【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人齋藤熊雄、同海野普吉、同位田亮次上告趣意第一点について。 原判決の基礎となつた原審第一回公判調書によれば、検事が
主文本件上告を棄却する。 理由弁護人齋藤熊雄、同海野普吉、同位田亮次上告趣意第一点について。 原判決の基礎となつた原審第一回公判調書によれば、検事が事実及び法律の適用について意見を陳述している記載のないことは所論のとおりである。刑訴第三四九条第一項には、「証拠調終りたる後、検事は、事実及法律の適用には意見を陳述すべし」と定め、同第二項には、「被告人及弁護人は、意見を陳述することを得」と定め、同第三項には、「被告人又は弁護人には、最終に陳述する機会を与ふべし」と規定している。証拠調が終つた後に、検事が事実及び法律の適用について意見を陳述することは、一般的に、国家機関である検事の職務として訓示的に定められたものである。それ故、証拠調が終つた後に、検事が意見を陳述しようとするのを、裁判所が阻止してそのまま結審し、判決を言渡した場合には、その手続が違法であることは、言うを待たないところである。しかし、裁判所はもとより検事に対して事実及び法律の適用について意見の陳述を強制することはできないのである。それ故具体的の事件において検事が自ら意見の陳述をしないときに、そのまま結審し、判決を言渡した場合には、事情により検事の職務遂行に関する責任問題が残ることがあるかも知れないが、裁判所の判決手続には何等の違法がないものと言うべきである。されば、検事の意見陳述を聽かなければ、絶対に判決の言渡ができないとする見解は、到底是認することを得ない。次に、被告人及び弁護人の意見陳述は権利として認められているが、もとより義務として定められてはいない。それ故、裁判所がこの権利を阻止して判決をすれば、その手続は違法であるが、この意見陳述をしない場合には、そのまま判決をしても、手続の違法を生じない。この関係は検事の場合と全く て定められてはいない。それ故、裁判所がこの権利を阻止して判決をすれば、その手続は違法であるが、この意見陳述をしない場合には、そのまま判決をしても、手続の違法を生じない。この関係は検事の場合と全く同様である。ただ、人権擁護の見地から、特に被告人又は弁護人には、- 1 -最終に陳述する機会を与えることが、裁判所に対して要請せられている(同条第三項)。若し、裁判所が、この要請に反して最終陳述の機会を与えなかつた場合には、手続違反として絶対的上告理由となるのである(刑訴第四一〇条第一七号)。これに反し、検事には、意見を陳述する機会を与える旨を特に告げるこどが、裁判所に対して要請されてはいない。従つて、裁判所が検事に対して意見陳述の機会を与える旨を特に告げなかつた場合においても、何等の手続違反はなく、もとより絶対的上告理由となるべきものではない(刑訴第四一〇条参照)。この理は、刑事訴訟において、当事者主義の色彩が強くなつた今日と雖も、同様に解すべきものである。 ただ裁判所が、証拠調を終つた旨を検事に告げれば、検事は、必要と認めるときは、自ら進んで刑訴第三四九条第一項により国家機関である職務の遂行として意見の陳述をするわけである。裁判所は、審理の過程において検事に対し単に証拠調を終つた旨を告げて、その職務遂行の時期を指摘さえすれば、それで十分であつて手続に瑕疵はないものと言わなければならぬ。さて、本件においては裁判長が事実及び証拠調を終つた旨を立会検事に告げていることは明白であるから、この点に関する論旨は、理由がない。なお、本件の実際においては、検事は現実に意見の陳述をしたのにかかわらず、公判調書に記載洩れとなつているというのが、あるいは事の真相であるかも知れない。若し、仮りにそうだとしても、かかる公判調書の瑕疵は、原判決に影響を及ぼさないこと 実に意見の陳述をしたのにかかわらず、公判調書に記載洩れとなつているというのが、あるいは事の真相であるかも知れない。若し、仮りにそうだとしても、かかる公判調書の瑕疵は、原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、これを捉えて上告の理由とすることはできない。されば、何れにしても本論旨は採用することを得ないものである。 同第二点について。 本件清酒中味売の取引に適用される昭和一八年大蔵省告示第一三七号によれば、小売業者販売価格は、その小売業者の店先渡の価格であることは、所論のとおりである。しかし、被告人が要した運賃は、釧路市内のA商会から同市内のB方まで清酒中味一石を馬車で運んだ料金に過ぎない。これを、原判決で認定した超過額合計- 2 -六万三千三百円に対比すれば、極めて少額であつて、かかる運賃の控除の有無は、原判決の量刑に影響する程度のものとは到底考えることができない。原判決には、前記運賃に相当する額を控除しないで超過額を認定した違法が存することは、まさに論旨の指摘するとおりであるが、かかる違法は、前述のごとく原判決に影響を及ぼさざること明白であるから上告の理由とすることはできない。 よつて刑訴第四四六条に従い、主文のとおり判決する。 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。 検察官茂見義勝関与昭和二三年一二月一六日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官真野毅裁判官沢田竹治郎裁判官齋藤悠輔裁判官岩松三郎- 3 - 悠輔裁判官岩松三郎- 3 -
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