主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 本件は、山口県(以下「県」という。)がC株式会社(山口店。以下「C」という。)との間で普通乗用車(トヨタセンチュリー)1台を購入する旨の売 買契約を締結し、これに基づき売買代金の支出をしたところ、県の住民である被控訴人が、上記売買契約の締結・履行、同契約に係る公金支出が違法であるなどと主張して、県の執行機関である控訴人を相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、上記売買契約の締結等をした当時の県知事であるA(以下「A知事」という。)に対して不法行為に基づき損害金2090万円及びこ れに対する不法行為日又はその後の日(上記支出の日)である令和2年8月20日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の損害賠償請求をすることを求める住民訴訟である。 原審は、被控訴人の請求を認容したところ、控訴人がこれを不服として控訴した。 2 前提事実(証拠掲記等のない事実は当事者間に争いがない。なお、摘示した書証に枝番があるものは、特記しない限り、全ての枝番を含む。以下同じ。)⑴ 被控訴人は山口県の住民であり、控訴人は執行機関としての山口県知事である。 ⑵ A知事は、令和2年4月1日、Cとの間で、県がCから普通乗用車(トヨ タセンチュリー型式:6AA-UW60-AEXGH)1台を代金209 0万円(内消費税及び地方消費税の額190万円。以下「本件売買代金」という。)で購入するとの内容の物品売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。上記普通乗用車は、本件売買 0万円(内消費税及び地方消費税の額190万円。以下「本件売買代金」という。)で購入するとの内容の物品売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。上記普通乗用車は、本件売買契約に基づき、物品検査を経た上、同年8月2日、県に対して納入された(以下、納入された上記普通乗用車を「本件センチュリー」という。)。 ⑶ 山口県事務決裁規程(以下「決裁規程」という。)は、県知事の権限に属する事務に関し、委任又は専決権の授与等による決裁権者について定めている(乙9)ところ、本件売買契約の締結については、当時、会計管理局長が決裁権者とされていた。 ⑷ 本件売買代金の支出負担行為の決裁権者は県の会計管理局物品管理課(以 下「物品管理課」という。)の副課長であり、支出命令の決裁権者は県総務部給与厚生課主任、支出の決裁権者は同課旅費報酬班長であった。本件売買代金は、これらの者の各決裁を経て、令和2年8月20日、Cに対して支払われた(以下「本件支出」という。甲1、3)。 ⑸ 物品管理課は、本件売買契約締結当時、公用車の更新時期について、「更 新対象車両は、原則として、10月1日現在で11年以上経過し、かつ12万km以上の走行距離があり、新年度に車検更新となる車両であること。」との基準(以下「更新基準」という。)を定めていた(乙1)。 県は、令和元年9月当時、トヨタセンチュリー(以下、単に「センチュリー」という。)を県議会事務局が県議会議長用の公用車及び副議長用の公用 車として管理するもの各1台と物品管理課が貴賓車として管理するもの1台の合計3台所有していた。本件売買契約は、更新基準を満たしているセンチュリー(副議長用の公用車として管理されていた平成19年登録のもの)について、新たにセンチュリーを購入すること て管理するもの1台の合計3台所有していた。本件売買契約は、更新基準を満たしているセンチュリー(副議長用の公用車として管理されていた平成19年登録のもの)について、新たにセンチュリーを購入することによりこれを更新するものであった。他方、購入から約17年が経過していたセンチュリー(貴賓車として 管理されていた平成14年登録のもの)は、更新により処分されることとな った上記センチュリーとともにCに下取りに出されて処分された。県は、以降、議長用公用車として使用されていたセンチュリー(平成25年登録のもの)と新たに購入した本件センチュリーの合計2台をいずれも物品管理課が保管する来賓対応可能な公用車(貴賓車)として管理している。これら車両は、来賓対応の使用がないときには県議会事務局に貸し出され、議長及び副 議長の送迎に使用されている。(甲1、46、47、乙2、3、6~8、11、12の6頁)⑹ 被控訴人は、令和2年11月26日、県の監査委員に対し、本件センチュリーの購入が不当な支出であるとして、支出された本件売買代金2090万円を県に返還するようA知事に対して求める旨の住民監査請求をしたが、監 査委員は、令和3年1月22日、本件センチュリーの購入について不当とは認められず、財務会計上の手続にも違法・不当な点は認められないとして上記住民監査請求を棄却した(甲1)。 被控訴人は、同年2月18日、本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張 本件の争点は、⑴ 本件売買契約の締結・履行及び本件支出が財務会計上の違法行為であるといえるか、⑵ A知事の故意・過失等、⑶ 損害であり、これらに関する当事者の主張は、要旨次のとおりである。 ⑴ 争点⑴(本件売買契約の締結・履行及び本件支出が財務 支出が財務会計上の違法行為であるといえるか、⑵ A知事の故意・過失等、⑶ 損害であり、これらに関する当事者の主張は、要旨次のとおりである。 ⑴ 争点⑴(本件売買契約の締結・履行及び本件支出が財務会計上の違法行為であるといえるか。)について (被控訴人の主張)ア本件売買契約の締結は、次のとおり、地方自治法1条の2第1項及び2条14項の趣旨に照らし、知事の裁量権を逸脱又は濫用した財務会計行為として違法というべきである。 すなわち、当時、県の財政はひっ迫しており、県は、職員削減や給与・ 手当の引下げ、子ども医療費助成の削減等の様々な歳出削減をし、更には、 新型コロナウイルス感染症の感染拡大が起こりつつあって、厚生労働省から医療提供体制の整備をするよう通知されていた。従前もセンチュリーの貴賓車としての使用実績に乏しかった中、本件売買契約により代金約2000万円の最高級の国産車である本件センチュリーを貴賓車として購入しても、使用頻度が大きく向上するとは見込めなかった。 