平成11(行ウ)272 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年7月18日 東京地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文35,514 文字)

主文 1 被告B及び被告Eに対する主位的請求に係る訴えをいずれも却下する。 2 被告D及び被告Gに対する各請求に係る訴えのうち、訴外Iに対する平成10年9月14日以前の給与支給に係る部分をいずれも却下する。 3 被告Dに対するその余の請求を棄却する。 4 八王子市に対し、1)被告社団法人八王子観光協会は金4041万4858円2)被告A、被告B、被告Cは各金1113万1444円3)被告E、被告F、被告Hは各金995万8809円4)被告Gは金272万3966円及び上記各金員に対する平成12年4月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払え。 5 被告A、被告社団法人八王子観光協会、被告B、被告C、被告E、被告F、被告G、被告Hに対するその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用のうち、原告らと被告Dとの間で生じた部分は原告らの負担とし、その余の部分はこれを5分し、その1を原告らの負担とし、その余を被告Dを除く被告ら及び参加人の連帯負担とする。 事実及び理由 第1 請求八王子市に対し、被告Aは金6695万1379円被告社団法人八王子観光協会は金6695万1379円被告Bは金5740万5348円被告Cは金5094万0029円被告Dは金4759万1128円被告Eは金1447万4334円被告Fは金1484万2321円被告Gは金690万8912円被告Hは金1447万4334円及び上記各金員に対する平成12年4月28日から支払済みまで年5分の割合による各金員を連帯して支払え。 第2 事案の概要等本件は、八王子市の住民である原告が、「八王子市が、同市の元職員I(以下「I」という。)に対し、職務命令によって被告社団法人八王子観光協会(以下「被告協会」という。)での事務に従事させ、同 概要等本件は、八王子市の住民である原告が、「八王子市が、同市の元職員I(以下「I」という。)に対し、職務命令によって被告社団法人八王子観光協会(以下「被告協会」という。)での事務に従事させ、同市の事務には従事させていなかったにもかかわらず、平成元年から平成11年までの間給与を支給していたのは違法である。」旨主張して、1)被告協会に対しては、地方自治法242条の2第1項4号後段(以下、地方自治法242条の2第1項4号については、単に「4号」ということとする。)に基づく不当利得返還請求として、2)被告A(同市元市長、以下「被告A」という。)に対しては、4号前段又は後段(選択的併合)に基づく損害賠償請求として、3)被告G(同市総務部職員課長、以下「被告G」という。)及び被告D(同市元収入役、以下「被告D」という。)に対しては、4号前段に基づく損害賠償として、4)被告E(同市元総務部長、以下「被告E」という。)及び被告B(同市助役、以下「被告B」という。)に対しては、主位的に4号前段、予備的に4号後段に基づく損害賠償として、5)被告C(同市元助役、以下「被告C」という。)、被告F(同市経済部長、以下「被告F」という。)及び被告H(同市元経済部商工観光課長、以下「被告H」という。)に対しては、4号後段に基づく損害賠償として、Iに対して支給された上記給与相当額(ただし、被告協会及び被告Aを除く被告らについては、当該被告が上記各役職に在任中に支払われた給与相当額の限度で)の不当利得返還ないし損害賠償を求める事案である。 1 当事者間に争いのない事実以下の事実は、当事者間に争いがない事実である。 1)当事者等ア)原告らは、いずれも八王子市の住民である。 イ)被告協会は、観光事業の振興等を目的とする社団法人である。 ウ)被告協会を除く被告 事実 以下の事実は、当事者間に争いがない事実である。 1)当事者等ア)原告らは、いずれも八王子市の住民である。 イ)被告協会は、観光事業の振興等を目的とする社団法人である。 ウ)被告協会を除く被告ら(以下「被告Aら」ということがある。)は、それぞれ、次のとおりの八王子市の役職に就いていた。 被告A 平成元年9月1日から平成12年1月28日まで八王子市長被告B 平成3年4月1日以降八王子市助役被告C 平成4年4月1日から平成12年2月28日まで八王子市助役被告D 平成4年10月1日から平成12年2月28日まで八王子市収入役被告E 平成9年4月1日から平成11年3月31日まで八王子市総務部長被告F 平成9年4月1日以降八王子市経済部長被告G 平成10年4月1日以降八王子市総務部職員課長被告H 平成9年4月1日から平成11年3月31日まで八王子市経済部商工観光課長エ)そして、被告Aらは、上記役職に在職当時、それぞれ次のような権限を有していた。 被告A 八王子市長として、支出命令につき本来的権限を有するとともに、同市職員の職務遂行が適正に行われるよう指揮監督すべき権限を有していた。 被告B 総務部担当助役として、総務部長や総務部職員課長に対する指揮監督権限を有していた。 被告C 経済部担当助役として、同部に所属する職員に対する指揮監督権限を有していた。 被告D 収入役として職員給与の支出権限を有していた。 被告E 総務部長として、同部職員課長に対する指揮監督権限を有していた。 被告F 経済部長として、同部に所属する職員の勤務関係について指揮監督権限を有していた。 被告G 総務部職員課長として、同市職員の給与支給に関する支出負担行為及び支出命令についての専決権限を有していた。 被告H 経済部商工観光課長として、同課に 係について指揮監督権限を有していた。 被告G 総務部職員課長として、同市職員の給与支給に関する支出負担行為及び支出命令についての専決権限を有していた。 被告H 経済部商工観光課長として、同課に所属する職員の勤務関係に関する指揮監督権限を有していた。 2)Iに対する給与支給ア)Iは、昭和38年6月1日、被告協会職員に採用され、昭和44年7月1日に八王子市の準職員に採用された。その後、昭和56年4月1日には同市の正規職員に採用され、平成11年7月26日に免職されるまでの間、同市経済部商工観光課観光係の職員として勤務していた。 イ)被告協会は、昭和41年10月以降平成11年3月まで、事務局を八王子市役所の経済部商工観光課(以下「商工観光課」という。)執務室内に置いており、被告協会職員と商工観光課職員とが、同じフロアで机を並べて仕事をしていた。そして、商工観光課職員については、毎年度の年度初めに業務分担表が作成され、同表の定めに基づいて各職員の職務内容が定められていたが、その中には、被告協会の事務に属する事柄も含まれていた。Iに関していえば、同人が、もともと被告協会の職員であったという経緯もあって、観光係としての事務のほか、被告協会の一般会計事務その他の被告協会の事務に従事する旨の定めがされていたものである(なお、Iによる被告協会事務への関与の程度については当事者間に争いがあるので、この点については、後に改めて検討する。)。なお、上記のような商工観光課職員の事務分担は、商工観光課長の職務命令によって定められるものであって、その職務の内容に被告協会の事務が含まれている場合でも、職務専念義務の免除等の措置は採られておらず、また、給与については全額八王子市が支給をし、被告協会に給与相当額の負担をさせるなどの措置は講じられていなかった。 ウ)Iは の事務が含まれている場合でも、職務専念義務の免除等の措置は採られておらず、また、給与については全額八王子市が支給をし、被告協会に給与相当額の負担をさせるなどの措置は講じられていなかった。 ウ)Iは、商工観光課観光係に在任中の平成6年から平成11年3月までの間に、被告協会が積み立てていた基金から約1億円を横領していたことが発覚し、平成11年7月26日付けで懲戒免職となった。そして、この事実は、同年7月24日に新聞でも報道されるに至り、その後、商工観光課と被告協会との関係についても問題視するような意見が出されるようになった。 3)監査請求等このような中、原告らは、平成11年9月14日、「八王子市職員であるIに対し、被告協会の事務を担当させておきながら、その給与を全額支給したのは違法、不当である。」旨主張して、その是正を求める監査請求(以下「本件監査請求」という。)を提起したが、監査委員は、同年11月11日、上記監査請求を棄却する旨の裁決をしたため、同年12月9日、本件訴訟を提起するに至った。 2 争点と争点に関する当事者の主張本件の争点は、①原告らによる本件監査請求は、監査請求期間を徒過したものであるかどうか②被告Aらについて本件訴訟の被告適格が認められるかどうか③Iに対する給与支給の適否④Iに対する給与支給が違法であるとした場合、被告らにその責任が認められるかどうか⑤Iに対する給与支給が違法であるとした場合、これによって八王子市に損害が生じているかどうかの5点であり、これらの争点に関する当事者双方の主張は次のとおりである。 1)監査請求期間についてア)原告ら原告らは、平成11年7月24日付けの新聞によってIが被告協会の基金から金員を着服していた事実が報道されたことを契機として、同人が、職務専念義務の免除を受けることもなく 求期間についてア)原告ら原告らは、平成11年7月24日付けの新聞によってIが被告協会の基金から金員を着服していた事実が報道されたことを契機として、同人が、職務専念義務の免除を受けることもなく被告協会の事務に従事していたことを知ったのであり、それ以前に、そのような行為が行われていたことを知ることはできなかったものであるから、監査請求期間を徒過したことについては「正当な理由」がある。そして、原告らは、上記事実を知ってから約1か月半ほど後に本件監査請求を行ったものであるから、本件監査請求は、全体として適法というべきである。 また、怠る事実の相手方に対する代位請求については、監査請求期間の制限はない。 イ)被告ら原告らは、Iに対する給与支給の違法という財務会計行為の違法を追及するために監査請求を行ったのであるから、その監査請求については、地方自治法242条2項所定の監査請求期間の制限が適用されるべきものであるところ、本件監査請求当時、平成11年9月14日以前の給与支給については、監査請求期間(1年)が経過していたことは明らかである。 