平成26(行ウ)74等 帰化許可処分の義務付け等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年2月6日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文16,174 文字)

平成27年2月6日判決言渡平成26年(行ウ)第74号帰化許可処分の義務付け等請求事件平成26年(行ウ)第76号帰化許可処分の義務付け等請求事件 主文 1 本件各訴えのうち,帰化の許可の義務付けを求める部分をいずれも却下する。 2 その余の訴えに係る原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 法務大臣が第1事件原告に対して平成25年8月14日付けでした同原告の帰化許可申請に対する不許可処分を取り消す。 2 法務大臣は,第1事件原告に対し,平成24年7月26日付けでした同原告の帰化許可申請につき,帰化を許可するとの処分をせよ。 3 法務大臣が第2事件原告に対して平成25年8月14日付けでした同原告の帰化許可申請に対する不許可処分を取り消す。 4 法務大臣は,第2事件原告に対し,平成24年7月26日付けでした同原告の帰化許可申請につき,帰化を許可するとの処分をせよ。 第2 事案の概要 1 本件は,大韓民国(以下「韓国」という。)の国籍を有する母子である原告らが,いずれも平成24年7月26日付けで法務大臣に対して帰化の許可の申請(以下,それぞれの申請を「本件帰化申請」といい,併せて「本件各帰化申請」という。)をしたが,いずれも平成25年8月14日付けで法務大臣から許可をしない処分(以下,それぞれの処分を「本件不許可処分」といい,併せて「本件各不許可処分」という。)を受けたことから,本件各不許可処分は,法務大臣がその裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したもので違法である として,本件各不許可処分の取消しを求めるとともに,法務大臣に対し,本件各帰化申請に対していず 件各不許可処分は,法務大臣がその裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したもので違法である として,本件各不許可処分の取消しを求めるとともに,法務大臣に対し,本件各帰化申請に対していずれも帰化を許可するとの処分の義務付けを求める(以下「本件各義務付けの訴え」という。)事案である。 2 関係法令の定め別紙関係法令の定め記載のとおり。 3 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 原告らの身分事項等ア第1事件原告(以下「原告A」という。)は,昭和47年 ▲ 月 ▲ 日,韓国人の父Bと日本人の母Cとの間の子として,日本において出生した,韓国の国籍を有する外国人女性である。(甲1の1・2,甲2,甲3)イ第2事件原告(以下「原告D」という。)は,平成7年▲月▲日, いずれも韓国人の父E,母原告Aとの間の子として,日本において出生した,韓国の国籍を有する外国人女性である。原告Aは,その後Eと離婚し,原告Dの親権者となった。(甲4の1・2,甲6,甲7の1・2)ウ原告Aは,平成23年 ▲ 月 ▲ 日,日本人男性であるFと婚姻し,同年▲ 月 ▲日に離婚したが,平成24年 ▲月 ▲日,再度Fと婚姻した。原告らとFは,現在,原告らの住所地において同居している。(甲5,16,17)(2) 本件各帰化申請及び本件各不許可処分ア原告らは,平成24年7月26日,法務大臣に対し,それぞれ帰化の許可の申請(本件各帰化申請)をした。 イ法務大臣は,平成25年8月14日,原告らに対し,いずれも帰化を許可しない処分(本件各不許可処分)をし,同月19日,原告らに対し,本件各不許可処分を通知した。(甲10,11)(3) 本件訴訟の提起 原告らは, 日,原告らに対し,いずれも帰化を許可しない処分(本件各不許可処分)をし,同月19日,原告らに対し,本件各不許可処分を通知した。(甲10,11)(3) 本件訴訟の提起 原告らは,平成26年2月14日,それぞれ本件訴訟(第1事件及び第2事件)を提起した。(顕著な事実) 4 争点及び争点についての当事者の主張本件の争点は,①本件各不許可処分が適法か否か(争点1),②本件各義務付けの訴えが適法か否か(争点2)である。 (1) 争点1(本件各不許可処分が適法か否か)について(原告らの主張の要旨)ア法務大臣の裁量権の範囲について( ア) 法務大臣による帰化不許可処分は,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる。 原告らのように,歴史的経緯により日本国籍を喪失しながら,日本で生まれ育ち,日本人と同じ生活をしてきた特別永住資格を有する外国人にとって,日本国籍の取得は,日本国民としてのアイデンティティーを取得,確立するという点において極めて重要であり,憲法22条2項,世界人権宣言15条の趣旨にも鑑みれば,帰化の許否の判断につき,法務大臣の裁量権は大幅に制限を受けるというべきであるから,その適法性についての司法審査は厳格に行わなければならない。