- 1 -平成28年7月28日判決言渡名古屋高等裁判所平成26年(ネ)第329号損害賠償請求控訴事件(原審・津地方裁判所平成21年(ワ)第712号)主文 原判決を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨主文同旨 控訴の趣旨に対する答弁(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人の負担とする。 第2事案の概要本件は,訴外Aが所有する原判決別紙物件目録記載1及び2の土地(以下,それぞれ「A土地1」及び「A土地2」といい,併せて「A土地」という)。 の地面が陥没する事故(以下「本件土地陥没事故」という)が発生し,Aが。 A土地上に所有する建物(以下「本件建物」という)に居住できなくなった。 ところ,被控訴人が,本件土地陥没事故は,A土地を含む区域の開発許可に係(,る控訴人の過失又は本件土地陥没事故を誘引した付近の道路の陥没事故以下当該陥没事故の現場である道路を「本件道路」といい,当該陥没事故を「本件道路陥没事故」という。また,本件土地陥没事故と本件道路陥没事故を併せて「本件各陥没事故」という)に関する道路の設置又は管理の瑕疵によるもの。 であるから,Aは控訴人に対して国家賠償法1条1項又は同法2条1項に基づく損害賠償請求権を有するとして,Aから譲り受けた同請求権を行使し,控訴- 2 -人に対し,本件建物の建築請負代金等相当額及びこれに対する損害発生日より後の日である平成21年6月19日(債権譲渡の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,津市長等は,A土地を含む区域の開発に関する開発業者との事前協議,開発許可及び工事完了検査の 渡の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,津市長等は,A土地を含む区域の開発に関する開発業者との事前協議,開発許可及び工事完了検査の際,A土地において廃坑を原因とする陥没事故が起きる可能性を予見することができたのに,同区域の開発許可をするに当たり,都市計画法33条1項7号所定の「安全上必要な措置」が講ぜられるように設計されているか否かを審査すべき職務上の注意義務に反し,実質的な審査を行うことなく漫然と開発許可を行い,同法36条に基づく工事完了検査の際にも,上記措置が講ぜられたものであることを確認すべき義務を怠って漫然と検査済証を交付した結果,同法が要請する宅地の安全性の水準に達しない開発行為が行われ,本件各陥没事故の発生を招いたというべきである旨判示するとともに,被控訴人の権利濫用又は過失相殺の抗弁を排斥して,国家賠償法1条1項に基づき,控訴人に対し,本件建物の建築請負代金等相当額である3127万7892円及びこれに対する損害発生日より後の日である平成21年6月19日(債権譲渡の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じたため,控訴人が控訴した。 以下,略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。 (,。 都市計画法ただし平成18年4月1日法律第30号による改正前のもの以下同じ)の定め。 原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の1に記載のとおり(ただし,原判決4頁5行目の「本文」を「柱書き」に改める)であるから,これ。 を引用する。 前提事実原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 - 3 - 争点 原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の3に記載のとおりであるから, 提事実原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 - 3 - 争点 原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の3に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3当事者の主張 次の2のとおり当審における当事者の主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の4に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における当事者の主張(以下において「A土地の亀裂・沈下「A土,」,地が西側に移動・沈下」とあるのは,いずれも「本件土地陥没事故」と同義である。また,B開発区域に関する32条協議及びこれと同時並行的に進められた行政指導,本件開発許可並びに工事完了検査を併せて「本件開発許可等」という)。 (控訴人の主張)(1)本件開発許可等の津市長等の行為(不作為)とA土地の亀裂・沈下との間に事実的因果関係を認めることはできないことA土地の亀裂・沈下の原因が判然としないことは後記のとおりであるが,C作成の意見書(甲41の1。以下「C意見書」という)に依拠する被控。 訴人の主張を踏まえれば,A土地の亀裂・沈下は,平成15年頃に(株)Dによって行われた盛土(以下「D盛土」という。なお,D盛土は,B開発区域。),()及びその西側区域外にも及んでいる部分でB開発区域の西側区域外に位置する土地の地下の磨き砂の廃坑(空洞)が放置され,時間の経過によって,B開発区域の宅地造成工事(以下「本件開発行為」という)と無関。 係に引き起こされた「未知の陥没(以下「D盛土未知の陥没」という)」。 が原因であると認められる。 そうすると,津市長等が,自ら又は(株)Bをして,B開発区域内の土地についていかに調査及び安全対策の措置を執ったとしても,B開発区域外のD- 4 陥没」という)」。 が原因であると認められる。 そうすると,津市長等が,自ら又は(株)Bをして,B開発区域内の土地についていかに調査及び安全対策の措置を執ったとしても,B開発区域外のD- 4 -盛土未知の陥没の発生を防ぐことはできなったといわざるを得ないから,津市長等の職務上の注意義務違反の有無にかかわらず,本件開発許可等の手続に関する津市長等の行為とD盛土未知の陥没の間に事実的因果関係を認めることはできない。 したがって,本件開発許可等の手続に関する津市長等の行為に何らかの法的責任を認めることはできない。 なお,被控訴人は,(株)Dによる開発行為と(株)Bによる開発行為の一体性を主張して,(株)Dが提出した開発行為届出書(甲26の2)に記載された盛土を指摘するが,同届出は,津市開発指導要綱に基づき届け出た「山林整形(山地を削った土で谷地に盛土したものにすぎない)を目的とする」。 開発行為に関するものであって,都市計画法29条の対象となる開発行為ではなく,津市長による工事完了検査の対象でもない。 (2)都市計画法29条(開発許可)は,開発区域内の特定の土地の「隠れたる瑕疵」による損害の防止を直接の目的としておらず,本件開発許可等の津市長等の行為とA土地の亀裂・沈下との間に何らかの事実的因果関係が認められるとしても,国家賠償法1条1項の責任は生じないことア都市計画法29条の開発許可制度による規制は,良好な都市環境の維持を目的とし,同法32条(事前協議)が,良好な都市環境を形成する不可欠の要素である道路等の公共施設の管理の適正を期すること,同法33条1項7号の開発許可基準が,良好な都市環境を損なうような公共の危険である大規模災害防止の見地から開発行為に規制を加えるものであることは明らかであり,都市計画法は,開発区域内の特定の土 と,同法33条1項7号の開発許可基準が,良好な都市環境を損なうような公共の危険である大規模災害防止の見地から開発行為に規制を加えるものであることは明らかであり,都市計画法は,開発区域内の特定の土地の地盤に「隠れたる瑕疵」がないようにすることを一般的に保証し,ひいては当該開発業者の不適切な開発行為により個々の取引関係者が被る具体的な損害の防止,,,救済を制度の直接的な目的とするものとは解し難くかかる損害の救済は実質加害者(開発業者,造成工事業者)との間の一般の不法行為規範や契- 5 -約規範等に委ねられているというべきである。 そして,開発許可による規制が良好な都市環境の維持を目的とするものである以上,同法36条の完了検査も,開発行為の結果として良好な都市環境が実現されているかどうかの観点から行われるもので,特定の土地の地中の「空洞」のような「隠れたる瑕疵」があるかどうかを確認するものではない。 