この点につき、原告らは、監査請求期間を徒過したことについて「正当な理由」が存すると主張しているが、Iに対する給与支給は、毎年予算に計上され、決算で承認されて公然と行われていたものであり、また、Iが被告協会の事務の一部に従事していることも秘匿されていたわけではなかったことからすれば、監査請求期間の徒過について「正当な理由」が存したとはいえず、原告らの主張は失当である。 以上によれば、原告らの本件訴えのうち、平成10年9月14日以前の給与支給に関する部分は、4号前段、後段のいずれに基づくものであるかを問わず、すべて適法な監査請求を経ていないものとして不適法却下されるべきものである。 2)被告適格について 0年9月14日以前の給与支給に関する部分は、4号前段、後段のいずれに基づくものであるかを問わず、すべて適法な監査請求を経ていないものとして不適法却下されるべきものである。 2)被告適格についてア)原告ら(ア) 被告Aについて被告Aは、市長として、Iに対する給与支給につき、支出命令を発する本来的権限を有するほか、部下である経済部長、商工観光課長等を指揮監督し、あるいは直接介入することによってIが職務専念義務の免除を受けることもなく、職務命令によって被告観光協会の事務を担当するという違法状態を是正する義務を負っていた。したがって、前者(支出命令の本来的権限者)との関係では、地方自治法242条の2第1項4号前段所定の「当該職員」として、後者(違法状態の是正義務違反)との関係では、その義務違反によって生じた損賠償請求権の行使を「怠る事実」の相手方(4号後段)として、本件訴訟の被告適格を有するものである。 (イ) 被告Dについて被告Dは、収入役として、Iに対する給与支出権限を有するから、同号前段所定の「当該職員」として、本件訴訟の被告適格を有する。 (ウ) 被告Gについて被告Gは、総務部職員課長として、Iに対する給与支給につき、支出負担行為をし、支出命令を発する専決権限を有するから、4号前段所定の「当該職員」として、本件訴訟の被告適格を有する。 (エ) 被告Bについて被告Bは、総務部担当助役として、職員の給与支給に関する専決権限を有するほか、Iに対する給与支出について支出負担行為及び支出命令についての専決権限を有する職員課長に対する指揮監督権限を有しているのであるから、4号前段所定の「当該職員」として本件訴訟の被告適格を有する。仮にこれらの権限が財務会計行為に関する権限に当たらないとしても、その権限不行使によって生じた損害賠償請 督権限を有しているのであるから、4号前段所定の「当該職員」として本件訴訟の被告適格を有する。仮にこれらの権限が財務会計行為に関する権限に当たらないとしても、その権限不行使によって生じた損害賠償請求権の行使を「怠る事実」の相手方(4号後段)として、本件訴訟の被告適格を有するものである。 (オ) 被告Eについて被告Eは、総務部長として、Iに対する給与支出について支出負担行為及び支出命令についての専決権限を有する職員課長に対する指揮監督権限を有しているのであるから、4号前段所定の「当該職員」として本件訴訟の被告適格を有する。仮にこの権限が財務会計行為に関する権限に当たらないとしても、その権限不行使によって生じた損害賠償請求権の行使を「怠る事実」の相手方(4号後段)として、本件訴訟の被告適格を有するものである。 (カ) 被告Cについて被告Cは、経済部担当助役として、部下である経済部長、商工観光課長等を指揮監督し、あるいは直接介入することによって、同部に所属するIが、職務専念義務の免除を受けることもなく、職務命令によって被告観光協会の事務を担当するという違法状態を是正する義務を負っていた。したがって、この義務違反によって生じた損害賠償請求権の行使を「怠る事実」の相手方(4号後段)として、本件訴訟の被告適格を有する。 (キ) 被告Fについて被告Fは、経済部長として、部下である商工観光課長等を指揮監督し、あるいは直接介入することによって、同部に所属するIが、職務専念義務の免除を受けることもなく、職務命令によって被告観光協会の事務を担当するという違法状態を是正する義務を負っていた。したがって、この義務違反によって生じた損害賠償請求権の行使を「怠る事実」の相手方(4号後段)として、本件訴訟の被告適格を有する。 (ク) 被告Hについて被告H 状態を是正する義務を負っていた。したがって、この義務違反によって生じた損害賠償請求権の行使を「怠る事実」の相手方(4号後段)として、本件訴訟の被告適格を有する。 (ク) 被告Hについて被告Hは、商工観光課長として、部下であるIに対して観光協会の事務に従事することを命ずる違法な職務命令を発令したものであり、これによって生じた損害賠償請求権の行使を「怠る事実」の相手方(4号後段)として、本件訴訟の被告適格を有する。 イ)被告ら(ア) 被告D、被告GについてIに対する給与支給につき、被告Dが支出権限を有し、被告Gが支出負担行為、支出命令についての専決権限を有していることは事実であるが、これら両被告には、Iの勤務実態が適正なものであったかどうかについての審査権限まではなかったものであるから、本件訴訟について、4号前段所定の「当該職員」に当たるとはいえない。 (イ) 被告B、被告Eについて上記両被告は、被告Gによる支出負担行為、支出命令について指揮監督権限を有することは事実であるが、これらの権限は、財務会計行為に該当するものとはいえないから、4号前段に基づく訴えは不適法である。また、住民訴訟が財務会計行為の違法を追及する手段であることを考慮すると、4号後段は、財務会計職員に対する損害賠償請求権等の行使を「怠る事実」がある場合に限って、その代位行使を認めたものと解すべきであるから、財務会計職員ではない被告B、被告Eに対する4号後段請求に係る訴えは不適法というべきである。 (ウ) 被告C、被告F、被告Hについて上記3被告は、いずれも、Iに対する一般的な指揮監督権限を有していたのにとどまり、同人に対する給与支給を巡る財務会計行為についての権限は有していない。したがって、(イ)と同様の理由により、上記被告らに対する4号後段請求に係る訴え る一般的な指揮監督権限を有していたのにとどまり、同人に対する給与支給を巡る財務会計行為についての権限は有していない。したがって、(イ)と同様の理由により、上記被告らに対する4号後段請求に係る訴えは不適法というべきである。 (エ) 原告らは、被告A、被告B及び被告Eに対して、4号前段に基づく請求に加えて4号後段に基づく請求をしているところ、このような両請求を同時にすることは許されず、前者の請求をしている以上、後者の請求は不適法というべきである。 3)給与支給の適否についてア)原告らIは、八王子市職員でありながら、被告協会の事務に従事するよう命じる職務命令を受け、これに基づいて被告協会の事務を行っていたものであるが、市職員は職務専念義務を負い、勤務時間中に市の事務ではない事務に従事することは許されないのであるから、上記職務命令は違法であり、また、市の事務ではない事務に従事していた職員に対して給与を支払うことも違法である。 被告らは、「被告協会は、八王子市と協力して市の観光事業の振興等を図る極めて公益性の高い団体であって、しかも、被告協会が行う事業と八王子市が行う事業は密接不可分の関係にあったのであるから、被告協会の事務は、市の事務と同視し得るものであったというべきであり、したがって、八王子市の職員が被告協会の業務遂行を支援することは、八王子市の事務といえるのであるから、Iに被告協会の事務への関与を命じた職務命令が違法となることはなく、また、Iに対する給与支給が違法とされる理由もない。」という趣旨の主張をしているが、八王子市と被告協会とはあくまでも別個の団体なのであるから、被告協会の事務を八王子市の事務と同視し得るなどという見解は公私混同であり、その前提において失当である。実際問題としても、被告協会においては、八王子市が公的な立場で くまでも別個の団体なのであるから、被告協会の事務を八王子市の事務と同視し得るなどという見解は公私混同であり、その前提において失当である。実際問題としても、被告協会においては、八王子市が公的な立場で関与することはできない収益的事業や宗教的色彩の強い事業等にも関与していたのであって、この点からしても、上記の見解が失当であることは明らかである。 また、被告らは、「Iに対し、職務命令の方法で被告協会の事務を行わせたことに問題があったとしても、職務専念義務を免除した上で被告協会の事務に関与させることは十分に可能であった。」という趣旨の主張もしているけれども、現実に職務専念義務の免除等の措置が採られているわけではない以上、Iに対する職務命令や給与支給が違法であることには変わりがなく、上記主張は失当である。 イ)被告らIが、職務命令に基づいて被告協会の事務を行っていたことは事実であるが、同人の本来の事務はあくまでも商工観光課観光係としての事務であり、被告協会の事務は、その一般会計事務等ごく一部にすぎない。また、Iが、被告協会の一般会計事務等を行ったのは、被告協会に対する「支援事務」という八王子市の事務としてのものであって、そのような事務従事を命じた職務命令は適法であり、また、これに従事したIに給与を支給したのも適法というべきである。 すなわち、被告協会は、昭和32年4月に当時の八王子市長らが発起人になって設立され、平成元年4月1日には、八王子市の観光事業の振興を図り、産業経済の発展と文化の興隆に資し、公共の福祉増進に寄与することを目的とする公益法人として、東京都の認可を受けた団体であり、その事業内容は、観光に関する調査研究及び観光情報の収集、宣伝、観光に関するイベントの開催、観光資源の保護開発の促進、観光施設の改善及び管理運営、観光観念の普及啓 て、東京都の認可を受けた団体であり、その事業内容は、観光に関する調査研究及び観光情報の収集、宣伝、観光に関するイベントの開催、観光資源の保護開発の促進、観光施設の改善及び管理運営、観光観念の普及啓発及び刊行物発行、観光土産品の宣伝及び開発奨励、東京都及び八王子市の観光行政への協力、その他の事業を行うというものであって、極めて公益性の高い団体だといえる。他方、八王子市は、高尾山を中心とした観光資源に恵まれているところから、観光行政に力を入れており、同市の行政の指針となる基本構想「八王子21プラン」、「新八王子21プラン」においても、「市内外に本市のよさを紹介し、観光協会(被告協会)と連携して、観光、レクリエーション都市への発展をめざす」ことを掲げ、被告協会との密接な連携の下に、八王子市における観光事業の振興等を図ってきた。