県は、本件売買契約締結当時、既にセンチュリーを3台有していた。更新基準を満たさないセンチュリー1台をただ同然で処分してまで、更に同車種の新車購入(更新)をする必要はなかった。この点、控訴人は、本件センチュリーを皇室等の貴賓を乗せる貴賓車として使用するなどと主張しているが、宮内庁が各都道府県に車種の希望を伝えたことはない。平成 21年における県議会の定例会で当時の会計管理局長は、時代の変化に対応し、必要な見直しを検討する旨答弁していた。これらの点からすれば、県として貴賓への対応を要するにしても、より安価な車種を選定するか、ハイヤーやレンタカーで対応することにより経費を抑えることも考えられてしかるべきであった。この点、県内にレンタカ らの点からすれば、県として貴賓への対応を要するにしても、より安価な車種を選定するか、ハイヤーやレンタカーで対応することにより経費を抑えることも考えられてしかるべきであった。この点、県内にレンタカー業者が存在しないの であれば、隣接県の業者も調べるべきであった。 そうであるにもかかわらず、物品管理課は、購入する車種をセンチュリーとする前提でしか検討をせず、新車購入をすべきか否かの検討も総じて不十分であった。県議会や知事による実質的なチェックもされていなかった。他の都道府県でセンチュリーを貴賓車として常備するところはわずか しかない。本件売買契約の売買代金額も、フルモデルチェンジにより大幅に値上がりしており、同じセンチュリーを有する徳島県に次いで全国で2番目に高額である。また、センチュリーを複数台保有しているのは、他県では愛知県だけである。控訴人が説明する貴賓車としての品格、安全性についても、最高級車のセンチュリーでなければこれに欠けるとはいえない。 控訴人が主張する物品管理課での「一元管理」がどれだけ車両の運用の 効率化や経費削減につながるかも明らかでない。むしろ、本件センチュリーは、実質的には、貴賓車としてではなく、日常的に県議会の議長や副議長が使用することが想定されており、控訴人主張の一元管理は、これを名目に、更新基準を満たす副議長用公用車に代わる新車(センチュリー)の購入予算を県議会事務局ではなく物品管理課で計上するための方便であ ったと考えられる。 イ以上のとおり、本件売買契約の締結に裁量権の逸脱・濫用の違法が認められる。そうである以上、本件売買契約の履行・公金の支出(本件支出)も違法となるというべきである。 (控訴人の主張) ア地方公共団体の長がその代表者として物品を購 逸脱・濫用の違法が認められる。そうである以上、本件売買契約の履行・公金の支出(本件支出)も違法となるというべきである。 (控訴人の主張) ア地方公共団体の長がその代表者として物品を購入する契約を締結することは、当該物品を購入する目的やその必要性、契約の締結に至る経緯、契約の内容に影響を及ぼす社会的、経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており、地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ、当 該契約の締結が地方自治法2条14項等に反し違法となるものではない(最高裁判所平成25年3月28日第一小法廷判決・裁判集民事243号241頁(以下「平成25年最判」という。)参照)。そして、同条項が定める最少経費原則も、支出額の多寡だけにとらわれるのではなく、地方公共団体の総合的な政策目的に寄与すると認められるかどうかという観点 から、その違反の有無が検討されるべきである。 イ以下の点からすれば、本件売買契約の締結は最少経費原則に反せず、同契約締結に裁量権の逸脱又は濫用にわたる違法な点はない。 県は、平成21年にマツダMPVを知事用公用車として購入し、それまで知事用公用車として使用していたセンチュリーを貴賓車として物品 管理課の下で管理してきた。県は、上記センチュリーのほかに、県議会 事務局が議長用公用車及び副議長用公用車として管理しているセンチュリーを計2台保有していたところ、皇室対応の際などには、貴賓車としてのセンチュリーのみならず議長用公用車及び副議長用公用車としてのセンチュリー2台も予備車両として使用していた。 そのような中、副議長用公用車として使用していたセンチュリーが令 和2年7月に更新時期を迎えることと らず議長用公用車及び副議長用公用車としてのセンチュリー2台も予備車両として使用していた。 そのような中、副議長用公用車として使用していたセンチュリーが令 和2年7月に更新時期を迎えることとなった。そのため、令和元年9月以降、行財政改革の観点から来賓対応可能な公用車の管理方法を見直すべく、会計管理局(物品管理課)で検討の上、来賓対応可能な3台の公用車(センチュリー)を物品管理課で一元管理することで運用の効率化を図り、その台数を3台から2台に減らし、将来的な維持管理費及び車 両更新の際の購入費用を削減することとした。 県は、この方針の下、更新基準を満たす副議長用公用車として使用されていたセンチュリーについて、センチュリーの新車を購入して更新した。他方、貴賓車として物品管理課で管理していたセンチュリーは、副議長用公用車として使用されていたセンチュリーとともに下取りに出し て処分した。貴賓車として物品管理課で管理していたセンチュリーの処分は、同車が購入から約18年を経過し、走行距離も約7万8000キロメートル超に及んでいるという社会通念上の買換時期を迎えた状態にあって、仮に使用を継続したとしても近い時期に買換えが必要となることから、将来的な維持管理費や車両更新に要する経費を削減する観点よ り決定されたものである。なお、更新基準は更新(買換え)の基準であって、車両を処分する場合の基準ではなく、同基準を満たさない車両を処分することに何ら問題はない。 物品管理課は、同年10月、県議会事務局に上記削減案を伝え、会計管理局において、同年11月、更新車両をセンチュリーとすることを決 定して予算要求し、入札公告等を経て本件売買契約が締結された。 本件センチュリーの購入目的は、皇室又は外国の要人が来県した て、同年11月、更新車両をセンチュリーとすることを決 定して予算要求し、入札公告等を経て本件売買契約が締結された。 本件センチュリーの購入目的は、皇室又は外国の要人が来県した際の移動用車両として、品格、実績及び安全性を備えた車両を配備し、皇室又は外国の要人への敬意を示し、その安全を確保すること、外国の要人をもてなしてインバウンド招致、県内商品の海外輸出につなげること及び外国人労働者を呼び込むことであり、県において外国人観光客や外国 人労働者が増加傾向にあったことにも照らせば、その目的は正当である。 