イしたがって,仮に,原判決が説示するように,津市長等が「都市計画法33条1項7号に定める『安全上必要な措置』が講ぜられるように設計が定められているか否かを審査すべき職務上の注意義務」と「実際に実施された空洞調査及び安全対策が十分なものであることを確認すべき職務上の注意義務」を怠ったものといい得るとしても,そのことは,Aに対する関,「」。 係において直ちに国家賠償法1条1項の違法な行為には当たらない(3)津市長等による規制権限の不行使が著しく不合理ではなかったこと仮に,原判決が指摘する上記職務上の注意義務の懈怠により,津市長等が開発許可権者としての規制権限を行使しなかったことが「著しく不合理」であり,そうであれば,Aとの関係でも国家賠償法上「違法」となる余地があると解されるとしても,本件では,津市長等に開発行為に対する規 開発許可権者としての規制権限を行使しなかったことが「著しく不合理」であり,そうであれば,Aとの関係でも国家賠償法上「違法」となる余地があると解されるとしても,本件では,津市長等に開発行為に対する規制権限が付与された趣旨・目的に照らせば,Aとの関係において,その規制権限の不行使が著しく不合理であったとは認められない。 アAがA土地を取得した経緯Aは,本件開発許可の申請地(津市大字a字bc番d)の西隣に位置する山林(同所c番e)を所有していたところ,平成17年8月23日,同土地をc番e,同番f及び同番gの各土地に分筆し,分筆後の同番e及び同番fの各土地とA土地1を交換し,同番gの土地はA土地2として所有を続けた。したがって,Aは,本件開発行為の前後を問わず,地下に空洞が存在するかもしれないという危険を負担する土地所有者としての利益状- 6 -況は変わらなかったのである。 イ本件土地陥没事故の原因が地下の「空洞」であるかどうかは不明であること(ア)原判決は,本件委員会報告書(乙4の2)に依拠して「本件土地,陥没事故は,A土地又はその周辺の土地の地下に磨き砂層の坑道跡である空洞が存在することにより,空洞付近における地盤の沈下が地表部の陥没をもたらすことによって引き起こされたものであると認めるのが相当である」と判示するが,本件委員会報告書は,本件土地陥没事故が。 どのような機序で発生したのか,本件道路陥没事故と同じ発生機序であるのかどうかについて何ら言及していないし,何らの考察もしていない,。 から本件土地陥没事故の原因は依然として不明であるというほかない(イ)被控訴人は,本件土地陥没事故の機序についてるる主張するが,被控訴人が依拠するC意見書(甲41の1)では「空洞」がどこに形成,されたのかについては明らかではないから, であるというほかない(イ)被控訴人は,本件土地陥没事故の機序についてるる主張するが,被控訴人が依拠するC意見書(甲41の1)では「空洞」がどこに形成,されたのかについては明らかではないから,C意見書によっても,A土地が西側に移動・沈下した原因は,本件開発行為とは無関係に発生したものであるといわざるを得ない。 仮に,C意見書を踏まえ,A土地の亀裂・沈下の原因がD盛土未知の陥没であるならば,以下のとおり,B開発区域外のD盛土未知の陥没がB開発区域内のA土地の亀裂・沈下の原因となり得る危険性に対する具体的な予見可能性はなかったといわざるを得ない。 ウ本件土地陥没事故の予見可能性がなかったこと(ア)原判決は,過去約30年にわたって津市a地区の開発対象地において本件と同様の陥没事故が発生していない事実を考慮してもなお陥,,「没事故を防止するために最善の措置を執るべき職務上の義務を課すのに必要となる予見可能性を基礎付けるに足りる事情」は存在したという。 ,「」,(イ)しかしながら津市a地区が市街化区域に線引きされた経緯や- 7 -その結果,津市a地区は,おおむね今後10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(新市街地)であると位置付けられたことに加え,過去約30年にわたって津市a地区の開発対象地において,本件と同様の陥没事故が発生していないという事実は,磨き砂の採掘跡の空洞が存在する可能性が造成後の宅地,公園及び道路における陥没事故発生の可能性を必ずしも意味しないことを示しているし,(株)Bに対する本件開発許可手続においても平等原則による処理をすべきことを要請している((株)Bに対してだけ,B開発区域内の一定の箇所において,深度20m程度のボーリング調査をするよう行政指導し,これに従わないときは当該開 手続においても平等原則による処理をすべきことを要請している((株)Bに対してだけ,B開発区域内の一定の箇所において,深度20m程度のボーリング調査をするよう行政指導し,これに従わないときは当該開発許可を留保し,あるいは,同区域内に空洞が存在するかどうかが分からない限り,完了検査を拒否するとか検査済証を交付しないとすることは,平等原則に反し許されない。 。)(ウ)そして,開発業者が合理的な経済活動をとり得ることや開発許可権者の規制権限の内容からすれば,控訴人は,都市計画法上,原判決が指摘するような「陥没事故を防止するための最善の措置を執るべき職務上の義務」を負っているとはいえない。 そもそも本件で問題とすべきはB開発区域内のどこかで地面が陥,,「没」することの予見可能性ではなく,A土地の本件土地陥没地点の「陥没が現実的に予見可能であったかどうかであり原判決が指摘する予」,「見可能性を基礎付けるに足りる事情(原判決48頁)は,いずれもA」土地内の本件土地陥没事故に対する予見可能性を基礎付けるものではない。 (エ)また,仮に,A土地の亀裂・沈下の原因がD盛土未知の陥没であるならば,①津市a地区では,開発区域の「外」の土地における「陥没」により開発区域の「内」の土地に亀裂や沈下が発生したことはなかったこと,②昭和52年9月作成の「津市a地区みがき砂採掘跡の現況調査- 8 -及び調査計画案作成業務報告書(乙3)によっても,B開発区域に影」響を与えるようなB開発区域外の「D盛土」土地における「陥没(危」険)に対する具体的な予見可能性を認識できなかったこと,③本件委員会報告書(乙4の2)は,事後的に本件道路の陥没原因として「谷地最深部」という立地条件を取り上げているものの,事前にB開発区域やその周辺の立地条件から本件 見可能性を認識できなかったこと,③本件委員会報告書(乙4の2)は,事後的に本件道路の陥没原因として「谷地最深部」という立地条件を取り上げているものの,事前にB開発区域やその周辺の立地条件から本件開発許可の段階で,あらかじめB開発区域やその周辺における「陥没」が予見できたものと判断したものではないこと,④A土地の近くの(株)Dの開発行為により築造されたa公園(都市計画法40条2項により平成16年5月12日に控訴人に帰属)において小規模の陥没事故が発生したのは,本件開発行為の工事完了の検査済証を交付した平成17年8月8日の後であったこと,以上に照らせば,B開発区域外のD盛土未知の陥没がB開発区域内のA土地の亀裂・沈下の原因となり得る危険性に対する具体的な予見可能性はなかった。 また,上記に照らせば,B開発区域内の本件道路の陥没の具体的予見可能性はなかったし,B開発区域内に築造された本件道路で大陥没したら,当然に,A土地に亀裂・沈下が発生するなどということが予見できる道理はない。 エ本件土地陥没地点の「陥没」についての結果回避可能性がなかったこと本件道路部分を含むB開発区域内の土地の陥没の危険を除去するには,あらかじめ,陥没の原因となり得る空洞がどこ(水平的かつ垂直的)に存在するのかを調査し,さらには,発見できた空洞の天端が崩落する可能性の有無を調査し,もし,崩落する可能性があればその防止の措置を執る必要がある。 しかし,陥没の原因となり得る空洞がどこ(水平的)に存在するのかを調査するには,B開発区域内の全域にわたり,縦横にかつ最低でも1m程度のピッチ(間隔)をもってメッシュ状(網目状)にボーリング調査を実- 9 -施したり,2m四方程度のグリッドでくまなく区分して各グリッドの交点附近でボーリング調査を実施したりする必要があり,さら 度のピッチ(間隔)をもってメッシュ状(網目状)にボーリング調査を実- 9 -施したり,2m四方程度のグリッドでくまなく区分して各グリッドの交点附近でボーリング調査を実施したりする必要があり,さらに,事後的に判明したところによれば,陥没の原因となり得る空洞がどこ(垂直的)に存在するかを調査するためには,深度20mまで調査する必要があり,しかも,そのような調査によって発見できた空洞が陥没の原因となり得るのかどうかは不明であった。 