主文 1 被告川西市は,原告らそれぞれに対し,金2030万7709円及びこれに対する平成11年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らの被告川西市に対するその余の請求及び被告Aに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告らに生じた費用の6分の1と被告川西市に生じた費用の3分の1を被告川西市の負担とし,原告ら及び被告川西市に生じたその余の費用と被告Aに生じた費用を原告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,連帯して,原告らそれぞれに対し,金5935万7097円及びこれに対する平成11年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要等本件は,原告らが,被告川西市の設置する川西市立a中学校(以下「a中学校」という。)のラグビー部に所属していた原告らの長男のBが,平成11年7月27日の同部活動中,熱中症を発症して死亡するという事故(以下「本件事故」という。)の発生について,当時同部の顧問教諭であった被告A(以下「被告A」という。)に重大な過失があったことを主張し,被告川西市に対しては安全配慮義務違反による債務不履行責任又は国家賠償法1条1項に基づき,また,被告Aに対しては不法行為に基づき,損害賠償として,原告らそれぞれに対し連帯して5935万7097円及び本件事故当日である平成11年7月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠を掲記した部分以外の事実は当事者間に争いがない。) 日である平成11年7月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠を掲記した部分以外の事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者被告川西市は,a中学校を設置管理するものであり,被告Aは,平成11年7月27日当時,同校教論として社会科を担当するとともに,同校ラグビー部の顧問教諭を務めていた。 Bは,昭和61年5月27日,原告Cと同Dとの間に長男として生まれ,平成11年4月,a中学校に入学し,課外クラブ活動の一つである同校ラグビー部に所属して活動していた。 Bは本件事故当時13歳(中学1年生)であり,身長155センチメートル,体重65キログラムでやや肥満体質であった。 (2) 本件事故当日の練習状況ア午前6時30分から,Bを含むa中学校ラグビー部員18名(その内,1年生部員2名。)が,被告Aの指導監督の下,同校グラウンドにおいて夏季早朝練習を開始した。 当日の気象条件は,大阪管区気象台・豊中大阪空港アメダス計測で,午前7時において気温29.2度,湿度62パーセントであり,川西市消防本部計測の午前7時台の気象条件は,平均気温27.2度,相対湿度73.8パーセント,午前8時台が28.4度,65.4パーセント,午前9時台が29.8度,54. 7パーセントであった。 イ午前6時40分ころ,ランニングパス3人組(3人で走りながらボールをパスする練習。)を始めた。 ランニングパスを4本半(「1本」はグラウンド1往復を意味し,距離は片道約50ないし60メートルである。)終えたところで,被告Aは,全部員にキックダッシュ(最初にボールを蹴り,それを追いかけ ランニングパスを4本半(「1本」はグラウンド1往復を意味し,距離は片道約50ないし60メートルである。)終えたところで,被告Aは,全部員にキックダッシュ(最初にボールを蹴り,それを追いかけてキャッチし,ボールをパスしながらゴールまで走り抜ける練習で,被告Aの指示により随時実施される。)を指示した。1本目のキックダッシュ終了後,被告Aはさらに2本目を指示し,2本目終了後,残りのランニングパス5本半を行った。 ウ軽いジョギングによりクールダウンした後,グラウンド中央で被告Aが部員に対し体操隊形の指示を出したが,Bは体操隊形を作らずその場で座り込んだ。そこで,被告Aは,当日2回目のキックダッシュを全部員に指示した。2回目のキックダッシュは1本で終了した。 エ午前7時過ぎ,部員が順に号令を掛けながら休憩を兼ねて体操を行った。 オ体操の後,3人組のヘッドダッシュタイムトライアル(被告Aが3人組となった部員らに対して,約20メートル先からボールを蹴り,部員らがそのボールをキャッチして,ボールをパスしながら被告Aの立っている場所まで走り抜ける練習で,8秒の時間制限が設けられている。)の練習に移った。この途中,Bは,頭上に飛んできたボールを捕らえようと両手を挙げたが,「アー」という声を出して,そのまま後ろに尻餅をついた。 カ次に,5人組のヘッドダッシュタイムトライアル(上記ヘッドダッシュタイムトライアルを5人組で行うもので,10秒の時間制限が設けられている。)の練習に移ったが,Bは被告Aが指示した方向に走るものの,ボールを持つ走者を追わずに,まっすぐゴールに走った。そこで,被告Aは当日3回目のキックダッシュの指示を出した。 キ 1本目のキックダッシュの際,Bは最後5メートルのラス 向に走るものの,ボールを持つ走者を追わずに,まっすぐゴールに走った。そこで,被告Aは当日3回目のキックダッシュの指示を出した。 キ 1本目のキックダッシュの際,Bは最後5メートルのラストスパートができなかった。そこで,被告Aは2本目を指示した。2本目のキックダッシュではBがスタートのキックをしたが,ボールを蹴るときに足がもつれて蹴り損ね,ボールが転々と前に転がった。部員のEはBの背中を押して走らせようとしたが,Bは押しても歩くより少し早いくらいの速度でしか走れなかった(甲2,4)。ゴール後,Bは仰向けに倒れたので,被告Aは見学者に対してBを次の練習位置まで運ぶように指示し,他の部員にはキックダッシュの継続を指示した。 Bは見学者によってグラウンド中央付近の被告Aがいる位置まで運ばれた。被告Aは,仰向けに寝ているBを起こそうとしたが,手を離すと倒れてしまう状態であった。そこで,被告AはBを見学者にもたれかけさせて座らせ,自らは他の部員の練習の指導をした。そのころ,Bは「アーアー」という声を発するようになっていた。 ク午前8時ころ,被告Aは部員に休憩を指示し,Bのそばに行ったが,Bは「アーアー」という息づかいが変化して反応するだけの状態であった。見学者がBにお茶を飲ませようとしても,Bは口を少し開いたままで口からこぼして飲めなかった。被告AがBの頬を叩くと,首を動かして被告Aの方を見たが,しばらくすると焦点の合わない状態に戻った。 その後,被告Aは,見学者に指示して,自力歩行できないBを水場に運ばせた。 ケ午前8時10分ころ,休憩が終了し,他の部員はモール(ボールを持ったプレーヤーの周囲に,双方の1人又はそれ以上のプレーヤーが立ったまま身体を密着させて集結した状 を水場に運ばせた。 ケ午前8時10分ころ,休憩が終了し,他の部員はモール(ボールを持ったプレーヤーの周囲に,双方の1人又はそれ以上のプレーヤーが立ったまま身体を密着させて集結した状態)等の専門練習を開始した。被告AはBの様子を見学者に見させて,他の部員の練習を指導した。 コ午前8時40分ころ,被告Aが再度,Bの様子を見に行ったところ,Bは上半身裸で水場に仰向けに寝かされている状態であった。Bは目を閉じたまま呼吸は「アーアー」と言うのみであった。