実際にも、被告協会と各種の行事を共同開催し、あるいは、八王子市が開催する行事に被告協会が協力し、逆に、被告協会が開催する行事に八王子市が協力するなど密接な関係を有していたほか、八王子市の観光行政の一翼を担う被告協会に対して補助金を支給するなど協力、支援を行ってきたものである。 以上のとおり、被告協会が行う観光事業は、八王子市の事業と一体とみ得るものであり、また、その一般会計事務も、被告協会の事業遂行を支える事務であって八王子市の事務の一部とも同視し得るものであるところから、八王子市としては、被告協会に対して行う各種支援の一環として、Iに被告協会の一般会計事務等を行わせたのであり、Iの上記事務は、被告協会に対する「支援事務」という八王子市の事務と評価できるものであったから、これらの事務への従事を命じる職務命令は適法であり、また、八王子市の事務に従事させている以上、職務専念義務を免除する必要もなかったものである。 なお う八王子市の事務と評価できるものであったから、これらの事務への従事を命じる職務命令は適法であり、また、八王子市の事務に従事させている以上、職務専念義務を免除する必要もなかったものである。 なお、以上のような事情に照らしてみれば、現在であれば、公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律に基づいてIを被告協会に派遣し、一般会計事務等に従事させた上、同法6条2項に基づいて同人に給与を支給することは十分に可能であったというべきであるし、同法が制定されていなかった本件当時においても、Iの職務専念義務を免除して被告協会の一般会計事務等に従事させた上、同人に対して給与を支給することは十分に可能であったといえる。そうだとすれば、そのような事務に職務命令の方法で従事させることも可能であったというべきであり、職務専念義務の免除等の手続を採らなかったことの一事をもってこれを違法と評価するのは相当ではないものというべきである。 4)被告らの責任の有無についてア)原告ら上記のとおり、Iに対して職務命令に基づいて被告協会の事務に従事させたこと、及び八王子市の事務に従事していなかったIに対して給与を支給したことはいずれも違法というべきところ、次のとおり、被告らにはこれらの違法行為を招いたことについての責任がある。 被告Aは、支出命令について本来的な権限を有する者として、その専決権者である被告Gに対して指揮監督権限を行使し、同被告による違法な支出命令を阻止すべき義務があるのにこれを怠った上、Iが所属する八王子市経済部の職員に対する指揮監督権限を行使して、同人に対し、違法な職務命令が発令されるのを阻止し、あるいは、同人が職務専念義務の免除もされないまま被告協会の事務に従事しているという違法状態を是正すべき義務があったのにこれを怠ったものであり、その 同人に対し、違法な職務命令が発令されるのを阻止し、あるいは、同人が職務専念義務の免除もされないまま被告協会の事務に従事しているという違法状態を是正すべき義務があったのにこれを怠ったものであり、その義務違反には少なくとも過失があることは明らかである。 被告Hは、Iに対する違法な職務命令を発令したものであり、また、被告F及び被告Cは、I及び被告Gの上司として、このような違法な職務命令が発令されないよう監督するとともに、指揮監督権限を行使して、あるいは自ら是正権限を行使して、職務専念義務の免除もされないままIが被告協会の事務に従事するという違法状態を是正すべき義務があったのに、これを怠ったものであり、これらの義務違反には少なくとも過失があったものというべきである。 被告Gは、違法な給与支給について支出負担行為、支出命令を行ったものであり、被告E及び被告Bは、被告Hの上司として、同被告による違法な支出負担行為、支出命令を阻止し、是正すべき義務があったのにこれを怠ったものであり、これらの義務違反はいずれも重大な過失に基づくものというべきである。 被告Dは、違法な給与支給について、何ら是正措置を講じようとしないまま支出行為を行ったものであり、その義務違反は重大な過失に基づくものというべきである。 イ)被告ら原告らの主張は争う。 5)損害についてア)原告ら八王子市が、平成元年度から平成11年度までの間、Iに対して支払った給与(基本給)、調整手当、期末手当、時間外勤務手当、勤勉手当の額及びこれらの合計額は、別紙「支払給与額一覧表」の、該当項目欄に記載のとおりである。 しかしながら、上記のとおり、Iは、職務専念義務の免除を受けることもないまま被告協会の事務に従事していたものであるところ、その内容は、一般会計事務を初め、被告協会の各種事務に及 載のとおりである。 しかしながら、上記のとおり、Iは、職務専念義務の免除を受けることもないまま被告協会の事務に従事していたものであるところ、その内容は、一般会計事務を初め、被告協会の各種事務に及んでおり、勤務時間のうち少なくとも80パーセントに相当する時間は、被告協会の事務に従事していたものである。したがって、Iに対して支払われた上記給与や手当等のうち、80パーセントに相当する部分は、同人が八王子市の事務に従事していないにもかかわらず支払われたものであるから違法というべきであり、八王子市は同額の損害を被り、被告協会は、八王子市の負担において、Iによる事務従事を受けたことにより、不当に同額の利得を得たことになる。そして、これらの損害額及び不当利得の額は、別紙「支払給与額一覧表」中の「損害額」欄に記載のとおりである。 したがって、八王子市に対し、被告協会は、上記損害額の合計6695万1379円を不当利得として返還する義務を負うとともに、その余の被告らは、上記損害額中、1、1)、ウ)欄に記載の各在任期間に対応する部分(その額は、第1の請求額に記載のとおりである。)について損害賠償義務を負うものというべきである。 イ)被告ら別紙「支払給与額一覧表」のうち、平成11年度の給与支払額は、85万6160円である。すなわち、八王子市は、当初平成11年度の給与として、同一覧表記載のとおりの金額を支払ったが、その後Iから27万5000円の返還を受けたので、最終的な支払給与額は、85万6160円となったものである。したがって、Iに対して支給された給与額のうち、本件で問題となり得る平成10年9月14日以降の分は、平成10年9月14日から平成11年3月末日までの分が469万9984円、同年4月1日から同年9月14日までの分が85万6160円の合計5 、本件で問題となり得る平成10年9月14日以降の分は、平成10年9月14日から平成11年3月末日までの分が469万9984円、同年4月1日から同年9月14日までの分が85万6160円の合計555万6144円となる。 そして、既に主張したとおり、Iが従事していた被告協会の事務は八王子市の事務と同視し得るものであったから、これによって損害が生じたことはない。仮に職務命令の方法によって被告協会の事務に従事させることが違法であったとしても、職務専念義務の免除という方法を講じていれば同様の事務に従事させることができたものというべきであるから、やはり、八王子市に損害は生じているものではないというべきである。 また、Iは、一般会計事務のほかには被告協会の事務に従事していたことはなく、しかも、一般会計事務の事務量は、1年に10日程度のものにすぎなかったから、これによって生じた損害は極めて僅かなものにすぎないというべきであるから、上記給与支給額の全額が損害となることはあり得ない。 第3 争点に対する判断 1 監査請求期間(争点①)について1)まず、監査請求期間徒過の主張について判断するに、本件訴訟における原告らの請求は、大別すると、(ア)Iに対する給与の支給が違法であると主張して、この違法な給与支給に基づいて発生した損害の賠償を求める部分(被告D、被告Gに対する各請求、被告B、被告Eに対する各主位的請求、被告Aに対する請求のうち4号前段に基づく請求)と、(イ)違法な職務命令によってIを市の事務以外の事務に従事させ、結果として、市の事務に従事していない職員に対して給与を支給させ、市に損害を与えたことを理由として損害の賠償を求める部分(その余の請求のうち、被告協会に対する請求以外のもの)、(ウ)Iから労務の提供を受けながら、その対価である給与を支払わ 対して給与を支給させ、市に損害を与えたことを理由として損害の賠償を求める部分(その余の請求のうち、被告協会に対する請求以外のもの)、(ウ)Iから労務の提供を受けながら、その対価である給与を支払わず、これを市に負担させたことを理由として不当利得の返還を求める部分(被告協会に対する請求)に分けることができる。そして、甲第1号証によれば、本件監査請求も、(ア)記載の財務会計行為の違法と、(イ)、(ウ)記載の損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権の行使を怠る事実の両者を対象とするものであったと認めることができる。 2)以上のうち、(ア)の請求は、財務会計行為の違法を理由とする損害賠償請求権を対象としているものであって、地方自治法242条2項の監査請求期間の制限が適用されることは明らかであるから、原告らが本件監査請求をした平成11年9月14日の1年前である平成10年9月14日以前にされた給与支給については、既に監査請求期間を徒過していることになる。 この点につき、原告らは、「平成11年7月24日付けの新聞によってIが被告協会の基金から金員を着服していた事実が報道されるまでは、同人が職務専念義務の免除を受けることもないまま被告協会の事務に従事していたことを知ることは不可能であったのであるから、監査請求期間の徒過について『正当な理由』がある。」という趣旨の主張をする。しかしながら、地方自治法242条2項が、住民が財務会計行為の存在やその違法性を知っていたかどうかにかかわらず、一律に「当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは」監査請求をすることができないと定めていることからすれば、単に財務会計行為の存在やその違法性を知ることができなかったというだけで、監査請求を徒過したことにつき「正当な理由」があるということはできず、当該財務会計行 ことができないと定めていることからすれば、単に財務会計行為の存在やその違法性を知ることができなかったというだけで、監査請求を徒過したことにつき「正当な理由」があるということはできず、当該財務会計行為が秘密裡に行われ、監査請求期間が経過した後になって初めてその存在が明らかになった場合など、監査請求期間の制限を及ぼすことが著しく正義に反すると認められるような特段の事情が存在する場合に初めて「正当な理由」があったものと認めるべきものである。