平成12(行ウ)45 不動産取得税課税処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年7月17日 千葉地方裁判所 租税
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判決文本文6,116 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が原告に対して平成11年11月8日付けでした、原告の別紙物件目録記載の土地に関する不動産取得税の賦課決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は、宅地転用許可を受けて農地を取得した原告が、不動産取得税の課税額が不当に高額であると主張して、その取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実を含む。)(1) 原告は、肩書住所地において不動産業を営む株式会社である。 (2) 原告は、平成11年3月16日、別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を購入したが、購入に先立ち、千葉県知事から農地法5条1項の許可を受けていた(甲6)。 (3) 千葉県は、地方自治法155条1項に基づき、千葉県行政組織条例12条及び14条を制定し、千葉県夷隅支庁を設置して本件土地所在地をその所轄地としているが(乙11)、被告は、千葉県県税条例5条により、千葉県知事から不動産取得税の賦課権限の委任をされている(乙12)。 被告は、本件土地に関して、平成11年11月8日付けで、課税標準額382万8000円、税額15万3100円とする不動産取得税賦課決定を行った(甲3、6)。 (4) 地方税法(以下「法」という。)は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、原則として、当該登録価格により不動産取得税の課税標準価格を決定するものとし(法73条の21第1項)、例外として、当該不動産について増築、改築、損かい、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、法388条1項所定の固定資産評価基準によって課税標準となるべき 、例外として、当該不動産について増築、改築、損かい、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、法388条1項所定の固定資産評価基準によって課税標準となるべき価格を決定するものと規定している(法73条の21第1項ただし書、同条2項)。 本件土地に関する不動産取得税の課税処分に当たり、被告は、「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成10年4月1日自治府第51号各部道府県知事あて自治事務次官通知)第五章第三の二〇(一)において、「農地について農地法第5条第1項の規定による道府県知事の許可を受けた場合も(法73条の21第1項ただし書規定の)特別の事情に該当するものであること。」と定められていることに従い、法73条の21第1項ただし書、同条第2項、388条1項を適用して、固定資産評価基準に基づき、(3)の課税標準額を決定した。 (5) 原告は、平成12年1月6日、千葉県知事に対し、同課税処分に不服であるとして審査請求をした。 (6) 千葉県知事は、平成12年4月7日、同審査請求に対し、これを棄却する旨の裁決をし、同裁決書謄本は、同月10日、原告に送付された。 (7) 原告は、平成12年7月7日、本件訴訟を提起した。 2 争点農地の転用許可を受けたことが法73条の21第1填ただし書に規定する「特別の事情」にあたるか。 (1) 原告の主張法73条の21第1項ただし書は、「特別の事情」として地目の変換を明示しているから、たとえ転用許可を受けたとしても、地目の変換がなされない段階では、原則どおり、同条本文の適用があることが前提とされている。加えて、農地法5条の許可は、要件効果が明確で定型的に規定できるのに、同条ただし書はこれを明示していないのであるから、このような場合には、同条ただし書では 同条本文の適用があることが前提とされている。加えて、農地法5条の許可は、要件効果が明確で定型的に規定できるのに、同条ただし書はこれを明示していないのであるから、このような場合には、同条ただし書ではなく、本文が適用されるべきことが当然の前提とされている。 (2) 被告の主張本件土地のように、農地法5条1項の許可を受けた土地は、外見上農地としての形態を留めてはいるが、実質的には宅地等としての潜在的価値を有しており、これを農地と同様に生産力条件に着目して評価することは不合理であるし、他の宅地との間に不均衡が生ずることなどからすれば、このような場合には、法73条の21第1項ただし書にいう「特別の事情」があるものというべきである。 よって、被告が本件土地の取得に関し、同項ただし書を適用し、固定資産評価基準に基づく賦課処分を行ったことは適法である。 