被告Aは,Bの背中を起こし,膝を背筋にあて両肩に手を掛け,2回力を入れて伸ばしたが効果はなかった。その後,被告Aは,再度見学者にBの様子を見させた。 サ午前8時40分過ぎ,被告AがBを保健室に連れて行くよう指示し,午前9時1分,被告Aの報告を受けた他の教諭の指示で,校務員が119番通報した。 (3) Bの死亡Bは,午前9時19分,救急車によって川西市内の協立病院に到着し,さらに,午前10時8分大阪府立千里救命救急センターに搬送され,午前10時27分同センターに到着した。しかし,Bは,翌28日午後6時41分,同センターにおいて,熱射病による多臓器不全により死亡した(甲6)。 (4) 熱中症及び熱射病について(甲18)熱中症とは,高温環境下において,激しい運動により,体温が上昇することによって発症する障害の総称であり,原因,症状,障害の程度により,熱失神,熱疲労,熱痙攣,熱射病に分類される。 その中でも熱射病は最も重篤で,異常な体温上昇のために体温調節中枢に障害が及び,吐き気,めまい,意識障害,ショック状態などを示す。意識障害は軽いこともあるが,応答が鈍いなど少しでも異常を示した場合には重症と考え 射病は最も重篤で,異常な体温上昇のために体温調節中枢に障害が及び,吐き気,めまい,意識障害,ショック状態などを示す。意識障害は軽いこともあるが,応答が鈍いなど少しでも異常を示した場合には重症と考えて応急処置をする必要がある。 熱射病は死の危険のある緊急事態であるから,体を冷却しながら,一刻も早く集中治療の可能な病院へ搬送する必要があり,いかに早く体温を下げて意識を回復させるかが予後を左右するので,現場での応急処置が重要である。 (5) なお,原告らは,日本体育・学校健康センターの災害共済給付金として2500万円を受領した。 2 争点(1) 被告Aの過失(原告らの主張)ア過失総論公立中学校における課外クラブ活動の担当教諭は,部の活動全体を掌握して指導監督にあたる者であるから,練習において,部員の生命,身体に危険が及ぶことが予想される場合には,あらかじめそのような危険がないように配慮すべき安全配慮義務がある。 本件事故当日は,高温多湿の真夏であり,朝とはいえ,川西市消防本部の資料では午前7時で平均気温27.2度,相対湿度73.8パーセント,午前8時で28.4度,65.4パーセント,午前9時で29.8度,54.7パーセントであり,熱中症の発生を注意もしくは警戒すべき状況にあった。よって,指導担当者である被告Aとしては,熱中症について適切な知識を持ち,部員が暑さと激しい運動によって熱中症を発症することのないように,練習中に適宜休憩を取らせ,十分に水分補給をさせるとともに,部員に熱中症を疑わせる症状がみられたときは,直ちに練習を中止し,涼しい場所で安静にさせ,冷却その他体温を下げるなどの方策をとり,必要に応じて速やかに救急車を手配すべき注意義務が 給をさせるとともに,部員に熱中症を疑わせる症状がみられたときは,直ちに練習を中止し,涼しい場所で安静にさせ,冷却その他体温を下げるなどの方策をとり,必要に応じて速やかに救急車を手配すべき注意義務があった。 イ具体的注意義務違反本件において,B以外の部員は既に同年7月20日から3日間練習をしていたが,Bは旅行等の予定が入ったため参加しておらず,Bにとって,本件事故当日は夏休み最初の練習であった。被告Aは,これを当然知っており,この点を考慮して細心の注意を払い,安全を配慮すべき義務があった。 ところが,被告Aは,以下のようにBが体調の不調を訴えているにもかかわらず,十分な水分補給もさせずに,厳しい練習を継続し,Bの体調に対して十分に注意しなかった。 (ア) Bは,練習当初のランニングパス3人組の段階から遅れがちであり,体調が悪い様子であった。その後の体操の際にも,Bは体操隊形を作らずその場で座り込み,Bの不調が明確に体現された。にもかかわらず,被告Aはこれを「おどけて尻餅をついた」と評価した。 (イ) ヘッドダッシュタイムトライアルの段階で,被告Aは,Bが指示する方向には走るが,ボールを持つ走者を追わずに,まっすぐゴールへ走ったことを「無責任と思えるプレー」と判断し,Bに対する懲罰として全部員にキックダッシュを課した。被告Aは,このようなBの異常行動について,Bの体調のことには全く思い至らず,ヘッドダッシュタイムトライアルの途中か,終わった後で,さらにキックダッシュを課した。 (ウ) 3回目のキックダッシュにおいて,①Bが被告Aに対して「筋肉痛があるから走れない。」とはっきり言葉で不調を訴えたこと,②キックダッシュのスタート前に「先生」とBが を課した。 (ウ) 3回目のキックダッシュにおいて,①Bが被告Aに対して「筋肉痛があるから走れない。」とはっきり言葉で不調を訴えたこと,②キックダッシュのスタート前に「先生」とBが叫んだが,被告Aが「B行け。」と答えたこと,③Bは2本目のキックダッシュの際,スタートのキックをしたが,足がもつれボールに当たらず,蹴り損ないのボールが前に転々としたこと,④Eが背中を押して走らせようとしたが,押しても歩くより少し早いくらいの速度で,Bが「走れない。」と言っていること,⑤その後,Bは腰を押されて片膝からついて前に1回倒れたこと,⑥キックダッシュの途中,Bがグラウンド中央左寄りの被告Aの前に来たとき,被告Aに対して,ひざを曲げて少し上げて見せ,足先を指さし「先生,足が痛い。」と言いかける動作をし,被告Aもこれを認めたことからすると,Bが疲労の極地に達し,その身に異常が生じていたことは客観的に容易に判断することができた。にもかかわらず,被告AはBが演技しているものと決め付け,「どうしたのか。どこか調子悪いのか。」という極めて自然な確認の言葉を一度も発することがなかった。 (エ) 3回目のキックダッシュの後,Bがグラウンド中央で休んでいる間も,同じグラウンド内で練習をしていた陸上部員Fから見て,Bの様子は明らかに異常と分かり,Fが被告Aに「見てください。」と申告したにもかかわらず,被告Aはこれに取り合わず,Bが芝居をしている旨答えた。このように,部外者である一般の中学生から見ても,Bは明らかに異常な状況であったにもかかわらず,被告Aは,この注意喚起に対しても芝居をしていると答え,適切な救護処置を一切採らなかった。 (オ) 以上のように,被告Aは,Bの身に異常が生じていることを知り得たにもかかわらず,そ 被告Aは,この注意喚起に対しても芝居をしていると答え,適切な救護処置を一切採らなかった。 (オ) 以上のように,被告Aは,Bの身に異常が生じていることを知り得たにもかかわらず,その体調に注意を払わず,Bが疲労で倒れるまで厳しい練習を継続し,よって熱射病に罹患させ,さらに倒れたBを1時間10分にもわたり放置した。 ウまとめ被告Aは上記のように安全配慮義務を怠り,Bに対して単に演技しているという言葉を投げつけて1時間10分もの間放置しつづけ,死に至らしめたのであり,その過失は極めて重大である。 (被告らの主張)ア過失総論について(ア) 課外クラブ活動の担当教諭に一般論として,生徒に対し原告ら主張のとおりの安全配慮義務のあることは認める。 (イ) 本件事故当日の気象状況について本件事故当日の川西市消防本部の資料における気象状況の数値が原告らの主張のとおりであることは認めるが,豊中大阪空港アメダスの午前6時から同7時までの日照時間は0.4時間であり,被告Aは,体感的には当日は夏の練習の中で,暑さも日照りも特別ということはなく,かえって楽な方だと感じていた。また,B以外の部員も「涼しかったのでバテるような状態ではなかった。」