令和5年4月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第7001号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和5年2月7日判決 原告株式会社P1コーポレーション (以下「原告会社」という。) 原告P1 (以下「原告P1」という。)原告ら訴訟代理人弁護士岩﨑任史 被告株式会社祥起 同訴訟代理人弁護士後藤昌弘同大橋厚志 原告ら補助参加人株式会社大林組 同訴訟代理人弁護士矢田次男同渡邉誠同訴訟復代理人弁護士村上嘉奈子同補佐人弁理士小林徳夫 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告会社に対し、1億6516万8122円及びこれに対する平成31年1月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告P1に対し、1420万円及びこれに対する平成31年1月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件の訴訟物本件は、原告らが被告に対し、次の各請求をする事案である。 (1) 被告と原告会社とが、被告の製造する商品の売買に係る基本契約(甲1。以下「本件契約」という。)を締結していたところ、当該商品が補助参加人の有する特許権に抵触し、原告会社が将来にわたって被告から当該商品を購入して第三者に販売することができなくなったとして、本件契約上の第三者の工業所有権との抵触について被告の負担と責任において処理解決する旨の約定(以下 「本件特約」という。)の債務不履行又は瑕疵担保責任に 者に販売することができなくなったとして、本件契約上の第三者の工業所有権との抵触について被告の負担と責任において処理解決する旨の約定(以下 「本件特約」という。)の債務不履行又は瑕疵担保責任に基づき、原告会社について損害賠償金1億0800万8470円、原告P1について損害賠償金1320万円及びこれらに対する催告後である平成31年1月11日から支払済みまでの平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求 (2) 被告と南条装備工業株式会社(以下「南条」という。)との取引に関して、原告会社が被告との間で、原告会社に支払う成功報酬を売上額の7~10%とする旨の合意(以下「本件報酬合意」という。)をしたとして、本件報酬合意に基づき、報酬金81万2160円及び経費36万6962円並びにこれに対する催告後である平成31年1月11日から支払済みまでの改正前民法所定の 年5分の割合による遅延損害金の支払請求 (3) 被告代表者が、被告の職務を行うについて、原告P1に対し精神的苦痛を与える言動(以下「本件言動」という。)をしたとして、会社法350条に基づき、慰謝料100万円及びこれに対する当該行為の後である平成31年1月11日から支払済みまでの改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求 2 前提事実(争いのない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実。なお、以下において枝番号のある証拠で枝番号の記載のないものは全ての枝番号を含む。)(1) 当事者ア原告P1は、かつて被告の取引先であった三協インターナショナル株式会 社の従業員であった者であり、退職後は、被告の顧問あるいは株式会社アリタス(以下「アリタ を含む。)(1) 当事者ア原告P1は、かつて被告の取引先であった三協インターナショナル株式会 社の従業員であった者であり、退職後は、被告の顧問あるいは株式会社アリタス(以下「アリタス」という。)の代表取締役であった者であるが、平成27年9月25日、原告会社を設立して、代表取締役に就任した(甲33、乙32、原告会社代表者兼原告P1本人(以下単に「原告P1本人」という。)、被告代表者本人)。 原告会社は、プラスチックおよび金属等の金型の製造、販売並びに輸出入等を目的とする株式会社である。 イ被告は、昭和58年7月15日に設立されたプラスチック成型用金型の製作等を目的とする株式会社である。 ウ補助参加人は、建設工事の請負や建設用コンクリート製品、耐火・不燃建 築材料、内外装建築材料、家具及び建築用木工品の製造及び販売並びに土木建築用資材の販売等を主たる業とする株式会社である。 (2) 本件契約に至る経緯ア平成27年1月頃、被告は、アリタスの代表者であった原告P1に対し、被告の製造するコンクリート型枠のコネクター(プラスチックコーン又はP コンとも称される)除去跡に設置してコンクリート表面に塗布したモルタル の剥落を防止するモルタル接着補助具「ループボンド(以下「LB」という。)」及びコネクター兼用モルタル接着補助具「スーパーループボンド(以下「SLB」という。)」の販売事業を提案した(LB、SLBといった商材は、被告が東レ・アムテックス株式会社(旧商号東和織物株式会社。以下「アムテックス」という。)との基本契約のもとに被告が生産し、アムテックスに納入 していたものであった(丙13、14)。 イ 「ループボンド」は、アムテックスの登録商標であったことから、原告P1と被告は クス」という。)との基本契約のもとに被告が生産し、アムテックスに納入 していたものであった(丙13、14)。 イ 「ループボンド」は、アムテックスの登録商標であったことから、原告P1と被告は、LBを「ウォールキャッチャー(以下「WC」という。)」と、SLBを「スーパーウォールキャッチャー(以下「SWC」という。)」とそれぞれ称して販売することとし、同年5月29日、アリタスは、指定商品を 第19類「プラスチック製建築専用材料」等とする「ウォールキャッチャー」の標準文字からなる商標の登録出願をし、同年11月6日、商標登録(商標登録第5803871号)された(甲6、乙32)。 ウ原告P1は、株式会社穴吹工務店(以下「穴吹工務店」という。)が、LB及びSLBに興味を示したことから、穴吹工務店と共同で、コネクターとは 関係なくアンカーでコンクリートに固定するディスク状のモルタル接着補助具「ウォールキャッチャーディスク(以下「WCD」という。)」を開発するとともに、アリタスにおいて、被告からLB及びSLBを購入して穴吹工務店に納品した(甲27、乙32)。 エ原告P1は、アリタスの電子錠事業において製品の品質に係る問題が生じ ていたことやアリタスの株主から追加の出資が受けられなかったことから、新たに出資を募り、新会社を設立して事業を行うことを決意し、同年9月25日、原告会社を設立した(原告P1本人)。 (3) 本件契約原告会社と被告は、平成27年11月30日付けで、以下の内容の商品の売 買に係る基本契約を締結した(甲1。本件契約)。 ア被告は、原告会社に対し、被告の製造する「コネクター兼用モルタル接着補助具(特許番号:特許第4162822号)当社商品名「ウォールキャッチャー」」を売り渡し (甲1。本件契約)。 ア被告は、原告会社に対し、被告の製造する「コネクター兼用モルタル接着補助具(特許番号:特許第4162822号)当社商品名「ウォールキャッチャー」」を売り渡し、原告会社はこれを買い受け、卸売販売する(第1条。 以下「本件対象商品条項」という。)。 イ本件契約後に締結される個々の商品の売買契約(個別契約)の内容は、特 約を設ける場合を除き、本件契約の定めるところとし、個別契約は、被告の提出する注文書と原告会社の交付する注文請書の交換によって成立する。 ウ被告は、前記アの商品が第三者の特許権、商標権等の工業所有権に抵触しないことを保証する。万一、抵触した場合には、被告の負担と責任において処理解決するものとし、原告会社には損害をかけない(本件特約)。 (4) 関連特許権等ア補助参加人関係補助参加人は、以下の各特許権の特許権者(第三者との共有に係るものを含む)であった。 (ア) 特許第3976427号(乙1。以下「乙1特許権」という。) 出願番号特願平10-339887出願日平成10年11月30日登録日平成19年6月29日発明の名称コネクター兼用モルタル接着補助具特許請求の範囲別紙特許公報(乙1)記載のとおり(以下、特許請求の 範囲のうち請求項1記載の発明を「乙1発明」という。)(イ) 特許第3998351号(甲4。以下「甲4特許権」という。)出願番号特願平10-316412出願日平成10年11月6日登録日平成19年8月17日 発明の名称モルタル接着補助具 (ウ) 特許第4052879号(甲5。以下「甲5特許権」と 平成10年11月6日登録日平成19年8月17日 発明の名称モルタル接着補助具 (ウ) 特許第4052879号(甲5。