国籍法も,このような外国人にとっての日本国籍取得の重要性に鑑み,日本で生まれた外国人について,帰化許可の条件を緩和している。 ( イ) 国籍法5条1項,6条ないし9条が帰化の判断の基礎として 。国籍法も,このような外国人にとっての日本国籍取得の重要性に鑑み,日本で生まれた外国人について,帰化許可の条件を緩和している。 ( イ) 国籍法5条1項,6条ないし9条が帰化の判断の基礎として規定している事項によれば,法務大臣が帰化の判断に際して考慮するこ とができる事項は,申請者個人を基準にして,日本との精神的親和性の有無,程度,日本における安定した生活の見込みの有無,程度,日本社会に与える影響の有無,内容,血統等に係る日本との関連性の有無,程度等の事情に限られるというべきである。 帰化申請を行う外国人について,外国人学校に通学することないし通学させることを選択したことを考慮して,帰化不許可処分を行うことは社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことは明らかであり,申請者が朝鮮学校に通うことを問題にするのは,朝鮮学校に通う生徒に対する差別的取扱いとして許容されない。 イ原告Aについて( ア) 原告Aは,出生してから約42年間日本に居住しており,引き続き5年以上日本に住所を有する者であり(国籍法5条1項1号),現在42歳であるから,大韓民国民法4条によって成人に達し,行為能力を有する者である(同項2号)。原告Aは,前科前歴はなく,行政処分を受けたこともなく,就労の経験もあり,素行が善良であるといえる(同項3号)。原告Aの配偶者であるFは,株式会社の取締役として安定した収入を得ており,原告Aは生計を一にする親族の資産又は技能によって生計を営むことができる(同項4号)。 原告Aは,大韓民国国籍法15条1項により,日本国籍の取得によって韓国籍を失うものといえる(国籍法5条1項5号)。原告Aは,日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て,若しくは主張し,又はこれを企て,若しくは主張する政党その他の 取得によって韓国籍を失うものといえる(国籍法5条1項5号)。原告Aは,日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て,若しくは主張し,又はこれを企て,若しくは主張する政党その他の団体を結成し,若しくはこれに加入したことがない(同項6号)。 したがって,原告Aは,国籍法5条1項各号所定の条件を満たす。 ( イ) 原告Aは,日本での居住期間,日本語の能力等の面からみても,日本との精神的親和性が極めて高く,継続的に安定した収入を得て いる配偶者のFと共に居住し,安定した生活を行うことができる。 仮に,原告Aについて帰化が許可されない場合,将来,国外退去を強いられる状況が生じ得るので,Fや原告Dとの離別を余儀なくされ,かかる離別による不利益は重大である。 原告Aの本件不許可処分は,原告Aの子である原告DがG学校(以下「本件朝鮮学校」という。)に通学していることを理由にされたことは明らかである。しかし,本件朝鮮学校は,日本の学校と同等の教育理念,内容に基づいて運営されており,反日思想等,特定の思想,信条を生徒に強要する教育はされていない。また,原告Dは韓国籍であり,日本で生まれ育ったのであるから,仮に本件朝鮮学校において民族教育や愛国教育が行われていたとしても,これにより北朝鮮人としての自覚や愛国心を持つことはあり得ない。原告Aは,病気がちで,家事が十分にできない状況にあることから,夜間や土曜日も教員が常駐し,教育環境が充実している本件朝鮮学校に原告Dを通学させているにすぎないし,そもそも原告Dが本件朝鮮学校に在学しているという事情は,原告Aに係る事情ではない。 したがって,原告Aの子が本件朝鮮学校に通学しているとの事情は,帰化の判断において不利益に考慮すべきではない事項である。 以上のとおり, いるという事情は,原告Aに係る事情ではない。 したがって,原告Aの子が本件朝鮮学校に通学しているとの事情は,帰化の判断において不利益に考慮すべきではない事項である。 以上のとおり,原告Aについての本件不許可処分は,①原告Dを本件朝鮮学校に通学させているという考慮すべきでない事項を考慮し,②日本での居住期間,日本語の能力,就労状況,原告Dを本件朝鮮学校に通学させている理由等の当然考慮すべき事項を考慮せずにされたものであり,考慮すべきでない事項を考慮し,当然考慮すべき事項を考慮せずにされた,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであるから,裁量権の範囲を超え,その濫用があったものとして違法である。 