平成20(行ウ)464 従前資産価額増額請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年3月27日 東京地方裁判所 公用負担・公用収用など
ファイル
hanrei-pdf-38032.txt

判決文本文11,828 文字)

- 1 -主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求東京都収用委員会が平成20年1月31日付けで原告らに対してした都市再開発法85条に基づく裁決に係る同法73条1項3号の宅地の価額を,原告ら各自につき各1億7444万2959円と変更する。 第2事案の概要本件は,α地区第一種市街地再開発事業(以下「本件事業」という)の施。 (「」。)行地区内に所在する別紙物件目録記載の各土地以下本件各土地というの共有者である原告らが,都市再開発法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額につき,被告が権利変換計画で定めた価額の評価を不服として,同法85条1項の規定による裁決の申請をしたところ,東京都収用委員会から,平成20年1月31日付けで,被告が権利変換計画で定めた価額をもって同号の宅地の価額とする旨の裁決(以下「本件裁決」という)を受けたことから,そ。 の価額の評価を不服として,同条3項の規定により本件裁決に係る同号の宅地(本件各土地)の価額の変更(増額)を求めている事案である。 都市再開発法の関係規定の定め(以下の(1)ないし(3)において,同法の規定は条名のみを掲げる)。 (1)従前資産の価額及びその評価ア73条1項市街地再開発事業の施行者は,権利変換計画において,次に掲げる事項を定めなければならない。 ①施行地区内に宅地,借地権又は権原に基づき建築物を有する者で,当該権利に対応して,施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等を与えられることとなるものが,施行地区内に有する宅地,借- 2 -地権又は建築物及びその価額(3号)②床面積が著しく小であるため,施設建築物の一部又はその施設建築物の一部についての借家権が与えられないこ こととなるものが,施行地区内に有する宅地,借- 2 -地権又は建築物及びその価額(3号)②床面積が著しく小であるため,施設建築物の一部又はその施設建築物の一部についての借家権が与えられないこととなるものが,施行地区内に有する宅地,借地権又は建築物及びその価額(11号)③施行地区内の宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利(以下「従前資産」という)を有する者で,この法律の規定により,権利変換期。 日において当該権利を失い,かつ,当該権利に対応して,施設建築敷地若しくはその共有持分若しくは施設建築物の一部等(以下「従後資産」という)又は施設建築物の一部について借家権を与えられないこ。 ととなるものが,施行地区内に有する失われる宅地若しくは建築物又は権利及びその価額(12号)イ80条1項73条1項3号の従前資産(上記ア①の宅地,借地権又は建築物)の価額は,次の①ないし③のいずれかの日(以下「評価基準日」という)に。 おける近傍類似の土地,近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。 ①市街地再開発組合の設立認可の公告があった日から起算して30日を経過した日(71条1項)②上記①の期間経過後6月以内に権利変換計画の縦覧の開始がされないときは,当該6月の期間を経過した日から起算して30日を経過した日(同条5項前段)③上記②の30日の期間経過後更に6月を経過しても権利変換計画の縦覧の開始がされないときは,当該6月の期間を経過した日から起算して30日を経過した日(同項後段)従前資産に係る補償及び清算( ) 91条1項ア- 3 -,(「」。)施行者は施行地区内の従前資産を有する者以下地権者というで,都市再開発法の規定に 過した日(同項後段)従前資産に係る補償及び清算( ) 91条1項ア- 3 -,(「」。)施行者は施行地区内の従前資産を有する者以下地権者というで,都市再開発法の規定により,権利変換期日において当該権利を失い,かつ,当該権利に対応して,従後資産又は施設建築物の一部についての借家権を与えられないものに対し,その補償として,権利変換期日までに,80条1項の規定により算定した相当の価額に評価基準日から権利変換計画の認可の公告の日までの物価の変動に応じる修正率を乗じて得た額に,当該権利変換計画の認可の公告の日から補償金を支払う日までの期間につき年6%の割合により算定した利息相当額を付してこれを支払わなければならない。 