平成13(わ)1225 覚せい剤取締法違反

裁判年月日・裁判所
平成14年7月26日 神戸地方裁判所
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判決文本文9,160 文字)

判決平成14年7月26日神戸地方裁判所平成13年(わ)第1225号覚せい剤取締法違反被告事件 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中140日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,Aと共謀の上,法定の除外事由がないのに,平成13年10月12日午後9時30分ころ,兵庫県三木市a町bc丁目d番地のeB株式会社月極駐車場において,被告人が,フエニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤結晶粉末の水溶液を,同所に駐車中の自動車内にいる前記Aの身体に注射し,もって,覚せい剤を使用したものである。 (証拠の標目(省略)(補足説明) 1 被告人が,本件日時場所において,Aと一緒にいたこと及びAがその際注射の方法により覚せい剤をその体内に摂取して使用したことについては,被告人も争っていないし,前掲各証拠によっても間違いがないと認められるところ,弁護人は,証人Aの当公判廷における供述(以下「A証言」という。)が被告人から注射してもらって本件覚せい剤使用をした旨いうところは信用できず,被告人の当公判廷における供述等(以下「被告人の公判供述等」という。)がAは自ら注射して本件覚せい剤使用をした旨いうところの方が信用性が高いと主張するので,当裁判所が前示のとおり認定した理由について,以下補足して説明をする。 2 前掲各証拠によれば,以下の事実,すなわち,① 被告人とAは,本件当時,いずれも兵庫県三木市内に居住し,Aの父親Cが同市内で経営するDにおいて,ともに型枠大工として働いていたこと② 被告人とAは,本件当日,仕事が終わってから,Aの運転する自動車(E)で一緒に神戸市内に行くことになっ 内に居住し,Aの父親Cが同市内で経営するDにおいて,ともに型枠大工として働いていたこと② 被告人とAは,本件当日,仕事が終わってから,Aの運転する自動車(E)で一緒に神戸市内に行くことになったこと③ 被告人は,三木市内を出発後,車内から携帯電話で覚せい剤の密売人であるFと連絡を取り,神戸市内のGH駅近くにあるパチンコ店で待ち合わせをし,Hに到着後,また携帯電話で連絡をして同店に赴き,Fと会ったこと④ Fは,覚せい剤事犯で服役し仮出獄した後,C方に一時居住していたことから,Aもよく知っているものであって,Aは,Fが,本件当時,GI駅近くにある「ホテルJ」に住んでいると聞いていたこと⑤ 被告人とAは,被告人が覚せい剤を入手後,神戸市内において,ともに覚せい剤を注射使用してから,前記自動車で三木市内に戻り,Dの自動車であるKを取りに行って,被告人が同車を運転し,Aが前記自動車(E)を運転して,本件犯行現場である月極駐車場に行き,そこでもまたともに覚せい剤を注射使用したことが間違いのない事実として認められる。 3 A証言は,概略,「本件当日神戸市内に行ったのは食事をするためであったが,被告人の雰囲気から覚せい剤を買いにパチンコ店「L」に入ったと思い,被告人が戻ってから聞くとそうだったので,自分も使用してみたいと頼んだところ,被告人ははじめ嫌がっていたが,しつこく頼んで承諾してもらった。そこで,ふたりして同店の2階の男子トイレに行き,大便用の個室内で,被告人から覚せい剤を左腕の肘関節の内側に注射してもらったが,あまり効き目がないようであったので,被告人にそう言うと,被告人から「もう一度やってみるか。」と言われ,再度ふたりしてパチンコ店「L」の2階の男子トイレに行き,大便用の個室内で,被告人から覚せい剤を右腕に同様に注射し うであったので,被告人にそう言うと,被告人から「もう一度やってみるか。」と言われ,再度ふたりしてパチンコ店「L」の2階の男子トイレに行き,大便用の個室内で,被告人から覚せい剤を右腕に同様に注射してもらったところ,今度は効き目があり,髪の毛が逆立ち,体が軽くなったように感じた。食欲が全くなかったため,食事をしないまま三木市内に帰ることにしたが,その途中,少し気分が悪くなったので,もう一度先ほどと同じような気分を味わいたいと思い,被告人に注射をしてくれるように頼んだところ,被告人は「やってみるか。」