ウ原告Dについて( ア) 原告Dは,出生してから約19年間日本に居住しており,引き続き5年以上日本に住所を有する者であり(国籍法5条1項1号),現在19歳であるが,親権者である原告Aと共に本件帰化申請を行っており,原告Aが帰化を許可されれば,原告Dは日本国民の子で日本に住所を有する者に当たる(同法8条1号)。原告Dは,前科前歴はなく,行政処分を受けたこともなく,積極的に課外活動もしており,素行が善良であるといえる(同法5条1項3号)。原告Dの母の配偶者であるFは,株式会社の取締役として安定した収入を得ており,原告Dは生計を一にする親族の資産又は技能によって生計を営むことができる(同項4号)。原告Dは,大韓民国国籍法15条1項により,日本国籍の取得によって韓国籍を失うものといえる(国籍法5条1項5号)。原告Dは,日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て,若しくは主張し,又はこれを企て,若しくは主張する政党その他の団体を結成し,若しくはこれに加入したことがない(同項6号)。 ( イ ,日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て,若しくは主張し,又はこれを企て,若しくは主張する政党その他の団体を結成し,若しくはこれに加入したことがない(同項6号)。 ( イ) 原告Dは,日本での居住期間,日本語の能力,日本の学校との交流活動等の面からみて,日本との精神的親和性は極めて高く,継続的に安定した収入を得ている同原告の母の配偶者のFと共に居住し,安定した生活を行うことができる。仮に,原告Dについて帰化が許可されない場合,将来,国外退去を強いられる状況が生じ得るので,Fや原告Aとの離別を余儀なくされ,かかる離別による不利益は重大である。 原告Dの本件不許可処分は,同原告が本件朝鮮学校に通学していることを理由にされたことは明らかである。しかし,このことが帰化の判断において不利益に考慮すべきではない事項であることは上 記イ( イ) のとおりである。 以上のとおり,原告Dについての本件不許可処分は,①本件朝鮮学校に通学しているという考慮すべきでない事項を考慮し,②日本での居住期間,日本語の能力,課外活動,F及び原告Aと離別した場合の不利益の重大性,本件朝鮮学校に通学している理由等の当然考慮すべき事項を考慮せずにされたものであって,考慮すべきでない事項を考慮し,当然考慮すべき事項を考慮せずにされた,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであるから,裁量権の範囲を超え,その濫用があったものとして違法である。 エ被告の主張について本件各不許可処分は,上記イ( イ) 及びウ( イ) のとおり,考慮すべきでない事項を考慮し,当然考慮すべき事項を考慮せずにされたものであって,これらの事項はいずれも本件各不許可処分に係る法務大臣の判断過程を基礎付ける主要事実に当たるところ,被告は のとおり,考慮すべきでない事項を考慮し,当然考慮すべき事項を考慮せずにされたものであって,これらの事項はいずれも本件各不許可処分に係る法務大臣の判断過程を基礎付ける主要事実に当たるところ,被告は,これらの事実についての認否を留保し続けているから,弁論主義に基づき,これらの事実が存在することを前提に,判断がされるべきである。 帰化に関する処分は,取消訴訟や義務付け訴訟の対象とされているところ,原告らが主張立証を尽くしたにもかかわらず,被告が認否を留保するだけで原告らの請求が退けられるのであれば,原告らは,当該処分を裁判上で争う道を事実上閉ざされているというに等しく,実質的な司法審査がされるべきである。 (被告の主張の要旨)ア法務大臣の裁量権の範囲について帰化とは,国家という一つの共同体が,本来その共同体に属さない個人を新たにその共同体の構成員として認め,国籍を付与することであり,我が国は,国籍法5条ないし9条において帰化の条件を規定している。また, 国籍は,国家の主権者の範囲を確定し,国家の属人的統治権の範囲を限定する高度に政治的な事項であって,これを付与するための要件,付与を求める申請の方式,付与された場合の効果等についてはもとより,要件,方式が具備されている場合に国籍を付与するかどうかについても,当該国家が自由に決定することができる。 したがって,帰化が許可されるためには,申請者が国籍法所定の帰化の条件を具備することが最低条件として必要であり,法務大臣は,法定の条件を具備しない申請者については帰化の許可を与えることができないが,法定の条件を具備している申請者に対して帰化を許可することが義務付けられているわけではない。外国人に国籍を取得させるか否かは,国家の主権者の範囲を確定する高度に政治的な事項であるか とができないが,法定の条件を具備している申請者に対して帰化を許可することが義務付けられているわけではない。外国人に国籍を取得させるか否かは,国家の主権者の範囲を確定する高度に政治的な事項であるから,法務大臣は,法定の条件を具備している申請者についても,なお様々な事情を考慮して帰化を許可するか否かを自由に決することができる極めて広範な裁量権を有しており,その裁量権の行使が違法とされるのは,極めて例外的な場合に限られるというべきである。