この観点から検討すると、本件においては、Iに対する給与支出が秘密裡に行われていたものではないし、その他原告らが監査請求期間を徒過したことについて「正当な理由」が存在したといえるだけの特段の事情が存したことを認めるに足りる証拠はないから、上記主張は失当である。 したがって、原告らの本訴請求(ただし、(ア)の請求に係るもの)に係る訴えのうち、平成10年9月14日以前にされた給与支給に関する部分は、その余の点について判断するまでもなく不適法として却下すべきものである。 3)他方、(イ)、(ウ)は、いずれもそれ自体としては損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権の行使を「怠る事実」を問題とするものであるところ、これらの請求権は、財務会計行為(本件においては給与の支給)が違法であるかどうかに関わりなく成立し得るものであって、監査委員が怠る事実の監査を遂げるために当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはないのであるから、このような「怠る事実」を対象とする監査請求については、監査請求期間の制限は及ばないものと解すべきである(最高裁判所第三小法廷平成14年7月2日判決)。したがって、被告らの主張のうち、これらの「怠る事実」についても監査請求期間の制限が及ぶとする点は失当というべきで の制限は及ばないものと解すべきである(最高裁判所第三小法廷平成14年7月2日判決)。したがって、被告らの主張のうち、これらの「怠る事実」についても監査請求期間の制限が及ぶとする点は失当というべきである。 4)以上によれば、被告D、被告Gに対する各請求、被告B、被告Eに対する各主位的請求、被告Aに対する請求中4号前段に基づく請求のうち、平成10年9月14日以前にされた給与支給に関する部分は、適法な監査請求を経ないものであって、不適法であるから却下すべきであるが(ただし、被告Aに対する請求は、4号前段請求と後段請求とが選択的に併合されているものであるところ、後記のとおり、4号後段請求について判断をするのが相当であるところから、4号前段請求に係る訴えについて主文で却下判決をする必要はない。)、その余の請求部分については監査請求前置の点での問題はないものというべきである。 2 被告適格(争点②)について1)被告Aについて被告Aは、Iに対する給与支給につき、法令上支出命令の権限を有する者であるから(地方自治法232条の4第1項)、地方自治法242条の2第1項4号前段の「当該職員」に該当する。もっとも、八王子市事務決裁規程(乙4)8条、別表第2によれば、職員に対する給与(給料及び職員手当)の支払については、支出負担行為及び支出命令の権限が八王子市総務部職員課長の専決事項とされていることが認められるから、被告Aの責任の有無を判断するに当たっては、同被告が職員課長による権限行使についての指揮監督に遺漏がなかったかどうかという観点から判断をすべきものである。 また、同被告は、本件において、「損害賠償請求権の行使を怠っている」と主張されている事実の相手方でもあるから、4号後段の「怠る事実」の相手方にも当たるものというべきである。被告らは、4号前段の請 また、同被告は、本件において、「損害賠償請求権の行使を怠っている」と主張されている事実の相手方でもあるから、4号後段の「怠る事実」の相手方にも当たるものというべきである。被告らは、4号前段の請求をする場合には、同号後段の請求は不適法である旨主張するが、そのように解する法的根拠は見当たらない(仮に、上記主張が、4号前段の請求と4号後段の請求は訴訟物を同じくするから、二重起訴に当たるという趣旨であるとしても、両請求を選択的に併合することが許されないものとすべき根拠はない。)。 2)被告D及び被告Gについて被告Dは収入役として、Iに対する給与支出につき支出権限を有する者であり、また、被告Gは、職員課長としてIに対する給与支出につき、支出負担行為及び支出命令の専決権限を有する者であるから、いずれも、4号前段の「当該職員」に当たる。被告らは、「同被告らには、Iの勤務実態が適正なものであったかどうかという点についてまでの審査義務はなかったから、『当該職員』に当たらない。」という趣旨の主張をしているが、この点は、本案の問題であって訴えの適法性を左右する事情ではないから、上記主張は失当である。 3)被告B及び被告Eについて被告Bは総務部担当助役として(八王子市助役事務分担規則2条1項、乙1)、被告Eは総務部長として、いずれも部下である職員課長に対して指揮監督権限を有する者であり(八王子市組織条例2条、八王子市組織規則2条、7条、8条、乙2、3)、この指揮監督権限の中には、職員課長による職員の給与支給に関する支出負担行為及び支出命令に対する指揮監督権限も含まれるものと解される。しかしながら、上記各被告は、Iに対する給与支給につき法令上本来的な権限を有する者ではないし、上記各規則や訓令等の事務処理上の定めによって権限の委任を受けた者でも、専決、 も含まれるものと解される。しかしながら、上記各被告は、Iに対する給与支給につき法令上本来的な権限を有する者ではないし、上記各規則や訓令等の事務処理上の定めによって権限の委任を受けた者でも、専決、代決権限を与えられた者でもなく(原告らは、「被告Bは、給与支給について専決権限を有する。」という主張をしているが、この事実を認めるに足りる証拠はない。)、あくまでも、上記のような指揮監督権限を有する者にすぎない。そして、これらの指揮監督権限は、財務会計行為そのものではないのであるから、このような権限を有することを理由に、上記被告らが4号前段の「当該職員」に該当するということはできない。したがって、上記各被告に対する4号前段に基づく訴えは、その余の点について判断するまでもなく、不適法として却下すべきものである。 もっとも、上記各被告は、本訴において、「損害賠償請求権の行使を怠っている」と主張されている事実の相手方でもあるから、4号後段の「怠る事実」の相手方に当たることとなり、4号後段に基づく訴えは適法というべきである。この点につき、被告らは、「4号後段の訴えの相手方となるべき職員は、4号前段の『当該職員』に限られるべきであるから、『当該職員』には当たらない上記被告らに対し、4号後段に基づく訴えを提起することは許されない。」とも主張するが、被告らが主張するような限定解釈をすべき理由はなく、上記主張は失当である。被告らは、住民監査請求や住民訴訟が、財務会計行為の違法を追及する手段であることから、上記のように解すべきであると主張するのであるが、住民監査請求や住民訴訟は、財務会計行為及び財産の管理を怠る事実の違法を追及する手段であるところ、損害賠償請求権の行使を怠ると主張して、当該損害賠償請求権を代位行使することは、まさに財産管理を怠る事実の違法を追 住民訴訟は、財務会計行為及び財産の管理を怠る事実の違法を追及する手段であるところ、損害賠償請求権の行使を怠ると主張して、当該損害賠償請求権を代位行使することは、まさに財産管理を怠る事実の違法を追及する手段であって、このことは、損害賠償請求権の発生原因が何であるかによって異なるものではないのであるから、被告らの上記主張は失当といわざるを得ないのである。 4)被告C、被告F及び被告Hについて上記各被告は、本件において、「損害賠償請求権の行使を怠っている」と主張されている事実の相手方であるから、4号後段の「怠る事実」の相手方に当たる。被告らは、上記各被告は4号前段の「当該職員」に当たらないから、4号後段に基づく訴えは不適法であると主張するが、この主張が失当であることは既に説示したとおりである。 5)以上の次第で、本件訴えのうち、被告B及び被告Eに対する主位的請求に係る訴え(4号前段に基づく訴え)は被告適格を欠き不適法であるが、その余の訴えはいずれも被告適格に問題はないものというべきである。 3 給与支給の適否(争点③)について1)事実関係について当事者間に争いのない事実等(第1、2)に証拠(甲10-14、17-32、34、乙3、乙7の1、2、乙8、9、15-24、丙1の1-4、丙2-5、被告H富男本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。 ア)被告協会は、昭和32年4月、当時の八王子市長らが発起人となり、八王子市の観光事業の振興、産業経済の発展と文化の興隆、公共の福祉増進を目的とする権利能力なき社団として設立された団体である。その後、平成元年4月1日には、「八王子市及び周辺地域と連帯し、当市の観光事業の振興を図り、産業経済の発展と文化の興隆に資し、公共の福祉の増進に寄与することを目的とする」(定款3条)公益法人として東 の後、平成元年4月1日には、「八王子市及び周辺地域と連帯し、当市の観光事業の振興を図り、産業経済の発展と文化の興隆に資し、公共の福祉の増進に寄与することを目的とする」(定款3条)公益法人として東京都の認可を受け、社団法人化された。その会員は、八王子市内の観光業者、商工業者やその団体、観光地等の町会等であり、事業の内容は、次のとおりと定められていた(定款4条)。 (ア) 観光に関する調査研究及び観光情報の収集、宣伝(イ) 観光に関するイベントの開催(ウ) 観光資源の保護開発の促進(エ) 観光施設の改善及び管理運営(オ) 観光観念の普及啓発及び刊行物発行(カ) 観光土産品の宣伝及び開発奨励(キ) 東京都及び八王子市の観光行政への協力(ク) その他本会の目的達成のために必要な事業イ)他方、八王子市は、高尾山を初めとして市内に多数の自然公園その他の観光資源等を有するところから、観光事業やレクリエーション事業の推進を市の重要な施策の一つとして位置付けており、市の行政の指針となる基本構想「八王子21プラン第2次基本計画」(平成6年4月策定)、「新八王子21プラン」(平成11年3月策定)においても、「市内外に本市のよさを紹介し、観光協会(被告協会)と連携して、観光・レクレーション都市への発展をめざす。」と定め、被告協会と連携した観光・レクリエーション事業の推進をうたっていた。