と言ってくれた。本件犯行現場である月極駐車場では,自分がEの運転席に座っていると,被告人がKから降りて近づいてきたので,運転席側のドアを開け外側に体を向けて左腕を出し,被告人から注射してもらったところ,頭がジンジンするような効き目があった。覚せい剤を使用したのは本件当日が初めてである。」旨いうのである。 これに対し,被告人の公判供述等は,概略,「本件当日の朝ラジオで競馬の元騎手が覚せい剤事犯で捕まった話をしていたのを聞いて,覚せい剤が話題になり,AとふたりでHに覚せい剤を買いに行く話しになった。覚せい剤の密売人であるFと携帯電話で連絡を取り,GH駅近くのパチンコ店でFと会い,「ホテルJ」の何号室かに行けと言われて行き,そこでFから連絡を受けていた別の人物から覚せい剤を買った。覚せい剤を持って自動車に戻り,Aに発進するように言い,M交差点近くの人通りの多い道路に停車させて,その自動車の中でそれぞれ覚せい剤を注射して使用し,その後ふたりして三木市内に戻った。本件犯行現場である月極駐車場では,自分がKから降りて,Aの乗っているEの助手席に乗り込み,Aが運転席,自分が助手席で覚せい剤水溶液を作り,それぞれ自分で注射して使用した。残った覚せい剤の 戻った。本件犯行現場である月極駐車場では,自分がKから降りて,Aの乗っているEの助手席に乗り込み,Aが運転席,自分が助手席で覚せい剤水溶液を作り,それぞれ自分で注射して使用した。残った覚せい剤の半分をAに分けてやってから帰った。Aは,本件の1年くらい前から自分とともに30回くらい覚せい剤を買いに行って一緒に使用しており,本件当日が初めてなどということはない。」旨いうのである。 (なお,前記2で認定した事実とこの被告人の公判供述等によれば,被告人にはAの本件覚せい剤使用についての共謀共同正犯ないしは幇助犯が成立するとも考えられるが,本件公訴事実は,被告人がAに本件覚せい剤を注射して使用したとの実行共同正犯についてのものであるから,その成否について,以下検討することとする。) 4 そこで,A証言と被告人の公判供述等の相違点について,そのいずれが信用できるかを次に検討する。 (1) まず,被告人とAが本件当日神戸市内に行った理由について,両者のいうところを比較してみれば,A証言のいうところよりも被告人の公判供述等のいうところの方が具体的かつ合理的で客観的な証拠とも符合していることが明らかである。 また,A証言では,Hに食事に来たというのに,被告人が覚せい剤を買いに行ったとどうして思ったのか,納得できるような説明がなされていない。被告人が車内からFに何度か電話をかけ,Fのいるパチンコ店まで行っていることは明らかであり,そのことがAに被告人が覚せい剤を買いに行ったと思わせる理由となっていてもよさそうであるが,A証言では,特に誘導もなくパチンコ店の前まで行き,被告人がいきなり自動車を停めるように言ったと思うというのであり,その間,被告人が携帯電話をかけていたかどうかも覚えていないというのである。A証言には,覚せい剤の入手先がFないしはその 前まで行き,被告人がいきなり自動車を停めるように言ったと思うというのであり,その間,被告人が携帯電話をかけていたかどうかも覚えていないというのである。A証言には,覚せい剤の入手先がFないしはその関係者であることが明らかにならないよう,それに関する部分を曖昧にしたり隠したりしているのではないかとの疑いを容れる余地がある。そうだとすると,この点については,被告人の公判供述等のいうところの方がA証言のいうところよりも信用できるとみるべきである。 次に,被告人が覚せい剤を入手した場所及び被告人とAがそれを神戸市内で使用した場所についてみてみるに,A証言のいうように,パチンコ店で覚せい剤を入手し,そこのトイレで使用することは,覚せい剤事犯においてはよくあることであるから,その意味では,A証言のいうところは自然かつ合理的であるといい得よう。しかし,A証言がパチンコ店「L」の2階の男子トイレのドアの開き方や便器の数についていうところは,実際のそれとは異なっている。もちろん,パチンコ店のトイレのドアの開き方や便器の数は意識して記憶するような事柄ではないから,その点についての証言が実際と異なっているからといって,A証言がパチンコ店「L」の2階の男子トイレの大便用の個室で覚せい剤を使用した旨いうところの信用性をすぐに疑うには至らない。