そして,国籍法5条1項各号所定の要件に関して,国際情勢,外交関係,公安上の理由等の政治的な判断を行う場合があり得ることもまた当然というべきであり,仮に法務大臣がこれらの政治的な判断によって国籍法5条1項各号所定の要件を判断したとしても,それをもって裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したとはいえない。 イ原告Aについて( ア) 法務大臣は,原告Aの国籍法5条1項各号等に掲げる条件の該当性等について審査し,また更に様々な事情を考慮して,今しばらく原告らの生活状況を観察する必要があると判断し,原告Aの本件帰化申請を不許可としたものであるから,その判断に裁量権の逸脱又は濫用はない。 ( イ) なお,法務大臣は,帰化の不許可決定をするに当たって考慮した 全ての事情を明らかにすべき義務はなく,申請者に対して不許可となった理由を告知することを要しない(行政手続法3条1項10号,8条参照)。帰化の許否を判断するに当たって,申請者に関するどのような事実をどのように評価したかを明らかにすることは,帰化の許否の判断に当たって調査した申請者及びその関係者のプライバシーや,法務大臣の把握している情報の内容及び情報源,国家公務員法100条1項に規定する職務上知ることができた秘密などを開示することにほかな 否の判断に当たって調査した申請者及びその関係者のプライバシーや,法務大臣の把握している情報の内容及び情報源,国家公務員法100条1項に規定する職務上知ることができた秘密などを開示することにほかならないから許されず,評価の対象とされる事実の隠匿や偽装を誘発しかねない等,将来における帰化行政の適正・公正な運用の妨げとなり,ひいては,国家の治安にも重大な影響を与えるおそれがある。したがって,本件各帰化申請につき,法務大臣が帰化の許否の判断に当たって考慮した事由,評価等を明らかにすることはできない。 ( ウ) 原告らは,原告Dが本件朝鮮学校に通学しているという事情は考慮すべきではない事項であると主張する。しかし,法務大臣は,帰化の許否を判断するに当たって極めて広範な裁量権を有しているから,法務大臣が原告Aの本件帰化申請の可否を判断するに当たり,仮に,子の原告Dを本件朝鮮学校に通学させていることを一つの事情として考慮したとしても,裁量権を逸脱し,又は濫用したことにはならないというべきである。 すなわち,朝鮮学校に対する政府の見解は,朝鮮学校自体が在日朝鮮人総聯合会(以下「朝鮮総連」という。)と密接な関係にあり,教育内容,人事,財政に影響を及ぼしていると認識しているというものであり,公安調査庁によれば,朝鮮総連は,朝鮮学校での民族教育を「愛族愛国運動」の生命線と位置付けており,折に触れ金総書記の偉大性を紹介する課外活動を行うなどの思想教育を行ってい るとされているし,朝鮮総連のホームページでは,朝鮮総連と在日同胞は,実に120余の各級学校を日本各地に設立し,在日同胞子女たちに対し,民主主義的民族教育を実施している,民主主義的民族教育を強化・発展させ,広範な在日同胞子弟を,民族性を所有し知徳体を兼備した有能な民族人材,真 の各級学校を日本各地に設立し,在日同胞子女たちに対し,民主主義的民族教育を実施している,民主主義的民族教育を強化・発展させ,広範な在日同胞子弟を,民族性を所有し知徳体を兼備した有能な民族人材,真の愛国者に育てるとされている。 そして,本件朝鮮学校のホームページには,教育目的として「民族の繁栄と在日同胞社会の発展に,貢献するという民族的自覚,…が必要であると,本校では考えています。」,教育の特色として「同胞社会との関わりや大切さ,同胞社会を豊かにする重要性を認識しする活動を行っています。」,教育課程として「学校の内外で行われる様々な教育活動を通して,生徒に人生の意義と目標をしっかりと認識してもらい,朝鮮人としてのアイデンティーを確立し,国際化時代に対応した判断力と実行力を養います。」と掲載されており,本件朝鮮学校の校長は,朝鮮総連の幹部会議において,北朝鮮の金正恩体制への忠誠を中心に据えた教育の推進を強調している。 また,外務省海外安全ホームページでは,目的の如何を問わず,北朝鮮への渡航を自粛するよう渡航情報(危険情報)が発出されているが,原告Aは,原告Dが本件朝鮮学校の修学旅行のために平成25年5月30日から同年6月13日まで北朝鮮に渡航した旨を供述している。さらに,原告Aも,本件朝鮮学校を卒業している。 