平成16年(ワ)第4788号損害賠償請求事件主文 原告の主位的請求をいずれも棄却する。 被告Aは,原告に対し,1626万8000円及びこれに対する平成16年12月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告の被告Bに対する予備的請求及び被告Aに対するその余の予備的請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告に生じた費用の2分の1と被告Bに生じた費用を原告の負担とし,原告に生じたその余の費用と被告Aに生じた費用を10分し,その1を被告Aの,その余を原告の負担とする。 この判決は,主文第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求(主位的請求) 被告らは,原告に対し,別紙1物件目録1ないし31記載のコンテナを引き渡せ。 被告らは,原告に対し,連帯して,9606万1330円及び平成18年2月1日から別紙1物件目録1ないし31記載のコンテナの引渡し済みまで1か月315万1750円の割合による金員を支払え。 (予備的請求)被告らは,原告に対し,連帯して,6億4469万7835円及びこれに対する平成16年12月25日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告の代表取締役であった被告Aの家族により設立された被告Bが 貸コンテナ事業を営んでいたことにつき,原告が,被告Aは被告Bの事実上の主宰者であることを前提に,主位的には,原告と被告Aとの間の委任又はその類推の関係によりコンテナの引渡し及び引渡しの遅延による損害賠償を求め,予備的には,被告Aの競業避止義務違反又は不法行為による損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年12月25日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提 告Aの競業避止義務違反又は不法行為による損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年12月25日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実当事者間に争いのない事実,証拠(甲1の1ないし44-(2),3ないし8,12の1ないし4,19,20,37,乙9,11の1ないし4,25の1・2,39の1ないし4,40の1ないし24,42ないし44(枝番を全て含む),原告代表者C尋問の結果,被告A本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 当事者等ア原告は,昭和22年5月12日,D有限会社として設立され,昭和25年9月28日,A有限会社と商号変更されて,更に昭和53年12月8日,A株式会社に組織変更された。原告は,平成16年現在,資本金4500万円,発行済株式総数9万株の株式会社であり,製綿及びその販売,コンテナ倉庫の賃貸並びにリース業を営んでいる。 イ原告は,亡Eが設立した会社であり,同人が原告の代表取締役を退任した後は,その長男の被告A,次男のC及び三男のFが中心となって,原告の業務に従事していた。 被告Aは,昭和53年7月21日に原告の取締役に就任し,昭和62年5月8日から平成16年4月28日まで,原告の代表取締役であった。 Fは,昭和62年5月8日に原告の取締役に就任し,その後平成16年4月28日には原告の代表取締役に就任し,現在も原告の代表取締役である。 Cは,原告の取締役に就任後,平成13年8月10日にいったん取締役を退いたが,平成16年8月18日,再び取締役に就任した。現在は,Fとともに原告の代表取締役である。 ウ被告Aには,次の家族がいる。 (ア) G(妻)(イ) H(長女)(ウ) I(次女,現在は婚姻によりJである。)(エ) 8日,再び取締役に就任した。現在は,Fとともに原告の代表取締役である。 ウ被告Aには,次の家族がいる。 (ア) G(妻)(イ) H(長女)(ウ) I(次女,現在は婚姻によりJである。)(エ) K(長男)(オ) L(Kの妻)エ原告の関連会社及び子会社については,以下のとおりである。 (ア) M株式会社(旧商号・N株式会社)昭和28年5月25日に設立され,各種製綿材料の売買等を目的とする会社である。 (イ) O株式会社(以下「O」という。)洋布団を製造する会社の営業の譲渡を受けるために昭和55年4月25日に設立された会社であったが,その後,原告の仕事の一部を行うようになり,布団の製造業の業務を縮小した際に休眠会社となった。しかし,平成9年ころ,コンテナ事業を始めた。 (ウ) P株式会社(旧商号・P寝装株式会社)昭和55年9月24日に設立され,農業協同組合(以下「農協」という。)の組合員を顧客とする小売業を営んでいる会社である。 (エ) なお,平成7年には,原告の子会社として,中華人民共和国に,Q有限公司が設立された。 (2) 原告のコンテナ事業についてア原告は,平成5年ころ,被告A,C及びFの共有する土地(名古屋市a区bc丁目d,e番)にコンテナを設置して,貸しコンテナ事業を開始し,以 来,コンテナ倉庫の賃貸及びリース業を行ってきた。 イ原告の行う貸コンテナ事業とは,貨物運搬用のコンテナを土地(原告の所有地又は賃借地)に設置し,屋根などの附属設備をつけて,倉庫などの使用のための貸コンテナとして顧客に賃貸して,その賃料収入を得るというものである。 ウ原告は,専ら,Pの顧客である農協の組合員の所有している土地をコンテナの設置場所として賃借し,貸コンテナ事業用の土地を確保していた。 その際,農協との交渉を担当していたのは被告Aで うものである。 ウ原告は,専ら,Pの顧客である農協の組合員の所有している土地をコンテナの設置場所として賃借し,貸コンテナ事業用の土地を確保していた。 その際,農協との交渉を担当していたのは被告Aであった。 エ貸コンテナ事業については,初期の設備投資として,コンテナの購入費用,屋根等の設置費用,コンテナの設置場所が賃借地である場合には賃貸借契約上の預託保証金が必要である。 (3) 被告Bの貸コンテナ事業についてア被告Bは,コンテナ倉庫の賃貸及びリース業を行うことを目的として,平成13年7月5日に設立された。 役員としては,設立当初,Hが代表取締役に,J及びLが取締役にそれぞれ就任した。その後,平成14年2月11日に被告AとKが,同年10月8日にGが取締役にそれぞれ選任された。 被告Bの本店所在地は,設立当初,東京都杉並区fg丁目h番i号であったが,その後,現在の本店所在地に変更された。なお,これらの本店所在地は,いずれもHの自宅住所地である。 イ被告Bは,名古屋市及びその周辺において,別紙1物件目録1ないし31記載の土地を地主から賃借して,その土地にそれぞれコンテナを設置して顧客に賃貸し,貸コンテナ事業を営んでいる。以下,これらコンテナを「本件コンテナ」という。 被告Bが貸コンテナ事業を行う際に必要な土地は,主に,Pの顧客である農協の組合員の土地を賃借することで調達していた。その際,賃借人の 名義は原告であり,連帯保証人は被告Aであった。また,被告Bが利用していた土地の賃料については,原告の銀行口座を通じて地主に支払われていた。 ウ被告Bは,上記貸コンテナ事業を行う際,コンテナの仕入先をR株式会社及びS株式会社に,コンテナの運搬をT株式会社に,クレーン作業をU株式会社に,屋根工事をV株式会社に,電気工事をW有限会社に,舗装工事 Bは,上記貸コンテナ事業を行う際,コンテナの仕入先をR株式会社及びS株式会社に,コンテナの運搬をT株式会社に,クレーン作業をU株式会社に,屋根工事をV株式会社に,電気工事をW有限会社に,舗装工事をY建設株式会社に,コンテナ利用者との仲介の一部をZ有限会社に,集金代行業務の一部を株式会社アに,税務申告をイ会計事務所に,それぞれ依頼している。