県は、上記更新に際し、センチュリーの新車を購入することを決定したが、次の点からすると、その判断も不合理ではない。 a 車種の選定県は、長年にわたりセンチュリーを貴賓車として使用してきたが、 安全に運用してきた実績と信頼、同車種に国産の高級車としての品格があること、皇室が御料車、通常公務用車両及び随行員用車両としてセンチュリーを使用していること、12都県においても公用車としてセンチュリーを使用していること等から、他の車種について検討せずにセンチュリーを選択した。なお、複数の皇室をお迎えする場合並び に事故及び故障に備えて予備車両は必要である。 b 調達方法センチュリーの各調達方法を検討した結果は原判決別紙のとおりでり、更新基準に従い11年間リースした場合、トータルコストが新車購入よりも高額になること、レンタカー及びカーシェアリングは、県 内でセンチュリーの取扱いがなく、必要な時期に借りることができない可能性やセキュリティ面で問題があること、中古車購入は安全面やセキュリティ面での問題があること、他方、新車購入は、トータルコストがリースによる場合よりも安価であって、処分による売却益があ できない可能性やセキュリティ面で問題があること、中古車購入は安全面やセキュリティ面での問題があること、他方、新車購入は、トータルコストがリースによる場合よりも安価であって、処分による売却益があること等を指摘できた。 そもそも、貴賓車の車種選択等は、県の皇室への敬意の表し方、外国 の要人をどのようにもてなし、インバウンド招致、県内の商品の売込みにつなげるかなど政策的な側面が極めて強く、その目的達成のためにどの程度の品格、安全性、安定的運用のための費用をかけるかについて、定量的判断になじまないから、かかる点については、県知事の広範な裁量に委ねられるというべきである。 また、県は、今まで行財政改革の観点から公用車の削減を図ってきていた。本件センチュリーの購入についても、物品管理課の一元管理による効率的運用の目的の下でされ、県総体としての台数削減にもつながったものである。本件センチュリーの購入は更新基準にも適っている。本件センチュリーの購入の点だけを捉えて裁量権の逸脱・濫用の有無を判 断すべきではない。 なお、本件センチュリーの購入については、その予算は県議会で可決され、決算についても県議会決算特別委員会において賛成多数で認定されている。 本件売買契約の入札公告日は令和2年3月16日であったところ、同 日段階では新型コロナウイルス感染症の世界的・長期的流行を想定することは困難であった。同感染症の流行がなければ、本件センチュリーは、東京オリンピック・パラリンピックの開催等を控え、多くの外国の要人の利用に供されていたと考えられる。同感染症の流行下にあっても、同年11月には駐日アゼルバイジャン共和国特命全権大使が来県する際に、 本件センチュリーが貴賓車として使用される予定になっていた(同大 用に供されていたと考えられる。同感染症の流行下にあっても、同年11月には駐日アゼルバイジャン共和国特命全権大使が来県する際に、 本件センチュリーが貴賓車として使用される予定になっていた(同大使側の事情で実際に使用はされなかった。)。令和3年8月には駐日ブラジル連邦共和国大使を同車両で送迎し、同年11月にはクロアチア共和国大使の送迎もした。このように、コロナ禍にあっても外国の要人を送迎した実績がある。県では、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が 収まった後、本件センチュリーの貴賓車としての稼働率の向上を見込ん でいる。 本件センチュリーは、来賓対応での使用がないときに、議長及び副議長が公用車として使用しているにすぎず、日常的に議長や副議長が使用することを想定して購入したものではない。 ウ上記イのとおり本件売買契約の締結に違法な点はないが、仮に同契約の 締結に違法な点がある場合であっても、Cとの間で締結された本件売買契約は私法上無効と認められず、本件は、行政が取消権や解除権を有し、又は締結された契約が著しく合理性を欠きそのためにその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し、かつ、客観的に見て行政が契約解除できる特殊事情があるときにも当たらないから、本件支出の決裁 権者である給与厚生課旅費報酬班長が、本件支出を行ってはならないという財務会計上の義務を負っていたとはいえない。したがって、いずれにしても本件支出に違法な点があるとはいえない。 ⑵ 争点⑵(A知事の故意・過失等)について(被控訴人の主張) A知事は、前記⑴(被控訴人の主張)のとおり、違法に本件売買契約を締結したものであり、同所摘示の点のほか本件売買契約の締結が県議会との関係に関わる県政運営上特に重要な事項に 控訴人の主張) A知事は、前記⑴(被控訴人の主張)のとおり、違法に本件売買契約を締結したものであり、同所摘示の点のほか本件売買契約の締結が県議会との関係に関わる県政運営上特に重要な事項に該当すると認められることにも照らせば、その契約締結の違法性を知り、又は知り得べきであった。したがって、A知事には、違法な本件売買契約の締結につき故意・過失がある。 また、A知事は、同所摘示の点に照らせば、違法な公金支出を阻止すべき指導監督義務を怠って本件支出を行わせたといえるから、A知事には違法な公金支出(契約の履行)についての故意・過失もある。 (控訴人の主張)否認ないし争う。A知事が本件売買契約締結前に本件センチュリーの購入 に関して報告を受けていた事実自体なく、指導監督義務の懈怠や故意・過失 もない。 ⑶ 争点⑶(損害)について(被控訴人の主張)A知事の違法行為により、県は、本件売買代金相当額である2090万円の損害を被ったから、同額をA知事に損害賠償請求するべきである。 (控訴人の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実に加え、証拠(各項掲記のほか、乙12、証人B(以下「B」又は 「B課長」という。))及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実を認めることができる。 ⑴ 県は、本件売買契約締結前の令和元年7月当時、センチュリー1台(平成14年登録のもの)を物品管理課が管理する貴賓車として所有していた。