第3 当裁判所の判断 1 法73条の21第1項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」の意義等について固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産について法が当該登録価格によって不動産取得税の課税標準となるべき価格とするのを原則と定めた趣旨は、固定資産税の課税対象となる土地及び家屋の範囲は、不動産取得税の課税対象となる不動産とほぼ同一であり(法73条1号ないし3号、341条2号、3号)、その価格も同じく適正な時価をいうものとされていること(法73条5号、341条5号)などから、両税における不動産の評価の統一と徴税事務の簡素化を図ったものと解することができる。 すなわち、固定資産税の課税標準は、賦課期日における固定資産の価格で、固定資産課税台帳に登録されたものとされているが(法349条)、法は、固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格が適正な時価であるようにするため、市町村長 税標準は、賦課期日における固定資産の価格で、固定資産課税台帳に登録されたものとされているが(法349条)、法は、固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格が適正な時価であるようにするため、市町村長等が行う固定資産の評価及び価格の決定は総務大臣により定められた評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)に基づいて行うものとし(法388条以下参照)、決定された価格について固定資産税の納税者に不服申立ての機会を与える(法432条以下参照)などの規定を設けている。そして、法は、固定資産のうち不動産については、税負担の安定と行政事務の簡素化を図る見地から、原則として3年ごとにその評価を行い、価格を決定した上、固定資産課税台帳にその価格を登録し、第2年度及び第3年度については、原則として、基準年度の登録価格をもってその登録価格とみなすこととしつつ、ただ、第2年度、第3年度において、「地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情」等が生じたため、基準年度ないし第2年度の価格によることが不適当、不均衡となる場合には、これによらずに当該不動産に類似する不動産の基準年度の価格に比準ずる価格によることとしている(法349条2項、3項参照)。 このようにして評価、決定され、固定資産課税台帳に登録された価格は、基準年度の固定資産税の賦課期日における不動産の時価を示すものというべきであるが、不動産取得税の課税上、不動産の評価の統一性を確保し、また、極めて多数にのぼる不動産の取引等ごとに当該不動産の価格を評価,決定することの煩雑さを回避し、簡易で効率的な徴税を図るという見地からすれば、この登録価格を当該不動産の取得時の時価として取り扱うことは課税技術的に合理性があり、それによって税負担の公平を損なうなどの支障が生ずることは通常は考 、簡易で効率的な徴税を図るという見地からすれば、この登録価格を当該不動産の取得時の時価として取り扱うことは課税技術的に合理性があり、それによって税負担の公平を損なうなどの支障が生ずることは通常は考えられないことから、法は、都道府県知事が不動産取得税の課税標準である不動産の価格を決定するについては、固定資産課税台帳に当該不動産の価格が登録されている場合には、原則として、同登録価格によりこれを決定することとしたものと解される。 このような法の趣旨及び固定資産税における不動産の評価及び価格決定の仕組みに照らすと、法73条の21第1項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」とは、当該不動産の評価が行われ、その価格が決定された年度の固定資産税の賦課期日後に、当該不動産につき、増築、改築、損壊、地目の変換その他特別な事情が生じ、その結果、同登録価格が当該不動産の適正な時価を示しているものとみて、同登録価格をもとに不動産取得税の課税標準額を決定することが公平な税負担という観点から見て看過できない程度に不合理と認められる事態に至った場合をいうと解するのが相当である。 2 農地の転用と「特別の事情」そこで、農地法5条1項の転用許可が「特別の事情」に該当するかどうかについて検討する。 (1) 農地法5条1項は、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ることを目的として、農地を農地以外に転用する目的で所有権を移転する場合には、同項ただし書に規定する場合を除いて、都道府県知事の許可を受けなければならないと規定し、この許可を受けない以上、当該農地に関して所有権移転の効力は生じないとされている。 そして、同条項の許可は、所有権移転の効力を生ぜしめる一種の法定条件と解されており、この許可を受けることによって、当該土地は宅地等として利用可能な状態にな 有権移転の効力は生じないとされている。 