これらは,原告が委託している業者と同じである。 エ被告Bの決算期は毎年1月であるが,平成17年1月31日までの各決算期における損益計算書上の損益は,次のとおりである。 ①第1期(平成13年7月5日から平成14年1月31日)営業損失326万6245円経常損失326万6191円②第2期(平成14年2月1日から平成15年1月31日)営業損失2136万2179円経常損失2376万8886円③第3期(平成15年2月1日から平成16年1月31日)営業損失1700万7403円経常損失1544万3068円④第4期(平成16年2月1日から平成17年1月31日)営業損失3533万1642円経常損失4009万7039円(4) ウ株式会社についてウ株式会社は,コンテナ倉庫の賃貸及びリース業を行うことを目的として,平成16年1月29日に設立された。代表取締役は,被告Aで,その他の役 員は被告Aの家族である。 主位的請求の争点及び争点に対する当事者の主張(1) 被告Aの原告に対する本件コンテナ引渡義務及び損害賠償義務の有無(原告の主張)ア会社の代表取締役が,会社から一定の事務を委任されながら,会社のための事務とはせず,自己やその家族等のものとしたような場合には,会社はその代表取締役に対し,委任の本旨に従い,その事務の結果の移転を求め,既に取得した金員を返還し,またその移転義務の履行 ,会社のための事務とはせず,自己やその家族等のものとしたような場合には,会社はその代表取締役に対し,委任の本旨に従い,その事務の結果の移転を求め,既に取得した金員を返還し,またその移転義務の履行が将来不可能になる場合には,その填補賠償を求めることができると解するのが相当である。この方法こそが,競業避止義務,善管注意義務及び忠実義務違反を理由とする損害賠償請求よりも,はるかに直接的でかつ根本的な救済を得る結果となるものというべきである。 イ被告Aは原告の代表取締役であったところ,原告の貸コンテナ事業を担当し,平成13年ころまでには,貸コンテナの設置場所の確保,コンテナの設置,コンテナ利用者の募集,契約,料金の徴収方法など,コンテナ事業についてのノウハウを取得し,貸コンテナ事業により高収益を挙げることができることを知った。 ウところが,被告Aは,原告の代表取締役として,競業避止義務,善管注意義務及び忠実義務を負い,新規に開業する貸コンテナ事業所を原告の事業とすべき義務があったのにこれに反し,本件コンテナを,被告Bの貸コンテナ事業所としたのであるから,原告は,被告Aに対して,委任又はその類推により,本件コンテナの引渡を求め,既に本件コンテナから得た利益はこれを返還し,その引渡義務の履行が将来不可能になる場合には,その填補賠償を求めることができると解するのが相当である。 エ被告A,すなわち被告Bが本件コンテナ事業により得た利益は,次のとおりである。 (ア) 貸コンテナ事業は,新規に事業所を開設するときには,設置費用その他の経費を必要とするが,設置工事が終了した後は,地代以外ほとんど経費がかからない事業である。 (イ) 被告Bの損益計算書では,赤字決算がなされているが,これは,必要な経費のほかに必要でない支出までも経費として計上した が,設置工事が終了した後は,地代以外ほとんど経費がかからない事業である。 (イ) 被告Bの損益計算書では,赤字決算がなされているが,これは,必要な経費のほかに必要でない支出までも経費として計上した結果である。 原告と被告Bの経理方法は明らかに異なっていて,全く同じ事業が,原告の経理方法によれば大幅な黒字であるのに,被告Bの経理方法によれば赤字となっている。本件において,原告の損害額,すなわち原告の得べかりし利益を検討するに当たっては,原告において採用されていた経理方法が採用されなければならない。 (ウ) 具体的には,被告Bの会計帳簿に基づく処理について,別紙2被告Bの会計の疑問点記載のとおりの疑問がある。そのため,被告Bの利益が過剰に少なくなっている。 そこで,被告Bの第1期から第5期の経費(販売費及び一般管理費)を各勘定科目毎に検討して正しい金額を計算し,それに基づいて営業利益を算定すると,別紙3の被告Bの修正後営業損益のとおりとなる。 なお,第5期については,新規にコンテナを設置することなく,第4期と同様の営業が現状維持で継続したと仮定して,支払手数料と減価償却費を除いて,その他の経費や売上総利益は第4期と同額として算定した。支払手数料については,第4期の実績から新規開発の場合に必要となる紹介手数料を除き,かつ異常値を除いた金額に修正し,減価償却費については,一括償却資産と少額資産の分は,新規開発物件に伴うものであり,車両の減価償却費も高額車両であるので,これらの分を控除したものである。 (エ) 被告Bが本件コンテナ事業によって得られた利益は,別紙3の被告Bの修正後営業損益における賃借料を除外した営業損益の金額を,100 %稼働した場合に得られる売上高に応じて全てのコンテナに按分分配し,その金額から各コンテナの賃借料を控除して算 は,別紙3の被告Bの修正後営業損益における賃借料を除外した営業損益の金額を,100 %稼働した場合に得られる売上高に応じて全てのコンテナに按分分配し,その金額から各コンテナの賃借料を控除して算定できる。具体的には,別紙4のコンテナ別個別営業損益のとおりであり,第1期から第5期までの利益は,次のとおり合計9610万8060円(ただし,請求額は9606万1330円)となる。なお,第2期から第5期におけるこれら合計額が,別紙3の被告Bの修正後営業損益の営業利益と大きく異なっているのは,被告Bは,本件コンテナ以外にもコンテナを保有しており,その分が除外されるためである。 ①第1期▲118万9513円②第2期1126万4535円③第3期2008万9155円④第4期2812万2874円⑤第5期3782万1009円合計9610万8060円オまた,被告A,すなわち被告Bが本件コンテナ事業によって第6期(平成18年2月1日から平成19年1月31日)以後に得られる利益は,第5期における本件コンテナ事業によって得られる営業利益3782万1009円(月額315万1750円)と同じと考えられるので,本件コンテナの引渡しが遅延することによって,原告には平成18年2月1日以後,毎月315万1750円の損害が発生することになる。 (被告らの主張)被告Aが,原告の取締役であった間,原告に対し競業避止義務,善管注意義務及び忠実義務を負っていたことは認める。 被告Aは,これら義務に違反したものではないが,仮に義務違反が認められるとしても,原告が被告Aに対し,本件コンテナを引き渡すよう請求できる権利はない。 また,原告は,被告Bが必要でない支出まで経費として計上している旨主張するが,被告Bの会計処理については,会計事務所が関与の上,税 被告Aに対し,本件コンテナを引き渡すよう請求できる権利はない。 また,原告は,被告Bが必要でない支出まで経費として計上している旨主張するが,被告Bの会計処理については,会計事務所が関与の上,税務申告をしており,税務署からも経費等について指摘されたことはなく,原告の主張は理由がない。 コンテナの償却方法についても,被告Bは税務上認められた方法により一括して償却しており,何ら違法な点はない。このような償却方法は原告がコンテナを所有していた時代から行われており,原告も認めて実行していた方法である。 (2) 被告Bの原告に対する本件コンテナ引渡義務及び損害賠償義務の有無(法人格否認の法理)(原告の主張)ア最高裁判所昭和44年2月27日第一小法廷判決(民集23巻2号511頁)は,「社団法人において,法人格が全くの形骸にすぎない場合又はそれが法律の適用を回避するために濫用される場合には,その法人格を否認することができる。」