同車両は、知事用公用車として使用されていたが、平成21年に県がマツダM PVを知事用公用車として購入したことに伴い、貴賓車と位置付けられたものであった。県は、貴賓車として位置付けられた上記センチュリーのほかに、県議会事務局が議長用公用車及び副議 に県がマツダM PVを知事用公用車として購入したことに伴い、貴賓車と位置付けられたものであった。県は、貴賓車として位置付けられた上記センチュリーのほかに、県議会事務局が議長用公用車及び副議長用公用車として管理するセンチュリー各1台(平成19年登録と平成25年登録のもの各1台)を所有していた。 貴賓車として位置付けられた上記センチュリーは、平成23年に開催された 山口国体・障害者スポーツ大会、平成27年に開催された世界スカウトジャンボリー及び平成30年に開催された山口ゆめ花博で皇室が利用する車両として使用された。また、ベトナム社会主義共和国ビンズン省の書記長が令和元年に来県した際、送迎車両として使用された。皇室が来県した際には、議長用公用車及び副議長用公用車として使用されていたセンチュリーも予備車 両として使用された。もっとも、貴賓車としての稼働日数は僅少であった。 (甲1、56、乙16)⑵ 副議長用公用車として使用されていたセンチュリー(平成19年登録のもの)は、令和元年7月時点で購入から約12年が経過し、走行距離も33万キロメートルを超え、翌年7月に車検の時期を控えていた。物品管理課には、前提事実⑸のとおり、車両の更新基準として更新基準を内規として有してい たところ、上記センチュリーは、これを満たすものであった。(乙1)県は、当時、行財政改革の一つとして、いわゆる黒塗車の段階的削減に取り組んでおり、物品管理課の課長職にあったBは、県総務部からの見直しの要請を受けて、センチュリーの管理の見直しの検討作業に入り、貴賓車として対応可能な公用車(センチュリー)を物品管理課で一元管理することで運 用の効率化を図り、その台数も3台から2台に削減する見直し案を策定した。 その案は、具体的には、更新基 業に入り、貴賓車として対応可能な公用車(センチュリー)を物品管理課で一元管理することで運 用の効率化を図り、その台数も3台から2台に削減する見直し案を策定した。 その案は、具体的には、更新基準を満たすセンチュリー(副議長用公用車として使用されていたもの)を新車のセンチュリーを購入することで更新し、貴賓車として物品管理課で管理していたセンチュリーを、同車が購入から約17年経過し、走行距離も約7万8000キロメートル超に及んでいたこと を踏まえ、処分するというものであった。B課長は、見直し案の策定に当たり、センチュリーがこれまで皇室等の貴賓対応時に貴賓車として長年にわたり安全に運用されてきた実績を有し、信頼をおけること、貴賓車としてふさわしい品格があることから、更新して購入する車種をセンチュリーとすることとし、他の車種の採否について特段検討しなかった。また、センチュリー の調達方法については、リース会社への調査結果等を踏まえ、原判決別紙のとおり、更新基準に従い11年間リースした場合、トータルコストが新車購入よりも高額になると考えられること、レンタカー及びカーシェアリングでは県内でその取扱いがなく、必要な時期に借りることができない可能性やセキュリティ面での問題があること、中古車購入は安全面やセキュリティ面の 問題があること、他方、新車購入は、トータルコストがリースによる場合よ りも安価であって、処分による売却益(下取り価格20万円)があることなどの諸点に鑑み、新車購入を選択することとした。そして、これら車両について、来賓対応の利用がないときには、県議会事務局に貸し出し、議長又は副議長の送迎に使用できるようにした。 B課長は、事前に会計管理局長に対して上記見直し案を説明した上、同年 10月、県議会 いて、来賓対応の利用がないときには、県議会事務局に貸し出し、議長又は副議長の送迎に使用できるようにした。 B課長は、事前に会計管理局長に対して上記見直し案を説明した上、同年 10月、県議会事務局に上記見直し案を伝えたところ、県議会事務局の反応は、県全体で行財政改革を進めていくことは大変重要であり、取扱いに若干不便は生じるもののやむを得ないというもので、県議会事務局から特段の反対意見はなかった。そうしたことから、会計管理局は、同年11月、上記見直し案に基づき更新車両をセンチュリーとすることを決定して予算要求し、 入札公告を令和2年3月16日、入札を同年4月1日に各実施し、専決による決裁権限のある会計管理局長の決裁を経て、同日、本件売買契約が締結された。本件売買契約の締結に伴って、公用廃止となったセンチュリー2台は、合計30万7440円でCに下取りされた。 (甲1、2、56、乙2~5。なお、被控訴人は、上記見直し案に基づく意 思決定過程で作成された文書が乏しいことを指摘して、上記認定に沿うB課長の証言が不自然であるなどと主張し、同認定を争う。しかしながら、上記認定と同旨を述べるB課長の証言は、相応に他の書証(乙4、5、12の6頁)によって根拠付けられている。また、B課長は、他部局との交渉に直接当たっていたため殊更文書を仔細に作成しなかったと証言しており、その証 言に格別不自然な点も見出されない。これらの点にも照らせば、上記認定に沿うB課長の証言は信用することができる。これに反する被控訴人の主張は採用できない。)⑶ 本件センチュリーは、物品検査を経た上、令和2年8月2日、県に納入された。本件売買代金の支出負担行為、支出命令及び支出の各決裁権者は前提 事実⑷のとおりであり、本件売買代金(下取金額を控除した 本件センチュリーは、物品検査を経た上、令和2年8月2日、県に納入された。本件売買代金の支出負担行為、支出命令及び支出の各決裁権者は前提 事実⑷のとおりであり、本件売買代金(下取金額を控除した2090万円(税 込)。甲1)は、これらの各決裁権者の専決による各決裁を経て、同月20日、Cに支払われた(本件支出)。 A知事は、本件売買代金の支出予算が、予算編成上、県内部の管理経費(備品購入費)に位置付けられるものであったことから、全体の金額を抑えていくという予算編成方針の中で、その限度で本件売買契約との関わり合いを有 した。A知事が、本件売買契約締結前に本件売買契約について担当課から個別の報告を受けたことはなく、本件売買代金額も、予算説明書の中で、本件売買代金額を含めた計上目の総額の金額に含まれる形で記載されるにとどまっていた。