以下「甲5特許権」という。)出願番号特願2002-154675出願日平成14年5月28日優先権主張番号特願2001-217493優先日平成13年7月18日 登録日平成19年12月14日発明の名称タイル張付壁とその施工方法イ被告関係被告は、以下の各特許権の特許権者(第三者との共有に係るものを含む)であり、出願に係る出願人であった。 (ア) 特願平10-366924(乙20。以下「乙20出願」という。)出願日平成10年12月24日発明の名称コネクター兼用モルタル接着補助具(イ) 特許第4162822号(甲30。以下「甲30特許権」という。)出願番号特願平11-362127 出願日平成11年12月21日優先権主張番号特願平10-366924(乙20出願)優先日平成10年12月24日登録日平成20年8月1日発明の名称コネクター兼用モルタル接着補助具 (ウ) 特許第6200112号(乙6。以下「乙6特許権」という。)出願番号特願2017-54399出願日平成29年3月21日登録日平成29年9月1日発明の名称接着補助器具及び当該接着補助器具を備える接着補助 システム 3 争点【本件契約関係】(1) WC及びSWCが本件契約の対象であるか否か(争点1 日発明の名称接着補助器具及び当該接着補助器具を備える接着補助 システム 3 争点【本件契約関係】(1) WC及びSWCが本件契約の対象であるか否か(争点1)(2) 本件特約上の義務違反の成否ア補助参加人の侵害警告への対応義務の有無 (ア) SWCが乙1発明の技術的範囲に属するか否か(争点2)(イ) 乙1特許権に共同出願違反の無効理由があるか否か(争点3)イ本件特約上の対応義務違反の成否(争点4)(3) 瑕疵担保責任の有無(争点5)(4) 損害の発生及び額(争点6) 【本件報酬合意関係】(5) 本件報酬合意の存否(争点7)【慰謝料関係】(6) 本件言動の有無及び違法性(争点8)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(WC及びSWCが本件契約の対象であるか否か)について【原告らの主張】本件契約は、ウォールキャッチャーシリーズを対象とするものであり、WC及びSWCを含むものである。 本件対象商品条項に挙げられている甲30特許権の特許番号は、原告会社が本 件契約当時、被告代表者からSWCを指すものと説明を受けていたものであり、原告会社と被告との取引の主力は、SWCであったのだから、本件対象商品条項に「ウォールキャッチャー」と記載されていても、WCに限定するものではなく、SWCを含む趣旨である。 【被告の主張】 本件契約は、本件対象商品条項に甲30特許権の特許番号が記載されているこ とから、甲30特許権の権利範囲に属さないWC及びSWCを含まないものである。 被告は、原告らに対し、LBやWCが甲30特許権に基づく商品であると伝えたことはなく、仮に本件対象商品条項を理由にWCが本件 30特許権の権利範囲に属さないWC及びSWCを含まないものである。 被告は、原告らに対し、LBやWCが甲30特許権に基づく商品であると伝えたことはなく、仮に本件対象商品条項を理由にWCが本件契約の対象であるとしても、SWCは対象外である。 2 争点2(SWCが乙1発明の技術的範囲に属するか否か)について【原告ら及び補助参加人の主張】(原告らは、SWCが乙1発明の技術的範囲に属するかについて、具体的な主張をしないが、弁論の全趣旨から、補助参加人の主張を援用するものとして、以下摘示する。) (1) 構成要件の分説乙1発明を構成要件に分説すると、以下のとおりである。 A 躯体コンクリートの表面に塗布されるモルタルの接着補助具であって、B コンクリート型枠内にセットされるスペーサボルトに連結するコネクター部の前記躯体コンクリート表面側の端面に、前記モルタルと係合する多数の 係止部を並列的にまたは放射状に配置させて該コネクター部と樹脂で一体成形すると共に、C 前記係止部と同一高さ以上であって前記コンクリート型枠の内面に当接するように、かつ前記コネクター部端面の外周縁に沿って前記多数の係止部を内側に収納する枠状に形成された支持突起を設けた、 D ことを特徴とするコネクター兼用モルタル接着補助具(2) SWCの構成SWCのうち、乙1発明と関連する部分の構成は、以下のとおりである。 a コンクリート躯体の表面に塗布されるモルタルの接着補助具であって、b 型枠パネル内にセットされるセパレータに連結するコネクター部のコン クリート躯体表面側の端面に、モルタルと係合する多数のループパイルを並列 的に配置させてコネクター部と樹脂で一体成形すると共に、c るセパレータに連結するコネクター部のコン クリート躯体表面側の端面に、モルタルと係合する多数のループパイルを並列 的に配置させてコネクター部と樹脂で一体成形すると共に、c ループパイルと同一高さ以上であって型枠パネルの内面に当接するように、かつコネクター部端面の外周縁に沿って多数のループパイルを内側に収納する枠状に形成された円環状突起を設けたd ことを特徴とするコネクター兼用モルタル接着補助具 (3) 構成要件の充足SWCは、以下のとおり、乙1発明の構成要件A~Dを充足するから、乙1発明の技術的範囲に属する。なお、構成要件A及びDの充足については、争いがない。 ア構成要件Bについて SWCの「ループパイル」は、乙1発明の構成要件Bの「係止部」に該当するから、SWCは、構成要件Bを充足する。 乙1発明における「コネクター部」の構成は、「係止部」及び「支持突起」と別異の構成として特定されているものであるから、SWCの構成bの「コネクター部」に「円環状突起」は含まれず、「円環状突起」と一体成形された 「ロッドパイル」も含まれない。SWCの「ロッドパイル」は、「コネクター部」と一体成形されておらず、ガードリングの内縁部に沿って環状に配置されているので、構成要件Bの「係止部」に該当しない。また、「スキンキャッチャー部分」も、樹脂製のコネクター部とは別異に金属により構成されており、「スペーサボルト」の一部であるから、「コネクター部」ではない。 そうすると、SWCは、乙1発明の構成要件Bと対比される構成として、コネクター部がスキンキャッチャー部分、本体部分及びガードリング部分からなる相違点及び係止部であるロッドパイルを放射状に配置させている相違点を有しているものとは の構成要件Bと対比される構成として、コネクター部がスキンキャッチャー部分、本体部分及びガードリング部分からなる相違点及び係止部であるロッドパイルを放射状に配置させている相違点を有しているものとはいえず、構成要件Bを充足する。 イ構成要件Cについて SWCの「ループパイル」は、乙1発明の構成要件Cの「係止部」に、S WCの「円環状突起」は、乙1発明の構成要件Cの「支持突起」にそれぞれ該当するから、SWCは構成要件Cを充足する。 SWCの「ロッドパイル」は、構成要件Bの「係止部」に該当しないから、円環状突起がロッドパイルより低い高さであっても、構成要件Cとの対比において相違点ということはできず、円環状突起が係止部であるロッドパイル を内側に収納する枠状に形成されているということもできないから、SWCは、構成要件Cを充足する。 仮に、SWCのロッドパイルが「係止部」に該当するとしても、SWCは、係止部であるループパイルの存在によって乙1発明の構成要件を充足しているものであり、乙1発明と同様の作用効果を奏するのであって、ロッドパ イルは乙1発明の「係止部」の構造に付加された下位構造にすぎない。 そして、乙1発明の特許請求の範囲、明細書ないし図面には、全ての係止部が支持突起以下の高さであることを限定する趣旨の記載はなく、ロッドパイルが付加されることによりループパイルの作用効果が阻害されるものではないから、SWCがロッドパイルを備えていることは、乙1発明の技術的 範囲の属否に影響を与えるものではない。 【被告の主張】(1) SWCの構成SWCは、乙1発明と対比すると以下の構成を備えるものである。 a コンクリート躯体の表面に塗布されるモルタルの接着補助具であって、 はない。 【被告の主張】(1) SWCの構成SWCは、乙1発明と対比すると以下の構成を備えるものである。 a コンクリート躯体の表面に塗布されるモルタルの接着補助具であって、 b 型枠パネル内にセットされるセパレータに連結するスキンキャッチャー部分・本体部分・ガードリング部分から成るコネクター部のコンクリート躯体表面側の端面に、モルタルと係合する多数のループパイル及びロッドパイルを並列的又は放射状に配置させてコネクター部と樹脂で一体成形すると共に、c ループパイルと同一高さ以上かつロッドパイルより低い高さであって型 枠パネルの内面に当接するように、かつコネクター部端面の外周縁に沿って多 数のループパイル及びロッドパイルを内側に収納する形状に形成された円環状突起を設けたd ことを特徴とするコネクター兼用モルタル接着補助具(2) 構成要件の非充足SWCは、以下の点において乙1発明の構成要件と相違しており、技術的範 囲に属さない。 