イ103条1項施行者は,第一種市街地再開発事業の工事が完了したときは,すみやかに,当該事業に要した費用の額を確定するとともに,その確定した額及び80条1項に規定する相当の価額を基準として,従後資産を取得した者又は施行者の所有する施設建築物の一部について77条5項ただし書の規定により借家権が与えられるように定められ,88条5項の規定により借家権を取得した者ごとに,従後資産の価額,施設建築敷地の地代の額又は施行者が賃貸しする施設建築物の一部の家賃の額を確定し,これらの者にその確定した額の通知をしなければならない。 ウ104条1項前段103条1項(上記イ)の規定により確定した従後資産の価額とこれを与えられた者がこれに対応する権利として有していた従前資産の価額とに差額があるときは,施行者は,その差額に相当する金額を徴収し,又は交付しなければならない。 (3)従前資産の価額に係る争訟手続ア85条1項権利変換計画における73条1項3号の従前資産(上記ア①の宅地,借地権又は建築物)の価額について83 金額を徴収し,又は交付しなければならない。 (3)従前資産の価額に係る争訟手続ア85条1項権利変換計画における73条1項3号の従前資産(上記ア①の宅地,借地権又は建築物)の価額について83条2項の意見書を提出し,同条3項- 4 -の規定によりこれを採択しない旨の通知を施行者から受けた者は,収用委員会に従前資産の価額の裁決を申請することができる。 イ85条3項(),85条1項上記アの規定による収用委員会の裁決に不服がある者は土地収用法133条2項及び3項の規定に準じて,従前資産の価額に関する訴えを提起することができる。 前提となる事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)被告は,東京都文京区α地区を施行地区とする第一種市街地再開発事業(),,本件事業の施行者である市街地開発組合であり平成17年2月25日東京都知事から設立の認可を受け,同日,その設立の認可の公告がされた。 (甲1,6,7),,(2)原告らは本件事業に係る施行地区内にある本件各土地の共有者であり原告ら各人の持分は,本件各土地につき,それぞれ56分の10(合計56分の40)である(甲6,7)。 (3)被告は,権利変換計画の策定に当たり,平成17年12月26日の臨時総会において,同計画における従前資産の評価の取扱基準として「従前資産評価基準(甲7別添資料7枚目。以下「本件取扱基準」という)を採る」。 ことを決議し同基準の9条宅地の評価2項において宅地の価格単,(),「(価)は,地価公示価格,基準地価格,近傍類似の土地取引価格及び価格形成上の諸要因を考慮して求めた標準地の正常価格を基準として,これに各画地の接道条件,公法上の規制,形状,規模等の個別的要因に 「(価)は,地価公示価格,基準地価格,近傍類似の土地取引価格及び価格形成上の諸要因を考慮して求めた標準地の正常価格を基準として,これに各画地の接道条件,公法上の規制,形状,規模等の個別的要因による個別格差修正を行って求めた価格に,事業による評価の増加分を加えた価格とする」と。 定めた(以下,上記「事業による評価の増加分」を「開発利益」という。 。)(甲7)(4)被告は,平成18年11月24日の臨時総会において,本件取扱基準に従って策定した権利変換計画(以下「本件権利変換計画」という)の採択。 - 5 -を決議し,本件権利変更計画において,本件各土地につき,1m当たりの 土地価格に1m当たりの開発利益58万9000円を加算して得た額に土 地面積底地割合及び共有割合を乗じた上で同法73条1項3号の宅地本,,(件各土地)の価額を,別表1「権利変換計画において定めた価額の内訳」の価額欄(合計)のとおり,原告aにつき1億1385万5000円,その余の各原告につき各1億1386万0000円と定めた(なお,被告は,土地価格の査定に当たり,借地権の及ぶ範囲をもって一画地とみなし,別表1記載のとおり,K-53ないし58及びK-64ないし70の合計13の画地に区分して評価した(甲6,7)。)。 (5)被告は,平成18年11月26日,本件権利変換計画の縦覧を開始した(なお,本件事業に係る都市再開発法80条1項所定の評価基準日は,平成18年5月27日である(甲6)。)。 (6)原告らは,被告に対し,都市再開発法83条2項に基づき,同法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額は各原告につき各2億7882万9000円である旨を記載した平成18年12月9日付けの各意見書を,それぞれ提出した(甲2の1ないし4。 )(7)被告は, 73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額は各原告につき各2億7882万9000円である旨を記載した平成18年12月9日付けの各意見書を,それぞれ提出した(甲2の1ないし4。 )(7)被告は,原告らに対し,都市再開発法83条3項に基づき,平成19年1月16日付けで,上記(6)の原告らの各意見書を採択しない旨の通知をした(甲3)。 (8)原告らは,上記(7)の通知を受け,都市再開発法85条1項に基づき,東京都収用委員会に対し,平成19年2月14日付けで,同法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額につき,裁決の申請をした(甲4)。 (9)東京都知事は,平成19年3月16日,都市再開発法72条1項に基づき,本件権利変換計画について認可をした(甲7別添資料1枚目)。 (10)東京都収用委員会は,平成20年1月31日付けで,原告らに対し,本件権利変換計画で定められた価額をもって同法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額とする旨の本件裁決をした。本件裁決においては,本件各土- 6 -地の1m当たりの土地価格及び底地割合は本件権利変換計画よりも高額・ 高率とされたが,1m当たりの評価土地価格に開発利益を加算しないで土 地面積,底地割合及び共有割合を乗じて価額の算定が行われ(なお,別表1と同様に,本件各土地は合計13画地に区分して評価された,同法80。)条1項の規定により算定した本件各土地の相当の価額は,別表2「収用委員会が相当とする価額の内訳」の価額欄(合計)のとおり,各原告につき各1億0248万8832円とされ,本件権利変換計画で定められた上記(4)の価額よりも低額となったが,同法85条1項において準用される土地収用法94条8項により,被告の申立ての範囲内において本件権利変換計画で定められた価額をもって同法73条1項3 で定められた上記(4)の価額よりも低額となったが,同法85条1項において準用される土地収用法94条8項により,被告の申立ての範囲内において本件権利変換計画で定められた価額をもって同法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額とされた(甲6)。 ,,。()(11)原告らは平成20年7月30日本件訴えを提起した顕著な事実 争点及び争点に対する当事者の主張の要旨(1)本件の争点は,都市再開発法85条1項の規定による裁決において,同法73条1項3号の従前資産(宅地)の価額を算定するに当たり,市街地再開発事業による開発利益を加算すべきか否かである。 なお,本件各土地について,1m当たりの土地価格及び底地割合が東京 都収用委員会が相当とした金額及び割合(別表2「収用委員会が相当とする」),価額の内訳の土地価格欄及び底地割合欄記載の金額及び割合であること1m当たりの開発利益が被告の定めた58万9000円であること(前記 前提事実(4)参照)は,いずれも当事者間に争いがない。 (2)本件の争点に対する当事者の主張の要旨は,後記第3の2に掲記するもののほか,以下のとおりである。 (原告らの主張の要旨)東京都収用委員会が相当とした土地価格及び底地割合に被告が定めた開発利益を加算して計算した金額を,本件各土地に係る従前資産の価額とすべきである。 - 7 -被告の総会において,権利変換計画の基準となる従前資産の評価基準として,取引価格に開発利益を加算して従前資産の価額を算定する本件取扱基準の採択決議がされ,かつ,本件取扱基準に従って策定された権利変換計画の採択決議がされ,審査委員の承認や東京都知事の認可も得ている以上,被告と被告の組合員である原告らとの間においては,本件取扱基準は,従前資産の評価基準としての規範性を有してい 策定された権利変換計画の採択決議がされ,審査委員の承認や東京都知事の認可も得ている以上,被告と被告の組合員である原告らとの間においては,本件取扱基準は,従前資産の評価基準としての規範性を有しているから,収用委員会は,本件取扱基準を無視して裁決をすることはできず,形式的当事者訴訟である本訴においても,内部規範である本件取扱基準を適用して判断しなければならない(被告の主張の要旨)都市再開発法73条1項3号の従前資産の価額は同法80条1項に従って算定されるべきところ,同法80条1項所定の相当の価額は,その文言からして,開発利益を含むことを予定していない。 市街地再開発組合が従前資産の価額について開発利益を加味する取扱い自体は,市街地再開発事業の円滑な遂行を図る趣旨のものであって,同法の趣旨に反するものではないというにすぎない。 第3争点に対する判断1(1)都市再開発法80条1項は,同法73条1項3号の従前資産(宅地,借地権又は建築物)の価額を,評価基準日における近傍類似の土地,近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利(以下「近傍類似資産」という)の取引価格等を考慮して定める相当の価額。 