そして、八王子市は、毎年被告協会に対して多額の補助金を支出してきたほか、被告協会と観光行事を共催し、あるいは、八王子市が主催する観光行事に被告協会の協力を求め、逆に被告協会が主催する観光行事を八王子市が協力、支援し、更に、八王子市が所有する施設の管理運営を被告協会に委託するなど、被告協会と密接な関係を持ってきた(例えば、平成10年度をみると、八王子市と被告協会が共催した 催する観光行事を八王子市が協力、支援し、更に、八王子市が所有する施設の管理運営を被告協会に委託するなど、被告協会と密接な関係を持ってきた(例えば、平成10年度をみると、八王子市と被告協会が共催した観光行事が2件、八王子市が主催し、被告協会が協力した観光行事が2件、被告協会が主催し、八王子市が支援した行事が7件であり、また、被告協会が八王子市から管理運営を委託された施設は4施設であった。)。もっとも、八王子市内において行われる観光行事の中には、宗教的色彩や収益事業的色彩を有し、地方公共団体が関与するのは相当ではないとみられるものも存し、これらについては専ら被告協会が関与することとされていたことなどから、八王子市が行う事業と被告協会が行う事業とが完全に一致していたわけではない。 ウ)八王子市において、観光事業を担当していたのは商工観光課観光係であり、その分掌事務は、①観光(レクリエーションを含む。以下同じ。)施策の企画及び調整に関すること、②観光の振興及び普及に関すること、③観光施設に関すること、④観光行事に関することであった(八王子市組織規則19条、乙3)。このようなことから、観光係と被告協会とは密接な関係にあり、特に、昭和41年10月に被告協会の事務局が八王子市役所庁舎の商工観光課の執務室内に移転した後は、観光係職員と被告協会事務局職員とが、同じフロアで机を並べて執務をする状態となり、このような状態は平成11年3月に被告協会が同市役所庁舎6階に移転するまで続いていた。そして、観光係の職員の事務分担については、毎年度事務分担表が作成されていたが、この事務分担表には、観光係の職員の事務分担と被告協会職員の事務分担とが1枚の用紙に一体として記載され(例えば、平成7年から平成10年までの事務分担表は、丙1の1-4のとおりである。)、実態として 、この事務分担表には、観光係の職員の事務分担と被告協会職員の事務分担とが1枚の用紙に一体として記載され(例えば、平成7年から平成10年までの事務分担表は、丙1の1-4のとおりである。)、実態としても、観光係の事務と被告協会事務局の事務とが明確に区分されないまま、一体となって行われていることも少なくなかった。また、被告協会事務局の常勤職員の陣容は、専務理事、事務局長、事務局次長各1名に一般職員1、2名というものであり、日頃の職務遂行については、相当程度観光係の職員に依存していたこともうかがわれる。 エ)Iは、昭和38年6月1日付けで被告協会職員に採用され、その後、昭和44年7月1日には八王子市の準職員に、昭和56年4月1日には八王子市の正規職員に採用された。そして、Iは、上記のとおり、被告協会職員として八王子市内の観光行事に関連する業務に従事していた経歴を有するところから、八王子市の職員となった後も一貫して商工観光課観光係に配置されて観光行事に関連する事務に従事し、次第に最古参の職員として、観光課の職員はもとより被告協会事務局の職員からも頼りにされる存在となっていった。Iが担当してきた事務を具体的にみると、被告協会の一般会計事務(これが、事務分担表上Iの事務として明記されるようになったのは平成7年からであるが、それ以前から、Iの担当事務とされてきたものである。)のほか、八王子市内の各種観光行事等に関与するものとされていた。例えば、平成10年度事務分担表によれば、Iは、「出張等庶務関係、施設整備費、観光協会関係事務、観光協会一般会計事務、八王子千人同心顕彰会、松姫報徳会、北条五代祭り(小田原市)名物市、市民旅行本隊(南九州)、野鳥の声と山野草に親しむ会、カジカガエルの声を聞く会、八王子まつり花火大会・パレード、自然歩道歩こう大会、高尾山も 同心顕彰会、松姫報徳会、北条五代祭り(小田原市)名物市、市民旅行本隊(南九州)、野鳥の声と山野草に親しむ会、カジカガエルの声を聞く会、八王子まつり花火大会・パレード、自然歩道歩こう大会、高尾山もみじまつり、お月見とカンタンの声を聞く会、民謡フェスティバル、夕焼けの里マラソン大会、高尾陣馬特別警戒・迎光祭、節分会、ハイキングコース調査」を担当するものとされていたが、これらのうち、事務分担表上、被告協会が関係しない八王子市の固有事務と認められるのは、「出張等庶務関係、施設整備費、八王子千人同心顕彰会、松姫報徳会、ハイキングコース調査」のみであり、「観光協会関係事務、観光協会一般会計事務」は、被告協会固有の事務と認めるべきもの、その余の事務は、八王子市の事務と被告協会の事務とが混在したものであったと認められる。そして、I自身は、自らの職務内容を「私はずっと被告協会の一般会計事務を担当しており、もちろん観光係の日常的な仕事もやってはいましたが、むしろ私の仕事の中心は観光協会の一般会計事務でした。」と認識しており(甲21中の、Iの検察官に対する平成11年12月3日付け供述調書)、他の職員の認識も、「Iは、『私は昔から観光協会の仕事をしていればいいと言われているんです。』と言っていました。・・・(中略)・・・観光協会に関することについては、細かいことはIに任せていたというのが実情であり、それで仕事もスムーズに行っていました。」(被告Hの司法警察員に対する平成11年10月22日付け供述調書、甲11)、「Iさんは市の職員でありながら観光協会の仕事にかなり関わっているなという印象を受けました。・・・(中略)・・・当時の仕事内容を見ても、対観光協会の総論的なことは観光係長、対観光協会との細かい調整はI、観光協会と外部との細かい連絡調整はIというような状 わっているなという印象を受けました。・・・(中略)・・・当時の仕事内容を見ても、対観光協会の総論的なことは観光係長、対観光協会との細かい調整はI、観光協会と外部との細かい連絡調整はIというような状況で、細かいことはIに聞かなければ分からないという状況でした。・・・(中略)・・・(被告協会の)事務局長は勿論、事務局員もいろいろな面でIを頼りにしておりましたし、Iも観光協会のことに関しては、細かいことを事務局長とちょくちょく打ち合わせしていたことは私も見て知っております。」(元観光係長であったJの司法警察員に対する平成11年10月25日付け供述調書、甲13)などといったものであり、Iが被告協会の事務にも深く関与していたことが認められる。 オ)上記ウ)、エ)に記載したような観光係と被告協会との関係や、Iの被告協会の事務への関わり方については、以前から八王子市内部においても問題視されており、遅くとも平成8年ころからは、被告協会を自立させ、観光係と観光協会との役割分担を明確化させる必要があるとの議論がされるようになり、その中では、観光係職員に被告協会の事務を担当させること自体を改め、必要があれば、八王子市の職員を職務専念義務を免除した上で被告協会に派遣することも検討されていた(このことを知ったIが、自らを派遣して欲しいという趣旨の申出をしてきたこともあった。)。その結果、平成11年3月には、被告協会事務局が八王子市役所庁舎の商工観光課執務室(庁舎3階)から庁舎の6階に移転し、また、Iの横領問題が発覚した後である平成12年4月からは、観光係職員が職務専念義務の免除及び兼業許可を受けて被告協会に派遣されるという体制が採られるようになった。ちなみに、同月被告協会に派遣されたのは、Kであり、その職務内容は、「夕やけ小やけ文化農園振興事業」であって、被告 務の免除及び兼業許可を受けて被告協会に派遣されるという体制が採られるようになった。ちなみに、同月被告協会に派遣されたのは、Kであり、その職務内容は、「夕やけ小やけ文化農園振興事業」であって、被告協会の一般会計事務は職務内容には含まれていない。 2)判断ア)Iに対し被告協会の事務への従事を命じたことの適否以上のとおり、Iは、一般会計事務を含む被告協会の事務に関与していたものであるところ、同人に対しては、職務専念義務の免除はされておらず、職務命令によって、被告協会の事務に関与していたものであるから、このように職務命令によって被告協会の事務に関与させたことが適法であったかどうかが問題となる。 この点に関し、被告らは、「被告協会は八王子市内における観光事業の発展等八王子市の重要な施策を実現することを目的とした公益法人であり、実際にも八王子市と密接に連携して事業の遂行に当たっていたのであるから、被告協会の事務は八王子市の事務と同視し得るものである。」という趣旨の主張をする。しかしながら、地方自治体の職員は職務専念義務を負い、この職務専念義務とは、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事すべきことを意味するものであるところ(地方公務員法35条)、被告協会は、公益法人であり、八王子市と連携して観光事業の振興等を図る役割を果たしていたとはいえ、あくまでも八王子市とは別個の団体なのであるから、上記のような事情から直ちに被告協会の事務を八王子市の事務と同一視し、被告協会の事務に従事したことをもって市の事務に従事したものと評価するのは相当ではないといわざるを得ない。むしろ、上記の点を考慮すれば、職務命令によって従事させることが適法と認められるのは、当該事務が、被告協会に対する監督事務や、被告協会との交渉事務に市側担当者として関与するもので いわざるを得ない。むしろ、上記の点を考慮すれば、職務命令によって従事させることが適法と認められるのは、当該事務が、被告協会に対する監督事務や、被告協会との交渉事務に市側担当者として関与するものであるなど、それ自体としても市の事務と評価できるものである場合のほかは、当該事務の性質や内容等に照らし、被告協会の事務であるにもかかわらず八王子市の事務と同一視することができるような特段の事情が認められ、かつ、その事務従事について八王子市の指揮監督が及んでいると認められる場合などの例外的な場合に限られるものと解するのが相当である。また、八王子市の職員を職務命令によって他の団体の事務に従事させることが許されるかどうかは、慎重な検討を要する事項であることはいうまでもないところであるから、そのような職務命令を発令するに当たっては、市の事務と当該他の団体との事務分担のあり方や、当該職員に従事させるべき事務が、市の事務と同一視できるようなものであるかどうか、当該職員に対する指揮監督権行使のあり方等の諸般の事情を慎重に検討した上で、その適否を判断すべきであることもいうまでもないところである。 