と判示し,法人格が形骸化している場合又は法人格が濫用される場合に法人格否認の法理が適用されるとしている。そして,法人格の濫用とは,法人格が株主により意のままに道具として支配されていること(支配の要件)に加え,支配者に違法又は不当の目的(目的の要件)がある場合をいう。 イこの要件に従って本件を検討するに,まず,被告Bは,前述のように実質的には被告Aが家族を従業員として経営する個人企業であり,被告Aの意のままに道具として支配されている会社である。 次に,被告Bは,被告Aが取締役としての忠実義務,競業避止義務に違反して,原告のものとすべき貸コンテナ事業所を被告Bのものとし,原告の利益を被告Aの家族で独占するという違法,不当な目的のためのみに作られた会社である。 ウよって,被告Bによる貸コンテナ事業の新規開業は,法人 とすべき貸コンテナ事業所を被告Bのものとし,原告の利益を被告Aの家族で独占するという違法,不当な目的のためのみに作られた会社である。 ウよって,被告Bによる貸コンテナ事業の新規開業は,法人格の濫用に当たるものであって,原告は,被告Aだけでなく,被告Bに対してもコンテナ事業所の返還及び引渡しの遅延による損害賠償を請求できる。 (被告らの主張)法人格否認の法理は,典型的には形式上法人が義務を負担しているが,その背後にある個人の責任を追及しようとする理論であり,原告は被告Aが負担すると主張する競業避止義務を法人に拡張しようとするものであって,そもそも法人格否認の法理が適用されるべき場面ではない。 予備的請求の争点及び争点に対する当事者の主張(1) 被告Aの競業避止義務違反の有無(原告の主張)次の事実関係からみれば,被告Aが被告Bの事実上の主宰者であるといえる。そして,被告Bにおいて行われた貸コンテナ事業は,原告の営業の部類に属する取引であるから,被告Aは,原告の代表取締役として,競業避止義務に違反したといえる。 ア設立経緯被告Aは,原告の代表取締役当時,H及びJを原告に入社させて,貸コンテナ事業を担当させていた。そして,被告Aは,その指揮命令関係が継続するまま,H及びJらに被告Bを設立させたのである。 イ貸コンテナ事業に関する契約貸コンテナ事業において,重要なことは,適切なコンテナ設置場所を確保することであるが,被告Bは,農協から土地の仲介を受けており,農協との交渉を担当していたのは被告Aである。被告Bとコンテナ事業所の地主との土地賃貸借契約についても,被告Aが担当し,原告名義で契約し,被告Aが連帯保証人となっている。賃料については,被告Aが,原告名義の口座から賃貸人である地主に振り込んでいた。 また,被告Bが, の土地賃貸借契約についても,被告Aが担当し,原告名義で契約し,被告Aが連帯保証人となっている。賃料については,被告Aが,原告名義の口座から賃貸人である地主に振り込んでいた。 また,被告Bが,コンテナ利用者との間で作成する貸コンテナの賃貸借契約書では,被告Bの連絡先として,被告Aの自宅の住所や電話番号が記載されている。 ウ依頼する業者被告Bがコンテナ事業に関して依頼していた業者は,前記1(3)ウのとおりであるが,これら業者は原告が依頼していた業者と同じであり,これら業者との交渉も被告Aが行っていた。 エ資金面被告Bにおける資金は,主に被告Aからの借入れでまかなわれていた。 オ被告B役員の役割Hは,東京に在住しており,被告Bの事業に関与していない。被告Aの指示のもとに,Gが経理全般を,Kが現場を担当している。また,被告Aは,原告代表取締役在任中,原告の従業員であるエにコンテナの保守管理を担当させていた。そして,被告Aは,同人を被告Bの従業員として,被告Bのコンテナの保守管理を担当させている。 (被告らの主張)被告Aは,次のとおり,被告Bの事実上の主宰者とはいえない。 ア設立経緯被告Bは,H,J及びLが,貸コンテナ事業を行うために設立した会社であって,被告Aの指示により設立したものではない。 イ貸コンテナ事業に関する契約コンテナ利用者との契約書には,被告Bの住所として本店所在地である東京の住所が記載されており,連絡先は被告Aの住所であるが,ここには被告Bの管理業務を行う事務所が存在している。 ウ依頼する業者コンテナの設置に関する業務を行う業者の数は多くなく,この業務に慣 れた業者に依頼するのが適切であると判断したため,被告Bも,原告と同じ業者に依頼しているにすぎない。また,コンテナ設置業者の担当はKであり,仲介業 る業務を行う業者の数は多くなく,この業務に慣 れた業者に依頼するのが適切であると判断したため,被告Bも,原告と同じ業者に依頼しているにすぎない。また,コンテナ設置業者の担当はKであり,仲介業者の担当はLであり,会計事務所の担当はHである。 エ資金面被告Bに貸付を行っているのは,被告Aだけでなく,H,J,G及びKも行っている。被告Aからの貸付が多いのは,資力の差だけの問題である。 オ被告B役員の役割Hは東京に在住しているが,経理全般を担当しており,日常の仕事の指示は,電話,ファックス,Eメールで行い,名古屋に月に数回来ており,その滞在時間も数日以上に及ぶこともある。Jは,銀行関係を担当しており,Gは経理関係に関与していない。Kは,現場担当であり,コンテナ買付,設置,修理,巡回及び外注業者の担当等をしている。 また,かつて原告の従業員であったエは,コンテナの保守管理を担当しているが,同人は,原告においてコンテナの保守管理の業務を担当していたことはなく,いわゆる窓際扱いで,工場の整理・清掃をさせられていたため,平成17年2月に原告を退職して,同年3月に被告Bに入社したものである。そして,同人は,Kの指揮命令下で働いている。 (2) 被告Aの不法行為責任の有無(原告の主張)本件において,被告Aは,原告の代表取締役として忠実義務を負い,新規に貸コンテナ事業を行う場合には,原告の事業とすべき義務があったにもかかわらず,被告Bにおける貸コンテナ事業として被告Bに利益を与え,それと同額の損害を原告に与えたことが明らかである。したがって,被告Aは原告に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 (被告らの主張)争う (3) 原告の取締役会における承認の有無(被告らの主張)ア原告は典型的な同族会社であり,これまで正式な取締役会が開催 告に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 (被告らの主張)争う (3) 原告の取締役会における承認の有無(被告らの主張)ア原告は典型的な同族会社であり,これまで正式な取締役会が開催されたことはなく,経営に関する事項は,当時原告を経営していた被告AとFが話し合って決定し,他の取締役は特に異議を述べることはなかった。原告には目的が同様である関連会社が数社あったが,原告の取締役であった被告A,F及びCが関連会社の取締役に就任する際にも原告の取締役会において承認を得たことはなく,被告AとFが話し合って決めていたものである。 イ被告Bの設立に際しては,Hが,Fの娘に対し,Fを通じて出資の誘いをしており,被告Bを設立することは原告の取締役らも承知しており,この点について問題とされたことは一度もない。 ウ被告Bの存在を原告の取締役らが十分承知していたことは,次の事実関係からみても明らかであり,原告の取締役らは,被告Aが被告Bの取締役に就任することについて,承認していたものである。 (ア) Jは,平成13年9月,Fから,コンテナ倉庫業をやる会社があるのだから,結婚を機にそちらで仕事をするようにと原告からの退社を求められた。 (イ) 平成15年当時,Aグループの会計業務をイ会計事務所が担当していたが,Fの指示により,同事務所において同年5月27日に作成した,原告の関連会社の資本構成を記載した書面(乙53)には,被告Bが原告の関連会社として記載されていた。 (ウ) Z有限会社から原告に提出されていたコンボ日報(甲9)には,平成15年当時,O,被告B及び原告の各コンテナが区別して記載されていた。 (エ) 平成15年5月,株式会社UFJ銀行から原告に送付された「貴社E B手数料について」と題する書面(乙52)には,被告Bが原告の関連 被告B及び原告の各コンテナが区別して記載されていた。 (エ) 平成15年5月,株式会社UFJ銀行から原告に送付された「貴社E B手数料について」と題する書面(乙52)には,被告Bが原告の関連会社として記載されていた。 (オ) 被告Bは,原告名義の預金口座を利用しているところ,決算期には,銀行から原告名義の口座全てについて残高証明書が原告に送付されていた。 (カ) 被告Bのコンテナ倉庫は,原告やOが行っているコンテナの近くで営業をしている。例えば稲葉地Ⅲというコンテナ倉庫はOが設置している稲葉地Ⅱというコンテナ倉庫のすぐ横に存在している。 (キ) 被告Bの業務は,原告の前本店所在地で行っていたが,その場所は原告の社員やFも出入りするところであった。 エ原告のような同族会社においては,法令に定める通りの会社運営がなされていないのが実態であり,そのような会社においては,形式的に取締役会の承認があったか否かではなく,会社の実態からして承認があったかどうかを判断すべきである。 そうすると,被告Aが被告Bのために,原告の営業の部類に属する取引をすることについては,原告の取締役会の承認があったというべきである。 オ仮に上記の主張が認められないとしても,原告は,本件コンテナの譲渡について事後的に承認をしているから,被告Aが被告Bのために貸コンテナ事業を営むことを承認した。 すなわち,原告においては,経理の処理についてはすべてFの決裁を受けていたが,Fは,本件コンテナを被告Bに譲渡した際(原告の保有していたOの株式譲渡も同時に行われた。),その支払を承諾した。また,原告の平成15年5月1日から平成16年4月30日の間の決算書類は,本件コンテナの譲渡を前提としたものであるが,原告はこれを取締役会で承認した後,平成16年6月26日開催の株主総会で決算 た。また,原告の平成15年5月1日から平成16年4月30日の間の決算書類は,本件コンテナの譲渡を前提としたものであるが,原告はこれを取締役会で承認した後,平成16年6月26日開催の株主総会で決算承認という形で全員一致で承認している。 (原告の主張)原告が被告Bの存在を知ったのは,平成16年10月になってからである。 株式会社の取締役が当該株式会社の営業の部類に属する取引を行う場合には,その取締役会においてその取引について重要な事実を開示して承認を得なければならないとともに,その取引を行った取締役はその取引について重要な事実を取締役会に報告しなければならない。ところが,被告Aは,競業行為を行うことについて,原告の取締役会に開示していないし,承認も得ていない。 また,原告が平成16年6月28日開催の株主総会において,平成15年5月1日から平成16年4月30日までの決算報告書を承認したことは認めるが,本件コンテナを被告Bに譲渡することを特定して承認しているものではない。 (4) 信義則違反(被告らの主張)被告A及びその関連会社が貸コンテナ事業を営むことは,Fらとの合意に基づく当然の事柄である。 原告においては,これを前提に決算報告書が作成され,かつ株主総会に提出されてその承認を得ている。にもかかわらず,原告が今になって合意を否定して異議を述べることは,信義誠実の原則あるいは禁反言の原則に反するものであり,許されない。 (原告の主張)争う(5) 損害及びその額の算定(原告の主張)ア第一次主張(被告Bの利益を原告の損害とする構成)(ア) 平成17年法律第87号による改正前の商法(以下「旧商法」とい う。)266条4項が,取締役の競業避止義務違反行為によって,取締役又は第三者が得た利益の額を会社(本件における原告)の蒙った ア) 平成17年法律第87号による改正前の商法(以下「旧商法」とい う。)266条4項が,取締役の競業避止義務違反行為によって,取締役又は第三者が得た利益の額を会社(本件における原告)の蒙った損害と推定する旨規定しているので,被告Aが原告の取締役を退任する前に,既に開業していた被告Bの貸コンテナ事業所について,被告Bが既に得た利益及び将来得られる利益が,原告の損害として認められるべきである。 そして,将来の利益を算定する基準としては,不動産評価の場合に収益還元法の評価方法の一種であるディスカウントキャッシュフロー法(以下「DCF法」という。)を参考にするのが相当である。賃貸用マンション,事務所用の賃貸ビルを購入するに当たっては,DCF法により,建物の構造,立地条件などから,現在及び将来の満室率を考慮し,将来得ることができる賃料を考慮して売買価格が計算されており,投資価値を判断するに際しては,このDCF法によることが適切な方法とされている。貸コンテナ事業所は,賃貸用マンション,事務所用の賃貸ビルに比べて収益物件であるという点で同じ特徴を有する。また,被告Aは,原告の貸コンテナ事業所とすべき本件コンテナを,被告Bの貸コンテナ事業所にして,原告の将来の収益可能性を奪っている。したがって,損害賠償としては,奪われた将来の収益可能性も対象とすべきであり,収益還元法による取引価格が最も適切である。そうでないと,取締役が競業避止義務違反及び違法行為を行った直後に退任したとすると,非常に低額の損害賠償額となってしまう。 (イ) 被告Bが既に得た利益被告Bが本件コンテナの営業によって第4期までに既に得た営業利益は,前記2(1)エ記載のとおり,合計5828万7051円である。 ①第1期▲118万9513円②第2期1126万4535円 被告Bが本件コンテナの営業によって第4期までに既に得た営業利益は,前記2(1)エ記載のとおり,合計5828万7051円である。 ①第1期▲118万9513円②第2期1126万4535円 ③第3期2008万9155円④第4期2812万2874円合計5828万7051円(ウ) 被告Bが将来得られる利益第6期以後においては,被告Bの事業は,原告において一定の独立性をもった1部門の営業と想定すべきであるから,減価償却費は発生せず,一方で,拠点の入替えを考慮して,新たな経費として売上高の2%の支出が発生すると想定される。そこで,第5期における修正後の営業利益を基礎として,第6期以後の予想営業利益を算定すると,次のようになる。 ①第5期の修正後の営業利益7682万9843円②第5期における減価償却費1966万2303円③売上高の2%の支出366万7688円④第6期以後の予想営業利益9282万4458円(①+②-③)そうすると,被告Bのキャッシュフローは,9282万4458円となるから,DCF法による被告Bの事業全体の割引現在価値評価額は,第5期終了時点において,期間20年で中間利息の控除をライプニッツ係数を使用すると,次のとおり,11億5677万8394円となる。 (計算式)92,824,458×12.462=1,156,778,394そこで,この金額を第5期における各コンテナの個別営業利益の金額で按分すると,本件コンテナにおける各コンテナの個別割引現在価値は,別紙5のコンテナ別割引現在価値のとおりであり,その合計額は,5億8641万0874円となる。 (エ) 原告の損害上記(イ)と(ウ)の合計額6億4469万7925円(ただし,請求額は 6億4469万7835円)となる。 イ第二次主張( ,その合計額は,5億8641万0874円となる。 (エ) 原告の損害上記(イ)と(ウ)の合計額6億4469万7925円(ただし,請求額は 6億4469万7835円)となる。 イ第二次主張(被告A及びその家族らの利益を原告の損害とする構成)(ア) 被告Aの競業避止義務違反行為によって,取締役である被告A,第三者であるG,K,H,J,L及びウ株式会社が得た利益が原告の損害として認められるべきである。 (イ) 被告Bの第1期から第4期までの期間において,被告A,G,K,H,J,L及びウ株式会社が得た利益は,別紙6の被告Aら利得一覧表のとおりであり,その合計金額は,2億1996万9201円である。また,これら利得は,被告Bからの支出という形式をとっているが,その支出をこれらの者の利益とする根拠については,別紙7の被告Aらの利得に関する主張対比表における原告の主張(根拠)欄のとおりである。 (ウ) また,上記(イ)の利益は,被告Aがその家族らに利益を得させたものとして,全て被告Aの利益と評価することもできる。そうすると,被告Aは,合計2億1996万9201円の利益を得たことになる。 (エ) なお,被告らは,原告が主張の根拠としているオ公認会計士の意見書(甲41)について,被告Bを原告の一定の独立性を持った一部門とするとの前提に立っており,事実に基づかない前提に立っており,意見書としての妥当性を欠くと批判する。しかし,原告の損害賠償額を算定するために,被告Bを原告の一定の独立性を持った一部門と想定して計算することは当然なことであり,当該批判は正当ではない。 (被告らの主張)ア第一次主張について(ア) 仮に被告Aの競業避止義務違反を問うとしても,原告の損害は,被告Aが原告の代表取締役であり,かつ被告Bの取締役であった期間のみであり,この はない。 (被告らの主張)ア第一次主張について(ア) 仮に被告Aの競業避止義務違反を問うとしても,原告の損害は,被告Aが原告の代表取締役であり,かつ被告Bの取締役であった期間のみであり,この期間を超えて原告の損害が認められるものではない。原告の主張によると,短期間競業避止義務に違反して競業他社の取締役となっ た者は,対象たる営業によって数十年分の損害賠償義務を負うことになるのであって,それは法律の予定しているところではない。 (イ) また,被告Bの損益は,第1期から第4期まで全て営業損失及び経常損失が生じており,どの期間をとっても赤字であるから,利益推定規定による損害は生じない。 したがって,仮に被告Aが損害賠償義務を負い,被告Bの利益額を原告の損害であると推定したとしても,その損害額は0である。 イ第二次主張について(ア) 原告は,旧商法266条4項の「第三者」が得た利益として,第三者であるGら被告Aの家族らが得たとする利益が原告の蒙った損害であると推定できる旨主張する。 しかし,この規定は,同条項ただし書きで介入権を行使した場合には適用されないと規定されていることから明らかなように,取引行為によって第三者が得た利益を会社の損害と推定する規定である。したがって,原告が主張するように,取引とは全く関係のない第三者であるGら被告Aの家族が得たとする利益を,原告の蒙った損害である旨主張することは失当である。 (イ) また,原告は,被告Aがその家族らに利益を得させたものとして,これらは被告Aの利益である旨主張する。 しかし,原告の主張は事実に反するだけでなく,なぜ被告Aの家族らが得た利得が被告Aの利益と評価でき,それをもって原告の損害と推定できるのかについて法的根拠を欠くものである。 (ウ) なお,原告は,上記主張の根拠としてオ会 実に反するだけでなく,なぜ被告Aの家族らが得た利得が被告Aの利益と評価でき,それをもって原告の損害と推定できるのかについて法的根拠を欠くものである。 (ウ) なお,原告は,上記主張の根拠としてオ会計士の意見書を提出しているが,その内容は妥当性を欠くものである。 まず,オ会計士は被告Bを原告の一定の独立性をもった一部門とした場合の社外流出を把握するとの前提で議論している。しかし,被告Bが 原告の一部門であったことはなく,原告と出資関係もなく,子会社でもない。また,オ会計士はなぜ一部門として議論するかの根拠についても何も明らかにしていない。したがって,オ会計士の意見書は,その前提が間違っているものであって,妥当性を欠くものといわざるを得ない。 次に,個別の問題については,具体的には,別紙7の被告Aらの利得に関する主張対比表における被告らの主張(反論)欄のとおりである(乙55)。 (エ) 仮に,被告Aが被告Bから得ていた報酬を,被告Aの利益とするとしても,被告Aが被告Bから得ていた報酬額は,第3期の600万円及び第4期の54万円のみであり,被告Aが得た利益は最大でも654万円にすぎないものである。 ウなお,仮に旧商法の利益推定規定によって損害を推定したとしても,損害がないことを立証すれば損害賠償請求は認められないと解されている。 この点,原告代表者本人が,近くにコンテナが設置されてもお客は移らない,すなわち,売上げは落ちない,したがって利益は減少しないと認めているのであるから,原告に損害がないことを自認しているものである。そうすると,いずれにしても被告らに損害賠償義務は生じないというべきである。 (6) 被告Bの責任の有無(原告の主張)前記2(2)のとおり,被告Bは,被告Aの意のままに道具として支配されている会社であって,違法・不当 ても被告らに損害賠償義務は生じないというべきである。 (6) 被告Bの責任の有無(原告の主張)前記2(2)のとおり,被告Bは,被告Aの意のままに道具として支配されている会社であって,違法・不当な目的のためのみに設立された会社であるから,原告は,被告Aのほか,被告Bに対しても損害賠償を請求することができる。 (被告らの主張)前記2(2)の(被告らの主張)のとおりである。 第3当裁判所の判断 主位的請求について(1) 被告Aに対する請求ア原告は,本件においては民法上の委任又はその類推により,被告Aに対し,本件コンテナの引渡し及び引渡しの遅滞による損害賠償を請求できると主張する。 イしかし,旧商法上,取締役の競業避止義務違反の場合,当該取引の目的物自体を引き渡すことを一般的に認めた規定はなく,一定の場合に介入権を認めていたにとどまる。 確かに,株式会社と取締役との関係は,一般に委任の関係であるが,競業避止義務違反の場合には,取締役は委任の趣旨に反して自己又は第三者のために取引を行っているのであって,委任の関係から引渡請求権が直ちに認められるものではないし,旧商法が264条において,一定の場合に限り介入権を認めていたことに鑑みると,単に会社と取締役の関係にあれば,会社が取締役に対し引渡請求ができるとはいえない。 ウ原告は,引渡請求を認めることが,損害賠償請求よりもはるかに直接的でかつ根本的な救済を得られる旨主張する。 しかし,本件コンテナの引渡請求を認める考え方をとるとしても,被告Aが原告に対して本件コンテナの引渡義務を負うものであって,原告が本件コンテナに関する賃貸借契約の当事者になると解する余地はないから,直接的でかつ根本的な解決が必ず実現できるともいえない。 エしたがって,その余について検討するまでもなく,この点 であって,原告が本件コンテナに関する賃貸借契約の当事者になると解する余地はないから,直接的でかつ根本的な解決が必ず実現できるともいえない。 エしたがって,その余について検討するまでもなく,この点についての原告の主張は採用できない。 オそして,原告の被告Aに対する本件コンテナの引渡請求権がない以上,原告に,引渡しを遅延したことに基づく損害賠償請求権がないことは明らかであって,この点についての原告の主張も採用できない。 (2) 被告Bに対する請求被告Aに対する請求に理由がない以上,被告Aの責任が認められることを前提とする被告Bに対する請求についても,理由がないことは明らかである。 (3) 以上のとおり,原告の主位的請求については理由がない。 予備的請求について(1) 被告Aの競業避止義務違反の有無ア被告Aの行為が,原告に対する競業避止義務違反であるというためには,旧商法264条1項によれば,取締役が,自己又は第三者のために会社の営業の部類に属する取引をしたと認められることが必要である。