平成16(わ)764 廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年12月1日 札幌地方裁判所
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判決文本文3,623 文字)

主文 被告会社を罰金1000万円に,被告人を懲役2年及び罰金50万円に処する。 被告人がその罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。 被告人に対し,この裁判確定の日から5年間,その懲役刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告会社は,千葉市a区b丁目c番d号に本店を置き,港湾運送業等を営む株式会社であり,被告人は,同会社の代表取締役として,その業務全般を統括していたものであるが,被告人は,被告会社の業務に関し,第1 A,B,C及びDらと共謀の上,平成15年9月13日から同月15日までの間,北海道e郡f町字g番地の土地において,みだりに,廃棄物である廃酸及び廃油等の混合物が入ったドラム缶合計167本(ドラム缶を含む重量合計約5万2275キログラム)を埋め立てて捨てた。 第2 A,B,E及びFらと共謀の上,同月16日,北海道h郡i町字j番地ほか2筆の土地において,みだりに,廃棄物である廃酸及び廃油の混合物が入ったドラム缶合計194本(合計約35.502立方メートル)を放置して捨てた。 (証拠の標目・略)(事実認定の補足説明)被告人は,当公判廷において,本件廃棄物が不法投棄されるとは知らなかったし,Aらと不法投棄を共謀した事実はないと供述し,弁護人は,被告人の弁解を前提に,被告人には不法投棄の故意がなく,無罪であると主張する。 そこで検討するに,関係証拠によれば,以下の事実が認められる。すなわち,被告人は,平成14年5月か6月ころ,被告会社の親会社であるG株式会社の相談役であるHを通じて,I株式会社代表取締役会長のAから,J株式会社が保管しているドラム缶の詰め替え作業を依頼され,これを承諾した。同年7月ころ,被告人は,Kの報告等により,ドラム缶の中身が硫酸ピ 談役であるHを通じて,I株式会社代表取締役会長のAから,J株式会社が保管しているドラム缶の詰め替え作業を依頼され,これを承諾した。同年7月ころ,被告人は,Kの報告等により,ドラム缶の中身が硫酸ピッチであり,亜硫酸ガスを発生させる危険で有害な産業廃棄物であることを認識した。この詰め替え作業の話はいったん立ち消えになったが,被告人は,テレビの報道等を通じて,遅くとも平成15年1月ころには,硫酸ピッチの不法投棄が社会問題化していること,産業廃棄物の収集,運搬,処分には許可が必要であり,許可のない業者が産業廃棄物を処理場に持ち込んでも処理できないことなどを認識した。同年8月ころ,被告人は,AからJ株式会社が保管している硫酸ピッチ入りドラム缶(以下「本件廃棄物」という。)の処分を依頼されてこれを承諾した。被告人は,本件廃棄物の処分を請け負うに際し,Aとの間で本件廃棄物の処分をどの業者に依頼するか,どのような事故防止対策を講じるかなどについて一切話し合わなかった。被告人は,建築関係会社である株式会社LのM社長に本件廃棄物の処分を請け負わせたが,その際,Mに対し,ドラム缶の中身を「廃油」と伝え,硫酸ピッチであることを知らせなかった。なお,被告人は,その当時,I株式会社,被告会社及び株式会社Lがいずれも産業廃棄物処理等の許可を受けていないことを認識していた。その後,被告人は,Mから,本件廃棄物を北海道に運搬して北海道の業者に処理させることになったと聞かされ,本件廃棄物の運行計画書や処分先業者の許可証の写しを受け取った。その運行計画書には「㈱N御中 O社長様」及び「B」の名前が記載されていたが,被告人は,これらの者がどういう立場で本件廃棄物の処理に関与しているのかをMに確かめることもせず,これらの記載を削除した運行計画書の写しをAに渡した。 以上の事実 及び「B」の名前が記載されていたが,被告人は,これらの者がどういう立場で本件廃棄物の処理に関与しているのかをMに確かめることもせず,これらの記載を削除した運行計画書の写しをAに渡した。 