以上のとおりの朝鮮学校の性格や教育内容,本国との強い結びつきを有する朝鮮総連の影響を大きく受けていること,日本以外の国の国民としてのアイデンティティーを確立することを目的とした教育がされていることに鑑みると,法務大臣が原告Aの本件帰化申請の可否を判断するに当たって,仮に,朝鮮学校の性格,原告Aが子 の原告Dを本件朝鮮学校に通学させていることその他の事情を併せて考慮した結果,現時点では我が国の国家共同体の一員と 化申請の可否を判断するに当たって,仮に,朝鮮学校の性格,原告Aが子 の原告Dを本件朝鮮学校に通学させていることその他の事情を併せて考慮した結果,現時点では我が国の国家共同体の一員とすることが適当ではなく,今しばらく原告らの生活状況を観察する必要があると判断し,原告らの本件各帰化申請を不許可とする本件各決定をしたとしても,それが裁量権を逸脱し,又は濫用したものと認める余地はない。 ウ原告Dについて原告Dについては,本件不許可決定時において20歳未満であり,原告Aの帰化が許可されないことによって国籍法8条1号の適用が受けられず,同法5条1項2号の条件を満たさないこととなり,原告Aの帰化が許可されない以上,その帰化を許可することはできない。 (2) 争点2(本件各義務付けの訴えが適法か否か)について(被告の主張の要旨)本件各義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号所定のいわゆる申請型の義務付けの訴えであり,当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在であるときに限り,提起することができるところ(同法37条の3第1項2号),上記(1) (被告の主張の要旨)のとおり,本件各不許可処分は適法であり,取り消されるべきものには当たらないから,本件各義務付けの訴えは,いずれも同法37条の3第1項2号所定の要件を欠くものであり,不適法である。 (原告らの主張の要旨)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件各不許可処分が適法か否か)について(1) 帰化の許否の判断に関する法務大臣の裁量についてア憲法10条は,「日本国民たる要件は,法律でこれを定める。」と規定 し,これを受けて,国籍法は,日本国籍の得喪に関する要件を規定している。そして,憲法10条の規定は,国籍は いてア憲法10条は,「日本国民たる要件は,法律でこれを定める。」と規定 し,これを受けて,国籍法は,日本国籍の得喪に関する要件を規定している。そして,憲法10条の規定は,国籍は国家の構成員としての資格であり,国籍の得喪に関する要件を定めるに当たっては,それぞれの国の歴史的事情,伝統,政治的,社会的及び経済的環境等種々の要因を考慮する必要があることから,これをどのように定めるかについて,立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される(最高裁平成20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁)。 このような立法府の広範な裁量に基づき,国籍法は,帰化をするには法務大臣の許可を得なければならないこととした上(4条2項),法務大臣は,一定の条件を備える外国人でなければ,その帰化を許可することができないことを規定し,その条件として,居住に関する条件,能力に関する条件,素行に関する条件,生計に関する条件,重国籍防止に関する条件,憲法遵守等に関する条件を挙げている(5条1項各号)。 以上のような国籍の性格や国籍法の規定文言からすれば,同法5条1項各号は,法務大臣が帰化を許可する場合に満たされるべき条件を定めたものにすぎず,法務大臣に対し,同条1項各号の条件を備えた外国人については当然に帰化を許可すべきであるとの義務を負わせる趣旨ではなく,法務大臣は,国籍法所定の帰化の条件を備える外国人についても,なおその帰化を許可するか否かを決する裁量権を有するものと解するのが相当である。 そして,帰化が,国家の構成員としての包括的な法律関係を設定する行為であり,国籍を付与するか否かという判断は,国家の主権者の範囲を確定するという政治的な事項に係わるものであることからすれば,法務大臣は,国籍法所定の帰化の条件を備える外国人につい 関係を設定する行為であり,国籍を付与するか否かという判断は,国家の主権者の範囲を確定するという政治的な事項に係わるものであることからすれば,法務大臣は,国籍法所定の帰化の条件を備える外国人についても,なおその帰化を許可するか否かにつき,政治的,社会的な諸事情をも考慮して自由にこれを決することができる広範な裁量を有しているものと解することが相当で あり,法務大臣の帰化を許可しない旨の判断が違法とされるのは,上記のような法務大臣の広範な裁量権を前提にしても,なお裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用したものと認められる場合に限られるものと解するのが相当である。 イ原告らは,歴史的経緯により日本国籍を喪失しながら,日本で生まれ育ち,日本人と同じ生活をしてきた特別永住資格を有する外国人にとって,日本国籍の取得は,日本国民としてのアイデンティティーを取得,確立するという点において極めて重要であり,憲法22条2項,世界人権宣言15条の趣旨にも鑑みれば,法務大臣の裁量権は大幅に制限を受ける旨主張する。 