平成29(ワ)563 廃棄物撤去等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年4月16日 前橋地方裁判所
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判決文本文42,830 文字)

令和7年4月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第563号廃棄物撤去等請求事件口頭弁論終結日令和7年1月15日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告は、原告Aに対し、別紙物件目録記載1~4の土地に埋められた別紙撤去物目録記載の鉄鋼スラグを含む廃棄物を撤去せよ。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、鑑定嘱託に要した費用については全て被告の負担とし、その余 の訴訟費用については、原告Aに生じた費用の3分の1を被告の負担、被告に生じた費用の15分の11を原告らの負担とし、その余は各自の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求 ⑴ 被告は、原告Aに対し、別紙物件目録記載1~4の土地に埋められた鉄鋼スラグを含む廃棄物を撤去せよ。 ⑵ 被告は、原告Aに対し、1億6535万6433円及びこれに対する平成30年1月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ⑶ 被告は、原告B有限会社に対し、5076万2817円及びこれに対する 平成30年1月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ⑷ 被告は、原告Cに対し、550万円及びこれに対する平成30年1月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ⑸ 被告は、原告Dに対し、330万円及びこれに対する平成30年1月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ⑹ 被告は、原告Eに対し、330万円及びこれに対する平成30年1月7日 から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ⑺ 被告は、原告Fに対し、330万円及び を支払え。 ⑹ 被告は、原告Eに対し、330万円及びこれに対する平成30年1月7日 から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ⑺ 被告は、原告Fに対し、330万円及びこれに対する平成30年1月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 予備的請求(主位的請求⑴に対する予備的請求)被告は、原告Aに対し、8352万9750円及びこれに対する平成30年 1月7日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告らが、原告A所有の土地に埋められている異物は被告が排出した鉄鋼スラグであり、原告らは当該鉄鋼スラグの膨張による被害及び当該鉄鋼スラグに含有されている有害物質による被害を受けたなどと主張して、①原告 Aが、被告に対し、㋐主位的に、所有権に基づく妨害排除として当該土地に埋められている鉄鋼スラグを含む廃棄物の撤去を、予備的に、不法行為に基づく損害賠償の一部請求として、更に予備的に、債務不履行に基づく損害賠償の一部請求として、2億1450万8000円のうち8352万9750円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成30年1月7日から支払済みまで民 法〔平成29年法律第44号による改正前のもの〕所定の年5%の割合による遅延損害金)の支払を求めるとともに、㋑主位的に、不法行為に基づく損害賠償として、予備的に、債務不履行に基づく損害賠償として、1億6535万6433円(附帯請求として前同日から支払済みまで前同様の遅延損害金)の支払を求め、②原告B有限会社が、被告に対し、主位的に、不法行為に基づく損 害賠償として、予備的に、債務不履行に基づく損害賠償として、5076万2817円(附帯請求として前同日から支払済みまで前同様の遅延損害金 B有限会社が、被告に対し、主位的に、不法行為に基づく損 害賠償として、予備的に、債務不履行に基づく損害賠償として、5076万2817円(附帯請求として前同日から支払済みまで前同様の遅延損害金)の支払を求め、③原告Cが、被告に対し、主位的に、不法行為に基づく損害賠償として、予備的に、債務不履行に基づく損害賠償として、550万円(附帯請求として前同日から支払済みまで前同様の遅延損害金)の支払を求め、④原告D、 原告E及び原告Fが、被告に対し、主位的に、不法行為に基づく損害賠償とし て、予備的に、債務不履行に基づく損害賠償として、それぞれ330万円(附帯請求として前同日から支払済みまで前同様の遅延損害金)の支払を求めた事案である。 1 前提事実(後掲の証拠等により認められる。)⑴ 当事者等 ア原告A(以下「原告A」という。)は、別紙物件目録記載1~4の土地(以下「本件土地」という。)を所有しており、本件土地上に別紙物件目録記載5の建物(以下「本件居宅」という。)を所有している。(甲1~4、101)イ原告B有限会社(以下「原告会社」という。)は、建築工事の請負等を 目的とする会社であり、その取締役は原告Aである。原告会社は、本件土地上に別紙物件目録記載6の建物(以下「本件作業所」という。)を所有している。(甲5、弁論の全趣旨)ウ原告Cは、原告Aの妻であり、原告D、原告E及び原告Fは、原告Aの子であり、亡Gは、原告Aの母である。また、亡H(以下「亡H」という。) は、原告Aの父であり、平成17年4月10日、死亡した。(甲83~87、118、119、弁論の全趣旨)エ原告A、原告C及び亡Gは、本件居宅が建設されて以降、本件居宅に居住して生活してきており、原告D 父であり、平成17年4月10日、死亡した。(甲83~87、118、119、弁論の全趣旨)エ原告A、原告C及び亡Gは、本件居宅が建設されて以降、本件居宅に居住して生活してきており、原告D、原告E及び原告Fも、本件居宅に居住して生活してきた(ただし原告Dについては平成28年6月頃に転居し た。)。(甲4、83~87、118、119、弁論の全趣旨)オ亡Gは、令和5年12月10日、死亡し、原告Aが相続し、訴訟承継した。(当裁判所に顕著)カ被告は、特殊鋼、超合金、普通鋼の製造、加工及び販売等を目的とする会社である。(弁論の全趣旨) ⑵ 亡Hによる宅地造成等の経緯 ア亡Hは、昭和53年2月から昭和55年1月にかけて、自宅及び原告会社の作業所を建てるために、本件土地を取得した。本件土地は、傾斜地であり、宅地造成のためには埋め土が必要であった。そこで、亡Hは、当初、知り合いである株式会社Iに、埋め土の用意を依頼した。しかし、その後、亡Hは、同級生であり当時被告の従業員であったJ(以下「J」という。) から、硬くて締まりのよい埋め土に最適なものがあり、被告から無償で提供できるなどと勧められたため、株式会社Iへの依頼を断り、被告から埋め土の提供を受けることとした。(甲1~3、15、16、18の1、甲48、87、101、119、原告A本人、弁論の全趣旨)イ原告会社は、昭和56年11月、本件土地上に本件作業所を建設した。 また、亡Hは、昭和60年12月、本件土地上に本件居宅を建設した。(甲4、5)⑶ 被害の発生本件居宅が建設されて5年ほど経過した平成2年頃、本件居宅や本件作業所の基礎コンクリートにひびが入り始め、建具が少し斜めになるなど建付け した。(甲4、5)⑶ 被害の発生本件居宅が建設されて5年ほど経過した平成2年頃、本件居宅や本件作業所の基礎コンクリートにひびが入り始め、建具が少し斜めになるなど建付け が悪くなった。その後、本件居宅が建設されて10年ほど経過した平成7年頃、本件居宅や本件作業所の建具の建付けが更に悪くなり、玄関の戸口や窓の開閉が困難になった。更に時間が経過すると、コンクリートが隆起してひび割れ、水道管が破裂し、外壁にひびが入り、柱が傾き、柱や梁のほぞが抜け、台所や廊下の床が傾斜した。 原告Aは、本件居宅や本件作業所を繰り返し修理したが、効果はなく、上記のようなひび割れ等が生じ続け、現在に至っている。(以上につき、甲14、48、99、119、原告A本人、鑑定嘱託)⑷ 被告による鉄鋼スラグの排出等ア被告は、群馬県渋川市ab番地所在の工場(以下「被告渋川工場」とい う。)において、ステンレスの特殊鋼を製造しているところ、その製鋼過 程において、電気炉系の鉄鋼スラグが副産物として生成される。(甲50、弁論の全趣旨)被告は、平成3年度以降、鉄鋼スラグの出荷を開始し、群馬県内の複数の公共工事において、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグを含む材料が使用された。(甲10、22~25) イ渋川市が運営する遊園地である渋川スカイランドパークの駐車場等においても、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグが路盤材として使用されていたところ、平成25年頃、当該駐車場の改修工事に伴う環境調査の結果、当該駐車場の路盤材として使用されたものと同時期に被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグから、土壌汚染対策法における溶出量基準値又は 含有量基準値(以下「環境基準値」という。)を超える の結果、当該駐車場の路盤材として使用されたものと同時期に被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグから、土壌汚染対策法における溶出量基準値又は 含有量基準値(以下「環境基準値」という。)を超えるフッ素や六価クロムが検出された。(甲24、26、29、乙33の1)その後の調査の結果、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグを含む材料が使用された群馬県内の公共工事のうち複数の工事について、使用された鉄鋼スラグから、環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出された。 (甲22~25)被告及び渋川市は、平成27年12月頃、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグを含む材料が使用された渋川市内の公共工事のうち、使用された鉄鋼スラグから環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されたものについて、鉄鋼スラグの撤去その他の処理に要する費用を被告が負担 する方向で合意し、その後、個別の工事ごとに、鉄鋼スラグの処理に要する費用を被告が負担する旨の契約を締結した。(甲24、43、107)⑸ 本件土地に埋められている物質の調査等毎日新聞社の記者であるKは、平成27年7月頃、本件土地に埋められている団塊状の物質(以下「本件異物」という。)を採取し、検査機関におい て検査した。その結果、本件異物から、六価クロムや環境基準値を超えるフ ッ素が検出された。(甲6、9、48、原告A本人)長岡技術科学大学のL名誉教授(以下「L教授」という。)は、平成27年10月頃、鉄鋼スラグは適切な処置をしなければ膨張することがあり、前記⑶のような本件居宅や本件作業所のコンクリートのひび割れ等は、鉄鋼スラグの膨張が原因とみて間違いない旨指摘した(以下、前記⑶のような本件 居宅や本件作業所のコンクリートのひび割れ とがあり、前記⑶のような本件居宅や本件作業所のコンクリートのひび割れ等は、鉄鋼スラグの膨張が原因とみて間違いない旨指摘した(以下、前記⑶のような本件 居宅や本件作業所のコンクリートのひび割れ等の被害を「本件膨張被害」という。)。(甲6)東京農工大学のM准教授(肩書は当時。以下「M准教授」という。)は、平成27年10月頃、本件土地の周辺土壌を採取して検査したところ六価クロムが検出されたことを受け、六価クロムは自然界になく、鉄鋼スラグによ る土壌汚染が起きている旨指摘した(以下、本件異物に含有されているフッ素や六価クロム等の有害物質による被害を「本件有害物質被害」といい、本件膨張被害と併せて「本件被害」という。)。(甲6)⑹ 本件訴訟の提起等ア原告らは、平成29年6月26日、前橋簡易裁判所において、被告を相 手方として、損害賠償等を求める調停の申立てをした。しかし、当該調停は、同年10月26日、不成立となった。(当裁判所に顕著)イ原告らは、平成29年11月9日、当庁において、前記アの調停の目的となった請求について、本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著)ウ被告は、原告らに対し、平成31年3月20日、本件第1回弁論準備手 続期日において、原告らの被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権について、消滅時効を援用するとの意思表示をした。