とすると定めており,同法80条1項の上記の文言及び構造によれば,同法73条1項3号の従前資産の価額,すなわち,同法80条1項所定の相当の価額は,評価基準日における従前資産の評価額をいうものであり,権利変換計画の決定前の日である評価基準日の時点における近傍類似資産の取引価格その他の諸事情を考慮して定められるべきものと解するのが相当であって,開発利益は,評価基準日後の権利変換計画の認可及び権利変換期日を経た市街地再開発事業の進展及びその完成によって生ずるものである以上,都市再- 8 -開発法上,従前資産に係る上記「 が相当であって,開発利益は,評価基準日後の権利変換計画の認可及び権利変換期日を経た市街地再開発事業の進展及びその完成によって生ずるものである以上,都市再- 8 -開発法上,従前資産に係る上記「相当の価額」の算定において,評価基準日後の事後的な事情に基づいて発生する開発利益は考慮すべき対象に含まれていないものというべきである。 都市再開発法80条1項所定の相当の価額は,従前資産の地権者のうち,権利変換期日において,当該権利を失い,当該権利に対応して従後資産を与えられない者との関係では,補償金の額を算定する基準となり(同法91条,従後資産を与えられる者との関係では,清算金の額を算定する基準と)なるものであり(同法104条1項,これらの規定にかんがみれば,都市)再開発法は,財産権の保障の見地から,市街地再開発事業によって従前資産の地権者が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的として,補償金及び清算金並びにその算定基準に関する規定を設けているものと解され,かかる観点からは,従前資産に関する権利の喪失の前後を通じて従前資産の地権者の保有する資産の財産価値が等しくなるように補償金及び清算金の額を定めるべきであり,従前資産の地権者が近傍において従前資産と同等の代替地等を取得し得る金額を補償することを要しかつそれで足りるものと解されるな,,(お,最高裁昭和48年10月18日第一小法廷・民集27巻9号1210頁参照。 )そして,この従前資産の地権者が近傍において従前資産と同等の代替地等を取得し得る金額は,同法80条1項の規定により評価基準日における近傍類似資産の取引価格等を考慮して定める相当の価額であり,したがって,上記のいずれの観点からも,同項所定の相当の価額に開発利益は含まれないものと解されるので,これに開発利益が含まれるとする原告 る近傍類似資産の取引価格等を考慮して定める相当の価額であり,したがって,上記のいずれの観点からも,同項所定の相当の価額に開発利益は含まれないものと解されるので,これに開発利益が含まれるとする原告らの主張は理由がない。 (2)なお,市街地再開発事業の施行者である被告において,権利変換計画における従前資産の価額の算定において開発利益を加算する取扱い(本件取扱基準)が採られたことは,都市再開発法の規定により本来考慮すべき事情以外の事情も算定要素に加えることにより,施行者に帰属すべき将来の事業利- 9 -益の一部を補償金の額に上乗せすることで,補償金を巡る争訟等の時間と費用を節減し,市街地再開発事業の円滑な遂行を図る趣旨で行われたものと推認されるところ(弁論の全趣旨,本件権利変換計画で定められた同法73)(),,条1項3号の宅地本件各土地の価額は開発利益を加算した点において同法80条1項所定の相当の価額を超過するものといえるが,上記(1)のとおり都市再開発法の補償金及びその算定基準に関する規定は従前資産に係る財産権の保障を目的とするものであり,市街地再開発事業の円滑な遂行も同法の目的に適合するものであることにかんがみると,その超過によって,本件権利変換計画のうち同法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額を定めた部分が直ちに違法となるものではないと解するのが相当である。 そして,前記前提事実(10)のとおり,本件裁決においては,同法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額について,開発利益を加算しないで適法に算定された同法80条1項所定の相当の価額(各1億0248万8832),()円が本件権利変換計画で定められた価額各1億1385万5000円を下回ることから,同法85条3項において準用される土地収用法94条 1項所定の相当の価額(各1億0248万8832),()円が本件権利変換計画で定められた価額各1億1385万5000円を下回ることから,同法85条3項において準用される土地収用法94条8項により,被告の申立ての範囲内において本件権利変換計画で定められた価額が同法73条1項3号の宅地の価額とされたものであり,上記のとおり本件権利変換計画で定められた価額自体が違法ではない以上,本件裁決は適法であり,同裁決に係る同号の宅地の価額は変更を要しないものというべきである。 