(G,H),「いつもの日よりも涼しく感じた。」(E,I)と感じており,他の部員らも熱中症を発生させるような雰囲気があったとは述べていない。よって,当日は原告らが主張するような熱中症の発生を注意もしくは警戒すべき状況にはなかった。 (ウ) 熱中症の知識について被告Aは,日射病,熱射病についての知識は有していたが,熱中症については,平成10年にスポーツドクタ 警戒すべき状況にはなかった。 (ウ) 熱中症の知識について被告Aは,日射病,熱射病についての知識は有していたが,熱中症については,平成10年にスポーツドクターの講座を受けたときに,その存在を知った程度である。 しかし,平成11年7月当時,熱中症については,専門の医師,学者は別として,一般人は当然,医師一般にも余り知られておらず,本件においても,協立病院のカルテ(乙2)に,熱中症を表す「heat」という言葉が見当たらないこと,現在も熱中症の分類が医学的に混迷していることからすると,被告Aが,熱中症について,当時名前を聞いた程度であったとしても何ら問題はない。 イ具体的注意義務違反争う。具体的には以下のとおりである。 (ア) 水分補給の指導について被告Aは,ラグビーの練習中の水分補給については,一般的に約60分の練習後に設ける10分から15分間の休憩時間に取らせるようにし,また練習時間開始前後に各自の水筒なり,冷水機から取らせるようにしていた。また,練習の際,被告A自身も走るのであるから,その日の天候によって自らの体調と生徒の体調をとおして,その都度,休憩を取ったり,十分な水分の補給をして,生徒が熱中症を発症しないように考え,実行していた。当然,本件事故当日も被告Aは,練習において生徒の健康保持や練習内容に十分配慮してきた。 (イ) 練習内容について本件事故当日に実施された早朝練習のメニューは,普段どおりの練習内容であり,またBに対して,他の部員と異なった練習を課したものではない。 当日は,午前6時30分から練習開始であったが,被告Aも部員達も 朝練習のメニューは,普段どおりの練習内容であり,またBに対して,他の部員と異なった練習を課したものではない。 当日は,午前6時30分から練習開始であったが,被告Aも部員達も午前6時15分ころから集まってきて,体を動かしていた。午前6時30分に被告Aは,出席者の顔を見ながら,出席の確認をした。体調不良やケガ等で練習できない者は見学となり,当日は6人が見学者であった。このように,被告Aはラグビーの練習ができない生徒に無理やり練習をさせることはしていない。 また,Bの本件事故当日の練習時間は約1時間である一方,その他の部員は午前8時40分ころまで練習したのであるから,Bより1時間も多い。しかしながら,練習時間が多い他の部員は何ら身体に異常が発生しなかったのであり,練習内容に問題があったとはいえない。 被告Aが練習中にキックダッシュを指示したことは認めるが,それはBに対して懲罰的になされたものではない。 (ウ) Bに対する対応について被告Aは,最後のキックダッシュの2本目の際,Bから「先生,足が痛い。」と訴えられたが,Bの表情が体調の悪いような苦悶の表情ではなく,今までにもよくあった弱音を言いに来たときと同じ表情であったので,「あかん,しんどいふりしてもあかん。演技は通用せん。」と突っ放した。そこで,Bも走り出した。 その後,Bは尻餅をついて寝ころんだので,被告AはBの胸をつかんで起こそうとしたが,起こしきれなかった。そこで,被告AはBを見学者に任せて自らは練習に戻った。この時刻は午前7時30分過ぎであった。 午前7時40分ころ,被告AがBを見た際にも,Bの目はパッチリしていたし,息づかいも で,被告AはBを見学者に任せて自らは練習に戻った。この時刻は午前7時30分過ぎであった。 午前7時40分ころ,被告AがBを見た際にも,Bの目はパッチリしていたし,息づかいも,それ以前の「ハッハァー,ハー」よりも少し落ち着いた「ハァー,ハァー」であった。 このように,被告Aは,Bが練習を離れた後,見学者に介護を委ねており,自らも常にBを気遣い,声も掛けていたのであり,放置したわけではない。 (エ) 結果予見可能性について被告Aは,日射病,熱射病については,一般的には知識を有していたが,本件のBの行動及び上記熱中症の知識からして,同日午前8時40分ころまでは,熱中症を疑うことができなかった。 すなわち,本件において,被告Aは,午前8時40分ころ,練習を終了して,Bを保健室に運び,その際,Bの目の瞳孔の異常を発見するまでは,Bの異常を発見しておらず,一緒に練習していた部員及び午前7時30分以降,Bのそばにいた見学者らもBに異常を認めていない。Bに異常が認められなかったから,被告Aは救護に動かなかったものであるし,部員らも同様に異常を認めなかったからこそ被告Aに異常を告知しなかったのである。練習中の部員に異常があったならば,被告Aが直ちに救護していたことは,当時のラグビー部員の母親らが口を揃えて陳述するとおりである。 (2) 因果関係(原告らの主張)被告Aが,あらかじめ熱中症の危険を察知し,Bに十分水分補給をさせるとともに,練習が過度にわたらないように注意していれば,Bが熱中症を発症することを防止し得たし,Bが身体に異常を来した時点で適切な救護措置や救急車を手配して救護すれば,Bを救命することは可能であ るとともに,練習が過度にわたらないように注意していれば,Bが熱中症を発症することを防止し得たし,Bが身体に異常を来した時点で適切な救護措置や救急車を手配して救護すれば,Bを救命することは可能であった。 被告らは,Bの死因について,ラグビー部の練習は一切関係なく,前日の疲労,睡眠不足,朝食不摂取によるものと主張するかのようである。しかし,Bはラグビー部の激しい練習中に体調に異常を来して,適切な時期に何らの救護措置も採られなかった結果,死亡したのであり,Bが倒れた現場は被告Aが監督していたのである。被告Aが適切な時期に適切な措置を採っていれば,Bは命を落とすはずなどなかったのに,漫然と放置して死に至らしめたのであるから,被告Aの過失とBの死との因果関係は明らかである。 (被告らの主張)争う。 死亡診断書(甲6)では,Bの熱射病の原因については記入されていないが,大阪府立千里救命救急センターのカルテ(乙7)36頁の「病状説明シート」では,熱射病の原因として「前日の疲れと脱水」と思われる旨の記載がある。 また,本件事故当日,練習に参加した生徒はBを含めて18人,体調不調等を理由に見学していた生徒は6人であったが,熱中症を発症した者はB1人である。しかも,Bは練習開始最初の,ランニングパスの段階で「しんどそう」な状態にあった。 そうすると,Bの体調は,練習開始直後から良くなかったのであり,Bの熱中症の原因は,原告らが主張する練習の程度や,練習中の水分の補給の問題ではなく,Bの前日までの疲労,睡眠不足及び当日の朝食抜きにあったといわざるを得ない。つまり,Bの家庭における健康管理に重大な原因があったのである。 (3) 被告らの責任ア被告川西市 く,Bの前日までの疲労,睡眠不足及び当日の朝食抜きにあったといわざるを得ない。つまり,Bの家庭における健康管理に重大な原因があったのである。 (3) 被告らの責任ア被告川西市の責任(原告らの主張)被告川西市は,公立学校の設置者として,入学を許可された生徒が参加する学校教育の一貫である課外クラブ活動において,生徒の身体,生命について安全を配慮する義務を負担している。そして,その職員である被告Aがその職務を行うにつき故意過失によりBを死に至らしめたのであるから,安全配慮義務違反の債務不履行責任及び国家賠償法第1条1項に基づく不法行為の各損害賠償責任がある。 (被告川西市の主張)争う。 イ被告Aの責任(原告らの主張)被告Aについては,本件事故を故意またはそれと同視できる重大な過失によって発生させたものであり,民法709条に基づく損害賠償責任を負担せざるを得ず,かかる場合の加害公務員と公共団体の責任は不真正連帯債務の関係に立つ。 (被告Aの主張)争う。 (4) 損害(原告らの主張)ア相続分(ア) 逸失利益金4093万4194円Bは,本件事故によって死亡しなければ,18歳から67歳までの49年間就労可能であった。その間少なくとも平成9年版賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・男子労働者の平均賃金年額575万0800円を基礎に計算した額の収入を得ることができた。そして,生活費割合控除は5割とみるのが相当であり,これに中間利息をライプニッツ式で控除してBの逸失利益 規模計・男子労働者の平均賃金年額575万0800円を基礎に計算した額の収入を得ることができた。そして,生活費割合控除は5割とみるのが相当であり,これに中間利息をライプニッツ式で控除してBの逸失利益を計算すると,4093万4194円となる。 計算式:5,750,800円×14.236×0.5=40,934,194円(イ) 慰謝料金5000万円Bの死亡態様は,度重なる救助の信号を無視され放置されて死亡に至った極めて悲惨なものであり,朦朧として消えていく意識下において,もっとも身近におり,かつ容易に救助できた指導責任教諭である被告Aから「芝居は通用しない。」等と言われ無視され続けた1時間10分間の無念さは計り知れない。その固有の精神的な損害は5000万円を下ることはない。 (ウ) 相続原告らは,上記合計9093万4194円の2分の1にあたる4546万7097円をそれぞれ相続した。 イ固有分(ア) 慰謝料各金2000万円原告らは,最愛の子を突然の不条理な事故で失ったのであり,Bの年齢,生活状況,本件事故状況からみても本来死亡するとは考えられない特殊状況下での死を現実として受容せざるをえない原告らの悲しみは,極めて深い。その精神的損害に対する慰謝料は各人2000万円を下ることはない。 (イ) 葬儀費用各金100万円原告らは,多数の会葬者が参加したBの葬儀を実施するため370万円を超える葬儀費用を支出しているが,本件 用各金100万円原告らは,多数の会葬者が参加したBの葬儀を実施するため370万円を超える葬儀費用を支出しているが,本件事故に起因する損害としては,合計200万円,各人100万円とみるのが相当である。 ウ既受領分原告らは,前記争いのない事実等(5)のとおり,日本体育・学校健康センターの災害共済給付金として2500万円を受領した。 エ弁護士費用各金539万円本件事故と相当因果関係にあるとして被告らに請求できる弁護士費用は,実請求額である1億0793万4194円の10パーセントが相当であり,原告ら各人につき539万円となる。 オまとめ以上,損害の合計は1億1871万4194円であり,各人につき5935万7097円となる。 (被告らの主張)ア原告ら主張の損害は,いずれも否認ないし争う。 イ過失相殺Bの熱射病の原因・誘因は,Bの練習前の疲れと脱水とにあったのであるから,仮に被告らに何らかの責任があるとしても,その過失割合は1割以下である。したがって,損害賠償額については大幅な過失相殺がなされるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 事実経過前記争いのない事実等,証拠(甲2~4,7,8,11,13,24,26,27,乙1,13~15,原告C本人,同D本人,被告A本人〔以下の認定に反する部分を除く。〕)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) Bの平素の健康状態Bは,本件事故当時,多少の肥満傾向はあ 人,被告A本人〔以下の認定に反する部分を除く。〕)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) Bの平素の健康状態Bは,本件事故当時,多少の肥満傾向はあったものの,格別,虚弱体質ということもなく,また,特に持病もなかった。 (2) Bの本件事故当日までの様子Bは本件事故の1週間前である平成11年7月20日,b学園のラグビーフェスティバルに参加し,翌21日から24日まで,家族とともに旅行に出かけていた。 本件事故前日(同月26日)のBは,食欲も旺盛で,8時間程度の睡眠を取っており,その健康状態は良好であった。 もっとも,Bは,同年6月ころから,ラグビー部の朝の練習が厳しいため,食べても吐いてしまうと言って,朝の練習がある日は朝食を取らないようになり,本件事故当日も朝食を取っていなかった。また,Bは,本件事故当日,練習に水筒を持参しなかった。 (3) 本件事故当日の気象状況本件事故当日の気象状況は,大阪管区気象台・豊中大阪空港アメダス計測で,午前7時現在で気温29.2度,湿度62パーセントであり,川西市消防本部計測の午前7時台の気象条件は,平均気温27.2度,相対湿度73.8パーセント,午前8時台が28.4度,65.4パーセント,午前9時台が29.8度,54.7パーセントであった。 (4) 本件事故当日の練習状況ア午前6時30分ころ,a中学校ラグビー部は,被告Aによる部員の出欠確認の後,練習を開始した。 イ午前6時40分ころ,ランニングパス3人組の練習を始めた。Bは,2,3本目から遅れがちであったが,被告Aはこれに気付いていなかった。 ランニングパスを4本半終えた後 イ午前6時40分ころ,ランニングパス3人組の練習を始めた。Bは,2,3本目から遅れがちであったが,被告Aはこれに気付いていなかった。 ランニングパスを4本半終えた後,被告Aは部全体に緩慢な動きが見られたことから,これを引き締めるために,全部員にキックダッシュの指示を出した。1本目終了後,被告Aには,Bがいつもの5メートルのラストスパートをしているように見えなかったため,「B,しっかりせい。」と言って,2本目を追加する旨の指示を出した。キックダッシュ2本終了後,残りのランニングパス5本半(合計10本)を行った。 ウ軽いジョギングによりクールダウンした後,グラウンド中央で被告Aが部員に対し体操隊形の指示を出したが,Bは体操隊形を作らずその場で座り込んだ。被告Aは,Bのこの行動を見て,おどけて尻餅をつくように座ったものと判断し,せっかく1つになりつつあるムードがこわれ,キックダッシュをした意味がなくなると考え,懲罰として2回目のキックダッシュを全部員に指示した。2回目のキックダッシュは1本で終了した。 エ午前7時過ぎ,部員が順に号令を掛けながら休憩を兼ねて体操を行った。普段であれば,体操の最後に2人組になってストレッチ体操をするはずであったが,当日はそれをせず,キャプテンが「集合」と声を掛けた。被告Aは,部員にとって休憩は長い方が良いと思いつつも,次の練習に動き始めた部員の気持ちに水を差すよりも次に進めようと考え,敢えて何も言わなかった。 オ体操の後,3人組のヘッドダッシュタイムトライアルの練習に移った。 しかし,Bは途中,頭上に飛んできたボールを捕らえようと両手を挙げたが,「アー」という声を出して,そのまま後ろに尻餅をついた。被告Aは,このようなBの様子を見て,少しずつ トライアルの練習に移った。 しかし,Bは途中,頭上に飛んできたボールを捕らえようと両手を挙げたが,「アー」という声を出して,そのまま後ろに尻餅をついた。