(当裁判所に顕著) 2 争点⑴ 本件異物は被告が排出した鉄鋼スラグであるか否か(争点1)⑵ 被告が本件異物の妨害排除義務を負うか否か(争点2〔所有権に基づく妨 害排除請求の争点〕) ⑶ 原告Aの所有権に基づく妨害排除請求が権利濫用に当たるか否か(争点3〔所有権に基づく妨害排除請求の争点〕)⑷ 被告 否か(争点2〔所有権に基づく妨 害排除請求の争点〕) ⑶ 原告Aの所有権に基づく妨害排除請求が権利濫用に当たるか否か(争点3〔所有権に基づく妨害排除請求の争点〕)⑷ 被告が本件異物を亡Hに提供して本件被害を生じさせたか否か(争点4〔不法行為に基づく損害賠償請求の争点〕)⑸ 埋め土の贈与契約の成否(争点5〔債務不履行に基づく損害賠償請求の争 点〕)⑹ 埋め土の贈与契約についての被告の債務不履行の有無(争点6〔債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕)⑺ 原告らの損害及び損害額(争点7〔不法行為に基づく損害賠償請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕) ⑻ 除斥期間の経過の有無(争点8〔不法行為に基づく損害賠償請求の争点〕)⑼ 被告の除斥期間の主張等が制限されるか否か(争点9〔不法行為に基づく損害賠償請求の争点〕)⑽ 消滅時効の成否(争点10〔債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕)⑾ 過失相殺(争点11〔不法行為に基づく損害賠償請求及び債務不履行に基 づく損害賠償請求の争点〕) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 本件異物は被告が排出した鉄鋼スラグであるか否か(争点1)(原告らの主張)ア本件異物は鉄鋼スラグであるか否か 鑑定嘱託の結果によれば、本件異物は外観が鉄鋼スラグの特徴を示すこと、本件異物には鉄鋼スラグの製鋼過程で使用される耐火レンガ等が混在していること、本件異物の単位容積質量が鉄鋼スラグの条件を満たすこと、本件異物が本件居宅に甚大なゆがみを生じさせる本件膨張被害を発生させたこと、本件異物は鉄鋼スラグの特徴である強いアルカリ性を示したこ と、本件異物は鉄鋼スラグと同様の組成を示したこと、本件異 本件異物が本件居宅に甚大なゆがみを生じさせる本件膨張被害を発生させたこと、本件異物は鉄鋼スラグの特徴である強いアルカリ性を示したこ と、本件異物は鉄鋼スラグと同様の組成を示したこと、本件異物から鉄鋼 スラグと同様の鉱物組織が確認できたことが認められるから、本件異物は鉄鋼スラグであると認められる。 イ本件異物は被告が排出したものであるか否か被告渋川工場はステンレス鋼を取り扱う工場であり、その生成過程で発生する鉄鋼スラグは、高濃度のフッ素や六価クロムを含有するという特徴 を有し、ステンレス片等が混在する可能性が高いところ、本件異物はその特徴を有する。また、被告は、塊状のまま破砕処理を十分にせずに鉄鋼スラグを排出していたところ、そのような被告の処理実態とも合致する。さらに、本件異物と被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグとは、蛍光X線分析による組成分析、単位容積質量やアルカリ性検査でも、類似性を示し た。そうすると、本件異物は、被告が排出した鉄鋼スラグの特徴を有している。 また、N供述(甲15)及びO供述(甲16)は、亡Hが同級生であり当時被告の従業員であったJから埋め土の提供を勧められた旨を述べるところ、十分信用できる。また、P供述(甲17)は、被告から提供され た鉄鋼スラグが本件土地に埋め土として使用されていることを目にした旨を述べるところ、十分信用できる。Jが被告の従業員として実在していることも、上記各供述の信用性を裏付ける。 さらに、産業廃棄物である鉄鋼スラグの処理には莫大な費用がかかるから、本件土地に搬入することは被告に大きな経済的メリットがあり、被告 には非常に強い動機があった。現に、被告は、逆有償取引をして大量の鉄鋼スラグを群馬県内に排出して社会問 莫大な費用がかかるから、本件土地に搬入することは被告に大きな経済的メリットがあり、被告 には非常に強い動機があった。現に、被告は、逆有償取引をして大量の鉄鋼スラグを群馬県内に排出して社会問題を引き起こしたという実態もある。そして、本件異物の搬入時は、エージング処理未発達等による有効利用率の低さや最終処分場未設置等の事情があり、被告の動機は一層強かった。 そして、被告が本件異物を廃棄物処分場ではなく本件土地に搬入する目 的は、処理費用の節約にあるところ、輸送距離が伸びれば高額な運送費を要することから、本件異物の排出元は本件土地に近接した場所にある。被告以外の本件異物の排出元の候補となる工場の位置は、いずれも本件土地から離れており、排出元であるとは考え難い。一方で、被告渋川工場は本件土地と非常に近い場所にあり、現に、本件土地を含む被告渋川工場の周 辺には、被告排出の鉄鋼スラグが搬入された場所が多数存在する。そして、社会問題となって被告が捜査を受けた際に、被告以外の工場が群馬県内に塊状の鉄鋼スラグを違法に処分していたという話題は一切出ていない。また、被告が排出した鉄鋼スラグが宅地造成に使用された事実も明らかになっている。そうすると、本件異物は、被告以外の排出元が考えられない。 したがって、本件異物は被告が排出したものであると認められる。 (被告の主張)ア本件異物は鉄鋼スラグであるか否か鑑定嘱託の結果は、本件異物が電気炉系の鉄鋼スラグである可能性が否定できないと結論付けるにとどまり、本件異物が鉄鋼スラグ以外の物質で ある可能性を残すものである。 また、本件異物が全て一定の成分を示すことは立証されていない。 さらに、基礎コンクリート等の るにとどまり、本件異物が鉄鋼スラグ以外の物質で ある可能性を残すものである。 また、本件異物が全て一定の成分を示すことは立証されていない。 さらに、基礎コンクリート等のひび割れや床の傾斜は不同沈下によっても発生し得るものであり、本件膨張被害の原因として鉄鋼スラグ以外の原因を排斥できていないから、本件膨張被害から本件異物が鉄鋼スラグであ ることを推認することはできない。 したがって、本件異物は鉄鋼スラグであるとは認められない。 イ本件異物は被告が排出したものであるか否か被告は、鉄鋼スラグを仮設用道路材として有償で売却・出荷してきており、処分に苦慮していた事実はなく、原告らの主張によれば、被告は生成 した有価物である鉄鋼スラグを無価値物として取り扱ったことになるが、 何ら経済合理性がない。 また、本件異物と被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグの成分等の類似性から、排出元の同一性を認定することはできない。 さらに、六価クロムを含有した鉄鋼スラグは、理論上、特殊鋼メーカーのみならず普通鋼メーカーも排出し得るし、また、鉄鋼スラグの物流には 海上輸送も存在し、陸上輸送による輸送距離のみの観点から経済合理性を論じるのは、物流の実態を考慮しないものであるから、被告渋川工場以外に本件異物の排出可能性がないとはいえない。 加えて、亡Hが同級生であり当時被告の従業員であったJから埋め土の提供を勧められた旨を述べるN供述(甲15)及びO供述(甲16)は、 実体験を伴わない伝聞供述であること、被告は鉄鋼スラグを製品として有償で売却・出荷してきており、亡Hに無償で提供することは経済合理性を欠き、亡Hの認識としても、硬くて締まりのよい素材を大量 実体験を伴わない伝聞供述であること、被告は鉄鋼スラグを製品として有償で売却・出荷してきており、亡Hに無償で提供することは経済合理性を欠き、亡Hの認識としても、硬くて締まりのよい素材を大量に譲り受けることを認識した上で対価が発生していないというのは著しく経験則に反すること、Jは被告の技術系列の従業員であり対外業務に係る決裁権限は ないから、客観的事実に反することからすると、信用できない。 したがって、本件異物は被告が排出したものであるとは認められない。 ⑵ 被告が本件異物の妨害排除義務を負うか否か(争点2〔所有権に基づく妨害排除請求の争点〕)(原告Aの主張) ア鉄鋼スラグである本件異物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)の文言上、鉱さいとして産業廃棄物に該当する。 また、実質的に検討しても、本件異物の搬入時の鉄鋼スラグの一般的取扱い状況としては、鉄鋼スラグの膨張化を抑える技術が確立されておらず、有効利用が遅れていたこと、本件異物の搬入時の被告による鉄鋼スラグの 取扱い状況としては、被告の鉄鋼スラグが社会問題になったことにより、 被告が、鉄鋼スラグについて適法な処理を行わず、逆有償取引によって大量の鉄鋼スラグ(その多くは環境基準値を超えるフッ素や六価クロム等を含む。)を群馬県内に排出していたことが明らかになったところ、本件異物の搬入は社会問題となった鉄鋼スラグが取り扱われた時期よりも前であるが、被告は、最終処分場の設置後も、適法な処理を行わず、逆有償取 引によって大量の鉄鋼スラグを群馬県内に排出していたのであり、それ以前はなおさら廃掃法に違反する処理をしていたといえること、本件異物は、被告が積極的に勧め、無償でかつ多額の輸送費も被告 有償取 引によって大量の鉄鋼スラグを群馬県内に排出していたのであり、それ以前はなおさら廃掃法に違反する処理をしていたといえること、本件異物は、被告が積極的に勧め、無償でかつ多額の輸送費も被告の負担で提供されたこと、本件異物の性状は、破砕・地金回収・エージングが全て未処理であり、有害物質であるフッ素や六価クロムを含んでおり、耐火レンガ等の廃 棄物が混在していること、群馬県が被告排出の鉄鋼スラグを産業廃棄物と認定して刑事告発しており、被告も鉄鋼スラグの撤去等の費用を負担しており鉄鋼スラグが産業廃棄物であることを認めているといえることからすると、本件異物が産業廃棄物に該当することは明らかである。 イ所有権に基づく妨害排除請求は、その所有権を侵害し、あるいは侵害す るおそれのある物の所有権を有する者に限らず、現に存する侵害状態を作出した者もその排除の義務を負うものと解すべきである。 本件被害が発生し、原告Aの本件土地の所有権が侵害されているところ、被告が本件異物を排出して原告Aに提供したのであるから、被告がその侵害状態を作出したことは明らかである。 したがって、被告は、本件異物の所有権の帰属にかかわらず、本件異物の妨害排除義務を負う。なお、本件異物は産業廃棄物であり、排出者である被告は、廃掃法に基づく処理責任を負うのであり、その点からも本件異物を撤去すべき義務を負う。 被告は、本件異物が、本件土地に埋め立てられ、本件土地の構成部分と なっているから、妨害状態が継続して存在しているとはいえない旨主張す るが、本件異物は、固い層をなしており、土砂と識別することが可能であり、実際に鑑定嘱託により土砂と区別して識別されて本件異物の存在範囲と数量が計測されているから、本件 るとはいえない旨主張す るが、本件異物は、固い層をなしており、土砂と識別することが可能であり、実際に鑑定嘱託により土砂と区別して識別されて本件異物の存在範囲と数量が計測されているから、本件土地の構成部分となっているとはいえない。 ウ仮に、所有権に基づく妨害排除請求は、相手方が妨害物の所有権を有す ることが必要であると考えたとしても、本件異物の所有者は被告であり、被告が妨害排除義務を負う。すなわち、本件異物の有害性に鑑みれば、亡Hが本件異物を宅地造成のための埋め土として本件土地に搬入することを承諾するとは考えられず、公序良俗違反、権利濫用又は錯誤により、本件異物の所有権は被告から亡Hに移転しないというべきである。 (被告の主張)ア被告は、本件異物が本件土地に搬入された当時、鉄鋼スラグの品質管理を行い、仮設用道路材として製品化し、有償で売却・出荷していたこと、被告が逆有償取引によって鉄鋼スラグを流通においてきた事実は認められないこと、前橋地方検察庁検察官が、廃掃法違反で刑事告発された被告 の代表取締役について、不起訴処分としたことからすると、本件異物が産業廃棄物に該当するとは認められない。 イ本件土地の宅地造成のための埋め土として本件異物を使用することを決めたのは亡Hであり、被告が侵害状態を作出したとは評価できない。亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、本件異物が鉄鋼スラグで あること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識していたといえ、そのようなリスクを甘受して本件異物の提供を受けたから、被告が侵害状態を作出したとは評価できない。被告は、宅地造成のための埋め土として使用されることを想定し すリスクがあることを認識していたといえ、そのようなリスクを甘受して本件異物の提供を受けたから、被告が侵害状態を作出したとは評価できない。被告は、宅地造成のための埋め土として使用されることを想定して鉄鋼スラグを製造・販売したことはなく、 被告としては、何らかの事情で通常の用途とは異なる方法で自社製品が使 用され、それが原因で何らかの損害が生じたとしても、それをもって被告が侵害状態を作出したとは評価できない。 