上記1の検討を踏まえ,以下,原告らの主張について検討する。 (1)原告らは,本件取扱基準が従前資産の評価基準としての規範性を有して,,,いるから収用委員会は本件取扱基準を無視して裁決をすることはできず本訴においても,本件取扱基準を適用して判断しなければならない旨主張する。 しかしながら,都市再開発法85条1項の規定による裁決及びこれに係る同条3項の規定による訴訟において,収用委員会及び裁判所は,従前資産の- 10 -価額について,同法の規定により相当と認められる価額を認定し,その認定額が権利変換計画の定め又は裁決に係る価額を上回るときはその定め又は裁決を違法とすべきものと解されるところ,都市再開発法は同法80条1項において従前資産の価額の評価基準を法定している以上,同法80条1項の規定により算定した相当の価額がその認定の対象となることは明らかであり,施行者が権利変換計画の策定の過程で同法80条1項所定の評価基準と異な,,る取扱基準を採る旨の決議をしたとしてもこのような事実上の取扱基準は法令の根拠を欠くものである以上,上記の裁決及び訴訟における収用委員会及び裁判所の判断を何ら拘束するものではなく,収用委員会及び裁判所は,かかる取扱基準の有無にかかわ もこのような事実上の取扱基準は法令の根拠を欠くものである以上,上記の裁決及び訴訟における収用委員会及び裁判所の判断を何ら拘束するものではなく,収用委員会及び裁判所は,かかる取扱基準の有無にかかわらず,専ら同法80条1項所定の評価基準に基づいて同項の規定により算定した相当の価額を認定すべきであり,かつ,それで足りるというべきであるから,本件取扱基準に関する原告らの上記主張は理由がない。 (2)原告らは市街地再開発事業を前提とする土地の物理的要因即地的地,,(域限定・場所限定)要因,行政的要因の変更を踏まえて従前資産の評価がされるべきであり,開発利益はこれらの要因の変化に応じて段階的に発生するもので,評価基準日の時点において既に発生しているものであるから,従前資産の評価にも開発利益が当然に考慮されるべきである旨主張する。 しかしながら,都市再開発法80条1項の相当の価額は,評価基準日における近傍類似資産の取引価格等を考慮して定めるものであり,評価基準日において,既に近傍類似資産の取引価格に市街地再開発事業による市街地の活性化,利便性の向上等の将来発生する開発利益が加味されて反映されている場合には,近傍類似資産の取引価格を介して,事実上,従前資産の評価に開発利益が加味されたと同様の結果になることはあり得るとしても,上記1のとおり,同法の定めとしては,同法80条1項の文言・構造上,同項の相当の価額の算定において,評価基準日後の事情により将来発生する開発利益が別個に加算されることは予定されていないので,原告らの上記主張は理由が- 11 -ない。 (3)原告らは,開発利益を従前資産の評価に算入しない場合,同じ地権者であっても,地区外へ転出する者がある場合に,開発利益は権利変換を受ける者だけに配分され,転出者との間に不公平が発生 -ない。 (3)原告らは,開発利益を従前資産の評価に算入しない場合,同じ地権者であっても,地区外へ転出する者がある場合に,開発利益は権利変換を受ける者だけに配分され,転出者との間に不公平が発生し得る旨主張し,甲8の文献(都市再開発事業コンサルタント・コーディネーターの執筆に係るもの)には,この主張に沿う趣旨の記述として,権利変換を受ける者は権利床価格(法104条1項の従後資産の価額)と時価との差額相当の開発利益の配分を受けるが,転出者はその配分を受けられず,不公平が発生する旨の記載がある。 しかしながら,権利変換計画によって与えられた従後資産の価額と従前資産の価額とに差額があるときは,清算をすることが義務付けられており(同法104条1項,法的には,権利変換を受ける者が,権利変換計画に定め)られた従前資産の価額以上の利益を得ることはできないものとされており,,,同法の構造上権利変換を受ける者と権利変換を受けない者との間において法的に不公平な得失が発生する余地はない。仮に,事実上,権利床価格(同法104条1項の従後資産の価額)と時価との間に差額が生ずるとすれば,それは従後資産の価額の定め方の問題であり,そのことが従前資産に係る同,,法80条1項の価額の法的解釈を左右するものとはいえずいずれにしても原告らの上記主張は理由がない。 (4)原告らは,都市再開発法73条1項3号の従前資産の価額は,同法80条1項所定の相当の価額とすると定められているのであるから,同法80条1項で排除されている算定方法で同法73条1項3号の従前資産の価額を権利変換計画において定めることは許されないことになり,被告が同法73条1項3号では開発利益の加算が許されるとするのは矛盾している旨主張する。 しかしながら,上記1(2)で検討したとおり,本件権利変 利変換計画において定めることは許されないことになり,被告が同法73条1項3号では開発利益の加算が許されるとするのは矛盾している旨主張する。 しかしながら,上記1(2)で検討したとおり,本件権利変換計画で定められた同法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額は,開発利益を加算し- 12 -,,た点において同法80条1項所定の相当の価額を超過するものといえるが都市再開発法の補償金及びその算定基準に関する規定は従前資産に係る財産権の保障を目的とするものであり,当該取扱いの企図と推認される市街地再開発事業の円滑な遂行も同法の目的に適合するものであることにかんがみると,その超過によって,本件権利変換計画のうち同法73条1項3号の宅地(本件各土地)の価額を定めた部分が直ちに違法となるものではないと解するのが相当であり,原告らの上記主張は理由がない。 (5)原告らは,都市再開発法110条の全員同意型の市街地再開発事業にお,,,いては同法80条の適用がないので開発利益の配分が認められているがそれ以外の場合であっても権利者が集まって事業を遂行する立場は同様であるのに,同法80条の適用によって開発利益の配分が認められないならば,その不均衡は明らかである旨主張する。 しかしながら,都市再開発法上,同法80条の適用が除外されるのは,権利変換期日に生ずべき権利の変動その他権利変換の内容につき,地権者及び参加組合員又は特定事業参加者の全員の同意を得た場合に限られており,これらの全員の同意が得られないにもかかわらず同法80条の適用を除外することは,同法の明文に反し許されない。そもそも,同法80条の適用が除外されるのは,権利変換の内容について地権者等の全員の同意がある以上,権利変換計画に定めた従前資産の価額の多寡にかかわらず,地権者の保護に欠ける結 文に反し許されない。そもそも,同法80条の適用が除外されるのは,権利変換の内容について地権者等の全員の同意がある以上,権利変換計画に定めた従前資産の価額の多寡にかかわらず,地権者の保護に欠ける結果となるおそれがないことによるものであり,権利変換の内容について地権者等の全員の同意が得られないにもかかわらず同法80条の適用を除外すると,従前資産の価額が同法80条1項所定の相当の価額を下回った場合には,地権者の保護に欠ける結果となり,同法の趣旨に反する結果を招来することは避けられない。したがって,原告らの上記主張は理由がない。 (6)原告らは,原告ら以外の組合員については,開発利益の全額が配分されているのに,原告らについては,土地価格と都市再開発法80条1項所定の相当の価額との間の差額(不足額)に開発利益が充当される結果,他の組合- 13 -員と異なり,開発利益の一部しか配分されない結果となり,組合員間の実質的な公平に反している旨主張する。 しかしながら,前記1で検討したとおり,本訴における審判の対象は,本件裁決の適法性,すなわち,本件裁決に係る同法73条1項3号の従前資産(宅地)の価額が同法80条1項所定の相当の価額を下回るか否かであり,本件裁決に係る同法73条1項3号の従前資産(宅地)の価額が同法80条1項所定の相当の価額を下回るものではないと判断される以上,本件裁決は適法であり,その変更を求める理由はないことになるから,仮に原告らと他の組合員との間で同法80条1項所定の相当の価額を超過する部分の配分が異なるとしても,そのことによって,本訴における本件裁決の適否及びその変更の要否の判断に影響が及ぶものではなく,原告らの上記主張は理由がない。 (7)以上によれば,都市再開発法85条1項の規定による裁決において,同法73条1項3号の における本件裁決の適否及びその変更の要否の判断に影響が及ぶものではなく,原告らの上記主張は理由がない。 (7)以上によれば,都市再開発法85条1項の規定による裁決において,同法73条1項3号の従前資産(宅地)の価額を算定するに当たり,市街地再開発事業による開発利益を加算すべき旨の原告らの主張は,いずれも理由がなく,原告らのその余の主張も,前記1の判断を左右するものとは認められない。 第4 結論 よって,原告らの請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官岩井伸晃裁判官本間健裕- 14 -裁判官倉澤守春

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る