このような観点から考えた場合、Iが従事した事務のうち、被告協会の一般会計事務は被告協会の固有事務にほかならず、しかも、同人は、この事務を行うに当たり市の上司から指揮監督を受けた形跡はなく、専ら被告協会の職員と同様の立場で行っていたもので、八王子市の被告協会に対する監督や交渉の一環としてされていたとも認められず、これを八王子市の事務であると評価することは到底許されないものといわざるを得ないから、上記事務への従事を命ずる職務命令は違法というべきである(これを、被告協会に対する「支援事務」と言い換えたからといって、事の本質が異なるものではない。)。また、上記のとおり、Iは、 ざるを得ないから、上記事務への従事を命ずる職務命令は違法というべきである(これを、被告協会に対する「支援事務」と言い換えたからといって、事の本質が異なるものではない。)。また、上記のとおり、Iは、このほかにも被告協会の各種事務に相当程度関与していたことが認められ、これらの事務従事についても、職務命令の範囲に含まれていたものと評価できるところ、上記1)において認定した諸事実に照らしてみれば、これらの事務従事について、その事務の性質や内容等に照らし、八王子市の事務と同一視できるかどうかなどの点を慎重に検討した結果、職務命令が発令されたものではなく、観光係と被告協会との事務分担が明確に整理されていない状況の下において、Iが従前から被告協会関連の事務にも従事してきており、最古参の職員として、これらの事務に関する知識や経験が豊富であり、被告協会職員からも頼りにされていたところから、漫然と被告協会の事務に関与させてきたものといわざるを得ない(ちなみに、被告Hは、その本人尋問において、「Iに対し、職務専念義務の免除という形を採ることはできなかったのか。」という問いに対し、「Iが被告協会の一般会計事務にどの程度携わっていたのかが明確には分からなかった上、観光係の業務と被告協会の業務との棲み分けが明確にはできていない状況の下では、職務専念義務免除という形を採ることはできなかった。」という趣旨の回答をしているが、この供述は、当時の八王子市担当者の安易な対応振りを端的に示すものといわざるを得ない。)のであるから、これらの事務に従事すべきことを命ずる職務命令も違法というべきである。 この点に関し、被告らは、「職務専念義務の免除という形式を採れば、Iにこれらの事務に従事させることは可能であったというべきであるから、職務命令によってこれらの事務に従事させたこと いうべきである。 この点に関し、被告らは、「職務専念義務の免除という形式を採れば、Iにこれらの事務に従事させることは可能であったというべきであるから、職務命令によってこれらの事務に従事させたことを違法視するのは相当ではない。」という趣旨の主張もしているが、職務命令の適法性を判断するに当たり、他の法形式を採用すれば同様の目的を達成することができたかどうかを考慮することは相当ではないというべきであるから、上記主張は、それ自体失当である。また、本件当時、「公益法人等への一般職の地方公務員の派遣業務に関する法律」は未だ制定されておらず、いかなる場合に市の職員につき職務専念義務を免除した上で他の団体等への派遣をし得るかについて法律の定めはなく、地方公務員法24条、30条、35条等の趣旨からすると、市の職員の職務専念義務を免除した上で、他の団体に派遣するという形式を採用しさえすれば、無制限に他の団体における事務従事が適法とされるものではなく、派遣の目的、当該他の団体の性格及び具体的な事業内容並びに当該職員が従事する職務の内容のほか、派遣期間、派遣人数等諸般の事情を総合考慮した上、派遣のため当該職員を市の事務に従事させないことが職務専念義務を定める地方公務員法の規定の趣旨に反しないかどうかを慎重に判断すべきものであり、更に、当該職員に対して給与を支給する場合には、当該職員が市の事務に従事していないにもかかわらず給与を支給することが許されるかどうかについても慎重な判断が要求されるものであるところ(最高裁判所第一小法廷平成10年4月22日判決、裁判集民事188号275頁)、このような検討がされたものとはいえないことは上記のとおりである以上、職務専念義務の免除という形式を採っていればIによる事務従事が適法と評価されたということもできない。また、上記最高 8号275頁)、このような検討がされたものとはいえないことは上記のとおりである以上、職務専念義務の免除という形式を採っていればIによる事務従事が適法と評価されたということもできない。また、上記最高裁判決は、派遣の目的が一定の行政目的の達成にあることに加え、その目的達成と派遣との具体的な関連性を要するとして、派遣先団体での実際の業務内容と行政目的との関連性などの諸点から、行政目的達成のために派遣をすることに公益上の必要が認められることが必要であるとしており、このような判断基準からすると、被告協会の具体的事務はさておき、Iの主たる事務が被告協会の一般会計事務にあり、行政目的の達成に直接関連するものでないのであるから、職務専念義務の免除が適法に行えたか否かについては大いに疑問があるといわざるを得ない。したがって、被告らの主張はいずれにせよ失当である。 以上の次第で、Iに被告協会の事務への従事を命じたことは違法であるといわざるを得ない。 イ)給与支給の適否Iに対する職務命令のうち、被告協会の事務への従事を命じた部分は違法であるといわざるを得ないのであるが、Iとしては、違法とはいえ、職務命令に従って被告協会の事務に従事したものである以上、職務従事の対価である給与の支給を受けることができるのが原則であるというべきである(当該職務命令に重大かつ明白な瑕疵があり、誰がみても違法といえるような場合には、職員としては、職務命令を受けたとしてもそれに従うべきではなく、仮にそれに従って職務に従事したとしても、給与の支払を受けられないという場合も考えられないではないが、そのようなケースは例外的な場合に限られるものであり、本件が、そのような例外的な場合に当たると断定することは困難である。)。したがって、給与の支給事務を担当する職員としても、Iが職務命令に従 いが、そのようなケースは例外的な場合に限られるものであり、本件が、そのような例外的な場合に当たると断定することは困難である。)。したがって、給与の支給事務を担当する職員としても、Iが職務命令に従い、現にその職務に従事した以上、その対価としての給与の支給を拒むことはできないのが原則であるというべきであるから、Iが違法な職務命令に従って職務に従事していたということから直ちに同人に対する給与の支給も違法であったと断定することはできないものというべきである。 しかしながら、給与の支給事務を担当する職員のうち、支出権者である収入役については、支出の前提となる支出負担行為が法令等に違反していないことを確認すべき義務があり(地方自治法232条の4第2項)、また、支出負担行為及び支出命令権者としては、その事務を誠実に執行すべき義務がある上に、八王子市支出負担行為手続規則上、支出負担行為をするに当たっては、当該支出が法令等に違反しないかどうかを検討すべき義務があるものとされている(同規則3条1号、乙6)のであるから、職員が違法な職務命令によって本来従事すべきではない事務に従事している実態があるにもかかわらず、その是正を求めることもないまま漫然と放置し、その結果、本来であれば支給すべきではない給与の支給をしたものと評価されるような場合には、当該給与支給が違法とされることもあり得るものというべきである(被告らは、給与の支給事務を担当する職員が、上記のような義務を負うことはないという趣旨の主張をするが、上記のとおり、この主張を採用することはできない。)。そこで、このような観点からIに対する給与支給が違法であったといえるかどうかはなお問題となり得ることとなるが、この点については、被告らの責任の有無に関する判断において併せて検討することとする。 4 被告らの責 のような観点からIに対する給与支給が違法であったといえるかどうかはなお問題となり得ることとなるが、この点については、被告らの責任の有無に関する判断において併せて検討することとする。 4 被告らの責任の有無(争点④)について1)被告Hについて被告Hは、商工観光課長として、Iに対する違法な職務命令を発令したものであるところ、3において認定判断した点に照らしてみれば、Iを被告協会の事務に従事させることは、職務専念義務に違反するものであって、違法であると判断すべき立場にあったにもかかわらず、従前からのIの取扱いを漫然と踏襲し、違法な職務命令を継続して発令し続けたものであって、この点には少なくとも過失があったものといわざるを得ない。したがって、被告Hは、これによって生じた損害を賠償すべき義務を負うものというべきである。 2)被告C及び被告Fについて被告Cは経済部担当助役として、被告Fは経済部長として、いずれも商工観光課長である被告H、Iを含む部下の職務遂行について指揮監督義務を負うものであるところ、①Iは、長年にわたって被告協会の事務に従事してきたものであって、この事実は、経済部内においても広く知られた事実であったと推認され、経済部担当助役である被告Cや経済部長である被告Fとしても、この事実を認識し、あるいは認識し得る状況にあったと認められること、②既に認定したとおり、被告協会は、昭和41年から平成11年までの間、八王子市役所庁舎の商工観光課執務室内に事務局を置き、観光係と席を並べて執務するという公私混同と受け取られかねない執務状況にあり、また、被告協会の自立や観光係と被告協会の事務の関係を整理し、両者の事務分担を明確化することは長年の懸案事項であって、遅くとも平成8年ころには、その具体的検討作業が開始されていたものであり、上記両被告(被 被告協会の自立や観光係と被告協会の事務の関係を整理し、両者の事務分担を明確化することは長年の懸案事項であって、遅くとも平成8年ころには、その具体的検討作業が開始されていたものであり、上記両被告(被告Cは平成4年4月1日、被告Fは平成9年4月1日着任)もこれを認識していたものと推認されることなどの事情に照らしてみれば、上記両被告としては、Iが、市職員でありながら十分な検討も経ないまま漫然と被告協会の事務に従事すべきものとされていたことを現実に認識していたか、あるいは認識すべきものであったというべきであり、そうであるとすれば、必要があればIの勤務実態について更に調査を尽くした上で、違法な勤務実態を是正すべく、Iの上司である被告Hに対して指揮監督権を行使すべき義務があったものというべきである。