さらに、本件異物は、本件土地に埋め立てられ、本件土地の構成部分となっているから、妨害状態が継続して存在しているとはいえない。 ウ本件異物が被告から亡Hに提供されたことにより、本件異物の所有権は 被告から亡Hに移転している。前記イのとおり、亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、本件異物が鉄鋼スラグであること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識していたから、本件異物の搬入についての亡Hの承諾が錯誤等に当たるとして、本件異物の所有権の移転を 否定することはできない。 ⑶ 原告Aの所有権に基づく妨害排除請求が権利濫用に当たるか否か(争点3〔所有権に基づく妨害排除請求の争点〕)(被告の主張)本件被害は、亡H自身の行為が原因であり、かつ、原告Aは、遅くとも平 成7年時点で被告に対して所有権に基づく妨害排除請求をすることが十分に可能であったのに、本件異物が本件土地に搬入されてから40年近く経過してから権利の主張をしている。亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、本件異物が鉄鋼スラグであること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリス ら権利の主張をしている。亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、本件異物が鉄鋼スラグであること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクが あることを認識していた。本件は40年近く前の出来事を理由とするものであり、時間の経過による証拠の逸失という弊害は殊に顕著である。原告Aの所有権に基づく妨害排除請求を認めれば、通常の不法行為が20年の除斥期間を設けていることと均衡を失するし、時間の経過に伴い証拠を逸失した被告が本件異物の撤去という多大な負担を被ることになる。したがって、原告 Aの所有権に基づく妨害排除請求は権利濫用に当たるといえる。 (原告Aの主張)本件被害は、被告が本件異物を本件土地に搬入したことが原因である。原告Aは、本件被害の原因が判明して速やかに権利行使をしている。時間の経過による証拠の逸失という不利益は、主として立証責任を負っている原告らが被っているものである。被告が本件被害の原因を作出したのに、多大な資 力を有する被告が責任を免れる一方、はるかに資力の乏しい原告らに何らの救済も与えられないことの方が、よほど信義に反する。利益を追求して民有地に産業廃棄物である鉄鋼スラグを投棄した被告の責任は重い。したがって、原告Aの所有権に基づく妨害排除請求が権利濫用に当たるとはいえない。 ⑷ 被告が本件異物を亡Hに提供して本件被害を生じさせたか否か(争点4〔不 法行為に基づく損害賠償請求の争点〕)(原告らの主張)被告は、産業廃棄物である本件異物を、廃棄物処分場で処理すべきであったのに、処理費用の負担を免れるため、個人である亡Hに提供した。また、被告は、鉄鋼スラグを取り扱う企業として、これを個人に提供するのであれ 、産業廃棄物である本件異物を、廃棄物処分場で処理すべきであったのに、処理費用の負担を免れるため、個人である亡Hに提供した。また、被告は、鉄鋼スラグを取り扱う企業として、これを個人に提供するのであれ ば、膨張性や六価クロム等の有害物質の含有について伝えるべきであったのに、その有害性を伝えず、かえって宅地造成用の埋め土として適切であると説明して提供した。そうすると、被告は、本件異物を亡Hに提供した結果原告らに生じた損害を賠償する責任がある。 (被告の主張) 本件異物が産業廃棄物に該当するとは認められない。また、亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、自ら確認し又はJから説明を受けて、本件異物が鉄鋼スラグであること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識していた。そうすると、被告が不法行為に該当する行為をしたことは 認められない。 ⑸ 埋め土の贈与契約の成否(争点5〔債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕)(原告らの主張)亡Hは、被告との間で、Jを通じて、本件土地の宅地造成のための埋め土を無償で譲り受ける旨の契約を締結した。 被告は、仮にJが契約を締結したとしても、被告の関知しないところであり、被告との間に契約は成立しない旨主張するが、被告は、廃棄物排出事業者としてその処理責任を負うこと、被告の従業員であるJ個人が多額な輸送費を無償で負担するわけがないことからすると、大量の鉄鋼スラグである本件異物の譲渡に被告が何ら関与していないということはあり得ない。 (被告の主張)亡Hと被告との間で埋め土の贈与契約が締結されたとは認められない。 仮にJが契約を締結した 件異物の譲渡に被告が何ら関与していないということはあり得ない。 (被告の主張)亡Hと被告との間で埋め土の贈与契約が締結されたとは認められない。 仮にJが契約を締結したとしても、Jは無権限であり、契約の効果が被告に帰属することはない(民法113条1項)。 ⑹ 埋め土の贈与契約についての被告の債務不履行の有無(争点6〔債務不履 行に基づく損害賠償請求の争点〕)(原告らの主張)ア前記⑸の契約の債務の内容は、宅地の埋め土として適切なものを譲渡することである。しかし、被告から提供された埋め土は、鉄鋼スラグであり、膨張性や有害性等を有しており、宅地の埋め土として不適切であり、不完 全履行である。そうすると、被告には債務不履行がある。 仮に、債務の内容が、鉄鋼スラグを譲渡することであったとしても、製品として価値のある鉄鋼スラグを提供すべきであり、産業廃棄物である鉄鋼スラグを提供したのでは最低限の品質を満たしておらず、不完全履行である。そうすると、被告には債務不履行がある。 イ被告は、鉄鋼スラグを宅地の埋め土として亡Hに譲渡するに際し、鉄鋼 スラグが産業廃棄物に該当すること、有害物質を含有していること及び将来膨張する可能性があることを説明する義務があったのに、これらを一切説明しなかったから、説明義務違反がある。そうすると、被告には債務不履行がある。 (被告の主張) ア亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、本件異物が鉄鋼スラグであること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識していたから、贈与契約の債務の内容は、膨張性等を含む性質を有する鉄鋼スラグを譲渡す 、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識していたから、贈与契約の債務の内容は、膨張性等を含む性質を有する鉄鋼スラグを譲渡することであり、被告に不完全履行はない。 イ亡Hは、自ら建設会社である原告会社を営んでいたから、建設資材等に関する専門家であるといえ、鉄鋼スラグの性質等についても豊富な専門知識を有し、情報を容易に収集し得る立場にあったといえる。亡Hと被告との間に著しい情報格差は存在せず、被告において積極的に情報を開示せずとも、亡Hにおいて自己決定を行うことが十分可能であったこと等からす ると、被告に説明義務は発生しない。 仮に被告が説明義務を負っていたとしても、亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、自ら確認し又はJから説明を受けて、本件異物が鉄鋼スラグであること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認 識していたから、被告に説明義務違反はない。 ⑺ 原告らの損害及び損害額(争点7〔不法行為に基づく損害賠償請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕)(原告らの主張)ア原告Aの損害(主位的請求⑵) (ア) 本件居宅の建替費用相当額 4414万7760円 本件居宅は、埋め土として使用された鉄鋼スラグである本件異物によって本件被害が発生し、社会経済的に価値のある建物として機能しなかったから、損害額の認定においては、使用利益論又は経年減価論による損益相殺は認められず、本件居宅の建替費用相当額が損害として認められるというべきである。 (イ) 本件居宅解体費用 ら、損害額の認定においては、使用利益論又は経年減価論による損益相殺は認められず、本件居宅の建替費用相当額が損害として認められるというべきである。 (イ) 本件居宅解体費用 899万5800円(ウ) 本件居宅修理費用 1306万9300円(エ) 造成費用 905万3000円(オ) 転居費用 307万2000円(カ) 移植伐採費用 575万3000円 (キ) 景石・石垣費用 4031万5000円(ク) スロープコンクリート・擁壁費用 1281万7270円(ケ) 排水管撤去・新設工事費用 310万0900円(コ) 慰謝料 1000万0000円(サ) 弁護士費用 1503万2403円 (シ) 小計 1億6535万6433円イ原告Aの損害(予備的請求〔主位的請求⑴に対する予備的請求〕)(ア) 本件異物の撤去費用 1億9500万8000円(イ) 弁護士費用 1950万0000円(ウ) 小計 2億1450万8000円 ウ原告会社の損害(主位的請求⑶)(ア) 本件作業所の建替費用相当額 3093万0416円前記ア(ア)と同じ。 (イ) 本件作業所解体費用 418万0000円(ウ) 本件作業所修理費用 相当額 3093万0416円前記ア(ア)と同じ。 (イ) 本件作業所解体費用 418万0000円(ウ) 本件作業所修理費用 467万0400円 (エ) 仮設事務所設置費用 155万5200円 (オ) 貸倉庫費用及び資材運搬費用 198万0000円(カ) 自動車仮置き場費用 283万2000円(キ) 弁護士費用 461万4801円(ク) 小計 5076万2817円エ原告Cの損害(主位的請求⑷) (ア) 慰謝料 500万0000円(イ) 弁護士費用 50万0000円(ウ) 小計 550万0000円オ原告Dの損害(主位的請求⑸)(ア) 慰謝料 300万0000円 (イ) 弁護士費用 30万0000円(ウ) 小計 330万0000円カ原告Eの損害(主位的請求⑹)(ア) 慰謝料 300万0000円(イ) 弁護士費用 30万0000円 (ウ) 小計 330万0000円キ原告Fの損害(主位的請求⑺)(ア) 慰謝料 300万0000円(イ) 弁護士費用 330万0000円キ原告Fの損害(主位的請求⑺)(ア) 慰謝料 300万0000円(イ) 弁護士費用 30万0000円(ウ) 小計 330万0000円 (被告の主張)ア原告らの主張のうち、本件居宅及び本件作業所の建替費用相当額については、本件居宅及び本件作業所の引渡しの当初から構造耐力上の安全性にかかわる具体的な危険があったとは認められないし、少なくとも本件居宅における生活に具体的な支障が発生し始めたのは本件居宅が建設されて 10年ほど経過した頃であるから、原告らは、本件居宅及び本件作業所か ら居住・使用の利益を十分に享受していたといえ、損害額の認定においては、損益相殺がされるべきである。 イ原告らの主張のうち、造園等、景石移動、石撤去、スロープコンクリート等の撤去及び復元費用については、合計1000t近くにも及ぶ大量の庭石等が一般的な宅地上に設置されることは通常想定しにくいから、これ らの費用は「特別の事情によって生じた損害」であるところ、被告がその事情を予見し、又は予見することができたことは立証されていないから、賠償されるべき損害の範囲に含まれない。 ウ原告らの主張のうち、本件膨張被害による修理費用等については、原告らは、除斥期間の起算点である損害発生時が平成27年10月頃であると する一方でそれ以前に支出した修繕費用が損害に含まれる旨主張しており両立しないし、また、本件膨張被害と修理費用等の支出との因果関係が立証されていない。 エ原告らの主張のうち、修理費用及び資材運搬費用については、原告らが 費用が損害に含まれる旨主張しており両立しないし、また、本件膨張被害と修理費用等の支出との因果関係が立証されていない。 エ原告らの主張のうち、修理費用及び資材運搬費用については、原告らが費用の根拠とする内訳書等(甲73、79、80)に信用性が認められな い。 オ原告らの主張のうち、本件居宅解体費用、造成費用、造園等、景石移動、石撤去、石組み費用、スロープコンクリート撤去・擁壁設置工事費用、排水管撤去・新設工事費用、慰謝料、本件作業所解体費用及び弁護士費用については、いずれも、損害額が過大である。 カ本件土地の全域に本件異物が埋められていることは立証されていない。 ⑻ 除斥期間の経過の有無(争点8〔不法行為に基づく損害賠償請求の争点〕)(被告の主張)本件膨張被害による損害賠償請求権については、仮に、その損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生するものと認め られるとしても、本件膨張被害は、平成2年頃から発生し、その後、平成7 年頃には、本件膨張被害が悪化し、亡H及び原告らとして本件膨張被害の原因は本件異物であると認識していたといえるから、除斥期間の起算点は、平成7年とすべきである。 