しかし,客観的な事実に符合することによって,A証言の信用性が高められているわけではないことも明らかである。そして,先にみたように,A証言には,覚せい剤の入手先がFないしはその関係者であることが明らかにならないよう,それに関する部分を曖昧にしたり隠したりしているのではないかとの疑いがあることからすると,覚せい剤の入手場所がFの関係する「ホテルJ」であることを隠すために,パチンコ店「L」を覚せい剤の入手・使用場所とし する部分を曖昧にしたり隠したりしているのではないかとの疑いがあることからすると,覚せい剤の入手場所がFの関係する「ホテルJ」であることを隠すために,パチンコ店「L」を覚せい剤の入手・使用場所としているとの疑いも否定はできない。もっとも,被告人の公判供述等のいうところにもそのままには信用できないところがある。「ホテルJ」で覚せい剤を買ったというのであれば,なぜわざわざFのいるパチンコ店にいったん行く必要があったのかよく理解ができない。被告人はいつもFから覚せい剤を買っていたわけであるから,携帯電話での連絡の際に,Fから被告人に,「ホテルJ」の何号室かに直接行くように話があってもよさそうに思われる。また,M交差点近くの人通りの多い道路に停車させた自動車の中で覚せい剤を注射使用したというのも,人目を避けるべき行為の性質からして,すぐには納得することができない。そうだとすると,この点については,A証言と被告人の公判供述等のいずれが信用性が高いかは決し難く,A証言のいうところをそのまま採用するわけにはいかないというべきである。 (2) そこで,Aの覚せい剤使用歴が本件当日までにどの程度あったのか及びAに覚せい剤を注射したのが被告人かA自身かについて,次にみてみることにする。 Aの父親であるCは14,5年前まで覚せい剤を使用していたものであり,また覚せい剤事犯で服役し仮出獄中のFがC方に一時居住していたのに加え,Dには覚せい剤の常用者である被告人が本件の1年8か月くらい前から稼働していたのであって,先にみたように,Aは,本件当日,被告人と一緒に神戸市内に覚せい剤を買いに行ったとみられるのであるから,これらのことからすると,被告人の公判供述等がいうように,Aが本件の1年くらい前から覚せい剤使用を繰り返していたとしても,決しておかしくはな 神戸市内に覚せい剤を買いに行ったとみられるのであるから,これらのことからすると,被告人の公判供述等がいうように,Aが本件の1年くらい前から覚せい剤使用を繰り返していたとしても,決しておかしくはないと思われる。しかし,A証言は,覚せい剤を使用したのは本件当日が初めてである旨いい,また証人Cの当公判廷における供述(以下「C証言」という。)は,Aが覚せい剤を使用しているのではないかと思うような状態になったことは本件までなかった旨明言しているところ,被告人の公判供述等のいうように,Aが1年くらいの間に30回くらい覚せい剤を買いに行っていたというのであれば,その使用回数はそれよりもずっと多くなると考えられるのであるから,Aと同じ家に住み,仕事も一緒で,覚せい剤使用経験のあるCがそれに気付かないはずはないと思われる。被告人の公判供述等は,CはAが覚せい剤を使用していることに薄々気付いていたが,Aはシンナーをしているとごまかしていたなどというのであるが,覚せい剤かシンナーかは顔つきや様子,注射痕や臭いなどから容易に区別がつくと考えられるのであり,そのようなごまかしがCに通用するとは思われない。そして,CがAの本件覚せい剤使用を知ったときの非常な怒り方からすれば,CがAの覚せい剤使用に気付いておりながら,それを放置していたとは考え難い。被告人の公判供述等は,CがFから覚せい剤を買ってやるように言われたし,Cから頼まれてFから覚せい剤を買ってきてやったことがあるなどともいうのであるが,CがAの本件覚せい剤使用を知ったときの被告人に対する激しい怒り方をみると,被告人の公判供述等のいうところは到底信じられないところであって,C証言がいうように,Cは14,5年前に覚せい剤を止めていたとみる方が自然かつ合理的である。しかも,被告人の公判供述等のいうように,A 被告人の公判供述等のいうところは到底信じられないところであって,C証言がいうように,Cは14,5年前に覚せい剤を止めていたとみる方が自然かつ合理的である。