このような場合に,(株)Bに対してだけ,2m四方程度のグリッドでくまなく区分して各グリッドの交点付近でボーリング調査を実施することや,深度20mまでの調査を実施するように行政指導し,これに従わなければ開発許可をしないとか,検査済証を交付しないという措置を執ること,。 にすればそれはとりもなおさず開発行為を断念せよということに帰するそして,(株)Bに対してだけ,市街化区域に線引きされているB開発区域において,このような平等原則に違反する行政指導ができる道理はない。 ,,(。)したがって控訴人にはB開発区域内の土地本件道路部分を含むの陥没についての結果回避可能性はなかったといわざるを得ない。 オ津市長等の行為(不作為)には「違法」の評価を受けるような注意義務違反はないことこのように,津市長等には,(株)Bの本件開発許可申請の審査時にも工事完了検査時にも,B開発区域外の陥没はもちろん,B開発区域内の本件道路の陥没の危険性についての具体的な予見可能性はなく,まして,B開発区域内の本件道路の陥没が発生すればB開発区域外に「未知の陥没」が発生し,その影響で,A土地の亀裂・沈下が生じるなどということも具体的に予見可能ではなかったし,B開発区域内の空洞調査は困難で,廃坑が放置され,時間の経過によって引き起こ 発区域外に「未知の陥没」が発生し,その影響で,A土地の亀裂・沈下が生じるなどということも具体的に予見可能ではなかったし,B開発区域内の空洞調査は困難で,廃坑が放置され,時間の経過によって引き起こされた本件道路の陥没を回避できる可能性もなかった。 かかる事実関係の下では,津市長等が,(株)Bの本件開発許可申請は,- 10 -都市計画法33条1項7号を具体化するものとして規定された都市計画法施行令28条,都市計画法施行規則23条及び27条の規定並びに開発事業に伴う防災措置に関する基本的な考え方や具体的な手法等を体系的にとりまとめた「宅地防災マニュアル」の技術的細目に適合しているため,都市計画法33条1項7号所定の安全性を充足しているものと判断し,(株)Bが実施した本件開発行為は都市計画法,都市計画法施行令,都市計画法施行規則及び「宅地防災マニュアル」に適合しているものと判断したことに,何ら職務上の注意義務違反はない。 カ本件開発許可と本件土地陥没事故とは因果関係がないこと原判決は,本件土地陥没事故が発生した機序は本件委員会報告書(乙4)「. 」,の2の 陥没発生の原因に記載されているとおりであるというが原判決が認定した本件土地陥没事故の原因は,全て(株)Bによる本件開発行為の以前から,本件開発行為とは無関係に客観的に存在していたものであるから,(株)Bによる本件開発行為が何ら作用因となっていないことは明らかである。本件土地陥没事故は,(株)Bや株式会社EがA土地を造成・分譲するとしないとに関わらず発生することになっていたところ,たまたま,発生時期がA土地の造成後となっただけであり,控訴人が(株)Bに対し本件開発許可をしなければ,A土地が陥没することはなかったとはいえないから,本件開発許可と本件土地陥没事故とは無関係で ,たまたま,発生時期がA土地の造成後となっただけであり,控訴人が(株)Bに対し本件開発許可をしなければ,A土地が陥没することはなかったとはいえないから,本件開発許可と本件土地陥没事故とは無関係であるといわざるを得ない。 また,実際に空洞調査をしたB開発区域内の道路予定部分5箇所,宅地予定部分10箇所で,原判決がいうような職務上の注意義務を尽くして深度20mのボーリング調査をしても,本件開発許可の以前から存在していた本件道路の陥没原因となった空洞は発見できなかったことに変わりはないから,原判決がいう「職務上の義務違反(深度20mのボーリング調」査を求めなかったこと)と「結果(本件土地陥没事故)との間の因果関」- 11 -係はない。 キ結語したがって,津市長等の規制権限の不行使が著しく不合理であると評価することはできない。 (4)控訴人に対する被控訴人の損害賠償請求権は発生しないことそもそも,Aに対しては,A土地を開発し分譲した(株)Bや造成業者である(株)E(以下,併せて「(株)Bら」という)がA土地の瑕疵担保責任を。 負い,本件建物の建築業者である被控訴人が,地盤調査義務違反及び基礎工事の工法選択の誤りに基づく債務不履行責任を負うべきであって,加害者で,「」ある被控訴人らが負う責任はAに直接被害を与えたことによる危険責任である。他方,控訴人が負う責任は,自然に存在する危険を適切に管理し,損害の発生を防止しなかったという不作為の違法を理由として問擬される「行政の危険管理責任」である。 そして,本件建物がA土地の地下の「空洞」に向かって崩壊する危険性があるとすれば,それは,地下の「空洞」が存在するまま宅地造成をして土地を分譲した(株)Bらと,敷地の「空洞」により崩壊する危険のある本件建物を建築した被控訴人が作出した危 に向かって崩壊する危険性があるとすれば,それは,地下の「空洞」が存在するまま宅地造成をして土地を分譲した(株)Bらと,敷地の「空洞」により崩壊する危険のある本件建物を建築した被控訴人が作出した危険であるから(株)Bら及び被控訴人が危,「険責任」あるいは「報償責任」に基づいて債務不履行責任や不法行為責任を負うのは当然であり,控訴人が「行政の危険管理責任」を負うとしても,その責任は,性質上,二次的あるいは補充的なものにすぎないから,上記危険の作出者でない控訴人に全面的な責任を負わせることは,行政の規制責任の補充性の点からしても不当であって,控訴人に対する被控訴人の損害賠償請求権は発生しないというべきである。 (5)被控訴人の損害賠償請求は権利濫用であること被控訴人は,平成17年9月23日にA土地の総合的な地盤調査を実施し(甲14,平成18年2月9日には深度12mまでのボーリングによる標)- 12 -準貫入試験を実施した(甲17)のであるから,これらの地盤調査が深度の点で不十分であったため「空洞」が見つからなかったとしても,それは被控訴人の判断の結果であって「空洞」が見つからなかったことにより安全対,策を講じなかった不利益を控訴人に転嫁できないことは明白である。 しかも,現在に至っても,本件建物の本体には外見から分かるような目立った損傷は生じていないし,本件建物自体が不同沈下している様子も認められず,外構物を修理すれば,本件建物が全く居住できない状態であるとは思われない。 したがって,外構物の修理費用や精神的苦痛に対する慰謝料相当額の損害賠償請求権を譲り受けたのであればともかく,被控訴人がAから本件建物の建築請負代金及び諸費用相当額の合計3127万円余の損害賠償請求権を譲り受けたことは全く理解することができず,被控訴人の損害賠 害賠償請求権を譲り受けたのであればともかく,被控訴人がAから本件建物の建築請負代金及び諸費用相当額の合計3127万円余の損害賠償請求権を譲り受けたことは全く理解することができず,被控訴人の損害賠償請求は権利濫用である。 (6)仮に,控訴人に損害賠償責任が認められるとしても,Aの損害は建物修補費用に限定されるべきであることアA土地の造成業者である(株)EがA土地の陥没箇所を埋め戻してから7年近くが経過したが,この間に本件建物自体が不同沈下した様子はうかがわれず,A土地も本件建物も社会経済的に無価値ではないから,本件建物の建替費用相当額の賠償請求を被控訴人に認めることはできない。 イまた,被控訴人は,本件建物の「矯正工事」は不可能であると判断しているが「A邸標準貫入試験結果についての所見(甲8の4)によれば,,」「GL-16M~28Mの間のN値50という非常に堅固な地盤と洪積層と思われる凝灰岩に挟まれる形で空洞が存在している」というのであるから「空洞」の上部の強固な地盤を支持地盤とする小口径鋼管工法及び小,径鋼管杭を用いたアンダーピーニング工法を採用することができ,本件建物に有意な「矯正工事」を実施することは可能である。 - 13 -ウしたがって,本件建物は利用可能であるから,建替費用相当額の賠償請求は否定されるべきであり,仮に,控訴人に損害賠償責任が認められるとしても,Aの損害は建物修補費用に限定されるべきである。 (被控訴人の主張)(1)D盛土未知の陥没及び控訴人の注意義務の有無についてア控訴人は,被控訴人の主張を踏まえたとして「D盛土未知の陥没」なる,。 主張をするが控訴人が当初の主張を変遷させた経過に留意すべきである控訴人は,本件土地陥没事故の原因について,本件道路西側の敷地内における宅地造成に伴う盛土が たとして「D盛土未知の陥没」なる,。 