平成17(行ウ)6 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年9月28日 宇都宮地方裁判所
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判決文本文7,002 文字)

- 1 -平成17年(行ウ)第6号損害賠償請求事件判決主文 被告は,別紙相手方目録記載1の相手方に対し,1万4700円及び平成17年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 被告は,別紙相手方目録記載2の相手方に対し,1万4700円及び平成17年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償の命令をせよ。 ,,。 被告は別紙相手方目録記載3の相手方に対し1万4700円を請求せよ 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求 被告は,別紙相手方目録記載3の相手方に対し,1万4700円及び平成17年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 主文1,2に同じ。 第2事案の概要本件は,a町が平成16年度全国町村議会議員互助事業の負担金(以下「本件互助負担金」という)を支出したことについて,支出は公益上の必要性を。 欠き違法であり,これにより同町に損害が生じ同町議会議員1名が利得を得た等として,同町住民である原告が,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,支出額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金について,支出当時の同町町長(別紙相手方目録記載1の相手方)に対する損害賠償請求,支出命令を専決した同町主管課長(別紙相手方目録記載2の相手方)に対する損害賠償命令,上記議員(別紙相手方目録記載3の相手方)に- 2 -対する不当利得返還請求を,それぞれ行うことを求めた事案である。 原告は,訴え提起当初,不当利得返還請求にかかる相手方を同町議会議員22名とし,上記損害賠償請求等を求める金額を32万3400円として請求していたが,訴え提起後,上記議員のうち21名が利得相当額をa町に返還したとして,請求を減縮 還請求にかかる相手方を同町議会議員22名とし,上記損害賠償請求等を求める金額を32万3400円として請求していたが,訴え提起後,上記議員のうち21名が利得相当額をa町に返還したとして,請求を減縮した。 前提となる事実(証拠を摘示しない事実は,当事者間に争いがない)。 (1)当事者等,。 ,。 原告は住居地に居住するa町の住民である被告は同町の町長であるA(以下「A町長」という,B(以下「B課長」という)及びC(以。)。 下「C議員」という)は,それぞれ,平成16年度のa町長,同町議会事。 務局長兼主管課長,同町議会議員の職にあった者である。 a町において,経常的な負担金等で50万円未満の支出負担行為,支出命令権は,決裁規程(昭和44年3月19日a町規程第1号)第9条により,各課長等に専決権として付与されている。 (2)本件互助負担金の支出について,,ア全国町村議会議長会は各都道府県町村議会議長会の連絡協調をはかり町村議会の円滑な運営と地方自治の振興発展に寄与することを目的とし,各都道府県の町村議会議長で構成する各都道府県町村議会議長会をもって組織されている(甲5〔1条,3条)。 〕栃木県町村議会議長会は,栃木県内の町村議会議長で構成されている。 イ全国町村議会議長会は,その目的を達成するための事業の1つとして,町村議会議員等の福利厚生事業である互助事業(以下「本件互助事業」という)を行っている。 。 互助事業の内容は,町村議会議員等の死亡又は身体障害に対する互助金もしくは給付金の支給等であり,加入者の資格は町村議会議員等で,加入団体は,各町村議会を単位とし,代表者は町村議会の議長とされている。 - 3 -(甲4,甲5〔4条(7) )〕互助事業における負担金は,加入1口当たり年1450円,1名当たり事務 議員等で,加入団体は,各町村議会を単位とし,代表者は町村議会の議長とされている。 - 3 -(甲4,甲5〔4条(7) )〕互助事業における負担金は,加入1口当たり年1450円,1名当たり事務費200円を合計した額であり,その性質は,町村議会議員の傷害保険の掛金的なものである。 ウ平成16年度a町議会は,互助事業に,1名当たり10口で,全議員22名分加入し,事務費を併せた,本件互助負担金の総額は,1名当たり1万4700円,22名分で32万3400円となった。 エB課長は,平成16年4月1日,予算科目における事業の区分「議員報酬費,節の区分「共済費」として,平成16年度全国町村議会議員互助」事業負担金32万3400円の支出命令及び支出負担行為をし,同町収入役は,同月22日,同額を栃木県町村議会議長会に対して支払った(甲。 7。以下「本件公金支出」という)。 (3)地方自治法の規定普通地方公共団体は,その議会の議員等の職員に対し,いかなる給与その他の給付も,法律又はこれに基づく条例に基づかずに支給することができない(同法203条1項,204条の2)。 普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる(同法232条の2)。 (4)原告は,平成17年4月6日,a町監査委員に対し,本件公金支出について監査請求をしたところ,同町監査委員は,同年5月19日,原告の監査請求を棄却した。 原告は,同年6月17日,本件訴訟を提起した。 