱った。)⑵ 付添看護費ア入院付添費 116万4000円証拠(甲17の1~34,19の1~19)及び弁論の全趣旨によれば,第1入院期間中は,原告の父母が毎日(日数について,被告は争うことを明らかにしない。)付添看護していたことが認められるところ,原告の後遺障害の部位・程度及び原告の当時の17歳という年齢に加えて,前記⑴ア(ア)で認定した第1入院期間中における治療行為の内容に鑑みると,第1入院期間においては,同センターが完全介護体制であることを考慮しても,なお付添看護の必要性を否定することはできないというべきである。 これに反し,第2入院期間においては,実際の付添看護の有無を問うまでもなく(第2入院の経緯に照らせば,毎日看護できたのかも疑問である。),もはや付添看護の必要まではないというべきである。 そうすると,近親者の入院付添費は1日当たり6000円と認めるのが相当であるから,本件事故と相当因果関係のある損害は,194日分- 25 -である116万4000円となる。 イ通院付添費 7万5000円前記⑴イ(ア)のとおり,原告は,平成12年2月8日から同月18日まで及び同年8月10日から平成13年2月16日までの間,合計25回Cセンターに通院していることが認められるところ,いずれも症状固定後の通 イ(ア)のとおり,原告は,平成12年2月8日から同月18日まで及び同年8月10日から平成13年2月16日までの間,合計25回Cセンターに通院していることが認められるところ,いずれも症状固定後の通院ではあるものの,前記のとおり,上記通院の必要性があったうえ,原告は,平成12年8月22日ころになって,初めて自動車を改造し,運転が可能になったことが認められること(甲23及び弁論の全趣旨)などからすると,同日以降の通院が多いものの運転経験が少ないことから,上記各通院については,両親による付添の必要性を否定することはできないというべきである。 そして,近親者の通院付添費は,1日3000円と認めるのが相当であるから,本件事故と相当因果関係のある損害は,7万5000円となる。 ⑶ 入院雑費 45万2400円前記⑴アのとおり,第1及び第2入院ともその必要性は否定できないから,入院雑費については,1日当たり1300円として,45万2400円となる(第1入院分については争いがない。)。 ⑷ 通院交通費ア原告入院時における近親者の通院交通費 8万6851円証拠(甲17の1~34)及び弁論の全趣旨によれば,原告の第1入院期間中,原告の父母は,居住地であるa 県g 郡h 町からc 県d 市所在のC センターに通院する際,別表3「近親者の通院交通費」の「年月日」,「金額」及び「備考」欄記載のとおり,8万6851円を支出したことが認められ(h 町はi 県よりであるから,もっぱら九州道を利用),ガソリン代を含め(移動距離に照らし不相当な金額とまではいえない。)本- 26 -件事故と相当因果関係のある損害であると認めるのが相当である。 これに反し,第2入院期間中の分については,付添の必要がないから, め(移動距離に照らし不相当な金額とまではいえない。)本- 26 -件事故と相当因果関係のある損害であると認めるのが相当である。 これに反し,第2入院期間中の分については,付添の必要がないから,損害と認めない。 イ原告通院時における原告の交通費 1万8848円証拠(甲18の1~6)及び弁論の全趣旨によれば,原告がa 県g 郡h町から上記センターに通院する際,別表3「本人の通院交通費」の「年月日」,「金額」及び「備考」欄記載のとおり,高速道路及び有料道路の通行料合計8400円及びガソリン代合計1万0448円を支出したことが認められる。そして,前記⑴イ(ア)からすると,上記通院交通費は,すべて本件事故と相当因果関係のある損害に当たると認めるのが相当である。 ⑸ 宿泊費ア原告入院時における原告の近親者の宿泊費 19万3200円証拠(甲19の1~33)及び弁論の全趣旨によれば,原告の入院期間中,原告の父母その他の近親者がC センターの附属施設に宿泊した費用として,別表4「近親者宿泊分」欄記載のとおり,合計30万6600円が支出されたことが認められるところ,前記⑵アのとおり,第1入院期間中に限っては,付添看護が必要であると認められるうえ,宿泊回数及びその費用も,居住地とC センターの所在地との距離等からすれば,必要かつ相当といえる範囲内ということができるから,本件事故と相当因果関係のある損害は,上記支出額のうち第1入院期間分である19万3200円と認めるのが相当である(症状固定日までの近親者の宿泊分は争いがない。)。 イ原告通院時における原告及び原告の父母の宿泊費 12万6525円証拠(甲20の1~13)及び弁論の全趣旨によれば,原告がa 県g 郡- 27 -h 町からC センターまで通 がない。)。 