A知事が、本件売買契約について担当課から報告を受けたのは、本件売買契約締結後、納品前の時点である同年7月になってからであった(甲 1、56、乙19)。 ⑷ 会計管理局は、入札公告を行った令和2年3月16日時点においては、新型コロナウイルス感染症の世界的かつ長期のまん延を予想しておらず、本件センチュリーについて、皇室の来県や、国際交流事業や観光振興事業、東京オリンピック・パラリンピック等に関連した外国要人の来県の際の貴賓車と しての使用を見込んでいた(甲1)。 もっとも、同感染症のまん延の中にあっても、本件センチュリーは、同年11月には駐日アゼルバイジャン共和国特命全権大使が来県する際に貴賓車として使用される予定になっていた。ただし、この予定については同大使側の事情で取消しとなり、同車両が実際に使用されることはなかった。その他、 本件センチュリーは、令和3年8月に駐日ブラジ 賓車として使用される予定になっていた。ただし、この予定については同大使側の事情で取消しとなり、同車両が実際に使用されることはなかった。その他、 本件センチュリーは、令和3年8月に駐日ブラジル連邦共和国大使が来県した際や、同年11月にクロアチア共和国大使が来県した際に、それぞれ、その送迎のため使用された。本件センチュリーは、その余の来賓対応の利用のない期間においては、他のセンチュリーとともに県議会事務局に貸し出され、議長又は副議長の送迎のために使用されている。(甲1、46、47、56、 乙6~8、11) 2 争点⑴(本件売買契約の締結等が財務会計上の違法行為であるといえるか。)について⑴ 地方公共団体の長がその代表者として物品を購入する契約を締結することは、当該物品を購入する目的やその必要性、契約の締結に至る経緯、契約の内容に影響を及ぼす社会的、経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した 合理的な裁量に委ねられており、地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ、当該契約の締結が地方自治法2条14項等に反し違法となるものではないと解するのが相当である(平成25年最判参照)。 ⑵ そこで、以上を踏まえ、本件売買契約の締結について違法があるといえる か否かについて検討する。 ア前記1⑵のとおり、本件センチュリーは、それまで副議長用公用車として使用されていた県所有のセンチュリー(平成19年登録のもの)が更新時期を迎えることとなったことに伴い、その更新のために購入されることとなったものである。そして、県では、過去にも皇室や外国の要人が来県 したときにおける貴賓用の車両としてセンチュリーが長年使用されてきたものであり、同車両を貴賓用の移動用車 めに購入されることとなったものである。そして、県では、過去にも皇室や外国の要人が来県 したときにおける貴賓用の車両としてセンチュリーが長年使用されてきたものであり、同車両を貴賓用の移動用車両として使用することは、その車両の高級さも相まって、品格、実績及び安全性を備えた車両をその送迎に供するものとして、皇室や外国の要人に対し、県として最大限の敬意を示し、その安心安全、確実な送迎を期するものであったということができる。 しかも、本件売買契約締結当時は、東京オリンピック・パラリンピックの開催等も控え、皇室のみならず外国の要人の来県も見込まれる時期であった。本件センチュリーの購入は、こうした目的の下でされたものと認めることができ、事実、その後新型コロナウイルス感染症の流行に伴う海外との交流途絶の時期こそ経たものの、その中でも本件センチュリーは貴賓対 応に使用されてきたところである。こうした点に照らすと、本件売買契約 を締結した目的は相当なものと認められる。 この点、被控訴人は、貴賓への対応を要するにしても、より安価な車種を選定し、あるいは、ハイヤーやレンタカーで対応することにより経費を抑えることも考えられてしかるべきであったなどと主張する。 確かに、前記1⑵認定のとおり、上記更新に際して新たに購入すべき車 種としてセンチュリーが選定された際、他の車種を選択するか否かについて特段の検討はされなかったものである。しかし、県においてセンチュリーを皇室や外国要人の来賓用車両として長年使用してきたという実績があったこと等に鑑みれば、貴賓に県としての最大限の敬意を示し、その安心安全、確実な送迎を期する観点より同車両を来賓用車両として選定する こととしたとしても、その判断にはなお相応の合理性を認めることができ 等に鑑みれば、貴賓に県としての最大限の敬意を示し、その安心安全、確実な送迎を期する観点より同車両を来賓用車両として選定する こととしたとしても、その判断にはなお相応の合理性を認めることができ、この点は、宮内庁が皇室の来県に際して取り立ててセンチュリーを移動用車両として配備することを求めているとまでは認められないこと(甲8)や、他の地方公共団体においてセンチュリー以外の高級国産車を知事、議長用、来賓対応の移動用車両として用いている例があること(甲11)に よっても左右されるものではない。また、これら貴賓の移動用車両として、上記の観点から、安全面やセキュリティ面での懸念の残るハイヤーやレンタカーで対応することとせず、県が所有し管理する車両をもって充てることとしたとしても、その判断にも相応の合理性を認めることはでき、かかる認定判断は、他の地方公共団体においてリースやハイヤー等で対応して いる例があること(甲11)によっても左右されるものではない。 被控訴人は、A知事自身、記者会見の場において車種の検討が必要であった旨の認識を示しているなどとして証拠(甲56)を提出して争う。しかし、同証拠によれば、A知事は、記者会見において、県民からセンチュリーを購入したことにつき批判の声があったことをも踏まえて車種の検 討が必要であったとの認識を示したものの、他方で、センチュリーを購入 した担当課の判断自体が間違いであったともしていないのであって、かかる証拠から、前記認定判断が左右されることはないというべきである。 なお、本件センチュリーは、前記1⑵認定のとおり、それまで副議長用公用車として使用されていた県所有のセンチュリーが更新基準を満たしたことに伴い、その更新のために購入されることとなったものであるとこ 本件センチュリーは、前記1⑵認定のとおり、それまで副議長用公用車として使用されていた県所有のセンチュリーが更新基準を満たしたことに伴い、その更新のために購入されることとなったものであるとこ ろ、更新基準の内容も、それ自体、特段不合理なものであったとは認められない。 