ア構成要件BについてSWCのスキンキャッチャー部分は、内側にねじが切られているが、外側にはねじは切られていないのであり、乙1発明の特許公報によれば、スペーサボルトは、その両端部にコネクターが螺合される(【0005】)のである から、スキンキャッチャー部分は、スペーサボルト(セパレータ)ではなく、コネクター部である。仮にそうでないとすれば、構成要件Bは非充足である。 イ構成要件CについてSWCの円環状突起が構成要件Cの「支持突起」に当たることに争いはないところ、円環状突起は、ガードリング部分の端面の外周縁に沿って形成さ れているものであるから、ガードリング部分はコネクター部に該当する。 SWCの「ロッドパイル」 に当たることに争いはないところ、円環状突起は、ガードリング部分の端面の外周縁に沿って形成さ れているものであるから、ガードリング部分はコネクター部に該当する。 SWCの「ロッドパイル」は、係止部である「ループパイル」だけでは所要の引張接着強度を達成できないために付加された構成であり、「係止部」である。ロッドパイルは、コネクター部であるガードリング部分と一体成形されているし、乙1発明の特許請求の範囲、明細書ないし図面によれば、円 環状の配置も放射状の一類型とされている(【0040】、【図7】)から、「係止部」の該当性に欠けるところはない。 そして、ロッドパイルが係止部に当たるとすれば、構成要件Cは、係止部と同一高さ以上の支持突起を備えるものであって、支持突起が係止部と同一高さ以上であることは乙1発明にとって本質的部分であり、一部の係止部が 支持突起の高さを超えることを許容していないから、あえて係止部を支持突 起よりも上部に位置させて、変形・折れ曲がりのマイナス面よりも確実にモルタルに係合させて接着強度を確保するプラス面を重視した構成であるSWCは、構成要件Cを充足しない。 また、乙1発明は、ループパイル状の係止部のみに限定されるものではなく、ロッドパイル状の係止部も含むものであるから、ロッドパイルが付加さ れてもループパイルのアンカー効果が阻害されないとしても、乙1発明は、ロッドパイルを含めた全ての係止部を支持突起により保護する発明であるから、ロッドパイルが支持突起が支持する前に型枠によって押しつぶされることになるSWCの構成が乙1発明の技術的範囲に属さないことは明らかである。 乙1発明の出願経緯からしても、支持突起よりも高く設置された復元力ある係止部を実施例において記 しつぶされることになるSWCの構成が乙1発明の技術的範囲に属さないことは明らかである。 乙1発明の出願経緯からしても、支持突起よりも高く設置された復元力ある係止部を実施例において記載することが、特許性主張との整合性が問題になるとして見送られた経緯があり、支持突起よりも高く設置された係止部の存在を許容できないことは明らかである。 3 争点3(乙1特許権に共同出願違反の無効理由があるか否か)について 【被告の主張】被告代表者は、以下のとおり、LBの開発段階から、東レ株式会社(以下「東レ」という。)と共同して商品開発をしていたものであり、SLBについても、当初から開発に関与しており、SLBの関連特許である乙1発明の発明者であるから、被告代表者を除外して出願・登録された乙1特許権は、冒認ないし共同出願 違反として無効とされるべきものである。 (1) 被告代表者は、平成10年5月頃、東レの従業員であり、乙1特許権の発明者として特許公報に記載されているP2から、モルタル接着補助具の開発について、モルタル装着補助具の表層の形状を絨毯表面のような形状にできないかとの相談を受け、強度や製造工程を考慮して、表層形状をループやフック形に することを提案した。被告は、同年6月頃、モルタル装着補助具の本体コネク ター部と表層のループ部とを一体成形する技術を実現し、要求引張強度を達成するためのループの配置や設計等を行い、東レは、この商品を当初「モルタルコーン」、後に「ループボンド」と称して補助参加人と共に施工テスト等を実施した。被告代表者は、その後も、同年8月頃、P2に対し、素材を耐候性のある1016番ナイロンに炭素の黒ペレットを混合したものに変更することな どを提案した。 (2) 被告代表者は、 ト等を実施した。被告代表者は、その後も、同年8月頃、P2に対し、素材を耐候性のある1016番ナイロンに炭素の黒ペレットを混合したものに変更することな どを提案した。 (2) 被告代表者は、平成10年8月頃、LBの開発に引き続いて、コンクリート打設後にコネクターを外してモルタル接着補助具を設置するよりも、最初からモルタル接着補助具をコネクターとしても併用した方が無駄がないと考え、コネクターと兼用するタイプの埋込み一体型ループボンドの開発を着想し、これ をP2に伝えて、開発を主導した。 被告代表者は、係止部を保護するために乙1発明の支持突起に相当する構成を着想し、同年9月頃から10月頃までに、まず、係止部とコネクター部と支持突起を全て一体成形する「ループボンドヒンヂ付プロテクター」を着想し、一体成形を可能とするために支持突起と可変形連結部を備える構成を創作し て試作を行い、東レに伝えた。しかし、全てを一体成形して量産することは技術的に困難であったため、同月頃から同年12月頃までに、コネクター部と支持突起を分離する「ガードリング分離型」を着想し、同月頃、試作して東レ及び補助参加人に示した。乙1発明の特許登録出願までの間に、補助参加人は、試作品の性能試験を行うなどして課題を提供してきたが、その課題解決方法を 考え、乙1発明の具体的構成を創作したのは東レと被告であった。 (3) 以上のとおり、乙1発明の具体的構成のうち、コネクター部と係止部とを樹脂で一体成形した構成、多数の係止部を並列的又は放射状に配置させた構成及び係止部を内側に収納する枠状に形成された支持突起の構成を着想して実現したのは、いずれも被告代表者であるから、被告代表者は乙1発明の発明者 である。 乙1発明の東レにおける中心 部を内側に収納する枠状に形成された支持突起の構成を着想して実現したのは、いずれも被告代表者であるから、被告代表者は乙1発明の発明者 である。 乙1発明の東レにおける中心的な発明者であるP2も、本件訴訟係属中に東レから呼び出されるまでは、被告代表者が発明者であることを認めていた。そして、被告は、通常、発明への関与がなければ入手できない乙1発明の特許登録出願前に出願代理人や東レ内部でやり取りされていた明細書の文案(乙25)を示されていたことからも、乙1発明の発明者であることは明らかである。 【原告ら及び補助参加人の主張】(原告らは、乙1特許権に共同出願違反の無効理由があるかについて、具体的な主張をしないが、弁論の全趣旨から、補助参加人の主張を援用するものとして、以下摘示する。)(1) 補助参加人は、平成8年以前から、躯体コンクリートに塗布するモルタルの 剥離を防止するためのモルタル接着補助具や関連工法の研究を進めており、補助参加人従業員であったP3を中心とする研究員らと株式会社ショックべトン・ジャパンとの共同研究により、「表面側の起毛する多数のパイルを一体化した基材シート」の施工によってモルタルの剥離防止効果等を奏する工法を開発した。補助参加人の従業員らは、コンクリート表面に形成されるコーン(コ ネクター)跡に埋栓する充填用モルタル(埋栓部)と基材シート及びパイル(係止部)を樹脂により一体成形する構成を着想し、樹脂製品の開発・製造について専門的知見を有する東レに共同開発を持ち掛け、P3が手作りしたモルタルで成形したコネクター跡充填剤の表面に係止部として立体編み布を取り付けた試作品を、P2に見せて相談したところ、P2はこれに応じた。補助参加人 従業員らは、平成10年5月頃から、 りしたモルタルで成形したコネクター跡充填剤の表面に係止部として立体編み布を取り付けた試作品を、P2に見せて相談したところ、P2はこれに応じた。補助参加人 従業員らは、平成10年5月頃から、コンクリート造建物の部材に必要とされる要件や構造等に関する補助参加人の専門的知見に基づき、構造や要求性能等について東レとの間で協議や必要な指示を行って共同研究を進め、樹脂一体成形によるモルタル接着補助具(LB)の開発に至り、同年9月頃、実試験施工が決定し、P2から被告に対し、試作品の製作が依頼された。 (2) 補助参加人従業員らは、LBの開発途中の施工実験等の過程において、コン クリート硬化の過程で型枠を保持するための部材として設置され、型枠除去時に抜去されていたコネクターをモルタル接着補助具と一体化させ、コネクターとしての機能を果たした後に引き続き埋設したままモルタル接着補助具として機能する部材とするアイデアを得た。また、補助参加人従業員らは、当該アイデアを実現するには、係止部を保護する必要があり、また、コンクリート硬 化の過程で係止部に未硬化のコンクリートが侵入することを防止する必要があるという課題を分析・整理した上で、課題を解決するための手段として、係止部を内側に取り囲み収納するように環状の枠状に形成された支持突起の構造を設けることを着想した。その後補助参加人従業員らは、東レ側の共同発明者らに当該構造の着想を共有して、構造の具体的形状の提案、指示、協議、検 証等を行って研究を進め、乙1発明の具体的構造を考案するに至った。その開発作業の開始に当たって、P2は、試作品の製造委託先であった被告に赴き、被告のホワイトボードに研究者らの協議によって決定されたコネクター兼用モルタル接着補助具の構造を図示するなどして 至った。その開発作業の開始に当たって、P2は、試作品の製造委託先であった被告に赴き、被告のホワイトボードに研究者らの協議によって決定されたコネクター兼用モルタル接着補助具の構造を図示するなどして試作品の製作を委託した。 (3) 以上のとおり、乙1発明は、特許公報に発明者として記載された補助参加人 従業員ら及び東レ側発明者らによる共同発明であり、被告代表者は発明に寄与しておらず、被告は、SLBの製造委託業者にすぎない。 東レのP2は、平成10年11月20日付けの譲渡証に発明者として押印し、被告代表者が共同発明者とされていないことを認識しながら異議を述べていなかったものであり、乙1発明出願前には、出願資料は補助参加人及び東レ知 財部担当者と発明者のみが知り得たもので、被告代表者が乙1発明出願前に乙25の資料を入手していた事実はない。 4 争点4(本件特約上の対応義務違反の成否)について【原告らの主張】被告は、SWCが補助参加人の特許権に抵触するとの補助参加人や東レの主張 に接しながら、SWCについて被告代表者が特許権者であることを主張し、補助 参加人と戦う姿勢であったことから、原告会社は、武新株式会社(以下「武新」という。)を通じた株式会社長谷工コーポレーション(以下「長谷工」という。)との取引などの今後確実に見込めた取引の機会を失った。被告が自己の非を認めていれば、補助参加人が提示していた解決策によって、原告会社はSLBをアムテックスから仕入れて原告会社が開拓したユーザーに販売できたが、被告の認識 が変わらなかったため、被告に引き留められる形で、原告会社は補助参加人の解決策を受け入れるタイミングを逸した。 【被告の主張】本件特約は、第三者の特許権に抵触した場合に被告が責任を負 が変わらなかったため、被告に引き留められる形で、原告会社は補助参加人の解決策を受け入れるタイミングを逸した。 【被告の主張】本件特約は、第三者の特許権に抵触した場合に被告が責任を負うものであって、商品が第三者の特許権を侵害している事実ないし判断が確定した場合に限定さ れ、未だ第三者から特許権侵害を主張されるにとどまっている段階では、被告に紛争対応に関する義務はない。また、紛争が生じた際に、対象商品が特許の構成を具備しているか否かといった見解等を被告が原告らに伝えなければならない義務もない。 被告は、原告らに対し、当初より、LB開発の経緯や乙1特許権に冒認ないし 共同出願違反の無効理由があることを伝えており、原告らは、自らの責任でSWCが補助参加人の特許権に抵触する商品ではないと判断して販売に踏み切ったのであり、東レのグループ会社であるアムテックスからSLBの取り扱いの機会を提案されながらあえてこれに応じなかったにすぎない。 原告らは、当初から付き合いのあった穴吹工務店を通じて、P4国際特許事務 所のP4弁理士(以下「P4弁理士」という。)を代理人として補助参加人と交渉し、LBの開発経緯に係る資料を入手・検討の上、補助参加人に対して非侵害の主張をしており、長谷工も、補助参加人との特許権抵触問題を認識した上で、被告の主張を支持していたものである。長谷工は、平成30年1月に一転して補助参加人との直接交渉の結果、被告商品の採用を見送ることになったが、これは補 助参加人の特許権との抵触問題によって直接もたらされたものではなく、補助参 加人から長谷工に対する業界内部の圧力によるものであり、同様に、穴吹工務店も、平成29年4月に補助参加人が直接圧力を加えた結果、取引停止になったにすぎ たらされたものではなく、補助参 加人から長谷工に対する業界内部の圧力によるものであり、同様に、穴吹工務店も、平成29年4月に補助参加人が直接圧力を加えた結果、取引停止になったにすぎないのであり、ゼネコン間の業界内部の事情によるものであるから、被告が責任を負うものではない。 原告らは、P4弁理士に特許構成の充足・非充足等、知的財産に関する専門的 知見について、いつでも独自に判断を仰ぐことができる立場にあったのであり、その結果、原告ら自身の判断で実施し、あるいは取りやめた取引について、結果が芳しくなかったからといって、被告に帰責されるものではない。 5 争点5(瑕疵担保責任の有無)について原告らの主張は、民法562条、564条、565条を挙げるのみで具体性を 欠くものであるが、本件契約は、本件対象商品条項により、甲30特許権の実施品を対象とするものと定められているから、SWCが甲30特許権の構成を備えないことが瑕疵に当たると主張しているものと解される。 被告は、これを争っている。 6 争点6(損害の発生及び額)について 【原告らの主張】(1) 原告P1の損害原告会社設立までに要した費用、すなわちWCが扱えないのなら原告会社を設立しなかった故、この設立に要した資金1320万円。 (2) 原告会社の損害 ア長谷工については、武新経由での取引であるが、長谷工の前社長と武新の代表者及び原告会社の株主が学校の同窓生として親しい関係から成約できたので将来的にも継続する取引であり、平成30年4月から令和4年5月31日までの武新から長谷工への東レ製品の納入実績からすれば、原告会社が得たであろう利益7159万9470円。 イ穴吹工務店に対する補助参加人への支払の補償金14 0年4月から令和4年5月31日までの武新から長谷工への東レ製品の納入実績からすれば、原告会社が得たであろう利益7159万9470円。 イ穴吹工務店に対する補助参加人への支払の補償金142万5000円。 ウ WCの販売が軌道に乗るまでの活動費3498万4000円。 【被告の主張】(1) 損害の発生について原告会社設立までの費用は、被告が原告P1に対し、原告会社設立に当たって何らの保証をした事実はなく、原告らからもそのような具体的主張立証がさ れていないから失当である。 本件特約は、実際に個別契約によって売り渡した商品を対象とするものであるから、原告会社が勝手に将来購入する予定を立てていた分について被告が責任を負うものではない。 穴吹工務店から原告会社が補償金請求を受けているという点についても、何 ら被告の関与しない手続においてゼネコン間の力関係で勝手に決められた合意内容に拘束される理由はないし、現実には原告会社は当該補償金を支払っておらず、損害は発生していない。 WC及びWCDの販売が軌道に乗るまでの活動費についても、何ら根拠は示されておらず、そもそもWCとWCDについては、補助参加人が特許権侵害の 主張をしておらず、本件特約はそのような販売準備活動費用まで保証する内容ではない。 (2) 相殺被告は、令和4年7月8日付け被告第12準備書面(同月11日原告ら受領)において、原告会社に対し、平成30年6月29日までに発生した本件契約に 基づく売掛金債権292万4830円を有しており、被告が原告会社に対し何らかの債務を負うとされた場合、当該売掛金債権を自働債権として対当額で相殺する旨の意思表示をした。 7 争点7(本件報酬合意の存否)について【原告会社 30円を有しており、被告が原告会社に対し何らかの債務を負うとされた場合、当該売掛金債権を自働債権として対当額で相殺する旨の意思表示をした。 7 争点7(本件報酬合意の存否)について【原告会社の主張】 原告会社は、平成30年5月の約1年前から、被告の技術を売り込み、自動車 関連メーカーである南条とのスポット取引において、価格の折衝を行い、被告見積額通り752万円満額で成約できたが、当初に被告との間で成功報酬を売上額の7~10%と約束した。この成約のため、同年7月まで、原告会社は、名古屋、広島に8回出張するなど折衝を重ねた。