しかも,被告人の公判供述等のいうように,Aが本件の1年くらい前から覚せい剤の注射使用を繰り返していたというのであれば,個人差はあるにせよ,その両腕の肘関節の内側辺りに多数回の使用を窺わせるような注射痕があってもおかしくはないと考えられるが,Aの両腕の肘関節の内側辺りには,本件当日の注射使用によるものと思われる注射痕以外の注射痕の存在は認め難いのである。もっとも,Aには本件の翌日に覚せい剤使用の影響によると思われる幻聴・幻覚が生じているところ,弁護人は,一般に幻聴・幻覚は覚せい剤の慢性中毒者に現れる精神症状であるから,そのことがAが覚せい剤の常用者であることを裏付けているというのである。しかし,覚せい剤によっていつどのような精神症状が生じるかは,非常に個体差の大きいものであって,Aが,本件当日,そのいうところによれば3回,被告人のいうところによっても2回,短時間のうちに覚せい剤使用をしていることからすれば,Aに前記のような幻聴・幻覚が生じたことをもって,Aが覚せい剤の常用者であることが裏付けられているとまでいうわけにはいかない。そうだとすると,Aの覚せい剤使用歴が本件当日までにどの程度あったのかについては,A証言のいうところの方が被告人の公判供述等よりも信用性が高いとみるべきであって,Aが覚せい剤を使用したのは本件当日が初めてであると認めるのが相当である。 そして,A証言が,被告人から注射してもらって本件覚せい剤使用をした旨いうところは,覚せい剤を使用したのは本件当日が初めてである旨いうところと密接に結びついており,また被告人の公判供述等が,Aは自ら注射して本件覚せい剤使用 ら注射してもらって本件覚せい剤使用をした旨いうところは,覚せい剤を使用したのは本件当日が初めてである旨いうところと密接に結びついており,また被告人の公判供述等が,Aは自ら注射して本件覚せい剤使用をした旨いうところは,Aが本件の1年くらい前から覚せい剤使用を繰り返していた旨いうところと密接に結びついているだけでなく,Aが覚せい剤を使用したのは本件当日が初めてであるとすれば,自ら注射することが容易であったとは考え難いのであるから,本件覚せい剤使用は被告人から注射してもらってしたものとみるのが自然かつ合理的である。しかも,A証言及びC証言によれば,Aは,Cから本件覚せい剤使用について問い詰められた際,最初は自分で注射したと答え,Cから注射の仕方を実演させられて,注射器の針が下(手)の方を向くようにしたことから,Cからそのような格好で注射できるわけがないと更に問い詰められ,Nの覚せい剤の密売人から注射してもらったとか,運転免許合宿で知り合った友達に注射してもらったとか答えていたこと,Cは,それを信用せず,本件当日にAが被告人からの電話を受けて出ていき,翌日にはふたりとも仕事を休んでいたことから,被告人がAに覚せい剤を注射したに違いないと考え,Aに被告人ではないかと問い質したものの,Aがそれを否定して,なかなからちがあかなかったこと,そこで,Cは,被告人方に行って,被告人にAに覚せい剤を注射したのではないかと問い質したところ,被告人がそれを認めたことから,腹が立って被告人を殴りつけたこと,Cは,Aのところに戻り,被告人がAに覚せい剤を注射したことを白状したと言ったところ,Aも,被告人が認めたのであれば隠す必要はないと言って,被告人から覚せい剤を注射してもらったと言ったことが認められるのであるから,Aはできる限り被告人をかばおうとしていたものと したと言ったところ,Aも,被告人が認めたのであれば隠す必要はないと言って,被告人から覚せい剤を注射してもらったと言ったことが認められるのであるから,Aはできる限り被告人をかばおうとしていたものというべきであるし,前記のように,A証言は,被告人が嫌がっていたにもかかわらず,自分のほうから覚せい剤使用をしつこく頼んだ旨述べていることをも併せ考えると,Aが自己の責任を軽減するために被告人に責任を転嫁しているとみるべき余地は存しない。弁護人は,AがCの怒りを被告人に向けさせるために被告人から注射してもらったと虚偽の供述をしているというのであるが,上記のようなAの供述の経緯や内容からすれば,そのようにみることは困難である。もちろん,Aにはことさら虚偽の供述までして被告人を陥れるべき理由も見当たらない。むしろ,被告人は,捜査段階の当初において,本件当日Aと行動をともにしていたこと自体を否認してアリバイの主張をしていたところ,被告人のアリバイ主張に同調してくれると期待していた知人がそれに同調してくれなかったことから,アリバイ主張を撤回して,本件当日Aと行動をともにしていたことは認めたものの,本件覚せい剤使用については,Aが自ら注射したものと供述を替えたものであることが認められるのであるから,被告人には虚偽の供述により自己の罪責を免れようとする傾向のあることを否定できない。