平成16年度a町議員のうち,C議員を除く21名の議員は,同17年8月,平成16年度の1人当たりの互助負担金相当額1万4700円を含む,平成14年度,同15年度の1人当たりの互助負担金相当額との合計額4万- 4 -4100円を,a町に返還した(乙1の1ないし21)。 栃木 年度の1人当たりの互助負担金相当額1万4700円を含む,平成14年度,同15年度の1人当たりの互助負担金相当額との合計額4万- 4 -4100円を,a町に返還した(乙1の1ないし21)。 栃木県内の全町村議会は,平成17年度以降の互助制度の任意保険の加入を取りやめている(甲3)。 争点及びこれに関する当事者の主張(1)本件公金支出の違法性(原告の主張)ア互助負担金は,町村議会議員の傷害保険の掛金的性質を有し,a町の事務を処理するために必要な経費ではなく,議員に対する支出であるから,地方自治法203条1項の「報酬」又は同条3項の「職務を行うために要する費用の弁償」のいずれかに当たり,同法204条の2にいう「給与その他の給付」に該当する。 (),「」支出負担行為兼支出命令票甲7においても予算科目のうち事業としては「議員報酬費」とされている。 ,しかし,本件公金支出は,これを根拠づける法律又はこれに基づく条例は存在しないのであるから,同法204条の2に違反する。 イ同法232条の2の補助金交付要件としての「公益性」とは,当該普通地方公共団体の住民の福祉の増進に有益か否かという観点から判断すべきものである。 町村議会議員の傷害保険の掛金的性質を有する互助負担金は,本来議員個人が負担すべきものであるから,本件公金支出がa町住民の福祉の増進に有益であると評価することは不可能である。 よって,本件公金支出は,公益上の必要性が認められないから,同条にも違反する。 ウしたがって,本件公金支出は,町長及び町主管課長の裁量権を逸脱し,違法である。 そして,本件公金支出によって,a町に1万4700円の損害が生じ,- 5 -また,C議員は,同額を法律上の原因なくして不当に利得し,a町は同額の損失を被った。 なお,栃木県内の し,違法である。 そして,本件公金支出によって,a町に1万4700円の損害が生じ,- 5 -また,C議員は,同額を法律上の原因なくして不当に利得し,a町は同額の損失を被った。 なお,栃木県内の全町村議会は,平成17年度以降の互助制度の任意保険加入を取りやめており,A町長及びB課長が本件公金支出の違法性を認めていることを示している。 (被告の主張)栃木県町村議会議長会は,極めて公益性・公共性の高い性格を有する組織であるし,a町議会議員は,住民全体の福祉の向上と地域社会の活力ある発展を目指して日々活動し,その職務の遂行は極めて公益性が高く,また広範かつ複雑多岐にわたっている。 議員の職務の実態にもかかわらず,議員には福利厚生制度が存在しない現実があり,互助負担金は,実質的には,議員の,公的な議会活動に準じた職務執行に対する補償金として機能し,公的な職務執行に対する議員全体の福利厚生を実質的に担保するものといえる。 よって,本件公金支出には客観的に高度の公益性があり,支出は町の裁量の範囲内で適法である。 (2)A町長及びB課長の責任原因(原告の主張)アA町長は,予算執行権を有し,本件公金支出について,専決権者に対して違法な支出命令をすることを阻止すべき指揮監督上の義務を有していたから,本件公金支出が「法律又は法律に基づく条例」に基づく支出であるか否か等地方自治法違反の有無の検討を指示すべきであった。 しかし,これを行わなかった結果,支出負担行為及び支出命令がなされたのであり,A町長は,財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によって違法行為を阻止しなかったものである。 - 6 -イB課長は,本件公金支出について専決権を有しており,専決権者としては,違法な債務負担行為,支出行為をしないように注意すべき ,故意又は過失によって違法行為を阻止しなかったものである。 - 6 -イB課長は,本件公金支出について専決権を有しており,専決権者としては,違法な債務負担行為,支出行為をしないように注意すべき義務があった。 しかし,B課長は,上記義務を怠り,本件公金支出が「法律又は法律,に基づく条例」に基づくものではなく,公益上の必要性もないことを知っていたか,又は容易に知り得たのにこれを重過失によって看過し,本件公金支出を行い,町に損害を与えた。 (被告の主張)争う。 第3争点に対する判断 争点(1(本件公金支出の違法性)について)原告は,本件互助負担金は町議会議員に対する「給与その他の給付(地方」自治法204条の2)に当たるため,本件公金支出は違法であると主張するので,以下検討する。 上記前提となる事実及び証拠(証人B)によれば,本件互助事業は,全国町村議会議長会の目的及び互助事業の内容に照らして,加入者である町村議会議員を対象とした生命保険,傷害保険的な性質を有する事業であり,その負担金である本件互助負担金は,被保険者的立場に立つ個々の加入者である町村議会議員毎に,その加入口数に応じて金額が定められるものであって,保険の掛金的な性質を有するものであること,一定の事由が生じたときには,個々の加入者である町村議会議員等に互助金あるいは給付金を支給するものであること,町村議会議員には,他の町村の職員と同様に,共済組合制度が存在することが認められる。 そうすると,本件互助事業による経済的利益は,町村議会議員個人が享受するものであって,その負担金も,議員個人の経済的利益のために支払われるものといえるから,a町による本件互助負担金の支出は,本来町議会議員個人の- 7 -経済的利益のために当該議員自身が支払うべきものを,同町が代わって支払 金も,議員個人の経済的利益のために支払われるものといえるから,a町による本件互助負担金の支出は,本来町議会議員個人の- 7 -経済的利益のために当該議員自身が支払うべきものを,同町が代わって支払ったものということができ,直接町議会議員に対して支給されたものではないものの,町議会議員としての地位に関連して,議員個人に対して行われた給付に当たり,また,町議会議員について別途共済組合制度が存在することからすれば,社会通念上儀礼の範囲内のものであるとはいえず,地方自治法204条の2にいう「給付」に当たるというべきである。 