そのために要した費用は、36万6962円であった。 したがって、本件報酬合意に基づく報酬金は、752万円の10%+消費税の81万2160円であり、被告は、原告会社に対し、本件報酬合意に基づき、81万2160円及び経費36万6962円の支払義務を負う。 【被告の主張】原告会社の主張する事実は否認する。 原告会社の主張する取引については、被告は、南条と直取引しており、請求に理由がないことは明らかである。 8 争点8(本件言動の有無及び違法性)について【原告P1の主張】原告P1は、被告代表者の以下の言動(本件言動)により、精神的苦痛を受け、 その慰謝料として100万円を請求する。 (1) 平成29年1月、被告代表者は、原告P1に対し、「貴方が大林組に仁義を切るからこんな問題になったのだ」と自分が「仁義を切っておくべきだ」と忠告したことを忘れて責めた。 (2) 平成29年4月、被告代表者は、原告P1に対し、「貴方が大林組に仁義を 切るからこんな問題になったのだ」と非難し、原告P1が反論すると、被告代表者は「そんな考えしているなら取引を辞め (2) 平成29年4月、被告代表者は、原告P1に対し、「貴方が大林組に仁義を 切るからこんな問題になったのだ」と非難し、原告P1が反論すると、被告代表者は「そんな考えしているなら取引を辞めよう」と発言した。 (3) 平成30年4月、被告代表者は、原告P1に対し、「貴方が大林組に仁義を切るからこんな問題になったのだ」と非難した。 (4) 平成30年9月、被告代表者は、原告会社の取締役であるP5に対し、被告 代表者の有する特許権についてこのような状況となったのは原告P1のせい だと言い、原告P1への不信感とともに原告会社との取引を辞めたいと発言し、その後、原告P1に対し、原告P1が乙6特許権の製品をばらまいたのではないかとか、穴吹工務店にスパイがいるのではないかなどと誹謗し、一方的に電話を切り、以降、被告代表者を含む被告の関係者からの連絡が絶たれた。 【被告の主張】 被告代表者が本件言動をした事実はない。 仮に、それに類する言動があったとしても、対等な取引関係にある会社の代表者同士が、その取引に関して交わした会話の中での話であるから、何らハラスメント等に該当するものではなく、不法行為に当たる余地はない。 第4 判断 1 争点1(WC及びSWCが本件契約の対象であるか否か)について(1) 前記前提事実のとおり、本件対象商品条項によれば、本件契約において被告が原告会社に売り渡す商品は、被告の製造する「コネクター兼用モルタル接着補助具(特許番号:特許第4162822号)当社商品名「ウォールキャッチャー」」と特定されている。 しかしながら、本件契約当時に被告が製造していたWCはモルタル接着補助具であるがコネクター兼用ではなく、SWCはコネクター兼用であるが少なくともコネクター チャー」」と特定されている。 しかしながら、本件契約当時に被告が製造していたWCはモルタル接着補助具であるがコネクター兼用ではなく、SWCはコネクター兼用であるが少なくともコネクター部と樹脂で一体成形された可変形連結部を備えない点で甲30特許権(特許第4162822号)の発明の技術的範囲に属さないものであったことに争いはなく、本件対象商品条項の文言を形式的に見ると、商品の特 定要素が相互に矛盾する内容となっているから、本件対象商品条項を特定の一種類の商品を対象とするものと解することはできない。 そして、本件契約以前から、被告はWC及びSWCに相当するLB及びSLBを製造しており、原告P1との間でもLB及びSLBを取り扱う事業について検討され、アムテックスの商標権との抵触回避のためにWC及びSWCとし て販売することとなり、本件契約後、現実にWC及びSWCが被告から原告会 社に販売されたことに争いはなく、本件契約以外にWC及びSWCに係る基本契約が存在しないことからすれば、本件対象条項は、WC及びSWCを対象とするものと解するのが合理的である。 (2) 被告は、WC及びSWCは、甲30特許権の権利範囲に属さず、SWCは本件対象商品条項に記載がないから、本件契約の対象外である旨主張する。 しかしながら、原告P1及び被告代表者は、いずれも、本件契約当時、SWCが甲30特許権の発明と関連する技術に基づくものであるとの認識を有していた(原告P1本人、被告代表者本人)のであるから、本件対象商品条項に甲30特許権の特許番号が記載されているのは、SWCを示す趣旨で関連する特許権を表示したに過ぎないものと解される。また、本件対象商品条項には「ウ ォールキャッチャー」と記載されているとしても、 甲30特許権の特許番号が記載されているのは、SWCを示す趣旨で関連する特許権を表示したに過ぎないものと解される。また、本件対象商品条項には「ウ ォールキャッチャー」と記載されているとしても、「コネクター兼用モルタル接着補助具」とも記載されているのであるから、SWCを含む趣旨であることは明らかであるから、被告の主張は採用できない。 (3) 以上によれば、WC及びSWCは、本件契約の対象商品であると認められる。 2 争点4(本件特約上の対応義務違反の成否)について(1) 対応義務の内容について本件は、原告会社やその取引先が補助参加人から被告の商品が第三者の特許権に抵触することが訴訟において確定したことによって損害が生じたという事案ではなく、補助参加人から侵害警告を受けたにとどまるものであるところ、 被告は、本件特約は、第三者の特許権に抵触した場合に被告が責任を負うものであって、商品が第三者の特許権を侵害している事実ないし判断が確定した場合に限定され、未だ第三者から特許権侵害を主張されるにとどまっている段階では、被告に紛争対応に関する義務はないと主張する。 この点、本件特約は、典型的には、原告会社が第三者から特許権侵害を理由 に訴えを提起されて敗訴し、損害を被った場合の損失補償を規定したものと解 されるが、被告が商品の製造元として原告会社よりも技術的な知見等の情報を有している立場であることを前提に、単に事後的な金銭補償のみならず、被告の負担と責任において処理解決する積極的な作為義務をも規定しているから、原告会社が第三者から被告が原告会社に販売した商品が特許権に抵触することを理由に侵害警告を受けたときについても、被告において、原告会社の求め に応じて、原告会社に商品に係る技術的な知 いるから、原告会社が第三者から被告が原告会社に販売した商品が特許権に抵触することを理由に侵害警告を受けたときについても、被告において、原告会社の求め に応じて、原告会社に商品に係る技術的な知見や特許権等の権利関係その他の必要な情報を提供し、原告会社が必要な情報の不足により敗訴し、又は交渉上不当に不利な状況となり、損害が発生することのないよう協力する義務を負うものと解される。 他方で、本件特約上の対応義務は、あくまで原告会社に損害が発生すること を防止すべき義務であるから、被告は、原告会社がその経営判断により自ら決定した対応に反してまで独自に特許権侵害を主張する第三者に訴訟提起等の対抗手段を講ずべき義務を負うものとは解されない。 (2) 本件の交渉経過等証拠(後掲各証拠のほか、全体につき甲33、乙32、原告P1本人、被告 代表者本人(認定に反する部分を除く))及び弁論の全趣旨によれば、本件について補助参加人から原告会社等が特許権侵害の主張を受けた以降の交渉経過並びに原告会社及び被告の対応は、以下のとおりと認められる。 ア補助参加人は、平成24年5月に、アムテックスに対し、乙1特許権、甲4特許権の実施許諾をし(丙1)、アムテックスは、「ループボンド・タフバ インダー工法」との商品を展開していたものであるところ(丙2)、原告会社ないし被告が扱うSWCはSLBの刻印を省略しただけの同一品であるとの認識を持ち、SWCを用いた建設物の安全性などにも補助参加人なりの懸念を有していた。 平成28年11月ないし12月頃、原告会社は、かかる問題意識を持って いた補助参加人から特許権侵害に関して呼び出しを受け、原告P1、被告代 表者及び被告の依頼を受けたエール国際特許事務所のP6弁理士(以下 月頃、原告会社は、かかる問題意識を持って いた補助参加人から特許権侵害に関して呼び出しを受け、原告P1、被告代 表者及び被告の依頼を受けたエール国際特許事務所のP6弁理士(以下「P6弁理士」という。)が補助参加人の事務所に赴いた。補助参加人は、WC、SWC及びWCDが補助参加人の特許権に抵触すると主張したが、被告代表者はこれを否定した(原告P1本人)。 イ平成28年12月頃、原告会社は、穴吹工務店との間で、SWCの暫定採 用による取引を開始した。 ウ平成28年12月14日、被告は、P2から、被告代表者が乙1発明の共同発明者である旨をP2が認める旨が記載された共同開発者証明書(乙5)を入手した。 