平成11(受)385 土地建物共有物分割等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成12年7月11日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 東京高等裁判所 平成9(ネ)5559
ファイル
hanrei-pdf-52266.txt

判決文本文2,882 文字)

主文 一原判決中、第一審判決別紙株式目録記載一ないし四及び六の各株式の分割請求及び株券の引渡請求に係る部分を破棄する。 二前項の部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。 三上告人のその余の上告を棄却する。 四前項に関する上告費用は上告人の負担とする。 理由 一事案の概要本件は、亡Dの共同相続人の一人であり相続財産全部の包括遺贈を受けた上告人に対して、遺留分減殺請求をした他の共同相続人である被上告人らが、共有に帰した相続財産中の株式等について共有物の分割及び分割された株式に係る株券の引渡し等を請求したものである。 二上告代理人高崎英雄の上告受理申立て理由第一について 1 上告人は、遺贈を受け被上告人らからの遺留分減殺請求の対象となっている財産の一部である第一審判決別紙株式目録記載六の株式のみについて、本件訴訟で民法一〇四一条一項に基づく価額の弁償を主張している。 2 原審は、同項の「贈与又は遺贈の目的の価額」とは、贈与又は遺贈された財産全体の価額を指すものと解するのが相当であり、贈与又は遺贈を受けた者において任意に選択した一部の財産について価額の弁償をすることは、遺留分減殺請求権を行使した者の承諾があるなど特段の事情がない限り許されないものというべきであり、そう解しないときは、包括遺贈を受けた者は、包括遺贈の目的とされた全財産についての共有物分割手続を経ないで、遺留分権利者の意思にかかわらず特定の財産を優先的に取得することができることとなり、遺留分権利者の利益を不当に害することになるとして、上告人の価額弁償の主張を排斥し、右株式を被上告人ら三、- 1 -上告人五の割合で分割した上、上告人に対し、この分割の裁判が確定したときに、右分割株式数に応じた株券を被上告人らに引き渡すよう して、上告人の価額弁償の主張を排斥し、右株式を被上告人ら三、- 1 -上告人五の割合で分割した上、上告人に対し、この分割の裁判が確定したときに、右分割株式数に応じた株券を被上告人らに引き渡すよう命じた。 3 しかし、【要旨1】受贈者又は受遺者は、民法一〇四一条一項に基づき、減殺された贈与又は遺贈の目的たる各個の財産について、価額を弁償して、その返還義務を免れることができるものと解すべきである。 なぜならば、遺留分権利者のする返還請求は権利の対象たる各財産について観念されるのであるから、その返還義務を免れるための価額の弁償も返還請求に係る各個の財産についてなし得るものというべきであり、また、遺留分は遺留分算定の基礎となる財産の一定割合を示すものであり、遺留分権利者が特定の財産を取得することが保障されているものではなく(民法一〇二八条ないし一〇三五条参照)、受贈者又は受遺者は、当該財産の価額の弁償を現実に履行するか又はその履行の提供をしなければ、遺留分権利者からの返還請求を拒み得ないのであるから(最高裁昭和五三年(オ)第九〇七号同五四年七月一〇日第三小法廷判決・民集三三巻五号五六二頁)、右のように解したとしても、遺留分権利者の権利を害することにはならないからである。このことは、遺留分減殺の目的がそれぞれ異なる者に贈与又は遺贈された複数の財産である場合には、各受贈者又は各受遺者は各別に各財産について価額の弁償をすることができることからも肯認できるところである。そして、相続財産全部の包括遺贈の場合であっても、個々の財産についてみれば特定遺贈とその性質を異にするものではないから(最高裁平成三年(オ)第一七七二号同八年一月二六日第二小法廷判決・民集五〇巻一号一三二頁)、右に説示したことが妥当するのである。 そうすると、原審の前記判断には民法 性質を異にするものではないから(最高裁平成三年(オ)第一七七二号同八年一月二六日第二小法廷判決・民集五〇巻一号一三二頁)、右に説示したことが妥当するのである。 そうすると、原審の前記判断には民法一〇四一条一項の解釈を誤った違法があるというべきである。 三同第二の三について- 2 - 1 原審は、第一審判決別紙株式目録一ないし四記載のF製鉄株式会社外三社の各株式について、株式は一株を単位として可分であり、かつ、分割することによる価値の減少が認められないことを理由として、右各株式を被上告人ら三、上告人五の割合で分割した上、上告人に対し、この分割の裁判が確定したときに、右分割株式数に応じた株券を被上告人らに引き渡すよう命じた。 2 しかし、右各株式は証券取引所に上場されている株式であることは公知の事実であり、これらの株式については、一単位未満の株券の発行を請求することはできず、一単位未満の株式についてはその行使し得る権利内容及び譲渡における株主名簿への記載に制限がある(昭和五六年法律第七四号商法等の一部を改正する法律附則一五条一項一号、一六条、一八条一、三項)。したがって、【要旨2】分割された株式数が一単位の株式の倍数であるか、又はそれが一単位未満の場合には当該株式数の株券が現存しない限り、当該株式を表象する株券の引渡しを強制することはできず、一単位未満の株式では株式本来の権利を行使することはできないから、新たに一単位未満の株式を生じさせる分割方法では株式の現物分割の目的を全うすることができない。 そうすると、このような株式の現物分割及び分割された株式数の株券の引渡しの可否を判断するに当たっては、現に存在する株券の株式数、当該株式を発行する株式会社における一単位の株式数等をも考慮すべきであり、この点について考慮することなく、右各 分割された株式数の株券の引渡しの可否を判断するに当たっては、現に存在する株券の株式数、当該株式を発行する株式会社における一単位の株式数等をも考慮すべきであり、この点について考慮することなく、右各株式の現物分割を命じた原審の判断には、民法二五八条二項の解釈を誤った違法があり、これを前提として株券の引渡しを命じた原審の判断にも違法があるというべきである。 四結論以上によれば、原判決中、第一審判決別紙株式目録記載一ないし四及び六記載の各株式の分割及び株券の引渡しを命じた部分には、判決に影響を及ぼすことが明ら- 3 -かな法令の違反がある。したがって、論旨は理由があり、原判決中、右部分は破棄を免れず、同目録記載一ないし四の各株式に関する請求については、現に存在する株券の株式数、当該株式を発行する株式会社における一単位の株式数等を考慮した現物分割の可否について、同目録記載六の株式に関する請求については、弁償すべき価額について、更に審理判断させるため、本件を原審に差し戻すこととする。 なお、その余の請求に関する上告については、上告受理申立ての理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官金谷利廣裁判官千種秀夫裁判官元原利文裁判官奥田昌道)- 4 -

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る