平成18(わ)1704 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年兵庫県条例第66号)違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年11月30日 大阪地方裁判所
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判決文本文22,825 文字)

主文 被告人は無罪。 理由 第1本件公訴事実本件公訴事実は被告人は平成18年3月8日午後9時30分ころから同,「,日午後9時45分ころまでの間,兵庫県姫路市内の西日本旅客鉄道株式会社山陽新幹線姫路駅付近から同県神戸市内の同線新神戸駅付近の間を進行中の博多駅発名古屋駅行き「のぞみ38号」の6号車客席において,乗客の甲(当時25年)に対し,左手でその左乳房を着衣の上からわし掴みにして触るなどし,もって,公共の乗物において,人に対して,不安を覚えさせるような卑わいな言動をしたものである」というものである。 。 第2本件争点弁護人は被告人が甲以下被害者というの乳房を着衣の上からわ,,(「」。)し掴みにして触るなどしたという公訴事実記載の行為をしたことはなく,被告,,。 人は無罪であると主張し被告人もこれに沿う供述をするので以下検討する第3証拠上認められる事実,,(),(),被告人の公判供述証人甲の公判供述捜査報告書甲2回答書甲10捜査関係事項照会書謄本(甲13,同回答書(甲14,任意提出書写し(弁))1,領置調書写し(弁2,写真撮影報告書写し(弁3)及び鑑定書写し(弁))4)によれば,以下の事実が認められる(なお,原則として,平成18年3月8日の出来事については時間のみを示し,同月の出来事については日にちのみを示す。 。) 被告人の身上経歴等(1)被告人は昭和47年3月に大学卒業後同年4月に総合スーパーに就職,,したが,その後,平成49年に同社を退社し,父が経営している株式会社乙商店に入社し,平成59年に代表取締役社長に就任し,現在に至っている。 乙商店は,乾ししいたけ等の乾物を取り扱う卸業であり,年商は約3億5000万円,従業員はパートを含めて24名で いる株式会社乙商店に入社し,平成59年に代表取締役社長に就任し,現在に至っている。 乙商店は,乾ししいたけ等の乾物を取り扱う卸業であり,年商は約3億5000万円,従業員はパートを含めて24名である。 (2)被告人には昭和50年に結婚した妻と長女長男次男の3人の子があ,,,り,神戸市内において,母親,妻,長女,長男との5人で生活していた。 本件事件に至る状況(1)本件事件が発生したのは博多発名古屋行き16両編成新幹線のぞみ,,「38号(700系(以下「本件列車」という)の6号車(以下「本件車」),。 両」ともいう)内である。同車両は指定席であった。 。 (2)本件列車の車両内には通路を挟んで3人掛けの席と2人掛けの席があ,,った。 新幹線700系の,車両内床面から座席背もたれ最上部までの高さは,リクライニング固定時で1075mm,リクライニング最大傾斜時で995mm,車両内床面から座布団上面までの高さは,430mmである(背もたれの高さは,座布団上面から背もたれ最上部まで,565mmないし645mm程度となる。2人掛け用座席は430mm,当該座席前後の幅は590。)mm,2人掛け用座席の各座席の左右の間隔は50mmである。車両内の通路の幅は,600mmである。シートは通常の状態で,垂直から4°後ろに傾いており,更に,リクライニングの最大傾斜角度は,それから更に26°±1°(垂直からは30±1°)である。 (3)本件列車は午後7時22分に博多駅を発車したその後の停車駅及び発,。 車時刻は,小倉駅午後7時40分,新山口駅午後7時59分,広島駅午後8時33分,岡山駅午後9時10分であった。本件列車は,その後,午後9時28分から30分まで,姫路駅で臨時停車し,午後9時45分に新神戸駅に ,小倉駅午後7時40分,新山口駅午後7時59分,広島駅午後8時33分,岡山駅午後9時10分であった。本件列車は,その後,午後9時28分から30分まで,姫路駅で臨時停車し,午後9時45分に新神戸駅に到着し,午後10時ころ,新大阪駅に到着した。京都駅には,午後10時13分ころ,列車が到着する予定であった(本件当時,姫路駅で臨時停車したため,2分30秒遅発し,時刻表より2分30秒から4分遅れで運行されて いた。 。)(4)被害者は午後7時22分ころ博多駅から本件列車の6号車後ろから,,,3列目の3D席に乗車した。同女は,京都まで乗車する予定であった。同女の当時の服装は,薄手の赤いセーターに,下はジーンズとスニーカーで,上から黒いジャンパーを羽織っていた。 (5)被告人は午後7時40分ころ小倉駅から本件列車の6号車3E席に乗,,車した。本件列車の座席は,車両進行方向に対して垂直に配置されたクロスシートであり,通路と挟んで2人掛け用座席と3人掛け用座席があった。3D席と3E席は隣り合っており,2人掛け用座席であった。3E席が,窓側の席であった。その時の被告人の服装は,スーツを着用し,ネクタイを締めて,腕にコートをかけていた。ワイシャツは黄色であった。 (6)被告人はのぞみ38号に乗車したときすでに大分から乗った日豊本,,,線の特急の車内において,大分駅で購入した缶ビール(350ml入り)1本とワンカップの日本酒を1本飲んでいた。被告人は,弁当とワンカップ日本酒1本をのぞみ38号に乗車後,小倉駅を出発してから飲食した。 ,(,,(7)当時の車内はある程度乗客がいる状況で乗車率は被害者供述では七八割被告人供述では6割被害者の座席から通路を挟んですぐ横や斜め前,),に乗客が座っていた。 本 た。 ,(,,(7)当時の車内はある程度乗客がいる状況で乗車率は被害者供述では七八割被告人供述では6割被害者の座席から通路を挟んですぐ横や斜め前,),に乗客が座っていた。 本件事件は,午後9時30分ころから同日午後9時45分ころまでの間に,姫路駅から新神戸駅に向かい走行中の車内において発生した。 その際の状況については,争いがある。 本件事件直後の状況(1)被害者は声を上げその際の同女は被告人に対して非難するような様,,,子であった。また,この言葉と前後あるいは同時に,被害者は席から立ち上がった。 (2)その当時被害者の通路を挟んだ真横の3C席斜め前の4C席にはそれ,, ぞれ他の乗客が座っていた。被告人及び被害者の真後ろの2D席,2E席は空いていた。 (3)被害者は,同女が座っていた真後ろの席(2D席)に移動して座った。 (4)このころ被告人は被害者に対しどうしたのかというような言葉を,,,,掛けた。 (5)同日の車掌乗務報告には「21:40頃,40代男性から6号車3番D,席の女性が,3番E席の男性(50代)から触られ泣いているとの申告があり,現場へ行ったところ,3E席の男性は寝ているようだったので起こし事情を聞いたところ,自分は触っていないと主張,女性は触ったと主張されるので,新神戸停車間際のため対応が出来ないと思いおふたりに新大阪駅での降車をお願いすると(男性は新神戸,女性は京都までの乗車予定)おふたり,」共承諾されたので新大阪でJR東海丙社員と他1名鉄警2名に引き継いだとの記載がある。 ,,。 (6)車掌は被告人を起こした後被害者と被告人を前方の車両に移動させた その後の状況(1)被告人は新大阪に着き下車したところ数名の警察官がおりそのまま いだとの記載がある。 ,,。 (6)車掌は被告人を起こした後被害者と被告人を前方の車両に移動させた その後の状況(1)被告人は新大阪に着き下車したところ数名の警察官がおりそのまま,,,駅構内にある交番に行き,さらにその後,午後11時ころに,淀川署に行った。 ,,(2)午後11時38分ころから42分ころまでの間淀川警察署内において被告人に対し,微物鑑定のため両手から微物採取が実施された。 ,,,。 (3)被告人は8日当日に逮捕され10日に勾留され29日に起訴された,。 ,(4)24日付けで前記微物鑑定の鑑定書が作成された微物鑑定の資料は約7.1×12.7cm大,約7×12.6cm大,約7×11cm大及び約7×107cm大のゼラチン紙4枚により採取された微物資料1並. (),びに,被害者が事件当時着用していた赤色セーター(資料2)であった。資料2は,顕微鏡下で検査を実施したところ,その構成繊維は,赤色木綿,赤 色絹,赤色獣毛であった。資料1について,拡大鏡下及び顕微鏡下で検査したところ,単繊維の付着がみられたが,資料2の構成繊維は確認されなかった。 第4被告人及び関係者の供述 被害者の供述要旨被害者は,当公判廷において,要旨以下のとおり供述する。 (1)私は,本件以前に痴漢被害に遭ったことはない。 私の身長は170cmくらいである。 (2)私は本件当時京都市内のコーヒー屋でアルバイトをしていたが3月2,,,。 0日でアルバイトを辞め同月24日からアメリカに留学する予定であった私は,3月上旬,百貨店でコーヒー豆を売るという催事があり,約1週間,京都から福岡まで出張に行っていた。 ,,。 ,仕事は事件前日までで前日の睡眠時間は8時間以上あった事件当日アルコール た私は,3月上旬,百貨店でコーヒー豆を売るという催事があり,約1週間,京都から福岡まで出張に行っていた。 ,,。 ,仕事は事件前日までで前日の睡眠時間は8時間以上あった事件当日アルコールは飲んでいなかった。 事件当日は,日中友達と会ったり福岡をうろうろしたりしていた。 (3)被告人が小倉駅から乗車した際,乗車券を片手に持って席を探していたが,席を探していて間違った席に行きそうになったときの反応が大げさで,私は「ちょっとリアクションが大きい」,「ちょっと変だな」という印象,。 。 を受けた。 被告人は,年齢60代で,身長は175cmから180cm,ベージュっぽい色のロングコート,茶色かグレーぽい色かのスーツ姿で,一見して重役クラスの会社員風であったが,顔が赤く,酔っぱらっているようだった。 ,「,『。』。」私の警察官調書に被告人が私の隣の席に座り私は最悪と思ったという記載があるのであれば,私はそれほど強い気持ちはなく,小さなことでも「最悪」というのはよく言うので,そののりで言ったのかも知れない。 隣の席が男性であれば寝るのに気を許せないので,女性に隣に座って欲し いと思っていた。 被告人に対して,いい印象はなかった。 被告人と,これまで面識はなかった。 (4)被告人が隣の席に座ったことで,疲れていたので寝るかも知れないと思い,盗まれないよう用心のために,足下に置いていたかばんを膝の上に載せた私はかばんを抱きかかえるようにしていた。かばんはへそよりも上ぐら。 ,いのところまで来ていたが,かばんの上端は胸の中心から10cmくらいまではあった。かばんの大きさは底の縦横が6ないし7cm×40cm高さ,,が30cmくらいであった。 (5)その後,私はすぐに居眠りを始めた。ほとんどずっと寝ていた前日の睡眠。 時 くらいまではあった。かばんの大きさは底の縦横が6ないし7cm×40cm高さ,,が30cmくらいであった。 (5)その後,私はすぐに居眠りを始めた。ほとんどずっと寝ていた前日の睡眠。 時間は8時間以上あり,睡眠不足ということはなかったが,日中友達と会ったり福岡をうろうろしていた疲れで寝てしまった。アルコールは飲んでいなかった。 被告人のテーブルに酒のカップとつまみのようなものが見えたこと,広島駅及び岡山駅に着いたことは覚えている。目を覚ましつつ寝ていたという感じだった。広島を過ぎたときに自分が降りる京都までそんなに時間はかからな,いという意識があったので,乗り過ごさないようにと思っており,浅い眠りだったが,姫路駅に臨時停車したことは,記憶にない。 事件まで,被告人と会話はしていない。 (6),。 (7)事件当時私の席の通路を挟んで隣の3C席には男性乗客が座っていたその隣の3B席にも誰か座っていたと思う。3A席に人が座っていたかは覚えていない。私の席の前の4D席には誰か座っていた。4E席は覚えていない。4C席には,男性が座っていた。4A席,4B席にもたぶん誰か座っていた。後ろの2Aないし2E席は空いていたと思う。 (8)私はシートをたぶん出来るだけ下に倒していたと思う肘掛けは下,,。 ,げていた(ただし,3月21日付け実況見分調書(甲5)には,少し座席を 倒していたと被害者が指示説明した旨の記載がある。 。),,。 (9)私は寝ていたところ左胸を触られる感触があったので目を覚ました触られている感触は,そんなに力強くなく,手が包み被さる感じであった。 そのとき,私は,背もたれにもたれて,顔を下に向けていた。 目を開けたところ,手が私の胸を触っているのが見えた。その手は,指が開いて,曲がっており,軽 そんなに力強くなく,手が包み被さる感じであった。 そのとき,私は,背もたれにもたれて,顔を下に向けていた。 目を開けたところ,手が私の胸を触っているのが見えた。その手は,指が開いて,曲がっており,軽く触った感じではなく私の左胸を包み込む感じであった(被害者は「乳房の形に合うような形で曲がっていたのか」という,。 問いに「はい」と答えている。わし掴みというほど力強くなかった。押,。 。)し付ける感じはなかった。深い眠りの途中では気付かないくらいの強さだったつかむという感じでもない表面にぴたっと当てる感じだったというく。 (「らいか」という問いに「そうですね」と答えている。 。 ,。 。)その手は左の方向から伸びていた。