この点,被告Bの貸コンテナ事業が,原告の営業の部類に属するものであることは,これまで認定した事実によれば明らかである。 イそして,被告Aは,被告Bの代表取締役ではないが,同社の事実上の主宰者であれば,被告Aは第三者のために原告の営業に属する取引をしたということになるから,被告Aが被告Bの事実上の主宰者であるかどうか,以下検討する。 ウ証拠(乙39の1ないし4,乙40の1ないし24,乙48,56の1・2,57の1・2,60,61,原告代表者C尋問の結果)によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告Bは,H,J及びLの3名が合計300万円を出資して設立されたが,運転資金の大半を借入金に依存しており,Hらだけでは金融機関からの信用が乏しく, 果)によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告Bは,H,J及びLの3名が合計300万円を出資して設立されたが,運転資金の大半を借入金に依存しており,Hらだけでは金融機関からの信用が乏しく,銀行からの借入れができなかったために,借入金は全て被告A及びその家族からのものである。被告Aからの借入金には,被告Aが金融機関から借り入れ,それを被告Bへ貸し付けているものもある。被告Aからの借入金の占める割合(1%未満を四捨五入)は,各決算期において次の残高となっている。 ①第1期:借入金約5306万円の内3600万円(68%) ②第2期:同約1億2606万円の内1億500万円(83%)③第3期:同約1億9104万円の内1億2200万円(64%)④第4期:同約1億9054万円の内9900万円(52%)(イ) 貸コンテナ事業において最も重要な仕事は,事業用の土地を賃借して確保することであるが,被告Bにおいては,被告Aが担当して,原告の名で契約し,賃料の支払も原告の口座を利用し,被告Aが連帯保証人となっている。また,被告Aは,原告及びOにおいて,農協から事業用地の紹介を受けて,貸コンテナ事業を開始し,発展させてきたものであり,被告Bにおける貸コンテナ事業においても,原告における貸コンテナ事業と同一の業者を利用するなど同様の手法を用いていた。 被告Bが,コンテナ利用者との間で貸コンテナの賃貸借契約書を交わす場合には,その契約書に,「コンテナ管理連絡先コンボ事業部名古屋市j区kl番地TELカFAXキ」と表示しているが,上記管理連絡先は,被告Aの自宅の住所である。 (ウ) 代表取締役であるHは,東京に在住し,被告Bの事業の中心である名古屋市及びその周辺に居住していたわけではなく,月に3,4回程度,名古屋に来て,経理などの分野を担 ,被告Aの自宅の住所である。 (ウ) 代表取締役であるHは,東京に在住し,被告Bの事業の中心である名古屋市及びその周辺に居住していたわけではなく,月に3,4回程度,名古屋に来て,経理などの分野を担当していた。H及びJは,被告B設立以前,原告及びその関連会社において,従業員として仕事をしており,その際,貸コンテナ事業についても関与したことがあった。 エ以上の認定事実によれば,被告Bは,その資金調達や信用という面で被告Aに頼るところが大きく,営業の重要部分も被告Aが自己のノウハウ及び実績を利用して中心的役割を果たしており,被告Aなしに貸コンテナ事業用の土地を確保するのは困難であったといえる。以上の点からすると,被告Bの貸コンテナ事業は,被告Aがいなければ成り立たないもので,被告Aの家族らがこれを手伝っているといえる。したがって,被告Aは被告Bの代表取締役でなく,出資持分を有していないとしても,被告Bの事実 上の主宰者であると考えるのが相当である。 この点,被告らは,土地賃貸借契約について契約名義を原告としたのは,農協との関係で,1事業1業者にしなければならなかったためと主張する。 仮にそうだとしても,農協以外の他の業者を利用して事業用土地を確保することも可能であったはずであり,それをしなかったということは,被告Aがこれまで培ってきた事業のノウハウを全面的に利用したということであって,むしろ被告Bの設立当初から被告Aの影響力が大きかったことを推認させるものである。 また,被告らは,H及びJは原告等において貸コンテナ事業に関与しており,被告Aがいなくても被告Bの経営ができていたと主張する。確かに,証拠(乙60,61)によれば,H及びJが原告等において貸コンテナ事業に関与していたことは認められるものの,一従業員と代表取締役とでは関与の程度 なくても被告Bの経営ができていたと主張する。確かに,証拠(乙60,61)によれば,H及びJが原告等において貸コンテナ事業に関与していたことは認められるものの,一従業員と代表取締役とでは関与の程度や影響力には大きな違いがあり,それ故に被告Aがいなくても被告Bの経営ができていたとはいえない。 オしたがって,被告Aには,原告に対する競業避止義務違反が認められ,損害賠償責任を負うと考えるのが相当である。 (2) 被告Aの不法行為責任の有無原告は,本件における被告Aの行為が,旧商法上の特別背任罪に該当する行為であるとして,民法709条の不法行為に基づく損害賠償を求めている。 競業避止義務違反に当たる行為が,同時に不法行為と評価される場合があることはもちろんであるが,民法709条には旧商法266条4項のような損害推定の規定がないため,原告において損害及びその額についての立証が必要であるところ,本件においては,原告の蒙った損害について立証がされているとはいえないから,被告Aの競業避止義務違反とは別に不法行為責任の有無を判断する必要がない。 (3) 原告の取締役会における承認の有無 ア旧商法264条1項によれば,取締役が会社と競業する取引を行うには,取締役会において,重要事項を示した上で承認の決議が行われる必要がある旨規定されているところ,一部の取締役が集まって協議して合意したとしても,上記承認があったとはいえず,また,これを上記承認と実質的に同視することもできない。 イそして,原告の取締役会において,被告Aが被告Bという会社で貸コンテナ事業を営むことを説明した上で,これを承認したことを認めるに足りる証拠はない。 ウこの点,被告らは,原告の取締役らは,被告Aが被告Bの役員に就任して貸コンテナ事業を営むことを当初から承認していた旨主張する。 ことを説明した上で,これを承認したことを認めるに足りる証拠はない。 ウこの点,被告らは,原告の取締役らは,被告Aが被告Bの役員に就任して貸コンテナ事業を営むことを当初から承認していた旨主張する。しかし,証拠(甲21,原告代表者C尋問の結果)によれば,F及びCは,原告及びOの貸コンテナ事業は被告Aが一人で行っていたため,具体的内容は知らなかったところ,貸コンテナ事業を営んでいる被告Bの存在を知ったのは,被告Aが原告の代表取締役を退任した後の平成16年10月ころであったことが認められる。 また,被告らは,貸コンテナの現場や,原告において作成されていた決算作成のための各種書類や銀行口座を見れば,F及びCにおいて,被告Bの存在を当然知ることができたはずである旨主張する。確かに,F及びCが被告Bの存在を知ることができたとはいえるが,貸コンテナ事業を担当しておらず,かつ,自らは代表取締役でなかった当時,F及びCにおいて,貸コンテナの現場や,同事業に関する書類及び決算関係書類を注意深く見なかったとしても不自然ではない。 さらに,証拠(甲19,20,乙36,原告代表者C尋問の結果,被告A本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,被告A,F及びCは,平成16年1月,被告Aから,原告の代表取締役を退任し退任に際し貸コンテナ事業を原告及びOから譲り受け,Oの株式は被告A側が全部取得し, 原告その他のグループ会社の株式はF及びC側が取得する旨の提案があり,協議をしたところ,F及びCは,被告Aが原告の代表取締役を退任することについては承諾したが,被告Aが原告及びOから貸コンテナ事業を譲り受け,原告グループ会社を事実上分割することについて反対して協議が合意しなかったこと,その後,結局被告Aは,原告代表取締役を退任したことが認められる。