イ原告通院時における原告及び原告の父母の宿泊費 12万6525円証拠(甲20の1~13)及び弁論の全趣旨によれば,原告がa 県g 郡- 27 -h 町からC センターまで通院している間,原告及び原告の父母の宿泊費として,別表4「本人及び近親者宿泊分」欄記載のとおり合計12万6525円が支出されたことが認められるところ,前記⑴イ(ア)及び⑵イのとおり,通院治療及び付添の必要はあるというべきであるし,通院のために要する移動距離(重篤な後遺障害を負った原告にとっては特に身体的な負担も大きい。)等にも鑑みれば,上記宿泊費は,本件事故と相当因果関係がある損害に当たると認められる。 ⑹ 器具購入費等ア車椅子購入費 15万2125円当事者間に争いがない。 イ自動車教習所教習料 26万2650円原告のために,平成12年5月17日,自動車教習所教習料として26万2650円が支出されたことが認められるが(甲22),原告は障害からの自立のために,自動車の運転免許を取得したものと考えられるから(原告が高校卒業後直ちに免許を取得する予定であったというような事情は窺えない。),上記支出額は,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 ウ自動車改造費 56万2000円証拠(甲23,24の1・2,25,原告)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 原告は,自動車に手動運転装置を付け,身体障害者用の特別仕様に改造しなければ運転できなくなったことから,平成12年8月22日に父親からもらった自動車(クラウン)を29万2000円(税込み)で改造した。 (イ) その後,平成14年3月26日, 用の特別仕様に改造しなければ運転できなくなったことから,平成12年8月22日に父親からもらった自動車(クラウン)を29万2000円(税込み)で改造した。 (イ) その後,平成14年3月26日,車椅子テニス用の車椅子を乗せることができるように,就業先の意向によりその親会社製の自動車(オ- 28 -デッセイ)に買い換えるとともに,27万円で購入車を改造した。 (ウ) さらに,原告は,平成19年7月23日,原告の妻の自動車が古くなったことから,原告の名義で中古自動車(フィット)を購入するとともに,21万7000円で購入車を改造した。しかし,原告は,もっぱらオデッセイを使用していた。 以上からすれば,当初の自動車改造費は,本件事故と相当因果関係があることは明らかであるが,その後,2,3回目の改造費は,利用状況等に照らし,必ずしも必要であったか疑問であるが,エの自動車の耐用年数を考慮して,2回目の改造費に限って本件事故と相当因果関係があると認める。これらの合計は56万2000円である。 エ将来の自動車改造費 41万7136円1回の改造費は,上記ウの2回の改造費の平均である28万1000円のうち,原告が主張する25万5666円の限度で認めるのが相当であるところ,自動車の耐用年数を6年とし(弁論の全趣旨),前記のとおり,原告の推定余命期間を52年とすると,将来の自動車の改造は8回行われることとなり,中間利息を6年ごとのライプニッツ係数で控除すると,訴え提起時の現価は67万9472円となる。そして,これをさらにライプニッツ方式により症状固定時(平成11年9月7日)の現価に引き直し,本件事故と相当因果関係のある将来の自動車改造費を算定すると,41万7136円となる。 (計算式)25万5666円×(0. イプニッツ方式により症状固定時(平成11年9月7日)の現価に引き直し,本件事故と相当因果関係のある将来の自動車改造費を算定すると,41万7136円となる。 (計算式)25万5666円×(0.74621540+0.55683742+0.41552065+0.31006791+0.23137745+0.17265741+0.12883962+0.09614211)- 29 -=67万9472円67万9472円×0.61391325=41万7136円オ家屋改造費(ア) 原告の父母の居宅改造費 183万5000円当事者間に争いがない。 (イ) 原告の自宅改造費 15万0205円当事者間に争いがない。 カ不妊治療費 33万5750円証拠(甲28,42〔6頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,原告には,本件事故によって勃起障害及び射精障害が生じ,原告が不妊治療費1回分として,33万5750円を支出したことが認められるところ,上記支出額は,治療回数及び金額に照らして,社会通念上相当といえる範囲内であることから,本件事故と相当因果関係のある損害というべきである。 (7) 逸失利益 8714万0474円原告は,前記のとおり,重篤な後遺障害を負ったところ,その部位・程度に照らせば,本件事故により労働能力を100パーセント喪失したとみる余地がないではない。 