令和2(ワ)13631 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年2月3日 東京地方裁判所
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判決文本文28,800 文字)

令和5年2月3日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和2年(ワ)第13631号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年11月4日判決原告株式会社東日本技術研究所同訴訟代理人弁護士武田彩織被告株式会社サンテック被告A被告ら訴訟代理人弁護士中村信雄被告ら訴訟復代理人弁護士松谷真之介 主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して315万円及びこれに対する平成29年2月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを4分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求 被告らは、原告に対し、連帯して、400万円及びこれに対する平成29年2月18日(訴状送達の日の翌日)から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告らは、原告に対し、連帯して、400万円及びこれに対する平成29年2月18日(訴状送達の日の翌日)から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 仮執行宣言 第2 事案の概要等 1 事案の概要主位的請求1 原告が、原告と被告株式会社サンテック(以下「被告会社」という。)との間で、e-J電子カルテと呼ばれる電子カルテ等を取り扱う医療機関向けのコンピュータシステム(以下、単に「e-J電子カルテ」という。また、電子カルテ等 社サンテック(以下「被告会社」という。)との間で、e-J 電子カルテと呼ばれる電子カルテ等を取り扱う医療機関向けのコンピュータシステム(以下、単に「e-J 電子カルテ」という。また、電子カルテ等を取り扱う医療機関向けのコンピュータシステムについて、単に、「電子カルテシステム」ということがある。)の販売委託契約を締結し、同契約において原 告が商談に入った見込み客に対して被告会社は商談に入らないことを約束したにもかかわらず、被告会社の従業員であった被告A(以下「被告A」という。)が、原告がB診療所とe-J 電子カルテにつき商談に入っていたにもかかわらず、B診療所に対してe-J 電子カルテを販売したことが、同販売委託契約の債務不履行に当たると主張して、被告らに対して、連帯して400万円の損害賠償及 び平成29年2月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第45号による改正前の商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を請求する事案。 主位的請求2(請求の趣旨に従い、主位的請求、予備的請求を整理。以下、同じ) 原告が、被告らは、前記のB診療所へのe-J 電子カルテの販売後である平成25年1月24日、原告に対し、e-J 電子カルテに関する資料等を一切保有せず、e-J 電子カルテを販売しないこと等を誓約したにもかかわらず、被告らがe-J 電子カルテ及びその資料を保有し、また、e-J 電子カルテを販売したことが債務不履行に当たると主張して、被告らに対して、連帯して400万円の 損害賠償及び平成29年2月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで 平成29年法律第45号による改正前の商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を請求する事案。 主位的請求3原告が、被告らは、平成27年 日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで 平成29年法律第45号による改正前の商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を請求する事案。 主位的請求3原告が、被告らは、平成27年4月1日に、原告との裁判上の和解で、被告らがe-J 電子カルテを使用、販売しないことを合意したにもかかわらず、被告 らは、同日以降も繰り返しe-J 電子カルテを用いてB診療所の電子カルテの保守行為をしたことが債務不履行に当たると主張して、被告らに対して、連帯して400万円の損害賠償及び平成29年2月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第45号による改正前の商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を請求する事案。 予備的請求1原告が、原告の元従業員である被告Aが、原告の在職中又は原告退職後に原告の了承を得ずに原告の営業秘密であるe-J電子カルテのソースコードを入手し、又は原告の在職中又は原告退職後に原告からe-J 電子カルテのソースコードの開示を受けたもののその開示の趣旨に反して前記の販売契約に基づき B診療所へe-J 電子カルテを導入したことが、被告Aについて不正競争防止法2条1項4号又は7号の不正競争行為に当たり、被告会社については、被告Aが上記の経過でe-J 電子カルテのソースコードを入手したことを知りつつB診療所にe-J 電子カルテを導入したことが、同項5号又は7号の不正競争行為に当たると主張して、被告らに対して、平成29年2月18日(訴状送達の日の 翌日)から支払済みまで連帯して400万円の損害賠償及び平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案。 予備的請求2原告が、原告は原告の従業員及び外部業者にe-J 電子カルテを開発させる の損害賠償及び平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案。 予備的請求2原告が、原告は原告の従業員及び外部業者にe-J 電子カルテを開発させるこ とによってe-J 電子カルテの著作権を取得したところ、被告らが前記のとお りB診療所にe-J 電子カルテを導入したことが原告の複製権を侵害する不法行為に当たると主張して、被告らに対して、平成29年2月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで、連帯して400万円の損害賠償及び平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)ア原告は、コンピュータのシステムの設計・開発、コンピュータのソフトウェア開発及びコンサルタント業務、電気・電子機器の設計、製造及び販売等を行う法人である。(争いなし) イ被告会社は、情報処理に関するソフトウェアの設計、開発、販売並びに保守を主たる業務とする法人である。(争いなし)ウ被告Aは、平成20年4月1日から平成23年5月31日まで、原告の契約社員として医療機関に対して電子カルテシステムの販売等をする営業を担当していた。被告Aは、平成27年7月13日以降は、被告会社の代表取 締役である。(争いなし)原告は、平成23年6月1日、被告会社との間で、原告が被告会社にe-J 電子カルテの販売を委託する販売委託契約(以下「本件販売委託契約」という。)を締結した。本件販売委託契約の契約書には次の記載がある。(甲4)「第9条(客先との競合) 1.甲(判決注:原告)が見込み客と商談に入っている案件または過去に納品した取引先 」という。)を締結した。本件販売委託契約の契約書には次の記載がある。(甲4)「第9条(客先との競合) 1.甲(判決注:原告)が見込み客と商談に入っている案件または過去に納品した取引先に乙(判決注:被告会社)は商談に入ることができない。」原告は、平成24年10月1日頃、本件販売委託契約を解除した。(弁論の全趣旨)被告会社は、平成24年11月12日頃、株式会社メディカルベスト(以下 「メディカルベスト社」という。)