後から思い出すと,親指が見えたような気がするので左手で触られていたと思う。 私はびっくりして,声を出してのけ反る感じになった。目を覚ましてからのけ反るまでの時間は,二,三秒だと思う。私はその間,夢かと思ったが,感触があり,ちゃんと見えていた。今までそんなことをされたことがなく,ショックだった。 その手に指輪や腕時計は見えなかった。服の袖は見えたが,色は覚えていない。手のひらは見えた。 私が目を覚ましたとき,被告人の背は背もたれから外れ,その顔が私から50cmくらい離れたところにあり,こちらを向いていた。被告人が目を閉じていたか,開いていたか分からない。顔ははっきりとは見ていない。そのときには,被告人が起きていたかどうか分からない。 (10)私はわっと声を出して座っていた位置から右にのけ反り体を窓,「」,,。 ,,側へ向けた窓側に座っていた被告人は身体は完全に私の方を向いており肩の高さくらいまで左手を曲げて上げていた弁護人の大げさなアクショ(,「 ンで,えっと言いながら両手を広げて ,。 ,,側へ向けた窓側に座っていた被告人は身体は完全に私の方を向いており肩の高さくらいまで左手を曲げて上げていた弁護人の大げさなアクショ(,「 ンで,えっと言いながら両手を広げて万歳をするようなポーズで窓側に体を。」,。」,「。」のけ反らせていたとあるが間違いないかとの問いに対してはいと答えている。 。)(11)通路を挟んだ3C席やその1つ前の4C席から丸見えの状態だった。 (12)被告人が「何,どうしたん」と言ってきたので,私は席から立ち上が,。 って「この人痴漢です」と叫んだ。 ,新幹線の中はしいんとしていた。 通路を挟んだ隣の3人掛けの席に座っていた男性がこちらを見たが,読んでいた雑誌にすぐに目を戻して,何もしてくれなかった。誰も反応してくれなかった。被告人は寝ているような感じの体勢に入った。被告人が目をつぶっていたかどうかは分からない。 (13)私は,座っていた座席の後ろの席が空いていたので,そこに座った。私がパニック状態になっていると,前の席に座っていた男性が大丈夫と声を掛けてくれたので,私は泣き出した。 (14)その男性が車掌を呼びに行ってくれたので,車掌が来た。車掌が被告人を起こして「この方に痴漢されました」と被告人に聞いた。すると,被告,。 人は,後ろの席に座っている私の席に身を乗り出して「おれが何したん」,。 と言った私はとぼける気ですかと言ったが被告人は何をしたか言。 「。」,「。」。 ,,ってと言った私はそれに対してもう被告人の顔も見たくなかったので「こっち見ないでください」と言った。 。 (15)その後,車掌が1番前の車両に移動して欲しいと言ってきたので,車両,,。 を移動している間被告人はトイレか洗面所で立ち止まったことがあった で「こっち見ないでください」と言った。 。 (15)その後,車掌が1番前の車両に移動して欲しいと言ってきたので,車両,,。 を移動している間被告人はトイレか洗面所で立ち止まったことがあった,。 。 時間は10秒くらいだと思う手を洗っているところを見たわけではない(16)胸をつかんでいる強さを,私が,警察官に伝えて,再現をしたところ,「。」。 「」調書には強くつかんでいたと書かれた警察官の調書ではわし掴みとなっているが,私が「わし掴み」という言葉を出したわけではなく,わし 掴みという言葉は強過ぎる。警察の表現ではそういうものなのかと思って,調書には署名押印した。被告人がトイレか洗面所で立ち止まったことは,警察でも,再現をしたときも言ったが,警察官には,そこは大したことないという感じで聞き流されてしまった。 (17)調書を作成したときは,微物鑑定の結果を知らなかったが,現在(公判での証言時)は知っている。 被告人の供述要旨被告人は,当公判廷において,要旨以下のとおり供述する。 私は右耳が悪く右後ろか(1)私の身長は 5cmくらいである,. 。 ,,らの声は聞きにくい。 (2)私は事件当日早朝に新幹線で新神戸を出発し小倉を経由して大分,,,,市まで行き,業界団体の会議に出席した。午後6時ころ大分市を出発し,小倉から本件列車に乗車した。睡眠時間は,いつもより少し短かった。 本件列車で席を探す際,大げさな仕草や大きなリアクションをしたことはない。飲酒しているときでも,他人からそのように言われたことはない。 ,,(3)私は小倉から新幹線に乗車した後,朝早くからの出張で疲れていたことビールと酒を飲んでいたことから新山口駅を出たあたりで,眠り始めたそ,。 の後姫路駅の手 に言われたことはない。 ,,(3)私は小倉から新幹線に乗車した後,朝早くからの出張で疲れていたことビールと酒を飲んでいたことから新山口駅を出たあたりで,眠り始めたそ,。 の後姫路駅の手前で目を覚ましてトイレに立ったが,その後はまた寝てしま,ったトイレに立った際,被害者は眠っているようだった被害者が膝の上に。 。 カバンを抱えていたかどうかは覚えていない。姫路駅で臨時停車したことは覚えているが,発車したことは覚えていない。 (4)本件当時3C席には男性が座っており3B席は分からないが3A席,,,には誰か座っていたと思う。私の前の4E席には誰か座っていた。多分男性だと思う。4D席は空いていた。4C席は男性が座っていた。4B席,4A席は覚えていない。後ろの2D席,2E席は空いていた。2C席は覚えていない。2B席,2A席は人がいたような感じがする。通路を挟んで真横と斜 め前の3C席,4C席ともに男性乗客が座っており,彼らが横を向いたり後ろを向いたりすれば,私と被害者がすぐに見える状況だった。 シートは,少しリクライニングしていたかも知れない。 (5)その後,何か動きのような,気配のようなものを感じて目が覚めた「こ。 の人かこいつとかのこという声が聞こえた目が覚めたとき,顔も」「」「」。 体も半身で,通路側を向いた状態だった私は上を向いて寝ることが出来な。 ,いというか,寝るときは,足を曲げて,体を横に向けないと眠れない。そういう姿勢になるくせが何十年も続いている。目が覚めたときは,体は横向きで通路側を向いていた。顔も通路側を向いていた。手は膝の上にあった。その前は手がどこにあったか分からない。手を挙げていたことはない。 私が窓の方にのけ反って,手を上げたことはなかった。 (6)検察 で通路側を向いていた。顔も通路側を向いていた。手は膝の上にあった。その前は手がどこにあったか分からない。手を挙げていたことはない。 私が窓の方にのけ反って,手を上げたことはなかった。 (6)検察官調書には「寝返りを打った際,左右どちらかの手が女性の胸に当,たったかもしれない」との記載がある。寝ていた以上,寝返りで当たった可能性がないとはいえないが,手が勝手に上がって女性の胸を触ったということは考えられない。 (7)被害者が「こ」というような声を出したとき,被害者は,立ち上がろう,としていた。被害者は,私の方を見て非難めいたような雰囲気の顔をしていた。被害者が後ろの座席に座り,何か異様な感じがしたので,後ろを振り向いて,何があったのという感じの声は掛けたと思う。しかし,彼女が何を言っているのかは聞き取れなかったその後,関わり合いになりたくないという感じ。 で前を向いた。後ろにいた同女が泣いていたかどうかは,分からない。 。 ,。 (8)その後,車掌が座席の方に来たそのとき,私は前を向いて座っていた寝たり,寝たふりはせず起きていたが目をつぶっていたかどうかは分から,,ない車掌から後ろの女の人が迷惑を掛けられたと言っているので,新大阪。 「まで来てください」と丁重に言われた。私は,寝ていたので,頭が当たったとか,その辺を,大げさに言って騒ぎ立てる感じかと思っていたので,駅で 説明すればすぐ分かって帰れるという気持ちでもあったので,新大阪で降車することに応じた。車掌からは,痴漢したかどうかは,聞かれていないし,自分からも聞いていない。 (9)車掌に従って,前の車両に移動したが,その間,トイレか洗面所に立ち寄ったり,手を洗ったりしたことはない。 (10)新大阪駅の交番でも,何をしたのかということは聞かされなかっ も聞いていない。 (9)車掌に従って,前の車両に移動したが,その間,トイレか洗面所に立ち寄ったり,手を洗ったりしたことはない。 (10)新大阪駅の交番でも,何をしたのかということは聞かされなかったし,何でここに座っていなければいけないのか,何のために交番に連れてこられているのかも聞かなかった。その後に警察署に行くとは思いもよらなかった。淀川警察署で初めて痴漢の容疑だと聞いた。 (11)寝返りをうった際に手が被害者の胸に当たった可能性がないとは言い切れない。私が左手で被害者の胸をわざと触ったと誤解されるような触れ方をしたことは絶対にない。 (12)痴漢事件の際に,微物採取をされることは知らなかった。 (13)逮捕されてから5日目くらいにポリグラフ検査を受けたが,やっていない以上当然反応は出ないと思っていた。 第5当裁判所の判断 被告人が被害者の胸に触ったかについて,,被害者の被害状況に関する供述はその内容自体具体的かつ迫真的である上前記車掌の乗務報告など他の客観証拠とも整合しているが,その信用性の評価にあっては,弁護人も指摘するように,①就寝中で被害を錯覚した可能性,これに関連して被害状況等についての供述内容の変遷の有無,②被告人に嫌悪感等を抱いていた被害者による虚偽の可能性の吟味が必要である。 (1)被害者が就寝中で被害自体を錯覚した可能性についてアこの点,被害者は,左胸に違和感を感じたのをきっかけに目を覚まし,目をあけると左方向から伸びた手が自分の左乳房を包み込むような感じで触っており,これまで痴漢をされた経験がなく,当初夢かと思ったが,感 触のみならず状況を確認するために一定時間(被害者の公判供述によれば二三秒事実かどうか疑いつつ目でも見て本当にこういうことがある,),,ということにびっくりした 夢かと思ったが,感 触のみならず状況を確認するために一定時間(被害者の公判供述によれば二三秒事実かどうか疑いつつ目でも見て本当にこういうことがある,),,ということにびっくりしたというのであって,特段騒がしかったということはなく,被害者供述によれば静かな状況であったとみられ,他の乗客も多数乗車している車中で,あえて羞恥心を顧みず「痴漢です」などと声を上げた被害者の,その後の行動等も併せ考慮すると,同女が寝ぼけるなどして被害を錯覚していたとは考えにくい。 これに関連して,弁護人は,被害者は,3月8日付け警察官調書では,本件発生当時の被告人の行為について身体ごと私の方に向けてまるで,「,私に覆い被さろうとするかのような勢いで,左手で私の左乳房を力強くつ。」,,,かんでいたと述べていたがその後同月17日付け検察官調書では男の手が…私の胸の前に伸びたままの状態だったのでしたとして覆「。」,い被さる云々は消え,被告人の左手だけが伸びてきたように述べており,,,「。 ,さらに当公判廷では包み込む感じ押しつける感じはなかったんで私がもし深い眠りの途中だと気付かないくらいの強さですとその胸を。」,つかんだ強さについても非常に変わってきており,被告人の行為自体についても,被害者の供述は非常に変遷を重ねているものであると主張する。 そして本件当日の同月8日付け警察官調書には左乳房を何か温かい,,「感触のものでわし掴みにされる感触を感じたことから,ふと目が覚めたのです目が覚めた私が最初に見たのは自分の左乳房をジャケット下の。」,「,赤いセーター上からわし掴んで触っている手だったのです被告人が身。」,「,,体ごと私の方に向けてまるで私に覆い被さろうとするかのような勢いで左 は自分の左乳房をジャケット下の。」,「,赤いセーター上からわし掴んで触っている手だったのです被告人が身。」,「,,体ごと私の方に向けてまるで私に覆い被さろうとするかのような勢いで左手で私の左乳房を力強くつかんでいたとの記載がありまた同月1。」,,7日付けの検察官調書には男の左手が伸びて私の左乳房を左平手を押し,「つけるように触っているのがまさに10センチか15センチ程の距離に見えたのでした。わし掴みという表現の方がいいかも知れません。女性の乳 房の弾力を手の平で感じ取るような触り方でした男の手が私の左胸を。」,「,。」押さえるような感じで私の胸の前に伸びたままの状態だったのでした,「」,との記載はあるものの覆い被さるなどと表現はなくなっていること公判段階では触っていた手について軽く触った感じではなく私の左乳,,「房を包み込む感じであった「わし掴みというほど力強くなかった,。」,。」押し付ける感じはなかった深い眠りの途中では気付かないくらいの「。」,「強さだった」と供述しており,供述に変遷が認められる。 。 しかしながら,他方,被害者の上記捜査段階の供述については,わし掴みや力強いといった表現がなされる一方で,目をさました際の状況について,左乳房に「何か温かい感触のもので」わし掴みされる感触を感じ,ふと目を覚ましたとか,左胸に「違和感を覚えた」ので,閉じていた瞼を開けたなどという表現もされており,被害者は,当初の胸を触れた感触が,特に痛みを伴うような強い力や,手で掴まれたとはっきりわかるようなものでなかったことも同時に供述している。 この点被害者は公判においてわし掴みとの表現について私からわ,,,「し掴みという言葉を出したわけではない私が説明した れたとはっきりわかるようなものでなかったことも同時に供述している。 この点被害者は公判においてわし掴みとの表現について私からわ,,,「し掴みという言葉を出したわけではない私が説明したことを警察官の。」