そして、上記両被告がこの義務を怠った点には少なくとも過失があったものといわざるを得ないから、上記両被告も、このような義務を怠ったことによって生じた損害(被告Aについて後記3)で判断するとおり、上記義務違反は平成8年末までに生じていたものと認められるから、被告Cについては平成9年1月分以降の給与支給を損害認定の対象とすることとする。)を賠償すべき義務を負うものというべきである。 3)被告Aについて被告Aは、八王子市の長として、部下の職務遂行について指揮監督義務を負うものであり、その中には被告Hによる職務遂行についての指揮監督義務も含まれるものである。もっとも、八王子市長としての被告Aの職責は、広汎な範囲に及んでおり、個々の職員の職務遂行状況をすべて熟知し、違法、不当な職務遂行に対して指揮監督権限を行使すべきものとすることはできないのであるから、被告HがIに対して違法な職務命令を発令していたからといって、直ちに被告Aにおいて、この違法な職務命令を是正す 、不当な職務遂行に対して指揮監督権限を行使すべきものとすることはできないのであるから、被告HがIに対して違法な職務命令を発令していたからといって、直ちに被告Aにおいて、この違法な職務命令を是正するために指揮監督権限を行使すべきであったということはできない。 しかしながら、被告らが主張するとおり、観光行政は、八王子市の重要な施策の一つであり、しかも、その施策の遂行に当たって被告協会との連携が重要な手法の一つであったとすれば、八王子市(具体的には、その一部局である観光係)と被告協会とがどのように業務を分担し、遂行していくのかという点は、八王子市の基本方針に関わる事柄として、長である被告Aも関心を抱いて然るべきものである。そして、上記のとおり、被告協会は、昭和41年から平成11年までの間、八王子市役所庁舎の商工観光課執務室内に事務局を置き、観光係と席を並べて執務するという公私混同と受け取られかねない執務状況にあり、このことは、被告Aとしても十分に認識し得たはずなのであるから、このような状態をそのまま放置しておいてよいかどうかについては、長である被告Aとしても、関心を抱くべきものであったといえることや、被告協会の自立や観光係と被告協会の事務の関係を整理し、両者の事務分担を明確化することは長年の懸案事項であり、遅くとも平成8年ころからは、そのための具体的検討作業が始まっており、被告Aもこれを認識していたものと推認されることなどの事情に照らしてみれば、被告Aとしては、遅くとも平成8年ころには、観光係と被告協会との関係に不明朗で改善すべき点があることを認識し、又は認識すべきであったものであり、そうであるとすれば、そのような認識に基づき、必要があれば、観光係と被告協会との関係や、両者の職員の執務状況等についての調査、検討を命じ、その実態を把握する 識し、又は認識すべきであったものであり、そうであるとすれば、そのような認識に基づき、必要があれば、観光係と被告協会との関係や、両者の職員の執務状況等についての調査、検討を命じ、その実態を把握するとともに、観光係職員に違法な勤務状況がある場合には、その是正を指示すべき義務があったものというべきである。そうすると、被告Aがこのような義務に違反した点については、少なくとも過失があったものといわざるを得ず、同被告は、このような義務に違反したことによって生じた損害(上記のとおり、被告Aの義務違反を認定する上では、平成8年ころに開始された検討作業の存在が有力な手がかりの一つとなるところ、それが開始された具体的日時や、被告Aがこれを認識し又は認識し得た具体的時期を確定するに足りる証拠は存しないので、平成8年末までには義務違反が生じたものと認め、平成9年1月分以降の給与を損害認定の対象とすることとする。)を賠償すべき義務を負うものというべきである。なお、被告Aについては、違法な給与支給を防止、是正するための指揮監督権限を怠った点の違法についても主張されているが、上記のとおり被告Aの責任を認めることができる以上、この点についての判断をする必要はない。 4)被告Gについて被告Gは、職員課長として、Iに対する給与支給に関し、支出負担行為及び支出命令の専決権限を有していたものであるから、3、2)、イ)で指摘したとおり、Iの違法な勤務状況を是正するための努力もしないまま、漫然と給与を支給したという違法があったかどうか、そして、この点について故意又は重大な過失(地方自治法243条の2第1項)があったかどうかが問題となる。 ところで、八王子市組織規則(乙3)12条によれば、八王子市総務部職員課は、職員の給与等の支給に関する事務のほか、職員の任免、分限、懲戒そ 自治法243条の2第1項)があったかどうかが問題となる。 ところで、八王子市組織規則(乙3)12条によれば、八王子市総務部職員課は、職員の給与等の支給に関する事務のほか、職員の任免、分限、懲戒その他服務に関する事務や、職員の人事に関する事務等を所管としていることが認められ、いわば八王子市の職員に対する包括的な人事管理権を有しているものである。そして、そのような部署の長である職員課長に、職員の給与支給に関する支出負担行為及び支出命令の専決権限が与えられているのは、職員課長において、他の部局からの職員の勤務状況に関する報告等をそのまま鵜呑みにするのではなく、勤務状況の実態について関心を抱き、疑問がある場合には、調査等をした上、違法な勤務状況の是正を求め、違法、不当な勤務に対して給与が支給されることを防止する役割を果たすことも期待されているからであると解される。このような観点から考えた場合、Iは、八王子市の職員でありながら、長年にわたって被告協会の事務にも従事してきたものであり、職員の人事管理について責任を有する職員課長としても、このような実態を認識し、あるいは認識すべきものであったといえること、観光係と被告協会とが同一の執務室で席を並べて執務をするという公私混同とも受け取られかねない執務状況も、職員課長として十分に認識し得るものであったといえること、遅くとも平成8年ころから始められた被告協会の自立や観光係と被告協会の業務のあり方に関する検討は、観光係職員の勤務状況にも関連を有する事柄であって、職員課もこれに一定の関与をし、あるいは情報提供を受けていたものと推認できることなどの事情に照らしてみれば、職員課長である被告G(平成10年着任)としても、Iの違法な勤務状況を認識し、あるいは認識し得たものというべきである。そうすると、同被告として ていたものと推認できることなどの事情に照らしてみれば、職員課長である被告G(平成10年着任)としても、Iの違法な勤務状況を認識し、あるいは認識し得たものというべきである。そうすると、同被告としては、必要であれば更に調査を遂げた上で、商工観光部の関係者に対し、違法な勤務状況を改善するよう勧告するなどしてその是正を図る義務があったものであり、そのような義務を尽くさないまま、漫然と給与の支給に関する支出負担行為及び支出命令を行ったことは違法であり、また、このことについては重大な過失があったものといわざるを得ない。したがって、被告Gは、これによって生じた損害を賠償すべき義務を負うものというべきである。 5)被告B及び被告Eについて被告Bは総務部担当助役として、被告Eは総務部長として、それぞれ被告Gの職務遂行について指揮監督権限を有していたものであるが、Iが長年にわたって被告協会の事務にも従事してきたことや、観光係と被告協会の執務状況やその改善のための検討作業状況を知り、あるいは知り得たものといえることは被告Gの場合と同様である。そうであるとすれば、上記各被告(被告Bは平成3年4月1日、被告Eは平成9年4月1日着任)としても、遅くとも平成8年ころまでにはIの違法な勤務状況を認識し、あるいは認識し得たものであり、部下である職員課長に対し、必要であれば更に調査、検討をした上で、違法な勤務状況を是正すべく指揮監督権限を行使すべきであったものというべきであるから、これを怠り、漫然と給与の支給に関する支出負担行為や支出命令がされるのを放置したことは違法であり、また、このことについては重大な過失があったものといわざるを得ない。したがって、上記両被告も、これによって生じた損害(被告Aについて3)で認定したのと同様の理由により、被告Bについては、平成9年1 また、このことについては重大な過失があったものといわざるを得ない。したがって、上記両被告も、これによって生じた損害(被告Aについて3)で認定したのと同様の理由により、被告Bについては、平成9年1月分以降の給与支給を損害認定の対象とすることとする。)を賠償すべき義務を負うものというべきである。 6)被告Dについて被告Dは、Iに対する給与支給について支出権限を有していたものであるから、被告Gと同様の観点から、その権限行使に違法があり、そのことについて重大な過失があったかどうかが問題となる。 しかしながら、同被告が支出行為を行う前には職員課長による支出負担行為及び支出命令が行われており、その段階において、給与支給の適否について職員課長による一応の検討がされているはずなのであるから、その結果を信頼したとしてもやむを得ない側面が存することに加え、収入役であって人事管理に関する権限等を有するわけではない同被告が、Iの勤務状況や、被告協会の執務状況の改善等に関する検討作業の状況をどの程度知り得たのかには疑問の余地が存することなどの事情に照らしてみると、同被告において、Iの違法な勤務状況を知り、あるいは知り得たものであって、その是正を図るための努力を尽くさないまま給与の支給を行ったことが違法であったとか、この点について重大な過失があったと断定することは困難であるといわざるを得ない。したがって、同被告が、本件に関し、損害賠償義務を負うことはないものというべきである。 7)被告協会について便宜上、被告協会が不当利得返還義務を負うかどうかについても、ここで検討しておくと、被告協会は、Iから労務の提供を受けていたのであるから、本来であればこの労務提供の対価である給与を支給する義務を負うはずであるところ、八王子市から給与の支給が行われた結果、給与支払義 討しておくと、被告協会は、Iから労務の提供を受けていたのであるから、本来であればこの労務提供の対価である給与を支給する義務を負うはずであるところ、八王子市から給与の支給が行われた結果、給与支払義務を免れたものであるから、八王子市の損失において給与相当額の利得を得たものというべきである。