を介して、B診療所から電子カルテシステ ムの導入を315万円(税込み)で受注し、その後、B診療所は当該電子カルテシステムを導入した(以下、被告会社が締結したB診療所への上記導入についての契約を「本件導入契約」といい、B診療所への上記導入を「本件導入」という。)。(甲6、弁論の全趣旨)被告会社及び被告Aは、平成25年1月24日、次の内容が記載され、末尾 に被告会社の記名、同代表取締役の署名押印及び被告Aの署名押印が併記された書面を作成して原告に差し入れた(以下、同書面を「平成25年合意書」といい、平成25年合意書で被告らが約束した内容を「平成25年合意」という。)。 (甲5)「株式会社東日本研究所 代表取締役社長 C 殿以下の事項を厳守することを、ここにお約束いたします。 記1.東日本技術研究所殿の許可なく、EJ電子カルテに関する資源(プログラムソース等パッケージを動作させるに必要な物全て)を保有致しません、 現在所有している全ての関連資料は、平成25年1月24日、御社立会いの下全て消去致します。 また、これらに関連する資料のコピーを一切保管しません。 2.東日本技術研究所殿の許可なく、EJ電子カルテを販売するこ ての関連資料は、平成25年1月24日、御社立会いの下全て消去致します。 また、これらに関連する資料のコピーを一切保管しません。 2.東日本技術研究所殿の許可なく、EJ電子カルテを販売することは致しません。 3.東日本技術研究所殿の許可なく販売したEJ電子カルテは、B診療所以外にはありません。万一存在した場合は、東日本技術研究所殿の指示に従い速やかに処置致します。」原告は、被告会社及び被告Aに対して電子カルテシステムの販売差止等を求める仮処分命令申立事件を申し立てたところ、原告と被告会社及び被告Aは、 平成27年7月1日、上記事件の抗告審(平成27年(ラ)第10004号) である知的財産高等裁判所において、次の内容の和解をした(以下「平成27年和解」という。)。(乙4)「1 相手方ら(判決注:被告会社及び被告A)は、別紙目録1及び同記載2の各システムを使用販売しない。 (2項以下略) 」 「別紙目録11.e-j 電子カルテシステムソースプログラム2.e-j 電子カルテシステム実行モジュール(3項以下略) 」 3 争点 本件販売委託契約の債務不履行(主位的請求1)ア被告会社がB診療所への電子カルテシステムの導入についての商談を開始した時、原告とB診療所との商談が継続していたか(争点1-1)イ損害及び因果関係(争点1-2)平成25年合意違反の債務不履行(主位的請求2) ア平成25年合意の内容及び違反の有無(争点2-1)イ損害及び因果関係(争点2-2)平成27年和解違反の債務不履行(主位的請求3)ア平成27年和解の内容及び違反の有無(争 ア平成25年合意の内容及び違反の有無(争点2-1)イ損害及び因果関係(争点2-2)平成27年和解違反の債務不履行(主位的請求3)ア平成27年和解の内容及び違反の有無(争点3-1)イ損害及び因果関係(争点3-3) 不正競争防止法違反(予備的請求1)ア e-J 電子カルテのソースコードが原告の営業秘密であるといえるか(争点4-1)イ被告らがe-J電子カルテのソースコードを取得等したか(争点4-2)ウ本件導入が営業秘密の使用に当たるか(争点4-3) エ損害及び因果関係(争点4-4) 複製権侵害(予備的請求2)ア原告がe-J 電子カルテを作成したか(争点5-1)イ本件導入が原告のe-J 電子カルテの複製に当たるか(争点5-2)ウ損害及び因果関係(争点5-3)被告会社にe-J 電子カルテの使用権原があったか(争点6)(予備的請求に おける抗弁) 4 争点に対する当事者の主張被告会社がB診療所への電子カルテシステムの導入についての商談を開始した時、原告とB診療所との商談が継続していたか(争点1-1)(原告の主張) 本件販売委託契約では、原告が見込み客と商談に入っている時には被告会社は商談に入ることができない旨定められている。原告は、平成24年5月頃からB診療所とe-J 電子カルテの導入につき商談を進めていた。被告会社及び被告Aは、本件販売委託契約終了前から、同商談を認識しつつ、本件販売委託契約に反して、B診療所と電子カルテシステムの導入についての商談に入り、本 件導入契約を締結し、平成25年1月15日頃、B診療所にe-J 電子カルテを導入した。 被告会社がB診療所にe-J 電子カルテを原告の許可を得ずに販 システムの導入についての商談に入り、本 件導入契約を締結し、平成25年1月15日頃、B診療所にe-J 電子カルテを導入した。 被告会社がB診療所にe-J 電子カルテを原告の許可を得ずに販売したことは、本件販売委託契約に反した行為である。 被告らは、本件販売委託契約終了後にB診療所への電子カルテシステムの導 入についての商談に入ったと主張するが、電子カルテシステムの導入には時間がかかるため、本件販売委託契約終了後から商談に入ったのでは平成24年11月に本件導入契約を締結することはできない。 (被告らの主張)被告Aは、本件販売委託契約を解除された後、メディカルベスト社の社長か ら、B診療所が原告からe-J 電子カルテを導入するという話があったが原告か ら提示された導入金額が高すぎるので、導入することができないことになり、被告会社で対応できないかという申出を受けた。そこで、被告会社は、B診療所を訪れてその要望を確認し、平成24年11月12日にB診療所への電子カルテシステムの導入を受注した。原告とB診療所の商談は平成24年夏頃には破談になっており、また、被告会社は、本件販売委託契約終了後に商談に入っ た。原告が主張する債務不履行はない。 損害及び因果関係(争点1-2)(原告の主張)原告とB診療所の間では、400万円でのe-J 電子カルテを導入することが見込めるところまで話が進み、また、e-J 電子カルテを導入するための客観的 な対価は、400万円を下らないから、被告らの債務不履行によって原告は同額の損害を被った。 (被告らの主張)前記で被告らが主張した経過からしても、原告がB診療所に400万円でe-J 電子カルテを導入することができたとはいえない。原告の逸失利益は観念 告は同額の損害を被った。 (被告らの主張)前記で被告らが主張した経過からしても、原告がB診療所に400万円でe-J 電子カルテを導入することができたとはいえない。原告の逸失利益は観念 できず、被告らの行為と原告の損害との因果関係は認められない。 平成25年合意の内容及び違反の有無(争点2-1)(原告の主張)平成25年合意により原告と被告らは、次の内容を合意したア被告らは、e-J 電子カルテに関する資源を保有しない。 イ被告らは、e-J 電子カルテに関連する資料を全て消去する。 ウ被告らは、e-J 電子カルテに関連する資料のコピーを保管しない。 エ被告らは、e-J 電子カルテを販売しない。 しかし、被告らは、平成25年合意後、本件訴訟にe-J電子カルテのソースコードを提出しているから、同アについて、e-J 電子カルテを保有しており、 同イについて、e-J 電子カルテを消去せず、同ウについて、e-J 電子カルテの 資料のコピーを保有した。また同エについて、e-J 電子カルテをB診療所に対して販売したのであるから、被告らは、平成25年合意に違反した。被告らは、平成25年合意に違反した債務不履行責任を負う。 (被告らの主張)原告の主張アについて、被告らは、原告の立会いの下、e-J 電子カルテのソ ースコードのデータを原告が用意した記録媒体に移動して被告らが保有していない状態にしたので、義務を履行した。 同イ、ウについて、平成25年合意によって約束したのはソースコードの削除のみであるから、被告らによる関連する資料の保有が債務不履行になる余地はない。 エについて、被告らが平成25年合意後にB診療所に対してe-J 電子カルテを販売したことはない。 損 除のみであるから、被告らによる関連する資料の保有が債務不履行になる余地はない。 エについて、被告らが平成25年合意後にB診療所に対してe-J 電子カルテを販売したことはない。 損害及び因果関係(争点2-2)(原告の主張)被告らが平成25年合意を履行してB診療所に導入されたe-J 電子カルテ に関するデータを消去していれば、被告会社又はメディカルベスト社とB診療所との間のe-J 電子カルテ又は実質的にe-J 電子カルテと同じ電子カルテシステムを導入した契約及び保守契約は債務不履行となって契約解除となる一方、原告はB診療所との間でe-J 電子カルテの導入契約を400万円で締結して、かつ、保守契約も受注することができた。よって、平成25年合意違反と 因果関係のある損害は400万円を下らない。