,「方がそう書いて,私は警察の表現はそういう表現なのかなって思いましたと供述しているが上記のように同一調書内でも胸を掴まれた際の力。」,,,の程度等にニュアンスの違いがあること実況見分時に撮影した写真では被害者は手指を広げて曲げる形で触られている様子を再現していること,この種事案では触り方として「わし掴み」という定型的表現が使用されることが想定されること前記の検察官調書では左手平を押し付けるよう,,「に触っている」という通常わし掴みという表現が当たらないような触り方についてもわし掴みという表現の方がよいかも知れませんと記載され「。」ていることにかんがみると,わし掴み等の表現は,取り調べにあたった警察官が同表現を使ったこと,検察官もそのような警察官調書の表現を前提 に同表現を検察官調書にも録取したことが推認でき,この点についての供述の変遷はそれなりに合理的な説明がされているといえる。 また,そもそも胸を触った力の加減等につき正確なニュアンスを表現することは必ずしも容易でなく,取調べにあたった者によっても録取の際の表現に差異があることを考慮すると,①被害者が,左胸を包むような感触から目を覚まし,目で確認すると左方から被告人の手が伸び,指を開いた掌で同女の左乳房を包むような感じで触っていたこと,及び②被害者は経験したことのない出来事に状況が飲み込めず,しばらくの間(公判においては被害者は自分の感覚では二三秒であったと述べるその状態の被告,),人の手を見て確認したという,供述部分について 害者は経験したことのない出来事に状況が飲み込めず,しばらくの間(公判においては被害者は自分の感覚では二三秒であったと述べるその状態の被告,),人の手を見て確認したという,供述部分については,捜査,公判を通じ被害者の供述は一貫している。 もっともこれに対し被害者が当初供述していた被告人が身体ごと,,,「私の方に向けて,まるで私に覆い被さろうとするかのような勢いで,左手で私の左乳房を力強くつかんでいたとの点は取調べの際に警察官の方。」,から使用した表現とは認め難く,被害者が当初は,実際の被害よりも過大に供述していた可能性は否定できない。 しかし,事件直後の被害者が,被害感の強さから,被害の程度を過大申告することは心情としては無理からぬところもあり公判では腹立たし,,「い気持ちもあるがもうかかわりあいになりたくないという比較的冷静,。」な心境で供述しているとうかがえる。被害者が,事件後被告人を恐れるよ,,うな言動も示していたところ前記供述にはそのような恐怖心も反映され当時は被害状況を過大に表現したとみる余地もある。 そうすると,この変遷にも一応了解可能な理由があるといえるのであって,供述内容が次第に付加されているとか,被害が大げさになっていくような場合と異なり,この点の供述の変遷が,前記のとおり一貫している,短時間,被告人の指を開いた手が,弱い力で触っている状態にあったとい う供述部分の信用性を否定するほどのものとまではいえない。 イまた弁護人は①被害者がこの人痴漢ですと立ち上がった際の被,,「。」告人のリアクションについて,挙げた手が両手だったか片手だったかで供述に変遷がある,②被害者は,その後,被害者が一つ後ろの座席に移っただけで,ほかの車両等に行かなかった理由を,元の ,,「。」告人のリアクションについて,挙げた手が両手だったか片手だったかで供述に変遷がある,②被害者は,その後,被害者が一つ後ろの座席に移っただけで,ほかの車両等に行かなかった理由を,元の座席にかばん等があったからであると公判で述べているが,捜査段階の実況見分ではかばんを持って移動していることから供述が変遷している,③車掌の求めに応じ,先,,頭車両に移った際被告人がトイレとか自動販売機とかおいてある車両で立ち止まっているのが見えた旨述べているが,捜査段階ではそのような供述をしていない点等を指摘し,被害者供述の信用性を弾劾している。 しかしながら,①については,捜査段階の取調べや実況見分,公判での主尋問,反対尋問と繰り返し事情を聞かれる中で,特に両手か片手かを正確に再現するよう質問されなければ,被害者が常に両手だったか片手だったかを意識的に区別し正確に供述することは困難であったともみられ,この点の食い違いから,被害者の供述全体が虚偽であるとはいい難い。 ②についても,被害者は,本件の際,1週間ほどの出張の帰りで,膝上に抱えたかばん以外に座席の足下に衣服等の入った大きいバッグ等を置いていたというのであって,後ろの席に移った際にはこれらの荷物はそのままであったことがうかがわれるところ,捜査段階での実況見分の際には,これらの荷物までは再現されておらず,同見分における被害者の言動と公判供述との齟齬から被害者供述の信用性を否定せしめるものではない。 ③についても,被害者は捜査段階では,先頭車両に移動した状況について詳しく聞かれた形跡はなく,この点について捜査段階での供述がないことを捉えて,公判供述を虚偽とは断じ得ないし,被害者の公判供述も,検察官から途中皆どこも立ち寄らずにまっすぐ先頭車両に行ったのかと,「」聞かれた際,被告人の 点について捜査段階での供述がないことを捉えて,公判供述を虚偽とは断じ得ないし,被害者の公判供述も,検察官から途中皆どこも立ち寄らずにまっすぐ先頭車両に行ったのかと,「」聞かれた際,被告人のことが怖かったので,先行する被告人を確認しなが ら距離を置いて進んだこと,途中被告人が立ち止まっていたので,怖くなってすぐに隠れたことを述べた中での供述であること,また特に被告人が手を洗ったところなどはみていないという供述内容にとどまること,そのほかには微物が検出されなかったことを説明するような事情は付加していないことなどにかんがみれば,被害者が微物鑑定の結果などを意識して,被告人にあえて不利な供述を行っているとまでは認められない。 ウ以上によれば,被害者の供述の変遷に関する弁護人の主張はいずれも採用できない。 (2)被告人に嫌悪感等を抱いていた被害者による虚偽の可能性について弁護人は,被害者が,被告人について,乗車してきた時から「その仕草がちょっと大げさというか,リアクションが大きな人だったので,私は,身なりはちゃんとしてるのに,何か変だなという印象をもったのです「動作が」,大げさな人だったので何か変な人だなあという印象を持ちました。でしたから,あんな人が側に来たら嫌だなあと思っていました」と述べたり,被告人が自分の隣席に着席すると「私は変な人が自分の隣に座ってきたので,なんか嫌やな,注意しとこうと思ったのです「すると,私の気持ちに反し,そ」,の男が私の隣E席に着席したのでした。