本件有害物質被害による損害賠償請求権については、その損害の性質上、本件異物が本件土地に搬入された時点で直ちに損害が発生するものであるか ら、除斥期間の起算点は、本件異物が本件土地に搬入された昭和56年頃とすべきである。原告らは、本件有害物質被害は、専門家による化学分析の結果として損害が顕在化した旨主張するが、それは、昭和56年頃当時から既に存在していた損害を、化学分析がされた時点になってから事実上認識したというにすぎない。 し による化学分析の結果として損害が顕在化した旨主張するが、それは、昭和56年頃当時から既に存在していた損害を、化学分析がされた時点になってから事実上認識したというにすぎない。 したがって、原告らの被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は、既に除斥期間の経過により消滅している。 (原告らの主張)本件膨張被害による損害賠償請求権については、その損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生するものと認められ るところ、本件膨張被害による損害は、膨張の規模及び期間が一定程度に達し、その原因を専門家が特定し、建物の建替えを要することが明らかになった時点で初めて明らかになるから、除斥期間の起算点は、L教授が本件膨張被害の原因が鉄鋼スラグの膨張にある旨指摘した平成27年10月頃とすべきである。 また、本件有害物質被害による損害賠償請求権については、六価クロム等の有害物質が地下水に溶け出してその地下水を飲んでしまったり、有害物質を含む土壌が口や肌に触れることで体内に摂取してしまったりして、有害物質が徐々に身体に蓄積し、健康被害が発生するに至るから、その損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生するものと 認められるところ、本件有害物質被害による損害が顕在化したというために は、専門家による化学分析の結果として環境基準値を超える六価クロムが検出される必要があるから、除斥期間の起算点は、M准教授が六価クロムによる土壌汚染を指摘した平成27年10月頃とすべきである。 ⑼ 被告の除斥期間の主張等が制限されるか否か(争点9〔不法行為に基づく損害賠償請求の争点〕) (原告らの主張)ア本件膨張被害の原因が鉄鋼スラグの膨 0月頃とすべきである。 ⑼ 被告の除斥期間の主張等が制限されるか否か(争点9〔不法行為に基づく損害賠償請求の争点〕) (原告らの主張)ア本件膨張被害の原因が鉄鋼スラグの膨張によるものか否かの判断や鉄鋼スラグの有害物質の含有の有無の判断には専門的知見を要すること等からすると、原告らが速やかに権利行使をすることは不可能であったこと、本件被害は甚大であり、社会的にも、損害賠償請求を認める必要性が極め て高いこと、本件異物の有害性を知らずに搬入を受け入れたことについて原告らに落ち度がないこと、六価クロムの危険性が社会的に問題になっている中で利益のみを優先して民有地に大量の鉄鋼スラグを投棄した被告の責任は極めて重いこと、被告には本件異物の搬入後長期間を経過してから損害賠償請求がされることについて予見可能性があること、被告は原告 ら以外の公共工事については鉄鋼スラグの処理に要する費用を被告が負担するなどして賠償責任を認めてきたといえること、本件訴訟提起前の調停及び本件訴訟における被告の対応は不誠実であること、鉱業法の法意に照らして原告らは救済されるべきであることからすると、原告らの不法行為に基づく損害賠償請求権が除斥期間の経過により消滅したものとする ことは著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができないから、被告の除斥期間の主張は信義則に反し又は権利の濫用として許されない。 イ前記アの事情からすると、原告らが除斥期間の経過により権利行使をすることが許されず、被告が損害賠償義務を免れることは、著しく正義・公平の理念に反するから、鉱業法115条2項の法意に照らし、民法(平成 29年法律第44号による改正前のもの。以下「改正前民法」という。) 724条後段の効果は制限されるべ 著しく正義・公平の理念に反するから、鉱業法115条2項の法意に照らし、民法(平成 29年法律第44号による改正前のもの。以下「改正前民法」という。) 724条後段の効果は制限されるべきである。 ウ改正前民法724条後段の規定は、消滅時効を定めたものと解すべきである。 (被告の主張)ア前記⑶の事情からすると、被告の除斥期間の主張が信義則に反し又は権 利の濫用として許されないとはいえない。 イ鉱業法が消滅時効の起算点について特別な規定を設けたのは、鉱害においては、権利侵害行為が長年にわたり継続的に行われ、その損害も徐々に発生することから、原因行為と結果発生との間に時間的隔たりが存在し、被害者において権利行使を行い得ない可能性があるという特殊性に鑑み たものであるところ、本件有害物質被害は、本件異物が本件土地に搬入された時点で直ちに損害が発生するものであるし、本件膨張被害は、平成2年頃から発生し、その後、平成7年頃には、本件膨張被害が悪化し、亡H及び原告らとして本件膨張被害の原因は本件異物であると認識していたといえるから、それ以後は、現実的な権利行使を期待できたといえ、少な くとも前記⑻の除斥期間の起算点以後においては、鉱業法115条2項の法意が妥当するとはいえない。また、前記⑶の事情からすると、原告らが除斥期間の経過により権利行使をすることが許されず、被告が損害賠償義務を免れることは、著しく正義・公平の理念に反するとはいえない。したがって、本件において、改正前民法724条後段の効果が制限されるべき であるとはいえない。 ウ改正前民法724条後段の規定は、除斥期間を定めたものである。 ⑽ 消滅時効の成否(争点10〔債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕) 制限されるべき であるとはいえない。 ウ改正前民法724条後段の規定は、除斥期間を定めたものである。 ⑽ 消滅時効の成否(争点10〔債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕)(被告の主張)ア原告らは、遅くとも平成7年頃には、被告に対して損害賠償請求をする ことが現実に期待できたから、消滅時効の起算点は、平成7年とすべきで ある。被告は、本件訴訟において、消滅時効を援用している。 したがって、原告らの被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権は、既に消滅時効により消滅している。 イ前記⑶の事情からすると、被告の消滅時効の援用が信義則に反し又は権利の濫用として許されないとはいえない。 (原告らの主張)ア本件膨張被害の原因が鉄鋼スラグの膨張によるものか否かの判断や鉄鋼スラグの有害物質の含有の有無の判断には専門的知見を要すること等からすると、原告らの権利行使が現実に期待できるようになったのは、専門家が本件被害及びその原因を指摘した平成27年10月頃であり、消滅時 効の起算点は、同月頃とすべきである。 イ前記⑼アの事情からすると、被告の消滅時効の援用は信義則に反し又は権利の濫用として許されない。 ⑾ 過失相殺(争点11〔不法行為に基づく損害賠償請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕) (被告の主張)被害者側の過失として亡Hの過失も考慮できるところ、亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、本件異物が鉄鋼スラグであること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識しており、そのようなリスクを甘 受して本件異物の提供を受けたこと等か あること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、そのために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識しており、そのようなリスクを甘 受して本件異物の提供を受けたこと等からすると、損害発生についての亡Hの過失は重大である。また、亡H及び原告Aは、遅くとも平成7年頃には本件膨張被害の原因は本件異物であると認識していたといえるのに、対症療法をもって放置してきたのであるから、損害を拡大させたことに過失がある。 仮に、亡H及び原告Aが、本件膨張被害の原因が本件異物であると認識して いなかったとしても、建築の専門知識を有している亡H及び原告Aにおいて は、本件膨張被害の原因が本件異物であることを疑い速やかに原因を特定し、損害拡大の防止策を講じることは極めて容易であったといえ、いずれにしても過失は重大である。したがって、原告らの損害は過失相殺されるべきである。 (原告らの主張) 亡Hは、本件異物の有害性を知らなかったところ、鉄鋼スラグの有害性は外観上分からず、これを認識するためには専門的知識を要すること、亡Hは地元の大企業である被告を信頼していたこと、被告は産業廃棄物を安く処理するために本件異物を亡Hに提供したのであるから亡Hに本件異物の有害性を知られないようにしていたと考えられること、被告からスラグ再生路盤材 等を購入した建設業者はスラグの性状等を知らされておらず亡Hも知らされていないと考えられることからすると、亡Hが本件異物の有害性を知らなかったことについて過失はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実に加え、後掲の証拠等によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 鉄鋼スラグの特徴等ア電気炉法による特殊鋼の製造過程においては、電気炉系の鉄 判断 1 認定事実 前提事実に加え、後掲の証拠等によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 鉄鋼スラグの特徴等ア電気炉法による特殊鋼の製造過程においては、電気炉系の鉄鋼スラグが副産物として生成される。 電気炉系の鉄鋼スラグの中には、酸化カルシウムの含有量が高いものが あり、遊離石灰を含んでいるところ、遊離石灰は、水と反応して体積が膨張する性質を有する。この現象を防止するためには、事前に、遊離石灰を水分と反応させて消石灰に変える体積安定化処理(エージング)を行う必要がある。 電気炉系の鉄鋼スラグには、有害物質であるフッ素や六価クロム等が含 まれる。(以上につき、甲50) イ昭和55年~昭和56年当時、電気炉系の鉄鋼スラグは、水と反応して体積が膨張する遊離石灰の存在により、安定性に欠け、有効利用が遅れていた。当時、電気炉系の鉄鋼スラグを利用するためにこれを安定化する技術は、模索中という状況であった。(甲20、乙2)⑵ 亡Hによる宅地造成等の経緯 ア亡Hは、本件土地の宅地造成のために埋め土が必要であったところ、同級生であり当時被告の従業員であったJから、硬くて締まりのよい埋め土に最適なものがあり、被告から無償で提供できるなどと勧められたため、被告から埋め土の提供を受けることとした。(前提事実⑵ア)イ原告会社は、昭和56年11月、本件土地上に本件作業所を建設し、亡 Hは、昭和60年12月、本件土地上に本件居宅を建設した。(前提事実⑵イ)⑶ 本件被害等ア平成2年頃から、本件居宅や本件作業所について、本件膨張被害が発生した。その後、平成7年頃には、本件膨張被害が悪化し、更に時間が経過 すると、本件膨張 ⑵イ)⑶ 本件被害等ア平成2年頃から、本件居宅や本件作業所について、本件膨張被害が発生した。その後、平成7年頃には、本件膨張被害が悪化し、更に時間が経過 すると、本件膨張被害が更に悪化していった。(前提事実⑶)亡Hは、平成7年頃に本件膨張被害が悪化した際、原告Aに対し、埋め土が悪いのかな、などと述べた。(原告A本人)L教授は、平成27年10月頃、本件膨張被害は、鉄鋼スラグの膨張が原因とみて間違いない旨指摘した。(前提事実⑸) イ毎日新聞社の記者であるKは、平成27年7月頃、本件異物を採取して検査機関において検査した結果、本件異物から、六価クロムや環境基準値を超えるフッ素が検出された。 M准教授は、平成27年10月頃、本件土地の周辺土壌を採取して検査したところ六価クロムが検出されたことを受け、六価クロムは自然界にな く、鉄鋼スラグによる土壌汚染が起きている旨指摘した。(以上につき、 前提事実⑸)原告Aは、平成28年4月頃、自ら本件異物を採取して検査機関において検査した結果、本件異物から、六価クロムや環境基準値を超えるフッ素が検出された。(甲8)原告Aは、平成30年7月頃、自ら本件異物を採取して検査機関におい て検査した結果、本件異物から、環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出された。(甲57、58)M准教授は、平成30年11月頃、本件異物を採取して検査した結果、本件異物から、環境基準値を超える六価クロムが検出された。