被告Aは,このようなBの様子を見て,少しずつ中途半端なプレイが目につき始めたと認識した。その後,Bは走り切ったが,ぐったりとした状態であった。 カ続いて,5人組のヘッドダッシュタイムトライアルの練習に移ったが,Bは,被告Aの指示した方向に走るものの,ボールを持つ走者を追わずに,まっすぐゴールに走るなどした。被告Aは,普段のBであれば少なくともボールを最後までつなぐプレイをやり遂げるのに,上記のような行動が2回ほど見られたことから,これを無責任なプレイと判断し,懲罰として全員に3回目のキックダッシュの指示を出した。 キ 1本目のキックダッシュの際,BはE,Iに対して「筋肉痛があるから走れない。」と訴えていた。Bは,1本目を走り終えたが,往復ともいつもよりかなり遅れがちで,最後5メートルのラストスパートもできなかった。そこで被告Aは,懲罰として全員に2本目のキックダッシュを追加する指示をした。 2本目のキックダッシュでは,Bがスタートのキックをしたが,ボールを蹴るときに足がもつれて蹴り損ね,ボールが前に転々とした。Bはその後走り始めたが遅れたため,後ろの組のEがBの背中を押して走らせようとした。しかし,Bは押しても歩くより少し早いくらいの速度でしか走れず,背中を押す手を離すと後ろに倒れてくるような状態であった。Eは,Bを押してもスピードを上げないので,ジャージをつかんで少し引っ張るなどしたところ,Bは片膝をついて前に倒れた。その後,Bは,立ち上がり走り始めたが,その速度は遅かった。 被告Aはグラウンドの中央付近で練習の様子を見てい ージをつかんで少し引っ張るなどしたところ,Bは片膝をついて前に倒れた。その後,Bは,立ち上がり走り始めたが,その速度は遅かった。 被告Aはグラウンドの中央付近で練習の様子を見ていたが,Bが被告Aの前まで来たとき,足先を指さし「先生,足が痛い。」と言いかけた。しかし,被告Aは「甘えるな。」「そんなもん通用せえへん。」「しんどいふりするな。」「演技してもあかん。」などと言って取り合わなかった。 Bは,2本目でもゴール前のラストスパートができなかったため,見学者の1人がBのそばに駆け寄ってきて,Bの背中を押して走らせた。そして,ゴール直前,その見学者がBを自力で走らせるために手を離すと,Bはそのままゴールしたが,足がもつれてよろけた。周りの部員が集まってBに声を掛けていたが,Bは前向きに膝をついて,その後尻餅をついて横に倒れた。周りの部員らが声を掛けながら,Bの胸をつかんで起こそうとしたが,Bは身体に力が入らず,手を離すと後ろに倒れるような状態であった。 ク午前7時30分ころ,グラウンド中央付近にいた被告Aは,前記グラウンド上に倒れたBについて,部員らが「走ろうとしません。」「起きようとしません。」と言うので,Bの方にゆっくり歩いていき,その胸倉をつかみ,「しっかりせんかい。」と言ってBを引き起こそうとした。しかし,Bは「嫌や。」など普段は被告Aに対して使わないようなぞんざいな言葉を発して顔を背けた。この時,Bの呼吸は荒い不規則な状態であり,体にも力が全く入っておらず,目は半開きでつむりそうな状態であった。被告Aは,Bにこれ以上何を言っても余計に頑なになるだけだと考え,「何でやろうとせんのや。」と言ってBを横に寝かせた。部員の一人が「先生起こしましょうか。」と言ったが,これ以上走れないと判断 あった。被告Aは,Bにこれ以上何を言っても余計に頑なになるだけだと考え,「何でやろうとせんのや。」と言ってBを横に寝かせた。部員の一人が「先生起こしましょうか。」と言ったが,これ以上走れないと判断し,「もうほっとけ。」「14年間でこんなやつ見たことないぞ。」「後でちゃんと走らせろ。」と言って自らは次の練習位置に向かった。そして,他の部員にはキックダッシュの継続を指示し,Bについては,見学者に次の練習位置まで連れて行くよう指示した。 Bは自力では歩けない状態だったので,見学者によってグラウンド中央付近の被告Aがいる場所まで運ばれた。被告Aは,部員がBの周りを囲んでいたので,「陰なんか作らんでいい。」と言って,その中に割って入り,仰向けになっているBを起こそうとしたが,手を離すと倒れてしまい力が入っていなかった。Bの呼吸は荒く,横にさせると目は半開きになって閉じかけるので,被告AはBを見学者(J)にもたれかけさせて座らせた。そして,Bに「しんどいふりしてもあかんぞ。」「通用せんぞ。」などと声を掛けたが,Bは頷くものの言葉はなかった。その後,被告AはBの様子を見学者に見させて,練習を再開した。 Bはぐったりした様子で,息づかいが変化して「アーアー」と言うのみで,見学者が声を掛けても反応しない状態であった。 ケ午前8時ころ,被告Aは休憩を指示し,Bの近くに行って「演技は通用せん。」「ちゃんとせいよ。」等と声を掛けたが,Bは上記「アーアー」と言う以上の反応を示すことはなかった。見学者がBにお茶を飲ませようとしたが,Bは口を少し開いたままで,口からこぼして飲めなかった。被告Aは,そのようなBの様子を見て「しっかりせえ。」と言ってBの頬を叩くと,Bは首を動かして被告Aの方を見たが,しばらくすると焦 うとしたが,Bは口を少し開いたままで,口からこぼして飲めなかった。被告Aは,そのようなBの様子を見て「しっかりせえ。」と言ってBの頬を叩くと,Bは首を動かして被告Aの方を見たが,しばらくすると焦点の合わない状態に戻った。被告Aは同じ事を2回繰り返したが,同じ反応であった。そこで,被告Aは,見学者に対し,自力歩行できないBを水場に運ぶよう指示したが,自らは水場には行かなかった。 コ午前8時10分ころ,休憩が終了し,部員らはモール等の専門練習を開始した。被告Aの下に,見学者がBに水をかけてもよいか聞きに来たので,被告Aは,しっかりかけてやるように言って,そのまま練習を続けた。その後,見学者がBに水をかけたが,反応がないので,被告Aにその旨の報告をしたところ,被告Aは,もう少し続けてみるよう指示した。 サ午前8時40分ころ,被告Aが再度,Bの様子を見に行ったところ,Bは上半身裸で水場に2ないし3センチメートルの深さの水につかって仰向けに寝かされている状態であった。Bは,目をつむったまま,アーアーと呼吸するのみであった。被告Aは,Bが気を失ったら危ないと考え,Bの背中を起こし,膝を背筋にあて両肩に手を掛け,2回力を入れて伸ばしたが効果はなかった。被告AはこのままではBに風邪を引かせることになると考え,見学者にBを水場から出して石垣にもたれかけさせて座らせるように指示し,再び練習に戻った。 シ午前8時40分過ぎ,被告AはBが心配になり,部活動を通常より50分早めて切り上げ,Bを保健室に連れて行くよう指示した。その際,Bは全身が脱力し,瞬きもない状態であった。 午前9時1分,被告Aの報告を受けた他の教諭の指示で,校務員が119番通報した。 (5) Bの死亡Bは,午 ,Bは全身が脱力し,瞬きもない状態であった。 午前9時1分,被告Aの報告を受けた他の教諭の指示で,校務員が119番通報した。 (5) Bの死亡Bは,午前9時19分,救急車によって川西市内の協立病院に到着したが,午前10時8分大阪府立千里救命救急センターに転送されることになり,午前10時27分同センターに到着した。しかし,Bは,翌28日午後6時41分,同センターにおいて,熱射病による多臓器不全により死亡した。 (6) 以上の認定に反し,被告Aは,本人尋問において,本件事故当日,キックダッシュを何度か命じたのは,ラグビー部全体の様子を見て行ったものであって,Bの動きが鈍かったことに対する懲罰として行ったわけではないとか,3回目のキックダッシュの2本目の途中でBが倒れたのは見ていなかったし,その後のBの異常な呼吸音も聞いたことがないなどと,本件事故について自己の責任を回避する趣旨の供述をするとともに,同旨の報告書(乙28)を提出する。 しかしながら,被告A自身が作成した平成11年8月8日付手記(甲4)や,a中学校の教職員が作成した平成11年10月20日付記録(甲2)及び再現ビデオ(甲8)によれば,前記認定事実を認めることができる。 被告らは,被告A作成の上記手記(甲4)について,被告Aが生徒らと打合せをして記憶の確認をする機会のないまま作成したものであって,信用できないと主張する。しかしながら,被告A本人尋問の結果によれば,同手記は,被告Aが,本件事故のすぐ後にa中学校の教頭から命じられて,事件当日の状況について自己の記憶に基づいて作成し平成11年7月29日に提出した報告書(乙14)を基に,これをさらに詳細に加筆訂正して同年8月8日に提出したものであることが認 の教頭から命じられて,事件当日の状況について自己の記憶に基づいて作成し平成11年7月29日に提出した報告書(乙14)を基に,これをさらに詳細に加筆訂正して同年8月8日に提出したものであることが認められ,以上の作成経過に照らすと,同手記は,本件事故の2,3日後における被告Aの鮮明な記憶に基づいて作成されたものであることが認められるから,むしろ,少なくとも本件事故当時の被告Aの認識や行動については,かなり高度の信用性を有する資料であると認められる。上記手記が生徒らとの打合せに基づいて作成されていないということは,同手記の信用性を減殺する事情には当たらないというべきである。 また,被告らは,上記記録(甲2)について,生徒からの事情聴取が和やかな雰囲気でなされたものではないから,原告らの主張に沿った形で生徒らが真実と異なる供述をしている疑いを否定できないと主張する。しかしながら,本件全証拠に照らしても,同記録の作成に原告らの意思が介在したことを認めることはできない。むしろ,同記録は,a中学校の教諭12名からなるプロジェクトチームが,本件事故当日の事実関係を明らかにすることを目的に,平成11年8月3日と同月30日の生徒面談,被告A作成の手記と被告Aに対する聞き取り等を基に,多くの証言が一致する事実に基づいて作成したものであることが認められ,このような作成目的,作成者,作成方法に鑑みると,高い信用性が認められる。 以上の次第で,これらの書証に反する被告A本人尋問の結果及び上記報告書(乙28)の記載を信用することはできない。 2 争点に対する判断(1) 被告Aの過失の有無ア被告Aの注意義務公立中学校における課外クラブ活動は学校教育の一環として行われる以上,学校設置管理者 2 争点に対する判断(1) 被告Aの過失の有無ア被告Aの注意義務公立中学校における課外クラブ活動は学校教育の一環として行われる以上,学校設置管理者は生徒の生命,身体の安全を図る義務があり,また,その担当教諭も,学校設置管理者の履行補助者として,部の活動全体を掌握して指導監督にあたる者であるから,練習中,部員の生命,身体に危険が及ばないように配慮し,部員に何らかの異常を発見した場合には,その容態を確認し,応急処置を採り,必要に応じて医療機関に搬送すべき注意義務が認められる。 そして,本件事故当時,既に学校管理下における熱中症(日射病,熱射病を含む。)による多数の死亡事故例が報告,報道されるとともに(甲15の1・2,甲19),その予防策や発生時の対処の方法についても,少なからざる文献が公刊されていたこと(甲5,16,18)に照らすと,熱中症の危険性とその予防対策の重要性は,特に体育教育関係者にとっては当然身につけておくべき必須の知識であったと認められること,被告Aは,ラグビー部の顧問教諭である以上,体育教育関係者と認められること,被告A自身,屋外におけるスポーツの際に,日射病,熱射病が発生する危険性について一応の知識を有していたことを本人尋問の際に自認していること,ラグビーはスポーツの中でもかなり激しい競技であること等を総合すると,被告Aとしては,部員が暑さと激しい運動によって熱中症を発症することのないように,練習中に適宜休憩を取らせ,十分に水分補給をさせるとともに,部員に熱中症を疑わせる症状がみられた場合には,直ちに練習を中止し,涼しい場所で安静にさせ,冷却その他体温を下げるなどの応急処置を採り,必要に応じて速やかに医療機関に搬送すべき注意義務(安全配慮義務)があったと を疑わせる症状がみられた場合には,直ちに練習を中止し,涼しい場所で安静にさせ,冷却その他体温を下げるなどの応急処置を採り,必要に応じて速やかに医療機関に搬送すべき注意義務(安全配慮義務)があったと認められる。 これに対して,被告らは,本件事故当時の熱中症に対する一般的知識の程度は十分でなかったこと,被告Aが当時熱中症について名前を聞いた程度の知識しかなかったこと,熱中症に関する医学上の分類が混迷していることなどに鑑みると,被告Aが熱中症に罹患したBに対して適切な対処ができなかったとしてもやむを得なかったこと等を主張するが,上記認定の各事実に照らせば,かかる主張を認めることはできない。 イそこで,以下,被告Aに上記の意味での注意義務違反(安全配慮義務違反)が認められるかどうかを検討する。 (ア) 事故当日の気象状況財団法人日本ラグビーフットボール協会作成の「安全対策マニュアルラグビーフットボール改訂版(平成4年6月)」(甲5)及び財団法人日本体育協会作成の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(甲18)によれば,熱中症の発生には,気温,湿度,風速,輻射熱(直射日光)などが関係し,これらを総合的に評価するための指標として,WBGT(Wetbulbglobetemperature)があり,「0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度」という計算式によって算出されること,上記「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(甲18)の「熱中症予防のための運動指針」によれば,WBGTが21度以下の場合,熱中症発生の危険性は小さいが,21度ないし25度の場合,熱中症発生に注意が必要であり,25度ないし28度の場合,熱中症発生を警戒し,積極的に休息を取り水分を補 よれば,WBGTが21度以下の場合,熱中症発生の危険性は小さいが,21度ないし25度の場合,熱中症発生に注意が必要であり,25度ないし28度の場合,熱中症発生を警戒し,積極的に休息を取り水分を補給する必要があり,28度以上の場合,熱中症の危険が高いので激しい運動を避ける必要があるとされている。また,上記日本ラグビーフットボール協会の指導によれば,温度が27度以下で湿度が70%以下の場合,特に熱中症の予防処置は不要であるが,温度が27度ないし32度で湿度が70%の場合は熱ストレスの徴候を慎重に見守りながら練習を実施することとされ,温度が27度ないし32度で湿度が70%以上の場合には,練習を中止するか,または練習時間・練習内容を変更して慎重に実施する旨定められていることが認められる。 