イもっとも、以上のように解するとしても、県は、本件売買契約締結当時、上記更新に係るセンチュリー(平成19年登録のもの)のほか、議長用公用車として使用されていたセンチュリー(平成25年登録のもの)や貴賓 車と位置付けられていたセンチュリー(平成14年登録のもの)計2台を既に保有していたものである。そこで、この点も踏まえて更に検討する。 被控訴人は、県が、上記のとおりセンチュリーを3台保有していたことからすれば、更新基準を満たさないセンチュリー1台を処分してまで、更に同車種の新車購入(更新)をする必要はなかったなどと主張する。 確かに、前記認定に係るセンチュリーの保有状況に照らすと、更新基準を満たしているセンチュリー(平成19年登録のもの)を処分し、更新基準を満たすに至っていないセンチュリー(貴賓車と位置付けられていた平成14年登録のもの)を処分せず、同車両と議長用公用車として使用されていたセンチュリー(平成25年登録のもの)とを併せ、来賓 の移動用車両及びその予備車両として使用することとすることも一つの裁量的判断として考えられないではない。 しかしながら、前記認定に係る本件売買契約に至る経緯等も踏まえて考慮すると、なお次の点も指摘することができる。 すなわち、前記1⑵のとおり、県は、行財政改革の一環として、いわ ゆる黒塗車の削減に取り組んでおり、副議長用の公用車としてのセンチ ュリー(平成19年登録のもの)が更新基準を すなわち、前記1⑵のとおり、県は、行財政改革の一環として、いわ ゆる黒塗車の削減に取り組んでおり、副議長用の公用車としてのセンチ ュリー(平成19年登録のもの)が更新基準を満たして更新時期を迎えたことに伴い、貴賓車として位置付けられていたセンチュリー(平成14年登録のもの)を含め、3台にわたるセンチュリーについても漸進的削減を目指すこととし、県議会事務局が管理していたセンチュリー計2台を、同事務局の了解を得て物品管理課に移管し、これらについて同課 による一元管理を企図するとともに、その可能な限りの削減を図り、他方で、来賓対応のない期間においては、遊休車両としないとの見地から県議会事務局に貸し出して議長や副議長の送迎車としてその使用を許すこととしたものであり、本件売買契約の締結による本件センチュリーへの更新は、こうした見直し案の一環としてされたものと認められる。こ うした見直し案の内容は、センチュリーの貴賓対応による稼働率が現実問題として高くなく、その効率的運用を図る必要がある一方、その当時、県には県議会事務局管理下のセンチュリー各1台が既に存在し、これが議長及び副議長の公用車として現に各使用されていたという現状があったことをも踏まえ、こうした現状に大きな変更を加えず、県議会事務局 側の了承の得やすい内容でありながら貴賓車としての稼働も期し、県全体として取り組んでいた黒塗車の削減にも資するという、現状及び県全体の目的に適合的な案であったということができ、相応の合理性を有するものであったと評価することができる。 そして、確かに、削減の在り方として前記で摘示したような別異の 処分及び管理の在り方も考えられないではないものの、副議長用の公用車としてのセンチュリー(平成19年登録のもの)が更 できる。 そして、確かに、削減の在り方として前記で摘示したような別異の 処分及び管理の在り方も考えられないではないものの、副議長用の公用車としてのセンチュリー(平成19年登録のもの)が更新基準による更新時期を迎えていたのは事実であり、貴賓車として位置付けられていたセンチュリー(平成14年登録のもの)についても、走行距離が約7万8000㎞超に及んでおり、まして経過年数は購入時から更新基準を遥 かに超える約17年に至るものであったというのであり、貴賓車として の使用をも念頭においた車両としては不適当として、公用を廃止して処分することとしたとしても、そのこと自体一概に不合理とまではいえず、この点は、他の地方公共団体において平成9年式のセンチュリーを使用していたり、走行距離14万キロメートル弱の車両を使用していたりするところもあること(甲11)によっても、左右されるものではない。 なお、更新基準は、飽くまでも更新の場合における原則的基準を示すものであり、貴賓車として位置付けられていた上記センチュリーの走行距離及び経過年数にも照らせば、同車の公用を廃止して処分したとしても、これが更新基準に反し、許されないものであったとも評価し得ない。 これに反する被控訴人の主張は採用できない。 これらの点に鑑みると、前記で摘示したような別異の処分及び管理の在り方を採用せず、B課長作成に係る見直し案に基づく処分及び管理方法を採用することとしたとしても、その判断が一概に不合理とまではいえない。 なお、被控訴人は、予備車両の必要性自体も争うが、上記見直し案は、 上記説示のとおり、その当時において県議会事務局保管のセンチュリー2台が議長及び副議長の送迎車として現に各使用されていたという現状を踏まえたものであった 必要性自体も争うが、上記見直し案は、 上記説示のとおり、その当時において県議会事務局保管のセンチュリー2台が議長及び副議長の送迎車として現に各使用されていたという現状を踏まえたものであったし、そもそも貴賓の移動用車両及びその予備車両を用意すること自体、一概に不合理なものとはいえないところであって、いずれにしても、その指摘するところによって、上記見直し案の合 理性が欠けるとまではいえない。 ウそして、本件売買契約における契約内容(甲1)も、フルモデルチェンジを経た後のものとして従前のセンチュリーの購入金額と比べて売買代金額が700万円ほど高く、売買代金額(2090万円)それ自体としても高額である感は否めないが、車内のスピーカーやモニター等の装備が標準 搭載となっていたことに鑑みると、貴賓車として使用するセンチュリーと しては、標準的仕様を著しく超える不当に高額なものであったとも認められない(証人B)。 エ以上によれば、県の保有するセンチュリーについて前記イで摘示したような別異の処分及び管理の在り方も考えられないではないものの、見直し案に基づく処分及び管理の在り方にも相応の合理性は認めることができ るところであって、A知事が県の代表者として本件売買契約を締結したことが、その当否を超えて、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価することはできず、同契約の締結が違法となるものであったとは認められない。 ⑶ そして、上記のとおり本件売買契約の締結が違法といえない以上、同契 約の締結に基づき行われた本件支出に違法があるということもできない。 ⑷ 被控訴人のその他主張について以上に対し、被控訴人は他にも種々の指摘をして争っているので、これらについて検討する。 ア被控訴人は、従前 行われた本件支出に違法があるということもできない。 ⑷ 被控訴人のその他主張について以上に対し、被控訴人は他にも種々の指摘をして争っているので、これらについて検討する。 ア被控訴人は、従前、貴賓車としてのセンチュリーの使用実績に乏しかっ たところであって、本件センチュリーは、実質的には貴賓の使用というより日常的に県議会議長及び副議長が使用することを想定して購入されたものであり、本件売買契約の締結は不当である旨主張する。 確かに、前記1⑴、⑷で認定した使用実績に照らすと、従前の貴賓車としてのセンチュリーの使用頻度は低かったといえる。しかし、従前に おいても貴賓車としての使用実績がおよそなかったものではなく、本件売買契約締結当時は、東京オリンピック・パラリンピックの開催等も控えており、購入された本件センチュリーは、事実、コロナ禍の状況にあっても、外国要人の送迎用車両として実際に使用されたところでもある。したがって、本件売買契約締結に際し、本件センチュリーを貴賓 車として使用することがおよそ想定されていなかったなどとはいえず、 この点は、議長及び副議長が東京出張の折に移動用車両としてセンチュリーが手配されていたとの被控訴人主張事実によっても左右されない。被控訴人は、当時、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が起こりつつあったことについても指摘しているが、往時の状況に照らせば、同感染症のかほどまでの世界的・長期的まん延を想定するのは困難というべきで あり、その指摘によっても前記認定判断は覆らない。 もっとも、それにしても皇室や外国要人の来県による使用が頻回に生じるわけではなく、その限りにおいては、本件センチュリーが少なからず遊休車両として県議会事務局に貸し出され、議長又は副議長の送迎に供されるこ も、それにしても皇室や外国要人の来県による使用が頻回に生じるわけではなく、その限りにおいては、本件センチュリーが少なからず遊休車両として県議会事務局に貸し出され、議長又は副議長の送迎に供されることは想定され得たというべきである。しかし、だからと いって、貴賓の来県がないでもないことは前記認定説示のとおりであり、これに対して県としての最大限の敬意を示し、その安心安全、確実な送迎を期する観点から、従前使用実績のあったセンチュリーを来賓用車両として供するよう企図したとしても、その判断が不合理とはいえないことは前記2に認定説示したとおりである。 この点、被控訴人は、上記見直し案について、物品管理課による一元管理を名目に、センチュリーの購入予算を県議会事務局ではなく物品管理課で計上するための方便であったなどとも主張して争うが、上記見直し案が県議会事務局から持ち掛けられたことをうかがわせる資料根拠自体何らなく、むしろ、上記見直し案による見直しは総務部や物品管理課の発案に よりされたものであったことは前記1認定のとおりであり、他に被控訴人主張事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、被控訴人の上記指摘の点によっても前記認定判断は覆らない。 これらに反する被控訴人の主張は採用できない。 イ被控訴人は、県の財政が当時ひっ迫しており、県が職員削減や給与・手 当の引下げ、子ども医療費助成の削減等の様々な歳出削減をしている中、 本件売買契約を締結して高額なセンチュリーを購入することは不当である旨主張する。 確かに、本件売買契約は、貴賓の移動用車両に供する貴賓車の購入契約として、それ自体高額なものであることを否めない。しかし、貴賓の来県がないでもない以上、その移動用車両及び予備車両としてこれを必要とす 本件売買契約は、貴賓の移動用車両に供する貴賓車の購入契約として、それ自体高額なものであることを否めない。しかし、貴賓の来県がないでもない以上、その移動用車両及び予備車両としてこれを必要とす る判断が直ちに不合理とはいえず、見直し案を全体として見れば、県の保有していたセンチュリーは3台から2台に削減され、行財政改革の一環として県全体として取り組んでいた黒塗車の削減という目標に一定程度沿うものでもあったといえることは前記2認定説示のとおりである。かかる点をも踏まえるならば、被控訴人の上記指摘によっても、本件売買契約を 締結することがなお裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとなるとまではいえない。 これに反する被控訴人の主張は採用できない。 ウ被控訴人は、物品管理課でセンチュリーを一元管理することがどれだけ車両の効率化に寄与し、経費削減につながるか明らかでないなどとも主張 する。 しかし、貴賓の来県に際し、貴賓車及び予備車両として、県としてどの程度の車両等を用意して接遇するかについては、皇室や外国要人への敬意の表し方、来県を機にしたインバウンド招致、県内の商品の売込み等につなげられるかなど種々の政策的側面が強いことも否定できないところで あって、単純に本件売買代金額の多寡によりその判断の是非が決せられるべきものではない。また、この点を措いても、上記見直し案の採用前においては、貴賓車としてのセンチュリーの稼働に乏しく、他の2台のセンチュリーが議長用及び副議長用の公用車として稼働するばかりであったところが、上記見直し案の採用後には、県が全体として保有する黒塗車とし てのセンチュリーは1台削減され、保有されることとなった2台のセンチ ュリーに貴賓用車両及びその予備車両としての効用を期するこ し案の採用後には、県が全体として保有する黒塗車とし てのセンチュリーは1台削減され、保有されることとなった2台のセンチ ュリーに貴賓用車両及びその予備車両としての効用を期することもできることになったというのであるから、県が目指していた黒塗車の削減に資し、長期的に見れば、その保有・管理コストの削減につながるものであったということができるのであって、その指摘の点から合理性が欠けるということにはならないというべきである。 これに反する被控訴人の主張は採用できない。 