(甲67、68) ウ L教授は、平成29年10月、本件異物について、天然骨材より重いこと、水硬性があること、膨張性を有すること、フッ素含有量・溶出量が環境基準値を超えてい された。(甲67、68) ウ L教授は、平成29年10月、本件異物について、天然骨材より重いこと、水硬性があること、膨張性を有すること、フッ素含有量・溶出量が環境基準値を超えていること、本件土地には耐火レンガ等も埋められていることを根拠として、本件異物が鉄鋼スラグである旨指摘した。(甲7)⑷ 本件異物の状況 ア本件異物は、本件土地に層状に埋められており、本件異物とそれ以外の土砂とを区別できる状態で存在している。(甲99、100、鑑定嘱託)イ本件異物には、多数の耐火レンガや金属片等が混在している。(甲58、103、108、令和5年9月12日付け検証)⑸ 鑑定嘱託の結果 ア当裁判所は、令和5年3月17日、鑑定嘱託を採用し、株式会社トラバースに対し、鑑定を嘱託した。(当裁判所に顕著)鑑定嘱託の結果は、以下のイ~ウのとおりである。(鑑定嘱託)イ本件土地の掘削調査をした結果推定される本件異物の存在範囲及びその数量については、存在範囲の推定総面積は896.59㎡であり、推定体 積は2181.6㎥であり、推定質量は3665.1tである。本件異物 の存在範囲の詳細図は、別紙撤去物目録・添付図面1及び2のとおりである。 ウ本件土地の掘削調査の際に本件土地の6地点から5個ずつ採取した合計30検体の本件異物と、当裁判所が検証物送付嘱託を行い渋川市から送付された検証物(渋川スカイランドパークの進入路において使用されていた、 被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグ。以下「本件検証物」という。)から採取した検体5個を試料として、以下の(ア)~(キ)の各試験を実施した結果は、それぞれ以下の(ア)~(キ)のとおりである。 (ア) 試料の された鉄鋼スラグ。以下「本件検証物」という。)から採取した検体5個を試料として、以下の(ア)~(キ)の各試験を実施した結果は、それぞれ以下の(ア)~(キ)のとおりである。 (ア) 試料の混在状況の観察本件異物の中には、レンガ片や金属片等が混入していた。レンガ片が 混入していることから直ちに本件異物が鉄鋼スラグであるとは断言できないが、昭和55年当時の耐火物生産量比率は、耐火レンガの生産量が65%、不定形耐火物の生産量が35%であり、当時は耐火レンガが主要な耐火物として利用されていたことは明らかであるから、混入していたレンガ片が鉄鋼スラグの製造に使われた可能性は否定できない。 なお、本件異物の断面と本件検証物の断面とを比較すると、色や金属粒の混入という点で類似性の高いものがあり、本件異物の一部に鉄鋼スラグと似たものが存在することが確認できた。 (イ) 単位容積質量(g/㎤)の確認電気炉酸化スラグ骨材の単位容積質量は1.6g/㎤以上とされてい るところ、本件異物の単位容積質量は平均1.68g/㎤であり、本件検証物の単位容積質量は1.72g/㎤であり、いずれも1.6g/㎤以上である。単位容積質量のみから本件異物が鉄鋼スラグであるとは断言できないが、スラグとしての条件は満足している。また、本件検証物の単位容積質量のデータは本件異物の単位容積質量の範囲内の数値を示 しており、両者の類似性が認められる。 (ウ) CBR膨張性試験CBR試験のうちの吸水膨張試験の結果によれば、本件異物の膨張率は平均0.04%であり、本件検証物の膨張率は平均0.02%であり、本件異物と本件検証物はほとんど膨張性が認められず、類似性は比較できなかった 験のうちの吸水膨張試験の結果によれば、本件異物の膨張率は平均0.04%であり、本件検証物の膨張率は平均0.02%であり、本件異物と本件検証物はほとんど膨張性が認められず、類似性は比較できなかった。 ただし、本件居宅の変形状況をみると、膨張性地盤によるものであることは明らかである。すなわち、一般に、傾斜地における造成地盤での不同沈下の場合、造成地盤の収縮による沈下の影響が大きく、その層厚が厚い谷側の沈下量が大きくなり、建物は地盤の沈下に沿って一方的に傾斜が発生するのに対し、本件居宅は、著しい変形やひび割れが目立ち、 傾斜は、東西方向では、中央部が盛り上がり、南北方向では、固定された構造物である車庫より南側の地盤は盛り上がり、北側の車庫は固定されるため、北側に傾斜していると推察されるから、本件居宅の変形は、一般にみられる不同沈下ではなく、地盤の膨張による変形であると考えられる。したがって、本件居宅を建設した当時は、地盤を構成する埋設 物に建物を変形させるほどの膨張性があったものと推察される。 (エ) pH試験本件異物の平均pH値は9.8であり、本件検証物の平均pH値は11.2であり、いずれも強いアルカリ性を示しており、この点で類似性が認められる。なお、両者のpH値の違いは、造成年代の違いによる可 能性がある。 (オ) 蛍光X線、X線回折分析蛍光X線分析においては、酸化スラグと同様の組成を示す検体が、本件異物30検体のうち3検体で確認され、本件検証物では確認されなかった。また、還元スラグと同様の組成を示す検体が、本件異物30検体 のうち10検体で確認され、本件検証物5検体のうち4検体で確認され た。 X線回折分析においては、酸 なかった。また、還元スラグと同様の組成を示す検体が、本件異物30検体 のうち10検体で確認され、本件検証物5検体のうち4検体で確認され た。 X線回折分析においては、酸化スラグの特徴を示す鉱物類が、本件異物30検体のうち5検体で確認され、本件検証物では確認されなかった。 また、還元スラグの特徴を示す鉱物類が、本件異物30検体のうち13検体で確認され、本件検証物5検体のうち2検体で確認された。 したがって、本件異物及び本件検証物に、酸化スラグ又は還元スラグのいずれかの電気炉系の鉄鋼スラグが混入している可能性が否定できない。 特に、蛍光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても酸化スラグの特徴を示したものが、本件異物30検体のうち1検体で確認され、蛍 光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても還元スラグの特徴を示したものが、本件異物30検体のうち7検体で確認され、本件検証物5検体のうち2検体で確認された。これらの検体は、酸化スラグ又は還元スラグのいずれかの電気炉系の鉄鋼スラグである可能性が高い。 (カ) 適切な酸を用いた湿式分解法や波長分散型蛍光X線分析 フッ素の溶出量試験の結果、土壌汚染対策法における溶出量基準値が0.8㎎/Lであるのに対し、本件異物30検体のうち27検体が基準値を超過し、本件検証物5検体のうち5検体が基準値を超過した。また、フッ素の含有量試験の結果、土壌汚染対策法における含有量基準値が4000㎎/kgであるのに対し、本件異物30検体のうち19検体が基準 値を超過し、本件検証物5検体のうち4検体が基準値を超過した。フッ素の溶出量及び含有量のいずれも、環境基準値を大幅に上回っている。 特に、フッ素の溶出量につ のうち19検体が基準 値を超過し、本件検証物5検体のうち4検体が基準値を超過した。フッ素の溶出量及び含有量のいずれも、環境基準値を大幅に上回っている。 特に、フッ素の溶出量については、本件異物及び本件検証物の環境基準値の超過比率は91%(35検体のうち32検体で超過)であり、渋川市内の公共工事において使用された被告渋川工場から排出された鉄鋼 スラグの環境基準値の超過比率84%(38件のうち32件で超過)と 類似している。 (キ) 断面SEM観察-EDX線分析本件異物及び本件検証物から1検体ずつ合計2検体を選定し、断面SEM観察-EDX線分析を実施した結果、いずれの検体も、表面側でのカルシウム・シリカ・マグネシウム・アルミニウムの堆積が確認された 一方、鉄鋼スラグにみられる鉱物組織は、本件異物の1検体からは確認できたが、本件検証物の1検体からは確認できなかった。したがって、本件異物と本件検証物の類似性の評価はできなかった。 エ前記ウの(ア)~(エ)のとおり、試料の混在状況から本件異物の断面と本件検証物の断面に類似性の高いものが存在する点、本件異物と本件検証物は 単位容積質量の値に類似性が認められる点、本件居宅の変形の原因は地盤の膨張性にあると考えられる点を踏まえると、本件土地の地盤は、本件検証物に類似した材料を含む造成地盤であると判断できる。 前記ウの(オ)~(キ)によれば、本件異物と本件検証物の一部に類似性があり、かつ、電気炉系の鉄鋼スラグの特徴を示していることが確認できた。 具体的には、蛍光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても還元スラグの特徴を示したものが、本件異物30検体のうち7検体で確認され、本件検証物5検体のうち2検体で確認され ことが確認できた。 具体的には、蛍光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても還元スラグの特徴を示したものが、本件異物30検体のうち7検体で確認され、本件検証物5検体のうち2検体で確認されており、これらの検体は、電気炉系の鉄鋼スラグである可能性が高い。さらに、上記の本件異物7検体のフッ素の溶出量は平均5.1㎎/Lであり、上記の本件検証物2検体のフッ 素の溶出量は平均6.7㎎/Lであり、いずれも環境基準値を大幅に超過し、かつ、両者は近い値を示しており、上記の本件異物7検体及び本件検証物2検体には類似性が認められる。 以上のとおり、蛍光X線分析及びX線回折分析の結果並びにフッ素の溶出量及び含有量の環境基準値の超過の状況からすると、本件異物が電気炉 系の鉄鋼スラグである可能性は否定できない。 ⑹ 被告による鉄鋼スラグの排出等ア被告は、平成3年度以降、鉄鋼スラグの出荷を開始し、群馬県内の複数の公共工事において、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグを含む材料が使用された。(前提事実⑷ア)イ被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグが路盤材として使用されていた 渋川スカイランドパークの駐車場の改修工事に伴う環境調査の結果、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグから環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されたことを契機として、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグを含む材料が使用された群馬県内の公共工事について調査されたところ、そのうち複数の工事について、使用された鉄鋼スラグから、環 境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出された。(前提事実⑷イ)被告及び渋川市は、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグを含む材料が使用された渋川市内の公共工事のうち、使用された鉄鋼スラ 境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出された。(前提事実⑷イ)被告及び渋川市は、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグを含む材料が使用された渋川市内の公共工事のうち、使用された鉄鋼スラグから環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されたものについて、鉄鋼スラグの処理に要する費用を被告が負担する方向で合意し、その後、個別の工 事ごとに、鉄鋼スラグの処理に要する費用を被告が負担する旨の契約を締結した。具体的には、水沢林道、渋川スカイランドパーク駐車場、渋川市総合公園等について、工事に使用された鉄鋼スラグから環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されたところ、鉄鋼スラグの処理に要する費用を被告が負担する旨の契約が締結された。(前提事実⑷イ、甲58、1 07)北群馬郡c村に所在する創造の森キャンプ場の進入路においても、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグが使用されていたところ、調査の結果、使用された鉄鋼スラグから環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出され、被告において、鉄鋼スラグを撤去した。(甲10、58、弁論の 全趣旨) ウ被告渋川工場から本件土地までの距離は、8.92㎞である。(甲53)他方、被告渋川工場から、前記イの水沢林道、渋川スカイランドパーク、渋川市総合公園、創造の森キャンプ場までの距離は、それぞれ概ね10㎞前後である。(甲58)また、被告渋川工場以外の特殊鋼製造工場から本件土地までの距離は、 距離が近い順に、日本冶金工業株式会社の川崎工場から本件土地までの距離は約143㎞、日本高周波鋼業株式会社の富山工場から本件土地までの距離は約306㎞、東北特殊鋼株式会社の仙台工場から本件土地までの距離は約320㎞である。