そうだとすると,Aに覚せい剤を注射したのが被告人かA自身かについては,A証言のいうところの方が被告人の公判供述等よりも信用性が高いとみるべきであって,Aは被告人から注射してもらって本件覚せい剤使用をしたと認めるのが相当である。 なお,弁護人は,A証言は,主尋問と反対尋問との間で理由なく供述が変遷あるいは矛盾し,供述自体にも不自然かつ不合理な点が散在するとして,その信用性 せい剤使用をしたと認めるのが相当である。 なお,弁護人は,A証言は,主尋問と反対尋問との間で理由なく供述が変遷あるいは矛盾し,供述自体にも不自然かつ不合理な点が散在するとして,その信用性を争うのであるが,弁護人の指摘する点をみても,A証言には,供述が実質的に変遷あるいは矛盾している点があるとはいい難いし,当裁判所が先に指摘した点を除けば,供述自体にも不自然かつ不合理な点が散在するとも認め難い。なるほど,A証言によれば,被告人が本件覚せい剤使用に当たり,いつどこで覚せい剤水溶液を用意したのか,水はどこにあったものを用いたのかなど,十分説明のなされていない点があることは否めない。しかし,被告人は,本件当日,覚せい剤を買って使用するつもりで神戸市内に行き,同市内でも覚せい剤を注射していたものであって,本件覚せい剤使用の際には,Aが三木市内に帰る途中で買ったというお茶以外にも覚せい剤使用に用いるための水があったと考えられるのであるから,Aの乗っていた自動車内以外には覚せい剤を溶かす水はなかったと即断するわけにはいかないし,Aが本件当日に覚せい剤を初めて使用したものであることを考えれば,Aに前記のようなことまで冷静に観察して記憶するような余裕がなかったとしても無理からぬところであるから,A証言は被告人のその際の行動をつぶさに述べるものとはいえないけれども,そのことからA証言が被告人から本件覚せい剤を注射してもらった旨いう部分の信用性を疑うには至らない。 5 以上のとおりであるから,被告人がAに本件覚せい剤を注射してその使用に及んだことは間違いがないと認めることができる。 (法令の適用)罰条刑法60条,覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条宣告刑懲役1年6月未決勾留日数の算入刑法21条(140日)訴 ないと認めることができる。 (法令の適用)罰条刑法60条,覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条宣告刑懲役1年6月未決勾留日数の算入刑法21条(140日)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が覚せい剤を共犯者に注射して使用したという事案であるが,被告人は,平成8年ころから覚せい剤の自己使用を繰り返しただけでなく,今回は共犯者に覚せい剤を注射してやって使用に及んだものであって,被告人の覚せい剤に対する親和性・依存性の程度には強いものがあるだけでなく,それを未成年者の共犯者にまで用いているのであるから,覚せい剤の社会に及ぼす害悪の大きさを考え併せると,犯情はよくなく,被告人の刑事責任は軽くないといわざるを得ない。 また,被告人は,平成12年2月に窃盗未遂,窃盗罪により懲役1年3月,3年間刑執行猶予の判決を受けていて,本件は,その執行猶予期間中の犯行であることや,被告人は,捜査段階の当初はアリバイ主張をし,それが虚偽であることが発覚するや,共犯者に注射してやったことを否認するなど,供述を変遷させながら,自己の罪責を免れようとしていることも,量刑上看過できないところである。 してみると,被告人には覚せい剤事犯による前科がないこと,被告人が本件で約9か月間身柄拘束を受けていることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役2年)よって,主文のとおり判決する。 平成14年7月26日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣 判所第12刑事係 甲裁判官 森岡安廣

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