主張をするが控訴人が当初の主張を変遷させた経過に留意すべきである控訴人は,本件土地陥没事故の原因について,本件道路西側の敷地内における宅地造成に伴う盛土が西側に「ずり落ちた」可能性があると主張したので,被控訴人が,地盤工学的な観点から,本件土地陥没事故の原因は盛土のずり落ちではなく土地の陥没に起因することを指摘したところ,控訴人は「D盛土未知の陥没」なる主張に変遷させた。 また,控訴人が主張するD盛土未知の陥没地点は,D盛土端部(西端)に当たり,陥没地点とされる箇所の面積の半分程度が盛土の施されていない部分に位置することになるが,仮にその地点で陥没が発生したのであれば,その状況は現地で容易に確認することができるはずであるし,控訴人が主張するように,上記陥没地点を中心に同心円状のクラックが生じるとするならば,D開発区域とは反対側(B開発区域の更に西側)の谷部でも同様の同心円状のクラックが生じるはずであり,同所は造成されていない自然の状態であるから,やはりその状況は現地で容易に確認できるはずである。しかしながら,そのような状況は現地では見られない(甲52,41の1。 )したがって,控訴人が主張するD盛土未知の陥没が発生したとの事実は認められないし,本件道路西側の敷地内で発生した沈下変状等の直接の原因となる地中の未知の陥没が,B開発区域の「外」で発生したと特定できるものでもない。 - 14 -イむしろ,本件土地陥没事故を含む本件道路西側の敷地内で発生した一連の沈下変状等は,いずれもB開発区域内で発生した本件道路陥没事故と同様の発生機序により,あるいは,本件道路陥没事故に誘引される形で発生したことは,本件委員会報告書(乙4の2)やC意見書(甲41の1)に照らし明らかである。 ウそもそも,本件 た本件道路陥没事故と同様の発生機序により,あるいは,本件道路陥没事故に誘引される形で発生したことは,本件委員会報告書(乙4の2)やC意見書(甲41の1)に照らし明らかである。 ウそもそも,本件土地陥没事故の直接の原因がB開発区域内に位置するものかどうかによって,控訴人の注意義務違反の有無が左右されるものではない。 本件では,B開発区域内で本件道路陥没事故が発生し,本件道路陥没事故により流路を遮断された地下水流が西側に分岐し,この地下水流による影響が契機(起因)となって,本件道路西側の敷地内では,盛土の法尻付,,近だけでなく同敷地内の平坦面の地中においても陥没が発生しその結果これらの地中陥没が直接の原因となって本件土地陥没事故が発生したと合理的に推認できる(甲41の1,52。そうすると,本件土地陥没事故)の直接の原因となった道路西側の敷地内の地中の陥没は,あくまでも本件道路陥没事故を契機として,本件土地陥没事故へと結び付く連続する因果の流れの一部にすぎないから,控訴人の公務員らの職務上の注意義務違反によって惹起された本件道路陥没事故と相当因果関係を有する事象であると認められるし,本件土地陥没事故が本件道路陥没事故に由来することを排斥するだけの理由もない。 エまた,仮に,本件土地陥没事故の直接の原因がB開発区域外にあり,かつ,本件土地陥没事故が本件道路陥没事故に由来するものでなかったとしても,控訴人のいうD盛土未知の陥没は,B開発区域と隣接し,開発時期も近接したD開発区域内(甲26の2)で発生しているから,控訴人の注意義務違反を否定するものではないし,(株)Dによる開発行為(甲26の2)と(株)Bによる本件開発行為との一体性という点からも,控訴人の注- 15 -意義務違反の有無が左右されるものではない。 (2)都市計画法 するものではないし,(株)Dによる開発行為(甲26の2)と(株)Bによる本件開発行為との一体性という点からも,控訴人の注- 15 -意義務違反の有無が左右されるものではない。 (2)都市計画法29条(開発許可)は,開発区域内の特定の土地の地盤に存する危険性,障害を除去することをも目的としていること国土交通省が策定した「開発許可運用指針(甲9)や「宅地防災マニュ」アル(甲25)に照らせば,開発許可制度は,開発区域内における土地の」地盤の安全性を確保すること,すなわち「災害」防止の観点から,特定の,土地(本件ではA土地)を含めた開発区域内の土地の地盤に存する危険性,障害を除去することをも目的としていることは明らかである。 そして,都市計画法33条1項7号及び同法36条についても,少なくとも,損害の発生を前提とする国家賠償請求との関係では,個々人の個別的利益として,開発区域内に居住することになるであろう住民らの財産権も保護法益としていると解するのが相当であるから,開発許可手続においても,そ,,の審査及び工事完了検査に関与し公権力の行使に当たる控訴人の公務員は都市計画法上,造成後に当該開発区域内に居住することになるであろう住民ら(本件ではA)との関係で,職務上の法的義務を負うことになる。 したがって,同法29条(開発許可)は,開発区域内の特定の土地の「隠れたる瑕疵」による損害の防止を直接の目的としていないとする控訴人の主張は理由がない。 (3)津市長等による職務上の法的義務違反が認められることア控訴人は,開発許可権者としての規制権限を行使しなかったことが「著しく不合理」であれば,Aとの関係でも,国家賠償法上「違法」となる余地がある旨の規範を用いるが「行政権限の不行使」の是非が問われる場,,(),,面は行政庁の裁 行使しなかったことが「著しく不合理」であれば,Aとの関係でも,国家賠償法上「違法」となる余地がある旨の規範を用いるが「行政権限の不行使」の是非が問われる場,,(),,面は行政庁の裁量効果裁量が広く認められる場面であり本件ではあくまでもAとの関係で,職務上の義務を負っていた津市長等が,開発許可という行政権限を行使するに当たり,通常尽くすべき職務上の義務を怠ったことが問われているのであるから,控訴人の主張は妥当しない。 - 16 -控訴人は,過去約30年間にわたって津市a地区では本件と同様の陥没事故が発生していないことを主張するが,それは,これまで漫然と開発許可を繰り返してきた控訴人による偶然にすぎず,そのような事情が本件における控訴人の責任を否定ないし軽減するものではない。 イまた,控訴人は,AがA土地を取得した経緯について主張するが,津市長等がB開発区域の安全を確保するため実質的な観点から通常尽くすべき職務上の義務を履践していれば本件各陥没事故を未然に防止することができた本件では,本件開発行為の前後を通じた土地所有者としてのAの利益状況に変化があったかなかったかは,控訴人の責任を判断するに当たって何ら考慮されるべき事情ではない。 ウ控訴人は,本件土地陥没事故の原因が地下の「空洞」であるかどうかは不明であり,本件土地陥没事故の予見可能性がなかった旨を主張するが,昭和52年調査(乙3)や本件委員会報告書(乙4の2,本件各陥没事)故の発生状況を踏まえれば,平成18年10月8日に発生した本件土地陥没事故は,本件道路陥没地点と同様の地盤陥没の具体的危険性を有する地盤状況の下で,本件道路陥没事故と同様の機序で発生したものと認めることができ,あるいは,本件道路陥没事故に誘引されて本件土地陥没事故が発生したものといえる。 と同様の地盤陥没の具体的危険性を有する地盤状況の下で,本件道路陥没事故と同様の機序で発生したものと認めることができ,あるいは,本件道路陥没事故に誘引されて本件土地陥没事故が発生したものといえる。 控訴人は,平成16年に(株)Bに開発許可を与えた当時,B開発区域の周辺にはかなりの密度で陥没地や崩壊地が存在していたことや,自らが実施した昭和52年調査の結果を当然把握していたのであるから,許可を与える際には,同区域の従前の状態(谷地形であったこと等)及びその後に行われた埋立ての事実等について十分調査すべきであったし,本件開発許可の僅か1年ほど前に(株)Dにより提出された津市開発指導要綱によると思われる開発行為届書(甲26の2)により,本件道路陥没地点付近に最大8mの盛土がされた事実を把握していたのであるから,予見可能性がな- 17 -い旨の控訴人の主張は理由がない。 また,C意見書(甲41の1)を踏まえれば,本件委員会報告書(乙4の2)が記載する本件道路陥没事故の発生機序は妥当な推定であるし,本件土地陥没事故を含む本件道路西側の敷地内に生じた地表クラック,西側方向への沈下・移動現象の発生機序についても,本件道路の西側敷地内では,4回目の道路陥没が起きた日の2日後からクラックや沈下変状が発生し始めており,これは,4回目の道路陥没に伴い,本件道路陥没地点直下の廃坑内の土砂がある程度充填され,同地点の廃坑内の地下水流が遮断されて廃坑内の水位が上昇し,地下水流が西側等の他の廃坑部へとう回したことによって,本件道路西側の敷地内の地中の廃坑やその廃坑を埋めた土砂と,地下水流との平衡状態が崩れたこと,その結果,本件道路西側の敷地内の盛土の法尻部だけではなく,盛土平坦部の下方部においても空洞が形成され,そこに土砂が流入したことによって,本件道路西側の た土砂と,地下水流との平衡状態が崩れたこと,その結果,本件道路西側の敷地内の盛土の法尻部だけではなく,盛土平坦部の下方部においても空洞が形成され,そこに土砂が流入したことによって,本件道路西側の敷地内において,本件道路陥没地点とは反対の西方向に向かって種々の変化が生じたものと推察できるのであって,このような発生機序は,津市a地区の状況を踏まえれば,控訴人において予見可能性がなかったとはいえない。 