(甲52、54~5 場から本件土地までの距離は約143㎞、日本高周波鋼業株式会社の富山工場から本件土地までの距離は約306㎞、東北特殊鋼株式会社の仙台工場から本件土地までの距離は約320㎞である。(甲52、54~56) 2 本件異物は被告が排出した鉄鋼スラグであるか否か(争点1)について ⑴ 本件異物は鉄鋼スラグであるか否かについてア本件異物及び鉄鋼スラグである本件検証物について検体を採取して各試験を実施した鑑定嘱託の結果によれば、本件異物にはレンガ片が混入しており、混入していたレンガ片が鉄鋼スラグの製造に使われた可能性が否定できないこと、本件異物の断面と本件検証物の断面とを比較すると、色や 金属粒の混入という点で類似性の高いものがあり、本件異物の一部に鉄鋼スラグと似たものが存在することが確認できたこと、本件異物の単位容積質量は、スラグとしての条件を満足していること、本件検証物の単位容積質量のデータは本件異物の単位容積質量の範囲内の数値を示しており、両者の類似性が認められること、本件居宅の変形は、一般にみられる不同沈 下を原因とするものではなく、地盤の膨張を原因とするものであると考えられること、本件異物及び本件検証物の平均pH値は、いずれも強いアルカリ性を示している点で類似性が認められること、蛍光X線分析及びX線回折分析の結果によれば、本件異物に、酸化スラグ又は還元スラグのいずれかの電気炉系の鉄鋼スラグが混入している可能性が否定できないこと、 特に、蛍光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても酸化スラグの特 徴を示したものが、本件異物30検体のうち1検体で確認され、蛍光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても還元スラグの特徴を示したものが、本件異物30検体のうち7検体で確認され、本件検証物5検体の 徴を示したものが、本件異物30検体のうち1検体で確認され、蛍光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても還元スラグの特徴を示したものが、本件異物30検体のうち7検体で確認され、本件検証物5検体のうち2検体で確認されており、これらの検体は、酸化スラグ又は還元スラグのいずれかの電気炉系の鉄鋼スラグである可能性が高いこと、本件異物及 び本件検証物は、フッ素の溶出量及び含有量のいずれも、多数の検体で環境基準値を超過し、環境基準値を大幅に上回っていること、特に、フッ素の溶出量については、本件異物及び本件検証物の環境基準値の超過比率は91%であり、渋川市内の公共工事において使用された被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグの環境基準値の超過比率84%と類似しているこ と、本件異物から1検体を選定して断面SEM観察-EDX線分析を実施した結果、鉄鋼スラグにみられる鉱物組織が確認できたこと、さらに、蛍光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても還元スラグの特徴を示した本件異物7検体及び本件検証物2検体について、本件異物7検体のフッ素の溶出量は平均5.1㎎/Lであり、本件検証物2検体のフッ素の溶 出量は平均6.7㎎/Lであり、いずれも環境基準値を大幅に超過し、かつ、両者は近い値を示しており、上記の本件異物7検体及び本件検証物2検体には類似性が認められることが、それぞれ認定できる(前記1⑸ウ、エ)。 そして、鑑定嘱託の結果によれば、以上の各試験の結果を分析した上で、 本件土地の地盤は、本件検証物に類似した材料を含む造成地盤であると判断できる旨、蛍光X線分析及びX線回折分析の結果並びにフッ素の溶出量及び含有量の環境基準値の超過の状況からすると、本件異物が電気炉系の鉄鋼スラグである可能性は否定できない旨が指摘されている(前 と判断できる旨、蛍光X線分析及びX線回折分析の結果並びにフッ素の溶出量及び含有量の環境基準値の超過の状況からすると、本件異物が電気炉系の鉄鋼スラグである可能性は否定できない旨が指摘されている(前記1⑸エ)。 以上の事実に照らすと、本件異物は、電気炉系の鉄鋼スラグであると認 められる。 イこれに対し、被告は、鑑定嘱託の結果は、本件異物が電気炉系の鉄鋼スラグである可能性が否定できないと結論付けるにとどまり、本件異物が鉄鋼スラグ以外の物質である可能性を残すものである旨主張する。しかしながら、鑑定嘱託の結果を全体として見れば、結論として本件異物が電気炉 系の鉄鋼スラグである可能性が否定できない旨の表現は、本件異物が電気炉系の鉄鋼スラグであることを科学的に断定することまではできないことを留保する趣旨であると解するのが相当であり、前記アの事実に照らし、本件異物が電気炉系の鉄鋼スラグであると認定しても、経験則に反するものではない。被告の主張は採用できない。 また、被告は、本件異物が全て一定の成分を示すことは立証されていない旨主張する。しかしながら、証拠(乙33の2)によれば、複数の検体を採取して統計学的に試験・分析を実施する場合、正規分布を仮定してデータを取り扱うためには、30検体以上が必要であるとされていることが認められるところ、鑑定嘱託においては、本件土地の6地点から5個ずつ 採取した合計30検体の本件異物が試料として用いられている(前記1⑸ウ)から、鑑定嘱託の結果は、統計学的な合理性を有するものであると認められる。被告の主張は採用できない。 さらに、被告は、基礎コンクリート等のひび割れや床の傾斜は不同沈下によっても発生し得るものであり、本件膨張被害の原因として鉄鋼 を有するものであると認められる。被告の主張は採用できない。 さらに、被告は、基礎コンクリート等のひび割れや床の傾斜は不同沈下によっても発生し得るものであり、本件膨張被害の原因として鉄鋼スラグ 以外の原因を排斥できていないから、本件膨張被害から本件異物が鉄鋼スラグであることを推認することはできない旨主張する。しかしながら、鑑定嘱託の結果によれば、本件居宅の変形は、一般にみられる不同沈下を原因とするものではなく、地盤の膨張を原因とするものであると認められる(前記1⑸ウ(ウ))。被告の主張は採用できない。 その他、以上の認定判断に反する被告の主張はいずれも採用できない。 ⑵ 本件異物は被告が排出したものであるか否かについてア前記⑴のとおり鉄鋼スラグであると認められる本件異物と、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグである本件検証物とは、鑑定嘱託の結果によれば、断面の色や金属粒の混入、単位容積質量、平均pH値において類似性が認められ、特に、フッ素の溶出量については、本件異物及び本件検証 物の環境基準値の超過比率は91%であり、渋川市内の公共工事において使用された被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグの環境基準値の超過比率84%と類似していること、さらに、蛍光X線分析及びX線回折分析のいずれにおいても還元スラグの特徴を示した本件異物7検体及び本件検証物2検体について、本件異物7検体のフッ素の溶出量は平均5.1㎎ /Lであり、本件検証物2検体のフッ素の溶出量は平均6.7㎎/Lであり、いずれも環境基準値を大幅に超過し、かつ、両者は近い値を示しており、上記の本件異物7検体及び本件検証物2検体には類似性が認められることが、それぞれ認定できる(前記⑴ア)。 また、電気炉法によ れも環境基準値を大幅に超過し、かつ、両者は近い値を示しており、上記の本件異物7検体及び本件検証物2検体には類似性が認められることが、それぞれ認定できる(前記⑴ア)。 また、電気炉法による特殊鋼の製造過程においては、電気炉系の鉄鋼ス ラグが副産物として生成される(前記1⑴ア)ところ、証拠(甲21、49、96、97)及び上記のような本件異物と本件検証物との類似性も踏まえると、電気炉系の鉄鋼スラグであると認められる本件異物は、特殊鋼の製造過程において生成されたものと考えても矛盾しない。そして、本件異物は、存在範囲の推定総面積が896.59㎡ 、推定体積が2181. 6㎥、推定質量が3665.1tと多量である(前記1⑸イ)から、輸送に要する費用や時間との関係で、遠方から搬入されたものとは考え難いところ、被告渋川工場以外の特殊鋼製造工場はいずれも本件土地から140㎞以上の遠距離にあるのに対し、被告渋川工場は本件土地から8.92㎞の比較的近距離にあり、他方で、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグ を含む材料が使用された公共工事のうち、鉄鋼スラグの処理に要する費用 を被告が負担し、又は被告において鉄鋼スラグを撤去した、水沢林道、渋川スカイランドパーク、渋川市総合公園、創造の森キャンプ場は、いずれも被告渋川工場から概ね10㎞前後という被告渋川工場から本件土地までの距離とほぼ同距離にある(前記1⑹イ、ウ)。 さらに、亡Hによる宅地造成等の経緯を見ると、亡Hは、本件土地の宅 地造成のために埋め土が必要であったところ、同級生であり当時被告の従業員であったJから、硬くて締まりのよい埋め土に最適なものがあり、被告から無償で提供できるなどと勧められたため、被告から埋め土の提供を受けることとしており(前記1⑵ア ころ、同級生であり当時被告の従業員であったJから、硬くて締まりのよい埋め土に最適なものがあり、被告から無償で提供できるなどと勧められたため、被告から埋め土の提供を受けることとしており(前記1⑵ア)、その後、昭和56年11月及び昭和60年12月、本件土地上に本件作業所及び本件居宅が建設されている (前記1⑵イ)。 以上の事実に照らすと、本件異物は、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグであると合理的に推認できる。そして、上記のような亡Hによる宅地造成等の経緯に照らすと、被告は、亡Hが本件土地を取得し終えた昭和55年1月から本件土地上に本件作業所が建設された昭和56年11月 までのいずれかの時期に、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグである本件異物を、本件土地に搬入したと認められる。 イこれに対し、被告は、鉄鋼スラグを仮設用道路材として有償で売却・出荷してきており、処分に苦慮していた事実はなく、原告らの主張によれば、被告は生成した有価物である鉄鋼スラグを無価値物として取り扱ったこ とになるが、何ら経済合理性がない旨主張する。しかしながら、被告が鉄鋼スラグの出荷を開始したのは平成3年度以降である(前記1⑹ア)し、昭和55年~昭和56年当時、電気炉系の鉄鋼スラグは、水と反応して体積が膨張する遊離石灰の存在により、安定性に欠け、有効利用が遅れており、電気炉系の鉄鋼スラグを利用するためにこれを安定化する技術は、模 索中という状況であった(前記1⑴イ)のであり、その他、昭和55年~ 昭和56年当時から被告が鉄鋼スラグを有償で売却・出荷していた事実を認めるに足りる証拠はないから、被告の主張は前提を欠くものである。被告の主張は採用できない。 また、被告は、本件異物と本件検証物の成分等の類似 が鉄鋼スラグを有償で売却・出荷していた事実を認めるに足りる証拠はないから、被告の主張は前提を欠くものである。被告の主張は採用できない。 また、被告は、本件異物と本件検証物の成分等の類似性から、排出元の同一性を認定することはできない旨主張する。しかしながら、前記アのと おり、本件異物と本件検証物の成分等の類似性のみから、本件異物の排出元が被告渋川工場であると認定しているものではなく、本件異物と本件検証物の成分等の類似性は、本件異物の排出元を合理的に推認する際の一要素として考慮しているにすぎない。被告の主張は採用できない。 さらに、被告は、六価クロムを含有した鉄鋼スラグは、理論上、特殊鋼 メーカーのみならず普通鋼メーカーも排出し得るし、また、鉄鋼スラグの物流には海上輸送も存在し、陸上輸送による輸送距離のみの観点から経済合理性を論じるのは、物流の実態を考慮しないものであるから、被告渋川工場以外に本件異物の排出可能性がないとはいえない旨主張する。しかしながら、鉄鋼スラグの排出元となるメーカーについての被告の主張は、抽 象的な可能性をいうにとどまるものであるし、また、被告渋川工場を含む特殊鋼製造工場と本件土地との位置関係(甲52)に照らすと、内陸部にある本件土地まで鉄鋼スラグを搬入する際、海上輸送による方が陸上輸送によるよりも輸送に要する費用や時間を削減できるとは認め難いから、陸上輸送について検討すれば足りるというべきである。被告の主張は採用で きない。 加えて、被告は、亡Hが同級生であり当時被告の従業員であったJから埋め土の提供を勧められた旨を述べるN供述(甲15)及びO供述(甲16)は、実体験を伴わない伝聞供述であること、被告は鉄鋼スラグを製品として有償で売却・出荷してきており、亡 告の従業員であったJから埋め土の提供を勧められた旨を述べるN供述(甲15)及びO供述(甲16)は、実体験を伴わない伝聞供述であること、被告は鉄鋼スラグを製品として有償で売却・出荷してきており、亡Hに無償で提供することは経済 合理性を欠き、亡Hの認識としても、硬くて締まりのよい素材を大量に譲 り受けることを認識した上で対価が発生していないというのは著しく経験則に反すること、Jは被告の技術系列の従業員であり対外業務に係る決裁権限はないから、客観的事実に反することからすると、信用できない旨主張する。