同月28日、原告会社は被告と連名で、SWCの暫定採用を決めていた長 谷工に対し、SWCが乙1発明の技術的範囲に属さない旨の見解を通知した。 長谷工は、同日、原告会社に対し、補助参加人との話し合いによる解決を希望する旨回答した(甲10、11)。 エ平成29年1月27日、補助参加人は、原告会社、被告及び穴吹工務店に対し、SWCが乙1特許権及び甲4特許権の技術的範囲に属する可能性が高 いこと、原告会社、被告及び穴吹工務店が連名で公開しているWCDの施工方法をSWCに使用した場合に甲5特許権の技術的範囲に属する可能性が高い旨を通知した(甲12)。 オ平成29年2月7日、被告の事務所において、補助参加人への対応について、原告会社及び被告とその依頼を受けたP6弁理士並びに株式会社大京 (以下「大京」という。)及び穴吹工務店とその依頼を受けたP4弁理士らによる協議が行われた。その結果、原告会社及び被告のグループが乙1特許権及び甲4特許権への対応を担当し、大京及び穴吹工務店のグループが甲5特許権への 。)及び穴吹工務店とその依頼を受けたP4弁理士らによる協議が行われた。その結果、原告会社及び被告のグループが乙1特許権及び甲4特許権への対応を担当し、大京及び穴吹工務店のグループが甲5特許権への対応を担当することとされた。 同月13日、P4弁理士らは、補助参加人への対応について、原告会社、 被告、大京及び穴吹工務店に対し、乙1特許権及び甲4特許権についても、 原告会社及び被告の費用負担でP4弁理士らが対応すること、乙1特許権については先使用権、冒認その他の無効主張が、甲4特許権については、非抵触の主張が、甲5特許権については、非抵触及び無効主張が、それぞれ考えられるので検討することや、利益相反については現時点ではないと考えられることを連絡した(乙32、及びその添付資料4)。 同月21日、P4弁理士は、穴吹工務店に対し、SWC及びWCDは、甲4特許権の技術的範囲に属さないこと、SWCは、乙1特許権の技術的範囲に属する蓋然性が極めて高いこと、SWC及びWCDは甲5特許権の技術的範囲に属さないことを主な内容とする鑑定書を提出した(甲29)。 カ平成29年3月21日、被告は、SWCに対する補助参加人の権利主張に 対抗して、乙6特許権に係る特許出願を行った(乙6)。 キ平成29年4月5日、補助参加人の事務所において、原告会社、穴吹工務店及び大京並びに原告会社らの代理人としてP4弁理士らと補助参加人との間の協議が行われた。P4弁理士は、補助参加人に対し、SWCは、甲4特許権及び甲5特許権の技術的範囲に属さず、乙1特許権には、平成10年 11月13日に東レから被告に送付されたFAXにより新規性が喪失している無効理由が、甲5特許権には、新規性ないし進歩性欠如の無効理由がそれぞれ存在する旨を主張し 、乙1特許権には、平成10年 11月13日に東レから被告に送付されたFAXにより新規性が喪失している無効理由が、甲5特許権には、新規性ないし進歩性欠如の無効理由がそれぞれ存在する旨を主張した。これに対し、補助参加人は、乙1特許権、甲4特許権及び甲5特許権について、原告会社及び被告に実施許諾し、アムテックスからWC、SWC、WCDに相当する製品を購入することとし、過去 の実施については金銭解決を提案した。P4弁理士は、原告会社、被告及び穴吹工務店が、特許問題が解決するまでの間WC、SWC、WCDについて実施に該当する行為をしないこと、過去の実績に基づく金銭解決については、原告会社、被告及び穴吹工務店において検討することを回答した(甲25)。 ク平成29年7月14日、原告P1は、長谷工及び武新との協議において、 長谷工から、社長、副社長その他の役員は補助参加人との特許権に関する問 題を十分承知しており、その上で、全く特許権を問題とせず、原告会社から武新を通じてSWCを長谷工が購入する取引の正式承認、平成29年上期以降の物件へのSWCの採用が正式に決まっている旨の説明を受け、被告にその旨報告した(甲16)。 同月24日、原告P1は、長谷工及び武新との協議において、長谷工から、 SWCを長谷工の標準工法として正式採用することや今後の具体的な購入見込み、今後の課題として、補助参加人の特許権に抵触しない新WCの実現や現行SWCの特許問題に関する法的手段による対処等を示されると共に、補助参加人との特許問題に関して、SWCの本採用決定に至るまで役員会議において賛否両論があったが、被告に正義があると判断して正式採用に至っ た旨の説明を受け、同月26日、被告にその旨報告した(甲17)。 ケ平成29年 て、SWCの本採用決定に至るまで役員会議において賛否両論があったが、被告に正義があると判断して正式採用に至っ た旨の説明を受け、同月26日、被告にその旨報告した(甲17)。 ケ平成29年8月2日、補助参加人は、原告会社に対し、WC及びSWCに関するウェブページ上の記載の削除及び特定の物件に関してWC及びSWCの見積書を出していることについての説明を要求し、同月31日までに対応がされない場合は、特許権に基づく差止めを求めて提訴する旨を通知した (甲18)。 コ平成29年9月1日、乙6特許権が設定登録された(乙6)。 サ平成30年1月頃、補助参加人の要請により、補助参加人と長谷工の直接交渉が行われ、補助参加人から長谷工に対し、過去の特許侵害ペナルティーを請求しない旨の条件が提示され、補助参加人と長谷工の間で和解が成立し た。長谷工は、原告会社に対し、武新を通じた原告会社とのSWCの取引を中止するが、SWCの在庫については補償する旨の意向を示した(甲33、34)。 シ平成30年1月30日、補助参加人は、原告会社及び被告に対し、SWCが乙1特許権及び甲4特許権に係る発明の技術的範囲に属すること、WC、 SWC及びWCDによる施工が甲5特許権に係る発明の技術的範囲に属す ることを理由に、WC、SWC及びWCDの販売の中止を要求し、これに応じない場合は法的手続きをとることを検討せざるを得ない旨の警告書を送付した(甲21、丙3)。 同年2月9日、被告は、P6弁理士を代理人として、補助参加人に対し、補助参加人の侵害主張の根拠が明らかではないため、根拠を具体的に明らか にするよう求める回答書を送付した(丙10)。 ス平成30年2月14日、原告会社は、被告に対し、同月13日に長谷工と協議し 助参加人の侵害主張の根拠が明らかではないため、根拠を具体的に明らか にするよう求める回答書を送付した(丙10)。 ス平成30年2月14日、原告会社は、被告に対し、同月13日に長谷工と協議した結果、在庫は完全補償とし、特許権問題解決後、即時再採用することの確約を得た旨を報告した。 同月26日、補助参加人は、乙6特許権について無効審判請求をした(乙 7)。 同年3月末日までに、長谷工は、武新を通じて原告会社から在庫補償のために購入していたSWCの取引を終えた(甲34)。 平成31年4月26日、被告及び補助参加人は、乙6特許権について、請求項の一部は無効であるが、その余に係る無効審判請求は成り立たない旨の 審決予告を受けた(丙26)。 (3) 対応義務違反の有無ア前記(2)の認定事実によれば、被告は、平成28年11月ないし12月頃、原告会社が補助参加人から最初に呼び出しを受けた際、P6弁理士に依頼して協力を求めると共に、原告会社がWC及びSWCの取引を継続できるよう、 補助参加人に対して、特許権侵害を否定する対応をとったこと、被告がLBやSLBの開発過程において重要な発案をし、商品の具体化及び実現に深く関与していたことから、補助参加人の主張に理由がなく、乙1特許権には共同出願違反の無効理由があって、補助参加人の主張には十分対抗できるものと判断し、同年12月14日には、P2から共同開発者証明書(乙5)を入 手し、速やかに被告代表者が乙1発明の発明者であることを裏付ける証拠の 収集を行ったこと、原告会社及びその取引先であった穴吹工務店の依頼したP4弁理士にもLB及びSLBの開発経緯を説明し、乙1特許権に係る出願前のFAX等の重要な資料の提供を行って、平成29年4月5日にP4弁理 ったこと、原告会社及びその取引先であった穴吹工務店の依頼したP4弁理士にもLB及びSLBの開発経緯を説明し、乙1特許権に係る出願前のFAX等の重要な資料の提供を行って、平成29年4月5日にP4弁理士が補助参加人に対し、特許権非侵害や無効の主張をする前提となる情報を提供したこと、原告会社の取引先であった長谷工に対してもLB及びSLB の開発経緯を説明し、資料を提供して、平成29年7月頃までに、長谷工が補助参加人との特許権問題について被告の主張が正しいためSWCを採用する旨の決断に至ったこと、それ以降も、原告会社と情報を共有しながら一貫して補助参加人による特許権侵害の主張に対抗する対応を続けたことが認められる。 