そして,前記1(3)において認定したとおり,本件事故当日の川西市における気象状況は,午前7時台の平均気温が27.2度,相対湿度が73.8パーセント,午前8時台の平均気温が28.4度,相対湿度が65.4パーセント,午前9時台の平均気温が29.8度,相対湿度が54.7パーセントであったことが認められるから,上記,日本ラグビーフットボール協会指導によれば,熱ストレスの徴候を慎重に見守りながら練習を実施するか,練習を中止,変更すべき気象であったと認められる。また,同気象状況から推定されるWBGTは,午前6時台が24.28度,午前7時台が24.68度,午前8時台が25.64度,午前9時台が26.77度であって(甲3),本件事故当日は熱中症発生を注意もしくは警戒する必要がある状況であったことが認められる。 これに対して,被告らは,本件事故当日の気象状況について,被告Aの体感としては,暑さも日照りも特別ということはなく,かえっ は警戒する必要がある状況であったことが認められる。 これに対して,被告らは,本件事故当日の気象状況について,被告Aの体感としては,暑さも日照りも特別ということはなく,かえって楽だと感じたこと,他の部員も同様の感想を有していたことをもって,当日の気象状況が特に熱中症を注意又は警戒すべき状況ではなかったと主張する。しかしながら,上記の複数の公刊物に記載された基準のいずれに照らしても,当日の気象状況が熱中症を注意もしくは警戒すべき状況にあったことは明らかであって,被告Aや部員らの主観的な感覚のみから,上記認定を覆すことはできない。 (イ) 本件事故当日におけるBの状態及び被告Aの認識前記認定のとおり,本件事故当日,Bは,午前6時40分ころの練習当初から動きが遅れがちであり,被告Aが体操隊形の指示をしてもその場で座り込んでしまい,午前7時過ぎの体操後に行われたヘッドダッシュタイムトライアルの際にも,頭上に飛んできたボールを取ろうとして尻餅をついたり,ボールを持つ走者を追わずにまっすぐゴールに向かうなどの普段とは異なる行動に出たほか,その後の3回目のキックダッシュの1本目においても,往復ともかなり遅れ,最後の5メートルのラストスパートもできないなど,皆の動きについていけないことが明らかで,B自身周囲の者に走れない旨訴えていたこと,そして,3回目のキックダッシュの2本目では,歩くより少し早い程度の速度でしか走れなくなってしまい,周囲の者が背中を押す手を離すと倒れてしまうほどで,何とかゴールしたものの,その時点(午前7時30分ころ)では,自力で立っていることすらできず,体には力が入らずぐったりした状態で,呼吸は荒く,目は半開きの状態であったこと,午前8時ころには,声をかけても「アーアー ものの,その時点(午前7時30分ころ)では,自力で立っていることすらできず,体には力が入らずぐったりした状態で,呼吸は荒く,目は半開きの状態であったこと,午前8時ころには,声をかけても「アーアー」と声にならない声が出るだけで,お茶を飲ませようとしても飲むこともできず,目の焦点も合わない状態になったこと,以上の各事実が認められる。 これらの事実に照らすと,Bは,本件事故当日,練習当初から体調の異常を示していたことが認められる。そして,遅くとも,3回目のキックダッシュの2本目終了時の午前7時30分ころには,Bは,自力で歩行することすらできず,体に力が入らずぐったりとした状態になり,呼吸も荒く,目も半開きの状態になるという明らかに異常な兆候を示していたのであるから,通常人の注意力をもってすればBの容態が悪いことは極めて容易に認識できたはずである。 そして,被告Aは,練習の当初こそBのそのような動きに気付いていなかったものの,1回目のキックダッシュの時点以降は,Bの動きの悪さを理由に懲罰的なキックダッシュを2回も行わせているのであるから,1回目のキックダッシュの時点以降は,Bの状態をよく観察していたと認めることができる。 以上の事実に加えて,Bは,3回目のキックダッシュのころ,被告Aに対して,足先を指さし「先生,足が痛い。」と訴え,また,3回目のキックダッシュの2本目終了後,被告Aから胸ぐらをつかまれて引き起こされそうになったときにも,「嫌や。」などと普段は使わないぞんざいな言葉を発して顔を背けているのであるから,B自身,これらの言動を通して,体調が悪いことを被告Aに直接訴えていたことが認められる。 (ウ) 被告Aの安全配慮義務違反以 して顔を背けているのであるから,B自身,これらの言動を通して,体調が悪いことを被告Aに直接訴えていたことが認められる。 (ウ) 被告Aの安全配慮義務違反以上のとおり,本件事故当日は,熱中症の発生を注意もしくは警戒すべき気象状況にあったこと,被告Aは屋外スポーツにおける日射病,熱射病の発生の危険性については,一応の知識を有していたと認められること,Bは,遅くとも午前7時30分ころには通常人であれば容態が悪いことを容易に認識できるほど明らかに異常な兆候を示していたこと,被告Aは,そのようなBの状態をよく観察していたこと,B自身が被告Aに対して直接体調の悪いことを訴えていたこと等を総合すると,遅くとも午前7時30分ころには,被告Aにおいて,Bが熱中症を発症しているおそれを十分に予見ないし認識できたはずであったと認められる。そして,被告Aは,前記のとおりの安全配慮義務(部員に熱中症を疑わせる症状がみられた場合は,直ちに練習を中止し,涼しい場所で安静にさせ,冷却その他体温を下げるなどの応急処置をとり,必要に応じて速やかに医療機関に搬送すべき注意義務)を負っていたのであるから,この時点において,Bの体温を下げるなどの応急措置をとりながらその容態を観察し,症状の軽減がみられない場合には速やかにBを医療機関に搬送すべきであったと認められる。 ところが,被告Aは,これらの措置を採らなかったどころか,Bが仮病を使って練習を怠けているものと頭から決めてかかり,ぐったりとなっているBに対し,「しんどいふりしてもあかんぞ。」「通用せんぞ。」「何でやろうとせんのや。」「14年間でこんなやつ見たことないぞ。」「演技は通用せん。」「ちゃんとせいよ。」などと筋違いな叱責,非難を繰り返し,Bの介抱を見学者に りしてもあかんぞ。」「通用せんぞ。」「何でやろうとせんのや。」「14年間でこんなやつ見たことないぞ。」「演技は通用せん。」「ちゃんとせいよ。」などと筋違いな叱責,非難を繰り返し,Bの介抱を見学者に委ねたまま放置し,午前8時40分に,目をつむったままアーアーと言うのみでぐったりとしているBを見てもまだ,膝をBの背筋にあてて伸ばす以外に積極的な措置を講じず,午前8時40分過ぎに至ってようやくBの容態に不安を感じ,保健室に運んだのであって,被告Aのこれらの一連の行動は,たとえBが練習を怠けていると思い込んでしまったことによる誤解の面があったとしても,あまりにも無思慮かつ軽率であって,安全配慮義務違反の過失が認められることは明らかである。 (2) 因果関係前記争いのない事実等において認定したとおり,熱射病は死の危険のある緊急事態であって,体を冷却しながら一刻も早く集中治療の可能な病院へ搬送する必要があり,いかに早く体温を下げて意識を回復させるかが予後を左右するので現場での応急処置が重要であること,死亡診断書(甲6)において,熱射病の発症時は死亡の約34時間前(本件事故当日の午前8時40分ころ)とされていること,大阪府立千里救命救急センターK医師の回答書(甲12の1・2)において,Bの救命可能時期につき,最後のキックダッシュ後,グラウンド中央付近に運ばれ,「アーアー」という声を発するようになったころと思われる旨の回答がなされていることからすると,前記認定のとおり,Bが明らかに異常な兆候を示すようになった午前7時30分ころに,被告Aが適切な救護措置を採っておれば,Bの死亡を回避し得た蓋然性は高いと認められる。 