エ被控訴人は、本件センチュリーは価格が高く、マッサージ機能も標準装備しているものであったところ、A知事自身も、記者会見で、売買代金額が高額であり、マッサージ機能も不必要であることを認めているなどとして、証拠(甲56)を提出し、争う。 確かに、同証拠によれば、A知事が、記者会見において、その趣旨の発言に及んだことは認められるが、他方で、A知事は、記者会見において、県民から本件センチュリーを購入したことにつき批判の声があったことを踏まえて今後の善後策を検討したいとしながらも、本件センチュリーを購入した担当課の判断自体が間違いであったともしていないのであり、か かる証拠から、前記認定判断は左右されないというべきである。 オそして、その他被控訴人の主張を見ても、前記認定判断を左右するに足りるものはない。 3 また、以上の点を措いても、以下のとおり、A知事に本件売買契約の締結・履行、公金支出について故意・過失等があったなどとも認め難い(争点⑵関係)。 すなわち、地方公共団体の長である知事の権限に属する財務会計上の行為を補助職員が専決権の授与等により処理した場合には、知事は、補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監 。 すなわち、地方公共団体の長である知事の権限に属する財務会計上の行為を補助職員が専決権の授与等により処理した場合には、知事は、補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失によりこれを阻止しなかったときに限り、当該地方公共団体に対し、当該補助職員がした財務会計上の違法行為により当該地方公共団体が被った損害 につき賠償責任を負うものと解するのが相当である(最高裁判所平成3年12 月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁参照)。 しかるところ、本件センチュリーの購入(本件売買契約の締結)については、会計管理局長が専決による決裁権者とされ、事実、当時の同局長による決裁を経て締結されたものであることは、前提事実⑶及び前記1⑵認定のとおりである。他方、A知事が、本件売買契約締結前に本件売買契約について報告を受け ていたことを裏付ける的確な証拠はない(原判決摘示の甲6、8、49はこれを裏付けるに足りない。)。むしろ、証拠(甲56)及び弁論の全趣旨によれば、前記1⑶認定のとおり、A知事が、本件売買契約について担当課から報告を受けたのは本件売買契約締結後、納品前の時点である令和2年7月の段階であったと認められる。 そうすると、A知事が、本件売買契約締結時において、同契約が締結されることを阻止すべき指揮監督上の義務を負っていたなどということはできず、その義務の懈怠があるとも認められない。また、A知事において本件支出を阻止すべき指揮監督上の義務を負っており、その懈怠があったということもできない。このことは、普通地方公共団体の長が、地方自治法上、当該普通地方公共 団体を統轄し、これを代表する地位にあり(147条)、その執行機関として、当該普通地方公共団 があったということもできない。このことは、普通地方公共団体の長が、地方自治法上、当該普通地方公共 団体を統轄し、これを代表する地位にあり(147条)、その執行機関として、当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する職務上の義務を負っている(138条の2)こと、本件売買契約の内容や、保有するセンチュリーの物品管理課での一元管理が県議会に関わるものであることなどの点を踏まえても、左右されない。 これに対し、被控訴人は、本件売買契約の締結は、県議会との関係に関わるものとして、県政運営上重要な事項に関わるものであったのであるから、A知事が、本件売買契約について担当課から報告を受けるまで、これを知らなかったというのは不自然であり、この点を措いても、担当課に報告をさせなかったこと自体に落ち度があり、指揮監督上の義務違反を免れないなどと主張し争う。 しかしながら、A知事が本件売買契約締結前に本件売買契約について報告を 受けていたことを裏付ける的確な証拠がないこと等は前判示のとおりであり、そうである以上、事情を知らないA知事が担当課に報告をさせる由はない。本件売買契約の決裁も、決裁規程に基づく適式な決裁権限の分配の下でされたものである。そして、本件売買契約の締結を含め、B課長策定の見直し案は、県議会議長及び副議長の公用車(送迎)の見直しという県議会に関わるものであ ったとはいえるが、県政あるいは県議会の運営それ自体との直接的関わり合いは薄く、県議会事務局からも、上記見直し案が県議会との関係に関わるものとして県政運営上重要な事項に関わるとの認識が示された形跡はおよそなく、むしろ、その当否についての意見も県議会事務局限りの判断においてされたことがうかがわれる。また、実際問題と との関係に関わるものとして県政運営上重要な事項に関わるとの認識が示された形跡はおよそなく、むしろ、その当否についての意見も県議会事務局限りの判断においてされたことがうかがわれる。また、実際問題として見ても、本件センチュリーを含む県保 有のセンチュリーは、遊休車両となる間、県議会事務局にこれを貸し出し、従前のようにこれらを送迎で使用することも可能であったものであり、前記1認定に係る同事務局の反応に見られるように、その影響は、県議会側から見れば取扱いに若干不便が生じるというにとどまり、間接的影響にとどまるものであったといわざるを得ない。これらの点に照らせば、本件売買契約の締結を含め、 上記見直し案の採否が県政運営上重要な事項に関わるものであったとは認め難い。これに反する被控訴人の主張は採用できず、上記認定判断は覆らない。 4 その他原審及び当審における当事者の主張に鑑み、証拠を改めて検討しても、当審における前記認定判断は左右されない。 第4 結論 以上の次第で、その余の点につき判断するまでもなく、被控訴人の請求は理由がなく棄却すべきところ、これと結論を異にする原判決は不当であって、本件控訴は理由がある。 よって、主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部 裁判長裁判官西井和徒 裁判官芝本昌征 裁判官澤井真一は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官西井和徒
▼ クリックして全文を表示