令和5(あ)292 窃盗、道路交通法違反、殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月27日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 仙台高等裁判所 令和3(う)97
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判決文本文1,561 文字)

- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 理由 検察官の上告趣意は、判例違反をいう点を含め、実質は量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。 所論に鑑み、記録を調査しても、刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。 付言するに、本件は、服役を終えたばかりの被告人が、新しい人間関係、なじみのない土地及び未経験の仕事等への不安から、罪を犯して刑務所に戻りたいと考えるうちに、長く刑務所にいるためにトラックを2名くらいに衝突させて逃げようと考えるに至り、準中型貨物自動車を窃取してこれを無免許運転し、その際、殺意をもって、対向歩行中の被害者A及びBに同車を衝突させ、Aをはね飛ばし、Bを転倒させ轢過して、両名を殺害した上、負傷者の救護も警察官に対する事故の報告もしなかった、という事案である。 罪を犯して刑務所に戻りたいなどという動機は極めて身勝手かつ自己中心的であり、また、その手段として他人の生命を侵害する犯罪を選んだのは、生命軽視の度合いが大きく、厳しい非難が向けられるべきである。犯行態様は、通り合わせたにすぎない無防備な歩行者にトラックを加速させつつ衝突させるという生命侵害の危険性の高いものであり、殺意は明白である。被告人とは無関係であり何ら落ち度のない被害者2名の生命を理不尽に奪ったという結果は重大であって、遺族らの処罰感情が非常に厳しいのも当然であり、社会に相当の不安感を与えたことも否定できない。被告人の刑事責任は誠に重いというほかなく、本件は死刑を選択することの当否を検討すべき事案である。 令和5年(あ)第292号窃盗、道路交通法違反、殺人被告事件令和6年5月27日第一小法廷決定- 2 -しか 重いというほかなく、本件は死刑を選択することの当否を検討すべき事案である。 令和5年(あ)第292号窃盗、道路交通法違反、殺人被告事件令和6年5月27日第一小法廷決定- 2 -しかし、死刑は究極の刑罰であり、その適用は慎重に行わなければならないという観点及び公平性の確保の観点を踏まえる必要がある。このような観点から検討すると、被告人は、長い期間刑務所に入ろうと考えて、トラックを盗み出し2名くらいの歩行者に衝突させて逃げようとの漠然とした計画は立てていたものの、それ以上に確実な殺害を企図して具体的な犯行を想定し準備をしていたとは認められず、また、実際の犯行も、トラックを運転し、対向して歩いてきた被害者らを一度にはねた後、そのまま走り去るというものであった。そうすると、本件は、被告人が、被害者らの殺害それ自体を目的としてこれを意欲し、人の生命を奪うための綿密な計画や周到な準備に基づき、殺害を確実に遂げるべく実行した犯行とはいえず、被告人の生命軽視の度合いが甚だしく顕著であったとまではいうことができない。 以上によれば、本件は被害者2名に対する殺人を含む事件であり、その動機は身勝手かつ自己中心的であるというほかなく、被告人の刑事責任は誠に重いものの、前記の観点を踏まえ、犯情を総合的に評価すると、死刑を選択することが真にやむを得ないとまではいい難い。したがって、第1審の死刑判決を破棄し、被告人を無期懲役に処した原判決が、刑の量定において甚だしく不当であってこれを破棄しなければ著しく正義に反するものということはできない。 よって、刑訴法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官堺徹裁判官深山卓也裁判官安浪亮介裁判官岡正晶裁判官宮川美津子) 訴法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官堺徹裁判官深山卓也裁判官安浪亮介裁判官岡正晶裁判官宮川美津子)

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