正直言って『さいあく』という気持ちでした」などと捜査段階で述べている点を捉え,被害者が被告人の乗車時から被告人に対して,強い偏見と嫌悪感を抱いていた点を指摘しており,このことからは被害者が針小棒大に被害を述べるなど,その信用性評価にあたっては,こと 階で述べている点を捉え,被害者が被告人の乗車時から被告人に対して,強い偏見と嫌悪感を抱いていた点を指摘しており,このことからは被害者が針小棒大に被害を述べるなど,その信用性評価にあたっては,ことさら被告人に不利な供述をしている可能性も一応疑われる(なお,弁護人は,被害者がこれほどの嫌悪感を抱いていた被告人が,その後,まもなく被害者に対して現に痴漢を働いたという話は,偶然というには,や,。)。 はり不自然といわざるを得ないとするが同見解に与することはできないしかしながら,若い女性である被害者が,酒の入った中年男性と2人掛けの座席で隣同士になることに,いい感情をもたなかったとしても特段不自然 ではないし,ましてや被害者は下車予定の京都まで寝ていこうと思っていたというのであって,隣席は女性を希望したのに当てが外れ,その際のがっかりした心情を,近時の若者がしばしば使う「さいあく」等と表現したとして,。 もこのことから直ちに被告人に異常な嫌悪感を抱いたものとは認めがたいまた,被害者は,当初被告人にいい印象を持たなかったとしながら,特に席を移動することもなく,すぐに寝入ってしまい,広島駅や岡山駅で目を覚ました以外,本件までずっと熟睡していたことからも,被告人への嫌悪感が特に異常なものでなかったことがうかがえる。 加えて,被害者は被告人とは本件まで全く面識がなかったことや,被害者が本件後まもなくアメリカへの留学を控え,できれば警察沙汰に巻き込まれるような事態は避けたい状況であったことなどを考慮すると,被害者が,単なる被告人への嫌悪感等からあえて虚偽供述をしたとは考えられず,被害について確信がないのに留学先のアメリカから一時帰国してまで本件公判で証言したとも考えられない。 よって,この点の弁護人の指摘は採用できない。 (3)微物鑑定の結果 偽供述をしたとは考えられず,被害について確信がないのに留学先のアメリカから一時帰国してまで本件公判で証言したとも考えられない。 よって,この点の弁護人の指摘は採用できない。 (3)微物鑑定の結果について本件では,微物鑑定の結果,被告人の手から被害者の着衣の繊維が検出されていないが,①事件があったとされるのは,午後9時30分ころから午後9時45分ころ車掌報告によれば午後9時40分から数分間以上前とみられるで(,。)あり,微物鑑定のための微物が採取されたのは,午後11時38分ころから午後11時42分ころまでであって,事件から採取まで,約2時間が経過していること②被告人の公判供述によれば,被告人は,車掌が来た後,車内や警察署まで,自分のコートとかばんを持って移動しており,その間,左手がどこに,,も触れないようにしていたことはなくセカンドバッグを左脇にかかえて 底を左手で支えるようにして運んでいたこと③被害者の供述によっても,接触の程度は弱いことにかんがみれば,微物である衣服の繊維が手に付着したとしても,微物採取までにこれが取れてしまっていても特段不自然ではなく,微物鑑定で微物が検出されなかったことは,被告人の手が被害者の胸に触れたことを否定し得るものとはいえない。 (4)以上によれば被害者の公判供述によっても本件公訴事実のように被,,,告人が被害者の左乳房をわし掴みにして触った事実は認められないものの,本件の際,被告人が,指を開いた掌で同女の左乳房を,少なくとも二,三秒以上の間,触れていたことが認められる。 故意があったか否かについて,,前記のとおり被告人の左手が被害者の胸に触れたことは認められるところ被告人は,捜査,公判を通じ,本件当時,寝ていて,気配のようなものを感じて目を覚まし れる。 故意があったか否かについて,,前記のとおり被告人の左手が被害者の胸に触れたことは認められるところ被告人は,捜査,公判を通じ,本件当時,寝ていて,気配のようなものを感じて目を覚ましたところ,被害者が「この人」とか言うような声を発して立ち上がろうとしていた旨供述しており,同供述を前提とすると,被害者が胸を触られた当時,被告人は寝ていて胸に触れる認識がなかったことになる。 そこで,被告人が故意に,被害者の胸に触れたか否かが問題となるので,この点について検討する。 (1)故意認定にプラスに働く事情①前記のとおり,被告人は,指を開いた掌で被害者の左胸を包むような感じを被害者が受ける形で,少なくとも二,三秒間触れていたもので,この態様からは,一般的には,被告人が故意に被害者の胸を触ったとみるのが自然とみられる。 ②被害者は,本件当時寝ていたもので,被告人供述によっても,被告人は姫路駅停車前ころに被害者が寝ていたことを認識していたものと認められるから,以下の点に照らすと,被告人が被害者の熟睡を利用し,被害者に 気付かれないようにその胸を触ることが一般的に想定し得る。 ア車内は6ないし8割の混み具合であり,特に立っていた乗客もいなかったとみられる上,本件は午後9時30分ころに姫路駅を発車し同45分ころ新神戸駅に到着する約15分ほどの間に発生したが,本件後新神戸駅に到着するまでの間に被害者が被害を申告し,付近の乗客が車掌を呼びに行き,車掌が被告人及び被害者に事情を聞くなどした時間があったことを考えると,被告人の手が被害者の左胸に触れたのは姫路駅を発車後さほど時間が経過しておらず,新神戸駅到着まで一定時間かかる時点であったとみるのが自然であり,特に下車等のため通路を頻繁に人が通るような状況があったとはみられないことイ被害 たのは姫路駅を発車後さほど時間が経過しておらず,新神戸駅到着まで一定時間かかる時点であったとみるのが自然であり,特に下車等のため通路を頻繁に人が通るような状況があったとはみられないことイ被害者は岡山駅到着(午後9時10分)以降は,その後の記憶がない程度に寝入っており,被告人供述によれば,被告人が姫路駅の到着前にトイレに行き席に戻るなど被害者の前を出入りしたが,被害者はこれに全く気付いておらず,その際被告人も被害者が寝入っていることを認識していたと認められることウ本件車両の座席は,通路を挟んで3人掛けの席と2人掛けの席が進行車両内床面から座席背もたれ方向に垂直にならぶクロスシートであり,2人掛けの座席に並んで座っていた被告人と最上部までの高さ等から,被害者の状況は,シートの背もたれが目隠しとなって,前後からは頭部の様子が見える程度にとどまり,胸の辺りの様子は前後からの視界が遮られていたことエ被害者らの前列では斜め前の4Cの席に乗客がいたことがうかがわれるものの,同席から被告人と被害者の間を見るためには左後ろを振り返らなければならないことオ被告人及び被害者の供述からは被害者らの後列(第2列)には誰も座っていなかったと認められること カ被告人らのいた第3列では,通路をはさんで被害者の隣の3Cに男性の客がいたと認められるものの,被害者の公判供述によれば,同人は雑誌を読んでおり,被害者が「痴漢です」と言ったときにも,一旦被害者と被告人をみたものの結局何もせずに雑誌に目を戻したこと(実際に事件後には前列の4Cの男性が車掌を呼びにいくなどしている)。 