【DRY-RUN】主 文 原判決中「押収してある現金合計二九五万円(原審昭和五五年押第三六 号、当審昭和五七年押第四二号の5、7、9、11、16及び17)を被告人Aか ら没収する。被告人Aから金二一八六
主 文 原判決中「押収してある現金合計二九五万円(原審昭和五五年押第三六 号、当審昭和五七年押第四二号の5、7、9、11、16及び17)を被告人Aか ら没収する。被告人Aから金二一八六万三〇〇〇円を追徴する。」との部分を破棄 する。 押収してある現金合計四五万円(第一審昭和五五年押第三六号、原審昭 和五七年押第四二号の5、7、9及び11)を没収する。 その余の部分に対する本件上告を棄却する。 理 由 弁護人勝尾鐐三、同佐長彰一、同田中重正、同三好泰祐及び同井上正実の被告人 についての上告趣意(昭和五九年一〇月二六日提出の上告趣意補充書によるものを 含む。)のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例は所論のような趣旨を判示 したものではないから、その前提を欠き、その余は、違憲をいうかのような点を含 め、その実質はすべて単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、いず れも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。 しかしながら、所論にかんがみ、職権をもつて調査すると、原判決が被告人に対 し没収及び追徴を言い渡した部分は、以下の理由により破棄を免れない。 一 原判決が認定判示した犯罪事実の要旨は、 「被告人は、昭和五五年四月一三日施行の愛媛県宇和島市長選挙に立候補した一、 二審相被告人B(以下、Bという。)の選挙運動者であるが、 第一 昭和五四年一二月二七日ころから昭和五五年三月一九日ころまでの間三回 にわたり、同市a町b番地cB後援会事務所において、Bから、同人が自己の当選 を図る目的をもつて、同選挙区の選挙人らに供与すべき投票及び投票取りまとめ等 の選挙運動の報酬の資金として交付するものであることを知りながら、現金合計二 - 1 - 四八一万三〇〇〇円の交付を受け(包括して公職選挙法二二一条一項五号の受 人らに供与すべき投票及び投票取りまとめ等 の選挙運動の報酬の資金として交付するものであることを知りながら、現金合計二 - 1 - 四八一万三〇〇〇円の交付を受け(包括して公職選挙法二二一条一項五号の受交付 罪に当たる。) 第二 他の者と共謀の上又は単独で、Bに当選を得させる目的をもつて、未だB の立候補届出のない昭和五四年一二月二八日ころから昭和五五年三月二五日ころま での間一一五回にわたり、選挙人らに対し、Bのための投票及び投票取りまとめ等 の選挙運動の報酬として、現金合計五一八万七〇〇〇円を供与したものである。」 というのであり、原判決は、押収してある現金合計二九五万円(第一審昭和五五 年押第三六号、原審昭和五七年押第四二号の5、7、9、11、16及び17)を 右第一事実の受交付金員の一部と認めて、公職選挙法二二四条前段により、これを 被告人から没収し、更に、同条後段により、被告人から、第一事実の受交付金員と 右没収金員との差額二一八六万三〇〇〇円を追徴すべきものとしている。 二 原判決の認定するところによると、右没収・追徴に関係する事実関係は、次 のとおりである。 (1) 第一事実は、実際には、被告人がBから「イ」昭和五四年一二月二七日 ころ、「ロ」昭和五五年二月上旬ころ及び「ハ」同年三月一九日ころに、それぞれ 現金一〇〇〇万円ずつすなわち合計三〇〇〇万円の交付を受けたというのであると ころ、(2)被告人において、右「イ」の一〇〇〇万円については、その出所を隠 蔽するため、農業協同組合に預金して、その代わりに自己の銀行預金を払い戻すな どして同額の現金を取り揃え、右「ロ」「ハ」の現金合計二〇〇〇万円とともに一 括して保管し、この中から、第二事実の供与現金合計五一八万七〇〇〇円を支出し た(原判決は受交付罪のうちこの供与に相当する部分は供与罪に吸収されるとして 右「ロ」「ハ」の現金合計二〇〇〇万円とともに一 括して保管し、この中から、第二事実の供与現金合計五一八万七〇〇〇円を支出し た(原判決は受交付罪のうちこの供与に相当する部分は供与罪に吸収されるとして 差額の二四八一万三〇〇〇円のみについて受交付罪の成立を認めたものである。)。 (3)昭和五五年三月二六日、警察がB側の買収事犯の関係でB宅を捜索した際、 いずれもそれまで被告人が同所の鍵付き冷蔵庫に保管していた受交付金員の残りで - 2 - ある現金六一八万七〇〇〇円及び封筒四枚に小分けされていた現金合計四五万円( 前回押号の5、7、9及び11)が発見され、被告人が逃走したため、これらの金 員はBから警察に任意提出された。