エ控訴人は,本件土地陥没地点の「陥没」についての結果回避可能性がなかった旨主張するが,磨き砂の採掘跡と考えられる「空洞」の存在が確認されたのであれば,更なる詳細な空洞調査を実施するとともに,確認された空洞を充填するなどして安全上必要となる措置を講じることが,都市計画法33条1項7号の要求するところであるから,控訴人の主張は理由がない。 そもそも,B開発区域を含む津市a地区内に磨き砂の採掘跡と考えられる「空洞」が広く分布している事実が明らかとなり,控訴人はこの事実を,「」把握している状況下で都市計画法33条1項7号の安全上必要な措置を講じることが困難というのであれば,同号の反対解釈として,開発許可- 18 -をしてはならないことは当然の理であり,開発許可をしないことは最大の結果回避措置であるから,控訴人の主張は理由がない。 オ控訴人は,本件開発許可と本件土地陥没事故とは因果関係がないとも主張するが,本件では,津市長等による義務懈怠の結果として,都市計画法33条1項7号等の適合要件を欠いたまま本件開発許可がされ,本件土地陥没事故に至ったのであるから,津市長等が行った(株)Bに対する本件開発許可が本件土地陥没事故と因果関係を有することは明らかである。 控訴人は,本件開発行為が本件土地陥没事故の作用因とはなっていない旨主張するが,控訴人 あるから,津市長等が行った(株)Bに対する本件開発許可が本件土地陥没事故と因果関係を有することは明らかである。 控訴人は,本件開発行為が本件土地陥没事故の作用因とはなっていない旨主張するが,控訴人による本件開発許可の違法性を問題としている本件では的を射た主張ではないし,職務上の注意義務を尽くして調査を行っても空洞を発見することができなかった旨の主張は,控訴人の調査不足を自ら明らかにするものである。 (4)控訴人に対する被控訴人の損害賠償請求権は発生しないとの主張についてア控訴人は,本件で問擬されるべき行政の責任は「不作為(規制権限,」の不行使)の違法を理由とする「行政の危険管理責任」であり,控訴人には,規制権限の不行使が違法と判断される理由はない旨主張するが,国家賠償法1条1項の違法性判断において,控訴人が主張するような規範(裁量権消極的濫用論)を用いて「行政権限の不行使」の違法性が問擬されるべき事案は,上記のとおり,もともと,行政権限の行使に当たっての行政(),庁の裁量効果裁量が広く認められている場面を前提とするものであり本件とはその本質を異にする。そして,都市計画法33条1項7号は,災害防止の観点から開発行為を行政の許可にかからしめ,開発許可の段階で開発区域内における開発行為の設計内容を十分に審査し,安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められている場合にのみ許可するとしているのであり(最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号- 19 -250頁,本件においても,Aとの関係で職務上の注意義務を負ってい)た津市長等が,通常尽くすべき職務上の注意義務を怠って漫然と本件開発許可及び工事完了検査を行ったことが控訴人の責任の本質である(職務行為基準説。 )したがって,控訴人の主張は,本件の事案の下で )た津市長等が,通常尽くすべき職務上の注意義務を怠って漫然と本件開発許可及び工事完了検査を行ったことが控訴人の責任の本質である(職務行為基準説。 )したがって,控訴人の主張は,本件の事案の下では,そもそもの前提を欠き失当である。 イまた,控訴人は,控訴人の危険管理責任は第2次的,補充的な責任にすぎない旨主張するが,本件における訴訟物(被控訴人の請求)は,被控訴人がAから譲り受けた「Aの控訴人に対する国家賠償請求権の一部」であり,本件では,Aとの関係で職務上の注意義務を負っていた控訴人の公務員らが通常尽くすべき職務上の注意義務を漫然と怠って,Aに損害を発生させたのであり,Aとの関係で,被控訴人が不法行為責任や瑕疵担保責任を負うものではないから,本件における訴訟物との関係で,控訴人が全面的に責任を負うのは当然である。 したがって,控訴人の主張は,そもそもの前提を誤り失当である。 (5)被控訴人の損害賠償請求は権利濫用であるとの主張について控訴人の主張は争う。 なお,控訴人は,被控訴人が実施した地盤調査等を指摘するが,被控訴人は,あくまでも本件建物の建築に必要な範囲での地盤調査等を実施したにすぎず,空洞の存否の確認や空洞の存在を前提とした地盤改良等のために調査を実施したものではないし,平成20年4月にA土地内で実施したボーリング調査(甲8の5)の結果を慎重かつ適正に検討して,現時点では本件建物の矯正工事で対処する方法はない(甲8の4)との結論に至り,本件建物が社会通念上使用不能な状態に至っていると解した。したがって,被控訴人が請求する損害額も,本件土地陥没事故と相当因果関係を有する損害と評価で,。 きるのであるから被控訴人の損害賠償請求が権利濫用となるものではない- 20 -(6)Aの損害は建物修補費用に限定されるべきであると も,本件土地陥没事故と相当因果関係を有する損害と評価で,。 きるのであるから被控訴人の損害賠償請求が権利濫用となるものではない- 20 -(6)Aの損害は建物修補費用に限定されるべきであるとの主張について控訴人の主張は争う。 地盤調査を行った時点で当該地盤がいかに堅固なものであっても,支持層の直下には空洞が存在し,それを放置したままの状態では,到底,本件建物の危険性や不安定さを払拭できるものではないから,現時点では矯正工事で対処する方法はないとの判断は至極正当である。A土地を含めたB開発区域内の地中に存する廃坑跡(空洞)は,控訴人が通常尽くすべき職務上の義務を怠った結果,放置されるに至ったものであるから,被控訴人が請求することができる損害の全額が,相当因果関係を有する損害というべきである。 第4当裁判所の判断当裁判所は,控訴人に対する被控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,次のとおりである。 認定事実(1)次の(2)のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「」,。 第3当裁判所の判断の1に記載のとおりであるからこれを引用する(2)原判決の補正ア原判決28頁末行の「17」の次に「40」を加える。 ,イ原判決29頁2行目及び3行目の「西流する」をいずれも「東流する」に改め,4行目の「地表面から」を削除する。 ウ原判決32頁20行目の「泥層」を「泥岩」に改める。 エ原判決33頁末行の「土砂の流入」を「土砂の流れ込み」に改める。 オ原判決34頁1行目の「多い」を「大きい」に改める。 カ原判決35頁5行目の「平成16年頃までに」から6行目の「行ってきた」を次のとおり改める。 「津市a地区のうち,h地区28haに限ってみても,平成16年頃まで,」に10の開発業者が約11haで3 原判決35頁5行目の「平成16年頃までに」から6行目の「行ってきた」を次のとおり改める。 「津市a地区のうち,h地区28haに限ってみても,平成16年頃まで,」に10の開発業者が約11haで338区画の宅地造成を行ってきた- 21 -キ原判決35頁11行目の「a地区」を「津市a地区」に改める。 ク原判決35頁17行目の「22」の次に「,乙40」を加える。 ケ原判決37頁末行の「調査結果を得た」の次に「なお,Aが所有する。 ,,。」。 ことになる区画では2か所において空洞調査が行われたを加えるコ原判決40頁23行目の「本件各陥没事故」を「同月9日に発生した本件道路の当初の陥没事故」に改める。 サ原判決40頁24行目から25行目にかけての「本件各陥没事故に関して」を次のとおり改める。 「本件道路においてその後に発生した陥没事故及び本件土地陥没事故も考察の対象として」「」「」,,シ原判決41頁12行目の2地点を5地点に改め同行目の次に行を改めて次のとおり加える。 