以上の事実,とりわけ本件廃棄物が有害な産業廃棄物である硫酸ピッチであり,その収集,運搬,処分には許可が必要であることを被告人自身十分認識していながら,廃棄物処理等の許可を受けていない建築業者のMに処分を依頼し,依頼に際して,本件廃棄物が硫酸ピッチであるという重要な事実を告知していないこと,その後,Mから運行計画書の写しを受け取った際も,無許可業者である株式会社NとBの名前が記載されていたのであるから,無許可業者が本件廃棄物の処理に関与しているのではないかと疑いを持つのが当然であるのに,その点をMに問い質さなかったばかりか,Aに対し,これらの業者の名前を削除した運行計画書の写しを渡したことなどの事実を総合すれば,被告人は,本件犯行当時,本件廃棄物が適法に処理されることはなく,不法に投棄されることを認識していたと認められ,これに反する被告人の供述は到底信用できない。 (法令の適用・略)(量刑の理由)本件は,被告人が他の共犯者らと共謀の上,硫酸ピッチ等の廃酸及び廃油等が混入されたドラム缶167本を北海道e郡f町の牧場敷地内に埋設して投棄し(判示第1),さらに同様のドラム缶194本を北海道h郡i町の公有地に放置して投棄した(判示第2)事案である。 被告人らが投棄した硫酸ピッチは,軽油の密造過程で生じるものであるが,強酸性を帯び,腐食性があるので,ドラム缶に入れられていてもこれを腐食して漏出しやすい。そして,漏出した硫酸ピッチは,雨水に当たると亜硫酸ガスを発生させて大気を汚染し,土中に含有されている金属類を溶解した上で地下に浸透し,土壌汚染や水源汚染を引き起こす もこれを腐食して漏出しやすい。そして,漏出した硫酸ピッチは,雨水に当たると亜硫酸ガスを発生させて大気を汚染し,土中に含有されている金属類を溶解した上で地下に浸透し,土壌汚染や水源汚染を引き起こすほか,硫酸ピッチ入りのドラム缶には高濃度の亜硫酸ガスが溜まっていて,人がこれを吸入すると重い呼吸器障害を発生させるおそれがある。このように有害な硫酸ピッチを含むドラム缶を投棄した本件各犯行は,周辺環境や付近住民の健康に深刻な悪影響を及ぼすおそれのある危険な行為である。 また,本件各犯行は,排出元の企業から不法投棄の実行者に至るまでの間に暴力団員ら多数の仲介者が関与し,投棄場所の選定,搬出から投棄までの運搬計画,それぞれの役割分担や報酬割合などをあらかじめ取り決めた上で実行された組織的で計画的な犯行である。 判示第1の犯行では,土中に埋設されたドラム缶のうち5本は埋設時までに破損したため,現場の土壌は漏出した硫酸ピッチによって汚染され,現実に環境破壊が生じたのであって,結果も軽視できない。 被告人は,Aから本件廃棄物の処分を依頼されるや,それが危険で有害な硫酸ピッチであることを十分認識していながら,報酬目当てにこれを請け負い,共犯者の中で最も多額の4300万円余りもの利得を得ている。加えて,被告人は,捜査公判を通じて一貫して不法投棄の故意を否認し,不合理な弁解に終始しているのであって,反省の態度は認められない。 以上によれば,被告人及び被告会社の刑事責任はいずれも重い。 しかしながら,他方,幸いいずれの犯行も早期に発覚したため,周辺環境に重大な悪影響を及ぼさずに済んだこと,被告人はAから本件廃棄物の処理を請け負い,さらにその処理をMに請け負わせたもので,仲介業者の一つに過ぎず,不法投棄に積極的な役割を果たしたとはいえないこと,被告人には犯罪歴がないこ ずに済んだこと,被告人はAから本件廃棄物の処理を請け負い,さらにその処理をMに請け負わせたもので,仲介業者の一つに過ぎず,不法投棄に積極的な役割を果たしたとはいえないこと,被告人には犯罪歴がないことなど酌むべき事情も認められるので,被告人に対しては,主文の刑に処した上,その懲役刑の執行を猶予することとした。次に被告会社に対する量刑について検討するに,不法投棄が横行している背景には,罰金額に比べて不法投棄に伴う不当利得が大きく,罰金刑の抑止効果が十分でないためであるとの指摘を受けて罰金額が引き上げられ,法人については最高1億円の罰金刑が定められるに至った廃棄物処理法改正の経緯,本件でも廃棄物の不法投棄に伴う不当利得を目的として被告人や暴力団員など多数の者が関与していること,被告会社の利得が前記のとおり多額に上っていることなどに照らすと,被告会社に対しては,その利得額も考慮して相応の罰金刑を科するのが相当であると判断し,主文のとおりの刑に処することとした。 (求刑・被告会社に対し罰金600万円,被告人に対し懲役3年及び罰金50万円)平成16年12月1日札幌地方裁判所刑事第1部2係裁判官中桐圭一

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