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。 平成27年和解の内容及び違反の有無(争点3-1)(原告の主張) 平成27年和解の第1項のとおり、原告と被告らはe-J 電子カルテを使用、 販売しないことを合意した。しかし、被告らは、平成25年1月24日から平成30年5月10日まで、B診療所に対して、契約に基づき、繰り返し、e-J 電子カルテを用いて保守行為をした。被告らは、平成27年和解に違反しており、債務不履行責任を負う。 (被告らの主張) 被告らが平成27年和解後に保守行為をしたことは認めるが、保守行為をすることはe-J 電子カルテの使用には当たらない。仮に保守行為をすることがe-J 電子カルテの使用に当たるとしても、平成27年和解ではB診療所での保守行為はその対象から除外されていた。 損害及び因果関係(争点3-2) (原告の主張)前記の原告の主張 e-J 電子カルテの使用に当たるとしても、平成27年和解ではB診療所での保守行為はその対象から除外されていた。 損害及び因果関係(争点3-2) (原告の主張)前記の原告の主張と同様である。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。 e-J 電子カルテのソースコードが原告の営業秘密であるといえるか(争点4 -1)(原告の主張)ア秘密管理性について原告は、e-J 電子カルテのソースコードを記録した記録媒体を事業所内のサーバ室で保管していて、同サーバ室への入室を許可されているのは、原告 の代表取締役、事業所長、サーバ室の管理責任者の3名のみである。同プログラムへのアクセス権者は、上記3名以外には、開発に従事していた10名のみであった。同プログラムにアクセスするためのパスワードを知っているのは、同10名のほかには事業所長のみであった。同アクセスには2つのパスワードが必要であり、パスワードは、180日ごとに変更している。 原告は、従業員全員に対して情報セキュリティ誓約書を提出させており、 被告Aにも誓約書を提出させた。 原告では、情報セキュリティ統括責任者、情報セキュリティ副統括管理責任者を設けて、各部門の末端まで管理体制に組み込んでいる。さらに、情報セキュリティ委員会を設置して、セキュリティ向上のための施策や評価を行っている。同委員会には情報セキュリティ監査責任者が置かれて、各部門に 対して月1回の強制的な監査権限が付されている。 原告がプログラム開発を外注するときには、各種契約書や覚書により、秘密保持義務を課している。 イ非公知性e-J 電子カルテは、原告従業員及び外注先によって創作されており、前記 アで主張した体制によって、e-J 注するときには、各種契約書や覚書により、秘密保持義務を課している。 イ非公知性e-J 電子カルテは、原告従業員及び外注先によって創作されており、前記 アで主張した体制によって、e-J 電子カルテについての資料が外部に漏洩されることはない。また、導入先に対してもソースプログラムを渡すことは一切ない。 ウ有用性e-J 電子カルテのソースコードは、事業活動に有用な技術上の情報である。 特に医療機関の業務のデジタル化を進め、医療従事者の業務の遂行を安全かつ確実ならしめるものであって、有用なものであることは明らかである。 (被告らの主張)原告の主張は不知。原告の主張は極めて抽象的で、かつ、何らの客観的な証拠に基づくものではない。 ア原告が全従業員に提出させていた情報セキュリティ誓約書には、何が秘密に該当するのか具体的に定めておらず、e-J 電子カルテの秘密管理性を基礎付けるものではない。 イ e-J 電子カルテが原告従業員及び外注先によって創作されたことは否認する。e-J 電子カルテは株式会社日本メディカルバンク(以下「日本メディカ ルバンク」という。)が開発したアトム電子カルテと呼ばれる電子カルテ等 について取り扱う医療機関向けのコンピュータシステム(以下、単に「アトム電子カルテ」ということがある。)のソースコードを流用して作成されているのであり、e-J 電子カルテの大部分は当該流用部分であるから非公知性は認められない。 ウ e-J 電子カルテは、その大部分がアトム電子カルテを流用して作成されて いるのであるから、e-J 電子カルテのソースコードが有用な技術上の情報になることはない。 被告らがe-J 電子カルテのソースコードを取得等したか(争点4-2)(原告の主張) 作成されて いるのであるから、e-J 電子カルテのソースコードが有用な技術上の情報になることはない。 被告らがe-J 電子カルテのソースコードを取得等したか(争点4-2)(原告の主張)ア選択的主張1 被告Aは、被告Aが原告に在職していた平成20年4月1日から平成23年5月31日までの間、当時原告がe-J 電子カルテの開発、保守を委託していた株式会社アイズテックに対し、原告の従業員としての地位を悪用してe-J 電子カルテのソースコードを提供するように指示してe-J 電子カルテのソースプログラムを取得した。(不正競争防止法2条1項4号) 被告会社は、被告Aが平成23年6月1日頃に被告会社に入社したことによってe-J 電子カルテのソースコードを取得した。被告会社は、被告Aが不正の方法によって同ソースコードを入手したことを知っていた。(不正競争防止法2条1項5号)イ選択的主張2 被告Aは、原告に在職していたときに原告からe-J 電子カルテのソースコードの開示を受けた。他方で、被告Aは、原告に情報セキュリティ誓約書(甲19)を提出することによって、営業秘密を開示しない義務を負っていた。 そうであるにもかかわらず、被告Aは、原告の許可を得ずにe-J 電子カルテのソースコードが保存された媒体を社外に持ち出して保管し続け、その後、 後記のとおり、同ソースコードをB診療所に導入した。(不正競争防止法 2条1項7号)被告会社は、被告Aによるe-J 電子カルテのソースコードの取得が、上記のとおり情報セキュリティ誓約書で規定された義務に違反することを知りながら、後記のとおり、同ソースコードをB診療所に導入した。(不正競争防止法2条1項7号) ウ予備的主張1被 上記のとおり情報セキュリティ誓約書で規定された義務に違反することを知りながら、後記のとおり、同ソースコードをB診療所に導入した。(不正競争防止法2条1項7号) ウ予備的主張1被告らは、被告Aが平成23年6月1日に被告会社に入社した後、原告がe-J 電子カルテのソースコードの開発を委託していた会社に働きかけて、原告の許諾なくe-J 電子カルテのソースコードを取得した。(不正競争防止法2条1項4号) 被告会社は、本件販売委託契約の内容から、被告Aが原告からe-J 電子カルテのソースコードの提供を受けられないことを知っていた。したがって、被告会社は従業員である被告Aがe-J 電子カルテを不正に取得したことを知りながら、従業員である被告Aを主担当として後記のとおり、これをB診療所に導入した。(不正競争防止法2条1項5号) エ予備的主張2被告Aは、原告を退職した後、本件販売委託契約に基づき、Dクリニックにe-J 電子カルテを導入する際に、原告からe-J 電子カルテのソースコードの開示を受けた。しかし、被告らは、本件販売委託契約終了後もe-J 電子カルテのソースコードを廃棄せずに後記のとおり、B診療所に導入した。(不 正競争防止法2条1項7号)被告会社は、被告Aによるe-J 電子カルテのソースコードの取得が不正開示行為であることを知りつつ、後記のとおり、B診療所に導入した。(不正競争防止法2条1項7号)オ被告らは、前記ウ、エについて時機に後れた攻撃方法であると主張するが、 これらの主張が提出されたとき、書面による準備手続は終結しておらず、正 式な人証申請すらされていなかったのであるから、時機に後れていないことは明らかである。 (被告らの主張)ア予備的 の主張が提出されたとき、書面による準備手続は終結しておらず、正 式な人証申請すらされていなかったのであるから、時機に後れていないことは明らかである。 (被告らの主張)ア予備的主張1、2は時機に後れた攻撃方法であり、却下されるべきである。 本件で、原告は、裁判所から繰り返し請求原因を確定するように指示された 上で請求原因がようやく確定し、そのとき、原告は、予備的にも原告の予備的主張2の主張はしないことを確認した。それにもかかわらず、原告は、尋問の直前にこれらの主張を追加したものである。