したがって、被告協会は、八王子市に対し、Iから労務の提供を受けた対価に相当する額について不当利得返還義務を負うものというべきである。 8)まとめ以上の検討の結果、及び1の監査請求期間の検討の結果を併せると、ア)被告協会は、原告らが請求する平成元年度以降の全期間イ)被告A、被告B、被告Cは、平成9年1月以降の期間ウ)被告E、被告F、被告Hは、平成9年4月以降の期間エ)被告Gは、平成10年9月15日以降の期間にIに対して支払われた給与のうち、市の損害と認められる部分について損害賠償ないし不当利得返還義務を負うことになる。 5 損害額(争点⑤)について1)Iに対して支払われた給与の額について証拠(甲15)及び弁論の全趣旨によれば、平成6年度から平成10年度までの間に、八王子市がIに対して支払った給与額(ただし、基本給、調整手当、期末手当、時間外勤務手当、勤勉手当の合計額)は、別紙「支払給与額一覧表」に記載のとおりであること、平成11年度分、すなわち、平成11年4月以降の給与については、当初110万3960円が支払われたが、その後Iが27万5000円を返還したため、これを控除した残額である82万8960円が実質的な給与支給額となることが認められる。また、平成元年度から平成5年度までに支給された給与(ただし、平成元年度については、原告らが請求している4か月分)については、各年度におけるIの基本給の額しか判明していないところ(甲15)、調整手当、期末手 元年度から平成5年度までに支給された給与(ただし、平成元年度については、原告らが請求している4か月分)については、各年度におけるIの基本給の額しか判明していないところ(甲15)、調整手当、期末手当、勤勉手当については、これらの期間においても、平成6年度以降と同様の割合によって支給されていたものと推認されるものの(ただし、期末手当、勤勉手当については、別紙「支払給与認定額一覧表」に記載のとおり、平成6年度以降の支給率が各年度によって若干異なっているため、最も低い年度の支給率によってその額を算定するのが相当である。)、時間外勤務手当については、実際に時間外勤務を行って初めてその支給が認められるものであるところ、Iが実際にどの程度の時間外勤務を行ったのかが明らかではない以上、その額を確定することは困難であるというほかはない(額が判明している平成6年度以降においても、時間外勤務手当の額は毎年変動しており、一定額の支給がされたものと推認することは困難である。)。そこで、時間外勤務手当の額は零とし、調整手当は、基本給の10パーセント相当額であると認め、期末手当、勤勉手当については、具体的な支給額が明らかになっている平成6年度以降の支払実績に基づき、最も低い支給率を適用して算出することとした結果は、別紙「支払給与認定額一覧表」のとおりとなる。 2)損害額の認定まず、証拠(甲17)によれば、Iは、平成11年3月30日に交通事故によって入院し、その後横領の事実を告白したこともあって、職場に復帰しないまま同年7月26日付けで懲戒免職処分を受けたものであって、同年4月1日以降は現実には職務に従事していなかったことが認められ、したがって、被告協会の事務にも従事することはなかったものであるから、この間については、被告協会の職務に従事しながら八王子市から給与 年4月1日以降は現実には職務に従事していなかったことが認められ、したがって、被告協会の事務にも従事することはなかったものであるから、この間については、被告協会の職務に従事しながら八王子市から給与を受けるという問題は生ずる余地はなかったものである。そうすると、同年4月1日以降に支払われた給与については、損害賠償の対象とはなり得ないものというべきである。 また、Iは、同年3月31日以前の期間内においても、専ら被告協会の事務に従事していたわけではなく、観光係の職務にも従事していたのであって、この職務従事に対する給与の支給は適法なのであるから、本件において損害と認められるのは、Iに対して支給された給与のうち、被告協会の業務に従事した分の対価と認められる部分に限られることになる。 そこで、この点について検討すると、既に認定したとおり、平成10年度におけるIの分担事務は、「出張等庶務関係、施設整備費、観光協会関係事務、観光協会一般会計事務、八王子千人同心顕彰会、松姫報徳会、北条五代祭り(小田原市)名物市、市民旅行本隊(南九州)、野鳥の声と山野草に親しむ会、カジカガエルの声を聞く会、八王子まつり花火大会・パレード、自然歩道歩こう大会、高尾山もみじまつり、お月見とカンタンの声を聞く会、民謡フェスティバル、夕焼けの里マラソン大会、高尾陣馬特別警戒・迎光祭、節分会、ハイキングコース調査」であるところ、これらのうち、八王子市の固有事務と認められるのは、「出張等庶務関係、施設整備費、八王子千人同心顕彰会、松姫報徳会、ハイキングコース調査」のみであり、「観光協会関係事務、観光協会一般会計事務」は、被告協会固有の事務と認めるべきもの、その余の事務は、八王子市の事務と被告協会の事務とが混在したものというべきものである。そして、八王子市の事務である「出張等庶務関 係事務、観光協会一般会計事務」は、被告協会固有の事務と認めるべきもの、その余の事務は、八王子市の事務と被告協会の事務とが混在したものというべきものである。そして、八王子市の事務である「出張等庶務関係、施設整備費、八王子千人同心顕彰会、松姫報徳会、ハイキングコース調査」と、被告協会の事務である「観光協会関係事務、観光協会一般会計事務」とを比べれば、後者の方が負担が重いものと推認され(観光協会一般会計事務が、最も負担の重い事務であると認められる。)、また、その余の事務は、八王子市の事務と被告協会の事務とが混在したものであって、特段の事情が認められない限り、双方に2分の1ずつ寄与するものであったと推認することができるから、これらを全体的に評価すると、Iが従事した事務のうち、被告協会の事務と評価すべきものは、その2分の1を下回ることはないものというべきである。この点につき、被告らは、「Iが従事した事務のうち、被告協会の事務の割合は極めてわずかなものにすぎない。」と主張しているが、その主張は、被告協会の事務と評価できるものは被告協会の一般会計事務のみであるという点を前提としており、その前提自体失当といわざるを得ないのみならず、一般会計事務の負担量についても過少に評価しているものといわざるを得ないのであって、上記主張を採用することはできず、他にこの認定判断を左右するに足りる証拠は存しない。他方、前記3、1)、エ)のとおり、I及び同僚らの捜査官に対する供述中には、Iがほとんど被告協会の事務のみを行っていたかのような趣旨の部分もあるが、この捜査は専ら被告協会の被害に関するものであって、市の業務とは直接関係のないものであるから、被告協会の事務が強調されている可能性があり、上記のような事務分担内容に照らすと、これらの供述からIの従事した事務のうち被告協 の被害に関するものであって、市の業務とは直接関係のないものであるから、被告協会の事務が強調されている可能性があり、上記のような事務分担内容に照らすと、これらの供述からIの従事した事務のうち被告協会の事務が2分の1を超えると認めることはできない。そして、3、1)に認定した事実に照らしてみれば、平成9年度以前のIの勤務状況も、平成10年度と基本的には異なるところがないものと認められるから、Iが従事した事務のうち、被告協会の事務と評価すべきものの割合は、2分の1を下回ることはないものと認められる。 なお、被告らは、「仮に職務命令によってIを被告協会の事務に従事させたことが違法であるとしても、職務専念義務の免除という形式を採用していれば、被告協会の事務に従事させることは適法であったというべきであるから、損害は生じていない。」という趣旨の主張もしているが、この主張を採用することができないことは既に説示したとおりである(3、2)、ア))。 3)まとめ以上によれば、被告Dを除く被告らは、八王子市に対し、平成10年度以前においてIに支払われた給与の2分の1に相当する部分につき、4、8)に説示した期間に対応する金額の限度で損害賠償ないし不当利得返還義務を負うものというべきであるところ、その額は、それぞれ別紙「認容額一覧表」に記載のとおりとなる。 第4 結論 1 以上によれば、原告らの本訴請求に対しては、次のとおり判断すべきものである。 1)被告B及び被告Eに対する主位的請求に係る訴え(4号前段に基づく訴え)は、4号前段の「当該職員」には当たらない者を被告とする訴えであり、不適法であるからいずれも却下すべきである。 2)被告D、被告Gに対する各請求に係る訴えのうち、Iに対する平成10年9月14日以前の給与支給に係る部分は、監査請求期間を徒過した(したが る訴えであり、不適法であるからいずれも却下すべきである。 2)被告D、被告Gに対する各請求に係る訴えのうち、Iに対する平成10年9月14日以前の給与支給に係る部分は、監査請求期間を徒過した(したがって、適法な監査請求の前置を欠く)ものであり、不適法であるからいずれも却下すべきである。 3)その余の請求のうち、ア)被告Dに対する請求は、同被告に損害賠償義務を認めることはできないからこれを棄却すべきである。 イ)その余の被告らに対する請求は、別紙「認容額一覧表」に記載の各金員及びこれに対する平成12年4月28日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による各金員の連帯支払(ただし、上記各被告の支払義務額の限度での連帯支払)を求める限度で理由があり認容すべきであるが、その余は失当としていずれも棄却すべきである。 2 よって、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条、65条、66条を適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行の宣言は、相当ではないから付さないこととする。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官鶴岡稔彦裁判官廣澤諭(別紙略)

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