キ午後9時30分過ぎの新幹線内であり,被告人や被害者らと同様,長時間の移動で寝入るなどしていた者も多かったとうかがわれること等を併せ考えると,まもなく下車の予定であっ びにいくなどしている)。 キ午後9時30分過ぎの新幹線内であり,被告人や被害者らと同様,長時間の移動で寝入るなどしていた者も多かったとうかがわれること等を併せ考えると,まもなく下車の予定であった被告人が,周囲の者が雑誌を読んだり寝入るなどしていることを認識した上,被害者が目を覚まさないように前記被害者供述のとおり同女の乳房を包むように掌をあてて触ったことが一応考えられる。 ③被告人供述には不自然な点がある。 ア被告人が寝ている際に無意識に被害者の胸に手を触れたとしても,被害者がこれに気付いた後,被告人の手は被害者の胸から離れたもので,この時点では自己の手が被害者の胸に触れたことを認識するのが自然であるところ,被告人は,捜査,公判を通じ,自己の手が被害者の胸に触れた記憶自体がないと供述しており,これは不自然なものとみられる。 ,「,。」イ被告人は車掌から痴漢をしたかどうか聞かれたことはなかった車掌乗務報告に現場へ行ったところ3E旨供述するが同供述は,,,「,席の男性は寝ているようだったので起こし事情を聞いたところ,自分は触っていないと主張,女性は触ったと主張されるので,新神戸停車間際のため対応が出来ないと思いおふたりに新大阪駅での降車をお願いすると(男性は新神戸,女性は京都までの乗車予定)おふたり共承諾されたので新大阪でJR東海丙社員と他1名,鉄警2名に引き継いだ」との記載があることと矛盾するとみられる。 ④小括 以上の諸点,すなわち,一般的には,被告人が故意に被害者の胸を触ったとみるのが自然とみられること,被告人が被害者の熟睡を利用し,被害者に気付かれないように胸を触ることも想定し得ること,被告人供述には不自然とみられる点があることなどのみを併せ考えると,被告人が無意識的に被害者の胸を触った こと,被告人が被害者の熟睡を利用し,被害者に気付かれないように胸を触ることも想定し得ること,被告人供述には不自然とみられる点があることなどのみを併せ考えると,被告人が無意識的に被害者の胸を触った可能性は否定することができ,被告人には痴漢の故意があったものと認定することが可能とも解される。 (2)故意認定にマイナスに働く事情①被害者は,捜査段階においては,被告人は自分の胸をわし掴みにした旨供述しており,これを前提にすれば,被告人が故意に被害者の胸をつかんだことは明らかであるが,被害者は,公判段階においては,わし掴みというほど強くなく,押し付ける感じはなく,指が開いて,曲がっており,胸を包み込む感じであった旨供述しており,その行為態様自体は,わし掴みほど強く行為者の意識性を推認させるものではないとみられる。 ②被告人が眠っていた際に,被害者が公判で供述するような状態で,被害者の胸を触ったことは不自然でない,あるいは,これと矛盾しない以下の事情が存する。 被害者は手の接触のあった当時被告人の顔が被害者の方を向いア,,「,ていたが,顔ははっきりとは見ておらず,被告人が目を閉じていたか,開いていたか被告人が起きていたかどうか分からない旨供述してい,。」ることイ眠っている場合,一般に,指先に力が込められることはないため,指が開いて曲がる状態になるのは不自然ではないとみられることウ被害者は公判で,シートをできるだけ下に倒していたと思うと供述しており,被告人もシートをリクライニングしていたかも知れない旨供述しており,リクライニングの最大傾斜角度は,垂直から約30°後ろに傾いた状態となること 被告人は公判で目が覚めたとき,顔も体も横向きで,通路側を向いエ,,「た状態だった。上を向いて寝ることが出来ないと イニングの最大傾斜角度は,垂直から約30°後ろに傾いた状態となること 被告人は公判で目が覚めたとき,顔も体も横向きで,通路側を向いエ,,「た状態だった。上を向いて寝ることが出来ないというか,寝るときは,足を曲げて,体を横に向けないと寝られない。そういう姿勢になるくせが何十年も続いている。目が覚めたときに両手は膝の上にあった。その前は手がどこにあったか分からないと供述しているところそのよう。」,(,な態勢で本件座席で寝ること自体は必ずしも不自然とはいえずしかも被告人は自ら積極的にそのような態勢を供述したものではなく,公判における被告人質問の後半で,質問に対して答える形で述べたものであ。),,るそのように被告人がやや身体を被害者側に向けて寝ていた状態で左手が身体の移動に伴うなどして被害者側にはみ出た場合,左手が被害者の胸付近に触れること,また,シートの傾きとの関係で数秒程度,その状態が続くこと自体は必ずしも不合理ともいえないことオ本件車両の2人掛け用座席は430mm,当該座席前後の幅は590mm,2人掛け用座席の各座席の左右の間隔は50mmであるところ,被告人の身長は、約178.5cmであり,本件車両の座席は狭いものといえ,もともと被害者と被告人は近接した距離にあったところ,被告人が姿勢を移動するなどして,数秒間,被告人の手が被害者の胸に接触することも想定し得ないではないこと③被告人が被害者の熟睡を利用し,被害者あるいは他の乗客に気付かれないようにその胸を触ることは,以下に照らすと相当に困難とみられる。 ア被告人と被害者は初対面で,会話もなく,被害者が降車する駅を被告人が認識していた事実は見出し得ないところ,姫路駅を発車後,次の停車駅の新神戸駅までは約15分であり,被告人もそれを認識していたので 被告人と被害者は初対面で,会話もなく,被害者が降車する駅を被告人が認識していた事実は見出し得ないところ,姫路駅を発車後,次の停車駅の新神戸駅までは約15分であり,被告人もそれを認識していたのであるから,被告人が被害者が寝ている様子を見たとしても,被害者が同駅で降車するなどのために目を覚ます可能性があることイ胸に手を触れれば,寝ていても目を覚ます可能性は一般に相当高いこ と本件現場は,新幹線の指定席車両内であり,痴漢行為を働けば,通路ウを挟んだ隣の席やその1つ前の席等,周囲の者がたまたま被告人や被害者の席の方向を見れば,容易に犯行を見られ得る状態であり,また,背もたれの高さは,座布団上面から背もたれ最上部まで,565mmないし645mm程度であり,頭部の動きは前後の席から見える上,通路を通りがかった人に目撃されかねない状況にあり,しかも,発覚すれば逃走も言い逃れも一般には困難な状況とみられること(乗降車の間際でなくとも,化粧室などに赴くため,乗客が通路を歩行する可能性は常にあり,これを予想することは困難である)。 ④被告人供述は,以下のとおり,必ずしも不合理とはいえない点がある。 ア被告人の手が被害者の胸に触れたことがあったが,その後,被害者の胸から手が離れたこと,及び,被告人供述によっても,被害者が声を発するころには目が覚めたことに照らすと,被害者の胸に自己の手が触れたことや被害者の供述するような手を上げるリアクションをしたこと自体記憶していないのは不自然ともみられることについてa)被害者は,公判では「触っていた手をこう上に上げていました」,。 と片手を挙げていたかのように述べる一方調書によると…両手を,「,広げて万歳をするようなポーズで窓側に体をのけ反らせたのですとあ,。」,「。」るんです 上に上げていました」,。 と片手を挙げていたかのように述べる一方調書によると…両手を,「,広げて万歳をするようなポーズで窓側に体をのけ反らせたのですとあ,。」,「。」るんですけどそれは間違いないですかという質問に対しはいと答えている。 そして被害者の検察官調書では男はその両手を肩位置付近ま,,「,で上げて,万歳するかのようなリアクションをしながら,私と逆方向の窓の方に体をのけ反らせたのでしたと述べていたが被害者が立。」,ち会い指示説明をした実況見分調書においては,被告人は,左手だけ,。 を上に上げ右手はへその辺りへ折り曲げたような姿勢になっている 以上によれば,本件接触後の被告人の体勢についての被害者の供述には変遷があり,この点については,正確に認識,記憶していたか疑問があることb)被害者は,公判で,被告人の手が離れ,被害者のいうリアクションをした時点で,被告人の目が開いていたか否かについては明確な供述をしていないことc)ある程度の眠りに入って,被害者の挙動などから反射的に手が移動することが全く想定し得ないとまではみられないことd)ある程度疲労した上に,飲酒した後の眠りから覚めた直後の自身の手の位置や体位について,正確に認識,記憶することは困難な側面もあることなどに照らすと,被告人が,前記の動作を反射的に行い,明確に認識,記憶し得なかった疑いを否定することができるかは問題である。 イ被告人の車掌から痴漢をしたかどうかは聞かれなかった旨の供述「。」が,車掌乗務報告の記載と矛盾する点についてa)同乗務報告には,単に「事情を聞いた」との記載があるのみで,具体的に「痴漢をしたか「触ったかどうか」を聞いた旨の記載はな。」,。 いことb)被害者は公判において被 盾する点についてa)同乗務報告には,単に「事情を聞いた」との記載があるのみで,具体的に「痴漢をしたか「触ったかどうか」を聞いた旨の記載はな。」,。 いことb)被害者は公判において被告人は車掌が話しかけた後おれが何,,,「したんなどと云った旨供述するものの乗務報告にあるように自。」,,「分は触っていないと言ったとは供述していないことに照らすと車。」,掌は乗務報告にあるように40代男性から女性が触られて泣いて,,「いる」との申告を受けて現場へ行ったところ,被告人が「おれが何したんなどと述べたことを触った行為の否定の主張と解釈し乗務報。」,告には「自分は触れてないと主張」と記載した可能性があるともみられること c)被告人は車掌から女の人が迷惑を掛けられたと言っている旨,「。」言われたと供述するところ,このような聞き方も乗客に対する車掌の事情を尋ねる問いかけとしては不合理とはいえないこと(かえって,車掌が乗客に対して直截に触ったかなどといきなり痴漢扱いす,「。」るような聞き方をするか問題がある)。 d)被告人が,この点について,殊更虚偽の供述をなすことが被告人の刑責否定に直結するものともみられないことなどに照らすと,被告人供述が乗務報告と矛盾し,不合理・不自然であるとまではみられない。 ウ被告人は,車掌が来たとき,寝てはいなかったが,目をつぶっていたかどうかは分からない旨供述しており,車掌が,目をつぶっている被告人を寝ているようだと考え,乗務報告に「寝ているようだったので起こし」と記載することは必ずしも不自然ではない。 エなお,検察官は,被告人は,被害者が後部座席に移動した後泣き出す,,という異様な状況であった際それに大きな関心を示さなかったこと うだったので起こし」と記載することは必ずしも不自然ではない。 エなお,検察官は,被告人は,被害者が後部座席に移動した後泣き出す,,という異様な状況であった際それに大きな関心を示さなかったことや被告人が,車掌から「迷惑をかけられている」と言われた際,この内容について問い返すなどしていないなどの供述が不自然である旨主張する。 しかし,被告人は,被害者が自己を非難するような雰囲気であると認識し,関わり合いになりたくないと考えていた旨供述しており,このような場合に,あえて,被害者に興味や関心を示さないようにすること自体は必ずしも不合理と断ずることはできないし,また,被告人が,前記のとおり,寝ていた際に頭などが被害者に当たったことなどについて大げさに言ったと考えていたとすれば,これについて,他の乗客もいる状況で車掌に問い返すなどしなかったことが不自然であるとまではいえない。 ⑤小括,,以上の諸点すなわち前記1で認定した被害者の胸への接触行為自体は公訴事実のわし掴みほど強く行為者の意識性を推認させるものではないこと,被告人が眠っている状態で被害者の胸に触れることも不自然ではない事情が存すること,被告人が,被害者あるいは他の乗客に気付かれずに胸を触ることは相当に困難であること,被告人の供述には必ずしも不合理とはいえない点があることを併せ考えると,被告人が寝ている途中に,その左手が被害者の胸に触れた疑いも残るといえる。 結論 以上検討したところによれば,被告人の左手が,被害者の左乳房に着衣の上,,,から接触したことは認められるものの被告人においてこれを認識していたすなわち故意があったと認めるには合理的疑いが残るので,結局本件公訴事実については犯罪の証明がないことに帰するから,刑事訴訟法336条により被告人に対し,無罪 ものの被告人においてこれを認識していたすなわち故意があったと認めるには合理的疑いが残るので,結局本件公訴事実については犯罪の証明がないことに帰するから,刑事訴訟法336条により被告人に対し,無罪の言渡しをする。 (求刑懲役4月)平成18年11月30日大阪地方裁判所第8刑事部横田信之裁判長裁判官内田貴文裁判官 大伴慎吾裁判官

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