予備的主張2は、具体的な経緯についての主張もない上、被告らが反論するにしても防御の準備に時間を要することが明らかであり、訴訟の完結を遅延させることは明らかである。 イ選択的主張1、2、予備的主張1の各事実は否認する。被告Aは、原告を退職した後、本件販売委託契約に基づき、Dクリニックにe-J 電子カルテを導入する際に、原告からe-J 電子カルテのソースコードの開示を受けた。 本件導入が営業秘密の使用に当たるか(争点4-3)(原告の主張) 被告らは、営業秘密であるe-J 電子カルテのソースコードを用いて本件導入をしたのであるから、営業秘密の使用に当たる。 (被告らの主張)被告らは、e-J 電子カルテのソースコードに被告独自のソースコードを付加したものを導入したのであり、e-J 電子カルテを導入したとはいえないから、 本件導入は営業秘密の使用には当たらない。 損害及び因果関係(争点4-4)(原告の主張)原告は、B診療所とe-J 電子カルテを400万円で受注する商談を進めていたが、被告らが、不正に取得等したe-J 電子カルテをB診療所に315万円で 導入したため、原告はB診療所へこれを 原告は、B診療所とe-J 電子カルテを400万円で受注する商談を進めていたが、被告らが、不正に取得等したe-J 電子カルテをB診療所に315万円で 導入したため、原告はB診療所へこれを導入することができなかった。これに より、原告は、e-J 電子カルテ導入で得られる予定だったライセンス料である400万円相当の損害を被った(不正競争防止法4条、5条3項3号)。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。 原告がe-J 電子カルテを作成したか(争点5-1) (原告の主張)原告は、原告の従業員及び外部業者にプログラムを作成させてe-J 電子カルテを開発したところ、外部業者については原告との間で原告を著作権者とする契約を締結しており、また、原告の従業員は原告の職務としてe-J 電子カルテの開発を行ったため、原告がe-J 電子カルテの著作権を取得した。 (被告らの主張)原告の主張する事実は不知ないし否認する。原告の主張は何ら客観的な証拠に基づかない。e-J 電子カルテは、日本メディカルバンクが開発したアトム電子カルテを原告が一部改変したものであり、原告が最初から創作したものではない。 本件導入が原告のe-J 電子カルテの複製に当たるか(争点5-2)(原告の主張)被告Aは、本件導入によりe-J 電子カルテを複製したから原告の複製権を侵害する。 (被告らの主張) 被告会社は、B診療所の要望に応じて、e-J 電子カルテに新たなソースコードを追加するなどしてカスタマイズした電子カルテを導入したから、当該行為は複製には当たらない。 損害及び因果関係(争点5-3)(原告の主張) e-J 電子カルテを導入する対価は400万円を下らず、原告はB診療所と ズした電子カルテを導入したから、当該行為は複製には当たらない。 損害及び因果関係(争点5-3)(原告の主張) e-J 電子カルテを導入する対価は400万円を下らず、原告はB診療所との 間で、これを400万円で導入する契約を締結することを見込めるところまで話を進めていたところ、被告AがB診療所に315万円で本件導入をしたために契約を締結することができなくなった。よって、原告の損害は400万円を下らない。 (被告らの主張) 原告の主張は否認ないし争う。 被告会社にe-J 電子カルテの使用権原があったか(争点6)(被告らの主張)日本メディカルバンクは、平成13年頃、被告Aが代表であったところ、アトム電子カルテシステムを開発した。株式会社エム・ビジョン(以下「エ ム・ビジョン」という。)、日本メディカルバンク及び原告は、平成20年7月11日、アトム電子カルテにつき、原告がアトム電子カルテの解析、改良又は改作等をすることができ、この場合、改良プログラム及びその関連物の所有権、著作権等の一切の法的権利は原告に帰属すること、原告はエム・ビジョンに対して、同社が同改良プログラムの使用を第三者に再許諾すること を許諾することなどを含む合意(以下「本件使用許諾契約」という。)をした。 e-J 電子カルテは、本件使用許諾契約に基づいてアトム電子カルテを改変して作成されたものであり、株式会社エム・ビジョンは、本件使用許諾契約に基づき、e-J 電子カルテのソースコードの使用を第三者に許諾できるところ、 被告会社はこの許諾を受けたので、被告がこれを用いることが違法と評価される理由はない。 (原告の主張)被告らの主張は否認ないし争う。e-J 電子カルテは、前記で原告が主張したとおり、 被告会社はこの許諾を受けたので、被告がこれを用いることが違法と評価される理由はない。 (原告の主張)被告らの主張は否認ないし争う。e-J 電子カルテは、前記で原告が主張したとおり、原告の従業員等がプログラムを作成したものであり、アトム電子カ ルテを改変して作成されたものではない。また、株式会社エム・ビジョンが被 告会社にe-J 電子カルテの利用許諾をしたこともない。 第3 当裁判所の判断 1 証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 日本メディカルバンクは、被告Aが代表者であったところ、医療機関により使用される電子カルテ等を取り扱うシステムであり、コンピュータプログラム を有するアトム電子カルテを開発し、平成18年1月までには、少なくとも10か所の医療機関にアトム電子カルテが導入された。アトム電子カルテは、メディカルベスト社を介して、平成18年頃、B診療所にも導入された。(乙1、A本人、弁論の全趣旨)日本メディカルバンクは、平成19年に経営が破綻し、同年5月11日、株 式会社日本MBS(以下「日本MBS」いう。)に対し、アトム電子カルテのプログラムの著作物の著作権を譲渡し、同年6月5日にその旨がプログラム登録原簿に登録された。日本MBSは、同年11月5日、エム・ビジョンに対して、アトム電子カルテのプログラムの著作物の著作権を譲渡し、平成20年10月31日にその旨がプログラム登録原簿に登録された。(甲13、証人E、弁論の 全趣旨)原告は、電子カルテ等についての医療機関向けのシステムを販売する事業を新たに開始することとし、その事業を行っている者から事業譲渡を受けることとした。原告は、平成20年4月1日、当時被告Aが代表取締役であった日本メディカルバンクとの間で、 けのシステムを販売する事業を新たに開始することとし、その事業を行っている者から事業譲渡を受けることとした。原告は、平成20年4月1日、当時被告Aが代表取締役であった日本メディカルバンクとの間で、同社が原告に対して医療システム関連の販売及び 開発・保守等の事業を譲渡することを内容とする基本契約書を作成して、その事業の譲渡を受けた。同契約書には次の記載があった。また前同日、被告Aは原告の契約社員になった。(甲12、弁論の全趣旨)「第2条(譲渡資産)アトム電子カルテシステム一式 健診システム一式 臨床検査システム一式地域連携支援システム一式在庫・物品管理システム一式画像ファイリングシステムその他現在甲(判決注:日本メディカルバンク)が所有しているシ ステム全般電話、社用車、事務用機器、机等什器・備品その他第6条事業譲渡の対価は、毎月乙(判決注:被告A)が発注した案件を完成させ、納品したものを集計し、諸経費を除いた粗利益の40%を、丙(判決注:原 告)が甲又は乙に翌月末日現金にて支払う。・・・対価の支払いは平成22年3月31日迄とする、延長するかどうかは協議によるが、丙に全権を委ねる。 第7条(ロイヤリティについて)丙は、甲及び乙が著作権を有する第2条のシステムについてロイヤリティを支払う。販売が成立したライセンス1個当たり金10万円を支払う。 第11条本事業継続にあたって、甲及び乙は以下の条件を遵守する。 丙の事業であるので、甲及び乙は全てに丙の社内規定及びルールに従う。 甲及び乙の過去の負債の処理については、甲及び乙が負担する。 ・・・・・平成20年4月1日以降に事業継続に重大な事象が発生した場合は、即時こ てに丙の社内規定及びルールに従う。 甲及び乙の過去の負債の処理については、甲及び乙が負担する。 ・・・・・平成20年4月1日以降に事業継続に重大な事象が発生した場合は、即時この契約はその時点で解消とし、それまでに丙が負担した費用は、甲又は乙は連帯して即時返済する。」原告、日本メディカルバンク及びエム・ビジョンは、平成20年7月1日、 次の内容のプログラム使用許諾契約書(以下「本件使用許諾契約書」という。) を作成して本件使用許諾契約を締結した。