よって,本件において被告Aの過失行為とBの死亡との間には相当因果関係が認められる。 Aが適切な救護措置を採っておれば,Bの死亡を回避し得た蓋然性は高いと認められる。 よって,本件において被告Aの過失行為とBの死亡との間には相当因果関係が認められる。 これに対して,被告らは,Bの熱射病の原因が,前日までの疲労,睡眠不足,事故当日の朝食抜きにあったと主張して,被告Aの過失との因果関係を争う。 しかしながら,これらの事情により因果関係が否定されるためには,仮に被告Aが安全配慮義務を尽くしたとしても,これらの事情によって熱中症によるBの死亡という結果の発生することが避けられなかったことを要すると考えられるところ,そのような事実関係を認めるに足りる証拠はないのであって,被告らの主張は理由がない。 (3) 被告川西市の責任被告川西市は,公立学校の設置者として,課外クラブ活動における,生徒の身体,生命について安全を配慮する義務を負うところ,本件においては,前記認定のとおり,その職員である被告Aがその職務を行うにつき,その過失(安全配慮義務違反)により,Bを死に至らしめたのであるから,被告川西市には,原告らに対して,国家賠償法第1条1項に基づく損害賠償義務が認められる。 (4) 被告Aの責任前記認定のとおり,被告Aには,Bの熱中症による死亡について,安全配慮義務違反の過失を認めることができる。 しかしながら,公権力の行使にあたる国又は地方公共団体の公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には,国又は地方公共団体がその被害者に対して賠償の責に任ずるのであって,公務員個人はその責を負わないと解すべきである(最高裁昭和52年10月25日第三小法廷判決・裁判集民事122号87頁,最高裁昭和30年4月19日第三 体がその被害者に対して賠償の責に任ずるのであって,公務員個人はその責を負わないと解すべきである(最高裁昭和52年10月25日第三小法廷判決・裁判集民事122号87頁,最高裁昭和30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁等各参照)。 そして,被告Aは,公立中学校の職員として,学校教育の一環としての課外クラブ活動の指導監督を行うについてB及び原告らに損害を与えたのであるから,原告らの被告Aに対する請求は理由がないことに帰する。 (5) 損害ア相続分(ア) Bの逸失利益金3891万5419円前記認定のとおり,Bは本件事故による死亡当時,健康な13歳の男子であり,少なくとも18歳から67歳までは就労可能と認められるので,本件事故当時(平成11年度)の賃金センサス(第1巻第1表)に基づき,男子の学歴計・全年齢平均年収額562万3900円(顕著な事実)を基礎とし,その逸失利益につきライプニッツ方式により中間利息を控除し,生活費を5割控除して,死亡時の現価を求めると,以下の計算式のとおり,Bの逸失利益としては,3891万5419円となる(なお,1円以下は切り捨てとする)。 計算式:5,623,900円×(18.1687-4.3294)×(1-0.5)=38,915,419円(イ) Bの慰謝料金1500万円前記認定のとおり,Bは被告Aに救助を求めたにもかかわらず,同人に演技であると決めつけられ,取り合ってもらえず,約1時間にわたって放置された結果,13歳という若さで死亡するに至ったものであり,その間の肉体的,精神的苦痛と無念さは察するに余りある。かかる事情を に演技であると決めつけられ,取り合ってもらえず,約1時間にわたって放置された結果,13歳という若さで死亡するに至ったものであり,その間の肉体的,精神的苦痛と無念さは察するに余りある。かかる事情を考慮するならば,同人の死亡による慰謝料は1500万円をもって相当と認めるべきである。 (ウ) 相続原告らはBの両親であるから,Bの死亡により,上記損害の合計額の2分の1にあたる2695万7709円をそれぞれ相続した。 イ固有分(ア) 慰謝料各金300万円原告らは,被告Aを信頼して同人に最愛の子であるBの指導を託したにもかかわらず,被告Aの過失により,突然,前途ある我が子を13歳の若さで失ったのであり,その悲しみは計り知れない。しかしながら,他方で,原告らが上記のとおりBの損害を相続することを考慮して,原告らの慰謝料として各300万円を認めるのが相当である。 (イ) 葬儀費用各金100万円原告らは現実に葬儀費用として371万1561円を支払ったことが看取られるところ(甲9の1・2),Bを13歳の若さで突然失った原告らが,せめてBの記憶をできるだけ多くの関係者にとどめておいて欲しいという心情から,多数の会葬者の参列しうる葬儀を実施したことは十分理解しうるところであるから,上記葬儀費用の内,総額200万円(各100万円)の範囲で相当因果関係を認めるのが相当である。 ウ過失相殺被告らは,本件においてBの熱射病の原因が,Bの練習前の疲れと脱水にあったとして,過失相殺を主張する。 確かに,本件事故当日,Bを診察した ウ過失相殺被告らは,本件においてBの熱射病の原因が,Bの練習前の疲れと脱水にあったとして,過失相殺を主張する。 確かに,本件事故当日,Bを診察した医師作成のカルテ(乙7)には,Bの熱中症は,前日の疲れと脱水が誘因である旨の記載があるものの,同医師が,何を根拠にこのような診断を下したのかは同カルテをみても不明であって,本件全証拠に照らしてもそのような事実を認めることができず,むしろ,前記認定のとおり,本件事故当日まで特にBに体調の不調が認められないことに照らすと,カルテの上記記載は,医師としての推測や一般的な意見を記載したに過ぎないものと推認される。また,そもそも,当時Bはまだ中学1年生であって,身体も成長途中で未完成であって,自己管理能力も必ずしも十分でない年齢であることに鑑みると,そのような年齢の生徒に多少の疲れや体調不良が生じることは当然に起こり得る事態であって,ラグビー部の顧問教諭としては,そのような事態も想定して指導にあたるべきであり,Bの側に多少の疲労等の熱中症を発症させる誘因があったとしても,そのことを過失相殺の基礎として斟酌することはできないというべきである。 よって,被告らの過失相殺の主張は理由がない。 エ損益相殺原告らが,Bの死亡により日本体育・学校健康センターの災害共済給付金として2500万円を受領したことに争いはないところ,これはB及び原告らが被った損害の補填としての性質を有するものであるから,損益相殺として,その2分の1である各1250万円を控除すべきである。 オ弁護士費用各金185万円以上を合計すると,原告らの損害額は総額 1である各1250万円を控除すべきである。 オ弁護士費用各金185万円以上を合計すると,原告らの損害額は総額3691万5418円となること,本件事案の難易,性質等を総合すると,原告らが支払うべき弁護士費用のうち総額370万円(各185万円)の範囲で本件事故と相当因果関係を認めるのが相当である。 カまとめ以上を総合すると,本件において原告らの損害額は各2030万7709円となる。 3 結論以上の次第で,原告らの本訴請求は,いずれも主文の限度で理由があるからこれを認容し,その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判長裁判官上田昭典裁判官太田敬司裁判官北岡裕章
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