しかしながら、伝聞供述であることのみから信用性を否定することは相当でないところ、N供述及びO供述は、複数人が同旨の供述をし、 それぞれ根拠とともに供述しているし、亡Hによる宅地造成等の前後の経緯(前提事実⑵)とも整合している。また、前記のとおり、昭和55年~昭和56年当時から被告が鉄鋼スラグを有償で売却・出荷していた事実は認めるに足りないから、経済合理性についての被告の主張は前提を欠くものである。そして、よい素材であっても必ずしも高価であるとは限らない ところ、Jと亡Hとは同級生であったのであるから、よい素材を大量に譲り受けることを認識した上で対価が発生していないということが著しく経験則に反するとまではいえない。さらに、仮にJが技術系列の従業員であり対外業務に係る決裁権限がなかったとしても、Jが同級生である亡Hに対して被告からの埋め土の提供を勧めることがあり得ないとはいえな い。以上に照らすと、N供述及びO供述は、信用できるというべきである。 被告の主張は採用できない。 その他、以上の認定判断に反する被告の主張はいずれも採用できない。 ⑶ 以上のとおり、本件異物は、被告が排出した鉄鋼スラグであると認め るというべきである。 被告の主張は採用できない。 その他、以上の認定判断に反する被告の主張はいずれも採用できない。 ⑶ 以上のとおり、本件異物は、被告が排出した鉄鋼スラグであると認められ、被告は、昭和55年1月から昭和56年11月までのいずれかの時期に、被 告渋川工場から排出された鉄鋼スラグである本件異物を、本件土地に搬入したと認められる。そして、本件異物には、多数の耐火レンガ等が混在している(前記1⑷イ、⑸ウ(ア))ところ、鑑定嘱託の結果によれば、本件異物に混入していたレンガ片が鉄鋼スラグの製造に使われた可能性が否定できないこと(前記1⑸ウ(ア))、混在している耐火レンガ等の量が多数であることに照 らすと、耐火レンガ等についても、被告が排出したものであると合理的に推 認できる。 3 被告が本件異物の妨害排除義務を負うか否か(争点2〔所有権に基づく妨害排除請求の争点〕)について⑴ 所有権に基づく妨害排除請求は、その所有権を侵害し、あるいは侵害するおそれのある物の所有権を有する者に限らず、現に存する侵害状態を作出し た者もその排除の義務を負うものと解すべきである。 そこで検討するに、まず、鉄鋼スラグである本件異物は、鉱さいの一種であるところ、鉱さいは、産業廃棄物に該当する(廃掃法〔平成3年法律第95号による改正前のもの〕2条3項、同施行令〔平成4年政令第218号による改正前のもの〕1条8号)。そして、実質的に検討しても、本件異物が 本件土地に搬入された昭和55年~昭和56年当時、電気炉系の鉄鋼スラグは、水と反応して体積が膨張する遊離石灰の存在により、安定性に欠け、有効利用が遅れており、電気炉系の鉄鋼スラグを利用するためにこれを安定化する技術は、模索中という状況であったこと( 炉系の鉄鋼スラグは、水と反応して体積が膨張する遊離石灰の存在により、安定性に欠け、有効利用が遅れており、電気炉系の鉄鋼スラグを利用するためにこれを安定化する技術は、模索中という状況であったこと(前記1⑴イ)、被告が鉄鋼スラグの出荷を開始したのは平成3年度以降であり(前記1⑹ア)、昭和55 年~昭和56年当時から被告が鉄鋼スラグを有償で売却・出荷していたとは認めるに足りないこと、実際、本件異物は、被告から亡Hに無償で提供されて本件土地に搬入されたこと(前記2⑵、⑶)、本件異物は、膨張して本件膨張被害を発生させており(前記1⑸ウ(ウ))、適切に体積安定化処理(エージング)が行われたとは認め難いこと(前記1⑴ア参照)、電気炉系の鉄鋼 スラグには、有害物質であるフッ素や六価クロム等が含まれる(前記1⑴ア)ところ、本件異物からも、環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されたこと(前記1⑶イ、⑸ウ(カ))、本件異物には、多数の耐火レンガ等の廃棄物が混在していること(前記1⑷イ、⑸ウ(ア))を総合的に勘案すると、本件異物は、本件土地に搬入された当時において、産業廃棄物に該当すると認 められる。 そして、亡Hは、本件土地の宅地造成のために埋め土が必要であったところ、当時被告の従業員であったJから勧められ、被告から埋め土として本件異物の提供を受けた(前記1⑵ア、2⑵、⑶)のであるが、仮に、本件異物が、適切に体積安定化処理(エージング)が行われておらず膨張する性質を有することや、環境基準値を超えるフッ素や六価クロムが含まれることにつ いて、適切に説明を受けていれば、亡Hは、本件土地の宅地造成のための埋め土として本件異物を使用することはなかったと考えられる。そうすると、被告は、亡Hを利用して、自ら排出した鉄鋼 れることにつ いて、適切に説明を受けていれば、亡Hは、本件土地の宅地造成のための埋め土として本件異物を使用することはなかったと考えられる。そうすると、被告は、亡Hを利用して、自ら排出した鉄鋼スラグである本件異物を本件土地に埋設するという形で、本件土地の所有権の侵害状態を作出したものというべきである。 したがって、被告は、現に存する侵害状態を作出した者として、本件異物の妨害排除義務を負うものと認められる。 ⑵ これに対し、被告は、本件異物が本件土地に搬入された当時、鉄鋼スラグの品質管理を行い、仮設用道路材として製品化し、有償で売却・出荷していたことや、前橋地方検察庁検察官が、廃掃法違反で刑事告発された被告の代 表取締役について、不起訴処分としたことからすると、本件異物が産業廃棄物に該当するとは認められない旨主張する。しかしながら、前記⑴のとおり、本件異物が本件土地に搬入された昭和55年~昭和56年当時から被告が鉄鋼スラグを有償で売却・出荷していた事実は認めるに足りないし、検察官による不起訴処分の事実から当然に本件異物の産業廃棄物該当性が否定される ものではない。被告の主張は採用できない。 また、被告は、本件土地の宅地造成のための埋め土として本件異物を使用することを決めたのは亡Hであり、被告が侵害状態を作出したとは評価できない旨、亡Hは、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、本件異物が鉄鋼スラグであること、通常は宅地造成に用いられるものではないこと、その ために本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識してい たといえ、そのようなリスクを甘受して本件異物の提供を受けたから、被告が侵害状態を作出したとは評価できない旨、被告は、宅地造成のための埋め土として使用され 来たすリスクがあることを認識してい たといえ、そのようなリスクを甘受して本件異物の提供を受けたから、被告が侵害状態を作出したとは評価できない旨、被告は、宅地造成のための埋め土として使用されることを想定して鉄鋼スラグを製造・販売したことはなく、被告としては、何らかの事情で通常の用途とは異なる方法で自社製品が使用され、それが原因で何らかの損害が生じたとしても、それをもって被告が侵 害状態を作出したとは評価できない旨主張する。しかしながら、本件記録を検討しても、亡Hが、埋め土として本件異物の提供を受ける際に、宅地造成のための埋め土として本件異物を使用すると本件居宅や本件作業所に支障を来たすリスクがあることを認識した上で、そのようなリスクを甘受して本件異物の提供を受けたとは認めるに足りない。そして、前記⑴のとおり、亡H は、本件異物の膨張や有害物質の含有について適切に説明を受けていれば、本件土地の宅地造成のための埋め土として本件異物を使用することはなかったと考えられるところ、被告は、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグである本件異物を、本件土地に搬入したと認められる(前記2⑶)から、被告は、亡Hを利用して、自ら排出した本件異物を本件土地に埋設して、本件土 地の所有権の侵害状態を作出したと評価できる。被告の主張は採用できない。 さらに、被告は、本件異物は、本件土地に埋め立てられ、本件土地の構成部分となっているから、妨害状態が継続して存在しているとはいえない旨主張する。しかしながら、本件異物は、本件土地に層状に埋められており、本件異物とそれ以外の土砂とを区別できる状態で存在している(前記1⑷ア) から、妨害状態が継続して存在していると認められる。被告の主張は採用できない。 その他、以上の認定判断に り、本件異物とそれ以外の土砂とを区別できる状態で存在している(前記1⑷ア) から、妨害状態が継続して存在していると認められる。被告の主張は採用できない。 その他、以上の認定判断に反する被告の主張はいずれも採用できない。 ⑶ そして、被告による侵害状態は前記1⑸イのとおりであるから、被告は、別紙撤去物目録記載の鉄鋼スラグを含む廃棄物の撤去義務がある。 4 原告Aの所有権に基づく妨害排除請求が権利濫用に当たるか否か(争点3〔所 有権に基づく妨害排除請求の争点〕)について本件膨張被害は、平成2年頃から発生し、その後、平成7年頃には、本件膨張被害が悪化し、更に時間が経過すると、本件膨張被害が更に悪化していった。 毎日新聞社の記者であるKは、平成27年7月頃、本件異物を採取して検査機関において検査した結果、本件異物から、六価クロムや環境基準値を超えるフ ッ素が検出され、L教授は、同年10月頃、本件膨張被害は、鉄鋼スラグの膨張が原因とみて間違いない旨指摘し、M准教授は、同月頃、本件土地の周辺土壌を採取して検査したところ六価クロムが検出されたことを受け、六価クロムは自然界になく、鉄鋼スラグによる土壌汚染が起きている旨指摘し、原告Aは、平成28年4月頃、自ら本件異物を採取して検査機関において検査した結果、 本件異物から、六価クロムや環境基準値を超えるフッ素が検出され、L教授は、平成29年10月、本件異物が鉄鋼スラグである旨指摘した。そして、原告らは、調停の申立てを経て、同年11月9日、本件訴訟を提起した(以上につき、前提事実⑹ア、イ、前記1⑶ア~ウ)。 以上に照らすと、原告Aは、平成27年7月頃に本件異物からフッ素や六価 クロムが検出され、同年10月頃に専門家から本件膨張被害は鉄鋼スラグ につき、前提事実⑹ア、イ、前記1⑶ア~ウ)。 以上に照らすと、原告Aは、平成27年7月頃に本件異物からフッ素や六価 クロムが検出され、同年10月頃に専門家から本件膨張被害は鉄鋼スラグの膨張が原因とみて間違いない旨や鉄鋼スラグによる土壌汚染が起きている旨を指摘された後、約2年後に本件訴訟を提起して被告に対して所有権に基づく妨害排除請求をしているのであり、いたずらに請求を遅延させたとはいえない。 そして、所有権は、その性質上、消滅時効にかからないのであり、所有権に 基づく物権的請求権も、消滅時効にかからないものと解されることに照らすと、本件異物が本件土地に搬入されてから40年近く経過してから権利の主張がされたとしても、そのことから直ちに権利濫用に当たると認めることはできない。 そして、本件土地の所有権の侵害態様は、被告が、亡Hを利用して、産業廃棄物である本件異物を本件土地に埋設したというものであること(前記3⑴)、 原告Aは、長年にわたり、家族の住処である本件居宅や、家業である原告会社 の本件作業所について、コンクリート等のひび割れや床の傾斜という本件膨張被害を受け、繰り返し修理しても効果はなく、被害が生じ続けてきたのであり(前提事実⑶)、また、環境基準値を超えるフッ素や六価クロムを含有する本件異物が埋められた本件土地上で生活して本件有害物質被害を受けてきたものであること(前記1⑶イ、⑸ウ(カ))、上記のとおり、原告Aがいたずらに請求 を遅延させたとはいえないことに照らすと、原告Aの所有権に基づく妨害排除請求が権利濫用に当たるとは認められない。その他、被告の主張を踏まえて、本件記録を検討しても、権利濫用に該当することを肯定できる事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって、原告Aの所有権に 請求が権利濫用に当たるとは認められない。その他、被告の主張を踏まえて、本件記録を検討しても、権利濫用に該当することを肯定できる事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって、原告Aの所有権に基づく妨害排除請求が権利濫用に当たるとは 認められない。 以上の認定判断に反する被告の主張はいずれも採用できない。 5 除斥期間の経過の有無(争点8〔不法行為に基づく損害賠償請求の争点〕)について⑴ 事案に鑑み、争点4及び7に先立ち、争点8について判断する。 ⑵ 改正前民法724条後段所定の除斥期間の起算点は、「不法行為の時」と規定されており、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点となると考えられる。