(乙2)「第1条(定義)本件契約において、次の語句は、下記の意味を有するものとする。 「本件ソフトウエア」:本契約に従い甲(判決注:エム・ビジョン)が供給する電子カルテシステム(ただし、乙(判決注:日本メディカルバン ク)が開発し、平成19年5月11日に株式会社日本MBSが乙から譲り受けたものをいう。)「本件改良ソフトウエア」:本件ソフトウエアの乙又は丙(判決注:原告)による改良又は改作後のコンピュータ・ソフトウエア(ただし、乙又は丙による改良又は改作に創作性が認められることが必要。)。 第2条(使用許諾) 1 甲は、乙に対し、本件ソフトウエアについて、乙と日本国内の第三者がライセンス契約を締結することを許諾する。 2 甲は、乙に対し、本件ソフトウエアの使用権を、甲が書面により許諾した者に対して再許諾することを許諾する。 3 乙は、丙に対し、本件ソフトウエアについて、丙と日本国内の第三者がライセンス契約を締結することを許諾する。 ・・・・・・第3条(対価) 1 丙は、乙に対し、本契約に基づく許諾の対価として、丙が第三者と締結 した本件ソフトウェアライセンス端末1件あたり金10万円(税込)を、平成2 許諾する。 ・・・・・・第3条(対価) 1 丙は、乙に対し、本契約に基づく許諾の対価として、丙が第三者と締結 した本件ソフトウェアライセンス端末1件あたり金10万円(税込)を、平成20年6月から毎月末日に締め切り、翌々月5日に乙方に持参または送金して支払う。 第4条(納入) 1 甲は、乙に対し、本日ソフトウエア及び本件ソフトウエア関連物一式を 納入し、乙は、本件ソフトウエア及び本件ソフトウエア関連物受領後10日 以内に検査を完了する。 2 乙は、丙に対し、平成20年7月末日限り、本件ソフトウエア及び本件ソフトウエア関連物一式を納入し、丙は、本件ソフトウエア及び本件ソフトウエア関連物受領後10日以内に検査を完了する。 第7条(改良等) 乙及び丙は、本件ソフトウエアに対し、次の行為をすることができる。 本件ソフトウエアの解析本件ソフトウエアの改良又は改作・・・・第8条(権利帰属) 1 本件ソフトウエア及び本件ソフトウエア関連物の所有権、著作権、特許権等、一切の法的権利は甲に帰属する。 2 乙又は丙が、本件ソフトウエアを改良又は改作した場合において、本件改良プログラム及び本件改良プログラム関連物の所有権、著作権、特許権等、一切の法的権利は丙に帰属するものとし、乙又は丙は本件改良プログ ラム及び本件改良プログラム関連物の内容を甲に開示する。 3 丙は、甲に対し、本件改良プログラム及び本件改良プログラム関連物の所有権、著作権、特許権等を、本契約書第14条にかかわらず、本契約締結日より10年間、無償での使用を許諾するものとする。ただし、本条項期間満了後においても、甲又は丙からも本条項期間満了6か月前の書面に よる異議がない場合には、本条項は有効に5年間延長された 結日より10年間、無償での使用を許諾するものとする。ただし、本条項期間満了後においても、甲又は丙からも本条項期間満了6か月前の書面に よる異議がない場合には、本条項は有効に5年間延長されたものとみなされ、以降同様とする。 5 本条第3項の場合、丙は、甲に対し、甲が本件改良プログラム及び本件改良プログラム関連物の使用を第三者に再許諾することを許諾する。 第14条(有効期間) 本契約の有効期間は、甲乙間にて別途定める平成20年7月11日付け債 務返済契約に定める乙の甲に対する債務が返済されるまでとする。 原告は、前記のとおり、平成20年4月、日本メディカルバンクとの間で事業譲渡基本契約書を締結し、また、その後、前記のとおり、エム・ビジョンらとの間で本件使用許諾契約書を締結したところ、原告は、その後、アトム電子カルテのプログラムのソースコードについて、少なくともその一部を得た。 原告は、そのアトム電子カルテのプログラムのソースコードの少なくとも一部を利用するなどして、平成20年から相当額の開発費をかけて原告の従業員等が業務として多くのプログラムの作成の作業を行い、電子カルテシステムとして稼働する新しいシステムを制作した。原告は、電子カルテシステムをe-J電子カルテという名称で販売したところ、平成24年頃に販売していたe-J 電 子カルテは、アトム電子カルテにはない「看護機能」も備わるなどしていた。 (甲34、証人F、証人E、弁論の全趣旨)被告Aは、原告の契約社員として原告の電子カルテシステムを販売していたが、平成23年5月31日に原告を退社した。同年6月1日、原告と被告会社は、本件販売委託契約を締結し、被告Aも本件販売委託契約の契約書の末尾に 「連帯保証人」として記名押印した。 販売していたが、平成23年5月31日に原告を退社した。同年6月1日、原告と被告会社は、本件販売委託契約を締結し、被告Aも本件販売委託契約の契約書の末尾に 「連帯保証人」として記名押印した。 本件販売委託契約の契約書には次の記載があった。 「株式会社東日本研究所(以下甲という。)(判決注:原告)は、株式会社サンテック(以下乙という。)(判決注:被告会社)に甲が保有する医療関連システムの販売を委託するため以下のとおり販売委託契約を締結する。」 「第1条(目的)甲は甲の所有する医療関連システム(以下e-j シリーズという)の販売業務を乙に委託することとする。乙は甲との契約に基づき販売業務を遂行するにあたり、相互信頼の精神に基づき誠意を持って取り組むこととする。」第3条(使用許諾権等) 1.e-j シリーズの販売について甲は乙を代理店として認定する。 2.甲は乙に対してe-j シリーズの使用許諾権及び指定顧客への再販売権を許諾する。 3.使用許諾権にはプログラムの改変権及び第3者への権利譲渡は含まない。 4.新規にカスタマイズするものは、乙が開発費用を負担し甲が管理する。 第5条(ライセンス使用料及び販売件数) 1.乙はクライアント1台につき5万円のライセンス料を甲に支払う。 2.甲は、乙と販売先の契約書を確認することによりクライアント数の確認をする。また甲は納品後契約書どおりに納入されたことを確認する。 第9条(客先との競合)1.甲が見込み客と商談に入っている案件または過去に納品した取引先に乙 は商談に入ることは出来ない。 2 ・・・」(甲4、弁論の全趣旨)原告は、平成24年5月頃から、B診療所とe-J 電子カルテの導入について商談を始め、B診療所の依頼 た取引先に乙 は商談に入ることは出来ない。 2 ・・・」(甲4、弁論の全趣旨)原告は、平成24年5月頃から、B診療所とe-J 電子カルテの導入について商談を始め、B診療所の依頼に基づき、平成24年8月28日付け見積書を作 成してB診療所に交付した。同見積書には、「B診療所様向け医療情報システム」について、ソフトウェア420万円、カスタマイズ費用20万円、導入作業費746万4000円などと記載され、値引きにより、合計額を1000万円(税別)とすることが記載されていた。その後、原告は、B診療所から値引きの要請を受け、同年9月20日付けの見積書を作成してこれをその頃B診療 所に交付した。同見積書は、同年8月28日付け見積書に比べて値引額を多くして、合計額を400万円(税別)とするものであった。(甲25、弁論の全趣旨)被告会社は、平成24年10月1日頃に本件販売委託契約を解除した。 メディカルベスト社は、平成24年11月12日付けで被告会社に対する注 文書を作成し、それがその頃被告会社に交付された。同注文書は、「B診療所様 受け電子カルテシステム費用」についてのもので、注文日付を前同日とし、希望納期を平成25年2月1日とし、「電子カルテシステムパッケージ、操作指導、及び導入作業、データ移行(現行システム:アトム電子カルテからの移行)、カスタマイズ(アトム電子カルテで利用されている機能)、カスタマイズ(病院デモでご要望のあった内容)」について、「電子カルテシステム 1式」として、 315万円(税込)で被告会社に注文するというものであった。メディカルベスト社は、B診療所にアトム電子カルテを導入する際にその導入に関与した会社である。(甲6、弁論の全趣旨)その後、被告会社が、B診療 円(税込)で被告会社に注文するというものであった。メディカルベスト社は、B診療所にアトム電子カルテを導入する際にその導入に関与した会社である。(甲6、弁論の全趣旨)その後、被告会社が、B診療所に電子カルテシステムを導入することとなり、その導入についての契約である本件導入契約に基づき、平成25年1月24日 までに、被告会社はB診療所に電子カルテシステムを導入した。