また、平成29年4月頃までの補助参加人への対応については、原告会社とWCDを共同開発していた穴吹工務店とその依頼を受けたP4弁理士が主導しており、それ以降については、原告会社は、補助参加人の主張を問題とせずにSWCの採用を決断した長谷工の意向に従って、SWCの取引を推進したことが認められる。 そして、被告代表者が、接着補助具をコネクター兼用とし、コネクター部と係止部を樹脂で一体成形し、枠状の支持突起を設けることといった乙1発明の主要な構成を全て着想し、具体的な構成を創作したと主張しており、乙1発明の共同発明者であるP2が被告代表者も共同発明者であると述べていたこと(乙5。なお、P2は、後にこれを撤回する旨の書面(丙17)を 作成しているが、同書面が本件訴訟提起後に作成されたことなど本件からうかがわれる経緯等から、なお乙5の信用性を左右するには至らない。)、共同発明者でなければ、通常は入手しえない出願前に作成された文言修正途中の明細書案(乙25)を被告が入手していたこと、全く開発に関与しない単 る経緯等から、なお乙5の信用性を左右するには至らない。)、共同発明者でなければ、通常は入手しえない出願前に作成された文言修正途中の明細書案(乙25)を被告が入手していたこと、全く開発に関与しない単なる製造委託業者であれば交付される理由のない東レとのやり取りや東レの 内部資料等(乙2、4、10、11、14、15、24)が存在すること、 本件訴訟においてすら、補助参加人が有する発明者性に関する客観的資料は、乙1発明が完成して乙1特許権を出願しようとする時期以降に作成された東レから入手した資料のみであり(丙11、22)、発明者として乙1特許権の特許公報に記載された補助参加人の従業員については、乙1発明の構成について具体的に、いつ、発明者のうちの誰が、どの部分を着想し、誰がどの 程度関与して具体的構成の創作に至ったのかが全く明らかではなく、東レ又は補助参加人の従業員であった発明者全員で全部を同時に創作したかのような記載にとどまる陳述書(丙25)があるにすぎないことからすれば、補助参加人から特許権侵害の主張を受けた平成28年11月頃から長谷工が武新を通じての原告会社との取引を中止した平成30年3月までの間にお いて、乙1特許権が共同出願違反であって無効である旨の被告の主張には、十分な理由及び根拠資料があり、補助参加人の主張に対抗できる見込みのあるものであったといえる。 そうすると、被告は、補助参加人からの特許権侵害主張に対して、原告会社に損失が発生しないよう取引を継続すべく、弁理士とも相談の上、対抗主 張を検討し、原告会社のみならずその取引先とも対応を検討し、対抗主張をするに必要な情報の共有を行ったものであり、重要な情報の提供を怠ったとか、立証の見込みの乏しい情報を提供したとかといった事情は認められな 討し、原告会社のみならずその取引先とも対応を検討し、対抗主張をするに必要な情報の共有を行ったものであり、重要な情報の提供を怠ったとか、立証の見込みの乏しい情報を提供したとかといった事情は認められない。 原告会社が、補助参加人の主張に理由がないものと判断していたにもかかわらず、補助参加人に対して、積極的に訴訟や無効審判請求等を行わず、補助 参加人との交渉が行われたのは、もっぱら原告会社の取引先である穴吹工務店や長谷工の意向を受けた原告会社の判断によるものであって、その結果、被告の主張が正しいものと判断して補助参加人の権利主張を知りながらSWCの採用を決断した長谷工を始めとする原告会社の取引先が、原告会社や被告を除いた補助参加人との直接交渉により最終的にWCやSWCの取引 継続を中止したからといって、被告が本件特約上の対応義務違反をしたとい うことにはならない。さらに、原告会社は、被告の説明が誤っており、補助参加人の主張が正しいと判断したから、WC及びSWCの販売継続を断念したのではなく、平成30年に長谷工が補助参加人との直接交渉の結果、それまでの態度を翻してSWCの販売中止を決めたことから、原告会社のような企業が大企業に抵抗することはできないと判断して、それ以上の販売事業の 継続を断念したというのである(原告P1本人)から、同年4月以降に原告会社がWC及びSWCの販売事業を行っていないのは、被告とは何ら関係のない原告会社としての経営判断の結果にすぎないことが明らかである。 なお、補助参加人は、乙25の資料は、乙1特許権の出願後に、甲30特許権の出願の参考として被告に交付されたものであると主張するが、乙25 は、平成10年11月26日に、東レ及び補助参加人により多数の文言の修正が行われる前の明細書 1特許権の出願後に、甲30特許権の出願の参考として被告に交付されたものであると主張するが、乙25 は、平成10年11月26日に、東レ及び補助参加人により多数の文言の修正が行われる前の明細書案であり(丙11の6)、乙1発明の出願後にあえて現実に出願されたものと異なる明細書案を参考として被告に交付することは考え難く、同日以前に交付されたものというべきである。また当該明細書案は、発明者や出願人の記載がないものであるから、当時、被告において 被告代表者が乙1発明の発明者とされていないことを認識していたともいえない。 イ原告らは、被告が、自己の非を認めず、補助参加人の特許権侵害の主張に対してSWCについて特許権者であることを主張し、補助参加人の主張を争う姿勢であったため、原告会社がSLBをアムテックスから仕入れて販売す るという補助参加人からの解決策を受け入れる機会を失い、長谷工との取引など確実に見込まれた取引の機会を失ったと主張する。 しかしながら、前記アのとおり、被告は、被告代表者がWC及びSWCの開発に深く関与し、乙1発明の共同発明者であって、乙1特許権には共同出願違反の無効理由があると主張できる旨の根拠と資料を提供していたもの であり、これ自体が本件特約の趣旨に沿った対応である。また、P4弁理士 は、SWCが乙1発明の技術的範囲に属する蓋然性が高く、無効主張等で対抗すべき旨の見解を具体的に説明していた(なお、P6弁理士の見解(甲9)は、甲4特許権に抵触しない旨を述べたものであり、この点はP4弁理士の見解と一致する。)。そして、原告らにおいて被告や弁理士からの情報に基づいて補助参加人の主張を直ちには受け入れないという判断をしたものであ り、平成29年4月5日に補助参加人から提案を受けた の見解と一致する。)。そして、原告らにおいて被告や弁理士からの情報に基づいて補助参加人の主張を直ちには受け入れないという判断をしたものであ り、平成29年4月5日に補助参加人から提案を受けた後は、穴吹工務店においてはWC及びSWCの取引自体を中止する意向であり、長谷工においては、あくまで被告の製造するSWCを採用する意向であったのであるから、被告において追加的に何らかの対応をすべき義務があったとはいえない。 そもそも、原告会社がSLBをアムテックスから仕入れて長谷工等に販売 するのであれば、長谷工等がアムテックスから直接購入する場合と比較して価格面で不利になって採用されない(甲32)のであるから、原告会社が、平成29年4月5日当時、補助参加人の提案を受け入れる選択があり得たともいえない。 ウなお、原告らは、WC及びSWCについて補助参加人の特許権に抵触する と認められない場合は、原告らが本件訴訟で請求している損害賠償と補助参加人がWC及びSWCの販売を阻止したことの間に明らかな因果関係があるとして、補助参加人に対する訴訟告知をしたものであるが、前記(2)の事実経過に顕れているとおり、補助参加人が平成28年11月以降に原告会社らに特許権侵害の主張をしていた当時において、少なくともSWCが乙1発 明の技術的範囲に属する可能性が高いといえる状況にあったものである。そして、被告代表者が乙1発明の共同発明者であるとの主張については、原告会社らと補助参加人との交渉の場においては本訴訟における被告の主張と同程度に具体的には主張されていなかったものであり、被告代表者がP2ら東レの従業員と協力関係にあった者であって、乙1発明に係る東レ側からの 着想や具体的構成の創作が真実は被告代表者によって行われたものであっ 主張されていなかったものであり、被告代表者がP2ら東レの従業員と協力関係にあった者であって、乙1発明に係る東レ側からの 着想や具体的構成の創作が真実は被告代表者によって行われたものであっ たかどうかは、補助参加人において容易に確認し難いものであるから、補助参加人が、原告会社やその取引先である長谷工等に特許権侵害の主張をしたことが違法、不当であったとはいえないし、補助参加人が長谷工や穴吹工務店と交渉した結果、両社が原告会社との取引を中止する決断をしたことから原告会社が販売事業を断念したのは、最終的には前述のとおり原告会社なり の経営判断によるものであることからすると、補助参加人が原告らに対して何らかの責任を負うものとも考え難い。 