「(a)No.1地点(本件道路陥没地点付近)においては,深さ3.90mから5.45mまでのコンクリートの下で深さ5.80mまでの間に深さ35cmの空洞が存在した。その下,深さ13.60mまでの間は陥没土砂と考えられ,深さ14.50mまでの間も軟質で岩組織は認められない」。 「」「」,「」「」ス原判決41頁13行目の(a)を(b)に15行目の(b)を(c)に,17行目の「(c)」を「(d)」に,20行目の「(d)」を「(e)」にそれぞれ改める。 セ原判決43頁21行目の「2.3m」を「2.5m」に改める。 ソ原判決44頁23行目の「考えられる」の次に,行を改めて次のとお。 り加える。 「なお,No. 」を「(e)」にそれぞれ改める。 セ原判決43頁21行目の「2.3m」を「2.5m」に改める。 ソ原判決44頁23行目の「考えられる」の次に,行を改めて次のとお。 り加える。 「なお,No.6地点及びNo.7地点で確認された空洞直下の緩み域の存在は,空洞直上は硬質で強度を保っており,現時点では安定した状態である」。 - 22 -() 国家賠償法1条1項に基づく請求津市長等の職務上の注意義務違反の有無について(1)開発許可に係る津市長等の職務上の注意義務の内容ア上記第2の1のとおり,都市計画法は,都市の健全な発展と秩序ある整備を図り,もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とし(同法1条,都市計画区域内における開発行為を原則として)許可権者の許可にかからしめ(同法29条,開発区域内の土地が,地盤)の軟弱な土地,がけ崩れ又は出水のおそれが多い土地その他これらに類する土地であるときは,地盤の改良,擁壁の設置等安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められていることを開発許可の基準としており(同),,,法33条1項7号同号は市街地としての一定の水準を確保するため地形地質等の観点からの安全上,防災上の措置を定めたものと解される。 また,同条2項は,同号の基準を適用するについての必要な技術的細目を政令で定めることとしており,その委任に基づき定められた都市計画法施行令28条は,開発区域内の地盤が軟弱である場合,開発行為によってがけが生じる場合,切土をする場合,盛土をする場合及び著しく傾斜している土地について盛土をする場合に講じるべき措置を定めている(さらに,都市計画法施行規則が都市計画法施行令の定めに関する細目を示している。 。)なお,32条協議や32条同意は,直接的には,開発行為によ 地について盛土をする場合に講じるべき措置を定めている(さらに,都市計画法施行規則が都市計画法施行令の定めに関する細目を示している。 。)なお,32条協議や32条同意は,直接的には,開発行為により設置される公共施設の管理の適正を図るため,開発許可申請者と公共施設を管理することとなる者等との協議及び同意に関するものであるが,開発許可申請に対しては,様々な観点からの協議又は行政指導が行われ,円滑かつ確実な開発行為を進めるため,ある程度必要な事前手続となっており,かかる行政指導は,32条協議の際に開発許可に関する法的事務処理と同時並行的に進められている現状が認められる(甲9。 )- 23 -また開発許可の基準に関し国土交通省が技術的助言として定めた宅,,「地防災マニュアル」は,開発事業に伴うがけ崩れ,土砂の流出等による災害及び地盤の沈下,いっ水等の障害を防止するために,切土,盛土,のり面の保護,擁壁,軟弱地盤の対策,排水の処理等についての基本的な考え方及び設計・施工上留意すべき点を整理したものであるところ,軟弱地盤については「盛土及び構造物の荷重により大きな沈下を生じ,盛土端部,がすべり,地盤が側方に移動する等変形が著しく,開発事業において十分注意する必要がある地盤である。なお,地震時に液状化が発生するおそれのある砂質地盤については一種の軟弱地盤と考えられ,必要に応じて別途検討するものとする」と説明した上,軟弱地盤の分布及び特徴,軟弱地。 盤対策の検討手順,軟弱地盤の判定に必要な調査や判定の目安及び軟弱地盤対策の検討等を示している(甲25,29,51,乙31,32。 )イ上記のような都市計画法令の趣旨・目的及びその定めに照らせば,都市計画法は,地形地質等に起因する災害を防止するための一定の水準を維持して,良好な都市環境の 甲25,29,51,乙31,32。 )イ上記のような都市計画法令の趣旨・目的及びその定めに照らせば,都市計画法は,地形地質等に起因する災害を防止するための一定の水準を維持して,良好な都市環境の保持形成を図ることを開発行為の許可権者に義務付けていることは明らかであり,32条協議と同時並行的に進められる行政指導を通じて,開発許可申請者に対し,開発区域の特性に応じた設計指導や許可条件を付与することにより,当該義務を遂行することが求められ。 ,,,ているということができるまた特にがけ崩れや出水のような災害は開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命・身体の安全等を脅かすものであるから,開発行為の許可権者は,開発行為によって造成された宅地を購入する者との関係においても,がけ崩れ等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民との関係においても,上記義務を負っていると解するのが相当である。 また,都市計画法令や宅地防災マニュアルの規定ぶりに照らせば,そこで示された技術的細目は,蓄積された土木工学上の知見に加え,それまで- 24 -の災害で得た教訓に基づいて定められたものと推察され,このような技術的細目が妥当する開発許可申請については,許可権者は,申請された開発が技術的細目に適合するか否かを審査してその許否を決し,工事完了検査においても同様の審査が求められることはいうまでもないところ,本件のように,地下に廃坑跡(空洞)が存在する開発区域を対象とした技術的細目は見受けられず,都市計画法令上,開発申請の許可権者には具体的な許可の基準が示されているとはいえない。そうすると,許可権者は,都市計画法令の趣旨・目的に沿うよう,自ら地下に廃坑跡(空洞)が存在することを踏まえた許可条件を許可申請者に示す義務 可権者には具体的な許可の基準が示されているとはいえない。そうすると,許可権者は,都市計画法令の趣旨・目的に沿うよう,自ら地下に廃坑跡(空洞)が存在することを踏まえた許可条件を許可申請者に示す義務があるとともに,当該開発区域の特性,従前の災害報告例及び従前の許可実績等を踏まえ,合理的かつ合目的的な裁量により,その許可条件を策定することができ,また,すべきであると解される。 (2)本件各陥没事故の原因ア本件道路陥没事故の原因本件委員会報告書は,上記認定(補正して引用した原判決40頁22行目から45頁12行目まで)のとおり,本件道路陥没事故の発生機序を推定しているところ,この考察は,本件委員会が,本件各陥没事故の原因について客観的かつ専門的な検討を行うことを目的として実施した7地点のボーリング調査を初めとする詳細な調査に基づくものである。また,その,,,内容も本件各陥没地点周辺の地形(株)Dによって行われた盛土の存在ボーリング調査によって確認された地下の地質の状況,磨き砂の土質検査の結果等を踏まえて,専門的な知見に基づく考察がなされており,発生機序として説明されているところに不自然・不合理な点は見当たらない。 そうすると,本件道路陥没事故は,本件道路が元の谷地形の最深部にあり,周辺の雨水,浸透水が集中して流入する場所にあったこと,(株)Bによる開発行為に先立って,(株)Dにより最大8mの盛土がされていたこと- 25 -から水ミチが発生し,盛土による上載圧の影響があったこと,旧地山の空洞直上の土被りが浅いことに加え,大きな降雨により地中への水の供給が増えたことも影響して,廃坑跡(空洞)天端(天井)付近で崩壊が生じ,空洞域が拡大してこれが地表にまで影響を及ぼしたことによるものと認められる。 なお,証拠(甲26の3ないし6,乙4 中への水の供給が増えたことも影響して,廃坑跡(空洞)天端(天井)付近で崩壊が生じ,空洞域が拡大してこれが地表にまで影響を及ぼしたことによるものと認められる。 なお,証拠(甲26の3ないし6,乙4の2,乙6,26ないし29)によれば,B開発区域にある本件道路陥没地点は,もともとは標高22. 8mの平坦な谷であったところ,平成4年頃に何者かがこれを埋め立てて標高30.1mまで盛土を行ったことが認められるから,かかる盛土が行われたことも,上記事故の原因につながっていると推認される。 