しかし、身体に蓄積する物質が原因で人の健康が害されることによる損害や、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる疾病による損害のように、当該不法行為により発生 する損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである(最高裁平成13年(受)第1760号同16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁、最高裁平成13年(オ)第1194号、第1196号、同年(受)第1172号、第1174 号同16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁、最高 裁平成16年(受)第672号、第673号同18年6月16日第二小法廷判決・民集60巻5号1997頁、最高裁令和元年(受)第1287号同3年4月26日第二小法廷判決・民集75巻4号1157頁参照)。 そこで検討するに、本件膨張被害による損害賠償請求権については、その損害の性質上、加害行 、最高裁令和元年(受)第1287号同3年4月26日第二小法廷判決・民集75巻4号1157頁参照)。 そこで検討するに、本件膨張被害による損害賠償請求権については、その損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生 するものと認められるから、除斥期間の起算点は、損害の発生の時というべきである。そして、本件膨張被害は、平成2年頃から発生し、その後、平成7年頃には、本件膨張被害が悪化している(前記1⑶ア)から、遅くとも、被告が除斥期間の起算点として主張する平成7年には、損害の一部が発生したと認められる。そうすると、本件膨張被害による損害賠償請求権について は、本件訴訟が提起されたものとみなされる平成29年6月26日(前提事実⑹ア、イ)の時点では、除斥期間の経過により消滅しているというべきである。 他方、本件有害物質被害による損害賠償請求権については、その損害の性質上、加害行為が行われた時に損害が発生するものと認められるから、除斥 期間の起算点は、加害行為の時というべきである。そして、本件有害物質被害に係る加害行為は、被告が、昭和55年1月から昭和56年11月までのいずれかの時期に、被告渋川工場から排出された鉄鋼スラグである本件異物を、本件土地に搬入した行為である。そうすると、本件有害物質被害による損害賠償請求権についても、本件訴訟が提起されたものとみなされる平成2 9年6月26日の時点では、除斥期間の経過により消滅しているというべきである。 したがって、原告らの被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は、仮に請求権が発生しているとしても、既に除斥期間の経過により消滅している。 ⑶ これに対し、原告らは、本件膨張被害による損害賠償請求権については、 法行為に基づく損害賠償請求権は、仮に請求権が発生しているとしても、既に除斥期間の経過により消滅している。 ⑶ これに対し、原告らは、本件膨張被害による損害賠償請求権については、 その損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生するものと認められるところ、本件膨張被害による損害は、膨張の規模及び期間が一定程度に達し、その原因を専門家が特定し、建物の建替えを要することが明らかになった時点で初めて明らかになるから、除斥期間の起算点は、L教授が本件膨張被害の原因が鉄鋼スラグの膨張にある旨指摘した平 成27年10月頃とすべきである旨主張する。しかしながら、本件膨張被害による損害は、本件異物が膨張を繰り返すことにより拡大していくものであるが、その損害が質的に異なるものとは解されないから、遅くとも損害の一部が発生したと認められる平成7年には、除斥期間が起算するというべきである。原告らの主張は採用できない。 また、原告らは、本件有害物質被害による損害賠償請求権については、六価クロム等の有害物質が地下水に溶け出してその地下水を飲んでしまったり、有害物質を含む土壌が口や肌に触れることで体内に摂取してしまったりして、有害物質が徐々に身体に蓄積し、健康被害が発生するに至るから、その損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する ものと認められるところ、本件有害物質被害による損害が顕在化したというためには、専門家による化学分析の結果として環境基準値を超える六価クロムが検出される必要があるから、除斥期間の起算点は、M准教授が六価クロムによる土壌汚染を指摘した平成27年10月頃とすべきである旨主張する。 しかしながら、原告らは、本件有害物質被害による損害として、具体的 出される必要があるから、除斥期間の起算点は、M准教授が六価クロムによる土壌汚染を指摘した平成27年10月頃とすべきである旨主張する。 しかしながら、原告らは、本件有害物質被害による損害として、具体的な健 康被害による損害を主張していないから、その損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生するものと認めることはできない。原告らの主張は採用できない。 その他、以上の認定判断に反する原告らの主張はいずれも採用できない。 6 被告の除斥期間の主張等が制限されるか否か(争点9〔不法行為に基づく損 害賠償請求の争点〕)について ⑴ 被告の除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないか否かについて改正前民法724条後段の規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり、同請求権は、除斥期間の経過により法律上当然に消滅するものと解されるが、同請求権が同条後段の除斥期間の経 過により消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない場合には、裁判所は、除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができると解するのが相当である(最高裁令和5年(受)第1319号同6年7月3日大法廷判決・民集78巻3号382頁参照)。 そこで検討するに、本件膨張被害は、平成2年頃から発生し、その後、平成7年頃には、本件膨張被害が悪化し、更に時間が経過すると、本件膨張被害が更に悪化していったのであり、亡Hとしても、平成7年頃に本件膨張被害が悪化した際、原告Aに対し、本件膨張被害の原因が本件異物にあることを疑う発言をしていた(前記1⑶ア)ところ、原告らが専門家に相談するな どして本 あり、亡Hとしても、平成7年頃に本件膨張被害が悪化した際、原告Aに対し、本件膨張被害の原因が本件異物にあることを疑う発言をしていた(前記1⑶ア)ところ、原告らが専門家に相談するな どして本件膨張被害の原因を特定すること等に特段の支障があったとはいえないから、原告らに、被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を行使することを期待するのが困難であったとまではいえないというべきである。 そうすると、本件被害の内容及び程度や本件土地の所有権の侵害態様等を考慮しても、原告らの不法行為に基づく損害賠償請求権が除斥期間の経過によ り消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができないとまでは認められない。その他、原告らの主張を踏まえて、本件記録を検討しても、これを肯定できる事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告の除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないとはいえない。 以上の認定判断に反する原告らの主張はいずれも採用できない。 ⑵ 改正前民法724条後段の効果が制限されるか否かについて本件異物が本件土地に搬入された後、長期間が経過してから本件訴訟が提起されるに至っているのは、本件膨張被害の原因等がそれまで特定されていなかったためにすぎず、本件異物を本件土地に搬入した被告が、原告らが不法行為に基づく損害賠償請求権を行使することができない状況を殊更に作出 したような事情は認められないから、原告らが除斥期間の経過により権利行使をすることが許されず、被告が損害賠償義務を免れることが、著しく正義・公平の理念に反するとは認められない。その他、原告らの主張を踏まえて、本件記録を検討しても、これを肯定できる事情を認めるに足りる証拠はない。 れず、被告が損害賠償義務を免れることが、著しく正義・公平の理念に反するとは認められない。その他、原告らの主張を踏まえて、本件記録を検討しても、これを肯定できる事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件において、改正前民法724条後段の効果が生じないも のと解するのが相当であるとはいえない。 以上の認定判断に反する原告らの主張はいずれも採用できない。 ⑶ なお、原告らは、改正前民法724条後段の規定は、消滅時効を定めたものと解すべきである旨主張するが、独自の見解に基づくものであり、採用できない。 7 消滅時効の成否(争点10〔債務不履行に基づく損害賠償請求の争点〕)について⑴ 事案に鑑み、争点5~7に先立ち、争点10について判断する。 ⑵ 改正前民法166条1項にいう「権利を行使することができる時」とは、単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく、さらに 権利の性質上、その権利行使が現実に期待できるものであることをも要するものと解される(最高裁昭和40年(行ツ)第100号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号771頁、同平成12年(受)485号同15年12月11日第一小法廷判決・民集57巻11号2196頁参照)。 そこで検討するに、前記6⑴のとおり、本件膨張被害は、平成2年頃から 発生し、その後、平成7年頃には、本件膨張被害が悪化し、更に時間が経過 すると、本件膨張被害が更に悪化していったのであり、亡Hとしても、平成7年頃に本件膨張被害が悪化した際、原告Aに対し、本件膨張被害の原因が本件異物にあることを疑う発言をしていた(前記1⑶ア)ところ、原告らが専門家に相談するなどして本件膨張被害の原因を特定すること等に特段の支障があった が悪化した際、原告Aに対し、本件膨張被害の原因が本件異物にあることを疑う発言をしていた(前記1⑶ア)ところ、原告らが専門家に相談するなどして本件膨張被害の原因を特定すること等に特段の支障があったとはいえず、遅くとも、本件訴訟が提起されたものとみなされる 平成29年6月26日から10年前の平成19年6月26日までには、権利行使が現実に期待できたというべきである。そうすると、債務不履行に基づく損害賠償請求権は、本件訴訟が提起されたものとみなされる平成29年6月26日の時点では、消滅時効により消滅しているというべきである。 したがって、原告らの被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権は、 仮に請求権が発生しているとしても、既に消滅時効により消滅している。 以上の認定判断に反する原告らの主張はいずれも採用できない。 ⑶ そして、前記6⑴及び⑵の説示に照らせば、被告の消滅時効の援用が信義則に反し又は権利の濫用として許されないとはいえない。その他、原告らの主張を踏まえて、本件記録を検討しても、これを肯定できる事情を認めるに 足りる証拠はない。 以上の認定判断に反する原告らの主張はいずれも採用できない。 8 まとめしたがって、原告Aは、被告に対し、所有権に基づく妨害排除として、別紙物件目録記載1~4の土地に埋められた別紙撤去物目録記載の鉄鋼スラグを含 む廃棄物の撤去を求めることができる。 他方、原告らの被告に対する不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求は、仮に請求権が発生しているとしても、当該請求権は除斥期間の経過又は消滅時効により消滅しているから、その余について判断するまでもなく、請求は理由がない。 9 結論 よって、原告らの請求は、主文第 るとしても、当該請求権は除斥期間の経過又は消滅時効により消滅しているから、その余について判断するまでもなく、請求は理由がない。 結論 よって、原告らの請求は、主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。なお、仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととする。 前橋地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官 小川雅敏 裁判官 吉田裕亮 裁判官 桑原佑吏 (別紙)撤去物目録 添付図面1記載の「異物混入範囲」として示された斜線部分(推定総面積896.59平方メートル)の範囲内で、深さは添付図面2記載の「異物混入範囲」として示された斜線部分の断面の範囲内に存在する鉄鋼スラグを含む廃棄物(推定体積2181.6立方メートル、推定質量3665.1トン)

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