また、その頃、被告会社はB診療所の電子カルテシステムの継続的な保守管理を行うことも受注した。(甲6、11、乙7、証人F、弁論の全趣旨)被告会社がB診療所に販売した電子カルテシステムは、e-J 電子カルテに対して、予約状況画面に「予約登録日」「予約登録時間」の列が追加され、医師診 療予約画面において設定項目が一部追加され、原告の社名や権利関係の表示が削除されるなどの変更は加えられていたものの、電子カルテシステムの機能、表示はもちろんのこと、「e-J」の文字を基にして作成されたアイコンの画像のような細部に至るまで、そのほとんどの構成は、e-J 電子カルテと同一であった。(甲8~11、乙7、弁論の全趣旨) 原告は、本件導入契約に基づくB診療所への電子カルテシステムの導入が行われた後、被告会社がB診療所にe-J 電子カルテを導入したと理解して、被告会社に赴いた。原告は、被告会社の当時の代表取締役(宗像芳夫)及び被告Aに対して平成25年合意書に署名するよう要請し、被告会社の代表取締役及び被告Aはこれに署名押印した。また、同日、被告Aも立ち合い、被告会社の端 末等から、e-J 電子カルテのデータを消去する作業が行われた。 平成25年合意書には、以下の記載があった。 「株式会社東日本研究所代表取締役社長 C 殿以下の事項 末等から、e-J 電子カルテのデータを消去する作業が行われた。 平成25年合意書には、以下の記載があった。 「株式会社東日本研究所代表取締役社長 C 殿以下の事項を厳守することを、ここにお約束いたします。 記 1.東日本技術研究所殿の許可なく、EJ電子カルテに関する資源(プログラムソース等パッケージを動作させるに必要な物全て)を保有いたしません、現在保有している全ての関連資料は、平成25年1月24日、御社立合いの下全て消去いたします。 また、これらに関連する資料のコピーを一切保管しません。 2.東日本技術研究所殿の許可なく、EJ電子カルテを販売することは致しません。 3.東日本技術研究所殿の許可なく販売したEJ電子カルテは、B診療所以外にはありません。万一存在した場合は、東日本技術研究所殿の指示に従い速やかに処置いたします。」 (甲5、被告A本人、弁論の全趣旨)原告は、平成26年、被告会社と被告Aが平成25年合意に反してe-J 電子カルテを医療機関に販売しようとしていると主張して、被告会社及び被告Aに対してe-J 電子カルテ等の使用、販売の差止めを求める仮処分命令申立事件を申し立てた。原告と被告会社及び被告Aは、同事件の抗告審において平成27 年和解をした。(甲32、乙4)被告会社は、令和4年4月頃までB診療所に導入した電子カルテの保守管理作業を行った。(A本人)原告は、平成29年2月2日に本件訴えを提起した。被告らは、平成30年5月11日頃、本件導入契約に基づいて被告会社がB診療所に導入した電子カ ルテについてのソースコードの一部を乙号証として提出した。(乙8~12、 顕著な事実) 2 争 成30年5月11日頃、本件導入契約に基づいて被告会社がB診療所に導入した電子カ ルテについてのソースコードの一部を乙号証として提出した。(乙8~12、 顕著な事実) 2 争点1-1(被告会社がB診療所への電子カルテシステムの導入についての商談を開始した時、原告とB診療所との商談が継続していたか)について前記1で認定したとおり、原告は、平成24年5月頃からB診療所と、電子カルテシステムであるe-J 電子カルテの導入について商談を始め、B診療所に対 して同年9月20日付けで値引き後の見積書を交付した。したがって、同日の時点では原告とB診療所との間で商談が継続していたことが認められる。しかし、原告とB診療所の間で同日以降にe-J 電子カルテについて何らかのやり取りが行われたことを認めるに足りる証拠はない。他方、被告会社に対しメディカルベスト社から平成24年11月12日付けの注文書が作成され、被告会社がB診療所 の電子カルテシステムを受注した(同)。このことについて、被告らは、メディカルベスト社がB診療所から原告の提示金額よりも低い金額で電子カルテシステムを導入したいとの相談を受けて、被告会社に対し導入の打診をして、被告会社は、それに応じて、B診療所に電子カルテシステムを導入したのであり、B診療所と商談に入ったのは、本件販売委託契約が原告によって解除された同年10 月1日よりも後であったと主張し、被告Aもこれに沿う供述をする。原告の見積書は同年9月20日付けのものが最終であり、その後、原告とB診療所との間で電子カルテシステムの導入についてやりとりがされたことや、同年8月28日付けの見積書に対し値引きを求めたB診療所が、同年9月20日付けの見積書に対しその額での導入を承諾する意向を示すなどのやりと で電子カルテシステムの導入についてやりとりがされたことや、同年8月28日付けの見積書に対し値引きを求めたB診療所が、同年9月20日付けの見積書に対しその額での導入を承諾する意向を示すなどのやりとりがあったことを認める に足りないことからすると、B診療所が原告の提示金額よりさらに低い金額での電子カルテシステムを導入したいと考え、同年10月1日より後にB診療所がメディカルベスト社を介して被告会社への打診をしたとする被告らの主張や供述に格別に不合理な点があるとまではいえない。原告は、同日よりも前に商談に入っていなければ、メディカルベスト社が被告会社に対して同年11月12日付け の注文書を作成して交付することは不可能であると主張するが、このことを認め るに足りる証拠はなく、同注文書の作成時期をもって被告会社が同年10月1日以前にB診療所との関係で商談をしていたと認めることはできない。また、その他、被告会社が、本件販売委託契約が解除された同年10月1日よりも前にB診療所との商談に入っていたことを認めるに足りる証拠はなく、同事実を認めることはできない。 以上によれば、本件販売委託契約が解除される平成24年10月1日より前にB診療所への電子カルテシステムの納入について被告会社が商談を開始したと認めることはできないから、同商談を開始していたことを前提とする原告の主位的請求には理由がない。 3 争点2-1(平成25年合意の内容及び違反の有無)、争点2-2(損害及び因 果関係)について原告は、主位的請求2において、被告らが平成25年合意において、被告が平成25年合意を履行し、本件導入によってB診療所に導入されたe-J 電子カルテを消去していれば、原告は改めて400万円でB診療所とe-J 電子カルテの導入契 被告らが平成25年合意において、被告が平成25年合意を履行し、本件導入によってB診療所に導入されたe-J 電子カルテを消去していれば、原告は改めて400万円でB診療所とe-J 電子カルテの導入契約を締結することができたのであるから、原告に生じた損害は400 万円を下らないと主張する。 原告の同請求は、平成25年合意により、被告らが、B診療所に導入された電子カルテシステムを消去する義務を負ったことを前提とすることから、平成25年合意により、被告らがそのような義務を負ったかについて、検討する。 平成25年合意書の記載内容は前提事実、前記1のとおりである。 平成25年合意書は、原告に対し、被告会社及び被告Aが、そこに記載された内容を約束することが記載されたものであり、その第1項には、原告の許可なく「EJ電子カルテに関する資源」を「保有」しないこと、「現在所有しているすべての関連資料」を原告立合いの下、全て消去すること、「関連する資料のコピー」を一切「保管」しないことなどが記載され、第2項には、原告の許可 なく「EJ電子カルテを販売」しないことが記載されている。このような平成 25年合意書の体裁や文言から、平成25年合意で「EJ電子カルテ」に関する資料を保有しないこととされた主体が被告らであることは明らかである。また、平成25年合意書で消去することとされたのは「現在所有しているすべての関連資料」であり、文言上、それは、被告らが現に保有している「EJ電子カルテ」に関係する資料等である。そして、平成25年合意書は、被告会社が B診療所に電子カルテシステムを導入したことが原告に発覚したことが直接の原因で作成され(前記1)、平成25年合意書の3項でも原告の許諾なく販売した「EJ電子カルテ」はB 合意書は、被告会社が B診療所に電子カルテシステムを導入したことが原告に発覚したことが直接の原因で作成され(前記1)、平成25年合意書の3項でも原告の許諾なく販売した「EJ電子カルテ」はB診療所以外にはないことが記載されていて、被告会社がB診療所に電子カルテシステムを導入したことを前提としつつも、そのB診療所に導入された電子カルテシステムについて、被告会社がそれを消 去するとか、その消去に向けて何らかの行動をすることについては何ら記載されていない。