この協議においては びOから貸コンテナ事業を譲り受け,原告グループ会社を事実上分割することについて反対して協議が合意しなかったこと,その後,結局被告Aは,原告代表取締役を退任したことが認められる。この協議においては,原告の事業から貸コンテナ事業を分離するのかどうかが問題となったものであるが,仮にF及びCにおいて,被告Bのことを承知していたとすれば,被告Aにおいて,被告Bの貸コンテナ事業と原告及びOの同事業を一体として経営する意思であることは容易に推測できるので,被告Bの話題も出るのが自然であるが,上記証拠によれば,被告Bのことは全く話題にならなかったことが認められ,このことは,当時,F及びCが被告Bの存在を知らなかったことを裏付けるものである。 したがって,被告らの主張を採用することはできない。 エ事後的な承認についても,原告の取締役会で事後的に被告Aの競業行為を承認する旨の決議があったと認めるに足りる証拠はないから,この点についても被告らの主張は採用できない。 (4) 信義則違反上記(3)認定のとおり,F及びCにおいて,被告Aが競業避止義務を負っている期間内に被告Bを含む原告以外の会社において競業行為をすることを承認していたとは認められない。 そうだとすれば,本件訴訟において,原告が被告らに対し競業避止義務違反等の損害賠償等の請求を行うことが信義則に反するということはできない。 したがって,被告らの主張を採用することはできない。 (5) 原告の損害ア第一次主張について (ア) 旧商法266条4項は,取締役が競業避止義務に反して取引をなしたときにはその取締役又は第三者が得た利益の額を会社の蒙った損害額と推定する旨規定する。 (イ) ところで,前記第2の1(3)エのとおり,被告Bは,平成13年7月5日から,被告Aが原告の代表取締役を退任した平成1 取締役又は第三者が得た利益の額を会社の蒙った損害額と推定する旨規定する。 (イ) ところで,前記第2の1(3)エのとおり,被告Bは,平成13年7月5日から,被告Aが原告の代表取締役を退任した平成16年4月28日までの間,すなわち第1期から第4期までの間,損益計算書によれば常に赤字であり,利益が生じていない。とすると,第三者たる被告Bが得た利益を,原告の蒙った損害額と推定しようとしても,原告には損害がないことになるが,原告は,被告Bの決算について,過大な経費を計上して,本来は黒字決算となるところを赤字決算に偽装していると主張するので,以下検討する。 (ウ) 第1期から第4期までの利益について①給与手当,法定福利費及び福利厚生費原告は,グループ会社の役員報酬は原告において全て決定していたところ,原告において被告Bの役員報酬を決定したことがないとして,被告Bの経費の内,給与手当,法定福利費及び福利厚生費は一切認められない旨主張している。 しかし,被告Bは,原告と競業する会社であり,原告のグループ会社ではないから,役員報酬は独自に決定できるものであり(個々の役員報酬を実質的に誰の所得とみるかどうかは別問題である。),給与手当やこれに連動する法定福利費及び福利厚生費が否定されるものではない。 ②減価償却費原告は,被告Bにおけるコンテナの減価償却の方法についても,一括償却資産や少額資産ではなく,コンテナ数個が結合したものを建物に類似した1個の集合体である固定資産とした上で減価償却をすべき であると主張している。 しかし,コンテナの減価償却について,建物と同様に処理すべきと認めるに足りる証拠はない。実際にも,建物とコンテナとでは本来的な用途,材質,構造が全く異なるものであるから,減価償却について,コンテナと建物を同一に扱う必要はない ついて,建物と同様に処理すべきと認めるに足りる証拠はない。実際にも,建物とコンテナとでは本来的な用途,材質,構造が全く異なるものであるから,減価償却について,コンテナと建物を同一に扱う必要はないといえる。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 ③その他の経費オ会計士は,被告Bの経費の中に,東京で支出したタクシー代,飲食費又はクでの買物代等と思われる支出が含まれており,これらは被告Bの事業の経費とは認められない旨指摘している(甲40)。 確かに,被告Bは名古屋市及びその周辺で事業を営んでいたので,Hの住所が東京であっても,東京での支出は事業と無関係なHの個人的な支出である可能性は否定できない。しかしながら,個別具体的にどの支出が事業と無関係であると認定するに足りる証拠はない。仮に,ある程度の支出が被告Bの事業のための経費として認められないとしても,別紙3の被告Bの修正後営業損益によれば,原告の主張する修正計算は,給与手当,法定福利費,福利厚生費及び減価償却費の修正が否定されるだけで,ほぼ営業損失に近くなるので,その他の経費の一部が否定されたとしても,被告Bの第1期から第4期までの決算が赤字であることに変わりはないといえる。 ④したがって,被告Bが,第1期から第4期までの期間において,利益を得ていたとは認められない。 (エ) 第5期以降の将来の利益について(DCF法による算定の適否)①原告は,実際には被告Bは第5期において利益を上げており,今後20年間で被告Bが得られる利益の額も,現在価値に換算して,原告の損害額と推定すべきであると主張する。 ②確かに,原告代表者C尋問の結果によれば,貸コンテナ事業は,当初にコンテナ購入や設置費用を要するものの,その後の経費は少額に止まるため,コンテナ利用者さえ確保できれば きであると主張する。 ②確かに,原告代表者C尋問の結果によれば,貸コンテナ事業は,当初にコンテナ購入や設置費用を要するものの,その後の経費は少額に止まるため,コンテナ利用者さえ確保できれば,利益を得られることが認められるので,被告Bが,第5期あるいは第6期以後に利益を得られる可能性はあるといえる。 しかし,競業避止義務違反による損害とは,競業避止義務違反の行為と因果関係のあるものでなければならず,本件の貸コンテナ事業においては,コンテナ利用料は実際にコンテナを利用したことに対する対価として日々発生していくものであるから,競業避止義務を負わなくなった後の利用料まで,競業行為と因果関係がある利益とはいえない。すなわち,証拠(甲37)によれば,被告Bと利用者との間のコンテナ利用に関する賃貸借契約は,期間1年で更新できるもので,利用者は1か月前までに通知すればいつでも契約を解約することができることが認められ,被告Aが競業避止義務を負っていた時期に被告Bで利用されていたコンテナでその後利用されなくなったもの(西中島,上社コンボ)もあることは原告も認めているところであり,被告Bとコンテナの利用者との契約が,被告Aが競業避止義務を負っている期間内になされたからといって,その後コンテナの耐用年数まで自動的に契約が継続するものではないし,得られる利用料も一定とは限らない。 ③そうすると,競業避止義務を負っている間の行為と,それ以降の被告Bの取得しうる利益との間に因果関係があるとはいえないから,将来得られる可能性のある利益を原告の損害と認めることはできない。 ④なお,原告は,原告の主張が採用されないと,取締役を退任する直前に競業避止義務違反の行為をした場合に非常に低額の損害賠償額となって,競業避止義務違反をした方が得だということになってし できない。 ④なお,原告は,原告の主張が採用されないと,取締役を退任する直前に競業避止義務違反の行為をした場合に非常に低額の損害賠償額となって,競業避止義務違反をした方が得だということになってしまう とも主張する。