イ本件土地陥没事故の原因他方,上記認定(補正して引用した原判決45頁22行目から46頁2行目まで)のとおり,平成20年4月7日及び同月8日に行われたA土地の標準貫入試験では,1地点ではあるが,表層から深度6m付近までは,N値は2から8程度で推移し,深度7m辺りから深度が進むにつれてN値も上昇し,深度16mから最終深度までは,一部を除きN値50であったこと,深度19mから21mまでの間は,空洞となっているが,空洞の位(,)。 ,置や規模などの詳細は不明であることが判明した甲8の4 また本件委員会報告書は,地盤表面の陥没が見られない箇所でのボーリング調査の結果として,廃坑跡(空洞)直上が硬質で強度を保っており,空洞直下の緩み域は安定した状態である旨指摘していること及びA土地に設置した観測点が,本件道路陥没地点とは反対方向の西側に大きく移動していることを指摘している(乙4の2。 )そうすると,A土地については,空洞直上の地質が固く,本件道路陥没事故と機序を同じくして本件土地陥没事故が発生したといえるかは疑問であるところ,C意見書(甲41の1)は,本件道路の4回目の小陥没で1- 26 -回目の大崩壊部直下の廃坑内に土砂がある程度充填され,その部分で地 じくして本件土地陥没事故が発生したといえるかは疑問であるところ,C意見書(甲41の1)は,本件道路の4回目の小陥没で1- 26 -回目の大崩壊部直下の廃坑内に土砂がある程度充填され,その部分で地下水流が遮断されて廃坑内の水位が上昇し,他の廃坑部にう回し,本件道路,,西側の廃坑内で平衡状態を保っていた土砂を侵食し非平衡状態に移行し新たな空洞形成と土砂移動が発生したためと推察される旨を指摘している。そして,当初控訴人は,本件土地陥没事故の原因は盛土の地盤強度の不足である旨主張していたところ,C意見書は,本件土地陥没事故が盛土の地盤強度不足でないことを実証していると認められる上,本件道路陥没事故のうち2回目から5回目までの陥没が比較的大きな降雨の直後に発生,,し本件土地陥没事故が本件道路陥没事故に近接して発生していることはC意見書が指摘する本件土地陥没事故の発生機序とも整合すると認められるから,本件土地陥没事故の発生機序は,C意見書が指摘するとおりと認められる。 なお,控訴人は,本件開発許可等の津市長等の行為(不作為)とA土地の亀裂・沈下との間に事実的因果関係を認めることはできないとの主張を根拠付けるため,本件土地陥没事故の原因は,B開発区域外で発生したD盛土未知の陥没である旨指摘する。しかしながら,控訴人の主張は仮説の域を出ない上,仮に,本件土地陥没事故の原因が,B開発区域外で発生した空洞内の天盤崩壊等の変位であったとしても,上記のとおり,開発許可権者は,開発区域内外の宅地購入者や住民との関係で,都市計画法令上の義務を負うと解されるから,B開発区域外の地形地質等に起因する災害によって本件土地陥没事故が発生した一事をもって,およそ,都市計画法に基づく職務上の注意義務違反は問題とならないということはできないから,本件土地陥没事 から,B開発区域外の地形地質等に起因する災害によって本件土地陥没事故が発生した一事をもって,およそ,都市計画法に基づく職務上の注意義務違反は問題とならないということはできないから,本件土地陥没事故の原因に関する控訴人主張は採用することができない。 (3)本件各陥没事故の予見可能性の有無ア本件道路陥没事故について- 27 -(ア)上記認定事実(補正して引用した原判決30頁10行目から35頁2行目)のとおり,昭和52年調査は,地表部陥没の要因として,①廃坑(空洞)が存在すること,②廃坑の上部に硬質層がないか,あってもごく薄いこと,③廃坑の上位に分布する地層が全体的に未固結であること,④廃坑の上位に透水性の地層が分布し,地盤の動き等を誘因として水ミチができやすく,さらに地表水が集中流入しやすい地形的な条件下にあることを挙げ,これらの条件が単独あるいは複合して現れる位置に陥没が生じていると思われること,したがって,陥没は長期間のうちに,,徐々に拡大発展するものと考えられ土地を現状のままで放置する限り陥没現象が今後も発生する可能性があることを指摘した上,今後の調査方針として,本件調査地内には,磨き砂層が6mから10mの厚さをもって全域に分布していること,本件調査地内のかなりの区域で磨き砂の採掘が行われ,採掘跡の廃坑が存在すること,廃坑(空洞)は地形・地質的条件によって崩潰し,地表部の陥没に発展する可能性があることから,本件調査地内の土地利用に当たっては,今後十分な調査をした後に土地利用計画,設計,施工に進むべきであろうと提言し,広域的調査及。 ,,び限定域調査の内容も提言していたまた昭和52年調査に照らせばB開発区域は,同調査において特に陥没地や崩壊地が多い場所として指摘されたi付近から延びる沢筋に近く,昭和52年当時に 調査及。 ,,び限定域調査の内容も提言していたまた昭和52年調査に照らせばB開発区域は,同調査において特に陥没地や崩壊地が多い場所として指摘されたi付近から延びる沢筋に近く,昭和52年当時において,周辺にはかなり大きいものも含め,相当数の陥没地が認められた。 そして,上記認定(補正して引用した原判決29頁10行目から30頁9行目)のとおり「開発行為については現地調査を十分行って開発,許可をしていくので,再度市街化区域に編入して,地域一帯を良好な市街地に整備する」との理由で,昭和52年10月に津市a地区(のうちh地区)を市街化区域のままとすることが決定された経緯に加え,本件開発許可をするに当たり,津市長等は,B開発区域には磨き砂の採掘跡- 28 -地が見受けられることを認識していたこと(甲4)からすると,本件各陥没事故が発生したという事実を踏まえれば,本件開発許可をするに当たり,密度が高く深度も深いボーリング調査の実施とその結果を踏まえた対策を許可条件とするなどしていれば望ましかったということはできよう。また,控訴人は,本件委員会が発足するまで,昭和52年調査の報告書を保管しておらず(甲11の5,都市計画法上の開発許可権限)が平成11年に至って津市長に移管したとしても,都市計画行政を所掌する行政庁として十分な職務姿勢であったとはいい難い。 (イ)しかしながら,本件のように,地下に廃坑跡(空洞)が存在する開発区域を対象とした技術的細目が見受けられない場合,開発行為の許可権者は,当該開発区域の特性,従前の災害報告例及び従前の許可実績等を踏まえた合理的・合目的的な裁量により,開発許可申請者に対し許可条件を策定することができ,また,すべきであるとはいっても,開発区域の地盤の安全を確保するために策定される条件の内容(技術的な対応 を踏まえた合理的・合目的的な裁量により,開発許可申請者に対し許可条件を策定することができ,また,すべきであるとはいっても,開発区域の地盤の安全を確保するために策定される条件の内容(技術的な対応策)は,ある程度の予測可能な原因に対する災害防止措置とならざるを得ないということができる。 そして,本件では,昭和52年10月に津市a地区(のうちh地区),,を市街化区域のままとすることが決定されて以降平成16年頃までにh地区では,10の開発業者が約11haで338区画の宅地造成を行ってきたが,平成17年頃までの間に,本件各陥没事故と同様の陥没事故が住宅地において発生することはなく(上記認定事実〔補正して引用した原判決35頁4行目~17行目,昭和52年調査において,陥〕)没地や崩壊地が多いとされた地区は,その後宅地開発が進んだことが認められる(甲12,13,乙15)ことに加え,本件委員会報告書は,磨き砂層の空洞直上が良好な地盤の場合には,地盤内で陥没が発生しても,陥没の影響は地表にはほとんど及ばないと指摘している上(3.有- 29 -限要素解析結果「地盤の陥没,沈下といった問題の原因究明にあた),っては,陥没原因が地下にあるとともに,地形・地質,地下水,気象等の要因が複雑に重なり合っているため,明確にその原因を特定することは,現時点での学問・技術レベルでは不可能である「地盤の陥没・。」沈下は,地下の状況を明確にできない上,地域性が大きく,その予知が困難であるとともに突発的に発生する可能性がある」と指摘している。 (6.提言。また,B開発区域に隣接するjを造成したF(株)が平成)13年12月17日に控訴人に提出した「j造成工事空洞調査及び処理報告書(乙18)は,地下約15mに空洞が確認されたボーリング調」査地点について B開発区域に隣接するjを造成したF(株)が平成)13年12月17日に控訴人に提出した「j造成工事空洞調査及び処理報告書(乙18)は,地下約15mに空洞が確認されたボーリング調」査地点について,空洞上の地下12mから15mでは,N値が20から50以上となっており,この部分は,磨き砂の特性である,均質な微砂ないしシルト状で,団結し粘性が強くなっている状態にあるから,空洞ができてから既に50年以上の年月が経過し,その安全性を実証している旨を指摘しており,このような知見は,津市長等も共有するに至ったものと推認される。