昭和44(あ)1124 弁護士法違反

裁判年月日・裁判所
昭和46年7月14日 最高裁判所大法廷 判決 破棄差戻 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決および第一審判決を破棄する。      本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。          理    由  被告人本人の上告趣意のうち、違憲をいう点は、実質は単なる法令

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判決文本文2,619 文字)

主    文      原判決および第一審判決を破棄する。      本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。          理    由  被告人本人の上告趣意のうち、違憲をいう点は、実質は単なる法令違反の主張に 帰し、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、弁護人深井正男の上告 趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、いずれも適法な上 告理由にあたらない。  しかし、職権をもつて調査すると、第一審判決およびこれを支持する原判決は、 以下に述べるところにより、刑訴法四一一条一号により破棄を免れない。  第一審判決は、大要、被告人が、弁護士でなく、かつ、法定の除外事由がないの にかかわらず、(甲)報酬を得る目的で、四回にわたり、他人の法律事件に関して 法律事務を取り扱い、(乙)業として、五回にわたり、法律事務取扱いの周旋をし た事実を認定判示し、これにつき、(甲)の各所為はいずれも弁護士法七二条本文 前段、七七条に、(乙)の所為は包括して同法七二条本文後段、七七条に、それぞ れ該当するものとし、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上を刑法四五条前段の 併合罪として同法四七条、一〇条による加重をした刑期範囲内で被告人を懲役六月、 執行猶予一年の刑に処し、原判決はこれを是認したのである。そして、各判文によ れば、第一、二審裁判所はいずれも、弁護士法七二条本文は、弁護士でない者が、 「報酬を得る目的で、法律事件に関し、法律事務を取り扱うこと」および「これら の周旋をすることを業とすること」を、それぞれ禁止するもので、前者については 業とすることを要せず、後者については報酬を得る目的のあることを要しないと解 し、これに基づいて各判決をしたことが明らかである。  ところで、同条制定の趣旨について考えると、弁護士は、基本的人権の擁護と社 - 1 - 会正義の実現を いては報酬を得る目的のあることを要しないと解 し、これに基づいて各判決をしたことが明らかである。  ところで、同条制定の趣旨について考えると、弁護士は、基本的人権の擁護と社 - 1 - 会正義の実現を使命とし、ひろく法律事務を行なうことをその職務とするものであ つて、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実 適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど、諸般の措置が講ぜられ ているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんらの規律にも服しない 者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とする ような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益 をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害する ことになるので、同条は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられ るのである。しかし、右のような弊害の防止のためには、私利をはかつてみだりに 他人の法律事件に介入することを反復するような行為を取り締まれば足りるのであ つて、同条は、たまたま、縁故者が紛争解決に関与するとか、知人のため好意で弁 護士を紹介するとか、社会生活上当然の相互扶助的協力をもつて目すべき行為まで も取締りの対象とするものではない。  このような立法趣旨に徴すると、同条本文は、弁護士でない者が、報酬を得る目 的で、業として、同条本文所定の法律事務を取り扱いまたはこれらの周旋をするこ とを禁止する規定であると解するのが相当である。換言すれば、具体的行為が法律 事務の取扱いであるか、その周旋であるかにかかわりなく、弁護士でない者が、報 酬を得る目的でかかる行為を業とした場合に同条本文に違反することとなるのであ つて、同条本文を、「報酬を得る目的でなす法律事務取扱い」についての前段と、 「その周旋 にかかわりなく、弁護士でない者が、報 酬を得る目的でかかる行為を業とした場合に同条本文に違反することとなるのであ つて、同条本文を、「報酬を得る目的でなす法律事務取扱い」についての前段と、 「その周旋を業とすること」についての後段からなるものとし、前者については業 とすることを要せず、後者については報酬目的を要しないものと解すべきではない。 この見解に反する当裁判所従来の判例(昭和三七年(オ)第一四六〇号同三八年六 月一三日第一小法廷判決、民集一七巻五号七四四頁、同三七年(あ)第六七三号同 三九年二月二八日第二小法廷決定、刑集一八巻二号七三頁等)はこれを変更する。 - 2 -  そうすると、右見解にそわない解釈を前提とした本件第一審判決および原判決に は、法令の解釈適用を誤り、ひいて審理を尽くさなかつた違法があり、その違法は 判決に影響を及ぼし、破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。  よつて、刑訴法四一一条一号により原判決および第一審判決を破棄し、同法四一 三条本文により事件を第一審裁判所である名古屋地方裁判所に差し戻すこととし、 裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。  検察官横井大三 公判出席   昭和四六年七月一四日      最高裁判所大法廷          裁判長裁判官    石   田   和   外             裁判官    下   村   三   郎             裁判官    色   川   幸 太 郎             裁判官    大   隅   健 一 郎             裁判官    松   本   正   雄             裁判官    村   上   朝   一             裁判官    関   根   小   郷             裁判官    藤   林 本   正   雄             裁判官    村   上   朝   一             裁判官    関   根   小   郷             裁判官    藤   林   益   三             裁判官    岡   原   昌   男             裁判官    小   川   信   雄             裁判官    下   田   武   三 - 3 -

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