しかるに,本件公金支出を根拠づける法律又は条例は存在しない。そうすると,本件公金支出は,法律又は条例の規定なくして,町議会議員に対する「給与その他の給付」を支給するものであって,同条に違反し,違法なものというべきである。 争点(2(A町長及びB課長の責任原因)について)上記前提となる事実に,証拠(証人B)及び弁論の全趣旨を総合すると,B課長は,本件公金支出に当たって,a町を含む栃木県内の町村が長年にわたり本件互助事業への負担金支出を継続して行っており,町議会議員の議員活動の保障として,支出について公益上の必要性もあるという認識から,本件互助負担金の支出を根拠づける法律や条令の規定について調査検討することなく議,「」,,員報酬費の予算科目として支出負担行為及び支出命令を行ったことさらに,「」同人は根拠となる法律又は条例なく町議会議員に対して給与その他の給付を支給することができないという地方自治法204条の2の規定を知らなかったことが認められる。 そうすると,B課長は,本件公金支出を行うに当たって,その支出を根拠づける法律や条令の規定について調査検討すべきであり,根拠規定が存在しないことが判明すれば, 規定を知らなかったことが認められる。 そうすると,B課長は,本件公金支出を行うに当たって,その支出を根拠づける法律や条令の規定について調査検討すべきであり,根拠規定が存在しないことが判明すれば,これが地方自治法204条の2に違反することが容易に判明したものといえるにもかかわらず,これを怠ったものであるし,そもそも,地方自治体において公金の支出に専決権者として携わっている以上,その職員に対する給付の明確化をはかり,あいまいな給付がなされないようにすること- 8 -を趣旨とする基本的規定である地方自治法204条の2の規定を認識しておく,,べきであるにもかかわらずその規定の存在すら知らなかったものであるから本件公金支出を行うについて,重大な過失があったものというべきである。 そして,A町長は,本件公金支出について,専決権者に対して違法な支出をすることを阻止すべき指揮監督上の義務を有していたのであるから,B課長に対して,地方自治法等の関係法規の修得に努めさせ,本件公金支出を根拠づける法律又は条例の規定が存在するか否か等,地方自治法違反の有無の検討を指示すべきであったにもかかわらず,これを行わなかったものと推認され,その結果,本件公金支出が行われたものといえるから,A町長は,財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,これについて過失があったものというべきである。 以上により,本件公金支出は違法なものであるから,a町には,そのうち,C議員以外の町議会議員21名から返還を受けた分を除いた1万4700円について,損害が生じており,A町長は,過失により違法行為を行った職員として,a町に対して,上記損害及びこれに対する訴状送達の翌日である平成17年7月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金につき,損害賠償責 町長は,過失により違法行為を行った職員として,a町に対して,上記損害及びこれに対する訴状送達の翌日である平成17年7月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金につき,損害賠償責任を負うことになる。 また,B課長は,支出負担行為をする権限を有する職員であり,重大な過失により地方自治法204条の2に違反して本件公金支出を行った者として,a町に対して,同額の損害賠償責任を負う。 さらに,上記1に説示のとおり,本件互助負担金の支出は,本来町議会議員自身が支払うべきものを,同町が代わって支払ったものということができるから,C議員は,法律上の原因なくして1万4700円の利益を受け,そのために町に同額の損失を及ぼしたものといえ,a町に対して,同額の不当利得返還義務を負う。ただし,C議員が,同額について不当利得返還請求を受けこれにつき遅滞に陥ったことを認めるに足りる証拠はなく,上記利益を受けるにつき- 9 -悪意であったとの主張立証はないから,遅延損害金あるいは利息についての支払義務を負うものとはいえない。 第4以上によれば,原告の請求は,被告に対して,A町長に対し1万4700円及び平成17年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求するよう求め,B課長に対し1万4700円及び平成17年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償を命令するよう求め,C議員に対し1万4700円を請求するよう求める限度で理由があるから認容することとし,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判所第1民事部裁判長裁判官福島節男裁判官原道子裁判官松井理恵子- 10 -相手方目録 栃木県塩谷郡a町A 栃木県塩谷郡a町B 栃木県塩谷郡a町C 裁判長 裁判官 福島節男 裁判官 原道子 裁判官 松井理恵子 相手方目録 栃木県塩谷郡a町A 栃木県塩谷郡a町B 栃木県塩谷郡a町C

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