(4)被告人は、右捜索以前に、右現金合計六 六三万七〇〇〇円を除く受交付金員のすべてを、第二事実の供与のほか、起訴され ていないこれと同様の選挙人らへの供与及びBの後援会の正当費用に支出し終えて いた(但し、後者は前者に比し少額である。)。(5)前記(3)の警察にいつた ん押収された現金六一八万七〇〇〇円は、その日のうちにBに還付(原判決は仮還 付としているが、記録によると還付であることが明らかである。)され、(6)そ の後、再び被告人の手に渡り、被告人逮捕後の同年五月三〇日被告人の妻から、こ のうちの二五〇万円(前回押号の16及び17)が警察に任意提出された。 三 以上(1)ないし(5)の事実は、記録に照らしこれを是認することができ る。しかし、(6)のうち現金六一八万七〇〇〇円がBから被告人に再び渡された という点については、被告人の捜査官に対する供述調書の中に、これに沿う記載部 分があるのみであるところ、その供述は極めて概括的なものにすぎず、その授受の 理由、態様や日時場所にさえ全く触れていないし、後に押収された二五〇万円との 差額の使途についても漠然 中に、これに沿う記載部 分があるのみであるところ、その供述は極めて概括的なものにすぎず、その授受の 理由、態様や日時場所にさえ全く触れていないし、後に押収された二五〇万円との 差額の使途についても漠然とした説明しかなされていない。他方、Bは捜査段階及 び公判を通じて被告人に対して合計三〇〇〇万円の現金を渡したことは認めている にもかかわらず、右授受の事実を一貫して否定しており、被告人も公判においては、 これを否定し、押収されている現金二五〇万円は、これとは関係のない被告人のも のであると供述している。そして、第二事実の供与はすべて前記(3)の捜索以前 に終わつており、記録によるも、検察官の主張する起訴外の供与もすべて右捜索以 前のものであり、Bが被告人に現金六一八万七〇〇〇円を渡すべき理由も見当たら ない。以上によると、(6)については、そもそも前記授受の事実は認めがたいと いうべきであり、したがつて、これを除外して、被告人に対する没収・追徴を検討 - 3 - すべきである。 ところで、原判決は、前記(4)の事実を認定しているにもかかわらず、被告人 から、これらの起訴外の供与及び後援会の正当費用に支出した部分に相当する金額 についても追徴すべきものとしているが、公職選挙法二二一条一項五号所定の受交 付者が、その交付を受けた趣旨に従つて受交付金員の一部を他に供与したと認めら れるときは、その供与が起訴されていなくても、同法二二四条後段による受交付者 からの追徴額の算定にあたつては、右供与にかかる金額を控除すべきものと解する のが相当であり、また、右のような受交付者が、受交付金員の一部を後援会等の選 挙運動の正当費用に支出したと認められるときも、右同様に追徴額の算定にあたり この正当費用にかかる金額を控除すべきものと解するのが相当である。 してみると、被告人に対しては、押収 の一部を後援会等の選 挙運動の正当費用に支出したと認められるときも、右同様に追徴額の算定にあたり この正当費用にかかる金額を控除すべきものと解するのが相当である。 してみると、被告人に対しては、押収されている前記(3)の現金合計四五万円 の没収を言い渡しうるにとどまり、原判決がこれを越えて被告人に対し没収・追徴 を言い渡したのは、没収・追徴の要件に関する事実の一部を誤認し、かつ、公職選 挙法二二四条後段の解釈を誤つたものというべきであり、これが判決に影響を及ぼ すことは明らかであり、原判決の右部分を破棄しなければ著しく正義に反するもの と認められる。 四 よつて、刑訴法四一一条一号、三号、四一三条但書により、原判決中「押収 してある現金合計二九五万円(原審昭和五五年押第三六号、当審昭和五七年押第四 二号の5、7、9、11、16及び17)を被告人Aから没収する。被告人Aから 金二一八六万三〇〇〇円を追徴する。」との部分を破棄し、押収してある現金合計 四五万円(第一審昭和五五年押第三六号、原審昭和五七年押第四二号の5、7、9 及び11)は、被告人が前記第一(原判決では第二の一)の犯行により交付を受け た金員の一部であるから、公職選挙法二二四条前段によりこれを没収することとし、 原判決のその余の部分に対する上告は、刑訴法四一四条、三九六条によりこれを棄 - 4 - 却することとし、裁判官全員一致の意見により、主文のとおり判決する。 検察官山口悠介 公判出席 昭和六二年一二月一一日 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 牧 圭 次 裁判官 島 谷 六 郎 裁判官 藤 島 昭 裁判官 香 川 保 一 次 裁判官 島 谷 六 郎 裁判官 藤 島 昭 裁判官 香 川 保 一 裁判官 奥 野 久 之 - 5 -
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