この点,法務大臣は,特別永住者からの帰化の申請につき,原則として,帰化の動機書,在勤証明書,給与証明書及び最終学歴を証する書面の提出を求めない扱いをしていることが認められるが,これは,特別永住者が永年にわたり我が国で生活し,我が国の社会に定着して,我が国に生活の基盤を持っている等の事情を考慮し,手続を簡略化するという取扱いをしているものにすぎず(乙22の1・2),国籍法その他の法令において,帰化に関し,特別永住資格を有する外国人を特別に扱うべきことを定めた規定は見当たらない。そうすると,特別永住資格を有することは,帰化の許否の判断においてしんしゃくされる一つの事情にとどまるというべきであり,申請者が特別永住資格を有することから直 うべきことを定めた規定は見当たらない。そうすると,特別永住資格を有することは,帰化の許否の判断においてしんしゃくされる一つの事情にとどまるというべきであり,申請者が特別永住資格を有することから直ちに法務大臣の帰化の許否に関する裁量権の範囲が制限されるものと解することはできない。 また,憲法22条2項は,外国移住及び国籍離脱の自由を認めた規定であり,世界人権宣言15条2項は,「何人も,ほしいままにその国籍を奪われ,又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。」という国籍離脱の自由を認めた規定であって,帰化の許否の判断に関する規定ではないし,世界人権宣言15条1項は,「すべて人は国籍をもつ権利を有す る。」という規定であり,その思想を推し進めると無国籍者に対して国籍を付与する義務を認めるべきであるとの立法論の根拠にはなり得ても,既に国籍を有する者に対して他の国籍を当然に付与すべきであることの根拠となるものではないから,上記各規定が,国籍法に基づく法務大臣の帰化の許否の判断に係る裁量権の範囲を制限する根拠になるものではない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (2) 認定事実前提事実,争いのない事実,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告らの身上,経歴等( ア) 原告Aは,日本で出生し,約42年間継続して日本に居住している。同原告は,本件朝鮮学校を卒業し,(省略) のアルバイトをして働いたことがあったが,  (省略)  のほか,  (省略)という特定疾患を抱えており,家事が十分にできず,またFの帰宅が遅くなることがあることから,夜間や土曜日も教員が学校に常駐している本件朝鮮学校に原告Dを通学させていた。原告Aは,前科,前歴はなく,行 いう特定疾患を抱えており,家事が十分にできず,またFの帰宅が遅くなることがあることから,夜間や土曜日も教員が学校に常駐している本件朝鮮学校に原告Dを通学させていた。原告Aは,前科,前歴はなく,行政処分等を受けたこともない。(甲3,12,13,16,乙21)( イ) 原告Dは,日本で出生し,約19年間継続して日本に居住している。同原告は,本件不許可処分当時,本件朝鮮学校の高級部3年生であった。同原告は,本件朝鮮学校で (省略)  と(省略)に所属しており,日本の学校との交流活動等にも参加している。同原告は,前科,前歴はなく,行政処分等を受けたこともない。(甲8,16,17)( ウ) 原告らは,日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成3年法律第71号)3条に 規定する特別永住者である。(争いがない)( エ) Fは,▲ 県に本店を置く, (省略) 及び(省略)を目的とする株式会社の取締役であり,原告らと同居している。(甲9,16,17)イ本件各帰化申請原告らは,平成24年7月26日,横浜地方法務局国籍課において,本件各帰化申請をした。同日,同課の担当官は,本件各帰化申請について,Fの同席のもとで原告らと面談し,原告Aが原告Dを本件朝鮮学校に通学させていること等に関する事情を聴取した。(甲16)(3) 検討ア上記(2) アの認定事実によれば,原告Aは,国籍法5条1項1号,2号,4号,5号の条件を満たしていると認められ,同原告が,同項3号,6号の条件を満たさないことを基礎付ける事情はうかがわれない。また,原告Dは,同法5条1項1号,4号,5号の条件を満たしていると認められ,同原告が,同項3号,6号の条件を満たさないことを基礎付ける事情は の条件を満たさないことを基礎付ける事情はうかがわれない。また,原告Dは,同法5条1項1号,4号,5号の条件を満たしていると認められ,同原告が,同項3号,6号の条件を満たさないことを基礎付ける事情はうかがわれない。なお,原告Dは,本件不許可処分当時20歳未満であり,同項2号の条件を満たさないが,原告Aの帰化が許可されれば,同法8条1号の条件を満たし,同法5条1項2号の条件を満たす必要がなくなる。 