エ以上によれば、その余の点を検討するまでもなく、被告に本件特約上の義務違反があるとはいえず、被告が原告らに対し、本件特約に係る債務不履行責任を負うものとは認められない。 3 争点5(瑕疵担保責任の有無)について原告らの主張は、民法562条、564条、565条を挙げるものであるが、そもそも、本件契約は、平成27年11月30日に締結されたものであるから、改正前民法が適用される(平成29年法律第44号附則34条1項)のであり、主張自体失当である。 仮に原告らの主張が改正前民法に基づく瑕疵担保責任の主張であるとしても、具体性を欠き判然としないが、本件契約が本件対象商品条項により、甲30特許権の実施品を売買することを約した契約と解釈されることを前提に、現実のSWCがコネクター部と樹脂で一体成形された可変形連結部を備えない点で甲30特許権の構成を備えないことが隠れた瑕疵(改正前民法570条)に当たると主 張しているものと解される。 しかしながら、前記1の ター部と樹脂で一体成形された可変形連結部を備えない点で甲30特許権の構成を備えないことが隠れた瑕疵(改正前民法570条)に当たると主 張しているものと解される。 しかしながら、前記1のとおり、本件契約は、WC及びSWCを売買の目的とする契約であり、本件対象商品条項に甲30特許権の特許番号が記載されているのは、そのうちSWCを示す趣旨で関連する特許権を表示したに過ぎないものであるから、甲30特許権の実施品を売買することを約した契約ではなく、原告ら の主張は、その前提を欠き、失当である。 しかも、原告P1及びアリタスは、本件契約締結前から、LB及びSLBをWC及びSWCとして販売すべく、穴吹工務店等に営業活動を行い、具体的な商品を納品するなどして採用の見込みを得て本件契約を締結するに至ったのであるから、およそSWCがコネクター部と樹脂で一体成形された可変形連結部を備えることが本件契約の内容となっていたものと解する余地はなく、当該構成を備え ないことが隠れた瑕疵に当たらないことも明らかである。 なお、原告らの主張する損害との関係でみても、SWCは、補助参加人の特許権との抵触が問題となったのであり、甲30特許権の発明の技術的範囲に属するか否かとは関係がなく、原告らにおいてSWCについて甲30特許権の権利範囲への属否によって原告会社の事業に具体的な支障が生じたことを主張している わけでもないから、主張自体失当である。 4 争点6(損害の発生及び額)についてこれまでに説示したところにより、被告は本件契約に基づく債務不履行責任その他の責任を負わないが、原告らの主張する損害に理由がないことについて、以下付言する。 (1) 原告P1の損害原告P1は、原告会社設立までに要した費 本件契約に基づく債務不履行責任その他の責任を負わないが、原告らの主張する損害に理由がないことについて、以下付言する。 (1) 原告P1の損害原告P1は、原告会社設立までに要した費用が、本件契約の債務不履行によって原告P1に生じた損害であると主張するが、本件契約は、原告会社と被告との間の契約であり、被告が原告P1に対して何らかの債務を負うものではなく、しかも、本件契約の締結前に原告会社の設立に要した費用が、被告会社の 本件契約上の債務不履行と因果関係がないことは明らかであるから、失当である。 (2) 原告会社の損害ア長谷工(武新)との取引に係る逸失利益原告会社は、長谷工とのSWCの取引が継続することを前提に逸失利益を 主張するが、そもそも、原告らは、被告が乙1発明の共同発明者であるなど と主張して補助参加人と戦う姿勢であったため、補助参加人が提示していた解決策によってSLBをアムテックスから仕入れて販売する機会を失ったことが損害であると主張しているのであり、被告のSWCを継続して販売することを想定した逸失利益の主張は、SWCが乙1特許権等との関係で販売できないものであったという自らの主張と相いれないものである。また、証 拠(甲32)によれば、長谷工がSWCを採用したのは、アムテックスのSLBよりも価格が安かったからであり、補助参加人の特許権が期間満了により失効した現在においても原告会社が長谷工との取引に復帰できる見込みがないのは、原告会社がアムテックスからSLBを仕入れて販売することになる分、長谷工への納入価格が加算されるからであるというのであるから、 原告会社が補助参加人の提案を受け入れて長谷工との取引を継続できる蓋然性が認められず、失当である。 イ穴吹工務店に になる分、長谷工への納入価格が加算されるからであるというのであるから、 原告会社が補助参加人の提案を受け入れて長谷工との取引を継続できる蓋然性が認められず、失当である。 イ穴吹工務店に対する補償金原告会社は、穴吹工務店が補助参加人に和解金を支払ったことから、原告会社が穴吹工務店から、補償金の支払い請求を受けていると主張する。しか しながら、穴吹工務店が支払ったとされる和解金の具体的根拠が明らかではなく、原告会社に損害が発生したとする理由も明らかではない上、何ら客観的な証拠もなく、採用の余地はない。 ウ WCの販売が軌道に乗るまでの活動費原告会社は、武新を通じた長谷工との取引が終了するまでの間、WC及び SWCを販売して利益を得ており、販売活動に要した費用(そもそも支出内容自体からそう言えるのか疑問であるものも散見される。)を損害ということはできないから、失当である。 5 争点7(本件報酬合意の存否)について原告会社は、本件報酬合意が成立したと主張するが、被告においてこれを否定 しているところ、本件報酬合意の成立に関する客観的な証拠はない。 また、原告会社の主張によっても、本件報酬合意の成立時期は明確ではなく、その内容も、成功報酬を売上額の7~10%とするもので、原告会社のどのような行為に対して報酬が発生し、何をもって取引が成功したとされるのか不明であるばかりか、報酬額の基準となる割合すら特定されておらず、報酬額がどのように定まるのかが定まっていない。証拠(甲24)によれば、南条と被告との取引 について、平成30年8月1日、原告会社が被告に対し、出張旅費や人件費等の経費の報告をしたことが認められるが、報酬に関する記載はない。 そうすると、南条と被告との取引 、南条と被告との取引 について、平成30年8月1日、原告会社が被告に対し、出張旅費や人件費等の経費の報告をしたことが認められるが、報酬に関する記載はない。 そうすると、南条と被告との取引に関して、原告会社と被告との間で具体的な報酬支払の合意が成立していたとは認められず、また、原告会社が被告のために具体的に報酬が支払われるべき行為をしたとも認めるに足りる証拠はないから、 原告会社の請求には理由がない。 なお、原告会社は、本件報酬合意に基づき、被告に対し南条との取引について経費も請求しているが、原告会社の主張する本件報酬合意の内容との関係で根拠が明らかではない上、南条と被告の取引は金型の試作後、商品の開発段階で頓挫しており(甲24、33)、原告会社において何らかの貢献があったかも定かでは ないから、採用できない。 6 争点8(本件言動の有無及び違法性)について原告P1は、被告代表者から本件言動を受けたと主張するが、被告においてこれを否定しているところ、本件言動があったことに係る客観的な証拠はなく、また、原告P1の供述する本件言動が行われた前後のやり取りやその場の状況も具 体性に乏しく、本件言動の存在は認められない。 また、原告P1の主張を前提にしても、本件言動は、本件契約に基づく取引関係にあった株式会社の代表者同士の間での発言であり、その内容も、補助参加人との間でSWCに係る特許権侵害が問題となっているのは原告P1に責任があるとの認識を述べたものにすぎず、およそ原告P1に対する不法行為を構成する 違法性のある言動とはいえない。 よって、原告P1の慰謝料請求には理由がない。 第5 結論以上によれば、その余の点を検討するまでもなく、原告らの請求は、いずれも理由が 違法性のある言動とはいえない。 よって、原告P1の慰謝料請求には理由がない。 第5 結論 以上によれば、その余の点を検討するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がない。よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松阿彌隆 裁判官 杉浦一輝 裁判官 布目真利子【別紙省略】
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