しかし,競業避止義務違反の期間が少なければ損害が少ないのは当然であり,しかも,競業行為とその後の損害の発生に因果関係があれば競業避止義務を負わなくなってから発生した損害も請求できるから,原告の主張は採用できない。 (オ) そうすると,被告Bが得た利益を原告の損害と構成した場合には,原告の損害は認められない。 イ第二次主張について(ア) 原告は,旧商法266条4項により,被告ら以外の者(H,J等)の受けた利益についても,第三者が得た利益として,原告の損害推定の対象となると主張する。 この点,同条項は,旧商法264条を受けた規定であって,同法266条4項にいう第三者とは,取締役以外の全ての者ではなく,同法264条にいう第三者に限られる。そうすると,本件において第三者とは,被告Bがそれに当たるのであり,それ以外の者については,旧商法266条4項にいう第三者には当たらない。 したがって,原告主張のうち,G,K,H,J,L及びウ株式会社については,主張自体失当である。 (イ) そこで,被告A自身が得た利益について検討する。 ①原告は,被告Bが原告の一部門であるとの前提に立ち,被告Aが利益を得ている旨主張しているが,被告Bは原告の競業会社であって,原告の一部門ではない。したがって,原告の一部門であることを前提として,被告Aの利益を判断することはできない。 ②また,原告は,被告Aの家族が得た利益も被告Aの利益である旨主張する。そもそも,被告Aの家族が得た利益も,被告Bが原告の一部門であるとの前提に立っており,又は,被告Bの事業 することはできない。 ②また,原告は,被告Aの家族が得た利益も被告Aの利益である旨主張する。そもそも,被告Aの家族が得た利益も,被告Bが原告の一部門であるとの前提に立っており,又は,被告Bの事業に不要な経費名目で支出されたことを根拠にしている。上記①判断のとおり,被告B が原告の一部門であるとの前提は誤りであり,上記ア(ウ)判断のとおり,何が経費とはいえない支出であったのかを具体的に特定するに足る証拠はない。また,被告Aの家族で利益を得た者がいたとしても,それが当然に被告Aの利益になるものでもない。したがって,この点についての原告の主張は理由がない。 ③結局のところ,被告Aの得た利益として認められるものは,給与手当(役員報酬)として得たものに限られることになる。ところで,証拠(乙39の1ないし4)によれば,被告Bにおける役員報酬は,別紙6被告Aら利得一覧表の番号6「給与手当」欄記載のとおりであることが認められる。それによると,被告Aは,第1期及び第2期において報酬を支給されておらず,第3期においては各役員が概ね同額の報酬とされ,第4期においては被告Aの報酬が他の役員(Gを除く。)の報酬より低額になっている。既に判断したとおり,被告Aは,被告Bの事実上の主宰者であるから,役員報酬又は給与手当が役務の対価又は労働の対価である以上,被告Aが最も多額の報酬又は給与を受領するのが自然である。ところが,各役員報酬がほぼ同額になっていたり,被告Aの報酬が低額になっているということは,被告Bにおける役員報酬が,役務の対価としてではなく,所得税等の税金が有利になるように配慮した被告Aの家族内での利益分配になっており,実際の取得者とは必ずしも一致していないと認められる。 したがって,少なくとも,被告Aの役員報酬とされている金額と被告Aと同居 税金が有利になるように配慮した被告Aの家族内での利益分配になっており,実際の取得者とは必ずしも一致していないと認められる。 したがって,少なくとも,被告Aの役員報酬とされている金額と被告Aと同居しているG,K及びLの各役員報酬とされている金額の合計の内,相当部分を事実上の主宰者たる被告Aが取得し,被告Aの利益となっていると認められる。また,証拠(乙39の1,2)によれば,Jは,第1期当時は被告Aと同居していたので,Jの役員報酬の内,第1期分も同様である。被告Aと同居していないHや第2期以後 のJについては,実際には全額が同人らに支給されていないことを認めるに足りる証拠がないので,その一部を被告Aの利益とみることはできない。被告A,G,K及びL(第1期についてはJを含む。)の報酬とされている金額の内,被告Aの利益とみる相当部分の割合については,被告Aが被告Bの事実上の主宰者であること等を考慮して,6割とするのが相当である。 ④そうすると,被告A及び被告Aと同居している役員の報酬の内,被告Aの利益と認定する金額は,次のようになる。 決算期上記役員報酬被告Aの利益額第1期50万円30万円第2期240万円144万円第3期2040万円1224万円第4期1586万円951万6000円ただし,第4期については,被告Aが平成16年4月28日に原告の代表取締役を退任していることから,同年2月1日から同年4月28日までの88日間の日割計算をする必要があり,次の計算式のとおり,228万8000円となる。 (計算式)9,516,000×88÷366=2,288,000⑤とすると,被告Aが実質的に受領した報酬額は,合計1626万8000円となる。この報酬は,被告Aが,被告Bにおいて,原告と競業する貸コンテナ事業を行ったこ 00×88÷366=2,288,000⑤とすると,被告Aが実質的に受領した報酬額は,合計1626万8000円となる。この報酬は,被告Aが,被告Bにおいて,原告と競業する貸コンテナ事業を行ったことにより得たものであるので,旧商法266条4項により,原告の損害と推定されるべきものであるといえる。 (ウ) したがって,これが原告の蒙った損害額ということになる。 (6) 被告Bの責任ア法人格否認の法理の適用に基づく競業避止義務違反 法人格否認の法理のうち,特に法人格の濫用といわれるものは,何らかの義務を負う者(自然人,法人を問わない)が,法人格の本来の目的に反し別個の法人格を利用することでその義務を逃れようとする場合に,当該取引に限り法人格を否定することによって,取引の相手方を保護する考え方である。 この点,本件は,競業避止義務を負っていた被告A自身が,競業避止義務違反に当たる事業を,被告Bの計算で行ったのであるから,形式的にも実質的にも被告Aの行為が問題となるにすぎない。被告Bは,原告に対してもともと競業避止義務を負っているわけではないのであり,被告Aの法人格を濫用するといったことを想定することはできない。したがって,本件は,そもそも法人格否認の法理を持ち出す場面ではない。 また,法人格が全くの形骸にすぎず,会社即個人といえる場合には,個人の行為を会社の行為であると認めることが可能であるが,本件では,被告Bはコンテナ等の独自の資産を保有しており,全くの形骸であって被告Aと同じであるとまではいえないから,その前提が認められない。 以上から,原告の上記主張に基づく請求には理由がない。 イ不法行為責任原告は,被告Bの行為は,被告Aに加担するもので,直接民法709条に該当すると主張する。 しかし,被告Bは,原告に対し競業避止義務を負わな 原告の上記主張に基づく請求には理由がない。 イ不法行為責任原告は,被告Bの行為は,被告Aに加担するもので,直接民法709条に該当すると主張する。 しかし,被告Bは,原告に対し競業避止義務を負わないことが明らかであり,被告Bと原告とでは,自由競争の関係にあるのであり,被告Bの行為がその自由競争の範囲を逸脱したと認めるに足りる証拠はない。 原告の主張は,被告Aと被告Bを同一視する前提に立つものであって,採用することはできない。 結論 以上のとおりであって,原告の主位的請求は理由がなく,予備的請求は主文 掲記の限りにおいて理由があるからこれを認容し,その余については理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判長裁判官永野圧彦裁判官田邊浩典裁判官奥田大助(物件目録及び別紙省略)
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