イしかしながら,上記(1) のとおり,法務大臣は,国籍法所定の帰化の条件を備える外国人についても,なお,その帰化を許可するか否かにつき,国際情勢,外交関係その他の政治的な事項をも考慮して自由にこれを決することができる広範な裁量を有しているものと解されるところ,このことを前提とすれば,原告Aについて上記(2) アの事実関係があったとしても,法務大臣が,様々な事情を考慮して,今しばらく原告Aの生活状況を観察する必要があると判断することは,裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した違法があるということはできない。そして,原告Dについては,原告Aに対 し,本件不許可処分がされ,帰化が許可されない以上,国籍法5条1項2号,8条1号所定の条件を欠くものと認められる。 ウ原告らは,本件各不許可処分は,原告らが本件朝鮮学校に通学することないし通学させることを選択したことを理由としてなされたものであることが明らかであるところ,この事情は帰化の判断において不利益に考慮すべきものではないし,申請者が朝鮮学校に通うことを問題にするのは差別的取扱いとして許容されない旨主張する。 しかしながら,法務大臣は,帰化を許可するか否かにつき,国際情勢,外交関係を含む政治的,社会的な諸事情をも考慮して自由にこれを決することができる広範な裁量を有していると解すべきことは 旨主張する。 しかしながら,法務大臣は,帰化を許可するか否かにつき,国際情勢,外交関係を含む政治的,社会的な諸事情をも考慮して自由にこれを決することができる広範な裁量を有していると解すべきことは上記判示のとおりであるから,仮に,法務大臣が,上記の事情を帰化の許否の判断において不利益に考慮したとしても,当不当の問題にとどまり,差別的取扱いとして許容されないとまではいえない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 また,原告らは,帰化が許可されない場合,将来,国外退去を強いられる状況が生じ得るので,家族の離別を余儀なくされることになり,かかる不利益は重大である旨主張する。 しかしながら,上記(2) アのとおり,原告らは,日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法3条所定の特別永住者であるところ,同法22条1項は,特別永住者については,同項各号所定の我が国の重大な利益を害する一定の犯罪行為をした場合に限って退去強制をすることができる旨規定しているから,原告らが退去強制を受ける現実的な可能性は必ずしも大きいものではなく,仮に,原告らが,将来,退去強制をされることがあるとすれば,それは上記の犯罪行為を犯したことに伴う不利益として当然に甘受すべきものというべきである。したがって,法務大臣が,帰化の許否の判断に際し,かかる不利益を重大な ものとして評価しなかったとしても不合理ではないというべきである。 エ原告らは,被告が本件訴訟において本件各不許可処分の理由を具体的に主張せず,原告らが主張する各事項についての認否を明らかにしないことにつき,弁論主義に基づき,各事項についての原告らの主張を前提に判断がされるべきであり,被告が認否を留保するだけで原告らの請求が退けられるのであれ が主張する各事項についての認否を明らかにしないことにつき,弁論主義に基づき,各事項についての原告らの主張を前提に判断がされるべきであり,被告が認否を留保するだけで原告らの請求が退けられるのであれば,原告らは当該処分を裁判で争う道を事実上閉ざされていることになる旨主張する。 しかしながら,帰化に関する処分については,行政手続法が適用されず,行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合であっても,申請者に対し,当該処分の理由を示す義務を負わないこととされている(同法3条1項10号,8条)。また,帰化に関する処分については,行政不服審査法に基づく不服申立てをすることができないこととされており(同法4条1項10号),国籍法上にも不服申立てに関する規定は置かれていない。そして,上記のとおり,法務大臣は,帰化を許可するか否かにつき,国際情勢,外交関係その他の政治的な事項をも考慮して自由にこれを決することができる広範な裁量を有していると解され,不許可の理由を具体的に提示することが相当ではない場合もあると考えられる。これらの点にかんがみると,帰化を不許可とする処分を争う訴訟において,被告がその理由を明らかにしなかったとしても,被告が「相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合」(民事訴訟法159条1項)に当たるとはいえないし,裁判所が,原告らの主張のみを前提として,帰化を不許可とする処分の適否を判断すべきであるともいえない。 