そして、同条項の許可は、所有権移転の効力を生ぜしめる一種の法定条件と解されており、この許可を受けることによって、当該土地は宅地等として利用可能な状態になるところ、農地は、耕作、すなわち土地に労費を加え、肥培管理を行って作物を栽培するという限定された目的に供される土地であるのに対し、宅地は、居住の用に供される土地であり、その評価は農地に比して格段に高いのが一般である。 (2) そうすると、農地法5条1項の許可を受けて、当該土地が宅地としての実質を有するに至った後も、農地としての農業生産性に着目して算定された固定資産課税台帳登録価格により不動産取得税の課税標準額を算定することは、他の宅地所有者との関係において、公平な税負担の観点から見て看過できない程度の不合理を生じさせるものといわなければならない。 (3) よって、農地法5条1項の許可は、法73条の21第1項ただし書にいう「特別の事情」に該当する。 3 本件の検討(1) これを本件についてみると、原告は、本件土地を取得する際、農地法5条1項の許可を受けているのであるから、被告が法73条の21第1項ただし書、同条2項、388条1項に基づき、固定資産評価基準によって本件土地の不動産取得税額を算定したことに違法はない。 (2) そして、具体的な不動産取得税額の算定について検討するに、証拠(乙3ないし9)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。 ア本件土地の概況本件土地は、千葉県夷隅郡αのほぼ東央部の国道128号線と太平洋岸の間に位置し、周囲は主に農地で、家屋がまばらに点在し、東側の土地を隔てて河川江場土川が南から北に流れている。最寄りのJR外房線三門駅から北東に約750メートルの位置にあり、主な公共施設である町役場から南南東に約1キロメー 農地で、家屋がまばらに点在し、東側の土地を隔てて河川江場土川が南から北に流れている。最寄りのJR外房線三門駅から北東に約750メートルの位置にあり、主な公共施設である町役場から南南東に約1キロメートルの位置にある。本件土地の形状は、ほぼ長方形で、道路に接しており、本件土地から町道を経由して国道128号線に出ることができる。 イ被告は、次のような経過により、本件土地の不動産取得税額を決定した。 (ア) 固定費産評価基準固定資産評価基準第1章第2節一「田及び畑の評価」によれば、農地法5条1項の規定により宅地等への転用許可を受けた田及び畑等については、沿接する道路の状況、公共施設等の接近の状況その他宅地等としての利用上の便等からみて、転用後における当該田及び畑とその状況が類似する土地の価額を基準として求めた価額から当該田及び畑を宅地等に転用する場合において通常必要と認められる造成費に相当する額を控除した価額によってその価額を求める方法によるものとする、と規定されている。 (イ) 類似土地を基準とした基本価額の算定被告は、本件土地とβ225番地5の宅地(以下「本件類似土地」という。)の概要が周囲の環境、接道と幹線道路への接続、最寄り駅及び町役場への接近条件等において高い類似性を有すること、本件類似土地は、固定資産評価額算出の際、本件土地が存する状況類似地区番号61の標準地とされていることなどから、本件類似土地を基準地として選定した。そして、本件類似土地の固定資産課税台帳登録価格が1平方メートル当たり2万4500円であったことから,本件土地の基本価額を1平方メートル当たり2万4500円と算定した。 (ウ) 造成費の算定被告は、本件土地が未造成で、通常必要と認められる造成費相当額の算定が困難であったことや近傍類似宅地の売買実例価格の把握が 額を1平方メートル当たり2万4500円と算定した。 (ウ) 造成費の算定被告は、本件土地が未造成で、通常必要と認められる造成費相当額の算定が困難であったことや近傍類似宅地の売買実例価格の把握が困難であったことなどから、盛土の高さに応じた標準的造成費相当額を算定することとし、本件土地の調査を行い、本件土地が平坦地であること、近接宅地までの高さが約1.4メートルで、盛土の高さは1.5メートルが妥当であると判断して、造成費を1平方メートル当たり5500円と算定した。 (エ) 地方税法附則11条の5第1項の適用原告は、平成11年3月16日に本件土地を取得し、また上記のように、近傍類似宅地の価額を基準として本件土地の評価がなされていることから、地方税法附則11条の5第1項により、本件土地の基本価格の2分の1の額が課税標準とされた。 (オ) 不動産取得税の標準税率法73条の15によれば、不動産取得税の課税標準税率は、100分の4である。 (カ) 被告は、これらをもとに、本件土地の不動産取得税額を15万3100円と決定した。 (3) 以上認定の事実によれば、本件不動産取得税額は、固定資産評価基準に基づいて算出されたものであり、その決定過程及び考慮事項に不適切なものはないから、適正なものと認められる。 第4 結論以上によれば、原告の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条に従い、主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第三部裁判長裁判官園部秀穂裁判官今泉秀和裁判官向井邦生

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