しかも,開発許可権限が津市長に移管した平成11年以降,津市a地区(のうちh地区)で津市長が許可した開発は,本件開発許可を含め4件にとどまるが(乙40,津市長等が高密度・深深)度のボーリング調査とその結果を踏まえた対策を許可の条件としていた形跡は認められない。そして,本件各陥没事故の原因が上記のとおり認められ,結局のところ,もともと谷部に存在したB開発区域が盛土によって形成され,雨水が集中して流入する箇所であったという特性があったところ,平成4年頃に何者かによって標高22.8mの平坦な谷が標高30.1mまで盛土が行われたことが,その後の(株)Dによる盛土とあいまって,本件道路陥没事故の原因の一つになったと認められ,当時の開発許可権者は三重県知事であって津市長ではなかったから,津市長等が平成4年の盛土の事実を把握していたとまでは認められない。 - 30 -そうすると,このような経緯や本件道路陥没事故の原因に照らせば,本件においては,本件道路陥没事故の原因を予測することは困難であったといわざるを得ず,津市長等が本件道路陥没事故を予見することができたとは認められないというべきである。 イ本件土地陥没事故についてまた,上記の ,本件道路陥没事故の原因を予測することは困難であったといわざるを得ず,津市長等が本件道路陥没事故を予見することができたとは認められないというべきである。 イ本件土地陥没事故についてまた,上記のとおり,本件土地陥没事故の原因は,本件道路陥没事故によってう回した地下水流が新たな空洞形成と土砂移動が発生したためと推察され,A土地の地下にある空洞の天端(天井)それ自体の崩壊ではないと認められる上,本件道路陥没事故が発生すれば,本件土地陥没事故の発生が必然であるとまではいい難いことも踏まえれば,津市長等が本件道路陥没事故を予見することができたとは認められない以上,本件土地陥没事故を予見することができたとまでは認められない。 なお,仮に,津市長等が,B開発区域内における高密度かつ地下20m程までのボーリング調査とその結果を踏まえた対策を本件開発許可の条件として策定していたとしても,A土地については空洞直上の地質が固く,深度16mからは一部を除きN値は50となっており,空洞も深度19mから21mまでと深い場所にあったこと(上記認定事実〔補正して引用した原判決45頁22行目から46頁2行目まで)を踏まえれば,かかる〕空洞の存在は地表に影響を及ぼすものではないとの判断に至った可能性が高く,本件土地陥没事故の原因に照らせば,これに対する防止措置を策定することは困難であったと認められるから,上記条件を策定していれば,本件土地陥没事故という結果を回避することができたとも認められない。 ウ被控訴人の主張に対して(ア)これに対し,被控訴人は,B開発区域には磨き砂の廃坑が多数存在することは昭和52年調査で明らかとなっており,本件開発許可の僅か1年ほど前に(株)Dから提出された開発行為届出書(甲26の2)によ- 31 -り,本件道路陥没地点に最大8mの 砂の廃坑が多数存在することは昭和52年調査で明らかとなっており,本件開発許可の僅か1年ほど前に(株)Dから提出された開発行為届出書(甲26の2)によ- 31 -り,本件道路陥没地点に最大8mの盛土がされた事実や,当該地点が元々谷地形の最深部であったことも知っていたのであるから,本件道路陥没事故の発生機序や因果経過を予見することは可能であった旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,都市計画法令の技術的細目がこれまでの土木工学上の知見や災害で得た教訓を踏まえて策定されていると推察され,それに基づいて許可権者が開発許可の基準を満たしているかどうかを審査することに加え,本件のように技術的細目が定められていない分野においては,そのような知見がなく,合理的・合目的な裁量判断によって許可条件を定めることができるといっても,裁量判断の前提となるのは,当該許可申請区域の従前の事故報告例の有無や判明した事故原因とならざるを得ず,したがって,そのような事故原因を想定した上での技術的な対応策が許可条件とならざるを得ないことに照らせば,国家賠償法1条1項の「違法」を基礎付ける職務上の注意義務違反(予見可能性)が認められるためには,B開発区域に磨き砂の採掘跡(空洞)が存在することにより地表陥没が起こるかも知れないとの危惧感では足りず,ある程度の原因を想定した上での予見可能性が認められなければ,職務上の注意義務違反があったとはいえないというべきである。 そうすると,本件では,本件各陥没事故の原因を予測することが困難であったことは上記のとおりである上,津市長等は平成4年頃の盛土の事実を把握していたとまでは認められず,(株)Dによる盛土を前提として,B開発区域の元々の谷地形を把握する作業に思い至ることが容易であったとはいえないし,仮に,B開発区域が元々は谷地 4年頃の盛土の事実を把握していたとまでは認められず,(株)Dによる盛土を前提として,B開発区域の元々の谷地形を把握する作業に思い至ることが容易であったとはいえないし,仮に,B開発区域が元々は谷地形であったことを把握することができたとしても,本件各陥没事故の原因を予測することは困難であったと認められるから,被控訴人の主張は採用することができない。 - 32 -(イ)また,被控訴人は,①これまで津市a地区で本件と同様の陥没事故が発生していないのは,漫然と開発許可を繰り返してきた控訴人による偶然にすぎないから,そのような事情が控訴人の責任を否定ないし軽減するものではない,②そもそも,控訴人は,磨き砂の採掘跡(空洞)が広く分布している事実を把握していたのであるから「安全上必要な措,置(都市計画法33条1項7号)を講じることが困難というのであれ」ば,同号の反対解釈として,開発許可をしてはならないのは当然の理であり,開発許可をしないことは最大の回避措置である旨主張する。 しかしながら,①の主張は,本件土地陥没事故という結果のみに着目して津市長等の職務上の注意義務違反をいうものであって理由がないといわざるを得ない。また,②の主張は,本件土地陥没事故の原因を予測することが困難な状況の中で本件土地陥没事故の発生を前提とする安,「全上必要な措置」を本件開発許可の時点で条件として策定せよというに等しいし,津市長等は,本件開発許可に際し,(株)Bに対し「申請地,の空洞調査を実施し,宅地造成後においても安全が確保出来るよう留意されたい」との条件を付し「開発区域内については工事完了までに。 ,調査を行いその結果に基づき対処し,安全対策の処理をします」との。 (株)Bの回答を踏まえて本件開発許可に至ったのであるから,都市計画法33条1項各号に 「開発区域内については工事完了までに。 ,調査を行いその結果に基づき対処し,安全対策の処理をします」との。 (株)Bの回答を踏まえて本件開発許可に至ったのであるから,都市計画法33条1項各号に規定する基準に適合し,申請手続が同法等の規定に違反していないと認めるときは,開発許可をしなければならないとの同法33条1項柱書きの規定を踏まえれば,開発許可をしてはならないのは当然であるとはいえない。そして,本件各陥没事故に至るまでの経緯を踏まえれば,上記条件を付したこと(上記条件にとどまったこと)が裁量権の逸脱ないし違法な権限の不行使であるとも認められないというべきである。 したがって,被控訴人の主張は採用することができない。 - 33 - 国家賠償法2条に基づく請求(本件道路の設置・管理の瑕疵)について上記のとおり,控訴人には,本件道路陥没事故の予見可能性があったとは認めないから,本件道路の設置・管理に瑕疵があったとも認められない。 よって,その余の点を判断するまでもなく,被控訴人の請求は理由がない。 第5 結論 以上の次第で,被控訴人の請求を認容した原判決は相当でなく,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消し,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官揖斐潔裁判官池田信彦裁判官唐木浩之(別紙物件目録省略)
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