さらに、前同日、被告会社の端末等から、e-J 電子カルテのデータを消去する作業が行われたが、それ以上に、原告が、平成25年合意書に基づき、B診療所に導入された電子カルテシステムの消去を求めたことがあったことを認めるに足りない。 これらによれば、平成25年合意は、平成25年合意以前に既に販売されたB診療所に導入された電子カルテシステムにつき、被告会社がそれを消去する義務を定めていたものとは認められない。 そうすると、平成25年合意に基づき被告らがB診療所の電子カルテシステムを消去する義務があることを前提として、被告らがその消去をしないことが 平成25年合意の債務不履行に当たることを主張する原告の主張は、その前提となる義務が認められないため理由がない。 なお、原告が、仮に平成25年合意後もe-J 電子カルテのプログラムの全部又は一部を保有していたとしても、それによって、原告が上記で主張する損害が生じたことは認められない。 よって、原告の主位的請求2には理由がない。 4 争点3-1(平成27年和解の内容及び違反の有無)、争点3-2(損害及び因果関係)について 原告は、主位的請求3として、原告と被告らは、平成27年 は理由がない。 4 争点3-1(平成27年和解の内容及び違反の有無)、争点3-2(損害及び因果関係)について 原告は、主位的請求3として、原告と被告らは、平成27年和解によって、e-J 電子カルテのシステムソースプログラム及び同実行モジュールについて使用又は販売しないことを合意したところ、被告らがB診療所の電子カルテシス テムの保守管理をしたことをもって、被告らがこれらのプログラム及び実行モジュールを使用したことに当たると主張し、被告らの債務不履行がなければ、原告がB診療所との間でe-J 電子カルテを400万円で販売することができ、かつ、保守契約も受注することができたとして、同額の損害を主張する。 しかし、被告らが保守行為としてどのような行為を具体的にしたことをもっ てe-J 電子カルテのシステムソースプログラム及び同実行モジュールを使用したことになるのかや、その際にどのような上記プログラム等が使われたかは、原告の主張によっても明らかではない。そして、本件において、被告らがB診療所の電子カルテシステムの保守管理においてe-J 電子カルテのシステムソースプログラム及び実行モジュールを使用したことを認めるに足りる証拠はな く、被告らが、原告が主張する義務に違反したことを認めるに足りない。 また、電子カルテシステムの保守管理に際して被告らにおいて平成27年和解の義務違反に当たる行為があったとしても、保守行為における被告らによる当該行為がなければ原告がB診療所との間でe-J電子カルテの導入契約を締結できたと認めるには足りない。したがって、被告らによる保守行為と原告が 主張する損害との因果関係は認められない。 以上によれば、被告らについて平成27年和解の債務不履行があったとも認められな できたと認めるには足りない。したがって、被告らによる保守行為と原告が 主張する損害との因果関係は認められない。 以上によれば、被告らについて平成27年和解の債務不履行があったとも認められないし、また、原告が主張する損害との因果関係も認められないから、原告の主位的請求3には理由がない。 5 争点5―1(原告がe-J 電子カルテを作成したか)について 原告は、原告の従業員及び原告の業務委託先がe-J 電子カルテを作成してそ れについてのプログラム著作権を取得したと主張する。 原告は、電子カルテシステムを販売する事業を新たに開始することとした(前記1)。そして、新しい電子カルテシステムを開発することとしたところ、その電子カルテシステムの開発に当たっては、アトム電子カルテのソースコードを利用したことが認められる(同)。 もっとも、原告は、そのソースコードも利用しつつ、従業員等において相当の作業を行い、新しい電子カルテシステムを開発し、これを販売していたところ、少なくとも、平成24年頃、そのように原告が開発して作成しe-J 電子カルテという名称で販売していた電子カルテシステムは、アトム電子カルテとは別のコンピュータシステムであるといえる。そして、そのようなe-J 電子カル テのプログラムは、少なくともその相当多くの部分が原告の従業員等により作成され、機能が追加された上でプログラムが全体として稼働するようになっており、その創作的部分の著作者は原告であると認められ、原告は、そのプログラムの著作権を有する。アトム電子カルテとe-J 電子カルテとが別のコンピュータシステムであることは、アトム電子カルテを導入していたB診療所が新し いシステムを導入することとして、e-J 電子カルテの導入を検討し、ま トム電子カルテとe-J 電子カルテとが別のコンピュータシステムであることは、アトム電子カルテを導入していたB診療所が新し いシステムを導入することとして、e-J 電子カルテの導入を検討し、また、最終的にe-J 電子カルテとその構成がほぼ同一の電子カルテシステムを315万円で導入したことや被告会社の見積書において、アトム電子カルテからe-J 電子カルテとその構成がほぼ同一の電子カルテシステムに対するデータ移行が特別の項目として掲げられていること(前記1)からも明らかである。 被告らは、原告が主張するe-J 電子カルテのプログラム著作権の取得原因を否認し、e-J 電子カルテは被告Aが代表取締役であった日本メディカルバンクが開発したアトム電子カルテを改変して作成されたものであると主張する。 しかし、アトム電子カルテとe-J 電子カルテは、別のシステムであり、それらのプログラムは異なるものといえ、原告はe-J 電子カルテのプログラムの創 作的部分の著作者といえる。e-J 電子カルテのプログラムの一部にアトム電子 カルテのソースコードを利用していたとしても、上記に述べたところにより、原告がe-J 電子カルテのプログラムの著作権を有しないことにはならず、被告らの主張により、原告がe-J 電子カルテのプログラムについての著作権を有することが否定されるものではない。 6 争点5-2(本件導入が原告のe-J 電子カルテの複製に当たるか)について B診療所に導入された電子カルテシステムは、e-J 電子カルテに対してごく一部の設定項目の追加などを行ったものであり、そのプログラムはe-J 電子カルテのプログラムと基本的には同じものといえる。B診療所に導入された電子カルテシステムは、原告が著作権を有するe-J 電 く一部の設定項目の追加などを行ったものであり、そのプログラムはe-J 電子カルテのプログラムと基本的には同じものといえる。B診療所に導入された電子カルテシステムは、原告が著作権を有するe-J 電子カルテのプログラムの創作的部分を利用したもので、被告会社により加えられた部分はわずかといえるものであり、 被告会社は、e-J 電子カルテのプログラムの創作性のある部分を複製した上で、電子カルテシステムを作成し、これを販売したといえる。よって、本件導入は、e-J 電子カルテを複製したものであるといえる。 7 争点6(被告会社にe-J 電子カルテの使用権原があったか)について事案に鑑み、次に、被告会社が著作権者からの許諾に基づき本件導入をする権 原があったかについて検討する。 被告らは、e-J 電子カルテはアトム電子カルテを改変して作成されたものであり、エム・ビジョンは、本件使用許諾契約に基づき、アトム電子カルテを改変したものといえるe-J 電子カルテのソースコードの使用を第三者に許諾でき、被告会社はこの許諾を受けたので、被告会社がこれを用いることが違法と評価 される理由はない旨主張する。これは、エム・ビジョンが、本件使用許諾契約8条5項に基づき、「第三者」である被告会社に対して、「本件改良プログラム」であるe-J 電子カルテに係るプログラムの「使用」を再許諾したところ、本件導入は、「使用」に当たると主張する趣旨であると解される。 この点について、「本件改良プログラム」は、「本件ソフトウェア」(アトム電子 カルテ)を改良又は改作したもの(本件使用許諾契約8条2項)とされており、 前記1で認定したとおり、原告は、e-J 電子カルテの作成に当たり、アトム電子カルテのソースコードを利用したことが認められる。 