しかし,他方,証拠(甲30の1~7,原告)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成14年2月ころから現在に至るまで,障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき認定された特別法人であるD に勤務し,約200ないし300万円の年収を得ていることが認められ,これが よれば,原告は,平成14年2月ころから現在に至るまで,障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき認定された特別法人であるD に勤務し,約200ないし300万円の年収を得ていることが認められ,これが,リハビリや職業訓練(甲6)といった原告の特別な努力とともに,上記特別法人への就職という偶然ともいうべき機会があったために得られたものであり,将来も永続してこのような形で勤務できるのか保証の限りではないが,上記の事情に加え,原告についても転職の機会があったこと(原告〔68~- 30 -71項〕)等の事情を考慮すると,原告は本件事故によって90パーセントの労働能力を喪失したものと認めるのが相当である。 原告は,本件事故当時,健康な17歳の高校生であったが,本件事故がなければ高校卒業後18歳で就職し,67歳まで49年間稼働して収入を得られたと推測しうるから,原告の症状が固定した当時である平成11年度の賃金センサス第1巻第1表により認められる男子労働者の産業計,企業規模計,学歴計,全年齢平均給与額562万3900円を基礎とし,ライプニッツ方式により中間利息を控除すると,原告の逸失利益は,次の計算のとおり,8714万0474円となる。 (計算式)562万3900円×90%×(18.1687-0.9524)=8714万0474円(8) 慰謝料ア入通院慰謝料 300万円本件事案の内容,原告の後遺障害の部位・程度及び入通院の期間等,諸般の事情によれば,原告に生じた入通院慰謝料は,300万円と認めるのが相当である。 イ後遺症慰謝料 2800万円本件事案の内容,原告の後遺障害の部位・程度及び治療経過等,諸般の事情によれば,原告に生じた後遺症慰謝料は,2800 当である。 イ後遺症慰謝料 2800万円本件事案の内容,原告の後遺障害の部位・程度及び治療経過等,諸般の事情によれば,原告に生じた後遺症慰謝料は,2800万円と認めるのが相当である。 (9) 過失相殺上記⑴ないし(8)の損害額は計1億2581万0222円となるところ,原告には,前記のとおり,7割の過失が認められるから,被告が賠償すべき損害額は,3774万3066円となる。 (10) 損失の補- 31 -原告が本件事故後,G センターから,障害見舞金として3370万円の支払を受けたことは原告の自認するところであり,また,原告は,同センターから,災害共済給付金118万3356円の支払を受けたことが認められる(乙1の1~7)。 そして,原告は,前者については,填補分を元金に充当しているので,後者の分を含め元金への充当を認めることについては異議がないものと解されるから,上記受領金合計3488万3356円を原告の上記⑴ないし(9)によって算出された損害金合計から控除すると,控除後の原告の損害は285万9710円となる。 (11) 弁護士費用 50万円原告が本件訴訟の提起及びその追行を弁護士である原告訴訟代理人らに委任したことは弁論の全趣旨上明らかであるところ,本件事案の性質,審理経過,認容額その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると,本件事故による損害としての弁護士費用は,50万円と認めるのが相当である。 4 以上によれば,被告は,原告に対し,安全配慮義務違反(債務不履行)による損害賠償として,335万9710円及びこれに対する平成21年7月24日(訴状送達の日の翌日であることは記録上明らかである。)から支払済みまで民法所定の年5分の割合 配慮義務違反(債務不履行)による損害賠償として,335万9710円及びこれに対する平成21年7月24日(訴状送達の日の翌日であることは記録上明らかである。)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 5 よって,原告の請求は,上記の限度で理由があるので,その範囲で認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官金光健二 - 32 - 裁判官横山真通 裁判官前川 悠 - 33 -(別紙)※添付省略【訴状添付別表1~5】【別紙図面】

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