また,このように解したとしても,原告らは,帰化を不許可とする処分を争う訴訟において,様々な事情を主張することができるのであり,裁判所は,当該具体的な事案につき,弁論に顕れた全ての事情を斟酌して,法務大臣の裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無を審理判断することができる のであるから,帰化 ることができるのであり,裁判所は,当該具体的な事案につき,弁論に顕れた全ての事情を斟酌して,法務大臣の裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無を審理判断することができる のであるから,帰化の不許可処分を裁判で争うことが事実上できないとの評価は当を得ない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (4) 小括以上によれば,本件各不許可処分は,いずれも適法であるというべきである。 2 争点2(本件各義務付けの訴えが適法か否か)について本件各義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号所定のいわゆる申請型の義務付けの訴えであり,当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在であるときに限り,提起することができるところ(同法37条の3第1項2号),上記1のとおり,本件各不許可処分はいずれも適法であり,取り消されるべきものには当たらないから,本件各義務付けの訴えは,いずれも同法37条の3第1項2号所定の要件を欠くものであり,不適法である。 3 結論よって,本件各義務付けの訴えは,いずれも不適法であるから却下し,その余の訴えに係る原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官横田典子 裁判官下和弘 (別紙)関係法令の定め国籍法 1 4条1項日本国民でない者(以下「外国人」という。)は,帰化によつて,日本の国籍を取得することができる。 (別紙)関係法令の定め国籍法 1 4条1項日本国民でない者(以下「外国人」という。)は,帰化によつて,日本の国籍を取得することができる。 2項帰化をするには,法務大臣の許可を得なければならない。 2 5条1項法務大臣は,次の条件を備える外国人でなければ,その帰化を許可することができない。 1号引き続き5年以上日本に住所を有すること。 2号 20歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。 3号素行が善良であること。 4号自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。 5号国籍を有せず,又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。 6号日本国憲法施行の日以後において,日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て,若しくは主張し,又はこれを企て,若しくは主張する政党その他の団体を結成し,若しくはこれに加入したことがないこと。 3 6条次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては,法務大臣は,その者が前条第1項第1号に掲げる条件を備えないときでも,帰化を許可することができる。 1号日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの 2号日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し,又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの3号引き続き10年以上日本に居所を有する者 4 7条日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し,かつ,現に日本に住所を有するものについては,法務大臣は,その者が第5条第1項第1号及び第2号の条件を備えないときでも,帰化を許 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し,かつ,現に日本に住所を有するものについては,法務大臣は,その者が第5条第1項第1号及び第2号の条件を備えないときでも,帰化を許可することができる。 日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し,かつ,引き続き1年以上日本に住所を有するものについても,同様とする。 5 8条次の各号の一に該当する外国人については,法務大臣は,その者が第5条第1項第1号,第2号及び第4号の条件を備えないときでも,帰化を許可することができる。 1号日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの(2号ないし4号省略)以上

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