改作したもの(本件使用許諾契約8条2項)とされており、 前記1で認定したとおり、原告は、e-J 電子カルテの作成に当たり、アトム電子カルテのソースコードを利用したことが認められる。しかし、アトム電子カルテとe-J 電子カルテは別のプログラムといえるプログラムを有するシステムであり、e-J 電子カルテが本件使用許諾契約におけるアトム電子カルテを「改良」したものに該当するといえるかは必ずしも明らかではない。 また、本件使用許諾契約8条5項に基づきエム・ビジョンによる再許諾が許されるのは「第三者」による「使用」であるところ、「使用」の文言は「第三者」が当該プログラムを直接利用するという趣旨に親和的であり、「第三者」がさらに別の者に当該プログラムを利用させることまでも包含していると解するのは困難である。本件のように、第三者(被告会社)が同プログラムを転得者に販売等 して当該転得者のパソコンの記憶媒体に複製等し、当該プログラムを転得者に利用させることが「第三者」による「使用」に当たるとは認め難い。 さらに、被告らが主張するエム・ビジョンの被告会社に対する再許諾を認めるには足りない。すなわち被告らが主張する上記再許諾を裏付ける客観的な証拠の提出は何らない。エム・ビジョンが被告会社に対して被告らが主張するような再 許諾をしたというのであれば、それは、被告会社がアトム電子カルテやそれを改変したプログラムを販売することができる根拠になるものであって会社である被告会社の活動にとり極めて重要なものであるにもかかわらず、それに関する書面等の客観的証拠がないのは不自然である。また、e-J 電子カルテについて、平成23年に原告と被告会社との間で締結された本件販売委託契約において、e-J 電子カルテの権利が原告にあることが 書面等の客観的証拠がないのは不自然である。また、e-J 電子カルテについて、平成23年に原告と被告会社との間で締結された本件販売委託契約において、e-J 電子カルテの権利が原告にあることが確認された上で、原告が被告会社にその販売を委託し、また、原告は被告会社を販売代理店とし、原告は、被告会社に対し、e-J 電子カルテの使用許諾権や指定顧客への再販売権を許諾するが、第三者への権利譲渡は認めず、被告会社は原告に対し、クライアント1台について5万円のライセンス料を支払うとしている。このように本件販売委託契約では、被告会社 が同契約に基づかずにe-J 電子カルテを自由に販売することはできないことが前 提とされ、また、被告会社がそれを販売した場合には原告に対しライセンス料を支払う義務が定められているといえるが、これは本件訴訟で被告らが主張するe-J 電子カルテの位置付けや再許諾の存在と矛盾するものである。さらに、被告会社がB診療所への電子カルテシステムを導入したことを原告が知った後の平成25年1月24日、被告会社及び被告Aは、原告の許可なくe-J 電子カルテを販 売することはしないなどの記載がある平成25年合意書に署名押印等し、また、被告Aも立ち会って、被告会社の端末からe-J 電子カルテのデータを消去する作業が行われた。これらの行動は、本件訴訟で被告らが主張するe-J 電子カルテの位置付けや再許諾の存在と矛盾するものであり、また、被告Aらが、上記の際に自由な意思でこれらの行為をしたものではないと認めるに足りる証拠もない。被 告Aの供述中には、被告ら主張の再許諾と本件販売委託契約の内容や平成25年合意書の関係について述べる部分があるが、本件販売委託契約の文言とは相いれないことを述べたり、B診療所に導入した電 被 告Aの供述中には、被告ら主張の再許諾と本件販売委託契約の内容や平成25年合意書の関係について述べる部分があるが、本件販売委託契約の文言とは相いれないことを述べたり、B診療所に導入した電子カルテシステムがアトム電子カルテとは異なるものであってe-J 電子カルテとその構成がほぼ同一であるにも関わらず(前記1、同)、それを否定するなど客観的な事実に反して自身の見解を 述べるなどしたりするものであり、上記の矛盾を説明するものではない。これらからすると、エム・ビジョンが、被告会社に対し、被告会社主張の再許諾をしたことは認められない。 これらによれば、e-J電子カルテとその構成がほぼ同一のカルテシステムについて、被告会社がエム・ビジョンによる本件使用許諾契約に基づく再許諾により B診療所への販売が許されていた旨を主張する被告らの主張には理由がない。 以上によれば、被告会社はe-J 電子カルテの複製を行う権限はなかったところ、被告会社はその複製を行って、B診療所に導入された電子カルテシステムを作成したのであり、その行為は原告に対する複製権侵害の不法行為となる。 8 争点5-3(損害及び因果関係)について 被告会社は、原告に対し、複製権侵害の不法行為を行ったところ、原告は、被 告会社の行為がなければ、原告がe-J 電子カルテを400万円で販売することができたと主張する。しかし、原告は、B診療所に対しe-J 電子カルテを400万円で販売するとする見積書を提出したものの、B診療所がその額で電子カルテシステムを導入する何らかの意向を示したことを認めるに足りない。原告は、当初、400万円よりも高額の見積書を提出し、それに対してB診療所はこれを承諾せ ず、原告は従前の見積書より値引きした400万円の見積書 入する何らかの意向を示したことを認めるに足りない。原告は、当初、400万円よりも高額の見積書を提出し、それに対してB診療所はこれを承諾せ ず、原告は従前の見積書より値引きした400万円の見積書を提出したが、それについてもB診療所がその額で電子カルテシステムを導入する意向を示したことがあったとは認められないという経緯からすれば、被告会社の行為がなかったとしても、B診療所への電子カルテシステムの販売のために原告においてさらなる値引きが必要となった可能性があり、被告会社の行為により原告に400万円 の損害が生じたとは認めるに足りない。もっとも、B診療所は、当時、新しい電子カルテシステムの導入を探っていたこと、B診療所が原告や被告会社以外の電子カルテシステムを導入しようしていたことは認めるに足りないこと、原告による見積書の提出後の相当に近接した時期に、e-J 電子カルテとほとんどの構成が同一でありほぼ機能を同じくする電子カルテシステムを被告会社が315万円 で販売したこと、平成28年9月頃まで原告はB診療所からの値引要請を受けるとこれに柔軟に応じており、同月以降も値引要請を拒んでいたとの事情も認めるに足りないことなどを考慮すると、被告会社の行為がなければ、B診療所が同年10月以降に原告に値引きを求めて原告がこれに応じていた蓋然性があり、原告は、少なくとも315万円でe-J 電子カルテを販売できたと認め、同額について、 被告会社の違法な行為と相当因果関係がある損害と認める。また、被告会社の行為は原告に対する複製権侵害の不法行為であるところ、これを現実に行ったのは、被告会社の代表取締役であった被告Aであると認められ、被告会社と被告Aは共同不法行為を行った者として連帯して責任を負う。 なお、原告は、予備的請求1として、B診療 るところ、これを現実に行ったのは、被告会社の代表取締役であった被告Aであると認められ、被告会社と被告Aは共同不法行為を行った者として連帯して責任を負う。 なお、原告は、予備的請求1として、B診療所にe-J 電子カルテを販売したこ とが不正競争行為であると主張して、400万円の損害賠償請求をするところ、 仮に原告が主張する行為が不正競争であると認められたとしても、それによる損害額が上記で認定した損害額を超えるとは認められない。このことにより、予備的請求1についての予備的主張(前記争点に対する当事者の主張原告の主張ウ、エ)を判断する必要はなく、その提出は、訴訟の完結を遅延させることとはならない。 第4 結論よって、原告の主位的請求はいずれも認められず(前記2、3、4)、予備的請求2は、原告が被告らに対し、連帯して315万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年2月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を請求する限度で理由があり、予備的請求1における 認容額が同額を超えることはないから、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官仲田憲史

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